説明

経口投与用ラパマイシン処方

【課題】 ラパマイシンの効果的に投与できる経口投薬形態の提供が強く望まれている。
【解決手段】 本発明により、コアおよび糖被覆からなる経口投与用ラパマイシン固形投薬錠剤であって、該糖被覆が(a)ラパマイシン、(b)一つまたはそれ以上の、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、コロイド性二酸化けい素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、マグネシウムアルミニウムケイ酸塩、およびトリエタノールアミンからなる群より選択される、界面修飾剤、および(c)一つまたはそれ以上の糖を含んでなることを特徴とするラパマイシン固形投薬錠剤が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫抑制誘導、および、移植拒絶反応、宿主対移植片疾患、自己免疫疾患、炎症の疾患、固形腫瘍、真菌感染症、成人T細胞白血病/リンパ腫および高増殖性血管障害の治療用の、経口投与により有用なラパマイシンまたはラパマイシンの医薬上許容される塩を含む処方に関する。
【背景技術】
【0002】
ラパマイシンは、はじめに抗真菌剤としてその特性が見出されたストレプトマイセス・ヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)により生産されるマクロライド系抗生物質である。これは、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)およびミクロスポルム・ジプセウム(Microsporum gypseum)のような真菌の生育を抑制する。ラパマイシン、その製法およびその抗生物質活性は、Surendra Sehgalらによる、1975年12月30日に発行された特許文献1に記載された。1977年に、Martel, R. R. らは、ラパマイシンの実験的アレルギー性脳炎およびアジュバント関節炎に対するラパマイシンの免疫抑制特性について報告した[非特許文献1]。1989年には、Calne, R. Y.ら (非特許文献2)、および、Morris, R. E.および Meiser, B. M. (非特許文献3)は、それぞれ、インビボでの同種移植片移植における拒絶反応を阻害するラパマイシンの効果について報告した。その後、ラパマイシンの免疫抑制および拒絶反応阻害の特性について述べた多くの文献が出され、ラパマイシンのヒトの移植片の拒絶反応阻害における使用に対する臨床的研究が始められている。
【0003】
ラパマイシン単独(特許文献2)またはピシバニル(picibanil)(特許文献3)との組み合わせが抗腫瘍活性を有することが示されている。R. Martelら [非特許文献4]は、ラパマイシンが、実験的アレルギー脳脊髄炎モデル、多発性硬化症のモデル;アジュバント関節炎モデル、リウマチ関節炎モデルにおいて効果的であり;IgE−様抗体の生成を効果的に阻害することを開示した。
【0004】
ラパマイシンの免疫抑制効果は、非特許文献5に開示されている。また、シクロスポリンAおよびFK−506、その他の巨大環状分子も免疫抑制剤として効果的であり、それゆえ、移植片拒絶反応の予防において有効であることが示されている[非特許文献5; 非特許文献6;非特許文献7]。
【0005】
ラパマイシンが哺乳動物において移植片拒絶反応を抑制することが示されている(特許文献4)。また、ラパマイシン、その誘導体およびプロドラッグは肺炎症(特許文献5)、全身性エリスマトーデス(特許文献6)、乾癬のような免疫炎症性皮膚疾患(特許文献7)、免疫炎症性腸疾患(特許文献8)、眼の炎症(特許文献9)、再狭窄のような高増殖性血管疾患(特許文献10および特許文献11)、癌(特許文献12および特許文献2)、および心臓炎症性疾患(特許文献13)の治療において、および、インスリン依存性糖尿病の発症の予防(特許文献14)において有用であることが示されている。加えて、ラパマイシンは、成人T細胞白血病/リンパ種の治療において(特許文献15)および、眼の炎症の治療(特許文献9)において有用であることが示されている。
【0006】
ラパマイシンは油および水への溶解性が乏しいため、満足できるように提供されたラパマイシンの処方はわずかである。特許文献16および特許文献17には、静脈注射のラパマイシン処方が開示され、特許文献18および特許文献19には、液体経口ラパマイシン処方が開示されている。
