経皮デバイスおよびその製造方法
【課題】粘着剤に起因する皮膚かぶれが生じる虞がなく、しかも再使用が可能な経皮デバイスおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】布部の底部11に複数の弾性粒状体20が固着されている。弾性粒状体20は有効成分含有体(図示せず)を内部に保持する複数の保持手段21と、複数の保持手段21を覆う弾性母材22とにより構成されている。保持手段21は外部からの圧力に応じて有効成分含有体を吐出することの可能な構造を有している。弾性母材22は保持手段21から吐出された有効成分含有体の外部への吐出量を制御する複数の通路23が外部からの圧力に応じて形成されるようになっている。
【解決手段】布部の底部11に複数の弾性粒状体20が固着されている。弾性粒状体20は有効成分含有体(図示せず)を内部に保持する複数の保持手段21と、複数の保持手段21を覆う弾性母材22とにより構成されている。保持手段21は外部からの圧力に応じて有効成分含有体を吐出することの可能な構造を有している。弾性母材22は保持手段21から吐出された有効成分含有体の外部への吐出量を制御する複数の通路23が外部からの圧力に応じて形成されるようになっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばニコチンなどの有効成分を皮膚から体内に吸収させる経皮デバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
禁煙を試みる場合、とくに長時間にわたり禁煙をしている者にとっては苦痛が伴う。これは、禁煙という「生活習慣」および「精神的依存」からの脱却が必要なうえ、禁煙により体内に溜まったニコチンの量が減少し、ニコチンを摂取しようと欲する、いわゆる「ニコチン中毒(依存症)」の状態になるからである。そこで、ニコチンを摂取しつつ、禁煙を行う方法として、禁煙補助具を使用する方法がある。この禁煙補助具は、例えば、ニコチンを含浸させたパッチ方式の粘着剤であり、これを肌に貼り、禁煙中にニコチンを皮膚から体内に吸収させるようになっている(特許文献1参照)。このような禁煙補助具を使用する禁煙方法では、ニコチン摂取量を段階的に減量していきながら最終的にゼロにし、その間に禁煙の習慣を身に付けることが目標となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許文献1:特開2003−034633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、パッチ方式の粘着剤では、粘着剤が皮膚に長時間、接するので、粘着剤に含まれる溶剤で皮膚がかぶれるという問題があった。また、皮膚からの発汗作用によって、粘着剤が肌から剥離、離脱し易いという問題もあった。さらに、一旦、粘着剤が肌から離脱すると、粘着剤の粘着力が弱まってしまい、粘着剤を肌に再度、貼ることが難しいという問題もあった。つまり、パッチ方式の粘着剤では、再使用ができないという問題があった。なお、これらの問題は、ニコチン以外の有効成分を皮膚から体内に吸収させる場合にも、同様に生じるものである。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、粘着剤に起因する皮膚かぶれが生じる虞がなく、しかも繰り返し使用が可能な経皮デバイスおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による経皮デバイスは、基材と、基材に固着された複数の弾性粒状体とを備えたものである。複数の弾性粒状体は、液状物質またはゲル状物質と、液状物質またはゲル状物質を内部に保持すると共に外部からの圧力に応じて吐出することの可能な構造を有する複数の保持手段と、複数の保持手段を覆う弾性母材とを有している。弾性母材は、保持手段から吐出された液状物質またはゲル状物質の外部への吐出量を制御する複数の通路が外部からの圧力に応じて形成されるようになっている。
【0007】
本発明による経皮デバイスでは、液状物質またはゲル状物質が複数の保持手段によって保持されている。これにより、例えば、液状物質またはゲル状物質が、弾性母材の、製造過程における前駆体である液状母材と混ざり合い難い性質を有している場合であっても、複数の保持手段がそのような性質を緩和する緩和材として作用するので、製造過程において液状物質またはゲル状物質を液状母材内に分散させておくことができる。その結果、最終的に弾性母材内に液状物質またはゲル状物質を分散させた状態で閉じ込めておくことができる。また、本発明による経皮デバイスでは、複数の保持手段が、外部からの圧力に応じて液状物質またはゲル状物質を吐出することの可能な構造を有している。さらに、複数の保持手段を覆う弾性母材が、保持手段から吐出された液状物質またはゲル状物質の外部への吐出量を制御する複数の通路が外部からの圧力に応じて形成されるようになっている。これにより、例えば、複数の弾性粒状体を足で踏んだり、手で握ったりすることにより、複数の弾性粒状体に対して圧力をかけると、その圧力に応じて、複数の通路が弾性母材に形成されると共に、弾性母材に形成された複数の通路を介して、複数の保持手段内の液状物質またはゲル状物質が外部へ吐出される。液状物質またはゲル状物質の外部への吐出量は、主に、液状物質またはゲル状物質が通過する通路によって制御される。吐出された液状物質またはゲル状物質は、例えば、複数の弾性粒状体に対して圧力をかけた足または手の表面(皮膚)に付着したのち、皮膚を浸透して体内に吸収される。
【0008】
本発明による経皮デバイスの製造方法は、以下の2つの工程を含むものである。
(1)液状物質またはゲル状物質を内部に保持すると共に外部からの圧力に応じて吐出する複数の保持手段を液状母材に混合し攪拌することにより、複数の保持手段が微細な球状粒子となって分散した分散液を作成する工程
(2)分散液を基材表面の所定の位置に配置したのち、基材表面の分散液を加熱する工程
【0009】
本発明による経皮デバイスの製造方法では、液状物質またはゲル状物質が複数の保持手段によって保持されている。これにより、例えば、液状物質またはゲル状物質が、弾性母材の、製造過程における前駆体である液状母材と混ざり合い難い性質を有している場合であっても、複数の保持手段がそのような性質を緩和する緩和材として作用するので、製造過程において液状物質またはゲル状物質を液状母材内に分散させておくことができる。その結果、最終的に弾性母材内に液状物質またはゲル状物質を分散させた状態で閉じ込めておくことができる。また、本発明による経皮デバイスの製造方法では、複数の保持手段が、外部からの圧力に応じて液状物質またはゲル状物質を吐出することの可能な構造を有している。さらに、分散液は基材表面に配置された状態で加熱される。これにより、保持手段から吐出された液状物質またはゲル状物質の外部への吐出量を制御する複数の通路が外部からの圧力に応じで形成され得る弾性母材が形成される。その結果、例えば、複数の弾性粒状体を足で踏んだり、手で握ったりすることにより、複数の弾性粒状体に対して圧力をかけると、その圧力に応じて、複数の通路が弾性母材に形成されると共に、弾性母材に形成された複数の通路を介して、複数の保持手段内の液状物質またはゲル状物質が外部へ吐出される。液状物質またはゲル状物質の外部への吐出量は、主に、液状物質またはゲル状物質が通過する通路によって制御される。吐出された液状物質またはゲル状物質は、例えば、複数の弾性粒状体に対して圧力をかけた足または手の表面(皮膚)に付着したのち、皮膚を浸透して体内に吸収される。
【発明の効果】
【0010】
本発明による経皮デバイスおよびその製造方法によれば、粘着剤を用いないで、適量の液状物質またはゲル状物質を、皮膚を介して体内に吸収させることが可能である。さらに、複数の弾性粒状体に対して圧力をかけるだけで、液状物質またはゲル状物質を、皮膚を介して体内に吸収させることが可能である。これにより、当該経皮デバイス内に液状物質またはゲル状物質が残留している間は、当該経皮デバイスを繰り返し使用することが可能である。以上のことから、粘着剤に起因する皮膚かぶれが生じる虞がなく、しかも繰り返し使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による第1の実施の形態に係る禁煙用靴下の概略構成と、その禁煙用靴下の底部のうち足裏に接する接触面の上面構成を表した図である。
【図2】図1の弾性粒状体の断面構成の一例を表した図である。
【図3】図2の保持手段の一例を表した図である。
【図4】図1の弾性粒状体の断面構成の他の例を表した図である。
【図5】図4の保持手段の断面構成の一例を表した図である。
【図6】図5の保持手段の製造方法の一例を説明するための図である。
【図7】図5の保持手段の製造方法の他の例を説明するための図である。
【図8】本発明による第2の実施の形態に係る禁煙用シートの概略構成を表した図である。
【図9】図8の禁煙用シートをグリップ部材に巻きつけた様子を表した図である。
【図10】図8の禁煙用シートに1つの弾性粒状体が設けられている様子を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(図1〜図3)
○基材として靴下が用いられている例
○保持手段として多孔質材料が用いられている例
○有効成分含有体がニコチンを有効成分として含んでいる例
○複数の弾性粒状体が設けられている例
2.第1の実施の形態の変形例(図4〜図7)
○保持手段として柔軟膜が用いられている例
3.第2の実施の形態(図8、図9)
○基材として布地などが用いられている例
○保持手段として多孔質材料、または柔軟膜が用いられている例
○有効成分含有体がニコチンを有効成分として含んでいる例
○複数の弾性粒状体が設けられている例
○基材がグリップ部材に貼り付けられている例
4.第2の実施の形態の変形例(図なし)
○基材が靴下などに貼り付けられている例
5.第1および第2の実施の形態に共通する変形例
○有効成分含有体がニコチン以外の物質を有効成分として含んでいる例
○1つの弾性粒状体が設けられている例(図10)
【0013】
<第1の実施の形態>
(構成について)
図1(A)は、本発明の第1の実施の形態に係る禁煙用靴下1の概略構成の一例を表したものである。図1(B)は、図1(A)の禁煙用靴下1の底部11のうち足裏に接する接触面11A(内側の面)の概略構成の一例を表したものである。なお、禁煙用靴下1が、本発明の「経皮デバイス」の一具体例に相当する。また、底部11が、本発明の「基材」の一具体例に相当する。
【0014】
この禁煙用靴下1は、例えばニコチンパッチおよびニコチンガムなどの禁煙補助具の一種であり、ニコチンを摂取しつつ、禁煙を行うためのものである。禁煙用靴下1は、布部10と、複数の弾性粒状体20とを備えている。布部10は、織布または不織布によって構成されたものである。布部10は、例えば、一箇所に開口10Aを有する筒状の形状となっており、かつ、開口10Aを介して布部10内に足先を入れたときに、布部10内に入れた部分の皮膚に沿うことの可能な形状となっている。ここで、足先とは、例えば、右足または左足のうち、くるぶしよりも先の部分のことを指している。
【0015】
なお、布部10は、例えば、図示しないが、二箇所に開口10Aを有していてもよい。この場合には、一方の開口10Aが、禁煙用靴下1を履くときに足先を入れる開口となっており、他方の開口10Aが、禁煙用靴下1を履いたときに足指を露出させる開口となっている。
【0016】
複数の弾性粒状体20は、布部10の底部11に固着されており、より具体的には、使用者が禁煙用靴下1を履いたときに布部10の底部11のうち足裏に接する接触面11A(内側の面)に固着されている。つまり、複数の弾性粒状体20は、使用者が禁煙用靴下1を履いた状態で、起立したり、歩行したりしたときに、複数の弾性粒状体20の多くが足裏に接する位置に配置されている。複数の弾性粒状体20は、例えば、図1(B)に示したように、おおむね均等な間隔で、つま先に対応する部分から、かかとに対応する部分にかけて配置されている。
【0017】
なお、複数の弾性粒状体20は、図示しないが、接触面11Aのうち、かかとに対応する部分以外の部分にだけ配置されていてもよい。また、複数の弾性粒状体20は、図示しないが、接触面11A内において不均一な密度分布となるように配置されていてもよい。
【0018】
図2(A),(B)は、一の弾性粒状体20の断面構成の一例を表したものである。図2(A)は、使用者が禁煙用靴下1を使用する前の弾性粒状体20の断面構成の一例を表したものであり、図2(B)は、使用者が禁煙用靴下1を使用した後の弾性粒状体20の断面構成の一例を表したものである。なお、図2(A),(B)は、模式的に表したものであり、実際のスケールと一致するとは限らない。
【0019】
各弾性粒状体20は、例えば、図2(A)に模式的に示したように、有効成分含有体(図示せず)を内部に保持する複数の保持手段21と、複数の保持手段21を覆う弾性母材(マトリックス)22を有している。有効成分含有体は、例えば、液状物質である。液状物質とは、単独では形状を維持することの困難な低粘性物質を指している。有効成分含有体は、ニコチンを有効成分として含んでいる。
【0020】
ここで、ニコチンは、C10H14N2で表される化学式を持つ物質であり、例えば、合成によるラセミ体ニコチンを酒石酸にして分割されたi−スタキドリンおよびL−プロリンと共通の立体配置をもつ物質である。こうした種類のニコチンは、無色、油状の液体であり、水溶性を有している。従って、この種の水溶性の油液状ニコチンを有効成分含有体に含ませた場合には、水溶性の油液状ニコチンが汗(生理水)に溶解し、皮膚から摂取されやすい。ただし、水溶性の油液状ニコチンは、247℃に加熱したときに空気中で褐色に変化する性質を有しているので、後述する製造過程において、例えば、弾性母材22の前駆体である液状母材24を固形化する際の温度として、水溶性の油液状ニコチンが褐色に変化しない温度に設定することが可能な材料を、液状母材24として選択することが好ましい。なお、上述の水溶性の油液状ニコチンとは異なるニコチンを有効成分含有体に有効成分として含ませてもよい。
