説明

経時変化予測システム、経時変化予測方法、及びプログラム

【課題】経過時間に応じて周囲条件が変化する場合において、構造物を構成する個々の部材の経時的な劣化度合いを算出する。
【解決手段】本発明の経時変化予測システムでは、シーリング10及び外気20を、代表点(○ドットAおよび△ドットB)の組み合わせによりモデル化する。そして、シーリング10の代表点の中で、外気20に面する第1の代表点(例えば、●ドットA1)を設定する。また、外気20の代表点(△ドットB)の中で、シーリング10に面する第2の代表点(例えば、△ドットB1)を設定する。そして、第1の代表点(●ドットA)と第2の代表点(△ドットB)との間に作用する影響度を変数(パラメータ情報)により設定し、この変数に基づいて、シーリング10の経時的な状態変化を代表点(●ドットA)ごとに算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物等の劣化度合いを各部材ごとに予測する経時変化予測システム、経時変化予測方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の予防保全に関する情報を得るシステムとして、経時変化予測システムがある。経時変化予測システムは、建築物の構成要素となる建築部材の情報や、建築部材の材料(性質)の情報等の設計情報をデータベースに記憶しておき、このデータベースに記憶された情報に基づいて建築物の劣化を予測する情報を得る。このような建築物の経時変化予測システムにおいては、建築部材の劣化度合いを示す方法として、建物設備や躯体や仕上げの状態などを大まかに総括して色分けして表示するものがある。例えば、建築部材等の劣化度合いを示す方法としては、数値化された予測結果を示す表や、グラフ、2次元的に示される立面図や平面図などの図面によって表示される(例えば、特許文献1から3参照)。
特許文献1に記載の技術によれば、「建物資産診断システム」においては、予めデータベースに記憶された建築部材の材料(性質)の情報等の設計情報から、建築物の劣化の予測を理論値として得ていることが示されている。
また、特許文献2に記載の技術によれば、「住宅診断システム」においては、予め定められた標準的な劣化状態を示す情報と、実際の診断情報から劣化診断することが示されている。
また、特許文献3に記載の技術によれば、「設備設計・メンテナンス支援システム」においては、予め定められた経年変化の傾向に従って予測される部材劣化に応じた耐用年数に基づいて劣化の診断を行うことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−281248号公報
【特許文献2】特開2001−306669号公報
【特許文献3】特開2002−117087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建築物を構成する個々の部材の経年劣化は、周囲条件が変化することによっても変化する場合がある。
しかしながら、特許文献1から3に記載のいずれの技術においても、上述したように、予めデータベースに記憶された建築部材の材料(性質)の情報等の設計情報に基づいて建築物の劣化を予測する情報を得ていることが示されているに過ぎない。そのため、これらの技術を用いたとしても、周囲条件の変化がある場合の劣化を予測することができないという問題がある。要するに、特許文献1から3に記載のいずれの技術においても、予め定められる情報に基づいて単に時間の経過に応じた劣化状態を算出することが示されるに留まるものであり、経過時間に応じて周囲条件が変化する場合の劣化を予測することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、斯かる実情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、経過時間に応じて周囲条件が変化する場合において、構造物を構成する個々の部材の経時的な劣化度合いを算出する経時変化予測システム、経時変化予測方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の経時変化予測システムは、構造物を構成する部材に対応して定義される領域を単位として、該構造物を複数の前記領域の組み合わせとしてモデル化し、前記複数の領域には、第1の部材に対応する第1の領域と、第2の部材に対応する第2の領域とが含まれており、前記第1の領域には、前記第2の領域に面した該第1の領域の表面に第1の代表点が設けられ、前記第2の領域には、前記第1の領域に面した該第2の領域の表面に第2の代表点が設けられており、前記第1の部材と前記第2の部材との間に作用する条件に応じた前記第1の部材と前記第2の部材の経時的な変化をそれぞれ推定するにあたり、前記第1の部材と前記第2の部材との間に作用する影響度を、前記影響度を示す変数によって定義することにより、前記第1の代表点と前記第2の代表点とにそれぞれ設定された前記変数に基づいて、前記部材の状態変化を前記代表点ごとにそれぞれ算出する状態変化算出部を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の経時変化予測システムは、前記状態変化算出部において、前記影響度が作用する前記第1の代表点と前記第2の代表点との組み合わせは、2つの前記代表点間の距離に応じて定められることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の経時変化予測システムは、前記領域の形状に応じて定められる格子に従って配置される複数の前記代表点から、前記第1の代表点と前記第2の代表点をそれぞれ選択する代表点選択部を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の経時変化予測システムは、前記モデル化された前記領域の形状に応じた位置に前記代表点を配置する第1の代表点配置部を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の経時変化予測システムは、前記第1の代表点配置部は、前記領域の形状に応じて定められる格子に従って前記複数の代表点を格子状に配置することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の経時変化予測システムは、前記状態変化算出部により算出された前記部材の状態により、前記部材の経時変化を予測する経時変化予測部を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の経時変化予測システムは、3次元座標空間に置かれた前記複数の領域の組み合わせとしてモデル化されたモデルに、前記複数の領域と複数の前記代表点とを重ねて表示させる表示制御部を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の経時変化予測システムは、前記第2の領域に面した第3の領域には、前記第2の領域に面した第3の領域の表面に第3の代表点が設けられ、前記第2の領域には、前記第3の領域に面した該第2の領域の表面に第4の代表点が設けられており、前記状態変化算出部は、前記第3の領域から前記第2の領域に作用する条件に応じてそれぞれ変化する前記第1の部材と前記第2の部材の経時的な変化を推定するにあたり、前記第3の領域から前記第2の部材に作用する条件を、前記第3の代表点と前記第4の代表点との間に作用する影響度を示す変数によって定義することにより、前記第1の代表点と前記第2の代表点とにそれぞれ設定された前記変数に基づいて、前記部材の状態変化をそれぞれ算出することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の経時変化予測システムは、前記第2の領域に面した前記第3の領域には、前記第2の領域に面した前記第3の領域の表面に前記第3の代表点を設け、前記第2の領域には、前記第3の領域に面した該第2の領域の表面に前記第4の代表点を設ける第2の代表点配置部を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の経時変化予測システムは、前記第2の領域において、前記第4の代表点から受ける作用を、前記第4の代表点に対応する前記第2の代表点に伝達する伝達係数が定められており、前記第3の領域から前記第1の領域に作用する影響度を伝達する前記伝達係数として定めることにより、前記第4の代表点が前記第3の代表点から受ける作用を、前記第4の代表点に対応する前記第2の代表点に対して前記伝達係数の値に応じて減衰させて伝達し、前記伝達された影響度に基づいて前記第2の代表点から前記第1の代表点に対して作用させる領域内伝達量算出部を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の経時変化予測システムは、前記第1の領域において、前記第1の領域の1の面に面している前記第2の代表点に対応する第5の代表点が前記第1の領域の1の面に設けられており、前記状態変化算出部は、前記第2の代表点と、前記第5代表点とに基づいて、前記第1の部材の状態変化を算出することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の経時変化予測システムは、前記第2の代表点との距離が所定の範囲に納まるように、前記第5の代表点が配置されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の経時変化予測システムは、前記第1の領域の1の面に対して前記第2の代表点に対する位置になるように、前記第5の代表点が配置されることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の経時変化予測システムは、前記第1の領域において、前記第1の領域の1の面に面している前記第2の代表点に対応する前記第5の代表点を前記第1の領域の1の面に設ける第3の代表点配置部を備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の経時変化予測システムは、前記第1の領域の1の面には、前記第2の領域と第4の領域が面しており、前記第4の領域には、前記第1の領域側に第6の代表点が設けられており、前記第1の領域には、前記第4の領域に面した該第1の領域の表面に第7の代表点が設けられており、前記状態変化算出部は、前記第7の代表点と、前記第6代表点とに基づいて、前記第1の部材の状態変化を算出することを特徴とする。
【0021】
また、本発明の経時変化予測システムは、前記第1の領域の1の面には、前記第2の領域と第4の領域が面しており、前記第4の領域には、前記第1の領域側に第6の代表点を設け、前記第1の領域には、前記第4の領域に面した該第1の領域の表面に第7の代表点を設ける第4の代表点配置部を備えることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の経時変化予測システムは、空間を専有する物体に対応して定義される領域を単位として、該物体を複数の前記領域の組み合わせとしてモデル化し、前記複数の領域には、第1の物体に対応する第1の領域と、第2の物体に対応する第2の領域とが含まれており、前記第1の領域には、前記第2の領域に面した該第1の領域の表面に第1の代表点が設けられ、前記第2の領域には、前記第1の領域に面した該第2の領域の表面に第2の代表点が設けられており、前記第1の物体と前記第2の物体との間に作用する条件に応じた前記第1の物体と前記第2の物体の経時的な変化をそれぞれ推定するにあたり、前記第1の物体と前記第2の物体との間に作用する影響度を、前記影響度を示す変数によって定義することにより、前記第1の代表点と前記第2の代表点とにそれぞれ設定された前記変数に基づいて、前記物体の状態変化を前記代表点ごとにそれぞれ算出する状態変化算出部を備えることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の経時変化予測方法は、構造物を構成する部材に対応して定義される領域を単位として、該構造物を複数の前記領域の組み合わせとしてモデル化し、前記複数の領域には、第1の部材に対応する第1の領域と、第2の部材に対応する第2の領域とが含まれており、前記第1の領域には、前記第2の領域に面した該第1の領域の表面に第1の代表点が設けられ、前記第2の領域には、前記第1の領域に面した該第2の領域の表面に第2の代表点が設けられており、前記第1の部材と前記第2の部材との間に作用する条件に応じた前記第1の部材と前記第2の部材の経時的な変化をそれぞれ推定するにあたり、前記第1の部材と前記第2の部材との間に作用する影響度を、前記影響度を示す変数によって定義することにより、前記第1の代表点と前記第2の代表点とにそれぞれ設定された前記変数に基づいて、前記部材の状態変化を前記代表点ごとにそれぞれ算出する過程を備えることを特徴とする。