【0007】
モノ−およびジアシル化されたラパマイシンの誘導体(28および43位でエステル化されている)が抗真菌剤として有用であることが示され(特許文献20)、ラパマイシンの水可溶性プロドラックの製造に用いられている(特許文献21)。最近、ラパマイシンに対する番号付け規定が変更された;それゆえ、ケミカルアブストラクト命名法に従うと、上記のエステルは、31および42位になるであろう。特許文献22は、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗真菌剤、および抗腫瘍剤として有用なラパマイシンのカルバメートを開示している。特許文献23は、ラパマイシンのフッ素化エステルを開示している。特許文献24は、ラパマイシンのアミドエステルを開示している。特許文献25は、ラパマイシンのアミノエステルを開示している。特許文献26は、ラパマイシンのスルホナートおよびスルファメートを開示している。特許文献27は、ラパマイシンのスルホニルカルバメートを開示している。
【0008】
現在ヒトにおいて組織の同種移植片移植における拒絶反応の阻害に対し用いられている最初の免疫抑制剤は、サンディミュン[SANDIMMUNE、シクロスポリン(cyclosporine)]である。シクロスポリンは、11アミノ酸からなる環状ポリペプチドである。静脈注射可能なサンディミュン(IV)処方は、1mlあたり、50mgのシクロスポリン、650mgのクレモフォア(登録商標、CremophorR)ELおよびスイス薬局方(Ph Helv.)アルコール(32.9容量%)(窒素下)を含む滅菌アンプルである。投与のため、この混合物を使用前に0.9%の塩化ナトリウム注射溶液または5%デキストロース注射溶液で希釈する。(非特許文献8) ラパマイシンとある構造的類似性を有し、FK506と呼ばれるマクロライド分子についても、現在、ヒトにおける同種移植片臓器移植における拒絶反応の阻害に対する臨床的研究が行われている。FK506は、ストレプトマイセス・ツスクバエンシス(Streptomyces tsuskubaensis)から単離され、米国特許第4,894,366号、オオクラら、1990年1月16日発行、非特許文献9に記載され、FK506の静脈注射可能な処方は、ポリオキシエチル化ヒマシ油(HCO−60、界面活性剤)およびアルコール中のFK506の10mg/ml溶液として提供される。静脈用の調製物は、生理食塩水またはデキストロースで希釈され、1時間から2時間の間点滴で投与されなければならない。
【0009】
非特許文献10は、サンディミュン(シクロスポリン)を25mgおよび100mgの強度のカプセルにおいて利用可能なものとして、および50mlボトルにおける経口用溶液としてリストに載せている。25mgカプセルには、25mgの米国薬局方(USP)シクロスポリン、および最大12.7容量%の米国薬局方脱水アルコールが含まれる。100mgカプセルには、100mgの米国薬局方シクロスポリン、および最大12.7容量%の米国薬局方脱水アルコールが含まれる。経口カプセル中の不活性成分は、トウモロコシ油、ゼラチン、グリセロール、ラブラフィル(Labrafil)M 2125 CS(ポリオキシエチル化グリコライズ化グリセライド)、赤色酸化鉄、ソルビトール、二酸化チタン、および他の成分である。経口用溶液は、米国薬局方シクロスポリン100mgおよび、オリーブオイル中に溶解した、スイス薬局方アルコール12.5容量%、スイス薬局方/ラブラフィル M 1944 CS(ポリオキシエチル化オレイックグリセライド)ビヒクルを含む、経口投与前にミルク、チョコレートミルクまたはオレンジジュースで希釈する必要のある、50mlボトルとして利用可能である。
【0010】
イムラン(IMURAN、azathioprine、Burroughs Wellcome Co., Reserch Triangle Park, N. C.から利用可能)は、単独で、または他の免疫抑制剤とともに記載される他の経口で投与される免疫抑制剤である。非特許文献11は、50mgのアザチオプリンおよび不活性成分、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、ポテトデンプン、ポビドン、およびステアリン酸を含むスコアド錠剤(scored tablet)の経口投与用として提供される、6−[1−メチル−4−ニトロイミダゾール−5−イル)チオ]プリンとして、アザチオプリンをリストに載せている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第3,929,992号
