説明

経皮的僧帽弁形成術のモニタリング

【課題】冠静脈洞に現在使用されているこの方法および器具は、左冠動脈回旋枝を圧迫し左冠動脈回旋枝内の血流を妨げる危険がある。
【解決手段】器具が左冠動脈回旋枝を圧迫するか、または圧迫しそうであるかを判断するために、ほぼリアルタイムで冠静脈洞に僧帽弁形成術器具を低侵襲的に配備する間、器具の追跡が監視される。本発明のある実施例では、締め付け用挿入物を挿入するために用いるカテーテルに、あるいは挿入物自体に、1つ以上の配置センサが含まれる。器具の配置は挿入時に判断され、左冠動脈回旋枝の位置と比較されるが、この器具の配置は、予め取得した画像に対してマッピングするか、同時に心臓内の超音波画像化をすることで判断が可能である。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の背景〕
〔発明の分野〕
本発明は、心臓弁疾患を治療する方法およびシステムに関し、より詳細には経皮的僧帽弁形成術の処置のモニタリングに関する。
【0002】
〔関連技術の説明〕
僧帽弁閉鎖不全などの症状を治療するため、多くの異なる治療法が低侵襲僧帽弁形成術の実現で知られているか、もしくは開発途上にある。ある種の解決法では、冠静脈洞が房室の溝に沿ってほぼ僧帽弁輪と同一面で僧帽弁を部分的に取り巻いていることを利用する。冠静脈洞に挿入し作動させる挿入物で、典型的には僧帽弁輪を締付けるかあるいは圧縮する機械的または加熱的手段を用いる挿入物を、多数の企業が開発した。これは僧帽弁輪の曲率半径を縮小させ、結果的に弁尖の癒合の改善に役立つ。
【0003】
米国特許出願公開公報第2003/0083538号および米国特許第6,676,702号に、このアプローチの範例となる代表的な開示がある。共に弾力性を有する弁輪形成器具を説明しており、僧帽弁輪の一部を包囲するように経皮的に器具を冠静脈洞へ挿入する。作動時、部材の形状を整えてから僧帽弁輪をほぼ半径方向に変形させる力を伝達することで、僧帽弁輪の少なくとも一部を内側へ付勢する。
【0004】
左冠動脈回旋枝(LCx)は冠静脈洞に沿って走り、交錯する点で冠静脈洞の下へ通じる。冠静脈洞に現在使用されているこの方法および器具は、左冠動脈回旋枝を圧迫し左冠動脈回旋枝内の血流を妨げる危険がある。例えば上述の米国特許第6,676,702号では、左冠動脈回旋枝の狭窄を回避するため、冠静脈洞に設置された器具を、左冠動脈回旋枝と冠静脈洞との交錯点を越えて冠静脈洞内部で拡張させないよう注意を促している。この予防措置が遵守される場合でさえ、迷走性の冠状血管構造は依然として患者にリスクを与える可能性がある。
【0005】
〔発明の概要〕
本発明の開示された実施例によれば、僧帽弁形成術の処置はほとんどリアルタイムでモニタリングされるため、合併症を予期および回避することができる。本発明の方法およびシステムを使用すると、冠静脈洞に挿入された弁輪形成器具による左冠動脈回旋枝への傷害という危険が回避される。挿入術中に、挿入物が左冠動脈回旋枝を圧迫しているか、または圧迫する可能性があるか判断される。いくつかの実施例では、1つ以上の配置センサを、弁輪形成器具を配備するために用いるカテーテルに含む。これに加えて、あるいはこの代替として、センサを弁輪形成器具自体に組入れることができる。弁輪形成器具の配置は挿入術中に断定され、通常は既に分かっている左冠動脈回旋枝の位置および特に冠静脈洞とのクロスオーバーと比較される。左冠動脈回旋枝の位置は、予め取得した画像と関連させてマッピングするか、その代わりにほとんどリアルタイムの心臓内超音波画像によって判断することができる。弁輪形成器具が左冠動脈回旋枝に近すぎることが判明した場合、器具の配置を変更するか取外す。
【0006】
他の実施例では、超音波カテーテルを用いて左冠動脈回旋枝を画像化し、および/または、超音波カテーテルにドップラー画像を用い、左冠動脈回旋枝内の血流を可視化する。
【0007】
本発明は、生体心臓内の僧帽弁輪を変形させる方法であって、心臓の少なくとも一部の解剖学的画像の構成、および冠静脈洞への配備用カテーテルの挿入によって実施される方法を提供する。この配備用カテーテルを用いて冠静脈洞内における動作位置に弁輪形成器具を配置させ、解剖学的画像によって弁輪形成器具の動作位置を位置合わせすることにより、この方法はさらに実行される。この方法をさらに進め、動作位置における弁輪形成器具の作動が心臓の左冠動脈回旋枝内の血流を妨げる可能性が低いことを判断し、その後弁輪形成器具を作動させて僧帽弁輪を変形させる。
【0008】
この方法のある態様における解剖学的画像の構成には、超音波変換器を有する超音波カテーテルの心臓への挿入、超音波カテーテルを用いた心臓の二次元超音波画像の複数取得、および二次元超音波画像を結合した三次元超音波画像への合成を含む。
【0009】
この方法の別の態様には、弁輪形成器具が冠静脈洞と左冠動脈回旋枝とのクロスオーバーを避けているか確認することを含む。
【0010】
この方法の更なる態様では、配備用カテーテルを挿入する前に解剖学的画像が構成される。
【0011】
この方法のさらに異なる態様では、解剖学的画像が配備用カテーテルの挿入と同時に構成される。
【0012】
この方法のまた異なる態様では、弁輪形成器具を作動させた後、配備用カテーテルが心臓内に残留している間に、左冠動脈回旋枝内の血流が測定される。
【0013】
この方法のまた異なる態様では、左冠動脈回旋枝のドップラー画像によって、左冠動脈回旋枝内の血流が測定される。
【0014】
この方法のある態様においては、弁輪形成器具を作動させた後、配備用カテーテルが心臓内に残留している間に、僧帽弁における血流が測定される。
【0015】
この方法の別の態様には、解剖学的画像の構成に配備用カテーテルを用いた解剖学的画像の取得を含む。
【0016】
また、この方法のある態様には、心臓の一部における電導を中断するために除去エネルギーを当該箇所に方向付けるという更なる工程を含む。
【0017】
本発明は、経皮的僧帽弁形成術を実施するための器具で、生体心臓の冠静脈洞に弁輪形成器具を挿入するように構成された配備用カテーテルを含む器具を提供する。この配備用カテーテルは、冠静脈洞の動作位置に弁輪形成器具を動かすよう作動する。この器具は、心臓の一部の解剖学的画像を取得するための画像プロセッサおよびマッピングカテーテルを有する位置設定システムを具備する。この位置設定システムは、配備用カテーテルによって弁輪形成器具が挿入されている間の解剖学的画像を用い、弁輪形成器具の動作位置を位置合わせするように作動する。この位置設定システムは、心臓内の左冠動脈回旋枝における標的箇所を特定するために動作するため、操作者は動作位置における弁輪形成器具の作動に左冠動脈回旋枝内の血流が伴うか否か判断することができる。
