説明

経皮吸収製剤包装投与器具

【課題】経皮吸収製剤を製造した後、使用するまでの間、密封条件下で微細針の性能を損なわないように防湿し、衛生的に保ち、輸送過程における破損を防止し、かつ投与時に片手で容易に皮膚へ垂直に押しつけることが可能な経皮吸収製剤包装投与器具を提供すること。
【解決手段】長さ方向に対して垂直で平坦な先端面を有する支持棒、後面が該先端面に接着された経皮吸収製剤、及び該支持棒が長さ方向に摺動するように該支持棒を収納し、先端部に長さ方向に対して垂直なフランジを有するガイド筒、を有する経皮吸収製剤投与器具と、自立性及び柔軟性であり、該経皮吸収製剤投与器具の全体を覆い、該経皮吸収製剤投与器具を密封する包装容器とを、有する経皮吸収製剤包装投与器具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体と、該支持体上に複数形成された、目的物質を保持する微細針とを、有する経皮吸収製剤に関し、特に、該経皮吸収製剤の投与器具に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物を高効率で経皮的に投与するための製剤技術として、微細針(マイクロニードル)が研究されている。微細針は、皮膚に刺しても痛みを感じないほどに微細化された針である。
【0003】
これらの微細針は、注射針と同様の中空構造を有し、薬液を注入するタイプであったり、ポリ乳酸などの生分解性高分子製の微細針であったりする。さらに、水溶性高分子物質を基剤とする溶解型の微細針も開発されている。すなわち、水溶性高分子物質の基剤に目的物質を保持させておき、皮膚に挿入した後、基剤が皮膚内の水分により溶解することにより、目的物質を皮膚内に投与することができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、体内溶解性かつ曳糸性の高分子物質を基剤として用いて微細針を形成することが記載されている。特許文献2には、上記微細針に含まれる目的物質の生物学的利用率(バイオアベイラビリティ)を向上させるために、微細針を体内挿入部分と押圧部分とに区分し、体内挿入部分のみに目的物質を保持させることが記載されている。
【0005】
また、特許文献1及び2には、貼付剤シート等の支持体の上に上記微細針を複数形成したシート状の経皮吸収製剤も記載されている。
【0006】
経皮吸収製剤を皮膚に投与するための投与器具の開発も行われており、例えば、特許文献3には、図7〜10に、先端に経皮吸収製剤を装着したピストンと、ピストンを収納する筐体と、ピストンを駆動するコイル圧縮スプリングとを有する経皮吸収製剤投与器具が記載されている。しかし、この経皮吸収製剤投与器具は(1)機構が複雑で高価である、(2)微細針が湿気から保護されない、(3)片手で安定して使うことが困難である、(4)製造時の滅菌状態を維持するための密封機能を欠いている、といった問題がある。
【0007】
特に、コンドロイチン硫酸、デキストラン、ヒアルロン酸などの水溶性かつ洩糸性の高分子物質を基剤として用いて調製した微細針を有する経皮吸収製剤の場合、大気雰囲気に放置すると、大気中の湿気を吸って微細針の先端部分が軟化する可能性がある。
【0008】
また腹部の皮膚に経皮吸収製剤を投与する場合には、両手を使って投与器具を操作することができるが、腕の皮膚に経皮吸収製剤を投与する場合、片手で皮膚に対して経皮吸収製剤経皮吸収製剤を垂直に投与することが困難な患者もいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開公報2006/080508
【特許文献2】国際公開公報2009/066763
【特許文献3】特表2005−533625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、経皮吸収製剤を製造した後、使用するまでの間、密封条件下で微細針の性能を損なわないように防湿し、衛生的に保ち、輸送過程における破損を防止し、かつ投与時に片手で容易に皮膚へ垂直に押しつけることが可能な経皮吸収製剤包装投与器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、長さ方向に対して垂直で平坦な先端面を有する支持棒、後面が該先端面に接着された経皮吸収製剤、及び該支持棒が長さ方向に摺動するように該支持棒を収納し、先端部に長さ方向に対して垂直なフランジを有するガイド筒、を有する経皮吸収製剤投与器具と、
