説明

経口投与のための新規の光増感剤製剤

本発明は、抗癌、抗転移、抗菌、抗真菌、抗原生生物、抗ウイルス、抗プリオンを含む種々の医学的適用のための、経口投与のための新規の製剤、並びに診断及び治療目的でのPDT療法を提供する。好ましい実施態様において、経口製剤は、光増感剤及び適切な添加剤を含み、一般的に各々の投与の間に存在する活性化照射への暴露とともに、又は光非依存的な方法において、延長された期間にわたって複数回投与され得る。他の好ましい実施態様において、過形成及び腫瘍を治療するための、蛍光により過形成、腫瘍性組織及び病原性細菌の局在を特定するための、複合的な体液において病原体により引き起こされる感染を治療するための、並びに脂肪減少、皮膚疾患、及び血管疾患のためのPDT方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口投与のための新規の製剤の分野に関する。より具体的には、本発明は、抗癌、抗転移、抗菌、抗真菌、抗原生生物、抗ウイルス、抗プリオン、及びPDT療法のための新規の光増感剤製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞内標的に依存して、光増感剤は異なるダメージ効果を作り出し得る。いくつかの光増感剤は、カスパーゼといった活性を有するプロテアーゼ産生能により細胞の自己分解を誘導する。一方、他の光増感剤は、ミトコンドリアにおいて局在して作られるため、アポトーシスを誘導するようである。疎水性光増感剤は、腫瘍細胞への増大された親和性を示す。親水性光増感剤と同様に集合体はピノサイトーシス及び/又はエンドサイトーシスにより取り込まれるようであり、リソソーム及びエンドソームに局在する。活性化されると、小胞が透過性となり、光増感剤及び加水分解酵素は、細胞質に放出される。細胞質における増感色素はチューブリンにダメージ与え、有糸分裂における細胞の集積、その後の細胞死を引き起こす。したがって、光増感剤の細胞内標的に依存する多くの適用が開発され得る。
【0003】
ほとんどの光増感剤はたいてい静脈内投与又は皮下投与といった侵襲的なルートにより送達されるように製剤化されているが、経口投与のための効果的な光増感剤製剤の開発は、非常に有利であろう。これは、高分子を保護し及び/又は消化管を介した取り込みを促進する製剤の使用を介して光増感剤の経口吸収を高めることにより成し遂げられ得る。
【0004】
安定的な化合物を提供する試みにおいて、Robinsonによる特許文献1は主として、バクテリオクロリン及びバクテリオプルプリン化合物、又は薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、プロドラッグ若しくは代謝体を開示する。新規化合物の合成に焦点をあてる代わりに、Prasadらによる特許文献2は、セラミックナノ粒子が光増感剤である2−デビニル−2(1−ヘキシルオキシエチル)ピロフェオホルビドを取り込むドラッグキャリアシステムを提供する。光非依存的な方法で細胞増殖及び血管新生を抑制するために、フェオホルビド誘導体化合物は、Brooksらによる特許文献3に開示されるように、経口投与される。
【0005】
経口的又は非経口的にチアジンブルーを投与することにより、Woodらによる特許文献4及び特許文献5は、患者の肝炎ウイルスを治療する方法、及び患者のいくつかのウイルスの再活性化を低減又は抑制する方法を開示する。いくつかのウイルスの再活性化を低減又は抑制するために、個人は、化学療法を行っている又は行う予定である及び免疫抑制されている又はされる予定である患者である。チアジンブルーは、非電離放射線を照射されて色素の抗ウイルス活性を亢進させ得る。フェノチアジン色素の経口投与のための他の薬剤の提示は、活性剤キャリア複合体を含む特許文献6に開示される。キャリアは、イオン交換体である。それは、メチレンブルーの組織及び織物の染色特性を取り除き又は高度に低減したものであり、口腔及び咽頭腔の生理学的コンディション下でその極めて少量を放出するのみである。
【0006】