【0021】
複数の保持手段21は、外部からの圧力に応じて有効成分含有体を吐出することの可能な構造を有している。複数の保持手段21は、そのような構造として、内部に多数の微細な空隙を有する多孔質構造を有しており、例えば、多孔質材料によって構成されている。有効成分含有体は、多孔質構造内の空隙に収容されている。複数の保持手段21は、外部からの圧力が所定の値を超えたときに、内部の有効成分含有体を吐出するようになっている。各保持手段21の径は、例えば、各弾性粒状体20のスケール(例えば数mm)よりも一桁以上小さなスケール(例えば数百μm)となっている。また、各保持手段21内の各空隙は、例えば、各保持手段21のスケール(例えば数百μm)よりも一桁以上小さなスケール(例えば数十μm)となっている。多孔質材料は、高吸水性および高保水性を有している。
【0022】
高吸水性とは、多孔質材料に水を注いだときに、多孔質材料が、多孔質材料の重量よりも大きな重量の水を吸収することを指している。また、高保水性とは、多孔質材料を、多孔質材料が脱落しない程度の微細な開口を底面に多数有する容器に入れ、その容器に水をたっぷりと注いだ後、容器内の多孔質材料の上面全体に、樹脂などからなる板を載せ、その樹脂に対して所定の大きさの面圧力をかけたときに、容器内の水が容器の底面から外に継続的に漏れ出てこない性質を指している。ここで、上述の所定の大きさは、洗濯機などで禁煙用靴下1を洗ったときに、多孔質材料が破壊されたり、多孔質材料に吸収されていた水が洗濯機の水槽内に抽出されたりしない大きさ(例えば、3kg/cm2以上)であることが好ましい。また、上述の所定の大きさは、幼児が禁煙用靴下1を踏みつけたり噛んだりしたときに、多孔質材料が破壊されたり、多孔質材料に吸収されていた水が外部に抽出されたりしない大きさ(例えば、15kg/cm2以上)であることがより好ましい。
【0023】
なお、上記の「たっぷりと」とは、多孔質材料が吸収できる水の量の上限を超えない範囲内で、できるだけ沢山の水を注ぐことを意味している。ただし、多孔質材料が吸収できる水の量の上限は、多孔質材料および水の温度によって変化する。そのため、多孔質材料および水の温度を常温よりも高い温度(100℃以下)にした状態で多孔質材料に水を吸収させた場合には、多孔質材料および水の温度を常温にした状態で多孔質材料に水を吸収させた場合よりも、多くの量の水を多孔質材料に吸収させることができる。ところで、多孔質材料および水の温度を常温よりも高い温度にした状態で多孔質材料に水を吸収させたのち、多孔質材料および水の温度を低下させた場合には、多孔質材料に吸収されていた水が過飽和により多孔質材料の表面に結露する。従って、例えば、多孔質材料および有効成分含有体の温度を常温よりも高い温度にした状態で、多孔質材料に有効成分含有体を吸収させたのち、有効成分含有体を吸収した多孔質材料を液状母材24に混ぜ合わせ、最終的に弾性粒状体20を作成した後で、有効成分含有体を吸収した多孔質材料の温度を常温にした場合には、多孔質材料に吸収されていた有効成分含有体が、弾性母材22内において、多孔質材料の表面に結露する。
【0024】
また、上で示した圧力の大きさは、本発明が禁煙用靴下1の用途に適用されるときの値を例示したものであり、他の用途に適用されるときにも上記と同一の値になるとは限らない。また、「水が継続的に漏れ出てこない」ことは、水が、棒状に流れ落ちるのではなく、ぽたぽたと落下することを指している。
【0025】
多孔質材料のうち、高吸水性および高保水性を有している材料は、例えば、無機質からなる多孔質材料と、有機質からなる多孔質材料とに分類することができる。ここで、無機質からなる多孔質材料としては、例えば、ゼオライト(zeolite)が挙げられる。また、有機質からなる多孔質材料としては、例えば、珪藻土、高含水ポリマー、および繊維質パウダーが挙げられる。ゼオライトは、結晶中に微細孔を持つアルミノ珪酸塩の商品名である。珪藻土は、藻類の一種である珪藻の殻の化石よりなる堆積物(堆積岩)であり、二酸化ケイ素を主成分とするものである。高含水ポリマーは、例えば、(1)Ammonium salt of a high polymer organic acid、(2)Na−Carboxymetyl celluose、(3)Aqueous soltion of acrylic polymer、(4)Acrylic emulsion copolymer、(5)Crosslinked acrysol of emulsion copolymer、(6)Aqueous soltion of ammonium pol y methacylate、(7)Ammonium polyacylate、(8)Sodium polyacylate、(9)Modified sodium polyacylate、(10)Partial oxidized polyacylate、(11)Potassium salt of vinyl polymers、または(12)上記(1)〜(11)に記載のポリマーの変性、誘導品などが挙げられる。繊維質パウダーは、例えば、セルロースなどの繊維状炭水化物(多糖類)によって構成されたものである。従って、ゼオライト、珪藻土、高含水ポリマー、および繊維質パウダーのいずれも、人体に安全な材料といえる。
【0026】
「人体に安全」とは、例えば、多孔質材料およびスポンジ状材料が皮膚に触れたときに皮膚にかぶれが生じないことを指している。多孔質材料およびスポンジ状材料として、ゼオライトおよび珪藻土以外の材料を選択する際には、その材料が、ゼオライトおよび珪藻土と同様、人体に安全な材料であることが好ましい。複数の保持手段21が、ゼオライトまたは珪藻土を含んで構成されている場合には、例えば、図3に示したように、微細な粒子21Aが多数凝集した状態となっており、粒子21A内の空隙に有効成分含有体が収容されている。
【0027】
弾性母材22は、例えば、図2(A)に示したように、布部10の底部11に固着されており、より具体的には、布部10の底部11のうち接触面11Aに固着されている。弾性母材22は、例えば、後述の製造過程において、弾性母材22の前駆体である液状母材24を布部10の繊維の隙間に滲み込ませたのち、固体化させることによって、繊維に根張り形(アンカー形)にて固着されている。これにより、弾性母材22は、布部10にあたかも捺染された状態で固着されている。
【0028】
弾性母材22は、例えば、図2(A)に示したように、複数の保持手段21を覆っており、例えば、島状の凸形状となっている。弾性母材22は、複数の保持手段21のうち少なくとも一の保持手段21から吐出された有効成分含有体(液状物質またはゲル状物質)の外部への吐出量を制御する複数の通路23(図2(B)参照)が外部からの圧力に応じて形成されるようになっている。従って、弾性母材22に対して繰り返し、外部から所定の大きさ以上の圧力がかかった場合には、所定の大きさ以上の圧力のかかった回数に応じて、弾性母材22に形成される通路23の数が増える。弾性母材22の、上述したような性質は、後述の液状母材24、または有効成分含有体に含まれる揮発成分(例えば、水分)が製造過程において気化することにより発現する。
【0029】
複数の通路23は、禁煙用靴下1の未使用時に、弾性母材22の内部に既に形成されていてもよい。ただし、その場合には、複数の通路23の端部は、禁煙用靴下1の未使用時に、弾性母材22のうち布部10に接している部分とは異なる部分の表面に露出していないことが好ましい。
【0030】
弾性母材22は、例えば、一液付加型シリコーン、二液付加型シリコーン、ゴム系ラテックス、または自己架橋型エマルジョンを含んで構成されている。これらの材料は、人体に安全な材料である。弾性母材22の材料として、上で例示した材料以外の材料を選択する際には、その材料が、人体に安全な材料であることが好ましい。
【0031】
(製造方法について)
次に、本実施の形態の禁煙用靴下1の製造方法の一例について説明する。なお、以下では、有効成分含有体が液状物質である場合の製造方法について説明する。
【0032】
まず、弾性母材22の、製造過程における前駆体である液状母材24として、例えば、液状の一液付加型シリコーン、液状の二液付加型シリコーン、液状のゴム系ラテックス、または液状の自己架橋型エマルジョンを用意する。なお、以下に示したプロセス温度やプロセス時間は、液状母材24として液状の二液付加型シリコーンを用いたときの具体例であるが、液状母材24として他の材料を用いたときの具体例としても適用可能な値である。
【0033】
続いて、図示しないが、液状母材24に、有効成分含有体を内部に保持する複数の保持手段21を混ぜて、混合液を作成したのち、混合液を攪拌することにより、複数の保持手段21が微細な球状粒子となって液状母材24の中で分散した分散液25を作成する。
【0034】
次に、後述する転写工程において使用するマスク(図示せず)を用意する。このマスクは、例えば、網目状の基材の表面に、複数の開口を有する樹脂層(図示せず)が形成されたものである。さらに、後述する転写工程において布部10の形状を所定の形状にする際に使用する薄板(図示せず)を用意する。この薄板は、布部10の底部11に対応した形状および大きさの薄板であり、例えば、両端が半円形状に成形された略楕円形状となっている、厚さ1.5mmのアルミ薄板である。続いて、布部10の表裏を反対にした布部10Bに薄板を入れる。これにより、例えば、布織目の配列が整い、かつ皺が伸びるから、分散液25を正しい位置に転写することが可能となる。
【0035】
次に、分散液25をマスクの表面に垂らしたのち、捺染こて(図示せず)をマスクの表面にこすりつけながら移動させる。このようにして、分散液25をマスクの表面全体に延ばすと共に、マスクの各開口を介して分散液25を布部10Bの接触面11Aに転写することにより、分散液25は、布部10Bの底部11に浸透すると共に、布部10の繊維に食い込んで島状の凸形状に形成される。
【0036】
なお、分散液25の、接触面11Aへの転写は、上述のスクリーン印刷法に限られるものではなく、熱プレス法などの他の方法によってなされてもよい。また、分散液25の、接触面11Aへの転写に際して、プロセス温度は、常温であることが好ましい。マスクの基材の材料を選択する自由度を高くすることができるからである。上記プロセス温度は、常温よりも高い温度であってもよいが、分散液25に含まれる水溶性の油液状ニコチンが褐色に変化する温度よりも低い温度であることが好ましい。
【0037】
次に、布部10B上の分散液25に対して熱風(例えば200℃)を当てて、布部10B上の分散液25を加熱する。これにより、布部10B上の分散液25は、加熱により固形化するという履歴を経て、接触面11Aにしっかりと固着される。また、加熱により、分散液25に含まれる液状母材24に二次架橋が起こり、残留する気化酸化物が分解除去されて弾性母材22が形成される。さらに、分散液25に含まれる有効成分含有体から水分が気化して通路23、または通路23の前躯体が弾性母材22に形成される。なお、通路23の前躯体とは、禁煙用靴下1を使用している時に加えられる圧力によって通路23が形成されるような脆弱な性質を有する部分、または通路23の幅よりも極めて狭い幅を有する微細な通路を指している。なお、液状母材24が揮発成分(例えば、水分)を含む材料、具体的には、ゴム系ラテックスまたは自己架橋型エマルジョンを含んで構成されている場合には、液状母材24自体からも水分が気化して通路23、または通路23の前躯体が弾性母材22に形成される。このようにして、本実施の形態の禁煙用靴下1が製造される。
【0038】
(効果について)
本実施の形態の禁煙用靴下1では、有効成分含有体が複数の保持手段21によって保持されている。これにより、有効成分含有体が液状母材24と混ざり合い難い性質を有している場合であっても、複数の保持手段21がそのような性質を緩和する緩和材として作用するので、製造過程において有効成分含有体を液状母材24内に分散させておくことができる。その結果、有効成分含有体を最終的に弾性母材22内に分散させた状態で閉じ込めておくことができる。また、禁煙用靴下1では、複数の保持手段21が外部からの圧力に応じて有効成分含有体を吐出することの可能な構造を有している。さらに、複数の保持手段21を覆う弾性母材22が、保持手段21から吐出された有効成分含有体の外部への吐出量を制御する複数の通路23が外部からの圧力に応じて形成されるようになっている。これにより、例えば、複数の弾性粒状体20を足で踏むことにより、複数の弾性粒状体20に対して圧力をかけると、その圧力に応じて、複数の通路23が弾性母材22に形成されると共に、弾性母材22に形成された複数の通路23を介して、複数の保持手段21内の有効成分含有体が外部へ吐出される。有効成分含有体の外部への吐出量は、有効成分含有体が通過する通路23の数および径と、弾性粒状体20の数、大きさおよび形状とによって制御される。吐出された有効成分含有体は、例えば、複数の弾性粒状体20に対して圧力をかけた足の裏に付着したのち、足裏の皮膚を浸透して体内に吸収される。このように、禁煙用靴下1では、粘着剤を用いないで、適量の有効成分含有体を、皮膚を介して体内に吸収させることが可能である。さらに、禁煙用靴下1では、複数の弾性粒状体20に対して圧力をかけるだけで、有効成分含有体を、皮膚を介して体内に吸収させることができる。これにより、禁煙用靴下1内に有効成分含有体が残留している間は、使用者は禁煙用靴下1を再使用することができる。以上のことから、禁煙用靴下1によれば、粘着剤に起因する皮膚かぶれが生じる虞がなく、しかも再使用が可能である。
