経口組成物
【課題】水溶性機能成分を内包するマイクロカプセルを、分散性よく、内包物の溶出を抑えて配合した経口組成物を提供する。
【解決手段】寒天、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン及びアルギン酸ナトリウムの中から選ばれる1種又は2種以上のゲル化剤を水性溶媒に溶解した溶解液を、強制冷却及び前記ゲル化剤を架橋させる架橋剤の添加によりゲル化しながら剪断することによって得られるミクロゲル粒子を含有し、かつ水溶性機能成分を内包するマイクロカプセルを分散させてなる経口組成物。
【解決手段】寒天、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン及びアルギン酸ナトリウムの中から選ばれる1種又は2種以上のゲル化剤を水性溶媒に溶解した溶解液を、強制冷却及び前記ゲル化剤を架橋させる架橋剤の添加によりゲル化しながら剪断することによって得られるミクロゲル粒子を含有し、かつ水溶性機能成分を内包するマイクロカプセルを分散させてなる経口組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトフェリン等の水溶性機能成分内包マイクロカプセルを分散させた経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素等のタンパク質、アミノ酸、ビタミン等の生体の恒常性の維持・改善といった機能を有する機能成分に、味のマスキング、吸湿の防止、耐酸性の向上、体内吸収性の向上といった性能を付与する手法として、ゲル化剤や油脂を用い、機能成分をマイクロカプセル化する方法が一般的にとられている。
これらのマイクロカプセルを液剤に配合する場合、マイクロカプセルを懸濁・分散して配合し、カプセル内包物が液中に溶出しないことが条件となる。この懸濁・分散は、通常、難水溶性成分を懸濁・分散するために用いられる水溶性高分子により増粘したり、界面活性剤によって分散させることで可能となる。また、カプセル内包物の液中への溶出を抑える手段としては、pH応答性高分子や硬化油脂・WAXといった疎水性物質で被覆するという方法がとられている。
しかし、内包物が水溶性成分である場合、液剤中の水分により溶出性が促進されるため、長期保存時にマイクロカプセルから内包物が溶出してしまうという課題があった。
なお、本発明に関連する先行技術文献としては下記のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−104966号公報
【特許文献2】特開2005−82527号公報
【特許文献3】特開平4−82827号公報
【特許文献4】特開2004−143084号公報
【特許文献5】特開2005−68094号公報
【特許文献6】特開平2−83031号公報
【特許文献7】特開平1−115449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであって、ラクトフェリン等の水溶性機能成分を内包するマイクロカプセルを、分散性よく、内包物の溶出を抑えて配合した、流動性に優れた経口組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、寒天、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン及びアルギン酸ナトリウムの中から選ばれる1種又は2種以上のゲル化剤を水性溶媒に溶解した溶解液を、強制冷却及び前記ゲル化剤を架橋させる架橋剤の添加によりゲル化しながら剪断することによって得られるミクロゲル粒子を含有する経口組成物に、ラクトフェリンのような脂質代謝改善等の機能を有する水溶性機能成分を内包するマイクロカプセルを分散させることで、この水溶性機能成分の溶出を抑え、分散性、流動性に優れた経口組成物を得ることができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0006】
即ち、本発明は、下記の経口組成物を提供する。
請求項1:
寒天、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン及びアルギン酸ナトリウムの中から選ばれる1種又は2種以上のゲル化剤を水性溶媒に溶解した溶解液を、強制冷却及び前記ゲル化剤を架橋させる架橋剤の添加によりゲル化しながら剪断することによって得られるミクロゲル粒子を含有し、かつ水溶性機能成分を内包するマイクロカプセルを分散させてなることを特徴とする経口組成物。
請求項2:
マイクロカプセルが、水溶性機能成分を腸溶性被覆剤で被覆してなるものである請求項1記載の経口組成物。
請求項3:
水溶性機能成分が、生菌、ミネラル類、ビタミン類、アミノ酸類、ラクトフェリン、消化酵素及びカフェインから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載の経口組成物。
請求項4:
腸溶性被覆剤が、極度硬化菜種油、極度硬化パーム油及び極度硬化大豆油から選ばれる1種又は2種以上である請求項2又は3記載の経口組成物。
請求項5:
マイクロカプセル中の被覆剤の割合が、30〜95質量%である請求項2乃至4のいずれか1項記載の経口組成物。
請求項6:
マイクロカプセル中の水溶性機能成分に対する被覆剤の含有割合が、質量比で0.4〜30である請求項2乃至5のいずれか1項記載の経口組成物。
請求項7:
マイクロカプセルが多核二重被覆構造を有するものである請求項1乃至6のいずれか1項記載の経口組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ラクトフェリン等の水溶性機能成分を内包するマイクロカプセルを、内包物の溶出を抑え、分散性よく配合し、流動性に優れた経口組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の経口組成物は、寒天、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン及びアルギン酸ナトリウムの中から選ばれる1種又は2種以上のゲル化剤を水性溶媒に溶解した溶解液を、強制冷却及び前記ゲル化剤を架橋させる架橋剤の添加によりゲル化しながら剪断することによって得られるミクロゲル粒子を含有し、かつ水溶性機能成分を内包するマイクロカプセルを分散させてなるものである。
【0009】
本発明のゲル化剤は、寒天、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン及びアルギン酸ナトリウムの中から選ばれる。本発明においてゲル化剤とは、後述する架橋剤によってゲル化する性質を有するものをいう。ジェランガムとしては、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガムが挙げられ、これらのゲル化剤の中でも、寒天と脱アシル型ジェランガムが好適である。また、これらゲル化剤は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0010】
ゲル化剤の配合量は、組成物中0.005〜3質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜2質量%、更に好ましくは0.1〜1質量%である。配合量が0.005質量%未満だとマイクロカプセルを配合した場合にカプセルの分散性低下及び内包物溶出性上昇が起こることがあり、3質量%を超えると粘度が高くなることにより、飲用性が低下することがある。
【0011】
上記ゲル化剤を架橋させてゲルを形成する架橋剤としては、pH調整剤としての酸性物質や金属塩等が挙げられる。ここでいう酸性物質としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酢酸、リン酸、アジピン酸、酒石酸、果汁類等の有機酸が挙げられる。また、金属塩としては、二価陽イオンを含む塩類で、例えば可溶性のカルシウム塩、マグネシウム塩等で、水溶液にカチオンとして存在可能なものが好ましい。具体的には、乳酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムや、ミルクカゼイン、にがり、海水等の食品素材が挙げられる。特に好ましくは香味の点から、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グルタミン酸カルシウムである。
【0012】
