説明

経皮吸収促進剤、及びこれを含有する皮膚外用製剤

【課題】皮膚に対して刺激が低く、薬理活性成分の経皮吸収を促進する物質の提供。
【解決手段】イソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、及び2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種を経皮吸収促進剤として配合する。更に、好ましくは向精神成分、抗炎症成分、鎮痛成分、解熱成分、美白成分、育毛成分などの薬理活性成分配合して、経皮吸収性の改善された皮膚外用製剤とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬理活性成分を経皮投与するための経皮吸収促進剤及び当該経皮吸収促進剤を含有してなる皮膚外用製剤に関する。さらに詳しくは、経皮吸収性及び安全性ともに優れ、所望の薬理活性物質を局所部位、あるいは循環系を通して全身に速やかに送達させ、各種疾患の治療に有効な経皮吸収促進剤及び皮膚外用製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医薬品の投与法として、皮膚を通して全身に所望の薬物を送達させ、長時間にわたって治療効果を発現しうる経皮治療システム(TTS)が開発され、狭心症治療用のニトログリセリンや硝酸イソソルビド、高血圧治療用のクロニジン、更年期障害治療用のエストラジオールなどが既に実用化されている。しかしながら、薬物の経皮投与法は、経口や注射による投与法に比べて薬理活性成分の吸収が著しく低いという欠点があり、特に薬理活性成分が水溶性である場合にはそれが顕著である。そのため皮膚からの薬物吸収のバリヤーである角質層に作用し、皮膚のバリヤー性を低下させて経皮吸収性を向上させる経皮吸収促進剤の開発が盛んになされている。
このような経皮吸収促進剤として、例えばこれまでに、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン溶媒(特許文献1)、陰イオン性/または両性界面活性剤(特許文献2,3)、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン(AZONE)(特許文献4)が知られている。また、テルペン化合物として、l−カルボン、メントン、ピペリトン等のテルペンケトン(特許文献5)、d−リモネン(特許文献6)が知られている。さらに、p−メンタン誘導体として、l‐メントール(特許文献7)、p−メンタン−3,8−ジオール、3−l−メントキシ−1,2−ジオール(特許文献8、9)、N−置換−p−メンタン−3−カルボキシアミド(特許文献10)が知られている。
その他、グリコール類、オレイン酸などの脂肪酸、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテートなどの脂肪酸エステル類等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3,551,554号
【特許文献2】特開昭51−32724号公報
【特許文献3】特開昭52−83914号公報
【特許文献4】特開昭52−1035号公報
【特許文献5】特開平2−193932号公報
【特許文献6】特開平2−207024号公報
【特許文献7】特開平4−217926号公報
【特許文献8】特開2000−143475号公報
【特許文献9】特開2000−143543号公報
【特許文献10】特開2001−58961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜10に記載される従来の経皮吸収促進剤は、経皮吸収促進効果、皮膚刺激等の安全性、強烈な臭い等の使用性の3点から十分なものとはいえず、安全で、使用性に優れ、かつ効果の高い経皮吸収促進剤の開発が望まれていた。
本発明は、皮膚外用製剤における上記した問題点に着目してなされたものであり、経皮吸収促進効果に優れ、かつ安全性、使用性の高い経皮吸収促進剤、並びに、このものを配合した皮膚外用製剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の優れた特徴を有する経皮吸収促進剤を開発すべく鋭意研究を行った結果、イソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールが薬物の経皮吸収を著しく促進させるということを見いだした。これらは、p−メンタンの誘導体であり、冷感作用を有する物質や清涼感を与える物質として知られている。例えば、イソプレゴールは、冷感作用を有する物質(特開平6−65023号公報)として、2−(メントキシ)エタノールは、冷感効果を有し、冷感持続性に優れた物質(特開2005−343915号公報)として、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールは、さわやかな冷感または清涼感を与える物質(特開平7−82200号公報)として知られている。しかし、これらの物質の顕著な経皮吸収促進作用を見出した例はなく、ましてやこの物質を経皮吸収促進剤として薬理活性成分を経皮吸収させるという試みは、本発明者等が初めてなし得たことであり、また、従来公知のp−メンタンの誘導体と比較しても優れた効果を見出したものである。
【0006】
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1]イソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、及び2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有する経皮吸収促進剤。
[2]メントール、メントン、カンファー、プレゴール、シネオール、3−メントキシプロパン−1,2−ジオール、N−アルキル−p−メンタン−3−カルボキサミド、3−メントキシ−2−メチルプロパン−1,2−ジオール、p−メンタン−3,8−ジオール、3−メントキシプロパン−1−オール、4−l−メントキシブタン−1−オール(3−ヒドロキシブタン酸メンチル)、3−ヒドロキシブタン酸メンチル、1−(2−ヒドロキシ−4−メチル−シクロヘキシル)エタノン、乳酸メンチル、メントールグリセリンケタール、N−メチル−2,2−イソプロピルメチル−3−メチルブタンアミド、グリオキシル酸メンチル、コハク酸メンチル、グルタル酸メンチル、ペパーミントオイル、スペアーミントオイル、ユーカリプタスオイル及びハッカオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種の成分をさらに含有すること特徴とする上記[1]記載の経皮吸収促進剤。