【0018】
この器具の態様は位置設定システム内の超音波ドライバを有している。その位置設定システム中のマッピングカテーテルは、超音波変換器を有する超音波カテーテルである。超音波変換器が受信する音響信号は画像プロセッサに発信される。画像プロセッサは、心臓の二次元超音波画像を複数作成し、また二次元超音波画像を結合して三次元超音波画像を作成する。
【0019】
本発明は、経皮的僧帽弁形成術を実施するための器具で、生体心臓の冠静脈洞に弁輪形成器具を挿入するように構成されたカテーテルを含む器具を提供する。このカテーテルは、冠静脈洞の動作位置において弁輪形成器具を作動させるように作用する。このカテーテルは、第1の音響信号の心臓側への発信およびこの第1の音響信号のエコーである第2の音響信号の受信に適応した超音波変換器を有する。この器具は、変換器を駆動させる超音波ドライバを有する位置設定システムならびに画像プロセッサを含む。この画像プロセッサは、カテーテルの超音波変換器に由来する電気的信号の受信および心臓の一部の解剖学的画像を構成するための電気的信号の処理に用いられる。この位置設定システムは、カテーテルによって弁輪形成器具が挿入されている間に、解剖学的画像を用いて弁輪形成器具の位置を位置合わせするように作動する。この位置設定システムは、心臓内の左冠動脈回旋枝における標的箇所を特定するために動作するため、操作者は弁輪形成器具の作動に左冠動脈回旋枝内の血流が伴うか否かを判断することができる。
【0020】
本発明の理解をより深めるため、例を用いて発明の詳細を説明する。この例説は、同じ構成要素に同じ参照番号が与えられている以下の図面と合わせて読むべきである。
【0021】
〔発明の詳細な説明〕
以下の説明は、本発明に関する充分な理解を提供するために述べた数々の具体的な詳細である。当業者には明白となるが、本発明は、これら具体的な詳細がなくても実施することができる。また、他の例においても、周知の回路、制御論理、および従来のアルゴリズム並びにプロセスに関するコンピュータプログラムの指示の詳細は、本発明を不要に不明確にすることを避けるため詳しく示していない。
【0022】
本発明の態様を具体化するソフトウェアプログラミングコードは、通常はコンピュータ読取り可能な媒体等の永久記録媒体によって保持される。クライアントサーバ型の環境では、このようなソフトウェアプログラミングコードはクライアントまたはサーバ上に保存される場合がある。このソフトウェアプログラミングコードは、データ処理システムと使用する場合、様々な既知のメディアのいずれかに統合されていることがある。このメディアにはディスクドライブ、磁気テープ、コンパクトディスク(CD)、デジタルビデオディスク(DVD)等の磁気記録装置および光学記録装置ならびに信号を調整する搬送波の有無に関わらず電送媒体に統合されているコンピュータ命令信号を含むが、この限りではない。例えば、伝送媒体にはインターネット等のコミュニケーションネットワークを含む場合がある。さらに、本発明がコンピュータソフトウェアに統合されている場合もあるが、本発明を実施するために必要な機能は、その代わりに一部あるいは全体がアプリケーション特有の集積回路またはその他のハードウェア、あるいはハードウェア構成機器およびソフトウェアの組合せ等のハードウェア構成機器により統合されていることもある。
【0023】
〔システムの概要〕
さて、図面であるが、まずは図1を参照すると、図1は患者の心臓24の画像化およびマッピングをするシステム20を示し、心臓24または心血管系への弁輪形成器具の配備が関与する治療処置の実施に適しており、本発明の開示実施例に一致する。このシステムはカテーテル28を具備しており、このカテーテル28は医師により心室・心房あるいは冠静脈洞等の心血管系に経皮的に挿入される。通常のカテーテル28は、医師がカテーテルを操作するためのハンドル29を具備している。ハンドルを適切にコントロールすることにより、医師は希望通りにカテーテルの遠位端を進め、配置し、方向付けることができる。
【0024】
システム20は、カテーテル28の位置(location)および方向(orientation)の座標を測定する配置サブシステムを具備している。この特許出願全体で用いる「位置(location)」という表現はカテーテルの空間座標に関し、また「方向(orientation)」という表現はカテーテルの角度座標に関する言及である。「配置(position)」という表現は、カテーテルの配置に関する完全な情報に言及し、これには位置座標と方向座標を含む。
【0025】
ある実施例の配置サブシステムは、カテーテル28の配置および方向を判断する磁気測位システムを具備する。この配置サブシステムは、予め規定した近接地の可動範囲に磁場を発生させ、またカテーテル上のこれら磁場を感知する。この配置サブシステムは、通常、患者の体外の固定した既知の配置に特定された磁場発生コイル30等の外付けラジエータ一式を具備する。コイル30は、心臓24の近接地に磁場、通常は電磁場を発生させる。発生した磁場は、カテーテル28内の配置センサ32によって感知される。
【0026】
これと異なる実施例では、カテーテル内のコイル等のラジエータが電磁場を発生させ、患者の体外のセンサがこの電磁場を感知する。
【0027】
配置センサは、感知した磁場に反応して、カテーテルからコンソール34内を通るケーブル33を介して配置に関する電気的信号を発信する。別法として、配置センサはワイヤレスリンクを介してコンソールに信号を伝送することもある。このコンソールは、配置センサ32が発信する信号に基づくカテーテル28の位置および方向を算出する配置プロセッサ36を具備する。この配置プロセッサ36は、典型的に、カテーテル28から来る信号を受信、増幅、ろ過、デジタル化、あるいは処理を行う。
【0028】
