説明

経口製剤

本発明は、低用量の4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンを含む経口投与用の医薬組成物、および、当該化合物を含む組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低用量の−4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンを含む経口投与を対象とした医薬組成物に関する。さらに、本発明は、4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンを含む組成物中の改良された結合剤に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の主題である化合物(4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジン)は、式(I)
【0003】
【化1】

を有する。
【0004】
特許文献1では、遊離塩基としての式Iの化合物(化合物I)ならびにその対応するコハク酸塩およびマロン酸塩が開示されている。この化合物は、ドパミンD受容体およびD受容体(拮抗薬)、5−HT受容体(拮抗薬)ならびにα1アドレナリン受容体に対する高い親和性を有することが報告されている。特許文献1においては、この化合物は、精神病、とりわけ統合失調症(陽性、陰性および/またはうつ性の症状)、または、精神病性症状を伴う他の疾患(例えば、統合失調症、統合失調症様障害、統合失調感情障害、妄想障害、短期精神病性障害、共有精神病性障害など)、ならびに、精神病性症状を伴う他の精神病性の障害もしくは疾患(例えば、双極性障害における躁病)など、中枢神経系における数種の疾患の治療に有用であることが提案されている。特許文献1は、不安障害、うつ病を含めた情動障害の治療、双極性障害、睡眠障害、片頭痛、神経遮断薬誘発性パーキンソン症候群、ならびにコカイン乱用、ニコチン乱用、アルコール乱用および他の乱用障害の治療のための、式Iの化合物の使用も提案している。前述の薬理学的プロファイルを有する式Iの化合物および関連化合物を開示している他の刊行物は、特許文献2、非特許文献1および非特許文献2(例えば、47頁の表3および101頁の表9Aの化合物69を参照)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/016900号
【特許文献2】欧州特許出願第638073号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Bogeso K.P.ら、J. Med. Chem.、1995、38、4380〜4392頁
【非特許文献2】Bogeso K.P.、「Drug Hunting, the Medicinal Chemistry of 1-Piperazino-3-phenylindans and Related Compounds」、1998、ISBN 87-88085-10-4
【非特許文献3】Hertel P、Olsen CK、Arnt J.、Repeated administration of the neurotensin analogue NT69L induces tolerance to its suppressant effect on conditioned avoidance behaviour.、Eur J Pharmacol.、2002、439(1〜3)、107〜11頁
【非特許文献4】Stone JM、Davis JM、Leucht S、Pilowsky LS、Cortical Dopamine D2/D3 Receptors Are a Common Site of Action for Antipsychotic Drugs; An Original Patient Data Meta-analysis of the SPECT and PET In Vivo、Schizophr Bull.、2008年2月26日、[Epub in advance of print]
【非特許文献5】Farde L、Nordstrom AL、Wiesel FA、Pauli S、Halldin C、Sedvall G、Positron emission tomographic analysis of central D1 and D2 dopamine receptor occupancy in patients treated with classical neuroleptics and clozapine. Relation to extrapyramidal side effects.、Arch Gen Psychiatry.、1992、49(7)、538〜44頁
【非特許文献6】Keefe RS、Goldberg TE、Harvey PD、Gold JM、Poe MP、Coughenour L.、The Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia: reliability, sensitivity, and comparison with a standard neurocognitive battery.、Schizophr Res.、2004、68(2-3)、283〜97頁i.、Schizophr Res.、2004、68(2-3)、283〜97頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
式Iの化合物は、ドパミンD1受容体およびD2受容体の両方に親和性を有する抗精神病化合物であると推定される。条件回避応答(CAR、condition avoidance response)モデル(Hertel P、Olsen CK、Arnt J.、Repeated administration of the neurotensin analogue NT69L induces tolerance to its suppressant effect on conditioned avoidance behaviour.、Eur J Pharmacol.、2002、439(1〜3)、107〜11頁(非特許文献3)中に以前記載された実験手順)を用いたラットにおける前臨床実験により、式Iの化合物は非常に低レベルのD2受容体占拠率で抗精神病活性を有することが示唆されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
D1受容体およびD2受容体の追跡物質として11C−SCH23390および11C−ラクロプリドを用いた健常対象におけるポジトロン放出断層撮影(PET)試験において、式Iの化合物は、18日間毎日投与する用量を1日当たり2mgから10mgに増加させると、被殻中のD2受容体占拠率が11%から43%になることが見出された。そのようなレベルのD2受容体占拠率は、治療上有効である50%前後または50%超のD2受容体占拠率を一般に必要とする現在使用されている抗精神病薬のものと比較して低い(Stone JM、Davis JM、Leucht S、Pilowsky LS、Cortical Dopamine D2/D3 Receptors Are a Common Site of Action for Antipsychotic Drugs; An Original Patient Data Meta-analysis of the SPECT and PET In Vivo、Schizophr Bull.、2008年2月26日、[Epub in advance of print](非特許文献4))。同じPET試験において、式Iの化合物は、18日間毎日投与する用量を1日当たり2mgから10mgに増加させると、被殻中のD1受容体占拠率が32%から69%に増加することが見出された。そのような高レベルのD1占拠率は、現在使用されている抗精神病薬では通常見られない(Farde L、Nordstroem AL、Wiesel FA、Pauli S、Halldin C、Sedvall G、Positron emission tomographic analysis of central D1 and D2 dopamine receptor occupancy in patients treated with classical neuroleptics and clozapine. Relation to extrapyramidal side effects.、Arch Gen Psychiatry.、1992、49(7)、538〜44頁(非特許文献5))。したがって、式Iの化合物は、低い1日用量でD1受容体占拠率対D2受容体占拠率の独特な比率を呈する。
【0009】
前記に基づき、式Iの化合物は、D2受容体を低レベルでのみ占拠する用量(4mg/日〜14mg/日)で、統合失調症を有する患者において臨床的に顕著な治療効果を有することが期待される。このことは、式Iの化合物により示された高いD1受容体占拠率および独特のD1受容体占拠率対D2受容体占拠率比の結果であると考えられる。治療上有効用量でのD2受容体占拠率が低いことは、D2受容体遮断が介在する厄介な副作用(錐体外路における副作用および高プロラクチン血症など)を誘発する傾向が低下するという観点から有益であろう。
【0010】
遊離塩基として計算した場合に4〜14mgの治療上有効量の式Iの化合物は、経口投与され、そのような投与に適した任意の形態、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤または液剤の形態で提供されてもよい。一実施形態では、式Iの化合物の塩は、固形の医薬体(pharmaceutical entity)の形態で、適切には錠剤またはカプセル剤として投与される。
【0011】
固形の医薬組成物または調製物の調製の方法は、当技術分野で周知である。したがって、錠剤は、活性成分を慣用の佐剤、増量剤および希釈剤と混合し、次いで適当な打錠機中でこの混合物を圧縮することにより調製できる。佐剤、増量剤および希釈剤の例は、トウモロコシデンプン、乳糖、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ゼラチン、ゴムなどを含む。典型的な増量剤は、乳糖、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび微結晶性セルロースから選択される。着色剤、アロマ、保存剤など任意の他の佐剤または添加剤を使用してもよいが、この活性成分と適合することが条件である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は製造工程および工程管理のフロー図を示す。
【0013】
既に示したとおり、化合物4−((1R,3S)−6−クロロ−3−フェニルインダン−1−イル)−1,2,2−トリメチルピペラジンは、一般式(I)
【0014】
【化2】