架橋剤は、酸性物質であれば、溶液pHが3〜7になる範囲で添加するのが好ましく、金属塩であればゲル化剤の濃度によって添加量は異なるが、全組成中に陽イオンとして0.05×10-3〜1mol/kg存在するように配合することが好ましく、より好ましくは0.1×10-3〜0.5mol/kgであり、更に好ましくは0.1×10-3〜0.1mol/kgであり、特に好ましくは0.1×10-3〜0.05mol/kgである。配合量がこの範囲内であると、高分子化合物(ゲル化剤)が塩析することがない良好な組成物が得られる。
【0013】
本発明の経口組成物は、上記ゲル化剤を水性溶媒に溶解した溶解液を、後述するように、強制冷却及び架橋剤の添加によりゲル化しながら剪断することによって得られるミクロゲル粒子を含むものであるが、本発明においては、これに水溶性機能成分を内包したマイクロカプセルを分散させる。
【0014】
本発明に用いられるマイクロカプセルは、その形態が球形及び非球形のいずれでもよく、また内包する水溶性機能成分(核又は芯)も単核及び多核のいずれの構造でもよい。これらの中でも特に球形の単核構造や多核構造が好ましい。とりわけ、内包物の粒形が不定形であっても1つ1つの粒子を完全に被覆できる点から、多核構造が好ましく用いられる。更に、内包物の溶出を防止するために、この内包物を被覆する被膜を二重以上の多重被膜構造にすることが好ましい。
【0015】
本発明のマイクロカプセルに内包される水溶性機能成分とは、生体の恒常性の維持・向上等の機能を有する水溶性の成分であって、乳酸菌等の生菌、クエン酸鉄等のミネラル類、アスコルビン酸等のビタミン類、L−システイン等のアミノ酸類、ラクトフェリン、消化酵素(リパーゼ、プロテアーゼ、糖分解酵素)等のタンパク質、カフェイン等の苦味成分が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上の組み合わせで用いてもよい。
【0016】
内包物の平均粒子径は、200μm以下、特に0.04〜150μmであることが好ましく、0.1〜150μmであることがより好ましい。0.04μm未満ではハンドリングの点で好ましくなく、200μmより大きいと内包物の膜剤による被覆が十分でなくなることがある。特に、単核構造の場合、30〜150μmが好ましく、多核構造の場合、0.04〜150μmが好ましい。なお、内包物の平均粒子径は、レーザ回折散乱粒度分布測定装置 LS13 320(ベックマン・コールター(株)製)等により測定することができる。
内包量としては、マイクロカプセル中3〜70質量%、特に10〜50質量%の含有割合が好ましい。少なすぎると機能成分が少なくなり、十分な機能が得られない場合があり、多すぎると膜剤による十分な被覆が困難となる場合がある。
【0017】
上記水溶性機能成分を被覆する本発明のマイクロカプセルの被覆剤としては、内包物が腸内で溶出して吸収されるよう腸溶性の膜剤が好ましく、また胃内で溶解しないようpH5以下の液中で溶解しないことが好ましいと共に、内包する水溶性機能成分の熱安定性の点や、製品の経時安定性及び製造時のハンドリングの点から融点が50〜80℃であることが好ましい。このような被覆剤としては、疎水性物質や耐酸性高分子等であって、極度硬化油脂や、オイドラギットL(商品名;エボニック デグサ ジャパン(株)製)のようなアクリル酸系ポリマー、シェラック等の食品用樹脂が挙げられる。極度硬化油脂としては、トリグリセライドを主成分とする植物油を水素添加処理してヨウ素価5以下、特に2以下となるよう不飽和脂肪酸をほぼ完全に飽和させたものを用いることができる。極度硬化菜種油(融点68℃)、極度硬化パーム油(融点58℃)、極度硬化大豆油(融点66℃)は汎用性が高い。
【0018】
多重に被覆する際の被覆剤は、同じであっても異なっていてもよいが、例えば二重構造とする場合、一重目(第一被膜)に、製造時の内包物の熱安定性の点から極度硬化パーム油を、二重目(第二被膜)に、膜剤の緻密さを出すために極度硬化菜種油を組み合わせて用いることが好ましい。
【0019】
マイクロカプセル中のこれら被覆剤全体の割合は、30〜95質量%が好ましく、より好ましくは40〜90質量%、更に好ましくは60〜80質量%である。また、例えば二重に被覆する場合、マイクロカプセル中の二重目の被覆剤(第二被膜)の割合は、少なすぎると経時で内包物が溶出し易くなる点、多すぎると内包物の量が少なくなってしまう点から、3〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは6〜30質量%、特に好ましくは10〜20質量%である。
【0020】
被覆剤には、本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を添加することができる。例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の界面活性剤、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、寒天等の水溶性高分子、クエン酸、クエン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等のpH調整剤が挙げられる。
【0021】
また、水溶性機能成分に対する被覆剤全体の含有割合は、質量比で0.4〜30であることが好ましく、より好ましくは1〜10、更に好ましくは2〜5である。上記範囲より小さすぎると膜剤による十分な被覆が困難となり、経時で内包物が溶出し易くなる場合があり、大きすぎるとマイクロカプセルの嵩が大きくなり、製剤化が困難になったり、機能成分が少なくなり、十分な機能が得られない場合がある。
【0022】
本発明のマイクロカプセルの平均粒子径は、0.1〜5,000μmが好ましく、より好ましくは1〜2,000μm、更に好ましくは10〜1,000μm、特に好ましくは20〜600μmである。粒子径が5,000μmを超えると飲用性が低下する場合があり、0.1μm未満であるとミクロゲルによる分散保持能が低下する場合がある。なお、本発明において、マイクロカプセルの平均粒子径は、(株)堀場製作所製、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置により測定することができる。
【0023】
本発明のマイクロカプセルを製造する方法としては、内包成分である水溶性機能成分を十分に被覆することができればよく、特に限定されず、例えば、「マイクロ/ナノカプセルの新規調製と次世代製品開発技術」(2008年2月技術情報協会発行、pp23〜42)等に記載の公知の方法を用いることができる。方法例としては、液中硬化被覆法、融解分散冷却法、スプレードライング法、スプレークーリング法、気中懸濁被覆法、メカノケミカル法が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上の組み合わせで用いてもよい。これらの中でも特に、スプレークーリング法、気中懸濁被覆法、メカノケミカル法が被覆膜の緻密性が高い点、製造時の内包物ロスが少ないなどの点から好ましい。特に、スプレークーリング法は、製造工程が簡便であり、きれいな球形のマイクロカプセルが得られるという利点を有する。
【0024】
これらの具体的な製造方法は、スプレークーリング法の場合、被覆剤の融点±5℃の範囲で融解した被覆剤中へ、水溶性機能成分の粒子を添加して均一になるよう混合した後、スプレードライヤにて噴霧し、冷却することが好ましい。気中懸濁被覆法の場合、気流によって循環させた水溶性機能成分の粒子に、適当な速度で噴霧して乾燥することが好ましい。更に、得られたマイクロカプセルに、粒子径5〜50μmの被覆剤粒子をメカノケミカル法によりコーティングして多重被膜構造とすることができる。
【0025】
マイクロカプセルの配合量は、経口組成物中に0.05〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜30質量%である。少なすぎると機能成分の十分な効果が得られない場合があり、多すぎるとマイクロカプセルの沈降や浮遊が起こる場合がある。
【0026】
本発明の経口組成物には、上記成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、既知の薬効成分や、通常液剤に配合する任意成分を必要に応じて適宜配合することができる。このような成分としては、例えば、各種ビタミン類、生薬等の機能成分、各種添加剤が挙げられる。これらの任意成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で、目的に応じて適宜設定することができる。
【0027】
