説明

経皮吸収調節剤

【課題】ポリフェノールの経皮吸収率を高めることが可能であり、かつ経皮吸収効率の調節が可能な経皮吸収調節剤を提供すること。
【解決手段】本発明は、炭素数が4〜8の2価アルコールと、炭素数が3〜6の3価アルコールおよび4価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールとからなる、ポリフェノールの経皮吸収調節剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェノールの経皮吸収調節剤および外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリフェノールは、美白効果、抗酸化作用などの種々の作用を有することから、化粧品などの外用剤、食品などへの利用が試みられている(例えば、特許文献1および2)。しかし、ポリフェノールの1種であるタンニンは、皮のなめし剤として使用されているほどに、タンパク質との結合能力が極めて強いという性質を有する。そのため、ポリフェノールを含む外用剤を適用する場合、ポリフェノールが肌表面(例えば、角質)のタンパク質と結合することにより、肌内部へ吸収されず、ポリフェノールによる効果が十分に発揮されないという問題がある。
【0003】
一方、皮膚外用剤において生理活性物質の皮膚透過性を促進する試みがなされている(特許文献3)。特許文献3には、生理活性物質の皮膚透過性を促進するために、1,2−ペンタンジオールを利用することが記載されている。
【特許文献1】特開平6−336423号公報
【特許文献2】特開2001−270881号公報
【特許文献3】特開2002−87926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、外用剤に配合される活性成分によっては経皮吸収による安全性への懸念が生じるため、外用剤は活性成分の経皮吸収率を調節できることが好ましい。さらに、徐放性の観点からも、外用剤は活性成分の皮膚への吸収を促進するのみならず、調節することが重要である。そこで、種々の作用を有するポリフェノールを外用剤の活性成分として用いた場合に、ポリフェノールが十分に効果を発揮できるような経皮吸収調節剤が求められている。
【0005】
本発明の目的は、ポリフェノールの経皮吸収率を高めることが可能であり、かつ経皮吸収効率の調節が可能な経皮吸収調節剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のポリフェノールの経皮吸収調節剤は、炭素数が4〜8の2価アルコールと、炭素数が3〜6の3価アルコールおよび4価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールとからなる。
【0007】
1つの実施態様においては、上記2価アルコールのIOB値が1〜3であり、かつ前記3価アルコールおよび4価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールのIOB値が3〜5である。
【0008】
他の実施態様においては、上記2価アルコールは、ペンタンジオールである。
【0009】
別の実施態様においては、上記3価アルコールおよび4価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールは、グリセリンまたはジグリセリンである。
【0010】
本発明の外用剤は、上記経皮吸収調節剤と、ポリフェノールまたはポリフェノール含有植物処理物とを含有する。
【0011】
1つの実施態様においては、上記ポリフェノールは、プロアントシアニジンである。
【0012】
他の実施態様においては、上記ポリフェノール含有植物処理物は、松樹皮抽出物、葛花処理物、または甘藷茎葉処理物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポリフェノールの経皮吸収効率を高めることが可能であり、かつ経皮吸収効率の調節が可能な経皮吸収調節剤が提供される。本発明の経皮吸収調節剤は、単にポリフェノールの皮膚への吸収を高めるのではなく、皮膚への吸収を調節することによって、一定量のポリフェノールを供給し、ポリフェノールの効果を長期にわたって効果的に発揮させることを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のポリフェノールの経皮吸収調節剤および外用剤について説明する。
【0015】
(経皮吸収調節剤)
本発明の経皮吸収調節剤は、炭素数が4〜8の2価アルコールと、炭素数が3〜6の3価アルコールおよび4価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールとからなる。
【0016】