【0024】
また、本発明のコンピュータプログラムは、経時変化予測システムが備えるコンピュータに、構造物を構成する部材に対応して定義される領域を単位として、該構造物を複数の前記領域の組み合わせとしてモデル化し、前記複数の領域には、第1の部材に対応する第1の領域と、第2の部材に対応する第2の領域とが含まれており、前記第1の領域には、前記第2の領域に面した該第1の領域の表面に第1の代表点が設けられ、前記第2の領域には、前記第1の領域に面した該第2の領域の表面に第2の代表点が設けられており、前記第1の部材と前記第2の部材との間に作用する条件に応じた前記第1の部材と前記第2の部材の経時的な変化をそれぞれ推定するにあたり、前記第1の部材と前記第2の部材との間に作用する影響度を、前記影響度を示す変数によって定義することにより、前記第1の代表点と前記第2の代表点とにそれぞれ設定された前記変数に基づいて、前記部材の状態変化を前記代表点ごとにそれぞれ算出する状態変化算出部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の経時変化予測システムにおいては、構造物を構成する部材に対応して定義された複数の領域の組み合わせとしてモデル化する。そして、上記複数の領域には、第1の物体に対応する第1の領域と、第2の物体に対応する第2の領域とを含み、第1の領域には、第2の領域に面した表面に第1の代表点を設け、第2の領域には、第1の領域に面した表面に第2の代表点を設ける。そして、第1の代表点と第2の代表点との間に作用する影響度を変数により定義し、この変数に基づいて、物体の状態変化を代表点ごとにそれぞれ算出する。
【0026】
これにより、本発明の経時変化予測システムにおいては、経過時間に応じて周囲条件が変化する場合において、構造物を構成する個々の部材の経時的な劣化度合いを算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態による経時変化予測システムの概要を示す図である。
【図2】シーリングに塗装が施された構成例を示す図である。
【図3】円錐体における代表点の配置例を示す図である。
【図4】円錐体の各頂点を包含する直方体とグリッド(格子)の設定例を示す図である。
【図5】円錐体の内部に代表点を配置する例を示す図である。
【図6】代表点の配置ルールを示す図である。
【図7】図6に示す代表点の位置関係を示す図である。
【図8】構成材の一つの面に2つの部材が位置する例を示す図である。
【図9】構成材の一つの面に2つの部材が位置する場合のドット配置例を示す図である。
【図10】構成材の一つの面に2つの部材が位置する場合のモデル化の例を示す図である。
【図11】建築物における建築部材の劣化情報の表示例を示す図である。
【図12】本発明の実施形態による経時変化予測システムの構成を示す図である。
【図13】経時変化予測システムにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0029】
(経時変化予測システムの概要の説明)
最初に、経時変化予測システムの概要について説明する。経時変化予測システムは、以下に示す特徴がある。
第1に、経時変化予測システムは、物体(建築物等の構造物)の構成要素となる建築部材(単に「部材」とも呼ぶ)の一つ一つに対して、その劣化情報を劣化種別ごとに視覚的に明確にかつ分かりやすく表示する。すなわち、経時変化予測システムにおいては、実際の構造物(建築物等)に基づいたモデルを3次元の仮想空間上に構成する。例えば、建設日からの経過日数に応じて、各建築部材に対して、すべての劣化種別ごとに劣化の度合いを計算する。また、例えば、この仮想空間上の建物において、一つ一つの建築部材ごとに、施された仕上げの劣化や、錆の発生による劣化や、結露やカビの発生などの劣化要素を定義する。定義された劣化要素から、それぞれの劣化要素による劣化と、複数の劣化要素を複合することにより生じる劣化とを計算し、計算された劣化の状態を視覚的に表示する。また、個々の劣化要素による劣化の状態をそれぞれの劣化要素ごとに表示する際には、劣化要素の種別に応じて切り替えて表示でき、さらに、複数の劣化要素を複合することにより生じる劣化も表示できるようにする。
【0030】
第2に、経時変化予測システムにおいては、建築部材の一つ一つに対して劣化の進行度合いを計算する関係式(ロジック)を定義する。例えば、経時変化予測システムは、この劣化の進行度合いの計算において、その耐用年数を短縮したり、延長したりする計算を、時間の経過に応じて建築部材の一つ一つに対して行う。劣化の進行度合いを計算する関係式(ロジック)を定義する場合に、経時変化予測システムは、一つ一つの建築部材を取り巻く外力としての化学変化や荷重などによる応力を、一つ一つの建築部材の耐用年数を短縮させる係数として取得して、組み合わされた建築部材としての耐用年数を計算する。なお、適切な時期に改修が行われた場合は、経時変化予測システムは、改修された建築部材の耐用年数を延長させる計算を行い、組み合わされた建築部材の寿命を延長させる。
【0031】
第3に、経時変化予測システムは、建築部材に配置された代表点(ドット)により、建築部材の劣化をまねく外力をドットごとに検出する。建築部材には、この建築部材を取り巻く物体が持つパラメータ(当該建築部材が影響を受けうる特定のパラメータ)を感知するセンサとしてのドット(代表点)が配置される。このドットには3次元(X,Y,Z)座標に基づいた位置情報が与えられ、与えられた位置情報によりドットの場所を特定する。また、経時変化予測システムでは、同じ建築部材にあるドット同士に定義された互いの関連性に基づいて、建築部材全体の形状を認識する。経時変化予測システムは、建築部材の形状を認識することによって、環境要素から受ける影響の度合いを認識する。また、ドットには、建築部材としての材料の性能性質の情報が、パラメータ情報に応じて変化する変数として定義される。定義された材料の性能性質の情報の値は、パラメータ情報の変化と時間の経過とともに変化することにより変化する。また、経時変化予測システムは、構造外力による応力もドット間の耐力との比較により計算され、建築部材の劣化の影響を算出する。
【0032】
第4に、経時変化予測システムは、周囲環境についても、外力として扱うことにより建築部材に影響を示し、定義された材料の性能性質の情報を算出する。例えば、建築部材の周囲にある空気(外気)についても、温度や湿度や成分が異なる空間ごとに領域を定義する。経時変化予測システムは、それぞれ定義された領域にもドットを配置して、温度や湿度や成分が異なる空間ごとに、建築部材に与える影響を計算する。また、人間の歩行や接触といった活動による影響についても、建築部材の劣化に影響を与えるパラメータ情報としてドットごとに定義する。また、雨などの気候や太陽光線やNOx(窒素酸化物)などのガスが建築部材に与える影響についてもパラメータ情報としてドットごとに定義する。建物を構成する建築部材のドットにおいては、建築部材のドットにそれぞれ近接する「領域として定義された空間におけるドット」の影響を受けて、自らの性能性質の数値を変化させる。
【0033】
図1を参照し経時変化予測システムの一実施態様について説明する。
図1は、経時変化予測システムの概要を説明するための図である。この図1では、建築部材におけるドット(代表点)の配置例と、この建築部材の周囲の物体(外気)におけるドット(代表点)の配置例を示している。このドット(代表点)は、経時変化予測を行う際の対象点として選択されるものであり、建築部材の劣化算定ロジックにおいては、ドット自体の数値やドット同士間の影響による数値の変化を劣化として捉えることを基本としている。
【0034】
この図1に示す例では、建築物を構成する建築部材であるシーリング(外壁材)10の一部が、周囲の外気20と接触している例を示している。この図において、○(白丸)印で示すドットAは、シーリング10内に配置される代表点であり、このシーリング10において、●(黒丸)印で示す●ドットAは、外気20と直接接触する面に位置するドットを示している。また、△(三角)印で示す△ドットBは、外気20内に配置される代表点である。なお、ドット(代表点)の配置方法については、後述する。
【0035】
シーリング10内の各○ドットA(および●ドットA)は、以下のパラメータ情報により定義される。
【0036】
「(○ドット(座標X,Y,Z),材料○名(シーリング),性質a,b,・・・,)」
【0037】
このパラメータ情報において、「(座標X,Y,Z)」は、○ドットAの3次元空間における位置を示し、「材料○名(シーリング)」は、建築部材の種別(或いは材料)の情報を示す。また、「性質a,b,・・・」は、周囲の環境要素から影響を受ける性質の情報を示す。
【0038】
また、外気20内の各△ドットBは、以下のパラメータ情報により定義される。
【0039】
「(△ドット(座標X,Y,Z),外力(外気),性質α,β,・・・,)」
【0040】
このパラメータ情報において、「(座標X,Y,Z)」は、△ドットBの3次元空間における位置情報を示し、「外力(外気)」は、建築部材に影響を与える劣化要素の種別の情報を示す。また、「性質α,β,・・・」は、建築部材に劣化を及ぼす性質(或いは、劣化を及ぼす程度)の情報を示す。
【0041】
そして、シーリング10のドットAと外気20のドットBとにおいて、それぞれのドットの3次元の位置情報(X,Y,Z)から、シーリング10のドットA(影響を受ける側のドットA)に近接するドットBが判定され、このドットBがドットAにおける劣化予測計算の対象となる。
例えば、図1に示すように、外気20から影響を受けうる特定のパラメータ情報を持つ●ドットA1を基準として、この●ドットA1に影響を与えうる所定の距離LA−B内に、外気20の△ドットB1がある場合、その影響時間に応じて●ドットA1はその材料の性質の変化が計算される。例えば、外壁材のシーリング10は外部空間(外気20)からの紫外線、NOx(窒素酸化物)、日較差や年較差などの影響を受け、材料の内部応力や温度変化による伸縮に加え、材質自体が化学変化を起こし強度や弾性が低下して行く過程を計算する。この計算は、経過した時間に応じて基準となる耐用年数から減じて行くよう係数を掛けることにより行われる。
【0042】
例えば、外気20のドットB1のパラメータ情報が、シーリング10の●ドットA1の性能に影響を与える場合は、次に示す計算式のようになる。ここで、シーリング10を形成するシリコン耐用年数を120ヶ月(10年標準)とする。
【0043】
