説明

経時的変性相を備える水分硬化組成物

本発明は、拡張した作業段階を有し、それに続き短時間で完全に硬化する硬化性組成物を提供することを目的とする。これは、下記の成分を含有する硬化性組成物の提供により達成される:(a)末端基として、少なくとも1つの反応性シリル基を有する少なくとも1つのポリエーテルおよび/または少なくとも1つのポリアクリル酸エステル;(b)少なくとも1つの有機スズ化合物;および(c)スズおよびケイ素原子を含まず、少なくとも2つの官能基を有する少なくとも1つの化合物。前記官能基は、下記から選択される:カルボキシ基、カルボニル基、ヒドロキシ基または芳香族環系の一部である窒素原子。さらに、本発明は、前記組成物の製造方法および前記組成物の接着剤、封止剤またはコーティング材としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリル末端ポリマーに基づく組成物に関する。具体的には、遅延型硬化であるこの種の組成物、その製造方法、ならびに接着剤、封止剤およびコーティング組成物におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
長年の間、一成分水分硬化接着剤および封止剤は、多くの技術用途において重要な役割を果たしてきた。遊離イソシアネート基を有するポリウレタン接着剤および封止剤、ならびにジメチルポリシロキサンに基づく従来のシリコーン接着剤および封止剤に加えて、近年、いわゆるシラン変性接着剤および封止剤の使用も増えてきている。ポリウレタン接着剤および封止剤と比較して、シラン変性接着剤および封止剤はイソシアネート基を含まない、特にモノマージイソシアネートを含まないという利点を有している。さらに、シラン変性接着剤および封止剤は、プライマーによる表面前処理をしていない種々の基材に対する様々な接着性により識別される。
【0003】
このように、反応性シリル基を含むポリマー系は、原則として既知である。大気中水分の存在下、加水分解性置換基を含むシリル基を有するポリマーは、室温であっても互いに縮合することができ、加水分解基を除去する。加水分解性置換基を有するシリル基の含量およびこれらのシリル基の構造に応じて、主に長鎖ポリマー(熱可塑性)の、比較的幅広網目の三次元網状構造(エラストマー)または高架橋結合系(熱硬化性)がこの工程の間に形成される。このポリマーは、典型的には有機骨格、例えばその末端にアルコキシシリル基またはアシルオキシシリル基を有する有機骨格を有する。この有機骨格は、例えばポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテルなどであり得る。
【0004】
結合後の組成物の急速な硬化を可能にするために、一般的に、硬化触媒(通常、例えばスズまたは鉄などに基づく金属オルガニルである)を処方中に加える。一方で、2つの基材間に安定な接合を迅速にもたらすことができるため、組成物の急速な硬化は望ましい。他方で、高速硬化系は短い加工時間しかないため、塗布直後に修正する機会(これは、場合によりユーザーに非常に要求される)は短時間だけである。したがって、適当な加工時間の後に急速な硬化をもたらすことが望ましい。
【0005】
独国特許出願第1956672号は、ポリイソシアネートおよびポリヒドロキシ化合物に基づき、β−ジカルボニル化合物、α−ヒドロキシケトン、縮合芳香族β−ヒドロキシケトンおよび窒素複素環、縮合芳香族β−ヒドロキシ化合物を添加した多成分接着剤を記載する。しかしながら、このような組成物は、例えば、接着範囲または弾性特性などの特定の特性において欠点を示し得る。
【0006】
欧州特許出願第0549210号は、加水分解性シリル基を有するポリマーを含み、それにより熱成形後に後硬化が達成される熱成形組成物を記載する。このポリマーは、オレフィン系不飽和シランが重合したポリオレフィンである。熱形成する前の脆化を防止するために、シラン縮合触媒に加えて、少なくとも1つのヒドロキシ基に加えて少なくとも1つのアミノ基またはカルボキシ基を有する官能性有機化合物を加える。欧州特許出願第0549210号の組成物は成形物品(例えばケーブルシース)をもたらすが、特に、この組成物の弾性は低いため、接着剤または封止剤には適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願第1956672号明細書
【特許文献2】欧州特許出願第0549210号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、幅広い接着性および良好な弾性値を、他の有利な特性とともに併せ持つ接着剤、封止剤およびコーティング組成物に対する要求が存在する。それ故に、本発明の課題は、幅広い接着性および良好な弾性値を備え、ユーザーフレンドリーな長時間の加工段階の後、できる限り短時間で完全な硬化に達する接着剤、封止剤およびコーティング組成物の基礎を形成する硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題の解決法は、特許請求の範囲から導くことができる。それは、成分として、
(a)一般式(I):
−A−R−SiXYZ (I)
〔式中、Aは2価の結合基であり、Rは、場合によりヘテロ原子を含む炭素数1〜12の2価の炭化水素基であり、X、Y、Zは、互いに独立して、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基またはC〜Cアシルオキシ基であり、少なくとも1つの基がC〜Cアルコキシ基またはC〜Cアシルオキシ基であり、nは0または1である〕
で示される少なくとも1つの末端基を有する少なくとも1つのポリエーテルおよび/または少なくとも1つのポリアクリル酸エステル、および
(b)少なくとも1つの有機スズ化合物、
(c)スズおよびケイ素原子を含まず、それぞれ、カルボキシ基、カルボニル基、ヒドロキシ基および本来芳香族環系の一部である窒素原子から選択される少なくとも2つの官能基を有する少なくとも1つの化合物
を含む硬化性組成物から本質的になる。
【0010】
そのような組成物は、種々の基材に対して優れた接着性を示し、硬化後、その良好な弾性により高い弾性接着を可能にし、塗布後、長期の表皮形成時間を有するがその後完全な硬化が促進され、ユーザーに修正をするための十分な時間を与える。したがって、そのような組成物により形成された接着は、硬化後、良好な強度値を示す(これは安定で弾力性のある結合を意味する)。
【0011】
本発明によれば、硬化性組成物は、好ましくは成分として、
(a)一般式(I):
−A−R−SiXYZ (I)
〔式中、Aは2価の結合基であり、Rは、場合によりヘテロ原子を含む炭素数1〜12の2価の炭化水素基であり、X、Y、Zは、互いに独立して、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基またはC〜Cアシルオキシ基であり、少なくとも1つの基がC〜Cアルコキシ基またはC〜Cアシルオキシ基であり、nは0または1である〕
で示される少なくとも1つの末端基を有する少なくとも1つのポリエーテルおよび/または少なくとも1つのポリアクリル酸エステル、および
(b)少なくとも1つの有機スズ化合物、
(c)スズおよびケイ素原子を含まず、それぞれ、カルボキシ基、カルボニル基、ヒドロキシ基および本来芳香族環系(本来芳香性であるこの環系は唯一のヘテロ原子として1つの窒素原子を含む)の一部である窒素原子から選択される少なくとも2つの官能基を有する少なくとも1つの化合物
を含む。
【0012】
特に好ましくは、成分として、
(a)一般式(I):
−A−R−SiXYZ (I)
〔式中、Aは2価の結合基であり、Rは、場合によりヘテロ原子を含む炭素数1〜12の2価の炭化水素基であり、X、Y、Zは、互いに独立して、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基またはC〜Cアシルオキシ基であり、少なくとも1つの基がC〜Cアルコキシ基またはC〜Cアシルオキシ基であり、nは0または1である〕
