説明

経口投与用吸着剤及びそれを用いた薬剤

【課題】尿毒素の中で、インドールのような有害な毒性物質の吸着能が高い経口投与用吸着剤を提供し、また、それを用いた経口服用剤を提供する。
【解決手段】フルフリルアルコールとアルデヒド類とを触媒及び保護コロイドの存在下に反応させて得られる球状フラン樹脂粒子を、炭素化、賦活化して、形成された球状活性炭粒子であって、平均粒子径が10μm以上、1000μm以下となるよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口投与用吸着剤並びにそれを用いた薬剤に係り、特に、球状フラン樹脂粒子を用いて得られる球状活性炭粒子からなる経口投与用吸着剤と、それを用いてなる経口服用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、経口投与用吸着剤は、尿毒素を吸着し、腎不全の進行を予防する等という目的をもって、腎疾患の患者等において経口的に服用されてきているが、それは、また、ピッチ原料を用いて、製造されているものであった。しかし、そのような従来のピッチ由来の経口投与用吸着剤には、尿毒素と共に、消化酵素等をも吸着してしまうという問題があったために、近年、フェノール樹脂の如き熱硬化性樹脂やイオン交換樹脂を原料として、β−アミノイソ酪酸等の小さな分子サイズの尿毒素を選択的に吸着する経口投与用吸着剤を製造する技術が開発され(特許文献1〜8)、そのような吸着剤は、また、市販も為されている。
【0003】
しかしながら、フェノール樹脂等を原料とする経口投与用吸着剤には、インドールのような尿毒素の吸着能力が低いという問題が内在しており、このため、そのような問題を改善すべく、様々な技術が開発されているが、それらよりも更にインドールのような尿毒素の吸着能が高い経口投与用吸着剤の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56−73542号公報
【特許文献2】特開2004−244414号公報
【特許文献3】特開2006−15334号公報
【特許文献4】特許第3672200号公報
【特許文献5】特許第3835698号公報
【特許文献6】特許第4268672号公報
【特許文献7】特開2011−083758号公報
【特許文献8】特開2006−111640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここにおいて、本発明は、上述の如き、従来の経口投与用吸着剤に内在する問題に鑑みて為されたものであって、その解決課題とするところは、尿毒素の中で、インドールのような有害な毒性物質の吸着能が高い経口投与用吸着剤を提供することにあり、また、それを用いた経口服用剤を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者は、上記した課題を克服するために鋭意研究した結果、フルフリルアルコールとアルデヒド類とを触媒及び保護コロイドの存在下に反応させることにより得られるフラン樹脂粒子を、炭素化、賦活化して得られる経口投与用吸着剤が、フェノールとアルデヒド類とを触媒及び保護コロイドの存在下に反応させることにより得られるフェノール樹脂粒子を、炭素化、賦活化して得られる経口投与用吸着剤よりも、インドールのような有害な毒性物質の吸着性が高い経口投与吸着剤であることを見出し、この知見を基にして更に研究を重ねた結果、本発明を完成するに至ったのである。
【0007】
すなわち、本発明は、フルフリルアルコールとアルデヒド類とを触媒及び保護コロイドの存在下に反応させて得られる球状フラン樹脂粒子を、炭素化、賦活化して、形成された球状活性炭粒子であって、平均粒子径が10μm以上、1000μm以下であることを特徴とする経口投与用吸着剤を、その要旨とするものである。
【0008】
また、本発明における前記球状活性炭粒子は、式(1):R=(I15−I35)/(I24−I35)〔但し、式中、I15は、X線回折法による回折角(2θ)が15°における回折強度であり、I35は、X線回折法による回折角(2θ)が35°における回折強度であり、I24は、X線回折法による回折角(2θ)が24°における回折強度である〕で求められる回折強度比(R値)が1.4未満である特性を有しているものである。
【0009】
なお、かかる本発明に従う経口投与用吸着剤の望ましい態様の一つによれば、BET法によって求められる比表面積が、900m2 /g以上、1500m2 /g以下であり、且つ細孔直径20〜15000nmの細孔容積が、0.01mL以上、0.1mL/g以下であるものである。