経口投与により、医師又は他の医療従事者の介入を必要とする静脈内又は皮下ルートに関連する困難性を克服することが可能であり、それは患者の不快感を最小限にしつつ疾患の長期間の制御をもたらす。腸内ルートは、非侵襲的手段のすべての利点を有する。不幸にも、送達される活性物質のサイズ、溶解性、及び安定性に関連するいくつかの取り込みの困難性(例えば、高分子の低吸収性、不安定分子の消化管での分解、及び消化管の生物学的バリアを通過する際の障害)を提示し得る。したがって、適切な活性物質のバイオアベイラビリティを確保するために、不変の形態、及び脾臓又は肝臓での大量集積の回避において生物活性剤の吸収が保証されるべきである。これは、活性物質を経口薬物デリバリーシステム又は新規にデザインされた製剤に取り込むことによりなされ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,376,483号明細書
【特許文献2】米国特許第7,364,754号明細書
【特許文献3】国際公開WO2008/002460A2号パンフレット
【特許文献4】国際公開WO2006/0264423A1号パンフレット
【特許文献5】国際公開WO2006/127482A1号パンフレット
【特許文献6】国際公開WO2007/144048号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
このように、経口投与のための先行技術の化合物よりも優れた技術的及び物理化学的特性を有する新規の光増感剤製剤のニーズが存在する。本発明は、先行技術の製剤のニーズを満たしており、製造及び取扱が容易である経口投与のための増大されたバイオアベイラビリティ及び安定的な光増感剤製剤を提供する。さらに本発明は、幅広い適用に対する、抗癌、抗転移、抗菌、抗真菌、抗原生生物、抗ウイルス、抗プリオン、及びPDT療法の効果を向上させる経口投与のための光増感剤製剤を提供する。
【0009】
本発明の目的は、光依存的な治療又は光線力学治療といった光により活性化される治療のための経口ルートにより投与される新規の光増感剤製剤を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、経口投与のための新規の光増感剤製剤、並びに過形成及び腫瘍細胞及び組織を治療するための抗癌及びPDT治療の方法を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、新規の経口光増感剤製剤、並びに初発腫瘍の破壊及び長期の腫瘍制御により腫瘍細胞及び組織及び転移を治療し抑制するための抗転移及びPDT治療方法を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、新規の経口光増感剤製剤、並びに身体において及び複合的な体液において病原体により引き起こされる感染を治療し又は抑制するための抗菌、抗真菌、抗原生生物、抗ウイルス、抗プリオン、及びPDT治療の方法を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、新規の経口光増感剤製剤、並びに蛍光により過形成及び腫瘍性組織及び病原性細菌の局在を特定するためのPDT方法を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる他の目的は、経口投与のための新規の光増感剤製剤、並びに脂肪減少、皮膚疾患、毛髪治療、及び血管疾患のためのPDT方法を提供することである。
【0015】
端的に言うと、本発明は、抗癌、抗転移、抗菌、抗真菌、抗原生生物、抗ウイルス、抗プリオンを含む種々の医学的適用における治療のための、経口投与のための新規の製剤、並びに診断及び治療目的でのPDT療法を提供する。好ましい実施態様において、経口製剤は、光増感剤及び適切な添加剤を含み、一般的に各々の投与の間に存在する活性化照射への暴露とともに、又は光非依存的な方法において、延長された期間にわたって複数回投与され得る。他の好ましい実施態様において、過形成及び腫瘍を治療するための、蛍光により過形成及び腫瘍性組織及び病原性細菌の局在を特定するための、複合的な体液において病原体により引き起こされる感染を治療するための、並びに脂肪減少、皮膚疾患、及び血管疾患のためのPDT方法が提供される。
【0016】
本発明の上述及び他の目的における特徴及び利益は、添付の図面と併せて以下の明細書の記載から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】テトラピロール誘導体及びフェナジン色素を含む、いくつかの好ましい光増感剤構造ファミリーの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
