説明

経皮的に送達可能な心臓弁およびこれに関連する方法

手術を伴わない、カテーテルによる埋め込みが可能な人工心臓弁は、実質的に「乾燥している」膜または組織材料を含む。少なくとも1つの実施形態において、上記組織は、埋め込み型人工心臓弁を形成するためのフレームに取り付けられる組織小葉アセンブリを形成するために、乾燥している状態で折り畳まれる。あるいは、1または複数の組織小葉は、埋め込み型人工心臓弁を形成するためのフレームと動作可能に組み合わせられる。続いて、上記埋め込み型人工心臓弁は、一体型のカテーテル送達システム上にあらかじめマウントされる。続いて、上記埋め込み型人工心臓弁を含む上記カテーテル送達システムは、上記組織が乾燥しているうちに包装および輸送される。続いて、上記埋め込み型人工心臓弁は、実質的に乾燥しているうちに、処置を受ける患者内に移植され得る。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、医療装置の分野、特に、経皮的に送達可能な心臓弁、および、経皮的に送達可能な心臓弁の作成方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
心臓弁膜症は、生理学的機能を低下させ、当該機能を制限する症状を引き起こす一般的な変性状態であり、世界中で数百万の患者の生命を脅かしている。根本的な原因は様々であるが、心臓弁の機能異常は、突き詰めれば、解剖学的通路が狭くなること(狭窄)による、弁の面を通過する血液の輸送不良、または、血液が再び弁を通過して戻ってきてしまい、これによって弁を通過した血液が正しい方向へ効果的に輸送されにくくなる閉鎖不良(機能不全または逆流)と表現される。これらの血流力学的状態は、1)心拍出量の欠乏、2)心臓のポンピングチャンバーに対する不都合な負荷、を招く。これらはいずれも、換言すれば、患者の機能的障害、または、有効な矯正がなされなかった場合には、しばしば早期の死を引き起こす。
【0003】
心臓弁膜症の最も確実な矯正的治療は、従来は、開胸手術法によって行われており、直視下で、弁の操作、修繕、または人工弁との交換が行われていた。心臓弁の手術は、世界中で毎年数十万件行われているが、費用、罹患率、および死亡率は高く、特に、高齢者である、あるいは併発している別の疾病により生理学的に障害がある等、感受性の高い患者ではそれが顕著である。さらに、外科的な処置が必要とする費用および資源の問題から、世界中の多くの患者が心臓弁の交換手術を等しく利用することは困難である。
【0004】
心臓弁手術の代替策を求めて、過去10年間を超える多数の開発計画によって、カテーテルを通した(trans-catheter)人工心臓弁の経皮的な移植は、欧州連合(EU)では商業利用に、また米国では極めて重要な臨床試験に導入されてきた。EUにおける最初の臨床実験は、重篤な大動脈弁狭窄に罹患している患者であって、心臓切開手術による弁交換のリスクに耐えられないとみなされた患者たちに対して行われた。上記のような例のうちの数千件では、バルーン拡張型の設計、および、自己拡張型の設計の両者を2つの別個のプログラムにおいて利用することにより、経皮的心臓弁交換(PHVR:percutaneous heart valve replacement)は実施可能であり、12〜18ヶ月の死亡率が略25%である一部の患者に対しては、外科手術に匹敵し得ることが示された。Grube E., et al., Progress and Current Status of Percutaneous Aortic Valve Replacement: Results of Three Device Generations of the CoreValve Revalving System, Circ. Cardiovasc Intervent. 2008; 1: 167-175。
【0005】
これまで、PHVRの適用では、特に大動脈弁の位置において、移植手順の技術的困難性が問題となっていた。従来利用されている装置を用いた技術は、当該装置およびこれらの送達カテーテルの径による制限を受ける。大抵の場合、ある小動脈において上記の手順を完全に行うためには、大腿動脈の外科的露出および管理によって、18〜24フレンチ(French)(直径6〜8mm)のシステムを挿入する必要があり、中心動脈内の当該システムの体積によって、上記の送達手順の安全性が脅かされていた。さらに、カテーテルの挿入部位における出血性合併症は、上記の処置における有害事象のかなりの部分を占める。
【0006】
典型的には、現在のPHVの設計は、金属フレーム内に取り付けられた、作動する弁の小葉を形成する生体膜を含んでおり、上記生体膜は、送達カテーテルまたはバルーン上に押し潰され、外装に閉じ込められる。罹患した弁が、大きなバルーンによって最初に膨張した後、このアセンブリは弁の面まで進出し、自己拡張またはバルーン拡張によって配置される。
【0007】
上記の弁を送達するためのシステムの効果的な径は、同軸上にマウントされる各構成要素の総体積によって決定される。PHV自体の体積は、フレームの径と、上記の作動する弁の小葉を形成する内膜の厚さ、剛性、および特有の処理によって決定される。従って、現在のPHV膜の特徴的な厚さは、PHVの最終的な送達プロファイルにおける限定要因となっている。このような特徴的な膜厚は、換言すれば、当該膜が処理され最終的に送達されて用を果たすための方法の結果である。結合のための適切な生体膜を提供するために、典型的には、動物組織の(タンパク質の架橋結合のための)グルタルアルデヒド固定が採用される。強度および耐久性の必要性は、典型的には、相殺する剛性および脆性を与える一方で、組織の厚さ、および、架橋結合の最も好適な範囲を決定してきた。これに続く、適切な溶液における水分の供給は、これらの特徴を改善するが、この方法によって水分を供給された膜は厚さも増大する。
【0008】
PHVの設計のために明らかに必要な事項のひとつとして、弁の配置後、直ちに高い力量で機能することが上げられる。その理由は、患者の血流力学的な生存(hemodynamic survival)がこれに依存するためである。この目的を達するための1つの方法として、外科的弁プロテーゼのように、現在のPHVの設計は、1瓶の溶液内において水を含んでいる状態で用いられるために、完成され、輸送され、送達される。利用に際しては、商用の、外科的に経皮的に埋め込まれる生体心臓弁は、「湿っている」状態で使用される前に、すすがれて調製される。より詳細には、商用の人工心臓弁がすすがれ、圧着され、そしてカテーテル法ラボ(catheterization lab)内でマウントされる。その結果、現在の商用の人工心臓弁には、時間、費用、ならびに、すすぎ、圧着、およびカテーテル法ラボにおける弁のマウントに関連するバラツキという問題点が存在する。すなわち、現在のカテーテル方ラボにおける人工心臓弁のマウントは、遅延、費用、技術的負担、および、起こり得る過誤のうちの1または複数の問題を有している。これらの1つまたは複数の問題を回避することができれば好都合であろう。加えて、現在の「湿っている」弁の設計は、上記押し潰された弁のプロファイルを増大させる。水を含んでいる膜は、配置後直ちに信頼できる動作を行うために、好ましくかつ欠くことのできない柔軟性を有する一方で、組み立てられマウントされた弁の厚さを増大させることになり、これによって弁の送達可能性に妥協を強いている。
【0009】
上述した問題点のいくつかについてさらに詳しく述べる。現在のカテーテルラボにおけるPHVの利用は、場合によっては厄介な、かつ、上記処置の重要な段階における送達手順を長引かせる可能性のある予備的行為を多数必要とする。PHVは保存力のある溶液によって「湿っている」状態で使用するために送達されるため、挿入に先行して、一連の洗浄および水分を供給するための溶液による処理が必要となる。これらの処理が完了すれば、PHVは、当該PHVの送達カテーテルにマウントされる。例として、バルーン拡張性Edwards Sapien弁の場合には、特殊な圧着およびマウント用の器具が必要となる。従って、上述した欠点の解決に当たることが求められる。
【0010】
〔要約〕
本発明は様々な異なる変形例または実施形態を含み得るものであり、また、この概要は限定や包括を意図したものでないと理解されたい。この概要には、いくつかの実施形態が一般的な表現で記載されているが、他の実施形態をより具体的に記載したものも含まれている。
【0011】
少なくとも1つの実施形態では、実質的に「乾燥している」膜を用いたPHVシステムが提供される。上記PHVシステムにおいて、組織材料が調製され、組織小葉アセンブリを形成するように、乾燥している状態で折り畳まれる。その後、上記組織小葉アセンブリは、後で一体型のカテーテル送達システム内にあらかじめマウントされる埋め込み型人工心臓弁を形成するためのフレームに取り付けられる。次に、上記人工心臓弁を含む上記カテーテル送達システムは、上記組織小葉アセンブリが実質的に乾燥しているうちに、包装および輸送される。上記人工心臓弁は、包装袋から取り出してそのまま使用することができる。従って、水分の供給、圧着またはマウント用の器具、あるいはその他の予備的行為を必要とせずに、上記送達システムを体内に挿入することができる。すなわち、上記人工心臓弁の上記組織小葉アセンブリを形成する組織は、処理されて乾燥させられ、次に、乾燥しているうちに、組織小葉アセンブリへと組み合わせられる。その後、上記組織小葉アセンブリは、少なくとも部分的に再び水分が供給され、次に、埋め込み型人工心臓弁を形成するための(ステント等の)フレーム内に取り付けられる。次に、上記人工心臓弁の上記組織小葉アセンブリは乾燥させられる。その後で、上記人工心臓弁は、当該人工心臓弁の上記組織小葉アセンブリが乾燥状態にある間に、包装、送達、および出荷される。次に、上記人工心臓弁は、移植を受ける患者の体内に移植される。従って、上記PHVシステムは、動脈挿入を簡略化し、上記乾燥状態によって体積およびプロファイルが小さくなるに従い、処置上の操作および関連する複雑な問題が、排除とまではいかないが、低減される。加えて、本発明の1または複数の実施形態により、小動脈の患者でも上記PHV処置が受けられるようになる。追加された利点として、本発明の少なくとも1つの実施形態により、上記処置の最も重要な段階における経過時間を短縮して、上記移植を行うことができる。
【0012】
少なくとも1つの実施形態において、膜PHVシステムが提供される。上記膜PHVシステムにおいて、組織材料が調製され、組織小葉アセンブリを形成するために、乾燥している状態で組み合わせられる。上記膜PHVシステムにおいて、さらに、上記組織小葉アセンブリは、その後、少なくとも部分的に水分が供給され、その後で、一体型のカテーテル送達システム内にあらかじめマウントされるフレームに取り付けられる。
【0013】
少なくとも1つの実施形態において、膜PHVシステムが提供される。上記膜PHVシステムにおいて、組織材料が調製され、組織小葉アセンブリを形成するために、乾燥している状態で組み合わせられる。上記膜PHVシステムにおいて、さらに、上記組織小葉アセンブリは、少なくとも部分的に水分が供給され、人工心臓弁を形成するためのフレームに取り付けられる。その後、上記人工心臓弁は乾燥させられ、続いて一体型のカテーテル送達システム内にあらかじめマウントされる。上記のようにあらかじめマウントされた後、上記人工心臓弁の上記組織小葉アセンブリは乾燥している状態のままであり、上記システムは、上記組織小葉アセンブリが乾燥しているうちに、出荷のために包装される。
【0014】
少なくとも1つの実施形態において、膜PHVシステムが提供される。上記膜PHVシステムにおいて、組織材料が調製され、組織小葉アセンブリを形成するために、乾燥している状態で組み合わせられる。上記膜PHVシステムにおいて、さらに、上記組織小葉アセンブリは、少なくとも部分的に水分が供給され、人工心臓弁を形成するためのフレームに取り付けられる。その後、上記人工心臓弁は乾燥させられ、続いて一体型のカテーテル送達システム内にあらかじめマウントされる。上記のようにあらかじめマウントされた後、上記人工心臓弁の上記組織小葉アセンブリは少なくとも部分的に水分が供給され、出荷のために包装される。
【0015】
少なくとも1つの実施形態において、患者内へのカテーテルを通した送達に適合した物体が提供される。上記物体は、フレームに取り付けられた処置された組織をさらに含む人工心臓弁を有し、上記処置された組織は、含水率が当該処置された組織の略50重量%未満であるときに、厚さが略50〜500μmであり、最大抗張力が15MPaを越えるものである。ここで、上述した上記処置された組織の最大抗張力は、水を含んでいるか乾燥しているかにかかわらず、既知の調製された組織の最大抗張力よりも高い。少なくとも1つの実施形態において、上記処置された組織の含水率は、当該処置された組織の略40重量%未満である。少なくとも1つの実施形態において、上記最大抗張力は、略20MPaを超える。少なくとも1つの実施形態において、上記処置された組織は、ポリマー浸潤に曝されたマトリクスを含まないものである。少なくとも1つの実施形態において、上記処置された組織は、処置された心膜組織を含んでいる。
【0016】
少なくとも1つの実施形態において、上記方法は、曝露期間にわたり上記組織切片を光エネルギーに曝露する工程をさらに含み、上記曝露期間は、当該組織切片の曝露された表面からの脂質滴の分離が視認されなくなるまで延長される。少なくとも1つの実施形態において、上記光エネルギーは、25〜100Wの光源に上記組織切片を曝露することと少なくとも同等のものである。より好ましい構成として、上記曝露された表面から略10cmの距離をとって設置されている、平坦な放射面を有する50Wの白熱光源によって、上記暴露された表面を略15分間照射する構成が挙げられる。少なくとも1つの実施形態において、上記方法は、(d)処置開始後略7日間未満にわたる、蒸留水およびイソプロピルアルコールによる上記組織切片のすすぎ(rinsing)をさらに含んでいる。なお、工程(d)は工程(c)の後に実行される。