各種ビタミン類としては、ビタミンA及びその誘導体(レチノール、パルミチン酸レチノール等)、ビタミンB1以外のビタミンB及びその誘導体(リン酸リボフラビンナトリウム等のビタミンB2、塩酸ピリドキシン等のビタミンB6、ビタミンB12、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム等のビタミンB5等)、ビタミンC又はその誘導体(アスコルビン酸等)、ビタミンD又はその誘導体、ビタミンE又はその誘導体(トコフェロール、酢酸トコフェロール等)等が挙げられる。
生薬としては、ヨクイニン、キョウニン、ケツメイシ、サンソウニン、トウニン、ニクズク、リュウガンニク、カンゾウ、エゾウコギ、オウセイ、オウギ、クコシ、カッカ等が挙げられる。
その他機能成分として、ローヤルゼリー、カフェイン、塩化カルニチン、タウリン、γ−アミノ酪酸、グルコサミン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、水溶性コラーゲン、カプサイシン等が挙げられる。
添加剤としては、各種甘味剤(白糖、果糖ブドウ糖液糖、ハチミツ、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース等)、保存剤(安息香酸等)、安定化剤(エデト酸ナトリウム、水溶性高分子等)、可溶化剤(ノニオン界面活性剤等)、溶剤(エタノール、グリセリン等)、ポリオール類(プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)、酸化防止剤、着香剤・香料、清涼化剤、着色剤、pH調整剤、緩衝剤、水等が挙げられる。
【0028】
本発明のミクロゲル粒子を含む経口組成物は、寒天、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン及びアルギン酸ナトリウムの中から選ばれる1種又は2種以上のゲル化剤を水性溶媒に溶解した溶解液を、強制冷却及びゲル化剤を架橋させる架橋剤の添加によりゲル化しながら剪断することによって得ることができる。
【0029】
より具体的には、まず、寒天、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン及びアルギン酸ナトリウムの中から選ばれる1種又は2種以上のゲル化剤を水性溶媒に溶解して溶解液を得る。この場合、水性溶媒としては精製水、イオン交換水の他、組成中の水溶性物質が溶解した水溶液が用いられる。溶解は、ゲル化剤を融点以上の温度で水性溶媒に溶解することが好ましい。
【0030】
ミクロゲル粒子は、この溶解液を架橋剤の添加と強制冷却とにより上記ゲル化剤をゲル化させるとともに、このゲルを同時に剪断して破砕することにより製造されるもので、これによって流動性と降伏値をもったミクロなゲルの集合体を得ることができる。
【0031】
この場合、強制冷却は基本的にどのような方法をとっても構わないが、配合槽ジャケットでの冷却や冷却コイルを投入する方法、外部循環による冷却等が挙げられる。
冷却速度は、0.05℃/min以上が好ましく、0.1℃/min以上がより好ましい。冷却速度が0.05℃/min未満であると、冷却に時間がかかりすぎて生産効率が悪くなる場合がある。冷却速度の上限値には特に制限はなく、冷却速度が大きくても剪断力を加えながらの冷却であれば得られる組成物の品質に影響はない。特に、温度55〜20℃の範囲においては、0.1〜30℃/minが好ましく、より好ましくは0.1〜10℃/minであり、更に好ましくは0.1〜5℃/minの冷却速度で冷却することが好ましい。冷却時間は4時間以内であることが製造効率の点からも好ましい。架橋剤は、冷却前に加えても冷却後に加えてもよいが、冷却前に添加することが好ましい。
【0032】
ゲル化しながら剪断処理する時間は、冷却速度によって決まる。例えば、55〜30℃まで冷却する場合、冷却速度が0.5℃/minの場合は、冷却時間:50分、冷却速度:1℃/minの場合、冷却時間:25分、冷却速度2℃/minの場合、冷却時間:12.5分になる。
【0033】
本発明においては、ゲル化中に剪断して破砕する度合いは、必要となるミクロゲル粒子の平均粒子径に応じて適宜調整することができる。より滑らかな外観が必要とされる場合には、高速撹拌により十分に破砕して細かな粒子径のミクロゲル粒子とし、一方、溶液との比重差が大きいマイクロカプセルや占有体積の大きなマイクロカプセルを添加する場合には、軽い撹拌により破砕の度合いを弱めてやや大きめの粒子径のミクロゲル粒子とすることが好ましい。剪断力としては、特に限定されるものではないが、通常の均一混合を目的とした弱い剪断力よりは強い剪断力が好ましい。具体的には剪断力の下限として2m/s以上が好ましく、3m/s以上がより好ましい。剪断力の上限としては30m/s以下が好ましく、25m/s以下がより好ましい。ゲル化中の剪断力が、2m/s未満であると、ミクロゲル粒子を形成せずに全体がゲル化してしまう可能性があり、あまり大きすぎてもそれに見合う効果が得られない場合がある。
剪断力と冷却速度の関係としては、以下のような条件でミクロゲルを得ることができる。剪断力3m/s以上、好ましくは4m/s以上、より好ましくは10m/s以上、更に好ましくは22m/s以上で、冷却速度0.3℃/min以上、好ましくは0.5℃/min以上、より好ましくは1℃/min以上、更に好ましくは2℃/min以上である。
【0034】
ミクロゲル粒子を調製する際の剪断力を与える装置は特に限定されるものではなく、剪断力を与えることができれば特に限定されない。具体例としてホモジナイザー、ディスパー翼、パドル翼、メカニカルスターラー、クレアミックス、マイルダー、ウルトラミキサー等の一般的な乳化分散機が挙げられ、これらを組み合わせて併用したり、カキトリ翼やアンカー羽根を併用して溶液の全体流動を促すとなおよい。
なお、「降伏値をもつ」とは、ある一定の力を超えるまでは固体のように弾性を示し、それ以上の力がかかると流動し出し、ニュートン流動を示すことをいう。また、その一定の力の最小値を降伏値という。
【0035】
本発明においては、ゲル化剤、架橋剤及びマイクロカプセル以外の成分は、製造工程のどの段階で加えてもよく、ミクロゲル粒子を調製する前に加えても、剪断を加えてミクロゲル粒子を調製した後に外割で加えてもよい。マイクロカプセルは、熱をかけると内包物が溶出する場合があるために、ミクロゲル粒子の調製後に加えることが好ましい。
【0036】
本発明の経口組成物は、温度調節が可能な設備であれば、一般的な撹拌・乳化装置を用いて調製が可能である。特に、温度調節可能な槽に、前述した剪断を加える装置と全体混合する装置が備わっていることが好ましい。
【0037】
より具体的な経口組成物の製法を下記に示す。
(1)マイクロカプセル及び架橋剤を除くその他の成分を精製水で混合し、85〜90℃に加熱溶解した後に架橋剤を加え、その後強制冷却しながら剪断を加えてミクロゲル粒子を調製する。このミクロゲル粒子にマイクロカプセルを混合撹拌して経口組成物を得る。
(2)ゲル化剤を精製水で混合し、85〜90℃に加熱溶解した後に架橋剤を加え、その後強制冷却しながら剪断を加えてミクロゲル粒子を調製する。このミクロゲル粒子にマイクロカプセル及び残りの他成分を混合撹拌して経口組成物を得る。
(3)ゲル化剤を精製水で混合し、85〜90℃に加熱溶解した後、強制冷却しながら剪断を加え、液温が40℃以下になった時点で剪断を与えながら架橋剤を加えてミクロゲル粒子を調製する。このミクロゲル粒子にマイクロカプセル及び残りの他成分を混合撹拌して経口組成物を得る。
【0038】
上記方法によって得られる本発明のミクロゲル粒子の平均粒子径は、0.02〜1,000μmが好ましく、より好ましくは0.05〜700μm、更に好ましくは0.1〜500μm、特に好ましくは1〜400μmである。ミクロゲル粒子の平均粒子径が1,000μmを超えると、舌触りが悪くなり、良好な飲み心地が得られず、商品価値を低下させてしまう場合がある。一方、0.02μm未満では、マイクロカプセルがミクロゲル粒子間をすりぬけ易くなり、分散保持能が低下することがある。
なお、ミクロゲル粒子の平均粒子径は、(株)堀場製作所製、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置LA−920(粒子径測定範囲:0.02〜2,000μm)のマニュアルフローセル測定方式にて測定できる。測定温度は25℃、フローセルの循環ポンプ速度目盛りは2、相対屈折率を112A000Iに設定して行うことができる。
【0039】
また、マイクロカプセルの平均粒子径が、ミクロゲルの平均粒子径以上であると、マイクロカプセルがミクロゲル間を移動し易く、浮遊したり、沈降が起こり易くなるため、マイクロカプセルの平均粒子径は、ミクロゲルの平均粒子径よりも小さいことが好ましい。具体的には、マイクロカプセルの平均粒子径/ミクロゲルの平均粒子径=0.99以下が好ましく、より好ましくは0.95以下である。