(シーリング10の耐用年数)=120−(経過月数)÷0.95(日較差)÷0.95(紫外線量)÷0.95(NOx量)÷0.98(庇なしによる雨の影響あり)
【0044】
そして、経時変化予測システムは、上記の計算値がある定められた値以下になると判定された場合、表示画面上の部材(シーリング10)のドット(或いはドットとこのドットを含む部材の領域)の色を変えてアラームを表示する。例えば、予め定められる所定期間以上の耐用年数が確保されている場合であれば緑色とし、所定期間以上の耐用年数が確保されていない場合であれば赤色とすることにより、表示画面上のドットの色を緑色から赤色に変えることにより、そのドットの位置にアラームを表示することができる。上記に例示した場合では、95ヶ月(7.9年)で結果がゼロになり、標準の耐用年数(120ヶ月)よりも短縮された耐用年数に早く到達するということが示される。また、影響を与えるパラメータとしては、潮風などの塩害による化学変化、温度差と湿度の関係によって生じる結露などによる付着、金属の酸化しやすさと湿度からの錆の発生などを考慮して設定することができる。
【0045】
このように、経時変化予測システムにおいては、建築部材の性質の変化は標準耐用年数との差によって、実際の耐用年数が予測計算される。そして、予測計算された結果に従って、ドットAごとの色を変化させることにより、ドットAにおける劣化の度合いの変化を表示することができる。例えば、短縮された耐用年数までの期間が減少するにつれて、「緑→黄→橙→赤」などのようにドットの色を段階的に変化させることができる。
【0046】
(シーリング劣化についてのより具体的な計算例の説明)
次に、図1に示す例について、さらに、より具体的な計算例について補足して説明する。以下の計算例では、建物構成部材(建築部材)であるシーリング10と外気20(太陽光の紫外線)が影響しあう計算例について説明する。
図1に示すシーリング10の代表点であるドットAは、前述のように、パラメータ情報として、「位置情報(Xa,Ya,Za)」と、「材料名(シーリング)」と、「性質情報a、b、・・・」の情報を持つ。また、外気20のドットBは、パラメータ情報として、「位置(Xb、Yb、Zb)」と、「外力(外気)」と、「性質α、β、・・・」の情報を持つ。
【0047】
そして、ドットA(シーリング)では、当該ドットAがドットB(外気)からの影響を受けうるか否かの条件を判定する。その判定において、外気という性質を持つドットBとの距離LA−Bが、所定の距離以下であり、かつ、その所定の距離以下の範囲に他のドットがない場合、ドットAとドットBとが接する距離にあると判定し、ドットAがドットBから影響を受けると判定する。例えば、図1において、●ドットA1と△ドットB1とは、その距離LA−Bが所定の距離内にあり、かつその距離以内に他のドットがないため、●ドットA1は△ドットB1と接する距離にある(影響を受ける)と判定される。一方、シーリング10の○ドットA2(図の左側)と、この○ドットA2に一番近い外気20の△ドットB2の距離では、影響をお互いに及ぼさない距離にあると判定される。
【0048】
そして、●ドットA1と△ドットB1とが接する距離にあると判断された場合は、●ドットA1と△ドットB1とにおいて、お互いに影響を受けるパラメータが含まれているかどうかを判定する。この互い影響を受けるパラメータが含まれているかどうかを判定するために、●ドットA1のパラメータ情報に、相性の悪い物質(例えば、紫外線)、劣化を受ける物質(例えば、高分子ゴム)などの情報を含ませて、予めデータベースに登録しておく。なお、このパラメータ情報は、建築物の設計段階の値として建築部材の性質としてデータベースに入力しておく。また、建築物の設計段階において、材料の性質をパラメータ情報として入力することにより、設計時点で適する組み合わせであるか否かを判定することができる。例えば、アルミと鉄が接すると電食を起こすことから、組み合わせると劣化を受ける物質としての情報を登録しておく。これにより、アルミと鉄とが建築部材として接するようにして配置された情報が登録された場合は、設計時点の判定によりアラームを発生させることができる。
【0049】
また、外気20の△ドットB1のパラメータ情報αとして、年間の総量と、一日あたりの総量(例えば、○ドットA1と相性の悪い物質(例えば、紫外線)の総量)が入力されているとする。ここでは、例えば、シーリング10の性質情報aは、一日あたりの総量を示す一定の値(劣化係数α1)によって定められる劣化の影響を受けると判定する。
なお、このような劣化係数α1は、さまざまな建築部材の管理会社や研究機関のデータベースから取得して設定することもできる。また、シーリング10の●ドットA1が面する面の方角に応じて影響の大きさを変えることできる。例えば、方角に応じて面が受ける日射量が異なることにより紫外線の量が変化する。その面が、南側か北側かに応じて、その影響の大きさを変えることができる。
【0050】
上記の条件における計算例を以下に示す。
例えば、経時変化予測システム101(図12)は、次の手順に従って処理をする。
(手順1)劣化係数α1について、影響を受けて劣化する場合をα1(+)、影響を受けずに劣化しない場合をα1(−)とする。そして、ドットA1の耐用年数43800日(=120ヶ月=10年)とし、5年後の経過日数21900日とする。
(手順2)劣化の侵攻が、劣化係数α1に応じて日数に比例するものと考え、単位時間あたりの劣化係数α1を以下ように設定する。
・α1(−):1.00 (劣化しない場合)
・α1(+):0.95 (単位時間の日数に比例して劣化が進行する場合)
なお、α1(+)について、劣化の進行が日数に比例しない場合は、時間を変数とした計算式に基づいて定めてもよい。
【0051】
(手順3)そして、例えば5年経過後の同じ日を定め、●ドットA1に対する外気20の△ドットB1の影響を計算する。
・α1(−):
43800−21900/α(−)=43800−21900/1.00=21900
・α1(+):
43800−21900/α(+)=43800−21900/0.95=20747
【0052】
(手順4)以上の手順から、α1(+)の方が、α1(−)より耐用年数が短縮されることとなり、標準状態における耐用年数の10年を経過しないある時点において、耐用限度に到達することが算出される。
(手順5)耐用限度に到達したドットにおいては、●ドットA1として表示されるシンボルの表示色を変えて、危険度を表示する。
【0053】
以上説明した手順により、シーリング(スチール)10が、外気20の影響により劣化する際に、この劣化を予測することができ、耐用限度に到達したドット(或いはドットとこのドットを含む部材の領域)については、ドットの色を変えて視覚的に表示することができる。
【0054】
(シーリングに塗装が施されている場合において錆が発生する場合の例についての説明)
次に、シーリングがスチール(鉄部材)で構成され、このスチールに塗装が施されている場合の、錆が発生する場合の例について説明する。ここでは、建物部材であるシーリング(スチール:鉄部材)と外気の間に塗装がある場合の計算例を示す。
【0055】
図2は、シーリングに塗装が施された構成例を示す図である。この図2に示すように、スチール11には、○ドットA(ドットA1を含む)が代表点として配置される。また、外気20には、△ドットB(ドットB1を含む)が代表点として配置される。また、塗装30には、□ドットC(ドットC1を含む)が代表点として配置される。
【0056】
そして、シーリング(スチール)11の○ドットAと、外気20の△ドットBとが、予め定められる所定の距離以内にあり、かつ外気20の△ドットBから、予め定められる所定の距離以内に□ドットCが存在する。
例えば、シーリング11の○ドットA1と、外気20の△ドットB1とが、ある距離以内にあり、かつ、外気20の△ドットB1からその距離に満たない距離に□ドットC1が存在する。
【0057】
この場合に、○ドットAの性質情報aでは、○ドットA1が外気20から影響を受けるか否かの条件判定計算として、外気という性質を持つ△ドットB1との距離LA−Bが、ある距離内にあり、かつ外気20の△ドットB1からその距離LA−B以内に他のドットがない場合、シーリング(スチール)11の○ドットA1が外気20を代表する△ドットB1に接する距離にあると判定する。この例では、塗装30の□ドットC1が存在するため、○ドットA1は外気20を代表する△ドットB1と直に接していないと判定される。○ドットA1と△ドットB1とはお互いに劣化を与える物質、劣化を受ける物質などのパラメータを有するが、□ドットC1が存在することにより、お互いが直接影響しないと判定される。
【0058】
ここで、□ドットC1(塗装30)と△ドットB1(外気20)との間においても、○ドットA1と△ドットB1との間と同じような相互作用が計算される。□ドットC1の耐用年数が○ドットA1のそれよりも短い場合、□ドットC1の耐用年到達以降は□ドットC1が存在しないと判定され、○ドットA1は△ドットB1の影響を受け始めることとなる。それ以降、○ドットA1の耐用年数は、上述した例と同じように通常よりも早く到来することとなる。
【0059】
以上説明したように、経時変化予測システムは、シーリング(スチール)11に塗装30が施された場合においても、この塗装30による防錆作用を考慮して、シーリング11の劣化を予測することができる。
【0060】
(ドット配置ルールについての説明)
次に、ドット(代表点)の配置方法について説明する。経時変化予測システムは、さまざまな形状や大きさの建築部材に対して、この建築部材をモデル化するためのドット(代表点)を確実にかつ自動的に配置する。また、経時変化予測システムは、建築部材に配置した各ドットについて、周囲の物体(例えば、外気)と直接接するものとしないものを自動的に判定する。このため、経時変化予測システムでは、以下のドット配置ルールに従って、建築部材及び周囲の物体に対してドットを配置する。
【0061】
まず、ドット配置ルール(1)として、立体(例えば、建築部材により形成される立体形状)に含まれる辺の中で一番短い辺を選択し、選択された辺の長さに基づいた間隔で、立体の辺にドットを配置する。また、ドット配置ルール(2)として、立体の各頂点すべてを包含する直方体を設定し、ドット配置ルール1で選択された長さの格子(グリッド)を設け、立体が内包する交点にドットを配置する。
【0062】
例えば、図3に示す円錐体41の場合、立体表面の頂点の設定は、「円の中心」と「円の外接する正方形との接点」と「円錐体の頂点」の各点とし、そこにドットを配置する。この図に示す例では、円の中心に△ドットd1を配置し、円の外接点に4つの△ドットd2を配置し、円錐体の頂点の△ドットd3を配置する。さらに、円周(ドットd2)から円錐体の頂点(ドットd3)を結んだ辺上にも、一番短い頂点間の長さa(この例では、ドットd1とドットd2と間の距離a)で△ドット(符号d4で示すドット)を配置する。
【0063】
そして、さらに、図4に示すように、円錐体41の各頂点をすべて包含する直方体42を設定する。また、この直方体42において、長さaの間隔でグリッド(格子)43を設定する。この場合に、直方体42の寸法はグリッド寸法(長さa)の倍数とは異なる場合も有り得るが、これを許容する。
なお、グリッド寸法は、長さaのN分の1の寸法としてもよい(Nは2以上の自然数)。
そして、図5に示すように、グリッド43の各交点が円錐体41の内部にあるか外部にあるかを計算し、円錐体41の内部にある交点にドット(□で示すドット)を配置する。最後に△ドットと□ドットを同一の性質を持つ構成要素(代表点)としてデータ(パラメータ情報)を与える。
【0064】