[3]バニリルエチルエーテル、バニリルプロピルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、カプサイシン、ギンゲロール、バニリルブチルエーテル、4−(1−メントキシ−メチル)−2−フェニル−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシ−メチル)−2−(3’,4’−ジヒドロキシ−フェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシ−メチル)−2−(2’−ヒドロキシ−3’−メトキシ−フェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシ−メチル)−2−(4’−メトキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシ−メチル)−2−(3’,4’−メチレンジオキシ−フェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシ−メチル)−2−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、トウガラシ油、トウガラシオレオレジン、ノニル酸バニリルアミド、ジャンブーオレオレジン、サンショウエキス、サアンショール−I、サアンショール−II、サンショウアミド、黒胡椒エキス、カビシン、ピペリン及びスピラントールからなる群より選ばれる少なくとも1種の温感物質をさらに含有すること特徴とする上記[1]又は[2]に記載の経皮吸収促進剤。
[4]上記[1]乃至[3]のいずれか1に記載の経皮吸収促進剤を0.01〜50質量%含有することを特徴とする皮膚外用製剤。
[5]向精神成分、抗炎症成分、鎮痛成分、解熱成分、美白成分及び育毛成分からなる群より選ばれる少なくとも1種の薬理活性成分をさらに含有することを特徴とする上記[4]記載の皮膚外用製剤。
[6]上記[1]乃至[3]のいずれか1に記載の経皮吸収促進剤を有効成分として用いて、向精神成分、抗炎症成分、鎮痛成分、解熱成分、美白成分及び育毛成分からなる群より選ばれる少なくとも1種の薬理活性成分の経皮透過性を促進・制御する方法。
[7]上記[1]乃至[3]のいずれか1に記載の経皮吸収促進剤を有効成分として用いて、冷感効果を制御する方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の経皮吸収促進剤及び皮膚外用製剤は、イソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールを配合することにより、薬物の経皮吸収を著しく増大させるものである。また、本発明の経皮吸収促進剤及び皮膚外用製剤は、臭いも少なく、皮膚刺激などの安全性にも優れ、所望の清涼感や温感を付与することをも可能としたものである。すなわち、本発明の経皮吸収促進剤を配合してなる皮膚外用製剤は、安全で使用性に優れ、かつ所望の薬物や薬理活性成分を局所部位、あるいは循環系を通して全身に速やかに送達することが可能なため、各種疾患の治療に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の経皮吸収促進剤及び皮膚外用製剤に用いられるイソプレゴールは、ラセミ体であってもよいし、光学活性体であってもよい。好ましい光学活性体としては、l−(−)−イソプレゴールが挙げられる。
また、本発明で用いられる2−(メントキシ)エタノールは、ラセミ体であってもよいし、光学活性体であってもよい。好ましい光学活性体としては、2−(l−メントキシ)エタノールが挙げられる。
さらに、本発明で用いられる2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールは、ラセミ体であってもよいし、光学活性体であってもよい。好ましい光学活性体としては、2−メチル−3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオールが挙げられる。
これらイソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0009】
また、本発明においては、イソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールに加えて、これら以外の冷感作用を有する物質や清涼感を与える物質と併用することにより、経皮吸収促進作用を高めて、所望の清涼感や温感を付与した経皮吸収促進剤を調製することができる。
イソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールに加えて、これら以外の冷感作用を有する物質や清涼感を与える物質としては、従来公知あるいは周知の冷感物質を含め冷感効果を有する物質や周知の清涼物質を含め清涼効果を有する物質であればよく特に限定されるものではないが、例えば、メントール、メントン、カンファー、プレゴール、シネオール、ハッカオイル、3−メントキシプロパン−1,2−ジオール、N−アルキル−p−メンタン−3−カルボキサミド、3−メントキシ−2−メチルプロパン−1,2−ジオール、p−メンタン−3,8−ジオール、3−メントキシプロパン−1−オール、4−l−メントキシブタン−1−オール(3−ヒドロキシブタン酸メンチル)、3−ヒドロキシブタン酸メンチル、1−(2−ヒドロキシ−4−メチル−シクロヘキシル)エタノン、乳酸メンチル、メントールグリセリンケタール、N−メチル−2,2−イソプロピルメチル−3−メチルブタンアミド、グリオキシル酸メンチル、コハク酸メンチル、グルタル酸メンチル、ペパーミントオイル、スペアーミントオイル、ユーカリプタスオイル、ハッカオイルを挙げることができる。これらは一種または二種以上を適宜配合して用いることができる。
【0010】
本発明においては、イソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールとこれら以外の冷感作用を有する物質や清涼感を与える物質は、本発明の効果を損なわない範囲において任意の割合で用いることができるが、通常、イソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールに対してこれら以外の冷感作用を有する物質や清涼感を与える物質は0.001〜10倍量、好ましくは0.01〜5倍量の配合量である。
【0011】
本発明においては、追加成分として温感物質と併用することにより、経皮吸収促進作用を高めて、所望の温感あるいは清涼感を付与した経皮吸収促進剤を調製することができる。