【0040】
ミクロゲル粒子の含有量は、経口組成物中に50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。少なすぎるとマイクロカプセルの浮遊や沈降が起こり易く、マイクロカプセルの内包物の流出が起こり易い場合がある。上限は特に制限されず、マイクロカプセルを除く全量がミクロゲル粒子であってもよい。
【0041】
また、ミクロゲル粒子に対するマイクロカプセルの配合割合は、質量比で、マイクロカプセル/ミクロゲル粒子=0.7以下が好ましく、より好ましくは0.5以下であり、更に好ましくは0.2以下である。上記範囲より大きいと流動性が低下する場合がある。
【0042】
本発明の経口組成物は、25℃における粘度が0.1mPa・s以上2,000mPa・s未満、好ましくは0.5〜1,500mPa・s、更に好ましくは1〜1,000mPa・s、特に好ましくは10〜800mPa・sである。とりわけミクロゲル粒子を用いているため、10〜600mPa・sの低粘度で飲み心地の良い経口組成物を得ることができる。0.1mPa・s以下であるとマイクロカプセルの分散安定化能が低下する場合がある。2,000mPa・s以上でも、分散されたマイクロカプセルの分散安定化能は変わらないが、流動性が悪くなり、液剤としてふさわしくない場合がある。なお、本発明の粘度は、25℃でB型粘度計((株)東京計器製)60rpm、1分間にて測定することができる。
なお、本発明の経口組成物には、外割で水を加えることもできるが、マイクロカプセルの安定性、分散性の点からミクロゲル粒子中に含まれる水分以外の水分を加えない方が好ましい。また、本発明の組成物のpHは、耐菌性の点から、3〜6程度であることが好ましい。
【0043】
本発明の経口組成物は、医薬品、食品等の製剤に配合が可能であり、形態としては、ドリンク剤、シロップ剤等が挙げられる。
【0044】
この場合、本発明の経口組成物の容器としては、一般的に飲料の容器として用いられるものであれば、何ら制約を受けるものではなく、使用可能な最内装の材質としては、ガラス、紙、アルミニウム等の金属、PETやPE等の樹脂等が挙げられ、これらの容器に本発明の経口組成物を滅菌充填することが好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、製造例、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、ミクロゲル粒子の粒子径は、(株)堀場製作所製、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置LA−920のマニュアルフローセル測定方式(測定温度25℃)により測定した。
【0046】
[製造例1〜6]
表1〜6に示す成分を用いて下記工程に従って、平均粒子径200μmのマイクロカプセルを得た。篩にかけ、10〜1,000μmの画分を評価に用いた。
工程1:スプレークーリング法
極度硬化パーム油を約65℃で融解し、そこにラクトフェリンを加えて混合均一化して得られた液を、スプレードライヤ(大河原化工機(株)製)、ディスク回転数10,000rpm、送液量は、8.6kg/hにて噴霧冷却造粒した。
工程2:メカノケミカル法
工程1で得られたマイクロカプセルと、粒子径20μm程度に粉砕した極度硬化パーム油又は極度硬化菜種油を混合分散型造粒機((株)奈良機械製作所製)に入れ、回転数1,000rpm、造粒羽根回転数3,000rpmで接触、衝突により被覆した。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
【表6】
【0053】
[製造例7]
表7に示す成分を用いて製造例1〜6と同様にスプレークーリング法により平均粒子径180μmのマイクロカプセルを得た。篩にかけ、10〜1,000μmの画分を評価に用いた。
【0054】
【表7】
【0055】
[製造例8]
表8に示す成分を用いて気中懸濁法により平均粒子径200μmのマイクロカプセルを得た。篩にかけ、10〜1,000μmの画分を評価に用いた。
気中懸濁法
微粒子コーティング装置Wurster MP−01((株)パウレック製)にて、ラクトフェリン以外の成分を混合した液を送液量150g/h、乾燥温度40℃で、ラクトフェリンにコーティングした。
【0056】
【表8】
【0057】
製造例1〜8で使用した原料は下記の通りである。
*1)極度硬化パーム油:理研ビタミン(株)製 スプレーファットPM
*2)極度硬化菜種油:理研ビタミン(株)製 スプレーファットNR−100
*3)オイドラギット:エボニック デグサ ジャパン(株)製 EUDRAGIT L
30D−55
ラクトフェリン:森永乳業(株)製 ラクトフェリン
【0058】
製造例1〜5ではラクトフェリンを内包した多核二重膜構造のマイクロカプセルを得た。製造例6,7ではラクトフェリン又はカフェインを内包した多核一重膜構造のマイクロカプセルを得た(内包物の平均粒子径10〜50μm程度)。製造例8ではラクトフェリンを内包した単核一重膜構造のマイクロカプセルを得た(内包物の平均粒子径50〜100μm程度)。
【0059】
[実施例1〜17]
表9〜13に示すマイクロカプセル及び架橋剤以外の成分を精製水で混合し、85〜90℃に加熱溶解し、架橋剤を加えてゲル化させ、その後強制冷却しながら剪断を加えて(3m/s、冷却速度0.5℃/min)平均粒子径250μm程度のミクロゲル粒子を調製した。このミクロゲル粒子にマイクロカプセルを混合撹拌して経口組成物(粘度200〜700mPa・s程度、pH4〜5程度)を得た。
【0060】
[比較例1〜4]
表9に示すマイクロカプセル以外の成分を精製水で混合し、85〜90℃に加熱溶解し、冷却後、マイクロカプセルを混合撹拌して経口組成物(粘度 比較例1,2:200〜600mPa・s程度、比較例3,4:測定不能(ゲル化)、pH4〜5程度)を得た。
【0061】
〈マイクロカプセル内包物溶出性〉
実施例1〜17及び比較例1〜4で調製したマイクロカプセル分散経口組成物を25℃条件下で1ヶ月間保存後、均一になるよう振とうし、再分散させた。その後、0.45μmのメンブランフィルターを用いてろ過し、それぞれ定量に適した吸光度を測定し、マイクロカプセルより溶出した内包物を定量した(ラクトフェリン:280nm、カフェイン:274nm)。経口組成物への内包物配合量に対して溶出した内包物の量を百分率で求めた。結果を表9〜13に併記する。
[評価基準]
◎:溶出率が15%未満
○:溶出率が15%以上30%未満
×:溶出率が30%以上
【0062】
〈流動性〉
100mL瓶に調製した経口組成物を入れ、5℃に冷やしたものについて、モニター10名にて飲用テストを実施した。評価は、10名の平均ではなく、1名でも評価基準に該当した場合には、その結果を評価結果とした。結果を表9〜13に併記する。
[評価基準]
◎:瓶の残量が5%未満のもの
○:瓶の残量が5%以上10%未満のもの
×:瓶の残量が10%以上のもの
【0063】
【表9】
【0064】
【表10】
【0065】
【表11】
【0066】
【表12】
【0067】
【表13】
【0068】
実施例1〜17及び比較例1〜4で使用した原料は下記の通りである。
【表14】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトフェリン等の水溶性機能成分内包マイクロカプセルを分散させた経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素等のタンパク質、アミノ酸、ビタミン等の生体の恒常性の維持・改善といった機能を有する機能成分に、味のマスキング、吸湿の防止、耐酸性の向上、体内吸収性の向上といった性能を付与する手法として、ゲル化剤や油脂を用い、機能成分をマイクロカプセル化する方法が一般的にとられている。
これらのマイクロカプセルを液剤に配合する場合、マイクロカプセルを懸濁・分散して配合し、カプセル内包物が液中に溶出しないことが条件となる。この懸濁・分散は、通常、難水溶性成分を懸濁・分散するために用いられる水溶性高分子により増粘したり、界面活性剤によって分散させることで可能となる。また、カプセル内包物の液中への溶出を抑える手段としては、pH応答性高分子や硬化油脂・WAXといった疎水性物質で被覆するという方法がとられている。
しかし、内包物が水溶性成分である場合、液剤中の水分により溶出性が促進されるため、長期保存時にマイクロカプセルから内包物が溶出してしまうという課題があった。