【0039】
また、本実施の形態では、有効成分含有体を吸収させる部位が足裏となっている。足裏の皮膚は、粘着剤だけでなく、ニコチン自体に対しても、かぶれ難い。従って、禁煙用靴下1によれば、粘着剤だけでなく、ニコチン自体に起因する皮膚かぶれが生じる虞がない。また、本実施の形態では、複数の弾性粒状体20が布部10という繊維状シートに固着されているので、布部10が足裏の皮膚呼吸を妨げることがない。従って、皮膚呼吸を妨げることに起因する皮膚かぶれも生じる虞がない。
【0040】
また、本実施の形態の製造過程において、保持手段21および有効成分含有体の温度を常温よりも高い温度にした状態で、保持手段21に有効成分含有体を吸収させたのち、有効成分含有体を吸収した保持手段21を液状母材24に混ぜ合わせ、最終的に弾性粒状体20を作成した後で、有効成分含有体を吸収した保持手段21の温度を常温にした場合には、保持手段21に吸収されていた有効成分含有体が、弾性母材22内において、保持手段21の表面に結露する。これにより、保持手段21の表面に結露した有効成分含有体は、保持手段21に吸収されている有効成分含有体よりも、より外部に吐出されやすくなるので、禁煙用靴下1の使用初期における有効成分含有体の吐出量を多くすることができる。従って、この場合には、即効性に優れている。
【0041】
ところで、禁煙補助具の一種として現在、普及しているニコチンパッチは、粘着剤を使用して皮膚に接触させるようになっている。そのため、ニコチンパッチを使用している間ずっと、粘着剤が皮膚に接することになるので、粘着剤に含まれる溶剤で皮膚がかぶれるという問題があった。また、皮膚からの発汗作用によって、粘着剤が肌から剥離、離脱し易いという問題もあった。さらに、一旦、粘着剤が肌から離脱すると、粘着剤の粘着力が弱まってしまい、ニコチンパッチを肌に再度、貼ることが難しいという問題もあった。つまり、ニコチンパッチには再使用ができないという問題があった。
【0042】
この再使用不可は、実用上、以下のようなときに特に問題となっていた。例えば、オーバードーズ(over−doze)によって使用者の気分が悪くなったときに、使用者がニコチンパッチを剥がしたとする。このとき、ニコチンパッチにはニコチンが残留していたとする。その後、使用者の気分が回復し、使用者はそのニコチンパッチを再使用しようとして、再度、皮膚に貼り付ける。しかし、その粘着剤は粘着力が弱まっているので、すぐに剥がれてしまい、使用者はニコチンパッチに残ったニコチンを使用することができない。その結果、使用者はそのニコチンパッチを捨てて、新しいニコチンパッチを使用せざるを得ないので、オーバードーズを適切にコントロールするためには、使用者はニコチンパッチを頻繁に使い捨てるしかないという問題が生じていた。高価なニコチンパッチを頻繁に使い捨てるというのは、使用者の経済的な負担を大きくすることから、禁煙の継続性を阻害する場合があった。
【0043】
一方、本実施の形態では、粘着剤でニコチンパッチを皮膚に貼り付けてニコチンパッチから染み出てきたニコチンを体内に吸収させる従来の摂取方法とは異なる原理で、有効成分含有体を体内に吸収させる。具体的には、例えば、複数の弾性粒状体20を足で踏んで、複数の弾性粒状体20を足裏の皮膚に接触させると共に、複数の弾性粒状体20から有効成分含有体を染み出させ、染み出させた有効成分含有体を体内に吸収させる。これにより、使用者は、禁煙用靴下1を何度でも、脱いだり、履いたりすることが可能であることから、禁煙用靴下1内に有効成分含有体が残留している間は、何度でも禁煙用靴下1を再使用することが可能である。その結果、使用者は、禁煙用靴下1を脱いだり、履いたりするだけで、オーバードーズを適切にコントロールすることが可能である。従って、禁煙用靴下1では、使用者の経済的な負担が極めて小さく、禁煙の継続性が促進される。
【0044】
<第1の実施の形態の変形例>
[変形例1]
(構成について)
上記実施の形態では、各弾性粒状体20には、多孔質構造を有する複数の保持手段21が内蔵されていたが、例えば、図4(A)に示したように、複数の保持手段21の代わりに、複数の保持手段26が内蔵されていてもよい。複数の保持手段26は、複数の保持手段21と同様、外部からの圧力に応じて有効成分含有体を吐出することの可能な構造を有している。複数の保持手段26は、そのような構造として、例えば、図5の断面図に模式的に示したように、有効成分含有体27を覆う柔軟膜28を有している。柔軟膜28は、外部からの圧力が所定の値を超えたときに破裂して、内部の有効成分含有体27を吐出するようになっている。
【0045】
柔軟膜28(保持手段26)の径(粒径)は、例えば、各弾性粒状体20のスケール(例えば数mm)よりも一桁以上小さなスケール(例えば数百μm)となっている。柔軟膜28の膜厚は、柔軟膜28の粒径の1/2よりも小さな値となっている。一の弾性粒状体20内に含まれる全ての柔軟膜28の粒径が、均一となっていてもよいし、均一となっていなくてもよい。一の弾性粒状体20内に含まれる全ての柔軟膜28の粒径が均一となっていない例としては、一の弾性粒状体20内に含まれる複数の柔軟膜28が、粒径の異なる複数種類の柔軟膜28によって構成されている場合が挙げられる。一の弾性粒状体20内に含まれる柔軟膜28の柔らかさ(または膜厚)は、均一となっていてもよいし、均一となっていなくてもよい。一の弾性粒状体20内に含まれる全ての柔軟膜28の柔らかさ(または膜厚)が均一となっていない例としては、一の弾性粒状体20内に含まれる複数の柔軟膜28が、柔らかさ(または膜厚)の異なる複数種類の柔軟膜28によって構成されている場合が挙げられる。なお、一の弾性粒状体20内に含まれる全ての柔軟膜28の粒径が均一となっておらず、さらに、一の弾性粒状体20内に含まれる全ての柔軟膜28の柔らかさ(または膜厚)も均一となっていなくてもよい。
【0046】
上述したように、柔軟膜28の粒径および柔らかさ(または膜厚)のうち少なくとも1つが、一の弾性粒状体20内に含まれる全ての柔軟膜28において均一となっていない場合には、それぞれの柔軟膜28の、外部からの圧力に対する破裂し易さが、柔軟膜28の粒径および柔らかさ(または膜厚)に応じて異なる。もっとも、柔軟膜28の粒径および柔らかさ(または膜厚)が、一の弾性粒状体20内に含まれる全ての柔軟膜28において均一となっている場合であっても、外部からの圧力に対する破裂し易さは、柔軟膜28の、一の弾性粒状体20内の位置や、柔軟膜28の、通路23との位置関係などによって異なる。
【0047】
有効成分含有体27は、例えば、ゲル状物質である。ゲル状物質とは、半固体物質ともいえるものであり、単独で形状を維持することの可能な中粘性物質または高粘性物質を指している。有効成分含有体27は、上記第1の実施の形態と同様、ニコチンを有効成分として含んでいる。このニコチンは、上記第1の実施の形態と同様のものである。一方、柔軟膜28は、外部からの圧力に応じて屈曲する薄くて柔らかい膜であり、例えば、寒天、こんにゃく、およびゼラチンなどの、感熱性のゲル化材に、塩化カルシウム水溶液(ニガリ)などの凝固材を混ぜる(または接触させる)ことにより形成されるものである。なお、凝固材は、塩化カルシウム水溶液に限られるものではなく、例えば、塩化マグネシウムなどの多価塩の水溶液であってもよい。弾性母材22は、本実施の形態では、揮発成分(例えば水分)を含む材料、例えば、ゴム系ラテックス、または自己架橋型エマルジョンを含んで構成されている。
【0048】
(製造方法について)
次に、本変形例に係る禁煙用靴下1の製造方法の一例について説明する。なお、以下では、有効成分含有体がゲル状物質である場合の製造方法について説明する。
【0049】
まず、上述したゲル化材を水で煮て融かす。次に、その溶液に、油液状のニコチンと、種々の添加剤(例えばアルギン酸ナトリウムの水溶液)とを添加し混ぜ合わせて、混合液を作成したのち、その混合液を攪拌することにより分散液29を作成する(図示せず)。
【0050】
次に、分散液29を、加温された溶液槽500内に入れて、分散液29を所定の温度(例えば70℃±10℃)で加温する(図6参照)。なお、溶液槽500の底面には、例えば、多数の孔510が設けられており、溶液槽500は、複数の孔510を介して、溶液槽500内の分散液29を滴下することが可能となっている。各孔510の径は、例えば、各弾性粒状体20のスケール(例えば数mm)よりも一桁以上小さなスケール(例えば数百μm)となっている。各孔510の径は、互いに等しくなっていてもよいし、互いに等しくなっていなくてもよい。溶液槽500から分散液29を滴下しない間、孔510は封鎖されている。
【0051】
なお、柔軟膜28の粒径は、孔510の径を調整することにより、変更可能である。従って、粒径の異なる複数種類の柔軟膜28を形成したい場合には、例えば、溶液槽500として、粒径の異なる複数種類の孔510を底面に有する溶液槽を用意するか、または、複数の孔510の粒径を溶液槽ごとに異ならせた複数の溶液槽を用意すればよい。
【0052】
次に、溶液槽500の直下に、上述した凝固材からなる溶液30が入れられた溶液槽600を用意する。続いて、孔510の封鎖を解除して、溶液30に分散液29を滴下する(図6)。孔510から滴下された後の分散液29は、例えば、図6に示したように、球状となっている。この球状の分散液29(球状分散液29A)は、溶液30内に浸漬すると、球状分散液29Aの表面部分が溶液30と反応して凝固し、柔軟膜28となる。柔軟膜28の膜厚は、溶液30内での浸漬時間および凝固材の濃度によって制御可能である。その後、図示しないが、分散液29を保持する柔軟膜28を洗浄して、柔軟膜28の表面から溶液30を除去する。このようにして、有効成分含有体27を内部に保持する複数の保持手段26が作成される。
【0053】
なお、有効成分含有体27を内部に保持する複数の保持手段26は、例えば、以下の製造方法によっても作成可能である。まず、上述した方法を用いて、分散液29を作成する(図示せず)。次に、分散液29を、冷却された溶液槽内に入れて、分散液29を冷却し、固形化することにより、固形物29Bを作成する(図7(A))。続いて、固形物29Bを、ミキサーなどで粉砕して、複数の破砕片29Cにする(図7(B))。各破砕片29Cの径は、例えば、各弾性粒状体20のスケール(例えば数mm)よりも一桁以上小さなスケール(例えば数百μm)となっている。
【0054】
次に、上述した凝固材からなる溶液30が入れられた溶液槽600を用意する。続いて溶液30に複数の破砕片29Cを投入する(図7(C))。複数の破砕片29Cは、溶液30内に浸漬すると、その表面部分が溶液30と反応して凝固し、柔軟膜28となる。その後、図示しないが、破砕片29Cを保持する柔軟膜28を洗浄して、柔軟膜28の表面から溶液30を除去する。このようにして、有効成分含有体27を内部に保持する複数の保持手段26が作成される。
【0055】
次に、上記のようにして作成された、有効成分含有体27を内部に保持する複数の保持手段26を利用して、禁煙用靴下1の作成を行う。具体的には、まず、図示しないが、液状母材24に、有効成分含有体27を内部に保持する複数の保持手段26を混ぜて、混合液を作成したのち、混合液を攪拌することにより、複数の保持手段26が微細な球状粒子となって液状母材24の中で分散した分散液31を作成する。
【0056】
次に、上記実施の形態と同様、例えば、スクリーン印刷法を用いて、分散液31を布部10Bの接触面11Aに転写する。次に、布部10B上の分散液31に対して熱風(例えば200℃)を当てて、布部10B上の分散液31を加熱する。これにより、布部10B上の分散液31は、加熱により固形化するという履歴を経て、接触面11Aにしっかりと固着される。また、加熱により、分散液31に含まれる液状母材24に二次架橋が起こり、残留する気化酸化物が分解除去されて弾性母材22が形成される。さらに、液状母材24に含まれる揮発成分(例えば、水分)が気化して通路23、または通路23の前躯体が弾性母材22に形成される。なお、有効成分含有体はゲル状物質であるので、有効成分含有体に含まれる水分はほとんど気化しない。このようにして、本変形例の禁煙用靴下1が製造される。
【0057】
(効果について)
本変形例では、有効成分含有体27が複数の保持手段26によって保持されている。これにより、有効成分含有体27を最終的に弾性母材22内に分散させた状態で閉じ込めておくことができる。また、本変形例では、複数の保持手段26が外部からの圧力に応じて有効成分含有体27を吐出することの可能な構造を有している。さらに、複数の保持手段26を覆う弾性母材22が、保持手段26から吐出された有効成分含有体27の外部への吐出量を制御する複数の通路23が外部からの圧力に応じて形成されるようになっている。これにより、粘着剤を用いないで、適量の有効成分含有体27を、皮膚を介して体内に吸収させることが可能である。さらに、本変形例では、複数の弾性粒状体20に対して圧力をかけるだけで、有効成分含有体27を、皮膚を介して体内に吸収させることができる。これにより、本変形例に係る禁煙用靴下1内に有効成分含有体27が残留している間は、使用者は本変形例に係る禁煙用靴下1を何度でも再使用することができる。以上のことから、本変形例に係る禁煙用靴下1によれば、粘着剤に起因する皮膚かぶれが生じる虞がなく、しかも再使用が可能である。
【0058】
また、本変形例では、上記実施の形態と同様、有効成分含有体27を吸収させる部位が足裏となっている。従って、本変形例に係る禁煙用靴下1によれば、粘着剤だけでなく、ニコチン自体に起因する皮膚かぶれが生じる虞がない。また、本変形例では、上記実施の形態と同様、複数の弾性粒状体20が布部10という繊維状シートに固着されているので、布部10が足裏の皮膚呼吸を妨げることがない。従って、皮膚呼吸を妨げることに起因する皮膚かぶれも生じる虞がない。