非侵襲的かつ効果的な抗癌、抗転移、抗菌、抗真菌、抗原生生物、抗ウイルス、抗プリオン、及びPDT療法を提供するために、経口投与のための新規の光増感剤製剤が提供される。本発明は、光増感剤の高められたバイオアベイラビリティ及び標的組織における亢進された生体内分布を有する安定的な化合物を提供する。さらに本発明は、同時に壊死を制限し及び免疫システムサポートといった有益な身体サポート反応を最大化する一方で、腫瘍異形成又は他の望ましくない組織さらには脂肪といった標的組織の順次の殺傷を引き起こす間、光感受性を最小化し薬物の有用性を最大化する、最適化された治療レジメンを提供する。
【0019】
投与の従来のルートのなかでも、本発明の光増感剤製剤は経口的に、又は口、咽頭、食道、胃、小腸(十二指腸、空腸、回腸)、大腸(盲腸、結腸、直腸)、及び肛門といった消化管のいかなる部分にも関与して投与され得る。
【0020】
活性物質は、吸収可能な食用キャリア、不活性希釈剤、又は食物に直接的に取り込まれて投与され得る。薬学的製剤の形態は、限定されることなく、ハード又はソフトシェルゼラチンカプセル、錠剤、ピル、粉末、溶液、懸濁液、エリキシル、シロップ、ウェハ、ゲル、口腔錠又は舌下錠、薄膜、坐薬、及び浣腸剤を含む。
【0021】
薬学的製剤の形態のための異なる薬学的な添加剤が、特定の医学的適用に依存して用いられ得る。薬学的な添加剤は、光増感剤の溶解性及びバイオアベイラビリティを調節し、その安定性を増加させ、好ましい多形及び配座を維持するのを助け、液体製剤のpH及び/又はオスモル濃度を維持し、宿主の免疫原生反応を調節し、並びに乳化剤、抗酸化剤、エアゾール噴射剤、錠剤結合剤、錠剤崩壊剤として機能するために用いられ得る。好ましい薬学的な添加剤は、限定されることなく、用いられる光増感剤と混合可能な、結合剤/フィラー、コーティング剤、崩壊剤、潤滑剤、及び甘味剤を含む。
【0022】
本発明の経口光増感剤製剤のバイオアベイラビリティを向上させ、異なる消化管バリアを通過できるようにするために、経口光増感剤製剤はさらに、患者に悪影響を与えることなく能動拡散メカニズムをブロックする手段を含む。能動拡散メカニズムは、十二指腸及び小腸の上皮細胞表面に存在する、毒性があるとされる物質を細胞外に排出する能動拡散メカニズムにより能動輸送体として機能する多剤排出ポンプ(MDR)により行われる。最も多く最も高い活性を有するMDRポンプは、p−グリコプロテイン(MDR1、ABCB1)、BCRP(乳癌耐性タンパク質(ABCG2))、及びMRP−2である。いくつかの光増感剤は、MDR排出ポンプの基質として機能するため、低いバイオアベイラビリティを示してきた。したがって、本発明の経口光増感剤製剤はまた、限定されることなく、ビタミン−E−TPGS、クレモホールEL/RH40、ソルトールHS、Tween20、Tween80、ラブラゾール(Labrasol)、ペセオール(Peceol)、PEG、ポリソルベート80、Brij30、及びプルロニックP85を含む、MDR−ポンプ−遮断剤を含む。
【0023】
さらに、本発明の経口投与のための新規の光増感剤製剤は、いかなる添加剤を用いることなく、又は成分を成形するリポソーム、ベクタータンパク質及び非ベクタータンパク質、有機及び無機ナノ粒子、ナノ−及びマイクロ−エマルション、ナノ結晶の組み合わせ、単一溶媒又は適切な溶媒混合物、ラクトース、PVPその他のような成分といった本技術分野において公知の他のドラッグデリバリーシステムを用いて製造され得る。
【0024】
好ましい実施態様において、経口投与のための光増感剤製剤は、光非依存的な方法で用いられ得、又はレーザー放射線源、発光ダイオード源、ランプ放射線源(白熱、キセノンアーク、及びメタルハライドランプ)及び/若しくは太陽光といった干渉性放射線源及び非干渉性放射線源を含む電磁放射線源又は環境からの他の放射線源により活性化され得る。医学的適用に依存して、電磁放射線は、体腔若しくは血管の中に経皮的に送達され得、又はディフューザーチップを用いて若しくは用いることなく光ファイバーにより組織間腔内に(interstitially)送達され得る。
【0025】
最も好ましい実施態様において、過形成及び腫瘍を治療するための経口投与のための光増感剤製剤が提供される。光増感剤は好ましくは、テトラピロール及びその誘導体、並びにフェナジン色素及びその誘導体であり、限定されることなくポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリン、フェオホルビド、バクテリオフェオホルビド、コロール、及びフタロシアニンからなる群より選択される。
