説明

経口摂取用組成物

【課題】スチルベン系化合物及びその多量体含有植物抽出物を含有する、苦味、渋味が軽減された経口摂取用組成物を提供する。
【解決手段】(a)スチルベン系化合物及びその多量体から選ばれる1種以上を含有する植物抽出物と、(b)高度分岐鎖環状デキストリン、動物性タンパク質及び動物由来ペプチドから選ばれる1種以上とを含有する経口摂取用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物抽出物特有の苦味、渋味が軽減された植物抽出物含有経口摂取用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
レスベラトロールに代表されるスチルベン系化合物及びその多量体は、グネツム科植物(非特許文献1)、ぶどう等に含まれており(非特許文献2−5)、古くから抗菌作用、抗酸化作用、突然変異誘発抑制作用、抗血小板作用、脂質代謝改善作用等(非特許文献6)を有することが認められている。しかし、最近において整形外科領域における骨芽細胞増殖作用(非特許文献7−8)のみならずサーチュインデアセチラーゼの賦活作用があることからカロリーリストラクションに深く関わることが判明し、またシクロオキシゲナーゼ抑制作用を有することも報告されたことから抗加齢、抗血管新生作用に加えて新たな切り口からの抗炎症作用も見直され(非特許文献9)、さらにアルツハイマー症候群に対する予防効果も判明した(非特許文献10)。かかる観点からスチルベン系化合物及びその多量体を含有する植物抽出物を配合した組成物は、すでに機能性食品等として流通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許公開2007−106697
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J Agric Food Chem 2009;7:2544-9
【非特許文献2】J Nat Prod 1998;61:655-7
【非特許文献3】Phytochem 2003;62:601-6
【非特許文献4】J Agric Food Chem 2003;51:26-31
【非特許文献5】Am J Enol Vitic 1997;48:169-176
【非特許文献6】Science 1997;275:(5297)218-220
【非特許文献7】Cells Tissues Organs. 2009;189(1-4):93-7
【非特許文献8】Int J Mol Med. 2006 18:565-70
【非特許文献9】Nat Rev Drug Discov 2006;5:493-506
【非特許文献10】J Neurochem. 2009;110:1445-56.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記スチルベン系化合物又はその多量体を含有する植物抽出物には、特有の苦味、渋味があり、これを経口摂取しようとした場合、不快なものになるという問題がある。特に摂取を容易にするため、液剤や、固形剤としての口中溶解又は口中分散性の製剤とした場合には、口腔全体に苦味、渋味成分が分散してその苦味、渋味が強く感じられるため、使用者の使用コンプライアンスを良好に維持するのが困難であった。
従って、本発明の課題は、スチルベン系化合物又はその多量体含有植物抽出物を含有する、苦味、渋味が軽減された経口摂取用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、これらの植物抽出物の苦味、渋味を軽減すべく種々検討した結果、これらの植物抽出物に高度分岐鎖環状デキストリン、動物性タンパク質又は動物由来ペプチドを配合すれば、これらの植物抽出物特有の苦味、渋味が顕著に軽減され、口中で溶解又は分散する形態の組成物、又は液剤としても継続して摂取可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は(a)スチルベン系化合物及びその多量体から選ばれる1種以上を含有する植物抽出物と、(b)高度分岐鎖環状デキストリン、動物性タンパク質及び動物由来ペプチドから選ばれる1種以上とを含有する経口摂取用組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スチルベン系化合物又はその多量体を含有する植物抽出物特有の苦味、渋味が軽減されることから、これらを含む機能性食品や医薬品を継続して使用することが可能となった。特に、口中溶解型や口中分散型、又は液剤の経口摂取用組成物においても苦味、渋味が軽減できたことは、嚥下機能の低下した高齢者等の継続服用上重要である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の経口摂取用組成物は、(a)スチルベン系化合物及びその多量体から選ばれる1種以上を含有する植物抽出物と、(b)高度分岐鎖環状デキストリン、動物性タンパク質及び動物由来ペプチドから選ばれる1種以上とを含有するものである。