を有し、本明細書を通して使用する場合の用語「式Iの化合物」は、遊離塩基、薬学上許容可能なその塩、例えば薬学上許容可能な酸付加塩(コハク酸塩およびマロン酸塩など)、当該遊離塩基またはその塩の水和物もしくは溶媒和物、ならびに無水体、非晶質体または結晶体など、当該化合物の任意の形態を指すことを意図している。
【0015】
本発明の組成物中に含まれることになる式Iの化合物は、その塩、典型的には、薬学上許容可能な塩も含む。そのような塩としては、薬学上許容可能な酸付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、無機酸および有機酸の塩が挙げられる。適当な無機酸の代表例としては、塩酸、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸、スルファミン酸、硝酸などが挙げられる。適当な有機酸の代表例としては、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ケイ皮酸、クエン酸、フマル酸、グリコール酸、イタコン酸、乳酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、ピクリン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモ酸、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA、グリコール酸、p−アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、テオフィリン酢酸および8−ハロテオフィリン、例えば8−ブロモテオフィリンなどが挙げられる。
【0016】
さらに、式Iの化合物は、非溶媒和体および溶媒和体で、水、エタノールなどの薬学上許容可能な溶媒と共に存在してもよい。一般に、溶媒和体は、本発明の目的にとっては非溶媒和体と同等であると考えられる。
【0017】
本発明は、式(I)
【0018】
【化3】