図6に、図2で示した建築部材をドット配置ルールに従って配置した例を示す。なお、この図6に示す例では、図2に示すシーリング(スチール)11と対比すると、図6に示すスチール11に入隅11Aが追加されている点が異なる。この入隅11Aを設けたことにより、スチール11の最短の辺の長さは、図面左側に示すドットA1とドットA2との間の距離aとなり、この距離aに基づいた間隔によりスチール11に○ドットA(代表点)を配置する。
また、塗装30はその塗装の厚さが、図面左下に示す□ドットC1と□ドットC2との間の距離(塗装厚さ)cとなり、この厚さcで、塗装30に□ドットC(外気20に接する■ドットC’を含む)を配置する。距離cが他の辺の長さより短いことから、塗装30ではドット数が蜜に配置されている。なお、■ドットC’が、塗装30が外気20と接触する部分に配置されるドットである。
また、外気20においては、予め定めた所定の距離(例えば、図面右上に示す△ドットB1と△ドットB2との間の距離b)を基に、△ドットBを配置する。
【0065】
この図6に示す構成において特徴となる点は、図2と同様にシーリング(スチール)11と外気20の間に塗装30があり、シーリング(スチール)11内の○ドットAは、外気20の△ドットBから直接には影響を受けないという点である。この特徴となる点について図7を参照して説明する。
図7は、図6に示す代表点(ドット)の位置関係を示す図である。この図7を参照して、スチール11の○ドットと、異質材である塗装30の□ドットの対応関係について説明する。この図に示すドットの位置関係では、スチール11の○ドット1から外気20の△ドット3までの距離L1−3以内に、必ず塗装30の□ドット2があることになる。3次元方向についても同様の配列関係となる。このような関係が保たれるのは、一つの構成材(建築部材)で形成される立体において、その立体の寸法の中で一番短い(薄い)部分を基準としてドットを等間隔に配置したことによる。これにより、建築部材に配置されたドット(代表点)が、異質材に存在し、かつ、基準とするドットから一番近くに配置されたドットから影響を受けるという原則が守られる。
【0066】
また、同質材のドットについては、同一材料(同一部材)に配置されたドットの位置を示す配置情報に基づいて、水平、垂直、出隅、入隅などの立体的な形状が判別される。例えば、スチール11の○ドット4、5、6から、ドット5は入隅となっていることがわかる。また、○ドット7のように、材料の中にあるドットであるということは、上下前後左右及び斜めの合計26方向に同質のドットがあるということからわかる。
【0067】
(構成材が特殊な配置関係にある場合についての補足説明)
なお、上述したドット配置ルールによるドットの選択方法をそのまま適用できない事例があるので、これについて補足して説明する。例えば、建築部材同士が3次元空間で「接しているか離れているか」ということについて、異なる部材のドット間の距離の計測方法をそのまま適用できないという事象がある。例えば、あるAというベースとなる構成材(部材A)の一つの面に、B、Cという部材がリング状或いは縞状に配置されている場合、ドット間の距離だけで計測すると部材BとCとが重なっているかのようにも認識されてしまう。すなわち、部材Cは、部材Aに影響を与えないと判定されてしまう。この問題を解決するためには、部材Aの面上に、部材B以外の他の部材Cがあるかどうかを判定する必要がある。
【0068】
例えば、図8は、ベースとなる構成材(部材A)の一つの面に2つの部材B、Cがリング状或いは縞状に位置する例を示す図である。この図に示す例では、符号50で示すベースとなる構成材(部材A)のドットa2、a3、a5、a6で囲まれる面の中に、符号51で示す部材Bと、符号52で示す部材Cと配置されている。この場合、ドット間の距離の考え方(所定の距離内にある最寄りのドットを選択するルール)だけでは、各ドットa2、a3、a5、a6は、部材Bと接する距離にあると判定され、部材Cが部材Aの面に接していないと判定されてしまう。
【0069】
従って、このような場合は、部材B、Cが面する面に含まれるドットa2、a3、a5、a6が、部材BとCの両方の影響を受けるということを認識させることが必要となる。このため、以下に示す方法により、部材の1つの面に異なる部材が接触しているか否かの判定を行う。
【0070】
すなわち、異なる部材の代表点の検出方法として、第1の代表点(例えば、a2)から、第2の領域(部材B)の表面に配置されている最も近い第2の代表点を検出する。ただし、同じ表面に複数の部材が接する距離にある場合には、次の手順に従って検出する。
【0071】
第1の方法として、第kの部材(例えば、部材B)の代表点を検出する。第kの部材の代表点の検出を終えた段階で、検出対象の中で未検出である他の部材が所定の範囲内に存在するか否かを判定する。そして、この判定により存在すると判定された場合は、第(k+1)の部材(例えば、部材C)に対して同様の処理を行う。同様にして、未検出である部材がなくなるまで繰り返す。
なお、上記第1の方法においては、未検出の部材が存在するか否かの判定は、「代表点から所定の半径(例えば、格子の幅)以内に未検出の部材が存在するか否か」或いは「所定の広さ(例えば、格子サイズ)の面内に未検出の部材が存在するか否か」により行う。
【0072】
上記第1の方法の具体的な応用例について、図9を参照して説明する。図9は、構成材の一つの面に2つの部材が位置する場合のドット配置例を示す図である。図9(A)は、符号50で示す部材(構成材)Aの1の面A1に、符号51で示す部材Bと、符号52で示す部材Cとが接している場合の概念図を示している。また、図9(B)は、図9(A)における、矢付線D、D’方向の断面図を示している。
【0073】
図9(A)に示すように、部材Aの材料表面端部にある○ドット(代表点)a1〜a4の同一面A1内に部材B及びCのドット(代表点)がある場合、異質材同士が影響を受けるルールに則ると、○ドットa2から見た場合に影響を受けるのは最短距離にある□ドットb2だけとなり、△ドットc2からは影響を受けないこととなる。すなわち部材Aが部材Cから受ける影響を見落とすこととなる。しかし、実際の材料同士においては、部材Aは部材Cから影響を受けている。ここに、最短距離にあるドットを選択するルールに起因する問題、すなわち、「部材Aの各○ドットa1〜a4の位置に部材Cのドット(代表点)が直接には係わってこない」というルール不適合が発生する場合がある。
【0074】
上記ルール不適合が発生する場合の解決策の一例を図9(B)に示す。この図に示されるように、部材Aの面A1(a1〜a4で形成される面)の中に部材Aの構成ドット(○ドットa)が配置されていない。このような場合には、この面A1に接している部材B及びCに代表点として配置されたドット(例えば、b4、c4、c2、b2)に対して、同じ座標位置(A1面上)に○ドットa(b4)、a(c4)、a(c2)、a(b2)などを部材Aが持つドットとして配置する。これにより、部材Aは部材B及びCの両方から影響を受けるよう設定される。
【0075】
上記図9(B)に示すようにドットを追加する方法を使用することにより、図9(A)に示すように、部材Aの一つの面に、部材B、Cがリング状或いは縞状に配置されている場合においても、部材Aの面上に2つの部材B、Cが接していることを判定でき、部材B、Cの両方が部材Aに作用することによる影響を算出することができる。
【0076】
また、第2の方法として、ベースとなる構成材(部材A)に、第xの部材(例えば、部材B)と第yの部材(例えば、部材C)が接する距離にある場合に、部材Aには、第xの部材(例えば、部材B)が接しており、第xの部材には、第yの部材(例えば、部材C)が接しているものとしてモデル化する例について説明する。なお、このモデル化は、1組の部材同士が接している場合に制限される。
【0077】
図10は、部材Aの一つの面に2つの部材が位置する場合における、上記第2の方法によりモデル化を行う例を示す図である。この図10に示す例は、図10(A)に示すように、符号50で示すベースとなる構成材(部材A)の一つの面に、符号51で示す部材Bと、符号52で示す部材Cとがリング状に配置される例である。また、図10(B)は、図10(A)において、矢付線d1、d2方向の断面図を示している。
【0078】
このような構成において、図10(C)に示すように、ベースの構成材である部材Aに接する部材Bに対して、符号51’で示す仮想の部材B’を追加する。これにより、部材Aには、部材B(部材B’を含む)が接しており、部材B(より正確には部材B’)には、部材Cが接しているものとしてモデル化する。そして、部材Cと接している範囲の部材B’の伝達係数を、部材Cからの影響度が部材Aに透過するように設定する。これにより、部材Cから部材Bに対する影響度は、透過されて部材Aに作用することになる。
【0079】
より具体的には、部材B’において、□ドット4から受ける作用を□ドット2に伝達する伝達係数を定めておく。そして、部材Cから部材Aに作用する影響度を伝達する伝達係数として定めておくことにより、□ドット4が△ドット3から受ける作用を、□ドット4)に対応する□ドット2に対して伝達係数の値に応じて減衰させて(例えば、透過させて)伝達し、伝達された影響度に基づいて、□ドット2から○ドット1に対して作用させる。
【0080】
上記第1の方法又は第2の方法を使用することにより、図9(A)に示すように、部材Aの一つの面に、部材B、Cがリング状或いは縞状に配置されている場合においても、部材Aの面上に2つの部材B、Cが接していることを判定でき、部材B、Cの両方が部材Aに作用することによる影響を算出することができる。
【0081】
(建築部材の劣化情報の表示例)
次に、経時変化予測システムにおける、建築部材の劣化情報の表示方法について説明する。図11は、建築物における建築部材の劣化情報の表示例を示す図である。この図に示すように、いろいろな図面表現に特定して建築部材の劣化情報を視覚的に表示することができる。図11(A)はパース、図11(B)は立面図、図11(C)は内部パース、図11(D)は平面図である。それぞれの図の目的に合わせて、図11(A)に示すように、同じ建築部材12の設置位置によって、劣化の進み具合が異なることを色の違いによって表示することができる。ここで、建築部材12には、劣化の進み具合が異なる符号12aとして示す部分(建築部材12a)と、符号12bとして示す部分(建築部材12b)が示されている。建築部材12aと建築部材12bとでは、劣化の進み具合が異なることから、劣化の進み具合に応じた異なる色(異なる明るさ)で表示されている。
なお、各図では、建築部材12として、建築物の表面に配置された場合を例示しているが、図11(C)においては、経時変化予測システムでは、通常は見えない部分にある建築部材12の位置を表示できる。この図11(c)に示される建築部材12として、図11(A)において示された建築部材12aの部分が示されている。
【0082】
このように、本実施形態の経時変化予測システム101を用いることにより、建築物の劣化度合いが時間を追って各部材ごとに立体的に、あたかも実物のように表現されることにより、建物の維持保全の時期判断に資することができる。また、建築主や設計者への建物保全に関する情報のフィードバックが設計時点から可能となる。また、建物に使われているどんな細かい部品でもその位置と場所と劣化具合を示すことができる。また、建物内部の隠れた位置の部品部位まで劣化を表現でき、内部で進行する劣化が明確に表現できる。また、部品の位置や数がわかるので改修工事の規模を把握する精度に狂いがなくなる。
【0083】
(経時変化予測システムの構成例)
次に、経時変化予測システムの構成例について説明する。
図12は、実施形態に係わる経時変化予測システムの構成を示す図である。