【特許文献2】米国特許第4,885,171号
【特許文献3】米国特許第4,401,653号
【特許文献4】米国特許第5,100,899号
【特許文献5】米国特許第5,080,899号
【特許文献6】米国特許第5,078,899号
【特許文献7】米国特許第5,286,730号
【特許文献8】米国特許第5,286,731号
【特許文献9】米国特許第5,387,589号
【特許文献10】米国特許第5,512,781号
【特許文献11】米国特許第5,288,711号
【特許文献12】米国特許第5,206,018号
【特許文献13】米国特許第5,496,832号
【特許文献14】米国特許第5,321,009号
【特許文献15】欧州特許出願公開第525,960号
【特許文献16】米国特許第5,516,770号
【特許文献17】米国特許第5,530,006号
【特許文献18】米国特許第5,536,729号
【特許文献19】米国特許第5,529,121号
【特許文献20】米国特許第4,316,885号
【特許文献21】米国特許第4,650,803号
【特許文献22】米国特許第5,118,678号
【特許文献23】米国特許第5,100,883号
【特許文献24】米国特許第5,118,677号
【特許文献25】米国特許第5,130,307号
【特許文献26】米国特許第5,117,203号
【特許文献27】米国特許第5,197,447号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Martel, R. R. et al., Canadian Journal of Physiological Pharmacology, 55, 48-51(1977)
【非特許文献2】Calne, R. Y. et al., Lancet, 1989, no.2, p.227
【非特許文献3】Morris, R. E. and Meiser, B. M., Medicinal Science Reserch, 1989, No.17, p. 609-610
【非特許文献4】R. Martel et al., Can. J. Physiol. Pharmacol. 55, 48(1977)
【非特許文献5】FASEB3, 3411(1989)
【非特許文献6】FASEB 3, 5256(1989)
【非特許文献7】R. Y. Calne et al., Lancet 1183(1978)
【非特許文献8】Physicians' Desk Reference, 45th ed., 1991, pp. 1962-1964, Medical Economics Company, Inc.
【非特許文献9】R. Venkataramanan et al., Translation Proceedings, 22, No, 1, Suppl., 1 pp 52-56(1990年2月)
【非特許文献10】Physicians' Desk Reference(45th ed., 1991, pp. 2119, Medical Economics Company, Inc.)
【非特許文献11】Physicians' Desk Reference(45th ed., 1991, pp. 785-787, Medical Economics Company, Inc.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ドラッグデリバリーの方法は、患者に薬剤の満足できる用量を輸送することとされている。経口処方の場合には、この基準にかない、臨床または非臨床において、効果的に投与できる、好ましくは自己投与できる、投薬形態を提供することが強く望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ラパマイシンの経口投与において有用な処方に関する。ラパマイシンは、インビボにおいて、免疫抑制、抗拒絶反応、抗真菌、抗炎症作用を有すること、および、インビトロにおいて、胸腺細胞増殖を阻害することが示されている。それゆえ、これらの処方は、腎、心臓、肝臓、肺、骨髄、膵臓(島細胞)、角膜、小腸、皮膚同種移植片、心臓弁異種移植片のような移植拒絶反応の治療または阻害;移植片対宿主疾患の治療または阻害;狼瘡、リウマチ関節炎、糖尿病、重症筋無力症、および多発性硬化症のような自己免疫疾患の治療または阻害;乾癬、皮膚炎、湿疹、肥満、炎症性腸疾患、肺炎症(喘息、慢性閉塞性肺疾患、気腫、急性呼吸窮迫症候群、気管支炎のたぐいを含む)、および眼ブトウ腺炎などの炎症の疾患において有用である。
