説明

経口用DNA損傷修復剤及びケモカインレセプター5抑制剤

【課題】紫外線誘発性DNA損傷の修復促進効果を有する、安全で恒常的に経口摂取できる成分を提供する。
【解決手段】クコの子実体からの抽出物を有効成分とする、DNA損傷修復剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA損傷修復剤、さらに詳しくは、天然成分を有効成分とし、紫外線照射によって誘発されるDNA損傷の修復を促進する経口用DNA損傷修復剤及びケモカインレセプター5抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線は細胞のDNAを切断・修飾することが知られている。細胞には、DNAに生じた損傷を修復する種々の機能が備わっているが、これらの機能が十分に働かない、又は修復能力以上の損傷を受けた場合には、細胞の正常な機能は失われ、細胞死(アポトーシス)へと向かう。紫外線により皮膚細胞DNAに生じた損傷は紅斑や色素沈着の原因となる他、修復能力の相対的低下により蓄積した損傷はシミ(老人性色素斑)の原因と考えられている。そして、DNA修復機能を低下させる遺伝子変異は、早期老化(例えば、ウェルナー症候群等)や易発ガン性(例えば、色素性乾皮症等)といったさまざまな疾患を引き起こすことが報告されている(非特許文献1、2)。
【0003】
このように、DNA修復機能を維持することは生体の美容・健康維持に重要であるので、DNA修復を促進するさまざまな薬剤が開発されてきた。しかし、その多くは強い副作用を有しており、ヒトへの適用には多くの制限が設けられている(例えばインターロイキン12(非特許文献3)等)。
【0004】
そこで、副作用の軽減を目的として、天然の植物および菌類からDNA損傷の予防又は修復を促進する物質の探索が広く行われている。そして、これまでに、ハイゴケ属、イトゴケ属、シノブゴケ属のコケ類からの抽出物(特許文献1)にDNA損傷保護作用、リンドウ科ゲンチアナ属植物の花の抽出物(特許文献2)、マメ科スイートピーの花からの抽出物(特許文献3)にDNA損傷抑制作用、及び、ケフィアグレイン菌による発酵乳飲料であるケフィア中にDNA損傷修復促進作用(特許文献4)があることが記載されている。
【0005】
また、ケモカインは、マクロファージ、T細胞、好酸球、好塩基球、好中球及び上皮細胞を炎症部位及び腫瘍増殖部位に誘引するために、広範な細胞により放出される走化性サイトカインである。ケモカインにはCXC−ケモカイン及びCC−ケモカインという2つの主クラスが存在し、CXC−ケモカインでは2つのシステインが単一のアミノ酸により隔てられているのに対し、CC−ケモカインでは2つのシステインが隣接しているという特徴がある。そして、紫外線照射による皮膚の炎症にはある種のケモカイン及びケモカインレセプターの発現誘導が関与していることが報告されている(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−193472号公報
【特許文献2】特開2006−151831号公報
【特許文献3】国際公開2008/120551号
【特許文献4】特開2009−102397号公報
【特許文献5】特表2004−508036号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】生化学、第81巻第6号第447−455頁(2009)
【非特許文献2】細胞工学、第29巻第1号第14−20(2010)
【非特許文献3】Toxicol.Appl.Pharmacol.,224、220−7(2007)
【非特許文献4】フレグランス ジャーナル、第35巻第9号45−51(2007)
【非特許文献5】Z.Naturforsch.C.,63,605−11(2008)
【非特許文献6】J.Clin.Invest.,115,3460−72(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記背景技術に鑑みなされたものであり、その目的は、安全性の高い天然素材に由来する、紫外線誘発性DNA損傷に対する修復促進効果及びケモカインレセプター5発現抑制効果を有する成分を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が鋭意検討を行った結果、ナス科クコ属に属するクコ(Lycium rhombifolium)の子実体であるクコシからの抽出物に、紫外線誘発性DNA損傷に対して優れた修復促進効果があることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