この図11に示す経時変化予測システム101は、制御部102と、通信制御部103と、入出力インタフェース104と、代表点配置部105と、代表点選択部106と、状態変化算出部107と、経時変化予測部108と、表示制御部109と、データベース111と、を備える。また、この経時変化予測システム101には、表示部121と、端末装置122と、通信ネットワーク100とが接続される。
【0084】
制御部102は、経時変化予測システム101内の各部を制御し、経時変化予測システム101の全体を統括して制御することにより、経時変化予測システム101に必要とされる処理機能を実現する。
通信制御部103は、経時変化予測システム101と、通信ネットワーク100を介して接続される端末装置(不図示)との間の通信を制御する。
入出力インタフェース104は、経時変化予測システム101に接続される表示部121や、端末装置122とのインタフェースとなる処理部であり、表示部121や、端末装置122との間でデータの送受信を行う。
【0085】
代表点配置部105は、建築部材(建築部材の周囲の外気なども含む)の形状に応じて、前述した所定のドット配置ルール(1)及び(2)に従い代表点(ドット)を配置する処理を行う。
代表点選択部106は、代表点配置部105により配置された複数の代表点(ドット)の中から、経時変化予測を行う対象となる代表点を、この予測対象の代表点に影響を与える代表点とを選択する処理を行う。例えば、経時変化予測を行う対象となるシーリング10の代表点と、このシーリング10の代表点に影響を与える外気20の代表点(ドット)とを、所定のルールに従い選択する。
【0086】
状態変化算出部107は、代表点選択部106により選択された代表点、すなわち、経時変化予測を行う対象となる代表点を、この予測対象の代表点に影響を与える代表点との間において、それぞれの代表点に設定されパラメータ情報(変数)に基づいて、部材(例えば、シーリング10)の状態変化を算出する処理を行う。
状態変化算出部107は、領域内伝達量算出部107aを備える。
【0087】
領域内伝達量算出部107aは、図10(A)に示すように、ベースとなる構成材(部材A)の一つの面に、部材B、Cがリング状或いは縞状に配置されている場合に、部材Aに作用する影響による、部材Aの劣化を算出する。領域内伝達量算出部107aは、上記の場合のように、特定の面に複数の部材が接している状態、例えば、部材Aの面上に2つの部材B、Cが接している状態を判定し、部材B、Cの両方が部材Aに作用することによる劣化を算出する。
この領域内伝達量算出部107aにおいては、図10(C)に示すように、構成材Aに接する部材Bに対して、符号51’で示す仮想の部材B’を追加するようにモデル化を行う。これにより、構成材Aには、部材B(部材B’を含む)が接しており、構成材B(より正確には構成材B’)には、構成材Cが接しているものとする。そして、構成材Cと接している範囲の部材B’の伝達係数を、構成材Cからの影響度が構成材Aに透過するように設定する。これにより、構成材Cから構成材Bに対する影響度が透過されて構成材Aに作用することになり、構成材Aに対して構成材B、Cが及ぼす影響を算出することができる。
【0088】
経時変化予測部108は、状態変化算出部107により算出された建築部材(例えば、シーリング10)の状態により、領域の部材の経時変化(耐用年数等)を予測する処理を行う。
表示制御部109は、表示部121に表示させる画像を生成する。表示部121に表示させる画像として、表示制御部109は、3次元座標空間に置かれた構造部(建築物等)の構造モデルと、この構造部(建築物等)の構造モデルにおいて示される建築部材の代表点(或いは代表点とこの代表点を含む建築部材の領域)を重ねて合わせて表示させる処理を行う。なお、重ねて合わせて表示させる画像を生成する処理においては、3次元座標空間に置かれた構造部の構造モデルと、この構造部の構造モデルにおいて示される建築部材の代表点に代え、代表点とこの代表点を含む建築部材の領域を重ねて合わせて表示させてもよい。
構造部の構造モデルと、この構造部の構造モデルにおいて示される建築部材の代表点を重ねて合わせて表示させる処理において、建築部材の使用年数が耐用年数を超えている場合(或いは耐用年数に近づいている場合)に、この建築部材の代表点(或いは代表点とこの代表点を含む建築部材の領域)の色を、周辺とは異なる色(例えば、赤色等)で表示する。さらには、代表点(ドット)の色を段階的に変化させることにより、劣化の度合いを段階的に表示することができる。例えば、耐用年数が減少するにつれて、「緑→黄→橙→赤」などのようにドットの色を段階的に変化させて表示することができる。
【0089】
データベース111は、この経時変化予測システム101において参照する各種データを記憶する。例えば、データベース111は、経時変化の予測対象となる構造物(建築物等)に関する設計情報(例えば、建築物の構造、それぞれの部位・部材・材料等の個別仕様の情報)をCADデータ112として記憶する。
【0090】
また、データベース111は、パラメータ情報113を記憶する。このパラメータ情報は、各建築部材の代表点(例えば、シーリング10)や、周囲環境要素(例えば、外気20)の代表点に付与される情報である。
例えば、データベース111は、経時変化予測対象となる建築部材(シーリング10等)の代表点のパラメータ情報として、3次元座標空間上での位置情報「座標X,Y,Z」、建築部材の種別(或いは材料)の情報「材料名」、周囲の環境要素から影響を受ける性質の情報「性質a,b,・・・」等を記憶する。また、データベース111は、建築部材(シーリング10等)の周囲の環境要素(例えば、外気20)の代表点のパラメータ情報として、3次元座標空間上での位置情報「座標X,Y,Z」、劣化要素の種別の情報「外力(例えば、外気)」、建築部材に劣化を及ぼす性質(或いは、劣化を及ぼす程度)の情報「性質a,b,・・・」等を記憶する。
表示部121は、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶表示装置等であり、表示制御部109によって生成された画像の画像データを表示制御部109から受信する。表示部121は、受信した画像データに基づいて、3次元座標空間に置かれた構造部(建築物等)の構造モデルに、建築部材の代表点(或いは代表点とこの代表点を含む建築部材の領域)を重ねて合わせて表示する。この場合に、建築部材の使用年数が耐用年数を超えている場合(或いは耐用年数に近づいている場合)に、この建築部材の代表点(或いは代表点とこの代表点を含む建築部材の領域)を、周辺とは異なる色(例えば、赤色等)で表示する。
端末装置122は、ユーザによって入力された情報を検出する入力デバイスであり、例えば、キーボード、又は、マウス等である。
【0091】
なお、図12に示す経時変化予測システム101は内部にコンピュータシステムを有している。そして、上述した処理に関する一連の処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。また、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS等も含むものとする。
【0092】
そして、経時変化予測システム101内の制御部102、通信制御部103、入出力インタフェース104、代表点配置部105、代表点選択部106、状態変化算出部107、経時変化予測部108、表示制御部109における各処理の全部又は一部の処理は、CPU等の中央演算処理装置がROMやRAM等の主記憶装置に上記プログラムを読み出して、情報の加工、演算処理を実行することにより、実現されるものである。勿論、図12に示す経時変化予測システム101を構成する各処理部は専用のハードウェアにより実現されるものであってもよい。
【0093】
また、図13は、上述した経時変化予測システム101における処理の流れを示すフローチャートである。以下、この図13に示すフローチャートを参照して、その処理の流れについて説明する。
【0094】
以下に示される経時変化予測システム101における処理の初期状態として、データベース111には、経時変化予測の対象となる建築物の設計情報(CADデータ112)が予め記憶されているものとする。
最初に、この経時変化予測システム101は、ユーザによって端末装置122に入力された入力情報に基づいて、経時変化予測対象となる建築物(例えば、ビルディング等の建築物)を特定する。経時変化予測システム101は、特定された構造物(建築物等)に関する設計情報(CADデータ112)を、データベース111から読み込む(ステップS11)。
次に、経時変化予測対象となる建築物において、ユーザの操作により指定された、経時変化予測を行う建築部材の部材情報を端末装置122から取得する(ステップS12)。なお、この建築部材を指定する場合、経時変化予測システム101は、表示部121に建築物の構造モデルを表示させ、この表示画上で、ユーザに建築部材を指定させるようにしてもよい。
【0095】
経時変化予測システム101では、ユーザから経時変化予測を行う建築部材が指定された場合に、CADデータ112に基づいて、この指定された建築部材の位置を算出し、この建築部材に接する周辺の物体(塗装や、外気等)を判定する。その後、この建築部材と、周辺の物体(塗装や、外気等)の性質情報(パラメータ情報113)をデータベース111から読み込む(ステップS13)。
【0096】
その後、経時変化予測システム101内の代表点配置部105は、予測対象となる建築部材情報及びその建築部材に接する周辺の物体の形状情報に基づいて、これらの建築部材及び周辺の物体のそれぞれについて、所定のドット配置ルールに従い各領域ごと区分して代表点(ドット)を配置する(ステップS14)。また、代表点配置部105は、配置した代表点(ドット)に対して、部材の種類に応じてパラメータ情報を付与する。
【0097】
次に、代表点選択部106は、代表点配置部105により配置された領域ごとの代表点(ドット)の中から、経時変化予測を行う対象となる建築部材(例えば、シーリング10)の代表点と、この建築部材の代表点に影響を与える周辺の物体(例えば、外気20)の代表点(ドット)とを、所定のルールに従い選択する(ステップS15)。
次に、状態変化算出部107は、代表点選択部106により選択された建築部材(例えば、シーリング10)の代表点と、この建築部材の代表点に影響を与える周辺の物体(例えば、外気20)の代表点との間での相互作用(パラメータ情報)を基に、建築部材(例えば、シーリング10)の代表点の状態変化を算出する(ステップS16)。
そして、経時変化予測部108は、状態変化算出部107により算出された建築部材(例えば、シーリング10)の代表点の状態変化により、この建築部材の経時変化を予測する。例えば、建築部材(例えば、シーリング10)の耐用年数が尽きるまでの残りの年数(或いは月数)を判定する(ステップS17)。
【0098】
そして、表示制御部109は、3次元座標空間に置かれた構造物(建築物等)の構造モデルを表示部121に表示させるとともに、この構造モデルに代表点(経時変化予測対象となる代表点)を重ねて合わせて表示させる(ステップS18)。この表示の際に、建築部材(例えば、シーリング10)の使用年数が耐用年数を超えている場合(或いは耐用年数に近づいている場合)、表示制御部109は、この建築部材の代表点(或いは代表点とこの代表点を含む建築部材の領域)を、周辺とは異なる色(例えば、赤色等)で表示する。
【0099】
