経皮免疫処置用送達システム
本発明は、経皮免疫処置用送達システムに関するものである。より詳細には、本発明は、抗原を効果的に局所投与するための送達システムであって、対象の皮膚内にマイクロチャネルを形成する装置を備えるシステムに関する。本送達システムは、細菌性、ウイルス性、及び真菌性の抗原に対する免疫処置に有用であり、且つ腫瘍及びアレルギーの治療にも有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮免疫処置用送達システムに関するものである。より詳細には、本発明は、対象の皮膚内にマイクロチャネルを形成する装置を併用して、抗原性物質を効果的に局所投与するための送達システムに関する。本送達システムは、細菌性、ウイルス性、及び真菌性の抗原に対する免疫処置に有用であり、さらに腫瘍及びアレルギーの治療にも有用である。
【背景技術】
【0002】
経口、経鼻、筋肉内(IM)、皮下(SC)、及び皮内(ID)を含む種々の投与経路から、ワクチン接種を行うことができる。市販ワクチンの大部分の投与経路は、IM又はSCである。ほとんどの場合、ワクチンは、従来からの注射器と針を用いた注射によって投与されているが、高速液体ジェット注射器もある程度の成功を収めている。
【0003】
皮膚が免疫臓器であることは周知である。皮膚に侵入した病原体は、種々の機構を介して微生物を除去することができる高度に組織化された多種多様な特化した細胞群に出合うことになる。表皮のランゲルハンス細胞は、強力な抗原提示細胞である。リンパ球及び皮膚のマクロファージは、真皮に侵入することができる。多様な免疫学的に活性のある化合物を生じさせるために、ケラチノサイト及びランゲルハンス細胞が発現する、また、それらを誘導することもできる。これらの細胞が全体として、複雑な一連の事象を組織的に展開し、結果として自然免疫応答及び特異免疫応答の双方が制御される。
【0004】
皮膚の主要な障壁である角質層は、親水性高分子量薬物並びにタンパク質、裸のDNA5、ウイルスベクター等のポリマーを透過させない。したがって、一般に経皮送達は、親水性の低い低分子量化合物(<500ダルトン)の受動的な送達に限られていた。
【0005】
角質層の迂回を目指す多くの方法が評価されている。化学的浸透促進剤、脱毛剤、及び水和化によって、ポリマーの皮膚浸透性を向上させることができる。しかし、これらの方法は、送達の手段としては比較的効率が悪い。さらに、非刺激性の濃度では、化学浸透促進剤の効果には限界がある。サンドペーパーで研磨する方法、テープではぎ取る方法、及び二股の針を用いる方法を含め、物理的に浸透性を向上させる方法も評価されている。これらの方法により浸透性が向上するものの、薬物の吸収に及ぼすこれらの効果の大小を予想するのは困難である。レーザーにより除去する方法は、より再現性のある効果をもたらすことができるが、現状では面倒且つ高価な方法である。能動的な経皮送達の方法として、イオントフォレーシス、エレクトロポレーション、ソノフォレーシス(超音波導入法)、及び薬物含有固体粒子のバリスティック送達(ballistic delivery)があげられる。能動輸送(例えば、ソノフォレーシス)を使用する送達システムの開発が進んでおり、そのようなシステムを用いればポリマーの送達が可能である。しかし、現段階では、ヒトにおけるポリマーの送達が、これらのシステムによって満足に達成でき、再現性のあるものとなるかどうかは明らかでない。
【0006】
米国特許第5980898号は、ドレッシング、免疫抗原、及びアジュバントを備える経皮免疫処置用のパッチを開示している。この場合、無処置の皮膚にパッチを当てると、免疫抗原に特異的な免疫応答が惹起される。米国特許第5980898号によれば、抗原を備えるパッチの施用にあたっては、無処置の皮膚に音波又は電気エネルギーによる穿孔処理を加えない。しかし、免疫抗原、特にタンパク質は、皮膚上に置かれただけではそれ自体は免疫原性ではなく、そのような免疫抗原に対し免疫応答を惹起するには、アジュバントの存在を必要とする。米国特許第5980898号によるアジュバントには、コレラ毒素等のADPリボシル化菌体外毒素、熱不安定性エンテロトキシン、又は百日咳毒素が好ましい。
【0007】
米国特許第6706693号は、目的の遺伝子をコードし、当該目的遺伝子がコードするタンパク質を発現させるプラスミドDNA−リポソーム複合ベクター又はDNAベクターのいずれかを哺乳動物の皮膚に局所投与し、当該タンパク質に対する全身的な免疫応答を惹起するステップを含む全身的な免疫応答を非侵襲的に惹起する方法を開示している。米国特許第6706693号によれば、DNAベクターは、アデノウイルス組換え体又はDNA/アデノウイルス複合体であることができる。
【0008】
米国特許出願2001/0006645は、選択された薬物の経皮送達の方法であって、皮膚領域をアルファヒドロキシ酸で処理して当該皮膚領域を剥離させるステップと、当該選択薬物及び当該選択薬物の経皮送達を促進するための媒体を含有するパッチを供給するステップと、当該パッチを当該処理済み皮膚領域に当てるステップとを含む方法を開示している。米国特許出願2001/0006645による方法は、例えば、ジフテリア毒素、B型肝炎、ポリオ、水疱等に対する免疫処置又はワクチン接種に特に有用である。
【0009】
米国特許出願2002/0193729は、角質層を貫通する複数の微小突起を有する微小突起配列とリザーバとを備える皮内ワクチン送達装置を開示している。当該微小突起は、皮膚に500μmを超えない深さまで貫通することによって角質層内に孔を形成する。上記のリザーバは、抗原性物質及び免疫応答賦活アジュバントを含み、当該リザーバは、上記の孔に上記の物質及び上記のアジュバントを送り出す位置に配置される。
【0010】
米国特許第6595947号は、物質を単回、即時に、皮膚の表皮組織に物質を送達し、免疫応答を促進する方法であって、皮膚の表皮を破壊させず角質層のみを破壊させるステップと、それと同時に皮膚の表皮組織に当該物質を送達するステップとを含む方法を特許請求している。米国特許第6595947号によれば、物質の送達と、削り落としたりこすり落としたりすることによる皮膚の外層の擦過とを同時に行うことにより、当該物質に対する免疫応答を促進する。米国特許第6595947号による物質は、核酸、アミノ酸、ペプチド、又はポリペプチドであることができる。
【0011】
米国特許出願2004/0028727は、ドレッシング、抗原、及びアジュバントを備える経皮免疫処置用のパッチを開示している。抗原及びアジュバント材料の少なくとも1種は乾燥形態であり、当該パッチを無処置の皮膚に当てると当該抗原に特異的な免疫応答が惹起される。米国特許出願2004/0028727によれば、アジュバントは、ADPリボシル化菌体外毒素が好ましい。
【0012】
国際公開WO2004/039426、WO2004/039427、及びWO2004/039428は、いずれも本出願の出願人に帰するものであるが、医薬品の経皮送達のシステム及び方法を開示している。具体的には、親水性制吐薬と、ポリペプチド及びタンパク質を含む乾燥組成物と、水不溶性薬物とが開示されている。国際公開WO2004/039426、WO2004/039427、及びWO2004/039428が開示するシステム及び方法を用いると、薬学的組成物の血液に対する浸透性が顕著に向上した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
実用的で、信頼性の高い、効果的な、皮膚内に又は皮膚を介して抗原を送達し、免疫を惹起する方法を望む声に応えるものは、出現していない。特に、皮下針、浸透促進剤、アジュバント、又はウイルスベクターの使用を必要とせず、且つ皮膚を積極的に研磨したり、貫通したりすることにより不快感を起こすことがない方法が望まれているが、それに応えるものは未だに出現していない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、免疫処置用の経皮送達システムに関するものである。本経皮送達システムは、対象の皮膚領域内に複数のマイクロチャネルを形成する装置と、抗原性物質を含む組成物とを備える。
【0015】
本発明の経皮送達システムが、アジュバントを必要としないという今回の開示は驚きに値する。本発明のシステムを用いると、アジュバントがなくても、アジュバントがある場合と同程度の優れた免疫効果が達成できる。したがって、抗原性物質と接触する皮膚領域は、アジュバントの使用に伴う刺激、感作、又は毒作用を被らなくてもよい。本明細書に示すごとく、本発明の装置によって形成されるマイクロチャネルによって、対象の体内へのワクチンの送達及び抗原特異的免疫応答の惹起を効果的に行うことができることが本発明で示されているので、本発明の装置を併用して、抗原性物質を含む組成物又は市販のワクチンを投与することができる。
【0016】
さらに、本発明の送達システムは、高分子量の分子に対する免疫応答の惹起に非常に有用であることを開示している。惹起される免疫応答は、1つの抗体サブタイプに限定さることはなく、むしろいくつかの抗体サブタイプ、すなわちIgM、IgG、及びIgAの産生に及ぶことができる。
【0017】
さらに、本発明の装置を用いて対象の皮膚領域を処置した後、対象の当該皮膚領域に抗原性物質を局所適用すると、当該抗原性物質に特異なIgA及びIgGの抗体力価が上昇することを開示している。これらの力価は、従来の免疫処置経路、すなわち皮下又は筋肉内経路を用いて得られた力価と同等であるか、或いはそれらより高い。したがって、本発明は、注射を必要としない免疫処置又はワクチン接種のシステムを提供するものである。
【0018】
予想外なことに、本発明の装置を用いて対象の皮膚領域を処置した後、対象の当該皮膚領域に抗原性物質を局所適用すると、当該抗原性物質に特異なIgGの抗体力価が顕著且つ有意に検知可能な量で、皮下又は筋肉内に抗原を投与した後に抗体が出現する時期より早期に認められる。したがって、免疫の速やかな発生を必要とする多くの用途で、本発明のシステムは、特に有利である。
【0019】
さらに、本発明の装置を用いて処置した対象の皮膚領域に抗原性物質を含む溶液を局所適用した場合、前記装置を用いて処置した皮膚に乾燥した抗原性物質を含むパッチを当てた場合より、抗原特異的IgG抗体をより効率よく惹起することを開示している。しかし、本発明の装置を用いて皮膚を処置した後、乾燥した抗原性物質を含むパッチを処置済みの皮膚に当てた場合、皮下又は筋肉内経路に比較して、抗原特異的IgA抗体をより効率よく惹起することが示されている。したがって、抗原性物質の特定の剤形と組み合わせた本発明の装置は、免疫系を操作するのに有用である。
【0020】
本発明は、各種の広範な細菌性抗原、ウイルス性抗原、真菌性抗原、及び抗原特異的免疫応答を惹起することができるその他の高分子量物質を含むことを意図することは明らかである。本明細書に以下、45kDaのタンパク質である卵白アルブミン及び元来ヒトから単離された3株からなる不活性化インフルエンザワクチンを使用して、本発明の原理を例示する。
【0021】
一態様によれば、本発明は、対象の皮膚領域を介した抗原の経皮送達を促進するための装置であって、機械的手段以外の手段を用いて、対象の皮膚領域内に複数のマイクロチャネルを形成することができる装置と、免疫原性有効量の抗原を含む組成物とを備える抗原特異的免疫応答を惹起するための経皮送達システムを提供する。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、電気エネルギーを用いて角質層の除去をひき起こすことによって、マイクロチャネルを発生させる技術を組み入れている。このような技術として、その全体が本明細書に参照として組み入れられている米国特許第6148232号、第6597946号、第6611706号、第6711435号、及び第6708060号に開示されている装置があげられる。しかし、本発明のより好ましい実施形態の中には、上記の装置を用いて皮膚を除去することによって得られる抗原の皮内又は経皮送達に関するものもあるが、機械的手段を利用するものを除き、対象の皮膚内にマイクロチャネルを形成するための当技術分野で公知の、本質的にいずれの方法であっても使用することができることに留意されたい。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、対象の皮膚領域を介した抗原の経皮送達を促進するための装置を備える経皮送達システムであって、前記装置が、
a.複数の電極を備える電極カートリッジ;及び
b.前記複数の電極が皮膚の付近にある場合に前記複数の電極間に電気エネルギーを与えるようになされ、通常電流又は1つ若しくは複数のスパークを発生させ、電極下の領域内の角質層を除去することができ、それによって複数のマイクロチャネルを形成する制御部を備えた主要ユニット
を備える。
【0024】
別の実施形態によれば、装置の制御部は、電極に送られる電気エネルギーの強さ、頻度、及び/又は期間を制御する回路を備えており、電流又はスパークの発生を制御し、それによって複数のマイクロチャネルの幅、深さ、及び形を制御する。電気エネルギーは、高周波であることが好ましい。
【0025】
例示的な実施形態によれば、複数の電極を備える電極カートリッジは、一様な形と寸法を有する複数のマイクロチャネルを形成する。いくつかの実施形態によれば、電極カートリッジは、着脱可能である。電極カートリッジは、一度使用したら廃棄することができ、そのために主要ユニットへの取り付け及びその後の主要ユニットからの取り外しが簡単なように設計されている。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、抗原は、細菌性抗原、ウイルス性抗原、真菌性抗原、原虫性抗原、腫瘍抗原、アレルゲン、自己抗原並びにそれらの断片、類似体、及び誘導体からなる群から選択される。
【0027】
別の実施形態によれば、細菌性抗原は、炭疽菌(Anthrax)、カンピロバクター属(Campylobacter)、コレラ菌(Vibrio cholera)、クロストリジウム属(Clostridia)、ジフテリア菌(Diptheria)、腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli)、腸内毒素原性大腸菌(enterotoxigenic Escherichia coli)、ジアルジア属(Giardia)、淋菌(gonococcus)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、インフルエンザ菌B型(Hemophilus influenza B)、無莢膜型インフルエンザ菌(non−typeable Hemophilus influenza)、レジオネラ菌(Legionella)、髄膜炎菌(meningococcus)、放線菌(Mycobacteria)、百日咳菌(pertussis)、肺炎菌(pneumococcus)、サルモネラ菌(salmonella)、赤痢菌(shigella)、ブドウ球菌(staphylococcus)、A群ベータ型溶血性連鎖球菌(Group A beta−Hemolytic streptococcus)、B型連鎖球菌(Streptococcus B)、破傷風菌(tetanus)、ライム菌(Borrelia burgdorferi)、及びエルシニア属(Yersinia)からなる群から選択される細菌に由来する。
【0028】
その他の実施形態によれば、ウイルス性抗原は、アデノウイルス(adenovirus)、エボラウイルス(ebola virus)、腸内ウイルス(enterovirus)、ハンタウイルス(hanta virus)、肝炎ウイルス(hepatitis virus)、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus)、ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus)、ヒトパピローマウイルス(human papilloma virus)、インフルエンザウイルス(influenza virus)、はしか(麻疹)ウイルス(measles(rubeola)virus)、日本馬脳炎ウイルス(Japanese equine encephalitis virus)、パピローマウイルス(papilloma virus)、パロボウイルス B19(parvovirus B19)、ポリオウイルス(poliovirus)、呼吸器合胞体ウイルス(respiratory syncytial virus)、ロタウイルス(rotavirus)、セントルイス脳炎ウイルス(St.Louise encephalitis virus)、ワクシニアウイルス(vaccinia virus)、黄熱病ウイルス(yellow fever virus)、風疹ウイルス(rubella virus)、水疱ウイルス(chickenpox virus)、水痘ウイルス(varicella virus)、及びおたふく風邪ウイルス(mumps virus)からなる群から選択されるウイルスに由来する。
【0029】
その他の実施形態によれば、真菌性抗原は、体部白癬菌(tinea corporis)、爪白癬菌(tinea unguis)、スポロトリクム症菌(sporotrichosis)、アスペルギルス症菌(aspergillosis)、及びカンジダ菌(Candida)からなる群から選択される真菌に由来する。
【0030】
別の実施形態によれば、原虫性抗原は、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、マラリア原虫(Plasmodium)、及びリーシュマニア(Leishmania)からなる群から選択される原虫に由来する。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、抗原は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、脂質、リン脂質、炭水化物、糖脂質、及びそれらの複合体から選択される。組成物は2種以上の抗原を含むことができることを理解されたい。
【0032】
さらにその他の実施形態によれば、本発明の抗原を含む組成物は、乾燥剤形又は液体剤形とすることができる。例示的な実施形態によれば、乾燥剤形は、パッチである。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、抗原を含む組成物は、アジュバントをさらに含んでいる。
【0034】
別の態様によれば、本発明は、対象に抗原特異的免疫応答を経皮的に惹起する方法であって、
(i)機械的手段以外の手段を用いて、対象の皮膚領域内に複数のマイクロチャネル形成するステップ;及び
(ii)免疫原性有効量の抗原と、薬学的に許容される担体とを含む組成物を、複数のマイクロチャネルが存在する皮膚領域に局所適用し、それによって抗原特異的免疫応答を惹起するステップ
を含む方法を提供する。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、複数のマイクロチャネルは、
a.複数の電極を備える電極カートリッジ;及び
b.前記複数の電極が皮膚の付近にある場合に前記複数の電極間に電気エネルギーを与えるようになされ、通常電流又は1つ若しくは複数のスパークを発生させ、電極下の領域内の角質層を除去することができ、それによって複数のマイクロチャネルを形成する制御部を備えた主要ユニット
を備える装置を用いて形成される。
【0036】
別の実施形態によれば、複数の電極を備える電極カートリッジは、着脱可能である。さらに別の実施形態によれば、電気エネルギーは、高周波である。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、抗原特異的免疫応答を惹起する方法は、抗原特異的抗体を含んでいる。別の実施形態によれば、抗原特異的免疫応答は、抗原特異的リンパ球を含んでいる。
【0038】
本発明の原理に基づく経皮的に免疫応答を惹起する方法を用いると、細菌性抗原、ウイルス性抗原、真菌性抗原、原虫性抗原、腫瘍抗原、アレルゲン、自己抗原等の種々の抗原性物質に対する応答を惹起することができるので、本発明の方法は、免疫保護、免疫抑制、自己免疫疾患の調節、ガンに対する免疫監視の増強、疾患予防のための予防的ワクチン接種並びに確立された疾患の治療については、その治療のための或いは重症度の軽減及び/又は罹病期間短縮のための治療的ワクチン接種に有用であることを理解されたい。
【0039】
以下の図、説明、実施例、及び特許請求の範囲を参照することによって、本発明のこれらの実施形態及びその他の実施形態が、より明確に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明は、対象の皮膚領域を介した抗原性物質の経皮送達を促進するための装置と、少なくとも1種の抗原性物質を免疫原性有効量で含む組成物とを備える抗原特異的免疫応答を惹起するための経皮送達システムを提供する。前記装置は、対象の皮膚領域内に少なくとも1つのマイクロチャネルを形成することができる。
【0041】
抗原
「抗原性物質」及び「抗原」は、本明細書及び特許請求の範囲を通して交換可能な用語であり、組成物の有効成分を意味し、この有効成分は、免疫処置又はワクチン接種の後に、ヒト又は動物である対象の免疫系によって特異的に認識される。抗原は、B細胞受容体(すなわち、分泌された抗体又は膜に結合している抗体である)或いはT細胞受容体によって認識される1種又は複数の免疫原性エピトープを含むことができる。
【0042】
また、本発明による抗原性物質は、免疫原性物質でもある。「免疫原性」物質とは、抗原特異的免疫応答を惹起することができる物質を意味する。
【0043】
「免疫処置」及び「ワクチン接種」という用語は、抗原特異的免疫応答を惹起することを意味し、本明細書及び特許請求の範囲を通して交換可能である。
【0044】
抗原は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、脂質、リン脂質、炭水化物、糖脂質、それらの混合物又は複合体、或いは免疫応答を惹起することが知られているその他のいずれかの材料であることができる。抗原の分子量は、1キロダルトン(kDa)、10kDa、又は100kDa(それらの中間の範囲を含む)より大きくてもよい。抗原は、担体と複合体を形成していてもよい。抗原は、例えば、細菌又はウイルス粒子等の微生物全体として供給することができる。抗原は、例えば、細胞全体又は膜由来等、微生物の抽出液或いは溶菌液から得ることができる。抗原は、例えば、生のウイルス又は細菌等の生きている微生物として、例えば、弱毒化生ウイルス又は細菌等の弱毒化された生きている微生物として、或いは化学的又は遺伝子的手法によって不活性化された微生物として供給されることができる。さらに、抗原は、化学的合成、組換え技術よる生産、又は自然源からの精製により得ることも可能である。
【0045】
「ペプチド」とは、モノマーがアミノ酸であり、それらがアミド結合を介して相互につながっているポリマーを意味する。ペプチドは、通常ポリペプチドより小さく、典型的には全アミノ酸数は30〜50以下である。
【0046】
「ポリペプチド」とは、アミノ酸の単一ポリマーを意味し、通常アミノ酸数は50より多い。
【0047】
本明細書で使用する「タンパク質」とは、通常アミノ酸数が50より多く、1つ又は複数のポリペプチド鎖を含んでいるアミノ酸のポリマーを意味する。
【0048】
抗原ペプチド或いは抗原ポリペプチドとして、例えば、天然、合成若しくは組換えのB細胞又はT細胞エピトープ、汎用性T細胞エピトープ、及びある微生物又は疾患由来のT細胞エピトープと別の微生物又は疾患由来のB細胞エピトープとの混合物があげられる。組換え法又はペプチド合成法を用いて得られた抗原も、自然源又は抽出液から得られた抗原も、抗原の物理的及び化学的性質を利用した精製法を用いて精製することができる。好ましくは分画法又はクロマトグラフィーである。ペプチド合成法は、当技術分野では周知であり、種々の会社が業務として取り扱っている。ペプチド又はポリペプチドは、固相合成法(例えば、Merrifield、1963、J.Am.Chem.Soc.85:2149−2154を参照)による等、標準的な直接合成法(例えば、Bodanszky著、1984、「ペプチド合成の原理(Principles of Peptide Synthesis)(Springer−Verlag,Heidelbeg)」に概説されている)によって合成することができる。
