説明

経口投与剤及び経口投与剤保持体

【課題】服用の容易性及び安全性を向上させた経口投与剤(特にフィルム状の経口投与剤)を提供する。
【解決手段】複数層の投与すべき薬物を含有する薬物含有層11と、その薬物を含有せず水膨潤性ゲル形成剤を含有する水膨潤性ゲル形成層12とを有する経口投与剤1dであって、薬物含有層11同士が、熱融着可能な接着剤を含む中間層13を介して熱融着されており、水膨潤性ゲル形成層12が、経口投与剤1dの最外層に設けられている経口投与剤1d。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口投与剤及び経口投与剤保持体に関する。
【背景技術】
【0002】
経口投与剤は、薬物の苦味や渋味等による不快感、服薬による嘔気や嘔吐、服薬拒否等によって服薬コンプライアンスが低下する場合がある。そのため、種々の剤型の経口投与剤が開発されている。
【0003】
経口投与剤の一般的な剤型としては、錠剤やカプセル剤等の固形製剤が用いられている。しかしながら、これらの固形製剤は、そのままでは飲み込み難いため、通常は多量の水とともに服用しなければならず、多量の水とともに服用したとしても、やはり飲み込み難い場合もある。したがって、服薬コンプライアンスが低下する場合がある。また、固形製剤を誤って気管に詰まらせてしまう場合や、固形製剤が食道に貼り付き、その部分に食道腫瘍が形成してしまう場合がある。
【0004】
特に高齢者や幼児においては、固形製剤を飲み込むことができない場合があり、投薬コンプライアンスの低下が多く見られる。また、寝たきりの患者においては、固形製剤を口腔内に入れた後、ゆっくりと水を与え、しばらくした後、介護者が自らの指で患者の口腔内を探り、固形製剤が残っていないことを確認しなければならず、服用したか否かを確認する作業の負担が大きい。
【0005】
このような固形製剤の飲み込み難さを改善し、その服用の容易性や安全性を向上させるには、剤型をゼリーのような半固形状とすることが考えられる。しかしながら、ゼリーのような半固形製剤は、水分を多量に含むため、薬物(特に加水分解しやすい薬物)の安定性が低下する、製造時及び保存時の無菌的取り扱いが困難である、包装コストがかかる、といった問題点があるため、その実現は困難である。
【0006】
一方、経口投与剤をフィルム状製剤(シート状製剤)に加工することによって、製剤中の水分含有量を低く抑えることができるので、薬物(特に加水分解しやすい薬物)の安定性を向上させることができるとともに、取り扱いが容易となり、さらには包装コストの軽減を図ることが可能となる。
【0007】
このようなフィルム状製剤としては、口腔内において速やかに分解又は溶解させることを目的としたフィルム状製剤(特開平7−100186号、特開平5−220203号、特開平11−116469号)や、微量な薬物の取り扱いを容易にすることを目的としたフィルム状製剤(特開平5−124954号)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−100186号公報
【特許文献2】特開平5−220203号公報
【特許文献3】特開平11−116469号公報
【特許文献4】特開平5−124954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これらのフィルム状製剤は、服用の容易性や安全性、フィルム状製剤の強度などの点における改良が不十分である。
【0010】
例えば、口腔内において速やかに分解又は溶解させることを目的とした上記フィルム状製剤では、製剤を飲み込む前に薬物が口腔内に速やかに広がり、薬物の味(例えば苦味、渋味)や臭いによる服薬コンプライアンスの低下が起こってしまう。したがって、苦味等を有する薬物を用いる場合には、マイクロカプセル化等の処理が必要となる。
【0011】
また、口腔内において速やかに分解又は溶解させることを目的とした上記フィルム状製剤では、寝たきりの患者における服用の確認を視覚的に行なうことができないため、従来の固形製剤と同様に、患者の口腔内を探ることにより行なわなければならず、服用の確認作業の負担が大きい。
【0012】
また、上記フィルム状製剤の多くが、薬物とフィルム形成に必要な成分(例えばフィルム形成剤)とを混合してフィルム状製剤を製造しているため、フィルム状製剤における薬物の含有量が増加すれば、それだけフィルム形成に必要な成分の含有量が減少し、フィルム状製剤の強度が低下してしまう。
【0013】
また、微量な薬物の取り扱いを容易にすることを目的としたフィルム状製剤では、製剤に含有し得る薬物の種類が限定されてしまう。
【0014】
そこで、本発明の第一の目的は、服用の容易性及び安全性を向上させた経口投与剤(特にフィルム状の経口投与剤)を提供することにある。
【0015】
また、本発明の第二の目的は、広範な種類の薬物を含有することができるフィルム状の経口投与剤を提供することにある。
【0016】
さらに、本発明の第三の目的は、薬物の味(例えば苦味、渋味)や臭いによる投薬コンプライアンスの低下を防止することができる経口投与剤(特にフィルム状の経口投与剤)を提供することにある。
【0017】
さらに、本発明の第四の目的は、経口投与剤の取り扱い(例えば経口投与剤の所持、保管など)を容易にすることができる経口投与剤保持体を提供することにある。
【0018】
さらに、本発明の第五の目的は、経口投与剤の投与を容易に行なうことができる経口投与剤保持体を提供することにある。
【0019】
さらに、本発明の第六の目的は、経口投与剤の服用の有無を容易に確認することができる経口投与剤保持体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の経口投与剤を提供する。
(1)投与すべき薬物を含有する薬物含有層と、前記薬物を含有せず水膨潤性ゲル形成剤を含有する水膨潤性ゲル形成層とを有する経口投与剤であって、前記水膨潤性ゲル形成層が、前記経口投与剤の最外層に設けられていることを特徴とする前記経口投与剤。
(2)前記経口投与剤が、フィルム状製剤であることを特徴とする前記(1)記載の経口投与剤。
(3)前記水膨潤性ゲル形成剤が、カルボキシビニルポリマー、デンプン及びその誘導体、寒天、アルギン酸、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、デキストラン、ペクチン、ジェランガムおよびキサンタンガムから選択された少なくとも1種であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の経口投与剤。
(4)前記水膨潤性ゲル形成層が、さらに、フィルム形成剤を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の経口投与剤。
(5)前記フィルム形成剤が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシアルキルセルロースおよびアルキルセルロースから選択された少なくとも1種であることを特徴とする前記(4)記載の経口投与剤。
(6)前記水膨潤性ゲル形成層中の前記水膨潤性ゲル形成剤の含有量が15〜70重量%であって、前記水膨潤性ゲル形成層中の前記フィルム形成剤の含有量が30〜85重量%であることを特徴とする前記(4)または(5)に記載の経口投与剤。