【0010】
成分(A)の植物抽出物に含まれるスチルベン系化合物は、次の一般式(1)
【0011】
【化1】

【0012】
[式中A及びBは、同一又は異なって、ハロゲン原子、アミノ基、アミジノ基、アニリノアミド基、メルカプト基、スルホン酸基、リン酸基、ヒドロキシC1〜C5アルキル基、糖残基、−OR1(R1は水素原子、C1〜C5アルキル基、ヒドロキシC1〜C5アルキル基又はC2〜C5アルケニル基を示す。)又は−OCOR2(R2は水素原子、C1〜C5アルキル基、ヒドロキシC1〜C5アルキル基又はC2〜C5アルケニル基を示す。)を示す。n及びmは、同一又は異なって、0〜5の整数を示す。]
で表される化合物である。
【0013】
上記一般式(1)中、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。C1〜C5アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基などの直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。ヒドロキシC1〜C5アルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシn−プロピル基、ヒドロキシイソプロピル基、ヒドロキシn−ブチル基、ヒドロキシn−ペンチル基などの直鎖状又は分岐状のヒドロキシアルキル基が挙げられる。C2〜C5アルケニル基としては、ビニル基、イソプロペニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチルアリル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基などの直鎖状又は分岐状のアルケニル基が挙げられる。
【0014】
上記スチルベン系化合物及びその多量体のうち、以下に示す化合物がより好ましい。
(1)n及びmが共に0である化合物(すなわち、スチルベン)。
(2)n及びmが同一又は異なって0〜5の整数であり、置換基が全て水酸基であるスチルベン系化合物(ただし、n及びmは同時に0ではない)。具体例としては、4,4’−スチルベンジオール、3,5−スチルベンジオール、レスベラトロール等が挙げられる。
(3)n及びmが同一又は異なって0〜5の整数であり、少なくとも3位、5位、4’位に置換基が存在するスチルベン系化合物(ただし、n及びmの和は3以上である。)。具体例としては、レスベラトロール、ラポンチシン、ポリダティン、3,4’,5−スチルベントリオール−4’−グルコシド、2,3,5,4’−スチルベンテトラオール−2−グルコシドなどが挙げられる。
(4)n及びmが同一又は異なって1〜5の整数であり、少なくとも4位、4’位に置換基が存在するスチルベン系化合物。具体例としては、スチルバミジン(すなわち、4,4’−ジアミジノスチルベン)、4,4’−ジアミノスチルベン、4,4’−スチルベンジオールなどが挙げられる。
【0015】
(5)n及びmが同一又は異なって0〜5の整数であり、置換基のいずれか一つがスルホン酸基又はカルボキシ基であるスチルベン系化合物(ただし、n及びmは同時に0ではない)。具体例としては、4,4’−ジアミノ−2,2’−スチルベンジスルホン酸、2−カルボキシ−3,4’−スチルベンジオールなどが挙げられる。
(6)n及びmが同一又は異なって0〜5の整数であり、置換基のいずれか一つがアルコキシ基であるスチルベン系化合物(ただし、n及びmは同時に0ではない)。具体例としては、4−メトキシスチルベン、2,5’−ジメトキシ−4,4’−スチルベンジオールなどが挙げられる。
【0016】
(7)置換基が−OR1であるスチルベン系化合物。
(8)上記(1)〜(7)の化合物の多量体。
【0017】
スチルベン系化合物の多量体の具体例としては、α−ビニフェリン、(2R,3R)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−(3,5−ジヒドロキシフェニル)−6−[(E)−4−ヒドロキシスチリル]−2,3−ジヒドロベンゾフラン−4−オール(グネチンC)、グネチンL、グネモノサイドA、グネモノサイドC、グネモノサイドD、グネモノールK、グネモノサイドK、グネチンE、グネチンD、ε−ビニフェリン、グネツハイニンスM−Oなどが挙げられる。
