説明

経口用組成物

【課題】従来問題とされていたサイリウムの不快な風味やテクスチャを改良した、極めて服用しやすい経口用組成物を提供する。
【解決手段】0.1〜10重量%のタウリンならびにサイリウムを含有し、サイリウム1重量部に対してタウリンを1〜10重量部含む、飲料懸濁液。本発明の飲料懸濁液は、特に従来問題とされていたサイリウムの大量服用時に感じやすい不快な風味やテクスチャが低減された、極めて服用しやすい飲料懸濁液であり、サイリウムの大量摂取による恩恵をより容易に享受することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイリウムが呈する不快な風味やテクスチャが低減された経口用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
サイリウムは、インド原産のオオバコ科に属するプランタゴオバタ(Plantago Ovata Forskal)の種子の皮に含まれる食物繊維の一種である。
【0003】
サイリウムは水溶性サイリウムと非水溶性サイリウムの混合物であるが、水溶性サイリウムには、糖分や有害な物質を吸着して体外へ排泄する作用があるといわれている。また非水溶性サイリウムは、胃腸内における水分を吸収し蓄える性質(保水性)と、これによって30〜50倍の大きさに膨潤する性質(膨潤性)を有しており、その結果少量のサイリウムの摂取によって満腹感を得られることから、いわゆるダイエット効果があるとも言われている。さらに、サイリウムの保水性と膨潤性は、便の質を改善し、同時に便量を増加させることで腸の運動を活発にし、便排泄をスムーズにさせる機能も有している。
【0004】
この様なダイエット効果や便秘解消効果を享受するために、サイリウムを含む食品の開発が注目されてきている。
【0005】
しかしながら、サイリウムは、独特の不快な風味ならびに粘り等のテクスチャという問題を有している。上記の各種効果を確実にあげるためには、相当量、例えば1日あたり4〜6gのサイリウムの摂取が必要であると考えられているが、不快な風味やテクスチャがサイリウムの摂取を妨げる原因となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、サイリウムの不快な風味やテクスチャを改善し、日常的に無理なくサイリウムを多量に摂取することのできるサイリウム含有食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、それ自体は無味無臭であるタウリンを配合することにより、サイリウムの不快な風味やテクスチャが改善され、より服用し易い経口用組成物が得られることを見いだし、下記の各発明を完成した。
【0008】
(1)0.1〜10重量%のタウリンならびにサイリウムを含有する経口用組成物。
【0009】
(2)サイリウム1重量部に対してタウリンを1〜10重量部含む、(1)に記載の経口用組成物。
【0010】
(3)懸濁飲料である、(1)又は(2)に記載の経口用組成物。
【0011】
(4)pHが2.5〜7である、(3)に記載の経口用組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の組成物は、従来問題とされていたサイリウムの不快な風味やテクスチャが改良された、極めて服用しやすい経口用組成物を提供することができる。特に、タウリン自体は無味無臭であるため、別途適当な香料や矯味剤を利用することで、サイリウムの不快な風味をマスキングする一方で様々なフレーバーを持つ経口用組成物を提供することができる。
【0013】
また、サイリウムの生理作用、例えば脂質の消化吸収阻害作用、血清コレステロール濃度上昇抑制作用、便通改善、ダイエット効果等を享受するには、サイリウムの摂取量を増やすことが重要であるが、サイリウムを多量に摂取することは、同時にその不快な風味やテクスチャをより長く又は強く感じることを意味する。本発明は、このサイリウムの大量服用時に感じやすい不快な風味やテクスチャを、タウリンというそれ自体が人の健康に対して種々の利益をもたらす物質によって低減することができるので、サイリウムの大量摂取による恩恵とタウリンに由来する効果を同時に享受することを可能にするものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明で使用するサイリウムは、例えばインドのラジャスタン州及びグラジャード州で栽培されるオオバコの1種であるPlantago種植物のplantago ovata Forskalなどの種子の外側を包む外皮から回収、精製したものを利用することができる。また、不快な風味等を有するサイリウムを含んでいる限り、サイリウムの精製の度合いに制限はなく、未精製品あるいは部分精製品であってもよい。
【0015】