【0059】
また、本変形例に係る禁煙用靴下1を再使用することが可能であることから、使用者は、本変形例に係る禁煙用靴下1を脱いだり、履いたりするだけで、オーバードーズを適切にコントロールすることが可能である。従って、本変形例に係る禁煙用靴下1では、使用者の経済的な負担が極めて小さく、禁煙の継続性が促進される。
【0060】
また、本変形例では、有効成分含有体27を保持するものとして柔軟膜28が用いられている。これにより、一の弾性粒状体20内に含まれる複数の柔軟膜28において、柔軟膜28の粒径および柔らかさのうち少なくとも1つを異ならせることにより、それぞれの柔軟膜28の、外部からの圧力に対する破裂し易さを異ならせることが可能となる。その結果、有効成分含有体27の吐出量の制御を、弾性母材22だけでなく、柔軟膜28にも担わせることができる。従って、吐出量の制御を自由度高く、行うことができる。
【0061】
なお、一の弾性粒状体20内に含まれる全ての柔軟膜28の粒径および柔らかさが均一となっている場合であっても、柔軟膜28の、一の弾性粒状体20内の位置や、柔軟膜28の、通路23との位置関係などによって、それぞれの柔軟膜28の、外部からの圧力に対する破裂し易さを異ならせることが可能である。従って、この場合にも、有効成分含有体27の吐出量の制御を、弾性母材22だけでなく、柔軟膜28にもある程度、担わせることが可能であるので、吐出量の制御を、ある程度の自由度でもって、行うことができる。
【0062】
[変形例2]
上記実施の形態および変形例1では、複数の弾性粒状体20が布部10に固着されていたが、例えば、図示しないが、パンツなどの衣類に固着されていてもよい。複数の弾性粒状体20がパンツに固着されていた場合には、使用者が椅子などに着席したときに、お尻により複数の弾性粒状体20に圧力がかかり、その圧力によって吐出された有効成分含有体が、複数の弾性粒状体20に対して圧力をかけたお尻に付着したのち、お尻の皮膚を浸透して体内に吸収される。
【0063】
ここで、お尻は、足裏と同様、粘着剤だけでなく、ニコチン自体に対しても、かぶれ難い。従って、本変形例に係る禁煙用靴下1によれば、上記実施の形態および変形例1と同様に、粘着剤だけでなく、ニコチン自体に起因する皮膚かぶれが生じる虞がない。
【0064】
[変形例3]
上記実施の形態および変形例1,2では、複数の弾性粒状体20が布部10に固着されていたが、布部10とは異なる材料からなる屈曲性を有する繊維状シートに固着されていてもよい。
【0065】
<第2の実施の形態>
(構成について)
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る禁煙用シート2の概略構成の一例を表したものである。図9は、図8の禁煙用シート2をグリップ部材40に巻きつけたときの様子の一例を表したものである。なお、禁煙用シート2が、本発明の「経皮デバイス」の一具体例に相当する。
【0066】
この禁煙用シート2は、例えばニコチンパッチおよびニコチンガムなどの禁煙補助具の一種であり、ニコチンを摂取しつつ、禁煙を行う際に使用されるものである。禁煙用シート2は、シート状の基材32と、複数の弾性粒状体33とを備えている。基材32は、屈曲性を有する繊維状シートによって構成されたものである。屈曲性を有する繊維状シートとしては、例えば、合成繊維シート、通気性シート、布地、または紙などが挙げられる。複数の弾性粒状体33は、上記実施の形態またはその変形例の複数の弾性粒状体20と同様の構造および材料によって構成されており(図2(A),(B)、図6参照)、かつ、基材32に固着されている。
【0067】
禁煙用シート2は、さらに、基材32のうち、複数の弾性粒状体33が固着されている面とは反対側の面に、把持可能な物体(例えば上述のグリップ部材40)に基材32を貼付するための粘着層34と、未使用時に粘着層34を保護する保護膜35とを有している。粘着層34は、把持可能な物体に基材32を貼付することが可能であって、かつ禁煙用シート2を使用した後に基材32を容易に剥がすことが可能な粘着力を有している。保護膜35は、禁煙用シート2を使用する際に、禁煙用シート2から剥がされるものである。
【0068】
(製造方法について)
禁煙用シート2のうち粘着層34および保護膜35以外の部分については、上記実施の形態およびその変形例の禁煙用靴下1の製造方法において、布部10を基材32に置き換えることによって、製造可能なものである。そこで、まず、上記実施の形態およびその変形例の禁煙用靴下1の製造方法と同様の方法を用いて、禁煙用シート2のうち粘着層34および保護膜35以外の部分(禁煙用シート2A)を作成する。次に、禁煙用シート2Aのうち複数の弾性粒状体33が固着されている面とは反対側の面に、粘着層34および保護膜35をこの順に積層する。このようにして、本実施の形態の禁煙用シート2が製造される。
【0069】
(効果について)
本実施の形態では、上記実施の形態と同様、有効成分含有体が複数の保持手段21または複数の保持手段26によって保持されている。これにより、有効成分含有体を最終的に弾性母材22内に分散させた状態で閉じ込めておくことができる。また、本実施の形態では、複数の保持手段21または複数の保持手段26が外部からの圧力に応じて有効成分含有体を吐出することの可能な構造を有している。さらに、複数の保持手段21または複数の保持手段26を覆う弾性母材22が、複数の保持手段21または複数の保持手段26から吐出された有効成分含有体の外部への吐出量を制御する複数の通路23が外部からの圧力に応じて形成されるようになっている。これにより、例えば、保護膜35を剥がし、禁煙補助シート2をグリップ部材40に貼り付けたのち、グリップ部材40に貼り付けた禁煙補助シート2を手で握ることにより、複数の弾性粒状体20に対して圧力をかけると、その圧力に応じて、複数の通路23が弾性母材22に形成されると共に、弾性母材22に形成された複数の通路23を介して、複数の保持手段21または複数の保持手段26内の有効成分含有体が外部へ吐出される。有効成分含有体の外部への吐出量は、有効成分含有体が通過する通路23の数および径と、弾性粒状体20の数、大きさおよび形状とによって制御される。吐出された有効成分含有体は、例えば、複数の弾性粒状体20に対して圧力をかけた手のひらに付着したのち、手のひらの皮膚を浸透して体内に吸収される。このように、禁煙補助シート2は、粘着剤を用いないで、適量の有効成分含有体を、皮膚を介して体内に吸収させることが可能となっている。さらに、禁煙補助シート2は、複数の弾性粒状体20に対して圧力をかけるだけで、有効成分含有体を、皮膚を介して体内に吸収させることが可能となっている。これにより、禁煙補助シート2内に有効成分含有体が残留している間は、禁煙補助シート2を再使用することが可能である。以上のことから、本実施の形態の禁煙補助シート2によれば、粘着剤に起因する皮膚かぶれが生じる虞がなく、しかも再使用が可能である。
【0070】
また、本実施の形態では、有効成分含有体を吸収させる部位が手のひらとなっている。従って、本実施の形態の禁煙補助シート2によれば、粘着剤だけでなく、ニコチン自体に起因する皮膚かぶれが生じる虞がない。また、本実施の形態では、上記実施の形態と同様、複数の弾性粒状体20が基材32という繊維状シートに固着されているので、基材32が手のひらの皮膚呼吸を妨げることがない。従って、皮膚呼吸を妨げることに起因する皮膚かぶれも生じる虞がない。
【0071】
また、本実施の形態では、禁煙補助シート2を再使用することが可能であることから、使用者は、禁煙補助シート2を時々、握るだけで、オーバードーズを適切にコントロールすることが可能である。従って、本実施の形態の禁煙補助シート2では、使用者の経済的な負担が極めて小さく、禁煙の継続性が促進される。
【0072】
<第2の実施の形態の変形例>
[変形例1]
上記第2の実施の形態では、禁煙補助シート2はグリップ部材40に巻きつけた状態で使用されていたが、例えば、一般的な靴下の底部のうち足裏に接する接触面(内側の面)、またはパンツなどの衣類のうち肌に触れる面に張り付けた状態で使用されてもよい。
【0073】
<第1および第2の実施の形態に共通する変形例>
以上、実施の形態およびその変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。
【0074】
例えば、上記実施の形態等では、有効成分含有体はニコチンを有効成分として含んでいたが、それ以外の物質を有効成分として含んでいてもよい。例えば、有効成分含有体は、びんろ抽出液を有効成分として含んでいてもよい。
【0075】
また、上記実施の形態等では、禁煙用靴下1および禁煙用シート2には、複数の弾性粒状体20,33が設けられていたが、必要に応じて、1つの弾性粒状体20,33が設けられていてもよい。例えば、図10に示したように、禁煙用シート2において、1つの弾性粒状体33が設けられていてもよい。
【0076】
また、上記実施の形態等では、通路23は、製造過程において自然に形成されるか、または、禁煙用靴下1または禁煙用シート2を使用している時に印加される圧力によって形成されていたが、さらに、例えば、針などで弾性母材22を突き刺すなどにより、人為的に形成されていてもよい。
【0077】
また、上記実施の形態等では、本発明を禁煙補助具に適用した場合について説明されていたが、本発明をそれ以外の用途に適用することももちろん可能である。ただし、その場合には、有効成分含有体は、用途に応じた有効成分を含有している。例えば、本発明を心臓病の治療具に適用する場合には、有効成分含有体は、例えば、ニトログリセリンを有効成分として含有している。また、例えば、本発明を水虫の治療具に適用する場合には、有効成分含有体は、例えば、坑白癬菌剤を有効成分として含有している。また、例えば、本発明を花粉症の治療具に適用する場合には、有効成分含有体は、例えば、坑ヒスタミン剤を有効成分として含有している。
【符号の説明】
【0078】
1…禁煙用靴下、2…禁煙用シート、10,10B…布部、10A…開口、11…底部、11A…接触面、20,33…弾性粒状体、21,26…保持手段、21A…粒子、22…弾性母材、23…通路、24…液状母材、25,29,31…分散液、27…有効成分含有体、28…柔軟膜、29A…球状分散液、29B…固形物、29C…破砕片、30…溶液、32…基材、34…粘着層、35…保護層、40…グリップ部材、500,600…溶液槽、510…孔。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばニコチンなどの有効成分を皮膚から体内に吸収させる経皮デバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
禁煙を試みる場合、とくに長時間にわたり禁煙をしている者にとっては苦痛が伴う。これは、禁煙という「生活習慣」および「精神的依存」からの脱却が必要なうえ、禁煙により体内に溜まったニコチンの量が減少し、ニコチンを摂取しようと欲する、いわゆる「ニコチン中毒(依存症)」の状態になるからである。そこで、ニコチンを摂取しつつ、禁煙を行う方法として、禁煙補助具を使用する方法がある。この禁煙補助具は、例えば、ニコチンを含浸させたパッチ方式の粘着剤であり、これを肌に貼り、禁煙中にニコチンを皮膚から体内に吸収させるようになっている(特許文献1参照)。このような禁煙補助具を使用する禁煙方法では、ニコチン摂取量を段階的に減量していきながら最終的にゼロにし、その間に禁煙の習慣を身に付けることが目標となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許文献1:特開2003−034633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、パッチ方式の粘着剤では、粘着剤が皮膚に長時間、接するので、粘着剤に含まれる溶剤で皮膚がかぶれるという問題があった。また、皮膚からの発汗作用によって、粘着剤が肌から剥離、離脱し易いという問題もあった。さらに、一旦、粘着剤が肌から離脱すると、粘着剤の粘着力が弱まってしまい、粘着剤を肌に再度、貼ることが難しいという問題もあった。つまり、パッチ方式の粘着剤では、再使用ができないという問題があった。なお、これらの問題は、ニコチン以外の有効成分を皮膚から体内に吸収させる場合にも、同様に生じるものである。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、粘着剤に起因する皮膚かぶれが生じる虞がなく、しかも繰り返し使用が可能な経皮デバイスおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による経皮デバイスは、基材と、基材に固着された複数の弾性粒状体とを備えたものである。複数の弾性粒状体は、液状物質またはゲル状物質と、液状物質またはゲル状物質を内部に保持すると共に外部からの圧力に応じて吐出することの可能な構造を有する複数の保持手段と、複数の保持手段を覆う弾性母材とを有している。弾性母材は、保持手段から吐出された液状物質またはゲル状物質の外部への吐出量を制御する複数の通路が外部からの圧力に応じて形成されるようになっている。
【0007】
