説明

経口腸溶性抗うつ薬製剤

医薬品形式のフェノキサチインに基づくMAO-Aインヒビターを開示する。それにより、MAO受容体は胃での活性成分との結合から保護される。特定のフェノキサチインに基づくMAO-Aインヒビターは、以下の式:(I)


[式中、nは0、1または2であり; R1は分岐鎖または直鎖C1-5アルキルまたはC3-6シクロアルキルであり、これはヒドロキシル、または1個以上のハロゲンで場合により置換され; およびX1、X2、X3、X4、およびX5はすべて水素であるか、またはX1、X2、X3、X4、およびX5の1または2個がハロゲンであり、かつ残りが水素であり、ただしnが0または1であり、かつ各Xが水素である場合、R1はメチルではない]、のものを含む。医薬品形式、例えば錠剤またはカプセルとして摂取された後に胃の環境を本質的に越えて活性成分の放出を提供するために多種多様な腸溶性機構を利用することができる。形式には、腸溶錠、腸溶コーティングカプセル、腸溶コーティングビーズを含むカプセルが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中では、経口腸溶性医薬製剤、製品および関連の方法を提供する。特に、ここでは、3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシドを活性成分として含む経口腸溶性医薬製剤、製品、および関連の方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
高血圧クリーゼを生じさせることがある血圧の一時的上昇は、チラミンリッチ食物および飲料の摂取後にモノアミンオキシダーゼインヒビター(MAOI)物質、例えばフェネルジン、イソカルボキシアジド(isocarboxazide)、イプラニアジド(ipraniazid)、およびトラニルシプロミンで処置された患者で見られる。褐色細胞腫を有する患者で観察されるものと類似の、この急性型の高血圧症は、医学文献で、「チーズ効果」または「チーズ反応」として言及されている。その理由は、いくつかの熟成チーズで高いチラミン含量が見出されるからである。この潜在的に危険な食物反応のせいで、それらが、大うつ病性障害、社交恐怖およびパニック発作の治療に非常に有効であっても、医師はMAOIを処方することに乗り気でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、危険な食物反応を誘発しないかまたは厳格な食事制限を必要としない好適なMAOIの必要性が依然として存在する。本明細書中で提供される製剤、製品および方法は、この必要性に対処し、かつ追加の利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
腸溶性医薬品形式のフェノキサチインに基づくMAO-Aインヒビターを開示する。それにより、MAO受容体は胃での活性成分との結合から保護される。特定のフェノキサチインに基づくMAO-Aインヒビターは、以下の式:
【化1】

【0005】
式中、nは0、1または2であり; R1は分岐鎖または直鎖C1-5アルキルまたはC3-6シクロアルキルであり、これはヒドロキシル、または1個以上のハロゲンで場合により置換され; およびX1、X2、X3、X4、およびX5はすべて水素であるか、またはX1、X2、X3、X4、およびX5の1または2個がハロゲンであり、かつ残りが水素であり、ただしnが0または1であり、かつ各Xが水素である場合、R1はメチルではない、のものを含む。フェノキサチインに基づくMAO-Aインヒビターの例には、非限定的に、以下の式:
【化2】

【0006】
の3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシド(以後、「CX157」)、
以下の式:
【化3】

【0007】
の3-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシド(以後、「CX009」)、および
以下の式:
【化4】