本発明の経皮吸収調節剤を構成する2価アルコールの炭素数は、4〜8である。2価アルコールの炭素数が上記範囲外である場合、十分な経皮吸収促進効果を発揮できない。このような2価アルコールとしては、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールなどが挙げられる。好ましくは、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、または1,2−オクタンジオールである。さらに好ましくは、1,2−ペンタンジオールである。上記アルコールは、1種単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0017】
本発明の経皮吸収調節剤を構成する3価アルコールまたは4価アルコールの炭素数は、3〜6である。3価アルコールまたは4価アルコールの炭素数が7以上である場合、上記2価アルコールと十分に相溶せず、十分な経皮吸収抑制効果を発揮できない。このようなアルコールとしては、グリセリン、ジグリセリン、ジプロピレングリコールなどが挙げられる。好ましくは、グリセリンまたはジグリセリンである。上記アルコールは、1種単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0018】
上記2価アルコールのIOB値が1〜3であり、上記3価アルコールおよび4価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールのIOB値が3〜5であることが好ましい。十分な経皮吸収促進効果を発揮するために、2価アルコールのIOB値は上記範囲内であることが好ましい。また、十分な経皮吸収抑制効果を発揮するために、上記3価アルコールおよび4価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールのIOB値は上記範囲内であることが好ましい。ここで、IOB値とは、有機化合物における有機性の値と無機性の値との比であり、IOB値=無機性値(IV)/有機性値(OV)で表される。有機性とは、主にファンデルワールス力による物理化学的物性の程度であり、炭素鎖間の共有結合が連鎖されて構成する炭化水素により生じる値である。無機性とは、主に電気的親和力による物理化学的物性の程度であり、置換基(官能基)に存在する電気的親和力(イオン)の影響により生じる値である。IOB値は、日本エマルジョン株式会社のホームページ(http://www.nihon-emulsion.co.jp/jp/tech/index.html)にある「PDF版有機概念図小冊子」(http://www.nihon-emulsion.co.jp/pdf/ocdbook_e.pdf)に基づいて計算される。以下に、例示のアルコールのIOB値を示す:2価アルコール(例えば、1,3−ブタンジオール 2.5;1,2−ペンタンジオール 2;1,2−ヘキサンジオール 1.7;1,2−オクタンジオール 1.7);3価アルコールまたは4価アルコール(例えば、グリセリン 5;ジグリセリン 3.5)。
【0019】
本発明の経皮吸収調節剤中の2価アルコールと、3価アルコールおよび4価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールとの割合は、特に制限されない。好ましくは、2価アルコール1質量部に対して、3価アルコールおよび4価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールが1質量部〜10質量部、より好ましくは1質量部〜5質量部、さらに好ましくは1質量部〜3質量部である。
【0020】
(外用剤)
本発明の外用剤は、上記経皮吸収調節剤と、活性成分であるポリフェノールまたはポリフェノール含有植物処理物とを含有する。本発明の外用剤は、ポリフェノール含有皮膚外用剤として利用される。
【0021】
(1)ポリフェノール
本発明の外用剤に含まれるポリフェノールとしては、フラボノイド、タンニン類、クロロゲン酸類、エラグ酸類などが挙げられる。ここで、フラボノイドとしては、フラボン類、フラボノール類、フラバノン類、イソフラボン類、アントシアニジン類、フラバノール類、カテキン類などが挙げられ、タンニン類としては、縮合型タンニン、加水分解型タンニンなどが挙げられる。好ましくは、タンニン類、クロロゲン酸類、エラグ酸類、およびイソフラボン類である。縮合型タンニン、イソフラボン類、およびクロロゲン酸類がさらに好適に用いられる。また、これらのポリフェノールを含有する植物処理物(ポリフェノール含有植物処理物)を外用剤に用いることもできる。
【0022】
ポリフェノールは、それぞれの有する様々な構造によって、生理活性が異なる。このようなポリフェノールは、天然に存在するポリフェノールを当業者が通常用いる方法によって分離精製することによって得られ得る。医薬品または試薬として市販されているものを用いてもよい。その場合、医療用に通常使用される純度にまで精製されたものが好適である。医薬または化粧品としての使用または人体への適用に対して安全性に影響を及ぼさない限り、遺伝子組換えにより得られる種々の細胞(微生物、植物細胞、動物細胞、昆虫細胞などを含む)、植物、動物などにより産生されたものであってもよく、化学合成によって製造したものであってもよい。
【0023】
