説明

経口用発毛・育毛促進剤

【課題】従来のアスタキサンチン含有組成物と比較して、確実に且つ充分に発毛・育毛効果が得られる経口用発毛・育毛促進剤の提供。
【解決手段】平均粒子径が1nm〜200nmであり、且つアスタキサンチンを含有する分散粒子を含む経口用発毛・育毛促進剤。該アスタキサンチン含有分散粒子の平均粒子径は、特に20nm〜150nmであることが好ましい。該アスタキサンチンは、0.001質量%〜20質量%で含む経口用発毛・育毛促進剤であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口用発毛・育毛促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
カロテノイド類は、天然に存在する黄色から赤のテルペノイド類の色素で、植物類、藻類、及びバクテリアに見つけることができる。カロテノイド類の一種であるアスタキサンチンは、自然界では動植物界に広く分布しており、主として養殖魚や養鶏の色揚げ剤として使用されている。また、アスタキチンサンは、酸化防止効果、抗炎症効果、皮膚老化防止効果、シミやしわの形成予防効果などの機能を有することも知られている。このため、アスタキチンサンを食品、化粧品、医薬品の原材料及びそれらの加工品等へ添加することが検討・実施されている。
【0003】
このようなアスタキサンチンを利用した製品のひとつに、アスタキサンチンを含有する発毛剤や、育毛・育毛剤が提案されている。
例えば特許文献1には、10mg/mLのアスタキサンチンモノエステル試験液をマウスの背部に塗布することによって発毛効果が得られることが開示されている。
また特許文献2には、アスタキサンチンを含む乳化液から得られた包接体及び、アスタキサンチンを内包するリポソームを調製し、マウス又はヒトの皮膚に塗布することによっての発毛又は育毛効果が得られたことが開示されている。
【0004】
一方、特許文献3には、アスタキサンチンを有効成分とするカルシトニン遺伝子関連ペプチド産生及び放出促進用組成物並びにインスリン様成長因子産生及び放出促進用組成物が開示されている。特許文献3には、カルシトニン遺伝子及びインスリン様成長因子に関して種々の作用効果、例えば、発毛・育毛、メタボリックシンドローム、生活習慣病等が列記されており、アスタキサンチン10mg/kgの濃度で生理食塩水に懸濁・分散させてマウスに経口投与した結果、血中のインスリン様成長因子の濃度が上昇することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−1971号公報
【特許文献2】特開2009−179628号公報
【特許文献3】特開2009−269832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アスタキサンチンは強い着色性物質であり、発毛又は育毛の観点から目的部位に直接塗布すると塗布部位が赤く着色するなどの使いにくい面がある。一方、アスタキサンチンを発毛・育毛目的で単に経口投与した場合には、充分に初期の目的が達成されない場合がある。
従って、本発明の目的は、従来のアスタキサンチンを含有する組成物と比較して確実に且つ充分に発毛・育毛効果が得られる経口用発毛・育毛促進剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のとおりである。
[1] 平均粒子径が1nm〜200nmであり、且つアスタキサンチンを含有する分散粒子を含む経口用発毛・育毛促進剤。
[2] 前記アスタキサンチン含有分散粒子の平均粒子径が20nm〜150nmである[1]記載の経口用発毛・育毛促進剤。
[3] 前記アスタキサンチンを0.001質量%〜20質量%で含む[1]又は[2]記載の経口用発毛・育毛促進剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、皮膚などに塗布する場合と比較して確実に且つ充分に発毛・育毛効果が得られる経口用発毛・育毛促進剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1にかかるアスタキサンチン分散物投与群とアスタキサンチンオイル投与群との血中アスタキサンチン濃度を比較したグラフである。
【図2】本発明の実施例1にかかるアスタキサンチン投与群と未投与群におけるα-SMA抗体陽性毛包の数を比較したグラフである。
【図3】本発明の実施例1にかかるアスタキサンチン投与群と未投与群におけるα-SMA抗体陽性毛包の皮膚内での長さを比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の経口用発毛・育毛促進剤は、平均粒子径が1nm〜200nmであり、且つアスタキサンチンを含有する分散粒子を含む経口用発毛・育毛促進剤である。
本発明によれば、アスタキサンチンを、平均粒子径1nm〜200nmの分散粒子として含む経口用発毛・育毛促進剤であるので、アスタキサンチンの体内への吸収効率が向上し、毛周期のうち毛包の休止期から成長期への促進が効果的に誘導される。この結果、アスタキサンチンを単に皮膚に塗布するよりも、確実に且つ充分に発毛・育毛効果が得られる。
【0011】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
また、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
また、本発明において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
以下に本発明を説明する。
【0012】