【0008】
の3-(2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシド(以後、「CX2614」)が含まれる。
【発明の効果】
【0009】
そのような形式は、消化管の一部分でのMAO-Aインヒビターの吸収を許容し、MAO受容体が食事性チラミンと結合することを妨害しないせいで、危険な食物反応を誘発しないか、または厳格な食事制限を必要としない。
【0010】
一部の実施形態では、そのような形式は、錠剤形式、カプセル形式または環状ボディーに覆われているコアである。一部の実施形態では、そのような形式は、前記活性成分を含むコアを囲む、胃で本質的に溶けない腸溶コーティングを含む。一部の実施形態では、そのような形式は、3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシドを唯一の活性成分として含む。一部の実施形態では、3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシドは約169-175℃の融点を有することを特徴とする。一部の実施形態では、3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシドは結晶形でありかつ、CuKα照射を使用して、2θ=11.0°でX線粉末回折ピークを有することを特徴とする。
【0011】
一部の実施形態では、そのような形式は、(a) 3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシドおよび1種以上の医薬賦形剤からなるコア; (b) オプションの分離層; (c) ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート(HPMCAS)および製薬的に許容される賦形剤を含む腸溶層; および(d) オプションの最終層(finishing layer)を含む。一部のそのような実施形態では、分離層(b)が存在する。一部のそのような実施形態では、コアは、前記1種以上の医薬賦形剤を含む層として3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシドが沈着している不活性ビーズを含む。
【0012】
一部の実施形態では、そのような形式は、約50〜500ミリグラムの3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシドを含む錠剤である。一部の実施形態では、そのような形式は3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシドを含み、かつ胃での3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシドの放出を遅延させるかまたは阻害するように構成される。一部のそのような実施形態では、該形式は、錠剤、カプセル、または環状ボディーに覆われているコアである。一部のそのような実施形態では、該形式は錠剤である。一部のそのような実施形態では、該形式は腸溶コーティングを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、薬物未処置被験体(上部)およびMAO-A阻害被験体(下部)での経口投与チラミンの生体内変換に関与する酵素障壁および酵素の図である。ヒトでは、MAO-AおよびMAO-Bの活性は以下の通りである: それぞれ、腸粘膜、90%および10 %: 肝臓、30%および70%: アドレナリン作動性神経末端、100%および0%。略語: HPAA=p-ヒドロキシフェニル酢酸; チラミン=遊離チラミン; Ty-SO4=硫酸チラミン; NA=ノルアドレナリン; Oct.=オクトパミン; COMT=カタコール-O-メチルトランスフェラーゼ(catachol-O-methyltransferase)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
モノアミンオキシダーゼインヒビター(MAOI)物質は、チラミンリッチ食物および飲料の摂取後に危険な食物反応を引き起こしうる。この危険な副作用は、それらが、大うつ病性障害、社交恐怖およびパニック発作の治療に非常に有効であっても、MAOIの使用を最小にしている。モノアミンオキシダーゼA型の可逆的インヒビター(RIMA)は、モノアミンオキシダーゼを一時的かつ可逆的に阻害する精神医学的薬物および天然化合物のファミリーである。RIMAの薬理学的特性は、チーズ反応のリスクを減らしつつ、抗うつ薬用量のこれらの物質の経口投与を可能にする。しかし、一部のRIMAの治療量は、依然として、チラミン昇圧効果を40-〜50-倍も増強しうる。結果として、RIMAもまた、治療的に使用されることはほとんどない。
【0015】
本明細書中で提供されるように、「概要」において上で定義される、フェノキサチインに基づくMAO-Aインヒビターと称される(本明細書中で「活性物(active)」または「活性成分」とも称される)、特定のクラスのRIMAの大きい安全要因は、胃腸管および肝組織でMAO-Aに関して食事性チラミンと競合することを回避するように腸で放出する腸溶性製剤によって達成することができる。そのような製剤はCX157の場合に特に有効である。その理由は、このRIMAがMAO-Bに関する阻害作用を欠いていて、ゆえにMAO-B経路によるチラミン不活性化を可能にするからである。ゆえに、MAO-AインヒビターとしてのCX157の特異的かつ可逆的特性は、経口チラミン昇圧効果に関する弱い増強効果に好都合なプロファイルを提供する。
【0016】
本明細書中では、小腸の中〜低部で薬物放出を惹起し、例えば、投薬後約1時間、1.25時間、1.5時間、1.75時間または2時間を超える遅延放出時間を有するように設計された製剤を提供する。そのような医薬製剤は、製品が不変のまま患者の胃を通過し、胃を離れて小腸の中間部および下部に入ると、溶解しかつ活性成分を放出するように製造される。そのような製剤は錠剤またはペレット形式であってよく、該形式では、活性成分は錠剤またはペレットの内側部分にあり、かつ、酸環境、例えば胃で不溶性であるが、中性付近の環境、例えば小腸で可溶性である「腸溶コーティング」であるフィルムまたはエンベロープに包含される。瞬間腸溶コーティング含有製剤は、MAO-Aに関する食事性チラミンとの薬物競合の多くを回避する。その理由は、食事性チラミンは高速に吸収され、かつ胃および小腸の上部および肝臓で代謝され、平均Tmaxは1.25時間であるからである。この関連で、200 mgの経口用量でカプセル中で食物とともに投与されたチラミンのヒト血漿薬物動態データは、チラミンの高速吸収を示し、Tmaxは1.25時間以内に達成され、投薬の3〜4時間後に検出可能なレベルは観察されなかった。
【0017】
上記に基づいて、本明細書中では、種々の製剤および形式のフェノキサチインに基づくMAO-Aインヒビター、および特にCX157を提供する。例えば、フェノキサチインに基づくMAO-Aインヒビター、例えばCX157の臨床試験および市販の錠剤は、錠剤を腸溶性にするように、コーティングするか、カプセル化するか、または他の様式で処理することができる。
【0018】
本明細書中で使用されるパーセンテージ、比、割合などのすべての表現は、特に指定されない限り、重量単位である。腸溶性製品の割合の表現は、多数の成分が溶解または分散している水の除去後の乾燥形式の製品を表す。用語「糖」とは、還元糖以外の糖を表す。還元糖は、フェーリング(Fehling's) (またはベネディクト(Benedict's))またはトレンス(Tollens')試薬を還元する炭水化物である。すべての単糖は還元糖であり、スクロースを除くほとんどの二糖もそうである。一般的な結合または充填剤の1つはラクトースである。この賦形剤は、良好に圧縮するので錠剤に特に有用であり、希釈液でありかつ結合剤であり、かつ安価である。しかし、それは還元糖であり、該活性成分は、室温および促進安定条件(accelerated stability conditions)(熱)条件下でともに、ラクトースと相互作用する。したがって、該活性成分を含む製剤でラクトースおよび他の還元糖を回避することが重要である。以下で考察されるように、スクロースは特別な糖である。
【0019】
特定の腸溶性製品では、活性物のコアを腸溶コーティングによって囲み、ペレットを形成させる。そしてペレットをゼラチンカプセル中に積載することができる。以下のように、種々の成分を加えてペレットを構築する方法とともに、ペレットの種々の成分および層を個別に考察する。
【0020】
A. コア
ペレット用の具体的なコアは、典型的に、活性成分含有層を不活性コアに塗布することによって製造される。そのような不活性コアは製薬科学で慣例的に使用され、容易に入手可能である。具体的なコアは、菓子ならびに医薬品製造での使用のための、デンプンおよびスクロースから製造されるコアである。しかし、任意の製薬的に許容される賦形剤のコアを使用することができ、それには、例えば、微結晶性セルロース、植物性ガム、ろうなどが含まれる。不活性コアの主な特徴は、ペレット中の活性成分および他の賦形剤の両者に関して、および最終的に該ペレットを摂取する被験体に関して、不活性であることである。
【0021】
コアのサイズは、製造しようとするペレットの所望のサイズに依存する。一般に、ペレットは、ほんの0.1 mmであるか、または2 mmであってもよい。特定のコアは、直径約0.5〜約1.5 mmのサイズ範囲の最終ペレットを提供するために、約0.3〜約0.8 mmである。例えば、該コアは、付加される種々のコーティングの均一性および最終産物の均質性を向上させるために、適度に狭い粒径分布のコアであってよい。例えば、該コアは、種々の絶対サイズの、許容されるサイズ分布を取得するために、18〜20米国メッシュ、20〜25米国メッシュ、25〜30米国メッシュ、または30〜35米国メッシュなどの粒径範囲のコアであると指定することができる。
【0022】
使用されるコアの量は、付加される層の重量および厚さにしたがって変動しうる。一般に、コアは製品の約10〜約70パーセントを構成する。より具体的には、コアの量は製品の約15〜約45パーセントに相当する。
【0023】
ペレットの製造が不活性コアで始まる場合、活性成分をコア上にコーティングして、一般に製品の約10〜約25パーセントの最終薬物濃度を得ることができる。活性成分の量は、所望の薬物用量および投与されるペレットの量に依存する。活性成分の用量は、約50〜500 mg、より具体的には約60〜200 mgの範囲であり、ペレットの通常量はゼラチンカプセルに好都合に収納できる量である。ゼラチンカプセルの量は、本製品中の活性物の約15%〜約25%の範囲であってよい。
【0024】
活性成分でコアをコーティングする好都合な様式は「粉末コーティング」過程であり、該過程では、コアを粘着液(sticky liquid)または結合剤で湿らせ、活性成分を粉末として加え、混合物を乾燥させる。そのような過程は産業薬学の実施において度々実行され、好適な装置は当技術分野で公知である。
【0025】
そのような装置は本過程のいくつかのステップで使用することができる。この過程は、糖衣過程で用いられるものと類似の慣用のコーティングパンで行うことができる。この過程を使用してペレットを製造することができる。
【0026】
あるいは、流動床装置(ロータリープロセッサーを使用)、または回転プレート装置、例えばFreund CF-Granulator (Vector Corporation, Marion, Iowa)で本製品を作製することができる。回転プレート装置は、典型的に、シリンダーからなり、該シリンダーの底が回転式プレートである。シリンダーの固定壁(stationary wall)と回転式底面との間での塊の摩擦によって、コーティング対象の粒子塊の運動を提供する。温風を適用して塊を乾燥させることができ、該塊に液体をスプレーすることができ、流動床の場合のように乾燥速度に対してバランスさせることができる。
【0027】
一部の実施形態では、粉末コーティングを適用する。そのような実施形態では、ペレットの塊を粘着状態で維持し、それらに接着させようとする粉末、この場合は活性成分を連続的または周期的に加え、粘着性ペレットに接着させることができる。すべてのそのような活性物を塗布したら、スプレーを停止し、塊を気流中で乾燥させることができる。いくつかの不活性粉末を活性成分に加えることが適切であるかまたは好都合でありうる。
【0028】
活性成分とともに追加の固体を層に加えることができる。これらの固体は、流動を支援し、静的電荷を減少させ、かさ構築を支援し、かつ滑らかな表面を形成させる必要に応じて、コーティング過程を容易にするために加えることができる。不活性物質、例えばタルク、カオリン、および二酸化チタン、潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、微粉化二酸化ケイ素、クロスポビドン、および非還元糖、例えばスクロースを使用することができる。そのような物質の量は、製品の1%の10分のいくつか〜製品の約20%までの範囲である。そのような固体は、滑らかな表面を得るために、典型的に、微細な粒径、例えば50マイクロメートル未満の固体である。
【0029】
活性成分は、湿っている場合に粘着性でかつ接着性で、乾燥して強い密着フィルムになる医薬賦形剤をスプレーすることによって、コアに接着するよう作製することができる。当業者は多数のそのような物質を承知し、慣習的に使用している。そのような物質のほとんどはポリマーである。特定のそのようなポリマーには、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびポリビニルピロリドンが含まれる。追加のそのような物質には、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アカシアおよびゼラチンが含まれる。接着賦形剤の量は製品の約4%〜約12%の範囲であってよく、コアに接着させる対象の活性物の量に主に依存する。
【0030】
活性成分は、スラリーをスプレー可能にするために十分な水に溶解または懸濁された、活性物層の賦形剤の溶液中に懸濁された活性物を含むスラリーをスプレーすることによってコア上で組み立てることもできる。そのようなスラリーは、懸濁液を粉砕するように構成された機械によって粉砕して、活性物の粒径を減少させることができる。懸濁形式での粉砕が望ましい。その理由は、それにより、乾燥粉末薬物の粉砕において生じる粉塵発生および封じ込め問題が回避されるからである。この懸濁液を塗布する特定の方法は、医薬用流動床コーティングデバイス、例えばWursterカラムであり、該デバイスは、通気性底面を有する垂直シリンダーおよび底面のすぐ上の上向きスプレーノズル、または製品塊上にマウントされる下向きスプレーノズルからなる。シリンダーに、コーティング対象の粒子を充填し、シリンダーの底面を通して十分な量の空気を引き込んで粒子塊を懸濁し、かつ塗布対象の液体を塊にスプレーする。流動性空気の温度は、コーティングが構築される間、ペレットの塊または錠剤を所望のレベルの水分および粘着性で維持するようにスプレー速度に対してバランスされる。
【0031】
一方、コアは、活性成分が組み込まれている一体化した粒子(monolithic particle)を含むことができる。そのようなコアは、製薬科学、特に圧縮錠の顆粒状材料の製造において普及している顆粒化技術によって製造することができる。該コアは、活性物を医薬賦形剤の塊と混合し、該塊を水または溶媒で湿らせ、乾燥させ、不活性コアに関して上で記載されるように、塊を同じサイズ範囲のサイズの粒子に分解することによって製造することができる。これは、押し出しおよびマルメライゼーション(marumerization)の過程によって達成することができる。
【0032】
ペレット用のコアは、活性物を慣用の医薬成分と混合して所望の濃度を取得し、慣用の手順によって混合物を所望のサイズのコアに成形することによって製造することもでき、該慣用の手順には、非限定的に、参照によりここに組み入れられるR. E. Sparks et al.、U.S. Pat. Nos. 5,019,302および5,100,592の方法が含まれる。
【0033】
腸溶性医薬品の特定の保護されたコアは、以下の式:
【化5】