本発明において上記サイリウムの苦味や風味を改善する作用を示すタウリン(アミノエチルスルホン酸)は、分子量125.15の単純な化学構造をもつ含硫アミノ酸である。タウリンは化学構造的にはアミノ酸に属するが、タンパク質を構成するアミノ酸とは異なり、ビタミン類やホルモンのような作用、さらには脳神経系、循環系、肝胆系をはじめとして様々な薬理作用を示すことが知られている。この様に、タウリンは生理活性物質として注目され、利用されてきたが、その性状は無色または白色の結晶の粉末で臭いも味もないことから、矯味成分として、また特に嗜好性を形成するほどの強い苦味に対してのマスキング成分としては利用されていない。
【0016】
一般にサイリウムの有効量は、健康成人で一日で4〜6gであり、本発明では、サイリウム1重量部に対してタウリンを1〜10重量部配合して利用することができる。
【0017】
この組み合わせによって、サイリウムが呈する不快な風味やテクスチャを無味無臭のタウリンによって低減することができる。
【0018】
サイリウムは水を加えると容易にゲル化し、またタウリンは水溶液中で比較的安定な化合物であることから、本発明における好適な形態は懸濁飲料であり、特にpHが2.5〜7、好ましくは4.5〜6.5に調整されている、容器詰の飲料である。
【0019】
pHは適当なpH調節剤を用いて調整すればよい。pH調整剤としては、有機及び無機の食用酸を用いることができる。酸はそれらの非解離形で、あるいはそれらの各塩、例えばリン酸水素カリウム又はナトリウム、リン酸二水素カリウム又はナトリウム塩のような形態で用いてもよい。好ましい酸は、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、リン酸、グルコン酸、酒石酸、アスコルビン酸、酢酸、リン酸又はそれらの混合物を含めた食用有機酸である。また、重炭酸塩類を用いることもできる。
【0020】
この様にpHが調整された飲料として本発明にかかる経口用組成物を製造するには、同飲料は容器詰の形態で製造されることが好ましい。容器の種類に特に制限はないが、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶など、いずれの容器も利用することができる。
【0021】
また、本発明の経口用組成物において、特に生理電解質であるナトリウムイオンやカリウムイオンを配合することによって、いわゆるスポーツ飲料やアイソトニック飲料とすることも有益である。ナトリウムイオンやカリウムイオンの他にも、ミネラル類としてカルシウム、クロム、銅、鉄、マグネシウム、マンガン、リン、セレン、ケイ素、モリブデンまたは亜鉛等を添加することもできる。
【0022】
さらに、嗜好性を高めるために、適宜甘味料を選択して配合してもよい。例えば、ステビアなどの天然甘味料、アスパルテーム等の人工甘味料類、蔗糖等の炭水化物類、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール等の糖アルコール、グリセリン等のグリセロール類を利用することができる。
【0023】
本発明の経口用組成物の調製に際しては、特別な界面活性剤等の添加物は必須ではないが、必要に応じて他の公知の添加剤、賦形剤その他を加えて適当な剤型へと加工してもよい。例えば液剤であれば、抗酸化剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、可塑剤、pH調整剤などを混合して常法により、ドライシロップ剤、液剤などの経口物とすることができる。また固形剤であれば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、可塑剤などを混合して常法により、顆粒剤、散剤、カプセル剤、錠剤などを製造することができる。
【0024】
抗酸化剤としては、例えばビタミンC、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール(BHT)、α−トコフェロール、クエン酸などが挙げられる。
【0025】
着色剤としては、例えばタール色素、酸化チタンなどが挙げられる。
【0026】
界面活性剤としては、例えばポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリソルベート類、ラウリル硫酸ナトリウム、マクロゴール類、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0027】
また、必要に応じてタウリンあるいはサイリウムの他に各種の生理活性成分、例えばビタミン類などを混合することもできる。好ましいビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD及びビタミンEもしくはそれらの各種誘導体を挙げることができる。
