説明

経口用組成物

【課題】安全に継続的摂取が可能であり、かつ冷え症改善効果の高い経口用組成物の提供。
【解決手段】ヒハツ抽出物とシシウド抽出物を、乾燥物換算(重量)比で1:0.01〜1:0.5で含むことを特徴とする経口用組成物、ヒハツ抽出物とシシウド抽出物の乾燥物換算(重量)比が1:0.02〜1:0.3であることを特徴とする前記記載の経口用組成物、前記いずれか記載の経口用組成物を有効成分とすることを特徴とする冷え性改善剤、前記いずれか記載の経口用組成物を有効成分とすることを特徴とする湯冷め抑制剤、前記いずれか記載の経口用組成物を、入浴開始2時間前〜入浴中に摂取することを特徴とする、湯冷め抑制方法、並びに、前記いずれか記載の経口用組成物を含むことを特長とする飲食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒハツ抽出物とシシウド抽出物が特定の配合比で含有された、温熱効果を有する経口用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の急速な生活環境の変化に伴い、冷え症を訴える人の数は急増しているといわれている。これは、空調設備の浸透により季節に関係なく室内温度がほぼ一定となった結果、体温調節による身体の季節適応能力が低下したことが原因と考えられている。ヒトをはじめとする動物では、本来、皮膚表面によって受容された温度の情報が脳に伝達され、当該情報に基づいて体温調節を行うことにより恒常性が維持されている。しかしながら、空調設備が完備された部屋では、この神経機能が低下し、温度に関する情報が正常に脳へ伝達されないことが指摘されている。また、一方で、室内外の温度差が大きいため、室内からの出入りの度に急激な温度変化のある生活を続ける結果、気温変化に順応するための神経伝達系の機能も低下して、身体各部位における体温調節の異常による冷えの自覚症状が起きていると言われている。
【0003】
このような冷えについては、従来から、しょうが、コショウ、トウガラシ等の血管拡張作用や体脂肪燃焼促進作用を有する食品材料を摂取することが効果的である、とされている。血管が拡張したり、体脂肪が燃焼されることにより、温感が付与されるためである。中でも、東南アジアに分布するコショウ科コショウ属植物であるヒハツ(Piper longum)の抽出物は、摂取により温熱効果(冷え性改善効果)を感じられることが知られている。例えば、ヒハツの抽出物を有効成分とする冷え性改善剤や、ヒハツの抽出物に、イチョウ葉、紅花、生姜、唐辛子、冬中夏草、梅肉、高麗ニンジン、ニンニク、マムシ、卵黄油、ドクダミ、ヨモギ、田七ニンジン、エゾウコギ、ウコギ、トウキ、センキュウ、シナモン、ニッケ、クズ、ニラ、ネギ、タマネギ、レンコン、ニンジン、ゴマ、海苔、ワカメ、カボチャ、ゴボウ、大根、キャベツ、小豆、ぶどう、ミカン、卵、鶏肉、牛肉、チーズ、さんま、えび、ビタミンB、ビタミンE、ユビキノン及び鉄からなる群より選ばれる1種又は2種以上の素材又はその抽出物を組み合わせた冷え性改善剤が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、ヒハツは、その他にも、脂肪分解促進作用を有することが報告されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
一方で、セリ科シシウド属植物であるシシウド(Angelica pubescens Maxim.)(=Angelica polyclada Franch.)は、長く漢方薬として使用されてきた薬用植物であり、2009年には。食薬区分の食に明確に区分された。有効成分として、シシウド若しくはその抽出物を単独で、若しくは他の薬効成分と併用して含有させた健康食品やその製造方法も、幾つか開示されている(例えば、特許文献3〜5参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4448266号公報
【特許文献2】特許第3645608号公報
【特許文献3】特許第4370196号公報
【特許文献4】特開2008−303174号公報