温感物質としては、従来公知あるいは周知の温感物質を含め温感効果を有する物質であればよく特に限定されるものではないが、例えば、バニリルエチルエーテル、バニリルプロピルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、カプサイシン、ギンゲロール、バニリルブチルエーテル、4−(1−メントキシ−メチル)−2−フェニル−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシ−メチル)−2−(3’,4’−ジヒドロキシ−フェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシ−メチル)−2−(2’−ヒドロキシ−3’−メトキシ−フェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシ−メチル)−2−(4’−メトキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシ−メチル)−2−(3’,4’−メチレンジオキシ−フェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシ−メチル)−2−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、トウガラシ油、トウガラシオレオレジン、ノニル酸バニリルアミド、ジャンブーオレオレジン、サンショウエキス、サアンショール−I、サアンショール−II、サンショウアミド、黒胡椒エキス、カビシン、ピペリン及びスピラントールを挙げることができる。これらは一種または二種以上を適宜配合して用いることができる。
本発明においては、温感物質は、本発明の効果を損なわない範囲において任意の割合で用いることができるが、通常、イソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールに対して、0.0001〜10倍量、好ましくは0.001〜5倍量の配合量である。
【0012】
本発明の皮膚外用製剤において用いられる薬理活性成分としては、イソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールと併用することにより経皮吸収促進作用がみられるものであれば特に制限はなく、従来公知の薬物の中から適宜選択して用いることができる。このような薬理活性成分としては、例えばプレドニゾロン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、フルオシノロンアセトニド、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、酪酸クロベタゾン、コハク酸プレドニゾロン等のステロイド系抗炎症剤、インドメタシン、ジクロフェナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルフェナム酸、ケトロラク、フルルビプロフェン、フェルビナク、スプロフェン、プラノプロフェン、チアプロフェン、ロキソプロフェン等の非ステロイド系抗炎症剤およびそのエステル誘導体、トラニラスト、アゼラスチン、ケトチフェン、イブジラスト、オキサトミド、エメダスチン等の抗アレルギ−剤、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、プロメタジン、トリペレナミン等の抗ヒスタミン剤、クロルプロマジン、ニトラゼパム、ジアゼパム、フェノバルビタ−ル、レセルピン等の中枢神経作用薬、フルボキサミン、パロキセチンセルトラリン、ミルナシプラン、ヴェンラファキシン、デュロキセチン、ネファゾドン、塩酸アミトリプチリン、塩酸イミプラミン等の向精神薬、インシュリン、テストステロン、ノルエチステロン、メチルテストステロン、プロゲステロン、エストラジオール等のホルモン剤、クロニジン、レセルピン、硫酸グアネチジン等の抗高血圧症剤、ジギトキシン、ジゴキシン等の強心剤、塩酸プロプラノロール、塩酸プロカインアミド、アジマリン、ピンドロール、塩酸ツロブテロール等の抗不整脈用剤、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、塩酸パパベリン、ニフェジピン等の冠血管拡張剤、リドカイン、ベンゾカイン、塩酸プロカイン、テトラカイン等の局所麻酔剤、モルヒネ、アスピリン、コデイン、アセトアニリド、アミノピリン、アンチピリン等の鎮痛剤、インドメタシン、サリチル酸、サリチル酸グリコール、アセトアミノフェン、ジクロフェナックナトリウム、イブプロフェン、スリンダック、ナプロキセン、ケトプロフェン、フルフェナム酸、イブフェナック、フェンブフェン、アルクロフェナック、フェニルブタゾン、メフェナム酸、ベンダザック、ピロキシカム、フルルビプロフェン、ペンタゾシン、塩酸ブプレノルフィン、酒石酸ブトルファノール等の解熱剤、エペリゾン、チザニジン、トルペリゾン、イナペリゾン、メシル酸プリジノール等の骨格筋弛緩剤、アセトフェニルアミン、ニトロフラゾン、ペンタマイシン、ナフチオメート、ミコナゾール、オモコナゾール、クロトリマゾール、塩酸ブテナフィン、ビフォナゾール等の抗真菌剤、5−フルオロウラシル、ブスルファン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン等の抗悪性腫瘍剤、塩酸テロリジン、塩酸オキシブチニン等の排尿障害剤、ニトラゼパム、メプロバメート等の抗てんかん剤、クロルゾキサゾン、レボドパ等の抗パ−キンソン病剤、リバスチグミン等のアルツハイマー型認知症治療薬、オンダンセトロン、グラニセトロン等の制吐薬、ニコチン等の禁煙補助剤、さらにはビタミン類、プロスタグランジン類等の薬効成分;アルブチン、ラブデン酸、コウジ酸、エラグ酸、アスコルビン酸、アスコルビン散誘導体、乳酸、グルコール酸、酒石酸等の美白成分;ミノキシジル、フィナステリド、イソプロピルメチルフェノール、イチョウエキス、塩化カルプロニウム、塩酸ジフェンヒドラミン、カシュウ、グリチルリチン酸(ジカリウム)、ジアルキルモノアミン誘導体、ショウキョウ、生姜、セファランチン、センキュウ、センブリ、チクセツニンジン、朝鮮ニンジン、トウガラシチンキ、ヒノキチオール、プラセンタエキス、ペンタデカン酸グリセリド等の育毛成分が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0013】