で示される少なくとも1つの末端基を有する少なくとも1つのポリエーテルおよび/または少なくとも1つのポリアクリル酸エステル、および
(b)少なくとも1つの有機スズ化合物、
(c)スズおよびケイ素原子を含まず、1つ目の基が、カルボキシ基、カルボニル基、ヒドロキシ基から選択され、好ましくはヒドロキシ基であり、かつ、2つ目の基が本来芳香族環系(この環系は好ましくは唯一のヘテロ原子として1つの窒素原子を含む)の一部である窒素原子またはカルボキシル基のいずれかである少なくとも2つの官能基を有する少なくとも1つの化合物
を含む硬化性組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
硬化性組成物は、物理的または化学的な方法により硬化し得る物質または複数の物質の混合物であると理解される。これらの化学的または物理的方法としては、例えば、熱、光または他の電磁放射の形態によるエネルギー供給、または単に大気中の水分、水若しくは反応性成分と接触させることが含まれる。
【0014】
ポリエーテルは、その有機繰り返し単位が主鎖にC−O−Cエーテル官能基を含むポリマーであると理解される。したがって、このポリエーテルは、例えばセルロースエーテル、デンプンエーテルおよびビニルエーテルポリマーなどの側鎖エーテル基を有するポリマーは含まない。同様に、例えばポリオキシメチレン(POM)などのポリアセタールは、通常、ポリエーテルに含まれない。
【0015】
ポリアクリル酸エステルは、アクリル酸エステルに基づくポリマーであると理解され、したがって、ポリアクリル酸エステルは繰り返し単位として、構造モチーフ:−CH−CH(COOR)−〔式中Rは、直鎖、分枝、環状のおよび/または官能性置換基含有のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基または2−ヒドロキシエチル基を表す〕を有する。
【0016】
本発明の組成物は、好ましくは、成分(a)においてポリエーテルを含む。主鎖としてポリエーテルを含むポリマーは、末端基のみでなくポリマー主鎖にも柔軟構造および弾力構造を有する。それ故に、優れた弾力特性を有する組成物を生成することができる。ポリエーテルは、その主鎖において柔軟であるだけでなく強固でもある。したがって、例えば、ポリエーテルは水やバクテリアにより攻撃されたり分解されたりしない。本発明の範囲において、入手可能性の観点から、ポリエチレンオキシドおよび/またはポリプロピレンオキシドに基づくポリエーテルを成分(a)において使用することが特に好ましい。
【0017】
好ましくは、成分(a)は、4,000〜100,000g/モルの、好ましくは8,000〜50,000g/モルの、特に好ましくは10,000〜30,000g/モルの、特に15,000〜25,000g/モルの分子量Mを有する少なくとも1つのアルコキシ−および/またはアシルオキシシラン−末端ポリエーテルを含む。この分子量Mは、ポリマーの数平均分子量であると理解される。本発明の意味において、数平均分子量Mおよび重量平均分子量Mは、標準としてポリスチレンを用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される。ゲル浸透クロマトグラフィーよるこの方法は、当業者に既知である。対応する組成物が、粘度(加工のし易さ)、強度および弾力性のバランスのとれた比率を有するため、例示した分子量が特に有利である。この組み合わせは、12,000〜20,000、特に14,000〜18,000の範囲の分子量(M)においてとりわけ有利に認められる。
【0018】
本発明の範囲において、好ましくは、M/M比が1.5未満である少なくとも1つのポリエーテルが成分(a)に含まれる。多分散性とも称されるM/M比は、分子量分布の幅を表し、多分散性ポリマーの個々の鎖の種々の重合度の幅を表す。多くのポリマーおよび重縮合物に関して、約2の値が多分散性に当たる。完全な単分散は値1を示すであろう。本発明の範囲において好ましい1.5未満の多分散性は、比較的狭い分子量分布を示し、分子量に関連した特性の特異性(例えば粘度)を示す。特に好ましくは、成分(a)の少なくとも1つのアルコキシ−および/またはアシルオキシシラン−末端ポリエーテルが1.3未満の多分散性(M/M)を有する。
【0019】
好ましくは成分(a)において用いられるポリエーテルは、さらに好ましくは、ポリエーテル鎖の末端の少数の二重結合により特徴付けられる。このいわゆる末端不飽和は、低分子量ジオールとアルキレンオキシドの重合における望ましくない副反応から生じる。
その結果、鎖の片末端のみでシリル化され得るため鎖の片末端を介してのみ架橋する一定数のモノヒドロキシポリエーテルとなる。これは、ポリエーテルおよびそれにより生成される組成物の官能性に悪影響を及ぼす。末端不飽和結合が少数であるポリエーテルは、例えばいわゆる複合金属シアン化物触媒(DMC触媒)により生成することができる。成分(a)は、ASTM D4671の方法により測定された0.07meq/g未満の末端不飽和を有する少なくとも1つのポリエーテルを好ましくは含む。
【0020】
成分(a)のポリエーテルおよび/またはポリアクリル酸エステルは、一般式(I):
−A−R−SiXYZ (I)
で示される少なくとも1つの末端基を有する。
【0021】
ここで、2価の結合基Aは、末端基の基Rを有するアルコキシ−および/またはアシルオキシシラン末端ポリマーのポリマー骨格に結合する2価の化学基として理解される。2価の結合基は、例えばアルコキシ−および/またはアシルオキシシラン−末端ポリエーテルおよび/またはポリアクリル酸エステルポリマーの生成の間に、例えば、ヒドロキシ基により官能化されたポリエーテルとイソシアナトシランの反応によりウレタン基として形成され得る。この場合、2価の基は、基礎となるポリマー骨格にみられる構造的特徴と区別できる場合と区別できないか場合がある。例えば、ポリマー骨格の繰り返し単位の結合部位と一致している場合は、後者(区別できない場合)である。
【0022】
Aは、好ましくは、アミド基、カルバミド基、尿素基、イミノ基、カルボキシレート基、カルバモイル基、アミジノ基、炭酸塩基、スルホン酸基若しくはスルフィネート基、または酸素原子若しくは窒素原子である。結合基Aは、骨格ポリマーと−R−SiXYZ配列をもつ反応生成物との反応によるシリル末端ポリマーの生成の間に形成することができる。
【0023】
特に好ましい結合基Aは、プレポリマーの特定の官能基と、別の官能基を有する有機シランとの反応により得ることができるウレタン基および尿素基である。ウレタン基は、例えば、ポリマー骨格が末端ヒドロキシ基を含み、イソシアナトシランを他の成分として使用する、または逆に末端イソシアネート基を有するポリマーを末端ヒドロキシ基含有アルコキシシランと反応させる場合に形成することができる。同様に、尿素基は、(シランまたはポリエーテルおよび/またはポリアクリル酸エステルのいずれかにおいて)各反応物に存在する末端イソシアネート基と反応する末端第1級若しくは第2級アミノ基を使用する場合に得ることができる。これは、末端イソシアネート基含有ポリエーテルおよび/またはポリアクリス酸エステル若しくは末端アミノ基置換ポリエーテルおよび/またはポリアクリル酸エステルを有するアミノシランのいずれかを、イソシアネートシランと反応させることを意味する。ウレタン基および尿素基は、ポリマー鎖および架橋結合ポリマー全体の強度を有利に増強させる。
【0024】
nは0または1であり、すなわち、2価の結合基Aはポリマー骨格と基Rを結合し(n=1)、またはポリマー骨格は基Rと直接結合する(R=0)。基Rは、場合によりヘテロ原子を含む1〜12個の炭素原子を有する2価の炭化水素基である。ヘテロ原子としては、例えば、酸素(O)または窒素(N)が含まれ得る。この炭化水素基は、例えば、直鎖のまたは分枝鎖の、または環状の、置換若しくは未置換アルキレン基であることができる。この炭化水素基は、飽和または不飽和であってよい。
