説明

経皮吸収型貼付剤

【課題】分子内にカルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤とl−メントールとがエステル化するのを防止し、良好な鎮痛効果を発揮する経皮吸収型貼付剤を提供すること。
【解決手段】経皮吸収型貼付剤1aは、支持基材10aと、支持基材10a上に形成され、薬物を含有する第1の薬物含有部11aおよび第2の薬物含有部12aとを有している。第1の薬物含有部11aは、分子内にカルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤を含み、第2の薬物含有部12aは、l−メントールを含み、かつ、前記非ステロイド系鎮痛消炎剤を実質的に含まない。上記非ステロイド系鎮痛消炎剤は、フェルビナクであるのが好ましい。第1の薬物含有部11aには、皮膚への薬物の吸収を促進する経皮吸収促進剤が含まれている。第1の薬物含有部11aと第2の薬物含有部12aとの間には、薬物の移行を阻止する阻止手段としての間隙13aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮吸収型貼付剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高い鎮痛消炎作用を示す薬物として、インドメタシンやフェルビナクといった分子内にカルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤が知られている。
【0003】
このような薬物は、経口投与すると、消化器系に副作用を起こし、胃腸障害を生じてしまうという問題があるため、経皮投与製剤としての検討が行われており、これまでに、ゲル剤、液剤、貼付剤等が市販されている。
【0004】
経皮投与製剤として、ゲル剤、液剤を用いた場合、定量的に投与するのが困難であり、また、生物学的利用率が低いといった問題もあった。また、投与回数の多さや衣服への付着等の問題もあった。
【0005】
経皮投与製剤として、貼付剤を用いた場合、上記のような問題点を改善することが可能であり、例えば、樹脂成分、l−メントール、および、薬効成分としてのフェルビナクを含有する薬物含有層を備えた貼付剤が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、従来の貼付剤では、加熱溶融型の薬物含有層を形成する際に、カルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤が、l−メントールとエステル化してしまい、十分な鎮痛効果を得ることができなかった。また、同じ層内に上記非ステロイド系鎮痛消炎剤とl−メントールとが存在すると、経時的にエステル化が進行し、鎮痛効果が低下するといった問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−286162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、分子内にカルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤とl−メントールとがエステル化するのを防止し、良好な鎮痛効果を発揮する経皮吸収型貼付剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(7)の本発明により達成される。
(1) 薬物を含有する第1の薬物含有部と第2の薬物含有部とを有し、
前記第1の薬物含有部は、分子内にカルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤を含み、
前記第2の薬物含有部は、l−メントールを含み、かつ、前記非ステロイド系鎮痛消炎剤を実質的に含まないことを特徴とする経皮吸収型貼付剤。
【0010】
(2) 前記非ステロイド系鎮痛消炎剤は、フェルビナクである上記(1)に記載の経皮吸収型貼付剤。
【0011】
(3) 前記第1の薬物含有部と前記第2の薬物含有部との間には、前記非ステロイド系鎮痛消炎剤および前記l−メントールの移行を阻止する阻止手段が設けられている上記(1)または(2)に記載の経皮吸収型貼付剤。
【0012】
(4) 前記阻止手段として、間隙が設けられている上記(3)に記載の経皮吸収型貼付剤。
【0013】
(5) 前記阻止手段として、薬物移行阻止層が設けられている上記(3)に記載の経皮吸収型貼付剤。
【0014】
(6) 前記第2の薬物含有部は、前記第1の薬物含有部を囲むように、前記阻止手段を介して設けられている上記(3)ないし(5)のいずれかに記載の経皮吸収型貼付剤。
【0015】