なお、本発明に関連する先行技術文献としては下記のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−104966号公報
【特許文献2】特開2005−82527号公報
【特許文献3】特開平4−82827号公報
【特許文献4】特開2004−143084号公報
【特許文献5】特開2005−68094号公報
【特許文献6】特開平2−83031号公報
【特許文献7】特開平1−115449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであって、ラクトフェリン等の水溶性機能成分を内包するマイクロカプセルを、分散性よく、内包物の溶出を抑えて配合した、流動性に優れた経口組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、寒天、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン及びアルギン酸ナトリウムの中から選ばれる1種又は2種以上のゲル化剤を水性溶媒に溶解した溶解液を、強制冷却及び前記ゲル化剤を架橋させる架橋剤の添加によりゲル化しながら剪断することによって得られるミクロゲル粒子を含有する経口組成物に、ラクトフェリンのような脂質代謝改善等の機能を有する水溶性機能成分を内包するマイクロカプセルを分散させることで、この水溶性機能成分の溶出を抑え、分散性、流動性に優れた経口組成物を得ることができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0006】
即ち、本発明は、下記の経口組成物を提供する。
請求項1:
寒天、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン及びアルギン酸ナトリウムの中から選ばれる1種又は2種以上のゲル化剤を水性溶媒に溶解した溶解液を、強制冷却及び前記ゲル化剤を架橋させる架橋剤の添加によりゲル化しながら剪断することによって得られるミクロゲル粒子を含有し、かつ水溶性機能成分を内包するマイクロカプセルを分散させてなることを特徴とする経口組成物。
請求項2:
マイクロカプセルが、水溶性機能成分を腸溶性被覆剤で被覆してなるものである請求項1記載の経口組成物。
請求項3:
水溶性機能成分が、生菌、ミネラル類、ビタミン類、アミノ酸類、ラクトフェリン、消化酵素及びカフェインから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載の経口組成物。
請求項4:
腸溶性被覆剤が、極度硬化菜種油、極度硬化パーム油及び極度硬化大豆油から選ばれる1種又は2種以上である請求項2又は3記載の経口組成物。
請求項5:
マイクロカプセル中の被覆剤の割合が、30〜95質量%である請求項2乃至4のいずれか1項記載の経口組成物。
請求項6:
マイクロカプセル中の水溶性機能成分に対する被覆剤の含有割合が、質量比で0.4〜30である請求項2乃至5のいずれか1項記載の経口組成物。
請求項7:
マイクロカプセルが多核二重被覆構造を有するものである請求項1乃至6のいずれか1項記載の経口組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ラクトフェリン等の水溶性機能成分を内包するマイクロカプセルを、内包物の溶出を抑え、分散性よく配合し、流動性に優れた経口組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の経口組成物は、寒天、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン及びアルギン酸ナトリウムの中から選ばれる1種又は2種以上のゲル化剤を水性溶媒に溶解した溶解液を、強制冷却及び前記ゲル化剤を架橋させる架橋剤の添加によりゲル化しながら剪断することによって得られるミクロゲル粒子を含有し、かつ水溶性機能成分を内包するマイクロカプセルを分散させてなるものである。
【0009】
本発明のゲル化剤は、寒天、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン及びアルギン酸ナトリウムの中から選ばれる。本発明においてゲル化剤とは、後述する架橋剤によってゲル化する性質を有するものをいう。ジェランガムとしては、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガムが挙げられ、これらのゲル化剤の中でも、寒天と脱アシル型ジェランガムが好適である。また、これらゲル化剤は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0010】
ゲル化剤の配合量は、組成物中0.005〜3質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜2質量%、更に好ましくは0.1〜1質量%である。配合量が0.005質量%未満だとマイクロカプセルを配合した場合にカプセルの分散性低下及び内包物溶出性上昇が起こることがあり、3質量%を超えると粘度が高くなることにより、飲用性が低下することがある。
【0011】
上記ゲル化剤を架橋させてゲルを形成する架橋剤としては、pH調整剤としての酸性物質や金属塩等が挙げられる。ここでいう酸性物質としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酢酸、リン酸、アジピン酸、酒石酸、果汁類等の有機酸が挙げられる。また、金属塩としては、二価陽イオンを含む塩類で、例えば可溶性のカルシウム塩、マグネシウム塩等で、水溶液にカチオンとして存在可能なものが好ましい。具体的には、乳酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムや、ミルクカゼイン、にがり、海水等の食品素材が挙げられる。特に好ましくは香味の点から、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グルタミン酸カルシウムである。
【0012】
架橋剤は、酸性物質であれば、溶液pHが3〜7になる範囲で添加するのが好ましく、金属塩であればゲル化剤の濃度によって添加量は異なるが、全組成中に陽イオンとして0.05×10-3〜1mol/kg存在するように配合することが好ましく、より好ましくは0.1×10-3〜0.5mol/kgであり、更に好ましくは0.1×10-3〜0.1mol/kgであり、特に好ましくは0.1×10-3〜0.05mol/kgである。配合量がこの範囲内であると、高分子化合物(ゲル化剤)が塩析することがない良好な組成物が得られる。
【0013】
本発明の経口組成物は、上記ゲル化剤を水性溶媒に溶解した溶解液を、後述するように、強制冷却及び架橋剤の添加によりゲル化しながら剪断することによって得られるミクロゲル粒子を含むものであるが、本発明においては、これに水溶性機能成分を内包したマイクロカプセルを分散させる。
【0014】
本発明に用いられるマイクロカプセルは、その形態が球形及び非球形のいずれでもよく、また内包する水溶性機能成分(核又は芯)も単核及び多核のいずれの構造でもよい。これらの中でも特に球形の単核構造や多核構造が好ましい。とりわけ、内包物の粒形が不定形であっても1つ1つの粒子を完全に被覆できる点から、多核構造が好ましく用いられる。更に、内包物の溶出を防止するために、この内包物を被覆する被膜を二重以上の多重被膜構造にすることが好ましい。
【0015】
本発明のマイクロカプセルに内包される水溶性機能成分とは、生体の恒常性の維持・向上等の機能を有する水溶性の成分であって、乳酸菌等の生菌、クエン酸鉄等のミネラル類、アスコルビン酸等のビタミン類、L−システイン等のアミノ酸類、ラクトフェリン、消化酵素(リパーゼ、プロテアーゼ、糖分解酵素)等のタンパク質、カフェイン等の苦味成分が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上の組み合わせで用いてもよい。
【0016】
内包物の平均粒子径は、200μm以下、特に0.04〜150μmであることが好ましく、0.1〜150μmであることがより好ましい。0.04μm未満ではハンドリングの点で好ましくなく、200μmより大きいと内包物の膜剤による被覆が十分でなくなることがある。特に、単核構造の場合、30〜150μmが好ましく、多核構造の場合、0.04〜150μmが好ましい。なお、内包物の平均粒子径は、レーザ回折散乱粒度分布測定装置 LS13 320(ベックマン・コールター(株)製)等により測定することができる。