【0018】
上記に示した化合物の中でも、(2)及び(3)のスチルベン系化合物が好ましく、これらに含まれる化合物の中でも、さらに3位、5位及び4’位の置換基が同一又は異なって水酸基、−OSOR2であるスチルベン系化合物が好ましく、特にレスベラトロール、ポリダティンが好ましい。また、多量体としては、α−ビニフェリン及び(2R,3R)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−(3,5−ジヒドロキシフェニル)−6−[(E)−4−ヒドロキシスチリル]−2,3−ジヒドロベンゾフラン−4−オール(グネチンC)、グネチンL、グネモノサイドA、グネモノサイドC、グネモノサイドD、グネモノールK、グネモノサイドK、グネチンE、グネチンD、ε−ビニフェリン、グネツハイニンスM−Oが好ましい。
【0019】
成分(a)のスチルベン系化合物又はその多量体を含む植物抽出物の原料としては、例えば、グネツム科植物、タデ科植物、ブドウ科植物、バイケイソウ、桑、などが挙げられる。
本発明に用いられるグネツム科植物の種子は、スチルベン系化合物の2量体である(2R,3R)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−(3,5−ジヒドロキシフェニル)−6−[(E)−4−ヒドロキシスチリル]−2,3−ジヒドロベンゾフラン−4−オール(グネチンC)、グネチンL、グネモノサイドA、グネモノサイドC、グネモノサイドDを含有する。またその根からは、3量体であるグネモノールK、グネモノサイドKが、その幹からはグネチンE、グネチンD、ε−ビニフェリンが、さらに最近には蔓部からグネツハイニンスM−Oも抽出されている。
【0020】
グネツム科の代表的な植物としてはGnetum gnemon Linn.(インドネシアではメリンジョと呼称−以下「メリンジョ」と記す)、Gnetum latifolium(Gnetaceae)、Gnetum hainanense、がある。タデ科植物としては、アイ(Polygonum tinctorium)イブキノトラノオ(Polygonum bistorta)、ソバ(Fagopyrum esculentum)、ダイオウ(Rheum spp.)、ツルドクダミ(Polygonum multiflorum)、イタドリ(Polygonum cuspidatum)などが挙げられる。この中でも、特にメリンジョ、Gnetum latifolium(Gnetaceae)、ダイオウ(Rheum spp.)、ツルドクダミ(Polygonum multiflorum)、イタドリ(Polygonum cuspidatum)はスチルベン系化合物の含有量が多いため好ましく、さらに好ましくは、グネチンCを多く含有するメリンジョ、及びヒドロキシスチルベンを多く含有するツルドクダミ(Polygonum multiflorum)とイタドリ(Polygonum cuspidatum)が好ましい。使用する部位も特に限定されるものではないが、その種子、根茎、根又は蔓が好ましい。尚、これらは1種のみ用いても良いし、2種以上併用しても良い。
【0021】
さらに、ブドウ科植物(Vitaceae)としては、ビスティス種(Vitis spp.)が挙げられる。具体的には欧、中東品種のビスティス ビニフェラ種(V.vinifra)、北米品種のビスティス ラブルスカ種(V.labrusca);ビスティス カリフォルニア種(V.California)に代表される15品種;北米ミュカディン種のビスティス ムソニャーナ種(V.Munsoniana)に代表される2品種;アジア品種のビスティス アミュレンシス種(V.Amurensis)に代表される3品種が挙げられる。このなかでもビスティス ビニフェラ種(V.vinifra)、ビスティス ラブルスカ種(V.labrusca)及び日本で開発された品種が好ましい。具体的にはイーレン(Airen),アリゴテ(Aligote),リースリング(Riesling),ソーヴィニオンブラン(Sauvignon blanc),トレッビアーノ(Trebbiano),シャルドネ(Chardonnay),シュナンブラン(Chenin blanc)、セミヨン(Semillon),ミュスカ(Muscat),カベルネソービニオン(Cabernet Sauvignon)、カリニャン(Carignan),サンソー(Cinsaut),グルナッシュノワール(Grenache Noir)、メルロ(Merlot)、マタロ(Mataro),ピノノワール(Pinot Noir)、サンジョヴェーゼ(Sangiovese)、シラー(Syrah)、ガメイ(Gamay)、テンプラニーリョ(Tempranillo)、トレッビアーノ(Trebbiano)、ゲヴェルツトラミネル(Gewurtraminer)、ツバイゲルトレーベ(Zweigltrebe)、ミュラー トゥルガウ(Muller−Thurgau)、グロロー(Grolleau)、カベルネフラン(Cabernet Franc)、プチベルド(Petit Verdot)、甲州、マスカットベリーA、グラッククイーンが挙げられる。