この目的に使用される可能性のある磁気測位システムは、例えば米国特許第6,690,963号、第6,618,612号、第6,332,089号、および米国特許公開公報第2002/0065455A1号、第2004/0147920A1号、第2004/0068178A1号に説明されており、これらの開示情報は参照することにより本特許出願の一部とする。図1に示した配置サブシステムは磁場を利用しているが、以下に説明する方法は、電磁場、音響あるいは超音波による測定に基づくシステム等といった、その他の適格な配置サブシステムによって実施される場合がある。
【0029】
これに代わって、システム20は、以下に説明されている処置を実施するために適格に改変された、アメリカ合衆国カリフォルニア州91765、ダイアモンド・バー、ダイアモンド・キャニオン・ロード3333(3333 Diamond Canyon Road, Diamond Bar, California 91765 USA)のバイオセンス・ウエブスター社(Biosense Webster, Inc.)から入手できるカートバイオセンス(Carto-Biosense)(登録商標)ナビゲーションシステム(Navigation System)と同等であると認識することができる。例えばシステム20に必要な改変を加えると、上述の米国特許第6,716,166号および米国特許第6,773,402号で開示されたカテーテルを使用するように構成できる。その目的は、同一あるいは異なる処置、ならびに多くの異なる組合せにおいて、配備カテーテルの配置に関する画像または表現と同時にほとんどリアルタイムで超音波画像を表示させることができるように超音波画像を取得するためである。
【0030】
治療器具および挿入物の挿入に使用されるとき、カテーテル28は、心臓の冠静脈洞内の所望箇所に送込まれる柔軟なガイドワイヤと共に提供される。これに加えてまたはこれの代わりに、カテーテル28の異なる実施例には柔軟なガイド(図示せず)が備えられており、ガイドワイヤをおおうように心臓の冠静脈洞内に送込むように構成されている。サイドポート等の付属ポート(図示せず)が、特定の移植物および治療器具の配備条件を満たすために備えられることもある。
【0031】
次に、カテーテル28(図1)の遠位端の実施例を図解した図2について、本発明の実施例に基づいて言及する。カテーテル28は、超音波画像センサを具備する。この超音波センサは、通常、配列している超音波変換器40を具備する。ある実施例の変換器は圧電変換器である。超音波変換器は、カテーテルの本体または壁における開口部を形取るウィンドウ41の中あるいは近接部に配置されている。カテーテル28は、典型的に、少なくとも1つの管腔37を有し、この管腔にガイドワイヤおよびガイドチューブを通して治療用弁形成器具の配備を助ける。
【0032】
変換器40は、位相配列として動作するもので、ウィンドウ23を通して配列した開口部から超音波ビームを連携して発する。この変換器は直線の配列で示したが、円状あるいは凸状等、他の配列とすることも可能である。ある実施例は、この配列は超音波エネルギーの短バーストを発信し、その後周辺組織から反射された超音波信号を受信するために受信モードに切替わる。典型的に、変換器40は単独で制御駆動され、希望通りの方向に超音波ビームを向けるようになっている。変換器のタイミングが適切であれば、発生した超音波ビームが同心円状に湾曲した波面となるため、変換器の配列から所与の距離にビームを集中することができる。従って、システム20(図1)は、位相配列として変換器の配列を用いており、さらには二次元超音波画像を作成するために超音波ビームを方向付け、集中させる発信・受信スキャン機構を実現している。
【0033】
ある実施例の超音波センサは16〜64個の変換器40を具備しているが、48〜64個の変換器が好ましい。典型的には、変換器は、中心部の周波数が5〜10MHzで通常14cmの侵入度の超音波エネルギーを発生する。この侵入度は、通常数mmから約16cmの範囲である。また、侵入度は、周辺組織および動作周波数に特徴付けられる超音波センサの特徴に依存する。代替の実施例では、これとは異なる適切な周波数の範囲および侵入度を使用することができる。
【0034】
反射した超音波エコーの受信後、反射した音響信号あるいはエコーに基づく電気的信号が変換器40によってカテーテル28からケーブル33を介してコンソール34内の画像プロセッサ42に送信される(図1)。コンソール34は、この電気的信号を二次元超音波画像、通常は扇形の超音波画像に変換する。画像プロセッサ42は、通常、配置および方向の情報を算出あるいは判断し、リアルタイムで超音波画像を表示し、三次元画像あるいはボリューム再構築および他の機能を実行する。これらについては以下に詳述する。
【0035】
いくつかの実施例の画像プロセッサによっては、超音波画像および配置に関する情報を利用して患者心臓内の標的となる構造の三次元モデルを構成する。この三次元モデルは、ディスプレイ44上で二次元映像として医師に提供される。
【0036】
いくつかの実施例のカテーテルの遠位端によっては、電気生理学的マッピングおよび無線周波数(RF)アブレーション等といった診断、治療、あるいは診断と治療両方の機能を果たすために、少なくとも1本の電極46を具備している。ある実施例の電極46は、局部の電位(electrical potential)の感知に利用される。電極46で測定される電位は、心内膜面における局部の電気的活動のマッピングに利用される場合がある。電極46が心臓24(図1)の内膜面のある部分に接触した時あるいは近付いた時、電極46によってその部分の局部電位を測定することができる。測定された電位は電気的信号に変換され、カテーテルを介して送信され画像プロセッサに表示される。これとは異なる実施例の局部の電位は、コンソール34に接続しており、適格な電極および配置センサを備えたもうひとつのカテーテルによって取得される。アプリケーションによっては、電極46を用いてカテーテルがいつ弁と接触するか判断することができる。これは、弁における電位が心筋における電位よりも低いため可能となる。
【0037】
電極46を1本の輪状の電極として示したが、このカテーテルに含まれる電極は形状および数量を問わない。例えば、上記の診断および治療機能を果たすことを目的に、このカテーテルに2本以上の輪状の電極、複数のあるいは配列した点電極、1本のチップ電極、あるいはあらゆる組合せのこれら電極が備わることがある。
【0038】
