説明

経皮パッチ

【課題】一連の異なる物質を経皮的又は皮内的にデリバリーするために使用されうる電源を内蔵している多目的な経皮パッチを提供する。
【解決手段】皮膚内への少なくとも1種類の物質の経皮又は皮内デリバリー・キットは、2つの電極22、24をもつ電気化学セル14及び導電性流体を保持するためのリテイナを有する経皮パッチ10を含み、さらに作用物質を含む。導電性流体は、2つの電極の少なくとも一方に付されうる。あるいは、導電性流体は、皮膚に局所的に適用されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願出願は、2001年10月24日に出願された出願番号第60/330,526号の優先権の出願日の利益を主張し、背景情報として上記文献の全体を本明細書中に援用する。
【背景技術】
【0002】
本発明の分野及び背景
本発明は、経皮及び/又は皮内ドラッグ・デリバリー・デバイス、キット、及び方法、より特に、幅広い種類の物質の経皮及び皮内デリバリーを電気的に含むために、又は電気的な刺激による創傷治癒、傷跡の予防、傷跡の縮小、組織修復及び/又は組織再生の促進のために電流を流すことができる経皮パッチ(dermal patch)に関する。
【0003】
技術的及び特許文献において、受動的方法、例えば拡散及び浸透、並びに能動的方法、例えば電気的に誘発されたイオン導入、電気泳動、電気浸透及び/又は電気穿孔による無傷の皮膚表面の中に、又はそれを通した物質、医薬及び化粧品の両者、例えば薬物及び他の有益な薬剤のデリバリーが最近大きな注目を集めている。禁煙を支援するように考えられた場所を選ばないニコチン・パッチは、投薬のそのような経皮的なデリバリー形態を広く知らしめた。(以下、用語「イオン導入」は、用語イオン導入、電気泳動、電気浸透、及び/又は電気穿孔の全てを、まとめて表し、そして用語「イオン導入的な」は、それぞれの形容詞を含む。)
【0004】
実際に、日常的に経皮的及び/又は皮内的に投与される非常に多くの医薬物質が存在し、同様に、同じように投与するための、当該技術分野で知られている多くのデバイス及び方法が存在する。少ないが、多彩な見本品は、以下の:経皮的に喘息を治療するためのデバイスを開示する米国特許番号第6,294,582号;飲酒を検出するための経皮パッチを開示する米国特許番号第5,899,856号;抗ウイルス性プロテアーゼ・インヒビターの経皮的な投与を教示する米国特許番号第6,291,677号;男性機能不全の経皮的な治療を開示する米国特許番号第6,266,560号;抗ウイルス性、抗菌性、老化防止物質の経皮的なデリバリーを開示する米国特許番号第6,238,381号;及びうっ血性心不全を治療するための物質の経皮的な投与を開示する米国特許番号第6,288,104号を含む。
【0005】
多くの物質が経皮パッチを介して受動的に投与されるが、皮内的に又は経皮的に電気的にデリバリーされる多くのものも存在する。
【0006】
体の一部への電気刺激の使用は、周知であり、同様に長く、華やかな歴史をもっている。20世紀の始まり前後は、「電気治療」を人体に適用するために過多の「電極」が利用可能だった。この電極は、治療される臓器に関係する体の上に置かれた。そのような初期の「電気治療」は、通常見かけ上は、体内にデリバリーされるべきイオン化された分子を引き起こす一般的な電流刺激を含んでいた。イオン導入、又はイオン浸透のこの初期の形態は、局所的な刺激、及び患者の皮膚中への薬剤、しばしばただの水分の導入の仮定された有益な効果のために利用された。
【0007】
イオン導入の技術は、それが皮膚を通過させ、そして毛細管構造体及びリンパ系の中への、電気的に荷電した薬剤を効果的にデリバリーするので、薬物の投与において今日幅広く利用される。この技術は、経口で摂取された薬物に時々関係する胃腸における副作用を回避し、そしてその比較的に温和で、苦痛を伴わない性質のために皮下注射より望ましい。
【0008】
電気穿孔として知られている、もう1つの技術は、拡散による非電荷性物質の移動を可能にする、一時的な真皮の微小孔の形成を電気的に誘発することによって非電荷性物質の経皮的又は皮内的なデリバリーを容易にする。
【0009】
結果的に、イオン導入、並びに他の電気的に誘発された技術、例えば電気穿孔は、よく知られている経皮パッチを含めた、多くの経皮的なデリバリー・デバイスに組み入れられた。従って、経皮的なデリバリーを助けるための電源及び電気回路を組み込んだ今日当該技術分野で知られている多くの経皮パッチが存在する。
【0010】
受動的に機能するもの及び電気的に機能するものを含む今日の経皮パッチの大部分が、経皮的なデリバリーのための物質を組み込んでいる。そのようなパッチは、特定の物質の所定の投与量をデリバリーするために特別に設計され、及び/又は構成され、そしてその物質は、当該パッチ、すなわち前記「ニコチン・パッチ」の不可欠な部分を形成する。その中に所定の種類及び量の物質を用いて製造されるそのような経皮パッチの1つの欠点は、いったん物質が使い果たされたら、上記デバイス全体が無用となり、捨てなければならないことである。電気的に誘発されたデリバリー技術を利用するパッチが大量に捨てられた場合、費用がかさみ、及び/又は環境上危険であるかもしれず、構成部品、例えばバッテリー、電極、電気回路、及び他の組み立て部品を必然的に有するので、これが問題点となる。同様に、投与量を変えるために、異なる投与量のパッチを提供しなければならない。
【0011】
投与前に医薬品を保持するためのリザーバーを組み込んだ再利用可能な一連の経皮パッチが、今日の当該技術分野でも知られている。それらの経皮パッチは、患者の皮膚に電流を流す電極の一方の一部又は両方としてのリザーバーを一般に組み込んでいる。そのような電極は、しばしばバイオ電極(bioelectrodes)と呼ばれる。
【0012】
バイオ電極は、例えばイオン導入デリバリー・デバイスを生産するIoimed,Inc.に割り当てられたものを受けて多くのサイズ、形状、及び配置で提供される。そのようなバイオ電極の例は、再充填可能な容器を有するパッチを教示する米国特許番号第5,037,380号及び同第5,248,295号で開示されたもの;再充填のための小さいアクセス・ウィンドウを有するパッチを教示する米国特許番号第5,846,217号;並びに乾燥薬剤を有し、そして水和される必要があるパッチを教示する米国特許番号第5,374,24号、同第5,730,716号、及び同第6,223,075号を含む。全てのそのようなバイオ電極が、複雑で、多くの部品から成り、従って比較的にかさばる。従って、経皮のパッチに組み入れられるものは、大きくて、比較的に高価であるようなパッチを生じる。しかも、そのような経皮のパッチは、患者によってではなく臨床医によって充填又は装着されなければならない。
【0013】
よって、患者によって投与するのが簡単であり、用途が広く、そして一連の物質及び/又は投与量による、並びに種々の目的のための適用可能であり、かつ、デザインが簡単であり、そして製造するのに安価であるところの、薄くて、柔軟で、単純な電気的に能動的な経皮パッチに関する広く認められた必要性が存在し、そしてそうしたことが高度に有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
それ故に、一連の異なる物質を経皮的又は皮内的にデリバリーするために使用されうる電源を内蔵している多目的な経皮パッチを提供することが本発明の目的である。
【0015】
種々の目的のために皮膚部に電流を流すために使用されうる電源を内蔵している多目的な経皮パッチを提供することが本発明のさらなる目的である。
【0016】
種々の目的のために皮膚部に電流を流すために使用され、及び/又は一連の異なる物質を経皮的又は皮内的にデリバリーするために使用される、薄くて、柔軟な電源を内蔵している多目的な経皮パッチを提供することが本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の1つの側面によると、少なくとも1種類の物質の経皮又は皮内デリバリーのためのキットが提供され、上記キットは、(a)患者の皮膚部と電気的な接触を形成するたに経皮パッチの一方の側面に配置された少なくとも2つの電極を有する電気化学セルを含む経皮パッチ;並びに(b)物質を含む導電性流体を保持するための少なくとも1つのリテイナ(retainer)、少なくとも1つの電極に付するため及び/又は患者の皮膚部上への局所適用のための導電性流体;導電性流体及び患者の皮膚を通して物質の経皮又は皮内デリバリーのための電流を流すために設計され、そして構成されたパッチを含む。