(7) 前記第1の薬物含有部は、該第1の薬物含有部の皮膚貼付面の面積よりも皮膚貼付面の面積が大きい前記第2の薬物含有部上に、前記阻止手段を介して積層されている上記(3)ないし(5)のいずれかに記載の経皮吸収型貼付剤。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、分子内にカルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤とl−メントールとがエステル化するのを防止し、良好な鎮痛効果を発揮する経皮吸収型貼付剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の経皮吸収型貼付剤の第1実施形態を示す平面図(a)および断面図(b)である。
【図2】本発明の経皮吸収型貼付剤の第2実施形態を示す平面図(a)および断面図(b)である。
【図3】本発明の経皮吸収型貼付剤の第3実施形態を示す平面図(a)および断面図(b)である。
【図4】本発明の経皮吸収型貼付剤の第4実施形態の実施形態を示す平面図(a)および断面図(b)である。
【図5】本発明の経皮吸収型貼付剤の第5実施形態の実施形態を示す平面図(a)および断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の経皮吸収型貼付剤の第1実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の経皮吸収型貼付剤の第1実施形態を示す平面図(a)および断面図(b)である。
【0020】
図1に示すように、経皮吸収型貼付剤1aは、支持基材10aと、第1の薬物含有部11aと、第2の薬物含有部12aとを有している。
【0021】
支持基材10aは、図1に示すように、平面視の形状が略円形状のシート状の部材で、後述する第1の薬物含有部11a、第2の薬物含有部12aを支持する機能を有する。かかる支持基材10aは、可撓性(柔軟性)を有し、貼付時における曲面追従性をもち、加工時における裁断または打ち抜き等に適したものが好ましい。
【0022】
このような支持基材10aとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、ポリスルホン、ナイロン、ポリ乳酸、レーヨン、アクリル等の樹脂からなるプラスチックフィルム、織物、編物および不織布を用いることが可能である。さらに、プラスチックフィルムと、プラスチックフィルム、織物、編物、不織布または紙等との2層以上のラミネートシートを用いることが可能である。
【0023】
支持基材10aの平均厚さは、2〜4000μmであるのが好ましく、10〜300μmであるのがより好ましい。
【0024】
第1の薬物含有部11aおよび第2の薬物含有部12aは、上記支持基材10aの一方の面側に設けられており、薬物を含有する層である。
【0025】
また、第1の薬物含有部11aおよび第2の薬物含有部12aは、皮膚に対する粘着性を有する。
【0026】
これら第1の薬物含有部11aおよび第2の薬物含有部12aは、皮膚に対して薬物を放出し、皮膚から体内に薬物を吸収させる機能を備えている。
【0027】
ところで、経皮投与製剤として、樹脂成分、l−メントール、および、薬効成分としてのフェルビナクを含有する薬物含有層を備えた貼付剤が知られている。このような貼付剤では、加熱溶融型の薬物含有層を形成する際に、カルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤が、l−メントールとエステル化してしまい、安定的に薬物含有層を形成することが困難であった。また、同じ層内に上記非ステロイド系鎮痛消炎剤とl−メントールとが存在すると、経時的にエステル化が進行し、薬物を安定的に保持できないといった問題もあった。
【0028】
そこで、本発明者らは、上記問題に鑑み、鋭意検討した結果、第1の薬物含有部と第2の薬物含有部とを設け、第1の薬物含有部に上記非ステロイド系鎮痛消炎剤を含有させ、第2の薬物含有部にl−メントールを含ませ、かつ、前記非ステロイド系鎮痛消炎剤を実質的に含ませないことにより、上記非ステロイド系鎮痛消炎剤とl−メントールとがエステル化するのを防止し、良好な鎮痛作用を発揮することを見出し、本発明の完成に至った。また、経時的な薬物の安定性の低下を防止することができることを見出した。
【0029】
以下、各層毎に詳細に説明する。
第1の薬物含有部11aは、平面視の形状が略円形状であり、支持基材10aの略中央に配されている。
【0030】
また、第1の薬物含有部11aは、分子内にカルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤を含有している。また、第1の薬物含有部11aは、粘着基剤を含んでおり、皮膚に対して粘着性を有している。
【0031】