【0049】
組換え抗原は、1種又は複数の抗原を組み合わせることができる。1種又は複数の抗原を含む抗原組成物を使用して、複数の抗原に対する免疫応答を同時に惹起することが可能である。そのような組換え抗原は、所望のアミノ酸配列をコードする適当な核酸配列を当技術分野で周知の方法で適切なコードフレームにおいて相互に連結し、当技術分野で周知の方法で組換え抗体を発現させることによって作ることができる(例えば、Sambrookら、1989、「分子クローニング:実験室マニュアル、第二版(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d edition)(Cold Spring Harbor Press)」を参照)。追加として又は別法として、多価抗原組成物を使用して、1種の抗原性物質中の複数の免疫原性エピトープに対する免疫応答を惹起することもできる。また、複合体を使用して、複数の抗原に対する免疫応答の惹起及び追加免疫のいずれか又は両方を行うこともできる。そのような複合体は、タンパク質合成法、例えば、ペプチド合成器機を使用することによって作ることができる。抗原の断片を使用しても、免疫応答の惹起が可能である。
【0050】
多くの抗原を使用して、対象にワクチンを接種したり、抗原に特異的な免疫応答を惹起したりすることができる。抗原を、対象に感染する恐れのある病原体から得ることができる。したがって、抗原を、例えば、細菌、ウイルス、真菌、又は寄生生物から得ることができる。抗原は、腫瘍抗原であってもよい。抗原は、アレルゲンであってもよく、例として、これらに限定されるわけではないが、花粉、動物のフケ、カビ、ダスト、ダニ、ノミアレルゲン、唾液アレルゲン、イネ科草本、又は食物(例えば、ピーナッツ及びその他の木の実)があげられる。抗原は、自己抗原であってもよい。自己抗原は、例えば、膵島抗原等、自己免疫疾患に関連することがある。
【0051】
抗原を、細菌から得ることができる。細菌の例として、これらに限定されるわけではないが、炭疽菌(Anthrax)、カンピロバクター属(Campylobacter)、コレラ菌(Vibrio cholera)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostriduim difficle)を含むジクロストリジウム属(Clostridia)、フテリア菌(Diptheria)、腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli)、腸内毒素原性大腸菌(enterotoxigenic Escherichia coli)、ジアルジア属(Giardia)、淋菌(gonococcus)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、インフルエンザ菌B型(Hemophilus influenza B)、無莢膜型インフルエンザ菌(non−typeable Hemophilus influenza)、レジオネラ菌(Legionella)、髄膜炎菌(meningococcus)、結核の原因菌を含む放線菌(Mycobacteria)、百日咳菌(pertussis)、肺炎菌(pneumococcus)、サルモネラ菌(salmonella)、赤痢菌(shigella)、ブドウ球菌(staphylococcus)、A群ベータ型溶血性連鎖球菌(Group A beta−Hemolytic streptococcus)、B型連鎖球菌(Streptococcus B)、破傷風菌(tetanus)、ライム菌(Borrelia burgdorferi)、及びエルシニア属(Yersinia)等があげられる。本発明によれば、細菌性抗原として、例えば、毒素、トキソイド(すなわち、化学的に不活性化された毒素で、毒性が低下しているが免疫原性は保持している毒素)、それらのサブユニット若しくは組合せ、及び病原性若しくはコロニー形成因子があげられる。細菌の構成成分、産物、溶菌液、及び/又は抽出液を、細菌性抗原の源として使用してもよい。
【0052】
抗原を、ウイルスから得ることができる。ウイルスとして、これらに限定されるわけではないが、アデノウイルス(adenovirus)、デングウイルス血清1〜4型(dengue serotypes 1 to 4 virus)、エボラウイルス(ebola virus)、腸内ウイルス(enterovirus)、ハンタウイルス(hanta virus)、肝炎ウイルス血清A〜E型(hepatitis virus serotypes A to E)、単純ヘルペスウイルス1又は2(herpes simplex virus 1 or 2)、ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus)、ヒトパピローマウイルス(human papilloma virus)、インフルエンザウイルス(influenza virus)、はしか(麻疹)ウイルス(measles(rubeola)virus)、日本馬脳炎ウイルス(Japanese equine encephalitis virus)、パピローマウイルス(papilloma virus)、パロボウイルス B19(parvovirus B19)、ポリオウイルス(poliovirus)、狂犬病ウイルス(rabies virus)、呼吸器合胞体ウイルス(respiratory syncytial virus)、ロタウイルス(rotavirus)、セントルイス脳炎ウイルス(St.Louise encephalitis virus)、ワクシニアウイルス(vaccinia virus)、黄熱病ウイルス(yellow fever virus)、風疹ウイルス(rubella virus)、水疱ウイルス(chickenpox virus)、水痘ウイルス(varicella virus)、及びおたふく風邪ウイルス(mumps virus)があげられる。ウイルスの構成成分、産物、溶菌液、及び/又は抽出液を、ウイルス性抗原の源として使用してもよい。
【0053】
抗原を、真菌から得ることができる。真菌として、これらに限定されるわけではないが、体部白癬菌(tinea corporis)、爪白癬菌(tinea unguis)、スポロトリクム症菌(sporotrichosis)、アスペルギルス症菌(aspergillosis)、カンジダ菌(Candida)、及びその他の病原性真菌があげられる。真菌の構成成分、産物、溶菌液、及び/又は抽出液を、真菌性抗原の源として使用してもよい。
【0054】
抗原は、原虫から得ることができる。原虫として、例えば、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、マラリア原虫(Plasmodium)、及びリーシュマニア(Leishmania)があげられる。原虫の構成成分、産物、溶菌液、及び/又は抽出液を、原虫性抗原の源として使用してもよい。
【0055】
ワクチン接種を、ガン、アレルギー、及び自己免疫疾患の治療法としても使用できる。例えば、腫瘍抗原(HER2、前立腺特異抗原等)を用いたワクチン接種により、抗体及びリンパ球増殖の形態で免疫応答を惹起することができ、それによって体内の免疫系が腫瘍細胞を認識するようになり、腫瘍細胞は死滅に至る。ワクチン接種に有用な腫瘍抗原が、当技術分野で知られており、例として、白血病、リンパ腫、及びメラノーマの腫瘍抗原があげられる。
【0056】
T細胞受容体又は自己抗原(膵島抗原等)を用いたワクチン接種により、自己免疫疾患の進行を休止させる免疫応答を惹起することができる。
【0057】
抗原性物質の断片、誘導体及び類似体が免疫原性であり、それによって抗原特異的免疫応答を惹起できる限り、そのような抗原性物質の断片、誘導体及び類似体が本発明に含まれることを理解されたい。
【0058】
抗原性物質の断片を、抗原に少なくとも1種の開裂剤を加えることにより生成することができる。開裂剤は、臭化シアン等の化学的開裂剤、又はエンドプロテアーゼ、エキソプロテアーゼ若しくはリパーゼ等の酵素であることができる。
【0059】
抗原性物質の誘導体も、本発明の範囲に含まれる。したがって、タンパク質である抗原性物質を誘導体化反応によって修飾することができる。誘導体化反応として、これらに限定されるわけではないが、酸化、還元、ミリスチル化、硫酸化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、環化、ジスルフィド結合形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、グリコシル化、脱グリコシル化、リン酸化、脱リン酸化、又は当技術分野で周知のその他のいずれかの誘導化法があげられる。これらの反応によって得られる修飾は、抗原の免疫原性エピトープを壊すことがない限り、抗原のいかなる部位に生じてもよい。同一抗原内に、1種又は複数の修飾が存在することが可能であることが理解されたい。
【0060】
本明細書で使用する「類似体」という用語は、アミノ酸の置換、付加、又は欠失による配列変化を含む抗原性物質を意味する。
【0061】
アジュバント
本発明は、アジュバントを使用しない、効果の高い抗原性物質の経皮送達のシステム及び方法を提供する。しかし、抗原及びアジュバントを含む組成物も本発明に含まれる。通常、アジュバントによる抗原提示細胞の活性化は、抗原の提示に先立って起こる。別法として、同一の解剖学的領域を標的として、短い間をおいて抗原及びアジュバントを別々に提示することも可能である。
【0062】
「アジュバント」という用語は、抗原特異的免疫応答を特異的又は非特異的に増強するために使用される物質を意味する。「アジュバント活性」という用語は、抗原(すなわち、アジュバントとは異なる化学構造である抗原)に対する免疫応答を高める能力を意味し、アジュバント活性は、組成物中にアジュバントを含めることによってもたらされている。
【0063】
アジュバントとしては、これらに限定されるわけではないが、油性エマルション(完全又は不完全フロイドのアジュバント等)、ケモカイン(デフェンシン、HCC−1、HCC−4、MCP−1、MCP−3、MCP−4、MIP−1ct、MIP−1β、MIP−1δ、MIP−3α、及びMIP−2等)、ケモカイン受容体のその他のリガンド(CCR−1,CCR−2、CCR−5、CCR−6、CXCR−1等)、サイトカイン(IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12、IFN−γ、TNF−α、GM−CSF等)、これらのサイトカイン受容体のその他のリガンド、細菌性DNA若しくはオリゴヌクレオチドの免疫賦活性CpGモチーフ、ムラミルジペプチド(MDP)及びその誘導体(ムラブチド、スレオニル−MDP、ムラミルトリペプチド)、熱ショックタンパク質及びその誘導体、リーシュマニア同族体及びその誘導体、細菌性ADPリボシル化外毒素並びにそれらの化学的複合体及び誘導体(遺伝子変異体、A及び/又はBサブユニット含有断片、化学的トキソイド等)、或いは塩(水酸化又はリン酸化アルミニウム、リン酸カルシウム等)があげられる。
【0064】
ADPリボシル化外毒素(bARE)の多くは、受容体結合活性を含有するBサブニットとADP−リボシル基転移酵素活性を含有するAサブユニットを有するA:Bへテロダイマーとして構築されている。代表的なbAREとして、コレラ毒素(CT)、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン(LT)、ジフテリア毒素、シュードモナス(Pseudomonas)属外毒素A(ETA)、百日咳毒素(PT)、ボツリヌス菌(C.botulinum)毒素C2、ボツリヌス菌毒素(C.botulinum)C3、クロストリジウム菌(C.limosum)細胞外酵素、セレウス菌(B.cereus)細胞外酵素、シュードモナス属(Pseudomonas)外毒素S、ブドウ球菌(S.aureus)EDIN、及びバシラス・スフェリカス(B.sphaericus)毒素があげられる。トリプシン開裂部位の変異又はADPリボシル化に影響する変異を含有する変異bAREも使用可能である。
【0065】
bARE等のアジュバントは、注射又は全身投与すると、高い毒性を示すと認識されていることを理解されたい。しかし、それらは、無処置の皮膚表面に置かれたり、表皮に侵入させたりすれば、全身毒性を示すことなくアジュバント効果を発揮することができる(例えば、その全体が参照として本明細書に組み入れられている米国特許出願2004/0258703及び2004/0185055を参照)。
【0066】
特異的抗体(IgM、IgD、IgA1、IgA2、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、及び/又はIgG4等)又は特異的T細胞サブセット(CTL、Th1及び/又はTh2等)を優先的に惹起するようにアジュバントを選択することができる。
【0067】
非メチル化CpGジヌクレオチド又は同様のモチーフは、Bリンパ球及びマクロファージを活性化することが知られている。細菌性DNAのその他の形態をアジュバントとして使用することができる。免疫系に病原性を有していることを認識させて自然免疫応答を刺激し適応免疫応答を惹起させるパターンをその構造内に有していると分類されるクラスに、細菌性DNAが属していることを理解されたい。このような構造は、病原体関連分子パターン(PAMP)と呼ばれ、例としてリポ多糖、タイコ酸、非メチル化CpGモチーフ、二本鎖RNA、及びマンナンが含まれる。PAMPは、炎症応答の仲介が可能で、T細胞機能の補助刺激因子として作用することができる内因性シグナルを惹起する。
【0068】
アジュバントは、自然源から生化学的に精製可能であり、合成又は組換えにより作ることもできる。本発明によれば、アジュバントとして、アジュバント活性が保持される限り、天然に存在するアジュバントに切断、置換、欠失、及び付加が生じたものも含まれる。
【0069】
組成物
現在、認可されているワクチンは、水溶液又は水性懸濁液として送達され、免疫処置にあたっては、筋肉内又は経口投与される。周知のごとく、無菌でない恐れのある条件下でワクチン成分を水又は緩衝液と混合することは問題であり、溶液中では抗原が分解する可能性があり、これはワクチン成分を冷蔵保存しなければならない1つの理由となっている。ワクチン成分は、水の存在下では化学的に安定性を欠き、水が細菌の培地として働くので汚染されやすい。ワクチンの輸送及び保管中には冷蔵保管することが厳しく求められており、「コールドチェーン(cold chain)要件」に至っており、これは、ワクチン製造後はワクチンを適切な冷蔵保管条件下で常時保管することを意味する。このためワクチンの保管が複雑になり、ワクチンの輸送にあたっては物流が面倒になり、ワクチンの価格が上がる要因となっている。
【0070】
本発明の免疫処置又はワクチン接種に有用な組成物は、対象(すなわち、ヒト又は動物)への投与に適した薬学的に許容される組成物を提供するために、少なくとも1種の抗原性物質を免疫原性有効量で含有し、さらに薬学的に許容される担体又は媒体を含有する。
【0071】
「薬学的に許容される」という用語は、動物、特にヒトに使用する目的で、米国連邦又は州政府の規制当局によって認可されているか、米国薬局方若しくはその他の一般に認められている薬局方に収載されていることを意味する。「担体」という用語は、それと共に治療効果のある化合物を投与する希釈剤、賦形剤、又は媒体を意味する。したがって、本発明によれば、抗原を緩衝液又は水に可溶化してもよいし、懸濁液、脂質ミセル、又は小胞に組み入れてもよい。適切な緩衝液として、これらに限定されるわけではないが、リン酸緩衝化食塩水(PBS)、Ca2+/Mg2+非含有リン酸緩衝化食塩水、生理食塩水(150mM NaCl水溶液)、Hepes緩衝液、又はTris緩衝液があげられる。抗原は中性の緩衝液には溶解しないが、抗原を10mM酢酸中に可溶化した後、PBS等の中性の緩衝液を用いて所望の体積まで希釈することができる。酸性のpHでしか溶解しない抗原の場合、希酢酸中に可溶化させた後、酸性のpHで酢酸−PBSを希釈液として使用することができる。その他の有用な担体として、例えば、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、又は鉱油があげられる。薬学的組成物の製剤化のための方法及び成分は周知であり、例えば、Remington著「製剤の科学、18版(Pharmaceuticl Sciences、 Eighteen Edition)」、A.R.Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton Pa.、1990等で参照できる。
【0072】
必要に応じて、安定剤、着色剤、湿潤剤、保存剤、接着剤、可塑剤、粘着剤、及び増粘剤を、組成物中に含むことができる。
【0073】
安定剤として、これらに限定されるわけではないが、デキストラン、デキストリン、グリコール、アルキレングリコール、ポリアルカングリコール、ポリアルキレングリコール、糖、デンプン、及びそれらの誘導体があげられる。好ましい添加剤は、非還元糖及びポリオールである。特に、グリセロール、トレハロース、ヒドロキシメチル若しくはヒドロキシエチルセルロース、エチレン若しくはプロピレングリコール、トリメチルグリコール、ビニルピロリドン、及びそれらのポリマーを加えてもよい。アルカリ金属塩、硫酸アンモニウム、及び塩化マグネシウムは、タンパク質性の抗原を安定させることができる。また、ポリペプチドを、例えば、単糖類、二糖類、糖アルコール、及びそれらの混合物(例えば、アラビノース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルトース、マンニトール、マンノース、ソルビトール、スクロース、及びキシリトール)等の糖と接触させると安定化する。ポリオールも、ポリペプチドを安定化させることができる。アミノ酸、リン脂質、還元剤、及び金属キレート化剤を含む種々のその他の賦形剤もポリペプチドを安定化させることができる。
【0074】
本発明の組成物を、乾燥剤形又は液体剤形とすることができる。従来の液体ワクチンに比べ、乾燥剤形は保管及び輸送が容易である。というのは、ワクチンの製造場所からワクチン接種を行う場所まで要求されるコールドチェーンを維持する必要がないからである。その上、組成物の乾燥した有効成分(例えば、1種又は複数の抗原)の場合、短時間で免疫処置部位において直接可溶化することによって、高濃度を達成することができるので、乾燥剤形は、液体剤形に優っている。皮膚からの水分及び密閉性の外層(backing layer)が、この過程を促進することができる。
【0075】
液体の剤形として、組成物を提供することができ、これらに限定されるわけではないが、溶液、懸濁液、乳濁液、クリーム、ジェル、ローション、軟膏、ペースト、又はその他の液体の形態があげられる。乾燥した剤形として、組成物を提供することができる。乾燥剤形として、これらに限定されるわけではないが、細粒、顆粒、均一フィルム、ペレット、錠剤、及びパッチがあげられる。組成物を、溶解させた後容器内若しくは平らな表面(皮膚等)上で乾燥させてもよいし、又は単に平らな表面上に振りかけてもよい。組成物を、自然乾燥、高温乾燥、凍結乾燥、スプレー乾燥、固体の支持体にコート若しくはスプレーの後に乾燥、固体の支持体に振りかけ、素早く凍結させた後にゆっくりと真空乾燥、又はそれらを組み合わせて乾燥させてもよい。複数の抗原性物質が組成物に含まれる場合、抗原性物質を溶液中で混合した後乾燥してもよいし、乾燥状態のまま混合してもよい。
【0076】
組成物を、パッチの形態で提供することができる。「パッチ」とは、抗原性物質と支持体とを備える製品を意味する。支持体は、通常は外層(backing layer)であり、パッチの主たる構造要素として機能する(例えば、その全体が本明細書に組み入れられている国際公開WO02/074224及びWO2004/039428を参照)。パッチは、接着性及び/又は微細孔を有する内張り(liner layer)をさらに備えることができる。通常、微細孔内張りは、抗原性物質を徐放させる速度制御マトリックス又は速度制御膜となる。
【0077】
液体の組成物をパッチ中に組み入れてもよい(すなわち、湿潤パッチ)。液体組成物をリザーバに収めてもよいし、リザーバ中の内容物と混合してもよい。湿潤パッチは、1種の抗原性物質を含有する単一のリザーバ、又は抗原性物質を各1種含有する複数のリザーバを含有することができる。
【0078】
パッチは乾燥状態でもよい。乾燥パッチは、例えば、国際公開WO2004/039428に開示されているような印刷パッチ等の粉末パッチ、又は当技術分野で周知のいずれかの乾燥パッチであることができる(以下の本明細書の実施例を参照)。乾燥パッチを用いることによって、抗原性物質の溶解の時間及び速度の制御が可能となる。乾燥パッチは、1種又は複数の乾燥抗原性物質を含み、複数の抗原を含むパッチを当てることによって、複数の抗原に対する免疫応答を惹起するようになっている。このことは、湿潤パッチ、乾燥パッチのいずれにも当てはまる。この場合、抗原は、同一源から得てもよいし、そうでなくてもよいが、化学構造が異なるものであり、それによって異なる抗原に対する特異的免疫応答の惹起が起きる。
【0079】
外層(backing layer)は、不織性であってもよいし、そうでなくてもよい(例えば、ガーゼ包帯剤)。密閉性でなくも、密閉性であってもよいが、密閉性であることが好ましい。必要に応じて追加される放出制御用の内張りは、相当な量の組成物を吸収しないことが好ましい。パッチは、保管の際には密封状態(ホイル包装等)であることが好ましい。パッチは、皮膚表面に保持され、パッチの構成要素は、種々の接着剤を使用して一体化することができる。1種又は複数の抗原をパッチの支持体部分又は接着部分に組み入れてもよい。一般に、パッチは、平坦で、柔軟性があり、一定の形状に製造される。必要に応じて追加される添加剤は、パッチの柔軟性を維持するための可塑剤、パッチと皮膚との接着性の向上のための粘着剤、及び少なくとも製造過程での組成物の粘性を増すための増粘剤である。
【0080】
パッチの材料(例えば、外層、放出制御用の内張り)の例として、金属ホイル、セルロース、布(アセテート、綿、レーヨン製等)、アクリルポリマー、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリアミド(ナイロン等)、ポリエステル(ポリエチレンナフタレート、エチレンテレフタレート等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、塩化ポリビニリデン(SARAN)、天然及び合成ゴム、シリコーンエラストマー並びにこれらの組合せがあげられる。
【0081】
接着剤は、水性基剤の接着剤(例えば、アクリル酸エステル又はシリコーン)であることができる。アクリル系接着剤は、いくつかのメーカーから入手可能であり、AROSET、DUROTAK、EUDRAGIT、GELVA、及びNEOCRYLの商品名で市販されている。
【0082】
接着層の水の吸収能力を増減させるために、アクリル系ポリマーを親水性モノマーと共重合させることができる。この場合のモノマーとして、カルボキシル基を含有するモノマー、アミド基を含有するモノマー、アミノ基を含有するモノマー等があげられる。ゴム又はシリコーン樹脂を接着用の樹脂として用いてもよく、それらを粘着剤又はその他の添加剤と共に接着層に組み入れることができる。
【0083】
別法として、接着層の水の吸収能力を、接着層に吸水性の高いポリマー、ポリオール、及び吸水性の無機材料を組み入れることによって制御することもできる。吸水性の高い樹脂として、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸等のムコ多糖、キチン、キチン誘導体、デンプン、カルボキシメチルセルロース等の分子内に多数の親水性基を有するポリマー、及びポリアクリル系ポリマー、ポリオキシエチレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルニトリル等の吸水性の高いポリマーをあげることができる。
【0084】
可塑剤は、例えば、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、アセチルクエン酸トリエチル(ATEC)、クエン酸トリエチル(TEC)等のクエン酸トリアルキルであることができる。粘着剤の例として、グリコール(グリセロール、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)があげられる。コハク酸も粘着剤である。