【0018】
本発明の他の側面によると、患者の皮膚部に電流及び/又は電圧の導入のためのキットが提供され、上記キットは、(a)患者の皮膚部と電気的な接触を形成するたに経皮パッチの一方の側面に配置された少なくとも2つの電極を有する電気化学セルを含む経皮パッチ;並びに(b)少なくとも1つの電極に付するための、及び/又は局所適用のための導電性流体を保持するための少なくとも1つのリテイナ;導電性流体を通した患者の皮膚に電流及び/又は電圧の導入のために電流を流すように設計され、そして構成されたパッチを含む。
【0019】
本発明のさらに他の側面によると、患者の皮膚部と電気的な接触を形成するため当該経皮パッチの一方の側面に配置された少なくとも2つの電極を有する電気化学セルから本質的に成っている経皮パッチを提供し、上記経皮パッチは、少なくとも1つの電極に付された及び/又は患者の皮膚部上に局所的に適用された導電性流体を通して電流を流すように設計及び構成される。
【0020】
本発明のさらなる側面によると、物質の経皮又は皮内デリバリーの方法が提供され、(a)物質を含む導電性流体を、患者の皮膚部に局所的に適用し、及び/又は物質を含む導電性流体を、当該経皮パッチの一方の側面に配置された少なくとも2つの電極を有する電気化学セルを含む経皮パッチの少なくとも1つの電極に付し;(b)電極が患者の皮膚部と電気的に接触している状態にあるように経皮パッチを配置し;そして(c)経皮的又は皮内的に物質をデリバリーするように導電性流体と皮膚部を通して電流を流すことを含む。
【0021】
本発明のよりさらなる側面によると、患者の皮膚部に電流及び/又は電圧を生じさせる方法が提供され、(a)患者の皮膚部に導電性流体を適用し、及び/又は当該経皮パッチの一方の側面に配置された少なくとも2つの電極を有する電気化学セルを含む経皮パッチの少なくとも1つの電極上に導電性流体を付し;(b)電極が患者の皮膚部と電気的に接触している状態にあるように経皮パッチを配置し;そして(c)患者の皮膚部に電流及び/又は電圧を生じるように導電性流体を通る電流を流すことを含む。
【0022】
記載された好ましい態様の特徴によると、前記導電性流体は水性ベースの流体である。
記載された好ましい態様の特徴によると、前記導電性流体はヒドロゲルである。
【0023】
記載された好ましい態様の特徴によると、前記導電性流体は、ゲル、クリーム、ペースト、ローション、懸濁液、エマルジョン、及び溶液から成る群から選ばれる。
【0024】
記載された好ましい態様の特徴によると、前記導電性流体は2つの電極の少なくとも一方に付着させるためのものである。
【0025】
記載された好ましい態様の特徴によると、前記導電性流体は患者の皮膚部への局所適用のためのものである。
記載された好ましい態様の特徴によると、前記物質は荷電性物質である。
【0026】
記載された好ましい態様の特徴によると、前記物質は非荷電性物質である。
記載された好ましい態様の特徴によると、前記物質は、医薬、化粧品、及び美容食品から成る群から選ばれる。
【0027】
記載された好ましい態様の特徴によると、前記医薬は、治療薬及び麻酔薬から成る群から選ばれる。
【0028】
記載された好ましい態様の特徴によると、前記電流は、イオン導入、電気泳動、電気穿孔、又はあらゆるその組み合わせを引き起こす役目を果たす。
【0029】
記載された好ましい態様の特徴によると、前記電流は、創傷治癒、傷跡の予防、傷跡の縮小、体組織の修復、及び/又は組織再生を引き起こすためのものである。
【0030】
記載された好ましい態様の特徴によると、前記リテイナは、容器、チューブ、瓶、コンテナ、ディスペンサー、及びアンプルから成る群から選ばれる。
【0031】
記載された好ましい態様の特徴によると、前記リテイナは、2つの電極の少なくとも一方に付着させるためのセパレータである。
【0032】
記載された好ましい態様の特徴によると、前記電流は、上記セパレータから物質をデリバリーする。そのようなセパレータは、電極と皮膚の間の接触を防ぎ、そしてパッチの表面全体の電流の均一な分布を提供することが意図される。そのようなセパレータは、電極の不可欠な部分であるか又はそれに付されているかのいずれかである。
記載された好ましい態様の特徴によると、前記セパレータは、取り外し可能なカバーの中に含まれている。
【0033】
記載された好ましい態様の特徴によると、前記電気化学セルは、柔軟な薄層電気化学セルである。
【0034】
記載された好ましい態様の特徴によると、前記電気化学セルは、柔軟な薄層の開放液状電気化学セルであって、1層目の不溶性の陰極、2層目の不溶性の陽極及び3層目の水性電解質を含む、上記3層目は、1と2層目の間に配置され、そして(a)常にオープンセルが湿気を保つための潮解性材料;(b)必要とされているイオン伝導率を得るための電気的に活性な可溶性材料;そして(c)1及び2層目を3層目に粘着させるために必要とされる粘性を得るための水溶性重合体を含んでいる。
【0035】
記載された好ましい態様の特徴によると、前記2つの電極の少なくとも1つが、少なくとも1種類の物質を移動させるためのものである。
【0036】
記載された好ましい態様の特徴によると、前記少なくとも2つの電極が、電気化学セルによって一体的に形成される。
【0037】
記載された好ましい態様の特徴によると、前記電気化学セル及び前記少なくとも2つの電極が、パッチの唯一の構成要素である。
【0038】
記載された好ましい態様の特徴によると、前記経皮パッチは、患者の皮膚部に付着させるためのアタッチメント機構をさらに含む。
【0039】
記載された好ましい態様の特徴によると、前記経皮パッチは、前記電流を制御するための電気回路をさらに含む。
【0040】
記載された好ましい態様の特徴によると、前記キットは、包装され、かつ、創傷治癒用途、傷跡の予防用途、傷跡の縮小用途、組織修復用途、組織再生用途、経皮デリバリー用途、及び皮内デリバリー用途のために識別される。
【0041】
いくつもの物質及び投与量での経皮及び/又は皮内デリバリーにより実施可能な多目的な経皮パッチを提供することによって、本発明は現在知られている形態の欠点に首尾よく対処する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の好ましい態様に従って組み立てられた経皮パッチの断面図である。
【図2】a〜gは、本発明の異なる態様によるリテイナの説明である。
【図3】a〜dは、本発明による最初の誰でも使える実施例を説明する。
【図4】a〜dは、本発明による2番目の誰でも使える実施例を説明する。
【図5】a〜eは、本発明による3番目の誰でも使える実施例を説明する。
【図6】本発明による経皮パッチの異なる構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
好ましい態様の説明
本発明は、イオン導入、電気泳動、及び/又は電気穿孔によって、種々の物質、例えば医薬、化粧品、及び美容食品の経皮及び/又は皮内デリバリーのために使用されうるキット、経皮パッチ、及び方法である。本発明の経皮パッチは、1つのパッチが様々な範囲の物質及び/又は投与量の経皮及び/又は皮内デリバリーのために働き、そして上記パッチが患者によって簡単に充填され、投与されうるという意味では有利に多目的である。
【0044】
本発明の少なくとも1つの態様を詳細に説明する前に、本発明はこの適用において、以下の説明、又は図面に説明されたものにおいて説明される構造の詳細及び成分の配置に制限さないことは、理解される。本発明は、他のもの、態様に適用でき、あるいは様々な方法で実施又は実行される。同様に、本明細書中に使用された表現及び用語が、記載目的のためのものであって、制限するものとみなされるべきではないことは、理解されている。
【0045】
本発明による、物質の経皮及び皮内デリバリーのためのキット、及び患者の皮膚部へと電流及び/又は電圧の導入のためのキットの原理及び作用は、図面に対する言及と付随した説明によってより十分に理解される。
【0046】