クコは中国原産の植物で、日本には奈良時代に伝来したとされている。子実体であるクコシは、中国及び日本の双方において、生色、クコ酒、ドライフルーツとして長きに渡り食されてきた。クコシには血圧や血糖の低下作用、脂肪肝の抑制作用があることが知られており、大変美味であることから、中国では薬膳料理の食材として広く摂取されている。さらに、近年欧米においては、栄養価が高く抗酸化作用に優れた果物(スーパーフルーツ)として、goji berryの名で注目を集めている。
このように、クコシは種々の効用が知られていた食材であるが、紫外線誘発性DNA損傷に対する修復促進効果又はケモカインレセプター5抑制効果は報告されていなかった。
【0011】
すなわち、本発明によって、食材として長く食されてきたクコシの抽出物を有効成分とする、安全性の高い経口用DNA損傷修復剤及びケモカインレセプター5抑制剤が提供される。
【0012】
上記クコシからの抽出は、水又は水とエタノールの混合溶媒を用いて行うことができる。そして、本願における好ましいDNA損傷修復剤の一例は水−エタノール混合溶媒抽出物である。
【0013】
上記クコシ抽出物の経口摂取により、ケモカインレセプター5の発現が抑制される。よって、本発明に係るDNA損傷修復剤を配合することにより、ケモカインレセプター5の抑制剤が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるDNA損傷修復剤及びケモカインレセプター5抑制剤は、クコシ抽出物を有効成分とすることにより安全性が高く、且つ、紫外線誘発性DNA損傷に対して優れた修復促進効果及びケモカインレセプター5抑制効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】クコシ抽出物の投与によって、紫外線誘発性DNA損傷による細胞死が低下することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の経口用DNA損傷修復剤の有効成分であるクコシ抽出物は、クコシを水性溶媒又は有機溶媒を用いて抽出したものである。抽出溶媒としては、通常抽出に用いる溶媒であれば任意に用いることができるが、例えば水性溶媒(例えば、水、生理的食塩水、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液等)、あるいは有機溶媒(例えば、エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、含水アルコール類、クロロホルム、ジクロロエタン、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン等)をそれぞれ単独あるいは組み合わせて用いることができる。
本発明において、好ましい抽出溶媒の例は水もしくは水とエタノールの混合溶媒であり、より好ましくは水とエタノールの混合溶媒である。エタノール−水混合溶媒中のエタノール濃度としては10〜90質量%、さらには20〜80質量%が好ましい。
【0017】
抽出は常法により行うことができ、例えばクコシを上記抽出溶媒とともに常温又は加熱して浸漬又は加熱還流すればよい。抽出液は、ろ過などにより分離し、必要に応じて濃縮及び/又は乾燥してもよい。
【0018】
得られた抽出物は、そのまま、あるいは減圧留去、凍結乾燥などにより濃縮又は乾燥したエキスとして使用できる。必要であれば、吸着法、例えばイオン交換樹脂を用いて不純物を除去したものや、ポーラスポリマー(例えば、アンバーライトXAD2)のカラムに吸着させた後、所望の溶媒で溶出し、さらに濃縮したもの等を使用することもできる。
【0019】
このようにして得られクコシ抽出物を経口摂取することにより、紫外線によって誘発されるDNA損傷の修復が促進され、その結果紫外線誘発性細胞死を軽減することができる。上記クコシ抽出物の摂取量は、少なすぎるとその効果が十分に得られないことがあるので、乾燥重量(抽出物の固形分重量)に換算して一日当たり0.2g/60kg体重以上、さらには0.5g/60kg以上を経口摂取することが好ましい。なお、クコシの30%エタノール抽出液5ml中には、乾燥重量にして0.5〜1.5gの固形分が含まれ、抽出液1gはクコシ原生薬対比0.5gに相当する。一方、過剰に摂取してもそれに見合った効果の増大は期待できず、製造上の問題を生じることもあるので、クコシ抽出物の摂取量は一日当たり上記乾燥重量が45g/60kg体重以下、さらには5g/60kg体重以下であることが好ましい。また、本発明に係るクコシ抽出物は、一日一回あるいは数回に分けて摂取することができる。