【0010】
そして、この本発明に従う経口投与用吸着剤にあっては、前記触媒が、酸触媒であるものであり、また、前記酸触媒としては、炭素数10以上のアルキルベンゼンスルホン酸であることが望ましいのである。更には、前記保護コロイドが、水溶性高分子であるものである。
【0011】
加えて、本発明に従う経口投与用吸着剤を有効成分とする経口服用剤にあっては、上記した経口投与用吸着剤を、消化器官内の毒素吸着に用いるものであり、特に、そのような経口投与用吸着剤を腎疾患の治療又は予防剤として有利に用いるものである。なお、そこで、腎疾患としては、慢性腎不全、急性腎不全、慢性腎炎症候群、急性腎炎症候群、急速進行性腎炎症候群、ネフローゼ症候群、再発性・持続性血尿、慢性腎盂腎炎、急性腎盂腎炎、尿細管・間質性腎炎、糖尿病性腎症、腎硬化症、腎血管性高血圧症、又は続発性糸球体腎炎が対象とされるのである。
【発明の効果】
【0012】
従って、かかる本発明によれば、フルフリルアルコールとアルデヒド類とを触媒及び保護コロイドの存在下に反応させることにより得られた球状フラン樹脂粒子から得られる球状活性炭粒子にて構成されることにより、インドールの吸着能が著しく高められた経口投与用吸着剤や、それを用いた経口服用剤が、有利に提供され得ることとなったのである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
要するに、本発明に係る経口投与用吸着剤は、フルフリルアルコールとアルデヒド類との縮合反応による樹脂化と硬化によって得られる球状フラン樹脂粒子を用い、それを、炭素化及び賦活化して形成された、球状活性炭粒子からなるものであって、有利には、その平均粒子径が10μm以上、1000μm以下であり、またR=(I15−I35)/(I24−I35)〔但し、式中、I15は、X線回折法による回折角(2θ)が15°における回折強度であり、I35は、X線回折法による回折角(2θ)が35°における回折強度であり、I24は、X線回折法による回折角(2θ)が24°における回折強度である〕で求められる回折強度比(R値)が1.4未満であるものである。また、有利には、そのBET法によって求められる比表面積が900m2 /g以上、1500m2 /g以下であり、且つ細孔直径20〜15000nmの細孔容積が0.01mL以上、0.1mL/g以下であり、さらに好ましくは0.01mL以上、0.07mL以下、最も好ましくは0.01mL以上、0.05mL以下であるものである。このような特性を有するように調製することによって、インドールのような毒性物質の吸着性を、より一層向上させることが可能となるのである。
【0014】
そして、そのような本発明に従う経口投与用吸着剤を製造するには、先ず、その原料となる球状フラン樹脂粒子を得るべく、フルフリルアルコールとアルデヒド類とが、水、保護コロイドの存在下、触媒を用いて反応させられて、樹脂化せしめられ、更に、加熱して硬化させられることとなる。そして、その後、その形成された樹脂粒子を含む反応生成液を濾過、洗浄する工程、更には、400〜850℃で炭素化する工程と、500〜1000℃で賦活する工程を経て、平均粒子径が、一般に、10μm〜1000μm程度、さらに好ましくは200μm〜700μm、最も好ましくは200μm〜500μmの微細な球状粒子として、取り出されるのである。
【0015】
なお、ここで、そのような樹脂粒子を与える原料の一つであるフルフリルアルコールとしては、有利には、二酸化炭素排出量の削減を図り、環境保全に寄与すべく、トウモロコシの芯等を原料として得られる、バイオマス由来のものが、好適に用いられることとなる。
【0016】
また、本発明において用いられる原料の他の一つであるアルデヒド類としては、ホルムアルデヒドが好適に用いられることとなる。なお、このホルムアルデヒドには、一般に、反応性や原料価格等の観点から、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、テトラオキサン、アセタール等のホルムアルデヒド供給物質が、好適に用いられ得るのである。
【0017】
さらに、本発明において用いられる水の量としては、仕込みフルフリルアルコールに対して、0.5重量倍〜25重量倍程度の割合となるような量を挙げることができる。なお、この水の量が0.5重量倍未満であると、反応生成物が塊状化したりする恐れがあるからであり、また25重量倍よりも多くなると、反応時間が長くなり過ぎて、経済的でない等の問題が惹起されるようになる。