【0026】
過形成及び腫瘍を治療するためのPDT療法の実施態様は、1)経口投与の形態における適切な量の光増感剤(好ましくはテトラピロール及びその誘導体)を選択する工程;2)薬学的製剤を単回又は複数回経口投与する工程;3)一定期間消化管の適切な部位での薬物吸収及び過剰増殖組織での光増感剤の選択的蓄積を可能とする工程;4)治療領域に蓄積された光増感剤を活性化するように単回又は複数回1又は2以上の波長の光放射を送達する工程;5)必要に応じてさらに治療を繰り返す工程を含む。
【0027】
他の医学的適用において、PDTは、抗原提示細胞として機能するマクロファージ及び/又は樹状細胞といった免疫細胞によりもたらされ得る腫瘍特異的免疫反応を引き起こす。大部分の他の癌治療とは対照的に、PDTは非免疫原生腫瘍に対しても免疫をもたらし得、全身的な免疫反応効果を提供する。したがって、長期間腫瘍を制御するために光増感剤製剤は複数回経口投与され、PDTにより治療された腫瘍の再発を抑制する。本発明の製剤を複数回投与することで、腫瘍により感作された免疫細胞を刺激することができ、それらは他のPDTによる抗腫瘍効果を免れた生存可能な腫瘍細胞の小病巣を除去することができるだろう。さらに、免疫反応を刺激することによる長期間の腫瘍制御は、転移の発展及び/又は他の原発性腫瘍の発展を抑制し得る。腫瘍の長期間の制御のためのPDT療法の実施態様は、1)経口投与の形態における治療上有効量の光増感剤(好ましくはテトラピロール及びその誘導体)を選択する工程;2)薬学的製剤を経口投与する工程;3)投与後、一定期間、消化管の適切な部位での薬物吸収及び過剰増殖組織での光増感剤の選択的蓄積を可能とする工程;4)腫瘍免疫反応を刺激するための光増感剤を活性化するように1又は2以上の波長の光放射を送達する工程;5)一定期間、他の身体組織による治療中の過剰増殖組織での光増感剤補充を可能とする工程;6)宿主の腫瘍免疫反応の刺激のために補充された光増感剤を活性化するように1又は2以上の波長の光放射を送達する工程;7)適切な期間経過後、長期間の抗腫瘍制御のために工程1−6を複数回繰り返す工程を含む。
【0028】
経口投与ルートによるPDT長期間抗腫瘍制御の主要な利点は、光増感剤の有効量が先行技術の製剤に比して低いことであり、それにより意図しない壊死を制限し増大された皮膚の光感受性を低減することができる。さらに、このアプローチは、宿主の腫瘍免疫反応を刺激することにより免疫システムサポートを増大させ、治療部位における光増感剤の補充を行った後、各々の光増感剤投与の複数回の放射工程を用いることで効果を高める。
【0029】
最も好ましい実施態様において、全血、血液製剤、唾液その他といった複合体液における病原性細菌により引き起こされる感染症を治療するための経口投与のための光増感剤製剤が提供される。光増感剤は好ましくはフェナジン色素及び/又はその誘導体であり、限定されることなくメチレンブルー、サフラニン等からなる群より選択される。複合体液における病原性細菌治療のPDT療法の実施態様は、1)経口投与の形態における適切な量の光増感剤(好ましくはサフラニンO)を選択する工程;2)薬学的製剤を単回又は複数回経口投与する工程;3)一定期間、消化管の適切な部位での薬物吸収及び感染組織での光増感剤の選択的蓄積を可能とする工程;4)好ましくは間欠的態様において、治療領域に集積した光増感剤を活性化するように1又は2以上の波長の光放射を送達する工程;5)一定期間、他の身体組織による治療中の感染組織での光増感剤補充を可能とする工程;6)補充された光増感剤を活性化するように1又は2以上の波長の光放射を送達する工程;7)適切な期間経過後、長期間の抗菌制御のために工程1−6を複数回繰り返す工程を含む。本発明の方法は、細菌といった感染体を連続して殺す又は不活性化することにより長期間の抗菌制御をもたらす。
【0030】
他の実施態様において、抗プリオン治療のための経口ルートにより投与される光増感剤製剤が提供される。プリオンは、プリオンタンパク質(PrP)の変異を伴って神経変性疾患を引き起こす感染性病原体である。PrPの異常なプロテアーゼ耐性型の中枢神経系における集積がプリオン病をもたらすようである。伝達性海綿状脳症又はプリオン病の中でも、牛海綿状脳症、羊のスクレイピー、及びヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病が、最も有名である。所定のポルフィリン及びフタロシアニンは、異常なプロテアーゼ耐性PrP集積の阻害剤として機能し得、また明白な細胞傷害作用無く異常なプロテアーゼ耐性PrPへの変換を阻害し得る。