(7)前記水膨潤性ゲル形成層が、前記薬物含有層に含有される薬物の味及び/又は臭いをマスキングし得ることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の経口投与剤。
(8)複数層の投与すべき薬物を含有する薬物含有層と、前記薬物を含有せず水膨潤性ゲル形成剤を含有する水膨潤性ゲル形成層とを有する経口投与剤であって、前記薬物含有層同士が、熱融着可能な接着剤を含む中間層を介して熱融着されており、前記水膨潤性ゲル形成層が、前記経口投与剤の最外層に設けられていることを特徴とする前記経口投与剤。
(9)前記熱融着可能な接着剤が、酢酸ビニルのホモポリマーまたは酢酸ビニルとビニルピロリドンとのコポリマーであることを特徴とする前記(8)記載の経口投与剤。
(10)前記経口投与剤が、フィルム状製剤であることを特徴とする前記(8)または(9)に記載の経口投与剤。
(11)前記水膨潤性ゲル形成剤が、カルボキシビニルポリマー、デンプン及びその誘導体、寒天、アルギン酸、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、デキストラン、ペクチン、ジェランガムおよびキサンタンガムから選択された少なくとも1種であることを特徴とする前記(8)〜(10)のいずれかに記載の経口投与剤。
(12)前記水膨潤性ゲル形成層が、さらに、フィルム形成剤を含有することを特徴とする前記(8)〜(11)のいずれかに記載の経口投与剤。
(13)前記フィルム形成剤が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシアルキルセルロースおよびアルキルセルロースから選択された少なくとも1種であることを特徴とする前記(12)記載の経口投与剤。
(14)前記水膨潤性ゲル形成層中の前記水膨潤性ゲル形成剤の含有量が15〜70重量%であって、前記水膨潤性ゲル形成層中の前記フィルム形成剤の含有量が30〜85重量%であることを特徴とする前記(12)または(13)に記載の経口投与剤。
(15)前記水膨潤性ゲル形成層が、前記薬物含有層に含有される薬物の味及び/又は臭いをマスキングし得ることを特徴とする前記(8)〜(14)のいずれかに記載の経口投与剤。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、薬物含有層が一層設けられる場合における本発明の経口投与剤の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図2は、薬物含有層が一層設けられる場合における本発明の経口投与剤の別の実施形態を示す断面図である。
【図3】図3は、薬物含有層が一層設けられる場合における本発明の経口投与剤の別の実施形態を示す断面図である。
【図4】図4は、薬物含有層が二層設けられる場合における本発明の経口投与剤の一実施形態を示す断面図である。
【図5】図5は、薬物含有層が三層設けられる場合における本発明の経口投与剤の一実施形態を示す断面図である。
【図6】図6は、図1に示す経口投与剤の投与時の態様を示す断面図である。
【図7】図7(a)は、本発明の経口投与剤保持体の一実施形態を示す上面図であり、図7(b)は同実施形態を示す断面図である。
【図8】図8(a)は本発明の経口投与剤保持体の別の実施形態を示す上面図であり、図8(b)は同実施形態を示す断面図である。
【図9】図9(a)は本発明の経口投与剤保持体のさらに別の実施形態を示す上面図であり、図9(b)は同実施形態を示す断面図である。
【図10】図10(a)は本発明の経口投与剤保持体のさらに別の実施形態を示す上面図であり、図10(b)は同実施形態を示す断面図である。
【図11】図11は、本発明の経口投与剤の製造方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の経口投与剤は、薬物含有層と水膨潤性ゲル形成層とを有する。本発明の経口投与剤は、薬物含有層及び水膨潤性ゲル形成層以外の層を有していてもよいし、薬物含有層及び水膨潤性ゲル形成層のみから構成されていてもよい。
【0023】
本発明の経口投与剤は、複数の層が積層して構成される層状の薬剤であるが、その形状は、フィルム状製剤(シート状製剤)のように扁平状のものに限定されるものではなく、層状である限り、いかなる形状であってもよい。例えば、扁平状のものを折り畳んだ形状であってもよい(図6参照)。
【0024】
本発明の経口投与剤は、フィルム状製剤であることが好ましい。フィルム状製剤に加工することによって、製剤中の水分含有量を低く抑えることができるので、製剤中に含有される薬物(特に加水分解しやすい薬物)の安定性を向上させることができる。また、製剤の取り扱いが容易となるとともに、包装コストの軽減を図ることができる。
【0025】
本発明の経口投与剤がフィルム状である場合には、薬物含有層及び水膨潤性ゲル形成層以外の層として、フィルム厚を調整するための層を設けてもよい。このような層を設けてフィルム厚を増加させることによって、本発明の経口投与剤の取り扱い易さを改善することができる。
【0026】
本発明の経口投与剤において、「薬物含有層」とは、投与すべき薬物を含有する層を意味する。薬物含有層の厚さは、経口投与し得る厚さの範囲内において、薬物含有量などに応じて適宜調節し得るが、フィルム状製剤とする場合には、薬物含有層の厚さが0.1〜1000μmであることが好ましく、10〜200μmであることがさらに好ましい。薬物含有層の厚さが0.1μm未満であると精度よくフィルム化することが困難となる(すなわち、薬物含有層中の薬物含有量にバラツキが生じる)一方、薬物含有層の厚さが1000μmを超えるとフィルムのコシが強くなり服用し難くなるからである。
【0027】
薬物含有層は、本発明の経口投与剤に一層のみ設けられていてもよいし、複数層設けられていてもよい。本発明の経口投与剤に薬物含有層を複数層設ける場合には、薬物含有層同士を直接積層させてもよいし、中間層を介して積層させてもよい。また、横並びに形成された複数の薬物含有層によって、一層の薬物含有層が形成されていてもよい(図3参照)。
【0028】
薬物含有層は、投与すべき薬物のみからなっていてもよいが、通常、投与すべき薬物を所望の状態で薬物含有層に保持するための基剤として、薬学的に許容され得る賦形剤、結合剤、崩壊剤などの添加剤を含有する。また、薬物含有層には、後述するマスキング剤、着色剤などを含有させてもよい。
【0029】
薬物含有層に薬物とともに含有される基剤は特に限定されず、添加目的に応じて適宜選択することができる。薬物含有層に含有される基剤の具体例としては、例えば、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース等のセルロース及びその誘導体又はそれらの薬学的に許容される塩(例えばナトリウム塩);α−デンプン、酸化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、デキストリン、デキストラン等のデンプン及びそれらの誘導体;白糖、麦芽糖、乳糖、ブドウ糖、果糖、プルラン、キサンタンガム、シクロデキストリン等の糖類;キシリトール、マンニトール、ソルビトール等の糖アルコール類;メタアクリル酸ジメチルアミノエチル・メタアクリル酸コポリマー、メタアクリル酸・アクリル酸エチルコポリマー、メタアクリル酸・メタアクリル酸メチルコポリマー、メタアクリル酸エチル・メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムコポリマー、メタアクリル酸ジメチルアミノエチル・メタアクリル酸塩化メチルコポリマー、メタアクリル酸・アクリル酸塩化エチルコポリマー等のアクリル酸誘導体;シエラック;ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート;酢酸ビニル;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;アラビアゴム、トラガカントゴム等の天然ゴム類;キチン、キトサン等のポリグルコサミン類;ゼラチン、カゼイン、ダイズ蛋白等の蛋白質;酸化チタン;リン酸一水素カルシウム;炭酸カルシウム;タルク;ステアリン酸塩;メタケイ酸アルミン酸マグネシウム;ケイ酸マグネシウム;無水ケイ酸等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