【0018】
加えて、本発明において用いられる保護コロイド剤としては、例えば、アラビアゴム、ガッチゴム、ヒドロキシアルキルグアルゴム、部分加水分解ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の水溶性高分子化合物を例示することが出来、それらの中でも、特に、アラビアゴムが好適に用いられ得る。
【0019】
なお、このような保護コロイドは、単独で用いることも、又は2種以上を組み合わせて用いることも、可能である。また、かかる保護コロイドと共に、適当な界面活性剤を併用することも、可能である。更に、その使用量は、用いられる保護コロイドの種類等に応じて適宜に決定されることとなるが、一般的には、フルフリルアルコールに対して0.1〜10質量%程度の割合となるように、好ましくは0.5〜5質量%程度の割合となるように、更に好ましくは1〜3質量%程度の割合となるような量において、使用されることとなる。
【0020】
そして、本発明においては、上記した保護コロイドと共に、フルフリルアルコールとアルデヒド類との樹脂化や硬化のための触媒として、適当な酸触媒を用いることが望ましい。そのような酸触媒としては、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸等を挙げることが出来る。そして、それらが、単独で又は組み合わせて、用いられることとなるが、それらの中でも、有利には、アルキルベンゼンスルホン酸、特に、炭素数が10以上のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸が、好適に用いられ得、更に望ましくは、経済性や入手容易性、そして触媒機能等の観点から、ドデシルベンゼンスルホン酸の使用が、特に推奨される。
【0021】
なお、かかる酸触媒は、フルフリルアルコールとアルデヒド類との反応条件、更には、保護コロイドの種類等により、その使用量が適宜に決定されることとなるが、一般に、フルフリルアルコールに対して、0.1〜10質量%程度の割合において、好ましくは0.5〜7質量%程度の割合において、更に好ましくは1〜5質量%程度の割合において、用いられる。この酸触媒の使用量が少なくなると、本発明の目的を充分に達成し難くなる恐れがあるからであり、また、その使用量が多くなると、反応途中に多量に泡が発生して均一攪拌が困難となって、微小な粒子を得ることが困難となる等という問題を惹起するようになる。
【0022】
また、フルフリルアルコールとアルデヒド類との配合比(アルデヒド類/フルフリルアルコール)は、特に限定されるものではないが、好ましくは、モル基準で、10未満、より好ましくは7未満で、さらに好ましくは5未満、最も好ましくは2未満である。その配合比が10以上となると未反応のアルデヒド類が増加して、生産効率が低下する可能性がある。
【0023】
さらに、本発明に従うフルフリルアルコールとアルデヒド類との反応に際して採用される反応温度としては、反応効率の観点から、一般に50℃以上の温度が採用されるが、好ましくは70℃以上であり、より好ましくは80℃以上である。反応時間は、反応温度、反応系の含水量、生成物の縮合状況や硬化の状況などを考慮しながら、適宜に決定されるものであるが、一般的には、1〜50時間程度が採用されることとなる。
【0024】
そして、上述の如くして、フルフリルアルコールとアルデヒド類とを反応せしめることによって生じた樹脂粒子を含む反応生成液を、濾過、洗浄した後、乾燥を行うことで、球状の樹脂粒子として、目的とするフラン樹脂粒子が取り出されるのである。
【0025】
次いで、このようにして取り出された球状フラン樹脂粒子は、ロータリー式外熱炉等の装置を用いて、窒素雰囲気下において、常法に従って、炭素化せしめられるのであるが、有利には、400〜850℃の温度で焼成されて、炭素化されることで、球状炭素粒子が得られる。なお、窒素以外でも、ヘリウム、アルゴン等の非酸化性雰囲気下において、炭素化せしめることも可能である。
【0026】
そして、かかる得られた球状炭素粒子には、適当な賦活処理が施されることによって、目的とする球状活性炭粒子が形成され、これが、本発明に従う経口投与用吸着剤として、用いられることとなるのである。なお、そのような球状炭素粒子の賦活処理は、常法に従って実施することが出来、例えば、スチームや炭酸ガス等の炭素と反応性を有する気流中において、500〜1000℃の温度で賦活処理を実施することにより、目的とする活性炭粒子が有利に形成せしめられ得るのである。なお、この賦活工程は、上記した炭素化工程に引き続いて、連続して行なうことが出来る他、別個の工程として独立して実施することも、可能である。