【0015】
ラパマイシンはまた、抗腫瘍、抗真菌、および抗増殖制活性を有することが示されている。それゆえ、本発明の処方は、星状細胞種、前立腺癌、乳癌、小細胞肺癌、卵巣癌のような肉腫および癌を含む固形腫瘍;成人T細胞白血病/リンパ種;真菌感染症;再狭窄およびアテローム性硬化症のような高増殖性血管疾患の治療において有用である。
本発明はまた、免疫抑制を必要とする哺乳動物において免疫抑制の誘発における使用のための処方を提供する。
【0016】
一般に、本発明の処方は、ラパマイシンで被覆されるコア、および、一つまたはそれ以上の界面修飾剤および一つまたはそれ以上の糖を含んでなる糖被覆を含有する、ラパマイシンの経口錠剤投与形態を提供する。糖被覆が一つまたはそれ以上の結合剤を含むことが好ましい。該投薬錠剤は好ましくは0.05〜20mg、より好ましくは、0.5〜10mgのラパマイシンを含む。
【0017】
本発明によるラパマイシン経口投薬錠剤の製造において、被覆中に用いられるラパマイシンの分散物を形成するために、多くの界面修飾剤が適している。これらは、様々なポリマー、低分子量オリゴマー、天然物、および界面活性剤を含む公知の医薬賦形剤から選択できる。好ましい界面修飾剤には、非イオン性およびアニオン性界面活性剤が含まれる。界面修飾剤の代表例には、これに限定されるものではないが、プルロニックF68(Pluronic F68)、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、コロイド性二酸化けい素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、マグネシウムアルミニウムケイ酸塩、およびトリエタノールアミンなどが含まれる。プルロニックF68(BASF Corp.から利用可能)が界面修飾剤として用いられることがより好ましい。
【0018】
本発明の糖被覆の製造に用いる糖は、糖被覆を調製するために適当であると考えられる、ビートまたはサトウキビ原料由来のシュークロース、またはデンプン、サッカライドまたはポリサッカライド変換原料のような糖製品である。本発明の固形投薬形態の調製に用いる場合、糖はシュークロースが好ましい。
【0019】
結合剤をラパマイシン経口投与錠剤の製造に用いる場合、これらには、アラビアゴム、コレステロール、トラガント、ステアリン酸、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、微結晶セルロース、非結晶セルロース、ポリビニルピロリドン(ポビドン、PVP)、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、セチルエーテルワックス、デキストレート、デキストリン、ラクトース、デキストロース、グリセリルモノオレイン酸、グリセリルモノステアリン酸、グリセリルパルミトステアリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンステアリン酸、およびポリビニルアルコールが包含される。
【0020】
本明細書に記載する投薬錠剤は、コア上に被覆された糖被覆中に含有されるラパマイシンを提供する。コアは、医薬的に不活性であっても、医薬的に活性な薬剤を含有していてもよい。本発明に用いられる「糖被覆(sugar overcoat)」なる用語は、コアを被覆するラパマイシン、界面修飾剤および糖を意味する。該処方が一又はそれ以上の結合剤を含有する場合、これらもまた、糖被覆の一部とみなされる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、0.05〜20mgのラパマイシンを含む固形投薬錠剤の糖被覆の好ましい処方を示す。
a)ラパマイシン 約0.05〜20mg
b)プルロニックF68 約0.008〜10mg
c)シュークロース 糖被覆重量の約40〜99%の範囲