薬物含有層に含有される基剤は、可食性高分子であることが好ましい。可食性高分子は、合成高分子及び天然高分子のいずれであってよく、その種類は特に限定されるものではない。
【0031】
可食性高分子は、胃溶性高分子または腸溶性高分子が好ましい。
可食性高分子のうち、好ましいものとしては、セルロース及び/又はセルロース誘導体が挙げられ、特に好ましいものとしては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等が挙げられる。ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートは、フィルム形成性に優れているため、薬物含有層をフィルム状とする場合に特に有用である。薬物含有層をフィルム状とすることによって、本発明の経口投与剤を全体としてフィルム状とすることが可能となる。
【0032】
薬物含有層における可食性高分子の含有量は、層を形成することが可能となる量であり、その量は可食性高分子の種類等に応じて適宜調節し得るが、薬物含有層の通常20重量%以上、好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上である。可食性高分子が20重量%未満であると薬物含有層の形成が不十分となる。なお、薬物含有層における可食性高分子の含有量の上限値は、100重量%から薬物含有層に含有される薬物の最小含有量を差し引いた値であり、薬物の種類等に応じて適宜設定される。
【0033】
薬物含有層に含有される薬物は、患者等に投与すべき薬物であり、経口投与し得る薬物であれば特に限定されない。経口投与し得る薬物として、例えば、中枢神経に作用する薬物としては、アモバルビタール、エスタゾラム、トリアゾラム、ニトラゼパム、ペントバルビタール等の催眠薬;塩酸アミトリプチン、塩酸イミプラミン、オキサゾラム、クロルジアゼポキシド、クロルプロマジン、ジアゼパム、スルピリド、ハロペリドール等の向精神薬;トリヘキシフェニジル、レボドパ等の抗パーキンソン薬;アスピリン、イソプロピルアンチピリン、インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸、ストレプトキナーゼ、ストレプトドルナーゼ、セラペプターゼ、プロナーゼ等の鎮痛薬および抗炎症薬;ATP、ビンポセチン等の中枢神経代謝賦活薬;呼吸器に作用する薬物としては、カルボシステイン、塩酸プロムヘキシン等の去痰薬;塩酸アゼラスチン、オキサトミド、テオフィリン、硫酸テルブタリン、トラニラスト、塩酸プロカテロール、フマル酸ケトチフェン等の抗喘息薬;循環器系に作用する薬物としては、アミノフィリン、ジギトキシン、ジゴキシン等の強心薬;アジマリン、ジソピラミド、塩酸プロカインアミド、塩酸メキシレチン等の抗不整脈薬;亜硝酸アミル、塩酸アルプレノロール、硝酸イソソルビド、ニコランジル、オキシフェドリン、ジピリダモール、塩酸ジラゼプ、塩酸ジルチアゼム、ニトログリセリン、ニフェジピン、塩酸ベラパミル等の抗狭心症薬;カリジノゲナーゼ等の末梢血管拡張薬;アテノロール、カプトプリル、塩酸クロニジン、酒石酸メトプロロール、スピロノラクトン、トリアムテレン、トリクロルメチアジド、ニカルジピン、塩酸ヒドララジン、ヒドロクロロチアジド、塩酸プラゾシン、フロセミド、塩酸プロプラノロール、マレイン酸エナラプリル、メチルドパ、塩酸ラベタロール、レセルピン等の抗高血圧薬;クロフィブラート、デキストラン硫酸、ニコモール、ニセリトロール等の抗動脈硬化薬;血液および造血作用薬として、カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム、トラネキサム酸等の止血薬;塩酸チクロピジン、ワルファリンカリウム等の抗血栓症薬;硫酸鉄等の貧血治療薬;消化器系に作用する薬物として、アズレン、アルジオキサ、シメチジン、塩酸ラニチジン、ファモチジン、テプレノン、レバミピド等の抗潰瘍薬;ドンペリドン、メトクロプラミド等の制吐剤;センノシド等のしゃ下薬;消化酵素製剤;グリチルリチン、肝臓エキス製剤等の肝疾患治療薬;代謝性疾患に作用する薬物として、グリベンクラミド、クロルプロパミド、トルブタミド等の抗糖尿病薬;アロプリノール、コルヒチン等の痛風治療薬;眼科領域の薬物として、アセタゾラミド;耳鼻科領域の薬物として、塩酸ジフェニドール、メシル酸ベタヒスチン等の抗めまい薬;化学療法薬および抗生物質として、イソニアジド、塩酸エタンブトール、オフロキサシン、ステアリン酸エリスロマイシン、セファクロル、ノルフロキサシン、ホスホマイシンカルシウム、塩酸ミノサイクリン、リファンピシン、ロキタマイシン等;抗悪性腫瘍薬として、シクロホスファミド、テガフール等;免疫抑制薬として、アザチオプリン等;ホルモン類および内分泌治療薬として、黄体ホルモン、唾液腺ホルモン、チアマゾール、プレドニゾロン、ベタメタゾン、リオチロニン、レボチロキシン等;生体内活性物質(オータコイド)として、フマル酸クレマスチン、D−マレイン酸クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン薬;アルファカルシドール、コバマミド、ニコチン酸トコフェロール、メコパラミン等のビタミン等が挙げられる。
【0034】
薬物含有層における薬物の含有量は特に限定されず、薬物の種類に応じて適宜調節することができるが、薬物含有層の通常80重量%以下、好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。薬物の含有量が80重量%を越えるとフィルム状製剤のフィルム強度が低下する。なお、薬物含有層中の薬物含有量の下限値は、薬物含有層に含有させる薬物の種類に応じて適宜設定され、通常は0.001重量%程度である。
【0035】
薬物含有層には、投与量が微量な薬物から大量な薬物まで広範な種類の薬物を含有させることができる。ここで、投与量が微量とは1回の投与量が1mg以下を意味し、投与量が大量とは1回の投与量が300mg以上を意味する。
【0036】
本発明の経口投与剤がフィルム状製剤である場合にも、薬物含有層には、投与量が微量な薬物から大量な薬物まで広範な種類の薬物や、フィルム強度の低下を招きやすい不溶性でかさ高い薬物を含有させることができる。これは、薬物含有層と水膨潤性ゲル形成層とが別々の層として形成されているので、薬物含有層の薬物含有量が増加して薬物含有層のフィルム強度が低下しても、水膨潤性ゲル形成層にフィルム形成性を付与することによってフィルム状製剤全体としての強度を保持することができるからである。したがって、本発明のフィルム状の経口投与剤は、投与量が大量な薬物やかさ高い薬物を投与するときに特に有用である。