以下パッチ(10)と呼ばれる、本発明の教示に従った経皮パッチを示す図1に対する言及がここでなされる。パッチ(10)は、上面(12)と、皮膚に接触する底面(13)を含み、一緒にパッチ(11)を形成する。パッチ(10)は、当該パッチ(10)が患者の皮膚部に応用されたときに、その曲線に表面(12)及び/又は(13)が合うようにできる柔軟な材料から好ましくは製造される。パッチ本体(11)が関連する適用に必要なあらゆるサイズ及び形状であるかもしれないことは、理解されている。
【0047】
パッチ(10)は、好ましくはパッチ(10)を患者の皮膚部に付ける役割をもつ接着剤層(28)である皮膚アタッチメント機構を好ましくはさらに含む。接着剤層(28)は、パッチ(10)の底面(13)の少なくとも一部を覆う。好ましくは、接着剤層(28)は、生物学的適合性の浸透性の圧感接着剤、例えばダウ・コーニング製のバイオ−PSAを含む。生物学的適合性の接着剤の他の例は、当業者にとって容易に分かる。接着剤層(28)は、単回の接着、又は繰り返しの接着に有用かもしれない。
【0048】
パッチ(10)は、好ましくは柔軟な薄い電気化学セル、最も好ましくは解放、液状電気化学セルであるところの電気化学セル(14)を明細書中において含む。パッチ(10)は、関連した適用に必要とされる電流を提供する役割をもつ、あらゆる他の電気化学セル、又は発電デバイス権限を利用する。パッチ本体(11)に組み込まれうる、処分可能で、かつ、再充電可能な、数タイプの小型電源が当該技術分野で知られている。
【0049】
本発明の好ましい態様によると、電気化学セル(14)は、パッチ本体(11)の全量のほとんどを占める、薄い柔軟な電気化学セルである。現在の好ましい態様において、電気化学セル(14)は、陽極層(16)、陰極層(18)、及びそれらの間に入った電解質層(20)を含む。好適な薄くて、柔軟な電気化学セルの例は、例えば米国特許番号第5,652,043号、同第5,897,522号、及び同第5,811,204号に記載されており、それらを本明細書中に援用する。要するに、所定の前記米国特許に記載の電気化学セルは、解放型の液状の電気化学セルであり、それらは、コンパクト設計の様々な小型化され、そして携帯用の電気的な動力供給デバイスのための一次又は再充電可能な電源として使用されることができる。前記セルは、1層目の不溶性陰極、2層目の不溶性陽極、及び1層目と2層目の間に配置された3層目の水性電解質を含み、そして(a)解放型セルが常に湿気を保つための潮解性材料;(b)必要とされているイオン伝導率を得るための電気活性可溶性材料;そして(c)1層目及び2層目を当該1層目に粘着させるために必要とされる粘性を得るための水溶性重合体を含む。
【0050】
開示された電気化学セルのいくつかの好ましい態様は、(i)多孔性物質、例えば、これだけに制限されることなく、ろ紙、プラスチック膜、セルロース膜、及び布の中に電解質層を組み込み;(ii)二酸化マンガン粉末を含む1層目の不溶性陽極、及び亜鉛粉末を含む2層目の不溶性陰極を有し;(iii)カーボン粉末を含む、1層目の不溶性陰極及び/又は2層目の不溶性陽極をさらに有し;(iv)電気活性溶液を、塩化亜鉛、臭化亜鉛、フッ化亜鉛、及び水酸化カリウムから選び;
【0051】
(v)酸化銀粉末を含む1層目の不溶性陰極、及び亜鉛粉末を含む2層目の不溶性陽極を有し、かつ、電気活性溶液材料が水酸化カリウムであり;(vi)カドミウム粉末を含む1層目の不溶性陰極、及び酸化ニッケル粉末を含む2層目の不溶性陽極を有し、かつ、水酸化カリウムとなるように電気活性溶液材料を選び;(vii)鉄粉末を含む1層目の不溶性陰極、及び酸化ニッケル粉末を含む2層目の不溶性陽極を有し、かつ、水酸化カリウムとなるように電気活性溶液材料を選び;(viii)1層目の不溶性陰極、及び、酸化鉛粉末を含む不溶性陽極を有し、次にこの極に適用された電圧によってセルが荷電し、かつ、この場合に硫酸となるように電気活性溶液材料を選び;
【0052】
(ix)潮解性材料と電気活性溶液材料が同じ材料、例えば塩化亜鉛、臭化亜鉛、フッ化亜鉛、及び水酸化カリウムであり得;(x)潮解性材料が、塩化カルシウム、臭化カルシウム、リン酸カリウム、及び酢酸カリウムから成る群から選ばれ;(xi)水溶性重合体が、ポリビニル・アルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、寒天、アガロース、スターチ、ヒドロキシエチルセルロース、並びにその組み合わせ及びそのコポリマーであり得;(xii)水溶性重合体と潮解性材料が、同じ材料、例えばデキストラン、硫酸デキストラン、並びにその組み合わせ及びそのコポリマーであり得ることを含む。好ましくは、電気化学セル(14)は、先に記載の態様のいずれか1以上を組み込む。本発明による電気化学セル(14)の好ましい構成は、毒性化合物を含まないそれらの組み合わせを含む。
【0053】
電気化学セル(14)は、以下に陽極(22)そして陰極(24)と呼ばれ電極としての役割をもつ端子を含み、その各々が、それぞれ陽極層(16)そして陰極層(18)と接触する。電極(22)及び(24)は、周知の方法、例えば印刷された柔軟な回路、金属ホイル、電線、電気的に導電性の接着剤を使って、又は直接的接触によって電気化学セル(14)に電気的に接続されている。電極間、各々の電極間、及び反対側の極層の接触を避けるために手段が講じられることは、理解される。図1において、とられた手段は、誘電体材料でできている絶縁要素(17)の介在である。
【0054】
電極(22)及び(24)は、電気的に導電性であり、金属、例えば金属ホイル又は好適な下地上に沈澱させたか又は塗られた金属で形成される。好適な金属の例は、アルミニウム、白金、ステンレス、金、及びチタンを含む。あるいは、電極(22)及び(24)は、導電性賦形剤、例えば金属粉末/フレーク、グラファイト粉末、炭素繊維、又は他に知られている電気的に導電性の賦形剤材料を含む、疎水性ポリマー・マトリックスが形成される。
【0055】
電極(22)及び(24)は、セルに適用されるかもしれず、このセル全体は、例えば好適な印刷技術、例えば、これだけに制限されることなく、シルク・プリント、オフセット印刷、ジェット印刷、ラミネーション、材料蒸発(materials evaporation)、又は粉末分散(powder dispersion)によって製造されるうる。従って、本明細書中で先に記載された電気化学セル(14)は、電源の中で最もシンプルなもののである。
【0056】
治療下にある皮膚部を覆うために必要とされるとき、各々の電極(22)及び(24)は、あらゆる大きさ及び形状であり、そして互いに関してあらゆる配置で配置されることは、理解される。実際、本発明の好ましい態様に従って、電極(22)及び(24)とともに、電気化学セル(14)は、パッチ(10)の唯一の内部要素を構成する。従って、パッチ(10)は、最も小さく、最も薄い能動的な方法であり、単位表面積あたり最大の電力を供給する。
【0057】
好ましくは本発明のパッチ(10)は、物理的保護を提供し、そして使用前の貯蔵寿命を延ばすために、保護用の取り外し可能な、若しくは再利用可能な包装、又はライナー、あるいはカバー(19)内に提供される。
【0058】
パッチ(10)は、少なくとも1種類、そして好ましくは多数の外用物質と一緒に使用されるように設計及び構成される。以下に詳細に述べられているそのような物質は、同様に詳細に以下に述べられている導電性流体中に含まれるように設計される。
導電性流体は、少なくとも1つ、好ましくは多数のリテイナによって保持されるように設計される。パッチ(10)とリテイナの組み合わせは、種々の用途への使用ために患者によって保持されうるキットを形成する。
【0059】
図2a〜gに対する言及がここでなされ、それは導電性流体を保持するための一連のリテイナを示す。前述の導電性流体の形成は、一般に化粧又は治療上の使用のための「医薬として許容される」か又は「生理学的に許容される」製剤である。本明細書中に使用されるとき、用語「医薬として許容される」及び「生理学的に許容される」は、患者に投与されうる、好ましくは、過度な望ましくない副作用、例えば局所的に適用された製剤に関して、皮膚発疹、刺激などがなく投与されうる物質を表す。特定の製剤が、水性ゲル、クリーム、ペースト、ローション、懸濁液、エマルジョン、及び溶液、又は当該技術分野で知られている局所適用に好適な他の液剤を含む。
【0060】