【0025】
Rは、好ましくは、炭素数1〜6の炭化水素基である。組成物の硬化速度は、ポリマー骨格とシリル基との間に結合を形成する炭化水素基の長さに影響を受け得る。より好ましくは、Rはメチレン基、エチレン基またはn−プロピレン基である。特に好ましくは、メチレン基およびn−プロピレン基を使用する。ポリマー骨格への結合として、メチレン基を含むアルコキシシラン末端化合物(いわゆるα−シラン)は、特に高い反応性の末端シリル基を有しており、そのようなポリマーに基づく調製物のより短い硬化時間およびそれによる非常に速い硬化をもたらす。
【0026】
一般的に、連結する炭化水素鎖の延長は、ポリマーの反応性の低下を引き起こす。特に、γ−シラン(結合として非分枝プロピレン基を含む)は、必須反応性(許容できる硬化時間)と遅延性硬化(開放時間、結合後の修正可能性)間のバランスのとれた比率を有する。それ故に、α−およびγ−アルコキシシラン末端構造の計画的な組み合わせにより、系の硬化速度に要望通りの影響を与えることができる。
【0027】
X、YおよびZは、互いに独立して、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基またはC〜Cアシルオキシ基である。ここで、X、Y、Zの少なくとも1つの基は加水分解性基、すなわち、C〜Cアルコキシ基またはC〜Cアシルオキシ基でなければならない。加水分解性基として好ましくは、アルコキシ基、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基およびブチルオキシ基が選択される。これらの基を選択することは、アルコキシ基含有組成物の硬化の間に、粘膜を刺激する物質を放出しないため有利である。形成されるアルコールは、放出され、蒸発する量において無害である。したがって、そのような組成物は、DIY分野に特に適している。しかしながら、加水分解性基として、アシルオキシ基、例えばアセトキシ基−O−CO−CHを使用することもできる。
【0028】
式(I)で示されるアルコキシ−および/またはアシルオキシシラン末端ポリエーテルおよび/またはポリアクリル酸エステルは、一般式(I)で示される少なくとも2つの末端基を有する。したがって、各ポリマー鎖は、大気湿度の存在下、ポリマーの縮合を加水分解基の除去により行うことのできる少なくとも2つの結合部位を含む。このようにして、規則的で急速な架橋結合性が達成されるため、良好な強度を有する結合を得ることができる。さらに、加水分解性基の量および構造(例えばジ−若しくはトリアルコキシル基、メトキシ基または長鎖基など)により、長鎖系(熱可塑性)、比較的粗い目の三次元網目構造(弾力性)または高架橋系(熱硬化)を実現する網目構造の形状を調節することができ、これにより、とりわけ、最終的な架橋組成物の弾力性、柔軟性および耐熱性に影響を与えることができる。
【0029】
好ましくは、Xはアルキル基であり、YおよびZはそれぞれアルコキシ基であり、またはX、YおよびZはそれぞれアルコキシ基である。一般的に、ジ−若しくはトリアルコキシ基を含むポリマーは、高反応性結合部位を有しており、これは、急速な硬化、高い架橋結合度をもたらし、これにより良好な最終強度を可能にする。ジアルコキシシリル基の特定の利点は、対応する組成物がより弾力で柔軟になり、硬化後、トリアルコキシシリル基を含む系よりもより柔らかいという事実にある。したがって、それらは封止剤としての使用に特に適する。さらに、硬化中にアルコールをほとんど除去しないため、放出されるアルコールの量を少なくしなければならない場合に、これらは特に興味深い。
【0030】
一方、トリアルコキシシリル基により、より高い架橋度を達成することができ、硬化後、より硬く、強固な物質が望まれる場合には特に有利である。さらに、トリアルコキシシリル基はより反応性であり、より速く架橋することにより必要となる触媒量を少なくし、また、これらは「低温流れ」(力および場合により温度作用の影響下における対応する接着剤の寸法安定性)において有利である。
【0031】
特に、好ましくは、X、YおよびZは、互いに独立して、メチル基、エチル基、メトキシ基またはエトキシ基である。低立体容積である比較的小さい加水分解性基として、メトキシ基およびエトキシ基は非常に反応性であり、これにより少量の触媒使用であっても急速な硬化を可能にする。したがって、これらは、急速な硬化が望まれる系、例えば高い初期接着を必要とする接着剤に関して特に興味深い。
【0032】
特に好ましくは、X、YおよびZはメチル基またはメトキシ基である。酸素原子におけるアルキル基の性質に応じて、アルコキシシリル基を有する化合物は化学反応において種々の反応性を有する。メトキシ基は、アルコキシ基の中で最も高い反応性を示す。したがって、特に急速な硬化が望まれる場合にこの種のシリル基を使用することができる。例えばエトキシ基などのより高い脂肪族基は、メトキシ基と比較して末端アルコキシシリル基の低い反応性をもたらしており、徐々に架橋速度を高じるために有利に使用することができる。
【0033】
興味深い設計の可能性は、2つの基の組み合わせによっても開拓される。例えば、同じアルコキシシリル基においてXとしてメトキシを、Yとしてエトキシを選択した場合で、もっぱらメトキシ基含有シリル基が過度に反応性であり、エトキシ基含有シリル基が過度に非反応性であると判断される場合、意図する使用に対して末端シリル基の所望する反応性を特に細かく調節することができる。
【0034】
メトキシ基およびエトキシ基に加えて、加水分解性基として、当然、生来低反応性である多くの基を使用することもできる。アルコキシ基の構造により遅延性効果も達成すべき場合にこれは特に興味深い。
【0035】
本発明の硬化性組成物は、成分(b)として、少なくとも1つの有機スズ化合物を含む。成分(b)は、具体的には架橋結合触媒として組成物に加えられる。適する有機スズ化合物は、例えば、2価若しくは3価のスズの1,3−ジカルボニル化合物、例えばジ(n−ブチル)スズ(IV)ジ(アセチルアセトネート)、ジ(n−オクチル)スズ(IV)ジ(アセチルアセトネート)、(n−オクチル)(n−ブチル)スズ(IV)ジ(アセチルアセトネート)などのアセチルアセトネート;ジアルキルスズ(IV)ジカルボキシレート、例えばジ−n−ブチルスズジラウレート、ジ−n−ブチルスズマレエート、ジ−n−ブチルスズジアセテート、ジ−n−オクチルスズジアセテートまたは対応するジアルコキシレート、例えば、ジ−n−ブチルスズジメトキシド;および、スズ(II)オクトエートおよびスズ(II)フェノレートなどのスズ(II)カルボキシレートである。
【0036】
例えば、以下の化合物も適している:エチルシリケート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジオクチルマレエート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジ(n−ブチル)スズ(IV)ジ(メチルマレエート)、ジ(n−ブチル)スズ(IV)ジ(ブチルマレエート)、ジ(n−オクチル)スズ(IV)ジ(メチルマレエート)、ジ(n−オクチル)スズ(IV)ジ(ブチルマレエート)、ジ(n−オクチル)スズ(IV)ジ(イソオクチルマレエート)、ジ(n−ブチル)スズ(IV)スルフィド、ジ(n−ブチル)スズ(IV)オキシド、ジ(n−オクチル)スズ(IV)オキシド、(n−ブチル)Sn(SCHCOO)、(n−オクチル)Sn(SCHCOO)、(n−オクチル)Sn(SCHCHCOO)、(n−オクチル)Sn(SCHCHCOOCHCHOCOCHS)、(n−ブチル)Sn(SCHCOO−i−C17、(n−オクチル)Sn(SCHCOO−i−C17、(n−オクチル)Sn(SCHCOO−n−C17。成分(b)がジアルキルスズ(IV)ジカルボキシレート、特にジ−n−ブチルスズジラウレートであることが特に好ましい。成分(b)は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは0.01〜10重量%の量で用いる。有利な効果を実現するために、いくつかの触媒の混合物を使用することもできる。