【0037】
本発明の経口投与剤において、「水膨潤性ゲル形成層」とは、水膨潤性ゲル形成剤を含有し、水分により膨潤してゲルを形成し得る層を意味する。水膨潤性ゲル形成層の厚さは、経口投与し得る厚さの範囲内において適宜調節し得るが、フィルム状製剤とする場合には、10〜1000μmであることが好ましく、20〜500μmであることがさらに好ましい。水膨潤性ゲル形成層の厚さが10μm未満であるとゲル形成が不十分となり、水膨潤性ゲル形成層による薬物の味及び/又は臭いのマスキングが不十分なものとなる一方、水膨潤性ゲル形成層の厚さが1000μmを超えると患者等の口腔内に投与したときに唾液だけでは十分に膨潤してゲルを形成することができず、服用し難くなる。
【0038】
水膨潤性ゲル形成剤は、水分により膨潤してゲルを形成し得る限り、その種類は特に限定されるものではなく、架橋されたものであっても架橋されていないものであってもよい。水膨潤性ゲル形成剤の具体例としては、カルボキシビニルポリマー、デンプン及びその誘導体、寒天、アルギン酸、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、セルロース及びその誘導体、カラゲーン、デキストラン、トラガカント、ゼラチン、ペクチン、ヒアルロン酸、ジェランガム、コラーゲン、カゼイン、キサンタンガム等が挙げられる。
【0039】
これらの水膨潤性ゲル形成剤のうち、架橋化カルボキシビニルポリマーが好ましく、架橋化ポリアクリル酸が特に好ましい。架橋化カルボキシビニルポリマー、特に架橋化ポリアクリル酸は、フィルム形成剤のフィルム形成能に悪影響を及ぼさず、膨潤時に程よいゲル強度を示すことができる。
【0040】
架橋化は、架橋される分子の種類に応じた架橋剤によって行なうことができる。カルボキシビニルポリマーは、例えば、多価金属化合物によって架橋することができる。このような多価金属化合物の具体例としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、カリミョウバン、塩化鉄ミョウバン、アンモニウムミョウバン、硫酸第二鉄、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、クエン酸鉄、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、硫酸亜鉛等が挙げられる。
【0041】
本発明の経口投与剤をフィルム状製剤とする場合には、水膨潤性ゲル形成層をフィルム状とする必要があり、この場合には、水膨潤性ゲル形成層のフィルム形成性を向上させるために、水膨潤性ゲル形成層にフィルム形成剤を含有させることが好ましい。
【0042】
フィルム形成剤は、フィルム形成能を有する限り、その種類は特に限定されるものでない。フィルム形成剤の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルフタレート、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース)、アルキルセルロース(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース)、カルボキシアルキルセルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)、(メタ)アクリル酸およびそのエステル、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸等が挙げられる。
【0043】
フィルム形成剤は水溶性であることが好ましい。フィルム形成剤が水溶性である場合には、水膨潤性ゲル形成層に水分が浸入しやすくなり、口腔内において水膨潤性ゲル形成層の膨潤及びゲル形成を速やかに生じさせることができる。
【0044】
水溶性のフィルム形成剤としては、例えば、ポリビニルアルコール;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;ポリビニルピロリドン;キサンタンガム;カラギーナン;アルギン酸等が挙げられる。
【0045】
水湿潤性ゲル形成層には、水湿潤性ゲル形成層に適度な柔軟性を付与するために、可塑剤を含有させてもよい。可塑剤としては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンおよびソルビトール、グリセリントリアセテート、フタル酸ジエチルおよびクエン酸トリエチル、ラウリル酸、ショ糖、ソルビトール等が挙げられる。なお、このような可塑剤は、水膨潤性ゲル形成層の他、薬物含有層や後述する中間層に含有させてもよい。
【0046】
また、水膨潤性ゲル形成層には、薬物含有層に含有される薬物の味や匂いをマスキングするためのマスキング剤を含有させてもよい。水膨潤性ゲル形成層がマスキング剤を含有することによって、水膨潤性ゲル形成層による薬物の味や臭いのマスキング効果が向上させることができ、これによって服薬コンプライアンスの低下を効率よく防止することができる。
【0047】
マスキング剤としては、例えば、クエン酸、酒石酸、フマル酸等の酸味を与えるもの、サッカリン、グリチルリチン酸、白糖、果糖、マンニトール等の甘味剤、メントール、ハッカ油、ペパーミント、スペアミント等の清涼化剤、天然又は合成の香料等を使用することができる。
【0048】
水膨潤性ゲル形成層にフィルム形成剤としてポリビニルアルコール等が含有されている場合には、これらのフィルム形成剤がマスキング剤としての役割も果たすことができる。このように、マスキング作用を有するフィルム形成剤を使用することが好ましく、同様にマスキング作用を有する水膨潤性ゲル形成剤を使用することが好ましい。
【0049】
また、水膨潤性ゲル形成層には、ヒドロキシ安息香酸メチルおよびプロピル等の防腐剤や、食用レーキ着色剤等の着色剤等を含有させてもよい。
【0050】
これらの添加剤の混入は、一般的に、フィルム状に形成された水湿潤性ゲル形成層の強度を減少させるので、これによって水膨潤性ゲル形成層に水分が浸入しやすくなり、水膨潤性ゲル形成層に浸入した水分により水膨潤性ゲル形成剤の膨潤及びゲル形成が生じやすくなる。
【0051】
本発明の経口投与剤において、水膨潤性ゲル形成層は最外層に設けられる。
【0052】
水膨潤性ゲル形成層は、本発明の経口投与剤の最外層に設けられる限り、本発明の経口投与剤の全面(又はほぼ全面)に設けられていてもよいし、その一部の面に設けられていてもよいが、水膨潤性ゲル形成層による効果(服用の容易性及び安全性の向上、服薬コンプライアンスの低下防止など)を効率よく発揮させる点から、水膨潤性ゲル形成層が本発明の経口投与剤の全面(又はほぼ全面)に設けられていることが好ましい。例えば、本発明の経口投与剤がフィルム状製剤である場合には、フィルム状製剤の外面を構成する二面のうちの一面又は両面を水膨潤性ゲル形成層とすることができるが、両面を水膨潤性ゲル形成層とすることが好ましい。
【0053】
ここで、「最外層」とは、本発明の経口投与剤が患者等の口腔内にあるときに本発明の経口投与剤の外面を構成する層を意味する。したがって、「最外層」には、投与前において本発明の経口投与剤の外面を構成する層はもちろん、投与前においては本発明の経口投与剤の外面を構成しないが、患者等の口腔内にあるときに本発明の経口投与剤の外面を構成する層も含まれる。例えば、水膨潤性ゲル形成層のさらに外層として別の層が設けられている場合であっても、この外層が、患者等の口腔内では唾液等の水分によって分解又は溶解してしまう場合、患者の口腔内においては水膨潤性ゲル形成層が本発明の経口投与剤の外面を構成することとなるので、水膨潤性ゲル形成層は本発明の経口投与剤の最外層に設けられていることになる。