【0085】
接着剤又は免疫原性の組成物の粘性を高めるために増粘剤を加えることができる。増粘剤は、ヒドロキシアルキル化したセルロース若しくはデンプン、又は水溶性のポリマーであることができる。例として、ポロキサマー、ポリエチレンオキシド及びその誘導体、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール並びにポリエチレングリコールエステルがあげられる。しかし、溶液の粘性を高める働きのある分子であればいずれも、パッチの製造における組成物の取り扱いを改善させるのに適する。
【0086】
ジェル及び乳濁液のシステムについては、パッチによる送達システムに組み入れること、パッチとは別に製造すること、或いはヒト又は動物の対象に投与するに先立ちパッチに加えることが可能である。ジェル若しくは乳濁液は、組成物に粘性を与えることによって、組成物の処理を容易にして損失を最小限に留めるという同一の目的を果たすことができる。「ジェル」という用語は、共有結合により架橋結合した基剤、又は架橋結合のない基剤を意味する。ヒドロゲルを、少なくとも1種の抗原性物質と共に配合することができる。その他の賦形剤をジェルのシステムに加え、抗原の送達、皮膚の加湿、及びタンパク質の安定化を促進させることができる。「乳濁液」という用語は、油中水型クリーム、水中油型クリーム、軟膏、ローション等の剤形を意味する。乳濁液のシステムは、ミセル基剤型、脂質小胞基剤型、又はミセル及び脂質小胞を組み合わせた基剤型のいずれであってもよい。
【0087】
液体の組成物を、皮膚に直接塗布し自然乾燥させてもよいし、包帯剤、パッチ、又は吸収性の素材に配合してもよい。組成物を吸収性の包帯剤又はガーゼに加えることができる。組成物は、例えば、AQUAPHOR(ワセリン、鉱油、鉱ロウ、ラノリン、パンテノール、ビサボール、及びグリセリンの乳濁液、Beiersdorf社製)、プラスチック製フィルム、COMFEEL(Coloplast社製)、又はVASELINEペトロリュームジェリー等の密閉性のドレッシング、或いは例えば、TEGADERM(3M社製)、DUODERM(3M社製)、又はOPSITE(Smith&Nepheu社製)等の非密閉性のドレッシングで覆うことができる。
【0088】
組成物内における抗原性物質の相対的な量及び投与スケジュールを適切に調節することによって、対象(例えば、ヒト又は動物)に効果的に投与することができる。こうした調節は、治療又は予防のいずれの場合であっても、対象に特有の疾患又は状態、投与経路、及び対象の身体的な条件に応じて行うことができる。組成物の対象への投与を簡素化するために、単位用量として、1種又は複数の抗原性物質を所定の量で含有させ、免疫処置の1回分とすることができる。単位用量中の抗原性物質の量は、約0.1μg〜約10mgに及ぶことができる。
【0089】
本発明の組成物は、政府機関(米国食品医薬品局(FDA)等)により規制されている生物学的製剤及びワクチンに関する薬品の製造規範(GMP)の下に製造することができる。
【0090】
経皮免疫処置用装置
本発明のシステムは、経皮免疫処置を促進するための装置を備える。本発明の原理によれば、装置を使用して対象の皮膚領域中に少なくとも1つのマイクロチャネルを形成し、それによって抗原性物質を含む組成物を効率よく送達する。
【0091】
「マイクロチャネル」という用語は、本発明の趣旨では、皮膚表面から角質層の全体又は相当な部分に延びる通路で、これを通して分子が拡散する通路を意味する。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗原性物質の経皮移動を促進する装置は、以下の1つ又は複数の米国特許に開示されている:第6148232号、第6597946号、第6611706号、第6711435号、第6708060号、及び第6615079号。これらの内容は、その全体が本明細書に参照として組み入れられている。通常、装置は、複数の電極を備える電極カートリッジと、当該電極が皮膚の付近にある場合に当該複数の電極間に電気エネルギーを与えるようになされ、通常電流又は1つ若しくは複数のスパークを発生させ、電極下の領域内の角質層を除去することができ、それによって少なくとも1つのマイクロチャネルを形成する制御部を備えた主要ユニットとを備える。電極カートリッジを搭載した主要ユニットは、本明細書ではViaDermとも呼ばれる。
【0093】
いくつかの実施形態によれば、装置の制御部は、電極に送られる電気エネルギーの強さ、頻度、及び/又は期間を制御する回路を備えており、電流又はスパークの発生を制御し、それによって1つ又は複数の形成されたマイクロチャネルの幅、深さ、及び形を制御する。制御部によって与えられる電気エネルギーは、高周波(RF)であることが好ましい。
【0094】
本発明の装置によって形成されたマイクロチャネルは、親水性であり、通常、約10〜約100ミクロンの直径、及び約20〜約300ミクロンの深さを有し、これによって皮膚を介して抗原性物質の拡散を促進する。
【0095】
本発明の原理によれば、電極カートリッジは、複数の電極を備えており、これによって電極配列を構成する。電気エネルギーを与えると、この電極配列が、対象の皮膚内に複数のマイクロチャネルを形成する。しかし、通常、角質層内に形成されたマイクロチャネルの全面積は、電極配列によって覆われる全面積に比べると小さい。「複数」という用語は、本明細書では2つ又はそれ以上の要素、すなわち、2つ又はそれ以上の電極或いは2つ又はそれ以上のマイクロチャネルを意味することを理解されたい。
【0096】
別の実施形態によれば、本発明の装置を対象の皮膚に当てている間に得られる圧力によって、電極に送られるエネルギーが起動する。そのような起動方式であれば、皮膚と密接に接触したときに限って電極の起動が起こり、マイクロチャネルを所望のごとく確実に形成させることができる。
【0097】
皮膚内に送達させようとする抗原性物質量に応じてマイクロチャネルの数及び寸法を調節することができる。
【0098】
電極は、着脱可能であることが好ましい。特定の実施形態によれば、電極カートリッジは、一度使用したら廃棄し、そのために主要ユニットへの取り付け及びその後の主要ユニットからの取り外しが簡単なように設計されている。
【0099】
本発明によれば、皮膚に対して電流を与えると、角質層が除去され、その結果マイクロチャネルが形成される。スパークの発生、スパーク発生の停止、又は特定の電流量を一種のフィードバックとして使用することができる。フィードバックがあれば、所望の深さに達したことがわかり、電流の付加を停止することになる。このような応用例では、好ましくは、電極は、角質層内において、所望の深さではあるが、それを越える深さには至らないようなマイクロチャネルの形成を促進するような形状をとるか、或いはそうなるようにカートリッジ内に保持される。別法として、スパークを発生させず、角質層内にマイクロチャネルを形成するように電流を構成することもできる。形成されたマイクロチャネルは、形及び大きさが均一である。
【0100】
本発明によれば、電極は、皮膚と接触し保持されてもよいし、皮膚から離れた皮膚の近傍で保持されてもよい。皮膚からの距離は約500ミクロンまでである。いくつかの実施形態によれば、角質層の除去は、約10kHz〜約4000kHz、好ましくは約10kHz〜約500kHz、さらに好ましくは100kHzの周波数を有する電流を付加して実施される。
【0101】
経皮免疫処置方法
本発明は、本発明の経皮送達システムを使用して、抗原特異的免疫応答を惹起する方法をさらに提供する。通常、抗原特異的応答を惹起する処置は、少なくとも1つのマイクロチャネルを形成する装置を皮膚に当てるステップを含む。マイクロチャネルを形成する前に、処置部位を消毒綿で消毒するのが好ましい。処置部位を乾かしてから処置するのが好ましい。
【0102】
本発明の例示的な実施形態においては、電極配列を含む装置を処置部位に当て、電極配列にRFエネルギーにより電流を通し、処置を開始する。原則的には、角質層の除去及びマイクロチャネルの形成は、数秒以内に完了する。マイクロチャネルが限定された深さまで形成されたら、装置を離す。本発明の組成物をマイクロチャネルが存在する処置済み皮膚の領域に塗布する。
【0103】
こうして、本発明により、対象の皮膚領域内に少なくも1つのマイクロチャネル形成するステップ;及び免疫原性有効量の抗原性物質を含む組成物を、少なくも1つのマイクロチャネルが存在する皮膚領域に塗布し、それによって抗原特異的免疫応答を惹起するステップを含む抗原特異的免疫応答を経皮的に惹起する方法が提供される。
【0104】
「経皮」送達という用語は、皮膚の皮膚層、すなわち角質層の下の表皮若しくは真皮の中に又はそれを越えて、或いは皮膚の皮下層内に又はそれを越えて、抗原性物質を送達することを意味する。このようにして、皮膚内の或いは皮膚を介して、血液系又はリンパ系内に抗原を送達することができる。したがって、経皮という用語は、皮膚を越えた送達という意味も含む。
【0105】
「免疫原性有効量」という用語によって、抗原性物質の量であって、抗原特異的免疫応答を惹起する量であることを意味する。
【0106】
本発明の組成物によって惹起される免疫応答は、液性免疫(すなわち、IgM、IgD、IgA1、IgA2、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、及び/又はIgG4等の抗原特異的抗体)及び/又は細胞性免疫(すなわち、CD4+T細胞、CD8+T細胞、細胞障害性リンパ球、Th1細胞及び/又はTh2等の抗原特異的リンパ球)エフェクターを含むことができる。さらに、免疫応答は、抗体依存性細胞性細胞障害(ADCC)を仲介するNK細胞を含むこともできる。抗体アイソタイプ(例えば、IgM、IgD、IgA1、IgA2、IgE、IgG1、IgG25、IgG3、及びIgG4)は、当技術分野で周知のごとく免疫測定法によって検出することが可能であり(以下の本明細書の実施例を参照)、及び/又は中和法によって検出することもできる。「免疫応答の惹起」、「ワクチン接種」、及び「免疫処置」という用語によって、液性免疫又は細胞性免疫の免疫応答の惹起を意味し、それらの用語は、本発明の明細書及び特許請求の範囲を通し交換可能に使われる。
【0107】
中和法に関しては、例えば、ウイルス中和法では、宿主細胞に血清の段階希釈液を加えた後、感染性ウイルスを投与し、感染状態を観察する。別法として、血清の段階希釈液を感染量のウイルスと共に培養した後、動物に接種し、その後このウイルス接種動物に感染の兆候が現われるか否かを観察する。
【0108】
本発明の経皮免疫処置システムは、動物又はヒトのいずれかを用いた投与モデルを使用して評価することができる。この方法は、抗原性物質による疾患から被験者を保護する免疫処置能力を評価するものである。このような保護が認められた場合、抗原特異的免疫応答が惹起されたことが実証されたことになる。
【0109】
本発明の原理によれば、免疫応答の惹起は、対象の状態又は疾患の治療に有用である。したがって、本発明のシステム及び方法によって惹起された免疫応答により、免疫保護、免疫抑制、自己免疫疾患の調節、ガンに対する免疫監視の増強、疾患予防のための予防的ワクチン接種並びに/又は確立された疾患の治療については、その治療のための或いは重症度の軽減及び/若しくは罹病期間短縮のための治療的ワクチン接種が得られる。抗原が病原体由来の場合、例えば、処置は、病原体による感染又は、毒素分泌によって生じる作用等の病原体の作用から対象を保護するワクチン接種となる。
【0110】
ある方法により、免疫応答が「惹起された」とは、免疫応答の規模又は動態の変化、免疫系(例えば、液性免疫及び/又は細胞性免疫)に惹起された要素の変化、疾患の症状の数及び/又は重症度に対する効果、対象の健康及び福祉(例えば、罹患率及び死亡率)に対する効果、或いはそれらの組合せが、統計的に有意である場合のことを指す。
【0111】
処置部位を抗炎症性副腎皮質ステロイド又は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を用いて保護し、心配される局所皮膚反応を低減させること或いは惹起される免疫応答を調節することが可能であることを理解されたい。同様に、腎皮質ステロイド又はNSAIDをパッチの材料、クリーム、軟膏等に含むこともできる。或いは、抗炎症性ステロイド又はNSAIDを、本発明の組成物の塗布後に塗布してもよい。IL−10、TNF−α、又はその他のいずれかの免疫調節物質を、抗炎症薬の代わりに使用してもよい。別法又は追加として、ピメクロリムス、タクロリムス、アロエベラ、又は局所皮膚反応を低減させると知られるその他のいずれかの薬物を、処置済み皮膚領域に塗布してもよいし、パッチに含めてもよい。
【0112】
ガン及び自己免疫疾患の治療法としても、ワクチン接種が使用されてきている。例えば、腫瘍抗原(例えば、前立腺特異抗原)を用いたワクチン接種は、抗体、CTL、及びリンパ球の増殖の形態で免疫応答を惹起し、それによって体内の免疫系に働きかけ腫瘍細胞を認識、死滅させることができる。メラノーマ、前立腺ガン、及びリンパ腫について、ワクチン接種に有用な腫瘍抗原が報告されている。
【0113】
T細胞受容体オリゴペプチドを用いたワクチン接種が、自己免疫疾患の進行を休止させる免疫応答を惹起することができる。米国特許第5552300号は、自己免疫疾患の治療に適した抗原を記載している。
【0114】
経皮免疫処置に続き、経腸的な、粘膜を介した、及び/或いはその他の非経口的な方法を用い、同一又は異なる抗原を用いて追加免疫することができることを理解されたい。経腸的な、粘膜を介した、及び/或いはその他の非経口的な経路による免疫処置に続き、経皮免疫処置を行い、同一又は異なる抗原を用いて追加免疫することができる。
【実施例】
【0115】
本明細書中ViaDermと呼ばれる、対象の皮膚内にマイクロチャネルを形成する装置を使用した経皮免疫処置を、広範に使用されている皮下(SC)及び筋肉内(IM)ワクチン接種経路と比較して、強力なワクチン投与システムとしての有用性を確立した。
【0116】
卵白アルブミン(OA)及び3価インフルエンザウイルス(TIV)を、例示的な抗原として使用し、抗原特異的免疫応答を惹起する本発明のシステムの効果を確立した。
【0117】
(実施例1)
卵白アルブミンを用いた経皮免疫処置
材料
卵白アルブミン溶液(50μg/ml水溶液、Sigma社製)を、IM及びSC注射に使用した。
卵白アルブミン溶液(10mg/ml)を、溶液による経皮的投与(VD−s)に使用した。
卵白アルブミン粉末(2mg)を、粉末による経皮的投与(VD−p)に使用した。
【0118】
溶液用の袋を以下の手順で作製した。シリコーン製シート(Sil−k、Degania Silicone社(イスラエル)製)上に、接着剤(Durotc 2516、National Starch社(オランダ)製)を均一に広げ、厚さ300μmの層を形成した。シートを4×4cmの正方形に切断した。各4×4cmの正方形の中心を切断し、正方形の穴(1.57×1.57cm)を形成した。4×4cmのシリコーン製正方形の1.57×1.57cmの穴の上に、2×2cmのSil−kシリコーン片を、7701プライマー及び401 1接着剤(Loctite社(アイルランド)製)を使用して接着した。最終的に、容積250μlの袋を得た。
【0119】
粉末用のパッチを以下の手順で作製した。卵白アルブミン粉末を皮膚上に散布した後、内張りBLF 2080(Dow社(米国)製)を含み、接着剤Durotak 2516(National Starch社(オランダ)製)又はTegaderm(商標)(3M社製)からなる層で覆われている固定用のパッチで覆った。
【0120】
方法
心臓内又は腹部大動脈穿刺によって、免疫処置の直前に、且つ免疫処置後第8日目から開始し毎週採血した。各検体は、へパリン抗凝結処理試験管中に1.3mlの血液を含む。血液検体を6000rpmで遠心分離し、血漿を得た。
【0121】
第1群:筋肉内注射群
ダンキンハートレイ(Dunkin Hartley)系モルモット、雄、体重600〜650g、7匹を用い、免疫処置の直前に麻酔処置し、採血(1.3ml)した。続いて、卵白アルブミン溶液を、右後肢の四頭筋に注射した(5μg;50μg/ml溶液を0.1ml使用)。免疫処置後第8、15、22、及び30日目に、各動物から採血した。第30日目において、再度、動物の右後肢の四頭筋に注射した(追加免疫処置:5μg;50μg/ml溶液を0.1ml使用)。免疫処置後第36、42、50、及び125日目に、各動物から採血した。
【0122】
第2群:皮下注射群
ダンキンハートレイ(Dunkin Hartley)系モルモット、雄、体重600〜650g、7匹を用い、免疫処置の直前に麻酔処置し、採血(1.3ml)した。続いて、卵白アルブミン溶液を、背側の首部に皮下注射した(5μg;50μg/mlを0.1ml使用)。免疫処置後第8、15、22、及び30日目に、各動物から採血した。第30日目において、再度、動物の背側の首部に皮下注射した(追加免疫処置:5μg;50μg/ml溶液を0.1ml使用)。免疫処置後第36、42、50、及び125日目に、各動物から採血した。
【0123】
第3群:ViaDerm処置済み皮膚に卵白アルブミン溶液袋を当てる経皮免疫処置群
ダンキンハートレイ(Dunkin Hartley)系モルモット、雄、体重600〜650g、7匹を用い、免疫処置の直前に麻酔処置し、採血(1.3ml)した。動物を処置装置で処置した。この装置は、本明細書中ViaDermと呼ばれ、高周波の電気エネルギーを利用しており、電極配列で構成され、モルモットの皮膚内にマイクロチャネルを形成する。(例えば、本明細書にその全体が参照として組み入れられている国際公開WO2004/039426、WO2004/039427、及びWO2004/039428を参照)。ViaDerm操作パラメーター:刺激の長さ(μ秒):700;初期振幅:330V;刺激の回数:5;同一皮膚領域上に処置を2度行う(200穴/cm2)。卵白アルブミン溶液袋(2mg;10mg/ml溶液を0.2ml使用)を処置済み皮膚領域に当てた。その24時間後、袋を取り除いた。免疫処置後第8、15、22、及び30日目に、各動物から採血した。第30日目において、再度、上記のごとくViaDermを用いた処置によって免疫処置した。すなわち、刺激の長さ(μ秒):700;初期振幅:330V;刺激の回数:5;同一皮膚領域上に処置を2度行う(200穴/cm2)。その後、卵白アルブミン溶液袋(2mg;10mg/ml溶液を0.2ml使用)を経皮的に投与した。免疫処置後第36、42、50、及び125日目に、各動物から採血した。
【0124】
第4群:ViaDerm処置済み皮膚に卵白アルブミン粉末パッチを投与する経皮免疫処置群
ダンキンハートレイ(Dunkin Hartley)系モルモット、雄、体重600〜650g、7匹を用い、免疫処置の直前に麻酔処置し、採血(1.3ml)した。動物をViaDermで処置した。ViaDerm操作パラメーター:刺激の長さ(μ秒):700;初期振幅:330V;刺激の回数:5;同一皮膚領域上に処置を2度行う(200穴/cm2)。卵白アルブミン粉末(2mg)を処理済み皮膚領域に散布し、へらを用いて均一にした後、固定用のパッチで覆った。その24時間後、パッチを取り除いた。免疫処置後第8、15、22、及び30日目に、各動物から採血した。第30日目において、再度、上記のごとくViaDermを用いた処置によって免疫処置した。すなわち、刺激の長さ(μ秒):700;初期振幅:330V;刺激の回数:5;同一皮膚領域上に処置を2度行う(200穴/cm2)。その後、卵白アルブミン粉末(2mg;10mg/mlを0.2ml使用)を上記のごとく経皮的に投与した。免疫処置後第36、42、50、及び125日目に、各動物から採血した。
【0125】
モルモット血漿検体中の抗卵白アルブミン抗体の検出:
96ウェルプレート(Maxisorp、Nunc社(デンマーク)製)を、卵白アルブミン(200μg/ml溶液を100μl使用)でコートした。コートは、4℃にて16〜18時間かけて行われた。洗浄液(0.05% Tween 20を含有するPBS)で3回洗浄し、未結合の卵白アルブミンを除去した。残存している吸着部位を、希釈/封鎖用液(0.05% Tween 20及び脱脂乳を含有するPBS)で、室温にて1時間かけて封鎖し、その後洗浄液で3回洗浄した。
【0126】
希釈/封鎖用液で段階希釈されているモルモットの血漿検体を、三つ組の卵白アルブミンでコートされたプレートに加え、22℃で1時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄し、未結合の抗体を除去した。モルモットIgG抗体を検出するために、希釈/封鎖用液(Jackson Immunoresearch Laboratories社製)中に希釈した(0.8mg/ml、10,000倍希釈)西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ抗モルモットIgG抗体(horseradish−peroxidase conjugated goat−anti guinea pig IgG antibody)と共にウェルを22℃で1時間インキュベートした。その後、洗浄液で3回洗浄した。IgA又はIgMモルモット抗体を検出するために、ウサギ抗モルモットIgA又はウサギ抗モルモットIgM抗体(両方ともLCLより購入、5,000倍希釈)それぞれと共にウェルを22℃で1時間インキュベートした。未結合の抗体を洗浄液で3回洗浄した。続いて、希釈/封鎖用液(Jackson Immunoresearch Laboratories社製)中に希釈した(5,000倍希釈)西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)標識ロバ抗ウサギIgGを22℃で1時間インキュベートした後、上記のごとく3回洗浄した。
【0127】
さらに、HRP基質(Substrate−Chromogen、TMB−ready to use、DAKO社製)を加え、22℃で30分間インキュベートした。1MH2SO4を用いて反応を停止させた。分光光度計により、シグナルを405nm及び595nmのバックグランドで検出した。
【0128】
力価の算出:検体の二つ組/三つ組のそれぞれについて、平均(AVG)吸光度(O.D.)のデータを算出した。同様に、通常(無処置すなわち免疫処置を施していない動物)の血漿検体を同等に希釈したものについても、AVG O.D.を求めた。免疫処置済み動物から得られたO.D.から、免疫無処置の動物から得られたAVG O.D.を差し引いた。
【0129】
内部標準(動物番号27、第36日目)について求めたデータを、対数グラフ上にプロットした。このプロットから、線状べき乗回帰(Linear−power regression)範囲を決定した。線状範囲から求めた回帰式からエンドポイント力価(力価)を計算した。カットオフO.D.(Y軸:「雑音」カットオフ)データを5倍ブランク標準(STD)として求めた。
【0130】
結果
表皮の水分喪失(TEWL,DERMALAB(商標)、Cortex Technology社(Hadsund、デンマーク)製)量を使用して、マイクロチャネル形成の効果を立証した。処置部位として適切と思われる部位のTEWL(Trans Epidermal Water Loss:経皮水分喪失)量を、ViaDerm処置の前(BVD)及びViaDerm処置の後(AVD)に測定した。TEWLの仕様(すなわち、処置前TEWL≦8.5g/h/m2;ΔTEWL≧20g/h/m2)に収まる部位のみを、試験対象と認めた。試験結果を表1及び2に示す。
【表1】
【表2】
【0131】
IgM:
一次免疫処置後第15日目におけるIgM抗体価によって、抗原提示に対する最も早期の応答を表す。図1に示すように、卵白アルブミンを皮下(SC)注射した動物群も、ViaDermで処置後、卵白アルブミン溶液袋を用いて卵白アルブミンに対する免疫処置をした(VD−s)動物群も、卵白アルブミンに特異的なIgM抗体を惹起した。しかし、SC群に検出されたIgM抗体価の方が、VD−s群より高かった。さらに、両群に、「未応答」動物、すなわち検出可能なIgM抗体価を示さない動物が認められ、発生率はほぼ同じであった。
【0132】
IgG:
抗原提示後の抗原特異的IgG抗体の出現により、抗原特異的免疫応答の成熟期が示唆される。
【0133】
図2は、免疫処置後第15日目の血漿中のIgG抗体価を示す。VD−s群とSC群との間に有意な差が認められた。図2に示すように、ViaDerm処置によるマイクロチャネル形成及びそれに続く卵白アルブミン溶液袋による処置(VD−s)により得られたIgG抗体価は、第15日目において、SC注射により得られたIgG抗体価に比べ、顕著に高かった。これらの結果から、ViaDerm処置によって、IgG抗体の出現時期を早めることができることは明らかである。本効果は、IgG抗体は、抗原特異的免疫応答における最も重要な抗体サブタイプであることから、非常に有用である。
【0134】
さらに、図2は、VD−s群及びSC群の全動物が、抗原特異的血漿IgG抗体に陽性であったことを示している。その上さらに、図2は、個々の動物間に少ないながら個体差があったことを示す。VD−s群の1匹(動物番号19)だけが、検出可能なIgG抗体価を示さなかった。この動物は、出血時に体調が悪く、翌日には死亡したことが判明した。19番の動物では、抗原特異的IgM及びIgAは、全く検出されなかった。
【0135】
追加免疫処置後第6日目(図3)において、VD−s群及びSC群の両方で、強力なIgG抗体の二次応答が認められ、血漿中の抗体価は、免疫処置後第15日目の抗体価の3.5倍(VD−s群)及び4.1倍(SC群)であった。VD−s群のIgG抗体価は、SC群の約5倍であり、これは、抗原特異的IgG抗体の惹起における本法の有効性を示唆していることにも注目されたい。筋肉内(IM)注射群のIgG抗体価は、同一用量の卵白アルブミンで免疫処置されたSC群を含むその他のいずれの群よりも非常に低かった。
【0136】
2種類の経皮処置用製剤を比較すると、VD−s群のIgG抗体価は、VD−p群(同一用量)の9.5倍であった。VD−p群のIgG抗体価は、SC群のIgG抗体価より低かった。SC群は、VD−p群より低い用量を投与されていた。
【0137】
追加免疫処置後第95日目(図4)においては、VD−s群及びSC群で、それぞれわずか1.3%及び6%のIgG抗体価が検出されたにすぎない。
【0138】
IgA:
SC群及びVD−s群における抗原提示後第15日目の血漿中の抗原特異的IgA抗体価を測定した(図5)。検出可能なIgA抗体価を示したのは、SC群では7匹中わずか2匹であったが、それに対してVD−s群では6匹中4匹であった。SC注射に比べ、VD−s処置がこのように優れていることは、追加免疫処置後第6日目に、さらに明らかになった(図6)。追加免疫処置後に検出可能なIgA抗体価を示さなかった動物(動物番号9及び11)は、免疫処置後第15日目でもIgA及びIgMのいずれも有していなかった。全動物(SC群及びVD−s群)が、抗原による追加免疫後第12日目においてIgA陽性であった(図6)。
【0139】
VD群が示したより高い抗体価は、個々の動物が血清陽性を高い頻度で示したことと併せて、ViaDermを使用する経皮免疫処置の有用性を示唆するものである。IgG及びIgA抗体の顕著な力価が認められるまでの時間は、ViaDerm処置群の方が、十分に確立され、広く受け入れられているSC及びIM経路より短く、これは、このような経皮経路の有効性を示唆している。
【0140】
VD抗原提示後の顕著な免疫応答には、全ての重要な血漿抗体アイソタイプ、すなわちIgM、IgG、及びIgAが含まれていた。これは、アイソタイプが効率よく切り換えられたことを示唆する。VD−s群とSC群において、IgG抗体価とIgM抗体価との間の相関性は認められなかった。例えば、一次応答では、VD−s群の方がSC群より、高いIgG抗体価を示したのに対し、SC群の方がVD−s群より、高いIgM抗体価を示した。特定の理論に縛られるわけではないが、この現象は、VD処置後に起きる非常に効率のよい細胞性応答によって説明することができる。VD処置後しばらくすると、白血球浸潤がマイクロチャネル周辺に強く認められるという本発明の出願人の以前の観察は、このようなデータを支持する。アイソタイプの切り換えには、抗原提示及び主に末梢リンパ節(PLN)に存在するヘルパーTリンパ球により差し伸べられた援助が関与することから、VD処置が、局所にある「専門の」抗原提示樹状細胞(APDC)を活性化することができると推測できる。VDの抗原提示後しばらくすると、APDCは、炎症状態のマイクロチャネル部位に浸潤し、続いて局所的にリンパ球を活性化することができる。しかし、これらの相互作用は、通常は、活性化されたAPDCの本来の遊走先であるPLNで起こるものであることを理解されたい。
【0141】
抗原提示の経路は、抗原特異的免疫応答を惹起するための重要なパラメーターであるが、抗原組成物及びアジュバントの使用も同等に重要である。本実施例では、DV処置を使用の際、アジュバントなしで、2種の卵白アルブミン組成物、すなわち、粉末(VD−p)及び溶液(VD−s)を、同一用量で用いた。VD−pがVD−sより低いIgG抗体価を示した点を考慮すると、ワクチン開発を成功させるには、抗原の製剤化に力点を置く必要がある点が重要である。VD−p群では、IgG抗体価が満足でない一方、IgA抗体価が印象的に高いことから、所望するように免疫応答を操作するには、抗原組成物が大きな役割を担っていることが強く示唆される。ある条件下では特定の抗体アイソタイプがそれ以外のアイソタイプより重要であることが多いことから、このような現象を利用することは非常に有用である可能性がある。例えば、粘膜疾患においては、このような粘膜から分泌されるIgA抗体を効果的に惹起するために、本発明の装置と共に乾燥抗原を効果的に投与することができる。
【0142】
したがって、ViaDerm技術を使用する経皮免疫処置は、非常に効率がよく、従来のワクチン接種経路に代わる技術を提供することができる。
【0143】
(実施例2)
3価インフルエンザワクチンを用いた経皮免疫処置
材料
ハートレイ(Hartley)系モルモット、雌(体重:>350g)、週齢:>7週(Charles River社より購入)
不活性化インフルエンザワクチン:A/Panama(パナマ)/2007/99、A/New Caledonia(ニューカレドニア)/20/99、及びB/Shangdong(山東)/7/97、ロット番号:001、2.046mg/ml、0.2046mg/mlに希釈して使用。
大腸菌(E.coli)熱不安定性エンテロトキシン(LT):FIN0023、1.906mg/ml
単層レーヨン製正方形パッチ、1cm2ViaDerm:電極、長さ:50及び100μm、円筒形
Tegaderm 1624W:3M5NDC8333−1624−05、大きさ:6cm×7cm
接着テープ:3M社製
加湿溶液:10%グリセロール/食塩水
【0144】
免疫処置
免疫処置に先立って、モルモットに剪毛処置を施し、ケタミン及びキシラジンで鎮静させた。100μlの1倍希釈ダルベッコリン酸緩衝液(DPBS)に溶かした0.5μgの赤血球凝結素(HA)(各株につき0.17μg)を、全動物の筋肉内に大量瞬時投与した。
【0145】
前処置
免疫処置の前日にモルモットに剪毛処置を施し、実験第22日目のパッチ投与の直前に再度剪毛処置を施した。免疫処置部位に油性ペンで印をつけ、剪毛処置後の皮膚に以下のような処置を施した。
・第1群及び第2群を、10%グリセロール/食塩水で加湿処置した。
・第3群及び第4群に、剪毛処置済みの乾燥皮膚を10%グリセロール/食塩水で加湿処置した状態で、ViaDerm装置(電極:<50μm)で2度前処置を施した。
・第5群及び第6群に、剪毛処置済みの乾燥皮膚で加湿処置をしていない状態で、ViaDerm装置(電極:<50μm)で2度前処置を施した。
・第7群及び第8群に、剪毛処置済みの乾燥皮膚で加湿処置をしていない状態で、ViaDerm装置(電極:100μm)で2度前処置を施した。
当技術分野で知られている方法(例えば、国際公開WO2004/039426、WO2004/039427、及びWO2004/039428を参照)で、前処置の前と直後にTWEL量を測定した。
【0146】
パッチの投与
15μlの1倍希釈ダルベッコリン酸緩衝液(DPBS)に溶かした15μgの赤血球凝結素(HA)(各株につき5μg)を、単独で(LTなし)又は1μgのLTと共に含有する1cm2のレーヨン製パッチを、前処置の直後に当てた。パッチが適切に接着するように、パッチを改変したTegadermでさらに覆った。パッチを接着テープで包んだ。18〜24間当てた後、パッチを取り除き、皮膚を温水ですすいだ。
【0147】
血清の採取
免疫前(免疫処置前)及び免疫後(第22日目及び第36日目)に、標準法を使用して眼窩神経叢から採血した。全血の遠心分離により血清を採取し、無細胞血清を表示済み試験管に移し、−20℃で凍結保存した。
【0148】
ELISA
当技術分野で周知のELISA法(例えば、本明細書にその全体が組み入れられている米国特許出願2004/018055を参照)を使用し、A/Panama、A/New Caledonia、及びB/Shangdongに対する血清中の全IgG抗体価を評価した。抗体力価は、ELISA単位(EU)で表示され、1EUは、405nmにおける吸光度1に相当する血清の希釈度である。
【0149】
結果
図7は、無処置又はViaDerm処置モルモットのTEWL量を示す。図7に示すように、長さ100μmの電極を用いたViaDerm又は長さ50μmの電極を用いたViaDermで処置したモルモットから得られたTEWL量は、無処置モルモットから得られたTEWL量より有意に高値であった。これらの結果から、モルモットの皮膚内にマイクロチャネルが形成されたことが確認できる。
【0150】
図8は、アジュバントとしての大腸菌(E.coli)熱不安定性エンテロトキシン(LT)の存在下又は非存在下におけるA/Panamaインフルエンザ株に対するモルモットの血清IgG抗体価を示す。これらのモルモットは、ViaDermで処置され、3価インフルエンザワクチンを含むパッチによる免疫処置を受けていた。図8に示すように、長さ50μm又は100μmのいずれかの電極を用いViaDerm処置をした後、インフルエンザパッチを当てたモルモットでは、ViaDerm無処置で、インフルエンザパッチ投与のモルモットに比較し、A/Panamaインフルエンザ株に対するIgG抗体価が有意に上昇した。このインフルエンザ株に対しては、アジュバントとしてのLT添加によるIgG抗体価の上昇は認められなかった。比較として、モルモットに筋肉内(IM)から免疫処置を施した。第1日目に0.5μgの3価インフルエンザワクチンを投与し、第22日目に同じワクチン(15μg)を用いIMで追加免疫した。図8に示すように、ViaDerm処置群のIgG抗体価は、IM注射モルモットのIgG抗体価と同等であるか、むしろ高値であり、これは、ViaDermを使用する経皮免疫処置の効率が、IM免疫処置と同程度であることを示唆している。
【0151】
図9及び図10に示すように、A/New Caledonia及びB/Shangdongに対して血清中のIgG抗体価を求めた場合でも、同様の結果が得られている。図9及び図10に示すように、これらのいずれの株に対しても、ViaDerm処置後にインフルエンザパッチを投与したモルモットにおいては、ViaDerm無処置で、インフルエンザパッチ投与のモルモットに比較し、IgG抗体価が有意に上昇した。アジュバントとしてのLT添加によるIgG抗体価の上昇は認められなかった。ViaDerm処置動物のIgG抗体価は、3価インフルエンザワクチンを筋肉内注射したモルモットに認められたIgG抗体価と同等であった。
【0152】
当業者であれば、上記の本明細書の具体的内容によって本発明が限定されるものではなく、むしろ本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義されるものであることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】卵白アルブミンを用いた皮下的な一次免疫処置(S.C.)又はViaDerm処置後卵白アルブミン溶液を用いた経皮的な免疫処置(VD−s)のいずれかによる処置後第15日目において、モルモットに認められた血漿IgM抗体価を示す図である。
【図2】卵白アルブミンを用いた皮下的な一次免疫処置(S.C.)又はViaDerm処置後卵白アルブミン溶液を用いた経皮的な免疫処置(VD−s)のいずれかによる処置後第15日目において、モルモットに認められた血漿IgG抗体価を示す図である。
【図3A】追加免疫処置後第6日目(一次免疫処置後第36日目)において、モルモットに認められた血漿IgA及びIgG抗体価を示す図である。卵白アルブミン溶液を用いた筋肉内免疫処置(i.m.)又は皮下免疫処置(S.C.)による追加免疫処置後第6日目(一次免疫処置後第36日目)における血漿IgA及びIgG抗体価を示す図である。
【図3B】追加免疫処置後第6日目(一次免疫処置後第36日目)において、モルモットに認められた血漿IgA及びIgG抗体価を示す図である。ViaDerm処置後、卵白アルブミン溶液(VD−s)又は卵白アルブミン粉末(VD−p)のいずれかを用いた経皮免疫処置による追加免疫処置後第6日目(第36日目)における血漿IgA及びIgG抗体価を示す図である。
【図4】卵白アルブミンを用いた皮下免疫処置(S.C.)又はViaDerm処置後卵白アルブミン溶液を用いた経皮免疫処置(VD−s)のいずれかによる追加免疫処置後第95日目(一次免疫処置後第125日目)において、モルモットに認められた血漿IgG抗体価を示す図である。
【図5】卵白アルブミンを用いた皮下的な一次免疫処置(S.C.)又はViaDerm処置後卵白アルブミン溶液を用いた経皮的な免疫処置(VD−s)のいずれかによる処置後第15日目において、モルモットに認められた血漿IgA抗体価を示す図である。
【図6】卵白アルブミンを用いた皮下免疫処置(S.C.)又はViaDerm処置後卵白アルブミン溶液を用いた経皮免疫処置(VD−s)のいずれかによる追加免疫処置後第12日目(一次免疫処置後第42日目)において、モルモットに認められた血漿IgA抗体価を示す図である。
【図7】長さ50ミクロン若しくは100ミクロンのいずれかのViaDerm電極を用いて処置したモルモット及び対照のモルモットにおける経皮水分喪失(Trans Epidermal Water Loss:TEWL)量を示す図である。
【図8】長さ50ミクロン若しくは100ミクロンのいずれかのViaDerm電極を用いて処置後、大腸菌熱不安定性外毒素(LT)存在下又は非存在下で、インフルエンザワクチンパッチを用いて免疫処置したモルモットに認められたインフルエンザA/Panama株に対する血清IgG抗体価を示す図である。対照群を、LT存在下又は非存在下で、インフルエンザワクチンパッチを用いて免疫処置した。インフルエンザワクチンを用い筋肉内免疫処置後、同じワクチンを用いて筋肉内から追加免疫処置をしたモルモット群も示されている。
【図9】長さ50ミクロン若しくは100ミクロンのいずれかのViaDerm電極を用いて処置後、LT存在下又は非存在下で、インフルエンザワクチンパッチを用いて免疫処置したモルモットに認められたインフルエンザA/Caledonia株に対する血清IgG抗体価を示す図である。対照群を、LT存在下又は非存在下で、インフルエンザワクチンパッチを用いて免疫処置した。インフルエンザワクチンを用い筋肉内免疫処置後、同じワクチンを用いて筋肉内から追加免疫処置をしたモルモット群も示されている。
【図10】長さ50ミクロン若しくは100ミクロンのいずれかのViaDerm電極を用いて処置後、LT存在下又は非存在下で、インフルエンザワクチンパッチを用いて免疫処置したモルモットに認められたインフルエンザB/Shangdong株に対する血清IgG抗体価を示す図である。対照群を、LT存在下又は非存在下で、インフルエンザワクチンパッチを用いて免疫処置した。インフルエンザワクチンを用い筋肉内免疫処置後、同じワクチンを用いて筋肉内から追加免疫処置をしたモルモット群も示されている。
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮免疫処置用送達システムに関するものである。より詳細には、本発明は、対象の皮膚内にマイクロチャネルを形成する装置を併用して、抗原性物質を効果的に局所投与するための送達システムに関する。本送達システムは、細菌性、ウイルス性、及び真菌性の抗原に対する免疫処置に有用であり、さらに腫瘍及びアレルギーの治療にも有用である。
【背景技術】
【0002】
経口、経鼻、筋肉内(IM)、皮下(SC)、及び皮内(ID)を含む種々の投与経路から、ワクチン接種を行うことができる。市販ワクチンの大部分の投与経路は、IM又はSCである。ほとんどの場合、ワクチンは、従来からの注射器と針を用いた注射によって投与されているが、高速液体ジェット注射器もある程度の成功を収めている。
【0003】
皮膚が免疫臓器であることは周知である。皮膚に侵入した病原体は、種々の機構を介して微生物を除去することができる高度に組織化された多種多様な特化した細胞群に出合うことになる。表皮のランゲルハンス細胞は、強力な抗原提示細胞である。リンパ球及び皮膚のマクロファージは、真皮に侵入することができる。多様な免疫学的に活性のある化合物を生じさせるために、ケラチノサイト及びランゲルハンス細胞が発現する、また、それらを誘導することもできる。これらの細胞が全体として、複雑な一連の事象を組織的に展開し、結果として自然免疫応答及び特異免疫応答の双方が制御される。
【0004】
皮膚の主要な障壁である角質層は、親水性高分子量薬物並びにタンパク質、裸のDNA5、ウイルスベクター等のポリマーを透過させない。したがって、一般に経皮送達は、親水性の低い低分子量化合物(<500ダルトン)の受動的な送達に限られていた。
【0005】
角質層の迂回を目指す多くの方法が評価されている。化学的浸透促進剤、脱毛剤、及び水和化によって、ポリマーの皮膚浸透性を向上させることができる。しかし、これらの方法は、送達の手段としては比較的効率が悪い。さらに、非刺激性の濃度では、化学浸透促進剤の効果には限界がある。サンドペーパーで研磨する方法、テープではぎ取る方法、及び二股の針を用いる方法を含め、物理的に浸透性を向上させる方法も評価されている。これらの方法により浸透性が向上するものの、薬物の吸収に及ぼすこれらの効果の大小を予想するのは困難である。レーザーにより除去する方法は、より再現性のある効果をもたらすことができるが、現状では面倒且つ高価な方法である。能動的な経皮送達の方法として、イオントフォレーシス、エレクトロポレーション、ソノフォレーシス(超音波導入法)、及び薬物含有固体粒子のバリスティック送達(ballistic delivery)があげられる。能動輸送(例えば、ソノフォレーシス)を使用する送達システムの開発が進んでおり、そのようなシステムを用いればポリマーの送達が可能である。しかし、現段階では、ヒトにおけるポリマーの送達が、これらのシステムによって満足に達成でき、再現性のあるものとなるかどうかは明らかでない。
【0006】
米国特許第5980898号は、ドレッシング、免疫抗原、及びアジュバントを備える経皮免疫処置用のパッチを開示している。この場合、無処置の皮膚にパッチを当てると、免疫抗原に特異的な免疫応答が惹起される。米国特許第5980898号によれば、抗原を備えるパッチの施用にあたっては、無処置の皮膚に音波又は電気エネルギーによる穿孔処理を加えない。しかし、免疫抗原、特にタンパク質は、皮膚上に置かれただけではそれ自体は免疫原性ではなく、そのような免疫抗原に対し免疫応答を惹起するには、アジュバントの存在を必要とする。米国特許第5980898号によるアジュバントには、コレラ毒素等のADPリボシル化菌体外毒素、熱不安定性エンテロトキシン、又は百日咳毒素が好ましい。
【0007】
米国特許第6706693号は、目的の遺伝子をコードし、当該目的遺伝子がコードするタンパク質を発現させるプラスミドDNA−リポソーム複合ベクター又はDNAベクターのいずれかを哺乳動物の皮膚に局所投与し、当該タンパク質に対する全身的な免疫応答を惹起するステップを含む全身的な免疫応答を非侵襲的に惹起する方法を開示している。米国特許第6706693号によれば、DNAベクターは、アデノウイルス組換え体又はDNA/アデノウイルス複合体であることができる。
【0008】
米国特許出願2001/0006645は、選択された薬物の経皮送達の方法であって、皮膚領域をアルファヒドロキシ酸で処理して当該皮膚領域を剥離させるステップと、当該選択薬物及び当該選択薬物の経皮送達を促進するための媒体を含有するパッチを供給するステップと、当該パッチを当該処理済み皮膚領域に当てるステップとを含む方法を開示している。米国特許出願2001/0006645による方法は、例えば、ジフテリア毒素、B型肝炎、ポリオ、水疱等に対する免疫処置又はワクチン接種に特に有用である。
【0009】
米国特許出願2002/0193729は、角質層を貫通する複数の微小突起を有する微小突起配列とリザーバとを備える皮内ワクチン送達装置を開示している。当該微小突起は、皮膚に500μmを超えない深さまで貫通することによって角質層内に孔を形成する。上記のリザーバは、抗原性物質及び免疫応答賦活アジュバントを含み、当該リザーバは、上記の孔に上記の物質及び上記のアジュバントを送り出す位置に配置される。
【0010】
米国特許第6595947号は、物質を単回、即時に、皮膚の表皮組織に物質を送達し、免疫応答を促進する方法であって、皮膚の表皮を破壊させず角質層のみを破壊させるステップと、それと同時に皮膚の表皮組織に当該物質を送達するステップとを含む方法を特許請求している。米国特許第6595947号によれば、物質の送達と、削り落としたりこすり落としたりすることによる皮膚の外層の擦過とを同時に行うことにより、当該物質に対する免疫応答を促進する。米国特許第6595947号による物質は、核酸、アミノ酸、ペプチド、又はポリペプチドであることができる。
【0011】
米国特許出願2004/0028727は、ドレッシング、抗原、及びアジュバントを備える経皮免疫処置用のパッチを開示している。抗原及びアジュバント材料の少なくとも1種は乾燥形態であり、当該パッチを無処置の皮膚に当てると当該抗原に特異的な免疫応答が惹起される。米国特許出願2004/0028727によれば、アジュバントは、ADPリボシル化菌体外毒素が好ましい。
【0012】
国際公開WO2004/039426、WO2004/039427、及びWO2004/039428は、いずれも本出願の出願人に帰するものであるが、医薬品の経皮送達のシステム及び方法を開示している。具体的には、親水性制吐薬と、ポリペプチド及びタンパク質を含む乾燥組成物と、水不溶性薬物とが開示されている。国際公開WO2004/039426、WO2004/039427、及びWO2004/039428が開示するシステム及び方法を用いると、薬学的組成物の血液に対する浸透性が顕著に向上した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
実用的で、信頼性の高い、効果的な、皮膚内に又は皮膚を介して抗原を送達し、免疫を惹起する方法を望む声に応えるものは、出現していない。特に、皮下針、浸透促進剤、アジュバント、又はウイルスベクターの使用を必要とせず、且つ皮膚を積極的に研磨したり、貫通したりすることにより不快感を起こすことがない方法が望まれているが、それに応えるものは未だに出現していない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、免疫処置用の経皮送達システムに関するものである。本経皮送達システムは、対象の皮膚領域内に複数のマイクロチャネルを形成する装置と、抗原性物質を含む組成物とを備える。
【0015】
本発明の経皮送達システムが、アジュバントを必要としないという今回の開示は驚きに値する。本発明のシステムを用いると、アジュバントがなくても、アジュバントがある場合と同程度の優れた免疫効果が達成できる。したがって、抗原性物質と接触する皮膚領域は、アジュバントの使用に伴う刺激、感作、又は毒作用を被らなくてもよい。本明細書に示すごとく、本発明の装置によって形成されるマイクロチャネルによって、対象の体内へのワクチンの送達及び抗原特異的免疫応答の惹起を効果的に行うことができることが本発明で示されているので、本発明の装置を併用して、抗原性物質を含む組成物又は市販のワクチンを投与することができる。
【0016】