本発明の皮膚外用製剤におけるイソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールの含有量は、製剤の全量に対し、0.01〜50質量%で、より好ましくは0.1〜20質量%の範囲で、特に好ましくは0.5〜10質量%の範囲で用いられる。この量が0.01質量%未満では経皮吸収促進効果が十分に発揮されず、50質量%を超えるとその量の割には効果の向上は認められないうえ、安定な製剤が得られないこともある。本発明の皮膚外用製剤の剤型としては、従来外用剤として使用されている剤型、例えば軟膏、クリーム、ゲル、ゲル状クリーム、ローション、スプレー、パップ剤、テープ、リザーバー型パッチなど、任意の剤型の外用剤として使用することができる。
【0014】
本発明の皮膚外用製剤は、製剤中に経皮吸収促進剤としてイソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールを適量配合させることにより、通常の方法で製造することができる。また、イソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールと基剤との溶解性が思わしくない場合には溶解性を改善するために適宜溶媒を使用することもできる。次に、本発明の経皮吸収製剤をパップ剤又はテープ剤についてより詳細に説明する。例えば、パップ剤としては、その基剤として、経時安定性、放出性、経皮吸収性、皮膚安全性を考慮して水溶性高分子、多価アルコールと水を配合してなる親水性基剤とするのが好ましい。
【0015】
この親水性基剤に用いられる水溶性高分子として、ゼラチン、カゼイン、プルラン、デキストラン、アルギン酸ナトリウム、可溶性デンプン、カルボキシデンプン、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルエーテル、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、イソブチレン無水マレイン酸共重合体、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルアセトアミドとアクリル酸および/またはアクリル酸塩共重合体等から1種または2種以上のものが適宜選ばれる。この場合、水溶性高分子の配合量は製剤全体の好ましくは1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%、特に好ましくは1〜15質量%である。1質量%より少ないと粘度が低くなり保型性が保てず、30質量%より多いと粘度が高くなり、練合時や塗工時の作業性が低下する。
【0016】
多価アルコールとしては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1.3−ブチレングリコール、1.4−ブチレングリコール、イソブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール等から1種または必要に応じて2種以上のものが適宜に選ばれ、その配合量は好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜70質量%、特に好ましくは20〜60質量%である。5質量%より少ないと保湿効果が不足し、90質量%より多いと水溶性高分子の溶解性に影響を及ぼす。水の配合量は好ましくは10〜90質量%、より好ましくは20〜80質量%であり、水溶性高分子を溶解させ、増粘性、凝集性、保型性を引き出すために必要である。
【0017】
さらに、前記必須成分に加えて必要に応じ、架橋剤として多価金属化合物、具体的には水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アルミニウムカリウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート等が挙げられ、また、他の架橋剤としては分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する化合物、具体的にはエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエ−テル等が挙げられ、これらの架橋剤を1種または2種以上を好適に適宜配合され得る。
【0018】
また、その他にカオリン、酸化亜鉛、二酸化チタン、タルク、ベントナイト、合成ケイ酸アルミニウム等の充填剤、チモール、メチルパラベン、エチルパラベン等の防腐剤、アスコルビン酸、ステアリン酸エステル、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル、ビタミンE、ビタミンE酢酸エステル、エデト酸二ナトリウム等の抗酸化剤、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、p−アミノ安息香酸エチル、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、サリチル酸グリコール、サリチル酸メチル、サリチル酸フェニル等の紫外線吸収剤、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の乳化剤からなる成分を1種または2種以上適宜配合してもさしつかえない。
【0019】
このパップ剤の支持体としては、薬理活性成分の放出に影響がない素材を選定することが重要である。つまり、薬理活性成分との相互作用、吸着がない支持体が必須である。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン等のフィルムまたはシート、あるいはこれらの多孔体、発泡体、布、不織布さらにはフィルムまたはシートと多孔体、発泡体、布、不織布とのラミネート品等より選択される。また、剥離被覆物はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルまたはこれらをシリコーンで離型処理したものや剥離紙等を用いることができる。
【0020】
次に、このパップ剤の製造方法についてより詳細に説明する。本発明の吸収促進剤を含有するパップ剤は、公知の製造方法に準じて容易に製造できるものである。例えば、水溶性高分子を多価アルコール、水に混合、分散、溶解し、均一な練合物とし、必要に応じて安定化剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、乳化剤、防腐剤、抗菌剤、香料等を加える。次いで薬理活性成分及びイソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールを加え、均一に分散させて支持体に直接展延するか、もしくは一旦剥離処理の施されている紙あるいはフィルムに展延し、その後使用する支持体に圧着転写して製造することもできる。なお、前記製造法における各基剤、薬理活性成分またはその他の成分を配合する順序は、その一例を述べたにすぎず、この配合順序に限定されるものではない。