以上、実施形態について説明したが、経時変化予測システム101は、建築部材等の劣化度合いについて、時間の経過に従って部材ごとに立体的に示す表示画面により表示する。このように、経時変化予測システム101は、あたかも実物のように表示することにより、建物の維持保全の時期判断に資する情報を表示することができる。また、経時変化予測システム101は、表示した情報に基づいて、建築主や設計者に対しての建物保全に関する情報のフィードバックを設計時点から行うことが可能となる。また、経時変化予測システム101は、建築物に使われている細部の建築部材についてもその位置と場所と劣化具合とを表示することができる。さらに、経時変化予測システム101は、建物物の内部の隠れた位置の建築部品及び部位までの劣化状態を表示することができ、建築物の内部で進行する劣化状態を明確に表示できる。さらにまた、経時変化予測システム101は、維持保全を施すことが必要とされる建築部材の位置や数を算出することができるので、改修工事の規模を把握する際における、改修工事の見積もり精度を高めることができる。
【0100】
なお、ここで、本発明と上記実施形態との対応関係について補足して説明する。上記実施形態において、本発明における空間を占有する物体は、建築物(構造物)或いは該建築物の構成要素となる建築部材(例えば、シーリング10)が対応し、さらには、建築物或いは建築部材の周辺の環境要素(例えば、外気20)等が対応する。また、本発明における第1の物体は、例えば、建築部材であるシーリング10が対応し、本発明における第2の物体は、例えば、外気20が対応する。
【0101】
また、本発明における部材は、建築部材(例えば、シーリング10や塗装30)等の具体的な形状を有する部材が対応し、さらには、この建築部材に影響(劣化)を与える周囲環境要素(例えば、外気20)についても、代表点を与えるという意味で「部材」として扱う。また、本発明における第1の部材は、例えば、建築部材であるシーリング10が対応し、本発明における第2の部材は、例えば、外気20が対応する。
【0102】
(1)そして、上記実施形態において、経時変化予測システム101は、図1に示すように、構造物を構成する部材(シーリング10や外気20)に対応して定義される領域(シーリング10の領域や、外気20の領域)を単位として、該構造物を複数の領域の組み合わせとしてモデル化し、この複数の領域には、第1の部材(シーリング10)に対応する第1の領域(ドットAで囲まれるシーリング10の領域)と、第2の部材(外気20)に対応する第2の領域(ドットBで囲まれる外気20の領域)とが含まれており、第1の領域には、第2の領域に面した該第1の領域の表面に第1の代表点(例えば、●ドットA1)が設けられ、第2の領域には、第1の領域に面した該第2の領域の表面に第2の代表点(例えば、△ドットB1)が設けられており、第1の部材(シーリング10)と第2の部材(外気20)との間に作用する条件に応じた第1の部材(シーリング10)と第2の部材(外気20)との経時的な変化をそれぞれ推定するにあたり、第1の部材(シーリング10)と第2の部材(外気20)との間に作用する影響度を、この影響度を示す変数(パラメータ情報)によって定義することにより、第1の代表点(●ドットA1)と第2の代表点(△ドットB1)とにそれぞれ設定された変数(パラメータ情報)に基づいて、部材(シーリング10)の状態変化を代表点(●ドットA)ごとにそれぞれ算出する状態変化算出部107と、を備える。
【0103】
このような構成の経時変化予測システム101では、図1に示すように、構造物(建築物等)を複数の領域の組み合わせとしてモデル化する。そして、この複数の領域には第1の部材(シーリング10)に対応する第1の領域と、第2の部材(外気20)に対応する第2の領域とを含み、第1の領域には、第2の領域に面した表面に第1の代表点(例えば、●ドットA1)を設け、第2の領域には、第1の領域に面した表面に第2の代表点(例えば、△ドットB1)を設ける。そして、第1の代表点と第2の代表点との間に作用する影響度を変数(パラメータ情報)により定義し、この変数に基づいて、部材(シーリング10)の状態変化を代表点(●ドットA)ごとにそれぞれ算出する。
【0104】
これにより、経時変化予測システム101においては、経過時間に応じて周囲条件が変化する場合においても、構造物(建築物等)を構成する個々の部材(シーリング10)の経時的な劣化度合いを容易に算出することができる。また、個々の部材(シーリング10)の劣化の度合いを視覚的に明確にかつ分かりやすく表示することができる。このため、経時変化予測システム101においては、建築物等の劣化度合いを、時間を追って部材(シーリング10)ごとに立体的に、あたかも実物の建築物のように画像表示することにより、建築物の維持保全の時期判断に資することができる。
【0105】
(2)また、上記実施形態において、経時変化予測システム101は、状態変化算出部107において、上記影響度が作用する第1の代表点(例えば、●ドットA1)と第2の代表点(例えば、ドットB1)との組み合わせは、2つの代表点間の距離に応じて定められる。
このような構成の経時変化予測システム101では、例えば、図1に示すように、第1の代表点(例えば、●ドットA1)に劣化を与えるパラメータ情報を持つ外気20の△ドットBの中から、第1の代表点(●ドットA1)から所定の距離内にある最寄りのドットB(例えば、△ドットB1)を第2の代表点として選択する。
これにより、経時変化予測システム101では、第1の代表点(例えば、●ドットA1)に影響を与えるパラメータを持った直近の第2の代表点(例えば、△ドットB1)を選択し、その影響時間に応じて第1の代表点(●ドットA)の性質の変化を計算することができる。
【0106】
(3)また、上記実施形態において、経時変化予測システム101は、領域(シーリング10および外気20等)の形状に応じて定められる格子(グリッド)に従って配置される複数の代表点から、第1の代表点(例えば、●ドットA1)と第2の代表点(例えば、△ドットB1)をそれぞれ選択する代表点選択部106を備える。
このような構成の経時変化予測システム101においては、代表点選択部106が、領域(例えば、図5に示す円錐体41)の形状に応じて定められる格子(例えば、図5に示すグリッド43)に従って配置される複数の代表点(△ドットおよび□ドット)から、第1の代表点と第2の代表点をそれぞれ選択する。
これにより、経時変化予測システム101では、実際の建築物と同じ形状のモデル(代表点のモデル)を3次元の仮想空間上で構成することができる。そして、このモデル(代表点のモデル)の中から、劣化度合いを算出する第1の代表点と第2の代表点とをそれぞれ選択することができる。
【0107】
(4)また、上記実施形態において、経時変化予測システム101は、モデル化された領域(シーリング10の領域や、外気20の領域)の形状に応じた位置に上記代表点(例えば、図1に示す○ドットA及び△ドットB)を配置する第1の代表点配置部(代表点配置部105)を備える。
これにより、経時変化予測システム101では、代表点配置部105により、領域(シーリング10の領域や、外気20の領域)の形状に応じた位置に代表点(例えば、図1に示す○ドットA及び△ドットB)を配置することができる。
【0108】
(5)また、上記実施形態において、第1の代表点配置部(代表点配置部105)は、領域(シーリング10の領域や、外気20の領域)の形状に応じて定められる格子に従って上記複数の代表点を格子状に配置する。
このような構成の経時変化予測システム101では、第1の代表点配置部(代表点配置部105)は、領域の形状に応じて定められる格子に従って、複数の代表点を配置する。例えば、図5に示す円錐体41の場合は、格子(グリッド43)に従って、複数の代表点(△ドットおよび□ドット)を配置する。
これにより、経時変化予測システム101では、実際の建築物と同じ形状のモデル(代表点のモデル)を3次元の仮想空間上で構成することができる。
【0109】
(6)また、上記実施形態において、経時変化予測システム101は、状態変化算出部107により算出された部材(シーリング10)の状態により、部材(シーリング10)の経時変化を予測する経時変化予測部108を備える。
このような構成の経時変化予測システム101では、経時変化予測部108が、第1の代表点(例えば、●ドットA1)と第2の代表点(例えば、△ドットB1)とにそれぞれ設定された変数(パラメータ情報)に基づいて、部材(シーリング10)の状態変化を代表点(●ドットA)ごとに算出する。そして、経時変化予測部108が、部材(シーリング10)の経時的な変化を推定する。
これにより、経時変化予測システム101においては、建築物等の劣化度合いを、時間を追って部材ごとに予測することができる。
【0110】
(7)また、上記実施形態において、経時変化予測システム101は、3次元座標空間に置かれた複数の領域の組み合わせとしてモデル化されたモデルに、複数の領域と複数の代表点とを重ねて表示させる表示制御部109を備える。
これにより、構造物(建築物等)の立体モデルを表示部121に表示する際に、部材(建築部材)の代表点(或いは代表点とこの代表点を含む部材の領域)を重ねて表示させることができる。このため、建築物等の劣化度合いを、時間を追って部材ごとに立体的に、あたかも実物の建築物のように画像表示することができる。
【0111】
(8)また、上記実施形態において、状態変化算出部107は、図10(C)に示すように、第2の領域(部材B’)51’に面した第3の領域(部材C)52には、第2の領域(部材B’)51’に面した第3の領域(部材C)52の表面に第3の代表点(△ドット3)が設けられ、第2の領域(部材B’)51’には、第3の領域(部材C)52に面した該第2の領域(部材B’)51’の表面に第4の代表点(□ドット4)が設けられており、第3の領域(部材C)52から第2の部材(部材B’)51’に作用する条件に応じてそれぞれ変化する第1の部材(部材A)50と第2の部材(部材B’)51’の経時的な変化を推定するにあたり、第3の領域(部材C)52から第2の領域(部材B’)51’に作用する条件を、第3の代表点(△ドット3)と第4の代表点(□ドット4)との間に作用する影響度を示す変数(パラメータ情報)によって定義することにより、第1の代表点(○ドット1)と第2の代表点(□ドット2)とにそれぞれ設定された変数(パラメータ情報)に基づいて、部材(部材A)50の状態変化をそれぞれ算出する。
これにより、図10(A)に示すように、ベースとなる構成材(部材A)の一つの面に、部材B、Cがリング状或いは縞状に配置されている場合においても、部材Aの面上に2つの部材B、Cが接していることを判定でき、部材B及びCの両方が部材Aに作用することによる影響を算出することができる。
【0112】
(9)また、上記実施形態において、経時変化予測システム101は、図10(C)に示すように、第2の領域(部材B’)51’に面した第3の領域(部材C)52には、第2の領域(部材B’)51’に面した第3の領域(部材C)52の表面に第3の代表点(△ドット3)を設け、第2の領域(部材B’)51’には、第3の領域(部材C)52に面した該第2の領域(部材B’)51’の表面に第4の代表点(□ドット4)を設ける第2の代表点配置部(代表点配置部105)を備える。
これにより、図10(A)に示すように、ベースとなる構成材(部材A)の一つの面に、部材B、Cがリング状或いは縞状に配置されている場合においても、部材Aの面上に2つの部材B、Cが接していることを判定し、部材Aが部材B、Cから影響を受けるように代表点を配置することができる。
【0113】
(10)また、上記実施形態において、経時変化予測システム101は、図10(C)に示すように、第2の領域(部材B’)51’において、第4の代表点(□ドット4)から受ける作用を、第4の代表点(□ドット4)に対応する第2の代表点(□ドット2)に伝達する伝達係数が定められており、第3の領域(部材C)52から第1の領域(部材A)50に作用する影響度を伝達する伝達係数として定めることにより、第4の代表点(□ドット4)が第3の代表点(△ドット3)から受ける作用を、第4の代表点(□ドット4)に対応する第2の代表点(□ドット2)に対して伝達係数の値に応じて減衰させて伝達し、伝達された影響度に基づいて第2の代表点(□ドット2)から第1の代表点(○ドット1)に対して作用させる領域内伝達量算出部107aを備える。