配置センサ32は、通常カテーテル28の遠位端内で、電極46および変換器40の近位部に位置が特定されている。典型的に、超音波センサの配置センサ32、電極46、および変換器40間の相互配置および方向のオフセットは一定である。通常これらオフセットは、配置センサ32の配置が測定されている場合、配置プロセッサ36によって超音波センサおよび電極46の座標を割出す時に使用される。これとは異なる実施例のカテーテル28は、電極46および変換器40に対して、それぞれが一定の配置および方向のオフセットを有する2個以上の配置センサ32を具備する。また、この他の実施例では、オフセット(あるいはこれと同等の較正パラメータ)が配置プロセッサ36に予め較正され記憶されている。別法として、カテーテル28のハンドル29に取付けた記憶装置(電気的にプログラム可能な読取り専用メモリ、またはEPROM等)にオフセットを記憶させることもできる。
【0039】
典型的には、配置センサ32は、上記に引用した米国特許第6,690,963号に記載されているような3つの非同心のコイル(図なし)を具備する。あるいは、1つ以上の同心もしくは非同心のコイル、ホール効果のセンサ、または磁気抵抗センサ等を含む、その他の適格な配置センサの配列を使用することができる。
【0040】
典型的に、超音波画像および配置の測定は、体表面における心電図(ECG)信号あるいは心内心電図に関連したゲート信号および画像取得によって心臓周期と連動している。(ある実施例の電極46は、ECG信号を発生することができる。)心臓の周期的な収縮および弛緩に伴って心臓の形状および配置といった特徴は変化するため、典型的には、全画像プロセスは、この周期に対して特定のタイミングで実施している。いくつかの実施例によっては、様々な組織の特徴、温度、および血流の測定値等、カテーテルによって測定した追加の測定値も心電図(ECG)信号に連動している。これら測定値は、配置センサ32がこれに対応した配置で測定した測定値にも関連している。追加の測定値は、通常、再構成された三次元モデルにオーバーレイされる(以下参照)。
【0041】
いくつかの実施例の配置の測定および超音波画像の取得によっては、システム20が産生する内部で発生した信号と同期化する。例えば、この同期機構を使って特定の信号に起因する超音波画像の干渉を回避することができる。この例では、画像取得および配置測定のタイミングが干渉信号に対して特定のオフセットに設定されているため、干渉のない画像を取得することができる。オフセットを時々調節して干渉のない画像を取得し続けることが可能である。あるいは、配置測定および画像取得を外部から供給される同期信号と同期化させることもできる。
【0042】
ある実施例のシステム20は、超音波変換器40を駆動させる超音波ドライバ39を具備している。この目的に使用することができる適格な超音波ドライブには、マサチューセッツ州ピーボディ(Peabody, Massachusetts)のアナロジック社(Analogic Corp.)によるAN2300(登録商標)超音波システムが挙げられる。この実施例では、超音波ドライバが超音波センサの駆動および二次元超音波画像の構成といった画像プロセッサ42のいくつかの機能を果たす。この超音波ドライバは、当業者に既知であるBモード、Mモード、CWドップラーおよびカラードップラー血流画像等の異なる画像モードをサポートすることができる。
【0043】
通常の配置プロセッサおよび画像プロセッサは、ここに説明した機能を実施するためのソフトウェアがプログラミングされた汎用コンピュータによって実行される。このソフトウェアは、例えばネットワークを介して電子的形態でコンピュータにダウンロードするか、あるいはCD−ROM等の有形媒体によって供給することもある。これら配置プロセッサおよび画像プロセッサは、それぞれ個別のコンピュータ、1機のコンピュータを使用して実行されたり、あるいはシステム20の異なる算出機能と統合して実行されたりする場合がある。これに加えてあるいはこれの代わりに、配置プロセッサおよび画像プロセッサの少なくともいくつかの機能を専用のハードウェアによって実行することも可能である。
【0044】
二次元解剖学的画像
再度図1を参照すると、例えば超音波、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)などゲート制御された心臓の画像が作成され、カテーテル28の位置データと相関させられる。このゲート制御された画像は他の画像あるいは冠静脈洞への治療器具の配備に使用される同一または異なるカテーテルの配置を用いて位置合わせすることができる。これに適した位置合わせの技術は本特許請願と同一の譲受人 による米国特許第6,650,927号に開示されており、これらの開示情報は参照することにより本特許出願に組み込まれる。この技術について以下に概説する。
【0045】
次に図3を参照すると、心臓の画像54の簡単な形状描写が示されている。この画像54は、異なる診断用画像あるいは本発明の開示実施例に基づいて配置されたカテーテルを用いて位置合わせするために作成された。画像54の作成の内容は、以下にさらに詳しく説明される。表面56は、心臓の表面にほぼ相当する。座標システムの定義、すなわち表面56上の各ポイント58が心尖部60からの距離Rおよび下部方向62に対する角度αによって表現されることが示されている(すなわち、図1の患者26の腹側および足の方向)。画像54を用いて異なる構造を位置合わせするためには、軸64および心尖部60を画像54上で同定し、カテーテル28(図1)上のセンサが提供する位置情報を用いて、これに相当する配置、目印、あるいは位置合わせをする構造の基準となる目印に合わせる。これは自動であることが望ましいが、これに加えてあるいはこれに代わって操作者が実施するかまたは補助することも可能である。位置合わせされる構造のスケールは、画像54の寸法にできるだけ適合するように調整される。
【0046】
次に図4を参照すると、心臓24(図1)の診断用画像66の分解組立図の略図が、本発明の開示実施例に基づいて示されている。この図は、ブルズアイレンディション技術(bullseye rendition technique)によって作成された。画像66は、軸64に垂直な並列スライス68の一群を含む。これらスライスは、典型的に、軸64に沿った固定スライスの増分から取得される。各スライスは、セクション70を有する。
【0047】
三次元解剖学的画像