本発明による経皮デバイスでは、液状物質またはゲル状物質が複数の保持手段によって保持されている。これにより、例えば、液状物質またはゲル状物質が、弾性母材の、製造過程における前駆体である液状母材と混ざり合い難い性質を有している場合であっても、複数の保持手段がそのような性質を緩和する緩和材として作用するので、製造過程において液状物質またはゲル状物質を液状母材内に分散させておくことができる。その結果、最終的に弾性母材内に液状物質またはゲル状物質を分散させた状態で閉じ込めておくことができる。また、本発明による経皮デバイスでは、複数の保持手段が、外部からの圧力に応じて液状物質またはゲル状物質を吐出することの可能な構造を有している。さらに、複数の保持手段を覆う弾性母材が、保持手段から吐出された液状物質またはゲル状物質の外部への吐出量を制御する複数の通路が外部からの圧力に応じて形成されるようになっている。これにより、例えば、複数の弾性粒状体を足で踏んだり、手で握ったりすることにより、複数の弾性粒状体に対して圧力をかけると、その圧力に応じて、複数の通路が弾性母材に形成されると共に、弾性母材に形成された複数の通路を介して、複数の保持手段内の液状物質またはゲル状物質が外部へ吐出される。液状物質またはゲル状物質の外部への吐出量は、主に、液状物質またはゲル状物質が通過する通路によって制御される。吐出された液状物質またはゲル状物質は、例えば、複数の弾性粒状体に対して圧力をかけた足または手の表面(皮膚)に付着したのち、皮膚を浸透して体内に吸収される。
【0008】
本発明による経皮デバイスの製造方法は、以下の2つの工程を含むものである。
(1)液状物質またはゲル状物質を内部に保持すると共に外部からの圧力に応じて吐出する複数の保持手段を液状母材に混合し攪拌することにより、複数の保持手段が微細な球状粒子となって分散した分散液を作成する工程
(2)分散液を基材表面の所定の位置に配置したのち、基材表面の分散液を加熱する工程
【0009】
本発明による経皮デバイスの製造方法では、液状物質またはゲル状物質が複数の保持手段によって保持されている。これにより、例えば、液状物質またはゲル状物質が、弾性母材の、製造過程における前駆体である液状母材と混ざり合い難い性質を有している場合であっても、複数の保持手段がそのような性質を緩和する緩和材として作用するので、製造過程において液状物質またはゲル状物質を液状母材内に分散させておくことができる。その結果、最終的に弾性母材内に液状物質またはゲル状物質を分散させた状態で閉じ込めておくことができる。また、本発明による経皮デバイスの製造方法では、複数の保持手段が、外部からの圧力に応じて液状物質またはゲル状物質を吐出することの可能な構造を有している。さらに、分散液は基材表面に配置された状態で加熱される。これにより、保持手段から吐出された液状物質またはゲル状物質の外部への吐出量を制御する複数の通路が外部からの圧力に応じで形成され得る弾性母材が形成される。その結果、例えば、複数の弾性粒状体を足で踏んだり、手で握ったりすることにより、複数の弾性粒状体に対して圧力をかけると、その圧力に応じて、複数の通路が弾性母材に形成されると共に、弾性母材に形成された複数の通路を介して、複数の保持手段内の液状物質またはゲル状物質が外部へ吐出される。液状物質またはゲル状物質の外部への吐出量は、主に、液状物質またはゲル状物質が通過する通路によって制御される。吐出された液状物質またはゲル状物質は、例えば、複数の弾性粒状体に対して圧力をかけた足または手の表面(皮膚)に付着したのち、皮膚を浸透して体内に吸収される。
【発明の効果】
【0010】
本発明による経皮デバイスおよびその製造方法によれば、粘着剤を用いないで、適量の液状物質またはゲル状物質を、皮膚を介して体内に吸収させることが可能である。さらに、複数の弾性粒状体に対して圧力をかけるだけで、液状物質またはゲル状物質を、皮膚を介して体内に吸収させることが可能である。これにより、当該経皮デバイス内に液状物質またはゲル状物質が残留している間は、当該経皮デバイスを繰り返し使用することが可能である。以上のことから、粘着剤に起因する皮膚かぶれが生じる虞がなく、しかも繰り返し使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による第1の実施の形態に係る禁煙用靴下の概略構成と、その禁煙用靴下の底部のうち足裏に接する接触面の上面構成を表した図である。
【図2】図1の弾性粒状体の断面構成の一例を表した図である。
【図3】図2の保持手段の一例を表した図である。
【図4】図1の弾性粒状体の断面構成の他の例を表した図である。
【図5】図4の保持手段の断面構成の一例を表した図である。
【図6】図5の保持手段の製造方法の一例を説明するための図である。
【図7】図5の保持手段の製造方法の他の例を説明するための図である。
【図8】本発明による第2の実施の形態に係る禁煙用シートの概略構成を表した図である。
【図9】図8の禁煙用シートをグリップ部材に巻きつけた様子を表した図である。
【図10】図8の禁煙用シートに1つの弾性粒状体が設けられている様子を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(図1〜図3)
○基材として靴下が用いられている例
○保持手段として多孔質材料が用いられている例
○有効成分含有体がニコチンを有効成分として含んでいる例
○複数の弾性粒状体が設けられている例
2.第1の実施の形態の変形例(図4〜図7)
○保持手段として柔軟膜が用いられている例
3.第2の実施の形態(図8、図9)
○基材として布地などが用いられている例
○保持手段として多孔質材料、または柔軟膜が用いられている例
○有効成分含有体がニコチンを有効成分として含んでいる例
○複数の弾性粒状体が設けられている例
○基材がグリップ部材に貼り付けられている例
4.第2の実施の形態の変形例(図なし)
○基材が靴下などに貼り付けられている例
5.第1および第2の実施の形態に共通する変形例
○有効成分含有体がニコチン以外の物質を有効成分として含んでいる例
○1つの弾性粒状体が設けられている例(図10)
【0013】
<第1の実施の形態>
(構成について)
図1(A)は、本発明の第1の実施の形態に係る禁煙用靴下1の概略構成の一例を表したものである。図1(B)は、図1(A)の禁煙用靴下1の底部11のうち足裏に接する接触面11A(内側の面)の概略構成の一例を表したものである。なお、禁煙用靴下1が、本発明の「経皮デバイス」の一具体例に相当する。また、底部11が、本発明の「基材」の一具体例に相当する。
【0014】
この禁煙用靴下1は、例えばニコチンパッチおよびニコチンガムなどの禁煙補助具の一種であり、ニコチンを摂取しつつ、禁煙を行うためのものである。禁煙用靴下1は、布部10と、複数の弾性粒状体20とを備えている。布部10は、織布または不織布によって構成されたものである。布部10は、例えば、一箇所に開口10Aを有する筒状の形状となっており、かつ、開口10Aを介して布部10内に足先を入れたときに、布部10内に入れた部分の皮膚に沿うことの可能な形状となっている。ここで、足先とは、例えば、右足または左足のうち、くるぶしよりも先の部分のことを指している。
【0015】
なお、布部10は、例えば、図示しないが、二箇所に開口10Aを有していてもよい。この場合には、一方の開口10Aが、禁煙用靴下1を履くときに足先を入れる開口となっており、他方の開口10Aが、禁煙用靴下1を履いたときに足指を露出させる開口となっている。
【0016】
複数の弾性粒状体20は、布部10の底部11に固着されており、より具体的には、使用者が禁煙用靴下1を履いたときに布部10の底部11のうち足裏に接する接触面11A(内側の面)に固着されている。つまり、複数の弾性粒状体20は、使用者が禁煙用靴下1を履いた状態で、起立したり、歩行したりしたときに、複数の弾性粒状体20の多くが足裏に接する位置に配置されている。複数の弾性粒状体20は、例えば、図1(B)に示したように、おおむね均等な間隔で、つま先に対応する部分から、かかとに対応する部分にかけて配置されている。
【0017】
なお、複数の弾性粒状体20は、図示しないが、接触面11Aのうち、かかとに対応する部分以外の部分にだけ配置されていてもよい。また、複数の弾性粒状体20は、図示しないが、接触面11A内において不均一な密度分布となるように配置されていてもよい。
【0018】
図2(A),(B)は、一の弾性粒状体20の断面構成の一例を表したものである。図2(A)は、使用者が禁煙用靴下1を使用する前の弾性粒状体20の断面構成の一例を表したものであり、図2(B)は、使用者が禁煙用靴下1を使用した後の弾性粒状体20の断面構成の一例を表したものである。なお、図2(A),(B)は、模式的に表したものであり、実際のスケールと一致するとは限らない。
【0019】
各弾性粒状体20は、例えば、図2(A)に模式的に示したように、有効成分含有体(図示せず)を内部に保持する複数の保持手段21と、複数の保持手段21を覆う弾性母材(マトリックス)22を有している。有効成分含有体は、例えば、液状物質である。液状物質とは、単独では形状を維持することの困難な低粘性物質を指している。有効成分含有体は、ニコチンを有効成分として含んでいる。
【0020】
ここで、ニコチンは、C10H14N2で表される化学式を持つ物質であり、例えば、合成によるラセミ体ニコチンを酒石酸にして分割されたi−スタキドリンおよびL−プロリンと共通の立体配置をもつ物質である。こうした種類のニコチンは、無色、油状の液体であり、水溶性を有している。従って、この種の水溶性の油液状ニコチンを有効成分含有体に含ませた場合には、水溶性の油液状ニコチンが汗(生理水)に溶解し、皮膚から摂取されやすい。ただし、水溶性の油液状ニコチンは、247℃に加熱したときに空気中で褐色に変化する性質を有しているので、後述する製造過程において、例えば、弾性母材22の前駆体である液状母材24を固形化する際の温度として、水溶性の油液状ニコチンが褐色に変化しない温度に設定することが可能な材料を、液状母材24として選択することが好ましい。なお、上述の水溶性の油液状ニコチンとは異なるニコチンを有効成分含有体に有効成分として含ませてもよい。
【0021】
複数の保持手段21は、外部からの圧力に応じて有効成分含有体を吐出することの可能な構造を有している。複数の保持手段21は、そのような構造として、内部に多数の微細な空隙を有する多孔質構造を有しており、例えば、多孔質材料によって構成されている。有効成分含有体は、多孔質構造内の空隙に収容されている。複数の保持手段21は、外部からの圧力が所定の値を超えたときに、内部の有効成分含有体を吐出するようになっている。各保持手段21の径は、例えば、各弾性粒状体20のスケール(例えば数mm)よりも一桁以上小さなスケール(例えば数百μm)となっている。また、各保持手段21内の各空隙は、例えば、各保持手段21のスケール(例えば数百μm)よりも一桁以上小さなスケール(例えば数十μm)となっている。多孔質材料は、高吸水性および高保水性を有している。
【0022】
高吸水性とは、多孔質材料に水を注いだときに、多孔質材料が、多孔質材料の重量よりも大きな重量の水を吸収することを指している。また、高保水性とは、多孔質材料を、多孔質材料が脱落しない程度の微細な開口を底面に多数有する容器に入れ、その容器に水をたっぷりと注いだ後、容器内の多孔質材料の上面全体に、樹脂などからなる板を載せ、その樹脂に対して所定の大きさの面圧力をかけたときに、容器内の水が容器の底面から外に継続的に漏れ出てこない性質を指している。ここで、上述の所定の大きさは、洗濯機などで禁煙用靴下1を洗ったときに、多孔質材料が破壊されたり、多孔質材料に吸収されていた水が洗濯機の水槽内に抽出されたりしない大きさ(例えば、3kg/cm2以上)であることが好ましい。また、上述の所定の大きさは、幼児が禁煙用靴下1を踏みつけたり噛んだりしたときに、多孔質材料が破壊されたり、多孔質材料に吸収されていた水が外部に抽出されたりしない大きさ(例えば、15kg/cm2以上)であることがより好ましい。
【0023】
なお、上記の「たっぷりと」とは、多孔質材料が吸収できる水の量の上限を超えない範囲内で、できるだけ沢山の水を注ぐことを意味している。ただし、多孔質材料が吸収できる水の量の上限は、多孔質材料および水の温度によって変化する。そのため、多孔質材料および水の温度を常温よりも高い温度(100℃以下)にした状態で多孔質材料に水を吸収させた場合には、多孔質材料および水の温度を常温にした状態で多孔質材料に水を吸収させた場合よりも、多くの量の水を多孔質材料に吸収させることができる。ところで、多孔質材料および水の温度を常温よりも高い温度にした状態で多孔質材料に水を吸収させたのち、多孔質材料および水の温度を低下させた場合には、多孔質材料に吸収されていた水が過飽和により多孔質材料の表面に結露する。従って、例えば、多孔質材料および有効成分含有体の温度を常温よりも高い温度にした状態で、多孔質材料に有効成分含有体を吸収させたのち、有効成分含有体を吸収した多孔質材料を液状母材24に混ぜ合わせ、最終的に弾性粒状体20を作成した後で、有効成分含有体を吸収した多孔質材料の温度を常温にした場合には、多孔質材料に吸収されていた有効成分含有体が、弾性母材22内において、多孔質材料の表面に結露する。
【0024】
また、上で示した圧力の大きさは、本発明が禁煙用靴下1の用途に適用されるときの値を例示したものであり、他の用途に適用されるときにも上記と同一の値になるとは限らない。また、「水が継続的に漏れ出てこない」ことは、水が、棒状に流れ落ちるのではなく、ぽたぽたと落下することを指している。
【0025】