【0054】
水膨潤性ゲル形成層は、本発明の経口投与剤が患者等の口腔内にあるときに本発明の経口投与剤の外面を構成する限り、本発明の経口投与剤に一層のみ設けられていてもよいし、複数層設けられていてもよい。
【0055】
本発明の経口投与剤に薬物含有層が一層設けられる場合には、例えば、水膨潤性ゲル形成層を、薬物含有層の一方又は両方の面に直接又は中間層を介して設けることができる。薬物含有層が一層設けられる場合の剤型の一実施形態を図1に示す。図1に示すように、経口投与剤1aは、1つの薬物含有層11と1つの水膨潤性ゲル形成層12とを有しており、水膨潤性ゲル形成層12は、薬物含有層11の一方の面に直接設けられている。
【0056】
また、薬物含有層が一層設けられる場合の別の実施形態を図2に示す。図2に示すように、経口投与剤1bは、1つの薬物含有層11と2つの水膨潤性ゲル形成層12とを有しており、水膨潤性ゲル形成層12は、薬物含有層11の両方の面に直接設けられている。
【0057】
また、薬物含有層が一層設けられる場合の別の実施形態を図3に示す。図3に示すように、経口投与剤1cは、横並びに形成された薬物含有層11a及び薬物含有層11bからなる1つの薬物含有層11と、2つの水膨潤性ゲル形成層12とを有しており、水膨潤性ゲル形成層12は、薬物含有層11の両方の面に直接設けられている。
【0058】
本発明の経口投与剤に薬物含有層が複数層設けられる場合には、例えば、水膨潤性ゲル形成層を、最も外側に位置する薬物含有層の外面(中間層又は他の薬物含有層と接している面と反対側の面)に直接又は中間層を介して設けることができる。薬物含有層が複数層設けられる場合の剤形の一実施形態を図4に示す。図4に示すように、経口投与剤1dは、2つの薬物含有層11と2つの水膨潤性ゲル形成層12と1つの中間層13とを有しており、2つの薬物含有層11は中間層13を介して積層されており、2つの薬物含有層11の外面(中間層13に接している面と反対側の面)にはそれぞれ水膨潤性ゲル形成層12が直接設けられている。
【0059】
また、薬物含有層が複数層設けられる場合の別の実施形態を図5に示す。図5に示すように、経口投与剤1eは、3つの薬物含有層11と2つの水膨潤性ゲル形成層12と2つの中間層13とを有しており、3つの薬物含有層11は中間層13を介して積層されており、3つの薬物含有層11のうち最も外側に位置する薬物含有層11(図5において最上の薬物含有層と最下の薬物含有層)の外面(中間層13に接している面と反対側の面)にはそれぞれ水膨潤性ゲル形成層12が直接設けられている。
【0060】
図1〜図5に示す経口投与剤1a〜1eにおいて、水膨潤性ゲル形成層12が中間層を介して薬物含有層11に設けられていてもよい。
【0061】
本発明の経口投与剤を構成する層間(例えば、薬物含有層と水膨潤性ゲル形成層との間、薬物含有層と薬物含有層の間、水膨潤性ゲル形成層又は薬物含有層と保持基材との間)には中間層を設けることができ、中間層の成分は目的に応じて適宜選択し得る。例えば、層と層との接着を目的として中間層を設ける場合には、薬学的に許容され得る接着剤が含有される。このような接着剤のうち、溶媒を含んだ状態で用いることによって接着性を示す接着剤の具体例としては、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸又はその薬学的に許容される非毒性塩、アクリル酸共重合体又はその薬学的に許容される塩、カルボキシメチルセルロース及びナトリウム塩等の親水性セルロース誘導体、プルラン、ポビドン、カラヤガム、ペクチン、キサンタンガム、トラガント、アルギン酸、アラビアゴム、酸性多糖類又はその誘導体若しくはその薬学的に許容される塩等が挙げられ、加熱によって接着性を示す(すなわち熱融着可能な)接着剤の具体例としては、酢酸ビニルのホモポリマー、酢酸ビニルとビニルピロリドンとのコポリマー等が挙げられる。
【0062】
本発明の経口投与剤は、水膨潤性ゲル形成層が最外層に設けられているので、患者等の口腔内において水膨潤性ゲル形成層が唾液等の水分により膨潤してゲル形成する。これによって、本発明の経口投与剤は、飲み込みやすい大きさ、形状、弾力、粘度等を有する剤形に変化し、容易に服用することができるとともに、患者等の気管に詰まる危険性が低下し、老人や乳幼児でも安全に服用することができる。また、唾液が少なく水膨潤性ゲル形成層が十分に膨潤及びゲル形成しない患者等の場合には、少量の水とともに服用させたり、投与前に予め水に浸したりすることで同様の効果を発揮させることができる。このときに必要となる水は、錠剤、カプセル剤等の固形製剤を服用するときに必要となる水と比べて非常に少量である。
【0063】
また、本発明の経口投与剤は、水膨潤性ゲル形成層が最外層に設けられているので、経口投与剤の外面全体(又はほぼ全体)を水膨潤性ゲル形成層で覆った状態で患者等に投与することができ、これによって、薬物含有層に含有される薬物の味(例えば苦味、渋味)や臭いがマスキングされ、服薬コンプライアンスの低下を防止することができる。例えば、図1に示す剤型の場合には、図6に示すように、経口投与剤1aの外面全体(又はほぼ全体)が水膨潤性ゲル形成層12で覆われるように、経口投与剤1aを2つに折り曲げて投与することによって、薬物含有層11に含有される薬物の味や臭いをマスキングすることができる。また、図2〜5に示す剤型の場合には、経口投与剤1b〜1eの外面全体(ほぼ全体)が水膨潤性ゲル形成層12で覆われているので、そのまま投与すれば、薬物含有層11に含有される薬物の味や臭いをマスキングすることができる。
【0064】
本発明の経口投与剤は、保持基材に保持することができる。保持基材と本発明の経口投与剤とを有する経口投与剤保持体において、本発明の経口投与剤は、保持基材に直接又は中間層を介して設けられる。このように本発明の経口投与剤を保持基材に保持させることによって、本発明の経口投与剤の取り扱い(例えば、経口投与剤の所持、保管等)が容易となる。また、保持基材に本発明の経口投与剤を形成することによって、本発明の経口投与剤の製造が容易となる。
【0065】
本発明の経口投与剤保持体の一実施形態を図7に示す。なお、図7(a)は同実施形態に係る経口投与剤保持体の上面図、図7(b)は同実施形態に係る経口投与剤保持体の断面図である。
【0066】
図7に示す経口投与剤保持体3aは、シート状の保持基材2上に薬物含有層11と水膨潤性ゲル形成層12とからなる経口投与剤1aを有しており、経口投与剤1aの薬剤含有層11は水膨潤性ゲル形成層12を介してシート状の保持基材2の一方の面に設けられている。経口投与剤保持体3aにおいて、経口投与剤1aはシート状の保持基材2の両方の面に設けられていてもよい。また、図7に示す経口投与剤保持体3aでは、シート状の保持基材2に保持される経口投与剤1aの個数が6個であるが、その個数は適宜変更可能である。
【0067】
また、本発明の経口投与剤保持体の別の実施形態を図8に示す。なお、図8(a)は同実施形態に係る経口投与保持体の上面図、図8(b)は同実施形態に係る経口投与保持体の断面図である。
【0068】