再び図1を参照する。三次元画像は2005年4月26日に申請した同一出願人による出願第11/115,002号「超音波輪郭再構築を利用した3次元心臓画像」(Three-Dimensional Cardiac Imaging Using Ultrasound Contour Reconstruction)に説明されており、この開示情報は参照することにより本特許出願に組み込まれる。この方法の概要により本発明の理解が促進するであろう。
【0048】
本質的に、この開示された方法は、上記のようにカテーテル28が異なる配置において取得した複数の二次元超音波画像を組合せ、標的構造の単一の三次元モデルを構成する。典型的に、医師がカテーテル28を適切な血管から心室・心房に挿入する。次に、心室・心房内の異なる配置間でカテーテルを動かすことにより標的構造をスキャンする。カテーテルの各配置において、画像プロセッサ42が二次元超音波画像を取得および産生する。
【0049】
再び図1を参照する。治療器具または挿入物を配備するとき、システム20の配置サブシステムはカテーテル28の現在地を測定および算出する。算出された配置は、これに相当する1つまたは複数のスライス68(図3)と共に記憶される。典型的に、カテーテル28の各配置は、六次元座標(X軸、Y軸、Z軸の配置、およびピッチ、ヨー、ロールの角度方向)等の座標形式で表現される。
【0050】
その後画像プロセッサ42は、画像一式で同定された標的の輪郭線に三次元座標を割当てる。三次元空間におけるこれら画像の面の位置および方向は、画像と共に記憶されている配置情報によって既知となる。従って、画像プロセッサは、二次元画像におけるいずれのピクセルの三次元座標も判断することができる。座標を割当てる時、画像プロセッサは通常上述のように、配置センサおよび超音波センサ間の配置および方向のオフセットを含んだ記憶されている較正データを用いる。
【0051】
別法では、三次元モデルを再構成することなく、システム20(図1)を三次元表示および二次元超音波画像の映像に利用することができる。例えば医師は、単一の二次元超音波画像を取得し、冠静脈洞等の標的の輪郭線をこの画像上に標識する。するとシステム20は、三次元空間に超音波画像を方向付け、また映像化することができるようになる。治療処置中、このシステムは処置をしているカテーテルの三次元的配置を連続的に追跡および表示することができる。なお、このカテーテルは、治療処置しているカテーテルに目下位置合わせが行われている画像を取得したカテーテルとは異なるカテーテルである場合がある。
【0052】
〔他の実施例〕
本発明のこれまでとは異なる実施例では、従来技術による左冠動脈回旋枝のドップラーフローの画像化が冠静脈洞に治療器具を配備すると同時に実施される。血流の画像およびカテーテルの配置は、上述のように、両方とも予め取得された、心臓の二次元あるいは三次元画像を用いて位置合わせされる。
【0053】
本発明のまた異なる実施例では、予め取得した解剖学的画像、および標的の心臓における位置(例えば冠静脈洞)の判断を、非侵襲的な画像化方法、すなわち心臓CTあるいはMRI、SPECTおよびポジトロン放出断層撮影法(PET)を用いた心臓の神経伝達画像を使用して取得し、または心外膜の電気マッピングによって検出することができる。すると、これらの位置はマップまたは心臓の画像上に表示されるため、最小限の侵襲を伴うかあるいは非侵襲的な治療の標的となる。
【0054】
僧帽弁形成術が必要な患者の多くは、心房性不整脈、特に心房細動も患っている。弁形成術中にアブレーション治療を便宜に実施することができる。例えば同一出願人による米国特許公開公報第2003/0144658号および第2004/0102769号に説明される超音波および無周波数アブレーション技術を用いた治療を実施することができるが、この開示情報は参照することにより本特許出願に組み込まれる。この他の既知のアブレーション技術を用いることもできる。簡潔に言うと、これら技術は心房あるいは肺静脈口の壁に除去エネルギーを向けて病変を作成する技術で、その結果、不要な電導経路が中断することとなる。
【0055】
〔動作〕
次に図5を参照すると、経皮的僧帽弁形成術のモニタリング方法の大まかなフローチャートが示されているが、これは本発明の開示実施例に基づいている。最初のステップ72では、心臓の解剖学的画像が取得される。ある実施例では、上述のように、経皮的心臓カテーテル法を用いて三次元超音波画像を取得する。冠静脈洞および左冠動脈回旋枝とのクロスオーバーの座標を含む冠静脈洞および左冠動脈回旋枝の位置座標が記録される。これに代わり、上述の、異なるいずれの技術を用いても解剖学的画像を取得することができる。いずれにおいても、これらの画像は、弁形成器具を配備する間に取得される新しいデータを用いて位置合わせされることを意図している。この時点で、治療に用いる弁輪形成器具を選択するために解剖学的画像を理解しておくと好都合であることが多い。器具の選択は、典型的に、僧帽弁輪の直径の測定値、および冠静脈洞の解剖学的評価に基づく。また、冠静脈洞内への弁輪形成器具の最適な設置を計画するために、左冠動脈回旋枝の構造および冠静脈洞との関連性を画像上で判断することができる。
【0056】
オプションとして、挿入前に、選択した弁輪形成器具のモデリングおよびシミュレーションを実施し、配備された際の効果を予測することができる。シミュレーションから得た情報は治療処置およびその後の挿入後評価を向上させる。これに該当するモデリングおよびシミュレーションの技術は、「僧帽弁形成術のシミュレーションのための3D計算モデル(3-D Computational Models for the Simulation of Mitral Valve Annuloplasty)」ヴォッタ、エミリアーノ他、発効2003年夏季バイオエンジニアリング会議、フロリダ州キービスケーンのソネスタビーチリゾート、2003年6月25〜29日(Votta, Emiliano et al., in Proc. 2003 Summer Bioengineering Conference, Sonesta Beach Resort in Key Biscayne, Florida, June 25-29, 2003)および「3次元エコー検査を利用した僧帽弁閉鎖不全の形態素解析(A Method for the Morphological Analysis of the Regurgitant Mitral Valve Using Three Dimensional Echocardiography)」A.マクナブ他、心臓90、771〜776ページ、2004年(Macnab, A., et al., Heart 90:771−776, 2004)に開示されている。