【0031】
他の好ましい実施態様において、蛍光による過形成又は腫瘍組織及び細菌の局在を特定するための経口投与のための光増感剤製剤が提供される。適切な経口製剤の形態における適切な量の光増感剤の経口投与を介する、蛍光により過形成又は腫瘍組織及び細菌の局在を特定するためのPDT療法は、蛍光顕微鏡又は他の適切な手段を用いて標的マテリアルの可視化を可能とする。他の実施態様において、有利な組み合わされた方法は、同治療における過形成又は腫瘍組織の診断及び治療を含む。光増感剤が過剰増殖組織において選択的に集積すると、領域は、光増感剤により吸収された光放射により(浅部侵入深度で)最初に照らされ、治療領域の正確な可視化が可能となる。そのため、選択された治療領域は、光増感剤により(より深い侵入深度で)吸収された光放射で照らされるはずであり、光増感剤が活性化され過剰増殖組織が破壊される。
【0032】
ヒトにおいて過剰の体脂肪が蓄積されると、健康に悪影響を与え得る。ボディー・マス・インデックス(BMI)は、ヒトの体重及び身長から算出される数値である。それは、大部分の人々に対して体脂肪蓄積の信頼できる指標を提供する。成人にとって、標準的な体重状態の範疇は、BMIに関連する。18.5kg/m未満のBMIは、低体重を示唆し、25−29.9kg/m未満のBMIは、過体重を示唆し、30kg/m又はそれ以上のBMIは、肥満を示唆する。過剰の体脂肪は、身体的、生理的、及び心理的に対象に影響を与え得、審美上の欠陥及び心臓血管疾患、II型糖尿病、閉塞性睡眠時無呼吸、その他といった種々の疾患に関連する。本発明の他の実施態様において、経口投与のための光増感剤製剤は、身体における望ましくない脂肪細胞を破壊することによる脂肪減少に対するPDT療法において用いられる。治療される選択的領域を確認し経口投与により適切な量の光増感剤を投与した後、光増感剤が皮下層における脂肪細胞に徐々に蓄積する。滞留時間の後、1又は2以上の波長の光放射が、治療領域に蓄積された光増感剤を活性化するように送達され、脂肪組織を低減又は除去する。光放射送達は複数回行われ得、それにより光照射の間において他の身体組織から治療している脂肪領域へ光増感剤を補充する。光線力学治療は、所望の脂肪除去又は低減が達成されるまで、複数回行われ得る。光放射は、ランプ又は光ファイバーを用いて送達されるレーザー又はLED放射であってもよい。照射は、適切なハンドピースを用いて経皮的に、又はディフューザーチップにより光ファイバーを用いて組織間腔内に(interstitially)送達され得る。
【0033】
PDTはまた、基底細胞癌、日光性角化症、ウイルス性疣贅、ニキビ、その他といった腫瘍性及び非腫瘍性皮膚疾患に用いられてきた。他の実施態様において、経口投与のための光増感剤製剤は、皮膚疾患に対するPDT治療において用いられ、治療領域で光放射により蓄積され活性化された光増感剤が腫瘍性及び非腫瘍性の不健康な皮膚細胞において細胞傷害性作用を作り出す。
【0034】
他の実施態様において、本発明の経口投与のための光増感剤製剤は、毛髪のPDT療法に対して用いられる。毛髪の治療に対する異なるPDT適用は、投与される光増感剤の量、光と薬物投与との間の間隔(DLI:薬物−光間隔)及び治療領域ごとの力強度といった照射パラメータ、治療領域ごとに送達されるエネルギー、持続的又はパルスの照射、その他に依存して得られ得る。一実施態様において、PDTはヒト対象又は動物の望ましくない毛髪を除去するために用いられ得る。治療される領域の拡張及び除去される毛髪の特性は、複数回若しくは単回の薬物及び/又は光適用が必要とされるか、並びに光増感剤の正確な治療上の有効量を決定するだろう。本方法は、毛嚢を不活性化若しくは破壊することにより、又は毛嚢を養う組織を破壊することにより、望ましくない毛髪除去を可能とする。
【0035】
それにもかかわらず、異なる薬剤及び照射パラメータ設定が用いられると、PDT療法は、毛髪成長を誘導し、復活させ、再開させ、置換し、活性化することにより毛髪成長を刺激し得る。好ましくは、PDTは、頭皮、顎ひげ、腕、及び恥骨領域で見られる皮脂腺で毛嚢により作られる毛髪の毛髪成長を刺激する。したがって、アンドロゲン性脱毛症、化学療法及び薬物誘導性脱毛症、並びに円形脱毛症といった毛髪喪失は、適切なPDT設定で治療され得る。