分子内にカルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤としては、インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、ロキソプロフェン、ケトロラク、フェルビナク(4−ビフェニル酢酸)等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。上述した中でも、特に、フェルビナクを用いるのが好ましい。これにより、経皮吸収貼付剤は、特に優れた鎮痛消炎効果を発揮する。
【0032】
第1の薬物含有部11aにおける上記非ステロイド系鎮痛消炎剤の含有量は、0.1〜50質量%であるのが好ましく、1〜30質量%であるのがより好ましい。これにより、皮膚に対する良好な粘着性を維持させると共に、より優れた鎮痛消炎効果を発揮させることができる。
【0033】
粘着基剤には、高分子材料や、必要に応じて粘着付与剤や可塑剤等が含まれている。高分子材料としては、例えば、天然ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、ポリプテン、ポリイソブチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、粘着付与剤としては、例えば、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、可塑剤としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン等の炭化水素類;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等の石油系オイル;ホホバ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、オリーブ油、ごま油、サフラワー油、スクワレン等の天然動植物油脂類;ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール等の高級アルコール類;メチルフェニルポリシロキサン、メチルポリシロキサン等のシリコーン類;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸類;ポリブテン、液状イソプレンゴム等の液状ゴム等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
また、粘着基剤には、必要に応じて、抗酸化剤、充填剤、架橋剤、防腐剤、紫外線吸収剤等をさらに配合してもよい。
【0035】
抗酸化剤としては、トコフェロール及びこれらのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、ノルジヒドログアヤレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0036】
充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸塩、ケイ酸、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜鉛酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等が挙げられる。
【0037】
このような抗酸化剤、充填剤、架橋剤、防腐剤、紫外線吸収剤は、粘着基剤全体の質量に基づいて合計で、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下の範囲内で適宜配合される。
【0038】
第1の薬物含有部11aにおける粘着基剤の含有量は、30〜99.9質量%であるのが好ましく、40〜99質量%であるのがより好ましい。
また、第1の薬物含有部11aには、経皮吸収促進剤を配合してもよい。
【0039】
経皮吸収促進剤としては、従来皮膚での吸収促進作用が認められている化合物のいずれでもよく、例えば、炭素鎖数6〜20の脂肪酸、脂肪族系アルコール、脂肪酸アミド、脂肪酸エーテル、芳香族系有機酸、芳香族系アルコール、芳香族系有機酸エステル又はエーテル、乳酸エステル類、酢酸エステル類、モノテルペン系化合物、セスキテルペン系化合物、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリソルベート系、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ショ糖脂肪酸エステル類、植物油等が挙げられる。
【0040】
特に、経皮吸収促進剤としては、セバシン酸エステル、アルキルグリセリルエーテルを用いるのが好ましい。これら化合物は、上述したような非ステロイド系鎮痛消炎剤の溶解助剤としての作用があり、粘着基剤中に上記非ステロイド系鎮痛消炎剤をより安定して配合することができる。