さらに、本発明の送達システムは、高分子量の分子に対する免疫応答の惹起に非常に有用であることを開示している。惹起される免疫応答は、1つの抗体サブタイプに限定さることはなく、むしろいくつかの抗体サブタイプ、すなわちIgM、IgG、及びIgAの産生に及ぶことができる。
【0017】
さらに、本発明の装置を用いて対象の皮膚領域を処置した後、対象の当該皮膚領域に抗原性物質を局所適用すると、当該抗原性物質に特異なIgA及びIgGの抗体力価が上昇することを開示している。これらの力価は、従来の免疫処置経路、すなわち皮下又は筋肉内経路を用いて得られた力価と同等であるか、或いはそれらより高い。したがって、本発明は、注射を必要としない免疫処置又はワクチン接種のシステムを提供するものである。
【0018】
予想外なことに、本発明の装置を用いて対象の皮膚領域を処置した後、対象の当該皮膚領域に抗原性物質を局所適用すると、当該抗原性物質に特異なIgGの抗体力価が顕著且つ有意に検知可能な量で、皮下又は筋肉内に抗原を投与した後に抗体が出現する時期より早期に認められる。したがって、免疫の速やかな発生を必要とする多くの用途で、本発明のシステムは、特に有利である。
【0019】
さらに、本発明の装置を用いて処置した対象の皮膚領域に抗原性物質を含む溶液を局所適用した場合、前記装置を用いて処置した皮膚に乾燥した抗原性物質を含むパッチを当てた場合より、抗原特異的IgG抗体をより効率よく惹起することを開示している。しかし、本発明の装置を用いて皮膚を処置した後、乾燥した抗原性物質を含むパッチを処置済みの皮膚に当てた場合、皮下又は筋肉内経路に比較して、抗原特異的IgA抗体をより効率よく惹起することが示されている。したがって、抗原性物質の特定の剤形と組み合わせた本発明の装置は、免疫系を操作するのに有用である。
【0020】
本発明は、各種の広範な細菌性抗原、ウイルス性抗原、真菌性抗原、及び抗原特異的免疫応答を惹起することができるその他の高分子量物質を含むことを意図することは明らかである。本明細書に以下、45kDaのタンパク質である卵白アルブミン及び元来ヒトから単離された3株からなる不活性化インフルエンザワクチンを使用して、本発明の原理を例示する。
【0021】
一態様によれば、本発明は、対象の皮膚領域を介した抗原の経皮送達を促進するための装置であって、機械的手段以外の手段を用いて、対象の皮膚領域内に複数のマイクロチャネルを形成することができる装置と、免疫原性有効量の抗原を含む組成物とを備える抗原特異的免疫応答を惹起するための経皮送達システムを提供する。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、電気エネルギーを用いて角質層の除去をひき起こすことによって、マイクロチャネルを発生させる技術を組み入れている。このような技術として、その全体が本明細書に参照として組み入れられている米国特許第6148232号、第6597946号、第6611706号、第6711435号、及び第6708060号に開示されている装置があげられる。しかし、本発明のより好ましい実施形態の中には、上記の装置を用いて皮膚を除去することによって得られる抗原の皮内又は経皮送達に関するものもあるが、機械的手段を利用するものを除き、対象の皮膚内にマイクロチャネルを形成するための当技術分野で公知の、本質的にいずれの方法であっても使用することができることに留意されたい。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、対象の皮膚領域を介した抗原の経皮送達を促進するための装置を備える経皮送達システムであって、前記装置が、
a.複数の電極を備える電極カートリッジ;及び
b.前記複数の電極が皮膚の付近にある場合に前記複数の電極間に電気エネルギーを与えるようになされ、通常電流又は1つ若しくは複数のスパークを発生させ、電極下の領域内の角質層を除去することができ、それによって複数のマイクロチャネルを形成する制御部を備えた主要ユニット
を備える。
【0024】
別の実施形態によれば、装置の制御部は、電極に送られる電気エネルギーの強さ、頻度、及び/又は期間を制御する回路を備えており、電流又はスパークの発生を制御し、それによって複数のマイクロチャネルの幅、深さ、及び形を制御する。電気エネルギーは、高周波であることが好ましい。
【0025】
例示的な実施形態によれば、複数の電極を備える電極カートリッジは、一様な形と寸法を有する複数のマイクロチャネルを形成する。いくつかの実施形態によれば、電極カートリッジは、着脱可能である。電極カートリッジは、一度使用したら廃棄することができ、そのために主要ユニットへの取り付け及びその後の主要ユニットからの取り外しが簡単なように設計されている。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、抗原は、細菌性抗原、ウイルス性抗原、真菌性抗原、原虫性抗原、腫瘍抗原、アレルゲン、自己抗原並びにそれらの断片、類似体、及び誘導体からなる群から選択される。
【0027】
別の実施形態によれば、細菌性抗原は、炭疽菌(Anthrax)、カンピロバクター属(Campylobacter)、コレラ菌(Vibrio cholera)、クロストリジウム属(Clostridia)、ジフテリア菌(Diptheria)、腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli)、腸内毒素原性大腸菌(enterotoxigenic Escherichia coli)、ジアルジア属(Giardia)、淋菌(gonococcus)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、インフルエンザ菌B型(Hemophilus influenza B)、無莢膜型インフルエンザ菌(non−typeable Hemophilus influenza)、レジオネラ菌(Legionella)、髄膜炎菌(meningococcus)、放線菌(Mycobacteria)、百日咳菌(pertussis)、肺炎菌(pneumococcus)、サルモネラ菌(salmonella)、赤痢菌(shigella)、ブドウ球菌(staphylococcus)、A群ベータ型溶血性連鎖球菌(Group A beta−Hemolytic streptococcus)、B型連鎖球菌(Streptococcus B)、破傷風菌(tetanus)、ライム菌(Borrelia burgdorferi)、及びエルシニア属(Yersinia)からなる群から選択される細菌に由来する。
【0028】
その他の実施形態によれば、ウイルス性抗原は、アデノウイルス(adenovirus)、エボラウイルス(ebola virus)、腸内ウイルス(enterovirus)、ハンタウイルス(hanta virus)、肝炎ウイルス(hepatitis virus)、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus)、ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus)、ヒトパピローマウイルス(human papilloma virus)、インフルエンザウイルス(influenza virus)、はしか(麻疹)ウイルス(measles(rubeola)virus)、日本馬脳炎ウイルス(Japanese equine encephalitis virus)、パピローマウイルス(papilloma virus)、パロボウイルス B19(parvovirus B19)、ポリオウイルス(poliovirus)、呼吸器合胞体ウイルス(respiratory syncytial virus)、ロタウイルス(rotavirus)、セントルイス脳炎ウイルス(St.Louise encephalitis virus)、ワクシニアウイルス(vaccinia virus)、黄熱病ウイルス(yellow fever virus)、風疹ウイルス(rubella virus)、水疱ウイルス(chickenpox virus)、水痘ウイルス(varicella virus)、及びおたふく風邪ウイルス(mumps virus)からなる群から選択されるウイルスに由来する。
【0029】
その他の実施形態によれば、真菌性抗原は、体部白癬菌(tinea corporis)、爪白癬菌(tinea unguis)、スポロトリクム症菌(sporotrichosis)、アスペルギルス症菌(aspergillosis)、及びカンジダ菌(Candida)からなる群から選択される真菌に由来する。
【0030】
別の実施形態によれば、原虫性抗原は、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、マラリア原虫(Plasmodium)、及びリーシュマニア(Leishmania)からなる群から選択される原虫に由来する。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、抗原は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、脂質、リン脂質、炭水化物、糖脂質、及びそれらの複合体から選択される。組成物は2種以上の抗原を含むことができることを理解されたい。
【0032】
さらにその他の実施形態によれば、本発明の抗原を含む組成物は、乾燥剤形又は液体剤形とすることができる。例示的な実施形態によれば、乾燥剤形は、パッチである。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、抗原を含む組成物は、アジュバントをさらに含んでいる。
【0034】
別の態様によれば、本発明は、対象に抗原特異的免疫応答を経皮的に惹起する方法であって、
(i)機械的手段以外の手段を用いて、対象の皮膚領域内に複数のマイクロチャネル形成するステップ;及び
(ii)免疫原性有効量の抗原と、薬学的に許容される担体とを含む組成物を、複数のマイクロチャネルが存在する皮膚領域に局所適用し、それによって抗原特異的免疫応答を惹起するステップ
を含む方法を提供する。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、複数のマイクロチャネルは、
a.複数の電極を備える電極カートリッジ;及び
b.前記複数の電極が皮膚の付近にある場合に前記複数の電極間に電気エネルギーを与えるようになされ、通常電流又は1つ若しくは複数のスパークを発生させ、電極下の領域内の角質層を除去することができ、それによって複数のマイクロチャネルを形成する制御部を備えた主要ユニット
を備える装置を用いて形成される。
【0036】
別の実施形態によれば、複数の電極を備える電極カートリッジは、着脱可能である。さらに別の実施形態によれば、電気エネルギーは、高周波である。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、抗原特異的免疫応答を惹起する方法は、抗原特異的抗体を含んでいる。別の実施形態によれば、抗原特異的免疫応答は、抗原特異的リンパ球を含んでいる。
【0038】
本発明の原理に基づく経皮的に免疫応答を惹起する方法を用いると、細菌性抗原、ウイルス性抗原、真菌性抗原、原虫性抗原、腫瘍抗原、アレルゲン、自己抗原等の種々の抗原性物質に対する応答を惹起することができるので、本発明の方法は、免疫保護、免疫抑制、自己免疫疾患の調節、ガンに対する免疫監視の増強、疾患予防のための予防的ワクチン接種並びに確立された疾患の治療については、その治療のための或いは重症度の軽減及び/又は罹病期間短縮のための治療的ワクチン接種に有用であることを理解されたい。
【0039】
以下の図、説明、実施例、及び特許請求の範囲を参照することによって、本発明のこれらの実施形態及びその他の実施形態が、より明確に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明は、対象の皮膚領域を介した抗原性物質の経皮送達を促進するための装置と、少なくとも1種の抗原性物質を免疫原性有効量で含む組成物とを備える抗原特異的免疫応答を惹起するための経皮送達システムを提供する。前記装置は、対象の皮膚領域内に少なくとも1つのマイクロチャネルを形成することができる。
【0041】
抗原
「抗原性物質」及び「抗原」は、本明細書及び特許請求の範囲を通して交換可能な用語であり、組成物の有効成分を意味し、この有効成分は、免疫処置又はワクチン接種の後に、ヒト又は動物である対象の免疫系によって特異的に認識される。抗原は、B細胞受容体(すなわち、分泌された抗体又は膜に結合している抗体である)或いはT細胞受容体によって認識される1種又は複数の免疫原性エピトープを含むことができる。
【0042】
また、本発明による抗原性物質は、免疫原性物質でもある。「免疫原性」物質とは、抗原特異的免疫応答を惹起することができる物質を意味する。
【0043】
「免疫処置」及び「ワクチン接種」という用語は、抗原特異的免疫応答を惹起することを意味し、本明細書及び特許請求の範囲を通して交換可能である。
【0044】
抗原は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、脂質、リン脂質、炭水化物、糖脂質、それらの混合物又は複合体、或いは免疫応答を惹起することが知られているその他のいずれかの材料であることができる。抗原の分子量は、1キロダルトン(kDa)、10kDa、又は100kDa(それらの中間の範囲を含む)より大きくてもよい。抗原は、担体と複合体を形成していてもよい。抗原は、例えば、細菌又はウイルス粒子等の微生物全体として供給することができる。抗原は、例えば、細胞全体又は膜由来等、微生物の抽出液或いは溶菌液から得ることができる。抗原は、例えば、生のウイルス又は細菌等の生きている微生物として、例えば、弱毒化生ウイルス又は細菌等の弱毒化された生きている微生物として、或いは化学的又は遺伝子的手法によって不活性化された微生物として供給されることができる。さらに、抗原は、化学的合成、組換え技術よる生産、又は自然源からの精製により得ることも可能である。
【0045】
「ペプチド」とは、モノマーがアミノ酸であり、それらがアミド結合を介して相互につながっているポリマーを意味する。ペプチドは、通常ポリペプチドより小さく、典型的には全アミノ酸数は30〜50以下である。
【0046】
「ポリペプチド」とは、アミノ酸の単一ポリマーを意味し、通常アミノ酸数は50より多い。
【0047】
本明細書で使用する「タンパク質」とは、通常アミノ酸数が50より多く、1つ又は複数のポリペプチド鎖を含んでいるアミノ酸のポリマーを意味する。
【0048】
抗原ペプチド或いは抗原ポリペプチドとして、例えば、天然、合成若しくは組換えのB細胞又はT細胞エピトープ、汎用性T細胞エピトープ、及びある微生物又は疾患由来のT細胞エピトープと別の微生物又は疾患由来のB細胞エピトープとの混合物があげられる。組換え法又はペプチド合成法を用いて得られた抗原も、自然源又は抽出液から得られた抗原も、抗原の物理的及び化学的性質を利用した精製法を用いて精製することができる。好ましくは分画法又はクロマトグラフィーである。ペプチド合成法は、当技術分野では周知であり、種々の会社が業務として取り扱っている。ペプチド又はポリペプチドは、固相合成法(例えば、Merrifield、1963、J.Am.Chem.Soc.85:2149−2154を参照)による等、標準的な直接合成法(例えば、Bodanszky著、1984、「ペプチド合成の原理(Principles of Peptide Synthesis)(Springer−Verlag,Heidelbeg)」に概説されている)によって合成することができる。
【0049】
組換え抗原は、1種又は複数の抗原を組み合わせることができる。1種又は複数の抗原を含む抗原組成物を使用して、複数の抗原に対する免疫応答を同時に惹起することが可能である。そのような組換え抗原は、所望のアミノ酸配列をコードする適当な核酸配列を当技術分野で周知の方法で適切なコードフレームにおいて相互に連結し、当技術分野で周知の方法で組換え抗体を発現させることによって作ることができる(例えば、Sambrookら、1989、「分子クローニング:実験室マニュアル、第二版(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d edition)(Cold Spring Harbor Press)」を参照)。追加として又は別法として、多価抗原組成物を使用して、1種の抗原性物質中の複数の免疫原性エピトープに対する免疫応答を惹起することもできる。また、複合体を使用して、複数の抗原に対する免疫応答の惹起及び追加免疫のいずれか又は両方を行うこともできる。そのような複合体は、タンパク質合成法、例えば、ペプチド合成器機を使用することによって作ることができる。抗原の断片を使用しても、免疫応答の惹起が可能である。
【0050】
多くの抗原を使用して、対象にワクチンを接種したり、抗原に特異的な免疫応答を惹起したりすることができる。抗原を、対象に感染する恐れのある病原体から得ることができる。したがって、抗原を、例えば、細菌、ウイルス、真菌、又は寄生生物から得ることができる。抗原は、腫瘍抗原であってもよい。抗原は、アレルゲンであってもよく、例として、これらに限定されるわけではないが、花粉、動物のフケ、カビ、ダスト、ダニ、ノミアレルゲン、唾液アレルゲン、イネ科草本、又は食物(例えば、ピーナッツ及びその他の木の実)があげられる。抗原は、自己抗原であってもよい。自己抗原は、例えば、膵島抗原等、自己免疫疾患に関連することがある。
【0051】
抗原を、細菌から得ることができる。細菌の例として、これらに限定されるわけではないが、炭疽菌(Anthrax)、カンピロバクター属(Campylobacter)、コレラ菌(Vibrio cholera)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostriduim difficle)を含むジクロストリジウム属(Clostridia)、フテリア菌(Diptheria)、腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli)、腸内毒素原性大腸菌(enterotoxigenic Escherichia coli)、ジアルジア属(Giardia)、淋菌(gonococcus)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、インフルエンザ菌B型(Hemophilus influenza B)、無莢膜型インフルエンザ菌(non−typeable Hemophilus influenza)、レジオネラ菌(Legionella)、髄膜炎菌(meningococcus)、結核の原因菌を含む放線菌(Mycobacteria)、百日咳菌(pertussis)、肺炎菌(pneumococcus)、サルモネラ菌(salmonella)、赤痢菌(shigella)、ブドウ球菌(staphylococcus)、A群ベータ型溶血性連鎖球菌(Group A beta−Hemolytic streptococcus)、B型連鎖球菌(Streptococcus B)、破傷風菌(tetanus)、ライム菌(Borrelia burgdorferi)、及びエルシニア属(Yersinia)等があげられる。本発明によれば、細菌性抗原として、例えば、毒素、トキソイド(すなわち、化学的に不活性化された毒素で、毒性が低下しているが免疫原性は保持している毒素)、それらのサブユニット若しくは組合せ、及び病原性若しくはコロニー形成因子があげられる。細菌の構成成分、産物、溶菌液、及び/又は抽出液を、細菌性抗原の源として使用してもよい。
【0052】
抗原を、ウイルスから得ることができる。ウイルスとして、これらに限定されるわけではないが、アデノウイルス(adenovirus)、デングウイルス血清1〜4型(dengue serotypes 1 to 4 virus)、エボラウイルス(ebola virus)、腸内ウイルス(enterovirus)、ハンタウイルス(hanta virus)、肝炎ウイルス血清A〜E型(hepatitis virus serotypes A to E)、単純ヘルペスウイルス1又は2(herpes simplex virus 1 or 2)、ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus)、ヒトパピローマウイルス(human papilloma virus)、インフルエンザウイルス(influenza virus)、はしか(麻疹)ウイルス(measles(rubeola)virus)、日本馬脳炎ウイルス(Japanese equine encephalitis virus)、パピローマウイルス(papilloma virus)、パロボウイルス B19(parvovirus B19)、ポリオウイルス(poliovirus)、狂犬病ウイルス(rabies virus)、呼吸器合胞体ウイルス(respiratory syncytial virus)、ロタウイルス(rotavirus)、セントルイス脳炎ウイルス(St.Louise encephalitis virus)、ワクシニアウイルス(vaccinia virus)、黄熱病ウイルス(yellow fever virus)、風疹ウイルス(rubella virus)、水疱ウイルス(chickenpox virus)、水痘ウイルス(varicella virus)、及びおたふく風邪ウイルス(mumps virus)があげられる。ウイルスの構成成分、産物、溶菌液、及び/又は抽出液を、ウイルス性抗原の源として使用してもよい。
【0053】
抗原を、真菌から得ることができる。真菌として、これらに限定されるわけではないが、体部白癬菌(tinea corporis)、爪白癬菌(tinea unguis)、スポロトリクム症菌(sporotrichosis)、アスペルギルス症菌(aspergillosis)、カンジダ菌(Candida)、及びその他の病原性真菌があげられる。真菌の構成成分、産物、溶菌液、及び/又は抽出液を、真菌性抗原の源として使用してもよい。
【0054】
抗原は、原虫から得ることができる。原虫として、例えば、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、マラリア原虫(Plasmodium)、及びリーシュマニア(Leishmania)があげられる。原虫の構成成分、産物、溶菌液、及び/又は抽出液を、原虫性抗原の源として使用してもよい。
【0055】
ワクチン接種を、ガン、アレルギー、及び自己免疫疾患の治療法としても使用できる。例えば、腫瘍抗原(HER2、前立腺特異抗原等)を用いたワクチン接種により、抗体及びリンパ球増殖の形態で免疫応答を惹起することができ、それによって体内の免疫系が腫瘍細胞を認識するようになり、腫瘍細胞は死滅に至る。ワクチン接種に有用な腫瘍抗原が、当技術分野で知られており、例として、白血病、リンパ腫、及びメラノーマの腫瘍抗原があげられる。
【0056】
T細胞受容体又は自己抗原(膵島抗原等)を用いたワクチン接種により、自己免疫疾患の進行を休止させる免疫応答を惹起することができる。
【0057】
抗原性物質の断片、誘導体及び類似体が免疫原性であり、それによって抗原特異的免疫応答を惹起できる限り、そのような抗原性物質の断片、誘導体及び類似体が本発明に含まれることを理解されたい。
【0058】
抗原性物質の断片を、抗原に少なくとも1種の開裂剤を加えることにより生成することができる。開裂剤は、臭化シアン等の化学的開裂剤、又はエンドプロテアーゼ、エキソプロテアーゼ若しくはリパーゼ等の酵素であることができる。
【0059】
抗原性物質の誘導体も、本発明の範囲に含まれる。したがって、タンパク質である抗原性物質を誘導体化反応によって修飾することができる。誘導体化反応として、これらに限定されるわけではないが、酸化、還元、ミリスチル化、硫酸化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、環化、ジスルフィド結合形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、グリコシル化、脱グリコシル化、リン酸化、脱リン酸化、又は当技術分野で周知のその他のいずれかの誘導化法があげられる。これらの反応によって得られる修飾は、抗原の免疫原性エピトープを壊すことがない限り、抗原のいかなる部位に生じてもよい。同一抗原内に、1種又は複数の修飾が存在することが可能であることが理解されたい。