【0034】
の3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシド(本明細書中でCX157とも称される)を活性成分として含む。腸溶性医薬品の別の特定の保護されたコアは、以下の式:
【化6】

【0035】
の3-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシド(本明細書中でCX009とも称される)を活性成分として含む。腸溶性医薬品の別の特定の保護されたコアは、以下の式:
【化7】

【0036】
の3-(2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシド(以後、「CX2614」)を活性成分として含む。上記フェノキサチインに基づくMAO-Aインヒビターおよび他のフェノキサチインに基づくMAO-Aインヒビターの製造方法は当技術分野で公知であり、U.S. Pat. No. 6,110,961 (該文献は参照によりその全体がここに組み入れられる)で例証される。
【0037】
本明細書中では、また、1日1回または2回の投薬が可能であるように少ない賦形剤量しか有さない、該活性成分を含む経口組成物、例えば錠剤またはカプセルを提供し、好ましくは1または2個のそのような組成物を各投薬時に投与する。本明細書中で提供される腸溶性製品は、活性成分の任意の物理的形式を利用することができる。活性な医薬成分がCX157である場合、該活性成分は「ハイメルト(high melt)」結晶形でありうる。
【0038】
CX157の「ハイメルト」結晶形は、U.S. Application No. 11/773,892 (該文献は参照によりその全体がここに組み入れられる)で教示され、ここに、上記出願の「フォームA」が、本明細書中で「ハイメルト」と称されるフォームである。簡潔に言えば、ハイメルトフォームは、約169〜176℃; 約170〜174℃、約171〜173℃、約171〜172℃、または約171℃の融点を有すると特徴付けられる。ハイメルトフォームは、約158〜163℃、典型的に約160〜162℃で融解する、3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン-10,10-ジオキシドの少なくとも1つの他のフォームと区別できる。ハイメルトフォームは、Karl Fischer法によって測定された場合に、約1% H2O未満、約1%〜0.001% H2O、約0.5%〜0.01% H2O、約0.05%〜0.01% H2O、または約0.02% H2Oを含むと特徴付けることもできる。さらに、ハイメルトフォームは、上記出願の図2(a)に実質的に同一の1480〜1440 cm-1の減衰全反射フーリエ変換赤外スペクトルを有するか、上記出願の図2(a)に実質的に同一の970〜800 cm-1の減衰全反射フーリエ変換赤外スペクトルを有するか、または上記出願の図2(a)に実質的に同一の減衰全反射フーリエ変換赤外スペクトルを有すると特徴付けることができる。ハイメルトフォームの減衰全反射フーリエ変換赤外スペクトルは、上記出願の図2(b)に実質的に同一のCX157の別のフォームの970〜800 cm-1および1480〜1440 cm-1の減衰全反射フーリエ変換赤外スペクトルと区別できる。ハイメルトフォームは、化合物と溶媒との比(w/v)が約1.6g:10 mLである場合に、酢酸中の10% (v/v)水である溶媒に約75〜85℃、約75〜80℃、約75〜78℃、または約75〜77℃で溶解するとさらに特徴付けることができる。
【0039】
ハイメルトフォームは、約4.0、4.4および/または8.0の面間隔(d spacings)での主要X線粉末回折ピークを有すると特徴付けることができる。ハイメルトフォームは、約10.3、7.3、および/または3.65の面間隔でのX線粉末回折ピークを実質的に欠くと特徴付けることができる。ハイメルトフォームは、CuKα照射を使用して、約2θ= 11.0°、20.1°、および/または22.2°での主要X線粉末回折ピークを有すると特徴付けることができる。ハイメルトフォームは、CuKα照射を使用して、約2θ=8.5°、12.0°、および/または24.6°でのX線粉末回折ピークを実質的に欠くと特徴付けることができる。ハイメルトフォームは、上記出願の図1(a)に実質的に同一のX線粉末回折パターンを有すると特徴付けることもできる。ハイメルトフォームのX線粉末回折パターンは、CX157の別のフォームのX線粉末回折特性と区別でき、該CX157の別のフォームは、約10.3、7.3、および/または3.65の面間隔で、かつ、CuKα照射を使用して、約2θ= 11.0°、20.1°、および/または22.2°で主要ピークを有し、かつ上記出願の図1(b)に実質的に同一のX線粉末回折パターンを有する。
【0040】
B. 分離層
活性物含有コアと腸溶層との間の分離層は必須ではないが、製剤の特定の機能である。分離層の機能は、所望であれば、腸溶層の塗布のための滑らかなベースを提供すること、酸条件に対するペレットの抵抗性を延長すること、および/または薬物と腸溶層中の腸溶性ポリマーとの間の任意の相互作用を阻害することによって安定性を向上させることである。
【0041】
分離層のスムージング機能は純粋に機械的であり、その目的は、腸溶層の被覆を向上させることおよびコア上の隆起および不規則性に起因する薄いスポットを回避することである。したがって、コアを、より滑らかでかつ不規則性を含まないようにできるほど、分離層では、少ない材料しか必要でなく、そして、活性物が極めて微細な粒径でありかつコアを、できるだけ真の球状に近づけると、分離層のスムージング特性の必要性を完全に回避することができる。
【0042】
製薬的に許容される非還元糖を分離層に加える場合、酸条件に対するペレットの抵抗性は著しく増加しうる。したがって、粉末化混合物として、コアに塗布される分離層にそのような糖を含ませるか、またはスプレー液(sprayed-on liquid)の部分として溶解することができる。糖含有分離層は、所定レベルの酸抵抗性を取得するために必要とされる腸溶性ポリマーの量を減少させることができる。少ない腸溶性ポリマーの使用により、材料コストおよび処理時間の両方を減少させることができ、また、活性物との反応に利用可能なポリマーの量を減少させることができる。すべてのコア/腸溶層相互作用の阻害は機械的である。分離層は、物理的に、コアおよび腸溶層中の成分を互いに直接接触させない。一部の場合では、分離層は、製品水分中に溶解したコアまたは腸溶層成分の移動に対する拡散障壁として作用することもできる。分離層は、二酸化チタン、酸化鉄などの物質でそれを不透明にすることによって光障壁として使用することもできる。
【0043】
一般に、分離層には、凝集性またはポリマー材料、および充填剤を構成する微粉化固体賦形剤を含ませることができる。分離層中で糖が使用される場合、それは水性溶液の形式で適用され、分離層をともにくっつける凝集性材料の部分または全体を構成する。糖に加えて、または糖の代わりに、分離層中でポリマー材料を使用することもできる。例えば、少量のヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースなどの物質を使用して、分離層の粘着性および凝集性を増加させることができる。
【0044】
分離層中で充填賦形剤を使用して、該層の滑らかさおよび固さを増加させることもできる。微粉化タルク、二酸化ケイ素などの物質は医薬賦形剤として普遍的に許容され、状況に好都合であれば、分離層を充填しかつ滑らかにするために加えることができる。
【0045】
一般に、分離層中の糖の量は、仮にも糖が使用される場合に、製品の約2%〜約10%の範囲であってよく、ポリマーまたは他の粘着性材料の量は約0.1〜約5%の範囲であってよい。充填剤、例えばタルクの量は最終製品の重量に基づいて約5〜約15%の範囲であってよい。
【0046】
糖またはポリマー材料の水性溶液をスプレーし、かつ、活性層の製造において記載されているように充填剤中でダスティングすることによって分離層を塗布することができる。しかし、糖およびまたはポリマー材料の溶液中の懸濁液として充填剤を十分に分散させ、かつ、活性層を伴うコアの製造において上で記載される装置を使用して、懸濁液をコア上にスプレーし、かつ乾燥させれば、分離層の滑らかさおよび均質性を向上させることができる。
【0047】
C. 腸溶層
腸溶層は腸溶性ポリマーからなり、腸溶性ポリマーは活性成分との適合性に関して選択することができる。該ポリマーは、ポリマーの単位重量または反復単位あたり、少数のカルボン酸基しか有さないポリマーであってよい。特定の腸溶性ポリマーはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート(HPMCAS)であり、該製品は、化合物中の唯一の遊離カルボキシル基である、少なくとも4%および多くとも28%のスクシノイル基(succinoyl groups)を含むと定義される。Japanese Standards of Pharmaceutical Ingredients 1991, page 1216-21, Standard No. 19026を参照のこと。HPMCASはShin-Etsu Chemical Co., Ltd., Tokyo, Japanから商標AQOATの下に入手可能である。それは2種の粒径グレードおよび3種の分子量範囲で入手可能である。例えば、平均分子量数93,000を有するLグレードを使用することができる。