その中でも、特にビスティス ビニフェラ種(V.vinifra)のカベルネソービニオン(Cabernet Sauvignon)、ピノノワール(Pinot Noir)、シラー(Syrah)、メルロ(Merlot)、グルナッシュ(Grenache)、カリニャン(Carignan)、ネッビオーロ(Nebbiolo)、サンジョヴェーゼ(Sangiovese)、ガメイ(Gamay)やビスティス ラブルスカ種(V.labrusca)、マスカットベリーA、グラッククイーンがスチルベン系化合物を多く含有するので好ましい。使用する部位も特に限定されるものではないが、葉又は果実(果皮、種子を含む)が好ましい。また、果実の場合は、未熟のものがより多くのスチルベン系化合物を含有するため好ましい。
【0022】
バイケイソウ(Veratrum album)は、ユリ科の植物であり、使用する部位は特に限定されるものではないが、根茎が好ましい。本発明に用いられる桑の使用する部位は特に限定されるものではないが、桑の実が好ましい。
【0023】
これらの植物からスチルベン系化合物又はその多量体を抽出するには、水及び/又は有機溶媒を用いて常法により抽出すればよい。有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ヘキサン等が挙げられるが、エタノールが特に好ましい。抽出方法としては、常温又は加熱条件下で抽出すればよい。
【0024】
本発明に用いる成分(a)の植物抽出物中のスチルベン系化合物及びその多量体の含有量は、植物抽出物の全質量(乾燥質量)を100質量%とすると、2〜90質量%、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは10〜80質量%、特に好ましくは30〜80質量%とすることができる。すなわち、本発明では、精製等を行い、スチルベン系化合物のみからなる植物抽出物を用いることもできる。
【0025】
成分(a)の植物抽出物はスチルベン系化合物及びその多量体以外にポリフェノールをさらに含有するものであっても良い。このとき、含有されているポリフェノールの種類は特に限定されないが、例えば、フラボノイド系、アントシアニン系、タンニン系等のポリフェノールが挙げられる。尚、これらは1種のみ含有していても良いし、2種以上含有していても良い。このポリフェノールの含有量は、上記植物抽出物の乾燥質量を100質量%とした場合、20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%とすることができる。
【0026】
特に、上記植物抽出物としては、メリンジョ抽出物又はブドウ抽出物が好ましい。このとき、スチルベン系化合物及びその多量体の含有量は特に限定されないが、植物抽出物の含有量(乾燥質量)を100質量%とした場合、5〜60質量%、好ましくは10〜30質量%とすることができる。
【0027】
さらに、このメリンジョ又はブドウ抽出物には、スチルベン系化合物及びその多量体以外のポリフェノール(フラボノイド系、アントシアニン系、タンニン系等のうちの少なくとも1種以上)を含有していても良い。このとき、スチルベン系化合物及びその多量体以外のポリフェノールの含有量は特に限定されないが、メリンジョ又はブドウ抽出物の含有量(乾燥質量)を100質量%とした場合、10〜60質量%、好ましくは30〜50質量%とすることができる。
【0028】
これらの植物抽出物としては市販品を用いることができ、(株)ホソダSCHのメリンジョエキス15粘調液(スチルベン系化合物として15%、スチルベン系化合物を含んだ蒸発乾固物として38%規格品)、オリザ油化株式会社のレスベラトロールp−5(粉末)、メデイエンス株式会社の「赤ワイン効果R」(粉末)、サンブライト株式会社の「VINEATROL」(粉末)等を用いることができる。
【0029】
これらの植物抽出物(a)は、その生理作用及び苦味、渋味軽減のためには、本発明の経口摂取用組成物中に乾燥質量換算で、0.2〜50質量%、さらに1〜30質量%、特に2〜20質量%含有するのが好ましい。
【0030】