【0017】
少なくとも1つの実施形態において、患者内への移植に適合した物体(article)が提供される。上記物体は、フレームに取り付けられた処置された組織を含んでいる人工心臓弁を有し、上記処置された組織の含水率は、当該処置された組織の略60重量%未満である。少なくとも1つの実施形態において、上記処置された組織は、心膜組織の部分を含み、上記処置された心膜組織は、最大抗張力が略12MPaを超えるものである。少なくとも1つの実施形態において、上記処置された組織の部分の厚さは、略50〜300μmの間である。少なくとも1つの実施形態において、上記処置された組織の含水率は、当該処置された組織の略40重量%未満である。
【0018】
本明細書で用いられているように、人工心臓弁の心臓弁を形成する組織の状態について言及するとき、「乾燥している(dry)」(または「実質的に乾燥している(substantially dry)」)という用語は、当該組織が患者の体内で再び完全に水分を供給されたときの含水率よりも低い含水率であることを意味する。典型的には、本明細書に記載の1または複数の実施形態に従って処置された心膜組織は、完全に水を含んでいる場合に、含水率は略70重量%となる。含水率40重量%にまで乾燥させると、当該組織の折り畳みおよび縫い付けが容易となるように取扱いの特性が変化する。当業者であれば、乾燥状態下において、上記組織の含水率が変化し得ることを理解するであろう。例えば、折り畳まれて乾燥している上記組織の含水率と、カテーテル送達システム内にあらかじめマウントされた状態で、乾燥している状態で出荷されているときの上記組織の含水率とは、異なり得る。
【0019】
有利なことに、1または複数の本発明の少なくとも1つの実施形態は、弁を送達するためのシステム上にマウントされ、無菌包装されて保存される人工心臓弁を対象としている。従って、少なくとも1つの実施形態では、フレーム、および、当該フレームに取り付けられている組織小葉アセンブリ、を有している人工心臓弁と、上記人工心臓弁が取り外し可能にマウントされている、経皮的に挿入可能な、弁を送達するための機構と、上記経皮的に挿入可能な弁を送達するための機構に取り外し可能にマウントされている上記人工心臓弁を収容している無菌包装と、を含むアセンブリが提供される。
【0020】
少なくとも1つの実施形態において、上記経皮的に挿入可能な、弁を送達するための機構は、バルーンカテーテルを有している。少なくとも1つの実施形態において、上記バルーンカテーテルは、12〜14フレンチのバルーンカテーテルである。少なくとも1つの実施形態において、上記バルーンカテーテルは、略12フレンチ未満のものである。少なくとも1つの実施形態において、上記バルーンカテーテルは、略5〜12フレンチの間のものである。少なくとも1つの実施形態において、上記経皮的に挿入可能な、弁を送達するための機構は、心棒を有している。少なくとも1つの実施形態において、上記無菌包装内で、上記組織小葉アセンブリを形成している組織は、水を含んでいるもの、および、実質的に乾燥していないもの、の少なくとも1つである。少なくとも1つの実施形態において、上記無菌包装内で、上記組織小葉アセンブリを形成している組織は、実質的に乾燥しているものである。少なくとも1つの実施形態において、上記フレームは、ステントを有している。少なくとも1つの実施形態において、上記組織小葉アセンブリを形成している組織は、処置された心膜組織を含んでいる。
【0021】
1または複数の本発明の少なくとも1つの実施形態は、患者内に移植するための人工心臓弁を含んでいる。従って、患者内に移植することができる、あらかじめ包装されている、カテーテルを通した経皮的な送達が可能な人工心臓弁が提供される。上記、あらかじめ包装されている、カテーテルを通した経皮的な送達が可能な人工心臓弁は、フレームと、当該フレームに取り付けられている、実質的に乾燥している組織を有している組織小葉アセンブリと、を含んでいる。
【0022】
少なくとも1つの実施形態において、上記実質的に乾燥している組織は、処置された心膜組織を含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記フレームと、該フレームに取り付けられている組織小葉アセンブリとは、操作可能に、12〜14フレンチのバルーンカテーテルと組み合わせられている。少なくとも1つの実施形態において、上記フレームと、該フレームに取り付けられている組織小葉アセンブリとは、操作可能に、略12フレンチ未満のサイズのバルーンカテーテルと組み合わせられている。少なくとも1つの実施形態において、上記フレームと、該フレームに取り付けられたている組織小葉アセンブリとは、操作可能に、略5〜12フレンチの間のサイズのバルーンカテーテルと組み合わせられている。少なくとも1つの実施形態において、上記実質的に乾燥している組織の含水率は、当該実質的に乾燥している組織の略40重量%未満である。
【0023】
少なくとも別の実施形態において、患者に対して用いられるアセンブリが提供される。上記アセンブリは、上記患者内に経皮的に心臓弁を配置するための送達システムを収容している、密封された無菌包装を有し、上記心臓弁は、上記密封された無菌包装内の送達システムに取り外し可能にマウントされているフレームと、当該フレームに取り付けられている組織小葉アセンブリと、を有している。少なくとも1つの実施形態において、上記組織小葉アセンブリは、処置された心膜組織を含んでいる。
【0024】
少なくとも1つの実施形態において、組織を含んでいる人工心臓弁を、部分的に圧縮して送達カテーテル上にマウントする工程と、上記組織を、少なくとも部分的に乾燥させる工程と、上記人工心臓弁を、さらに圧縮して送達カテーテルにマウントする工程と、上記人工心臓弁および上記送達カテーテルを、殺菌および包装する工程と、を含むことを特徴とする方法が提供される。
【0025】
少なくとも1つの実施形態において、上記方法は、上記無菌包装された人工心臓弁および送達カテーテルを輸送する工程をさらに含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記組織は、処置された心膜組織を含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記人工心臓弁を部分的に圧縮して上記送達カテーテル上にマウントする工程に先立って、上記組織は、(a)実質的に乾燥していないもの、および、(b)少なくとも部分的に水を含んでいるもの、の少なくともいずれか1つである。
【0026】
本明細書にて記載されている様々な実施形態に対し、上記組織小葉アセンブリを含む人工心臓弁は、心膜組織以外の膜組織を含んでいる。
【0027】
少なくとも1つの実施形態において、フレームに心膜組織を取り付ける工程と、上記フレームを、当該フレームに取り付けられた組織とともに、部分的に圧縮して送達カテーテル上にマウントする工程と、上記組織を、少なくとも部分的に乾燥させる工程と、上記フレームを、当該フレームに取り付けられた組織とともに、さらに圧縮して送達カテーテル上にマウントする工程と、上記フレームおよび上記送達カテーテルを、当該フレームに取り付けられた組織とともに、殺菌および包装する工程と、を含むことを特徴とする方法が提供される。
【0028】
少なくとも1つの実施形態において、上記フレームを部分的に圧縮してマウントする工程に先立って、上記組織は、(a)実質的に乾燥していないもの、および、(b)少なくとも部分的に水を含んでいるもの、の少なくともいずれか1つである。少なくとも1つの実施形態において、上記方法は、上記送達カテーテル上にマウントされている上記無菌包装されたフレームを、当該フレームに取り付けられている組織とともに、外科用または医療用の処置設備へ輸送する工程をさらに含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記フレームに上記組織を取り付ける工程に先立って、上記組織が折り畳まれて、組織小葉アセンブリが形成される。少なくとも1つの実施形態において、上記組織小葉アセンブリは、少なくとも1つの折り返しと、少なくとも1つのひだと、を有している。
【0029】
少なくとも1つの実施形態において、経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法が提供される。上記調製方法は、生体から膜組織を得る工程と、上記膜組織を少なくとも1つの化学物質にて処置することによって、処置された膜組織を作製する工程と、上記処置された膜組織を、当該膜組織が実質的に乾燥している組織となるまで乾燥させる工程と、上記実質的に乾燥している組織を、フレームに取り付ける工程と、上記フレーム内に取り付けられた上記実質的に乾燥している組織に再び水分を補給することによって、再び水分が供給された組織を形成する工程と、上記再び水分が供給された組織が取り付けられている上記フレームを押し潰す工程と、上記押し潰されたフレーム内の上記再び水分が供給された組織を、当該組織が実質的に乾燥している組織となるまで乾燥させる工程と、を含んでいる。
【0030】
少なくとも1つの実施形態において、上記方法は、上記フレームを、当該フレームに取り付けられている上記実質的に乾燥している組織とともに、圧縮して送達カテーテル上にマウントする工程をさらに含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記方法は、上記送達カテーテル上にマウントされている上記フレームを、当該フレームに取り付けられている上記実質的に乾燥している組織とともに、殺菌および包装する工程をさらに含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記処置する工程は、上記フレームを、当該フレームに取り付けられている上記実質的に乾燥している組織とともに、エチレンオキシド、陽子ビーム、およびガンマ線の少なくともいずれか1つに対して曝露することによって殺菌する工程を含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記方法は、上記送達カテーテル上にマウントされている上記殺菌および包装されたフレームを、当該フレームに取り付けられている上記実質的に乾燥している組織とともに、外科用または医療用の処置設備へ出荷する工程をさらに含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記取り付ける工程に先立って、上記乾燥している組織は、折り返しおよび/またはひだを有するように折り畳まれていない。少なくとも1つの実施形態において、上記取り付ける工程に先立って、上記乾燥している組織は、組織小葉アセンブリを形成するように折り畳まれる。少なくとも1つの実施形態において、上記組織小葉アセンブリは、少なくとも1つの折り返しと、少なくとも1つのひだと、を有している。
【0031】
少なくとも1つの実施形態において、経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の上記調製方法は、上記フレームを、当該フレームに取り付けられている上記実質的に乾燥している組織とともに、患者内に移植する工程をさらに含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記フレームは、ステントを有している。少なくとも1つの実施形態において、上記方法は、上記フレームと、当該フレームに取り付けられている上記組織小葉アセンブリとを、12〜14フレンチのバルーンカテーテル上にマウントする工程をさらに含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記方法は、上記フレームと、当該フレームに取り付けられている上記組織小葉アセンブリとを、略12フレンチ未満のサイズのバルーンカテーテル上にマウントする工程をさらに含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記方法は、上記フレームと、当該フレームに取り付けられている上記組織小葉アセンブリとを、略5〜12フレンチの間のサイズのバルーンカテーテル上にマウントする工程をさらに含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記方法は、上記フレームと、当該フレームに取り付けられている上記組織小葉アセンブリとを、心棒上にマウントする工程をさらに含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の上記調製方法は、上記膜組織を、1〜37.5%の緩衝ホルマリンまたは非緩衝ホルマリン中に略3日間〜3週間浸漬する工程をさらに含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の上記調製方法は、上記膜組織を、1〜37.5%の緩衝ホルマリンまたは非緩衝ホルマリン中に略3日間〜5週間浸漬する工程をさらに含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記処置する工程は、上記膜組織を、100%のグリセロール中に略3週間を超える期間浸漬する工程を含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記処置する工程は、上記膜組織を、0.1〜25%のグルタルアルデヒド中に略3日間〜3週間浸漬する工程を含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記処置する工程は、上記膜組織を、0.1〜25%のグルタルアルデヒド中に略3日間〜5週間浸漬する工程を含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記処置する工程は、上記膜組織を、オリゴマーフィルター処理が施された0.1〜25%のグルタルアルデヒド中に略3日間〜3週間浸漬する工程を含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記処置する工程は、上記膜組織を、オリゴマーフィルター処理が施された0.1〜25%のグルタルアルデヒド溶液中に略3日間〜5週間浸漬する工程を含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記処置する工程は、リジン、および/またはヒスチジンといった遊離アミノ酸が追加された、上述のホルマリン、グルタルアルデヒド、またはオリゴマーフィルター処理が施されたグルタルアルデヒド溶液に、上記膜組織を浸漬する工程を含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記処置する工程は、上記組織の組織繊維への浸潤および/または該組織繊維の包被のためのポリマーへの接触および/または曝露を含まない。