自立性及び柔軟性であり、該経皮吸収製剤投与器具の全体を覆い、該経皮吸収製剤投与器具を密封する包装容器とを、
有する経皮吸収製剤包装投与器具を提供する。
【0012】
ある一形態においては、前記包装容器がPTP包装容器である。
【0013】
ある一形態においては、前記包装容器は、経皮吸収製剤の前面及びガイド筒のフランジの前面に対応する部分が開口可能である。
【0014】
ある一形態においては、前記支持棒が注射棒であり、前記ガイド筒が注射筒の注射針装着壁を貫通させたものであり、該フランジが注射筒の保持用翼である。
【0015】
ある一形態においては、ガイド筒に収納された支持棒を、該支持棒の先端面を投与対象である皮膚に向けて駆動するための手段を更に有する。
【0016】
ある一形態においては、支持棒の先端面の位置がガイド筒のフランジの前面より後方に維持されるように、ガイド筒に対して支持棒を固定するストッパーを更に有する。
【0017】
ある一形態においては、ガイド筒の側壁は、ガイド筒の先端の近傍に、ガイド筒の内外を連通する通気孔を有する。
【0018】
ある一形態においては、前記支持棒は、該支持棒の先端面より前方に存在するガイド筒内の空間と支持棒の先端面より後方に存在する空間を連通する通気孔を有する。
【0019】
ある一形態においては、前記支持棒は、該支持棒を長さ方向に棒の後端部から棒の先端部まで貫通し、経皮吸収製剤の後面に到達する穴を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の経皮吸収製剤包装投与器具を用いれば、経皮吸収製剤を製造した後、使用するまでの間、密封条件下で微細針の性能を損なわないように防湿し、衛生的に保ち、輸送過程における破損を防止し、かつ投与時に片手で容易に皮膚へ垂直に押しつけることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態である経皮吸収製剤包装投与器具の断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態である経皮吸収製剤包装投与器具の断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態である経皮吸収製剤包装投与器具の断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態である経皮吸収製剤包装投与器具の断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態である経皮吸収製剤包装投与器具の断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態である経皮吸収製剤包装投与器具の断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態である経皮吸収製剤包装投与器具の断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態である経皮吸収製剤包装投与器具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照して、本発明の包装投与器具は3部より構成される。第1部は、経皮吸収製剤12を先端面に保持する支持棒11である。支持棒11は長さ方向に対して垂直で平坦な先端面を有する。経皮吸収製剤12は、支持体と目的物質を保持する複数の微細針とを有する。微細針は支持体の前面に形成され、支持体の後面は支持棒11の先端面に接着される。
【0023】
微細針は、好ましくは水溶性、より好ましくは水溶性かつ洩糸性の高分子物質を基剤として用いて調製したものを用いる。基剤が大気中の湿気を吸って微細針の先端部分が軟化することを防止する、という本願発明の課題が有効に達成されるからである。
【0024】
支持棒の先端面に対する経皮吸収製剤の支持体の後面の接着は、接着剤、粘着剤及び両面テープ等の接着部材を使用して行えばよい。但し、経皮吸収製剤を皮膚に衝突させた後に、経皮吸収製剤を支持棒から分離可能なように、接着力は適度に調節する必要がある。
【0025】
第2部は、経皮吸収製剤を保持する支持棒11を垂直に片手で皮膚に押し付けるためのガイド筒13である。ガイド筒13は支持棒が長さ方向に摺動するように該支持棒を収納する。
【0026】