本発明に用いられる(b)動物性タンパク質としては、アルブミン、カゼイン又はその塩、コラーゲン、グロブリン、牛乳中に含まれるタンパク質画分等が挙げられる。また、動物由来ペプチドとしては、動物性タンパク質の分解物が挙げられる。アルブミンとしては、卵白アルブミン、動物由来の血清アルブミンが挙げられる。カゼイン及びその塩としては、牛乳カゼイン及びその塩が好ましい。コラーゲンとしては、豚、魚、牛等から得られるコラーゲンが挙げられる。グロブリンとしては、哺乳類の血液由来のものが使用できる。牛乳中に含まれるタンパク質画分としては乳塩基性タンパク質(雪印メグミルク製MBP)、動物由来ペプチドとしては、前記動物性タンパク質の分解物の他、鶏の卵黄から抽出した蛋白を酵素分解したペプチド(ファーマフーズ社製ボーンペップ)、カゼインを酵素処理したカゼインホスホペプチド(明治フードマテリア製CPP)が使用できる。
【0031】
これらの動物性タンパク質又は動物由来ペプチドは、成分(a)の苦味、渋味を抑制する点から、成分(a)の乾燥質量100質量部に対し、5〜300質量部含有するのが好ましく、さらに10〜200質量部、特に50〜200質量部含有するのが好ましい。
【0032】
動物性タンパク質又は動物由来ペプチドの配合にあたっては、成分(a)と動物性タンパク質又は動物由来ペプチドを混合するだけでもよいが、成分(a)と動物性タンパク質又は動物由来ペプチドの混合物を溶液状態のもとで加熱する方法が、苦味、渋味抑制効果を増強させる点から好ましい。加熱条件は、40〜100℃、より好ましくは65〜100℃で、15分〜2時間、より好ましくは30分〜2時間加熱するのがよい。
【0033】
本発明に用いられる(b)高度分岐鎖環状デキストリンとしては、例えば、特開平8−134104号公報記載の方法に従い、1,4−α−グルカン分枝酵素(枝作り酵素、Q酵素)、4−α−グルカノトランスフェラーゼ(D酵素、アミロマルターゼ、不均化酵素)、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(CGTase)等の枝作り酵素を澱粉(ワキシーコーンスターチが好ましい)に作用させて得られるものが好ましい。これらの酵素は、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50から5000の範囲にあるグルカンであって、ここで、内分岐環状構造部分とはα−1,4−グルコシド結合とα−1,6−グルコシド結合とで形成される環状構造部分であり、そして外分岐構造部分とは、該内分岐環状構造部分に結合した非環状構造部分であるグルカンを生産する能力を持っている。本発明では、酵素として特にα−1,4−グルカン分岐酵素(EC2.4.1.18)を用いることが好ましい。本発明で用いる高度分岐鎖環状デキストリンとしては、市販品を用いることができ、江崎グリコ株式会社製のクラスターデキストリン(登録商標)が入手容易であり、量的な供給安定性に優れていることから好ましい。
【0034】
高度分岐鎖環状デキストリンは、成分(a)の苦味、渋味を抑制する点から、成分(a)の乾燥質量100質量部に対し、50〜5,000質量部含有するのが好ましく、さらに100〜3,000質量部、特に200〜3,000質量部含有するのが好ましい。
【0035】
高度分岐鎖環状デキストリンの配合にあたっては、成分(a)に高度分岐鎖環状デキストリン水溶液を混合し、次いで乾燥するのが好ましい。又は成分(a)と動物性タンパク質又は動物由来ペプチドとを含有する組成物に高度分岐鎖環状デキストリン水溶液を混合し、次いで乾燥するのが好ましい。
【0036】
本発明においては、動物性タンパク質又は動物由来ペプチドと高度分岐鎖環状デキストリンを併用するのが成分(a)の渋味、苦味軽減効果の点でさらに好ましい。これらの成分を併用する場合、まず、成分(a)と動物性タンパク質又は動物由来ペプチドの溶液とを混合加熱した後に高度分岐鎖環状デキストリン水溶液を添加後乾燥するのが好ましい。
【0037】
本発明の経口摂取用組成物には、前記成分以外に、他の生理活性物質、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤、矯臭剤、増量剤、pH調整剤、緩衝剤、着色剤、溶解剤等を含有させることができる。ここで他の生理活性物質としては、N−アセチルグルコサミン、グルコサミン塩酸塩、シトルリン、アンセリン、ボスウエリルセラータ抽出物(5−ロキシン)、西洋白ヤナギエキス、骨形成ペプチド(ボーンペップ)、変性及び非変性II型コラーゲン、魚骨由来カルシウム、キチン、キトサン、ビタミンD、ユビデカレノン(コエンザイムQ10)、アルブチン、レチノイン酸トコフェロール、トラネキサム酸、ルムプヤン、γ−リノレニン、低分子ヒアルロン酸、コラーゲン、L−システイン、アスコルビン酸ナトリウム、酢酸dl−α−トコフェロールを含有させることができる。また賦形剤としては乳糖、セルロース、コーンスターチ、デンプン/炭酸カルシウム混合剤等が挙げられる。結合剤としては、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、米デンプンが挙げられる。崩壊剤としては、クロスポビドン、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分アルファ化デンプンなどが挙げられる。その他、シクロデキストリン、グルコノデルタラクトンを配合することもできる。
