説明

経口摂取用組成物

【課題】呈味良く植物由来成分を摂取するため組成物及び当該組成物を含有又は有効成分とする健康維持剤を提供すること。
【解決手段】タマネギ外皮抽出物、桑葉加工品及び明日葉加工品を含有する経口摂取用組成物又は当該組成物を有効成分する健康維持剤が提供される。また、タマネギ外皮抽出物/桑葉加工品の重量比が2以下であり、桑葉加工品/明日葉加工品の重量比が12以下であり、かつ桑葉加工品及び明日葉加工品/タマネギ外皮抽出物の重量比が6以上である経口摂取用組成物又は当該組成物を有効成分とする健康維持剤が提供され、あるいは3重量%以上のタマネギ外皮抽出物が含有されている経口摂取用組成物又は当該組成物を有効成分とする健康維持剤が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呈味良く植物由来成分を摂取するための組成物及び当該組成物を有効成分とする健康維持剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タマネギの外皮汁は家庭で作られて、健康目的に飲まれている。例えば、タマネギ5個分の薄皮と水1リットルを用意し、まず薄皮をよく水洗する。洗浄後5個分の薄皮を1リットルの水で煎じ、10〜15分間加熱沸騰後、弱火にする。煮出した後、ガーゼ又は茶漉しで薄皮と煮汁を分離し、煮汁を1回に約200ml前後、1日2回程飲用する。この煮汁には、血糖値や血圧を下降させるケルセチン等の成分が含有されていることが知られている。また、ケルセチンによるアルドースは還元酵素の阻害により、糖尿病の合併症の発症抑制も期待されている。
【0003】
本発明者らはこのタマネギ外皮汁の風味改善に注力し、還元剤存在下でタマネギ外皮エキスを製造する方法を提供している(特許文献1)。また健康素材の開発により、タマネギ外皮抽出物も市販されている(タマネギ外皮エキス末:太邦社製)。
【0004】
タマネギの外皮には、苦味及び渋味成分が含まれ、上記方法で製造された抽出物や市販のエキス末においても、独特の苦み、刺激性が残存している。このため、タマネギ外皮抽出物の風味の改善が求められている。一方、健康志向食品はその生理活性に着目して種々の機能性素材を組み合わせて作製されているのが現状であり、官能面、特に風味や味については甘味料や香料の使用により改善が図られているに過ぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−51722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、タマネギ外皮抽出物の風味を改善し、かつ健康志向性の向上した健康食品組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記現状に鑑み、タマネギ外皮抽出物の風味を改善し、かつ健康志向性が向上した食品組成物の開発に成功し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明を概説すると、本発明の第1の発明は、経口摂取用組成物であって、タマネギ外皮抽出物、桑葉加工品及び明日葉加工品を含有することを特徴とする。第1の発明の態様としては、タマネギ外皮抽出物/桑葉加工品の重量比が2以下であり、桑葉加工品/明日葉加工品の重量比が12以下であり、かつ桑葉加工品及び明日葉加工品/タマネギ外皮抽出物の重量比が6以上である経口摂取用組成物が提供され、あるいは3重量%以上のタマネギ外皮抽出物が含有されている経口摂取用組成物が提供される。また、タマネギ外皮抽出物の一日摂取量が30〜200mg/日となるように配合されていることを特徴とする経口摂取用組成物も提供される。
【0009】