本発明の経口用発毛・育毛促進剤は、アスタキサンチンを含有する分散粒子を含有する分散物であり、アスタキサンチンを含有する分散粒子が油相成分として水相に分散された水中油型のエマルションの形態を採るものである。ここで、本発明の経口用発毛・育毛促進剤に含まれるアスタキサンチン含有分散粒子は、アスタキサンチンを含有し、油相成分として水相中に分散される水中油型の分散粒子であり、本発明で規定する粒子径の範囲内であれば、油滴の状態であっても部分的に不溶の固形物であってもよい。このような油滴及び固形物を総称して、本明細書では分散粒子と称する。
【0013】
本発明の経口用発毛・育毛促進剤中の分散粒子は、平均粒子径が1nm〜200nmのものである。分散粒子の平均粒子径が200nmを超える場合には、経口投与してもアスタキサンチンによる発毛・育毛効果が期待できない。分散粒子の平均粒子径は、確実な発毛・育毛効果の観点から20nm〜200nmが好ましく、20nm〜150nmがより好ましい。
【0014】
本発明における分散粒子の平均粒子径は、市販の粒度分布計等で計測することができる。
粒度分布測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
本発明における分散粒子の粒径測定では、粒径範囲及び測定の容易さから、動的光散乱法を適用すること好ましい。
動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。
【0015】
本発明における分散粒子の粒径は、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)を用いて測定した値であり、具体的には、以下のよう計測した値を採用する。
即ち、粒径の測定方法は、本発明のアスタキサンチン含有分散物から分取した試料に含まれる油成分の濃度が1質量%になるように純水で希釈を行い、石英セルを用いて測定を行う。粒径は、試料屈折率として1.600、分散媒屈折率として1.333(純水)、分散媒の粘度として純水の粘度を設定した時のメジアン径として求めることができる。
以下、本発明の発毛・育毛促進剤の各成分について説明する。
【0016】
本発明におけるアスタキサンチンとしては、アスタキサンチン及びアスタキサンキチンのエステル等の誘導体の少なくとも一方を包含する。本発明では特に断らない限り、これらを総称して「アスタキサンチン」とする。
【0017】
本発明で用いられるアスタキサンチンは、植物類、藻類及びバクテリア等の天然物のものの他、常法に従って得られるものであれば、いずれのものも使用することができる。
前記天然物とは、例えば、赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌、オキアミ等が挙げられる。また、その培養物からの抽出物等からの抽出物を挙げることができる。
前記アスタキサンチンは、アスタキサンチンを含有する前記他の天然物から分離・抽出(さらに必要に応じて適宜精製)したアスタキサンチン含有オイルとして、本発明の組成物に含まれていてもよい。
前記アスタキサンチンとしては、ヘマトコッカス藻から抽出されたもの(ヘマトコッカス藻抽出物ともいう。)が、品質、生産性の点から特に好ましい。
【0018】
前記アスタキサンチンは、アスタキサンチンを含有する天然物から分離・抽出したアスタキサンチン含有オイルとして、本発明の組成物に含まれていてもよい。このようなアスタキサンチン含有オイルとして、例えば、赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌等を培養し、その培養物からの抽出物、南極オキアミ等からの抽出物を挙げることができる。
ヘマトコッカス藻抽出物(ヘマトコッカス藻由来色素)は、オキアミ由来の色素や、合成されたアスタキサンチンとはエステルの種類、及び、その含有率の点で異なることが知られている。
【0019】
本発明において用いることができるアスタキサンチンは、前記抽出物、また更にこの抽出物を必要に応じて適宜精製したものでもよく、また合成品であってもよい。
前記アスタキサンチンとしては、ヘマトコッカス藻から抽出されたもの(ヘマトコッカス藻抽出物ともいう。)が、品質、生産性の点から特に好ましい。
【0020】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物の由来としては、具体的には、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)、ヘマトコッカス・ラキュストリス(Haematococcus lacustris)、ヘマトコッカス・カペンシス(Haematococcus capensis)、ヘマトコッカス・ドロエバゲンシス(Haematococcus droebakensis)、ヘマトコッカス・ジンバビエンシス(Haematococcus zimbabwiensis)等が挙げられる。
【0021】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物は、上記の原料を、必要に応じて、例えば特開平5−68585号公報等に開示された方法により細胞壁を破砕して、アセトン、エーテル、クロロホルム及びアルコール(エタノール、メタノール等)等の有機溶剤や、超臨界状態の二酸化炭素等の抽出溶剤を加えて抽出することによって得られる。
また、本発明において、広く市販されているヘマトコッカス藻抽出物を用いることができ、例えば、武田紙器(株)製のASTOTS−S、同−2.5 O、同−5 O、同−10 O等、富士化学工業(株)製のアスタリールオイル50F、同 5F等、東洋酵素化学(株)製のBioAstin SCE7等として入手できる。