【0057】
次はオプションであるステップ74である。最初のステップ72あるいは対象の過去の患者の解剖学的研究から充分な情報が得られない場合、左冠動脈回旋枝にガイドワイヤを挿入してその経路を正確にマッピングする。本特許出願の譲受人に譲渡された米国特許出願第11/030,944号、2005年1月7日出願、(この開示情報は参照することにより本特許出願に援用される)に説明の記載があるインピーダンス検出システムは、このステップにおける左冠動脈回旋のマッピングに適している。この開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。この代わりに、上述のように、血管造影像をインポートおよび位置合わせすることができる。
【0058】
次はステップ76である。最初のステップ72で用いたカテーテルあるいはプローブと同じかあるいは異なるカテーテルあるいはプローブを用いて冠静脈洞にアクセスする。通常まずこのステップでは、配置センサを有するカテーテルを冠静脈洞に前進させる。カテーテル挿入時の現在地は、上述の測位システムによりほぼリアルタイムで追跡される。カテーテルの位置は、最初のステップ72で取得した解剖学的画像を用いて位置合わせし、表示される。この表示は、観察部位の角度の変更、拡大・縮小、あるいは心臓構造に関連付けてカテーテルを有利に表示させる際の画像操作等、必要に応じて処置中に医師が調節する。
【0059】
ステップ76およびその後の処置を実施する間に、左冠動脈回旋枝の経路および冠静脈洞からの絶対距離を描写することができる。この描写には、冠静脈洞内に代替として挿入および収縮(retracted)された超音波カテーテルあるいはガイドワイヤを用いる。実施例によっては、弁輪形成器具の挿入機構に画像センサを組込んでいる。この画像センサは、上述の配置技術によって左冠動脈回旋枝および冠静脈洞間の距離の変化を連続的に測定するために使用される。またこの画像センサは、エコードップラー画像によって冠動脈内の血流変化を動的に評価するために用いられる。これら画像は、弁輪形成器具の最適な位置および最終結果の確認に使用され、その後画像ワイヤあるいはカテーテルを引き抜く。このプロセスの更なる詳細を以下に示す。
【0060】
次のステップ78では、冠静脈洞に後発の弁輪形成器具を挿入する。ステップ78の詳細は、起用される特定の弁輪形成器具によって異なる。弁輪形成器具がカテーテルを介して直接配備されるケースがある。また、冠静脈洞にカテーテルを介してガイドワイヤを侵入させるケースもある。次に、カテーテル内腔を通してガイドワイヤの上からガイドチューブを侵入させる。弁輪形成器具が取付けられている導入器は、ガイドチューブ内のガイドワイヤに沿って僧帽弁に挿入されることが多い。いくつかの実施例の弁輪形成器具は配置センサを有しており、この器具の配置を直接追跡することができる。これとは異なる実施例では、カテーテルの遠位端との現行のオフセットから弁輪形成器具の現在の位置が算出される。このステップにおいて、左冠動脈回旋枝内の血流のベースライン値を測定することができる。
【0061】
次は、左冠動脈回旋枝に対する弁輪形成器具の現在の位置を参考にし、弁輪形成器具の作動がこの血管を傷害する可能性が低いか判断するステップ80である。具体的には、上記のように、弁輪形成器具の作動時に、左冠動脈回旋枝とクロスオーバーする点に対して弁輪形成器具が圧力をかけないように弁輪形成器具を配置すべきである。
【0062】
ステップ80で否(血管を傷害する可能性が低くない)と判断された場合、コントロールをステップ78に戻し、弁輪形成器具の配置を調整する。
【0063】
ステップ80で是(血管を傷害する可能性が低い)と判断された場合、コントロールをステップ82に進める。弁輪形成器具を作動させ、配備状態を推測する。作動の方法は異なる場合がある。例えば、あるステント装置では、米国特許公開公報第2004/0102840号に説明されている方法でステントの一部に牽引力が加えられる。この開示情報は参照することにより本特許出願に組み込まれる。別法では、弁輪形成器具は、ニチノールまたはこの他の形状記憶材から形成し、当業者に既知であるようにバルーンを用いて展開状態に拡張してから熱処理することもできる。このタイプの作動については、米国特許公開公報第2003/0083538に記載されており、この開示情報は参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
次にコントロールは、ステップ82で弁輪形成器具を作動した後の左冠動脈回旋枝内の血流が充分であるか判断するステップ84に進む。この判断は、冠動脈内の血流を評価する従来の方法を用いて下すことができる。好ましくは、左冠動脈回旋枝の血流を同時エコードップラーによって画像化し、弁輪形成器具作動前に入手した血流のベースライン値と比較するとよい。
【0065】
ステップ84で否(血流が充分でない)と判断された場合、コントロールは弁輪形成器具の撤去が必要であると考えられるステップ86に進む。この治療処置は、カテーテルを抜去する最終ステップ88を以って失敗に終わる。別法では、図5に点線で示されているように、ステップ78に戻り、これと同等かまたは異なる弁輪形成器具の配置を再度試みる。
【0066】
ステップ84で是(血流が充分でない)と判断された場合、弁輪形成器具によって僧帽弁閉鎖不全が改善したか判断するステップ90にオプションとして進むことができる。好ましくは、当業者に既知であるドップラー超音波カテーテルを用いて僧帽弁を通過する血流を測定し、手術中に判断する。
【0067】
ステップ84で否(血流が充分でない)と判断された場合、コントロールはステップ86に進むか、あるいは弁形成を再試行するオプションのステップ78に戻ることができる。
【0068】
ステップ84で是(血流が充分でない)と判断され、ステップ84の判定を経ない実施例では、コントロールは最終ステップ92に進む。カテーテルが抜去され、治療処置は成功裏に終わる。
【0069】
〔例〕