【0048】
腸溶性ポリマーは水性懸濁液、水性または有機溶媒中の溶液からのコーティングまたは粉末として塗布することができる。当業者は、所望のように、公知の溶媒および/または方法から選択することができる。
【0049】
腸溶性ポリマーは、Shin-Etsu Chemical Co. Ltd. (Obara, et al., Poster PT6115, AAPS Annual Meeting, Seattle, Wash., Oct. 27-31, 1996)に記載の方法にしたがって塗布することもできる。この方法で、腸溶性ポリマーを粉末として塗布する場合、同時に錠剤またはペレット上に可塑剤をスプレーしながら、固体の腸溶性ポリマーを錠剤またはペレットに直接加える。そして固体腸溶性粒子の沈着物を硬化(curing)によってフィルムに変える。硬化は、コーティングされた錠剤またはペレットに少量の水をスプレーし、次いで錠剤またはペレットを短時間加熱することによって行う。この腸溶コーティング塗布方法は、活性成分層を伴うコアの製造において上に記載される装置と同じタイプの装置を用いて実施することができる。
【0050】
腸溶性ポリマーを水性懸濁液として塗布する場合、均一の凝集性フィルムを取得する際の問題が生じることがよくある。この問題が生じる場合には、微粒子グレードを使用するか、または塗布前にポリマーの粒子を粉砕して極めて小さいサイズにすることができる。エアインパクションミル(air-impaction mill)のように乾燥ポリマーを粉砕するか、または懸濁液を調製して、スラリー形式のポリマーを粉砕することが可能である。スラリー粉砕が一般に好ましい。その理由は、特に、それを使用して、同一ステップで腸溶層の充填剤部分を粉砕することもできるからである。一部の実施形態では、腸溶性ポリマーの平均粒径を約1マイクロメートル〜約5マイクロメートルの範囲、特にせいぜい3マイクロメートルに減少させることが賢明である。
【0051】
腸溶性ポリマーを懸濁液の形式で塗布する場合、該懸濁液は、典型的に、均質で維持される。そのような予防策には、泡が生じるほど強く攪拌せずに、穏やかな攪拌条件で懸濁液を維持すること、および例えばノズルボディーの渦巻き(eddies)または大き過ぎる送達管(over-large delivery tubing)で懸濁液が停止しないよう保証することが含まれる。懸濁液形式のポリマーは、懸濁液が暖かくなり過ぎると塊になることがよくあり、臨界温度は、個別の事例で30℃ほどの低い温度になりうる。通常の流動床タイプの装置でスプレーノズルおよび管は熱い空気にさらされるので、管およびノズルを冷やすために懸濁液が該装置を通ってすばやく移動し続けることを保証するようケアしなければならない。HPMCASを使用する場合、特に、塗布前に懸濁液を20℃未満に冷やし、懸濁液をポンプし始める前に少量の冷却水をポンプすることによって管およびノズルを冷やし、かつ懸濁液が管中で高速に移動し続けるように、スプレー速度が許容する限りの小さい直径を有する供給管を使用することが賢明である。
【0052】
一実施形態では、可能であればいつでも、腸溶性ポリマーを水性溶液として塗布することができる。HPMCASの場合、特にアンモニアでポリマーを中和することによってポリマーの溶解を達成することができる。ポリマーの中和は、単に、水中のポリマーの懸濁液に好ましくは水性水酸化アンモニウムの形式でアンモニアを加えることによって達成することができる; 完全な中和は、約pH 5.7〜5.9でポリマーの完全な溶解を生じさせる。当量未満のアンモニアを加えることによってポリマーが部分的に中和された場合にも、良好な結果が達成される。そのような場合、中和されなかったポリマーは懸濁形式のままであり、中和されたポリマーの溶液中に懸濁されている。そのような過程を使用できると、ポリマーの粒径を制御することができる。中和されたポリマーの使用は、懸濁されたポリマーが使用される場合より容易に、滑らかで凝集性の腸溶層を提供し、部分的に中和されたポリマーの使用は中間の程度の滑らかさおよび凝集性を提供する。特に非常に滑らかな分離層上に腸溶層を塗布する場合、部分的に中和された腸溶性ポリマーで優れた結果が達成できる。
【0053】
中和の程度は、結果または操作の容易さに悪影響を与えることなく、一定範囲にわたって変動しうる。例えば、中和の程度は約25%〜約100%中和の範囲であってよい。別の特定の条件は約45%〜約100%中和であり、別の条件は約65%〜約100%である。さらに別の特定の中和様式は約25%〜約65%中和である。しかし、得られた製品中の腸溶性ポリマーが、乾燥後に、塗布時より低い程度にしか中和されていないことが見出される。中和または部分的に中和されたHPMCASを塗布する場合、最終製品中のHPMCASは約0%〜約25%中和、より特に約0%〜約15%中和であってよい。
【0054】
結果の向上のために腸溶性ポリマーとともに可塑剤を使用することができる。HPMCASの場合、具体的な可塑剤はクエン酸トリエチルであり、水性懸濁液適用において腸溶性ポリマーの量の約15%〜30%までの量で使用される。中和されたHPMCASを用いる場合、低レベルの可塑剤しか必要とされないか、または可塑剤は必要とされない。また、微量成分、例えば消泡剤、ポリマーが懸濁形式である場合の懸濁化剤、およびフィルムのスムージングを補助するための界面活性剤が一般に使用される。例えば、一般に、シリコーン消泡剤、界面活性剤、例えばポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウムなどおよび懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロース、植物性ガムなどを、製品の1%までの一般的な範囲の量で使用することができる。
【0055】
通常、粉末化賦形剤、例えばタルク、モノステアリン酸グリセリルまたは水和二酸化ケイ素を腸溶層に充填して、層の厚さを構築し、それを強化し、静電気を減少させ、かつ粒子凝集を減少させる。最終製品の約1%〜約10%の範囲のそのような固体の量を腸溶性ポリマー混合物に加えることができ、腸溶性ポリマーそのものの量は約5%〜約25%、より特に、約10%〜約20%の範囲であってよい。
【0056】
ペレットへの腸溶層の塗布は、以前に考察された同一の一般的手順にしたがい、流動床タイプの装置を使用し、腸溶性ポリマー溶液または懸濁液の同時スプレーおよび温風乾燥を伴う。乾燥空気の温度およびペレットの循環塊の温度は、典型的に、腸溶性ポリマーの製造元によって助言される範囲で維持される。
【0057】
D. 最終層
腸溶層の上の最終層はあらゆる場合で必要なわけではないが、製品の優雅さおよびその取扱い、保存および機械加工性を向上させることができ、その上、さらなる利益を提供することができる。最もシンプルな最終層は、単純に、少量の、約1%未満の帯電防止成分、例えばタルクまたは二酸化ケイ素であり、ペレットの表面に単純に振りかけられる。別のシンプルな最終層は、ペレットをさらに滑らかにし、静電気を減少させ、ペレットが固着する任意の傾向を妨げ、かつ表面の疎水性を増加させるために、循環ペレット塊上に融解された少量の、約1%の、ろう、例えば蜜ろうである。
【0058】
より複雑な最終層は最終のスプレーされた成分の層(final sprayed-on layer of ingredients)を構成しうる。例えば、約2%〜約10%までなどの量のヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどのポリマー材料の薄層を塗布することができる。ポリマー材料は、乳白剤、増量剤、例えばタルク、または色材、特に不透明な微粉化された着色剤、例えば赤色または黄色酸化鉄の懸濁液を保持することもできる。そのような層は胃で高速に溶解して除去され、活性成分を保護するための腸溶層を残すが、医薬品の優雅さおよび製品の機械的損傷からの保護の追加の手段を提供する。
【0059】
本製品に塗布される最終層は、腸溶性製品を滑らかにし、密封しかつ着色するために製薬科学で一般に使用される本質的に同一タイプのものであり、通常の様式で製剤化および塗布することができる。
【0060】
以下の実施例は、本明細書中で提供される教示内容と整合しかつ該教示内容を例証するいくつかの異なる腸溶性顆粒の製造を記載する。該実施例は、さらに、本腸溶性形式およびそれらの製造方法について読み手に教示するものとする; 本発明の技術思想の範囲内の追加のバリエーションは当業者に明らかであり、それらの製造は科学者の能力の範囲内である。
【0061】
実施例
【実施例1】
【0062】
3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシド(60 mg/カプセル)の腸溶カプセル
【表1】