【0060】
本明細書で使用する「類似体」という用語は、アミノ酸の置換、付加、又は欠失による配列変化を含む抗原性物質を意味する。
【0061】
アジュバント
本発明は、アジュバントを使用しない、効果の高い抗原性物質の経皮送達のシステム及び方法を提供する。しかし、抗原及びアジュバントを含む組成物も本発明に含まれる。通常、アジュバントによる抗原提示細胞の活性化は、抗原の提示に先立って起こる。別法として、同一の解剖学的領域を標的として、短い間をおいて抗原及びアジュバントを別々に提示することも可能である。
【0062】
「アジュバント」という用語は、抗原特異的免疫応答を特異的又は非特異的に増強するために使用される物質を意味する。「アジュバント活性」という用語は、抗原(すなわち、アジュバントとは異なる化学構造である抗原)に対する免疫応答を高める能力を意味し、アジュバント活性は、組成物中にアジュバントを含めることによってもたらされている。
【0063】
アジュバントとしては、これらに限定されるわけではないが、油性エマルション(完全又は不完全フロイドのアジュバント等)、ケモカイン(デフェンシン、HCC−1、HCC−4、MCP−1、MCP−3、MCP−4、MIP−1ct、MIP−1β、MIP−1δ、MIP−3α、及びMIP−2等)、ケモカイン受容体のその他のリガンド(CCR−1,CCR−2、CCR−5、CCR−6、CXCR−1等)、サイトカイン(IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12、IFN−γ、TNF−α、GM−CSF等)、これらのサイトカイン受容体のその他のリガンド、細菌性DNA若しくはオリゴヌクレオチドの免疫賦活性CpGモチーフ、ムラミルジペプチド(MDP)及びその誘導体(ムラブチド、スレオニル−MDP、ムラミルトリペプチド)、熱ショックタンパク質及びその誘導体、リーシュマニア同族体及びその誘導体、細菌性ADPリボシル化外毒素並びにそれらの化学的複合体及び誘導体(遺伝子変異体、A及び/又はBサブユニット含有断片、化学的トキソイド等)、或いは塩(水酸化又はリン酸化アルミニウム、リン酸カルシウム等)があげられる。
【0064】
ADPリボシル化外毒素(bARE)の多くは、受容体結合活性を含有するBサブニットとADP−リボシル基転移酵素活性を含有するAサブユニットを有するA:Bへテロダイマーとして構築されている。代表的なbAREとして、コレラ毒素(CT)、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン(LT)、ジフテリア毒素、シュードモナス(Pseudomonas)属外毒素A(ETA)、百日咳毒素(PT)、ボツリヌス菌(C.botulinum)毒素C2、ボツリヌス菌毒素(C.botulinum)C3、クロストリジウム菌(C.limosum)細胞外酵素、セレウス菌(B.cereus)細胞外酵素、シュードモナス属(Pseudomonas)外毒素S、ブドウ球菌(S.aureus)EDIN、及びバシラス・スフェリカス(B.sphaericus)毒素があげられる。トリプシン開裂部位の変異又はADPリボシル化に影響する変異を含有する変異bAREも使用可能である。
【0065】
bARE等のアジュバントは、注射又は全身投与すると、高い毒性を示すと認識されていることを理解されたい。しかし、それらは、無処置の皮膚表面に置かれたり、表皮に侵入させたりすれば、全身毒性を示すことなくアジュバント効果を発揮することができる(例えば、その全体が参照として本明細書に組み入れられている米国特許出願2004/0258703及び2004/0185055を参照)。
【0066】
特異的抗体(IgM、IgD、IgA1、IgA2、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、及び/又はIgG4等)又は特異的T細胞サブセット(CTL、Th1及び/又はTh2等)を優先的に惹起するようにアジュバントを選択することができる。
【0067】
非メチル化CpGジヌクレオチド又は同様のモチーフは、Bリンパ球及びマクロファージを活性化することが知られている。細菌性DNAのその他の形態をアジュバントとして使用することができる。免疫系に病原性を有していることを認識させて自然免疫応答を刺激し適応免疫応答を惹起させるパターンをその構造内に有していると分類されるクラスに、細菌性DNAが属していることを理解されたい。このような構造は、病原体関連分子パターン(PAMP)と呼ばれ、例としてリポ多糖、タイコ酸、非メチル化CpGモチーフ、二本鎖RNA、及びマンナンが含まれる。PAMPは、炎症応答の仲介が可能で、T細胞機能の補助刺激因子として作用することができる内因性シグナルを惹起する。
【0068】
アジュバントは、自然源から生化学的に精製可能であり、合成又は組換えにより作ることもできる。本発明によれば、アジュバントとして、アジュバント活性が保持される限り、天然に存在するアジュバントに切断、置換、欠失、及び付加が生じたものも含まれる。
【0069】
組成物
現在、認可されているワクチンは、水溶液又は水性懸濁液として送達され、免疫処置にあたっては、筋肉内又は経口投与される。周知のごとく、無菌でない恐れのある条件下でワクチン成分を水又は緩衝液と混合することは問題であり、溶液中では抗原が分解する可能性があり、これはワクチン成分を冷蔵保存しなければならない1つの理由となっている。ワクチン成分は、水の存在下では化学的に安定性を欠き、水が細菌の培地として働くので汚染されやすい。ワクチンの輸送及び保管中には冷蔵保管することが厳しく求められており、「コールドチェーン(cold chain)要件」に至っており、これは、ワクチン製造後はワクチンを適切な冷蔵保管条件下で常時保管することを意味する。このためワクチンの保管が複雑になり、ワクチンの輸送にあたっては物流が面倒になり、ワクチンの価格が上がる要因となっている。
【0070】
本発明の免疫処置又はワクチン接種に有用な組成物は、対象(すなわち、ヒト又は動物)への投与に適した薬学的に許容される組成物を提供するために、少なくとも1種の抗原性物質を免疫原性有効量で含有し、さらに薬学的に許容される担体又は媒体を含有する。
【0071】
「薬学的に許容される」という用語は、動物、特にヒトに使用する目的で、米国連邦又は州政府の規制当局によって認可されているか、米国薬局方若しくはその他の一般に認められている薬局方に収載されていることを意味する。「担体」という用語は、それと共に治療効果のある化合物を投与する希釈剤、賦形剤、又は媒体を意味する。したがって、本発明によれば、抗原を緩衝液又は水に可溶化してもよいし、懸濁液、脂質ミセル、又は小胞に組み入れてもよい。適切な緩衝液として、これらに限定されるわけではないが、リン酸緩衝化食塩水(PBS)、Ca2+/Mg2+非含有リン酸緩衝化食塩水、生理食塩水(150mM NaCl水溶液)、Hepes緩衝液、又はTris緩衝液があげられる。抗原は中性の緩衝液には溶解しないが、抗原を10mM酢酸中に可溶化した後、PBS等の中性の緩衝液を用いて所望の体積まで希釈することができる。酸性のpHでしか溶解しない抗原の場合、希酢酸中に可溶化させた後、酸性のpHで酢酸−PBSを希釈液として使用することができる。その他の有用な担体として、例えば、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、又は鉱油があげられる。薬学的組成物の製剤化のための方法及び成分は周知であり、例えば、Remington著「製剤の科学、18版(Pharmaceuticl Sciences、 Eighteen Edition)」、A.R.Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton Pa.、1990等で参照できる。
【0072】
必要に応じて、安定剤、着色剤、湿潤剤、保存剤、接着剤、可塑剤、粘着剤、及び増粘剤を、組成物中に含むことができる。
【0073】
安定剤として、これらに限定されるわけではないが、デキストラン、デキストリン、グリコール、アルキレングリコール、ポリアルカングリコール、ポリアルキレングリコール、糖、デンプン、及びそれらの誘導体があげられる。好ましい添加剤は、非還元糖及びポリオールである。特に、グリセロール、トレハロース、ヒドロキシメチル若しくはヒドロキシエチルセルロース、エチレン若しくはプロピレングリコール、トリメチルグリコール、ビニルピロリドン、及びそれらのポリマーを加えてもよい。アルカリ金属塩、硫酸アンモニウム、及び塩化マグネシウムは、タンパク質性の抗原を安定させることができる。また、ポリペプチドを、例えば、単糖類、二糖類、糖アルコール、及びそれらの混合物(例えば、アラビノース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルトース、マンニトール、マンノース、ソルビトール、スクロース、及びキシリトール)等の糖と接触させると安定化する。ポリオールも、ポリペプチドを安定化させることができる。アミノ酸、リン脂質、還元剤、及び金属キレート化剤を含む種々のその他の賦形剤もポリペプチドを安定化させることができる。
【0074】
本発明の組成物を、乾燥剤形又は液体剤形とすることができる。従来の液体ワクチンに比べ、乾燥剤形は保管及び輸送が容易である。というのは、ワクチンの製造場所からワクチン接種を行う場所まで要求されるコールドチェーンを維持する必要がないからである。その上、組成物の乾燥した有効成分(例えば、1種又は複数の抗原)の場合、短時間で免疫処置部位において直接可溶化することによって、高濃度を達成することができるので、乾燥剤形は、液体剤形に優っている。皮膚からの水分及び密閉性の外層(backing layer)が、この過程を促進することができる。
【0075】
液体の剤形として、組成物を提供することができ、これらに限定されるわけではないが、溶液、懸濁液、乳濁液、クリーム、ジェル、ローション、軟膏、ペースト、又はその他の液体の形態があげられる。乾燥した剤形として、組成物を提供することができる。乾燥剤形として、これらに限定されるわけではないが、細粒、顆粒、均一フィルム、ペレット、錠剤、及びパッチがあげられる。組成物を、溶解させた後容器内若しくは平らな表面(皮膚等)上で乾燥させてもよいし、又は単に平らな表面上に振りかけてもよい。組成物を、自然乾燥、高温乾燥、凍結乾燥、スプレー乾燥、固体の支持体にコート若しくはスプレーの後に乾燥、固体の支持体に振りかけ、素早く凍結させた後にゆっくりと真空乾燥、又はそれらを組み合わせて乾燥させてもよい。複数の抗原性物質が組成物に含まれる場合、抗原性物質を溶液中で混合した後乾燥してもよいし、乾燥状態のまま混合してもよい。
【0076】
組成物を、パッチの形態で提供することができる。「パッチ」とは、抗原性物質と支持体とを備える製品を意味する。支持体は、通常は外層(backing layer)であり、パッチの主たる構造要素として機能する(例えば、その全体が本明細書に組み入れられている国際公開WO02/074224及びWO2004/039428を参照)。パッチは、接着性及び/又は微細孔を有する内張り(liner layer)をさらに備えることができる。通常、微細孔内張りは、抗原性物質を徐放させる速度制御マトリックス又は速度制御膜となる。
【0077】
液体の組成物をパッチ中に組み入れてもよい(すなわち、湿潤パッチ)。液体組成物をリザーバに収めてもよいし、リザーバ中の内容物と混合してもよい。湿潤パッチは、1種の抗原性物質を含有する単一のリザーバ、又は抗原性物質を各1種含有する複数のリザーバを含有することができる。
【0078】
パッチは乾燥状態でもよい。乾燥パッチは、例えば、国際公開WO2004/039428に開示されているような印刷パッチ等の粉末パッチ、又は当技術分野で周知のいずれかの乾燥パッチであることができる(以下の本明細書の実施例を参照)。乾燥パッチを用いることによって、抗原性物質の溶解の時間及び速度の制御が可能となる。乾燥パッチは、1種又は複数の乾燥抗原性物質を含み、複数の抗原を含むパッチを当てることによって、複数の抗原に対する免疫応答を惹起するようになっている。このことは、湿潤パッチ、乾燥パッチのいずれにも当てはまる。この場合、抗原は、同一源から得てもよいし、そうでなくてもよいが、化学構造が異なるものであり、それによって異なる抗原に対する特異的免疫応答の惹起が起きる。
【0079】
外層(backing layer)は、不織性であってもよいし、そうでなくてもよい(例えば、ガーゼ包帯剤)。密閉性でなくも、密閉性であってもよいが、密閉性であることが好ましい。必要に応じて追加される放出制御用の内張りは、相当な量の組成物を吸収しないことが好ましい。パッチは、保管の際には密封状態(ホイル包装等)であることが好ましい。パッチは、皮膚表面に保持され、パッチの構成要素は、種々の接着剤を使用して一体化することができる。1種又は複数の抗原をパッチの支持体部分又は接着部分に組み入れてもよい。一般に、パッチは、平坦で、柔軟性があり、一定の形状に製造される。必要に応じて追加される添加剤は、パッチの柔軟性を維持するための可塑剤、パッチと皮膚との接着性の向上のための粘着剤、及び少なくとも製造過程での組成物の粘性を増すための増粘剤である。
【0080】
パッチの材料(例えば、外層、放出制御用の内張り)の例として、金属ホイル、セルロース、布(アセテート、綿、レーヨン製等)、アクリルポリマー、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリアミド(ナイロン等)、ポリエステル(ポリエチレンナフタレート、エチレンテレフタレート等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、塩化ポリビニリデン(SARAN)、天然及び合成ゴム、シリコーンエラストマー並びにこれらの組合せがあげられる。
【0081】
接着剤は、水性基剤の接着剤(例えば、アクリル酸エステル又はシリコーン)であることができる。アクリル系接着剤は、いくつかのメーカーから入手可能であり、AROSET、DUROTAK、EUDRAGIT、GELVA、及びNEOCRYLの商品名で市販されている。
【0082】
接着層の水の吸収能力を増減させるために、アクリル系ポリマーを親水性モノマーと共重合させることができる。この場合のモノマーとして、カルボキシル基を含有するモノマー、アミド基を含有するモノマー、アミノ基を含有するモノマー等があげられる。ゴム又はシリコーン樹脂を接着用の樹脂として用いてもよく、それらを粘着剤又はその他の添加剤と共に接着層に組み入れることができる。
【0083】
別法として、接着層の水の吸収能力を、接着層に吸水性の高いポリマー、ポリオール、及び吸水性の無機材料を組み入れることによって制御することもできる。吸水性の高い樹脂として、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸等のムコ多糖、キチン、キチン誘導体、デンプン、カルボキシメチルセルロース等の分子内に多数の親水性基を有するポリマー、及びポリアクリル系ポリマー、ポリオキシエチレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルニトリル等の吸水性の高いポリマーをあげることができる。
【0084】
可塑剤は、例えば、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、アセチルクエン酸トリエチル(ATEC)、クエン酸トリエチル(TEC)等のクエン酸トリアルキルであることができる。粘着剤の例として、グリコール(グリセロール、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)があげられる。コハク酸も粘着剤である。
【0085】
接着剤又は免疫原性の組成物の粘性を高めるために増粘剤を加えることができる。増粘剤は、ヒドロキシアルキル化したセルロース若しくはデンプン、又は水溶性のポリマーであることができる。例として、ポロキサマー、ポリエチレンオキシド及びその誘導体、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール並びにポリエチレングリコールエステルがあげられる。しかし、溶液の粘性を高める働きのある分子であればいずれも、パッチの製造における組成物の取り扱いを改善させるのに適する。
【0086】
ジェル及び乳濁液のシステムについては、パッチによる送達システムに組み入れること、パッチとは別に製造すること、或いはヒト又は動物の対象に投与するに先立ちパッチに加えることが可能である。ジェル若しくは乳濁液は、組成物に粘性を与えることによって、組成物の処理を容易にして損失を最小限に留めるという同一の目的を果たすことができる。「ジェル」という用語は、共有結合により架橋結合した基剤、又は架橋結合のない基剤を意味する。ヒドロゲルを、少なくとも1種の抗原性物質と共に配合することができる。その他の賦形剤をジェルのシステムに加え、抗原の送達、皮膚の加湿、及びタンパク質の安定化を促進させることができる。「乳濁液」という用語は、油中水型クリーム、水中油型クリーム、軟膏、ローション等の剤形を意味する。乳濁液のシステムは、ミセル基剤型、脂質小胞基剤型、又はミセル及び脂質小胞を組み合わせた基剤型のいずれであってもよい。
【0087】
液体の組成物を、皮膚に直接塗布し自然乾燥させてもよいし、包帯剤、パッチ、又は吸収性の素材に配合してもよい。組成物を吸収性の包帯剤又はガーゼに加えることができる。組成物は、例えば、AQUAPHOR(ワセリン、鉱油、鉱ロウ、ラノリン、パンテノール、ビサボール、及びグリセリンの乳濁液、Beiersdorf社製)、プラスチック製フィルム、COMFEEL(Coloplast社製)、又はVASELINEペトロリュームジェリー等の密閉性のドレッシング、或いは例えば、TEGADERM(3M社製)、DUODERM(3M社製)、又はOPSITE(Smith&Nepheu社製)等の非密閉性のドレッシングで覆うことができる。
【0088】
組成物内における抗原性物質の相対的な量及び投与スケジュールを適切に調節することによって、対象(例えば、ヒト又は動物)に効果的に投与することができる。こうした調節は、治療又は予防のいずれの場合であっても、対象に特有の疾患又は状態、投与経路、及び対象の身体的な条件に応じて行うことができる。組成物の対象への投与を簡素化するために、単位用量として、1種又は複数の抗原性物質を所定の量で含有させ、免疫処置の1回分とすることができる。単位用量中の抗原性物質の量は、約0.1μg〜約10mgに及ぶことができる。
【0089】
本発明の組成物は、政府機関(米国食品医薬品局(FDA)等)により規制されている生物学的製剤及びワクチンに関する薬品の製造規範(GMP)の下に製造することができる。
【0090】
経皮免疫処置用装置
本発明のシステムは、経皮免疫処置を促進するための装置を備える。本発明の原理によれば、装置を使用して対象の皮膚領域中に少なくとも1つのマイクロチャネルを形成し、それによって抗原性物質を含む組成物を効率よく送達する。
【0091】
「マイクロチャネル」という用語は、本発明の趣旨では、皮膚表面から角質層の全体又は相当な部分に延びる通路で、これを通して分子が拡散する通路を意味する。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗原性物質の経皮移動を促進する装置は、以下の1つ又は複数の米国特許に開示されている:第6148232号、第6597946号、第6611706号、第6711435号、第6708060号、及び第6615079号。これらの内容は、その全体が本明細書に参照として組み入れられている。通常、装置は、複数の電極を備える電極カートリッジと、当該電極が皮膚の付近にある場合に当該複数の電極間に電気エネルギーを与えるようになされ、通常電流又は1つ若しくは複数のスパークを発生させ、電極下の領域内の角質層を除去することができ、それによって少なくとも1つのマイクロチャネルを形成する制御部を備えた主要ユニットとを備える。電極カートリッジを搭載した主要ユニットは、本明細書ではViaDermとも呼ばれる。
【0093】
いくつかの実施形態によれば、装置の制御部は、電極に送られる電気エネルギーの強さ、頻度、及び/又は期間を制御する回路を備えており、電流又はスパークの発生を制御し、それによって1つ又は複数の形成されたマイクロチャネルの幅、深さ、及び形を制御する。制御部によって与えられる電気エネルギーは、高周波(RF)であることが好ましい。
【0094】
本発明の装置によって形成されたマイクロチャネルは、親水性であり、通常、約10〜約100ミクロンの直径、及び約20〜約300ミクロンの深さを有し、これによって皮膚を介して抗原性物質の拡散を促進する。
【0095】
本発明の原理によれば、電極カートリッジは、複数の電極を備えており、これによって電極配列を構成する。電気エネルギーを与えると、この電極配列が、対象の皮膚内に複数のマイクロチャネルを形成する。しかし、通常、角質層内に形成されたマイクロチャネルの全面積は、電極配列によって覆われる全面積に比べると小さい。「複数」という用語は、本明細書では2つ又はそれ以上の要素、すなわち、2つ又はそれ以上の電極或いは2つ又はそれ以上のマイクロチャネルを意味することを理解されたい。
【0096】
別の実施形態によれば、本発明の装置を対象の皮膚に当てている間に得られる圧力によって、電極に送られるエネルギーが起動する。そのような起動方式であれば、皮膚と密接に接触したときに限って電極の起動が起こり、マイクロチャネルを所望のごとく確実に形成させることができる。
【0097】
皮膚内に送達させようとする抗原性物質量に応じてマイクロチャネルの数及び寸法を調節することができる。
【0098】
電極は、着脱可能であることが好ましい。特定の実施形態によれば、電極カートリッジは、一度使用したら廃棄し、そのために主要ユニットへの取り付け及びその後の主要ユニットからの取り外しが簡単なように設計されている。
【0099】
本発明によれば、皮膚に対して電流を与えると、角質層が除去され、その結果マイクロチャネルが形成される。スパークの発生、スパーク発生の停止、又は特定の電流量を一種のフィードバックとして使用することができる。フィードバックがあれば、所望の深さに達したことがわかり、電流の付加を停止することになる。このような応用例では、好ましくは、電極は、角質層内において、所望の深さではあるが、それを越える深さには至らないようなマイクロチャネルの形成を促進するような形状をとるか、或いはそうなるようにカートリッジ内に保持される。別法として、スパークを発生させず、角質層内にマイクロチャネルを形成するように電流を構成することもできる。形成されたマイクロチャネルは、形及び大きさが均一である。
【0100】
本発明によれば、電極は、皮膚と接触し保持されてもよいし、皮膚から離れた皮膚の近傍で保持されてもよい。皮膚からの距離は約500ミクロンまでである。いくつかの実施形態によれば、角質層の除去は、約10kHz〜約4000kHz、好ましくは約10kHz〜約500kHz、さらに好ましくは100kHzの周波数を有する電流を付加して実施される。
【0101】
経皮免疫処置方法
本発明は、本発明の経皮送達システムを使用して、抗原特異的免疫応答を惹起する方法をさらに提供する。通常、抗原特異的応答を惹起する処置は、少なくとも1つのマイクロチャネルを形成する装置を皮膚に当てるステップを含む。マイクロチャネルを形成する前に、処置部位を消毒綿で消毒するのが好ましい。処置部位を乾かしてから処置するのが好ましい。
【0102】
本発明の例示的な実施形態においては、電極配列を含む装置を処置部位に当て、電極配列にRFエネルギーにより電流を通し、処置を開始する。原則的には、角質層の除去及びマイクロチャネルの形成は、数秒以内に完了する。マイクロチャネルが限定された深さまで形成されたら、装置を離す。本発明の組成物をマイクロチャネルが存在する処置済み皮膚の領域に塗布する。
【0103】
こうして、本発明により、対象の皮膚領域内に少なくも1つのマイクロチャネル形成するステップ;及び免疫原性有効量の抗原性物質を含む組成物を、少なくも1つのマイクロチャネルが存在する皮膚領域に塗布し、それによって抗原特異的免疫応答を惹起するステップを含む抗原特異的免疫応答を経皮的に惹起する方法が提供される。
【0104】