【0032】
少なくとも1つの実施形態において、経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法が提供される。上記方法は、哺乳類の生体から採取された組織切片を得る工程と、蒸留水で上記組織切片を複数回すすぐことによって当該組織切片に浸透圧衝撃を引き起こす工程と、を含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記方法は、複数の時間間隔の間、蒸留水によって上記組織切片へ水分を供給する工程をさらに含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記組織切片は心膜組織を含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記方法は、生理食塩水を用いずに、上記組織に対する浸透圧衝撃および水分供給の少なくともいずれかを引き起こす工程をさらに含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記方法は、イソプロピルアルコール、グルタルアルデヒドおよびホルマリンのうちの1つまたは複数に上記組織切片を接触させる前に、グリセロールによって当該組織切片に対する前処理を行う工程をさらに含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記方法は、グリセロールによる上記組織切片の前処理の後、当該組織切片をホルマリンを含む溶液に接触させる工程をさらに含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記方法は、グリセロールによる上記組織切片の前処理の後に、当該組織切片をグルタルアルデヒドを含む溶液に接触させる工程をさらに含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記方法は、グルタルアルデヒドまたはホルマリンに上記組織切片を接触させる工程の前に、イソプロピルアルコールによって当該組織切片に対する前処理を行う工程をさらに含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記方法は、イソプロピルアルコールによる上記組織切片の前処理の後に、当該組織切片をホルマリンを含む溶液に接触させる工程をさらに含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記方法は、イソプロピルアルコールによる上記組織切片の前処理の後に、当該組織切片をグルタルアルデヒドを含む溶液に接触させる工程をさらに含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、上記方法は、上記組織切片を光エネルギーに所定期間曝露する工程をさらに含み、上記所定期間は、当該組織切片の曝露された表面からの脂質滴の分離が視認されなくなるまで延長される。少なくとも1つの実施形態において、上記光エネルギーは、上記曝露された表面から略10cmの距離をとって設置されている、平坦な放射面を有する50Wの白熱光源に、上記組織切片を略15分間曝露することと少なくとも同等のものである。
【0033】
送達特性に関して、本明細書に記載された、比較的薄い組織成分を用いた埋め込み型人工心臓弁の別の大きな利点は、当該埋め込み型人工心臓弁が、商用の人工心臓弁と比較して相対的に包装体積(packing volume)が小さいという点である。その結果、上記埋め込み型人工心臓弁によって、カテーテル送達のプロファイルが比較的小さくなり、このため、比較的小径の血管系を有する患者内への移植が可能となる。
【0034】
1つまたは複数の実施形態によれば、乾燥している組織膜は、水を含んでいる組織膜よりも質量が大幅に小さい。例えば、本発明の1つまたは複数の実施形態によって調製された実質的に乾燥している心膜組織は、質量が水を含んでいる心膜組織の略30%であり、プロファイルおよび包装体積の顕著な低減によって、比較的低いプロファイルが実現され、より多くの患者、特に小径の血管系を有する患者内への移植に適した組織が実現される。さらに、乾燥している人工心臓弁は、保存および輸送の際に防腐剤が不要である。乾燥している人工心臓弁は、送達カテーテルの製造地において該送達カテーテルにマウントされてもよく、これにより、あらかじめ包装された一体型の送達システムが実現される。上記埋め込み型人工心臓弁は、送達カテーテル上にあらかじめマウントされ、あらかじめ包装された送達システムを形成するため、比較的低いプロファイルと合わせて、上記人工心臓弁の実施形態は信頼性と利便性を実現する。さらに、乾燥している人工心臓弁は、すすぎ、水分の再供給、またはカテーテル法ラボ内における送達カテーテル上へのマウントを必要としない。従って、処置中の重要な時点において、乾燥している人工心臓弁を包装から体内へ直接挿入することができる。有利なことに、これにより、カテーテルおよびシース(被覆材)(sheaths)のマウント、圧着および定位の処置時間、加工および誤差を回避することができる。一旦、外科的施設/位置において、標準的な方法により、上記乾燥している人工心臓弁が挿入され、罹患している弁の面におけるバルーンカテーテルの膨張によって送達されると、乾燥状態または完全に水分を再供給されていない状態(上記人工心臓弁を内部に備えたカテーテルを洗浄する際にある程度の水分の再供給が起こるであろうため)であるにもかかわらず、続いて上記組織膜への水分の再供給が体内で必然的に完了することにより、上記乾燥している人工心臓弁は直ちに機能し始める。
【0035】
本明細書において、様々な要素が「操作可能に組み合わせられている(operably associated)」と言及されている。本明細書にて用いられているように、「操作可能に組み合わせられている」との記載は、操作可能な方法においてともに連結されている要素を言い、追加の要素が2つの連結されている要素の間に配置されている実施形態だけでなく、要素が直接に連結されている実施形態を包含する。
【0036】
本明細書にて用いられているように、「少なくとも1つの(少なくともいずれか)(at least one)」、「1または複数の(one or more)」および「および/または(and/or)」は、実施上、接続的にも離接的にもオープンエンド(open-ended)な表現である。例えば、「A、BおよびCのうち少なくとも1つ」、「A、BまたはCのうち少なくとも1つ」、「A、BおよびCのうち1または複数」、「A、BまたはCのうち1または複数」および「A、Bおよび/またはC」は、それぞれ、A単独、B単独、C単独、AとBとの組み合わせ、AとCとの組み合わせ、BとCとの組み合わせ、または、A、BおよびCの組み合わせを意味する。
【0037】
本明細書にて用いられているように、「いつか(sometime)」は、或る不定のまたは不確定の時点を意味する。よって、例えば、本明細書にて用いられているように、「・・・の後のいつか(sometime after)」は、先行する行為の直後であろうと、先行する行為の後の或る不定のまたは不確定の時点であろうと、当該先行する行為の後であることを意味する。
【0038】
本発明の様々な実施形態は、添付された図面と、本明細書に記載され請求項によって体現される実施形態と、によって説明される。しかしながら、本欄は、1つまたは複数の本発明の実施形態の全てを含んでおらず、いかなる方法による限定または制限を意図したものでもないことは理解されるべきである。また、当該分野における通常の技術を有する者であれば、本明細書にて開示された本発明がその明らかな改良および変更を含むと理解することも理解されたい。
【0039】
本発明のその他の利点は、以下の考察によって、特に付属の図面と合わせて容易に明らかとなるであろう。
【0040】
〔図面の簡単な説明〕
1つ以上の本発明の、上述した利点および特徴点、並びに、別の利点および特徴点を更に明確にするために、添付の図面に記載された特定の実施形態を参照しながら、上記1つ以上の本発明の更に具体的な記載について説明する。これらの図面は、1つ以上の本発明の特定の実施形態を説明したに過ぎず、それ故に、これらの図面は、本発明の範囲を限定しない。1つ以上の本発明は、添付されている以下の図面を用いながら、更なる特徴点および細部について記載および説明される。
【0041】
図1は、本発明の少なくとも1つの実施形態に関連付けられた方法のフローチャートである。
【0042】
図2A〜図2Bは、組織を調整する工程の要素を示すフローチャートである。
【0043】
図3は、乾燥させる工程およびサイズ調整する工程の要素を示すフローチャートである。
【0044】
図4は、フレームへの組織小葉アセンブリの取り付けを伴う弁を構築する工程の要素を示すフローチャートである。
【0045】
図5は、送達システム内に弁をマウントする工程の要素を示すフローチャートである。
【0046】
図6は、シースで覆い、殺菌して包装する工程の要素を示すフローチャートである。
【0047】
図7は、患者内へ弁を送達する工程の要素を示すフローチャートである。
【0048】
図8Aは、折り畳まれる前の1枚の組織切片を示す図である。
【0049】
図8Bは、折り畳む工程の後の2枚(3枚)の分離した組織切片を示す図である。(詳細は後述)
図8Cは、図8Bに示す、折り畳む工程の後に形成されたひだとともに縫合された後の2枚の組織切片を示す図である(詳細は後述)。
【0050】
図8Dは、ブランク(blank)の組織を、破線で示される最初の折り畳み線とともに示す図である。
【0051】
図8Eは、最初の折り畳み線に沿って折り畳まれているブランクの組織の斜視図である。
【0052】
図8Fは、ひだの折り畳み線および折り畳む工程の後のひだを示す2点セットの図である。
【0053】
図8Gは、図8Fに示す単一のひだの詳細な斜視図である。
【0054】
図8Hは、折り畳まれ縫い合わせられた組織小葉アセンブリを概略的に示す斜視図である。
【0055】
図8Iは、フレームを概略的に示す斜視図である。
【0056】
図8Jは、図8Iに示すフレームを、該フレームに取り付けられた組織小葉アセンブリとともに概略的に示す斜視図である。
【0057】
図8Kは、図8Jに示す装置を概略的に示す側面図である。
【0058】
図8Lは、フレームおよび該フレームに取り付けられた組織小葉アセンブリを概略的に示す端面図である。
【0059】
図9は、少なくとも1つの実施形態に従って調製された5つの組織標本に対する真応力ひずみ試験の結果を示すグラフである。
【0060】
図10は、経皮的に送達可能な心臓弁がマウントされたカテーテルを示す概略図である。
【0061】
図11Aは、フレーム内に取り付けられた組織小葉アセンブリを含む埋め込み型人工心臓弁の、当該組織が部分的に開いている状態の写真である。
【0062】
図11Bは、フレーム内に取り付けられた組織小葉アセンブリを含む埋め込み型人工心臓弁の、当該組織が閉じている状態が描かれた図である。
【0063】
図11Cは、フレーム内に取り付けられた組織小葉アセンブリを含む埋め込み型人工心臓弁の、当該組織が閉じている状態が描かれた側断面図である。
【0064】
図11Dは、フレーム内に取り付けられた組織小葉アセンブリを含む埋め込み型人工心臓弁の、当該組織が閉じている状態が描かれた別の側断面図である。
【0065】
図12は、ヒトの心臓の状態をモデル化するためのポンプ運動の試験が30,000,000回繰り返された後の弁組織の写真であり、写真には滑らかで均一な表面が写っている。
【0066】
図13は、予めマウントされた人工心臓弁がカテーテルおよび付属品とともに無菌包装されたものを、外科医が手に持っている様子が描かれた図である。
【0067】
図14は、埋め込み型人工心臓弁の実施形態を受け入れる標的となり得る心臓弁を含む、簡略化したヒトの心臓を概略的に示す断面図である。
【0068】
図15は、埋め込み型人工心臓弁がマウントされたカテーテルを受け入れる、ヒトの大動脈の概略図である。
【0069】
図16は、罹患した大動脈弁があった部位に人工心臓弁が移植された状態の、大動脈の概略図である。
【0070】
〔詳細な説明〕
本明細書に記載されている1つまたは複数の発明の実施形態は、人工心臓弁に関連する1つまたは複数の装置、アセンブリ、および/または方法を含んでいる。本明細書に記載されている少なくとも1つの実施形態における人工心臓弁は、カテーテルを通した患者内の移植部位への経皮的な送達のように、外科的に移植されてもよい。本明細書に記載されている人工心臓弁の1つまたは複数の実施形態は、少なくとも、構造上の欠陥および罹患した弁を含む大動脈弁および肺動脈弁の部位への適用が可能である。
【0071】