【特許文献5】特開2009−118816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヒハツ抽出物を摂取した場合の温熱効果は、人によって感じ方の差が大きい。このため、サプリメント等の健康食品に配合する場合には、不特定多数の人において摂取により十分な温熱効果が得られるようにするために、一定量以上のヒハツ抽出物を含有させることが必要となる。しかしながら、温熱効果増強のためにヒハツ抽出物の含有量を増大させた場合には、不快な辛さ・刺激も増強され、胃部不快感などが生じる原因となる。このように、ヒハツ抽出物は刺激が強く、継続的に多量に摂取することは困難である。
【0007】
また、特許文献1に示すように、冷え症改善効果を得るための有効成分として、ヒハツ抽出物と併用可能な様々な食品素材が知られているものの、これらの併用によって、ヒハツ抽出物による温熱効果が高められるか否かや、胃部不快感などが軽減されるか否かについては検討されていない。
【0008】
本発明は、安全に継続的摂取が可能であり、かつ温熱効果の高い経口組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ヒハツ抽出物に、シシウド抽出物を特定の配合比で含ませることにより、ヒハツ抽出物単独の場合よりもより強い温熱効果が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1) ヒハツ抽出物とシシウド抽出物を、乾燥物換算(重量)比で1:0.01〜1:0.5で含むことを特徴とする経口用組成物、
(2) ヒハツ抽出物とシシウド抽出物の乾燥物換算(重量)比が1:0.02〜1:0.3であることを特徴とする前記(1)に記載の経口用組成物、
(3) 前記(1)又は(2)に記載の経口用組成物を有効成分とすることを特徴とする冷え性改善剤、
(4) 前記(1)又は(2)に記載の経口用組成物を有効成分とすることを特徴とする湯冷め抑制剤、
(5) 前記(1)又は(2)に記載の経口用組成物を、入浴開始2時間前〜入浴中に摂取することを特徴とする、湯冷め抑制方法、
(6) 前記(1)又は(2)に記載の経口用組成物を含むことを特長とする飲食品、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の経口用組成物は、経口摂取により十分な温熱効果を得ることができ、かつ、安全に継続的に摂取することが可能である。また、所望の温熱効果を得るために要するヒハツ抽出物の摂取量を、ヒハツ抽出物を単独摂取する場合よりも低減することができる。このため、本発明の経口用組成物を用いることにより、胃部不快感等の症状の発生リスクが低減された処方設計が可能になることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1において、ヒハツ抽出物及びシシウド抽出物の配合比と温感効果について、応用曲面解析を行って得られた応用局面を示した図である。
【図2】実施例2において、被検者A〜Cの深部体温(鼓膜温)及び腕内側発汗量(水分蒸散量)の測定結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において用いられるヒハツ抽出物には、ヒハツを抽出原料として得られる抽出液のみならず、該抽出液の希釈液や濃縮液も含まれる。また、抽出液を公知の手段で乾燥した乾燥物も含まれる。同様に、本発明において用いられるシシウド抽出物には、シシウドを抽出原料として得られる抽出液、該抽出液の希釈液や濃縮液、該抽出液の乾燥物が含まれる。すなわち、本発明の経口用組成物に含まれるヒハツ抽出物及びシシウド抽出物は、液状であってもよく、乾燥粉末であってもよい。
【0014】
本発明において用いられるヒハツ抽出物は、ヒハツの果穂、根、茎、花、又はこれらの混合部位から、抽出されたものである。
一方、本発明において用いられるシシウド抽出物は、シシウドの根茎部分を抽出原料として得られた抽出物である。
【0015】
抽出原料となるヒハツやシシウドの組織は、植物から採取されたものそのものであってもよく、乾燥させたものであってもよい。乾燥方法は、生薬や飲食品の原料となる植物を乾燥する際に一般的に用いられる方法であれば特に限定されるものではなく、天日干しや陰干しであってもよく、乾燥機を用いてもよい。例えば、採取されたヒハツの果穂やシシウドの根茎を、そのまま、又は必要に応じて適当な大きさに細断した後、天日干し等により乾燥したものを、抽出原料として用いることができる。また、抽出原料は、抽出前に予め細断しておいてもよく、粉末状にしてもよい。その他、抽出原料は、抽出前に、脱脂等の前処理を行ってもよい。
【0016】
抽出原料からの抽出方法は、特に限定されないが、例えば抽出溶媒を用いる溶媒抽出法や、超臨界抽出法が挙げられる。