【0022】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物中のアスタキサチン類の色素純分としての含有量は、組成物製造時の取り扱いの観点から、好ましくは0.001〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜25質量%である。
なお、本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物は、特開平2−49091号公報記載の色素同様色素純分としてはアスタキサンチンもしくはそのエステル体を含むが、エステル体を、一般的には50モル%以上、好ましくは75モル%以上、より好ましくは90%モル以上含むものである。
さらに詳細な説明は「アスタキサンチンの化学」、平成17年、インターネット〈URL:http://www.astaxanthin.co.jp/chemical/basic.htm〉に記載されている。
【0023】
本発明の発毛・育毛促進剤におけるアスタキサンチンの含有量は、発毛・育毛促進効果の観点から0.001〜20質量%であることが好ましく、0.01〜10質量%であることがより好ましく、0.1〜5質量%であることが更に好ましい。
【0024】
本発明の発毛・育毛促進剤には、アスタキサンチンの機能を阻害しない範囲内で、他の機能性の油成分を含んでもよい。このような他の油成分としては、特に制限はなく、例えば、他の脂溶性カロテノイド、脂溶性ビタミン、ユビキノン類、不飽和脂肪酸類、油脂類などが挙げられる。
【0025】
本発明に使用可能な乳化剤としては、油溶性乳化剤と水溶性乳化剤とを挙げることができ、それぞれ単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明で使用することのできる油溶性乳化剤としては、油相に溶ける乳化剤であれば、特に限定は無いが、例えばHLBが5以下、好ましくは3以下の、ノニオン界面活性剤が好ましい。HLBがHLB5以下であれば、油相への溶解度が十分となって、油相水相界面の界面張力を下げる作用が向上する傾向にある。
一方、HLBが5以下のノニオン界面活性剤の好ましい例としては、HLB5以下のショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリド、又はこれらの併用が挙げられる。これらの好ましい例は、後に示す。
【0026】
ここでHLBとは、通常、界面活性剤の分野で使用される親水性−疎水性のバランスで、通常用いる計算式、例えば川上式等が使用できる。本発明においては、下記の川上式を採用する。
【0027】
HLB=7+11.7log(M/M
ここで、Mは親水基の分子量、Mは疎水基の分子量である。
【0028】
また、カタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。
また、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の界面活性剤を得ることができる。
【0029】
本発明で使用することのできる水溶性乳化剤としては、水性媒体に溶解する乳化剤であれば、特に限定は無いが、例えばHLBが10以上、好ましくは12以上、より好ましくは14〜16のノニオン界面活性剤が好ましい。HLBが低すぎると、乳化力が不十分となることがある。
【0030】
本発明で使用可能な乳化剤としては、特に制限はないが、ノニオン性界面活性剤が好ましい。ノニオン性界面活性剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、およびショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチンなどが挙げられる。より好ましくは、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルである。また、上記の乳化剤は蒸留などで高度に精製されたものであることは必ずしも必要ではなく、反応混合物であってもよい。
【0031】
本発明に用いられるグリセリン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸グリセリドの好ましい例としては、モノオレイン酸モノグリセリド、モノステアリン酸モノグリセリド、モノパルミチン酸モノグリセリド、モノミリスチン酸モノグリセリド、モノラウリン酸モノグリセリド等が挙げられ、それらのなかで、モノオレイン酸モノグリセリド、モノステアリン酸モノグリセリドが、好ましい。本発明においては、これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0032】
好ましいポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、平均重合度が2以上、好ましくは6〜15、より好ましくは8〜10のポリグリセリンと、炭素数8〜18の脂肪酸、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、又はリノール酸とのエステルであることが好ましい。
【0033】
このようなポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。
【0034】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、モノカプリル酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
本発明においては、これらのソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0035】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が12以上のものが好ましく、12〜20のものがより好ましい。
ショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ショ糖ジオレイン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられ、これらの中でも、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステルがより好ましい。
本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0036】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が8以上のものが好ましく、12以上のものがより好ましい。また、ポリオキシエチレンのエチレンオキサイドの長さ(付加モル数)としては、2〜100が好ましく、4〜50がより好ましい。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ポリオキシエチレンモノカプリル酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンイソステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキイソステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンセスキオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
これらのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0037】
界面活性剤の含有量としては、微細な粒子径を得るために、アスタキサンチンを含む油成分の全質量の0.5倍量を超え2倍量以下であることが好ましく、0.5倍量を超え1.5倍量以下がより好ましく、0.5倍量を超え1倍量以下が特に好ましい。
また、前記界面活性剤の含有量は、分散粒子の安定性及び泡立ち抑制の観点から、分散物の0.5〜30質量%であること好ましく、1〜20質量%であることがより好ましく、2〜15質量%であることが更に好ましい。
【0038】
本発明の経口用発毛・育毛促進剤は、酸化防止剤を含有することが好ましい。本発明に使用可能な酸化防止剤としては、特に限定はないが、例えば、(I)アスコルビン酸またはエリソルビン酸またはその塩、或いはアスコルビン酸誘導体又はエリソルビン酸誘導体またはその塩からなる化合物群、(II)トコフェノール又はその誘導体、或いはトコトリエノール又はその誘導体からなる化合物群、(III)ポリフェノール類からなる化合物群、等が挙げられる。
【0039】
本発明の経口用発毛・育毛促進剤における酸化防止剤の含有量は、一般的には0.001〜5.0質量%であり、好ましくは0.01〜3.0質量%、より好ましくは0.1〜2.5質量%である。
【0040】
(I)アスコルビン酸またはエリソルビン酸またはその塩
アスコルビン酸またはアスコルビン酸誘導体またはその塩として、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸Na、L−アスコルビン酸K、L−アスコルビン酸Ca、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル、L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸2−グルコシド、前述の油溶化誘導体、L−アスコルビル酸パルミチン酸エステル、テトライソパルミチン酸L−アスコルビル等が挙げられる。これらのうち、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸Na、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸2−グルコシド、L−アスコルビル酸パルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩、テトライソパルミチン酸L−アスコルビルが特に好ましい。
【0041】
エリソルビン酸またはエリソルビン酸誘導体またはその塩として、エリソルビン酸、エリソルビン酸Na、エリソルビン酸K、エリソルビン酸Ca、エリソルビン酸リン酸エステル、エリソルビン酸硫酸エステル、前述の油溶化誘導体等が挙げられる。これらのうち、エリソルビン酸、エリソルビン酸Naが特に好ましい。
【0042】
本発明に用いる化合物群(I)に属するラジカル捕捉剤は、一般に市販されているものを適宜用いることができる。例えば、L−アスコルビン酸(武田薬品工業、扶桑化学、BASFジャパン、第一製薬ほか)、L−アスコルビン酸Na(武田薬品工業、扶桑化学、BASFジャパン、第一製薬ほか)、アスコルビン酸2−グルコシド(商品名 AA−2G:林原生物化学研究所)、L−アスコルビン酸燐酸Mg(商品名 アスコルビン酸PM「SDK」(昭和電工)、商品名 NIKKOL VC−PMG(日光ケミカルズ)、商品名 シーメート(武田薬品工業))、パルミチン酸アスコルビル(DSM ニュートリション ジャパン、金剛薬品、メルク、ほか)等が挙げられる。
【0043】
(II)トコフェロール及びその誘導体並びにトコトリエノール及びその誘導体
トコフェロール及びその誘導体からなる化合物群としては、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸−dl−α−トコフェロール、リノール酸−dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール等が含まれる。これらの内で、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、及び、これらの混合物(ミックストコフェロール)がより好ましい。また、トコフェロール誘導体としては、これらの酢酸エステルが好ましく用いられる。