【0041】
セバシン酸エステルとしては、例えば、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジプロピル、セバシン酸ジブチル等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
アルキルグリセリルエーテルとしては、炭素数が8〜24の直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和のアルキル基を有するものが好ましく、炭素数が12〜24の直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和のアルキル基を有するものがより好ましい。例えば、イソステアリルグリセリルエーテル、セチルグリセリルエーテル、オレイルグリセリルエーテル、ラウリルグリセリルエーテル等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。上述した中でも、イソステアリルグリセリルエーテルは、特に優れた溶解補助効果、透過促進効果を有しており、本発明において、好適に用いることができる。
【0043】
第1の薬物含有部11a中における経皮吸収促進剤の含有量は、0.1〜30質量%であるのが好ましく、1〜20質量%であるのがより好ましい。これにより、薬物の効果の速効性をより効果的に発揮させることができる。
【0044】
第1の薬物含有部11aの平均厚さは、10〜500μmであるのが好ましく、20〜300μmであるのがより好ましい。
【0045】
第2の薬物含有部12aは、図1に示すように、第1の薬物含有部11aを囲むよう設けられており、平面視の形状が円環状をなす薄層状のものである。
【0046】
また、第2の薬物含有部12aは、l−メントールを含み、かつ、上記非ステロイド系鎮痛消炎剤を実質的に含んでいない。l−メントールを含むことにより、患部に対して良好な清涼感を与え、痛みを緩和することができる。
【0047】
なお、上記非ステロイド系鎮痛消炎剤を実質的に含まないとは、第2の薬物含有部12a中における上記非ステロイド系鎮痛消炎剤の含有量が0.1質量%未満のことをいう。
【0048】
また、第2の薬物含有部12aは、粘着基剤を含んでおり、皮膚に対して粘着性を有している。
【0049】
第2の薬物含有部12aにおけるl−メントールの含有量は、0.1〜50質量%であるのが好ましく、1〜30質量%であるのがより好ましい。これにより、皮膚に対する良好な粘着性を維持させると共に、患部に対してより良好な清涼感を与え、痛みを緩和することができる。
【0050】
第2の薬物含有部12aに含まれる粘着基剤としては、上記第1の薬物含有部11aで説明したものと同様のものを挙げることができる。
【0051】
第2の薬物含有部12aにおける粘着基剤の含有量は、50〜99.9質量%であるのが好ましく、70〜99質量%であるのがより好ましい。
【0052】
第2の薬物含有部12aの平均厚さは、10〜500μmであるのが好ましく、20〜300μmであるのがより好ましい。
【0053】
本実施形態において、上述したように、第2の薬物含有部12aは、第1の薬物含有部11aを囲むよう設けられている。
【0054】
また、本実施形態のように、第2の薬物含有部12aの内側に、第1の薬物含有部11aを設けることにより、第1の薬物含有部11aに含まれる非ステロイド系鎮痛消炎剤を患部に対して集中的に供給するとともに、周囲の第2の薬物含有部12aから清涼感を与えることにより、患部に対して良好な清涼感を与えることができる。
【0055】
また、本実施形態において、第1の薬物含有部11aの皮膚貼付面の面積(第1の薬物含有部11aを平面視した面積)は、第2の薬物含有部12aの皮膚貼付面の面積(第2の薬物含有部12aを平面視した面積)よりも小さい構成となっている。このような構成とすることにより、各薬物の効果の速効性と持続性とのバランスを良好なものとすることができる。
【0056】
また、第1の薬物含有部11aと第2の薬物含有部12aとの間には、薬物移行阻止手段として、間隙13aが設けられている。このような間隙13aを設けることにより、経皮吸収型貼付剤の保管時(未使用時)において、第1の薬物含有部11aと第2の薬物含有部12aとの間で、各薬物が移行・拡散して、上記非ステロイド系鎮痛消炎剤とl−メントールとの間でエステル反応が生じるのをより確実に防止することができる。その結果、長期にわたって保管した場合であっても、上記非ステロイド系鎮痛消炎剤の安定性およびその効果を維持させることができる。
【0057】
間隙13aの幅は、特に限定されないが、0.1〜10mmであるのが好ましく、1〜5mmであるのがより好ましい。これにより、第1の薬物含有部11aと第2の薬物含有部12aとの間での、各薬物の移行・拡散をより効果的に防止することができる。