現在の好ましい態様において、導電性流体は、皮膚に接触する接着剤としての使用に好適な、特に医療用具の電極のための電気的インターフェイスとしての使用に好適な、電気的に導電性で、粘着性のヒドロゲルである。このヒドロゲルは、陽イオン性アクリル酸塩であり、例えば好ましくは第4塩化物のアクリル酸エステル及び/又は第4塩化物の硫酸又はアクリル酸アミドから作製されうる。それらは、水の存在下、遊離基重合によって、好ましくは紫外線硬化の開始剤と多機能架橋剤によって形成されることができる。好ましくは、ヒドロゲルは、ヒドロゲルの変色及び/又はヒドロゲルの加水分解を防ぐため、及び/又は貯蔵寿命を改善するためにバッファー系を含む。
【0061】
他の添加剤(例えば、導電性エンハンサー、医薬、湿潤剤、可塑剤など)が、意図された最終用途に依存して、硬化前又は硬化後に当該ヒドロゲルに組み込まれる。好ましくはヒドロゲルに加えられる添加剤は、導電性流体を、患者の皮膚にパッチ(10)を付け、かつ、電極と皮膚の間で導電性インターフェイスとしての役割を果たすことができるようにする働きをする導電性接着性物質(添加剤)である。好ましくは、接着性添加剤は、高分子接着剤であり、かつ、圧力又は温度活性化可能であるか、又は大気への露出によって活性化される。
【0062】
好ましいヒドロゲルは、十分に接着力があるが、容易に分離できるままである。本発明の状況による使用のために好適であるヒドロゲルに対して述べられるさらなる詳細は、例えば米国特許番号第5,800,685号に記載され、上記文献を本明細書中に援用する。
【0063】
どのような場合でも、本発明の教示による水性導電性流体は、通常、水、アルコール性/水性溶液、少なくとも1種類の塩、又はいずれか他の荷電した物質を含み、そして好ましくは緩衝媒質を含む。
非水性導電性流体が使用されもすることは認識されている。
【0064】
好ましくは、パッチ(10)との結合に使用された導電性流体は、一方又は両方の電極への付着によって塗布した。導電性流体は、選択的に又は付加的に皮膚への局所適用によって投与されることが認識されている。用語「局所」は、本明細書中に使用されるとき、直接的な適用(例えば、塗布)によって、含浸多孔性材料又は物体によって、あるいはスプレー又は噴霧によって適用され得る皮膚又は粘膜組織の表面への物質の投与を表す。一般に、的確さを欠き、注意が払われない場合、患者の皮膚への流体の局所適用が、直接的に電流と動員されたイオンが皮膚を通過しないように導電性流体を直接通る電極間の電気的接続を気付かずに引き起こすことが認識される。
【0065】
それ故に、リテイナは、治療と関係した量、適用、及び位置に従って形状、サイズ、及び分注方法が異なる。図2b〜gに示されるものは、容器(31)、チューブ(32)、広口瓶(33)、コンテナ(34)、ディスペンサー(35)、及びアンプル(36)の形状のリテイナである。本発明が全ての前記リテイナ、並びに電極又は患者の皮膚の上のいずれかで必要とされる場合に使用するために導電性流体を保持し、そして分注する役割をもつあらゆる形状、サイズ、又は構成の他のものを意図することが認識される。
【0066】
図2aに示されるものは、セパレータであるリテイナ(30)である。用語「セパレータ」の使用は、そこに導電性流体を保持するの役割をする多孔性非導体材料、例えばスポンジ、紙などで作られたリテイナを説明することが意図される。セパレータが導電性流体の的確な位置づけを可能にすることで、セパレータが他のリテイナを上回る利点を提供して、それらは扱いにくくなく、かつ、それらは投与されるべき正確な投与量を可能にする。
【0067】
セパレータと接触している物質がセパレータ内に含まれる流体とも接触するような様式で、流体がセパレータ内に保持される。それ故に、電気的接触が、電極とセパレータの間の物理的な接触を確立することによってセパレータ内に保持された導電性流体によって作り上げられる。
【0068】
好ましくは、セパレータは、一方又は両方の電極(22)及び(24)と、患者の皮膚の間に適合するように設計されて、そして構成され、それよって治療領域に導電性流体を介して電気を流す単純で、清潔で、好都合である電極/皮膚インターフェイスを提供する。先に規定した通り、セパレータの非導電性構造体が電極(22)又は(24)と、その中の導電性流体の間の電気的接触を妨げないように、セパレータが組み立てられる。セパレータは、それ又はその内容物が電極(22)及び(24)の間の電気的な接触をもたらすように配置されないであろうことが知られている。そのような配置が、患者の皮膚を含まない電気回路を形成して、電気の適用の目的を妨げる。
【0069】
セパレータは、電極(22)及び/又は(24)の様々な形状、サイズ、及び配置と適合するように設計されるプラグ、カートリッジ、又はタブレットの形態で製造される。
【0070】
好ましい態様によると、セパレータとしてのその態様において、好ましくは、リテイナ(30)は、治療領域と使用時の電極の両方に適合するように設計された形状である薄いウエハース様のコンテナである。そのようなセパレータは、好ましくは、使用直前にむかれる薄膜層で保護される。
【0071】
本発明のキットの好ましい態様と適合する時、セパレータは保存又は使用のために包装される。好ましくは、セパレータは、貯蔵寿命を保って、導電性流体の及び/又はその中に含まれている物質への蒸発を避けるために個別に包装される。
【0072】
先に記載したリテイナ、特にセパレータ(30)の使用は、非常に使いやすくて、ほとんど誰でもそれが利用できるパッチ(10)を提供することが意図される。示されたリテイナの幅広い設計及び配置は、適当な電極上又は局所的な患者の皮膚上の導電性流体の正確な塗布の目的のためのものである。例えばチューブ(32)の形態のリテイナは、ちょうど電極上への少量の導電性流体の簡単な付着を可能にする。アンプル(36)の形態のリテイナは、医薬の正確な投与を保証する。ディスペンサー(35)は、患者の皮膚の的確な部分への導電性流体の注意深い、正確な塗布を可能にする。本発明の好ましい態様は、電極又は患者の皮膚のいずれかに、正確さをもって配置され得る導電性流体のための担体としてのセパレータ(30)を有する。
【0073】
関連した電極の上又は患者の皮膚の上のいずれかへの導電性流体の正確な配置が、患者の皮膚を通した電流の効果的な伝導にとって極めて重要であることが認識されている。それ故に、パッチ(10)及び1種類以上のリテイナ(30〜36)を含むキットは、好ましくは、正確に使用されるように、及び求められるように導電性流体を配置するように使用者を助ける役割をするあらゆる他の道具、使用説明書、マーキング、援助、又はデバイスをも含む。
【0074】
本発明のパッチ(10)に関するいくつかの誰でも使える態様は、図3a〜5cに示される。図3a〜dの態様において、ストリップ(100)が、皮膚(102)の上に置かれ、そしてストリップ(100)の除去によって、本発明の教示に従って構築され、そして有効な2つの非接触領域(106)が形成され、そしてパッチ(108)が、その電極(110)がショートするのを避けるように一方の領域(106)と接触した状態に各々なるように皮膚(102)上に適用される、導電性のローション、ゲル剤、クリーム剤など(104)が皮膚(102)に適用される。
【0075】
図4a〜dの態様において、2つの開口部(201)を有するパターニング・デバイス(200)が皮膚(202)上に配置され、そしてパターニング・デバイス(200)を除去することによって、本発明の教示に従って構築され、そして有効な2つの非接触領域(206)が形成され、そしてパッチ(208)が、その電極(210)がショートするのを避けるように一方の領域(206)と接触した状態に各々なるように皮膚(202)上に適用される、導電性のローション、ゲル剤、クリーム剤など(204)が皮膚(202)に適用される。
【0076】
図5a〜dの態様において、折り畳み式パッチ(308)が、その折り畳まれた状態で、皮膚(302)の上に置かれ、そしてパッチ(308)を平らにすることによって、パッチ(308)を受け入れる2つの非接触領域(306)が形成され、そしてパッチ(308)が、その電極(310)がショートするのを避けるように一方の領域(306)と接触した状態に各々なるように皮膚(302)上に適用される、導電性のローション、ゲル剤、クリーム剤など(304)が皮膚(302)に適用される。
【0077】