【0027】
また、上記した賦活工程の後に、得られた球状活性炭粒子に対して、その表面の官能基の調整や選択吸着性の調整等のために、酸化処理や還元処理を、単独で、或いはそれらを組み合わせて、実施することも出来る。その際、酸化処理は、一般に、酸化性雰囲気中で、400〜550℃の温度で酸化せしめることによって実施され、また、還元処理は、例えば、窒素ガスのような不活性ガス雰囲気中において、700〜900℃の温度で処理することにより、実施されることとなる。このような酸化処理や還元処理にて表面改質された球状活性炭粒子は、その表面に、酸性点と塩基性点とがバランス良く付加せしめられたものとなり、経口投与されて、腸管内の有毒物質の吸着特性が、有利に高められ得たものとなるのである。
【0028】
さらに、そのような球状活性炭粒子からなる経口投与用吸着剤は、その投与目的に応じて、腎疾患の患者等に対して経口投与されることとなるが、その投与形態としては、散剤、顆粒、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、懸濁剤、スティック剤、分封包装体、乳剤、ゼリー剤等の、従来と同様な形態が採用されることとなる。なお、カプセル剤とされる場合には、従来のゼラチンの他に、必要に応じて、腸溶性のカプセルを用いることも出来、また、錠剤として用いる場合には、体内で元の微小粒体に解錠されるようにすることが必要であり、更に、他の薬剤や電解質調節剤等と配合した複合剤の形態において用いることも、可能である。
【0029】
かくの如くして得られた、本発明に従う経口投与用吸着剤は、球状フラン樹脂粒子を原料として得られる球状活性炭粒子にて、構成されるものであるところから、尿毒症関連マーカーとして重要なインドキシル硫酸を始め、インドール酢酸やインドールのような毒性物質の吸着能が高いという優れた特徴を発揮するものであるが、その理由は、未だ定かではない。しかし、本発明者の推測によれば、本発明にて原料とされるフラン樹脂は、炭素と水素と酸素の原子から構成される五員環を有する樹脂であって、従来のフェノール樹脂の如く、炭素と水素と酸素の原子から構成される六員環(ベンゼン環)を主体とした樹脂を原料とするものではないために、焼成した際に生成する炭素の構造が、従来のものとは異なるものとなり、それが、従来の経口投与用吸着剤よりも優れた作用・効果をもたらしているものと考えられている。
【0030】
このように、本発明に従う経口投与用吸着剤は、医薬用として使用され、特に、腎疾患の治療乃至は予防用の経口服用剤として、好適に用いられ得るものである。即ち、腎疾患になると、腎臓の機能が低下するために、インドキシル硫酸や、インドール酢酸、インドール等の体内の有害物質を尿から体外へ十分に排泄できなくなって、尿毒症を引き起こすこととなるが、そのとき、本発明に従う経口投与用吸着剤を有効成分として用いた経口服用剤を投与して、腸内で有害物質を吸着させて、便と共に、排泄させることによって、有害物質の体内への吸収を効果的に抑えることができるのである。そして、これにより、尿毒症が改善されるため、本発明の経口投与用吸着剤を、腎疾患の治療乃至は予防のための経口服用剤として有利に用いることができるのである。なお、本発明の経口投与用吸着剤は、腎疾患以外の疾病でも、消化器官内で毒素を吸着することで、症状を抑え、又は解消することができるものであれば、何れの用途に用いても、何等差支えない。
【0031】
なお、上記の腎疾患としては、慢性腎不全、急性腎不全、慢性腎炎症候群、急性腎炎症候群、急速進行性腎炎症候群、ネフローゼ症候群、再発性・持続性血尿、慢性腎盂腎炎、急性腎盂腎炎、尿細管・間質性腎炎、糖尿病性腎症、腎硬化症、腎血管性高血圧症、又は続発性糸球体腎炎などが、挙げられる。また、腎疾患を原因とした疾患や腎疾患と併発される疾患も、本発明に係る経口投与用吸着剤の用途の対象とすることが出来る。これらのうち、尿毒症の症状を発生する腎不全の治療又は予防用の経口服用剤として、好適に用いられるのである。
【実施例】
【0032】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等が加えられ得るものであることが、理解されるべきである。なお、以下において製造された球状フラン樹脂粒子から得られる球状活性炭粒子の体積平均粒子径、比表面積、回折強度比、細孔容積、インドール吸着性能は、それぞれ、以下に示す方法に従って、評価されたものである。