ポリフェノールは植物により生産されるものが多い。そのため、上記のように、ポリフェノールを生産または貯蓄可能な植物部分(根、茎、葉、花、樹皮、果物の皮もしくは種など)を加工することによって得られる植物処理物(ポリフェノール含有植物処理物)を、ポリフェノールとして用いてもよい。植物部分の処理には、例えば、破砕、加熱処理、固液分離処理、乾燥、粉砕処理、または抽出があり、これらの操作を単独または複数種を組み合わせて行い得る。
【0024】
以下、ポリフェノールの中でも、特に好適に用いられる縮合型タンニン、イソフラボン類、クロロゲン酸類、およびこれらを含む植物処理物について説明する。
【0025】
(1−1)縮合型タンニン
縮合型タンニンとしては、特にプロアントシアニジンが好ましく用いられる。本明細書において、プロアントシアニジンとは、フラバン−3−オールおよび/またはフラバン−3,4−ジオールを構成単位とする重合度が2以上の縮重合体からなる化合物群をいう。プロアントシアニジンは、抗酸化作用などの種々の活性を有することが知られている。
【0026】
本発明に用いられるプロアントシアニジンとしては、重合度の低い縮重合体が多く含まれるものが好適である。重合度の低い縮重合体としては、重合度が2〜30の縮重合体(2〜30量体)が好ましく、重合度が2〜10の縮重合体(2〜10量体)がより好ましく、重合度が2〜4の縮重合体(2〜4量体)がさらに好ましい。この重合度が2〜4の縮重合体を、オリゴメリック・プロアントシアニジン(oligomeric proanthocyanidin;以下、OPCという)という。プロアントシアニジンは、ポリフェノール類の一種で、植物が作り出す強力な抗酸化物質であり、植物の葉、樹皮、果物の皮もしくは種の部分に集中的に含まれている。プロアントシアニジン、特にOPCは、具体的には、松、樫、山桃などの植物の樹皮;ブドウ、ブルーベリー、イチゴ、アボガド、ニセアカシア、コケモモの果実もしくは種子;大麦;小麦;大豆;黒大豆;カカオ;小豆;トチの実の殻;ピーナッツの薄皮;イチョウ葉などに含まれている。また、西アフリカのコーラナッツ、ペルーのラタニアの根、日本の緑茶にも、OPCが含まれることが知られている。OPCは、ヒトの体内では、生成することのできない物質である。
【0027】
本発明の外用剤に用いられるプロアントシアニジンとしては、上記植物の樹皮、果実もしくは種子の粉砕物、またはこれらの抽出物のような材料を使用することができる。これらの中で、上記抽出物を用いることが好ましく、特に、松樹皮由来の抽出物(松樹皮抽出物)を用いることが好ましい。松樹皮抽出物は、上記プロアントシアニジンを含有する植物に由来する抽出物の中でも特に高い生理活性を示す。これは、上記プロアントシアニジンを含む植物のうち、松樹皮がOPCを豊富に含むため、あるいはプロアントシアニジン以外にも有効成分を含むためと考えられる。したがって、松樹皮は、プロアントシアニジンの原料として好ましく用いられる。上記抽出物は、さらに、夾雑物を除去したものが好ましい。松樹皮抽出物は、例えば、特許3808494号公報に記載の処理方法によって得ることができる。
【0028】
上記植物に由来する抽出物は、プロアントシアニジンを乾燥質量換算で、好ましくは1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、30質量%以上、50質量%以上、70質量%以上、または70質量%〜90質量%含有する。さらに、この原料植物由来の抽出物中にOPCを乾燥質量換算で(抽出物の固形分中に)、好ましくは10質量%以上、20質量%以上、または30質量%以上含有する。このようにプロアントシアニジンを高い割合で含有する原料として、上述のように松樹皮抽出物が好ましく用いられる。
【0029】
上記植物に由来する抽出物には、プロアントシアニジン、特にOPCとともにカテキン(catechin)類が含まれることが好ましい。カテキン類とは、ポリヒドロキシフラバン−3−オールの総称である。カテキン類としては、(+)−カテキン(狭義のカテキンといわれる)、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、アフゼレキンなどが知られている。上記松樹皮のような原料植物由来の抽出物からは、上記の(+)−カテキンの他、ガロカテキン、アフゼレキン、(+)−カテキンの3−ガロイル誘導体、およびガロカテキンの3−ガロイル誘導体が単離されている。カテキン類は、単独では水溶性が乏しく、その生理活性が低いが、OPCの存在下で水溶性が増すと同時に、活性化する性質があり、OPCとともに摂取することで効果的に作用する。
【0030】
カテキン類は、上記原料植物抽出物に、5質量%以上、好ましくは10質量%以上含有される。さらに好ましくは、該抽出物中にOPCを20質量%以上、そしてカテキン類が5質量%以上含有される。例えば、抽出物のカテキン類含量が5質量%未満の場合、カテキン類を添加し、最終的な含量が5質量%以上となるように調整してもよい。OPCを20質量%以上含有し、かつカテキン類を5質量%以上含有する松樹皮抽出物を用いることが最も好ましい。
【0031】
(1−2)イソフラボン類