これにより、図10(A)に示すように、ベースとなる構成材(部材A)の一つの面に、部材B、Cがリング状或いは縞状に配置されている場合においても、部材Aの面上に2つの部材B、Cが接していることを判定でき、部材B及びCの両方が部材Aに作用することによる影響を算出することができる。
【0114】
(11)また、上記実施形態において、図9に示すように、第1の領域(部材A)50において、第1の領域(部材A)50の1の面A1に面している第2の代表点(例えば、□ドットb2、b4)に対応する第5の代表点(例えば、○ドットa(b2)、a(b4))が第1の領域(部材A)の1の面A1に設けられており、状態変化算出部107は、第2の代表点(例えば、□ドットb2、b4)と、第5代表点(例えば、○ドットa(b2)、a(b4))とに基づいて、第1の部材(部材A)50の状態変化を算出する。
このような構成の経時変化予測システム101では、図9に示すように、第1の領域(部材A)50と第2の領域(部材B)51とが面する場合に、第2の領域(部材B)51の第2の代表点(例えば、□ドットb2、b4)に対応する第5の代表点(例えば、○ドットa(b2)、a(b4))を第1の領域(部材A)50の1の面A1に設ける。そして、状態変化算出部107は、第2の代表点(例えば、□ドットb2、b4)と、第5代表点(例えば、○ドットa(b2)、a(b4))とに基づいて、第1の部材(部材A)の状態変化を算出する。
これにより、第1の領域(部材A)と第2の領域(部材B)が面する場合に、第2の領域(部材B)51の代表点(例えば、□ドットb2、b4)に対応する代表点(例えば、○ドットa(b2)、a(b4))を第1の領域(部材A)50の面A1上に設けて、第1の部材(部材A)の状態変化を算出することができる。
【0115】
(12)また、上記実施形態において、図9に示すように、第2の代表点(例えば、□ドットb2、b4)との距離が所定の範囲に納まるように、第5の代表点(例えば、○ドットa(b2)、a(b4))が配置される。
これにより、第5の代表点(例えば、○ドットa(b2)、a(b4))を第2の代表点(例えば、□ドットb2、b4)に近い位置に配置することができる。
【0116】
(13)また、上記実施形態において、図9に示すように、第1の領域(部材A)の1の面A1に対して第2の代表点(例えば、□ドットb2、b4)に対する位置になるように、第5の代表点(例えば、○ドットa(b2)、a(b4))が配置される。
これにより、第5の代表点(例えば、○ドットa(b2)、a(b4))を第2の代表点(例えば、□ドットb2、b4)に対応する位置に配置することができる。
【0117】
(14)また、上記実施形態において、図9に示すように、第1の領域(部材A)において、第1の領域(部材A)の1の面A1に面している第2の代表点(例えば、□ドットb2、b4)に対応する第5の代表点(例えば、○ドットa(b2)、a(b4))を第1の領域(部材A)の1の面A1に設ける第3の代表点配置部(代表点配置部105)を備える。
これにより、第1の領域(部材A)と第2の領域(部材B)が面する場合に、第2の領域(部材B)の代表点(例えば、□ドットb2、b4)に対応する代表点(例えば、○ドットa(b2)、a(b4))を第1の領域(部材A)の面A1上に設けることができ、第1の部材(部材A)の状態変化を算出することができる。
【0118】
(15)また、上記実施形態において、図9に示すように、第1の領域(部材A)の1の面A1には、第2の領域(部材B)と第4の領域(部材C)が面しており、第4の領域(部材C)には、第1の領域側に第6の代表点(例えば、△ドットc2、c4)が設けられており、第1の領域(部材A)には、第4の領域(部材C)に面した該第1の領域の表面A1に第7の代表点(例えば、○ドットa(c2)、a(c4))が設けられており、状態変化算出部107は、第7の代表点(例えば、○ドットa(c2)、a(c4))と、第6代表点(例えば、△ドットc2、c4)とに基づいて、第1の部材Aの状態変化を算出する。
このような構成の経時変化予測システム101では、図9に示すように、第1の部材Aの1の面A1(○ドットa1〜a4で形成される面)に複数の部材B及びCが接する場合に、複数の部材B及びCのそれぞれにおいて第1の部材Aに接する面上に代表点(例えば、b4、c4、c2、b2)を設定する。また、第1の部材Aの1の面A1上において、部材B及びCの代表点として設定されたドット(例えば、b4、c4、c2、b2)と対応する位置に、第1の部材Aの代表点(例えば、ドットa(b4)、a(c4)、a(c2)、a(b2))を設定する。
これにより、部材Aは部材B及びCの両方から影響を受けるように代表点が設定される。このため、部材Aの一つの面に、部材B、Cがリング状或いは縞状に配置されている場合においても、部材Aの面上に2つの部材B、Cが接していることを判定でき、部材B及びCの両方が部材Aに作用することによる影響を算出することができる。
【0119】
(16)また、上記実施形態において、第1の領域の1の面A1には、第2の領域(部材B)と第4の領域(部材C)が面しており、第4の領域(部材C)には、第1の領域側に第6の代表点(例えば、△ドットc2、c4)を設け、第1の領域(部材A)には、第4の領域(部材C)に面した該第1の領域の表面に第7の代表点(例えば、○ドットa(c2)、a(c4))を設ける第4の代表点配置部(代表点配置部105)を備える。
このような構成の経時変化予測システム101では、第4の代表点配置部(代表点配置部105)は、図9に示すように、第1の部材Aの1の面A1(○ドットa1〜a4で形成される面)に複数の部材B及びCが接する場合に、複数の部材B及びCのそれぞれにおいて第1の部材Aに接する面上に代表点(例えば、b4、c4、c2、b2)を設定する。また、第1の部材Aの1の面A1上において、部材B及びCの代表点として設定されたドット(例えば、b4、c4、c2、b2)と対応する位置に、第1の部材Aの代表点(例えば、ドットa(b4)、a(c4)、a(c2)、a(b2))を設定する。なお、第4の代表点配置部(代表点配置部105)は、複数の部材B及びCのうちの第kの部材(例えば、部材B)の代表点を検出し、該第kの部材(例えば、部材B)の代表点の検出を終えた段階で、代表点が未検出である他の部材(例えば、部材C)が存在するか否かを判定し、該判定により存在すると判定された場合は、該代表点が未検出である第(k+1)の部材(例えば、部材C)に対して代表点を検出し、この代表点の検出手順を代表点の検出が未検出である部材がなくなるまで繰り返す。
これにより、部材Aは部材B及びCの両方から影響を受けるように代表点が設定される。このため、部材Aの一つの面に、部材B、Cがリング状或いは縞状に配置されている場合においても、部材Aの面上に2つの部材B、Cが接していることを判定でき、部材B及びCの両方が部材Aに作用することによる影響を算出することができる。
【0120】
(17)また、上記実施形態において、経時変化予測システム101は、図1に示すように、空間を専有する物体(シーリング10および外気20)に対応して定義される領域を単位として、該物体(シーリング10および外気20)を複数の領域の組み合わせとしてモデル化し、上記複数の領域には、第1の物体(シーリング10)に対応する第1の領域(ドットAで囲まれるシーリング10の領域)と、第2の物体(外気20)に対応する第2の領域(ドットBで囲まれる外気20の領域)とが含まれており、第1の領域(シーリング10の領域)には、第2の領域(外気20の領域)に面した第1の領域の表面に第1の代表点(例えば、●ドットA1)が設けられ、第2の領域(外気20の領域)には、第1の領域(シーリング10の領域)に面した該第2の領域の表面に第2の代表点(例えば、△ドットB1)が設けられており、第1の物体(シーリング10)と第2の物体(外気20)との間に作用する条件に応じた第1の物体(シーリング10)と第2の物体(外気20)の経時的な変化をそれぞれ推定するにあたり、第1の物体(シーリング10)と第2の物体(外気20)との間に作用する影響度を、影響度を示す変数(パラメータ情報)によって定義することにより、第1の代表点(ドットA1)と第2の代表点(ドットB1)とにそれぞれ設定された変数(パラメータ情報)に基づいて、物体(シーリング10)の状態変化を代表点(●ドットA)ごとにそれぞれ算出する状態変化算出部107と、を備える。
【0121】
このような構成の経時変化予測システム101では、図1に示すように、物体(建築物等)を複数の領域の組み合わせとしてモデル化する。そして、この複数の領域には、第1の物体(シーリング10)に対応する第1の領域と、第2の物体(外気20)に対応する第2の領域とを含み、第1の領域には、第2の領域に面した表面に第1の代表点(例えば、●ドットA1)を設け、第2の領域には、第1の領域に面した表面に第2の代表点(例えば、△ドットB1)を設ける。そして、第1の代表点と第2の代表点との間に作用する影響度を変数(パラメータ情報)により定義し、この変数に基づいて、物体(シーリング10)の状態変化を代表点(●ドットA)ごとにそれぞれ算出する。
【0122】
これにより、経時変化予測システム101においては、物体(建築物等)を構成する個々の部材(シーリング10)の経時的な劣化度合いを容易に算出することができる。また、個々の部材(シーリング10)の劣化の度合いを視覚的に明確にかつ分かりやすく表示することができる。このため、経時変化予測システム101においては、建築物等の劣化度合いを、時間を追って各部材(シーリング10)ごとに立体的に、あたかも実物の建築物のように画像表示することにより、建築物の維持保全の時期判断に資することができる。
【0123】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本実施形態の経時変化予測システム101を用いることにより、経過時間に応じて周囲条件が変化する場合において、構造物を構成する個々の部材の経時的な劣化度合いを算出することができる。
また、経時変化予測システム101により、建築物の劣化度合いが時間を追って各部材ごとに立体的に、あたかも実物のように表現されることにより、建物の維持保全の時期判断に資することができる。また、建築物の設計段階において経時変化予測システム101を適用することにより、建築主や設計者への建物保全に関する情報のフィードバックが設計段階から可能となる。
また、建物に使われているどんな細かい部品でもその位置と場所と劣化具合を示すことができる。例えば、建物内部にあたる隠れた位置に設けられる部品の劣化を、その劣化が生じた部位まで表現でき、内部で進行する劣化を明確に表現できる。例えば、進行する劣化に応じて交換が必要とされる部品の位置や数がわかるので、改修工事の規模を把握する精度に狂いがなくなる。
さらには、本実施形態の経時変化予測システム101を、BIM(ビルディングインフォメーションモデル)と組み合わせてもよい。
経時変化予測システム101は、BIMに基づいて生成されている建築物等の管理データに基づいて、経過時間に応じて周囲条件が変化する場合において、構造物を構成する個々の部材の経時的な劣化度合いを算出することができる。また、経時変化予測システム101によって生成した情報を、BIMによる建築物等の管理データとしてもよい。また、経時変化予測システム101を、BIMに基づいた情報を処理するBIM(ビルディングインフォメーションモデル)ソフトウェアと統合して、BIMソフトウェアの処理の一部としてもよい。