【0033】
(1)体積平均粒子径
日機装株式会社製マイクロトラック粒度分布測定装置MT3200IIを用いて、各吸着
剤試料の体積平均粒子径を測定した。
【0034】
(2)比表面積
日本ベル株式会社製BELSORP−miniを用いて、比表面積を測定した。
【0035】
(3)回折強度比(R値)
株式会社リガク製RINT2000を用いて、X線回折法により、回折強度比を測定した。
【0036】
(4)細孔容積
島津製作所 細孔分布測定装置オートポア9520を用いて、細孔容積を測定した。
【0037】
(5)インドールの吸着試験
インドール30mgを、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水の300mLに溶解せしめてインドール水溶液を調製した。その後、100mLの共栓付き三角フラスコに、各吸着試料の0.02gを収容し、更に上記のインドール水溶液を50mL加えて、温度:37℃、振とう速度:120回/分、振幅:約3cmの条件下で、振とうを行った。そして、その振とうが終了した後、0.45μmメンブレンフィルタで、三角フラスコ内の内容物の濾過を行った。更に、その濾過操作において、始めに流出する濾液の約15mLを除き、その後に流出する濾液の約15mLを、試験溶液として、採取した。
【0038】
次いで、かかる得られた試験溶液を先のインドール溶液と共に用いて、それら2種類の溶液を、それぞれ、水で4倍に希釈した後、全有機体炭素計にて、全炭素濃度と無機体炭素濃度をそれぞれ測定した。そして、その得られた各溶液についての全炭素濃度から無機体炭素濃度を差し引いた値に4を乗じ、前記2種類の溶液中の有機体炭素濃度を、それぞれ求めた。
【0039】
その後、その求められた2種類の溶液の有機体炭素濃度から、下記の式(2)に従ってインドール水溶液と試験溶液のそれぞれのインドール量を求め、更に、下記の式(3)に従ってインドール吸着能(%)を算出した。
インドール量(mg)
=有機体炭素濃度(mg/L)×0.05(L)×117/(12×8)・・・(2)
インドール吸着能(%)
=[(インドール水溶液中のインドール量−試験溶液中のインドール量)/(インドー ル水溶液中のインドール量)]×100 ・・・(3)
【0040】
−実施例1−
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器内に、フルフリルアルコール100質量部、37%ホルマリン124質量部、水70質量部、ヒドロキシエチルセルロース1質量部、及び10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液2.5質量部を仕込んだ後、内容物を攪拌混合しながら、80℃まで加熱し、6時間反応させた。そして、かかる反応の後、反応容器内を室温まで冷却し、次いで濾過、洗浄することにより、硬化球状フラン樹脂粒子を製造した。
【0041】
続いて、この得られた硬化球状フラン樹脂粒子50gを、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下において、650℃で15分間加熱することで、炭素化した。更に続いて、かかる得られた球状炭素粒子を、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下において、800℃で5時間、水蒸気賦活して、球状活性炭粒子を得た。かくして得られた球状活性炭粒子の物性を、下記表1に示す。
【0042】
−実施例2−
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器内に、フルフリルアルコール100質量部、37%ホルマリン124質量部、水70質量部、アラビアゴム0.1質量部、及び10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液2.5質量部を仕込んだ後、内容物を攪拌混合しながら、80℃まで加熱し、6時間反応させた。そして、かかる反応の後、反応容器内を室温まで冷却し、次いで濾過、洗浄することにより、硬化球状フラン樹脂粒子を製造した。
【0043】
続いて、この得られた硬化球状フラン樹脂粒子50gを、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下において、650℃で15分間加熱することで、炭素化した。更に続いて、かかる得られた球状炭素粒子を、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下において、800℃で10時間、水蒸気賦活して、球状活性炭粒子を得た。かくして得られた球状活性炭粒子の物性を、下記表1に示す。