少なくとも1つの実施形態において、生体適合性を有する材料がフレーム内に取り付けられて、埋め込み型人工心臓弁を形成する。続いて、しばらくの時間経過の後、カテーテルを通した経皮的な送達機構等を用いて、当該埋め込み型人工心臓弁が患者内に移植される。一旦移植されると、上記人工心臓弁は、血液を順流させ、逆流または弁膜逆流を実質的に防ぐことにより、患者の心臓に関する血液の流れを調節するように働く。
【0072】
図1は、人工心臓弁の調製および送達の方法100の少なくとも1つの実施形態を示すフローチャートである。人工心臓弁の調製および送達の方法100は、一般的には複数の手順を含み、上記手順には、組織の調製(200)、乾燥(300)、埋め込み型人工心臓弁を形成するための、組織小葉アセンブリの構築およびフレームへの取り付け(400)、送達システム内への上記人工心臓弁(すなわち、上記組織小葉アセンブリを伴うフレーム)のマウント(500)、上記人工心臓弁を含む送達システムの被覆、殺菌および包装(600)、そして最後に、患者内への上記人工心臓弁の送達(700)が含まれる。人工心臓弁の調製および送達の方法100のさらなる詳細は後述する。
【0073】
本明細書に記載されている少なくとも1つまたは複数の実施形態は、比較的薄い組織成分を含んでいる。本発明の範囲を限定するものではないが、一例として、少なくとも1つの実施形態において、上記組織は、厚さが略50〜150μmであり、さらに柔軟性と、硬化に対する抵抗性と、を有している。上記埋め込み型人工心臓弁に用いられる組織の比較的薄い特性は、生体適合性を支援するものである。さらに、上記比較的薄い組織成分は、結果的に、質量が比較的小さくなる。その結果、上記組織を用いた埋め込み型人工心臓弁は、要求に適う機能によって比較的高い心拍数(bpm)まで加速することができる。
【0074】
本明細書に記載されている1つまたは複数の人工心臓弁または/および1つまたは複数のアセンブリにおける使用に適した組織は、比較的薄く、一般的に膜と見なされるものであってもよい。人工心臓弁の小葉アセンブリを形成するために、自然材料と合成材料とのいずれが用いられてもよいことは、当業者には理解されるであろう。従って、本明細書に記載されている1つまたは複数の実施形態の人工心臓弁の上記小葉アセンブリに用いられる、適した材料として、処置された心膜組織が記載されていたとしても、異種移植組織膜以外の材料が用いられてもよいし、実際に、心膜組織以外の異種移植組織膜が用いられてもよいことは理解されるべきである。より具体的には、合成材料は、PTFE、PET、ダクロンおよびナイロンを含んでいてもよいが、これに限定されない。さらに、心膜組織以外に、異種移植組織膜は、腸、肺および脳から得られた膜組織を含んでいてもよいが、これに限定されない。適した材料には同種移植材料、すなわちヒト由来の材料が含まれていてもよい。上記の利用可能な材料は例示の目的で挙げられており、これらに限定されないことを理解されたい。
【0075】
図2Aを参照しながら、上述した特徴と一致する生体適合性を有する組織の調製に関連する処理について説明を行う。少なくとも1つの実施形態において、ブタまたはウシの心膜組織等の心膜組織が採取され(204)、次に、フレームへの取り付け等によるフレームとの組み合わせのために、生体適合性を有する組織として働くように処理される。このため、工程204における採取の後に、上記心膜組織は洗浄され脱細胞化される(208)。より詳細には、工程208において、少なくとも1つの実施形態において、上記組織は最初に、付着している非心膜組織および非膠質組織を除去するために、弱い摩擦と流体力学的圧力を用いて、蒸留水で洗浄される。少なくとも1つの実施形態において、上記組織に付着している非膠質物質を少なくともいくらか除去するために、工程208における流体力学的圧力は、比較的弱い流れで液体を当該組織に吹き付けることによって実施される。工程208におけるすすぎは、浸透圧衝撃によって上記心膜組織の脱細胞化を効果的に達成する。典型的には、洗浄された状態の当該組織の厚さは、元の組織の量に応じて50〜500μmの間で変化する。洗浄は、付着している非心膜組織または非膠質組織が見えなくなるまで継続されることが好ましい。
【0076】
引き続き、図2Aを参照する。上記組織が洗浄および脱細胞化(208)された後、次に、免疫反応および硬化を防ぐように当該組織をさらに処置するために、当該組織は、必要に応じて追加の脂質の除去を受ける(220)。より詳細には、上記組織は、まず必要に応じて、100%のグリセロールによる前処理を受ける(224)。このとき、上記組織は、平面上(例えばアクリル板)に配置されており、上記前処理の後には当該組織は透明に近い状態となる。
【0077】
上記組織は必要に応じて「熱光(thermophotonic)」処理を受ける(228)。少なくとも1つの実施形態において、脂質のさらなる除去および膠原質の最初の架橋結合のために、上記組織は、必要に応じて光エネルギーに曝露される。例を挙げれば、以下に限定されないが、少なくとも1つの実施形態において、25〜100Wの白熱光源、より好ましくは上記組織の表面から略10cmの距離をとって設置されている、平坦な放射面を有する50Wの白熱光源を用いれば、上記組織からの視認可能な脂質滴の分離が停止するまでに、典型的には15分間の曝露を要する。
【0078】
引き続き図2Aを参照する。上記組織は、次に、第2の洗浄工程(232)において、再び洗浄される。より詳細には、上記組織は、再び蒸留水によってすすがれる(236)。その後、柔軟性および抗張力といった所望の組織の特性に応じて数時間から数日間および数週間にわたり、25%のイソプロピルアルコールにより上記組織のすすぎが行われる(240)。例を挙げれば、以下に限定されないが、25%イソプロピルアルコールによる7日間にわたるすすぎにより、組織が適切に調製され、本明細書に記載のさらなる処置工程の後に、最大抗張力25MPaが実現される。ここで、一旦移植されれば適切に動作する組織材料を実現する一方で、組織小葉アセンブリまたはその他フレームへの取り付けに適した構造を形成するための物理的な加工に適している特性を有する材料を作製するための、組織の柔軟性および抗張力の組み合わせが求められる。これらの技術は、上記組織へのダメージを最少に抑え、かつ組織の特徴を向上させながら、膠原繊維を保存および維持することを目的としている。上記の調製および準備技術により、典型的な従来技術の製法による厚さよりも薄い厚さで製造および使用される組織膜材料が提供される。より薄い膜は、より柔軟であるが、従来の調製技術では、組織の抗張力が犠牲となる。有利なことに、本明細書に記載の調整技術では、従来の市販の製品と比較して3倍の抗張力を有する膜を作製した。この達成された強度によって、実質的に乾燥している状態にあっても、適切な耐久力を有する低プロファイルな組織小葉アセンブリの提供が可能となる。より詳細には、上記組織は比較的高い抗張力を有する。例を挙げれば、以下に限定されないが、本明細書に記載されているように調整された組織の実施形態により、現行の心膜弁組織の略3倍の抗張力(約25MPa)を有する組織が提供され、その結果、弁組織の生理的負荷に対する強度は略2000倍となることが試験によって示された。さらに、本明細書に記載されているように調整された組織によって作製された埋め込み型人工心臓弁の実施形態の、静荷重が略250mmHgよりも大きい条件下での試験によれば、漏出量は略14%未満であり、この結果は一般に外科的組織弁プロテーゼよりも優れていると認められる。
【0079】
イソプロピルアルコールがすすぎ剤として記載されている少なくとも1つの実施形態において、得られる組織特性は異なる可能性があるが、代替物としてエタノールが用いられてもよい。
【0080】
図9を参照して、一実施形態に従って調製された、5つの異なる組織標本の応力・ひずみ曲線の結果を示す。図に示されている実験結果について、直線力試験装置の端部に準備した組織片をマウントし、結果として生じる力(張力)を記録しながら、当該材料が裂断または完全に分離するまで、0.3mm/sの速度で長さを増大させることにより、降伏応力または最大抗張力が得られる。そして、これらの測定結果を用いて図9に示す応力・ひずみ曲線が計算される。グラフに示されているように、上記の様々な組織標本の降伏応力または最大抗張力は、略30〜略50MPaの間で異なっている。より詳細には、図9に示す各曲線について、試験の手順は同一である。すなわち、図示されている曲線のそれぞれは、同一の試験を受けた異なる組織断片に関するものである。上記結果によれば、最大抗張力は、最小で30MPaであり、その範囲は、50MPaまでである。従って、図示されている試験結果により、上記の組織処置過程に関し、最大抗張力の結果の一貫性が示された。
【0081】
再び図2Aを参照する。最後の洗浄工程として、上記組織は蒸留水にてすすがれる(244)。
【0082】
次に、図2Bを参照する。蒸留水によるすすぎ(244)の後も、上記組織の処置は、継続する。より詳細には、膠原質(collagen)の架橋結合のための固定(248)は、以下の少なくとも1つを実行することによって達成される。
(a)工程248aにおいて、上記組織を、温度が略4〜37℃の1〜37.5%のホルマリン、理想的には緩衝溶液中に、略3日間〜5週間、より好ましくは略3日間〜4週間、さらに好ましくは略3週間〜4週間浸漬する。そしてより好ましくは、温度20℃の10%のホルマリン中に6日間浸漬する。
(b)工程248bにおいて、上記組織を4〜37℃の100%のグリセロール中に最長で6週間浸漬する。そしてより好ましくは、上記組織を20℃の100%グリセロール中に略3週間浸漬する。
(c)工程248cにおいて、上記組織を、0〜37℃の0.1〜25%のグルタルアルデヒド中に略3日間〜5週間、より好ましくは略3日間〜4週間、さらに好ましくは略3週間〜4週間浸漬する。そしてより好ましくは、4℃の0.25%のグルタルアルデヒド中に7日間浸漬する。
(d)工程248dにおいて、上記組織を、0〜37℃の0.1〜25%のグルタルアルデヒド(オリゴマー成分を制限するフィルター処理済み)中に略3日間〜5週間、より好ましくは略3日間〜4週間、さらに好ましくは略3週間〜4週間浸漬する。そしてより好ましくは、4℃の0.25%のグルタルアルデヒド中に7日間浸漬する。
(e)工程248eにおいて、上記組織を、上述のホルマリン、グルタルアルデヒドまたはオリゴマーフォルター処理が施されたグルタルアルデヒド溶液にアミノ酸であるリジンおよび/またはヒスチジンを加えたものに浸漬する。なお、上記の固定剤の添加物として用いられる上記アミノ酸(L−リジンまたはヒスチジン)の濃度は略100〜100mMであり、好ましい値は684mMである。
上記に加え、上に挙げられた処理の組み合わせが実行されてもよく、例えば、工程(a)の後に工程(b)が続いてもよいし、工程(a)の後に工程(c)が続いてもよいし、工程(a)の後に工程(d)が続いてもよい。
【0083】
タンパク質の架橋結合の効果との関連付けを行うために、組織標本に対し熱収縮試験が実施されてもよいことは、当業者であれば理解するであろう。ここで、ホルマリンを用いた少なくとも1つの実施形態に従って調製された組織の1つまたは複数の標本に対する熱収縮試験の結果によれば、上記組織の収縮温度は90℃であった。この結果は、収縮温度が80℃である、グルタルアルデヒドを用いて調製された標本と比較しても、遜色が無いものである。従って、ホルマリンは、固定のための適切な変形例である。ここで、主に材料特性が好ましくない、および、タンパク質の架橋結合が不十分または不安定であるといった理由から、当分野では、一般にホルマリンの使用が避けられてきた。本明細書に記載された、比較的薄い膜でありながら強度、柔軟性および耐久性を有する組織の作製を可能とする前処理によって、上記のような問題点は克服された。経皮的に送達可能な心臓弁(本明細書では「人工心臓弁」とも称する)において用いられる場合、上記組織の調製処理によって与えられた当該組織の特徴により、比較的低プロファイルな構造の形成が容易になり、またそれによって上記人工心臓弁の乾燥包装が容易になる。同様の利点は、グルタルアルデヒド処理を用いた前処理によっても得られる。
【0084】
再び図2Bを参照する。膠原質の架橋結合のための固定(248)の後、アルコールによる固定後処置(252)が実施される。工程252において、好ましくは、上記組織は蒸留水ですすがれ(256)、略0〜37℃の25%のイソプロピルアルコール中で略30分〜14日間またはそれよりも長い期間、より好ましくは20℃で少なくとも略7日間すすがれる(260)。続いて、蒸留水による上記組織のすすぎが行われる(264)。
【0085】
少なくとも1つの実施形態によれば、採取の時点から移植の時点までを含む組織の処置は、当該組織の組織繊維への浸潤および/または該組織繊維の包被のためのポリマーへの接触および/または曝露を含まない。
【0086】
ここで、図1および図3を参照する。組織の調製(200)の後、乾燥処理(300)が実行される。従って、少なくとも1つの実施形態によれば、上記組織は一定の負荷がかかった状態で乾燥させられる。より詳細には、組織の乾燥(304)のために、当該組織は平面(例えばポリマーまたはアクリルのシート)上で最小限平らに引き伸ばされ(すなわち、しわおよび気泡が辛うじて視認不可となる程度に引き伸ばされ)(308)、当該引き伸ばされた状態における端部が固定される(312)。必要に応じて、接着された上記組織およびその下部のシートは、軽度に湾曲させられる。上記組織が乾燥している間、当該組織の実質的に平らな構造は、張力によって維持される。これにより、上記端部における過度の収縮、しわおよび曲がりが軽減または防止され、また、上記平面と上記組織との間に生じる表面張力により、当該組織の表面の乾燥速度がより均一化する。あるいは、上記組織は、アクリル板に挟まれて圧縮されながら乾燥させられる。上記組織の乾燥において、温度は、略4〜37℃、より好ましくは略20〜37℃(すなわち、室温程度から通常のヒトの体温)、さらに好ましくは略20℃に維持される。乾燥処理は、実質的に暗い(すなわち、実質的に視認可能な光が無い)条件下で、略6時間〜5日間、より好ましくは72時間にわたり実行される(314)。例を挙げれば、上記組織は、略20℃の温度下の暗い条件下で略6時間〜5日間、より好ましくは72時間にわたって乾燥させられる。上記組織が平板に挟まれ圧縮されている場合、当該組織の乾燥がより長い期間を要することは当業者には理解されるであろう。