電極(22)は電気化学セル(14)に無くともかまわないが導電性コネクタによって接続されている本発明のパッチ(10)の態様を示す図6に対する言及はここでおこなわれ、以下コネクター(21)と呼ぶ。先に記載したものに類似する、本発明のこの態様によるパッチ(10)の構成要素は、さらに説明されず、そして先と同じ参照番号によって確認される。コネクタ(21)は、印刷されるか、又は当該技術分野で知られているいずれかの導電性材料であるかもしれない。説明された態様によると、セパレータであるリテイナは、電気化学セル(14)の電極(24)に付される。よって、この配置で電極(24)は、医用電極と呼ばれ、そして電極(22)は、導電性の接着性電極と呼ばれる。この態様によると、電極(22)及びセパレータ(30)による患者の皮膚との同時接触は、導電性パスの一部としての患者の皮膚を含む電気回路を形成する。この配置において、電気化学セル(14)が、皮膚との接触状態にあるリテイナ(30)によって保持された導電性流体を通してデリバリーされる電流を発生するであろう。この電流が皮膚を通過し、それにより皮膚を通過するために導電性流体内の適当に荷電したイオン又は分子を動員する。
【0078】
パッチ(10)の1つの目的は、医薬物質、化粧用物質、又は美容食品物質を経皮的に又は皮内的にデリバリーすることである。本明細書中に使用されるとき、用語「経皮的」及び「皮内的」及びその文法上の異形は、それぞれ皮膚を通して/横切っての、又は皮膚の中への組成物デリバリーを表す。本明細書中に使用されるとき、用語「医薬」は、治療薬、麻酔物質を表す。本明細書中に使用されるとき、治療薬は、医学的に治療(cure,heal,treat)するか又は健康を保つことに役立っている全ての物質を含むことが理解されている。本明細書中に使用されるとき、麻酔剤が、触覚の感覚、特に痛みの喪失を引き起こすことに役立つ全ての物質を含むことが理解されている。電気的にデリバリーされるように、好ましくは、そのような物質は、電流に反応するであろう荷電分子の形態にある。あらゆる医薬物質、化粧用物質、又は美容食品物質は、当該物質が荷電しているか又は荷電することができる限り、本明細書中に記載された本発明によってデリバリーされうることが認識されている。
【0079】
物質が本来荷電していない場合において、好ましくは、荷電物質と結合されるか、又は荷電を誘発する環境条件、例えば特定のpH環境に晒される。分子を荷電させる方法は、当該技術分野で周知であり、そのためさらなる説明は本明細書中でなされない。とにかく、デリバリーされる物質は、そのデリバリー前に、又はそのデリバリーに付随して荷電されることは理解されるべきである。
【0080】
従って、本明細書中に使用されるとき、用語「物質」は、好ましくは荷電イオン又は荷電分子の形態にあり、そして経皮的に又は皮内的に電気的にデリバリーされうる作用物質を表す。一般的に、これは、これだけに制限されることなく、抗生物質及び抗ウイルス剤のような抗感染薬、フェンタニール、スフェンタニル、ブプレノルフィン及び無痛剤の組み合わせを含む鎮痛薬、麻酔薬、拒食症薬(anorexics)、抗関節炎薬、テルブタリンのような抗喘息剤、抗けいれん剤、抗うつ剤、抗糖尿病薬、止痢薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、片頭痛製剤、抗乗り物酔い薬、スコポラミン及びオンダンセトロンのような製剤、制嘔吐剤、抗腫瘍薬、抗パーキンソン病薬、ドブタミンのような心刺激薬(cardiostimulants)、かゆみ止め、抗精神病薬、解熱剤、
【0081】
胃腸及び膀胱のものを含む鎮痙薬、抗コリン作用薬、交感神経様作用薬、キサンチン誘導体、ニフェジピンのようなカルシウムチャンネル遮断薬を含む心血管薬、β遮断薬、サルブタモール及びリトドリンのようなβ−アゴニスト、抗不整脈薬、アテノロールのような降圧剤、ACE阻害薬、利尿薬、全体的な,冠動脈,末梢,脳を含む血管拡張薬、中枢刺激剤、感冒薬、充血緩和剤、診断薬、副甲状腺ホルモン,成長ホルモン,及びインシュリンのようなホルモン、催眠薬、免疫抑制剤、筋弛緩薬、副交感神経遮断薬、副交感神経用作用薬、酸化防止剤、ニコチン、プロスタグランジン、精神刺激薬、鎮静剤、並びにトランキライザを含む全ての主要な治療領域の治療剤を含む。
【0082】
本発明は化粧用及び美容食品物質のデリバリーに有用でもある。そのような物質は、例えばカロテノイド、アスコルビン酸(ビタミンC)及びビタミンEのような皮膚で働く酸化防止剤、並びに他のビタミン製剤、そして他の酸化防止剤、レチノール(ビタミンAアルコール)を含むレチノイドのような小じわ防止剤、α−ヒドロキシ酸、サリチル酸としてよく知られているβ−ヒドロキシ酸、ヒドロキシ酸とポリヒドロキシ酸の組み合わせ、そして加水分解及び可溶性コラーゲン及び他のもの、ヒアルロン酸及び他の保湿剤、アミノフィリン及び他のものような抗脂肪沈着剤、レチノイン酸,ヒドロキノン,及び過酸化物、及び他のものような皮膚漂白剤、アロエ−ベラ,野生のヤムイモ,マンサク,ヤクヨウニンジン,緑茶,及び他のものの抽出物のような植物製剤を含む。
【0083】
本発明が、所望した継続時間にわたって先に列挙された物質及び他の物質の幅広い投与量のデリバリーのために使用されると理解されている。
【0084】
物質の経皮的な又は皮内的なデリバリーは、好ましくは、イオン導入及び/又は電気泳動の過程で生じる。イオン導入は、電位の適用によって引き起こされたイオンの移動を表す。電気泳動は、電界の適用によって引き起こされた荷電コロイド粒子又は巨大高分子の移動を表す。電極(22)と(24)の間の電位によって引き起こされた電流は、導電性流体から荷電物質を解放し、そして導電性流体から荷電物質の分子/イオンをデリバリーし、そして隣接している皮膚組織の中にその分子をデリバリーする役割をもつ。電極(22)及び(24)の一方又は両方と、患者の皮膚の間に配置される導電性流体内の荷電物質は、それらの荷電に応じて電極(22)及び電極(24)に引き付けられるか又はそれにはじかれる。例えば、物質が陽性に荷電される場合、電極(22)はこの物質をはじき、よってそれは皮膚を通るか又はその中に移動するであろう。この配置において、電流が陽極(22)から皮膚に向かう方向で流れるとき、荷電物質は、導電性流体/皮膚インターフェイスを横切って皮膚にデリバリーされる。
【0085】
逆イオン導入が、体からの物質の経皮的な又は皮内的な回収方法に使用されうることも留意する必要がある。そのような技術は、逆に用いられた同じ電気的原理を使用する。物質の経皮的な又は皮内的な回収の技術は、当該技術分野で周知である。
【0086】
物質の経皮的な又は皮内的な移動は、電気穿孔によって助けられもする。電気穿孔は、一般に、組織表面に適用された1組の電極に適用された高電圧パルスによって実施される。電気パルスは組織層に穴を開ける通過イオンを生じ、荷電及び非荷電物質の通過のための新しい経路を提供する。電気穿孔は、荷電物質をデリバリーするのではなく、むしろ隣接している組織中への物質の通過の抵抗を減らすことを留意する必要がある。必要とされる駆動力を提供しないので、良好な貫入を達成するために電気穿孔は、イオン導入又は電気泳動のようなデリバリー技術と組み合わされるのが望ましい。
【0087】
パッチ(10)の他の好ましい目的は、皮膚を通す電流の直接的な適用によって創傷治癒、傷跡の縮小、傷跡の予防、組織再生及び/又は組織の再生を促進することである。電流は、電気的な応答、いわゆる活動電位を産むために、電気パルスの形態で外部から供給される電気の刺激によって人体の興奮性細胞(神経、筋肉、及び神経末端の受容器)に対して治療として知られ、そして利用されて久しい。これらの活動電位は、関連した細胞種に関して規定の振幅及び継続時間の細胞固有の電気パルスである。例えば、ある神経にかんして、約1msのパルス幅、及び約80mV〜100mVの振幅が典型である。細胞は、安静時に、細胞種に依存して60mV〜120mVの値をもつその細胞膜電圧に戻る。この電圧は、細胞膜で隔てられた細胞外と細胞内空間の異なるイオン濃度によって引き起こされる。より多い陽イオンが、細胞外に見られる。規定によると、マイナス電位が細胞内に与えられるように、細胞外の電位は0Vに設定される。
【0088】
健康なヒトにおいて、活動電位は、体自身によって発生され、情報伝達のために、及び細胞プロセスを誘発するために利用される。
【0089】
電気療法において、治療効果は、(規定された数、及び特定の位置での)活動電位の特定の発生によって誘発される。