本発明の処方中、パーセンテージで特定される成分の量は、糖被覆の重量により変わる。本発明の糖被覆は、典型的には、約50〜200mgの重量である。それゆえ、上記の処方において、20mgのラパマイシンおよび10mgのプルロニックF68を含む50mgの糖被覆に対し、シュークロースの量は、約20mg(糖被覆の約40重量%)である。同様に、200mgの糖被覆が0.05mgのラパマイシンおよび0.008mgのプルロニックF68を含む場合、糖被覆中のシュークロースの重量パーセントは、糖被覆の99%よりも多くてもよい。
【0022】
以下に、0.05〜20mgのラパマイシンを含み、糖被覆がポビドンおよび微結晶セルロースを含む、固形投与錠剤の糖被覆のより好ましい処方を示す。
a)ラパマイシン 約0.05〜20mg
b)プルロニックF68 約0.008〜10mg
b)シュークロース 最終糖被覆重量の約35〜99%の範囲
c)ポビドン 最終糖被覆重量の約0.2〜1.0%の範囲
d)微結晶セルロース 最終糖被覆重量の約0.1〜3.0%の範囲
【0023】
上記の成分を含むラパマイシン含有経口投与錠剤は、以下の方法に従い製造できる。要約すると、プルロニックF68のような界面修飾剤中のラパマイシンの分散物を、出典明示により本明細書に包含する米国特許第5,145,684号に従い、調製する。典型的には、分散物は、約400nmよりも小さい効果的な平均粒子サイズである。典型的には、6:1〜2:1のラパマイシン:プルロニックF68の比が望まれ、好ましくは、2:1が望まれる。2:1の比が用いられる場合、典型的に150mg/ml含む分散物が得られ、0.05〜20mgのラパマイシン経口固形投薬錠剤の製造に用いられる。さらに大きい強さの錠剤(すなわち、15〜20mgラパマイシン)のためには、約300mg/mlまでのような分散濃度の増加が望まれる。シュークロースをラパマイシン/プルロニックF68分散物に加え、溶解するまで混合する。ポビドンを加え、湿潤するまでよく混合する。混合物を溶解するまで激しく混合する。微結晶セルロースを加え、湿潤するまでよく混合する。水を加え(約2〜55mg)、よく混合し、混合物を少量づつ分けて、望まれる錠剤の強さが得られるまで、医薬的に不活性なコアに噴霧被覆し、分けた部分間で空気乾燥する。製造工程の間、水の大部分が除去され、約5%以下の水が各錠剤に残る。典型的には、2%以下の残留水が各錠剤中に存在する。ラパマイシン含有経口投薬錠剤を、任意に着色被覆で被覆し、ついで所望により、みがき被覆(polish coat)することができる。着色被覆は、典型的には、シュークロースのような糖、および二酸化チタンのような色素を含み、みがき被覆は、ミネラル蒸留液体のような溶媒中での分散に適用できるカルヌバワックス(carnuba wax)を含む。
【0024】
コアが医薬的に不活性なコアである場合、典型的には、ラクトース、微結晶セルロース、PEG−600、および他の結合剤ならびに賦形剤を含むことのできるプラセボコアである。コアは、被覆工程の間に起こる崩壊を防ぐためにシェラックでシールすることができる。シュークロース被覆はまた、被覆工程に先立ち、シェラック被覆上に行うことができる。
【0025】
本発明の糖被覆は、典型的には、約50〜200mgの重量に製造できる。本明細書中に記載される工程を用い、0.05〜20mgのラパマイシンを含む100mgの糖被覆が、上記の方法に従って、以下の成分から形成される:
a)ラパマイシン 約0.05〜20mg
b)プルロニックF68 約0.008〜10mg
b)シュークロース 約35〜99mg
c)ポビドン 約0.2〜1.0mg
d)微結晶セルロース 約0.1〜3.0mg
e)水 2〜55mg(工程の間に大部分が除去される)
【0026】
本発明の処方が免疫抑制剤または抗炎症剤として用いられる場合、一つまたはそれ以上の他の免疫調整剤とともに投与できる。そのような他の抗拒絶反応化学療法剤には、これに限定されるものではないが、アザチオプリン、プレドニゾンおよびメチルプレドニゾンのようなコルチコステロイド、シクロホスファミド、シクロスポリンA、FK−506、OKT−3およびATGが含まれる。免疫抑制の誘発または炎症状態の治療のために、そのような他の薬物または薬剤と本発明の処方の一つまたはそれ以上を組み合わせることで、望まれる効果に到達するために必要な各薬剤の濃度が少なくなる。そのような組み合わせ療法の基本は、低い治療用量におけるラパマイシンおよびシクロスポリンAの組合せ使用が、心臓同種移植の生存期間を増長したことを示す結果から、Stepkowskiにより確立された[Transplan Proc. 23:507(199)]。
【0027】