【0017】
溶媒抽出法に用いる抽出溶媒としては、水若しくは親水性溶媒又はこれらの混合物を挙げることができる。溶媒抽出法において、抽出溶媒に用いる水は特に限定されるものではないが、例えば水道水、蒸留水、純水、イオン交換水等を挙げることができる。溶媒抽出法において、抽出溶媒に用いる親水性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール;テトラヒドロフラン、アセトニトリル、1,4−ジオキサン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアルデヒド、酢酸等を挙げることができる。本発明において用いられるヒハツ抽出物やシシウド抽出物としては、水、低級アルコール、多価アルコール、又はこれらの混合物を抽出溶媒として抽出されたものであることが好ましい。特に、本発明において用いられるシシウド抽出物としては、水とエタノールとの混合溶媒(含水エタノール)を抽出溶媒として抽出されたものであることがより好ましい。
【0018】
溶媒抽出法により抽出する場合には、抽出原料を抽出溶媒に浸漬させ、抽出原料中の可溶性成分を抽出溶媒へ溶出させた後、濾過等の固液分離により不溶物を除去することによって、抽出物を得ることができる。抽出温度や抽出時間、抽出時の圧力等の抽出条件は、抽出原料の種類や抽出溶媒の種類、抽出原料と溶媒の量比等を考慮して、適宜決定することができる。また、必要に応じて攪拌しながら抽出させてもよい。
【0019】
例えば、ヒハツ抽出物を抽出する際に、抽出溶媒として水を用いた場合には、50〜95℃で1〜4時間程度、抽出原料を浸漬させることにより、ヒハツから温熱効果を有する成分を抽出することができる。また、抽出溶媒として含水エタノールを用いた場合には、抽出条件を、通常40〜80℃で30分〜4時間程度とすることができる。
【0020】
例えば、シシウド抽出物を抽出する際に、抽出溶媒として水を使用する場合には、水の温度は50〜100℃であることが好ましい。また、抽出溶媒として含水エタノールを用いる場合には、シシウド1kgを含水アルコール(水:エタノール=3:7(重量))10Lに含浸させて、室温で1日間置いた後、シシウドを含む含水アルコールをろ過することにより、シシウド抽出液を得ることができる。
【0021】
また、超臨界抽出法によっても、ヒハツ抽出物やシシウド抽出物を得ることができる。超臨界抽出法は、31℃、7.4MPa以上の超臨界状態の二酸化炭素流体を用いて抽出する抽出法であり、低温で効率的に有効成分を抽出することができる。
【0022】
得られたヒハツ抽出物やシシウド抽出物は、必要に応じて希釈・濃縮してもよく、乾燥粉末にしてもよい。なお、抽出液の濃縮や乾燥は、常法により行うことができる。例えば、減圧濃縮機を用いたり、加熱して溶媒を除去することにより、抽出物を濃縮することができる。また、真空乾燥や凍結乾燥により、乾燥粉末化することができる。
【0023】
その他、温熱効果等の本発明の効果を損なわない限り、得られたヒハツ抽出物やシシウド抽出物に対して、活性炭等の吸着剤を用いた吸着剤処理等の粗精製処理や、高圧加温処理や微細孔フィルターを用いた濾過処理等の滅菌処理を行ってもよい。
【0024】
その他、本発明においては、市販されているヒハツ抽出物やシシウド抽出物を用いてもよい。
【0025】
本発明の経口用組成物は、ヒハツ抽出物とシシウド抽出物を、乾燥物換算(重量)比が1:0.01〜1:0.5となるように含むことを特徴とする。本発明の経口用組成物に含まれるヒハツ抽出物とシシウド抽出物の乾燥物換算(重量)比は、1:0.02〜1:0.3であることが好ましく、1:0.14であることが特に好ましい。ヒハツ抽出物にシシウド抽出物を最適な量比で配合することにより、ヒハツ抽出物単独の場合やシシウド抽出物単独の場合よりも、より強い温熱効果を得ることができる。
【0026】
なお、ヒハツ抽出物に適当量のシシウド抽出物を配合することにより、胃部不快感等の副作用を増大させることなく、ヒハツ抽出物の温熱効果を増大させられることは、本発明者らにより初めて見出された知見である。
【0027】