支持棒11は、長さ方向と垂直な面で切った断面形状が円形であり、また、直径が先端部から後端部まで実質的に一定であることが好ましい。経皮吸収製剤を取り付けることができる程度の面積の先端面を有し、長さ方向に対する先端面の垂直を保ったままガイド筒の内部を長さ方向に摺動することが容易だからである。
【0027】
但し、長さ方向に対して垂直で、経皮吸収製剤を取り付けることができる程度の先端面を有し、長さ方向に対する先端面の垂直を保ったままガイド筒の内部を長さ方向に摺動することができる限り、支持棒11の断面形状及び直径は途中で変化してもよい。例えば、支持棒11は、先端面を有する円盤を十字又は放射状に組み合わせた板からなる支柱で支持する形態、又は先端面を有する円盤をより細い棒状の支柱で支持する形態であってもよい。
【0028】
ガイド筒13は、長さ方向に対して垂直なフランジ14を先端部に有する。フランジ14は、経皮吸収製剤の投与時に、表面が投与対象である皮膚に接触する。そのことにより、ガイド筒の長さ方向は、皮膚に対して垂直に設置される。フランジ14の表面には、皮膚との接触を確実に行うために接着剤17が設けられてもよい。
【0029】
第3部は、経皮吸収製剤を保持する支持棒とガイド筒とを有する経皮吸収製剤投与器具を密封条件下で保存するための包装容器20である。包装容器20は経皮吸収製剤投与器具の全体を覆い、これを密封する。包装容器20は自立性であり、微細針の先端部との間に空間を維持することができる。また、包装容器20は柔軟性であり、経皮吸収製剤投与器具を包装容器の外部へ取り出さなくても、包装容器に経皮吸収製剤投与器具を収納した状態で、包装容器の外側からガイド筒を手で掴んで固定し、支持棒を押すことができる。
【0030】
包装容器20は、縁部の周囲にシール部26が設けられており、防湿フィルム21が剥離可能に接着されている。その結果、包装容器の経皮吸収製剤の前面及びガイド筒のフランジの前面に対応する部分は開口可能である。皮膚との接触を確実に行うために包装容器の縁部、例えば、シール部の周囲に接着剤17が設けられてもよい。また、投与時まで微細針がガイド筒内に確実に収納されるように、即ち、微細針の先端の位置がガイド筒のフランジの前面より後方に維持されるように、包装容器の底面に接着剤17を設けて、支持棒の後面を接着してもよい。
【0031】
第3部には医薬品用包装を応用し、製造後使用するまでの間、経皮吸収製剤の性能を損なうことなく衛生的に保ちかつ輸送過程における破損を防止することができるPTP包装などを用いることが好ましい。
【0032】
本発明で使用する経皮吸収製剤投与器具は、市販されている注射器、例えば、ディスポーザブル注射器の構成部品を改良して製造することができる。例えば、注射棒は支持棒11として使用することができる。ガイド筒14としては、注射筒の先端部を切断するなどして、注射針装着壁を貫通させ、前後を逆にしたものを使用できる。その場合、注射筒の保持用翼はフランジ14として機能する。
【0033】
図2を参照して、支持棒11には、長さ方向に棒の後端部から棒の先端部まで貫通し、経皮吸収製剤の後面に到達する穴を設けてもよい。経皮吸収製剤を皮膚に衝突させた後、経皮吸収製剤包装投与器具を皮膚から除去する際に、この穴から棒を通して経皮吸収製剤を皮膚に押し付けることにより、経皮吸収製剤は皮膚の上に残しておくことができる。
【0034】
図3及び図4を参照して、ガイド筒13の側壁には、ガイド筒13の先端の近傍に、ガイド筒13の内外を連通する通気孔を設けてもよい。そうすることで、支持棒を皮膚に向かって押した場合に、支持棒の先端面より前方に存在するガイド筒内の空気がガイド筒外に逃がされる。つまり、支持棒の先端面と皮膚の間に存在する空気が圧縮されず、経皮吸収製剤の皮膚に対する衝突圧が弱化されなくなる。
【0035】
同じ目的で、支持棒には、該支持棒の先端面より前方に存在するガイド筒内の空間と支持棒の先端面より後方に存在する空間を連通する通気孔を設けてもよい。
【0036】
図1〜4に示した形態の経皮吸収製剤包装投与器具は、例えば、次のように使用することができる。
【0037】
まず、片手で包装容器20の外側からガイド筒13を掴み、もう片方の手で防湿フィルム26の端部を掴んで、シール部26から剥がす。そのことにより、包装容器の経皮吸収製剤の前面及びガイド筒のフランジの前面に対応する部分が開口する。開口した経皮吸収製剤包装投与器具を片手で包装容器の外側から掴んだまま、開口部を皮膚の投与対象部分に当てる。その結果、包装容器20の縁部及びガイド筒のフランジ14の表面が、例えば接着剤17によって皮膚に固定される。