内包量としては、マイクロカプセル中3〜70質量%、特に10〜50質量%の含有割合が好ましい。少なすぎると機能成分が少なくなり、十分な機能が得られない場合があり、多すぎると膜剤による十分な被覆が困難となる場合がある。
【0017】
上記水溶性機能成分を被覆する本発明のマイクロカプセルの被覆剤としては、内包物が腸内で溶出して吸収されるよう腸溶性の膜剤が好ましく、また胃内で溶解しないようpH5以下の液中で溶解しないことが好ましいと共に、内包する水溶性機能成分の熱安定性の点や、製品の経時安定性及び製造時のハンドリングの点から融点が50〜80℃であることが好ましい。このような被覆剤としては、疎水性物質や耐酸性高分子等であって、極度硬化油脂や、オイドラギットL(商品名;エボニック デグサ ジャパン(株)製)のようなアクリル酸系ポリマー、シェラック等の食品用樹脂が挙げられる。極度硬化油脂としては、トリグリセライドを主成分とする植物油を水素添加処理してヨウ素価5以下、特に2以下となるよう不飽和脂肪酸をほぼ完全に飽和させたものを用いることができる。極度硬化菜種油(融点68℃)、極度硬化パーム油(融点58℃)、極度硬化大豆油(融点66℃)は汎用性が高い。
【0018】
多重に被覆する際の被覆剤は、同じであっても異なっていてもよいが、例えば二重構造とする場合、一重目(第一被膜)に、製造時の内包物の熱安定性の点から極度硬化パーム油を、二重目(第二被膜)に、膜剤の緻密さを出すために極度硬化菜種油を組み合わせて用いることが好ましい。
【0019】
マイクロカプセル中のこれら被覆剤全体の割合は、30〜95質量%が好ましく、より好ましくは40〜90質量%、更に好ましくは60〜80質量%である。また、例えば二重に被覆する場合、マイクロカプセル中の二重目の被覆剤(第二被膜)の割合は、少なすぎると経時で内包物が溶出し易くなる点、多すぎると内包物の量が少なくなってしまう点から、3〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは6〜30質量%、特に好ましくは10〜20質量%である。
【0020】
被覆剤には、本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を添加することができる。例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の界面活性剤、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、寒天等の水溶性高分子、クエン酸、クエン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等のpH調整剤が挙げられる。
【0021】
また、水溶性機能成分に対する被覆剤全体の含有割合は、質量比で0.4〜30であることが好ましく、より好ましくは1〜10、更に好ましくは2〜5である。上記範囲より小さすぎると膜剤による十分な被覆が困難となり、経時で内包物が溶出し易くなる場合があり、大きすぎるとマイクロカプセルの嵩が大きくなり、製剤化が困難になったり、機能成分が少なくなり、十分な機能が得られない場合がある。
【0022】
本発明のマイクロカプセルの平均粒子径は、0.1〜5,000μmが好ましく、より好ましくは1〜2,000μm、更に好ましくは10〜1,000μm、特に好ましくは20〜600μmである。粒子径が5,000μmを超えると飲用性が低下する場合があり、0.1μm未満であるとミクロゲルによる分散保持能が低下する場合がある。なお、本発明において、マイクロカプセルの平均粒子径は、(株)堀場製作所製、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置により測定することができる。
【0023】
本発明のマイクロカプセルを製造する方法としては、内包成分である水溶性機能成分を十分に被覆することができればよく、特に限定されず、例えば、「マイクロ/ナノカプセルの新規調製と次世代製品開発技術」(2008年2月技術情報協会発行、pp23〜42)等に記載の公知の方法を用いることができる。方法例としては、液中硬化被覆法、融解分散冷却法、スプレードライング法、スプレークーリング法、気中懸濁被覆法、メカノケミカル法が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上の組み合わせで用いてもよい。これらの中でも特に、スプレークーリング法、気中懸濁被覆法、メカノケミカル法が被覆膜の緻密性が高い点、製造時の内包物ロスが少ないなどの点から好ましい。特に、スプレークーリング法は、製造工程が簡便であり、きれいな球形のマイクロカプセルが得られるという利点を有する。
【0024】
これらの具体的な製造方法は、スプレークーリング法の場合、被覆剤の融点±5℃の範囲で融解した被覆剤中へ、水溶性機能成分の粒子を添加して均一になるよう混合した後、スプレードライヤにて噴霧し、冷却することが好ましい。気中懸濁被覆法の場合、気流によって循環させた水溶性機能成分の粒子に、適当な速度で噴霧して乾燥することが好ましい。更に、得られたマイクロカプセルに、粒子径5〜50μmの被覆剤粒子をメカノケミカル法によりコーティングして多重被膜構造とすることができる。
【0025】
マイクロカプセルの配合量は、経口組成物中に0.05〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜30質量%である。少なすぎると機能成分の十分な効果が得られない場合があり、多すぎるとマイクロカプセルの沈降や浮遊が起こる場合がある。
【0026】
本発明の経口組成物には、上記成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、既知の薬効成分や、通常液剤に配合する任意成分を必要に応じて適宜配合することができる。このような成分としては、例えば、各種ビタミン類、生薬等の機能成分、各種添加剤が挙げられる。これらの任意成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で、目的に応じて適宜設定することができる。
【0027】
各種ビタミン類としては、ビタミンA及びその誘導体(レチノール、パルミチン酸レチノール等)、ビタミンB1以外のビタミンB及びその誘導体(リン酸リボフラビンナトリウム等のビタミンB2、塩酸ピリドキシン等のビタミンB6、ビタミンB12、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム等のビタミンB5等)、ビタミンC又はその誘導体(アスコルビン酸等)、ビタミンD又はその誘導体、ビタミンE又はその誘導体(トコフェロール、酢酸トコフェロール等)等が挙げられる。
生薬としては、ヨクイニン、キョウニン、ケツメイシ、サンソウニン、トウニン、ニクズク、リュウガンニク、カンゾウ、エゾウコギ、オウセイ、オウギ、クコシ、カッカ等が挙げられる。
その他機能成分として、ローヤルゼリー、カフェイン、塩化カルニチン、タウリン、γ−アミノ酪酸、グルコサミン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、水溶性コラーゲン、カプサイシン等が挙げられる。
添加剤としては、各種甘味剤(白糖、果糖ブドウ糖液糖、ハチミツ、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース等)、保存剤(安息香酸等)、安定化剤(エデト酸ナトリウム、水溶性高分子等)、可溶化剤(ノニオン界面活性剤等)、溶剤(エタノール、グリセリン等)、ポリオール類(プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)、酸化防止剤、着香剤・香料、清涼化剤、着色剤、pH調整剤、緩衝剤、水等が挙げられる。
【0028】
本発明のミクロゲル粒子を含む経口組成物は、寒天、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン及びアルギン酸ナトリウムの中から選ばれる1種又は2種以上のゲル化剤を水性溶媒に溶解した溶解液を、強制冷却及びゲル化剤を架橋させる架橋剤の添加によりゲル化しながら剪断することによって得ることができる。
【0029】
より具体的には、まず、寒天、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン及びアルギン酸ナトリウムの中から選ばれる1種又は2種以上のゲル化剤を水性溶媒に溶解して溶解液を得る。この場合、水性溶媒としては精製水、イオン交換水の他、組成中の水溶性物質が溶解した水溶液が用いられる。溶解は、ゲル化剤を融点以上の温度で水性溶媒に溶解することが好ましい。