【0021】
テープ剤としては、その粘着性基剤として、皮膚安全性、薬理活性成分放出性、皮膚への付着性等を考慮して公知のものより適宜選択できる。好ましい粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が例示される。アクリル系粘着剤としては、特に、アルキル基の炭素数4〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体または共重合体、あるいは上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとその他の官能性モノマ−との共重合体が好適に用いられる。
【0022】
ゴム系粘着剤としては、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ポリイソブチレン、ポリビニルエーテル、ポリウレタン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体などが例示される。
【0023】
シリコーン系粘着としては、ポリオルガノシロキサン、ポリジメチルシロキサンを主成分とするものが使用される。粘着付与剤としては、ロジン系のものとしてロジンおよび水添、不均化、重合、エステル化されたロジン誘導体:α−ピネン、β−ピネンなどのテルペン樹脂:テルペン−フェノール樹脂:脂肪族系、芳香族系、脂環族系、共重合系の石油樹脂さらにアルキル−フェニル樹脂:キシレン樹脂などが例示される。
【0024】
軟化剤はベースポリマーを可塑化、軟化させ、皮膚への適度な付着性を維持させるものである。この軟化剤としては、ポリブテン、ポリイソブチレン、流動パラフィン、イソプロピルミリスチレート等の高級脂肪酸エステル類、シリコンオイルやアーモンド油、オリーブ油、ツバキ油、パーシック油、ラッカセイ油等の植物油が例示される。
【0025】
テープ剤の場合には、支持体として薬理活性成分の放出に影響を与えないものが望ましく、伸縮性及び非伸縮性のものが用いられる。例えば、合成樹脂膜としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン等のフィルムまたはシートあるいはこれらの積層体、多孔質膜、発泡体、紙、布及び不織布等より選択される。このテープ剤は、従来公知の製造法に準じて容易に製造できるものであり、例えば、合成ゴム系のテープの場合、ニーダー、ミキサー等の混合機を用い、120〜160℃で粘着性基剤と軟化剤および粘着付与剤を加熱混合し、ついで薬理活性成分とイソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールを添加混合し直接ポリプロピレンまたはポリエステルフィルムに展延するか、あるいは一旦、離型処理のほどこされた紙、もしくはフィルムに展延した後所望の支持体を覆い、圧着転写させてもよい。
【0026】
アクリル系テープの場合、粘着基剤、薬物及び吸収促進剤、さらに必要に応じて配合剤を適度な溶媒に溶解ないし分散させ、得られた溶液ないし分散液を支持体表面に直接塗布・乾燥し、厚み30〜200μmの貼付層を形成する。また、この溶液ないし分散液を保護用の剥離紙上に塗布し、乾燥後に得られた貼付層を支持体に密着させてもよい。この製造法に用いられる溶剤は、粘着基剤、薬物等の配合成分の全てに相溶性のある有機溶媒であれば特に限定されないが、例えば、トルエン、ベンゼン、及びキシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類並びに四塩化炭素、クロロホルム及び塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類が挙げられる。
【0027】
次に、その他の経皮吸収剤である軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、ゲル状クリーム剤、ローション剤、リザーバー型パッチ、リニメント剤、エアゾール剤の配合処方について簡単に説明する。軟膏剤は、薬理活性成分とイソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールに加えて、ミリスチン酸等の高級脂肪酸またはそのエステル、鯨ロウ等のロウ類、ポリオキシエチレン等の界面活性剤、親水ワセリン等の炭化水素類を少なくとも配合するものである。この軟膏剤の製剤処方は、例えば高級脂肪酸またはそのエステル5〜15質量%、界面活性剤1〜10質量%、薬理活性成分0.5〜10質量%、イソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオール0.1〜20質量%を室温または加温下で混合し、ロウ類4〜10質量%、炭化水素50〜90質量%を加え加温または加熱融解し、50〜100℃に保ち、全成分が透明溶解液になった後、ホモミキサーで均一に混和する。その後、撹拌しながら室温まで下げることによって軟膏剤とするものである。
【0028】
ゲル剤は、薬理活性成分とイソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールに加えて、エタノール等の低級アルコール、水、カルボキシビニル重合体等のゲル化剤、トリエタノールアミン等の中和剤を少なくとも配合してなるものである。このゲル剤の製剤処方は、例えば水55質量%以下にゲル化剤0.5〜5質量%を加えて膨張させる。一方、薬理活性成分0.5〜10質量%とイソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオール0.1〜20質量%をグリコール類40質量%以下と低級アルコール60質量%以下の混合物に溶解する。これら両者を混合し、更に中和剤を加えてpH4〜7となるように調整し、ゲル化剤が得られる。
【0029】
クリーム剤は、薬理活性成分とイソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールに加えて、ミリスチン酸エステル等の高級脂肪酸エステル、水、流動パラフィン等の炭化水素類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類等の乳化剤を少なくとも配合してなる。このクリーム剤の配合処方は、上記した薬理活性成分、イソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、高級脂肪酸エステル、水、炭化水素類、乳化剤を適量加え混合、撹拌することにより得られる。
【0030】