【0038】
包装容器の外側から支持棒の後端部を押し下げて支持棒を皮膚に向かって駆動する。支持棒の駆動は手動で行ってよく、バネ、ゴム等の弾性部材を利用して行ってもよい。そのことにより、経皮吸収製剤の前面が皮膚に衝突し、微細針が皮膚に刺入される。次いで、図2又は図4に示される支持棒の穴に、支持棒の後端部から細い棒を差し込んで、経皮吸収製剤を皮膚に押し付ける。そして、その操作を行いながら、経皮吸収製剤包装投与器具を皮膚から取り外す。結果として、経皮吸収製剤は経皮吸収製剤包装投与器具から分離されて、皮膚上に残される。その後、経皮吸収製剤の後面からテープ、例えば、医療用粘着テープを貼り、経皮吸収製剤を皮膚上に固定する。
【0039】
図5を参照して、本発明で用いる経皮吸収製剤投与器具は、包装容器20から取り出して患者の皮膚へ投与するまでの間に経皮吸収製剤が吸湿するのを防止するために、注射筒の出口に防湿フィルム15を用いて封をしておくとともに、注射棒と注射筒との上部の隙間にパッキング22を備えておいてもよい。防湿フィルム15は、投与直前に取り剥がし用捕り手16を手で掴んで除去される。また、パッキング22は注射棒を押し下げる操作により自動的に除去される。
【0040】
本発明の経皮吸収製剤包装投与器具は、投与時まで微細針がガイド筒内に確実に収納されるように、即ち、微細針の先端の位置がガイド筒のフランジの前面より後方に維持されるように、ガイド筒の側壁に、ガイド筒に対して支持棒を固定するストッパー18を設けてよい。そのことにより、投与時まで微細針がガイド筒内に確実に収納され、微細針の先端部との間に空間を維持することができる。
【0041】
この場合、支持棒11を皮膚に向かって駆動する手段として、ガイド筒の側壁にはフック23を設け、ゴム19の中間部を支持棒の後端部25にかけて伸ばし、両端部をフック23に固定しておいてもよい。
【0042】
図6を参照して、ストッパー18は、所定の長さを有する棒状であり、ガイド筒の後端面と支持棒の後端部の間を支える形態であってもよい。また、支持棒11の駆動手段は、伸ばした状態で、両端をガイド筒の後端部と支持棒の後端部25に固定したバネ24であってもよい。
【0043】
また、防湿フィルム15を除去した経皮吸収製剤投与器具のガイド筒の先端を皮膚へ当てる操作及びストッパーの解放操作は片手で行うことが可能である。そのため、ガイド筒に対して支持棒を固定するストッパー及び支持棒を皮膚に向かって駆動する手段を組み合わせて有する経皮吸収製剤投与器具では、基本的には片手で、調整可能な一定の力により経皮吸収製剤を皮膚へ垂直に衝突させ、押し当てることが可能になる。
【0044】
図7及び図8を参照して、ガイド筒13の側壁には、ガイド筒13の先端の近傍に、ガイド筒13の内外を連通する通気孔を設けてもよい。そうすることで、支持棒を皮膚に向かって押した場合に、支持棒の先端面より前方に存在するガイド筒内の空気がガイド筒外に逃がされる。つまり、支持棒の先端面と皮膚の間に存在する空気が圧縮されず、経皮吸収製剤の皮膚に対する衝突圧が弱化されなくなる。
【0045】
以下に実施例をあげて具体的な実施形態を説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
実施例1
10ミリリットルのディスポ注射器(テルモ社製、テルモシリンジss-10ESz)の注射棒の先端にはめてあるゴムを除去した。注射筒の先端から0ミリリットルの表示線まで切除した。注射筒に輪ゴムを取り付けるために、外側に取り付け用のリングをはめ接着剤で固定するか、あるいは取り付けリングの代わりに注射筒に切り込みを入れた。注射棒を注射筒の切断面から挿入した。注射棒と注射筒を輪ゴムでつないだ。
【0047】
1平方センチメートルあたりに深さ約500ミクロン、開口部直径約300ミクロンの逆円錐状細孔を有するシリコン製基盤の上に、30mgのインスリンナトリウム(自家製)、0.2mgのエバンスブルー(ナカライテスク)および30mgのコンドロイチン硫酸Cナトリウム(和光純薬)に精製水80μlを加えて調製した粘性濃厚液を塗布した。
【0048】