多孔質材料のうち、高吸水性および高保水性を有している材料は、例えば、無機質からなる多孔質材料と、有機質からなる多孔質材料とに分類することができる。ここで、無機質からなる多孔質材料としては、例えば、ゼオライト(zeolite)が挙げられる。また、有機質からなる多孔質材料としては、例えば、珪藻土、高含水ポリマー、および繊維質パウダーが挙げられる。ゼオライトは、結晶中に微細孔を持つアルミノ珪酸塩の商品名である。珪藻土は、藻類の一種である珪藻の殻の化石よりなる堆積物(堆積岩)であり、二酸化ケイ素を主成分とするものである。高含水ポリマーは、例えば、(1)Ammonium salt of a high polymer organic acid、(2)Na−Carboxymetyl celluose、(3)Aqueous soltion of acrylic polymer、(4)Acrylic emulsion copolymer、(5)Crosslinked acrysol of emulsion copolymer、(6)Aqueous soltion of ammonium pol y methacylate、(7)Ammonium polyacylate、(8)Sodium polyacylate、(9)Modified sodium polyacylate、(10)Partial oxidized polyacylate、(11)Potassium salt of vinyl polymers、または(12)上記(1)〜(11)に記載のポリマーの変性、誘導品などが挙げられる。繊維質パウダーは、例えば、セルロースなどの繊維状炭水化物(多糖類)によって構成されたものである。従って、ゼオライト、珪藻土、高含水ポリマー、および繊維質パウダーのいずれも、人体に安全な材料といえる。
【0026】
「人体に安全」とは、例えば、多孔質材料およびスポンジ状材料が皮膚に触れたときに皮膚にかぶれが生じないことを指している。多孔質材料およびスポンジ状材料として、ゼオライトおよび珪藻土以外の材料を選択する際には、その材料が、ゼオライトおよび珪藻土と同様、人体に安全な材料であることが好ましい。複数の保持手段21が、ゼオライトまたは珪藻土を含んで構成されている場合には、例えば、図3に示したように、微細な粒子21Aが多数凝集した状態となっており、粒子21A内の空隙に有効成分含有体が収容されている。
【0027】
弾性母材22は、例えば、図2(A)に示したように、布部10の底部11に固着されており、より具体的には、布部10の底部11のうち接触面11Aに固着されている。弾性母材22は、例えば、後述の製造過程において、弾性母材22の前駆体である液状母材24を布部10の繊維の隙間に滲み込ませたのち、固体化させることによって、繊維に根張り形(アンカー形)にて固着されている。これにより、弾性母材22は、布部10にあたかも捺染された状態で固着されている。
【0028】
弾性母材22は、例えば、図2(A)に示したように、複数の保持手段21を覆っており、例えば、島状の凸形状となっている。弾性母材22は、複数の保持手段21のうち少なくとも一の保持手段21から吐出された有効成分含有体(液状物質またはゲル状物質)の外部への吐出量を制御する複数の通路23(図2(B)参照)が外部からの圧力に応じて形成されるようになっている。従って、弾性母材22に対して繰り返し、外部から所定の大きさ以上の圧力がかかった場合には、所定の大きさ以上の圧力のかかった回数に応じて、弾性母材22に形成される通路23の数が増える。弾性母材22の、上述したような性質は、後述の液状母材24、または有効成分含有体に含まれる揮発成分(例えば、水分)が製造過程において気化することにより発現する。
【0029】
複数の通路23は、禁煙用靴下1の未使用時に、弾性母材22の内部に既に形成されていてもよい。ただし、その場合には、複数の通路23の端部は、禁煙用靴下1の未使用時に、弾性母材22のうち布部10に接している部分とは異なる部分の表面に露出していないことが好ましい。
【0030】
弾性母材22は、例えば、一液付加型シリコーン、二液付加型シリコーン、ゴム系ラテックス、または自己架橋型エマルジョンを含んで構成されている。これらの材料は、人体に安全な材料である。弾性母材22の材料として、上で例示した材料以外の材料を選択する際には、その材料が、人体に安全な材料であることが好ましい。
【0031】
(製造方法について)
次に、本実施の形態の禁煙用靴下1の製造方法の一例について説明する。なお、以下では、有効成分含有体が液状物質である場合の製造方法について説明する。
【0032】
まず、弾性母材22の、製造過程における前駆体である液状母材24として、例えば、液状の一液付加型シリコーン、液状の二液付加型シリコーン、液状のゴム系ラテックス、または液状の自己架橋型エマルジョンを用意する。なお、以下に示したプロセス温度やプロセス時間は、液状母材24として液状の二液付加型シリコーンを用いたときの具体例であるが、液状母材24として他の材料を用いたときの具体例としても適用可能な値である。
【0033】
続いて、図示しないが、液状母材24に、有効成分含有体を内部に保持する複数の保持手段21を混ぜて、混合液を作成したのち、混合液を攪拌することにより、複数の保持手段21が微細な球状粒子となって液状母材24の中で分散した分散液25を作成する。
【0034】
次に、後述する転写工程において使用するマスク(図示せず)を用意する。このマスクは、例えば、網目状の基材の表面に、複数の開口を有する樹脂層(図示せず)が形成されたものである。さらに、後述する転写工程において布部10の形状を所定の形状にする際に使用する薄板(図示せず)を用意する。この薄板は、布部10の底部11に対応した形状および大きさの薄板であり、例えば、両端が半円形状に成形された略楕円形状となっている、厚さ1.5mmのアルミ薄板である。続いて、布部10の表裏を反対にした布部10Bに薄板を入れる。これにより、例えば、布織目の配列が整い、かつ皺が伸びるから、分散液25を正しい位置に転写することが可能となる。
【0035】
次に、分散液25をマスクの表面に垂らしたのち、捺染こて(図示せず)をマスクの表面にこすりつけながら移動させる。このようにして、分散液25をマスクの表面全体に延ばすと共に、マスクの各開口を介して分散液25を布部10Bの接触面11Aに転写することにより、分散液25は、布部10Bの底部11に浸透すると共に、布部10の繊維に食い込んで島状の凸形状に形成される。
【0036】
なお、分散液25の、接触面11Aへの転写は、上述のスクリーン印刷法に限られるものではなく、熱プレス法などの他の方法によってなされてもよい。また、分散液25の、接触面11Aへの転写に際して、プロセス温度は、常温であることが好ましい。マスクの基材の材料を選択する自由度を高くすることができるからである。上記プロセス温度は、常温よりも高い温度であってもよいが、分散液25に含まれる水溶性の油液状ニコチンが褐色に変化する温度よりも低い温度であることが好ましい。
【0037】
次に、布部10B上の分散液25に対して熱風(例えば200℃)を当てて、布部10B上の分散液25を加熱する。これにより、布部10B上の分散液25は、加熱により固形化するという履歴を経て、接触面11Aにしっかりと固着される。また、加熱により、分散液25に含まれる液状母材24に二次架橋が起こり、残留する気化酸化物が分解除去されて弾性母材22が形成される。さらに、分散液25に含まれる有効成分含有体から水分が気化して通路23、または通路23の前躯体が弾性母材22に形成される。なお、通路23の前躯体とは、禁煙用靴下1を使用している時に加えられる圧力によって通路23が形成されるような脆弱な性質を有する部分、または通路23の幅よりも極めて狭い幅を有する微細な通路を指している。なお、液状母材24が揮発成分(例えば、水分)を含む材料、具体的には、ゴム系ラテックスまたは自己架橋型エマルジョンを含んで構成されている場合には、液状母材24自体からも水分が気化して通路23、または通路23の前躯体が弾性母材22に形成される。このようにして、本実施の形態の禁煙用靴下1が製造される。
【0038】
(効果について)
本実施の形態の禁煙用靴下1では、有効成分含有体が複数の保持手段21によって保持されている。これにより、有効成分含有体が液状母材24と混ざり合い難い性質を有している場合であっても、複数の保持手段21がそのような性質を緩和する緩和材として作用するので、製造過程において有効成分含有体を液状母材24内に分散させておくことができる。その結果、有効成分含有体を最終的に弾性母材22内に分散させた状態で閉じ込めておくことができる。また、禁煙用靴下1では、複数の保持手段21が外部からの圧力に応じて有効成分含有体を吐出することの可能な構造を有している。さらに、複数の保持手段21を覆う弾性母材22が、保持手段21から吐出された有効成分含有体の外部への吐出量を制御する複数の通路23が外部からの圧力に応じて形成されるようになっている。これにより、例えば、複数の弾性粒状体20を足で踏むことにより、複数の弾性粒状体20に対して圧力をかけると、その圧力に応じて、複数の通路23が弾性母材22に形成されると共に、弾性母材22に形成された複数の通路23を介して、複数の保持手段21内の有効成分含有体が外部へ吐出される。有効成分含有体の外部への吐出量は、有効成分含有体が通過する通路23の数および径と、弾性粒状体20の数、大きさおよび形状とによって制御される。吐出された有効成分含有体は、例えば、複数の弾性粒状体20に対して圧力をかけた足の裏に付着したのち、足裏の皮膚を浸透して体内に吸収される。このように、禁煙用靴下1では、粘着剤を用いないで、適量の有効成分含有体を、皮膚を介して体内に吸収させることが可能である。さらに、禁煙用靴下1では、複数の弾性粒状体20に対して圧力をかけるだけで、有効成分含有体を、皮膚を介して体内に吸収させることができる。これにより、禁煙用靴下1内に有効成分含有体が残留している間は、使用者は禁煙用靴下1を再使用することができる。以上のことから、禁煙用靴下1によれば、粘着剤に起因する皮膚かぶれが生じる虞がなく、しかも再使用が可能である。
【0039】
また、本実施の形態では、有効成分含有体を吸収させる部位が足裏となっている。足裏の皮膚は、粘着剤だけでなく、ニコチン自体に対しても、かぶれ難い。従って、禁煙用靴下1によれば、粘着剤だけでなく、ニコチン自体に起因する皮膚かぶれが生じる虞がない。また、本実施の形態では、複数の弾性粒状体20が布部10という繊維状シートに固着されているので、布部10が足裏の皮膚呼吸を妨げることがない。従って、皮膚呼吸を妨げることに起因する皮膚かぶれも生じる虞がない。
【0040】
また、本実施の形態の製造過程において、保持手段21および有効成分含有体の温度を常温よりも高い温度にした状態で、保持手段21に有効成分含有体を吸収させたのち、有効成分含有体を吸収した保持手段21を液状母材24に混ぜ合わせ、最終的に弾性粒状体20を作成した後で、有効成分含有体を吸収した保持手段21の温度を常温にした場合には、保持手段21に吸収されていた有効成分含有体が、弾性母材22内において、保持手段21の表面に結露する。これにより、保持手段21の表面に結露した有効成分含有体は、保持手段21に吸収されている有効成分含有体よりも、より外部に吐出されやすくなるので、禁煙用靴下1の使用初期における有効成分含有体の吐出量を多くすることができる。従って、この場合には、即効性に優れている。
【0041】
ところで、禁煙補助具の一種として現在、普及しているニコチンパッチは、粘着剤を使用して皮膚に接触させるようになっている。そのため、ニコチンパッチを使用している間ずっと、粘着剤が皮膚に接することになるので、粘着剤に含まれる溶剤で皮膚がかぶれるという問題があった。また、皮膚からの発汗作用によって、粘着剤が肌から剥離、離脱し易いという問題もあった。さらに、一旦、粘着剤が肌から離脱すると、粘着剤の粘着力が弱まってしまい、ニコチンパッチを肌に再度、貼ることが難しいという問題もあった。つまり、ニコチンパッチには再使用ができないという問題があった。
【0042】
この再使用不可は、実用上、以下のようなときに特に問題となっていた。例えば、オーバードーズ(over−doze)によって使用者の気分が悪くなったときに、使用者がニコチンパッチを剥がしたとする。このとき、ニコチンパッチにはニコチンが残留していたとする。その後、使用者の気分が回復し、使用者はそのニコチンパッチを再使用しようとして、再度、皮膚に貼り付ける。しかし、その粘着剤は粘着力が弱まっているので、すぐに剥がれてしまい、使用者はニコチンパッチに残ったニコチンを使用することができない。その結果、使用者はそのニコチンパッチを捨てて、新しいニコチンパッチを使用せざるを得ないので、オーバードーズを適切にコントロールするためには、使用者はニコチンパッチを頻繁に使い捨てるしかないという問題が生じていた。高価なニコチンパッチを頻繁に使い捨てるというのは、使用者の経済的な負担を大きくすることから、禁煙の継続性を阻害する場合があった。
【0043】
一方、本実施の形態では、粘着剤でニコチンパッチを皮膚に貼り付けてニコチンパッチから染み出てきたニコチンを体内に吸収させる従来の摂取方法とは異なる原理で、有効成分含有体を体内に吸収させる。具体的には、例えば、複数の弾性粒状体20を足で踏んで、複数の弾性粒状体20を足裏の皮膚に接触させると共に、複数の弾性粒状体20から有効成分含有体を染み出させ、染み出させた有効成分含有体を体内に吸収させる。これにより、使用者は、禁煙用靴下1を何度でも、脱いだり、履いたりすることが可能であることから、禁煙用靴下1内に有効成分含有体が残留している間は、何度でも禁煙用靴下1を再使用することが可能である。その結果、使用者は、禁煙用靴下1を脱いだり、履いたりするだけで、オーバードーズを適切にコントロールすることが可能である。従って、禁煙用靴下1では、使用者の経済的な負担が極めて小さく、禁煙の継続性が促進される。
【0044】
<第1の実施の形態の変形例>
[変形例1]
(構成について)