【0028】
また、本発明の組成物に嗜好性を持たせるために、各種の香料等を添加しても良い。
【0029】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0030】
市販のサイリウム(三栄薬品貿易(株)、商品名サイリウムハスク末)5gとタウリン10gを精製水に溶解して全量を1000mlとし、飲料懸濁液を得た。この懸濁液のpHは5.7である。
【実施例2】
【0031】
市販のサイリウム(三栄薬品貿易(株)、商品名サイリウムハスク末)5gとタウリン30gを精製水に溶解して全量を1000mlとし、飲料懸濁液を得た。この懸濁液のpHは5.8である。
【0032】
<試験例>
実施例1、2で調製した懸濁液、ならびに実施例1からタウリンを除いた組成からなるコントロ−ルの風味について、20歳代〜50歳代の健常な成人男性6名からなるパネラーによる調査を行った。
【0033】
実施例1、2の懸濁液ならびにコントロールをそれぞれ前記パネラーに飲用させた後、各飲料の風味(紙っぽさ)とテクスチャ(粘り)について、「感じない」:5点、「僅かに感じる」:4点、「少し感じる」:3点、「感じる」:2点、「強く感じる」:1点から選択させ、その合計点で判定した。
【0034】
なお、検体の服用はダブルブラインドで行い、パネラーは、中味が解らない状況で検体を服用した。データ解析には、SD法による絶対評価法を用いた。この各飲料についてのスコアを表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
この様に、タウリンを添加することで、コントロールで認められている風味やテクスチャが改善されることが確認された。
【実施例3】
【0037】
市販のサイリウム(三栄薬品貿易(株)、商品名サイリウムハスク末)125g、タウリン250g、乳糖21.4g、軽質無水ケイ酸0.6gを混合したものを、ヒドロキシプロピルセルロース2.5gを精製水37.5gに溶解した結合液を用いて流動層造粒した後、軽質無水ケイ酸0.5gを添加して、固形組成物を得た。
【実施例4】
【0038】
市販のサイリウム(三栄薬品貿易(株)、商品名サイリウムハスク末)175g、タウリン50g、乳糖170.5g、軽質無水ケイ酸0.8gを混合したものを、ヒドロキシプロピルセルロース3gを精製水37.5gに溶解した結合液を用いて流動層造粒した後、軽質無水ケイ酸0.7gを添加して、固形組成物を得た。
【実施例5】
【0039】
市販のサイリウム(三栄薬品貿易(株)、商品名サイリウムハスク末)175g、タウリン150g、乳糖70.5g、軽質無水ケイ酸0.8gを混合したものを、ヒドロキシプロピルセルロース3gを精製水37.5gに溶解した結合液を用いて流動層造粒した後、軽質無水ケイ酸0.7gを添加して、固形組成物を得た。
【実施例6】
【0040】
市販のサイリウム(三栄薬品貿易(株)、商品名サイリウムハスク末)175g、タウリン250g、乳糖20.5g、軽質無水ケイ酸0.8gを混合したものを、ヒドロキシプロピルセルロース3gを精製水42.5gに溶解した結合液を用いて流動層造粒した後、軽質無水ケイ酸1.2gを添加して、固形組成物を得た。
【実施例7】
【0041】
市販のサイリウム(三栄薬品貿易(株)、商品名サイリウムハスク末)262.5g、タウリン25g、乳糖156g、軽質無水ケイ酸1.25gを混合したものを、ヒドロキシプロピルセルロース4.2gを精製水45gに溶解した結合液を用いて流動層造粒した後、軽質無水ケイ酸1.2gを添加して、固形組成物を得た。
【実施例8】
【0042】
市販のサイリウム(三栄薬品貿易(株)、商品名サイリウムハスク末)262.5g、タウリン125g、乳糖56g、軽質無水ケイ酸1.25gを混合したものを、ヒドロキシプロピルセルロース4.2gを精製水45gに溶解した結合液を用いて流動層造粒した後、軽質無水ケイ酸1.2gを添加して、固形組成物を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1〜10重量%のタウリンならびにサイリウムを含有し、サイリウム1重量部に対してタウリンを1〜10重量部含む、飲料懸濁液。
【請求項2】
pHが2.5〜7である、請求項1に記載の飲料懸濁液。

【公開番号】特開2013−10799(P2013−10799A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−229225(P2012−229225)
【出願日】平成24年10月16日(2012.10.16)
【分割の表示】特願2006−197769(P2006−197769)の分割
【原出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】