【0044】
トコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群としては、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール等が含まれる。また、トコトリエノール誘導体としては、これらの酢酸エステルが好ましく用いられる。トコトリエノールは麦類、米糠、パーム油等に含まれるトコフェロール類似化合物で、トコフェロールの側鎖部分に二重結合が3個含まれ、優れた酸化防止性能を有する。
【0045】
(III)ポリフェノール類からなる化合物群
ポリフェノール類からなる化合物群として、フラボノイド類(カテキン、アントシアニン、フラボン、イソフラボン、フラバン、フラバノン、ルチン)、フェノール酸類(クロロゲン酸、エラグ酸、没食子酸、没食子酸プロピル)、リグナン類、クルクミン類、クマリン類などを挙げることができる。また、これらの化合物は、以下のような天然物由来の抽出物中に多く含まれるため、抽出物という状態で利用することができる。
【0046】
例えば、カンゾウ抽出物、キュウリ抽出物、ケイケットウ抽出物、ゲンチアナ(リンドウ)抽出物、ゲンノショウコ抽出物、コレステロール及びその誘導体、サンザシ抽出物、シャクヤク抽出物、イチョウ抽出物、コガネバナ(オウゴン)抽出物、ニンジン抽出物、マイカイカ(マイカイ、ハマナス)抽出物、サンペンズ(カワラケツメイ)抽出物、トルメンチラ抽出物、パセリ抽出物、ボタン(ボタンピ)抽出物、モッカ(ボケ)抽出物、メリッサ抽出物、ヤシャジツ(ヤシャ)抽出物、ユキノシタ抽出物、ローズマリー(マンネンロウ)抽出物、レタス抽出物、茶抽出物(烏龍茶、紅茶、緑茶等)、微生物醗酵代謝産物、羅漢果抽出物等が挙げられる。これらのポリフェノール類のうち、特に好ましいものとしては、カテキン、ローズマリー抽出物、グルコシルルチン、エラグ酸、没食子酸を挙げることができる。
【0047】
本発明に用いる化合物群(III)に属するラジカル捕捉剤は、一般に市販されているものを適宜用いることができる。例えば、エラグ酸(和光純薬ほか)、ローズマリー抽出物(商品名 RM−21A、RM−21E:三菱化学フーズほか)、カテキン(商品名 サンカトールW−5、No.1:太陽化学、ほか)、没食子酸Na(商品名 サンカトール:太陽化学、ほか)、ルチン・グルコシルルチン・酵素分解ルチン(商品名 ルチンK−2、P−10:キリヤ化学、商品名 αGルチン:林原生物化学研究所、ほか)等が挙げられる。
【0048】
また、分散粒子が分散される分散媒である水相には、水など水性媒体を主成分とする水溶液を用いることができ、水以外に多価アルコールや高級アルコールや、本発明の効果を損なわない範囲の水溶性抗酸化剤及び植物抽出液等の水溶性機能性成分をさらに添加することが可能である。
【0049】
水相成分としての多価アルコールを含有することは、アスタキサンチン含有分散物の分散粒子径をより微細化でき、かつ該粒子径が微細な粒子径の状態のまま長期に亘り安定して保持できるとの観点から好ましい。
また、多価アルコールの添加により、経口用発毛・育毛促進剤の水分活性を下げることができ、微生物の繁殖を抑えることができる。
【0050】
本発明に使用できる多価アルコールとしては、二価以上のアルコールであれば特に限定されず用いることができる。
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、マルチトール、還元水あめ、蔗糖、ラクチトール、パラチニット、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、キシロース、グルコース、ラクトース、マンノース、マルトース、ガラクトース、フルクトース、イノシトール、ペンタエリスリトール、マルトトリオース、ソルビタン、トレハロース、澱粉分解糖、澱粉分解糖還元アルコール等が挙げられ、これらを、単独又は複数種の混合物の形態で用いることができる。
【0051】
また、多価アルコールとしては、その1分子中における水酸基の数が、3個以上であるものを用いるのが好ましい。これにより、水系溶媒と油脂成分との界面張力をより効果的に低下させることができ、より微細で、かつ、安定な微粒子を形成させることができる。その結果、本発明の経口用発毛・育毛促進剤の吸収性をより高いものとすることができる。
【0052】
上述したような条件を満足する多価アルコールの中でも、グリセリン及び1,3−ブタンジオール並びにこれらの組み合わせのいずれかを用いた場合、濾過容易性がより良好で、アスタキサンチン含有分散物中の分散粒子の粒径がより小さくなり、かつ該粒径が小さいまま長期に亘り安定して保持されるため、特に好ましい。
【0053】
多価アルコールの含有量は、油相に含まれる油成分全質量に対して5倍量以上20倍量以下であることが好ましい。5倍量以上とすることにより、前述の粒子径、安定性等を高めることができ、20倍量以下とすることにより分散物の粘度を適度な範囲とすることができる。油成分全質量に対する多価アルコールの量比は、分散物の透明性、経時安定性の観点から、7.5倍量以上15倍量以下であることがより好ましい。
【0054】
また多価アルコールの経口用発毛・育毛促進剤全質量に対する含有量は、分散安定性及び保存安定性、分散物の粘度の観点から、分散物全質量に対して5〜60質量%が好ましく、より好ましくは5〜55質量%、さらに好ましくは5〜50質量%である。