【0087】
少なくとも1つの実施形態において、乾燥の後、繊維基質の欠陥または断裂のある組織を特定して破棄するために、上記組織群は、立体顕微鏡等を用いて検査される。さらに、弁小葉を形成する組織断片の自由縁の必要な方向を特定するために、各組織断片に関する優先的な繊維方向が特定される。任意のサイズ調整(320)においては、調製されている上記組織の大きさ(すなわち領域)と、特定の弁に必要な組織の大きさとに依存して、弁形成のために適切にサイズ調整または成形がなされたシートとなるように上記組織を切り取る処理等によって、上記組織のトリミングまたは別の方法によるサイズ調整が行われる。好ましくは、上記組織膜の切り取り方向は、結果として得られる上記小葉の自由縁が、上記組織膜の優先的な繊維方向と平行になるように決定される。必要に応じて、接合部の小葉の取り付け点から中心の接合点への下向きの角度を相殺し、接合小葉間の総接触面を増大させるために、上記小葉の自由縁は、放物曲線またはその他の曲線状の輪郭に切り取られてもよい。この手法によれば、上記小葉アセンブリの動作している端部の局所的な脆弱性が最小限に抑えられ、上記動作している弁にかかる主加力が、上記膠原繊維の長軸に沿って有利に分配される。その結果、上記組織は、表面の破砕および摩損に対する耐性を示す。図3に示すとおり、任意のサイズ調整(320)は、乾燥(304)および検査(316)の後に実行される。
【0088】
次に、図4を参照して、人工心臓弁を形成するための、組織小葉アセンブリの形成およびフレームへの取り付け(400)に関連する実施形態について説明を行う。なお、本明細書に記載された1つまたは複数の組織調製手順により生成された組織は、様々な装置および用途に用いられ得るものであり、人工心臓弁への使用は、上記組織を利用した一適用例に過ぎないことを理解されたい。例えば、上記組織は、シャント内で用いられてもよいし、あるいは、心臓およびその血管を含む1つまたは複数のヒトの臓器の治療および改善のための移植材料として用いられてもよい。さらに別の例を挙げれば、上記組織は、先天的な心臓の欠陥の治療のための心膜パッチとして用いられてもよい。上記組織には、腱および靭帯の交換における人工組織、ならびに、創傷管理のための組織製品としての用途もある。さらに、人工心臓弁としての利用のために様々な方法で構成され、様々な方法でフレームに取り付けられてもよい。例を挙げれば、以下に限定されないが、少なくとも1つの実施形態において、上記調製された組織は組織小葉アセンブリを形成する(404)。工程404において、上記組織は、好ましくは当該組織が乾燥している状態にある間に、上記組織小葉アセンブリの少なくとも一部を形成するために折り畳まれる(408)。ここで、完成した組織小葉アセンブリは、図8Aに示すような継ぎ目の無い1枚の組織断片800の形状を有し得ることは、当業者には理解されるであろう。あるいは、別の例を挙げれば、図8Bおよび図8Cに示すとおり、上記組織小葉アセンブリは、複数の組織断片802という形態をとり得、これらは縫い目(継ぎ目)804に沿った上記組織断片の接着または縫合等によって動作可能なように接続される。図8Cを参照して分かるとおり、縫い目804は、上記複数の組織断片802のひだ832の重なり部分に位置していることが好ましい。
【0089】
継ぎ目の無い1枚の組織断片800または複数の組織断片802は、上記組織小葉アセンブリが折り畳まれた構造でない人工心臓弁を形成するために用いられてもよいことは、当業者には理解されるであろう。例を挙げれば、以下に限定されないが、人工心臓弁を形成するために、複数の別個の組織断片が(縫合等によって)一つ一つフレームに取り付けられてもよい。その後、上記人工心臓弁が折り畳まれた組織小葉アセンブリから作製されるか、フレームに取り付けられた複数の別個の組織断片から作製されるかにかかわらず、結果として得られる人工心臓弁は、乾燥している人工心臓弁としての送達に向けてさらに加工される。
【0090】
別の実施形態において、本明細書に記載されている1つまたは複数の組織調製手順によって生成された組織は、フレームを含む人工心臓弁を形成するために用いられてもよく、この人工心臓弁は、当該人工心臓弁が胸壁および心尖を通って外科的に挿入される「経心尖」手法によって移植されてもよい。
【0091】
さらに別の実施形態において、本明細書に記載されている1つまたは複数の組織調製手順によって生成された組織は、フレームを含まない人工心臓弁を形成するために用いられてもよく、この人工心臓弁は、カテーテルを介して送達されるのではなく、患者の胸部に外科的に設けられた開口部を通して移植される。この場合、上記人工心臓弁は、乾燥している人工心臓弁としての送達用に包装されてもよい。
【0092】
さらに別の実施形態において、明細書に記載されている1つまたは複数の組織調製手順によって生成された組織は、フレームを含むが、カテーテルを介して送達されるのではなく、患者の胸部に外科的に設けられた開口部を通して移植される人工心臓弁を形成するために用いられてもよい。この場合、上記人工心臓弁は乾燥している人工心臓弁として送達されるために包装されてもよい。
【0093】
本明細書に記載されている実施形態のさらに別の例を挙げれば、組織は「湿っている」または水を含んでいる状態で移植されてもよい。例えば、明細書に記載されている方法で調製された組織を利用した人工心臓弁は、水を含んだ人工心臓弁として送達されるために包装されてもよい。従って、加工をより容易にするための組織の乾燥が組織調製処理の一部に含まれている一方で、移植より前の時点において当該組織に対する水分の供給が行われてもよく、包装、送達および患者内への移植までの期間、当該組織は水を含んだ状態を維持してもよい。折り畳まれた組織小葉アセンブリを用いる利点には、折り畳まれた構造によって、装着された動的に活発な表面における縫合線を避けることで、比較的薄い膜を使用することができる点が含まれる。従って、縫合線の無い小葉アセンブリは、長期的にその機能を維持することができる。しかしながら、折り畳まれた組織小葉アセンブリを含まない人工心臓弁も、本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態に含まれることを理解されたい。
【0094】
次に図8D〜図8Lを参照しながら、少なくとも1つの実施形態に従って、折り畳まれた組織膜の形態を示す組織小葉アセンブリを含む人工心臓弁について、上記組織を完成した組織小葉アセンブリに構成するための、上記組織の折り畳みの手順を示す。より詳細には、ブランクの組織808が図8Dに示されており、このブランクの組織808は、継ぎ目の無い1枚の組織断片800である。特定の組織小葉アセンブリに必要な大きさに依存して、ブランクの組織808に関する第1の折り畳みの線または折り畳み線812(破線で図示)が視覚化されている。図8Dに示すとおり、ブランクの組織808の下辺816を、ブランクの組織808の上部828に沿う折り返し部分824を残して上辺820の方向に折り畳むことで、第1の折り畳み814が、折り畳み線812に沿ってなされる。ここで、上(top)および下(bottom)の方向は、互いに対して相対的なものであって、折り畳み手順の説明の都合のために用いられており、これらの方向は、図が描かれた頁の方向に対応している。有利なことに、図8D〜図8Lの折り畳みの形状により、上記小葉と連続的に接続している折り返し824が形成され、これにより、大動脈弁閉鎖不全症または漏出の危険性が低減される。
【0095】
次に図8Fを参照する。第1の折り畳み814を形成するためにブランクの組織808が折り畳み線812に沿って折り畳まれた後、上記組織がその長さに沿って折り畳まれることにより、ひだが形成される。図8Fに示す実施形態には、3つのひだ832a、832bおよび832cが示されている。図8Gは、ひだ832a〜cの1つを代表する単一のひだ832の詳細な図を示している。図8Gにおいて、弁洞840および接合部折り畳み844として、内側の小葉層自由縁836が示されている。
【0096】
図8Hとともに再び図4を参照する。上記折り畳まれた組織は、組織小葉アセンブリを形成するために縫合される(412)。より詳細には、組織小葉アセンブリ848の概略的な斜視図が図8Hに示されており、実質的にチューブ状の構造を形成するために、図8Fの下図に示すひだのある組織構造が、縫い目850に沿って縫合される。上記組織小葉アセンブリのフレーム内へのマウントに先行して、折り畳まれた組織小葉アセンブリ848は乾燥している状態に維持されているか、または部分的に水を含んでいる(416)。次に、組織小葉アセンブリ848は、図8Iに示すフレーム852のようなフレームの内側に取り付けられる(420)。フレーム852の内側に取り付けられた組織小葉アセンブリ848は、埋め込み型人工心臓弁860を形成する。この人工心臓弁860の写真が図11Aに、図面が図11Bに示されている他、概略的な斜視図が図8Jに、側面図が図8Kに示されている。図8Kには、組織小葉アセンブリ848がフレーム852に縫合される場合における、可能な縫合点864が示されている。すなわち、例えば組織小葉アセンブリ848の外層が上記フレームに縫合されることによって、組織小葉アセンブリ848がフレーム852の内側に取り付けられてもよい。上述の文において、また、本明細書にて用いられているように、「取り付けられる(attached)」という用語は、組織小葉アセンブリ848はフレーム852に固定されているが、内側の小葉層自由縁836は人工心臓弁860の動作中に容易に動くことができることを意味している。
【0097】
次に図11Cを参照する。同図には、内部に組織小葉アセンブリ848が取り付けられたフレーム852を含む人工心臓弁860の側断面図が示されている。組織膜小葉アセンブリ848は、フレーム852の内側に同軸上に配置されている。図11Cに示すとおり、弁860は、少なくとも部分的に互いに接触し合っている小葉自由縁836によって閉鎖した状態で描かれている。小葉自由縁836の弧1112(断面図の平面外に存在する)は、組織小葉アセンブリ848の放射状の縁部において、ひだ832と連続的に接続されており、異なる角度から見た図が図8Lに示されている。再び図8Lに示すとおり、組織膜小葉アセンブリ848は、軸方向に合わせられたひだ832に沿ってフレーム852に取り付けられる。フレーム852の遠位端1104には、引き伸ばされた折り返し層が円周状に取り付けられている。以下に限定されないが、例を挙げれば、遠位端1104に上記引き伸ばされた折り返し層を取り付けるために、連続的縫合取り付け1108が用いられてもよい。
【0098】
次に図11Dを参照する。同図には、上記折り返し層がフレーム852の遠位端1104の方向に引き伸ばされていない一実施形態が示されている。上記折り返し層の遠位端は、例えば図8Kに示す可能な縫合点864に沿って、フレーム852の内側面に円周状に取り付けられている。結果として、フレーム852の遠位部1116は、折り返し層等の組織小葉アセンブリ848の一部を何一つ含んでいない。しかしながら、弁860が閉鎖している状態であっても、小葉自由縁836は、少なくとも部分的に互いに接触し合っている。
【0099】
次に図8Lを参照する。同図には、人工心臓弁の端面図が示されている。図8Lに描かれているとおり、ひだ832は、フレーム852に取り付けるための組織小葉アセンブリ848の一部として用いられている。図8Lを参照して判るとおり、外側の折り返し層は、フレーム852のフレーム部に取り付けられている。一般に、人工心臓弁860が閉鎖しているとき、内側の小葉層によって形成される弁尖868が、図8Lに描かれているような状態になる。図12は、ヒトの心臓に設置された場合のパフォーマンスをモデル化するための試験が30,000,000回繰り返された後の当該人工心臓弁の組織小葉の写真である。試験において、人工心臓弁860が示した自然開口時の圧力勾配は略5mmHgであった。
【0100】
当該分野における通常の技術を有する者であれば、本明細書にて記載および図示された組織小葉アセンブリ848が、配置されて患者の血管系における血流を調節するための、フレームに取り付け可能な血流制御機構を形成するための構成の一例に過ぎないことを理解するであろう。換言すれば、図示された組織小葉アセンブリ848は、例として提供されたものであって限定を意図したものではない。更に、流量を調節するために利用可能な膜小葉アセンブリの形状を限定するものとしての解釈は一切なされるべきではない。従って、小葉に関する他の構造および構成は、あらかじめマウントされた経皮的に送達可能な弁を対象とする(または含む)請求項に含まれると見なされる。
【0101】