ゲル状クリーム剤は、ゲル剤とクリーム剤の中間の性質を有するものであり、上記したクリーム剤の各成分に加えて、カルボキシビニル重合体等のゲル化剤とジイソプロパノールアミン等の中和剤を配合し、pH4〜8、好ましくは5〜6.5に調整することにより得られる。このゲル状クリーム剤の配合処方は、例えば薬理活性成分0.5〜10質量%とイソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオール0.1〜20質量%を高級脂肪酸エステル25質量%以下と低級アルコール40質量%以下の混合物に溶解し、更に乳化剤5質量%以下を加える。一方、水にゲル化剤0.5〜5質量%を加えて膨張させる。次に、両者を混合しホモミキサーで均一に乳化させ、乳化後、中和剤を添加し、pHを4〜8に調整する。
【0031】
ローション剤は、薬理活性成分とイソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールに加えて、エタノール等の低級アルコール、水および/またはグリコール類を少なくとも配合する。このローション剤の配合処方は、上記した薬理活性成分、イソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオール、低級アルコール、水および/またはグリコール類を適量加えて混合、撹拌することにより得られる。
【0032】
リザーバー型パッチは、(1)裏打ち材層、(2)薬剤貯蔵層、(3)薬剤放出層、(4)感圧接着剤層から少なくともなり、その(2)薬剤貯蔵層が薬理活性成分、N−モノ又はジ置換−p−メンタン−3−カルボキシアミドに加えて、(a)少なくともグリコール類、低級アルコール、水、水溶性高分子、(b)少なくとも脂肪族アルコールおよび多価アルコール(c)少なくともパラフィン類、シリコン類、のいずれかを配合してなる基剤からなる。
【0033】
これらの本発明の皮膚外用製剤には、本発明の目的を損なわない範囲で、薬理上許容される各種添加剤、例えば安定剤、酸化防止剤、香料、充填剤、あるいは他の経皮吸収促進剤などを添加することができる。
【0034】
本発明の経皮吸収促進剤を有効成分として向精神、抗炎症、鎮痛、解熱、美白、育毛から選ばれる薬理活性成分の経皮透過性を促進・制御する方法としては、イソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールを配合すること以外にはとくに制限はなく、通常の方法を採用することができる。
【0035】
また、本発明の経皮吸収促進剤を有効成分とする冷感効果を制御する方法としては、イソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールを配合すること以外にはとくに制限はなく、通常の方法を採用することができる。
本発明の経皮吸収促進剤を有効成分の有効成分であるイソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールはメントールのような刺激性を伴う冷感効果がなく、マイルドな冷感効果を付与することが知られており、これらを使用した薬理活性成分の経皮吸収効果を利用して所望の冷感効果を発揮することが可能となる。
また上述の温感剤を所望量併用することにより清涼感だけでなく、優れた温感効果を発揮することも可能となる。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0037】
[試験例1]パロキセチンの経皮吸収促進効果の評価
(1)試料の調製
表1に示すように精製水にヒドロキシエチルセルロース(HEC)及びヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を添加して一晩放置し、基剤を膨潤させた。これとは別にイソプロパノール(IPA)に主薬(パロキセチン)と、各種試験サンプルを溶解させ、調製した基剤に均一に混合し、冷暗所に一晩放置してヒドロゲルを調製した。
なお、対象としては、試験サンプルの代わりに精製水を使用した。
【0038】
【表1】

【0039】
試験試料
[サンプル1]IPG:イソプレゴール
[サンプル2]38D:p−メンタン−3,8−ジオール
[サンプル3]CA1:2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオール
[サンプル4]CA5:2−(メントキシ)エタノール
[サンプル5]CA10:3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール
[サンプル6]d−リモネン
[サンプル7]l−メントール
【0040】
(2)皮膚透過性試験
ヘアレスマウス摘出皮膚を縦型拡散セルに皮膚角層側がドナー側、皮膚基底膜側がレシーバー側となるように装着した。レシーバー側にはリン酸緩衝生理食塩液(PBS溶液)(pH7.4)を16mL加え、セルは37℃温浴下で加温する。加温開始後30分後にドナー側には37℃に加温度したヒドロゲル1.0gを針なしシリンジを用いて適用した。所定時間毎にレシーバー液1mL採取し、採取した1mL分のPBS溶液をレシーバー側に補充した。
分取したレシーバー液は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定し、透過したパロキセチン量を算出した。
【0041】
(3)HPLC測定条件
機器名:Elite LaChrom System((株)日立製作所製)
カラム:YMS−Pack ODS−A 4.6mm×150mm
((株)ワイエムシー)
溶離液:リン酸緩衝液(pH3.5)/アセトニトリル=35/65(V/V)
流速:1.0mL/分
測定波長:235nm
【0042】
(4)結果
各サンプル液の単位時間・面積あたりの経皮吸収量(Flux)及び経皮吸収速度(Lagtime)を表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
表2よりイソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールは他の素材と比較して経皮吸収速度(Lagtime)が短く、単位時間・面積あたりの経皮吸収量(Flux)が高いことが分かった。
【0045】
[試験例2]アンチピリンの経皮吸収促進効果の評価
(1)試料の調製
表3に示すように精製水にヒドロキシエチルセルロース(HEC)及びヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を添加して一晩放置し、基剤を膨潤させた。これとは別にイソプロパノール(IPA)に主薬(アンチピリン)と、各種冷感剤を溶解させ、調製した基剤に均一に混合し、冷暗所に一晩放置してヒドロゲルを調製した。
【0046】
【表3】

【0047】