本発明の第2の発明は、健康維持剤に関し、タマネギ外皮抽出物、桑葉加工品及び明日葉加工品を含有又は有効成分とすることを特徴とする。第2の発明の態様としては、タマネギ外皮抽出物/桑葉加工品の重量比が2以下であり、桑葉加工品/明日葉加工品の重量比が12以下であり、かつ桑葉加工品及び明日葉加工品/タマネギ外皮抽出物の重量比が6以上である健康維持剤が提供され、あるいは3重量%以上のタマネギ外皮抽出物が含有されている健康維持剤が提供される。また、タマネギ外皮抽出物の一日摂取量が30〜200mg/日となるように配合されていることを特徴とする健康維持剤も提供される。
【発明の効果】
【0010】
以上、本発明により、タマネギ外皮抽出物が有する好ましくない風味を桑葉加工品、明日葉加工品を配合することにより改善した、呈味性の良い、かつ血液の恒常性維持に優れた組成物からなる健康志向食品素材、及び当該組成物を含有又は有効成分とする健康維持剤が提供される。本発明の組成物及び当該組成物を含有又は有効成分とする健康維持剤を摂取することにより、成人病などの予防、血糖値の改善、糖尿病の予防及び糖尿病の合併症の発症抑制の効果が期待される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0012】
本願明細書においてタマネギ外皮抽出物としては、特に限定されないが、例えば溶媒抽出物などが使用できる。用いる溶媒(溶剤)は特に限定されず、通常の極性溶媒、両極性溶媒等が使用できる。溶剤としては、例えば、水、有機溶媒またはそれを含む溶剤、水と有機溶媒との混合液等が使用できる。有機溶媒とは、例えば低級アルコール、エーテル類、ハロゲン化炭化水素、ニトリル類、エステル類、ケトン類である。作業性の面から、溶剤としてはエタノール、メタノール又は酢酸エチルが好ましい。有機溶媒は1種類で行ってもよく、2種類以上を混合して使用しても良い。
【0013】
また、これらの抽出物を噴霧乾燥(例えばスプレードライ等)あるいは凍結乾燥するなどの手段で得られたタマネギ外皮抽出物の固形化物分、またはデキストリンなどの賦形剤を添加混合し噴霧乾燥あるいは凍結乾燥するなどの手段で得られたタマネギ外皮抽出物を含有する組成物を本発明のタマネギ外皮抽出物として使用できる。
【0014】
桑葉は、古くから桑粥や桑茶として糖尿病の予防に利用されてきた。最近では、血糖上昇を抑制し、血中コレステロールや中性脂肪の値を改善し、肝機能を改善する効果があることが示されている。
【0015】
本発明において桑葉加工品とは、クワ科の植物の葉に加工を施したもののことを言う。本発明に使用される桑葉加工品としては、特に限定されないが、乾燥桑葉、桑葉の細片や粉末、その懸濁液、桑葉抽出液、及び桑葉抽出液をさらに乾燥させた抽出粉末が例示される。このような桑葉加工品としては、桑葉を熱風乾燥し殺菌、粉砕した桑葉粉末や桑葉から溶媒抽出し、噴霧乾燥あるいは凍結乾燥するなどの手段で得られた抽出粉末が例示される。
【0016】
明日葉は、セリ科の大型多年性草本である。明日葉は、様々な健康促進効果を奏することで知られており、例えば、抗菌作用、抗腫瘍作用、胃酸分泌抑制作用、抗癌効果、神経成長因子(NGF)産生増強作用、肝細胞増殖因子産生増強作用が知られている。また、明日葉はそのインスリン様作用により、抗糖尿病作用があることも知られている。
【0017】
本発明において明日葉加工品とは、明日葉の果実、種子、種皮、花、葉、茎、根、根茎、及び/又は植物全体に加工を施したものことを言う。本発明に使用される明日葉加工品としては、特に限定されないが、明日葉の茎及び/又は葉の細片や粉末、その懸濁液、明日葉の茎及び/又は葉の抽出液、明日葉の茎及び/又は葉の抽出液を乾燥させた抽出粉末が例示される。このような明日葉加工品としては、明日葉の茎及び/又は葉を熱風乾燥し殺菌、粉砕した明日葉粉末や明日葉から溶媒抽出し、噴霧乾燥あるいは凍結乾燥するなどの手段で得られた抽出粉末が例示される。