次に、図6を参照すると、本発明の開示実施例に基づいてカテーテル100を使用して配備される弁輪形成器具98の画像に位置合わせされた心臓96の上面の切断図を表示しているスクリーンディスプレイ94が示されている。大血管および心房上部は除去されている。心臓の画像は、解剖学的画像技術の1つおよび上記の位置設定システムを用いて予め取得され、画像プロセッサで処理および増強してもよい。これに代わり、心臓の画像は、図1に示されているカテーテル28を用いて、カテーテル100の配備の際に取得してもよい。弁輪形成器具98およびカテーテル100の画像は、例えばシステム20(図1)を用いて手術中に構成された。心臓96の図6で可視できる特徴には、冠静脈洞102および冠静脈口104、左主要冠動脈106、前方下行枝108、左冠動脈回旋枝110、大動脈弁112、僧帽弁114、および冠静脈洞102ならびに左冠動脈回旋枝110のクロスオーバー116が含まれる。カテーテル100は、冠静脈口104内に挿入されており、この上に弁輪形成器具98を載せている。弁輪形成器具98は冠静脈洞102内に位置していることについて今後言及されるが、クロスオーバー116にまで延長していない。
【0070】
本発明が上記の具体的な説明に限定されないことは当業者により理解されるであろう。本発明の範囲には、上記で説明した様々な特徴の組合せおよびそのまた組合せ、ならびに上記の説明を読んで当業者が思い当たるであろうそれらの従来技術にない変更および改良を含む。
【0071】
〔実施の態様〕
(1)生体の心臓内の僧帽弁輪を変形させる方法において、
前記心臓の一部の解剖学的画像を構成する工程と、
前記心臓の冠静脈洞へ配備用カテーテルを挿入する工程と、
前記冠静脈洞内の動作位置に弁輪形成器具を配置(positioning)させる前記配備用カテーテルを用いる工程と、
前記配置させる工程の実行時、前記解剖学的画像を用いて前記弁輪形成器具の前記動作位置を位置合わせする工程と、
前記位置合わせする工程に応じて、前記動作位置における前記弁輪形成器具の作動が前記心臓の左冠動脈回旋枝内の血流を妨げる可能性が低いことを判断する工程と、
その後、前記弁輪形成器具を作動させて前記僧帽弁輪を変形させる工程と、
を備えた、方法。
(2)実施態様1に記載の方法において、
前記解剖学的画像を構成する工程は、
超音波変換器を有する超音波カテーテルを前記心臓へ挿入する工程と、
前記心臓の複数の二次元超音波画像を取得するために、前記超音波カテーテルを用いる工程と、
前記二次元超音波画像を合成して三次元超音波画像とする工程と、
を備えた方法。
(3)実施態様1に記載の方法において、
前記判断する工程は、前記弁輪形成器具が前記冠静脈洞と前記左冠動脈回旋枝とのクロスオーバーを避けているか確認する工程を備える、方法。
(4)実施態様1に記載の方法において、
前記解剖学的画像は配備用カテーテルを挿入する前記工程の前に構成される、方法。
(5)実施態様1に記載の方法において、
前記解剖学的画像は配備用カテーテルを挿入する前記工程と同時に構成される、方法。
(6)実施態様1に記載の方法において、
前記作動させる工程に続いて、前記配備用カテーテルが前記心臓内に残留している間に、前記左冠動脈回旋枝内の前記血流を測定する工程をさらに備えた、方法。
(7)実施態様6に記載の方法において、
前記測定する工程は、前記左冠動脈回旋枝のドップラー画像によって実施される、方法。
(8)実施態様1に記載の方法において、
前記作動させる工程に続いて、前記配備用カテーテルが前記心臓内に残留している間に、僧帽弁における血流を測定する工程をさらに備えた、方法。
(9)実施態様1に記載の方法において、
解剖学的画像を構成する前記工程は、前記配備用カテーテルを用いて前記解剖学的画像を取得する工程を備えた、方法。
(10)実施態様1に記載の方法において、
前記心臓の一部における電気伝導を中断するために、除去エネルギーを当該箇所に方向付ける工程をさらに備えた、方法。
(11)経皮的僧帽弁形成術を実施するための装置において、
生体心臓の冠静脈洞に弁輪形成器具を挿入するように構成された配備用カテーテル(deployment catheter)であって、前記冠静脈洞の動作位置(operative location)で前記弁輪形成器具を作動させるために動作可能な配備用カテーテルと、
前記心臓の一部の解剖学的画像を取得するための画像プロセッサおよびマッピングカテーテルを有する位置設定システム(location positioning system)であって、前記弁輪形成器具が前記配備用カテーテルによって挿入されている間に前記解剖学的画像を用いて、前記弁輪形成器具の前記動作位置を位置合わせ(registering)するために動作可能であり、前記心臓の左冠動脈回旋枝における標的箇所を特定する(locating)ために動作可能であり、これによって操作者は前記動作位置における前記弁輪形成器具の作動が前記左冠動脈回旋枝を通る血流を伴うか否かを判断することができる位置設定システムと、
を備えた、装置。
(12)実施態様11に記載の装置において、
前記位置設定システム内に超音波ドライバをさらに有し、前記マッピングカテーテルは超音波変換器を有する超音波カテーテルであり、前記超音波変換器が受信する音響信号は前記画像プロセッサに発信され、前記画像プロセッサは前記心臓の複数の二次元超音波画像を構成し、前記二次元超音波画像を合成して三次元超音波画像とするために動作可能である、装置。
(13)実施態様11に記載の装置において、
前記位置設定システムは、前記配備用カテーテルが挿入されている間に前記解剖学的画像を構成するために動作可能である、装置。
(14)経皮的僧帽弁形成術を実施するための装置において、
生体心臓の冠静脈洞に弁輪形成器具を挿入するように構成されたカテーテルであって、前記冠静脈洞の動作位置で前記弁輪形成器具を作動させるために動作可能であり、前記心臓への第1の音響信号の発信と前記第1の音響信号のエコーである第2の音響信号の受信とに適応した超音波変換器を有する、カテーテルと、
前記変換器を駆動させる超音波ドライバ、および、前記カテーテルの前記超音波変換器からの電気信号を受信し、前記心臓の一部の解剖学的画像を構成するために前記信号を処理する画像プロセッサ、を具備した、位置設定システムであって、前記弁輪形成器具が前記カテーテルによって挿入されている間の前記解剖学的画像を用いて、前記弁輪形成器具の前記動作位置を位置合わせするために動作可能であり、前記心臓の左冠動脈回旋枝における標的箇所を特定するために動作可能であり、これによって操作者は前記弁輪形成器具の作動が前記左冠動脈回旋枝を通る血流を伴うか否かを判断することができる、位置設定システムと、
を備えた、装置。