の化合物を、遊離塩基として計算した場合に4〜14mgの治療上有効量で含む医薬組成物に関する。
【0019】
さらなる一実施形態では、式Iの化合物を含む組成物は、認知機能不全、統合失調症、統合失調症様障害、統合失調感情障害、妄想障害、短期精神病性障害、共有精神病性障害、双極性障害における躁病、不安障害、うつ病、双極性障害の維持、睡眠障害、片頭痛、神経遮断薬誘発性パーキンソン症候群、またはコカイン乱用、ニコチン乱用もしくはアルコール乱用の治療用である。本発明の組成物の典型的な使用は、統合失調症(統合失調症の陽性症状など)、または、統合失調症における認知機能不全の治療におけるものである。
【0020】
さらなる一態様では、本発明は、認知機能不全、統合失調症、統合失調症様障害、統合失調感情障害、妄想障害、短期精神病性障害、共有精神病性障害、双極性障害における躁病、不安障害、うつ病、双極性障害の維持、睡眠障害、片頭痛、神経遮断薬誘発性パーキンソン症候群、またはコカイン乱用、ニコチン乱用もしくはアルコール乱用の治療用の医薬を製造するための式(I)の化合物の使用であって、式Iの化合物が、遊離塩基として計算した場合に4〜14mgの治療上有効量で存在する使用に関する。
【0021】
さらなる一態様では、本発明は、さらに、認知機能不全、統合失調症、統合失調症様障害、統合失調感情障害、妄想障害、短期精神病性障害、共有精神病性障害、双極性障害における躁病、不安障害、うつ病、双極性障害の維持、睡眠障害、片頭痛、神経遮断薬誘発性パーキンソン症候群、またはコカイン乱用、ニコチン乱用もしくはアルコール乱用を治療する方法であって、遊離塩基として計算した場合に4〜14mgの治療上有効量の式Iの化合物を、その必要がある患者に投与することを含む方法にも関する。
【0022】
本発明の組成物、使用または治療方法の一実施形態では、式Iの化合物は、錠剤またはカプセル剤(典型的には錠剤)など、経口投与用に製剤化される。錠剤などの組成物は、典型的には1日1回の経口投与用である。
【0023】
組成物、使用または治療方法のさらなる一実施形態では、式Iの化合物は、コハク酸塩またはマロン酸塩の形態である。典型的には、コハク酸塩。
【0024】
組成物、使用または治療方法のさらなる実施形態では、式(I)の化合物の量は、4〜12mgである。
【0025】
組成物、使用または治療方法のさらなる実施形態では、式(I)の化合物の量は、5〜14mgである。
【0026】
組成物、使用または治療方法のさらなる実施形態では、式(I)の化合物の量は、4〜6mg(5mgなど)である。
【0027】
組成物、使用または治療方法のさらなる実施形態では、式(I)の化合物の量は、6〜8mg(7mgなど)である。
【0028】
組成物、使用または治療方法のさらなる実施形態では、式(I)の化合物の量は、8〜10mgである。
【0029】
組成物、使用または治療方法のさらなる実施形態では、式(I)の化合物の量は、10〜12mgである。
【0030】
組成物、使用または治療方法のさらなる実施形態では、式(I)の化合物の量は、12〜14mg(14mgなど)である。
【0031】
組成物、使用または治療方法のさらなる実施形態では、式(I)の化合物の量は、5〜7mgである。
【0032】
組成物、使用または治療方法のさらなる実施形態では、式(I)の化合物の量は、7〜9mgである。
【0033】
組成物、使用または治療方法のさらなる実施形態では、式(I)の化合物の量は、9〜11mg(10mgなど)である。
【0034】
組成物、使用または治療方法のさらなる実施形態では、式(I)の化合物の量は、11〜13mgである。
【0035】
本発明が使用または治療方法に関する場合には、上に示した4〜14mgの用量(5mg、7mg、10mgまたは14mgなど)は、1日当たりである。
【0036】
この組成物、使用または治療方法のさらなる一実施形態では、この組成物は、結合剤としてポビドン(Kollidone 30(CAS−No.94800−10−9)など)またはコポビドン(Kollidone VA64(CAS−No.25086−89−9)など)をさらに含む。結合剤は、2〜4%、4〜6%、6〜8%、8〜10%、2〜8%、4〜8%、4〜10%または6〜10%(w/w)など、2〜10%(w/w)の濃度範囲で典型的に存在する。
【0037】
さらなる一態様では、本発明は、式(I)の化合物
【0038】
【化4】