【0038】
本発明のうち、経口摂取用組成物の形態は、経口摂取できる形態であればよく、例えば液剤をはじめ、粉末、顆粒剤、細粒剤、錠剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤等の固形剤が挙げられる。このうち、固形剤としては粉末、顆粒、錠剤、マイクロカプセル剤が好ましく、特に口中溶解又は口中分散型の形態、例えば粉末、顆粒、口中崩壊錠、口中溶解錠(チュアブル錠)等が好ましい。また液剤としてドリンクタイプの剤形が好ましい。これらの剤形は常法によって製造することができる。
【0039】
本発明の経口摂取用組成物は、後記実施例に示すようにスチルベン系化合物又はその多量体を含有する植物抽出物特有の苦味、渋味が顕著に軽減されているので、機能性食品、経口用医薬品及び化粧品として有用であり、継続して使用可能であることから、スチルベン系化合物及びその多量体の生理作用を有効に奏させることができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明の範囲は、これらの製品及び製法に限定されるものではない。
【0041】
実施例1
メリンジョエキス15粘調液(スチルベン系化合物として15%、スチルベン系化合物を含んだ蒸発乾固物として38%規格品)10gをクラスターデキストリン水溶液(30gのクラスターデキストリンを500mLの蒸留水に溶かしたもの)に加えてミキサーで混錬処理し一夜放置後、沈殿物を加圧濾過した濾液を90℃で60分間加熱殺菌を行い、凍結乾燥し液剤用の経口摂取用組成物を得た(スチルベン系化合物4.4%含有製品)。
【0042】
実施例2
赤ワイン効果R(t−レスベラトロール5%、総ポリフェノール30%含有)10gをクラスターデキストリン水溶液(190gのクラスターデキストリンを500mLの蒸留水に溶かしたもの)に加えてミキサーで混錬処理し一夜放置後、沈殿物を加圧濾過した濾液を80℃で30分間加熱殺菌を行い、凍結乾燥し液剤用の経口摂取用組成物を得た(スチルベン系化合物としてのレスベラトロール0.25%、総ポリフェノール1.5%含有製品)。
【0043】
実施例3
メリンジョエキス15粘調液(スチルベン系化合物として15%、スチルベン系化合物を含んだ蒸発乾固物として38%規格品)10gと生卵白溶液80mL(卵白アルブミンとして10g含有)をミキサーで混錬処理し室温下に一夜放置後、水浴上にて60分加熱(80〜100℃)し乾燥・粉砕し、経口摂取用組成物を得た(スチルベン系化合物10.9%含有製品)。
【0044】
実施例4
メリンジョエキス15粘調液(スチルベン系化合物として15%、スチルベン系化合物を含んだ蒸発乾固物として38%規格品)10gと生卵白溶液40mL(卵白アルブミンとして5g含有)をミキサーで混錬処理し、一夜放置後、水浴上にて60分加熱(80〜100℃)し、熱時クラスターデキストリン水溶液(10gのクラスターデキストリンを50mLの蒸留水に溶かしたもの)を加えて揺動して全体に浸透させるために、10時間室温放置した後に乾燥、粉砕して経口摂取用組成物を得た(スチルベン系化合物8%含有製品)。
【0045】
実施例5
赤ワイン効果R(t−レスベラトロール5%、総ポリフェノール30%含有)10gに水10mLを加え混合して溶液となし、これを生卵白溶液40mL(卵白アルブミンとして5g含有)とミキサーで混錬処理し、一夜放置後水浴上にて60分加熱(80〜100℃)した後、乾燥粉砕し経口摂取用組成物を得た(スチルベン系化合物としてのレスベラトロール3.3%、総ポリフェノール19.8%含有製剤)。
【0046】
実施例6
赤ワイン効果R(t−レスベラトロール5%、総ポリフェノール30%含有)10gに水10mLを加え混合して溶液となし、これを生卵白溶液40mL(卵白アルブミンとして5g含有)とミキサーで混錬処理し、一夜放置後水浴上にて60分加熱(80〜100℃)した後、熱時クラスターデキストリン水溶液(10gのクラスターデキストリンを50mLの蒸留水に溶かしたもの)を加えて揺動して全体に浸透させるために室温下に10時間放置し、最後に乾燥、粉砕を行って経口摂取用組成物を得た(スチルベン系化合物としてのレスベラトロール2%、総ポリフェノールとして12%含有製剤)。