【0044】
−実施例3−
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器内に、フルフリルアルコール100質量部、37%ホルマリン124質量部、水70質量部、アラビアゴム0.1質量部、及び10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液2.5質量部を仕込んだ後、内容物を攪拌混合しながら、80℃まで加熱し、6時間反応させた。そして、かかる反応の後、反応容器内を室温まで冷却し、次いで濾過、洗浄することにより、硬化球状フラン樹脂粒子を製造した。
【0045】
続いて、この得られた硬化球状フラン樹脂粒子50gを、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下において、650℃で15分間加熱することで、炭素化した。更に続いて、かかる得られた球状炭素粒子を、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下において、800℃で3時間、水蒸気賦活して、球状活性炭粒子を得た。かくして得られた球状活性炭粒子の物性を、下記表1に示す。
【0046】
−実施例4−
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器内に、フルフリルアルコール100質量部、37%ホルマリン124質量部、水70質量部、ヒドロキシエチルセルロース1質量部、及び10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液2.5質量部を仕込んだ後、内容物を攪拌混合しながら、80℃まで加熱し、6時間反応させた。そして、かかる反応の後、反応容器内を室温まで冷却し、次いで濾過、洗浄することにより、硬化球状フラン樹脂粒子を製造した。
【0047】
続いて、この得られた硬化球状フラン樹脂粒子50gを、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下において、650℃で15分間加熱することで、炭素化した。更に続いて、かかる得られた球状炭素粒子を、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下において、900℃で5時間、水蒸気賦活して、球状活性炭粒子を得た。かくして得られた球状活性炭粒子の物性を、下記表1に示す。
【0048】
−比較例1−
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器内に、フェノール100質量部、37%ホルマリン104質量部、水85質量部、アラビアゴム0.05質量部、及び10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液10質量部を仕込んだ後、内容物を攪拌混合しながら、80℃まで加熱し、6時間反応させた。そして、かかる反応の後、反応容器内を室温まで冷却し、次いで濾過、洗浄することにより、硬化球状フェノール樹脂粒子を製造した。
【0049】
続いて、この得られた硬化球状フェノール樹脂粒子50gを、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下において、650℃で15分間加熱することで、炭素化した。更に続いて、かかる得られた球状炭素粒子を、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下において、800℃で5時間、水蒸気賦活して、球状活性炭粒子を得た。かくして得られた球状活性炭粒子の物性を、下記表1に示す。
【0050】
−比較例2−
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器内に、フェノール100質量部、37%ホルマリン104質量部、水85質量部、アラビアゴム0.03質量部、及び10%ドデシルベンゼンスルホン酸水溶液10質量部を仕込んだ後、内容物を攪拌混合しながら、80℃まで加熱し、6時間反応させた。そして、かかる反応の後、反応容器内を室温まで冷却し、次いで濾過、洗浄することにより、硬化球状フェノール樹脂粒子を製造した。
【0051】