【0037】
成分(c)として、本発明の組成物は、スズおよびケイ素原子を含まず、それぞれ、カルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシ基および本来芳香族環系の一部である窒素原子から選択される少なくとも2つの官能基を含む少なくとも1つの化合物を含有する。ここで、カルボキシル基は構造−COOHの官能基であり、ヒドロキシ基は構造−OH基の官能基であり、カルボニル基は構造C=Oの官能基であると理解される。原則として、少なくとも2つの官能基は同じであっても異なっていてもよい。少なくとも1つの成分(c)が、カルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシ基および本来芳香族環系の一部である窒素原子からそれぞれ選択される少なくとも2つの異なる官能基を有することが好ましい。上述した成分(c)のカルボキシル基、カルボニル基およびヒドロキシ基は、本発明においては単独の官能基とみなされ、より複雑な官能基の一部としては存在しない。例えば、カルボキシル基はカルボニル基およびヒドロキシ基の両方を含むが、ただ1つのカルボキシル基を有する化合物は成分(c)とみなされない。同様に、例えば、エステル基(−COOR)の一部を形成するカルボニル基は、成分(c)の意味におけるカルボニル基とはみなされない。本来芳香族環系の一部である窒素原子の場合、芳香族系全体ではなく、それらの窒素原子のみが官能基であるとみなされる。したがって、成分(c)のさらなる官能基に関して、例えばOH基を本来芳香族環系である別の部位に配置させる可能性は十分にある。
【0038】
成分(c)の化合物として、例えば、β−ジカルボニル化合物、例えば2,4−ペンタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ペンタンジオン、5−メチル−2,4−ヘキサンジオン、2,4−オクタンジオン、5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン、3−エチル−2,4−ペンタンジオン、2,4−デカンジオン、2,2−ジメチル−3,5−ノナンジオン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、2,4−トリデカンジオン、1−シクロヘキシル−1,3−ブタンジオン、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオン、1,3−シクロヘキサンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、1−(4−ジフェニル)−1,3−ブタンジオン、1−フェニル−1,3−ペンタンジオン、3−ベンジル−2,4−ペンタンジオン、1−フェニル−5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン、1−フェニル−2−ブチル−1,3−ブタンジオン、1−フェニル−3,3−(2−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオン、1−(4−ニトロフェニル)−1,3−ブタンジオン、1−(2−フリル)−1,3−ブタンジオン、1−(テトラヒドロ−2−フリル)−1,3−ブタンジオン、ジメドンおよびジベンゾイルメタンが適する。
【0039】
成分(c)として適する化合物の他の群は、例えばベンゾイン、アセトインおよびα−ヒドロキシアセトフェノンなどのα−ヒドロキシケトン、ならびに、マンデル酸、乳酸、クエン酸、ヒドロキシコハク酸、アスコルビン酸および酒石酸などのα−ヒドロキシカルボン酸により形成され、乳酸により形成されるものが特に好ましい。さらに、縮合芳香族β−ヒドロキシケトン、例えばナフタザリン、1−ヒドロキシ−9−フルオレノンまたは1−ヒドロキシアントラキノンも適する。
【0040】
本来芳香族環系の一部である窒素原子は、芳香族性を示す(すなわち、ヒュッケル則に対応するπ電子の配列を有する)少なくとも単環構造において、環形成原子としての炭素原子に加えて存在する窒素原子であると理解される。本発明において、少なくとも一置換の窒素含有複素環式芳香族化合物、中でも特に縮合系、例えば、8−ヒドロキシキノリン、2−ヒドロキシキノリン、7−ヒドロキシ−3H−インドール、8−ヒドロキシキノキサリン、8−ヒドロキシキナゾリン、8−ヒドロキシシンノリン、4−ヒドロキシフェナントリジン、4−ヒドロキシアクリジンおよび1−ヒドロキシフェナジン〔それぞれさらなる置換基(例えばハロゲン原子またはアルキル基)を有することができる〕が成分(c)として適している。
【0041】
したがって、本発明の組成物は、少なくとも1つの有機スズ化合物および少なくとも1つのタイプ(c)の化合物を含む。このような組み合わせは、本発明の組成物の遅延性の硬化をもたらす。この遅延性の硬化は、例えば、接着するため塗布して基板をプレスした後でさえも、一方に対して所望する位置になるまで基材を動かすなど、消費者に修正の機会を与える。特に好ましくは、本発明の硬化性組成物は、2座配位子および多座配位子として、特に成分(b)の化合物と錯体を形成することのできる成分を成分(c)として含有する。
【0042】
好ましくは、成分(c)の少なくとも1つの化合物の少なくとも1つの官能基は、少なくとも1つの酸素原子を有し、かつ、少なくとも1つの他の官能基は本来芳香族環系の一部である少なくとも1つの窒素原子を有し、若しくは、成分(c)の化合物の少なくとも2つの官能基は少なくとも1つの酸素原子を有する(この酸素原子に直接的に結合する少なくとも1つの炭素原子は、この酸素原子に直接的に結合する第2の官能基の少なくとも1つの炭素原子とは異なる酸化状態を有する)。この意味において、例えばβ−ヒドロキシケトンまたはα−ヒドロキシカルボン酸が特に好ましい。
【0043】
特に好ましくは、成分(c)は、少なくとも1つのN−複素環式芳香族化合物またはα−ヒドロキシカルボン酸、特に8−ヒドロキシキノリンまたは乳酸を含んでなる。成分(c)の化合物の総量と成分(b)の化合物の総量の好ましいモル比(モル/モル)は、1:10〜10:1であり、特に好ましくは1:5〜5:1であり、特に1:4〜4:1であり、とりわけ好ましくは1:3〜3:1である。本発明の組成物における成分(b)と(c)の総重量は、それぞれの場合、組成物の総重量に基づいて、好ましくは最大5重量%であり、特に最大3重量%であり、とりわけ好ましくは最大2重量%である。
【0044】
接着剤、封止剤またはコーティング組成物として適する本発明の組成物は、前記成分(a)、(b)および(c)に加えて、例えば改善された弾力特性、改善された回復性および低い戻りをもたらすさらなる助剤および添加剤を任意に含有する。これらの助剤および添加剤としては、接着促進剤、可塑剤およびフィラーが挙げられる。さらに、さらなる添加剤として、本発明の組成物は、安定化剤、酸化防止剤、反応性希釈剤、乾燥剤、UV安定化剤、抗老化剤、レオロジー助剤、顔料若しくは顔料ペースト、殺菌剤、難燃剤および/またはわずかな溶剤を含むこともできる。
【0045】
可塑剤は、組成物の粘度を低下させ、それによりその加工性を容易にし、さらに組成物の柔軟性および伸展性を改善する物質であると理解される。
【0046】