フレーム852がステントまたはステントに類似した構造であってもよいことは、当業者には理解されるであろう。フレーム852は、基本的に、患者内に経皮的に挿入される組織小葉アセンブリ848を維持する機構としての機能を果たし、フレーム852は、折り畳まれた組織小葉アセンブリ848を患者の血管部分(例えばin situ動脈組織)に固定する手段としての機能を果たす。このため、組織小葉アセンブリ848は、フレーム852内に挿入される(424)。より詳細には、フレーム852は、バルーン拡張型フレームを含んでいてもよいし(424a)、別の例を挙げれば、自己拡張型フレームが用いられてもよい(424b)。上記組織小葉アセンブリがフレーム内に挿入された後、組織小葉アセンブリ848がフレーム852に取り付けられる(428)。例えば、図8Lに示すような埋め込み型人工心臓弁860を形成するために、工程428が、組織小葉アセンブリ848をフレーム852に縫合することによって実行される。少なくとも1つの実施形態において、組織小葉アセンブリ848がフレーム852内に取り付けられ、埋め込み型人工心臓弁860を形成するために該組織小葉アセンブリ848が該フレーム852に結合された後、検査および試験のために、人工心臓弁860には完全に水分が供給される(432)。その後、完全に構築された埋め込み型人工心臓弁860は、乾燥させられ、実質的に乾燥している状態を維持されてもよい。従って、本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態により、ヒトへの移植に適した組織800が提供され、上記埋め込み型組織は、移植に先行して乾燥させられてもよいし、移植に先行して水分を供給されてもよいことは、当業者には理解されるであろう。さらに、組織800は、人工心臓弁としての利用のための組織小葉アセンブリ848の形成における利用に適している。なお、上記人工心臓弁には、乾燥している状態の組織小葉アセンブリ、もしくは、部分的にまたは完全に水分を供給された状態の組織小葉アセンブリとともに移植され得る埋め込み型人工心臓弁860が含まれる。
【0102】
本明細書に記載された上記組織小葉アセンブリの1つまたは複数の実施形態は、バルーン拡張型フレームまたは自己拡張型フレームを用いて患者内に移植されてもよい。一般に、拡張型フレームは、標的の弁の位置までバルーンカテーテルで運搬される。挿入に際し、上記拡張型フレームは送達装置に沿って圧縮された構造で設置される。例えば、誘導ワイヤー上における同軸上のマウントを目的とした送達装置の一部であるバルーンカテーテルのバルーン上に圧着される。上記拡張型フレームが上記弁の面上に設置された後、該拡張型フレームは上記送達装置によって拡張される。一般に、自己拡張型フレームに関しては、シースが除去されることにより自己拡張型フレームが拡張する。
【0103】
少なくとも1つの実施形態において、上記フレームは、比較的小径に圧縮可能な高ひずみ設計に耐え得る合金フレームを含んでいる。低プロファイルの装置の提供によって、埋め込み型人工心臓弁860は、外科的な静脈切開または全身麻酔を伴わない、大腿動脈への挿入を介した標準的な逆行性動脈大動脈送達が可能となる。これは、上記組織小葉アセンブリまたは組織膜構造が実質的に乾燥している状態であらかじめマウントされている送達システムとして、上記人工心臓弁を提供することにより達成される。
【0104】
1つまたは複数の実施形態によれば、乾燥している組織膜は、水を含んでいる膜よりも質量が大幅に小さい。例えば、本発明の1つまたは複数の実施形態によって調製された実質的に乾燥している心膜組織は、質量が水を含んでいる心膜組織の略30%であり、プロファイルおよび包装体積の顕著な低減によって、比較的低いプロファイルが実現され、より多くの患者(特に径が小さい血管系を有する患者)内への移植に適した組織が実現される。さらに、乾燥している人工心臓弁は、保存および輸送の際に防腐剤が不要である。乾燥している人工心臓弁は、送達カテーテルの製造地において該送達カテーテルにマウントされてもよく、これにより、あらかじめ包装された一体型の送達システムが実現される。上述の文章において、「マウントされる(mounted)」という用語は、人工心臓弁860が上記送達カテーテルに一時的に組み合わせられていることを意味する。埋め込み型人工心臓弁860は、当該人工心臓弁の送達カテーテル上にあらかじめマウントされ、あらかじめ包装された送達システムを形成するため、比較的低いプロファイルと合わせて、上記人工心臓弁の実施形態は信頼性と利便性とを実現する。さらに、乾燥している人工心臓弁は、すすぎ、水分の再供給、またはカテーテル法ラボ内におけるマウントを必要としない。従って、処置中の重要な時点において、乾燥している人工心臓弁を包装から患者の体内へ直接挿入することができる。有利なことに、これにより、カテーテルおよびシースのマウント、圧着および定位の処置時間、加工および誤差を回避することができる。一旦、外科的施設/位置において、標準的な方法により、上記乾燥している人工心臓弁が挿入され、標的の弁の面におけるバルーンカテーテルの膨張によって送達されると、乾燥している状態から当該心臓弁の膜部分に水分を再供給する特定の工程がなくとも、続いて上記組織膜への水分の供給が体内で迅速かつ必然的に生じることにより、上記乾燥している人工心臓弁は直ちに機能し始める。より詳細には、生理食塩水によるカテーテル内腔の簡易な予備洗浄の際に、上記組織膜部分への水分の供給が迅速に生じ開始する。その後、装置が挿入され主要な血管内に存在することで、水分の供給が継続するとともに、患者の体内への配置後必然的に完了する。
【0105】
上記埋め込み型人工弁のプロファイルが低いことは、比較的小径の血管系を有する患者には特に有用である。表1に大動脈弁および肺動脈弁プロテーゼのサイズを示す。
【0106】
【表1】

大部分のヒトの患者では、大腿動脈の血管径は、略5〜8mmである。従って、本明細書に記載された、押し潰された埋め込み型人工心臓弁860の実施形態が実現する低いプロファイルにより、大半の患者が埋め込み型人工心臓弁860を受け入れ可能となることが明らかである。本明細書に記載された埋め込み型人工心臓弁860の1つまたは複数の実施形態により実現されるサイズに関する利点の結果、大腿血管における不適切なアクセス径を踏まえれば、実際上、心臓切開手術および全身麻酔を伴わない、埋め込み型人工心臓弁860による治療を受けることが不可能な患者の候補は存在しないであろう。さらに、本明細書に記載された埋め込み型人工心臓弁860の1つまたは複数の実施形態は、拡大縮小が可能な構成を特徴としており、6〜35mmの範囲の直径を有する標的の弁に適合するように埋め込み型人工心臓弁860が製造され得る。また、上記拡大縮小が可能な構成により、埋め込み型人工心臓弁860は、基本的に単一の設計によって一貫した機能を実現する。
【0107】
次に図5を参照して、埋め込み型人工心臓弁860の送達システム内へのマウント(500)についてさらに説明を行う。より詳細には、埋め込み型人工心臓弁860(本明細書では経皮的に送達可能な心臓弁とも称する)が押し潰される(504)。上記経皮的に送達可能な心臓弁が押し潰される最初の段階は、水を含んでいる組織膜を用いて実行される。すなわち、経皮的に送達可能な心臓弁860は、フレーム852内に組織小葉アセンブリ848が取り付けられたフレーム852を含んでいるため、経皮的に送達可能な心臓弁860は押し潰されて一体型のユニットとなる。バルーン拡張型フレームが用いられる場合は、フレーム852の側面に力を直接印加することなく、経皮的に送達可能な心臓弁860のフレーム852を押し潰すために、軸方向に引っ張る手段が用いられてもよい。この手順により、経皮的に送達可能な心臓弁860が圧縮された状態で組織小葉アセンブリ848の小葉の方向も維持しながら、フレーム852のセル構造を保つことができるという利点が実現される。上記小葉の適切な方向および性質は、当該小葉が水を含んでいる状態にあるときに促進される。これにより、組織の脱落、またはフレーム852の形状より大きく組織800または802が膨張することを防止することが容易となる。さらに、この技術により、フレーム852の耐用年数を縮める傾向にある、金属フレーム852(例えばステント)に対する再圧縮ひずみが低減される。また、この技術によってフレーム852内のセルが円周状に均一に押し潰しされやすくなり、これによって、経皮的に送達可能な心臓弁860の組織小葉アセンブリ848を形成する組織の集群(bunching)が軽減される。自己拡張型フレームについては、上記側面は、上記フレームに対して半径方向の圧縮力を与えることで押し潰しを行う必要があり、軸方向の牽引力によって補助されてもよい。
【0108】
図5をさらに参照する。経皮的に送達可能な心臓弁860(すなわち、組織小葉アセンブリ848が取り付けられたフレーム852)は、最初に水分を供給された状態で押し潰される。送達心棒またはバルーンは送達シース内に挿入され、マウント用セグメントが上記シースの末端まで拡張される(508)。その後、上記シースおよびフレームが同軸上にマウントされ、続いて最初の圧着によって組織小葉アセンブリ848とともに上記マウント用セグメント上に圧縮される(512)。次に、経皮的に送達可能な心臓弁860の組織小葉アセンブリ848が乾燥させられる(516)ことにより、当該組織膜小葉の体積およびプロファイルがさらに低減され、半径方向力にさらなる圧縮が可能となる。従って、最後の圧縮工程において、最終的に上記圧縮された弁/フレームが上記送達心棒またはバルーンカテーテル上にマウントされるように、経皮的に送達可能な心臓弁860が円周状圧着手段によってさらに圧着される(520)。
【0109】
次に図6を参照して、被覆、殺菌および包装(600)について説明を行う。より詳細には、上述および図5に示したとおりに、一旦、経皮的に送達可能な心臓弁860が送達心棒またはバルーンカテーテル上に同軸上にマウントおよび圧着されると、例えば、送達シースの末端の近傍において当該送達シース内に収容されている、経皮的に送達可能な心臓弁860の遠位端の位置に上記アセンブリを「逆行装着(backloading)」することにより、上記アセンブリが送達シースの遠位端内に挿入される(604)。ここで、図10を参照する。同図には、経皮的に送達可能な心臓弁860がマウントされたカテーテル1000が概略的に描かれている。
【0110】
図6をさらに参照する。続いて、例えば、エチレンオキシド、陽子ビームまたはガンマ線のうちの1つまたは複数を用いて、経皮的に送達可能な心臓弁860および送達カテーテルが殺菌される(608)。次に、必要に応じて上記アセンブリは無菌包装に包装される(612)。必要に応じて、上記アセンブリとともに追加の要素が出荷されてもよく、例えば、上記要素は、必要な送達手段および説明書を含んでいてもよい。少なくとも1つの実施形態において、上記包装は必要に応じて当該包装の密封された体積中の水蒸気量を制御する装置を含んでいてもよい。図13は、予めマウントされた経皮的に送達可能な人工心臓弁を含む無菌包装1300を手に持っている外科医を描いた図である。
【0111】
次に、図7を参照する。同図には、経皮的に送達可能な心臓弁860の移植に関する一般的な手順を描いたフローチャートが示されている。より詳細には、患者の大腿動脈にカテーテルが挿入され、当該移植を受け入れる標的である罹患している弁の面に至る誘導ワイヤーが設置される。図14はヒトの心臓の簡略化された側面図を概略的に示すものであり、埋め込み型人工心臓弁の一実施形態を受け入れる標的となり得る心臓弁を含んでいる。図15は、罹患している大動脈弁に至る誘導ワイヤーとともに大動脈を示す図である。あらかじめ包装された組み立て済みの乾燥している人工心臓弁としての経皮的に送達可能な心臓弁860が、無菌包装から取り外される(708)。上記乾燥している人工心臓弁アセンブリは、その内腔を含め、生体適合性組織を含まない標準的なバルーンおよびカテーテルを用いた通常の方法で洗浄および調製されることが好ましい。有利なことに、上記乾燥している人工心臓弁アセンブリの移植は、経皮的に送達可能な心臓弁860の組織小葉アセンブリ848に対する水分の再供給のための特段の操作を伴わずに実施可能である。他の任意のカテーテルと同様に利用するための調製における、カテーテルの内腔の通常の洗浄の結果、上記組織小葉に対する或る程度の水分の再供給が生じ得る。さらに、上記乾燥している人工心臓弁アセンブリの移植は、アルコールまたはすすぎ用の水溶液等を必要とする追加の洗浄工程を伴わずに進めることが可能である。さらに、経皮的に送達可能な心臓弁860のフレーム852内の乾燥している組織小葉アセンブリ848のさらなるマウントが不要であるため、別のマウント工程の必要を未然に防ぐことができる。従って、経皮的に送達可能な心臓弁860は、基本的に乾燥している状態で経皮的に移植される。次に、運搬カテーテルまたはバルーンカテーテルは、上記誘導ワイヤーに同軸上にマウントされ、X線透視装置で検査可能な大きな血管の水準まで、X線透視画像参照の下、当該誘導ワイヤー上で進められる(712)。次に、これらの(nominal)位置および構造が確認された後、送達システムは、X線透視画像参照の下で罹患している弁の面まで進められ、被覆シースが抜き取られる(716)。上記被覆シースは、上記送達システムが上記罹患している弁に到達した段階で抜き取られてもよいし、あるいはその前の進行中に抜き取られてもよい。これにより、マウントされた埋め込み型人工心臓弁860が適切な位置にて曝露される。バルーン拡張型フレームが用いられ、経皮的に送達可能な心臓弁860の拡張バルーン上への事前のマウントを伴う送達方法が想定される場合には、続いて当該バルーンが膨張し、経皮的に送達可能な心臓弁860を上記弁の面に配置する(720)。そして、経皮的に送達可能な心臓弁860の小葉は、直ちに動作する(724)。上記配置された人工心臓弁860が図16に示されており、組織小葉アセンブリ848は血流を適切に制御する機能を果たす。
【0112】
本発明は、本発明の精神または必要な特徴点から逸脱することなく、別の特定の形態として実施され得る。記載された実施形態は、単に実例として限定されること無く、あらゆる点で考慮され得る。それ故に、本発明の範囲は、上述した説明よりも、むしろ、添付された特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲に相当する目的および範囲の内における全ての変更は、特許請求の範囲の内に包含される。
【0113】
1つ以上の本発明は、様々な実施形態において、本明細書中に実質的に記述および記載されている構成、方法、プロセス、システムおよび/または装置を含む。なお、当該構成、方法、プロセス、システムおよび/または装置には、これらの様々な実施形態、サブコンビネーションおよびサブセットが含まれる。本開示を理解すれば、当業者であれば、本発明をどのように作製および使用するか理解するであろう。