(苦味・渋味に対する人モニター試験)
実施例3〜実施例6及び、対照例については下記の処方にてチュアブル製剤を調製し、これらをモニター20人に摂食させて、下記表2のアンケートにて苦味・渋味について官能試験を行った。その結果を表3に示す。
【0047】
官能試験用チュアブル製剤の処方:
基本佐剤:N−アセチルグルコサミン(NAG);2000mg、乳糖;1000mg、魚骨由来カルシウム;500mg(合計3500mg)
この基本佐剤に以下の等力価となした各主剤及び対照剤を配合し、さらにレモンの矯味を施し官能試験用チュアブルの系列を製剤した。
【0048】
・主剤実施例:上記の実施例に従い調整した各経口摂取用組成物
実施例3;スチルベン系化合物として2mg含有、すなわち経口摂取組成物として18.3mg
実施例4;スチルベン系化合物2mg含有、すなわち経口摂取組成物として25mg
実施例5;スチルベン系化合物としてのレスベラトロール2mg含有、すなわち経口摂取組成物として60mg
実施例6:スチルベン系化合物としてのレスベラトロール2mg含有、すなわち経口摂取組成物として100mg
・対照剤実施例:
スチルベン系化合物としてのレスベラトロール2mg含有、すなわちメデイエンス株式会社製「赤ワイン効果R」として40mg
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
表3によれば、対照については20人中18人が「強い苦味・渋味を感じる。」と答え、2人が「若干の苦味・渋味を感じる」と答えた。これに対し、実施例3〜4においては、20人中8人が、実施例5では20人中7人が、実施例6では6人が「苦味・渋味をほとんど感じない」と答え、さらには「苦味・渋味を全く感じない」と答えた人は、実施例3、4、5、6においてはおのおの、20人中6、10、5、7人であった。
【0052】
実施例7
赤ワイン効果R(t−レスベラトロール5%、総ポリフェノール30%含有)10gに水10mLを加え混合して溶液となし、これを乳塩基性タンパク質(雪印メグミルク製MBPTH)5gとミキサー混錬処理し、一夜放置後水浴上にて60分加熱(80〜100℃)した後、乾燥粉砕し経口摂取用組成物粉末を得た(スチルベノイドとしてのレスベラトロール3.3%含有製剤)
【0053】
実施例8
赤ワイン効果R(t−レスベラトロール5%、総ポリフェノール30%含有)10gに水10mLを加え混合して溶液となし、これを乳塩基性タンパク質(雪印メグミルク製MBP)5gとミキサー混錬処理し、一夜放置後水浴上にて60分加熱(80〜100℃)した後、熱時溶クラスターデキストリン水溶液(10gのクラスターデキストリンを50mLの蒸留水に溶かしたもの)を加えて揺動して全体に浸透させるために室温下に10時間放置し、最後に乾燥、粉砕を行って経口摂取用組成物を得た(スチルベノイドとしてのレスベラトロール2%含有製剤)。
【0054】
実施例9
赤ワイン効果R(t−レスベラトロール5%、総ポリフェノール30%含有)10gに水10mLを加え混合して溶液となし、これを鶏卵黄由来ペプチド(ファーマフーズ社製ボーンペップ)5gとミキサー混錬処理し、一夜放置後水浴上にて60分加熱(80〜100℃)した後、乾燥粉砕し経口摂取用組成物粉末を得た(スチルベノイドとしてのレスベラトロール3.3%含有製剤)。
【0055】
実施例10
赤ワイン効果R(t−レスベラトロール5%、総ポリフェノール30%含有)10gに水10mLを加え混合して溶液となし、これを鶏卵黄由来ペプチド(ファーマフーズ社製ボーンペップ)5gとミキサー混錬処理し、一夜放置後水浴上にて60分加熱(80〜100℃)した後、熱時溶クラスターデキストリン水溶液(10gのクラスターデキストリンを50mLの蒸留水に溶かしたもの)を加えて揺動して全体に浸透させるために室温下に10時間放置し、最後に乾燥、粉砕を行って経口摂取用組成物を得た(スチルベノイドとしてのレスベラトロール2%含有製剤)。
【0056】
実施例11
赤ワイン効果R(t−レスベラトロール5%、総ポリフェノール30%含有)10gに水10mLを加え混合して溶液となし、これをカゼインフォスフォペプチド(明治フードマテリア製CPP)5gとミキサー混錬処理し、一夜放置後水浴上にて60分加熱(80〜100℃)した後、乾燥粉砕し経口摂取用組成物粉末を得た(スチルベノイドとしてのレスベラトロール3.3%含有製剤)。
【0057】
実施例12