本発明において、イソフラボン類を用いる場合は、葛花から調製したイソフラボン類または当該イソフラボン類を含有する葛花処理物が、活性成分として好ましく用いられる。この葛花処理物は、マメ科植物に属する葛植物の花部の処理物であれば、特に制限されない。葛花には、蕾から全開した花までの段階で採集した花が含まれる。蕾を用いることが好ましい。本明細書において、「葛花処理物」は、上記葛花に破砕処理、乾燥処理、粉砕処理、および抽出処理のうちの少なくとも1種の処理を行って得られるものをいう。葛花処理物には、葛花破砕物(葛花の搾汁も含む)、葛花の乾燥物、葛花の乾燥粉砕物(葛花粉末)、および葛花抽出物が含まれる。葛花抽出物には、葛花、葛花破砕物、葛花乾燥物または葛花粉末から抽出処理を行って得られる抽出物が含まれる。葛花抽出物の形状は問わず、液状、ペースト状、および粉状(葛花抽出エキス末という場合がある)のいずれであってもよい。好ましくは、葛花の搾汁、葛花抽出物、またはこれらの乾燥粉末(搾汁粉末、抽出エキス末など)である。
【0032】
本発明で用いられる葛花処理物は、上記のように、イソフラボン類などのフラボノイド、サポニン、トリプトファン配糖体などを含有する。これらの成分の含有量は特に制限されない。通常、葛花処理物中にイソフラボン類が乾燥質量換算で0.5質量%以上、好ましくは1質量%〜20質量%含有され、サポニンが0.2質量%以上、好ましくは0.5質量%〜20質量%含有される。葛花処理物のうち、葛花の搾汁、葛花抽出物、またはこれらの乾燥粉末などのように、予め不溶性固形分(残渣)を除いた葛花処理物は、イソフラボン類およびサポニンを高含有する葛花処理物として好適に用いられる。このような不溶性固形分を除いた葛花処理物中には、イソフラボン類が好ましくは乾燥質量換算で3質量%以上、より好ましくは5質量%〜90質量%含有され、サポニンが好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%〜50質量%含有される。
【0033】
以下、上記葛花処理物である、葛花の乾燥物、葛花粉末、および葛花抽出物の調製方法について説明する。
【0034】
葛花の乾燥物は、葛花、好ましくは蕾の段階の葛花を、日干し、熱風乾燥などの方法により乾燥して得られる。好ましくは、水分含有量が10質量%またはそれ以下となるまで行われ得る。
【0035】
葛花粉末は、上記葛花の乾燥物を粉砕して得られる。粉末化は、当業者が通常用いる方法、例えば、ボールミルやハンマーミル、ローラーミルなどを用いて行われる。葛花粉末はまた、採取した葛花を、マスコロイダー、スライサー、コミトロールなどを用いて破砕して葛花破砕物を得、この葛花破砕物を乾燥することによっても得られる。
【0036】
葛花抽出物は、例えば、葛花採集物、葛花破砕物、葛花の乾燥物あるいは葛花粉末(以下、単に抽出原料ということがある)に溶媒を添加して、必要に応じて加温して抽出を行い、遠心分離またはろ過により抽出液を回収することによって得られる。
【0037】
上記抽出に用いる溶媒としては、例えば、水、有機溶媒、含水有機溶媒などが挙げられる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、および1,1,2−トリクロロエテンなどが挙げられる。好ましくは極性有機溶媒、より好ましくはエタノール、n−ブタノール、メタノール、アセトン、プロピレングリコール、酢酸エチル、最も好ましくはエタノールである。
【0038】
抽出温度は、使用する溶媒の沸点以下の温度であれば特に制限はない。抽出温度は、用いる溶媒によっても異なるが、有効成分の分解などを考慮して、一般に、4℃〜130℃である。好ましくは50℃〜130℃、より好ましくは70℃〜100℃である。加温して抽出する場合は、例えば、加熱還流などの加温抽出法、超臨界抽出法などが採用され得る。加温する場合、加圧して行ってもよい。
【0039】
抽出時間は、抽出原料から十分に可溶性成分が抽出される時間であればよく、抽出温度などに応じて適宜設定すればよい。好ましくは30分〜48時間である。例えば、抽出温度が50℃未満の場合は、6時間〜48時間抽出され得、50℃以上の場合は、30分〜24時間抽出され得る。
【0040】
また、得られた抽出液は、必要に応じて、減圧濃縮や凍結乾燥等の当業者が用いる方法により濃縮され、液状、ペースト状、あるいは粉末とすることにより、葛花抽出物が得られる。
【0041】
あるいは、この抽出物を合成吸着剤(ダイアイオンHP20やセファビースSP825、アンバーライトXAD4、MCIgelCHP20P等)やデキストラン樹脂(セファデックスLH−20など)を用いてさらに精製し、フラボノイドやサポニンなどの濃度が高い葛花抽出物を得ることができる。
【0042】
(1−3)クロロゲン酸類
本発明において、クロロゲン酸類を用いる場合は、甘藷茎葉から調製したクロロゲン酸類または当該クロロゲン酸類を含有する甘藷茎葉処理物が、活性成分として好ましく用いられる。クロロゲン酸類は、カフェー酸(3,4−ジヒドロキシケイ皮酸)またはその誘導体とキナ酸またはその誘導体との結合体(例えば、カフェオイルキナ酸)であり、例えば、クロロゲン酸(キナ酸とカフェー酸との1分子同士の結合体)、ジカフェオイルキナ酸(キナ酸1分子とカフェー酸2分子との結合体)、およびトリカフェオイルキナ酸(キナ酸1分子とカフェー酸3分子との結合体)が挙げられる。