【0063】
6.4% w/wスクロースおよび3.2% w/wヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)からなる結合剤溶液中に3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシド25% w/wを懸濁することによって活性層を構築する。得られた懸濁液をCoball Mill (Fryma Mashinen AG, Rheinfelden, Switzerland) Model MS-12に通してバルク製剤の粒径を減少させる。粉砕された懸濁液を、Wursterカラム付きの流動床乾燥機で1.5 kgのスクロースデンプンノンパレイルにアプライする。所望の量の活性成分懸濁液のアプライが完了したら、流動床乾燥機でコアペレットを完全に乾燥させる。
【0064】
タルク12% w/w、スクロース6.75% w/wおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース2.25% w/wを含む分離層を水性懸濁液として活性コアペレットにアプライする。所望の量の懸濁液のアプライが完了したら、流動床乾燥機でペレットを完全に乾燥させる。
【0065】
腸溶コーティング水性懸濁液は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート型LF 6% w/w、タルク1.8% w/w、クエン酸トリエチル1.2% w/wを含み、0.47% w/w水酸化アンモニウムを加えることによって完全に中和される。この腸溶コーティング懸濁液を、分離層でコーティングされたペレットにアプライする。所望の量の腸溶コーティング懸濁液のアプライが完了したら、流動床乾燥機でペレットを完全に乾燥させ、少量のタルクを加えて静電気を減少させる。
【0066】
着色混合物白色(二酸化チタンおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる) 8% w/wおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース2% w/wを含む最終層をアプライする。所望の量の着色コーティング懸濁液のアプライが完了したら、流動床乾燥機でペレットを完全に乾燥させ、少量のタルクを加えて静電気を減少させる。得られたペレットの活性含有量をアッセイし、カプセルに充填して、60 mgの3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシドを得る。
【実施例2】
【0067】
60 mg CX157 /カプセル
【表2】