【0114】
本発明は、様々な実施形態において、本明細書中に記述および/または記載されていない構成を含まない装置およびプロセスを備えることを包含する。または、本発明は、様々な実施形態において、従来の装置またはプロセスに用いられ得るように、このような構成を含まないことを包含する(例えば、実施において、性能を向上させるため、簡便性を達成するため、および/または、コストを低減するため)。
【0115】
上述した本発明に関する議論は、説明および解説を目的として示されている。上述した本発明に関する議論は、本発明を本明細書中に記載されている形態または形態群に限定することを意図していない。例えば、合理的に開示することを目的として、上述した詳細な説明では、本発明の様々な特徴点が、1つ以上の実施形態としてグループ化されている。開示における当該方法は、クレームされた発明が各請求項中に明確に記載された特徴点を越える特徴点を必要とすることを意図していることの現れである、と解釈されるべきではない。むしろ、後述する請求項が示すように、上述した開示された単一の実施形態における全ての特徴点に満たない特徴点を有する実施形態の中に、発明の態様が存在する。それ故に、後述する請求項は、これによって、本発明の個々の好ましい実施形態のような、それ自身を主張する個々の請求項と共に、当該詳細な説明の中に包含される。
【0116】
更に、本発明の説明は、1つ以上の実施形態、特定の変形物および修飾物の説明を包含するが、別の変形物および修飾物も本発明の範囲に含まれる(例えば、本開示を理解した後、当該分野における技術および知識の範囲内にあるもの)。特許性を有するあらゆる主題を公に供することを意図すること無く、容認される範囲の別の実施形態を含む権利を得ることが意図され、上記容認される範囲の実施形態には、請求項に記載されたものとは別である、交換可能である、および/または、同じである、構造、機能、範囲または行為(acts)が包含される。このような、別である、交換可能である、および/または、同じである、構造、機能、範囲または行為が、本明細書中に開示されていても開示されていなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の少なくとも1つの実施形態に関連付けられた方法のフローチャートである。
【図2A】組織を調整する工程の要素を示すフローチャートである。
【図2B】組織を調整する工程の要素を示すフローチャートである。
【図3】乾燥させる工程およびサイズ調整する工程の要素を示すフローチャートである。
【図4】フレームへの組織小葉アセンブリの取り付けを伴う弁を構築する工程の要素を示すフローチャートである。
【図5】送達システム内に弁をマウントする工程の要素を示すフローチャートである。
【図6】シースで覆い、殺菌して包装する工程の要素を示すフローチャートである。
【図7】患者内へ弁を送達する工程の要素を示すフローチャートである。
【図8A】折り畳まれる前の1枚の組織切片を示す図である。
【図8B】折り畳む工程の後の2枚(3枚)の分離した組織切片を示す図である。(詳細は後述)
【図8C】図8Bに示す、折り畳む工程の後に形成されたひだとともに縫合された後の2枚の組織切片を示す図である(詳細は後述)。
【図8D】白紙状態の組織を、破線で示される最初の折り畳み線とともに示す図である。
【図8E】最初の折り畳み線に沿って折り畳まれている白紙状態の組織の斜視図である。
【図8F】ひだの折り畳み線および折り畳む工程の後のひだを示す2点セットの図である。
【図8G】図8Fに示す単一のひだの詳細な斜視図である。
【図8H】折り畳まれ縫い合わせられた組織小葉アセンブリを概略的に示す斜視図である。
【図8I】フレームを概略的に示す斜視図である。
【図8J】図8Iに示すフレームを、該フレームに取り付けられた組織小葉アセンブリとともに概略的に示す斜視図である。
【図8K】図8Jに示す装置を概略的に示す側面図である。
【図8L】フレームおよび該フレームに取り付けられた組織小葉アセンブリを概略的に示す端面図である。
【図9】少なくとも1つの実施形態に従って調製された5つの組織標本に対する真応力ひずみ試験の結果を示すグラフである。
【図10】経皮的に送達可能な心臓弁がマウントされたカテーテルを示す概略図である。
【図11A】フレーム内に取り付けられた組織小葉アセンブリを含む埋め込み型人工心臓弁の、当該組織が部分的に開いている状態の写真である。
【図11B】フレーム内に取り付けられた組織小葉アセンブリを含む埋め込み型人工心臓弁の、当該組織が閉じている状態が描かれた図である。
【図11C】フレーム内に取り付けられた組織小葉アセンブリを含む埋め込み型人工心臓弁の、当該組織が閉じている状態が描かれた側断面図である。
【図11D】フレーム内に取り付けられた組織小葉アセンブリを含む埋め込み型人工心臓弁の、当該組織が閉じている状態が描かれた別の側断面図である。
【図12】ヒトの心臓の状態をモデル化するためのポンプ運動の試験が30,000,000回繰り返された後の弁組織の写真であり、写真には滑らかで均一な表面が写っている。
【図13】予めマウントされた人工心臓弁がカテーテルおよび付属品とともに無菌包装されたものを、外科医が手に持っている様子が描かれた図である。
【図14】埋め込み型人工心臓弁の実施形態を受け入れる標的となり得る心臓弁を含む、簡略化したヒトの心臓を概略的に示す断面図である。
【図15】埋め込み型人工心臓弁がマウントされたカテーテルを受け入れる、ヒトの大動脈の概略図である。
【図16】罹患した大動脈弁があった部位に人工心臓弁が移植された状態の、大動脈の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム、および、当該フレームに取り付けられている組織小葉アセンブリ、を有している人工心臓弁と、
上記人工心臓弁が取り外し可能にマウントされている、経皮的に挿入可能な、弁を送達するための機構と、
上記経皮的に挿入可能な弁を送達するための機構に取り外し可能にマウントされている上記人工心臓弁を収容している無菌包装と、を含むアセンブリ。
【請求項2】
上記経皮的に挿入可能な、弁を送達するための機構は、バルーンカテーテルを有していることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
上記バルーンカテーテルは、12〜14フレンチのバルーンカテーテルであることを特徴とする請求項2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
上記バルーンカテーテルは、略12フレンチ未満のものであることを特徴とする請求項2に記載のアセンブリ。
【請求項5】
上記バルーンカテーテルは、略5〜12フレンチの間のものであることを特徴とする請求項2に記載のアセンブリ。
【請求項6】
上記経皮的に挿入可能な、弁を送達するための機構は、心棒を有していることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項7】
上記無菌包装内で、上記組織小葉アセンブリを形成している組織は、水を含んでいるもの、および、実質的に乾燥していないもの、の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項8】
上記無菌包装内で、上記組織小葉アセンブリを形成している組織は、実質的に乾燥しているものであることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項9】
上記フレームは、ステントを有していることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項10】
上記組織小葉アセンブリを形成している組織は、処置された心膜組織を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項11】
患者内に移植することができる、あらかじめ包装されている、カテーテルを通した経皮的な送達が可能な人工心臓弁であって、
フレームと、
上記フレームに取り付けられている、実質的に乾燥している組織を有している組織小葉アセンブリと、
を含むことを特徴とする人工心臓弁。
【請求項12】
上記実質的に乾燥している組織は、処置された心膜組織を含んでいることを特徴とする請求項11に記載のあらかじめ包装されている、カテーテルを通した経皮的な送達が可能な人工心臓弁。
【請求項13】
上記実質的に乾燥している組織の含水率は、当該実質的に乾燥している組織の略40重量%未満であることを特徴とする請求項11に記載のあらかじめ包装されている、カテーテルを通した経皮的な送達が可能な人工心臓弁。
【請求項14】
上記フレームと、該フレームに取り付けられている組織小葉アセンブリとは、操作可能に、12〜14フレンチのバルーンカテーテルと組み合わせられていることを特徴とする請求項11に記載のあらかじめ包装されている、カテーテルを通した経皮的な送達が可能な人工心臓弁。
【請求項15】
上記フレームと、該フレームに取り付けられている組織小葉アセンブリとは、操作可能に、略12フレンチ未満のサイズのバルーンカテーテルと組み合わせられていることを特徴とする請求項11に記載のあらかじめ包装されている、カテーテルを通した経皮的な送達が可能な人工心臓弁。
【請求項16】
上記フレームと、該フレームに取り付けられたている組織小葉アセンブリとは、操作可能に、略5〜12フレンチの間のサイズのバルーンカテーテルと組み合わせられていることを特徴とする請求項11に記載のあらかじめ包装されている、カテーテルを通した経皮的な送達が可能な人工心臓弁。
【請求項17】
患者に対して用いられるアセンブリであって、
上記患者内に経皮的に心臓弁を配置するための送達システムを収容している、密封された無菌包装を有し、
上記心臓弁は、
上記密封された無菌包装内の送達システムに取り外し可能にマウントされているフレームと、
上記フレームに取り付けられている組織小葉アセンブリと、を有していることを特徴とするアセンブリ。
【請求項18】
上記組織小葉アセンブリは、処置された心膜組織を含んでいることを特徴とする請求項17に記載のアセンブリ。
【請求項19】
上記送達システムは、経皮的に挿入可能なバルーンカテーテルを有していることを特徴とする請求項17に記載のアセンブリ。
【請求項20】
上記バルーンカテーテルは、12〜14フレンチのバルーンカテーテルであることを特徴とする請求項19に記載のアセンブリ。
【請求項21】
上記バルーンカテーテルは、略12フレンチ未満のものであることを特徴とする請求項19に記載のアセンブリ。
【請求項22】
上記バルーンカテーテルは、略5〜12フレンチの間のものであることを特徴とする請求項19に記載のアセンブリ。
【請求項23】
上記送達システムは、経皮的に挿入可能な心棒を有していることを特徴とする請求項17に記載のアセンブリ。
【請求項24】
上記密封された無菌包装内の上記組織小葉アセンブリは、部分的に水を含んでいるもの、および、実質的に乾燥していないもの、の少なくとも1つであることを特徴とする請求項17に記載のアセンブリ。
【請求項25】
上記密封された無菌包装内の上記組織小葉アセンブリは、実質的に乾燥しているものであることを特徴とする請求項17に記載のアセンブリ。
【請求項26】
上記フレームは、ステントを有していることを特徴とする請求項17に記載のアセンブリ。
【請求項27】
患者内への移植に適合した物体であって、
フレームに取り付けられた処置された組織を含んでいる人工心臓弁を有し、
上記処置された組織の含水率は、当該処置された組織の略60重量%未満であることを特徴とする物体。
【請求項28】
上記処置された組織は、処置された心膜組織の部分を含み、
上記処置された心膜組織は、最大抗張力が略12MPaを超えるものであることを特徴とする請求項27に記載の物体。
【請求項29】
上記心膜組織の部分の厚さは、略50〜300μmの間であることを特徴とする請求項28に記載の物体。
【請求項30】
上記処置された組織の含水率は、当該処置された組織の略40重量%未満であることを特徴とする請求項27に記載の物体。
【請求項31】
患者内へのカテーテルを通した送達に適合した物体であって、
フレームに取り付けられた処置された組織をさらに含む人工心臓弁を有し、
上記処置された組織は、含水率が当該処置された組織の略50重量%未満であるときに、厚さが略50〜500μmであり、最大抗張力が15MPaを越えるものであることを特徴とする物体。
【請求項32】
上記処置された組織は、処置された心膜組織を含んでいることを特徴とする請求項31に記載の物体。
【請求項33】
上記処置された組織の含水率は、当該処置された組織の略40重量%未満であることを特徴とする請求項31に記載の物体。
【請求項34】
上記最大抗張力は、略20MPaを超えることを特徴とする請求項31に記載の物体。
【請求項35】
上記処置された組織は、ポリマー浸潤に曝されたマトリクスを含まないものであることを特徴とする請求項31に記載の物体。
【請求項36】
組織を含んでいる人工心臓弁を、部分的に圧縮して送達カテーテル上にマウントする工程と、
上記組織を、少なくとも部分的に乾燥させる工程と、
上記人工心臓弁を、さらに圧縮して送達カテーテルにマウントする工程と、
上記人工心臓弁および上記送達カテーテルを、殺菌および包装する工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項37】
上記無菌包装された人工心臓弁および送達カテーテルを輸送する工程をさらに含むことを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
上記組織は、処置された心膜組織を含んでいることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項39】