【0058】
また、経皮吸収型貼付剤1aは、第1の薬物含有部11aおよび第2の薬物含有部12aが設けられている面に剥離シートを設けることが好ましい。剥離シートは、経皮吸収型貼付剤1aの保管時(未使用時)において、第1の薬物含有部11aおよび第2の薬物含有部12aの貼着面を保護する機能を有している。
【0059】
このような剥離シートとしては、例えば、ポリエチレンラミネート紙、ポリプロピレンラミネート紙等のラミネート紙類;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム等の合成樹脂フィルム等が使用できる。また、剥離シートは、必要に応じてこれらの材料の片面または両面にシリコーン樹脂等により剥離処理が施されたものを使用してもよい。
【0060】
また、剥離シートの平均厚さは、10〜200μmであることが好ましく、15〜100μmであることがより好ましい。
【0061】
なお、上述したような第1の薬物含有部11aおよび第2の薬物含有部12aは、粘着剤や薬物等を含む材料を混合した溶液を塗布等の手段によって支持基材10a上に設けてもよいし、支持基材10a上に薬物を含有しない粘着剤層を予め形成しておいたものに、薬物を含む液を粘着剤層上に塗布、含浸させて形成してもよい。
【0062】
また、第1の薬物含有部11aおよび第2の薬物含有部12aを、図1のように海島状に設ける方法は、特に限定されず、例えば、特開2007−254515号公報に記載の方法が使用できる。
【0063】
<第2実施形態>
次に、本発明の経皮吸収型貼付剤の第2実施形態について説明する。以下、第2実施形態の経皮吸収型貼付剤について、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0064】
図2は、本発明の経皮吸収型貼付剤の第2実施形態を示す平面図(a)および断面図(b)である。
【0065】
図2に示すように、経皮吸収型貼付剤1bは、支持基材10bと、第1の薬物含有部11bと、第2の薬物含有部12bと、間隙13bとを有している。
【0066】
支持基材10bは、図2に示すように、平面視の形状が略四角形をなすシート状の部材である。
【0067】
支持基材10bの構成材料は、前述した第1実施形態の支持基材10aの構成材料と同様であるため、その説明を省略する。
【0068】
また、第1の薬物含有部11b、第2の薬物含有部12bの構成材料および機能は、前述した第1実施形態の第1の薬物含有部11a、第2の薬物含有部12aの構成材料および機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0069】
また、間隙13bの機能は、前述した第1実施形態の間隙13aの機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0070】
図2に示すように、第1の薬物含有部11bおよび第2の薬物含有部12bは、平面視の形状が略四角形をなしており、支持基材10bの一方の面側に設けられている。
【0071】
第1の薬物含有部11bと第2の薬物含有部12bとは、図2に示すように、間隙13bを介して並設されている。また、第2の薬物含有部12bは、第1の薬物含有部11aを挟むように設置されている。
【0072】
このような構成とすることにより、薬物の効果の速効性、持続性に優れた経皮吸収型貼付剤1bをより容易に形成することができる。また、第2の薬物含有部12bを、第1の薬物含有部11aを挟むように設置しているので、第1の薬物含有部11aが、第2の薬物含有部12aよりも粘着力が小さい場合でも、第2の薬物含有部12aの粘着力によって、第1の薬物含有部11aの不本意な剥がれを効果的に防止することができる。
【0073】
なお、第1の薬物含有部11bおよび第2の薬物含有部12bを、図2のようにストライプ状に設ける方法は、特に限定されず、例えば、特開2007−254515号公報に記載の方法が使用できる。
【0074】
<第3実施形態>
次に、本発明の経皮吸収型貼付剤の第3実施形態について説明する。以下、第3実施形態の経皮吸収型貼付剤について、前記第1、2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0075】
図3は、本発明の経皮吸収型貼付剤の第3実施形態を示す平面図(a)および断面図(b)である。
【0076】
図3に示すように、経皮吸収型貼付剤1cは、支持基材10cと、第1の薬物含有部11cと、第2の薬物含有部12cとを有している。
【0077】
支持基材10cは、図3に示すように、平面視の形状が略円形状のシート状の部材である。
【0078】
支持基材10cの構成材料は、前述した第1実施形態の支持基材10aの構成材料と同様であるため、その説明を省略する。