【0018】
さらに、本発明の組成物はタマネギ外皮抽出物の機能性のみならず、桑葉、明日葉が有している有用な生理活性をも発揮しうるという優れた性質も有している。
【0019】
本発明の経口摂取用組成物は前記の成分を配合した組成物である。特に本発明を限定するものではないが、各成分の配合比の好適な例としては、
(1)タマネギ外皮抽出物/桑葉加工品の重量比が2以下、好ましくは1.8以下、
(2)桑葉加工品/明日葉加工品の重量比が12以下、好ましくは10以下、かつ
(3)桑葉加工品及び明日葉加工品/タマネギ外皮抽出物の重量比が6以上、好ましくは6.3以上、
が挙げられる。上記の配合比とすることにより、タマネギ外皮抽出物の苦さ、刺激性がマスクされた組成物とすることができる。
【0020】
有効成分として含有されるタマネギ外皮抽出物の機能を十分に発揮させる観点からは、本発明の経口摂取用組成物には、3重量%以上のタマネギ外皮抽出物が含有されていることが好ましく、5重量%以上のタマネギ外皮抽出物が含有されていることがより好ましい。また、タマネギ外皮抽出物の含有量に上限は特にないが、他の成分の配合の観点からは13.5重量%以下、好ましくは12重量%以下の含有量が例示される。
【0021】
本発明の組成物の形状は特に限定されず、固形、半固形又は液状とすることができる。液状の組成物は、上記の組成を満たす固形分が適切な溶媒に溶解もしくは懸濁されたものが例示される。
【0022】
本発明の経口摂取用組成物の一例としては、タマネギ外皮抽出物の一日摂取量が30〜200mg/日に設定された組成物が例示される。桑葉加工品、明日葉加工品は上記の配合比を満たす範囲で前記組成物に配合されることが好ましい。例えば、桑葉加工品の一日摂取量が50〜900mg/日、明日葉加工品の一日摂取量が60〜1000mg/日と設定された組成物が例示される。
【0023】
本発明の食品組成物を製造する場合、タマネギ外皮抽出物、桑葉加工品及び明日葉加工品以外の成分としては任意のもの、例えば、賦形剤、調味料、着色料、pH調整剤が使用できる。
【0024】
本発明の食品組成物を簡便に摂食するためには、公知の賦形剤を用いて、錠剤、顆粒状、カプセル状又は液状の食品とすればよい。また、本発明の経口摂取用組成物を任意の飲食品に添加して製造される食品組成物も本発明に包含される。
【0025】
上記の通り、本発明の経口摂取用組成物は、種々の生理活性を有する成分を含有しており、健康維持剤としても使用することができる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例をもって本発明を更に具体的に示すが、本発明は以下の実施例の範囲のみに何ら限定されるものではない。
【0027】
以下の実施例で調製した各種試料は、食品開発担当の5名のパネラーが官能評価試験によって評価した。用いたその評価基準を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
実施例1
(1)食品組成物の調製
官能評価試験に使用するため、以下の方法にて錠剤型の食品組成物を調製した。タマネギ外皮抽出物としてタマネギ外皮の熱水抽出液のスプレードライ粉末化物(太邦社製)、桑葉粉末として桑葉を収穫後に裁断、熱風乾燥した後、殺菌、粉砕した市販の桑葉粉末を使用した。
【0030】
配合量を表2記載の通りとなるように、タマネギ外皮抽出物、桑葉粉末をおよび賦形剤を混合した。なお、賦形剤としては結晶セルロース、ショ糖脂肪酸エステルおよび微粒二酸化ケイ素の混合物を用いた。
【0031】
【表2】