多価アルコールの含有量が5質量%以上であると、油脂成分の種類や含有量等によっても、充分な保存安定性が得られ易い点で好ましい。一方、多価アルコールの含有量が60質量%以下であると、分散物の粘度が高くなるのを抑え易い点で好ましい。
【0055】
本発明の経口用発毛・育毛促進剤は、保管性を高めるために、分散物として製造された後に乾燥を行って得られた粉末組成物の形態としてもよい。経口用発毛・育毛促進剤を粉末形態とする場合には、打錠適性や微粒子化適性等を持たせるため賦形剤を含んでもよい。賦形剤としては1種単独で又は2種以上を組み合わせ含んでもよい。
【0056】
賦形剤は一般的に用いられている水溶性物質であればよく、グルコース、果糖、乳糖、麦芽糖、ショ糖、デキストリン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、マルトース、トレハロースや、アラビアガム、グアーガム、ペクチン、プルランなどの増粘多糖類などの単糖及び多糖類;ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクトース、マルトトリイトール、キシリトールなどの糖アルコール;塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの無機塩;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体;デンプンに、エステル化、エーテル化処理又は末端還元処理を施したデンプン誘導体;その他に加工澱粉、ゼラチン分解物、寒天、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。この中でも、溶解性の面から単糖、多糖類、糖アルコール、無機塩が好ましい。
【0057】
賦形剤を使用する場合の賦形剤の含有量としては、特に制限はないが、形状維持と溶解性の観点から前記粉末組成物における油性成分の全質量に対して0.7倍量以上2倍量以下であることが好ましく、1.2倍量以上1.7倍量以下であることがより好ましい。
【0058】
本発明の経口用発毛・育毛促進剤には、上記成分に加え、本発明の効果を損なわない限りにおいて、医薬品用などの用途に通常使用可能な他の成分を、目的に応じて併用してもよい。
【0059】
本発明の経口用発毛・育毛促進剤の製造方法としては、例えば、a)水溶性乳化剤を含む水相を調製し、b)少なくともアスタキサンチンを含む油相成分を用いて油相を調製し、c)前記油相と前記水相とを、混合して分散を行い、平均粒子径が1nm以上100nm以下の分散粒子を含むアスタキサンチン含有分散粒子を含む分散物(エマルション)を得るステップが挙げられる。
【0060】
前記乳化分散における油相と水相との比率(質量)は、特に限定されるものではないが、油相/水相比率(質量%)として0.1/99.9〜50/50が好ましく、0.5/99.5〜30/70がより好ましく、1/99〜20/80が更に好ましい。
油相/水相比率を上記範囲とすることにより、有効成分を充分に含み、実用上充分な乳化安定性が得られるため好ましい。
【0061】
前記乳化分散は、1ステップの乳化操作を行うことでもよいが、2ステップ以上の乳化操作を行うことが均一で微細な分散粒子を得る点から好ましい。
具体的には、剪断作用を利用する通常の乳化装置(例えば、スターラーやインペラー攪拌、ホモミキサー、連続流通式剪断装置等)を用いて乳化するという1ステップの乳化操作に加えて、高圧ホモジナイザー、超音波分散機等を通して乳化する等の方法で2種以上の乳化装置を併用するのが特に好ましい。高圧ホモジナイザーを使用することで、分散物を更に均一な微粒子の液滴に揃えることができる。また、更に均一な粒子径の液滴とする目的で複数回行っても良い。
【0062】
本発明における乳化分散する際の温度条件は、特に限定されるものでないが、有効成分の安定性の観点から10〜100℃であることが好ましい。
また、本発明において高圧ホモジナイザーを用いる場合には、その圧力は、好ましくは50MPa以上、より好ましくは50〜280MPa、更に好ましくは100〜280MPaで処理することが好ましい。
【0063】
本発明の経口用発毛・育毛促進剤を粉末状態の組成物として得たい場合は、上記により得られたエマルション状態のアスタキサンチン含有分散物を噴霧乾燥等により乾燥させるステップを追加することで、粉末状態の組成物を得ることができる。
【0064】
乾燥手段としては、公知の乾燥手段を用いることができ、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、高周波乾燥、超音波乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥等が挙げられる。これらの手段は単独で用いてもよいが、2種以上の手段を組み合わせて用いることもできる。
【0065】
前記乾燥手段としては、凍結状態にある材料から氷を昇華させて水分を除去する凍結乾燥が好ましい。市販の凍結乾燥機の例としては、凍結乾燥機VD−800F(タイテック(株))、フレキシドライMP(FTSシステムズ社)、デュラトップ・デュラストップ(FTSシステムズ社)、宝真空凍結乾燥機A型((株)宝エーテーエム)、卓上凍結乾燥機FD−1000(東京理化器械(株))、真空凍結乾燥機FD−550(東京理化器械(株))、真空凍結乾燥機((株)宝製作所)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0066】