【0079】
また、第1の薬物含有部11c、第2の薬物含有部12cの構成材料および機能は、前述した第1実施形態の第1の薬物含有部11a、第2の薬物含有部12aの構成材料および機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0080】
本実施形態において、経皮吸収型貼付剤1cは、平面視の形状が略円形状の第1の薬物含有部11cが、平面視の形状が略円形状の第2の薬物含有部12c上の略中央に積層された構成となっている。また、第2の薬物含有部12cの主面の面積は、第1の薬物含有部11cの主面の面積よりも大きい構成となっている。
【0081】
また、第1の薬物含有部11cと第2の薬物含有部12cとの間には、薬物移行阻止手段として、薬物移行阻止層14cが設けられている。
【0082】
このような薬物移行阻止層14cの構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、ポリスルホン、ナイロン、ポリ乳酸、レーヨン、アクリル等の樹脂からなるプラスチックフィルムが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂からなるプラスチックフィルムが薬物移行阻止性に優れる点で好ましい。
【0083】
このような構成の経皮吸収型貼付剤1cは、支持基材10c上に第2の薬物含有部12cを形成した部材と、薬物移行阻止層14c上に第1の薬物含有部11cを形成した部材とを、適当なサイズに裁断して貼り合わせることにより得ることができ、生産性に特に優れている。
【0084】
<第4実施形態>
次に、本発明の経皮吸収型貼付剤の第4実施形態について説明する。以下、第4実施形態の経皮吸収型貼付剤について、前記第1〜3実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0085】
図4は、本発明の経皮吸収型貼付剤の第4実施形態を示す平面図(a)および断面図(b)である。
【0086】
図4に示すように、経皮吸収型貼付剤1dは、支持基材10dと、第1の薬物含有部11dと、第2の薬物含有部12dと、間隙13dとを有している。
【0087】
支持基材10dの構成材料は、前述した第1実施形態の支持基材10aの構成材料と同様であるため、その説明を省略する。
【0088】
また、第1の薬物含有部11d、第2の薬物含有部12dの構成材料および機能は、前述した第1実施形態の第1の薬物含有部11a、第2の薬物含有部12aの構成材料および機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0089】
また、間隙13dの機能は、前述した第1実施形態の間隙13aの機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0090】
本実施形態では、図4(b)に示すように、第1の薬物含有部11dの厚さが、第2の薬物含有部12dの厚さよりも大きい点に特徴を有している点以外は、前記第1実施形態と同様の構成となっている。このような特徴を有することにより、第1の薬物含有部11cを皮膚に確実に密着させることができ、上記非ステロイド系鎮痛消炎剤の鎮痛消炎効果をより効果的に発揮させることができる。
【0091】
<第5実施形態>
次に、本発明の経皮吸収型貼付剤の第5実施形態について説明する。以下、第5実施形態の経皮吸収型貼付剤について、前記第1〜4実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0092】
図5は、本発明の経皮吸収型貼付剤の第5実施形態を示す平面図(a)および断面図(b)である。
【0093】
図5に示すように、経皮吸収型貼付剤1eは、支持基材10eと、第1の薬物含有部11eと、第2の薬物含有部12eと、間隙13eとを有している。
【0094】
支持基材10eの構成材料は、前述した第1実施形態の支持基材10aの構成材料と同様であるため、その説明を省略する。
【0095】
また、第1の薬物含有部11e、第2の薬物含有部12eの構成材料および機能は、前述した第1実施形態の第1の薬物含有部11a、第2の薬物含有部12aの構成材料および機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0096】
また、間隙13eの機能は、前述した第1実施形態の間隙13aの機能と同様であるため、その説明を省略する。
【0097】
本実施形態では、図5に示すように、第1の薬物含有部11eと、第2の薬物含有部12eとが、間隙13eを介して互いに隣り合うように複数並設されている構成となっている。このような構成とすることにより、経皮吸収型貼付剤1eを貼着した部位に対して、各薬物を均一に供給することができ、各薬物の効果の持続性をより優れたものとすることができる。