【0020】
さらに、本発明に係るDNA損傷修復剤を、飲食品、サプリメント等の経口摂取用組成物に配合することにより、紫外線によるDNA損傷及び細胞死の軽減を目的とした経口製剤とすることもできる。上記経口摂取用組成物は、クコシ抽出物を配合する以外は常法に従って製造することができ、必要に応じて医薬品、飲料品、サプリメント等に配合可能な成分、例えば賦形剤、呈味剤、着色剤、保存剤、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、酸化防止剤、機能性素材等を添加することができる。
【0021】
機能性素材としては、各種ビタミン類、パントテン酸、葉酸、ビオチン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アミノ酸、オリゴ糖、プロポリス、ローヤルゼリー、EPA、DHA、コエンザイムQ10、コンドロイチン、乳酸菌、ラクトフェリン、イソフラボン、プルーンエキス、キチン、キトサン、グルコサミン、コラーゲン等が挙げられる。
【0022】
賦形剤としては、通常用いられるものであれば限定されず、例えば、微粒子二酸化ケイ素のような粉末類、ショ糖脂肪酸エステル、結晶セルロース・カルボキシメチルセルロースナトリウム、リン酸水素カルシウム、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、シクロデキストリンなどのでんぷん類、結晶セルロース類、乳糖、ブドウ糖、砂糖、還元麦芽糖、水飴、フラクトオリゴ糖、乳化オリゴ糖などの糖類、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、マンニトールなどの糖アルコール類等が挙げられる。
【0023】
呈味剤としては、果汁エキスであるボンタンエキス、ライチエキス、リンゴ果汁、オレンジ果汁、ゆずエキス、ピーチフレーバー、ウメフレーバー、甘味剤であるアセスルファムK、エリスリトール、オリゴ糖類、マンノース、キシリトール、異性化糖類、ヨーグルトフレーバー等が挙げられる。
【0024】
その他、着色剤、保存剤、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、酸化防止剤については、飲食品に使用される公知のものを適宜選択して使用できる。また、緑茶、ウーロン茶、紅茶、バナバ茶、杜仲茶、鉄観音茶、ハトムギ茶、アマチャヅル茶、マコモ茶、昆布茶等の茶やその抽出物を配合することもできる
【0025】
上記経口摂取用組成物の形態としては、アンプル、カプセル、丸剤、錠剤、粉末、顆粒、固形、液体、ゼリー、ムース、クリーム等、任意とすることができる。
具体的には、例えば、美容・保健補助用飲食品(サプリメント)の他、洋菓子類、和菓子類、ガム、キャンデー、キャラメル等の一般菓子類、果実ジュース等の一般清涼飲料水、かまぼこ、ちくわ等の加工水産ねり製品、ソーセージ、ハム等の畜産製品、生めん、ゆでめん、ソバ等のめん類、ソース、醤油、タレ、砂糖、ハチミツ、粉末あめ、水あめ等の調味料、カレー粉、からし粉、コショウ粉等の香辛料、ジャム、マーマレード、チョコレートスプレッド、チーズ、バター、ヨーグルト等の乳製品などが挙げられる。
【0026】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
試験例1 クコシ抽出物の投与による紫外線誘発性細胞死の抑制効果
1.披験試料
・クコシエタノール抽出物
クコシ抽出液R(クコシの30%エタノール抽出液、固形分(成分)含量0.5〜1.5g/5ml[規格値];0.9g/5ml[試験値]、抽出液1gはクコシ原生薬対比0.5gに相当、松浦薬業株式会社)38.83g(37.30ml)から溶媒を蒸留除去して、7.64gのクコシエタノール抽出物粉末を得た。よって、前記クコシエタノール抽出物粉末1gはクコシ原生薬2.54gに由来する。この粉末を、エタノールに溶解したものを披験試料として用いた。
・クコシ水抽出物