と、結合剤としてポビドンまたはコポビドンとを含む医薬組成物にも関する。典型的には、結合剤はKollidone VA64である。
【0039】
一実施形態では、結合剤は、2〜10%(w/w)の濃度範囲で、典型的には2〜4%、4〜6%、6〜8%または8〜10%(w/w)の濃度範囲で存在する。結合剤がポビドンまたはコポビドンである場合、典型的な増量剤は、リン酸水素カルシウム、乳糖、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび微結晶性セルロース、好ましくは、乳糖、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび微結晶性セルロース、例えば乳糖から選択される。一実施形態では、増量剤(前記のいずれか一つなど)は、15〜50%(w/w)の濃度範囲内である。典型的には、増量剤(乳糖、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび微結晶性セルロースのいずれか一つなど)は、15〜25%、20〜50%、30〜45%(w/w)の濃度範囲内である。
【0040】
この組成物のさらなる一実施形態では、式(I)の化合物はコハク酸塩の形態である。
【実施例】
【0041】
実験
統合失調症患者における式Iの化合物の安全性および有効性は、有効性(陽性・陰性症状評価尺度(Positive and Negative Syndrome Scale、[PANSS])および臨床全般印象尺度(Clinical Global Impressions scale [CGI])など)ならびに安全性の標準的な尺度により調査されよう。スクリーニング期間の後、適格な患者を2:1の比率で無作為化して、式Iの化合物(例えば、5mg、7mg、10mgおよび14mg/日の用量で)またはプラセボのいずれかを用いて8週間盲検治療を行う。この試験には、漸増用量の式Iの化合物を用いた5つのパートが含まれ、次の用量レベルを開始する決定は、試験の前回のパートに基づく安全性および忍容性の評価を基に行うことになる。式Iの化合物の有効性および安全性は、試験の全てのパートからの、プールされたプラセボ群との比較で評価することとなる。
【0042】
統合失調症における認知欠損に及ぼす有効性
式Iの化合物は、認知機能不全の前臨床モデルにおいて認知向上特性を有することが示されている。式Iの化合物の5−HT6受容体親和性が、この化合物の予知効果(precognitive effects)に関与していると考えられる。さらに、式Iの化合物のそうした認知促進効果は低レベルのD2受容体占拠率で明らかとなると考えられ、このことは副作用プロファイルの点で有益である。
【0043】
式Iの化合物が統合失調症の患者における認知欠損に及ぼす効果は、適格な患者を1:1の比率で無作為化して、可変用量の式Iの化合物(5〜7mg/日)またはオランザピン(10〜15mg/日)のいずれかを用いて12週間盲検治療を行う臨床試験において評価されよう。式Iの化合物が認知症状に及ぼす有効性は、統合失調症認知機能簡易評価(Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia(BACS))尺度(Keefe RS、Goldberg TE、Harvey PD、Gold JM、Poe MP、Coughenour L.、The Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia: reliability, sensitivity, and comparison with a standard neurocognitive battery.、Schizophr Res.、2004、68(2-3)、283〜97頁i.、Schizophr Res.、2004、68(2-3)、283〜97頁(非特許文献6))を用いて評価されよう。
【0044】
例1 経口投与を意図した速放性フィルム・コート錠の調製I
医薬開発
賦形剤と式Iの化合物との適合性の試験から、錠剤製剤中で使用される成分はこの化合物と適合することが実証された。これに基づき、標準的な方法および賦形剤を用いた従来型の湿式造粒、打錠およびフィルム・コーティングの工程を開発した。
【0045】
薬物製品の説明
式Iの化合物を、経口投与を意図した速放性フィルム・コート錠として製剤化する。この例における式Iの化合物を含有する錠剤を、2通りの力価、5mgおよび7mgで作製する。式Iの化合物を含有する製品は、茶色がかった赤色の硬カプセル中に封入された白色のフィルム・コート錠である。他の力価(4mg、6mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mgまたは14mgなど)を同じ様式で調製することができる。
【0046】
組成
5mg錠および7mg錠の組成を、以下、表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
代表的なバッチ・サイズである10,000錠用のバッチ組成を表2に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
製造工程および工程管理の説明
造粒の方法は、乾燥結合剤としてコポビドン(Kollidone VA64)を、造粒液として水を使用する従来型の湿式造粒法である。10リットルのPMA1高せん断混合機においては、2kgのバッチの場合、工程は以下のとおりである:
式Iの化合物のコハク酸塩、無水リン酸水素カルシウム、トウモロコシデンプン(maize starch)およびコポビドンを500rpmで2分間混合する。
精製水を加えて凝集を開始させる。
800rpmでおよそ4分間造粒すると、適当な顆粒サイズが達成される。
この湿った顆粒をふるいにかける。
この顆粒を、製品の相対湿度(RH)がRH25〜55%になるまで、50℃のトレー乾燥機中で乾燥させる。
乾燥した顆粒をふるいにかける。
この顆粒を微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウムおよびタルクと共にミキサー中で混合する。
ステアリン酸マグネシウムをミキサーに加えて混合する。
錠剤圧縮機でこの粒状体を圧縮して錠剤とする。
表3に示す工程パラメーターを用い、錠剤コアをフィルム・コート機中でフィルム・コーティングする。
【0051】
【表3】