【0098】
以上、本発明の経皮吸収型貼付剤について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0099】
例えば、本発明の経皮吸収型貼付剤は、図示の構成のものに限定されない。
また、前述した実施形態では、経皮吸収型貼付剤が支持基材を有するものとして説明したが、支持基材はなくてもよい。
【0100】
また、前述した実施形態において、第1の薬物含有部と第2の薬物含有部との位置は、逆であってもよい。
【0101】
また、前述した実施形態では、支持基材と、第1の薬物含有部および第2の薬物含有部とを有する構成について説明したが、支持基材と、第1の薬物含有部および第2の薬物含有部との間には、任意の機能を有する層が複数設けられていてもよい。
【実施例】
【0102】
次に、本発明の経皮吸収型貼付剤の具体的実施例について説明する。
(実施例)
1.第2の薬物含有部の作製
まず、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(クレイントポリマー社製、商品名「KRATON D−1107CP」):35質量部と、テルペン系樹脂(ヤスハラケミカル社製、商品名「YSレジン PX1150」):30質量部と、流動パラフィン(三光化学工業社製、商品名「流動パラフィン350S」):29質量部とを用意した。
これら成分を160℃にて混練し、粘着基剤を得た。
【0103】
次に、この粘着基剤に、l−メントール(高砂香料工業社製、商品名「l−メントール」):5質量部と、ジブチルヒドロキシトルエン(日光ケミカルズ社製、商品名「BHT−C」):1質量部とを添加し、均一に分散するまで混練し、第2の薬物含有部用塗工液を得た。
【0104】
次に、得られた第2の薬物含有部用塗工液を、剥離シートとしてのポリエチレンテレフタレート(PET)製リリースライナー(リンテック社製、商品名「SP−PET7511」)上に、厚さ150μmになるように展延塗布した。次いで、剥離シート上に形成された塗工層上に支持基材としての織布(KBセイレン社製、商品名「K45S」、材質:ポリエステル、目付:103g/m)をラミネートした。
【0105】
次に、直径:37.2mmの円形状に打ち抜き加工し、支持基材/第2の薬物含有部/剥離シートの積層体Aを得た。なお、第2の薬物含有部中に含まれるl−メントールの含有量は、4.8質量%であった。
【0106】
2.第1の薬物含有部の作製
まず、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(クレイントポリマー社製、商品名「KRATON D−1107CP」):30質量部と、テルペン系樹脂(ヤスハラケミカル社製、商品名「YSレジン PX1150」):25質量部と、流動パラフィン(三光化学工業社製、商品名「流動パラフィン350S」):29質量部とを用意した。
これら成分を160℃にて混練し、粘着基剤を得た。
【0107】
次に、この粘着基剤に、フェルビナク(金剛薬品社製、商品名「4−ビフェニル酢酸」):5質量部と、セバシン酸ジエチル(日光ケミカルズ社製、商品名「DES−SP」):5質量部と、イソステアリルグリセリルエーテル(花王社製、商品名「GE−IS」):5質量部と、ジブチルヒドロキシトルエン(日光ケミカルズ社製、商品名「BHT−C」):1質量部とを添加し、均一に分散するまで混練し、第1の薬物含有部用塗工液を得た。
【0108】
次に、得られた第1の薬物含有部用塗工液を、剥離シートとしてのポリエチレンテレフタレート(PET)製リリースライナー(リンテック社製、商品名「SP−PET7511」)上に、厚さ150μmに展延塗布した。
【0109】
次に、剥離シート上に形成された塗工層上に、薬物移行阻止層としての平均厚さ:50μmのPETフィルム(東レ社製、商品名「ルミラー」)をラミネートした。
【0110】
次に、直径:22.5mmの円形状に打ち抜き加工して、薬物移行阻止層/第1の薬物含有部/剥離シートの積層体Bを得た。なお、第1の薬物含有部中に含まれるフェルビナクの含有量は、5質量%であった。
【0111】
3.経皮吸収型貼付剤の作製
上記1.で得られた積層体Aから剥離シートを一旦除去し、第2の薬物含有部上に、上記2.で得られた積層体Bの薬物移行阻止層側を貼付し、一旦除去した剥離シートを再度貼合して、第1の薬物含有部および第2の薬物含有部を有する経皮吸収型貼付剤を作製した。(第1の薬物含有部の皮膚貼付面の面積:第2の薬物含有部の皮膚貼付面の面積=0.4:0.6)
(比較例)