サランラップ(クレハ化学)を被せ、卓上遠心分離器(クボタ4000)で毎分3000回転でシリコン樹脂基盤ごと5分間回転させ、遠心力を利用して加重下、充填した。サランラップを取り除き、シリコン樹脂基盤上の残留物を除去した後、コンドロイチン硫酸Cナトリウムの30mgおよびハイビスワコー103(和光純薬)の0.5mgに精製水30μlを加えて作成した濃厚液をシリコン基盤上の穴に塗布した。
【0049】
サランラップ(クレハ化学)を被せ、シリコン樹脂基盤ごと卓上遠心分離器で5分間回転させ、遠心力を利用して加重下、充填した。ハイビスワコー103(和光純薬)の1.6gに精製水36mlを加えて調製した粘着剤を直径15mmの酢酸セルロース製錠剤の基盤に塗布した後、シリコン基盤上に被せた。錠剤をシリコン基盤に押しつけながら30℃で2時間かけて乾燥させた後、錠剤をシリコン基盤から引きはがすことにより直径15mmの経皮吸収製剤を得た。
【0050】
注射棒の先の平坦部に経皮吸収製剤の裏面を貼り付けた後、注射棒の先を注射筒の7ミリリットルの表示線まで引き上げて、注射筒に開けた穴にストッパーを差し込み固定した。注射筒の保持用翼に取りはがし用のとって部分を付けた直径20mmの円形のポリエチレン製フィルムを用いてシールを行った。アクリル酸エステル共重合体で作成した接着剤をシールフィルムで覆われていない保持用翼の外側部分に塗布し、幅20mm長さ30mmのフィルムで覆った。上記の注射棒および注射筒をPTP包装に入れて密封した(図5)。
【0051】
作成したPTP包装を開けて、投与器具を取り出した。注射筒のシールフィルムの取り剥がし用捕り手を持って剥がした。さらに接着面を覆うフィルムを剥がし、注射筒の保持用翼を左腕の皮膚に貼り付けることにより注射筒を皮膚に対して垂直に固定した。
【0052】
注射棒を固定しているストッパーを注射筒からはずすと注射棒の先についた経皮吸収製剤の微細針が皮膚に突き刺さった。その状態で約1分間押しつけた後、投与器具を取り外した。皮膚を観察したところ、エバンスブルーに由来する青色のドットが転写され、マイクロニードルを皮膚にうまく投与できた。注射棒による加圧力をディジタルフォースゲージ(FGN−2,日本電産シンポ工業)で測定したところ4.75Nであった。
【0053】
実施例2
10ミリリットルのディスポ注射器(テルモ社製、テルモシリンジss-10ESz)の注射棒の先端にはめてあるゴムを除去した。注射筒の先端から5ミリリットルの表示線まで切除した。注射棒を注射筒の切断面から挿入した。注射棒と注射筒を金属バネでつないだ。
【0054】
実施例1で調製したのと同じ経皮吸収製剤を注射棒の先の平坦部に貼り付けた後、注射棒の先を注射筒の8ミリリットルの表示線まで引き上げて、注射筒の縁と注射棒の根元の親指で押す部分との間にストッパーをはめた。注射筒の保持用翼に取りはがし用のとって部分を付けた直径20mmの円形のポリエチレン製フィルムを用いてシールを行った。アクリル酸エステル共重合体で作った接着剤をシールフィルムで覆われていない保持翼の外側部分に塗布し、幅20mm長さ30mmのフィルムでカバーした。上記の注射棒および注射筒をPTP包装に入れて密封した(図6)。
【0055】
体重357グラムの雄性ラットにペントバルビタール麻酔をかけ、手術台の上に仰向けに固定した。腹部の体毛を除毛し、左右の腹部に長さ約4cmの切り込みをメスで入れた。幅3cm長さ15cm厚さ0.5cmの板をラットの腹部を貫くように腹腔内に挿入した。作成したPTP包装を開けて、投与器具を取り出した。注射筒のシールフィルムの取り剥がし用捕り手を持って剥がした。接着剤を覆うフィルムを剥がし、注射筒の保持用翼をラットの腹部皮膚に貼り付けることにより注射筒を皮膚に対して垂直に固定した。
【0056】
注射棒と注射筒を固定しているストッパーをはずすと注射棒の先についた経皮吸収製剤の微細針が皮膚に突き刺さり、エバンスブルーに由来する青色のドットが転写され、マイクロニードルを皮膚にうまく投与できた。注射棒による加圧力をディジタルフォースゲージ(FGN−2,日本電産シンポ工業)で測定したところ5.23Nであった。
【0057】
実施例3
10ミリリットルのディスポ注射器(テルモ社製、テルモシリンジss-10ESz)の注射棒の先端にはめてあるゴムを除去するとともに反対側を切断して20mmの長さとした。注射筒の先端から11ミリリットルの表示線までを切除した。注射棒を注射筒の切断面から挿入した。注射棒の先の平坦部に実施例1で調製したのと同様の直径15mmの経皮吸収製剤を貼り付けた。
【0058】