【0052】
製造工程および工程管理のフロー図を図1に示す。
【0053】
錠剤製剤中の結合剤の予想外の効果
凝集工程を最適化するために、2種類の異なる錠剤製剤を作製し、式Iの化合物の化学安定性に及ぼすその効果を評価した。これらの錠剤の組成を表4に示すが、製造工程は前述のものと同様であった。
【0054】
【表4】

【0055】
結合剤としてコポビドンを使用すると、表5に示すように、より良好な医薬技術特性(例えば、崩壊時間を損なわずに、摩損度の損失率が低い、より固い錠剤を作製することができること)を有する錠剤がもたらされる。
【0056】
【表5】

【0057】
さらに、表6に示すように、結合剤の違いにより驚くべき安定性の差が生じる。
【0058】
【表6】

【0059】
例2 経口投与を意図した速放性フィルム・コート錠の調製II
医薬開発
賦形剤と化合物Iとの適合性の試験から、錠剤製剤中で使用される成分はこの化合物と適合することが実証された。これに基づき、標準的な方法および賦形剤を用いた従来型の湿式造粒、打錠およびフィルム・コーティングの工程を開発した。
【0060】
薬物製品の説明
化合物Iを、経口投与を意図した速放性フィルム・コート錠として製剤化する。この例における式Iの化合物を含有する錠剤を、2通りの力価、2.5mgおよび5mgで作製する。式Iの化合物を含有する製品は、茶色がかった赤色の硬カプセル中に封入された白色のフィルム・コート錠である。他の力価(2mg、3mg、4mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mgまたは14mgなど)を同じ様式で調製してもよい。
【0061】
組成
2.5mg錠および5mg錠の組成を、以下、表7に示す。
【0062】
【表7】

【0063】
代表的なバッチ・サイズである10,000錠用のバッチ組成を表8に示す。
【0064】
【表8】

【0065】
製造工程および工程管理は例1に記載のとおりである。
製造工程および工程管理のフロー図を図1に示す。
【0066】
錠剤製剤II中の結合剤の予想外の効果
凝集工程を最適化するために、各結合剤について錠剤製剤(2.5mg)一つを作製し、化合物Iの化学安定性に及ぼす結合剤の効果を評価した。これらの錠剤の組成を表9に示すが、製造工程は、前述のものと同様であった。
【0067】
【表9】

【0068】
【表10】

【0069】
結合剤としてコポビドンを使用すると(製剤番号6)、良好な医薬技術特性(例えば、崩壊時間が比較的長いために錠剤全体として錠剤を飲み込むようにできること(表10に示すように)、および、許容可能な安定性データ(表11に示すように)が可能になる)を有する錠剤がもたらされる。
【0070】
【表11】