水を溶媒としたクコシ抽出物で、固形分(成分)含量1.7g/5ml、抽出物1gはクコシ原生薬0.67gに由来する。
【0028】
2.試験方法
紫外線照射後の細胞においては、紫外線によって生じたDNA損傷を修復できた細胞のみが細胞死(アポトーシス)を回避し、生存し続けることができる(非特許文献1)。よって、紫外線照射後(DNA損傷後)に本願クコシ抽出物を投与し、細胞の生存率を測定することで、DNA損傷修復に対する促進効果を解析した。
【0029】
新生児由来正常ヒト皮膚線維芽細胞(Cryo NHDF−Neo、ロンザ社製)をポリスチレン製細胞培養皿に2.5×10の密度で播種し、非働化したFBS(ウシ胎児血清)10%含有DMEM培地中で培養した(37℃、5%CO存在下、加湿条件)。
【0030】
翌日、上記培地を1×10−3%のブチオニンスルフォキシミン(BSO、グルタチオン合成阻害剤)を含む0.5%FBS/DMEM培地に置換し、培養を続けた。
【0031】
さらに翌日、上記BSO含有培地を除去し、1×10−5%のFeClを含むカルシウム含有リン酸緩衝食塩水(PBS+)に置換後、長波長紫外線UVAを照射した(8J/cm)。照射後すぐに上記培地を10%FBS/DMEM培地に置換し、上記2種類の被験試料(クコシ水抽出物、クコシエタノール抽出物)を成分濃度(終濃度)が0.1%(w/v)、エタノールの持ち込みが終濃度5%(w/v)となるように添加した。非投与のコントロールには、エタノールのみが終濃度5%(w/v)となるように添加した。
【0032】
2日間の培養後、上記培地を10%AlamarBlue(細胞増殖/細胞毒性測定用色素、インビトロジェン社製)を含む10%FBS/DMEM培地に置換し、培地の吸光度(細胞の代謝活性に相関)を測定することで、細胞生存率を算出した。上記細胞生存率は、UVA非照射・抽出物非投与細胞の代謝活性(生存率)を100%とした相対値で表記した。結果を表1に示す。
【0033】
3.結果
【表1】

【0034】
表1において、紫外線照射細胞に注目すると、非投与群の生存率は大変低い(62.4±14.1%)が、照射後にクコシ水抽出物を投与した群では87.7±4.4%、クコシエタノール抽出物を投与した群では93.8±6.1%と非常に高い生存率であることがわかる。このことは、クコシ抽出物の添加により、紫外線照射によって生じたDNA損傷の修復が促進され、細胞がアポトーシス(細胞死)を回避した結果と考えられる。
これに対して、紫外線非照射細胞では、非投与群、クコシ投与群のいずれにおいても細胞の生存率に有意な差が見られない。よって、本願のクコシ抽出物は細胞の生存に悪影響を及ぼすものではなく、細胞に対する安全性が極めて高いといえる。
【0035】
なお、上記表1の結果をグラフ化したものを図1として示す。
【0036】
試験例2 クコシ抽出物の経口投与によるDNA損傷関連遺伝子の発現抑制
1.披験試料
試験例1において調整したクコシエタノール抽出物粉末を、媒体(0.5%w/v メチルセルロース400溶液)に溶解したものを披験試料とした。
【0037】
2.試験方法
マウスにおいて、紫外線照射によって発現誘導され、且つ、本発明のクコシ抽出物の経口投与によって発現抑制される遺伝子群の探索を行った(マイクロアレイ法)。
【0038】
マウス(DBA/2系統、雄性、5週齢、日本チャールズ・リーバー社より入手)は、標準精製飼料(AIN−93G、オリエンタル酵母工業社製)の自由摂餌環境下で1週間馴化飼育した。馴化後、クコシ抽出物投与群には、上記披験試料を10ml/kg体重、一日一回強制的に9日間経口投与した。非投与群には同量の媒体を同様に投与した(クコシ投与群:2匹/試験群、クコシ非投与群:3匹/試験群)。最終投与から1時間後に、紫外線照射器(デルマレイ-200、クリニカル・サプライ社製)を用いて外耳介に中波長紫外線(UVB)を照射した。被験試料非投与群には上記媒体のみを投与し、非照射対照群には紫外線を照射しなかった。翌日、上記マウスから耳介組織(耳介皮膚全層)を採取し、液体窒素中にて凍結後、−80℃に保存した。
【0039】
上記−80℃保存していた組織から、全RNAを抽出した。上記耳介組織を液体窒素中で凍結プレス破砕装置(クライオプレス、マイクロテック・ニチオン社製)を用いて破砕し、RNA抽出用試薬(Isogen、ニッポン・ジーン社製)及び全RNA抽出・精製キット(RNeasy Mini Kit、キアゲン社製)を用いて全RNAを精製した。
【0040】