このように、経時変化予測システム101を、BIM(ビルディングインフォメーションモデル)と組み合わせることにより、構造物を構成する個々の部材の経時的な劣化度合いを算出する精度を高め、効率よく建築物等を管理することができる。
【0124】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、経時変化予測システムは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。
【符号の説明】
【0125】
10…シーリング
11…スチール(シーリング)
11A…入隅
12、12a、12b…建築部材(部材)
20…外気
30…塗装
41…円錐体
42…直方体
43…グリッド(格子)
100…通信ネットワーク
101…経時変化予測システム
102…制御部
103…通信制御部
104…入出力インタフェース
105…代表点配置部
106…代表点選択部
107…状態変化算出部
107a…領域内伝達量算出部
108…経時変化予測部
109…表示制御部
111…データベース
112…CADデータ
113…パラメータ情報
121…表示部
122…端末装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物を構成する部材に対応して定義される領域を単位として、該構造物を複数の前記領域の組み合わせとしてモデル化し、
前記複数の領域には、第1の部材に対応する第1の領域と、第2の部材に対応する第2の領域とが含まれており、
前記第1の領域には、前記第2の領域に面した該第1の領域の表面に第1の代表点が設けられ、
前記第2の領域には、前記第1の領域に面した該第2の領域の表面に第2の代表点が設けられており、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に作用する条件に応じた前記第1の部材と前記第2の部材の経時的な変化をそれぞれ推定するにあたり、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に作用する影響度を、前記影響度を示す変数によって定義することにより、前記第1の代表点と前記第2の代表点とにそれぞれ設定された前記変数に基づいて、前記部材の状態変化を前記代表点ごとにそれぞれ算出する状態変化算出部
を備えることを特徴とする経時変化予測システム。
【請求項2】
前記状態変化算出部において、
前記影響度が作用する前記第1の代表点と前記第2の代表点との組み合わせは、2つの前記代表点間の距離に応じて定められる
ことを特徴とする請求項1に記載の経時変化予測システム。
【請求項3】
前記領域の形状に応じて定められる格子に従って配置される複数の前記代表点から、前記第1の代表点と前記第2の代表点をそれぞれ選択する代表点選択部
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の経時変化予測システム。
【請求項4】
前記モデル化された前記領域の形状に応じた位置に前記代表点を配置する第1の代表点配置部
を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の経時変化予測システム。
【請求項5】
前記第1の代表点配置部は、
前記領域の形状に応じて定められる格子に従って前記複数の代表点を格子状に配置する
ことを特徴とする請求項4に記載の経時変化予測システム。
【請求項6】
前記状態変化算出部により算出された前記部材の状態により、前記部材の経時変化を予測する経時変化予測部
を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の経時変化予測システム。
【請求項7】
3次元座標空間に置かれた前記複数の領域の組み合わせとしてモデル化されたモデルに、前記複数の領域と複数の前記代表点とを重ねて表示させる表示制御部
を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の経時変化予測システム。
【請求項8】
前記第2の領域に面した第3の領域には、前記第2の領域に面した第3の領域の表面に第3の代表点が設けられ、
前記第2の領域には、前記第3の領域に面した該第2の領域の表面に第4の代表点が設けられており、
前記状態変化算出部は、
前記第3の領域から前記第2の領域に作用する条件に応じてそれぞれ変化する前記第1の部材と前記第2の部材の経時的な変化を推定するにあたり、
前記第3の領域から前記第2の部材に作用する条件を、
前記第3の代表点と前記第4の代表点との間に作用する影響度を示す変数によって定義することにより、前記第1の代表点と前記第2の代表点とにそれぞれ設定された前記変数に基づいて、前記部材の状態変化をそれぞれ算出する
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の経時変化予測システム。
【請求項9】
前記第2の領域に面した前記第3の領域には、前記第2の領域に面した前記第3の領域の表面に前記第3の代表点を設け、前記第2の領域には、前記第3の領域に面した該第2の領域の表面に前記第4の代表点を設ける第2の代表点配置部
を備えることを特徴とする請求項8に記載の経時変化予測システム。
【請求項10】
前記第2の領域において、
前記第4の代表点から受ける作用を、前記第4の代表点に対応する前記第2の代表点に伝達する伝達係数が定められており、
前記第3の領域から前記第1の領域に作用する影響度を伝達する前記伝達係数として定めることにより、前記第4の代表点が前記第3の代表点から受ける作用を、前記第4の代表点に対応する前記第2の代表点に対して前記伝達係数の値に応じて減衰させて伝達し、前記伝達された影響度に基づいて前記第2の代表点から前記第1の代表点に対して作用させる領域内伝達量算出部
を備えることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の経時変化予測システム。
【請求項11】
前記第1の領域において、前記第1の領域の1の面に面している前記第2の代表点に対応する第5の代表点が前記第1の領域の1の面に設けられており、
前記状態変化算出部は、
前記第2の代表点と、前記第5代表点とに基づいて、前記第1の部材の状態変化を算出する
ことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の経時変化予測システム。
【請求項12】
前記第2の代表点との距離が所定の範囲に納まるように、前記第5の代表点が配置される
ことを特徴とする請求項11に記載の経時変化予測システム。
【請求項13】
前記第1の領域の1の面に対して前記第2の代表点に対する位置になるように、前記第5の代表点が配置される
ことを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の経時変化予測システム。
【請求項14】
前記第1の領域において、前記第1の領域の1の面に面している前記第2の代表点に対応する前記第5の代表点を前記第1の領域の1の面に設ける第3の代表点配置部
を備えることを特徴とする請求項11から請求項13に記載の経時変化予測システム。
【請求項15】
前記第1の領域の1の面には、前記第2の領域と第4の領域が面しており、
前記第4の領域には、前記第1の領域側に第6の代表点が設けられており、
前記第1の領域には、前記第4の領域に面した該第1の領域の表面に第7の代表点が設けられており、
前記状態変化算出部は、
前記第7の代表点と、前記第6代表点とに基づいて、前記第1の部材の状態変化を算出する
ことを特徴とする請求項10から請求項14のいずれか1項に記載の経時変化予測システム。
【請求項16】
前記第1の領域の1の面には、前記第2の領域と第4の領域が面しており、
前記第4の領域には、前記第1の領域側に第6の代表点を設け、
前記第1の領域には、前記第4の領域に面した該第1の領域の表面に第7の代表点を設ける第4の代表点配置部
を備えることを特徴とする請求項10から請求項15のいずれか1項に記載の経時変化予測システム。
【請求項17】
空間を専有する物体に対応して定義される領域を単位として、該物体を複数の前記領域の組み合わせとしてモデル化し、
前記複数の領域には、第1の物体に対応する第1の領域と、第2の物体に対応する第2の領域とが含まれており、
前記第1の領域には、前記第2の領域に面した該第1の領域の表面に第1の代表点が設けられ、
前記第2の領域には、前記第1の領域に面した該第2の領域の表面に第2の代表点が設けられており、
前記第1の物体と前記第2の物体との間に作用する条件に応じた前記第1の物体と前記第2の物体の経時的な変化をそれぞれ推定するにあたり、
前記第1の物体と前記第2の物体との間に作用する影響度を、前記影響度を示す変数によって定義することにより、前記第1の代表点と前記第2の代表点とにそれぞれ設定された前記変数に基づいて、前記物体の状態変化を前記代表点ごとにそれぞれ算出する状態変化算出部を備える
ことを特徴とする経時変化予測システム。
【請求項18】
構造物を構成する部材に対応して定義される領域を単位として、該構造物を複数の前記領域の組み合わせとしてモデル化し、
前記複数の領域には、第1の部材に対応する第1の領域と、第2の部材に対応する第2の領域とが含まれており、
前記第1の領域には、前記第2の領域に面した該第1の領域の表面に第1の代表点が設けられ、
前記第2の領域には、前記第1の領域に面した該第2の領域の表面に第2の代表点が設けられており、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に作用する条件に応じた前記第1の部材と前記第2の部材の経時的な変化をそれぞれ推定するにあたり、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に作用する影響度を、前記影響度を示す変数によって定義することにより、前記第1の代表点と前記第2の代表点とにそれぞれ設定された前記変数に基づいて、前記部材の状態変化を前記代表点ごとにそれぞれ算出する過程を備える
ことを特徴とする経時変化予測方法。
【請求項19】
経時変化予測システムが備えるコンピュータに、
構造物を構成する部材に対応して定義される領域を単位として、該構造物を複数の前記領域の組み合わせとしてモデル化し、
前記複数の領域には、第1の部材に対応する第1の領域と、第2の部材に対応する第2の領域とが含まれており、
前記第1の領域には、前記第2の領域に面した該第1の領域の表面に第1の代表点が設けられ、
前記第2の領域には、前記第1の領域に面した該第2の領域の表面に第2の代表点が設けられており、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に作用する条件に応じた前記第1の部材と前記第2の部材の経時的な変化をそれぞれ推定するにあたり、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に作用する影響度を、前記影響度を示す変数によって定義することにより、前記第1の代表点と前記第2の代表点とにそれぞれ設定された前記変数に基づいて、前記部材の状態変化を前記代表点ごとにそれぞれ算出する状態変化算出部
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−37431(P2013−37431A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170989(P2011−170989)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】