実施例1と同様にアクリル酸エステル共重合体で作った接着剤を注射筒の保持翼に塗布した。注射棒の上端にも接着剤を塗布し、注射棒および注射筒をPTP包装に入れ、注射棒の上端をPTP包装材の内表面に接着させた。アルミシートでヒートシールを行ってPTP包装を完了した。経皮吸収製剤が上向きとなる状態で保存した(図1)。
【0059】
作成したPTP包装のアルミ箔側の非接着片を引っ張ることにより開けた。PTP包装に入ったままの状態で注射筒の保持用翼に塗布した粘着剤を利用して左腕の皮膚に貼り付けた。PTP包装の上部を右手の手のひらで叩くことにより経皮吸収製剤の微細針を皮膚に突き刺したところ、皮膚にうまく投与できた。右手での注射棒への加圧力をディジタルフォースゲージFGN−5で測定したところ15.3Nであった。
【符号の説明】
【0060】
11…支持棒、
12…経皮吸収製剤、
13…ガイド筒、
14…フランジ、
15…防湿フィルム、
16…取り剥がし用捕り手、
17…接着剤、
18…ストッパー、
19…ゴム、
20…包装容器、
21…防湿フィルム、
22…パッキング、
23…フック、
24…バネ、
25…支持棒の後端部、
26…シール部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向に対して垂直で平坦な先端面を有する支持棒、後面が該先端面に接着された経皮吸収製剤、及び該支持棒が長さ方向に摺動するように該支持棒を収納し、先端部に長さ方向に対して垂直なフランジを有するガイド筒、を有する経皮吸収製剤投与器具と、
自立性及び柔軟性であり、該経皮吸収製剤投与器具の全体を覆い、該経皮吸収製剤投与器具を密封する包装容器とを、
有する経皮吸収製剤包装投与器具。
【請求項2】
前記包装容器がPTP包装容器である請求項1に記載の経皮吸収製剤包装投与器具。
【請求項3】
前記包装容器は、経皮吸収製剤の前面及びガイド筒のフランジの前面に対応する部分が開口可能である請求項1又は2に記載の経皮吸収製剤包装投与器具。
【請求項4】
前記支持棒が注射棒であり、前記ガイド筒が注射筒の注射針装着壁を貫通させたものであり、該フランジが注射筒の保持用翼である請求項1〜3のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤包装投与器具。
【請求項5】
ガイド筒に収納された支持棒を、該支持棒の先端面を投与対象である皮膚に向けて駆動するための手段を更に有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤包装投与器具。
【請求項6】
支持棒の先端面の位置がガイド筒のフランジの前面より後方に維持されるように、ガイド筒に対して支持棒を固定するストッパーを更に有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤包装投与器具。
【請求項7】
ガイド筒の側壁は、ガイド筒の先端の近傍に、ガイド筒の内外を連通する通気孔を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤包装投与器具。
【請求項8】
前記支持棒は、該支持棒の先端面より前方に存在するガイド筒内の空間と支持棒の先端面より後方に存在する空間を連通する通気孔を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤包装投与器具。
【請求項9】
前記支持棒は、該支持棒を長さ方向に棒の後端部から棒の先端部まで貫通し、経皮吸収製剤の後面に到達する穴を有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤包装投与器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−75855(P2012−75855A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148307(P2011−148307)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)本発明は独立行政法人科学技術振興機構が(株)バイオセレンタックに委託した平成20年度独創的シーズ展開事業 革新的ベンチャー活用開発一般プログラムに係る「2層マイクロニードル製造装置」の成果によるものであり、産業技術力強化法第19条の適用を受けるものである。
【出願人】(502414389)株式会社バイオセレンタック (24)
【Fターム(参考)】