「経皮」送達という用語は、皮膚の皮膚層、すなわち角質層の下の表皮若しくは真皮の中に又はそれを越えて、或いは皮膚の皮下層内に又はそれを越えて、抗原性物質を送達することを意味する。このようにして、皮膚内の或いは皮膚を介して、血液系又はリンパ系内に抗原を送達することができる。したがって、経皮という用語は、皮膚を越えた送達という意味も含む。
【0105】
「免疫原性有効量」という用語によって、抗原性物質の量であって、抗原特異的免疫応答を惹起する量であることを意味する。
【0106】
本発明の組成物によって惹起される免疫応答は、液性免疫(すなわち、IgM、IgD、IgA1、IgA2、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、及び/又はIgG4等の抗原特異的抗体)及び/又は細胞性免疫(すなわち、CD4+T細胞、CD8+T細胞、細胞障害性リンパ球、Th1細胞及び/又はTh2等の抗原特異的リンパ球)エフェクターを含むことができる。さらに、免疫応答は、抗体依存性細胞性細胞障害(ADCC)を仲介するNK細胞を含むこともできる。抗体アイソタイプ(例えば、IgM、IgD、IgA1、IgA2、IgE、IgG1、IgG25、IgG3、及びIgG4)は、当技術分野で周知のごとく免疫測定法によって検出することが可能であり(以下の本明細書の実施例を参照)、及び/又は中和法によって検出することもできる。「免疫応答の惹起」、「ワクチン接種」、及び「免疫処置」という用語によって、液性免疫又は細胞性免疫の免疫応答の惹起を意味し、それらの用語は、本発明の明細書及び特許請求の範囲を通し交換可能に使われる。
【0107】
中和法に関しては、例えば、ウイルス中和法では、宿主細胞に血清の段階希釈液を加えた後、感染性ウイルスを投与し、感染状態を観察する。別法として、血清の段階希釈液を感染量のウイルスと共に培養した後、動物に接種し、その後このウイルス接種動物に感染の兆候が現われるか否かを観察する。
【0108】
本発明の経皮免疫処置システムは、動物又はヒトのいずれかを用いた投与モデルを使用して評価することができる。この方法は、抗原性物質による疾患から被験者を保護する免疫処置能力を評価するものである。このような保護が認められた場合、抗原特異的免疫応答が惹起されたことが実証されたことになる。
【0109】
本発明の原理によれば、免疫応答の惹起は、対象の状態又は疾患の治療に有用である。したがって、本発明のシステム及び方法によって惹起された免疫応答により、免疫保護、免疫抑制、自己免疫疾患の調節、ガンに対する免疫監視の増強、疾患予防のための予防的ワクチン接種並びに/又は確立された疾患の治療については、その治療のための或いは重症度の軽減及び/若しくは罹病期間短縮のための治療的ワクチン接種が得られる。抗原が病原体由来の場合、例えば、処置は、病原体による感染又は、毒素分泌によって生じる作用等の病原体の作用から対象を保護するワクチン接種となる。
【0110】
ある方法により、免疫応答が「惹起された」とは、免疫応答の規模又は動態の変化、免疫系(例えば、液性免疫及び/又は細胞性免疫)に惹起された要素の変化、疾患の症状の数及び/又は重症度に対する効果、対象の健康及び福祉(例えば、罹患率及び死亡率)に対する効果、或いはそれらの組合せが、統計的に有意である場合のことを指す。
【0111】
処置部位を抗炎症性副腎皮質ステロイド又は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を用いて保護し、心配される局所皮膚反応を低減させること或いは惹起される免疫応答を調節することが可能であることを理解されたい。同様に、腎皮質ステロイド又はNSAIDをパッチの材料、クリーム、軟膏等に含むこともできる。或いは、抗炎症性ステロイド又はNSAIDを、本発明の組成物の塗布後に塗布してもよい。IL−10、TNF−α、又はその他のいずれかの免疫調節物質を、抗炎症薬の代わりに使用してもよい。別法又は追加として、ピメクロリムス、タクロリムス、アロエベラ、又は局所皮膚反応を低減させると知られるその他のいずれかの薬物を、処置済み皮膚領域に塗布してもよいし、パッチに含めてもよい。
【0112】
ガン及び自己免疫疾患の治療法としても、ワクチン接種が使用されてきている。例えば、腫瘍抗原(例えば、前立腺特異抗原)を用いたワクチン接種は、抗体、CTL、及びリンパ球の増殖の形態で免疫応答を惹起し、それによって体内の免疫系に働きかけ腫瘍細胞を認識、死滅させることができる。メラノーマ、前立腺ガン、及びリンパ腫について、ワクチン接種に有用な腫瘍抗原が報告されている。
【0113】
T細胞受容体オリゴペプチドを用いたワクチン接種が、自己免疫疾患の進行を休止させる免疫応答を惹起することができる。米国特許第5552300号は、自己免疫疾患の治療に適した抗原を記載している。
【0114】
経皮免疫処置に続き、経腸的な、粘膜を介した、及び/或いはその他の非経口的な方法を用い、同一又は異なる抗原を用いて追加免疫することができることを理解されたい。経腸的な、粘膜を介した、及び/或いはその他の非経口的な経路による免疫処置に続き、経皮免疫処置を行い、同一又は異なる抗原を用いて追加免疫することができる。
【実施例】
【0115】
本明細書中ViaDermと呼ばれる、対象の皮膚内にマイクロチャネルを形成する装置を使用した経皮免疫処置を、広範に使用されている皮下(SC)及び筋肉内(IM)ワクチン接種経路と比較して、強力なワクチン投与システムとしての有用性を確立した。
【0116】
卵白アルブミン(OA)及び3価インフルエンザウイルス(TIV)を、例示的な抗原として使用し、抗原特異的免疫応答を惹起する本発明のシステムの効果を確立した。
【0117】
(実施例1)
卵白アルブミンを用いた経皮免疫処置
材料
卵白アルブミン溶液(50μg/ml水溶液、Sigma社製)を、IM及びSC注射に使用した。
卵白アルブミン溶液(10mg/ml)を、溶液による経皮的投与(VD−s)に使用した。
卵白アルブミン粉末(2mg)を、粉末による経皮的投与(VD−p)に使用した。
【0118】
溶液用の袋を以下の手順で作製した。シリコーン製シート(Sil−k、Degania Silicone社(イスラエル)製)上に、接着剤(Durotc 2516、National Starch社(オランダ)製)を均一に広げ、厚さ300μmの層を形成した。シートを4×4cmの正方形に切断した。各4×4cmの正方形の中心を切断し、正方形の穴(1.57×1.57cm)を形成した。4×4cmのシリコーン製正方形の1.57×1.57cmの穴の上に、2×2cmのSil−kシリコーン片を、7701プライマー及び401 1接着剤(Loctite社(アイルランド)製)を使用して接着した。最終的に、容積250μlの袋を得た。
【0119】
粉末用のパッチを以下の手順で作製した。卵白アルブミン粉末を皮膚上に散布した後、内張りBLF 2080(Dow社(米国)製)を含み、接着剤Durotak 2516(National Starch社(オランダ)製)又はTegaderm(商標)(3M社製)からなる層で覆われている固定用のパッチで覆った。
【0120】
方法
心臓内又は腹部大動脈穿刺によって、免疫処置の直前に、且つ免疫処置後第8日目から開始し毎週採血した。各検体は、へパリン抗凝結処理試験管中に1.3mlの血液を含む。血液検体を6000rpmで遠心分離し、血漿を得た。
【0121】
第1群:筋肉内注射群
ダンキンハートレイ(Dunkin Hartley)系モルモット、雄、体重600〜650g、7匹を用い、免疫処置の直前に麻酔処置し、採血(1.3ml)した。続いて、卵白アルブミン溶液を、右後肢の四頭筋に注射した(5μg;50μg/ml溶液を0.1ml使用)。免疫処置後第8、15、22、及び30日目に、各動物から採血した。第30日目において、再度、動物の右後肢の四頭筋に注射した(追加免疫処置:5μg;50μg/ml溶液を0.1ml使用)。免疫処置後第36、42、50、及び125日目に、各動物から採血した。
【0122】
第2群:皮下注射群
ダンキンハートレイ(Dunkin Hartley)系モルモット、雄、体重600〜650g、7匹を用い、免疫処置の直前に麻酔処置し、採血(1.3ml)した。続いて、卵白アルブミン溶液を、背側の首部に皮下注射した(5μg;50μg/mlを0.1ml使用)。免疫処置後第8、15、22、及び30日目に、各動物から採血した。第30日目において、再度、動物の背側の首部に皮下注射した(追加免疫処置:5μg;50μg/ml溶液を0.1ml使用)。免疫処置後第36、42、50、及び125日目に、各動物から採血した。
【0123】
第3群:ViaDerm処置済み皮膚に卵白アルブミン溶液袋を当てる経皮免疫処置群
ダンキンハートレイ(Dunkin Hartley)系モルモット、雄、体重600〜650g、7匹を用い、免疫処置の直前に麻酔処置し、採血(1.3ml)した。動物を処置装置で処置した。この装置は、本明細書中ViaDermと呼ばれ、高周波の電気エネルギーを利用しており、電極配列で構成され、モルモットの皮膚内にマイクロチャネルを形成する。(例えば、本明細書にその全体が参照として組み入れられている国際公開WO2004/039426、WO2004/039427、及びWO2004/039428を参照)。ViaDerm操作パラメーター:刺激の長さ(μ秒):700;初期振幅:330V;刺激の回数:5;同一皮膚領域上に処置を2度行う(200穴/cm2)。卵白アルブミン溶液袋(2mg;10mg/ml溶液を0.2ml使用)を処置済み皮膚領域に当てた。その24時間後、袋を取り除いた。免疫処置後第8、15、22、及び30日目に、各動物から採血した。第30日目において、再度、上記のごとくViaDermを用いた処置によって免疫処置した。すなわち、刺激の長さ(μ秒):700;初期振幅:330V;刺激の回数:5;同一皮膚領域上に処置を2度行う(200穴/cm2)。その後、卵白アルブミン溶液袋(2mg;10mg/ml溶液を0.2ml使用)を経皮的に投与した。免疫処置後第36、42、50、及び125日目に、各動物から採血した。
【0124】
第4群:ViaDerm処置済み皮膚に卵白アルブミン粉末パッチを投与する経皮免疫処置群
ダンキンハートレイ(Dunkin Hartley)系モルモット、雄、体重600〜650g、7匹を用い、免疫処置の直前に麻酔処置し、採血(1.3ml)した。動物をViaDermで処置した。ViaDerm操作パラメーター:刺激の長さ(μ秒):700;初期振幅:330V;刺激の回数:5;同一皮膚領域上に処置を2度行う(200穴/cm2)。卵白アルブミン粉末(2mg)を処理済み皮膚領域に散布し、へらを用いて均一にした後、固定用のパッチで覆った。その24時間後、パッチを取り除いた。免疫処置後第8、15、22、及び30日目に、各動物から採血した。第30日目において、再度、上記のごとくViaDermを用いた処置によって免疫処置した。すなわち、刺激の長さ(μ秒):700;初期振幅:330V;刺激の回数:5;同一皮膚領域上に処置を2度行う(200穴/cm2)。その後、卵白アルブミン粉末(2mg;10mg/mlを0.2ml使用)を上記のごとく経皮的に投与した。免疫処置後第36、42、50、及び125日目に、各動物から採血した。
【0125】
モルモット血漿検体中の抗卵白アルブミン抗体の検出:
96ウェルプレート(Maxisorp、Nunc社(デンマーク)製)を、卵白アルブミン(200μg/ml溶液を100μl使用)でコートした。コートは、4℃にて16〜18時間かけて行われた。洗浄液(0.05% Tween 20を含有するPBS)で3回洗浄し、未結合の卵白アルブミンを除去した。残存している吸着部位を、希釈/封鎖用液(0.05% Tween 20及び脱脂乳を含有するPBS)で、室温にて1時間かけて封鎖し、その後洗浄液で3回洗浄した。
【0126】
希釈/封鎖用液で段階希釈されているモルモットの血漿検体を、三つ組の卵白アルブミンでコートされたプレートに加え、22℃で1時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄し、未結合の抗体を除去した。モルモットIgG抗体を検出するために、希釈/封鎖用液(Jackson Immunoresearch Laboratories社製)中に希釈した(0.8mg/ml、10,000倍希釈)西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ抗モルモットIgG抗体(horseradish−peroxidase conjugated goat−anti guinea pig IgG antibody)と共にウェルを22℃で1時間インキュベートした。その後、洗浄液で3回洗浄した。IgA又はIgMモルモット抗体を検出するために、ウサギ抗モルモットIgA又はウサギ抗モルモットIgM抗体(両方ともLCLより購入、5,000倍希釈)それぞれと共にウェルを22℃で1時間インキュベートした。未結合の抗体を洗浄液で3回洗浄した。続いて、希釈/封鎖用液(Jackson Immunoresearch Laboratories社製)中に希釈した(5,000倍希釈)西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)標識ロバ抗ウサギIgGを22℃で1時間インキュベートした後、上記のごとく3回洗浄した。
【0127】
さらに、HRP基質(Substrate−Chromogen、TMB−ready to use、DAKO社製)を加え、22℃で30分間インキュベートした。1MH2SO4を用いて反応を停止させた。分光光度計により、シグナルを405nm及び595nmのバックグランドで検出した。
【0128】
力価の算出:検体の二つ組/三つ組のそれぞれについて、平均(AVG)吸光度(O.D.)のデータを算出した。同様に、通常(無処置すなわち免疫処置を施していない動物)の血漿検体を同等に希釈したものについても、AVG O.D.を求めた。免疫処置済み動物から得られたO.D.から、免疫無処置の動物から得られたAVG O.D.を差し引いた。
【0129】
内部標準(動物番号27、第36日目)について求めたデータを、対数グラフ上にプロットした。このプロットから、線状べき乗回帰(Linear−power regression)範囲を決定した。線状範囲から求めた回帰式からエンドポイント力価(力価)を計算した。カットオフO.D.(Y軸:「雑音」カットオフ)データを5倍ブランク標準(STD)として求めた。
【0130】
結果
表皮の水分喪失(TEWL,DERMALAB(商標)、Cortex Technology社(Hadsund、デンマーク)製)量を使用して、マイクロチャネル形成の効果を立証した。処置部位として適切と思われる部位のTEWL(Trans Epidermal Water Loss:経皮水分喪失)量を、ViaDerm処置の前(BVD)及びViaDerm処置の後(AVD)に測定した。TEWLの仕様(すなわち、処置前TEWL≦8.5g/h/m2;ΔTEWL≧20g/h/m2)に収まる部位のみを、試験対象と認めた。試験結果を表1及び2に示す。
【表1】
【表2】
【0131】
IgM:
一次免疫処置後第15日目におけるIgM抗体価によって、抗原提示に対する最も早期の応答を表す。図1に示すように、卵白アルブミンを皮下(SC)注射した動物群も、ViaDermで処置後、卵白アルブミン溶液袋を用いて卵白アルブミンに対する免疫処置をした(VD−s)動物群も、卵白アルブミンに特異的なIgM抗体を惹起した。しかし、SC群に検出されたIgM抗体価の方が、VD−s群より高かった。さらに、両群に、「未応答」動物、すなわち検出可能なIgM抗体価を示さない動物が認められ、発生率はほぼ同じであった。
【0132】
IgG:
抗原提示後の抗原特異的IgG抗体の出現により、抗原特異的免疫応答の成熟期が示唆される。
【0133】
図2は、免疫処置後第15日目の血漿中のIgG抗体価を示す。VD−s群とSC群との間に有意な差が認められた。図2に示すように、ViaDerm処置によるマイクロチャネル形成及びそれに続く卵白アルブミン溶液袋による処置(VD−s)により得られたIgG抗体価は、第15日目において、SC注射により得られたIgG抗体価に比べ、顕著に高かった。これらの結果から、ViaDerm処置によって、IgG抗体の出現時期を早めることができることは明らかである。本効果は、IgG抗体は、抗原特異的免疫応答における最も重要な抗体サブタイプであることから、非常に有用である。
【0134】
さらに、図2は、VD−s群及びSC群の全動物が、抗原特異的血漿IgG抗体に陽性であったことを示している。その上さらに、図2は、個々の動物間に少ないながら個体差があったことを示す。VD−s群の1匹(動物番号19)だけが、検出可能なIgG抗体価を示さなかった。この動物は、出血時に体調が悪く、翌日には死亡したことが判明した。19番の動物では、抗原特異的IgM及びIgAは、全く検出されなかった。
【0135】
追加免疫処置後第6日目(図3)において、VD−s群及びSC群の両方で、強力なIgG抗体の二次応答が認められ、血漿中の抗体価は、免疫処置後第15日目の抗体価の3.5倍(VD−s群)及び4.1倍(SC群)であった。VD−s群のIgG抗体価は、SC群の約5倍であり、これは、抗原特異的IgG抗体の惹起における本法の有効性を示唆していることにも注目されたい。筋肉内(IM)注射群のIgG抗体価は、同一用量の卵白アルブミンで免疫処置されたSC群を含むその他のいずれの群よりも非常に低かった。
【0136】
2種類の経皮処置用製剤を比較すると、VD−s群のIgG抗体価は、VD−p群(同一用量)の9.5倍であった。VD−p群のIgG抗体価は、SC群のIgG抗体価より低かった。SC群は、VD−p群より低い用量を投与されていた。
【0137】
追加免疫処置後第95日目(図4)においては、VD−s群及びSC群で、それぞれわずか1.3%及び6%のIgG抗体価が検出されたにすぎない。
【0138】
IgA:
SC群及びVD−s群における抗原提示後第15日目の血漿中の抗原特異的IgA抗体価を測定した(図5)。検出可能なIgA抗体価を示したのは、SC群では7匹中わずか2匹であったが、それに対してVD−s群では6匹中4匹であった。SC注射に比べ、VD−s処置がこのように優れていることは、追加免疫処置後第6日目に、さらに明らかになった(図6)。追加免疫処置後に検出可能なIgA抗体価を示さなかった動物(動物番号9及び11)は、免疫処置後第15日目でもIgA及びIgMのいずれも有していなかった。全動物(SC群及びVD−s群)が、抗原による追加免疫後第12日目においてIgA陽性であった(図6)。
【0139】
VD群が示したより高い抗体価は、個々の動物が血清陽性を高い頻度で示したことと併せて、ViaDermを使用する経皮免疫処置の有用性を示唆するものである。IgG及びIgA抗体の顕著な力価が認められるまでの時間は、ViaDerm処置群の方が、十分に確立され、広く受け入れられているSC及びIM経路より短く、これは、このような経皮経路の有効性を示唆している。
【0140】
VD抗原提示後の顕著な免疫応答には、全ての重要な血漿抗体アイソタイプ、すなわちIgM、IgG、及びIgAが含まれていた。これは、アイソタイプが効率よく切り換えられたことを示唆する。VD−s群とSC群において、IgG抗体価とIgM抗体価との間の相関性は認められなかった。例えば、一次応答では、VD−s群の方がSC群より、高いIgG抗体価を示したのに対し、SC群の方がVD−s群より、高いIgM抗体価を示した。特定の理論に縛られるわけではないが、この現象は、VD処置後に起きる非常に効率のよい細胞性応答によって説明することができる。VD処置後しばらくすると、白血球浸潤がマイクロチャネル周辺に強く認められるという本発明の出願人の以前の観察は、このようなデータを支持する。アイソタイプの切り換えには、抗原提示及び主に末梢リンパ節(PLN)に存在するヘルパーTリンパ球により差し伸べられた援助が関与することから、VD処置が、局所にある「専門の」抗原提示樹状細胞(APDC)を活性化することができると推測できる。VDの抗原提示後しばらくすると、APDCは、炎症状態のマイクロチャネル部位に浸潤し、続いて局所的にリンパ球を活性化することができる。しかし、これらの相互作用は、通常は、活性化されたAPDCの本来の遊走先であるPLNで起こるものであることを理解されたい。
【0141】
抗原提示の経路は、抗原特異的免疫応答を惹起するための重要なパラメーターであるが、抗原組成物及びアジュバントの使用も同等に重要である。本実施例では、DV処置を使用の際、アジュバントなしで、2種の卵白アルブミン組成物、すなわち、粉末(VD−p)及び溶液(VD−s)を、同一用量で用いた。VD−pがVD−sより低いIgG抗体価を示した点を考慮すると、ワクチン開発を成功させるには、抗原の製剤化に力点を置く必要がある点が重要である。VD−p群では、IgG抗体価が満足でない一方、IgA抗体価が印象的に高いことから、所望するように免疫応答を操作するには、抗原組成物が大きな役割を担っていることが強く示唆される。ある条件下では特定の抗体アイソタイプがそれ以外のアイソタイプより重要であることが多いことから、このような現象を利用することは非常に有用である可能性がある。例えば、粘膜疾患においては、このような粘膜から分泌されるIgA抗体を効果的に惹起するために、本発明の装置と共に乾燥抗原を効果的に投与することができる。
【0142】
したがって、ViaDerm技術を使用する経皮免疫処置は、非常に効率がよく、従来のワクチン接種経路に代わる技術を提供することができる。
【0143】
(実施例2)
3価インフルエンザワクチンを用いた経皮免疫処置
材料
ハートレイ(Hartley)系モルモット、雌(体重:>350g)、週齢:>7週(Charles River社より購入)
不活性化インフルエンザワクチン:A/Panama(パナマ)/2007/99、A/New Caledonia(ニューカレドニア)/20/99、及びB/Shangdong(山東)/7/97、ロット番号:001、2.046mg/ml、0.2046mg/mlに希釈して使用。
大腸菌(E.coli)熱不安定性エンテロトキシン(LT):FIN0023、1.906mg/ml
単層レーヨン製正方形パッチ、1cm2ViaDerm:電極、長さ:50及び100μm、円筒形
Tegaderm 1624W:3M5NDC8333−1624−05、大きさ:6cm×7cm
接着テープ:3M社製
加湿溶液:10%グリセロール/食塩水
【0144】
免疫処置
免疫処置に先立って、モルモットに剪毛処置を施し、ケタミン及びキシラジンで鎮静させた。100μlの1倍希釈ダルベッコリン酸緩衝液(DPBS)に溶かした0.5μgの赤血球凝結素(HA)(各株につき0.17μg)を、全動物の筋肉内に大量瞬時投与した。
【0145】
前処置
免疫処置の前日にモルモットに剪毛処置を施し、実験第22日目のパッチ投与の直前に再度剪毛処置を施した。免疫処置部位に油性ペンで印をつけ、剪毛処置後の皮膚に以下のような処置を施した。
・第1群及び第2群を、10%グリセロール/食塩水で加湿処置した。
・第3群及び第4群に、剪毛処置済みの乾燥皮膚を10%グリセロール/食塩水で加湿処置した状態で、ViaDerm装置(電極:<50μm)で2度前処置を施した。
・第5群及び第6群に、剪毛処置済みの乾燥皮膚で加湿処置をしていない状態で、ViaDerm装置(電極:<50μm)で2度前処置を施した。
・第7群及び第8群に、剪毛処置済みの乾燥皮膚で加湿処置をしていない状態で、ViaDerm装置(電極:100μm)で2度前処置を施した。
当技術分野で知られている方法(例えば、国際公開WO2004/039426、WO2004/039427、及びWO2004/039428を参照)で、前処置の前と直後にTWEL量を測定した。
【0146】
パッチの投与
15μlの1倍希釈ダルベッコリン酸緩衝液(DPBS)に溶かした15μgの赤血球凝結素(HA)(各株につき5μg)を、単独で(LTなし)又は1μgのLTと共に含有する1cm2のレーヨン製パッチを、前処置の直後に当てた。パッチが適切に接着するように、パッチを改変したTegadermでさらに覆った。パッチを接着テープで包んだ。18〜24間当てた後、パッチを取り除き、皮膚を温水ですすいだ。
【0147】
血清の採取
免疫前(免疫処置前)及び免疫後(第22日目及び第36日目)に、標準法を使用して眼窩神経叢から採血した。全血の遠心分離により血清を採取し、無細胞血清を表示済み試験管に移し、−20℃で凍結保存した。
【0148】
ELISA