本発明の経口用組成物は、ヒハツ抽出物とシシウド抽出物のみからなるものであってもよく、ヒハツ抽出物とシシウド抽出物以外のその他の成分を含むものであってもよい。本発明の経口用組成物が含むことができるその他の成分は、ヒハツ抽出物による温熱効果と、シシウド抽出物によるヒハツ抽出物の温熱効果に対する増大効果(以下、シシウド抽出物の併用効果)とを損なわない限り、特に限定されるものではない。その他の成分としては、例えば、特許文献1に記載されているような、温熱効果を有する成分等が挙げられる。
【0028】
本発明の経口用組成物は、単独で、若しくは適当な助剤を添加することにより、冷え症改善剤や湯冷め抑制剤等の温感改善剤として用いることができる。これらの温感改善剤は、サプリメントや栄養ドリンク等の健康補助食品や保健機能食品であってもよく、医薬品であってもよい。
【0029】
本発明の経口用組成物を含む温感改善剤の剤型は特に限定されるものではなく、例えば、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤等の固形剤であってもよく、水剤、懸濁剤、シロップ剤、乳剤、ペースト剤等の液剤であってもよい。例えば、本発明の経口用組成物に、当分野において通常用いられる賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、アルコール類、水、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料、薬剤用担体等を適宜添加し、慣用の手段を用いて剤型化することにより、本発明の経口用組成物を有効成分とする冷え症改善剤や湯冷め抑制剤等を製造することができる。
【0030】
温感改善剤中の本発明の経口用組成物の含有量は、当該温感改善剤を摂取することによってヒハツ抽出物の温熱効果及びシシウド抽出物の併用効果が奏される量であれば、特に限定されるものではなく、本発明の経口用組成物中のヒハツ抽出物やシシウド抽出物の含有量や、当該温感改善剤の剤型や摂取態様等を考慮して適宜決定することができる。例えば、実施例1や2のような温感改善剤中の本発明の経口用組成物の含有量は、10〜50重量%、好ましくは30重量%とすることができる。
【0031】
また、本発明の経口用組成物を飲料や食品に添加することにより、温感改善効果が得られる飲食品を製造することができる。本発明の経口用組成物を含む飲食品等は、原料として本発明の経口用組成物を用いる以外は、常法により製造することができる。本発明の経口用組成物は種々の食品、例えば、ハム、ソーセージ等の食肉加工食品、かまぼこ、ちくわ等の水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳、発酵乳製品等に添加してもよく、水、果汁、牛乳、清涼飲料水等の飲料に添加して使用してもよい。飲食品中の本発明の経口用組成物の含有量は、添加される飲食品の種類を考慮して適宜決定される。例えば、250mLの飲食品の場合、本発明の経口用組成物を0.1〜1重量%、好ましくは0.4重量%含有させることができる。
【0032】
本発明の経口用組成物を、単独、若しくは飲食品や医薬品の有効成分として摂取する場合には、例えば、ヒハツ抽出物の摂取量が乾燥重量として成人1日当たり10〜150mg、好ましくは50〜150mgとなるように、飲食品等に本発明の経口用組成物を含有させることができる。また、本発明の経口用組成物は、1日に1〜数回に分けて経口摂取してもよい。
【0033】
本発明の経口用組成物は、ヒハツ抽出物を単独摂取した場合やシシウド抽出物を単独摂取した場合と同様に、体温上昇作用や血流改善作用を有する。このため、本発明の経口用組成物及びそれを含む飲食品等を摂取することにより、温感効果が得られ、冷え症が改善される。
【0034】
さらに、本発明の経口用組成物を入浴前に摂取することにより、入浴後の体温低下の速度を遅らせることができ、湯冷めを抑制することができる。本発明の経口用組成物が特に湯冷め抑制に優れた効果を有する理由は明らかではないが、ヒハツ抽出物が熱感知レセプター(TRPV)に作用し、交感神経を通じて体内の熱産生を増大させることに加えて、ヒハツ抽出物による末梢血管拡張作用とシシウド抽出物による血流改善効果により、湯の熱によって末梢血管中の血液が効果的に温められるためと推察される。
【0035】