また、前記乾燥手段として、生産効率と品質を両立する観点からは、噴霧乾燥法が好ましい。市販の噴霧乾燥機の例としては、噴霧乾燥機スプレードライヤSD−1000(東京理化器械(株))、スプレードライヤL−8i(大川原化工機(株))、クローズドスプレードライヤCL−12(大川原化工機(株))、スプレードライヤADL310(ヤマト科学(株))、ミニスプレードライヤB−290(ビュッヒ社)、PJ−MiniMax(パウダリングジャパン(株))、PHARMASD(ニロ社)等が挙げられる。また、例えば流動層造粒乾燥機MP−01((株)パウレック)、流動層内蔵型スプレードライヤFSD(ニロ社)等のように。乾燥と造粒とを同時に行ってもよい。
【0067】
本発明の経口用発毛・育毛促進剤の投与量としては、有効量のアスタキサンチンとなるように経口投与されれば特に投与量には制限はないが、確実な発毛・育毛促進効果を得るために、本発明の経口用発毛・育毛促進剤の投与量は、アスタキサンチンの投与量として0.01mg/kg/日〜1000mg/kg/日であることが好ましく、0.05mg/kg/日〜500mg/kg/日であることがより好ましく、0.1mg/kg/日〜160mg/kg/日であることが更に好ましい。
【実施例】
【0068】
以下に本発明の実施例について説明するが、これに限定されるものではない。また実施例中の%は、特に断らない限り、重量(質量)基準である。
【0069】
[実施例1]
(1) 分散物の調製
下記の成分を、70℃で加熱しながら1時間溶解して、水相組成物を得た。
・ショ糖モノラウリン酸エステル(HLB=16) 1.2g
・デカグリセリンモノラウリン酸エステル(HLB=15.5) 1.2g
・グリセリン 50.0g
・純水 41.4g
【0070】
また、下記成分を、70℃で加熱しながら1時間溶解して、油相組成物を得た。
・ヘマトコッカス藻抽出物(アスタキサンチン類含有率20質量%) 4.0g
・オレイン酸モノグリセリド(HLB=2.5) 1.2g
・ミックストコフェロール 1.0g
【0071】
上記水相組成物を70℃に保ったままホモジナイザー(機種名HP93、(株)エスエムテー社製)で攪拌し(10000rpm)、前記水相組成物へ上記油相組成物を添加して分散物を得た。
続いて、得られた予備乳化物を約40℃まで冷却し、アルティマイザーHJP−25005((株)スギノマシン社製)を用いて、200MPaの圧力で高圧乳化を行った。
その後、平均孔径1μmのミクロフィルターでろ過して、アスタキサンチン類含有分散物を調製した。
【0072】
なお、ショ糖ラウリン酸エステルは三菱化学フーズ株式会社製リョートーシュガーエステルL−1695(HLB=16)、S−770(HLB=7)、デカグリセリンモノラウリン酸エステルは日光ケミカルズ株式会社製NIKKOL Decaglyn 1−L(HLB=15.5)、モノオレイン酸モノグリセリドは、花王株式会社製エキセルO−95R(HLB=2.5)を使用した。
ヘマトコッカス抽出物は、武田紙器株式会社製ASTOTS−Sを使用した。ミックストコフェロールは、理研ビタミン株式会社製の理研Eオイル800を使用した。
【0073】
(粉末組成物の調製)
上記で得られた分散物を、次いで、スプレードライ(ミニスプレードライヤADL−310:YAMATO製)にて、温度140℃、エア圧力0.15MPaの条件で乾燥処理を行い、サイクロンで粉末を捕集し、アスタキサンチン粉末を得た。
【0074】
(粒子径測定)
上記で得られたアスタキサンチン粉末1.00gに99.0の純水に添加して、マグネッチックスターラーを用いて、10分間攪拌を行って、分散物試料を得た。この分散物試料の粒子径を、動的光散乱粒径分散測定装置LB−550(株式会社堀場製作所社製)を使用して測定した。その結果、本分散物試料におけるo/w型の分散粒子の平均粒径は110nmであった。
【0075】
(1)アスタキサンチンの乳化による吸収への効果
試験動物として生後5週齢のSprague−Dawley系(Crl:CD(SD))ラット(日本チャールス・リバー株式会社、厚木飼育センター)雄10匹を購入し、一週間の検疫順化を行った。飼育条件は室温23±2℃、相対湿度50±10%、換気回数15回/時間、人工照射1日12時間に設定し、1区画に1匹ずつ収容して飼育を行った。試験動物には、試料として放射線滅菌済みの固形飼料(オリエンタル酵母工業株式会社製CRF−1)を自由摂取させ、飲水として水道法水質基準に適合した水道水をフィルター濾過(カネボウ製50μm及び5μm)後、紫外線照射により殺菌したものを自動給水ノズルで与え、自由摂取とした。飼育1週間後のSDラットをランダムに5匹ごとの群に分けた。
上記で得られたアスタキサンチン乳化粉末に注射用水に加えてよく混和させた分散物を調製した。本分散物と、上記ヘマトコッカス藻抽出物(アスタキサンチンオイル)とを、それぞれアスタキサンチン量で20mg/kg経口投与した。所定時間経過する度に採血を行い、血中(血漿中)のアスタキサンチン量を常法によりそれぞれ分析した。結果を図1に示す。図1において黒三角はアスタキサンチン分散物を示し、黒丸はアスタキサンチンオイルを示す。
【0076】
その結果、本実施例の分散物を投与した群において、有意に血中濃度が高くなることが分かった(図1参照)。よって育毛、養毛を目的としたアスタキサンチンの利用は、平均粒子径200nm以下の分散粒子を含む分散物とすることで体内への吸収が高められ、毛包へ効率よく届けることが可能である。
【0077】
(2)α−アクチンの発現確認
上記(1)と同様にSDラット30匹を飼育し、1週間後、ラットをランダムに10匹ごとの群に分けた。上記で得られたアスタキサンチン粉末を、80mg/mlの濃度になるように注射用水を加え、よく混和させて調製した。投与方法はテフロン(登録商標)製フレキシブル経口ゾンデを用いた強制経口投与とし、1日1回13週間反復投与した。投与容量は5ml/kgとし、直近の体重より各固体の投与液量を算出した。また、対照群に関しては注射用水のみを投与した。