【0030】
ミクロゲル粒子は、この溶解液を架橋剤の添加と強制冷却とにより上記ゲル化剤をゲル化させるとともに、このゲルを同時に剪断して破砕することにより製造されるもので、これによって流動性と降伏値をもったミクロなゲルの集合体を得ることができる。
【0031】
この場合、強制冷却は基本的にどのような方法をとっても構わないが、配合槽ジャケットでの冷却や冷却コイルを投入する方法、外部循環による冷却等が挙げられる。
冷却速度は、0.05℃/min以上が好ましく、0.1℃/min以上がより好ましい。冷却速度が0.05℃/min未満であると、冷却に時間がかかりすぎて生産効率が悪くなる場合がある。冷却速度の上限値には特に制限はなく、冷却速度が大きくても剪断力を加えながらの冷却であれば得られる組成物の品質に影響はない。特に、温度55〜20℃の範囲においては、0.1〜30℃/minが好ましく、より好ましくは0.1〜10℃/minであり、更に好ましくは0.1〜5℃/minの冷却速度で冷却することが好ましい。冷却時間は4時間以内であることが製造効率の点からも好ましい。架橋剤は、冷却前に加えても冷却後に加えてもよいが、冷却前に添加することが好ましい。
【0032】
ゲル化しながら剪断処理する時間は、冷却速度によって決まる。例えば、55〜30℃まで冷却する場合、冷却速度が0.5℃/minの場合は、冷却時間:50分、冷却速度:1℃/minの場合、冷却時間:25分、冷却速度2℃/minの場合、冷却時間:12.5分になる。
【0033】
本発明においては、ゲル化中に剪断して破砕する度合いは、必要となるミクロゲル粒子の平均粒子径に応じて適宜調整することができる。より滑らかな外観が必要とされる場合には、高速撹拌により十分に破砕して細かな粒子径のミクロゲル粒子とし、一方、溶液との比重差が大きいマイクロカプセルや占有体積の大きなマイクロカプセルを添加する場合には、軽い撹拌により破砕の度合いを弱めてやや大きめの粒子径のミクロゲル粒子とすることが好ましい。剪断力としては、特に限定されるものではないが、通常の均一混合を目的とした弱い剪断力よりは強い剪断力が好ましい。具体的には剪断力の下限として2m/s以上が好ましく、3m/s以上がより好ましい。剪断力の上限としては30m/s以下が好ましく、25m/s以下がより好ましい。ゲル化中の剪断力が、2m/s未満であると、ミクロゲル粒子を形成せずに全体がゲル化してしまう可能性があり、あまり大きすぎてもそれに見合う効果が得られない場合がある。
剪断力と冷却速度の関係としては、以下のような条件でミクロゲルを得ることができる。剪断力3m/s以上、好ましくは4m/s以上、より好ましくは10m/s以上、更に好ましくは22m/s以上で、冷却速度0.3℃/min以上、好ましくは0.5℃/min以上、より好ましくは1℃/min以上、更に好ましくは2℃/min以上である。
【0034】
ミクロゲル粒子を調製する際の剪断力を与える装置は特に限定されるものではなく、剪断力を与えることができれば特に限定されない。具体例としてホモジナイザー、ディスパー翼、パドル翼、メカニカルスターラー、クレアミックス、マイルダー、ウルトラミキサー等の一般的な乳化分散機が挙げられ、これらを組み合わせて併用したり、カキトリ翼やアンカー羽根を併用して溶液の全体流動を促すとなおよい。
なお、「降伏値をもつ」とは、ある一定の力を超えるまでは固体のように弾性を示し、それ以上の力がかかると流動し出し、ニュートン流動を示すことをいう。また、その一定の力の最小値を降伏値という。
【0035】
本発明においては、ゲル化剤、架橋剤及びマイクロカプセル以外の成分は、製造工程のどの段階で加えてもよく、ミクロゲル粒子を調製する前に加えても、剪断を加えてミクロゲル粒子を調製した後に外割で加えてもよい。マイクロカプセルは、熱をかけると内包物が溶出する場合があるために、ミクロゲル粒子の調製後に加えることが好ましい。
【0036】
本発明の経口組成物は、温度調節が可能な設備であれば、一般的な撹拌・乳化装置を用いて調製が可能である。特に、温度調節可能な槽に、前述した剪断を加える装置と全体混合する装置が備わっていることが好ましい。
【0037】
より具体的な経口組成物の製法を下記に示す。
(1)マイクロカプセル及び架橋剤を除くその他の成分を精製水で混合し、85〜90℃に加熱溶解した後に架橋剤を加え、その後強制冷却しながら剪断を加えてミクロゲル粒子を調製する。このミクロゲル粒子にマイクロカプセルを混合撹拌して経口組成物を得る。
(2)ゲル化剤を精製水で混合し、85〜90℃に加熱溶解した後に架橋剤を加え、その後強制冷却しながら剪断を加えてミクロゲル粒子を調製する。このミクロゲル粒子にマイクロカプセル及び残りの他成分を混合撹拌して経口組成物を得る。
(3)ゲル化剤を精製水で混合し、85〜90℃に加熱溶解した後、強制冷却しながら剪断を加え、液温が40℃以下になった時点で剪断を与えながら架橋剤を加えてミクロゲル粒子を調製する。このミクロゲル粒子にマイクロカプセル及び残りの他成分を混合撹拌して経口組成物を得る。
【0038】
上記方法によって得られる本発明のミクロゲル粒子の平均粒子径は、0.02〜1,000μmが好ましく、より好ましくは0.05〜700μm、更に好ましくは0.1〜500μm、特に好ましくは1〜400μmである。ミクロゲル粒子の平均粒子径が1,000μmを超えると、舌触りが悪くなり、良好な飲み心地が得られず、商品価値を低下させてしまう場合がある。一方、0.02μm未満では、マイクロカプセルがミクロゲル粒子間をすりぬけ易くなり、分散保持能が低下することがある。
なお、ミクロゲル粒子の平均粒子径は、(株)堀場製作所製、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置LA−920(粒子径測定範囲:0.02〜2,000μm)のマニュアルフローセル測定方式にて測定できる。測定温度は25℃、フローセルの循環ポンプ速度目盛りは2、相対屈折率を112A000Iに設定して行うことができる。
【0039】
また、マイクロカプセルの平均粒子径が、ミクロゲルの平均粒子径以上であると、マイクロカプセルがミクロゲル間を移動し易く、浮遊したり、沈降が起こり易くなるため、マイクロカプセルの平均粒子径は、ミクロゲルの平均粒子径よりも小さいことが好ましい。具体的には、マイクロカプセルの平均粒子径/ミクロゲルの平均粒子径=0.99以下が好ましく、より好ましくは0.95以下である。
【0040】
ミクロゲル粒子の含有量は、経口組成物中に50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。少なすぎるとマイクロカプセルの浮遊や沈降が起こり易く、マイクロカプセルの内包物の流出が起こり易い場合がある。上限は特に制限されず、マイクロカプセルを除く全量がミクロゲル粒子であってもよい。
【0041】
また、ミクロゲル粒子に対するマイクロカプセルの配合割合は、質量比で、マイクロカプセル/ミクロゲル粒子=0.7以下が好ましく、より好ましくは0.5以下であり、更に好ましくは0.2以下である。上記範囲より大きいと流動性が低下する場合がある。
【0042】
本発明の経口組成物は、25℃における粘度が0.1mPa・s以上2,000mPa・s未満、好ましくは0.5〜1,500mPa・s、更に好ましくは1〜1,000mPa・s、特に好ましくは10〜800mPa・sである。とりわけミクロゲル粒子を用いているため、10〜600mPa・sの低粘度で飲み心地の良い経口組成物を得ることができる。0.1mPa・s以下であるとマイクロカプセルの分散安定化能が低下する場合がある。2,000mPa・s以上でも、分散されたマイクロカプセルの分散安定化能は変わらないが、流動性が悪くなり、液剤としてふさわしくない場合がある。なお、本発明の粘度は、25℃でB型粘度計((株)東京計器製)60rpm、1分間にて測定することができる。
なお、本発明の経口組成物には、外割で水を加えることもできるが、マイクロカプセルの安定性、分散性の点からミクロゲル粒子中に含まれる水分以外の水分を加えない方が好ましい。また、本発明の組成物のpHは、耐菌性の点から、3〜6程度であることが好ましい。
【0043】
本発明の経口組成物は、医薬品、食品等の製剤に配合が可能であり、形態としては、ドリンク剤、シロップ剤等が挙げられる。
【0044】