図8に示す経口投与剤保持体3bは、シート状の保持基材2上に、薬物含有層11が水膨潤性ゲル形成層12に挟持されるように構成された経口投与剤1bとを有しており、経口投与剤1bは水膨潤性ゲル形成層12を介してシート状の保持基材2の一方の面に設けられている。経口投与剤保持体3bにおいて、経口投与剤1bはシート状の保持基材2の両方の面に設けられていてもよい。また、図8に示す経口投与剤保持体3bでは、シート状の保持基材2に保持される経口投与剤1bの個数が6個であるが、その個数は適宜変更可能である。
【0069】
本発明の経口投与剤保持体において、保持基材の材質は、成形可能である限り特に限定されるものではなく、患者等の口腔内で溶解しない非溶解性材料及び患者等の口腔内で溶解する溶解性材料のいずれを使用してもよい。非溶解性材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル等のプラスチック、又は紙等を使用することができる。また、溶解性材料としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース)、アルキルセルロース(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース)、カルボキシアルキルセルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)、(メタ)アクリル酸およびそのエステル、カルボキシビニルポリマー、デンプン及びその誘導体、寒天、アルギン酸、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、セルロース及びその誘導体、カラゲーン、デキストラン、トラガカント等の可食性高分子を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0070】
保持基材の形状は特に限定されるものではないが、好ましくはシート状であり、さらに好ましくは、シート状の保持基材が、把持部と口腔内挿入部とを有しており、口腔内挿入部には本発明の経口投与剤が設けられている。
【0071】
把持部と口腔内挿入部とを有するシート状の保持基材を備えた経口投与剤保持体の一実施形態を図9に示す。なお、図9(a)は同実施形態に係る経口投与剤保持体の上面図、図9(b)は同実施形態に係る経口投与剤保持体の断面図である。
【0072】
図9に示す経口投与剤保持体3cは、把持部21及び口腔内挿入部22を有する保持基材2と、保持基材2の口腔内挿入部22に保持された経口投与剤1aとを有する。
【0073】
また、把持部と口腔内挿入部とを有するシート状の保持基材を備えた経口投与剤保持体の別の実施形態を図10に示す。なお、図10(a)は同実施形態に係る経口投与剤保持体の上面図、図10(b)は同実施形態に係る経口投与剤保持体の断面図である。
【0074】
図10に示す経口投与剤保持体3dは、把持部21及び口腔内挿入部22を有する保持基材2と、保持基材2の口腔内挿入部22に保持された経口投与剤1bとを有する。経口投与剤保持体3c及び3dの保持基材2は、把持部21と口腔内挿入部22とが一体成形された短冊形状となっている。経口投与剤保持体3c及び3dにおいて、保持基材2に保持された経口投与剤1a及び1bの個数は1個であるが、その個数は適宜変更可能である。
【0075】
保持基材において、把持部と口腔内挿入部とは一体成形されていてもよいし、別々に成形されていてもよい。把持部の形状、構造、大きさ等は、手で握ることができる限り特に限定されず、口腔内挿入部の形状、構造、大きさ等は、本発明の経口投与剤を保持することができ、患者等の口腔内に挿入することができる限り特に限定されない。
【0076】
このように把持部と口腔内挿入部とを有する保持基材を備えた経口投与剤保持体によれば、保持基材の把持部を手で持ち、本発明の経口投与剤が保持された口腔内挿入部を患者等の口腔内に挿入することにより、本発明の経口投与剤を容易に投与することができる。また、口腔内挿入部を患者等の口腔内から引き出し、口腔内挿入部における本発明の経口投与剤の有無を確認することにより、服用したか否かを視覚的に容易に確認することができる。
【0077】
保持基材が口腔内で溶解する溶解性材料から構成されている場合には、本発明の経口投与剤が保持された口腔内挿入部を患者等の口腔内に挿入することにより、口腔内挿入部が患者等の口腔内で溶解して脱落するので、保持基材が口腔内で溶解しない非溶解性材料から構成されている場合と比較して短時間で本発明の経口投与剤を投与することができる。
【0078】
本発明の経口投与剤及び経口投与剤保持体は、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0079】
プラスチックフィルム、台紙等の保持基材の上に、水膨潤性ゲル形成剤及びフィルム形成剤を添加した懸濁液(溶媒は、例えば精製水)を塗布、噴霧等した後、これを乾燥させて水膨潤性ゲル形成層を形成する。形成した水膨潤性ゲル形成層の上面に、薬物及び賦形剤、結合剤、崩壊剤等の添加剤を添加した懸濁液(溶媒は、例えばエタノール)を塗布、噴霧等して乾燥させて薬物含有層を形成させる。その上面にさらに水膨潤性ゲル形成層を形成させる際には、上記と同様にして水膨潤性ゲル形成剤及びフィルム形成剤を添加した懸濁液を塗布、噴霧等した後、これを乾燥させる。このようにして、保持基材の上面に経口投与剤が保持された経口投与剤保持体(例えば図7〜図10に示す経口投与剤保持体)を製造することができる。また、経口投与剤保持体から保持基材を剥がすことによって経口投与剤(例えば図1〜5に示す経口投与剤)を製造することができる。経口投与剤保持体及び経口投与剤は、必要に応じて円形、楕円形、多角形等の任意の形状に打ち抜いてもよいし、スリットを入れてもよい。
【0080】
また、上記と同様にして、プラスチックフィルム、台紙等の保持基材の上に水膨潤性ゲル形成層を形成させ、水膨潤性ゲル形成層の上面に薬物含有層を形成させた後、薬物含有層の上面に、加熱によって接着性を示す接着剤を含有する溶液を塗布、噴霧等して乾燥させて接着剤層を形成させる。これにより、保持基材の上面に水膨潤性ゲル形成層、薬物含有層及び接着剤層が順に積層された薬剤(図11に示す薬剤4)を製造することができる。こうして製造された薬剤4の接着剤層14同士を例えば熱融着させることにより、2つの薬物層11が中間層13を介して積層しており最外層に水膨潤性ゲル形成層12が設けられた経口投与剤1d(図4に示す経口投与剤1d)を製造することができる。この際、熱融着させる一方の薬剤4を保持基材に保持させておくことにより、保持基材の上面に経口投与剤が保持された経口投与剤保持体を製造することができる。
【実施例】
【0081】
以下、製造例及び試験例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0082】
〔製造例1〕経口投与剤及び経口投与剤保持体の製造
(1)胃溶性製剤及びその保持体の製造
水膨潤性ゲル形成層を形成させるために以下の表1に示す組成のA液を調製した。すなわち、精製水45gを取り、その中にポリビニルアルコール(ゴーセノールEG05T(日本合成化学))10.5gを攪拌しながらゆっくりと添加し、70℃に加熱しながら約1時間攪拌して完全に溶解させた。同様に精製水40gを取り、その中にポリアクリル酸(ジュンロンPW−111(日本純薬))4.05gを攪拌しながらゆっくりと添加し、約30分間攪拌して完全に溶解させた。これら2つの溶液を合わせて十分に攪拌した後、塩化カルシウム0.45gを加え、さらに5分間攪拌した。なお、塩化カルシウムが電離して生じるカルシウムイオンによってポリアクリル酸は架橋され、架橋されたポリアクリル酸が水膨潤性ゲル形成剤としての役割を果たし、ポリビニルアルコールはフィルム形成剤としての役割を果たす。