可塑剤は、好ましくは、脂肪酸エステル、ジカルボン酸エステル、OH基含有若しくはエポキシ化脂肪酸、脂肪、グリコール酸エステル、フタル酸エステル、安息香酸エステル、リン酸エステル、スルホン酸エステル、トリメリット酸エステル、エポキシ化可塑剤、ポリエーテル可塑剤、ポリスチレン、炭化水素可塑剤および塩素化パラフィン、ならびにそれらの2つ以上の混合物から選択される。これらの可塑剤の1つまたは特定の組み合わせを厳選することにより、本発明の組成物のさらなる有利な特性、例えば、ポリマーのゲル化力、低温弾性および耐寒性または帯電性などを達成することができる。
【0047】
例えば、フタル酸エステル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソウンデシル、フタル酸ジイソノニルまたはブチルベンジルフタレートの群、アジピン酸塩、アジピン酸ジオクチルまたはアジピン酸ジイソデシル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチルまたはオレイン酸ブチルも適している。中でも、ポリエーテル可塑剤、好ましくは末端キャップポリエチレングリコール、例えばポリエチレン若しくはポリプロピレングリコールジ−C1〜4−アルキルエステル、特にジエチレングリコール若しくはジプロピレングリコールのジメチルエーテルまたはジエチルエーテル、およびそれらの2つ以上の混合物を使用する。例えば、アビエチン酸エステル、絡酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、チオ絡酸エステル、クエン酸エステル、およびニトロセルロースおよびポリ酢酸ビニルに基づくエステル、ならびにそれらの2つ以上の混合物も可塑剤として適している。適当な例としては、アジピン酸モノオクチルエステルと2−エチルヘキサノールの不斉エステル(Edenol DOA、Cognis Deutschland GmbH、デュッセルドルフ)も挙げられる。また、一官能性、直鎖若しくは分枝C4〜16アルコールの純粋または混合エーテル、またはこれらアルコール(例えばジオクチルエーテル)の2種類以上の異なるエーテルの混合物〔Cetiol OE、Cognig Deutschland GmbH(デュッセルドルフ)として入手可能〕も可塑剤として適する。さらに、本発明の範囲内において、可塑剤として適するのはジウレタンであり、これは実質的に全ての遊離OH基が完全に反応するように反応量を選択することで、例えば、OH末端基を有するジオールと一官能性イソシアネートとを反応させて製造することができる。その後過剰なイソシアネートは、例えば蒸留により、反応混合物から除去することができる。ジウレタンを製造するための別の方法は、可能な限り全てのNCO基が完全に反応する一官能性アルコールとジイソシアネートとの反応である。
【0048】
特定の用途に対して高過ぎる本発明の組成物の粘度を、反応性希釈剤を使用することで、硬化物質において分離現象(例えば可塑剤の移動)を生じることなく、簡単かつ適切な方法において低下させることができる。好ましくは、反応性希釈剤は、例えば塗布後に水分または大気中の酸素と反応する少なくとも1種の官能基を含む。そのような官能基としては、シリル基、イソシアネート基、ビニル不飽和基および多不飽和系が挙げられる。反応性希釈剤として、粘度の低下を伴って本発明の組成物と混和し、結合剤と反応性のある少なくとも1つの基を有する任意の化合物を、単独でまたはいくつかの化合物を組み合わせて使用することができる。反応性希釈剤の粘度は、好ましくは20,000mPas未満、特に好ましくは約0.1〜6,000mPas、とりわけ好ましくは1〜1000mPasである(ブルックフィールドRVT、23℃、スピンドル7、10rpm)。
【0049】
反応性希釈剤として、例えば、以下の物質を使用することができる:イソシアナトシランと反応したポリアルキレングリコール(例えば、Synalox100−50B、Dow社製)、アルキルトリメトキシシラン、アルキルトリエトキシシラン、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランおよびビニルトリメトキシシラン(XL10、Wacker社製)、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン(XL12、Wacker社製)、ビニルトリエトキシシラン(GF56,Wacker社製)、ビニルトリアセトキシシラン(GF62、Wacker社製)、イソオクチルトリメトキシシラン(IOトリメトキシ)、イソオクチルトリエトキシシラン(IOトリエトキシ、Wacker社製)、N−トリメトキシシリルメチル−O−メチルカルバメート(XL63、Wacker社製)、N−ジメトキシ(メチル)シリルメチル−O−メチルカルバメート(XL65、Wacker社製)、ヘキサデシルトリメトキシシラン、3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン、およびこれらの化合物の部分加水分解物。さらに、カネカ社製の下記ポリマーを反応性希釈剤として使用することもできる:MS S203H、MS S303H、MS SAT 010およびMS SAX 350。また、ビニルシランとのグラフト化により、または、ポリオール、ポリイソシアネートおよびアルコキシシランを反応させることにより、有機骨格から製造することのできるポリマーも反応性希釈剤として適している。
【0050】
ポリオールは、分子内に1つ以上のOH基を有する化合物であると理解される。OH基は、第1級であっても、第2級であってもよい。
【0051】
適する脂肪族アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、および高級グリコール、ならびに他の多官能性アルコールなどが挙げられる。ポリオールは、例えば、エステル、カーボネート、アミドなど他の官能基をさらに含むことができる。ポリオールとポリイソシアネートおよびアルコキシシランを反応させることによる反応性希釈剤の製造のために、それぞれ、対応するポリオール成分を少なくとも2官能性イソシアネートと反応させる。少なくとも2官能性のイソシアネートとして、原則として、少なくとも2つのイソシアネート基を有する全てのイソシアネートが適している。しかしながら、本発明の範囲において、2〜4つのイソシアネート基を有する、特に2つのイソシアネート基を有する化合物も一般的に好ましい。
【0052】
アルコキシシリル基の中でも、ジアルコキシシリル基、および好ましくはトリアルコキシシリル基が好ましい。
【0053】
反応性希釈剤を製造するために適するポリイソシアネートは、例えば、エチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメトキシブタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、シクロブタン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,3−および1,4−ジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、およびそれらの2種以上の混合物、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート,IPDI),2,4−および2,6−ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、ヘキサヒドロ−1,3−または−1,4−フェニレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、1,6−ジイソシアナト−2,2,4−トリメチルヘキサン、1,6−ジイソシアナト−2,4,4−トリメチルヘキサン、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、1,3−および1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−若しくは2,6−トルイレンジイソシアネート(TDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、または、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、それらの一部または完全に水素化されたシクロアルキル誘導体、例えば、完全に水素化されたMDI(H12 