入浴後の湯冷め抑制効果を十分に得るためには、入浴時に、予め摂取した本発明の経口用組成物中の有効成分が体内に吸収されて作用効果が発揮されることが重要である。好ましい摂取時間は、本発明の経口用組成物の摂取態様(剤型や組成、摂取量等)に応じて変動する。このため、本発明の経口用組成物を、コーティング剤等のように吸収に比較的時間を要する態様で摂取する場合には、液剤等のように体内へ容易に吸収される場合よりも、摂取後から入浴までの時間が長いことが好ましい。逆に、吸収の早い液剤では、入浴中に摂取した場合でも、十分に効果を発揮し得るものがある。具体的には、例えば、本発明の経口用組成物は、入浴開始2時間前から入浴中までの間に摂取することが好ましく、入浴開始2時間前から入浴開始5分前までの間に摂取することがより好ましい。
【実施例】
【0036】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
[実施例1]
健常女性6名を対象に対して、ヒハツ抽出物とシシウド抽出物の含有量が異なる5種類の経口用組成物の温感に対する効果を調べた。
具体的には、ヒハツ抽出物(丸善製薬株式会社)とシシウド乾燥エキス(福田龍株式会社)とを、表1に記載の通りに秤量し(単位mg)、オブラートで包んだものを、摂取するサンプルとした。
被験者は、12時にいつも通りに昼食をとり、その後試験終了までは、おやつ・カフェイン入り飲料・熱い飲料・冷たい飲料は摂取を控えた。昼食後2時間以上経過した後、被験者に水とともにサンプルを摂取させた。摂取時を0分とし、10、30、60、90、120分後に、被験者に対して、体全体の暖かさ(VISUAL ANALOG SCALE:10cmの線分上に冷たいから熱いまで今の体感を記入。)と暖かさを感じた部位についてのアンケートを実施した。
各被験者は、一度に1サンプルを摂取し、5日間かけて、全てのサンプルを摂取した。
【0038】
【表1】

【0039】
VISUAL ANALOG SCALEの結果を時間に対してプロットし、曲線下面積を算出した。曲線下面積の試行回数に対する平均値を、各配合サンプルの効果実測値とした。この結果、ヒハツ抽出物100mgのみからなるサンプル(サンプル1)、及びヒハツ抽出物150mgのみからなるサンプル(サンプル2)を被験者に摂取させたときの温感効果に対する効果をヒハツ150mg、シシウド100mgを基準として積分化し、相対値として表した。各サンプルの温感効果の相対値を表1に示す。また、多次元重調和スプライン補間による応答曲面作成ソフトウェア(ソフトウェア名:DataNesia、株式会社山武製)を用いて、ヒハツ抽出物とシシウド抽出物の配合比と温感効果について、応用曲面解析を行った。図1に、応用曲面解析によって得られた応用局面を示す。
【0040】
応用曲面解析の結果から、ヒハツ抽出物の温感効果を高めることができるシシウド抽出物の追加配合量を算出したところ、100mgのヒハツ抽出物に対し2.04〜22.45mg、また、150mgのヒハツ抽出物に対し2.04〜44.89mgであった。これらの結果から、ヒハツ抽出物とシシウド抽出物の配合比の割合を乾燥物換算(重量)比で1:0.01〜1:0.5とすることにより、ヒハツ抽出物単独で摂取する場合よりも、ヒハツ抽出物の温感効果を高められることが明らかである。また、応用曲面解析より、最大の効果を与えることのできる配合比は100mg:14mgであると算出された。
【0041】
[実施例2]
健常女性4名を対象にして、ヒハツ抽出物とシシウド抽出物を含む経口用組成物の入浴後の湯冷めに対する効果を調べた。
経口用組成物は、100mgのヒハツ抽出物(丸善製薬株式会社)と14mgのシシウド乾燥エキス(福田龍株式会社)とを、HFカプセル(ゼラチン製空カプセル;型番:♯1号、製造元:松屋)に充填したものを、摂取する試験サンプルとした。また、ヒハツ抽出物及びシシウド乾燥エキスに代えて、114mgのデキストリンをHFカプセルに充填したものを、対照サンプルとした。
【0042】
まず、被験者は、室内(室温24℃±2、湿度55%±15%)で20分間安静にした後、深部体温(鼓膜温)、腕内側発汗量(水分蒸散量)、及び体表温の初期値を測定した。深部体温は、オムロン耳式体温計(製品名:けんおんくんミミ、型番:MC−510、製造元:オムロンヘルスケア株式会社)を用いて測定した。発汗量は、Vapometer(型番:SML4001、製造元:キーストンサイエンティフィック株式会社)を用いて測定した。体表温は、赤外線サーモグラフィ(型番:TH7102MV、製造元:NECAvio赤外線テクノロジー株式会社)を用いて測定した。また、室内の温度と湿度は、デジタル温湿度計(型番:TT−538、製造元:株式会社タニタ)で測定し、所望の範囲内に調整した。測定後、被験者に水とともにサンプルを摂取させ、さらに20分間安静にした。