【0043】
本明細書において、「甘藷茎葉処理物」とは、甘藷茎葉を乾燥した乾燥粉末、甘藷茎葉より得られた搾汁およびこの乾燥粉末、またはこれらの抽出物をいう。甘藷茎葉処理物は、例えば、特開2005−278596号公報に記載の処理方法によって得ることができる。
【0044】
(2)外用剤の組成
本発明の外用剤中の経皮吸収調節剤の含有量は、ポリフェノールの種類および含有量により適宜設定される。ある1つの態様においては、ポリフェノール1質量部に対して、上記経皮吸収調節剤が100質量部〜1500質量部、好ましくは200質量部〜1000質量部、さらに好ましくは300質量部〜800質量部の割合で含有される。
【0045】
本発明の外用剤中のポリフェノールの含有量は、特に制限されない。それぞれの薬効により異なるが、適宜調整され得る。ポリフェノールは、好ましくは、外用剤中に0.0001質量%〜2質量%、さらに好ましくは、0.001質量%〜1質量%含有される。
【0046】
本発明の外用剤が、ポリフェノール含有植物処理物である松樹皮抽出物を含有する場合、松樹皮抽出物の含有量については特に制限されず、薬効を考慮して適宜調整され得る。松樹皮抽出物は、好ましくは、外用剤中に0.001質量%〜5質量%、好ましくは0.01質量%〜1質量%含有される。
【0047】
本発明の外用剤が、ポリフェノール含有植物処理物である葛花処理物を含有する場合、葛花処理物の含有量については特に制限されず、薬効を考慮して適宜調整され得る。葛花処理物は、好ましくは、外用剤中に0.001質量%〜5質量%、好ましくは0.01質量%〜1質量%含有される。
【0048】
本発明の外用剤が、ポリフェノール含有植物処理物である甘藷茎葉処理物を含有する場合、甘藷茎葉処理物の含有量については特に制限されず、薬効を考慮して適宜調整され得る。甘藷茎葉処理物は、好ましくは、外用剤中に0.001質量%〜5質量%、好ましくは0.01質量%〜1質量%含有される。
【0049】
本発明の外用剤は、外観、使用感および保存安定性をより向上させるために、必要に応じて、当業者が皮膚外用剤に通常用いる基剤および添加剤を含有してもよい。さらに、本発明の外用剤の有する機能をより増強したり、補填したりする目的で、様々な助剤を添加することもできる。
【0050】
上記基剤および添加剤としては、エタノール、賦形剤(デキストリンなど)、香料、色素、保存剤(パラベンなど)、増粘剤(シリコン系ポリマー、アクリル系ポリマー、カルボキシビニル系ポリマーなど)、キレート剤(EDTAなど)、甘味料(スクラロースなど)、清涼剤(メントールなど)、防腐防黴剤(フェノキシエタノールなど)などが挙げられる。
【0051】
上記助剤としては、例えば、他の薬効成分や他の油剤(リノール酸、リノレン酸、パルミチン酸、DHA、EPAなどの不飽和脂肪酸及びその誘導体や亜麻仁油、ヤシ油、ホホバ油、オリーブ油、スクワラン、スクワレン、馬油、コメヌカ油、ヒマシ油などの動植物より抽出された油及びその誘導体など)、保湿剤(コラーゲンまたはその分解物、カロットエキスなどに含まれるコラーゲン類似ペプチド、大豆ペプチド、アミノ酸、ヒアルロン酸などのムコ多糖類、コンドロイチンなどのアミノ糖、トレハロースなどの糖類、海藻類、アルギン酸、グルコマンナン、ペクチンなどの水溶性食物繊維、リン脂質など)、界面活性剤(レシチンや脂肪酸エステル、アミノ酸誘導体など)、紫外線吸収剤(酸化亜鉛や酸化チタンなど)、吸収促進剤などが挙げられる。
【0052】
上記助剤の1つである薬効成分としては、活性酸素除去剤、抗酸化剤、ビタミン剤(ビタミン類、ビタミン様作用因子、これらの塩または誘導体など)、抗炎症剤、細胞賦活剤、ホルモン剤などやこれらの効能を有する動植物由来の抽出物が挙げられる。
【0053】
活性酸素除去剤または抗酸化剤としては、カロテノイド類、L−システイン、これらの誘導体またはこれらの塩、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、マンニトール、ハイドロキノン、トリプトファン、ヒスチジン、没食子酸およびその誘導体、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)や植物の抽出物としてボタンピ抽出物、トマト抽出物、パセリ抽出物、メリッサ抽出物、オウゴン抽出物などの植物抽出物が挙げられる。
【0054】
ビタミン類としては、レチノール、レチナール、レチノイン酸、3−デヒドロレチノール、3−デヒドロレチナール、3−デヒドロレチノイン酸などのビタミンA類;α−カロテン、β−カロテン、γ−カロテン、クリプトキサンチンなどのプロビタミンA類;チアミン(ビタミンB)、リボフラビン(ビタミンB)、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン(以上ビタミンB)、コバラミン(ビタミンB12)、ニコチン酸、ニコチンアミド、パントテン酸、ビオチン(ビタミンH)、葉酸(ビタミンM)などのビタミンB群;アスコルビン酸(ビタミンC);エルゴカルシフェロール(ビタミンD)、コレカルシフェロール(ビタミンD)などのビタミンD類;7−デヒドロコレステロール、エルゴステロールなどのプロビタミンD類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノールなどのビタミンE類;フィロキノン(ビタミンK)、メナキノン(ビタミンK)、メナジオン(ビタミンK)などのビタミンK類などが挙げられる。立体異性体や光学異性体を有するものについては、いずれの異性体も用いることができ、cis体およびtrans体混合物やラセミ体を用いることもできる。