MDI)、アルキル置換ジフェニルメタンジイソシアネート、例えば、モノ−、ジ−、トリ−またはテトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネートおよびそれらの一部または完全に水素化されたシクロアルキル誘導体、4,4’−ジイソシアナトフェニルペルフルオロエタン、フタル酸ビスイソシアナトエチル、1−クロロメチルフェニル−2,4−または−2,6−ジイソシアネート、1−ブロモメチルフェニル−2,4−若しくは−2,6−ジイソシアネート、3,3−ビスクロロメチルエーテル−4,4’−ジフェニルジイソシアネート、イオウ含有ジイソシアネート、例えば2モルのジイソシアネートと1モルのチオジグリコール若しくはジヒドロキシジヘキシルスルフィドとの反応により得ることができるもの、二量体および三量体脂肪酸のジ−およびトリイソイソシアネート、これらのジイソシアネートの2種以上の混合物である。
【0054】
同様に、ジイソシアネートのオリゴマー化により、特に、上述したイソシアネートのオリゴマー化により得ることができるものなど、3官能性以上のイソシアネートをポリイソシアネートとして使用することができる。このような3官能性以上のポリイソシアネートとしては、HDIまたはIPDIのトリイソシアヌレートまたはそれらの混合物若しくはそれらの混合トリイソシアヌレート、およびアニリン−ホルムアルデヒド縮合物のホスゲン化により得られるポリフェニルメチレンポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0055】
本発明の組成物の粘度を低下させるために、反応性希釈剤に加えて、または反応性希釈剤に代えて、溶剤を使用することもできる。適する溶剤は、芳香族若しくは脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、エステルアルコール、ケトアルコール、ケトエーテル、ケトエステルである。しかしながら、貯蔵性が高まるため、好ましくはアルコールを使用する。C〜C10アルコール、特にメタノール、エタノール、イソプロパノール、イソアミルアルコールおよびヘキサノールが特に好ましい。
【0056】
本発明の組成物は、接着促進剤を含有することもできる。接着促進剤は、表面上の接着層の接着特性を改善する物質を意味すると理解される。当業者に既知の従来の接着促進剤を、単独で、またはいくつかの化合物を組み合わせて使用することができる。適する接着促進剤としては、テルペンオリゴマー、クマロン/インデン樹脂、脂肪族石油化学樹脂、および変性フェノール樹脂が挙げられる。本発明の範囲において適する接着促進剤は、テルペン、主にα−若しくはβ−ピネン、ジペンテンまたはリモネンの重合により得られる炭化水素樹脂である。これらのモノマーの重合は、一般的に、フリーデル・クラフツ触媒を用いた開始を伴うカチオン重合である。テルペン樹脂としては、テルペンと、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、イソプレンなどの他のモノマーとのコポリマーが挙げられる。上記樹脂は、例えば、粘着剤およびコーティング材用の接着促進剤として使用される。フェノールのテルペンまたはロジンへの酸触媒付加により製造されるテルペンフェノール樹脂も適している。テルペンフェノール樹脂は、ほとんどの有機溶媒および油に可溶であり、他の樹脂、ワックスおよびゴムと混和性を有する。上記意味において、本発明の範囲内で、ロジンおよびその誘導体、例えばそのエステル若しくはアルコールも適している。シラン接着促進剤、具体的にはアミノシラン接着促進剤が特に適当である。
【0057】
本発明の硬化性組成物の特定の実施態様において、本発明の組成物は、一般式(II):
R'R''N−R−SiXYZ (II)
〔式中、R'およびR''は、互いに独立して、水素またはC〜Cアルキル基であり、 Rは、場合によりヘテロ原子を含む炭素数1〜12の2価の炭化水素基であり、X、Y、Zは、互いに独立して、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基またはC〜Cアシルオキシ基であり、少なくとも1つの基がC〜Cアルコキシ基またはC〜Cアシルオキシ基である〕
で示されるシランを接着促進剤として含む。そのような化合物は、本質的に、本発明の硬化性組成物のポリマー成分を結合する高い親和性および様々な極性および非極性表面に対する高い親和性を示すことにより、それぞれの場合において、接着剤組成物と結合すべき基材との間の特に安定な接合の形成に寄与する。
【0058】
結合基Rは、例えば、直鎖若しくは分枝または環状の、飽和若しくは不飽和アルキレン基であってよい。ヘテロ原子としては、窒素(N)または酸素(O)を任意に含む。X、Yおよび/またはZがアシルオキシ基である場合、例えばこれはアセトキシ基−OCO−CHであり得る。
【0059】
本発明の組成物に対する適するフィラーは、例えば、白亜、石炭粉、沈降および/または焼成シリカ、ゼオライト、ベントナイト、マグネシウム、カーボネート、珪藻土、アルミナ、クレイ、タルク、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、砂、水晶、フリント、マイカ、ガラス粉末および他の粉砕無機質物質である。また、有機フィラー、特にカーボンブラック、グラファイト、木質繊維、木粉、おがくず、木材パルプ、綿、パルプ、木片、粉砕ワラ、籾殻、粉砕クルミ殻および他の粉砕繊維を使用することもできる。さらに、ガラス繊維、ガラスフィラメント、ポリアクリロニトリル、炭素繊維、ケブラー繊維またはポリエチレン繊維などの短繊維を加えることもできる。アルミニウム粉末もフィラーとして適する。さらに、鉱物外殻または樹脂外殻を有する中空球もフィラーとして適する。これらは、例えばGlass Bubbles(登録商標)として市販されている中空ガラス球であってもよい。樹脂系中空球、例えばExpancel(登録商標)またはDualite(登録商標)は、例えば欧州特許第0520426号に記載されている。これらの中空球は、無機または有機物質であり、それぞれ、1mm以下、好ましくは500μm以下の直径を有する。いくつかの用途において、調製物にチクソ性を与えるフィラーが好ましい。そのようなフィラーは、レオロジー助剤としても記載されており、例えば、水添ヒマシ油、脂肪酸アミド、またはPVAなどの膨潤性樹脂が挙げられる。適当な計量装置(例えばチューブ)から容易に絞り出すことができるよう、このような調製物は3,000から15,000mPas、好ましくは4,000から8,000mPasまたは5,000から6,000mPasの粘度を有する。
【0060】
フィラーは、組成物の総重量に基づいて、1〜80重量%の量で使用することが好ましい。1種類のフィラーまたはいくつかのフィラーの組み合わせを使用することができる。
【0061】
本発明の組成物の好ましい実施態様において、フィラーは、10〜90m/g、特に35〜65m/gのBET表面積を有する高分散シリカである。このタイプのシリカを使用する場合、このシリカは本発明の組成物の実質的な粘度上昇を生じず、硬化組成物の強化に寄与する。この強化により、例えば、本発明の組成物を使用する接着剤、封止剤若しくはコーティング組成物の初期強度、剪断強度および接着性が改善される。
【0062】