【0068】
CX157層をバッチサイズ5.5 kgでCF造粒機に加える。CX157、ラクトースおよびタルクを除くCX157層のすべての成分を水に溶解または懸濁し、該液体を循環ビーズ上にゆっくりスプレーし、CX157層の構築において、CX157、ラクトースおよびタルクを接着するために使用する。
【0069】
同様に、ヒドロキシプロピルセルロースを水に溶解し、該溶液を使用してCX157層の上にタルクを接着することによってCF造粒機で分離層を構築する。
【0070】
上部スプレーシステムを備えた流動床造粒機でバッチサイズ1.3 kgで腸溶層を構築する。セスキオレアートをクエン酸トリエチルとともに水に溶解し、流動床中へのスプレーのための冷却溶液に微粉化HPMCAS-LFを慎重に分散させて懸濁し、液体の温度を15℃未満で維持する。流動空気の温度は70℃〜80℃である。HPMCAS-LF懸濁液およびタルクを完全に加えたら、バッチを乾燥させ、流動床造粒機にさらに最終層を加える。最終層のすべての成分を水に溶解または懸濁し、懸濁液をバッチ中にスプレーし、流動空気を70℃〜80℃で維持する。
【0071】
最後に、#3ゼラチンカプセルにバッチを充填する。
【実施例3】
【0072】
60 mg CX-157 /カプセル
【表3】