試験試料
[サンプル1]IPG:イソプレゴール
[サンプル2]38D:p−メンタン−3,8−ジオール
[サンプル3]CA1:2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオール
[サンプル4]CA5:2−(メントキシ)エタノール
[サンプル5]CA10:3−(l−メントキシ)プロパン−1,2−ジオール
[サンプル6]d−リモネン
[サンプル7]l−メントール
【0048】
(2)皮膚透過性試験
[試験例1](2)の皮膚透過性試験及び(3)のHPLC測定条件と同様な操作を行い透過したアンチピリン量を算出した。
【0049】
(3)結果
各サンプル液の単位時間・面積あたりの経皮吸収量(Flux)及び経皮吸収速度(Lagtime)を表4に示す。
【0050】
【表4】

【0051】
表4よりイソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールはメントール以外の素材と比較して経皮吸収速度(Lagtime)が短く、単位時間・面積あたりの経皮吸収量(Flux)が高いことが分かった。
【0052】
[処方例]
以下、本発明の経皮吸収促進剤を含む医薬品、化粧品等の処方例を示す。
【0053】
[実施例1]ローション剤
エタノール:精製水(1:1質量比混液) 91.5質量%
プロピレングリコール 5.0質量%
イソプレゴール 3.0質量%
アルブチン 0.5質量%
上記各成分を撹拌混合しアルブチン含有ローション剤を調製した。
【0054】
[実施例2]クリーム剤
流動パラフィン 10.0質量%
中鎖脂肪酸トリグリセライド 5.0質量%
モノステアリン酸ポリエチレングリコール 3.0質量%
グリセリン 5.0質量%
カルボキシビニルポリマー 1.0質量%
ジイソプロパノールアミン 0.4質量%
パラオキシ安息香酸メチル 0.2質量%
ラブデン酸 1.0質量%
イソプレゴール 0.5質量%
2−(メントキシ)エタノール 0.5質量%
精製水 残量
上記各成分を撹拌混合しラブデン酸含有クリーム剤を調製した。
【0055】
[実施例3]軟膏剤
白色ワセリン 76.0質量%
モノステアリン酸グリセリン 10.0質量%
牛脂 10.0質量%
シリコーンオイル 1.0質量%
イソプレゴール 2.0質量%
パロキセチン 1.0質量%
上記各成分を撹拌混合しパロキセチン含有軟膏剤を調製した。
【0056】
[実施例4]ゲル剤
カルボキシビニルポリマー 1.5質量%
ヒドロキシプロピルセルロース 2.0質量%
エタノール 17.0質量%
精製水 35.3質量%
プロピレングリコール 30.0質量%
炭酸プロピレン 10.0質量%
トリエタノールアミン 0.2質量%
2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオール 3.0質量%
インドメタシン 1.0質量%
上記各成分を撹拌混合しインドメタシン含有ゲル剤を調製した。
【0057】
[実施例5]パップ剤
ゼラチン 5.0質量%
ソルビトール 10.0質量%
カルボキシメチルセルロース 3.5質量%
グリセリン 25.0質量%
カオリン 7.0質量%
ポリアクリル酸ソ−ダ 3.0質量%
イソプレゴール 2.0質量%
ジクロフェナクナトリウム 1.0質量%
精製水 43.5質量%
上記各成分を、加熱混合しペ−ストとしたものを基布上に延展しジクロフェナクナトリウム含有パップ剤を調製した。
【0058】
[実施例6]テープ剤
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 21.0質量%
(商品名:カリフレックス TR−1107)
ポリイソブチレン(商品名 ビスタネックス) 5.0質量%
ロジンエステル誘導体(商品名 KE−311) 14.0質量%
流動パラフィン 57.0質量%
イソプレゴール 1.5質量%
3−メントキシプロパン−1,2−ジオール 0.5質量%
フェルビナク 1.0質量%
上記各成分を加熱撹拌したものを支持体上に延展しフェルビナク含有テープ剤を調製した。
【0059】
[実施例7]テープ剤
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 20.0質量%
(商品名:カリフレックス TR−1111)
ポリイソブチレン(商品名ビスタネックス) 12.0質量%
流動パラフィン 30.0質量%
ロジンエステル誘導体(商品名:フォーラル 105) 30.0質量%
2−(メントキシ)エタノール 6.0質量%
p−メンタン−3,8−ジオール 1.0質量%
ロキソプロフェンナトリウム 1.0質量%
上記各成分を加熱撹拌したものを支持体上に延展しロキソプロフェン含有テープ剤を調製した。
【0060】
[実施例8]リザーバー型パッチ
(1)裏打ち材層 アルミニウム積層ポリエステルフィルム
(2)薬剤貯槽層 下記に示すゲル組成物4gを封入した。
パロキセチン 3.0質量%
イソプレゴール 4.0質量%
2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオール 1.0質量%
ステアリルアルコール 10.0質量%
セチルアルコール 10.0質量%
ベヘニルアルコール 10.0質量%
プロピレングリコール 22.0質量%
1,3−ブチレングリコール 35.0質量%
ラウリルアルコール 5.0質量%
(3)薬物放出層 コートラン
(4)感圧接着剤層 シリコン系粘着剤(支持体周辺部)
上記(1)〜(4)で、このリザーバー型パッチは構成され、剥離ライナーを感圧接着剤面にあてがい積層物を作成した。
【0061】
[実施例9]テープ剤
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 21.0質量%
(商品名:カリフレックス TR−1107)
ポリイソブチレン(商品名 ビスタネックス) 5.0質量%
ロジンエステル誘導体(商品名 KE−311) 14.0質量%
流動パラフィン 54.5質量%
メントール 1.0質量%
2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオール 1.5質量%
フェルビナク 3.0質量%
上記各成分を加熱撹拌したものを支持体上に延展しフェルビナク含有テープ剤を調製した。
【0062】
[実施例10]ゲル剤
カルボキシビニルポリマー 1.5質量%
ヒドロキシプロピルセルロース 2.0質量%
エタノール 17.0質量%
精製水 35.3質量%
プロピレングリコール 30.0質量%
炭酸プロピレン 10.0質量%
トリエタノールアミン 0.2質量%