【0036】
他の実施態様において、経口投与のための光増感剤製剤は、血管疾患に対するPDT療法において用いられる。PDTは、経口投与で適切な量の光増感剤を投与することにより静脈瘤及びクモ状静脈瘤の治療に対して用いられ得る。光増感剤が不健康な静脈管壁に選択的に集積し若しくは付着し、及び/又は適切な血中濃度に達すると、1又は2以上の波長のパルスの又は持続的な光放射が光増感剤を活性化するように腔内に又は経皮的に送達される。光線力学的プロセスにより、血管壁又は内皮はダメージを受け及び/又は刺激され、繊維組織への不可逆的進化により即座又は進行的な管閉塞を引き起こす。好ましくは、光増感剤はテトラピロール及びその誘導体であり、400−800nmの範囲の波長のレーザー源で照射される。
【0037】
種々の関節疾患は、すべての年齢群での多くの人々に影響を与え、それらのいくつかは慢性的な性質である。このような疾患の主要な徴候は、鋭い痛みである。痛みのために動作が少なくなるため、局所的な筋肉が徐々に萎縮し得、靱帯がより弛緩し得、徐々に変形及び身体障害を引き起こす。最も一般的な関節疾患のひとつは、関節リウマチであり、米国において極めて多数の人々が罹患している疾患である。痛みを低減するために、体重コントロール、休息、習慣的な運動、又は機械的支持装置といった保守的なケアが助けとなり得る。しかし、痛みが増大すると、非ステロイド性抗炎症薬、グルココルチコイド又はヒアルロン酸の局所注射、重症の場合には関節置換術を含む、医学的処置が必要となる。他の実施態様において、本発明は、軟骨再生を促進しこの疾患に苦しむ人々に改善された生活の質を提供する、代替の非侵襲的な予防薬及び治療方法を提供する。
【0038】
本発明は、下記の実施例によりさらに記述されるが、それにより限定されるものではない。
【実施例1】
【0039】
(カプセル製剤)
所望のドラッグデリバリープロファイル、吸収部位、及び活性物質の特性に依存して、錠剤製剤は限定されることなく、カプセル1)ヒプロメロース、エチルセルロース、ラクトースモノハイドレート、マグネシウムステアレート;カプセルシェル:二酸化チタン(E171)、酸化鉄イエロー(E172)、酸化鉄レッド(E172)、ゼラチン、印刷インク(Opacode S−1−15083):シェラック、レシチン(大豆)、シメチコン、酸化鉄レッド(E172)、ヒドロキシプロピルセルロース;カプセル2)ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、スクロース、糖球状顆粒、タルク、二酸化チタン(E171)、トリエチルシトレート;カプセルシェル:ゼラチン、ラウリル硫酸ナトリウム、二酸化チタン(E171)、インジゴカルミン(E132)、酸化鉄イエロー(E172)、食用白色インク;カプセル3)ラクトースモノハイドレート、マグネシウムステアレート、ポビドン、シリカ、コロイド性無水/コロイド性二酸化ケイ素、ポリソルベート20;カプセルシェル:ゼラチン、二酸化チタン(E171)、酸化鉄レッド(E172)を含み得る。すべてのケースにおいて、活性物質は光増感剤である。活性物質の量は、最適な治療効果を達成するために、所望の治療適用に依存して決定されるだろう。
【実施例2】
【0040】
(錠剤製剤)
より多くの量の活性物質が送達される必要のある場合には、カプセル製剤は圧縮された錠剤に比べて大きすぎるかもしれない。したがって、下記の錠剤製剤が製造され得る:錠剤1)錠剤コア:トウモロコシデンプン、アルファデンプン、グリコール酸ナトリウムデンプン、ポビドン、グリセロールジベヘネート、マグネシウムステアレート;フィルムコート:ヒプロメロース、グリセロールトリアセテート、タルク、二酸化チタン(E171)、酸化鉄イエロー(E172)、酸化鉄レッド(E172)、エチルセルロース;錠剤2)ラクトースモノハイドレート、粉末化セルロース、アルファトウモロコシデンプン、トウモロコシデンプン、コロイド性無水シリカ、マグネシウムステアレート;錠剤3)トウモロコシデンプン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、マグネシウムステアレート、インジゴカルミンアルミニウムレーキ;錠剤4)錠剤コア:ラクトースモノハイドレート、結晶セルロース、クロスポビドン、シリカ、コロイド性無水/コロイド性二酸化ケイ素、マグネシウムステアレート;フィルムコート:ポリビニルアルコール−部分的に加水分解された二酸化チタン、タルク、レシチン、キサンタンガム。すべてのケースにおいて、活性物質は光増感剤である。活性物質の量は、最適な治療効果を達成するために、所望の治療適用に依存して決定されるだろう。