上記実施の形態では、各弾性粒状体20には、多孔質構造を有する複数の保持手段21が内蔵されていたが、例えば、図4(A)に示したように、複数の保持手段21の代わりに、複数の保持手段26が内蔵されていてもよい。複数の保持手段26は、複数の保持手段21と同様、外部からの圧力に応じて有効成分含有体を吐出することの可能な構造を有している。複数の保持手段26は、そのような構造として、例えば、図5の断面図に模式的に示したように、有効成分含有体27を覆う柔軟膜28を有している。柔軟膜28は、外部からの圧力が所定の値を超えたときに破裂して、内部の有効成分含有体27を吐出するようになっている。
【0045】
柔軟膜28(保持手段26)の径(粒径)は、例えば、各弾性粒状体20のスケール(例えば数mm)よりも一桁以上小さなスケール(例えば数百μm)となっている。柔軟膜28の膜厚は、柔軟膜28の粒径の1/2よりも小さな値となっている。一の弾性粒状体20内に含まれる全ての柔軟膜28の粒径が、均一となっていてもよいし、均一となっていなくてもよい。一の弾性粒状体20内に含まれる全ての柔軟膜28の粒径が均一となっていない例としては、一の弾性粒状体20内に含まれる複数の柔軟膜28が、粒径の異なる複数種類の柔軟膜28によって構成されている場合が挙げられる。一の弾性粒状体20内に含まれる柔軟膜28の柔らかさ(または膜厚)は、均一となっていてもよいし、均一となっていなくてもよい。一の弾性粒状体20内に含まれる全ての柔軟膜28の柔らかさ(または膜厚)が均一となっていない例としては、一の弾性粒状体20内に含まれる複数の柔軟膜28が、柔らかさ(または膜厚)の異なる複数種類の柔軟膜28によって構成されている場合が挙げられる。なお、一の弾性粒状体20内に含まれる全ての柔軟膜28の粒径が均一となっておらず、さらに、一の弾性粒状体20内に含まれる全ての柔軟膜28の柔らかさ(または膜厚)も均一となっていなくてもよい。
【0046】
上述したように、柔軟膜28の粒径および柔らかさ(または膜厚)のうち少なくとも1つが、一の弾性粒状体20内に含まれる全ての柔軟膜28において均一となっていない場合には、それぞれの柔軟膜28の、外部からの圧力に対する破裂し易さが、柔軟膜28の粒径および柔らかさ(または膜厚)に応じて異なる。もっとも、柔軟膜28の粒径および柔らかさ(または膜厚)が、一の弾性粒状体20内に含まれる全ての柔軟膜28において均一となっている場合であっても、外部からの圧力に対する破裂し易さは、柔軟膜28の、一の弾性粒状体20内の位置や、柔軟膜28の、通路23との位置関係などによって異なる。
【0047】
有効成分含有体27は、例えば、ゲル状物質である。ゲル状物質とは、半固体物質ともいえるものであり、単独で形状を維持することの可能な中粘性物質または高粘性物質を指している。有効成分含有体27は、上記第1の実施の形態と同様、ニコチンを有効成分として含んでいる。このニコチンは、上記第1の実施の形態と同様のものである。一方、柔軟膜28は、外部からの圧力に応じて屈曲する薄くて柔らかい膜であり、例えば、寒天、こんにゃく、およびゼラチンなどの、感熱性のゲル化材に、塩化カルシウム水溶液(ニガリ)などの凝固材を混ぜる(または接触させる)ことにより形成されるものである。なお、凝固材は、塩化カルシウム水溶液に限られるものではなく、例えば、塩化マグネシウムなどの多価塩の水溶液であってもよい。弾性母材22は、本実施の形態では、揮発成分(例えば水分)を含む材料、例えば、ゴム系ラテックス、または自己架橋型エマルジョンを含んで構成されている。
【0048】
(製造方法について)
次に、本変形例に係る禁煙用靴下1の製造方法の一例について説明する。なお、以下では、有効成分含有体がゲル状物質である場合の製造方法について説明する。
【0049】
まず、上述したゲル化材を水で煮て融かす。次に、その溶液に、油液状のニコチンと、種々の添加剤(例えばアルギン酸ナトリウムの水溶液)とを添加し混ぜ合わせて、混合液を作成したのち、その混合液を攪拌することにより分散液29を作成する(図示せず)。
【0050】
次に、分散液29を、加温された溶液槽500内に入れて、分散液29を所定の温度(例えば70℃±10℃)で加温する(図6参照)。なお、溶液槽500の底面には、例えば、多数の孔510が設けられており、溶液槽500は、複数の孔510を介して、溶液槽500内の分散液29を滴下することが可能となっている。各孔510の径は、例えば、各弾性粒状体20のスケール(例えば数mm)よりも一桁以上小さなスケール(例えば数百μm)となっている。各孔510の径は、互いに等しくなっていてもよいし、互いに等しくなっていなくてもよい。溶液槽500から分散液29を滴下しない間、孔510は封鎖されている。
【0051】
なお、柔軟膜28の粒径は、孔510の径を調整することにより、変更可能である。従って、粒径の異なる複数種類の柔軟膜28を形成したい場合には、例えば、溶液槽500として、粒径の異なる複数種類の孔510を底面に有する溶液槽を用意するか、または、複数の孔510の粒径を溶液槽ごとに異ならせた複数の溶液槽を用意すればよい。
【0052】
次に、溶液槽500の直下に、上述した凝固材からなる溶液30が入れられた溶液槽600を用意する。続いて、孔510の封鎖を解除して、溶液30に分散液29を滴下する(図6)。孔510から滴下された後の分散液29は、例えば、図6に示したように、球状となっている。この球状の分散液29(球状分散液29A)は、溶液30内に浸漬すると、球状分散液29Aの表面部分が溶液30と反応して凝固し、柔軟膜28となる。柔軟膜28の膜厚は、溶液30内での浸漬時間および凝固材の濃度によって制御可能である。その後、図示しないが、分散液29を保持する柔軟膜28を洗浄して、柔軟膜28の表面から溶液30を除去する。このようにして、有効成分含有体27を内部に保持する複数の保持手段26が作成される。
【0053】
なお、有効成分含有体27を内部に保持する複数の保持手段26は、例えば、以下の製造方法によっても作成可能である。まず、上述した方法を用いて、分散液29を作成する(図示せず)。次に、分散液29を、冷却された溶液槽内に入れて、分散液29を冷却し、固形化することにより、固形物29Bを作成する(図7(A))。続いて、固形物29Bを、ミキサーなどで粉砕して、複数の破砕片29Cにする(図7(B))。各破砕片29Cの径は、例えば、各弾性粒状体20のスケール(例えば数mm)よりも一桁以上小さなスケール(例えば数百μm)となっている。
【0054】
次に、上述した凝固材からなる溶液30が入れられた溶液槽600を用意する。続いて溶液30に複数の破砕片29Cを投入する(図7(C))。複数の破砕片29Cは、溶液30内に浸漬すると、その表面部分が溶液30と反応して凝固し、柔軟膜28となる。その後、図示しないが、破砕片29Cを保持する柔軟膜28を洗浄して、柔軟膜28の表面から溶液30を除去する。このようにして、有効成分含有体27を内部に保持する複数の保持手段26が作成される。
【0055】
次に、上記のようにして作成された、有効成分含有体27を内部に保持する複数の保持手段26を利用して、禁煙用靴下1の作成を行う。具体的には、まず、図示しないが、液状母材24に、有効成分含有体27を内部に保持する複数の保持手段26を混ぜて、混合液を作成したのち、混合液を攪拌することにより、複数の保持手段26が微細な球状粒子となって液状母材24の中で分散した分散液31を作成する。
【0056】
次に、上記実施の形態と同様、例えば、スクリーン印刷法を用いて、分散液31を布部10Bの接触面11Aに転写する。次に、布部10B上の分散液31に対して熱風(例えば200℃)を当てて、布部10B上の分散液31を加熱する。これにより、布部10B上の分散液31は、加熱により固形化するという履歴を経て、接触面11Aにしっかりと固着される。また、加熱により、分散液31に含まれる液状母材24に二次架橋が起こり、残留する気化酸化物が分解除去されて弾性母材22が形成される。さらに、液状母材24に含まれる揮発成分(例えば、水分)が気化して通路23、または通路23の前躯体が弾性母材22に形成される。なお、有効成分含有体はゲル状物質であるので、有効成分含有体に含まれる水分はほとんど気化しない。このようにして、本変形例の禁煙用靴下1が製造される。
【0057】
(効果について)
本変形例では、有効成分含有体27が複数の保持手段26によって保持されている。これにより、有効成分含有体27を最終的に弾性母材22内に分散させた状態で閉じ込めておくことができる。また、本変形例では、複数の保持手段26が外部からの圧力に応じて有効成分含有体27を吐出することの可能な構造を有している。さらに、複数の保持手段26を覆う弾性母材22が、保持手段26から吐出された有効成分含有体27の外部への吐出量を制御する複数の通路23が外部からの圧力に応じて形成されるようになっている。これにより、粘着剤を用いないで、適量の有効成分含有体27を、皮膚を介して体内に吸収させることが可能である。さらに、本変形例では、複数の弾性粒状体20に対して圧力をかけるだけで、有効成分含有体27を、皮膚を介して体内に吸収させることができる。これにより、本変形例に係る禁煙用靴下1内に有効成分含有体27が残留している間は、使用者は本変形例に係る禁煙用靴下1を何度でも再使用することができる。以上のことから、本変形例に係る禁煙用靴下1によれば、粘着剤に起因する皮膚かぶれが生じる虞がなく、しかも再使用が可能である。
【0058】
また、本変形例では、上記実施の形態と同様、有効成分含有体27を吸収させる部位が足裏となっている。従って、本変形例に係る禁煙用靴下1によれば、粘着剤だけでなく、ニコチン自体に起因する皮膚かぶれが生じる虞がない。また、本変形例では、上記実施の形態と同様、複数の弾性粒状体20が布部10という繊維状シートに固着されているので、布部10が足裏の皮膚呼吸を妨げることがない。従って、皮膚呼吸を妨げることに起因する皮膚かぶれも生じる虞がない。
【0059】
また、本変形例に係る禁煙用靴下1を再使用することが可能であることから、使用者は、本変形例に係る禁煙用靴下1を脱いだり、履いたりするだけで、オーバードーズを適切にコントロールすることが可能である。従って、本変形例に係る禁煙用靴下1では、使用者の経済的な負担が極めて小さく、禁煙の継続性が促進される。
【0060】
また、本変形例では、有効成分含有体27を保持するものとして柔軟膜28が用いられている。これにより、一の弾性粒状体20内に含まれる複数の柔軟膜28において、柔軟膜28の粒径および柔らかさのうち少なくとも1つを異ならせることにより、それぞれの柔軟膜28の、外部からの圧力に対する破裂し易さを異ならせることが可能となる。その結果、有効成分含有体27の吐出量の制御を、弾性母材22だけでなく、柔軟膜28にも担わせることができる。従って、吐出量の制御を自由度高く、行うことができる。
【0061】
なお、一の弾性粒状体20内に含まれる全ての柔軟膜28の粒径および柔らかさが均一となっている場合であっても、柔軟膜28の、一の弾性粒状体20内の位置や、柔軟膜28の、通路23との位置関係などによって、それぞれの柔軟膜28の、外部からの圧力に対する破裂し易さを異ならせることが可能である。従って、この場合にも、有効成分含有体27の吐出量の制御を、弾性母材22だけでなく、柔軟膜28にもある程度、担わせることが可能であるので、吐出量の制御を、ある程度の自由度でもって、行うことができる。
【0062】
[変形例2]
上記実施の形態および変形例1では、複数の弾性粒状体20が布部10に固着されていたが、例えば、図示しないが、パンツなどの衣類に固着されていてもよい。複数の弾性粒状体20がパンツに固着されていた場合には、使用者が椅子などに着席したときに、お尻により複数の弾性粒状体20に圧力がかかり、その圧力によって吐出された有効成分含有体が、複数の弾性粒状体20に対して圧力をかけたお尻に付着したのち、お尻の皮膚を浸透して体内に吸収される。
【0063】
ここで、お尻は、足裏と同様、粘着剤だけでなく、ニコチン自体に対しても、かぶれ難い。従って、本変形例に係る禁煙用靴下1によれば、上記実施の形態および変形例1と同様に、粘着剤だけでなく、ニコチン自体に起因する皮膚かぶれが生じる虞がない。
【0064】
[変形例3]
上記実施の形態および変形例1,2では、複数の弾性粒状体20が布部10に固着されていたが、布部10とは異なる材料からなる屈曲性を有する繊維状シートに固着されていてもよい。
【0065】
<第2の実施の形態>
(構成について)
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る禁煙用シート2の概略構成の一例を表したものである。図9は、図8の禁煙用シート2をグリップ部材40に巻きつけたときの様子の一例を表したものである。なお、禁煙用シート2が、本発明の「経皮デバイス」の一具体例に相当する。
【0066】
この禁煙用シート2は、例えばニコチンパッチおよびニコチンガムなどの禁煙補助具の一種であり、ニコチンを摂取しつつ、禁煙を行う際に使用されるものである。禁煙用シート2は、シート状の基材32と、複数の弾性粒状体33とを備えている。基材32は、屈曲性を有する繊維状シートによって構成されたものである。屈曲性を有する繊維状シートとしては、例えば、合成繊維シート、通気性シート、布地、または紙などが挙げられる。複数の弾性粒状体33は、上記実施の形態またはその変形例の複数の弾性粒状体20と同様の構造および材料によって構成されており(図2(A),(B)、図6参照)、かつ、基材32に固着されている。
【0067】
禁煙用シート2は、さらに、基材32のうち、複数の弾性粒状体33が固着されている面とは反対側の面に、把持可能な物体(例えば上述のグリップ部材40)に基材32を貼付するための粘着層34と、未使用時に粘着層34を保護する保護膜35とを有している。粘着層34は、把持可能な物体に基材32を貼付することが可能であって、かつ禁煙用シート2を使用した後に基材32を容易に剥がすことが可能な粘着力を有している。保護膜35は、禁煙用シート2を使用する際に、禁煙用シート2から剥がされるものである。