まず、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(クレイントポリマー社製、商品名「KRATON D−1107CP」):28質量部と、テルペン系樹脂(ヤスハラケミカル社製、商品名「YSレジン PX1150」):23質量部と、流動パラフィン(三光化学工業社製、商品名「流動パラフィン350S」):28質量部とを用意した。
これら成分を160℃にて混練し、粘着基剤を得た。
【0112】
次に、この粘着基剤に、フェルビナク(金剛薬品社製、商品名「4−ビフェニル酢酸」):5質量部と、l−メントール(高砂香料工業社製、商品名「l−メントール」):5質量部と、セバシン酸ジエチル(日光ケミカルズ社製、商品名「DES−SP」):5質量部と、イソステアリルグリセリルエーテル(花王社製、商品名「GE−IS」):5質量部と、ジブチルヒドロキシトルエン(日光ケミカルズ社製、商品名「BHT−C」):5質量部とを添加し、均一に分散するまで混練し、薬物含有部用塗工液を得た。
【0113】
得られた薬物含有部用塗工液を、剥離シートとしてのPETリリースライナー(リンテック社製、商品名「SP−PET7511」)上に、厚さ150μmになるように展延塗布し、織布(KBセイレン社製、商品名「K45S」、材質:ポリエステル、目付:103g/m)をラミネートした。
【0114】
次に、直径:37.2mmの円形状に打ち抜き加工し、支持基材/薬物含有部/剥離シートの積層体からなる経皮吸収型貼付剤を得た。なお、薬物含有部中に含まれるフェルビナクの含有量は、5質量%であった。また、薬物含有部中に含まれるl−メントールの含有量は、4.8質量%であった。
【0115】
<経時安定性試験>
実施例および比較例で得られた経皮吸収型貼付剤をアルミニウム包材にて包装し、40℃の恒温槽(湿度75%)にて6ヵ月間保存し、経皮吸収貼付剤中のフェルビナクの含有量およびフェルビナク−メントールエステル体の含有量をHPLCで定量し、フェルビナクに対するフェルビナク−メントールエステル体の割合(%)を算出した。
【0116】
【表1】

【0117】
表1から明らかなように、実施例の経皮吸収貼付剤は、フェルビナク−メントールエステル体の生成量が少なく、フェルビナク(分子内にカルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤)の経時安定性に優れていた。これに対して、比較例の経皮吸収貼付剤は、フェルビナクとl−メントールが薬物含有部中に併存しているため、フェルビナク−メントールエステル体の生成量が多く、フェルビナク(分子内にカルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤)の経時安定性に劣っていた。
【符号の説明】
【0118】
1a、1b、1c、1d、1e 経皮吸収型貼付剤
10a、10b、10c、10d、10e 支持基材
11a、11b、11c、11d、11e 第1の薬物含有部
12a、12b、12c、12d、12e 第2の薬物含有部
13a、13b、13d、13e 間隙
14c 薬物移行阻止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物を含有する第1の薬物含有部と第2の薬物含有部とを有し、
前記第1の薬物含有部は、分子内にカルボキシル基を有する非ステロイド系鎮痛消炎剤を含み、
前記第2の薬物含有部は、l−メントールを含み、かつ、前記非ステロイド系鎮痛消炎剤を実質的に含まないことを特徴とする経皮吸収型貼付剤。
【請求項2】
前記非ステロイド系鎮痛消炎剤は、フェルビナクである請求項1に記載の経皮吸収型貼付剤。
【請求項3】
前記第1の薬物含有部と前記第2の薬物含有部との間には、前記非ステロイド系鎮痛消炎剤および前記l−メントールの移行を阻止する阻止手段が設けられている請求項1または2に記載の経皮吸収型貼付剤。
【請求項4】
前記阻止手段として、間隙が設けられている請求項3に記載の経皮吸収型貼付剤。
【請求項5】
前記阻止手段として、薬物移行阻止層が設けられている請求項3に記載の経皮吸収型貼付剤。
【請求項6】
前記第2の薬物含有部は、前記第1の薬物含有部を囲むように、前記阻止手段を介して設けられている請求項3ないし5のいずれかに記載の経皮吸収型貼付剤。
【請求項7】
前記第1の薬物含有部は、該第1の薬物含有部の皮膚貼付面の面積よりも皮膚貼付面の面積が大きい前記第2の薬物含有部上に、前記阻止手段を介して積層されている請求項3ないし5のいずれかに記載の経皮吸収型貼付剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−193137(P2012−193137A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57253(P2011−57253)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】