【0055】
ビタミン様作用因子としては、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの必須脂肪酸(ビタミンF)類;オロト酸(ビタミンB13)、カルニチン(ビタミンBT)、myo−イノシトール、コリン、ルチン、ヘスペリジン、エリオシトルリンなどのビタミンP類;メチオニンメチルスルホニウム(ビタミンU);パントテニルアルコールなどが挙げられる。立体異性体や光学異性体を有するものについては、いずれの異性体も用いることができ、cis体およびtrans体混合物やラセミ体を用いることもできる。
【0056】
上記ビタミン類またはビタミン様作用因子の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩;塩酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩などの無機塩;乳酸塩、酢酸塩、トリエタノールアミン塩などの有機塩が挙げられる。上記ビタミン類またはビタミン様作用因子の誘導体としては、アルキルエステル、アルケニルエステル、アリールエステル、リン酸エステル、硫酸エステル、ホスファチジルエステル、グルコシド、ガラクトシド、マルトシド、ラクトシドなどの配糖体などが挙げられる。
【0057】
本発明においては、上記ビタミン類、ビタミン様作用因子、またはこれらの塩もしくは誘導体として、動植物や藻類及び微生物などより抽出、精製して得られた天然由来のものや、化学的もしくは酵素反応を利用して合成したものを用いることができる。
【0058】
細胞賦活剤としては、酵母抽出物及び酵母培養上清、アスパラガス(Asparagus)属植物、アボカド(Persea americana Mill.)、アロエ(Aloe)属植物、アンズ(Prunus armeniaca L. var. ansu Maxim.)、イチョウ(Ginkgo biloba L.)、イヌブナ(Fagus japonica Maxim.)、オオニンニク(Allium sativum L. f. pekinense Makino)、オタネニンジン(Panax ginseng C.A.Meyer)、カミツレ(Matricaria chamomilla L.)、キハダ(Phellodendron amurense Rupr.)及びその同属植物、キュウリ(Cucumis sativus L.)、キンセンカ(Calendula arvensis L.)、シイタケ(Lentinus edodes Sing.)、シナサルナシ(キウイ:Actinidia chinensis Planch.)、スギナ(Equisetum arvense L.)、セイヨウトチノキ(Aesculus hippocastanum L.)、セイヨウニンニク(Allium sativum L.)、センブリ(Swertia japonica Makino)、タマサキツヅラフジ(Stephania cepharantha Hayata)、チシャ(レタス:Lactuca sativa L.)、トウガラシ(Capsicum annuum L.)、トウキンセンカ(Calendula officinalis L.)、トチノキ(Aesculus turbinata Blume)、ニンジン(Daucus carota L.)、ブクリョウ(マツホド:Poria cocos Wolf)、ブドウ(Vitis vinifera L.)、ブナ(Fagus crenata Blume)、ヘチマ(Luffa cylindrica M.Roemen)、ベニバナ(Carthamus tinctorius L.)、マンネンロウ(Rosmarinus officinalis L.)、ミカン(Citrus)属植物、ムクロジ(Sapindus mukurossi Gaertn.)、ムラサキ(Lithospermum officinale L. var. erythrorhizon Maxim.)、ユーカリノキ(Eucalyptus)属植物、ユリ(Lilium)属植物の各抽出物、ヒドロキシ脂肪酸及びその塩並びに誘導体、核酸及びその関連物質、卵殻膜より抽出されたタンパク質及び異性化糖の混合物などが挙げられる。細胞賦活剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