【0083】
[表1]
A 液
ポリビニルアルコール 10.5(g)
ポリアクリル酸 4.05(g)
塩化カルシウム 0.45(g)
精製水 85.0(g)
【0084】
薬物含有層を形成させるために以下の表2に示す組成のB液を調製した。すなわち、エタノール70gを取り、その中にヒドロキシプロピルセルロース(NISSO HPC(SLグレード)日本曹達)22.5gを攪拌しながらゆっくりと添加し、約30分間攪拌して完全に溶解させた。次いで、胃潰瘍薬であるファモチジン7.5gを添加し、さらに約5分間攪拌した。
【0085】
[表2]
B 液
ファモチジン 7.5(g)
ヒドロキシプロピルセルロース 22.5(g)
エタノール 70.0(g)
【0086】
A液を脱泡させた後、この溶液を厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下「PETフィルム」という。)のシリコーン樹脂剥離剤塗布面上に展延、塗布し、80℃で約10分間乾燥させて、厚み約50μmの水膨潤性ゲル形成層を形成させた。次いで、B液を脱泡させた後、この溶液を水膨潤性ゲル形成層の上に展延、塗布し、80℃で約5分間乾燥させて、厚み約70μmの薬物含有層を形成させた。さらに、A液を上記薬物含有層の上に展延、塗布し、80℃で約10分間乾燥させて、厚み約50μmの水膨潤性ゲル形成層を形成させた。このようにして、保持基材である上記PETフィルム上に経口投与剤(水膨潤性ゲル形成層、薬物含有層、水膨潤性ゲル形成層の3層からなるフィルム状製剤)が保持された経口投与剤保持体を製造した(図8参照)。経口投与剤を直径30mmとなるように打ち抜き、以下の試験では経口投与剤をPETフィルムから剥がして使用した。
【0087】
(2)腸溶性製剤及びその保持体の製造
水膨潤性ゲル形成層を形成させるために上記表1に示す組成のA液を上記と同様にして調製した。
【0088】
薬物含有層を形成させるために以下の表3に示す組成のC液を調製した。すなわち、アセトン及びエタノールを各々35gずつ取り、その中にヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(関東化学)22.5gを攪拌しながらゆっくりと添加し、約30分間攪拌して完全に溶解させた。次いで、上記ファモチジン7.5gを添加し、さらに約5分間攪拌した。
【0089】
[表3]
C 液
ファモチジン 7.5(g)
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート 22.5(g)
アセトン 35.0(g)
エタノール 35.0(g)
【0090】
A液を脱泡させた後、この溶液を厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下「PETフィルム」という。)のシリコーン樹脂剥離剤塗布面上に展延、塗布し、80℃で約10分間乾燥させて、厚み約50μmの水膨潤性ゲル形成層を形成させた。次いで、C液を脱泡させた後、この溶液を水膨潤性ゲル形成層の上に展延、塗布し、70℃で約5分間乾燥させて、厚み約70μmの薬物含有層を形成させた。さらに、A液を上記薬物含有層の上に展延、塗布し、80℃で約10分間乾燥させて、厚み約50μmの水膨潤性ゲル形成層を形成させた。このようにして、保持基材である上記PETフィルム上に経口投与剤(水膨潤性ゲル形成層、薬物含有層、水膨潤性ゲル形成層の3層からなるフィルム状製剤)が保持された経口投与剤保持体を製造した(図8参照)。経口投与剤を直径30mmとなるように打ち抜き、以下の試験では経口投与剤をPETフィルムから剥がして使用した。
【0091】
(3)経口投与に適した経口投与剤保持体の製造
上記(1)及び(2)において、保持基材として、長さ100mm、幅25mm、厚さ38μmのPETフィルムを用いて図10のような経口投与剤保持体を製造した。この保持基材は、手で握ることができる部分(把持部)(長さ30mm)と患者等の口腔内に挿入できる部分(口腔内挿入部)(長さ70mm)とを有しており、経口投与剤は口腔内挿入部に設けられている。
【0092】
〔試験例1〕服用の容易性・安全性、薬物の味のマスキングに関する評価試験
製造例1で製造した経口投与剤(胃溶性製剤及び腸溶性製剤)を、無作為に抽出した被験者10に水なしで服用してもらい、服用の容易性及び薬物の味のマスキング能について以下の5段階の評価基準に従って評価した。また同時に服用時の喉・気道・食道への引っ掛かりの有無(服用の安全性)についても評価した。
【0093】
[服用の容易性に関する評価基準]
1・・・膨潤・ゲル化せず、水なしでは服用不可能。
2・・・少し膨潤・ゲル化するが、水なしでは服用不可能。
3・・・膨潤・ゲル化したが、できれば水とともに服用したい。
4・・・ゆっくり膨潤・ゲル化し、水なしで服用可能。
5・・・速やかに膨潤・ゲル化し、水なしで服用可能。
【0094】
[マスキング能に関する評価基準]
1・・・口に入れるとすぐに薬物の味が口内に広がり、服用に問題あり。
2・・・口に入れた直後は味がしないが、飲み込むまでに味がしてくるため服用に問題あり。
3・・・口の中にあるうちに薬物の味は感じられたが、服用に問題のない程度。
4・・・ほとんど薬物の味は感じられなかった。
5・・・薬物の味は全くしなかった。
【0095】
胃溶性製剤に関する結果を以下の表4に、腸溶性製剤に関する結果を以下の表5に示す。
【0096】
[表4]
被 験 者
評 価 項 目 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 平 均
服用の容易性 5 5 5 5 4 5 5 5 5 5 4.9
マスキング能 5 5 5 5 4 5 4 5 5 5 4.8
喉等への引っ掛かり 無 無 無 無 無 無 無 無 無 無
【0097】
[表5]
被 験 者
評 価 項 目 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 平 均
服用の容易性 5 5 5 5 4 5 5 5 5 5 4.9
マスキング能 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5.0
喉等への引っ掛かり 無 無 無 無 無 無 無 無 無 無
【0098】
表4及び表5に示すように、製造例1で製造した経口投与剤(胃溶性製剤及び腸溶性製剤)は、服用の容易性・安全性、薬物の味のマスキングに優れていた。
【0099】
〔試験例2〕フィルム強度に関する評価試験
製造例1(1)又は(2)と同様にしてフィルム状製剤である経口投与剤(胃溶性製剤又は腸溶性製剤)を製造し、薬物層中の薬物含有量を変化させた場合のフィルム強度を、JISの引張強さの試験(JIS Z0237)に従って測定した。この際、フィルム状製剤における水膨潤性ゲル形成層の組成及び厚みは製造例1(1)又は(2)と同じ条件としたが、水膨潤性ゲル形成層の数は1層とした。また、薬物含有層における薬物含有率は、0.1重量%、10重量%、25重量%、50重量%、80重量%と変化させた。
【0100】