続いて、この得られた硬化球状フェノール樹脂粒子50gを、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下において、650℃で15分間加熱することで、炭素化した。更に続いて、かかる得られた球状炭素粒子を、外熱式ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下において、800℃で10時間、水蒸気賦活して、球状活性炭粒子を得た。かくして得られた球状活性炭粒子の物性を、下記表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
かかる表1の結果から明らかな如く、本発明に従う実施例1〜4において得られた球状活性炭粒子は、何れも、体積平均粒子径が10〜1000μmの範囲内の粒子径を有するものであって、良好な球状の活性炭粒子であり、また、この本発明に従って製造された球状活性炭粒子は、インドールのような毒性物質の吸着性が優れていることが認められた。そして、このうち、実施例1と実施例4との対比により、回折強度比(R値)は1.4未満であるほうが、比表面積に対する高いインドール吸着性能を得ることが出来ることが認められる。また、実施例1と実施例3との対比により、BET法によって求められる比表面積が900m2 /g以上、1500m2 /g以下であることで、高いインドール吸着性能を得ることが出来ることが認められる。これに対して、比較例1〜2においてフェノールを原料として用いて得られる球状活性炭粒子は、インドール吸着性能が低く、目的とする球状活性炭粒子が得られなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルフリルアルコールとアルデヒド類とを触媒及び保護コロイドの存在下に反応させて得られる球状フラン樹脂粒子を、炭素化、賦活化して、形成された球状活性炭粒子であって、平均粒子径が10μm以上、1000μm以下であることを特徴とする経口投与用吸着剤。
【請求項2】
前記球状活性炭粒子が、式(1):
R=(I15−I35)/(I24−I35) (1)
〔但し、式中、I15は、X線回折法による回折角(2θ)が15°における回折強度であり、I35は、X線回折法による回折角(2θ)が35°における回折強度であり、I24は、X線回折法による回折角(2θ)が24°における回折強度である〕
で求められる回折強度比(R値)が1.4未満である特性を有している請求項1に記載の経口投与用吸着剤。
【請求項3】
BET法によって求められる比表面積が、900m2 /g以上、1500m2 /g以下であり、且つ細孔直径20〜15000nmの細孔容積が、0.01mL以上、0.1mL/g以下である請求項1又は請求項2に記載の経口投与用吸着剤。
【請求項4】
前記触媒が、酸触媒であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の経口投与用吸着剤。
【請求項5】
前記酸触媒が、炭素数10以上のアルキルベンゼンスルホン酸であることを特徴とする請求項4に記載の経口投与用吸着剤。
【請求項6】
前記保護コロイドが、水溶性高分子であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の経口投与用吸着剤。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか一つに記載の経口投与用吸着剤を、有効成分として含有する消化器官内の毒素吸着用経口服用剤。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6の何れか一つに記載の経口投与用吸着剤を、有効成分として含有する腎疾患の治療乃至は予防用経口服用剤。
【請求項9】
前記腎疾患が、慢性腎不全、急性腎不全、慢性腎炎症候群、急性腎炎症候群、急速進行性腎炎症候群、ネフローゼ症候群、再発性・持続性血尿、慢性腎盂腎炎、急性腎盂腎炎、尿細管・間質性腎炎、糖尿病性腎症、腎硬化症、腎血管性高血圧症、又は続発性糸球体腎炎であることを特徴とする請求項8に記載の腎疾患の治療乃至は予防用経口服用剤。


【公開番号】特開2013−35781(P2013−35781A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173254(P2011−173254)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000117102)旭有機材工業株式会社 (235)
【Fターム(参考)】