赤ワイン効果R(t−レスベラトロール5%、総ポリフェノール30%含有)10gに水10mLを加え混合して溶液となし、これをカゼインフォスフォペプチド(明治フードマテリア製CPP)5gとミキサー混錬処理し、一夜放置後水浴上にて60分加熱(80〜100℃)した後、熱時溶クラスターデキストリン水溶液(10gのクラスターデキストリンを50mLの蒸留水に溶かしたもの)を加えて揺動して全体に浸透させるために室温下に10時間放置し、最後に乾燥、粉砕を行って経口摂取用組成物を得た(スチルベノイドとしてのレスベラトロール2%含有製剤)。
【0058】
(苦味・渋味に対する人モニター試験)
実施例7〜実施例12及び、対照については下記の処方にてチュアブル製剤を調製し、これらをモニター20人に摂食させて、前記表1のアンケートにて苦味・渋味について官能試験を行った。その結果を表3に示す。
【0059】
チュアブル製剤の処方:
基本佐剤:N−アセチルグルコサミン(NAG);2000mg、乳糖;1000mg、魚骨由来カルシウム;500mg(合計3500mg)
これに以下の等力価となした主剤を配合し、さらにレモンの矯味を施しチュアブルとした。
【0060】
主剤実施例:
実施例7、9、11;スチルベノイドとしてのレスベラトロール2mg含有、すなわち経口摂取組成物として150mg
実施例8、10、12:スチルベノイドとしてのレスベラトロール2mg含有、すなわち経口摂取組成物として250mg
対 照:スチルベノイドとしてのレスベラトロール2mg含有、すなわち5%レスベラトロール含有ぶどう抽出物(メデイエンス株式会社赤ワイン効果R)として40mg
【0061】
【表3】

【0062】
表3によれば、対照については20人中18人が「強い苦味・渋味を感じる。」と答え、2人が「若干の苦味・渋味を感じる」と答えた。これに対し、実施例7〜12ではおのおの7、8、7、6、7、8人が「苦味・渋味をほとんど感じない」と答え、さらには「苦味・渋味を全く感じない」と答えた人は、実施例7〜12においてはおのおの、20人中6、9、7、11、6、10人であった。
【0063】
これにより、全ての実施例は苦味・渋味を顕著に軽減する作用を有することが確認され、加えて動物性タンパク質とクラスターデキストリンとを併用することによりさらに優れた苦味・渋味改善効果を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上により、本発明は、スチルベン化合物及びその多量体含有植物抽出物特有の苦味及び渋味を大幅に軽減することができる。これにより、食品、医薬品等に広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)スチルベン系化合物及びその多量体から選ばれる1種以上を含有する植物抽出物と、(b)高度分岐鎖環状デキストリン、動物性タンパク質及び動物由来ペプチドから選ばれる1種以上とを含有する経口摂取用組成物。
【請求項2】
前記植物抽出物が、グネツム科植物,ブドウ科植物、タデ科植物、バイケイソウ、及び桑から選ばれる植物の抽出物である請求項1記載の経口摂取用組成物。
【請求項3】
動物性タンパク質及び動物由来ペプチドが、アルブミン、カゼイン又はその塩、コラーゲン、グロブリン、牛乳中に含まれる蛋白質画分及び動物由来ペプチドから選ばれるものである請求項1又は2記載の経口摂取用組成物。
【請求項4】
スチルベン系化合物及びその多量体が、レスベラトロール、α−ビニフェリン、ε−ビニフェリン、(2R,3R)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−(3,5−ジヒドロキシフェニル)−6−[(E)−4−ヒドロキシスチリル]−2,3−ジヒドロベンゾフラン−4−オール(グネチンC)、グネチンL、グネモノサイドA、グネモノサイドC、グネモノサイドD、グネモノールK、グネモノサイドK、グネチンE、グネチンD、ε−ビニフェリン及びグネツハイニンスM−Oから選ばれる1種以上である請求項1〜3のいずれか1項記載の経口摂取用組成物。
【請求項5】
液剤、又は口中溶解若しくは口中分散性経口摂取用組成物である請求項1〜4のいずれか1項記載の経口摂取用組成物。
【請求項6】
粉末、顆粒剤、細粒剤、錠剤、カプセル剤及びマイクロカプセル剤から選ばれる形態である請求項1〜4のいずれか1項記載の経口摂取用組成物。

【公開番号】特開2011−162539(P2011−162539A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289077(P2010−289077)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(501197102)
【出願人】(510013231)
【Fターム(参考)】