胃溶性製剤及び腸溶性製剤のフィルム強度(kg/cm)に関する結果を以下の表6に示す。
【0101】
[表6]
薬物含有率(重量%)
0.1 10 25 50 80
胃溶性製剤 583 572 551 538 520
腸溶性製剤 575 570 559 530 511
【0102】
表6に示すように、製造例1で製造したフィルム状製剤は、薬物含有層における薬物含有率(重量%)が0.1〜80重量%と広範囲に変化しても十分なフィルム強度を維持できた。
【0103】
〔試験例3〕経口投与剤保持体による投与の容易性、服用の確認の容易性に関する評価試験
製造例1(3)で製造した経口投与剤保持体に保持された経口投与剤を、無作為に抽出した被験者10人に横臥状態で水なしで投与し、以下の評価基準に従って投与の容易性及び服用の確認の容易性に関する評価を行った。
【0104】
[投与の容易性に関する評価基準]
1・・・手が汚れてしまい、投与し難い。
2・・・手を汚すこともあるが、投与可能である。
3・・・手を汚すことが全くなく、容易に投与できる。
【0105】
[服用の確認の容易性に関する評価基準]
1・・・全く確認できない。
2・・・確認し難いが、服用が完了したか否かを確認できる。
3・・・一目で服用が完了したか否かを確認できる。
【0106】
評価試験の結果を以下の表7に示す。
【0107】
[表7]
被 験 者
評 価 項 目 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 平 均
投与の容易性 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3.0
確認の容易性 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3.0
【0108】
表7に示すように、経口投与剤保持体に保持された経口投与剤は被験者の口腔内において5分以内にゲル化し、被験者が横臥状態であっても経口投与剤を容易に投与することができた。また、経口投与剤が保持されている保持基材を被験者の口腔内から引き出すことによって、服用が完了したか否かを容易に確認することができた。また、投与から服用の確認までの一連の作業の中で、手や指が被験者の唾液等で汚れることは全く無かった。また、老人等のように唾液の分泌量が少ない場合には、投与前にフィルム状製剤を一旦水に浸す必要もあると考えられるが、経口投与剤保持体を用いることによって水への浸漬も容易に行なうことができた。
【0109】
〔試験例4〕水膨潤性ゲル形成層における水膨潤性ゲル形成剤とフィルム形成剤との混合比に関する検討
水膨潤性ゲル形成層における水膨潤性ゲル形成剤とフィルム形成剤との混合比(重量%)を変化させて、フィルム状製剤を実際に口に含んだときの溶解性及び膨潤性を官能的に評価した。フィルム状製剤は、製造例1(1)に準じて製造し、この際、薬物層の組成は製造例1(1)と同様に設定し、水膨潤性ゲル形成層の組成は以下の表8のように設定した(単位は重量%)。
【0110】
[表8]
ポリビニルアルコール ポリアクリル酸 塩化カルシウム
比較例1 100.0 0 0
2 95.0 5.0 0
3 85.0 15.0 0
4 95.0 4.5 0.5
5 85.0 13.5 1.5
実施例1 70.0 27.0 3.0
2 44.4 50.0 5.6
【0111】
試験の結果を以下の表9に示す。
【0112】
[表9]
評 価
比較例1 △:ゆっくりと溶解。ゲル化はせず高粘度溶液となる。
マスキングは不十分。
2 ×:急速に溶解。ゲル化はしない。マスキングは不十分。
3 ×:急速に溶解。ゲル化はしない。マスキングは不十分。
4 △:ややゲル化。マスキングは不十分。
5 △〜○:ほぼゲル化。マスキングはほぼ十分。
実施例1 ○:ゲル化は十分。マスキングは十分。
2 ○:ゲル化は十分。マスキングは十分。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明により、服用の容易性及び安全性を向上させた経口投与剤、広範な種類の薬物を含有することができるフィルム状の経口投与剤、並びに薬物の味(例えば苦味、渋味)や臭いによる投薬コンプライアンスの低下を防止することができる経口投与剤が提供される。また、本発明により、経口投与剤の取り扱い(例えば経口投与剤の所持、保管等)を容易化することができる経口投与剤保持体、経口投与剤の投与を容易に行なうことができる経口投与剤保持体、並びに経口投与剤の服用の有無を容易に確認することができる経口投与剤保持体が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数層の投与すべき薬物を含有する薬物含有層と、水膨潤性ゲル形成剤を含有する水膨潤性ゲル形成層とを有する経口投与剤であって、
前記薬物含有層同士が、直接積層されているか、または、熱融着可能な接着剤を含む中間層を介して熱融着されており、前記水膨潤性ゲル形成層が、前記経口投与剤の最外層に設けられていることを特徴とする前記経口投与剤。
【請求項2】
前記薬物含有層同士が、熱融着可能な接着剤を含む中間層を介して熱融着されており、前記熱融着可能な接着剤が、酢酸ビニルのホモポリマーまたは酢酸ビニルとビニルピロリドンとのコポリマーであることを特徴とする請求項1記載の経口投与剤。
【請求項3】
前記経口投与剤が、フィルム状製剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の経口投与剤。
【請求項4】
前記水膨潤性ゲル形成剤が、カルボキシビニルポリマー、デンプン及びその誘導体、寒天、アルギン酸、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、デキストラン、ペクチン、ジェランガムおよびキサンタンガムから選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の経口投与剤。
【請求項5】
前記水膨潤性ゲル形成層が、さらに、フィルム形成剤を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の経口投与剤。
【請求項6】
前記フィルム形成剤が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシアルキルセルロースおよびアルキルセルロースから選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項5記載の経口投与剤。
【請求項7】
前記水膨潤性ゲル形成層が、前記薬物含有層に含有される薬物の味及び/又は臭いをマスキングし得ることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の経口投与剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−51951(P2012−51951A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−273769(P2011−273769)
【出願日】平成23年12月14日(2011.12.14)
【分割の表示】特願2008−221521(P2008−221521)の分割
【原出願日】平成14年4月19日(2002.4.19)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】