【0041】
添付の図面を参照して本発明の好ましい実施態様が記述されてきたが、本発明は特定の実施態様に限定されず、本技術分野における当業者により種々の変形及び修正が添付の特許請求の範囲に規定される通りの本発明の範囲及び精神から逸脱することなく達成され得ることが理解されるべきである。
【0042】
(関連する出願)
本出願は、Gerard Farmerらによる米国仮特許出願61/173,477(出願日2009年4月28日)(発明の名称“経口投与のための新規の光増感剤製剤”)に基づく、35USC§119(e)に基づく優先権主張の利益を有する。この出願は、本明細書に参照により取り込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性光増感剤からなる経口製剤。
【請求項2】
光増感剤と適切な添加剤とを含み、
前記光増感剤は、アントラキノン誘導体又は脂肪族アミン以外の構造を有し得る、
ことを特徴とする請求項1に記載の経口製剤。
【請求項3】
光増感剤と適切な添加剤とを含み、
前記光増感剤は、テトラピロール及びその誘導体又はフェナジン色素及びその誘導体である、
ことを特徴とする請求項1に記載の経口製剤。
【請求項4】
前記適切な添加剤は、多剤排出ポンプ遮断剤を含み、
前記多剤排出ポンプ遮断剤は、ビタミン−E−TPGS、クレモホールEL/RH40、ソルトールHS、Tween20、Tween80、ラブラゾール(Labrasol)、ペセオール(Peceol)、PEG、ポリソルベート80、Brij30、及びプルロニックP85、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の経口製剤。
【請求項5】
前記適切な添加剤は、溶媒、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、湿潤剤、懸濁剤、結晶化阻害剤、保存剤、pH緩衝剤、甘味剤、香料、臭気マスキング剤、フィラー、結合剤、コーティング剤、崩壊剤、潤滑剤、流動促進剤、緩衝剤、着色剤、溶液遅延剤、吸収促進剤、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の経口製剤。
【請求項6】
溶液、懸濁液、エマルション、シロップ、エリキシル、ペースト、ゲル、錠剤、カプセル、ソフトカプセル、ハードカプセル、ゼラチンカプセル、ピル、粉末、顆粒、プレミックス、坐薬、かん腸剤、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される経口製剤を有する、請求項2又は3に記載の経口製剤。
【請求項7】
前記光増感剤はそれ自体、成分を成形するリポソーム、ベクタータンパク質及び非ベクタータンパク質、有機及び無機ナノ粒子、ナノ−及びマイクロ−エマルション、ナノ結晶、単一溶媒、適切な溶媒混合物、ラクトース、ポリビニルピロリドン(PVP)、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるドラッグデリバリーシステムに吸収され、包含され、又は共有結合されている、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の経口製剤。
【請求項8】
酸又は酵素を含む胃消化マテリアルにより顕著に分解されず、肝臓又は腎臓に集積しない光増感剤と、必要に応じた不活性成分と、を含有する光線薬物の経口製剤であって、
前記経口製剤は、過形成性疾患治療及び抗菌治療において有用である、
ことを特徴とする経口製剤。
【請求項9】
投薬は、一般的に個々の投薬の間に発生する活性化放射への暴露により、延長された時間にわたって複数回設定される、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の経口製剤。
【請求項10】
投薬は、放射非依存的な治療に対して延長された時間にわたって複数回設定される、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の経口製剤。
【請求項11】