この場合、本発明の経口組成物の容器としては、一般的に飲料の容器として用いられるものであれば、何ら制約を受けるものではなく、使用可能な最内装の材質としては、ガラス、紙、アルミニウム等の金属、PETやPE等の樹脂等が挙げられ、これらの容器に本発明の経口組成物を滅菌充填することが好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、製造例、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、ミクロゲル粒子の粒子径は、(株)堀場製作所製、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置LA−920のマニュアルフローセル測定方式(測定温度25℃)により測定した。
【0046】
[製造例1〜6]
表1〜6に示す成分を用いて下記工程に従って、平均粒子径200μmのマイクロカプセルを得た。篩にかけ、10〜1,000μmの画分を評価に用いた。
工程1:スプレークーリング法
極度硬化パーム油を約65℃で融解し、そこにラクトフェリンを加えて混合均一化して得られた液を、スプレードライヤ(大河原化工機(株)製)、ディスク回転数10,000rpm、送液量は、8.6kg/hにて噴霧冷却造粒した。
工程2:メカノケミカル法
工程1で得られたマイクロカプセルと、粒子径20μm程度に粉砕した極度硬化パーム油又は極度硬化菜種油を混合分散型造粒機((株)奈良機械製作所製)に入れ、回転数1,000rpm、造粒羽根回転数3,000rpmで接触、衝突により被覆した。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
【表6】
【0053】
[製造例7]
表7に示す成分を用いて製造例1〜6と同様にスプレークーリング法により平均粒子径180μmのマイクロカプセルを得た。篩にかけ、10〜1,000μmの画分を評価に用いた。
【0054】
【表7】
【0055】
[製造例8]
表8に示す成分を用いて気中懸濁法により平均粒子径200μmのマイクロカプセルを得た。篩にかけ、10〜1,000μmの画分を評価に用いた。
気中懸濁法
微粒子コーティング装置Wurster MP−01((株)パウレック製)にて、ラクトフェリン以外の成分を混合した液を送液量150g/h、乾燥温度40℃で、ラクトフェリンにコーティングした。
【0056】
【表8】
【0057】
製造例1〜8で使用した原料は下記の通りである。
*1)極度硬化パーム油:理研ビタミン(株)製 スプレーファットPM
*2)極度硬化菜種油:理研ビタミン(株)製 スプレーファットNR−100
*3)オイドラギット:エボニック デグサ ジャパン(株)製 EUDRAGIT L
30D−55
ラクトフェリン:森永乳業(株)製 ラクトフェリン
【0058】
製造例1〜5ではラクトフェリンを内包した多核二重膜構造のマイクロカプセルを得た。製造例6,7ではラクトフェリン又はカフェインを内包した多核一重膜構造のマイクロカプセルを得た(内包物の平均粒子径10〜50μm程度)。製造例8ではラクトフェリンを内包した単核一重膜構造のマイクロカプセルを得た(内包物の平均粒子径50〜100μm程度)。
【0059】
[実施例1〜17]
表9〜13に示すマイクロカプセル及び架橋剤以外の成分を精製水で混合し、85〜90℃に加熱溶解し、架橋剤を加えてゲル化させ、その後強制冷却しながら剪断を加えて(3m/s、冷却速度0.5℃/min)平均粒子径250μm程度のミクロゲル粒子を調製した。このミクロゲル粒子にマイクロカプセルを混合撹拌して経口組成物(粘度200〜700mPa・s程度、pH4〜5程度)を得た。
【0060】
[比較例1〜4]
表9に示すマイクロカプセル以外の成分を精製水で混合し、85〜90℃に加熱溶解し、冷却後、マイクロカプセルを混合撹拌して経口組成物(粘度 比較例1,2:200〜600mPa・s程度、比較例3,4:測定不能(ゲル化)、pH4〜5程度)を得た。
【0061】
〈マイクロカプセル内包物溶出性〉
実施例1〜17及び比較例1〜4で調製したマイクロカプセル分散経口組成物を25℃条件下で1ヶ月間保存後、均一になるよう振とうし、再分散させた。その後、0.45μmのメンブランフィルターを用いてろ過し、それぞれ定量に適した吸光度を測定し、マイクロカプセルより溶出した内包物を定量した(ラクトフェリン:280nm、カフェイン:274nm)。経口組成物への内包物配合量に対して溶出した内包物の量を百分率で求めた。結果を表9〜13に併記する。
[評価基準]
◎:溶出率が15%未満
○:溶出率が15%以上30%未満
×:溶出率が30%以上
【0062】
〈流動性〉
100mL瓶に調製した経口組成物を入れ、5℃に冷やしたものについて、モニター10名にて飲用テストを実施した。評価は、10名の平均ではなく、1名でも評価基準に該当した場合には、その結果を評価結果とした。結果を表9〜13に併記する。
[評価基準]
◎:瓶の残量が5%未満のもの
○:瓶の残量が5%以上10%未満のもの
×:瓶の残量が10%以上のもの
【0063】
【表9】
【0064】
【表10】
【0065】
【表11】
【0066】
【表12】
【0067】
【表13】
【0068】
実施例1〜17及び比較例1〜4で使用した原料は下記の通りである。
【表14】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
寒天、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン及びアルギン酸ナトリウムの中から選ばれる1種又は2種以上のゲル化剤を水性溶媒に溶解した溶解液を、強制冷却及び前記ゲル化剤を架橋させる架橋剤の添加によりゲル化しながら剪断することによって得られるミクロゲル粒子を含有し、かつ水溶性機能成分を内包するマイクロカプセルを分散させてなることを特徴とする経口組成物。
【請求項2】
マイクロカプセルが、水溶性機能成分を腸溶性被覆剤で被覆してなるものである請求項1記載の経口組成物。
【請求項3】
水溶性機能成分が、生菌、ミネラル類、ビタミン類、アミノ酸類、ラクトフェリン、消化酵素及びカフェインから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載の経口組成物。
【請求項4】
腸溶性被覆剤が、極度硬化菜種油、極度硬化パーム油及び極度硬化大豆油から選ばれる1種又は2種以上である請求項2又は3記載の経口組成物。
【請求項5】
マイクロカプセル中の被覆剤の割合が、30〜95質量%である請求項2乃至4のいずれか1項記載の経口組成物。
【請求項6】
マイクロカプセル中の水溶性機能成分に対する被覆剤の含有割合が、質量比で0.4〜30である請求項2乃至5のいずれか1項記載の経口組成物。
【請求項7】
マイクロカプセルが多核二重被覆構造を有するものである請求項1乃至6のいずれか1項記載の経口組成物。
【請求項1】
寒天、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン及びアルギン酸ナトリウムの中から選ばれる1種又は2種以上のゲル化剤を水性溶媒に溶解した溶解液を、強制冷却及び前記ゲル化剤を架橋させる架橋剤の添加によりゲル化しながら剪断することによって得られるミクロゲル粒子を含有し、かつ水溶性機能成分を内包するマイクロカプセルを分散させてなることを特徴とする経口組成物。
【請求項2】
マイクロカプセルが、水溶性機能成分を腸溶性被覆剤で被覆してなるものである請求項1記載の経口組成物。
【請求項3】
水溶性機能成分が、生菌、ミネラル類、ビタミン類、アミノ酸類、ラクトフェリン、消化酵素及びカフェインから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載の経口組成物。
【請求項4】
腸溶性被覆剤が、極度硬化菜種油、極度硬化パーム油及び極度硬化大豆油から選ばれる1種又は2種以上である請求項2又は3記載の経口組成物。
【請求項5】
マイクロカプセル中の被覆剤の割合が、30〜95質量%である請求項2乃至4のいずれか1項記載の経口組成物。
【請求項6】
マイクロカプセル中の水溶性機能成分に対する被覆剤の含有割合が、質量比で0.4〜30である請求項2乃至5のいずれか1項記載の経口組成物。
【請求項7】
マイクロカプセルが多核二重被覆構造を有するものである請求項1乃至6のいずれか1項記載の経口組成物。
【公開番号】特開2011−79787(P2011−79787A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234565(P2009−234565)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】
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