さらに、細胞賦活剤として、リン脂質を用いることができる。リン脂質は、保湿効果も有するため有用である。リン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール(カルジオリピン)、ホスファチジン酸などのグリセロリン脂質、リゾホスファチジルコリン(リゾレシチン)、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジン酸などのリゾグリセロリン脂質、スフィンゴミエリンなどのスフィンゴリン脂質、及びこれらの水素添加物などが挙げられる。リン脂質は、例えば、大豆、卵黄など動植物から抽出、分離することによって、あるいは化学的もしくは酵素的方法により合成することによって得られる。
【0060】
抗炎症剤としては、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、ベクロメタゾン、これらの塩(リン酸塩、プロピオン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩など)などのステロイド性抗炎症剤;サリチル酸、サリチル酸誘導体(アスピリン、サリチルアミド、エテンザミド、サリチル酸メチルなど)、インドール酢酸誘導体(インドメタシン、スリンダクなど)、ピラゾリジンジオン誘導体(フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾンなど)、アントラニル酸誘導体(メフェナム酸、フルフェナム酸など)、プロピオン酸誘導体(イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセンなど)、フェニル酢酸誘導体(ジクロフェナック、フェンブフェン、ブフェキサマクなど)、ベンゾチアジン誘導体(ピロキシカムなど)などの非ステロイド性抗炎症剤;グリチルリチン酸またはその塩もしくは誘導体(グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウムなど);グリチルレチン酸またはその塩もしくは誘導体(グリチルレチン酸ステアリル、ステアリン酸グリチルレチニル、3−サクシニルオキシグリチルレチン酸二ナトリウムなど);アズレン誘導体(グアイアズレン、グアイアズレンスルホン酸エチル、グアイアズレンスルホン酸ナトリウム、カマズレンなど);アラントイン;アロイン;アロエエモジン;シコニンまたはその誘導体(イソブチルシコニン、アセチルシコニン、イソバレリルシコニンなど);ギンセノシド(ギンセノシドRa、ギンセノシドRa、ギンセノシドRbなど);ギンセノシド誘導体(20−グルコギンセノシドRfなど);ペオニフロリン;ペオノールおよびその誘導体(ペオノシド、ペオノリド)などが挙げられる。
【0061】
抗炎症剤としては、さらに上記抗炎症剤を含有する植物抽出物も利用できる。例えば、オウゴン(Scutellariae Radix)、カンゾウ(Glycyrrhizae Radix)、クジン(Sophorae Radix)、サイコ(BupleuriRadix)、シャクヤク(Paeoniae Radix)、ショウマ(Cimicifugae Rhizoma)、タイソウ(Zizyphi Fructus)、チモ(Anemarrhenae Rhizoma)、ボタンピ(Moutan Cortex)、リュウタン(Gentianae Scabrae Radix)、レンギョウ(Forsythiae Fructus)などの抽出物が挙げられる。
【0062】
ホルモン剤としては、エストラジオールまたはその誘導体、植物性のホルモン様物質が挙げられる。
【0063】
本発明の外用剤は、例えば、ローション剤、乳剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤などの種々の形態に加工され得る。本発明の外用剤は、化粧品、医薬品、医薬部外品などとして利用される。具体的には、化粧水、化粧クリーム、乳液、クリーム、パック、ヘアトニック、ヘアクリーム、シャンプー、ヘアリンス、トリートメント、ボディシャンプー、洗顔剤、石鹸、ファンデーション、育毛剤、水性軟膏、スプレーなどとして利用される。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定して解釈すべきではなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0065】
(実施例1)
松樹皮抽出物(株式会社東洋新薬)と、1,2−ペンタンジオールおよびグリセリンとを表1に示す割合で含む試験液を調製した。なお、上記松樹皮抽出物は、プロアントシアニジンを70質量%以上(OPCが、抽出物中に30質量%以上含有される)、およびカテキン類を10質量%以上含有する。
【0066】
三次元構築ヒト皮膚モデルキット(商品名:TESTSKIN LSE−d、東洋紡績株式会社)を用いて、上記試験液の経皮吸収調節作用を評価した。上記キットは、組織トレイの下部に培養トレイが配置された構造を有する。組織トレイに添加した被験物質が、組織を透過して培地トレイで検出されるかどうかで、皮膚への吸収性を検討した。まず、三次元構築ヒト皮膚モデルの組織トレイに実施例1の各溶液(30μL)、培地トレイにはキットに付属する標準培地(600μL)を添加して、37℃、5%CO雰囲気下で培養した。培養開始10分、30分、60分、180分後に培地トレイから培地を回収して、組織トレイを透過した松樹皮抽出物量を、DPPHラジカル消去活性法により測定した。透過した松樹皮抽出物量から、松樹皮抽出物の皮膚組織透過率(%)を求め、各時間での累積皮膚組織透過率(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0067】