当技術分野で周知のELISA法(例えば、本明細書にその全体が組み入れられている米国特許出願2004/018055を参照)を使用し、A/Panama、A/New Caledonia、及びB/Shangdongに対する血清中の全IgG抗体価を評価した。抗体力価は、ELISA単位(EU)で表示され、1EUは、405nmにおける吸光度1に相当する血清の希釈度である。
【0149】
結果
図7は、無処置又はViaDerm処置モルモットのTEWL量を示す。図7に示すように、長さ100μmの電極を用いたViaDerm又は長さ50μmの電極を用いたViaDermで処置したモルモットから得られたTEWL量は、無処置モルモットから得られたTEWL量より有意に高値であった。これらの結果から、モルモットの皮膚内にマイクロチャネルが形成されたことが確認できる。
【0150】
図8は、アジュバントとしての大腸菌(E.coli)熱不安定性エンテロトキシン(LT)の存在下又は非存在下におけるA/Panamaインフルエンザ株に対するモルモットの血清IgG抗体価を示す。これらのモルモットは、ViaDermで処置され、3価インフルエンザワクチンを含むパッチによる免疫処置を受けていた。図8に示すように、長さ50μm又は100μmのいずれかの電極を用いViaDerm処置をした後、インフルエンザパッチを当てたモルモットでは、ViaDerm無処置で、インフルエンザパッチ投与のモルモットに比較し、A/Panamaインフルエンザ株に対するIgG抗体価が有意に上昇した。このインフルエンザ株に対しては、アジュバントとしてのLT添加によるIgG抗体価の上昇は認められなかった。比較として、モルモットに筋肉内(IM)から免疫処置を施した。第1日目に0.5μgの3価インフルエンザワクチンを投与し、第22日目に同じワクチン(15μg)を用いIMで追加免疫した。図8に示すように、ViaDerm処置群のIgG抗体価は、IM注射モルモットのIgG抗体価と同等であるか、むしろ高値であり、これは、ViaDermを使用する経皮免疫処置の効率が、IM免疫処置と同程度であることを示唆している。
【0151】
図9及び図10に示すように、A/New Caledonia及びB/Shangdongに対して血清中のIgG抗体価を求めた場合でも、同様の結果が得られている。図9及び図10に示すように、これらのいずれの株に対しても、ViaDerm処置後にインフルエンザパッチを投与したモルモットにおいては、ViaDerm無処置で、インフルエンザパッチ投与のモルモットに比較し、IgG抗体価が有意に上昇した。アジュバントとしてのLT添加によるIgG抗体価の上昇は認められなかった。ViaDerm処置動物のIgG抗体価は、3価インフルエンザワクチンを筋肉内注射したモルモットに認められたIgG抗体価と同等であった。
【0152】
当業者であれば、上記の本明細書の具体的内容によって本発明が限定されるものではなく、むしろ本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義されるものであることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】卵白アルブミンを用いた皮下的な一次免疫処置(S.C.)又はViaDerm処置後卵白アルブミン溶液を用いた経皮的な免疫処置(VD−s)のいずれかによる処置後第15日目において、モルモットに認められた血漿IgM抗体価を示す図である。
【図2】卵白アルブミンを用いた皮下的な一次免疫処置(S.C.)又はViaDerm処置後卵白アルブミン溶液を用いた経皮的な免疫処置(VD−s)のいずれかによる処置後第15日目において、モルモットに認められた血漿IgG抗体価を示す図である。
【図3A】追加免疫処置後第6日目(一次免疫処置後第36日目)において、モルモットに認められた血漿IgA及びIgG抗体価を示す図である。卵白アルブミン溶液を用いた筋肉内免疫処置(i.m.)又は皮下免疫処置(S.C.)による追加免疫処置後第6日目(一次免疫処置後第36日目)における血漿IgA及びIgG抗体価を示す図である。
【図3B】追加免疫処置後第6日目(一次免疫処置後第36日目)において、モルモットに認められた血漿IgA及びIgG抗体価を示す図である。ViaDerm処置後、卵白アルブミン溶液(VD−s)又は卵白アルブミン粉末(VD−p)のいずれかを用いた経皮免疫処置による追加免疫処置後第6日目(第36日目)における血漿IgA及びIgG抗体価を示す図である。
【図4】卵白アルブミンを用いた皮下免疫処置(S.C.)又はViaDerm処置後卵白アルブミン溶液を用いた経皮免疫処置(VD−s)のいずれかによる追加免疫処置後第95日目(一次免疫処置後第125日目)において、モルモットに認められた血漿IgG抗体価を示す図である。
【図5】卵白アルブミンを用いた皮下的な一次免疫処置(S.C.)又はViaDerm処置後卵白アルブミン溶液を用いた経皮的な免疫処置(VD−s)のいずれかによる処置後第15日目において、モルモットに認められた血漿IgA抗体価を示す図である。
【図6】卵白アルブミンを用いた皮下免疫処置(S.C.)又はViaDerm処置後卵白アルブミン溶液を用いた経皮免疫処置(VD−s)のいずれかによる追加免疫処置後第12日目(一次免疫処置後第42日目)において、モルモットに認められた血漿IgA抗体価を示す図である。
【図7】長さ50ミクロン若しくは100ミクロンのいずれかのViaDerm電極を用いて処置したモルモット及び対照のモルモットにおける経皮水分喪失(Trans Epidermal Water Loss:TEWL)量を示す図である。
【図8】長さ50ミクロン若しくは100ミクロンのいずれかのViaDerm電極を用いて処置後、大腸菌熱不安定性外毒素(LT)存在下又は非存在下で、インフルエンザワクチンパッチを用いて免疫処置したモルモットに認められたインフルエンザA/Panama株に対する血清IgG抗体価を示す図である。対照群を、LT存在下又は非存在下で、インフルエンザワクチンパッチを用いて免疫処置した。インフルエンザワクチンを用い筋肉内免疫処置後、同じワクチンを用いて筋肉内から追加免疫処置をしたモルモット群も示されている。
【図9】長さ50ミクロン若しくは100ミクロンのいずれかのViaDerm電極を用いて処置後、LT存在下又は非存在下で、インフルエンザワクチンパッチを用いて免疫処置したモルモットに認められたインフルエンザA/Caledonia株に対する血清IgG抗体価を示す図である。対照群を、LT存在下又は非存在下で、インフルエンザワクチンパッチを用いて免疫処置した。インフルエンザワクチンを用い筋肉内免疫処置後、同じワクチンを用いて筋肉内から追加免疫処置をしたモルモット群も示されている。
【図10】長さ50ミクロン若しくは100ミクロンのいずれかのViaDerm電極を用いて処置後、LT存在下又は非存在下で、インフルエンザワクチンパッチを用いて免疫処置したモルモットに認められたインフルエンザB/Shangdong株に対する血清IgG抗体価を示す図である。対照群を、LT存在下又は非存在下で、インフルエンザワクチンパッチを用いて免疫処置した。インフルエンザワクチンを用い筋肉内免疫処置後、同じワクチンを用いて筋肉内から追加免疫処置をしたモルモット群も示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の皮膚の一領域を介した抗原の経皮送達を促進するための装置であって、機械的手段以外の手段を用いて、対象の皮膚領域内に複数のマイクロチャネルを形成する装置と、免疫原性有効量の抗原を含む組成物とを備える抗原特異的免疫応答を惹起するための経皮送達システム。
【請求項2】
前記装置が、
a.複数の電極を備える電極カートリッジ;及び
b.前記複数の電極が皮膚の付近にある場合に前記複数の電極間に電気エネルギーを与えるようになされ、通常電流又は1つ若しくは複数のスパークを発生させ、電極下の領域内の角質層を除去することができ、それによって複数のマイクロチャネルを形成する制御部を備えた主要ユニット
を備える請求項1に記載の経皮送達システム。
【請求項3】
電極カートリッジが、着脱可能である請求項2に記載の経皮送達システム。
【請求項4】
電気エネルギーが、高周波である請求項2に記載の経皮送達システム。
【請求項5】
抗原が、細菌性抗原、ウイルス性抗原、真菌性抗原、原虫性抗原、腫瘍抗原、アレルゲン及び自己抗原からなる群から選択される請求項1に記載の経皮送達システム。
【請求項6】
細菌性抗原が、炭疽菌、カンピロバクター属、コレラ菌、クロストリジウム属、ジフテリア菌、腸管出血性大腸菌、腸内毒素原性大腸菌、ジアルジア属、淋菌、ピロリ菌、インフルエンザ菌B型、無莢膜型インフルエンザ菌、レジオネラ菌、髄膜炎菌、放線菌、百日咳菌、肺炎菌、サルモネラ菌、赤痢菌、ブドウ球菌、A群ベータ型溶血性連鎖球菌、B型連鎖球菌、破傷風菌、ライム菌、及びエルシニア属からなる群から選択される細菌に由来する請求項5に記載の経皮送達システム。
【請求項7】
ウイルス性抗原が、アデノウイルス、エボラウイルス、腸内ウイルス、ハンタウイルス、肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、インフルエンザウイルス、はしかウイルス、日本馬脳炎ウイルス、パピローマウイルス、パロボウイルス B19、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ロタウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ワクシニアウイルス、黄熱病ウイルス、風疹ウイルス、水疱ウイルス、水痘ウイルス、及びおたふく風邪ウイルスからなる群から選択されるウイルスに由来する請求項5に記載の経皮送達システム。
【請求項8】
真菌性抗原が、体部白癬菌、爪白癬菌、スポロトリクム症菌、アスペルギルス症菌、及びカンジダ菌からなる群から選択される真菌に由来する請求項5に記載の経皮送達システム。
【請求項9】
原虫性抗原が、赤痢アメーバ、マラリア原虫、及びリーシュマニアからなる群から選択される原虫に由来する請求項5に記載の経皮送達システム。
【請求項10】
抗原が、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、脂質、リン脂質、炭水化物、糖脂質、及びそれらの複合体からなる群から選択される請求項5に記載の経皮送達システム。
【請求項11】
組成物が、乾燥剤形又は液体剤形に製剤されている請求項1に記載の経皮送達システム。
【請求項12】
乾燥剤形が、粉末、フィルム、ペレット、錠剤、及びパッチからなる群から選択される請求項13に記載の経皮送達システム。
【請求項13】
パッチが、乾燥パッチ及び湿潤パッチからなる群から選択される請求項14に記載の経皮送達システム。
【請求項14】
液体剤形が、溶液、懸濁液、乳濁液、クリーム、ジェル、ローション、軟膏、及びペーストからなる群から選択される請求項13に記載の経皮送達システム。
【請求項15】
組成物が、アジュバントをさらに含む請求項1に記載の経皮送達システム。
【請求項16】
対象に抗原特異的免疫応答を経皮的に惹起する方法であって、
(i)機械的手段以外の手段を用いて、対象の皮膚領域内に複数のマイクロチャネル形成するステップ;及び
(ii)免疫原性有効量の抗原と薬学的に許容される担体とを含む組成物を、複数のマイクロチャネルが存在する皮膚領域に局所適用し、それによって抗原特異的免疫応答を惹起するステップ
を含む方法。
【請求項17】
抗原が、細菌性抗原、ウイルス性抗原、真菌性抗原、原虫性抗原、腫瘍抗原、アレルゲン、及び自己抗原からなる群から選択される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
細菌性抗原が、炭疽菌、カンピロバクター属、コレラ菌、クロストリジウム属、ジフテリア菌、腸管出血性大腸菌、腸内毒素原性大腸菌、ジアルジア属、淋菌、ピロリ菌、インフルエンザ菌B型、無莢膜型インフルエンザ菌、レジオネラ菌、髄膜炎菌、放線菌、百日咳菌、肺炎菌、サルモネラ菌、赤痢菌、ブドウ球菌、A群ベータ型溶血性連鎖球菌、B型連鎖球菌、破傷風菌、ライム菌、及びエルシニア属からなる群から選択される細菌に由来する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ウイルス性抗原が、アデノウイルス、エボラウイルス、腸内ウイルス、ハンタウイルス、肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、インフルエンザウイルス、はしかウイルス、日本馬脳炎ウイルス、パピローマウイルス、パロボウイルス B19、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ロタウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ワクシニアウイルス、黄熱病ウイルス、風疹ウイルス、水疱ウイルス、水痘ウイルス、及びおたふく風邪ウイルスからなる群から選択されるウイルスに由来する請求項17に記載の方法。
【請求項20】
真菌性抗原が、体部白癬菌、爪白癬菌、スポロトリクム症菌、アスペルギルス症菌、及びカンジダ菌からなる群から選択される真菌に由来する請求項17に記載の方法。
【請求項21】
原虫性抗原が、赤痢アメーバ、マラリア原虫、及びリーシュマニアからなる群から選択される原虫に由来する請求項17に記載の方法。
【請求項22】
抗原が、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、脂質、リン脂質、炭水化物、糖脂質、及びそれらの複合体から選択される請求項17に記載の方法。
【請求項23】
抗原特異的免疫応答が、抗原特異的抗体を含む請求項16に記載の方法。
【請求項24】
抗原特異的免疫応答が、抗原特異的リンパ球を含む請求項16に記載の方法。
【請求項25】
組成物が、乾燥剤形又は液体剤形に製剤されている請求項16に記載の方法。
【請求項26】
乾燥剤形が、粉末、フィルム、ペレット、錠剤、及びパッチからなる群から選択される請求項25に記載の方法。
【請求項27】
パッチが、乾燥パッチ及び湿潤パッチからなる群から選択される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
液体剤形が、溶液、懸濁液、乳濁液、クリーム、ジェル、ローション、軟膏、及びペーストからなる群から選択される請求項25に記載の方法。
【請求項29】
複数のマイクロチャネルの形成が、
a.複数の電極を備える電極カートリッジ;及び
c.前記複数の電極が皮膚の付近にある場合に前記複数の電極間に電気エネルギーを与えるようになされ、通常電流又は1つ若しくは複数のスパークを発生させ、電極下の領域内の角質層を除去することができ、それによって複数のマイクロチャネルを形成する制御部を備えた主要ユニット
を備える装置によってもたらされる請求項16に記載の方法。
【請求項30】
電気エネルギーが、高周波である請求項29に記載の方法。
【請求項31】
組成物が、アジュバントをさらに含む請求項16に記載の方法。
【請求項32】
免疫保護、免疫抑制、自己免疫疾患の調節、ガンに対する免疫監視の増強、予防的ワクチン接種、及び治療的ワクチン接種に有用である請求項16に記載の方法。
【請求項1】
対象の皮膚の一領域を介した抗原の経皮送達を促進するための装置であって、機械的手段以外の手段を用いて、対象の皮膚領域内に複数のマイクロチャネルを形成する装置と、免疫原性有効量の抗原を含む組成物とを備える抗原特異的免疫応答を惹起するための経皮送達システム。
【請求項2】
前記装置が、
a.複数の電極を備える電極カートリッジ;及び
b.前記複数の電極が皮膚の付近にある場合に前記複数の電極間に電気エネルギーを与えるようになされ、通常電流又は1つ若しくは複数のスパークを発生させ、電極下の領域内の角質層を除去することができ、それによって複数のマイクロチャネルを形成する制御部を備えた主要ユニット
を備える請求項1に記載の経皮送達システム。
【請求項3】
電極カートリッジが、着脱可能である請求項2に記載の経皮送達システム。
【請求項4】
電気エネルギーが、高周波である請求項2に記載の経皮送達システム。
【請求項5】
抗原が、細菌性抗原、ウイルス性抗原、真菌性抗原、原虫性抗原、腫瘍抗原、アレルゲン及び自己抗原からなる群から選択される請求項1に記載の経皮送達システム。
【請求項6】
細菌性抗原が、炭疽菌、カンピロバクター属、コレラ菌、クロストリジウム属、ジフテリア菌、腸管出血性大腸菌、腸内毒素原性大腸菌、ジアルジア属、淋菌、ピロリ菌、インフルエンザ菌B型、無莢膜型インフルエンザ菌、レジオネラ菌、髄膜炎菌、放線菌、百日咳菌、肺炎菌、サルモネラ菌、赤痢菌、ブドウ球菌、A群ベータ型溶血性連鎖球菌、B型連鎖球菌、破傷風菌、ライム菌、及びエルシニア属からなる群から選択される細菌に由来する請求項5に記載の経皮送達システム。
【請求項7】
ウイルス性抗原が、アデノウイルス、エボラウイルス、腸内ウイルス、ハンタウイルス、肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、インフルエンザウイルス、はしかウイルス、日本馬脳炎ウイルス、パピローマウイルス、パロボウイルス B19、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ロタウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ワクシニアウイルス、黄熱病ウイルス、風疹ウイルス、水疱ウイルス、水痘ウイルス、及びおたふく風邪ウイルスからなる群から選択されるウイルスに由来する請求項5に記載の経皮送達システム。
【請求項8】
真菌性抗原が、体部白癬菌、爪白癬菌、スポロトリクム症菌、アスペルギルス症菌、及びカンジダ菌からなる群から選択される真菌に由来する請求項5に記載の経皮送達システム。
【請求項9】
原虫性抗原が、赤痢アメーバ、マラリア原虫、及びリーシュマニアからなる群から選択される原虫に由来する請求項5に記載の経皮送達システム。
【請求項10】
抗原が、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、脂質、リン脂質、炭水化物、糖脂質、及びそれらの複合体からなる群から選択される請求項5に記載の経皮送達システム。
【請求項11】
組成物が、乾燥剤形又は液体剤形に製剤されている請求項1に記載の経皮送達システム。
【請求項12】
乾燥剤形が、粉末、フィルム、ペレット、錠剤、及びパッチからなる群から選択される請求項13に記載の経皮送達システム。
【請求項13】
パッチが、乾燥パッチ及び湿潤パッチからなる群から選択される請求項14に記載の経皮送達システム。
【請求項14】
液体剤形が、溶液、懸濁液、乳濁液、クリーム、ジェル、ローション、軟膏、及びペーストからなる群から選択される請求項13に記載の経皮送達システム。
【請求項15】
組成物が、アジュバントをさらに含む請求項1に記載の経皮送達システム。
【請求項16】
対象に抗原特異的免疫応答を経皮的に惹起する方法であって、
(i)機械的手段以外の手段を用いて、対象の皮膚領域内に複数のマイクロチャネル形成するステップ;及び
(ii)免疫原性有効量の抗原と薬学的に許容される担体とを含む組成物を、複数のマイクロチャネルが存在する皮膚領域に局所適用し、それによって抗原特異的免疫応答を惹起するステップ
を含む方法。
【請求項17】
抗原が、細菌性抗原、ウイルス性抗原、真菌性抗原、原虫性抗原、腫瘍抗原、アレルゲン、及び自己抗原からなる群から選択される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
細菌性抗原が、炭疽菌、カンピロバクター属、コレラ菌、クロストリジウム属、ジフテリア菌、腸管出血性大腸菌、腸内毒素原性大腸菌、ジアルジア属、淋菌、ピロリ菌、インフルエンザ菌B型、無莢膜型インフルエンザ菌、レジオネラ菌、髄膜炎菌、放線菌、百日咳菌、肺炎菌、サルモネラ菌、赤痢菌、ブドウ球菌、A群ベータ型溶血性連鎖球菌、B型連鎖球菌、破傷風菌、ライム菌、及びエルシニア属からなる群から選択される細菌に由来する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ウイルス性抗原が、アデノウイルス、エボラウイルス、腸内ウイルス、ハンタウイルス、肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、インフルエンザウイルス、はしかウイルス、日本馬脳炎ウイルス、パピローマウイルス、パロボウイルス B19、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ロタウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ワクシニアウイルス、黄熱病ウイルス、風疹ウイルス、水疱ウイルス、水痘ウイルス、及びおたふく風邪ウイルスからなる群から選択されるウイルスに由来する請求項17に記載の方法。
【請求項20】
真菌性抗原が、体部白癬菌、爪白癬菌、スポロトリクム症菌、アスペルギルス症菌、及びカンジダ菌からなる群から選択される真菌に由来する請求項17に記載の方法。
【請求項21】
原虫性抗原が、赤痢アメーバ、マラリア原虫、及びリーシュマニアからなる群から選択される原虫に由来する請求項17に記載の方法。
【請求項22】
抗原が、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、脂質、リン脂質、炭水化物、糖脂質、及びそれらの複合体から選択される請求項17に記載の方法。
【請求項23】
抗原特異的免疫応答が、抗原特異的抗体を含む請求項16に記載の方法。
【請求項24】
抗原特異的免疫応答が、抗原特異的リンパ球を含む請求項16に記載の方法。
【請求項25】
組成物が、乾燥剤形又は液体剤形に製剤されている請求項16に記載の方法。
【請求項26】
乾燥剤形が、粉末、フィルム、ペレット、錠剤、及びパッチからなる群から選択される請求項25に記載の方法。
【請求項27】
パッチが、乾燥パッチ及び湿潤パッチからなる群から選択される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
液体剤形が、溶液、懸濁液、乳濁液、クリーム、ジェル、ローション、軟膏、及びペーストからなる群から選択される請求項25に記載の方法。
【請求項29】
複数のマイクロチャネルの形成が、
a.複数の電極を備える電極カートリッジ;及び
c.前記複数の電極が皮膚の付近にある場合に前記複数の電極間に電気エネルギーを与えるようになされ、通常電流又は1つ若しくは複数のスパークを発生させ、電極下の領域内の角質層を除去することができ、それによって複数のマイクロチャネルを形成する制御部を備えた主要ユニット
を備える装置によってもたらされる請求項16に記載の方法。
【請求項30】
電気エネルギーが、高周波である請求項29に記載の方法。
【請求項31】
組成物が、アジュバントをさらに含む請求項16に記載の方法。
【請求項32】
免疫保護、免疫抑制、自己免疫疾患の調節、ガンに対する免疫監視の増強、予防的ワクチン接種、及び治療的ワクチン接種に有用である請求項16に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2008−505685(P2008−505685A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519978(P2007−519978)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【国際出願番号】PCT/IL2005/000710
【国際公開番号】WO2006/003659
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(505474669)トランスファーマ メディカル リミテッド (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【国際出願番号】PCT/IL2005/000710
【国際公開番号】WO2006/003659
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(505474669)トランスファーマ メディカル リミテッド (11)
【Fターム(参考)】
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