サンプル摂取から20分経過後に、40〜41℃の湯に15分間入浴した。湯温は、防水型デジタル温度計(型番:SK−1250MC3α、製造元:株式会社佐藤計量器製作所)を用いてを測定し、多用途加熱&保温ヒーター(製品名:沸かし太郎、型番:SCH−901、製造元:クマガイ電工株式会社)を用いて所望の範囲内に調整した。入浴開始時を0分とし、5、10、15分に深部体温を測定した。入浴直後から70分間安静にし、経時的に深部体温・発汗量・温かさ実感・体表温を測定した。
各被験者は、まず、試験サンプルと対照サンプルのどちらか一方を摂取して試験を行い、休薬期間をおいた後、残るサンプルを摂取して試験を行った。
【0043】
被験者A〜Cの深部体温(鼓膜温)及び腕内側発汗量(水分蒸散量)を図2に示す。図2中、「0分」が入浴開始時点である。この結果、被験者A〜Cにおいて、サンプル摂取後から入浴開始後20分経過時点程度まで、試験サンプルを摂取した場合のほうが、対照サンプルを摂取した場合よりも深部体温が若干高くなる傾向が観察された。また、入浴後の腕内側発汗量も、被験者A〜Cにおいて、試験サンプルを摂取した場合のほうが、対照サンプルを摂取した場合よりも多くなる傾向が観察された。試験サンプル摂取により発汗量が増大したのは、体温が上昇したと感じたためと考えられる。つまり、これらの結果から、ヒハツ抽出物とシシウド抽出物を最適な配合量比で含有する経口用組成物を摂取することにより、温感が増強されることが明らかである。
【0044】
さらに、顔面、デコルテ、左手、及び右手の体表面温度について、被験者Aの入浴後10分経過時点の測定結果を表2に、被験者Bの入浴後15分経過時点の測定結果を表3に、被験者Cの入浴後20分経過時点の測定結果を表4に、それぞれ示す。表2〜4中、「Active」は試験サンプルを摂取した場合の結果であり、「Pracebo」は対照サンプルを摂取した場合の結果である。なお、各部位の体表面の平均温度は、サーモグラフィにより測定された各部位におけるピクセルあたりの平均値である。また、Student−t−testにより、試験サンプルを摂取した場合の結果と対照サンプルを摂取した場合の結果を比較した。この結果、全ての被験者において、全ての部位で、試験サンプルを摂取した場合のほうが、対照サンプルを摂取した場合よりも体表面の平均温度が高くなる傾向が観察された。また、その差は統計学的に有意な差であった。
【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の経口用組成物は、安全に継続的摂取が可能であり、かつ温熱効果の高い組成物であるため、特に冷え症改善や湯冷め防止のための機能性食品や医薬品等の製造の分野で利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒハツ抽出物とシシウド抽出物を、乾燥物換算(重量)比で1:0.01〜1:0.5で含むことを特徴とする経口用組成物。
【請求項2】
ヒハツ抽出物とシシウド抽出物の乾燥物換算(重量)比が1:0.02〜1:0.3であることを特徴とする請求項1に記載の経口用組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の経口用組成物を有効成分とすることを特徴とする冷え性改善剤。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の経口用組成物を有効成分とすることを特徴とする湯冷め抑制剤。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の経口用組成物を、入浴開始2時間前〜入浴中に摂取することを特徴とする、湯冷め抑制方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の経口用組成物を含むことを特長とする飲食品。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−167060(P2012−167060A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29726(P2011−29726)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000000055)アサヒグループホールディングス株式会社 (535)
【Fターム(参考)】