(比較例1)
実施例1で用いた松樹皮抽出物を0.05質量%含む水溶液を調製した。この組成は表1に示すとおりである。この比較試験液の皮膚組織透過率を、実施例1と同様の方法を用いて測定した。結果を表1に併せて示す。
【0068】
(比較例2)
実施例1で用いた松樹皮抽出物を0.05質量%および1,2−ペンタンジオールを13質量%含む水溶液を調製した。この組成は表1に示すとおりである。この比較試験液の皮膚組織透過率を、実施例1と同様の方法を用いて測定した。結果を表1に併せて示す。
【0069】
【表1】

【0070】
表1の結果から明らかなように、実施例1の試験液を用いる場合は、松樹皮抽出物のみを含む水溶液(比較例1)を用いる場合に比べて、ポリフェノールを多く含有する松樹皮抽出物の皮膚透過量が増加した。さらに、松樹皮抽出物および1,2−ペンタンジオールを含む水溶液(比較例2)を用いる場合に比べて、ポリフェノールを多く含有する松樹皮抽出物の皮膚透過の吸収速度が抑制されていた。
【0071】
(実施例2)
グリセリンの代わりにジグリセリンを含む試験液もまた調製し、経皮吸収調節作用を評価した。このため、実施例1とは異なるロットの松樹皮抽出物(株式会社東洋新薬)、1,2−ペンタンジオール、グリセリンまたはジグリセリンを表2に示す割合で含む種々の試験液(試験液1、2、3、4)を調製した。試験液2は、3価または4価のアルコールとしてグリセリンを含む対照として、試験液3は、松樹皮抽出物のみを含む対照として、そして試験液4は、3価または4価のアルコールを含まない対照として用いた。これらの試験液の皮膚組織透過率を、培養開始後10分、30分、60分後に培地を回収したこと以外は、実施例1と同様の方法を用いて評価した。結果を表2に併せて示す。
【0072】
【表2】

【0073】
表2の結果から、グリセリンの代わりにジグリセリンを含む試験液を用いた場合でも、松樹皮抽出物のみを含む比較試験液を用いた場合に比べて、ポリフェノールを多く含有する松樹皮抽出物の皮膚透過量が増加したことが分かる。さらに、松樹皮抽出物および1,2−ペンタンジオールを含む比較試験液を用いる場合に比べて、ポリフェノールを多く含有する松樹皮抽出物の皮膚透過の吸収速度が抑制されていた。
【0074】
以上のように、本発明の経皮吸収調節剤は、ポリフェノールの皮膚への吸収を調節することができることが示される。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の経皮吸収調節剤は、ポリフェノールの皮膚への吸収を調節することができる。そのため、ポリフェノールの効果を効率的に発揮することを可能にする。本発明の経皮吸収調節剤を用いると、ポリフェノールの吸収量の増加が達成でき、かつポリフェノールを一定量供給することができるため、ポリフェノールの効果を長期間にわたって発揮させることができる。本発明の経皮吸収調節剤は、ポリフェノールを含有する皮膚外用剤に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数が4〜8の2価アルコールと、炭素数が3〜6の3価アルコールおよび4価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールとからなる、ポリフェノールの経皮吸収調節剤。
【請求項2】
前記2価アルコールのIOB値が1〜3であり、かつ前記3価アルコールおよび4価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールのIOB値が3〜5である、請求項1に記載の経皮吸収調節剤。
【請求項3】
前記2価アルコールが、ペンタンジオールである、請求項1または2に記載の経皮吸収調節剤。
【請求項4】
前記3価アルコールおよび4価アルコールから選択される少なくとも1種のアルコールが、グリセリンまたはジグリセリンである、請求項1〜3のいずれかの項に記載の経皮吸収調節剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの項に記載の経皮吸収調節剤と、ポリフェノールまたはポリフェノール含有植物処理物とを含有する、外用剤。
【請求項6】
前記ポリフェノールが、プロアントシアニジンである、請求項5に記載の外用剤。
【請求項7】
前記ポリフェノール含有植物処理物が、松樹皮抽出物、葛花処理物、または甘藷茎葉処理物である、請求項5に記載の外用剤。

【公開番号】特開2007−153871(P2007−153871A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233003(P2006−233003)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】