2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオール 3.0質量%
フェルビナク 5.0質量%
上記各成分を撹拌混合しフェルビナク含有ゲル剤を調製した。
【0063】
[実施例11]ゲル剤
カルボキシビニルポリマー 1.5質量%
ヒドロキシプロピルセルロース 2.0質量%
エタノール 17.0質量%
精製水 35.3質量%
プロピレングリコール 30.0質量%
炭酸プロピレン 10.0質量%
トリエタノールアミン 0.2質量%
2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオール 1.0質量%
ノニル酸バニリルアミド 1.0質量%
スピラントール 1.0質量%
フェルビナク 1.0質量%
上記各成分を撹拌混合しフェルビナク含有ゲル剤を調製した。
【0064】
[実施例12]ゲル剤
カルボキシビニルポリマー 1.5質量%
ヒドロキシプロピルセルロース 2.0質量%
エタノール 17.0質量%
精製水 35.3質量%
プロピレングリコール 30.0質量%
炭酸プロピレン 10.0質量%
トリエタノールアミン 0.2質量%
2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオール 1.0質量%
イソプレゴール 1.0質量%
メントール 1.0質量%
フェルビナク 1.0質量%
上記各成分を撹拌混合しフェルビナク含有ゲル剤を調製した。
【0065】
[比較例1]ゲル剤
カルボキシビニルポリマー 1.5質量%
ヒドロキシプロピルセルロース 2.0質量%
エタノール 17.0質量%
精製水 35.3質量%
プロピレングリコール 30.0質量%
炭酸プロピレン 10.0質量%
トリエタノールアミン 0.2質量%
メントール 3.0質量%
フェルビナク 1.0質量%
上記各成分を撹拌混合しフェルビナク含有ゲル剤を調製した。
【0066】
官能評価試験
実施例12と比較例1で調製したフェルビナク含有ゲル剤2gずつを左右上腕部に均一に塗布し、その清涼感と薬効感を健常パネルで評価した(10名)。
初期の清涼感・薬効感(塗布から5分後)は10名中6名が比較例1が若干強いと答えたが、10分後は7名が、30分後は9名が実施例12の方が清涼感・薬効感に優れると回答した。また、10名中4名が比較例1に刺激感を感じると答えたが、実施例12に刺激感を感じると答えたパネルはいなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレゴール、2−(メントキシ)エタノール、及び2−メチル−3−(メントキシ)プロパン−1,2−ジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有する経皮吸収促進剤。
【請求項2】
メントール、メントン、カンファー、プレゴール、シネオール、3−メントキシプロパン−1,2−ジオール、N−アルキル−p−メンタン−3−カルボキサミド、3−メントキシ−2−メチルプロパン−1,2−ジオール、p−メンタン−3,8−ジオール、3−メントキシプロパン−1−オール、4−l−メントキシブタン−1−オール(3−ヒドロキシブタン酸メンチル)、3−ヒドロキシブタン酸メンチル、1−(2−ヒドロキシ−4−メチル−シクロヘキシル)エタノン、乳酸メンチル、メントールグリセリンケタール、N−メチル−2,2−イソプロピルメチル−3−メチルブタンアミド、グリオキシル酸メンチル、コハク酸メンチル、グルタル酸メンチル、ペパーミントオイル、スペアーミントオイル、ユーカリプタスオイル及びハッカオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種の成分をさらに含有すること特徴とする請求項1記載の経皮吸収促進剤。
【請求項3】
バニリルエチルエーテル、バニリルプロピルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、カプサイシン、ギンゲロール、バニリルブチルエーテル、4−(1−メントキシ−メチル)−2−フェニル−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシ−メチル)−2−(3’,4’−ジヒドロキシ−フェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシ−メチル)−2−(2’−ヒドロキシ−3’−メトキシ−フェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシ−メチル)−2−(4’−メトキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシ−メチル)−2−(3’,4’−メチレンジオキシ−フェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(1−メントキシ−メチル)−2−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、トウガラシ油、トウガラシオレオレジン、ノニル酸バニリルアミド、ジャンブーオレオレジン、サンショウエキス、サアンショール−I、サアンショール−II、サンショウアミド、黒胡椒エキス、カビシン、ピペリン及びスピラントールからなる群より選ばれる少なくとも1種の温感物質をさらに含有すること特徴とする請求項1又は2に記載の経皮吸収促進剤。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の経皮吸収促進剤を0.01〜50質量%含有することを特徴とする皮膚外用製剤。
【請求項5】
向精神成分、抗炎症成分、鎮痛成分、解熱成分、美白成分及び育毛成分からなる群より選ばれる少なくとも1種の薬理活性成分をさらに含有することを特徴とする請求項4記載の皮膚外用製剤。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の経皮吸収促進剤を有効成分として用いて、向精神成分、抗炎症成分、鎮痛成分、解熱成分、美白成分及び育毛成分からなる群より選ばれる少なくとも1種の薬理活性成分の経皮透過性を促進・制御する方法。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の経皮吸収促進剤を有効成分として用いて、冷感効果を制御する方法。

【公開番号】特開2012−20991(P2012−20991A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132419(P2011−132419)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】