上記全RNAから、遺伝子発現マイクロアレイ用ラベル化キット(Low Input
Quick Amp Labeling Kit、2カラー用、アジレント・テクノロジー社製)を用いてcRNAを合成した。紫外線照射群と非照射群、及びクコシ抽出物投与群と非投与群由来のcRNAは、それぞれ異なる蛍光物質で標識した。
【0041】
上記cRNAを、DNAマイクロアレイ(マウスオリゴマイクロアレイ、G4121A、アジレント・テクノロジー社製)にハイブリダイズした。マイクロアレイ上の蛍光シグナルは、マイクロアレイ・スキャナー(2565BA、アジレント・テクノロジー社製)を用いて定量化及び画像化した。そして、紫外線非照射群に対する照射群、及びクコシ抽出物投与群に対する非投与群における各遺伝子の相対的発現量比、すなわち倍率変化(フォールド・チェンジ)を、Feature Extractionソフトウェア(アジレント・テクノロジー社製)を用いて算出した。上記倍率変化の値が大きいほど、比較する2群間での発現量が大きく異なることを意味する。
【0042】
3.結果
紫外線照射によって転写誘導され、且つ、本願クコシ抽出物の経口投与によって転写抑制される遺伝子として、ケモカイン受容体5(chemokine(C−C motif)receptor5、Ccr5)とインターフェロンγ(interferon gamma、Ifng)が同定された。
【0043】
【表2】

【0044】
これらは、DNA損傷・修復系のカテゴリーに属する遺伝子である。インターフェロンγを過剰発現する培養細胞では、紫外線誘発性DNA損傷に対する修復能が著しく低下することが報告されている(非特許文献5)。また、ケモカインレセプター5の遺伝子欠損マウスではインターフェロンγによるDNA損傷が軽減することから、紫外線誘発性DNA損傷におけるケモカインレセプター5を介したシグナル伝達の関与が示唆されている(非特許文献6)。
【0045】
従って、本願のクコシ抽出物によるDNA損傷修復促進効果は、上記遺伝子の発現抑制を介している可能性が示唆された。
【0046】
なお、上記ケモカインレセプター5は免疫不全ウイルス(HIV)の霊長類細胞への感染に必須のレセプターであり、該レセプターの機能抑制及び該レセプター発現細胞の除去を目的としたさまざまな医薬品等が特許申請されている(特許文献5)。よって、本願クコシ抽出物による上記ケモカインレセプター5発現抑制効果は、免疫不全ウイルスの感染防御に対しても有効である可能性が示唆される。
【0047】
以下に本発明に係るDNA損傷修復剤の配合例を挙げるが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0048】
配合例1 顆粒
(配合成分) (mg)
DNA修復剤:クコシの30%エタノール抽出物粉末 200
(本願試験例1披験試料中のクコシエタノール抽出物粉末に相当)
ブドウ種子エキス(固形分) 25
ユリネエキス(固形分) 25
還元乳糖 805
大豆オリゴ糖 36
エリスリトール 36
デキストリン 25
クエン酸 24
香料 24
【0049】
配合例2 錠剤
(配合成分) (mg)
DNA修復剤:クコシの30%エタノール抽出物粉末 1200
(本願試験例1披験試料中のクコシエタノール抽出物粉末に相当)
ショ糖エステル 70
結晶セルロース 74
メチルセルロース 36
グリセリン 20
ビタミンC 20
レスベラトロール 10
アスタキサンチン 50

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クコシ抽出物を有効成分として含む経口用DNA損傷修復剤。
【請求項2】
請求項1の経口用DNA損傷修復剤において、クコシ抽出物がエタノール−水混合溶媒の抽出物であることを特徴とする経口用DNA損傷修復剤。
【請求項3】
クコシ抽出物を有効成分として配合したことを特徴とする、経口用ケモカインレセプター5抑制剤。

【図1】
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【公開番号】特開2012−211106(P2012−211106A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77668(P2011−77668)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】