必要な投薬量は、生じた症状の重さおよび治療される対象の特異性により変わる。ラパマイシンの計画される一日経口投薬量は、0.05〜25mgであり、好ましい一日投薬量は、ラパマイシンが組み合わせ治療において使用される場合には、0.5〜10mg、ラパマイシンが単独治療において使用される場合には、1〜25mgである。さらに好ましい計画される一日投薬量は、ラパマイシンが組み合わせ治療において用いられる場合には、2〜5mg、単独治療において用いられる場合には、5〜15mgである。
【0028】
治療は、一般的に、化合物の至適用量よりも少ない量で開始される。その後、投薬量をその状況下で至適効果に達するまで増加する。正確な投薬量が治療される個々の患者に対し、経験に基づいて投与する医者により決定される。概して、本発明の処方は、もっとも望ましくは、いかなる有害なまたは有毒な副作用をも引き起こすことなく効果的な結果を与える濃度において投与される。
【0029】
本発明の経口投与錠剤処方は、これに限定されるものではないが、ラパマイシンエステル、カルバメート、スルフェート、エーテル、オキシム、カルボネートなどの特許文献においてよく記載されるすべてを含むラパマイシンの誘導体を含有する。
以下にラパマイシン固形投薬錠剤の代表例の製造と評価を示す。
【実施例1】
【0030】
以下に、100mg糖被覆を含む1mgラパマイシン投薬錠剤の製造と評価を示す。
処方
成分
ラパマイシン 1mg
プルロニックF68 0.5mg
シュークロース 98.940mg
ポビドン 0.510mg
微結晶セルロース 1.020mg
水 49.653mg
*製造損失を考慮して、これらの量において2%過剰量が含まれる。
【0031】
製造方法
1.ラパマイシン:プルロニックF68の2:1の比を用いて、米国特許第5, 145,684号に従って、ラパマイシンおよびプルロニックF68の約4 00nmの粒子サイズ以下の分散物を製造した。150mgラパマイシン/ mlの分散濃度を用いた。
2.シュークロースを加え、シュークロースが溶解するまで混合した。
3.ポビドンを加え、湿潤するまでよく混合した。混合をポビドンが溶解するま で激しく続けた。
4.微結晶セルロースを加え、湿潤するまでよく混合した。
5.水を加え、よく混合した。
6.得られた溶液を分けながら医薬的に不活性なコアにスプレー被覆し、分けた 部分間で空気乾燥した。
【0032】
評価
以下にA−Fとして挙げられる、6匹のシノモルガスザル(Cynomolgus monkey)に上記の処方物を1匹あたり3mgのラパマイシンの用量で投与し、ついで、投与後の示される時間において、ラパマイシンの血清濃度を測定した。
【表1】


得られた結果から、ラパマイシンの血清濃度が、本発明の代表的な経口投薬錠剤の投与に続いて観察されることが示される。
【実施例2】
【0033】
実施例1に記載される方法にしたがって、100mgの糖被覆を含む0.5mgラパマイシン経口投薬錠剤を製造した。この分散物は、2:1の比のラパマイシン:プルロニックF68を含有し、150mgラパマイシン/mlの濃度で用いた。以下に、使用した成分の量を示す。
処方
成分
ラパマイシン 0.5mg
プルロニックF68 0.25mg
シュークロース 99.705mg
ポビドン 0.510mg
微結晶セルロース 1.020mg
水 52.288mg
*製造損失を考慮して、これらの量において2%過剰量が含まれる。
【実施例3】
【0034】
実施例1に記載される方法にしたがって、100mgの糖被覆を含む3.0mgラパマイシン経口投薬錠剤を製造した。この分散物は、2:1の比のラパマイシン:プルロニックF68を含有し、150mgラパマイシン/mlの濃度で用いた。以下に、使用した成分の量を示す。
処方
成分
ラパマイシン 3.0mg
プルロニックF68 1.5mg
シュークロース 95.880mg
ポビドン 0.510mg
微結晶セルロース 1.020mg
水 39.113mg
*製造損失を考慮して、これらの量において2%過剰量が含まれる。
【実施例4】
【0035】
実施例1に記載される方法にしたがって、100mgの糖被覆を含む5.0mgラパマイシン経口投薬錠剤を製造した。この分散物は、2:1の比のラパマイシン:プルロニックF68を含有し、150mgラパマイシン/mlの濃度で用いた。以下に、使用した成分の量を示す。
処方
成分
ラパマイシン 5.0mg
プルロニックF68 2.5mg
シュークロース 92.820mg
ポビドン 0.510mg
微結晶セルロース 1.020mg