特に好ましくは、45〜55m/gのBET表面積を有する、特に約50m/gのBET表面積を有する高分散シリカを使用する。そのようなシリカは、より高いBET表面積のシリカと比べて、30〜50%投入時間が短いというさらなる利点を有する。別の利点は、接着剤、封止剤若しくはコーティング組成物の透明性および流動性を損なうことなく、前記高分散シリカをシラン末端接着剤、封止剤若しくはコーティング組成物にかなり高い濃度で投入することができるという事実にある。フィラーが、レーザー回折により測定した平均粒子径d50が25μm未満、好ましくは5〜20μmの高分散シリカである、本発明の組成物の一実施態様も特に好ましい。高い透明性で曇りのない組成物が特に厳しい用途に必要とされている場合に、このタイプのシリカは特に適する。有利には100〜250m/g、特に110〜170m/gの比較的高いBET表面積を有する焼成および/または沈降シリカを、フィラーとして使用することも考えられる。しかしながら、そのようなシリカを配合するには比較的長い時間がかかるため、よりコストがかかる。また、かなりの量の空気が生成物に導入され、それを複雑で時間のかかる方法で再び取り除かなければならない。一方、より高いBET表面積に起因して、より少ない重量比率のシリカにより硬化組成物の強化作用を達成することができる。このようにして、さらなる物質を配合し、他の要求について本発明の調製物を改善することができる。
【0063】
酸性フィラーに代えて塩基性フィラーを使用すべき場合は、例えば炭酸カルシウム(白亜)が適しており、この場合、立方晶系、非立方晶系、非晶質および他の変異体を使用することができる。好ましくは、表面処理または表面被覆された白亜を使用する。被覆剤としては、好ましくは脂肪酸、脂肪酸石鹸および脂肪酸エステルが用いられ、例えば、ラウリン酸、パルミチン酸またはステアリン酸、これらの脂肪酸のナトリウム塩若しくはカリウム塩またはアルキルエステルが用いられる。しかしながら、例えば長鎖アルコールの硫酸エステル若しくはアルキルベンゼンスルホン酸またはそれらのナトリウム塩若しくはカリウム塩、あるいはシラン若しくはチタン酸塩に基づくカップリング剤などの他の表面活性物質も適している。白亜の表面処理は、組成物の加工性および接着強度ならびに耐候性の改善を伴うことが多い。被覆剤は、通常、未加工の白亜の総重量に基づき、0.1〜20重量%、好ましくは1〜5重量%で使用される。
【0064】
分散性プロファイルに応じて、沈降または粉砕白亜を使用することができる。粉砕白亜は、例えば天然石灰、石灰岩または大理石から、乾燥法若しくは湿潤法を用いて機械的に粉砕することにより製造することができる。粉砕工程に応じて、異なる平均粒子径を有する断片を得ることができる。有利な比表面積値(BET)は1.5〜50m/gである。
【0065】
さらに、本発明の組成物は酸化防止剤を含んでいてよい。本発明の組成物中の酸化防止剤の割合は、組成物の総重量に基づいて、最大約7重量%、特に、最大約5重量%であることが好ましい。さらに、本発明の組成物はUV安定化剤を含んでいてよい。本発明の組成物中のUV安定化剤は、最大約2重量%、特に約1重量%であることが好ましい。UV安定化剤として、いわゆるヒンダードアミン光安定化剤(HALS)が特に適する。シリル基を有するUV安定化剤を使用し、これを架橋または硬化中に最終生成物に配合することが、本発明の範囲において好ましい。この目的においては、Lowilite75およびLowilite77が特に適している。さらに、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、ベンゾエート、シアノアクリレート、アクリレート、立体ヒンダードフェノール、リンおよび/またはイオウを加えることもできる。
【0066】
貯蔵可能期間をより長くするために、本発明の組成物を水分浸透に対して安定化することが有益であることが多い。このような貯蔵可能期間の改善は、例えば乾燥剤を使用することにより達成することができる。乾燥剤としては、その分子量において最小限の変化を受けながら、水と反応して組成物中に存在する反応性基に対して不活性な基を形成する全ての化合物が適している。さらに、組成物中に浸透する水分に対する乾燥剤の反応性は、本発明の組成物中に存在するシリル基含有ポリマーの末端基の反応性よりも高くなければならない。
【0067】
乾燥剤としては、シラン、例えば、3−ビニルプロピルトリエトキシシランなどのビニルシラン、メチル−O,O’,O”−ブタン−2−オン−トリオキシモシランまたはO,O’,O”,O''’−ブタン−2−オン−テトラオキシモシラン(CAS NO.022984−54−9および034206−40−1)などのオキシモシラン、あるいは、ビス(N−メチルベンズアミド)メチルエトキシシラン(CAS NO.16230−35−6)などのベンズアミドシラン、またはカルバマトメチルトリメトキシシランのようなカルバマトシランも有利に使用される。しかしながら、メチル、エチル若しくはビニルトリメトキシシラン、テトラメチル若しくはテトラエチルエトキシシランを使用することもできる。効率性およびコストの点から、ビニルトリメトキシシランおよびテトラエトキシシランが特に好ましい。約5,000g/モル未満の分子量(M)を有し、浸透する水分との反応性が本発明におけるシリル基含有ポリマーの反応性基の反応性と少なくとも同等であるか、好ましくはより高い末端基を有する限り、前述した反応性希釈剤も乾燥剤として適している。最後に、アルキルオルトホルメートまたはアルキルオルトアセテートを乾燥剤として使用することもでき、例えば、メチル若しくはエチルオルトホルメート、またはメチル若しくはエチルオルトアセテートを使用することができる。
【0068】
本発明の組成物は、好ましくは以下の成分を含む:
100重量部:成分(a)、
0.5〜25重量部:接着促進剤、
0.01〜10重量部:成分(b)、
0.001〜100重量部:成分(c)、および、任意に、
0〜125重量部:可塑剤、
0〜125重量部:フィラー、
0〜25重量部:乾燥剤または水スカベンジャー、
0〜10重量部:添加剤、例えば、顔料、安定化剤、UV吸収剤、抗老化剤、酸化防止剤、レオロジー助剤、希釈剤または反応性希釈剤および/または溶剤、ならびに殺菌剤および難燃剤。
【0069】
これらの比率に基づく組成物は、非常に良好な弾性値に加えて良好な強度および接着性を示す接着剤、封止剤若しくはコーティング組成物の容易な加工性を実現できる。同時に、組成の特性を、組成比の個別の重み付けにより特定分野の用途に正確に合わせることができる。
【0070】
本発明の硬化性組成物の粘度は、好ましくは1,000,000mPas未満である(ブルックフィールド粘度計RVDVII型、スピンドルNo.7、10rpm、23℃で測定)。特に好ましい本発明の組成物の粘度は、500,000mPas未満である。とりわけ、本発明の組成物の粘度は、250,000mPas未満である。これらの粘度であると、組成物の加工性が良好である。
【0071】
本発明は、少なくとも
(a)一般式(I):
−A−R−SiXYZ (I)
〔式中、Aは2価の結合基であり、Rは、場合によりヘテロ原子を含む炭素数1〜12の2価の炭化水素基であり、X、Y、Zは、互いに独立して、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基またはC〜Cアシルオキシ基であり、少なくとも1つの基がC〜Cアルコキシ基またはC〜Cアシルオキシ基であり、nは0または1である〕
で示される少なくとも1つの末端基を有する少なくとも1つのポリエーテルおよび/または少なくとも1つのポリアクリル酸エステル、および
(b)少なくとも1つの有機スズ化合物、
(c)スズおよびケイ素原子を含まず、それぞれ、カルボキシ基、カルボニル基、ヒドロキシ基および本来は芳香族環系の一部である窒素原子から選択される少なくとも2つの官能基を有する少なくとも1つの化合物
をともに混合する、本発明の硬化性組成物の製造方法を提供する。