【0071】
異なる結合剤を含有する製品の安定性にいくらか差があることを表11で見ることができる(次頁)。
【0072】
【表12】

【0073】
【表13】

【0074】
例3 経口投与を意図した速放性フィルム・コート錠の調製III
医薬開発
賦形剤と化合物Iとの適合性の試験から、錠剤製剤中で使用される成分はこの化合物と適合することが実証された。これに基づき、標準的な方法および賦形剤を用いた従来型の湿式造粒、打錠およびフィルム・コーティングの工程を開発した。
【0075】
薬物製品の説明
化合物Iを、経口投与を意図した速放性フィルム・コート錠として製剤化する。この例における式Iの化合物を含有する錠剤は、2通りの力価、2.5mgおよび5mgで作製する。式Iの化合物を含有する製品は、茶色がかった赤色の硬カプセル中に封入された白色のフィルム・コート錠である。他の力価(2mg、3mg、4mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mgまたは14mgなど)を同じ様式で調製してもよい。
【0076】
組成
2.5mg錠および5mg錠の組成を、以下、表12および表13に示す。
【0077】
製造工程および工程管理は、例1に記載のとおりである。製造工程および工程管理のフロー図を図1に示す。
【0078】
【表14】

【0079】
【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

の化合物を、遊離塩基として計算した場合に4〜14mgの治療上有効量で含む、医薬組成物。
【請求項2】
錠剤またはカプセル剤など経口投与用に製剤化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式(I)の化合物がコハク酸塩またはマロン酸塩の形態である、請求項1〜2のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項4】
式(I)の化合物の量が、4〜12mg、5〜14mg、4〜6mg、6〜8mg、8〜10mg、10〜12mg、12〜14mg、5〜7mg、7〜9mg、9〜11mg、11〜13mg、5mg、7mg、10mgまたは14mgである、請求項1〜3のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項5】
1日1回経口投与するための、請求項1〜4のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項6】
結合剤としてKollidone VA64などのコポビドンをさらに含む、請求項1〜5のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項7】
認知機能不全、統合失調症、統合失調症様障害、統合失調感情障害、妄想障害、短期精神病性障害、共有精神病性障害、双極性障害における躁病、不安障害、うつ病、双極性障害の維持、睡眠障害、片頭痛、神経遮断薬誘発性パーキンソン症候群、またはコカイン乱用、ニコチン乱用もしくはアルコール乱用の治療のための、請求項1〜6のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項8】
認知機能不全、統合失調症、統合失調症様障害、統合失調感情障害、妄想障害、短期精神病性障害、共有精神病性障害、双極性障害における躁病、不安障害、うつ病、双極性障害の維持、睡眠障害、片頭痛、神経遮断薬誘発性パーキンソン症候群、またはコカイン乱用、ニコチン乱用もしくはアルコール乱用の治療用医薬を製造するための式(I)の化合物の使用であって、式Iの化合物が、遊離塩基として計算した場合に4〜14mgの治療上有効量で存在する使用。
【請求項9】
認知機能不全、統合失調症、統合失調症様障害、統合失調感情障害、妄想障害、短期精神病性障害、共有精神病性障害、双極性障害における躁病、不安障害、うつ病、双極性障害の維持、睡眠障害、片頭痛、神経遮断薬誘発性パーキンソン症候群、またはコカイン乱用、ニコチン乱用もしくはアルコール乱用を治療する方法であって、遊離塩基として計算した場合に4〜14mgの治療上有効量の式Iの化合物を、その必要がある患者に投与することを含む方法。
【請求項10】
式(I)
【化2】

の化合物と、結合剤としてのポビドンまたはコポビドンとを含む、医薬組成物。
【請求項11】
前記結合剤が、2〜4%、4〜6%、6〜8%または8〜10%など、2〜10%(w/w)の濃度範囲で存在する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記結合剤がKollidone VA64である、請求項10〜11のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項13】
前記式(I)の化合物がコハク酸塩の形態である、請求項10〜12のいずれか一つに記載の組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2012−504560(P2012−504560A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529448(P2011−529448)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際出願番号】PCT/DK2009/050258
【国際公開番号】WO2010/037398
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【Fターム(参考)】