上記人工心臓弁を部分的に圧縮して上記送達カテーテル上にマウントする工程に先立って、上記組織は、(a)実質的に乾燥していないもの、および、(b)少なくとも部分的に水を含んでいるもの、の少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項40】
フレームに組織を取り付ける工程と、
上記フレームを、当該フレームに取り付けられた組織とともに、部分的に圧縮して送達カテーテル上にマウントする工程と、
上記組織を、少なくとも部分的に乾燥させる工程と、
上記フレームを、当該フレームに取り付けられた組織とともに、さらに圧縮して送達カテーテル上にマウントする工程と、
上記フレームおよび上記送達カテーテルを、当該フレームに取り付けられた組織とともに、殺菌および包装する工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項41】
上記フレームを部分的に圧縮してマウントする工程に先立って、上記組織は、(a)実質的に乾燥していないもの、および、(b)少なくとも部分的に水を含んでいるもの、の少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
上記送達カテーテル上にマウントされている上記無菌包装されたフレームを、当該フレームに取り付けられている組織とともに、外科用または医療用の処置設備へ輸送する工程をさらに含むことを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項43】
上記フレームに上記組織を取り付ける工程に先立って、上記組織が折り畳まれて、組織小葉アセンブリが形成されることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項44】
上記組織小葉アセンブリは、少なくとも1つの折り返しと、少なくとも1つのひだと、を有していることを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項45】
上記組織は、処置された心膜組織を含んでいることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項46】
経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法であって、
生体から膜組織を得る工程と、
上記膜組織を少なくとも1つの化学物質にて処置することによって、処置された膜組織を作製する工程と、
上記処置された膜組織を、当該膜組織が実質的に乾燥している組織となるまで乾燥させる工程と、
上記実質的に乾燥している組織を、フレームに取り付ける工程と、
上記フレームに取り付けられた上記実質的に乾燥している組織に再び水分を補給することによって、再び水分が供給された組織を形成する工程と、
上記再び水分が供給された組織が取り付けられている上記フレームを押し潰す工程と、
上記押し潰されたフレームに取り付けられている上記再び水分が供給された組織を、当該組織が実質的に乾燥している組織となるまで乾燥させる工程と、を含むことを特徴とする調製方法。
【請求項47】
上記フレームを、当該フレームに取り付けられている上記組織とともに、圧縮して送達カテーテル上にマウントする工程をさらに含むことを特徴とする請求項46に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項48】
上記送達カテーテル上にマウントされている上記フレームを、当該フレームに取り付けられている上記実質的に乾燥している組織とともに、殺菌および包装する工程をさらに含むことを特徴とする請求項47に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項49】
上記送達カテーテル上にマウントされている上記殺菌および包装されたフレームを、当該フレームに取り付けられている上記実質的に乾燥している組織とともに、外科用または医療用の処置設備へ輸送する工程、および出荷する工程の少なくともいずれか1つをさらに含むことを特徴とする請求項48に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項50】
上記フレームを、当該フレームに取り付けられている上記実質的に乾燥している組織とともに、患者内に移植する工程をさらに含むことを特徴とする請求項49に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項51】
上記フレームは、ステントを有していることを特徴とする請求項46に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項52】
上記取り付ける工程に先立って、上記乾燥している組織は、折り返しおよびひだを有するように折り畳まれていないことを特徴とする請求項46に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項53】
上記取り付ける工程に先立って、上記乾燥している組織は、組織小葉アセンブリを形成するように折り畳まれることを特徴とする請求項46に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項54】
上記組織小葉アセンブリは、少なくとも1つの折り返しと、少なくとも1つのひだと、を有していることを特徴とする請求項53に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項55】
上記フレームと、当該フレームに取り付けられている上記組織小葉アセンブリとを、12〜14フレンチのバルーンカテーテル上にマウントする工程をさらに含むことを特徴とする請求項53に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項56】
上記フレームと、当該フレームに取り付けられている上記組織小葉アセンブリとを、略12フレンチ未満のサイズのバルーンカテーテル上にマウントする工程をさらに含むことを特徴とする請求項53に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項57】
上記フレームと、当該フレームに取り付けられている上記組織小葉アセンブリとを、略5〜12フレンチの間のサイズのバルーンカテーテル上にマウントする工程をさらに含むことを特徴とする請求項53に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項58】
上記フレームと、当該フレームに取り付けられている上記組織小葉アセンブリとを、心棒上にマウントする工程をさらに含むことを特徴とする請求項53に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項59】
上記フレームを、当該フレームに取り付けられている上記実質的に乾燥している組織とともに、エチレンオキシド、陽子ビーム、およびガンマ線の少なくともいずれか1つに対して曝露することによって殺菌する工程をさらに含むことを特徴とする請求項46に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項60】
上記処置する工程は、上記膜組織を、1〜37.5%の緩衝ホルマリン溶液または非緩衝ホルマリン溶液中に略3日間〜3週間浸漬する工程を含むことを特徴とする請求項46に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項61】
上記処置する工程は、上記膜組織を、1〜37.5%の緩衝ホルマリン溶液または非緩衝ホルマリン溶液中に略3日間〜5週間浸漬する工程を含むことを特徴とする請求項46に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項62】
上記処置する工程は、上記膜組織を、(a)リジン、および(b)ヒスチジンの少なくともいずれか1つの遊離アミノ酸を含む、1〜37.5%の緩衝ホルマリン溶液または非緩衝ホルマリン溶液中に略3日間〜3週間浸漬する工程を含むことを特徴とする請求項46に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項63】
上記処置する工程は、上記膜組織を、(a)リジン、および(b)ヒスチジンの少なくともいずれか1つの遊離アミノ酸を含む、1〜37.5%の緩衝ホルマリン溶液または非緩衝ホルマリン溶液中に略3日間〜5週間浸漬する工程を含むことを特徴とする請求項46に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項64】
上記処置する工程は、上記膜組織を、100%のグリセロール中に略3週間を超えた期間浸漬する工程を含むことを特徴とする請求項46に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項65】
上記処置する工程は、上記膜組織を、0.1〜25%のグルタルアルデヒド溶液中に略3日間〜3週間浸漬する工程を含むことを特徴とする請求項46に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項66】
上記処置する工程は、上記膜組織を、0.1〜25%のグルタルアルデヒド溶液中に略3日間〜5週間浸漬する工程を含むことを特徴とする請求項46に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項67】
上記処置する工程は、上記膜組織を、(a)リジン、および(b)ヒスチジンの少なくともいずれか1つの遊離アミノ酸を含む、0.1〜25%のグルタルアルデヒド溶液中に略3日間〜3週間浸漬する工程を含むことを特徴とする請求項46に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項68】
上記処置する工程は、上記膜組織を、(a)リジン、および(b)ヒスチジンの少なくともいずれか1つの遊離アミノ酸を含む、0.1〜25%のグルタルアルデヒド溶液中に略3日間〜5週間浸漬する工程を含むことを特徴とする請求項46に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項69】
上記処置する工程は、上記膜組織を、オリゴマーフィルター処理が施された0.1〜25%のグルタルアルデヒド溶液中に略3日間〜3週間浸漬する工程を含むことを特徴とする請求項46に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項70】
上記処置する工程は、上記膜組織を、オリゴマーフィルター処理が施された0.1〜25%のグルタルアルデヒド溶液中に略3日間〜5週間浸漬する工程を含むことを特徴とする請求項46に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項71】
上記処置する工程は、上記膜組織を、(a)リジン、および(b)ヒスチジンの少なくともいずれか1つの遊離アミノ酸を含む、オリゴマーフィルター処理が施された0.1〜25%のグルタルアルデヒド溶液中に略3日間〜3週間浸漬する工程を含むことを特徴とする請求項46に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項72】
上記処置する工程は、上記膜組織を、(a)リジン、および(b)ヒスチジンの少なくともいずれか1つの遊離アミノ酸を含む、オリゴマーフィルター処理が施された0.1〜25%のグルタルアルデヒド溶液中に略3日間〜5週間浸漬する工程を含むことを特徴とする請求項46に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。
【請求項73】
上記膜組織は、処置された心膜組織を含んでいることを特徴とする請求項46に記載の経皮的な、カテーテルを通した人工心臓弁の調製方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図8G】
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【図8H】
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【図8I】
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【図8J】
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【図8K】
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【図8L】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2013−521060(P2013−521060A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556191(P2012−556191)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2011/026763
【国際公開番号】WO2011/109450
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(512227270)コリブリ ハート バルブ エルエルシー (1)
【氏名又は名称原語表記】COLIBRI HEART VALVE LLC
【住所又は居所原語表記】2150 W.6th Ave,Suite M,Broomfield,Colorado 80020,UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】