水 28.573mg
*製造損失を考慮して、これらの量において2%過剰量が含まれる。
【実施例5】
【0036】
実施例1に記載される方法にしたがって、100mgの糖被覆を含む7.5mgラパマイシン経口投薬錠剤を製造した。この分散物は、2:1の比のラパマイシン:プルロニックF68を含有し、150mgラパマイシン/mlの濃度で用いた。以下に、使用した成分の量を示す。
処方
成分
ラパマイシン 7.5mg
プルロニックF68 3.75mg
シュークロース 88.995mg
ポビドン 0.510mg
微結晶セルロース 1.020mg
水 15.398mg
*製造損失を考慮して、これらの量において2%過剰量が含まれる。
【実施例6】
【0037】
実施例1に記載される方法にしたがって、100mgの糖被覆を含む10mgラパマイシン経口投薬錠剤を製造した。この分散物は、2:1の比のラパマイシン:プルロニックF68を含有し、150mgラパマイシン/mlの濃度で用いた。以下に、使用した成分の量を示す。
処方
成分
ラパマイシン 10mg
プルロニックF68 5mg
シュークロース 85.170mg
ポビドン 0.510mg
微結晶セルロース 1.020mg
水 2.223mg
*製造損失を考慮して、これらの量において2%過剰量が含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアおよび糖被覆からなる経口投与用ラパマイシン固形投薬錠剤であって、該糖被覆が:
(a)ラパマイシン
(b)一つまたはそれ以上の、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、コロイド性二酸化けい素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、マグネシウムアルミニウムケイ酸塩、およびトリエタノールアミンからなる群より選択される、界面修飾剤、および
(c)一つまたはそれ以上の糖
を含んでなることを特徴とするラパマイシン固形投薬錠剤。
【請求項2】
コアと糖被覆からなる経口投与用ラパマイシン固形投薬錠剤であって、該糖被覆が:
(a)ラパマイシンを0.05〜20mg
(b)ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールを0.008〜10mg、および
(c)シュークロースを糖被覆の重量の99%まで
含んでなることを特徴とするラパマイシン固形投薬錠剤。
【請求項3】
コアと糖被覆からなる経口投与用ラパマイシン固形投薬錠剤であって、該糖被覆が:
(a)ラパマイシンを0.05〜20mg
(b)ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールを0.008〜10mg
(c)ポビドンを該糖被覆の重量の0.2〜1.0%の範囲
(d)微結晶セルロースを該被覆の重量の0.1〜3%の範囲、および
(e)シュークロースを該糖被覆の重量の35〜99%の範囲
含んでなることを特徴とするラパマイシン固形投薬錠剤。
【請求項4】
(a)一つまたはそれ以上の、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、コロイド性二酸化けい素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、マグネシウムアルミニウムケイ酸塩、およびトリエタノールアミンからなる群より選択される、界面修飾剤中のラパマイシン分散物を調製し、
(b)分散物に一つまたはそれ以上の糖を添加し、溶解するまで攪拌し、
(c)この混合物へ水を添加し、溶解するまで攪拌し、
所望の量のラパマイシンがコア上に噴霧被覆されるまで、被覆をコア上に噴霧し、乾燥する工程を用いて、糖被覆を製造することを特徴とする経口投与用ラパマイシン投薬錠剤の製造方法。

【公開番号】特開2009−298823(P2009−298823A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230289(P2009−230289)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【分割の表示】特願平10−62885の分割
【原出願日】平成10年3月13日(1998.3.13)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】