投与最終日の夕刻から、16〜23時間の絶食を行い、ペントバルビタールナトリウム麻酔下で採血を行った後、放血による安楽死させた。ラットの腹部皮膚を摘出した後、摘出した皮膚を10%ホルマリンに浸漬させ、組織を固定した。その後常法に従って薄切標本を作製し、α−Smooth muscle actin(α-SMA)マウスモノクローナル抗体(DAKO社製)にて常法により免疫染色を行った。免疫染色後に、毛包底部周囲の抗体染色の様子と、毛包の皮膚内での長さについて光学顕微鏡による観察を行った。
【0078】
毛包の先端部位及び特定可能な毛包数を測定すると共に、毛包の先端部位が抗体で染色されているものと陽性とし、個体差関係なく、陽性の毛法の割合を算出した。また、毛包全体の長さが確認できるものについて、アスタキサンチン投与群と非投与群とで毛包の皮膚内での長さを測定した。なお、個体には関係なく、全ての毛包の平均を総合して算出した。結果を図2及び図3に示す。
【0079】
その結果、アスタキサンチンを経口投与した群において、毛包の底部周囲にα-SMA陽性を示すものは、28.3%であったのに対して、未投与群は8.5%であった(図2参照)。従って、毛包周囲においてSMA抗体陽性を示す毛包の数は、アスタキサンチン投与群の方が有意に高かった。
また、アスタキサンチンを経口投与した群において、毛包の長さの平均は540μmであったのに対して、未投与群は448μmであった(図3参照)。従って、アスタキサンチン投与群の方が、毛包の長さが有意に長かった。
【0080】
[実施例2]
実施例1と同様の条件で、SDラットにアスタキサンチン粉末を3mg/kg/dayとなるように1日1回13週間反復投与した。13週間後のラットの腹部皮膚を摘出し、体毛及び脂肪組織を素早く除き、RNAlater(登録商標、以下同じ)(Applied Biosystems Japan)に浸した。これを4℃で一晩静置した後、RNAlater溶液を除いて−80℃で保存した。凍結した皮膚組織を、溶解後手術用はさみで細かく裁断し、ISOGEN(株式会社ニッポンジーン)中に懸濁させた。
組織をホモジナイザーにてホモジナイズし、遠心分離して余分なコラーゲン組織や脂質を除いた。上清をISOGEN添付のプロトコールに基づいてtotal RNAの抽出を行った。抽出したtotal RNAは、Rneasy Mini Kit(QIAGEN, Hilden,Germany)にて精製を行い、Agilent 2100バイオアナライザ(Agilent technologies Japan, Ltd., Tokyo, Japan)にてTotal RNAの質をチェックした。ラットの体重がより平均値に近く、RNAの質が高い4個体のtotal RNAをその後の解析に用いた。
【0081】
Total RNAからcDNAの合成、cRNAの合成及び標識化、標識cRNAの断片化はGeneChip(登録商標)3’ IVT Express Kit(Affymetrix社製)を用い、添付のプロトコールに従って行った。また、Agilent2100バイオアナライザにてcRNAの伸張が十分であること、RNAの質を確認した。断片化したcRNAはHybridization Oven640(Affymetrix Inc., CA, USA)を用いて、Gene Chip Rat Genome 230 2.0 Array(Affymetrix Inc., CA, USA)に45℃で16時間ハイブリダイズし、洗浄、GeneChip(登録商標、以下同じ)Flidics Station 450を行い、GeneChip Scanner 3000でスキャンし、遺伝子発現量の測定を行った。
【0082】
得られたデータをR version 2.7.2にてDistribution Free Weighted method(DFW法)にて正規化した後、二群間比較にはRankProductを実行した。発現変動が顕著なプローブセットとして、False Discovery Rate(FDR) < 0.05のプローブセットを抽出した。
【0083】
発現変動が顕著な遺伝子において、アスタキサンチンを経口投与した群では、毛包由来の数種類のケラチンの遺伝子(keratin 19、keratin31、keratin33A///keratin33B、 kaeratin34、keratin86、keratin complex 1,acidic,gene 5)がコントロール(アスタキサンチン非投与群)に対し発現が亢進されることが分かった。
【0084】
このように、本実施例のアスタキサンチン分散粒子を含有する分散物を経口投与することによって、アスタキサンチンの体内への吸収効率が向上し、毛に対して成長期を誘導する効果があることが明らかとなった。
従って、本発明によれば、確実に且つ充分に発毛・育毛効果が得られる経口用発毛・育毛促進剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が1nm〜200nmであり、且つアスタキサンチンを含有する分散粒子を含む経口用発毛・育毛促進剤。
【請求項2】
前記アスタキサンチン含有分散粒子の平均粒子径が20nm〜150nmである請求項1記載の経口用発毛・育毛促進剤。
【請求項3】
前記アスタキサンチンを0.001質量%〜20質量%で含む請求項1又は請求項2記載の経口用発毛・育毛促進剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−144440(P2012−144440A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1466(P2011−1466)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】