(15)実施態様14に記載の装置において、
前記画像プロセッサは、前記心臓の複数の二次元超音波画像を構成するために前記電気信号を処理し、前記二次元超音波画像を合成して三次元超音波画像とするために動作可能である、装置。
(16)実施態様14に記載の装置において、
前記画像プロセッサは前記解剖学的画像を構成し、前記弁輪形成器具の前記冠静脈洞への挿入と同時に、前記解剖学的画像を用いて前記弁輪形成器具の前記動作位置を位置合わせするために動作可能である、装置。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】治療処置中の患者の心臓を画像化およびマッピングする、本発明の開示実施例によるシステムの概略図である。
【図2】図1に示した本発明の開示実施例によるシステムに用いられるカテーテルの遠位端の概略図である。
【図3】心臓の画像の簡易的な幾何図であり、これとは異なる診断用画像あるいは挿入されたカテーテルによって位置合わせするために、本発明の開示実施例に基づいて用意された。
【図4】本発明の開示実施例による、図1に示したシステムに用いられる心臓の診断画像の分解組立図である。
【図5】本発明の開示実施例による、経皮的僧帽弁形成術の処置をモニタリングする方法を示したフローチャートである。
【図6】本発明の開示実施例に基づいて弁輪形成器具が配備された際の弁輪形成器具の画像を用いて位置を合わせた心臓上面の切断図を示したスクリーンディスプレイである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮的僧帽弁形成術を実施するための装置において、
生体心臓の冠静脈洞に弁輪形成器具を挿入するように構成された配備用カテーテルであって、前記冠静脈洞の動作位置で前記弁輪形成器具を作動させるために動作可能な配備用カテーテルと、
前記心臓の一部の解剖学的画像を取得するための画像プロセッサおよびマッピングカテーテルを有する位置設定システムであって、前記弁輪形成器具が前記配備用カテーテルによって挿入されている間に前記解剖学的画像を用いて、前記弁輪形成器具の前記動作位置を位置合わせするために動作可能であり、前記心臓の左冠動脈回旋枝における標的箇所を特定するために動作可能であり、これによって操作者は前記動作位置における前記弁輪形成器具の作動が前記左冠動脈回旋枝を通る血流を伴うか否かを判断することができる位置設定システムと、
を備えた、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記位置設定システム内に超音波ドライバをさらに有し、前記マッピングカテーテルは超音波変換器を有する超音波カテーテルであり、前記超音波変換器が受信する音響信号は前記画像プロセッサに発信され、前記画像プロセッサは前記心臓の複数の二次元超音波画像を構成し、前記二次元超音波画像を合成して三次元超音波画像とするために動作可能である、装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、
前記位置設定システムは、前記配備用カテーテルが挿入されている間に前記解剖学的画像を構成するために動作可能である、装置。
【請求項4】
経皮的僧帽弁形成術を実施するための装置において、
生体心臓の冠静脈洞に弁輪形成器具を挿入するように構成されたカテーテルであって、前記冠静脈洞の動作位置で前記弁輪形成器具を作動させるために動作可能であり、前記心臓への第1の音響信号の発信と前記第1の音響信号のエコーである第2の音響信号の受信とに適応した超音波変換器を有する、カテーテルと、
前記変換器を駆動させる超音波ドライバ、および、前記カテーテルの前記超音波変換器からの電気信号を受信し、前記心臓の一部の解剖学的画像を構成するために前記信号を処理する画像プロセッサ、を具備した、位置設定システムであって、前記弁輪形成器具が前記カテーテルによって挿入されている間の前記解剖学的画像を用いて、前記弁輪形成器具の前記動作位置を位置合わせするために動作可能であり、前記心臓の左冠動脈回旋枝における標的箇所を特定するために動作可能であり、これによって操作者は前記弁輪形成器具の作動が前記左冠動脈回旋枝を通る血流を伴うか否かを判断することができる、位置設定システムと、
を備えた、装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置において、
前記画像プロセッサは、前記心臓の複数の二次元超音波画像を構成するために前記電気信号を処理し、前記二次元超音波画像を合成して三次元超音波画像とするために動作可能である、装置。
【請求項6】
請求項4に記載の装置において、
前記画像プロセッサは前記解剖学的画像を構成し、前記弁輪形成器具の前記冠静脈洞への挿入と同時に、前記解剖学的画像を用いて前記弁輪形成器具の前記動作位置を位置合わせするために動作可能である、装置。
【請求項7】
生体の心臓内の僧帽弁輪を変形させる方法において、
前記心臓の一部の解剖学的画像を構成する工程と、
前記心臓の冠静脈洞へ配備用カテーテルを挿入する工程と、
前記冠静脈洞内の動作位置に弁輪形成器具を配置させる前記配備用カテーテルを用いる工程と、
前記配置させる工程の実行時、前記解剖学的画像を用いて前記弁輪形成器具の前記動作位置を位置合わせする工程と、
前記位置合わせする工程に応じて、前記動作位置における前記弁輪形成器具の作動が前記心臓の左冠動脈回旋枝内の血流を妨げる可能性が低いことを判断する工程と、
その後、前記弁輪形成器具を作動させて前記僧帽弁輪を変形させる工程と、
を備えた、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−44507(P2007−44507A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−208442(P2006−208442)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(500520846)バイオセンス・ウェブスター・インコーポレイテッド (75)
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster, Inc.
【住所又は居所原語表記】3333 Diamond Canyon Road, Diamond Bar, California 91765, U.S.A.
【Fターム(参考)】