【0073】
CF造粒機で製品を作製する。シンプルな回転式パンで気流なしで、製品を乾燥させた後に粉末層をアプライする。各用量の完成顆粒を#3ゼラチンカプセルに充填する。
【実施例4】
【0074】
60 mg CX-157 /カプセル
【表4】

【0075】
上記実施例3と実質的に同じ様式で製品を作製する。
【実施例5】
【0076】
60 mg CX157 /カプセル
【表5】

【0077】
CF造粒機でバッチサイズ1.0 kgで製品を作製する。ヒドロキシプロピル-メチルセルロースの120 mg/gm水性溶液中のCX157の懸濁液を80℃の吸気温度で造粒機中にスプレーすることによってCX157層を構築する。流動空気の入口温度を約80℃で維持しながら、懸濁液をゆっくりアプライする。CX157懸濁液の添加が完了したら、顆粒を空気乾燥させる。
【0078】
次いで、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの水性溶液を造粒機中にスプレーすることによって分離層を構築する。
【0079】
腸溶性ポリマーを水酸化アンモニウムで中和して、それを水に溶解する。十分な量の水を使用して5% w/w溶液を製造し、十分な水酸化アンモニウム(28%アンモニア溶液)を加えてpH約6.9を達成する。ポリマーが中和された後、クエン酸トリエチルおよびタルクを溶液に加え、穏やかに攪拌してタルクを懸濁する。次いで、造粒機中で、約70℃の吸気温度を使用して、サブコーティングされた顆粒に懸濁液をアプライする。腸溶コーティングのアプライが完了した後、ペーパーライントレイ(paper-lined tray)上にペレットを置き、ドライハウスで110°Fで3時間乾燥させる。ペレットをサイズ#3ゼラチンカプセルに充填する。
【実施例6】
【0080】
60 mg CX157 /カプセル
【表6】

【0081】
CX157懸濁液をTri-Homo Disperser--Homogenizer (Tri-Homo Corporation, Salem, Mass., U.S.A.)ミルに通すことを除き、実施例5で使用される様式と同一の様式で製品を作製する。静電気を軽減し、かつ流動を向上させるために、カプセル充填前にペレットに少量のタルクを加える。
【実施例7】
【0082】
60 mg CX157 /カプセル
【表7】

【0083】
水中のヒドロキシプロピルメチルセルロースの4% w/w溶液にCX157を懸濁し、CoBall Mill (Fryma Mashinen AG, Rheinfelden, Switzerland)モデルMS-12で懸濁液を粉砕することによってCX157層を構築する。Wursterカラム付きの流動床乾燥機を使用して、バッチサイズ1.0 kgでこの製品を作製する。水中のヒドロキシプロピルメチルセルロースの4% w/w溶液から分離層を加える。
【0084】
腸溶コーティング懸濁液を製造するために、精製水を10℃に冷却し、ポリソルベート、クエン酸トリエチルおよびシリコーンエマルジョンを加えて、分散させるかまたは溶解する。次いで、HPMCASおよびタルクを加え、均質性が達成されるまで攪拌する。この懸濁液に、カルボキシメチルセルロース水性溶液、0.5% w/wを加え、十分に混合する。コーティング処理の間、腸溶性懸濁液を20℃で維持する。次いで、吸気の温度を約50℃で維持しながら、スプレー速度約15 ml/分でWursterカラム中で部分的に完成したペレットに腸溶性懸濁液を加える。腸溶性懸濁液を完全に加えたら、Wurster中で50℃で生成物を乾燥させ、ドライハウス中でトレー上で60℃で3時間乾燥させる。次いで、二酸化チタンおよびプロピレングリコールを可塑剤として含む4.5% w/w/ヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液からなる最終層をアプライする。流動床乾燥機でペレットを完全に乾燥させた後、サイズ3ゼラチンカプセルに充填する。
【実施例8】
【0085】
60 mg CX157 /カプセル
【表8】

【0086】
腸溶コーティング懸濁液の残りの成分に加える前に約25%の腸溶性ポリマーを水酸化アンモニウムで中和したことを除き、上記実施例7の様式と本質的に同じ様式で製品を作製する。
【実施例9】
【0087】
60 mg CX157 /カプセル
【表9】

【0088】
本事例では、HPMCAS-LFを完全に中和して、pH 5.7でかつ水に完全に溶解性にすることを除き、本質的に実施例7の製品のように製品を作製する。
【実施例10】
【0089】
60 mg CX157 /カプセル
【表10】

【0090】
実質的に実施例7で使用される方法にしたがって製品を作製する。この事例では、分離層を形成させるために使用されるスクロースを水に溶解し、かつHPMCAS-LFを完全に中和する。
【実施例11】
【0091】
60 mg CX157ベース/カプセル
【表11】

【0092】
実質的に実施例10で使用される方法にしたがって製品を作製する。
【0093】
上記実施例にしたがって作製されたペレット、および該ペレットの種々のバッチで充填されたゼラチンカプセルを製薬化学における通常の様式で十分に試験する。安定性試験の結果、該ペレットおよびカプセルは、慣用の医薬品様式で流通、市販および使用されるために十分な保存安定性を有することが示される。
【0094】
試験はさらに、該ペレットおよびカプセルが、胃で見られる条件下での慣用の腸溶性保護試験に合格することを示す。また、該ペレットが、小腸で見られる条件にさらされると、許容される程度に高速にその多量のCX157を放出することも示されている。したがって、本発明は、以前に他のCX157ペレットの製剤において直面した問題を解決することが実証される。
【実施例12】
【0095】
3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシド(50mg/錠)の腸溶コーティング錠:
表1
【表12】