投薬は、一般的に個々の投薬の間に発生する活性化放射への暴露により、延長された時間にわたって複数回設定される、
ことを特徴とする請求項8に記載の経口製剤。
【請求項12】
投薬は、放射非依存的な治療に対して延長された時間にわたって複数回設定される、
ことを特徴とする請求項8に記載の経口製剤。
【請求項13】
光増感剤が標的組織において集積するための時間を許容し、その後に標的組織における前記光増感剤を活性化するように適切なエネルギーを適用して、前記光増感剤を経口投与することにより、腫瘍、異形成又は他の医学的若しくは美容上のコンディションを治療する方法。
【請求項14】
疎水性光増感剤が標的組織において集積するための時間を許容し、その後に標的組織における前記光増感剤を活性化するように適切なエネルギーを適用して、前記疎水性光増感剤を経口投与することにより、脂肪除去、皮膚疾患、毛髪除去、毛髪成長、血管疾患、関節疾患といった医学的及び美容上のコンディションを治療する方法。
【請求項15】
a)経口投与の形態における疎水性光増感剤の適切な量を選択する工程;
b)製剤を単回又は複数回経口投与する工程;
c)一定期間、消化管の適切な部位での薬物吸収及び過剰増殖組織(治療領域)での光増感剤の選択的蓄積を可能とする工程;
d)治療領域に蓄積された光増感剤を活性化するように単回又は複数回、1又は2以上の波長の光放射を送達する工程;及び
e)必要に応じて2回以上治療を繰り返す工程;
を含む腫瘍、異形成、他の医学的/美容上のコンディションを治療する方法。
【請求項16】
a)経口投与の形態における疎水性光増感剤の治療上有効な量を選択する工程;
b)製剤を経口投与する工程;
c)投与後一定期間、消化管の適切な部位での薬物吸収及び過剰増殖組織での光増感剤の選択的蓄積を可能とする工程;
d)腫瘍免疫反応を刺激するために光増感剤を活性化するように1又は2以上の波長の光放射を送達する工程;
e)一定期間、他の身体組織による治療中の過剰増殖組織での光増感剤補充を可能とする工程;
f)宿主の腫瘍免疫反応の刺激のために補充された光増感剤を活性化するように1又は2以上の波長の光放射を送達する工程;及び
g)適切な期間経過後、長期間の抗腫瘍制御のためにa−fの工程を複数回繰り返す工程;
を含む腫瘍特異的免疫反応を引き起こす長期間の腫瘍制御のための腫瘍及び過形成を治療する方法。
【請求項17】
a)経口投与の形態における疎水性光増感剤の適切な量を選択する工程;
b)製剤を単回又は複数回経口投与する工程;
c)一定期間、消化管の適切な部位での薬物吸収及び感染組織での光増感剤の選択的蓄積を可能とする工程;
d)治療領域に蓄積された光増感剤を活性化するように1又は2以上の波長の光放射を送達する工程;
e)一定期間、他の身体組織による治療中の感染組織での光増感剤補充を可能とする工程;
f)補充された光増感剤を活性化するように1又は2以上の波長の光放射を送達する工程;及び
g)適切な期間経過後、長期間の抗菌制御のためにa−fの工程を複数回繰り返す工程;
を含む細菌、原生動物、ウイルス、及びプリオン感染症又は他の医学的コンディションを治療する方法。
【請求項18】
前記選択された疎水性光増感剤は、サフラニンOである、
ことを特徴とする請求項17に記載の感染症及び他の医学的コンディションを治療する方法。
【請求項19】
前記送達する力は、間欠的方法及び腔内において行われる、
ことを特徴とする請求項17に記載の感染症及び他の医学的コンディションを治療する方法。
【請求項20】
前記工程a)の選択は、テトラピロール及びその誘導体の群由来である、
ことを特徴とする請求項15又は16に記載の腫瘍、過形成、他の医学的/美容上のコンディションを治療する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−525411(P2012−525411A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508649(P2012−508649)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/032780
【国際公開番号】WO2010/129340
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(502359666)セラムオプテック インダストリーズ インコーポレーテッド (20)
【Fターム(参考)】