【0068】
(製造方法について)
禁煙用シート2のうち粘着層34および保護膜35以外の部分については、上記実施の形態およびその変形例の禁煙用靴下1の製造方法において、布部10を基材32に置き換えることによって、製造可能なものである。そこで、まず、上記実施の形態およびその変形例の禁煙用靴下1の製造方法と同様の方法を用いて、禁煙用シート2のうち粘着層34および保護膜35以外の部分(禁煙用シート2A)を作成する。次に、禁煙用シート2Aのうち複数の弾性粒状体33が固着されている面とは反対側の面に、粘着層34および保護膜35をこの順に積層する。このようにして、本実施の形態の禁煙用シート2が製造される。
【0069】
(効果について)
本実施の形態では、上記実施の形態と同様、有効成分含有体が複数の保持手段21または複数の保持手段26によって保持されている。これにより、有効成分含有体を最終的に弾性母材22内に分散させた状態で閉じ込めておくことができる。また、本実施の形態では、複数の保持手段21または複数の保持手段26が外部からの圧力に応じて有効成分含有体を吐出することの可能な構造を有している。さらに、複数の保持手段21または複数の保持手段26を覆う弾性母材22が、複数の保持手段21または複数の保持手段26から吐出された有効成分含有体の外部への吐出量を制御する複数の通路23が外部からの圧力に応じて形成されるようになっている。これにより、例えば、保護膜35を剥がし、禁煙補助シート2をグリップ部材40に貼り付けたのち、グリップ部材40に貼り付けた禁煙補助シート2を手で握ることにより、複数の弾性粒状体20に対して圧力をかけると、その圧力に応じて、複数の通路23が弾性母材22に形成されると共に、弾性母材22に形成された複数の通路23を介して、複数の保持手段21または複数の保持手段26内の有効成分含有体が外部へ吐出される。有効成分含有体の外部への吐出量は、有効成分含有体が通過する通路23の数および径と、弾性粒状体20の数、大きさおよび形状とによって制御される。吐出された有効成分含有体は、例えば、複数の弾性粒状体20に対して圧力をかけた手のひらに付着したのち、手のひらの皮膚を浸透して体内に吸収される。このように、禁煙補助シート2は、粘着剤を用いないで、適量の有効成分含有体を、皮膚を介して体内に吸収させることが可能となっている。さらに、禁煙補助シート2は、複数の弾性粒状体20に対して圧力をかけるだけで、有効成分含有体を、皮膚を介して体内に吸収させることが可能となっている。これにより、禁煙補助シート2内に有効成分含有体が残留している間は、禁煙補助シート2を再使用することが可能である。以上のことから、本実施の形態の禁煙補助シート2によれば、粘着剤に起因する皮膚かぶれが生じる虞がなく、しかも再使用が可能である。
【0070】
また、本実施の形態では、有効成分含有体を吸収させる部位が手のひらとなっている。従って、本実施の形態の禁煙補助シート2によれば、粘着剤だけでなく、ニコチン自体に起因する皮膚かぶれが生じる虞がない。また、本実施の形態では、上記実施の形態と同様、複数の弾性粒状体20が基材32という繊維状シートに固着されているので、基材32が手のひらの皮膚呼吸を妨げることがない。従って、皮膚呼吸を妨げることに起因する皮膚かぶれも生じる虞がない。
【0071】
また、本実施の形態では、禁煙補助シート2を再使用することが可能であることから、使用者は、禁煙補助シート2を時々、握るだけで、オーバードーズを適切にコントロールすることが可能である。従って、本実施の形態の禁煙補助シート2では、使用者の経済的な負担が極めて小さく、禁煙の継続性が促進される。
【0072】
<第2の実施の形態の変形例>
[変形例1]
上記第2の実施の形態では、禁煙補助シート2はグリップ部材40に巻きつけた状態で使用されていたが、例えば、一般的な靴下の底部のうち足裏に接する接触面(内側の面)、またはパンツなどの衣類のうち肌に触れる面に張り付けた状態で使用されてもよい。
【0073】
<第1および第2の実施の形態に共通する変形例>
以上、実施の形態およびその変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。
【0074】
例えば、上記実施の形態等では、有効成分含有体はニコチンを有効成分として含んでいたが、それ以外の物質を有効成分として含んでいてもよい。例えば、有効成分含有体は、びんろ抽出液を有効成分として含んでいてもよい。
【0075】
また、上記実施の形態等では、禁煙用靴下1および禁煙用シート2には、複数の弾性粒状体20,33が設けられていたが、必要に応じて、1つの弾性粒状体20,33が設けられていてもよい。例えば、図10に示したように、禁煙用シート2において、1つの弾性粒状体33が設けられていてもよい。
【0076】
また、上記実施の形態等では、通路23は、製造過程において自然に形成されるか、または、禁煙用靴下1または禁煙用シート2を使用している時に印加される圧力によって形成されていたが、さらに、例えば、針などで弾性母材22を突き刺すなどにより、人為的に形成されていてもよい。
【0077】
また、上記実施の形態等では、本発明を禁煙補助具に適用した場合について説明されていたが、本発明をそれ以外の用途に適用することももちろん可能である。ただし、その場合には、有効成分含有体は、用途に応じた有効成分を含有している。例えば、本発明を心臓病の治療具に適用する場合には、有効成分含有体は、例えば、ニトログリセリンを有効成分として含有している。また、例えば、本発明を水虫の治療具に適用する場合には、有効成分含有体は、例えば、坑白癬菌剤を有効成分として含有している。また、例えば、本発明を花粉症の治療具に適用する場合には、有効成分含有体は、例えば、坑ヒスタミン剤を有効成分として含有している。
【符号の説明】
【0078】
1…禁煙用靴下、2…禁煙用シート、10,10B…布部、10A…開口、11…底部、11A…接触面、20,33…弾性粒状体、21,26…保持手段、21A…粒子、22…弾性母材、23…通路、24…液状母材、25,29,31…分散液、27…有効成分含有体、28…柔軟膜、29A…球状分散液、29B…固形物、29C…破砕片、30…溶液、32…基材、34…粘着層、35…保護層、40…グリップ部材、500,600…溶液槽、510…孔。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材に固着された複数の弾性粒状体と
を備え、
前記複数の弾性粒状体は、
液状物質またはゲル状物質と、
前記液状物質または前記ゲル状物質を内部に保持すると共に外部からの圧力に応じて吐出することの可能な構造を有する複数の保持手段と、
前記複数の保持手段を覆っており、かつ前記保持手段から吐出された前記液状物質または前記ゲル状物質の外部への吐出量を制御する複数の通路が外部からの圧力に応じて形成される弾性母材と
を有する経皮デバイス。
【請求項2】
前記基材は、屈曲性を有する繊維状シートである
請求項1に記載の経皮デバイス。
【請求項3】
前記基材は、合成繊維シート、通気性シート、布地、または紙である
請求項2に記載の経皮デバイス。
【請求項4】
前記基材は、前記複数の弾性粒状体が固着されている面とは反対側の面に、把持可能な物体に当該基材を貼付するための粘着層を有する
請求項3に記載の経皮デバイス。
【請求項5】
前記基材は、衣類または靴下である
請求項1に記載の経皮デバイス。
【請求項6】
前記液状物質または前記ゲル状物質は、ニコチン、またはびんろ抽出液を有効成分として含有する
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の経皮デバイス。
【請求項7】
前記液状物質または前記ゲル状物質は、ニトログリセリン、坑白癬菌剤、または坑ヒスタミン剤を有効成分として含有する
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の経皮デバイス。
【請求項8】
前記保持手段は、多孔質材料からなる
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の経皮デバイス。
【請求項9】
前記多孔質材料は、ゼオライト、珪藻土、高含水ポリマー、または繊維質パウダーである
請求項8に記載の経皮デバイス。
【請求項10】
前記保持手段は、外部からの圧力に応じて屈曲する柔軟膜からなる
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の経皮デバイス。
【請求項11】
前記弾性母材は、一液付加型シリコーン、二液付加型シリコーン、ゴム系ラテックス、または自己架橋型エマルジョンを含んで構成される
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の経皮デバイス。
【請求項12】
液状物質またはゲル状物質を内部に保持すると共に外部からの圧力に応じて吐出する複数の保持手段を液状母材に混合し攪拌することにより、前記複数の保持手段が微細な球状粒子となって分散した分散液を作成する工程と、
前記分散液を基材表面の所定の位置に配置したのち、前記基材表面の分散液を加熱する工程と
を含むことを特徴とする経皮デバイスの製造方法。
【請求項13】
前記保持手段は、多孔質材料からなり、かつ前記液状物質を内部に保持しており、
前記液状物質は、水分を含んでいる
請求項12に記載の経皮デバイスの製造方法。
【請求項14】
前記保持手段は、外部からの圧力に応じて屈曲する柔軟膜からなり、かつ前記ゲル状物質を内部に保持しており、
前記液状母材は、水分を含んでいる
請求項12に記載の経皮デバイスの製造方法。
【請求項1】
基材と、
前記基材に固着された複数の弾性粒状体と
を備え、
前記複数の弾性粒状体は、
液状物質またはゲル状物質と、
前記液状物質または前記ゲル状物質を内部に保持すると共に外部からの圧力に応じて吐出することの可能な構造を有する複数の保持手段と、
前記複数の保持手段を覆っており、かつ前記保持手段から吐出された前記液状物質または前記ゲル状物質の外部への吐出量を制御する複数の通路が外部からの圧力に応じて形成される弾性母材と
を有する経皮デバイス。
【請求項2】
前記基材は、屈曲性を有する繊維状シートである
請求項1に記載の経皮デバイス。
【請求項3】
前記基材は、合成繊維シート、通気性シート、布地、または紙である
請求項2に記載の経皮デバイス。
【請求項4】
前記基材は、前記複数の弾性粒状体が固着されている面とは反対側の面に、把持可能な物体に当該基材を貼付するための粘着層を有する
請求項3に記載の経皮デバイス。
【請求項5】
前記基材は、衣類または靴下である
請求項1に記載の経皮デバイス。
【請求項6】
前記液状物質または前記ゲル状物質は、ニコチン、またはびんろ抽出液を有効成分として含有する
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の経皮デバイス。
【請求項7】
前記液状物質または前記ゲル状物質は、ニトログリセリン、坑白癬菌剤、または坑ヒスタミン剤を有効成分として含有する
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の経皮デバイス。
【請求項8】
前記保持手段は、多孔質材料からなる
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の経皮デバイス。
【請求項9】
前記多孔質材料は、ゼオライト、珪藻土、高含水ポリマー、または繊維質パウダーである
請求項8に記載の経皮デバイス。
【請求項10】
前記保持手段は、外部からの圧力に応じて屈曲する柔軟膜からなる
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の経皮デバイス。
【請求項11】
前記弾性母材は、一液付加型シリコーン、二液付加型シリコーン、ゴム系ラテックス、または自己架橋型エマルジョンを含んで構成される
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の経皮デバイス。
【請求項12】
液状物質またはゲル状物質を内部に保持すると共に外部からの圧力に応じて吐出する複数の保持手段を液状母材に混合し攪拌することにより、前記複数の保持手段が微細な球状粒子となって分散した分散液を作成する工程と、
前記分散液を基材表面の所定の位置に配置したのち、前記基材表面の分散液を加熱する工程と
を含むことを特徴とする経皮デバイスの製造方法。
【請求項13】
前記保持手段は、多孔質材料からなり、かつ前記液状物質を内部に保持しており、
前記液状物質は、水分を含んでいる
請求項12に記載の経皮デバイスの製造方法。
【請求項14】
前記保持手段は、外部からの圧力に応じて屈曲する柔軟膜からなり、かつ前記ゲル状物質を内部に保持しており、
前記液状母材は、水分を含んでいる
請求項12に記載の経皮デバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−67581(P2011−67581A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241851(P2009−241851)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(503359452)ジ・エコ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(503359452)ジ・エコ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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