【0072】
本発明は、本発明の硬化性組成物の、または、本発明の方法により製造された硬化性組成物の、接着剤、封止剤またはコーティング組成物、特にプラスチック、金属、ガラス、セラミック、木材、木質材料、紙、紙材、ゴムおよび布を接着するための接着剤としての使用を提供する。
【0073】
原則として、本発明において、本明細書の範囲内に記載された全ての特性、とりわけ実施態様、比率範囲、組成、および好ましいものとしておよび/または特別のものとして確認された本発明の組成物の、本発明の方法の、本発明の使用の他の特徴は、全ての可能性において、相互排他的な組み合わせではなく、好ましいものとしておよび/または特別のものとして確認された特徴の組み合わせもまた好ましいものおよび/または特別のものとして実現することができる。
【実施例】
【0074】
1.成分(a)のシラン末端ポリエーテルの製造
328g(28mmol)のポリプロピレングリコール12000(ヒドロキシ価=9.6)を、真空下、80℃で500ml反応器中で乾燥させた。80℃の窒素雰囲気下、0.07gのビスマス(III)オクタノエート(BorchiKat 24)を添加した後、14g(67mmol)のイソシアナトプロピルトリメトキシシラン(%NCO=19.9)を加えた。80℃で1時間攪拌した後、得られたポリマーを冷却し、7.1gのビニルトリメトキシシラン、および70重量%のセバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)と30重量%のセバシン酸メチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルの混合物(Tinuvin 765)5.3gを添加した。硬化性組成物に加工する前に、生成物を窒素雰囲気のガラス容器内で湿密に貯蔵した。
【0075】
2.組成および特性
【表1】

【0076】
これらの実施例は、硬化触媒(ジブチルスズジラウレート)の量が2倍であるにもかかわらず、例1の組成物に比べて本発明の組成物の硬化(表皮形成時間)がかなり遅いことを示している。
【0077】
【表2】

【0078】
これらの実施例は、本発明の組成物により製造した接着ボンドが、かなり長い加工時間(表皮形成時間)を示すが、その後加速速度で完全に硬化し、短時間で、遅延性硬化をしない組成物のレベルの非常に良好な強度値を達成することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分として、
(a)一般式(I):
−A−R−SiXYZ (I)
〔式中、
Aは2価の結合基であり、
Rは、場合によりヘテロ原子を含む炭素数1〜12の2価の炭化水素基であり、
X、Y、Zは、互いに独立して、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基またはC〜Cアシルオキシ基であり、少なくとも1つの基がC〜Cアルコキシ基またはC〜Cアシルオキシ基であり、
nは0または1である〕
で示される少なくとも1つの末端基を有する少なくとも1つのポリエーテルおよび/または少なくとも1つのポリアクリル酸エステル、および
(b)少なくとも1つの有機スズ化合物、
(c)スズおよびケイ素原子を含まず、それぞれ、カルボキシ基、カルボニル基、ヒドロキシ基および本来芳香族環系の一部である窒素原子から選択される少なくとも2つの官能基を有する少なくとも1つの化合物
を含む硬化性組成物。
【請求項2】
成分(c)の少なくとも1つの化合物が、カルボキシ基、カルボニル基、ヒドロキシ基および本来芳香族環系の一部である窒素原子からそれぞれ選択される少なくとも2つの異なる官能基を有する請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
成分(c)が、少なくとも1つのN−複素環式芳香族化合物またはα−ヒドロキシカルボン酸を含む請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
成分(c)の化合物の総量と成分(b)の化合物の総量のモル比(モル/モル)が1:10〜10:1である請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項5】
成分(a)が、4000〜100000g/モルの分子量Mを有する少なくとも1つのポリエーテルを含む請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項6】
成分(a)が、ASTM D4671法により測定した、0.07meq/g未満の末端不飽和を有する少なくとも1つのポリエーテルを含む請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項7】
接着促進剤として、一般式(II):
R'R''N−R−SiXYZ (II)
〔式中、
R'およびR''は、互いに独立して、水素またはC〜Cアルキル基であり、
Rは、場合によりヘテロ原子を含む炭素数1〜12の2価の炭化水素基であり、
X、Y、Zは、互いに独立して、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基またはC〜Cアシルオキシ基であり、少なくとも1つの基がC〜Cアルコキシ基またはC〜Cアシルオキシ基である〕
で示されるシランを含む請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項8】
100重量部の成分(a)、
0.5〜25重量部の接着促進剤、
0.01〜10重量部の成分(b)、
0.001〜100重量部の成分(c)、および、任意に、
0〜125重量部の可塑剤、
0〜125重量部のフィラー、
0〜25重量部の乾燥剤または水スカベンジャー、
0〜10重量部のさらなる添加剤、例えば、顔料、安定化剤、UV吸収剤、抗老化剤、酸化防止剤、レオロジー助剤、希釈剤若しくは反応性希釈剤および/または溶剤、ならびに殺菌剤および難燃剤
を含む請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項9】
少なくとも、
(a)一般式(I):
−A−R−SiXYZ (I)
〔式中、
Aは2価の結合基であり、
Rは、場合によりヘテロ原子を含む炭素数1〜12の2価の炭化水素基であり、
X、Y、Zは、互いに独立して、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基またはC〜Cアシルオキシ基であり、少なくとも1つの基がC〜Cアルコキシ基またはC〜Cアシルオキシ基であり、
nは0または1である〕
で示される少なくとも1つの末端基を有する少なくとも1つのポリエーテルおよび/または少なくとも1つのポリアクリル酸エステル、および
(b)少なくとも1つの有機スズ化合物、
(c)スズおよびケイ素原子を含まず、それぞれ、カルボキシ基、カルボニル基、ヒドロキシ基および本来芳香族環系の一部である窒素原子から選択される少なくとも2つの官能基を有する少なくとも1つの化合物
をともに混合する、請求項1〜8のいずれかに記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の硬化性組成物の、または、請求項9に記載の方法により製造された硬化性組成物の、接着剤、封止剤またはコーティング組成物としての使用。

【公表番号】特表2013−509475(P2013−509475A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535826(P2012−535826)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066349
【国際公開番号】WO2011/051385
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】