【0090】
電気療法のための器具は、様々な電流、又はパルス・フォームを使用する。個別の適応に対して最適な電気療法を選択することを目指して、セラピストは最も明確な規定から成る基準に戻りうる必要がある。これらの基準は、様々な電流形態の有効性及び耐性についての質問に対する回答から導かれる。
【0091】
効果範囲には、例えば苦痛の軽減、横紋筋及び無紋筋の刺激、潅流への影響、腫脹減退メカニズム、炎症プロセスの検査及び再生促進(外傷、骨の治癒の促進など)の分野が含まれる。適用の目的は、電極の遠位又は近位のいずれか又は身体の深いところでの電流形態の適切な選択によって、常に、患部において所望の効果を達成することにあるべきである。
【0092】
基本的に、電気療法器具は、2つの刺激電流法、つまり極性依存型「極性刺激原理」、及び極性独立型「無極性刺激原理」に基づいている。
【0093】
0〜200Hzの範囲の低周波交流(LF電流)は、「極性刺激の原理」で使用される。過分極(膜電圧の上昇)は、細胞の電位間に間隔をとり、そして刺激閾値をより大きくする陽性電極、すなわち陽極の下で発生する。対照的に、膜電圧は、陰性電極、すなわち陰極の下で低下する。刺激閾値に至ったとき、その細胞は自動的に活動電位を誘発する。
【0094】
刺激電流器具は、約>0〜200Hzの低周波スペクトル(LF電流)において異なるパルス波形を使用する。適用できるものは、いくつか挙げると、例えばいわゆるデルタ電流、矩形電流、ディアダイナミック電流(diadynamic currents)、高電圧電流、超刺激性電流(ultrastimulant currents)、ファラデー電流である。一部の交流は、極性効果をさらにバックアップする直流成分を有する。
【0095】
活動電位を治療として使う2つの周波数に依存した方法がある:
機能的模倣原理:
そのタスクの遂行のために興奮性細胞(例えば神経又は筋肉)により生成される活動電位の数が確定される。治療において、その後、同数のパルスが関連した細胞において刺激によって生成され、それによって、そのタスクの遂行においてその細胞をバックアップする。
【0096】
例えば、最大6Hzの刺激周波数は、1秒につき最大6回の個別の収縮を生成するために適用される。
【0097】
疲労原理:
対照的に、細胞(神経又は筋肉)に活動電位を生じるように強いた場合、細胞がそのタスクを遂行する上で要求されるであろうよりもより高い周波数で、かつ、かなり頻繁に刺激することによって、細胞は短時間で疲労する。反対の効果が生じる。細胞の疲労は、活動電位の形成においてエネルギーを消費する過程によって説明されうる。
【0098】
例えば、硬化した筋肉は、「高い」周波数、例えば100Hz又は200Hzでそれを刺激することによって、この疲労原理に従って弛緩されうる。
【0099】
とにかくいずれかの活動電位を生成するために、当然、強度は刺激閾値を超えるように十分に高く選ばれる必要がある。設定される強度のレベルは、以下の要因:組織内の刺激される細胞の位置(深度)(電極からの距離)、電極のサイズ及びそれ自体電流形態の指標によって影響を受ける電位が浸透した領域の組織抵抗性に依存する。
【0100】
実際には、電流形態と電極サイズが規定される。ここで、電極から特定の距離(例えば、組織の深いところ)にて細胞群を刺激するために、電流及び/又は電圧の強度は活動電位が生じるまで高められ続ける。
【0101】
強度が高まるほど、より一層深いところに位置する細胞、又は電極からさらに一層遠位の細胞が、連続して刺激されていく。無極性刺激原理により、いずれの直流成分なしにいわゆる中波交流(MF電流)だけが使用される。MF電流は、>5Hz〜100,000Hzの周波数をもつ正弦交流を意味する。十分な強度をもつ単一サイクル(交流パルス)が、神経又は筋肉細胞に活動電位をひき起こすことができる極性効果を有する。
【0102】
しばしば、「加重効果」が起こる。周波数を増やすことで、細胞の活動電位を起こすことができるように、さらにより高い強度が必要とされもする。wyssは、MFパルスでの活動電位の発生が極性効果から完全に独立して進行することを紛れもなく確認した。これは、強度及び振幅数が十分に大きかろうとも、活動電位はMF電流(Wyss,Oscar A.M)の一時的な極性にかかわらず生じるであろうことを意味する(Prinzipien der elektrischen Reizung[電気的刺激の原理]、1976年にZurichにてNatural Research Societyによって刊行された、Neujahrs−Blatt,Kommissionsverlag Leeman AG、Zurich,1976,28−34)。
【0103】
MFパルスは、0〜約200Hzの低周波数反復速度及び5Hz〜100,000Hzを超えるMF搬送周波数で適用される。実際には、これはほとんど正弦、振幅変調MF電流(AM−MF電流)である。以下の原理は、「極性刺激原理」に関連して記載されたものと一致している。
【0104】
機能的模倣原理:
MFパルス(振幅変調)と同期的に、活動電位が興奮性細胞にて起こる。それにより、細胞はこの周波数から生じるその本来の機能を発揮するべく誘発される。
【0105】
疲労原理:
疲労興奮性細胞に対し、より高い振幅をもつMFパルスが使用される。
【0106】
電流強度が上昇するにつれて、より奥深いところにある(電極からより遠位にある)細胞が連続して刺激される。
【0107】
周波数の増加に伴って、活動電位を生成するために強度がより高い必要がある。
中周波数交流電流に基づいて、以下の付加的な療法のための選択肢が得られる:
【0108】
十分な強度の(定振幅)MF電流で刺激する場合、活動電位がまず最初に生成される。より長い時間流れるMF電流の場合、活動電位の減衰側面は、減極レベル(永久減極)にとどまり、これは平衡電位の約半分の量である。NM電流を遮断した時点で、膜電圧は下降し、次に平衡電位レベルまで減衰する。
以下の小項目は、永久減極の治療上の利用について記載している。
【0109】
疼痛の軽減及び灌流への影響:
治療中の領域の特性に応じて、許容誤差限界の範囲にある高い強度は、永久減極に起因して、神経伝達経路の遮断を引き起こす。この真の神経ブロック(BOWMAN、Bruce R.,1981,E.K.University of L Jubljana学位論文、Rancho Los Amigos Hospital、Downey,Calif,U.S.Aにより立証された証拠)は、例えば幻肢痛における疼痛遮断又は血流障害における星状神経ブロックのために利用される。
【0110】
筋肉収縮:
随意神経支配不全及び筋肉拡張における筋肉トレーニング。
神経筋器官が無欠の状態で、横紋筋(骨格筋)は永久減極により直接刺激される。この結果、例えば筋肉の随意神経支配不全において又はけいれん性筋肉のアンタゴニストを伸張させるために使用される筋肉収縮がもたらされる。治療中、強度は、短かい間隔で一時中止により中断されるべきである。強度も同様に、調整された値の100%〜約50%の間で増減され得る。
【0111】
強い筋肉収縮力の生成:
疲労現象無く非常に強い筋肉収縮を誘発することができる。約50Hz以上の刺激電流で誘発され得るテタヌス様収縮においては、反対に、筋肉収縮力の急速な減少が、筋運動単位の疲労に起因して起こる。
【0112】
細胞分裂:
創傷の治癒及び骨の治癒の促進:
永久減極は、健康な細胞の中で細胞分裂を誘発する。これによって、創傷治癒を促進し、骨折における骨の治癒を早めることができる。その上、MF電流は、荷電分子割当て分の回転運動を伴う電流侵入を受けた組織内の荷電分子の往復運動(振とう効果)を、交流電場の効果の下で誘発する。これによって代謝プロセスにおいて化学的に相互作用する酵素と基材の「正しい」出会い位置のさらに大きな確率が達成される(代謝による円滑化)。この振とう効果は、存在する濃度勾配のために或る方向で進捗する拡散プロセスが、付加的に付与される運動エネルギー(MFイオン導入、炎症の阻害、疼痛の軽減)に起因して加速されるという点で、濃度の差をならす傾向をもつ。前記振とう効果は、高強度で特に有効である。
【0113】
炎症及び疼痛の媒介物質の分布:
炎症の阻害及び疼痛の軽減:
疼痛のある炎症プロセスにおいては、罹患組織内に規則的に高濃度の炎症及び疼痛媒介物質が発見される。この高い濃度は、振とう効果によって低減(分散)される。高い電流強度によってひき起こされる「振とう強度」(周波数と同じ)は、治療効果にとって大きな意味をもつ(Hans−Jurgens,5月、Elektrische Differential−Therapie[電気差療法],Karlsruhe 1990)。
【0114】
代謝への影響(拡散、ミトコンドリア、環状AMP):
代謝プロセスの円滑化と促進:
上述のように、生化学的代謝プロセスは円滑化される。
同様に、MF電流で細胞培養に侵入する際に、ミトコンドリア(細胞の「エネルギー工場」)の数及びそのサイズが著しく増大することが発見された。
【0115】
細胞の重要なメッセンジャー物質である環状AMPの濃度も同様に、MF電流及び/又は電圧に応じて交流電流によって影響され得る。(Dertinger,1989,Kemforschungszentrum Karlsruhe,Nagy Nemectron GmbH Karlsruhe)。
【0116】
さらに、MF電流を用いて、無痛でかつ強い筋肉収縮を誘発することができる。
いわゆる「閾値解離」は、8kHzから発生する。すなわち、筋肉収縮についての閾値アンペア数は、知覚できる閾値のものよりも低くなる。(Edel,H.:Fibel der Elektrodiagnostik and Elekrtotherapie[電気的診断及び電気療法のプライマ],Muller & Steinicke Munchen 1983,p.193)強い筋肉収縮が無痛で誘発できる。治療的に見ると、閾値解離は、MF電流の永久減極によって引き起こされる、筋肉収縮の可逆的プロセスを利用する上で特に有利である。
【0117】
MF電流の高い強度に起因して、電流浸透組織内に熱が発生する。しかしながら、前提条件は、閾値を超えることにより患者が不快を感じないということである(感覚、筋肉、寛容、疼痛)。
【0118】
代謝プロセスの改善と類似して、MF電流を用いて、すなわち体内への皮膚を通した電流の助けを借りた医薬品の投与によりイオン導入が同様に達成できる。身体的状況のせいで、MF電流でのイオン導入は、ガルバニ電流と比べて長い治療時間と高い強度を必要とする。
【0119】
上述のように、又は関連業界5分献(A.Hansjnorgens及びHUによる「Elekrtische Differential−Therapie」[電気差療法]、1990年5月:Nemectron GmbH,Karlsruheを参照のこと)の中でもこれまでに見られるように、これまでの電気療法器具は、診断に応じて、各々定振幅(強度)で5Hz〜100,000Hzを上回る周波数での中周波電流又は、0〜200Hzの周波数での低周波電流又は振幅変調された中周波電流を利用する。
【0120】
以上の使用のうちのいずれか1つ又は複数のものが本発明の皮膚パッチについて予想されることから、パッチ(10)は好ましくは、電気化学セル(14)によって生成される電流のレベル又は持続時間を制御するための電気回路を内含している。かかる回路は、「要望に応じた」薬物デリバリー(例えば、疼痛緩和用鎮痛剤の、患者により制御されるデリバリー)のためのオン−オフスイッチ、タイマー、固定型又は可変型電気抵抗器、身体の自然の又は約24時間周期のパターンと整合するように或る所望の周期性でデバイスを自動的にオンオフ切換えするコントローラ、又はその他の当該技術分野において既知より精巧な電子制御デバイスの形をとりうる。例えば、恒常な電流レベルが物質デリバリー速度を恒常に保つことから、所定のレベルの電流を流すことが望まれる可能性がある。
【0121】
電流レベルは、例えば抵抗器又は、抵抗器や電界効果トランジスタを利用する単純な回路といった、さまざまな既知の手段によって制御され得る。回路は同じく、デリバリーされる活性作用物質の用量を制御するように、又さらにはセンサー信号に応答して用量を調節し所定の用法・用量を維持するように設計することのできる集積回路をも内含することができる。比較的単純な回路が時間の関数として電流を制御でき、望まれる場合には、以上でさらに詳述されるようにパルス又は正弦波といったような複雑な電流波形を生成できる。
【0122】
さらに、当該回路は、生体信号を監視し、療法の査定を提供し、それに応じて活性作用物質のデリバリーを調整するバイオフィードバックシステムを利用することができる。典型的な例としては、糖尿病患者に対してインシュリンを制御しながら投与するための、血糖レベルの監視がある。制御回路の単純ではあるもののそれでも重要な用途は、発熱及びその結果としての組織損傷の回避にある。イオンのデリバリーがイオンの運動に起因して熱を引き起こすこと、そしてデリバリーが大きくなればなるほど、デリバリーの部位における熱蓄積が大きくなることがわかる。従って、治療のために用いられる電流は、物質のデリバリーを最大限にすることと熱増大の不快さを最小限にすることの間に平衡を見い出すことができるように患者によって制御されうる。
【0123】
従って、本発明によるキットは、少なくとも1種類の物質の経皮及び/又は皮内デリバリーのための経皮パッチ、及び使用前に上記パッチから離れる物質を保持するための少なくとも1つのリテイナを含む。この構造は、単独の経皮パッチによる物質/投与量の多目的な使用を可能にする。
【0124】
それ故、本発明による少なくとも1種類の物質の経皮又は皮内デリバリー方法は、以下の:(a)患者の皮膚部に物質を含む導電性流体を局所的に適用し、及び/又は上記経皮パッチの一方の側面に配置された少なくとも2つの電極を有する電気化学セルを含む経皮パッチの少なくとも一方の電極に、物質を含む導電性流体を付して;(b)上記電極が患者の皮膚部と電気的に接触するように、上記経皮パッチを配置し;そして(c)経皮的に又は皮内的に物質をデリバリーするように、導電性流体及び皮膚部を通して電流を流す、によって成立する。
【0125】
それ故、本発明による患者の皮膚部に電流及び/又は電圧を生じる方法は、以下の:(a)患者の皮膚部に導電性流体を局所的に適用し、及び/又は上記経皮パッチの一方の側面に配置された少なくとも2つの電極を有する電気化学セルを含む経皮パッチの少なくとも一方の電極に導電性流体を付して;(b)上記電極が患者の皮膚部と電気的に接触するように、経皮パッチを配置し;そして(c)患者の皮膚部に電流及び/又は電圧を生じるように導電性流体を通して電流を流す、によって成立する。
【0126】
導電性流体は、リテイナ内に保持されているか、又は記載された他のリテイナのいずれかから分けられることによって、一方又は両方の電極上に付されることが知られている。本発明の前述の適用が、電極が配置されるであろう位置にて、皮膚に導電性流体が局所的に適用されることによっても成立することがさらに知られている。
【0127】
本発明は、単独の経皮パッチとして経皮的に又は皮内的にデリバリーされるべき物質を本質的に含み、かなり多数の異なる物質/服用量のデリバリーに使用されることができ、動力が供給される限り、消耗することが決してないので捨てられなくてもよいといった、現行のパッチを上回る多数の利点を提供する。
【0128】
本発明のさらなる目的、利点、及び新規特徴は、制限することのない以下の実施例の試験において当業者に明白になるであろう。その上、本明細書中で先に描かれた、及び特許請求の範囲の項で請求した本発明の様々な態様及び側面の各々が、以下の実施例により実験的なサポートを見出す。
【実施例】
【0129】
先の記載と共に本発明を制限的な意味なく説明する言及が、以下の実施例に対して成される。
【0130】
軽微な酒さの治療
顔面の一部分の赤み及び毛細血管拡張症により特徴づけられる軽微な酒さは、人口の高齢化を主たる理由として数多くの人々を悩ましている一般的な障害である。残念なことに、軽微な酒さのための治療には5つの制限がある。
【0131】
以下の内含基準:
顔の両側に軽度〜中度の赤みを有しており;そして
年齢が20〜65歳である
を満たした軽微な酒さを患う3人の患者がパイロット研究に登録された。
【0132】
研究の目的は、治療中及び治療後の赤味現象に対する治療効果を検出し副作用を検出することにあった。
【0133】
各々の研究被検者は、顔面両側に治療を受けた。
顔面の片側には、パッチの大部分(主要パッチ)が電源の陽極に接続され、パッチの小部分(対パッチ)が電源の陰極に接続されるような形で、細いコードで電源に「能動パッチ」が接続された。
【0134】