【0096】
Eudragit L-30 D-55 (メタクリル酸-アクリル酸エチルコポリマー(1:1)分散30パーセント)およびクエン酸トリエチルを除くすべての賦形剤を混合し、水で造粒し、錠剤に圧縮する。クエン酸トリエチルおよび水をホモジナイズし、ホモジナイズされた混合物にEudragitを加えて、約54%水を含む分散物を得る。Glatt Coater (Glatt Muschinen & Apparatebau AG, Pratteln Switzerland)コーティングパンで該分散物を錠剤にスプレーする。吸気温度は55℃であり、排気温度は40〜44℃の範囲であり、スプレー速度は20 rpmである。パン速度を5 rpmに設定する。
【0097】
コーティング錠に関するUnited States Pharmacopeia法<724>を使用して錠剤溶解プロファイルを分析する。0.1N HCl中で120分後、錠剤をリン酸緩衝液に移す。
【実施例13】
【0098】
3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシド(50mg/錠)の腸溶コーティング粒子を含むカプセル
以下の表に列挙される成分を使用してカプセル充填用の粒子(球状糖)を作製する:
【表13】

【0099】
PEG 6000を水と混合して溶液を形成させる。次いでCX-157を加え、溶液を混合する。ヒドロキシプロピルメチルセルロースを水に加え、2つの溶液をまとめ、混合する。SugletsをWurster流動床乾燥機(drier)に入れ、まとめた溶液をSuglets上にスプレーする。入口温度は55℃であり、出口温度は29℃〜47℃の範囲である。スプレー速度は8〜16グラム/分の範囲である。気流速度は50〜120 m3/時間の範囲である。
【0100】
次いで、以下に記載されるように粒子(球状糖)を腸溶コーティングでコーティングする:
【表14】

【0101】
コーティングのパーセンテージをEudragit重量/CX-157コーティング粒子重量として算出する。
【0102】
クエン酸トリエチルおよび水をホモジナイズし、Eudragitを加えて分散物を得る。該分散物は45.4%水を含む。薬物コーティングペレットをWurster流動床乾燥機に入れる(2回目)。該分散物を8〜16 g/分の範囲の速度でスプレーする。入口温度は33℃〜48℃の範囲であり、出口温度は25℃〜45℃の範囲である。気流速度は40〜120 m3/時間の範囲である。コーティング後、腸溶コーティングペレットを90分乾燥させる。各バッチに異なる量のコーティングを有する6バッチの腸溶コーティングペレットを形成させる。
【0103】
次いで腸溶コーティング粒子をHDP #1カプセルに充填する。HCl 0.1 N中の該カプセルバッチの溶解プロファイルを、USP手順に基づいて、取得する。リン酸バッファー中の該カプセルの溶解プロファイルを測定する。
【0104】
該溶解プロファイルは、スフェアが胃で溶解することを防ぐのに腸溶コーティングが有効であり、それによって該カプセルで処置された被験体でのチーズ効果が排除されることを示す。前記カプセルのようなスフェアを含むカプセルはうつ病の治療に有効である。その理由は、スフェアが胃などの条件で完全性を維持し、腸などの条件で易溶であるからである。
【0105】
上記実施例はまた、例えば50〜500 mg、例えば100〜200 mgの範囲の活性成分の量の表およびカプセルを処方するために使用することができる。
【0106】
改変は当業者に自明であるため、本発明は特許請求の範囲によってしか限定されないものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
【化1】

[式中、nは0、1または2であり; R1は分岐鎖または直鎖C1-5アルキルまたはC3-6シクロアルキルであり、これはヒドロキシル、または1個以上のハロゲンで場合により置換され; およびX1、X2、X3、X4、およびX5はすべて水素であるか、またはX1、X2、X3、X4、およびX5の1または2個がハロゲンであり、かつ残りが水素であり、ただしnが0または1であり、かつ各Xが水素である場合、R1はメチルではない]
のフェノキサチインに基づくMAO-Aインヒビターを含む腸溶性経口医薬品。
【請求項2】
フェノキサチインに基づくMAO-Aインヒビターが3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシドである、請求項1に記載の腸溶性製品。
【請求項3】
製品が錠剤である、請求項1または2に記載の腸溶性製品。
【請求項4】
製品がカプセルまたは、環状ボディーに覆われているコアである、請求項1〜3の何れか1項に記載の腸溶性製品。
【請求項5】
製品が、活性成分を含むコアを包む、本質的に胃で溶解しない腸溶コーティングを含む、請求項1〜4の何れか1項に記載の腸溶性製品。
【請求項6】
製品が3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシドを唯一の活性成分として含む、請求項1〜5の何れか1項に記載の腸溶性製品。
【請求項7】
3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシドが約169〜175℃の融点を有すると特徴付けられる、請求項1〜6の何れか1項に記載の腸溶性製品。
【請求項8】
3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシドが結晶形でありかつ、CuKα照射を使用して、2θ=11.0°でX線粉末回折ピークを有すると特徴付けられる、請求項1〜7の何れか1項に記載の腸溶性製品。
【請求項9】
製品が以下のもの:
(a) 3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシドおよび1種以上の医薬賦形剤からなるコア;
(b) オプションの分離層;
(c) ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート(HPMCAS)および製薬的に許容される賦形剤を含む腸溶層; および
(d) オプションの最終層
を含む、請求項1〜8の何れか1項に記載の腸溶性製品。
【請求項10】
分離層(b)が存在する、請求項9に記載の腸溶性製品。
【請求項11】
コアが不活性ビーズを含み、該ビーズ上に、3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシドが1種以上の医薬賦形剤を含む層として沈着している、請求項9または10に記載の腸溶性製品。
【請求項12】
製品が約50〜500ミリグラムの3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシドを含む錠剤である、請求項1〜11の何れか1項に記載の腸溶性製品。
【請求項13】
3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシドを含み、かつ胃での3-フルオロ-7-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェノキサチイン10,10-ジオキシドの放出を遅延させるかまたは阻害するように構成される、経口医薬剤形。
【請求項14】
錠剤、カプセル、または環状ボディーで覆われているコアである、請求項13に記載の経口医薬剤形。
【請求項15】
錠剤である、請求項14に記載の医薬剤形。
【請求項16】
カプセルである、請求項14に記載の医薬剤形。
【請求項17】
腸溶コーティングを含む、請求項13〜16のいずれかに記載の医薬剤形。

【図1】
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【公表番号】特表2012−514648(P2012−514648A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545447(P2011−545447)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/020459
【国際公開番号】WO2010/080970
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(507034883)セネレックス バイオファーマ,インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】