【0032】
(2)官能評価試験
表2の配合で調製した試料の官能評価結果を表3に示す。表3に示すように桑葉粉末を添加することにより、タマネギ外皮抽出物の苦さや刺激性は感じられなくなった。すなわち、タマネギ外皮抽出物180mgに対して桑葉粉末100mg以上(タマネギ外皮抽出物/桑葉粉末が1.8以下:重量比)を配合した場合にタマネギ外皮抽出物の苦さ、刺激性が効果的にマスクされることが明らかとなった。しかし桑葉の添加量に応じて桑葉のえぐ味や青臭さが増えることにより、総合評価としては低い評価になった。
【0033】
【表3】

【0034】
実施例2
(1)食品組成物の調製
実施例1と同様にして、表4記載の通りとなるように、タマネギ外皮抽出物、桑葉粉末、明日葉粉末及び賦形剤を混合した。タマネギ外皮抽出物、桑葉粉末及び賦形剤としては実施例1−(1)と同じものを使用した。明日葉粉末としては明日葉を収穫後に裁断、熱風乾燥した後、殺菌、粉砕した市販の明日葉粉末を使用した。
【0035】
【表4】

【0036】
(2)官能評価試験
表4の配合で調製した試料の官能評価結果を表5に示す。表5に示すように明日葉粉末を添加することにより、桑葉のえぐ味や青臭さを軽減することが可能であり、総合評価としては高い評価になった。桑葉粉末600mgに対して明日葉粉末60mg以上(桑葉粉末/明日葉粉末が10以下:重量比)で配合することにより、桑葉に由来するえぐ味、青臭さが顕著に低減された。
【0037】
【表5】

【0038】
実施例3
(1)食品組成物の調製
実施例1及び2と同様にして、表5記載の通りとなるように、タマネギ外皮抽出物、桑葉粉末、明日葉粉末及び賦形剤を混合した。タマネギ外皮抽出物、桑葉粉末及び賦形剤としては実施例1−(1)と同じものを使用した。明日葉粉末としては実施例2−(1)と同じものを使用した。
【0039】
【表6】

【0040】
(2)官能評価試験
表6の配合で調製した試料の官能評価結果を表7に示す。表7に示すように桑葉粉末600mgと明日葉粉末660mgを添加することにより、タマネギ外皮抽出物を200mg配合した場合(桑葉粉末と明日葉加工品/タマネギ外皮抽出物が6以上:重量比)まで苦さや刺激性を抑えることが可能であり、タマネギ外皮抽出物を高含し、明日葉と桑葉の生理活性を保持し、かつ呈味性の良い組成物の提供が可能になった。
【0041】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の組成物は、呈味が良く、さらには血糖値の改善、糖尿病の予防及び糖尿病の合併症の発症抑制の効果が期待されるため、飲食品あるいは医薬品として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タマネギ外皮抽出物、桑葉加工品及び明日葉加工品を含有する経口摂取用組成物。
【請求項2】
タマネギ外皮抽出物/桑葉加工品の重量比が2以下であり、桑葉加工品/明日葉加工品の重量比が12以下であり、かつ桑葉加工品及び明日葉加工品/タマネギ外皮抽出物の重量比が6以上である請求項1記載の経口摂取用組成物。
【請求項3】
3重量%以上のタマネギ外皮抽出物が含有されている請求項1記載の経口摂取用組成物。
【請求項4】
タマネギ外皮抽出物の一日摂取量が30〜200mg/日となるように配合されていることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項5】
タマネギ外皮抽出物、桑葉加工品及び明日葉加工品を含有する健康維持剤。
【請求項6】
タマネギ外皮抽出物/桑葉加工品の重量比が2以下であり、桑葉加工品/明日葉加工品の重量比が12以下であり、かつ桑葉加工品及び明日葉加工品/タマネギ外皮抽出物の重量比が6以上である請求項5記載の健康維持剤。
【請求項7】
3重量%以上のタマネギ外皮抽出物が含有されている請求項5記載の健康維持剤。
【請求項8】
タマネギ外皮抽出物の一日摂取量が30〜200mg/日となるように配合されていることを特徴とする請求項5記載の組成物。

【公開番号】特開2010−37333(P2010−37333A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160303(P2009−160303)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(302019245)タカラバイオ株式会社 (115)
【Fターム(参考)】