同じ形状をもち電源に接続されていない「受動パッチ」が、各研究被検者の顔面のもう一方の側に使用された。
【0135】
各パッチは、テスト調製物(ハシバミ(herbal)エキスを含む水性ゲル)によりコーティングされた。テスト調製物0.4mlをスパチュラを用いて主要パッチ上に均等に塗布し、0.1mlを対パッチに塗布した。その後パッチを、7〜20分間の5つの期間(治療期間)の間、研究被検者の皮膚上に適用した。
【0136】
パッチの除去の直後、25分後及び40分後に、患者による主観的査定及び訓練を受けた観察者による盲検査定を含む観察を行なった。治療の前に全ての観察箇所で写真を撮った。
【0137】
3人の被検者の全てにおいて、能動パッチ部位で赤み度及び毛細血管拡張症の範囲の顕著が減少が存在した。この改善は、まず第1にパッチ除去の直後に観察され、観察期間の残りの部分についてさらに記録された。受動パッチ部位は、きわめてわずかな改善を示し、患者又は観察者はこれを有意であるとはみなさなかった。
【0138】
別個の実施例の状況において記載された明確性についての本発明の特徴は、単独の態様における組み合わせによって提供されることもできることが認識されている。逆に、単独の態様の状況において記載された簡潔さについて、本発明の様々な特徴が、別個に又はあらゆる好適なサブコンビネーションで提供されることもできる。
【0139】
当業者であれば、本発明が以上で特定的に示され記載されたものに制限されないということがわかるだろう。むしろ、本発明の範囲は、添付のクレームによって定められ、本書で以上に記載したさまざまな特長の組合せと同時に下位組合せをも内含し、さらには、以上の記載を読んで当業者が考えつくと思われる変形形態及び修正形態をも内含するものである。従って、添付のクレームの精神及び広い範囲内に入るこのような代替物、修正及び変形形態の全てを包含することが意図されている。
【0140】
図面に対するここでの具体的で詳細な言及により、実施例の目的、及び本発明の好ましい態様の説明的な議論の目的のためだけのものであり、そして最も有用な、かつ、容易に理解される、本発明の原理及び概念的側面の説明であると考えられるものを提供する場合に、示される事項が提供されることが強調される。この点について、本発明の基本的な理解に必要であるより詳細な本発明の構造的な詳細を示そうとする試みはなく、ここで、図面を受ける説明は、本発明のいくつかの形態がどのようにして実施において具体化されるのかを当業者に理解させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッチに動力を供給するための電気化学セルを含む少なくとも1つの電源であって、該電気化学セルが陰極、陽極及び電解質を含む前記電源、並びに、患者の皮膚部と電気的に結合するための、当該電気化学セルに電気的に接続した少なくとも2つの電極であって、該少なくとも2つの電極の少なくとも一方が電気化学セル上で又はそれと共に一体的に形成される前記電極を含む皮膚パッチ。
【請求項2】
前記少なくとも2つの電極の少なくとも一方の電極が、少なくとも1種類の物質の移動のための電極である、請求項1に記載の皮膚パッチ。
【請求項3】
物質を保持し、前記少なくとも2つの電極の少なくとも一方と前記皮膚部との間の接触を妨げる少なくとも1つのリテイナをさらに含む、請求項1に記載の皮膚パッチ。
【請求項4】
患者の皮膚部への電流及び/または電圧の導入、少なくとも1つの物質の皮膚デリバリー、少なくとも1つの物質の経皮デリバリー、及び少なくとも1つの物質の皮内デリバリーの少なくとも1つ、またはその組み合わせのための、請求項1に記載のパッチ。
【請求項5】
前記少なくとも2つの電極が前記電気化学セルと一体的に形成されている、請求項1に記載のパッチ。
【請求項6】
前記パッチがパッチ本体をさらに含み、かつ、前記電源及び前記少なくとも2つの電極が、当該少なくとも2つの電極の間の間隔を明確にするように互いに対して隔離して上記パッチ本体上に並べられる、請求項1に記載のパッチ。
【請求項7】
前記電気化学セルが、柔軟な薄層電気化学セルを含む、請求項1に記載のパッチ。
【請求項8】
包装されて、そして創傷治癒の用途、傷跡の予防の用途、傷跡の縮小の用途、組織修復の用途、組織再生の用途、筋肉刺激、筋肉収縮、骨の治癒の促進、炎症の阻害、代謝の円滑化及び促進、疼痛の軽減、並びに酒さ、皺及び老化の治療から成る群から選ばれる用途に特定される、請求項1に記載のパッチ。
【請求項9】
伝導性流体をさらに含む、請求項1に記載のパッチ。
【請求項10】
前記伝導性流体が少なくとも1つの物質を含み、前記少なくとも1つの物質が、薬剤、化粧品、薬用化粧品、及び水分から成る群から選ばれる、請求項9に記載のパッチ。
【請求項11】
抗感染薬、抗生物質、抗ウイルス剤、鎮痛薬、フェンタニール、スフェンタニル、ブプレノルフィン、無痛剤の組み合わせ、麻酔薬、拒食症薬(anorexics)、抗関節炎薬、抗喘息剤、テルブタリン、抗けいれん剤、抗うつ剤、抗糖尿病薬、止痢薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、片頭痛製剤、抗乗り物酔い薬、スコポラミン、オンダンセトロン、制嘔吐剤、抗腫瘍薬、抗パーキンソン病薬、心刺激薬(cardiostimulant)、ドブタミン、かゆみ止め、抗精神病薬、解熱剤、鎮痙薬、鎮痙薬、抗コリン作用薬、交感神経様作用薬、キサンチン誘導体、心血管薬、カルシウムチャンネル遮断薬、ニフェジピン、β遮断薬、β−アゴニスト、サルブタモール、リトドリン、抗不整脈薬、降圧剤、アテノロール、ACE阻害薬、利尿薬、血管拡張薬、冠動脈,末梢,脳の中枢刺激剤、感冒薬、充血緩和剤、診断薬、ホルモン、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン、インシュリン、催眠薬、免疫抑制剤、筋弛緩薬、副交感神経遮断薬、副交感神経用作用薬、酸化防止剤、ニコチン、プロスタグランジン、精神刺激薬、鎮静剤、トランキライザ、皮膚で働く酸化防止剤、カロテノイド、アスコルビン酸(ビタミンC)、ビタミンE、小じわ防止剤、レチノイド、レチノール(ビタミンAアルコール)、α−ヒドロキシ酸、β−ヒドロキシ酸、サリチル酸、ヒドロキシ酸とポリヒドロキシ酸の組み合わせ、保湿剤、ヒアルロン酸、抗脂肪沈着剤、アミノフィリン、皮膚漂白剤、レチノイン酸、ヒドロキノン、過酸化物、植物製剤、アロエ−ベラ,野生のヤムイモ,ハマメリタニン(hamamelitanin),チョウセンニンジン,マンサク,ヤクヨウニンジン,カマンサク(witch hazel),水及び緑茶の抽出物の少なくとも1つである前記少なくとも1つの物質を含む、請求項1に記載の皮膚パッチ。
【請求項12】
生体から物質を回収するための請求項1に記載の皮膚パッチ。
【請求項13】
少なくとも2つの電極の少なくとも一方が電気化学セルの端子である、請求項1に記載の皮膚パッチ。
【請求項14】
前記パッチが折り畳み式である、請求項1に記載の皮膚パッチ。
【請求項15】
皮膚部への電流及び/又は電圧の導入、並びに/あるいは少なくとも1つの物質の経皮又は皮内デリバリーのためのキットであって、
(a)請求項1に記載の皮膚パッチ;及び
(b)導電性流体を保持するための少なくとも1つのリテイナ
を含む前記キット。
【請求項16】
パッチに動力を供給するための電気化学セルを含む少なくとも1つの電源、及び患者の皮膚部と電気的に結合するための当該電気化学セルに電気的に接続した少なくとも2つの電極を含む皮膚パッチであって、ここで、該少なくとも2つの電極の少なくとも一方が電気化学セル上で又はそれと共に一体的に形成され、該少なくとも2つの電極の少なくとも一方が電気化学セル上に印刷される前記皮膚パッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−75710(P2010−75710A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260129(P2009−260129)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【分割の表示】特願2003−537728(P2003−537728)の分割
【原出願日】平成14年10月23日(2002.10.23)
【出願人】(504164642)パワー ペーパー リミティド (4)
【Fターム(参考)】