説明

経粘膜投与用製剤

【課題】従来知られているSNRI製剤よりも吸収性が高く、効果の発現が早く、さらには経口投与が困難な患者に投与しやすいSNRI含有製剤の提供を課題とする。
【解決手段】本発明は、選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤及び粘稠化剤を含有する経粘膜投与用製剤を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有効成分として選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤を含有する製剤に関する。さらに好ましくはミルナシプラン又はその塩を含有する製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(以下、SNRIと略すことがある)は、脳内神経接合部において神経伝達物質であるセロトニンおよびノルアドレナリンの再取り込み部位に選択的に結合し、その取り込みを阻害することによって抗うつ効果を発現させる薬剤として広く知られている第4世代の抗うつ薬である。代表的なSNRIのうちの1つであるミルナシプラン(化学名:シス-(±)−2-(アミノメチル)-N,N-ジエチル-1-フェニルシクロプロパンカルボキサミド)は、セロトニンに加えてノルアドレナリンの再取り込みを阻害することから、イミプラミンに代表される三環系抗うつ薬に匹敵する作用を示すとともに、各種脳内神経伝達物質の受容体に対する親和性が極めて低いことから三環系抗うつ薬の有する副作用(抗コリン作用、心・循環器に対する影響)を軽減したSNRI(Serotonine Noradrenarine Selective Reuptake Inhibitor)と称される新しい抗うつ薬として開発され、塩酸ミルナシプランとして、日本においてはフィルムコーティング錠(商品名:トレドミン錠)として、また、海外においてはカプセル剤(商品名:IXEL)として販売されている。ミルナシプランに関しては、その製造法は、特許文献1から3で報告されている。また、ミルナシプラン含有製剤については特許文献4及び5で報告されている。
現在、抑うつ症状等ミルナシプランが有効な疾患の治療に際して、塩酸ミルナシプランの高用量投与の有効性・安全性の検討が行なわれており、高用量投与を行う可能性が高まってきている(非特許文献1)。高用量投与を行なう場合、複数の錠剤を服用するかあるいは高用量を含有する大型の錠剤を服用する、あるいは服用回数を増やすなどの必要があり、経口投与による服用では患者の負担が大きく、困難を伴うという問題が生じてくる場合がある。
【特許文献1】特公昭63-23186号公報
【特許文献2】特公平05-67136号公報
【特許文献3】特許第2964041号公報
【特許文献4】特表2000-516946号公報
【特許文献5】特表2002-519370号公報
【非特許文献1】臨床精神薬理、vol.5 No.1、2002、p93-99
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、従来知られているSNRI経口投与用製剤よりも治療効果及び吸収性が高く、効果の発現が早く、さらには投与しやすいSNRI含有製剤を提供することにある。特に、従来知られているミルナシプラン製剤よりも治療効果及び吸収性が高く、効果の発現が早く、さらには経口投与が困難な患者に投与しやすいミルナシプラン含有製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、SNRIのうちの代表的な例であるミルナシプラン又はその塩を経鼻投与することにより、ミルナシプランが効率良く吸収され、経口投与した場合よりも非常に早く血中に出てくることをまず見出した。また、ミルナシプラン又はその塩を経鼻投与することにより、ミルナシプランが効率良く中枢神経系に移行し、経口投与よりも効果の発現が早く、低用量で効果が現れることを見出した。そして、さらに従来より高い治療効果を有する、SNRIのうちの代表的な例であるミルナシプラン又はその塩を含有する製剤を見出すべく鋭意検討を重ねた結果、SNRIのうちの代表的な例であるミルナシプラン又はその塩を粘稠化剤、中でもキトサン(以下、Chitosanと表現することもある。)と組み合わせることで、薬物の鼻腔内における滞留性を改善することができ、全身循環系への薬物の吸収性が高まるだけでなく、嗅神経領域からの薬物の直接的な中枢神経系(以下、CNSと略すことがある)への移行を促進させることに成功し、非常に治療効果の高い、SNRIのうちの代表的な例であるミルナシプラン又はその塩を含有する製剤を見出すことに成功した。
【0005】
すなわち本発明としては以下のものが挙げられる。
〔A1〕選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤及び粘稠化剤を含有する経粘膜投与用製剤;
〔A1−2〕経粘膜投与用製剤が経鼻投与用製剤である前記〔A1〕に記載の製剤;
〔A2〕選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤がミルナシプラン又はその塩である前記〔A1〕又は〔A1−2〕に記載の製剤;
〔A3〕ミルナシプラン又はその塩が塩酸ミルナシプランである前記〔A2〕に記載に記載の製剤;
なお、上記〔A1〕〜〔A3〕のように引用する項番号が範囲で示され、その範囲内に〔A1−2〕等の枝番号を有する項が配置されている場合には、〔A1−2〕等の枝番号を有する項も引用されることを意味する。以下においても同様である。
〔A3−2〕粘稠化剤がキトサン又はキチンである前記〔A1〕〜〔A3〕のいずれかに記載の製剤;
〔A3−3〕粘稠化剤がキトサンである前記〔A1〕〜〔A3〕のいずれかに記載の製剤;
〔A4〕製剤が溶液である前記〔A1〕〜〔A3−2〕のいずれかに記載の製剤;
〔A5〕製剤が懸濁液である前記〔A1〕〜〔A3〕のいずれかに記載の製剤;
〔A6〕製剤が乳液である前記〔A1〕〜〔A3〕のいずれかに記載の製剤;
〔A7〕溶液、懸濁液、又は乳液の浸透圧比が0.5〜5.0である前記〔A4〕〜〔A6〕のいずれかに記載の製剤;
〔A7−2〕溶液、懸濁液、又は乳液の浸透圧比が0.5〜2.5である前記〔A4〕〜〔A6〕のいずれかに記載の製剤;
〔A7−3〕溶液、懸濁液、又は乳液の浸透圧比が0.5〜1.5である前記〔A4〕〜〔A6〕のいずれかに記載の製剤;
〔A7−4〕溶液、懸濁液、又は乳液の浸透圧比が約1以下であることを特徴とする前記〔A4〕〜〔A6〕のいずれかに記載の製剤;
〔A8〕製剤がエアゾール剤であることを特徴とする前記〔A1〕〜〔A7−4〕のいずれかに記載の製剤;
〔A9〕製剤が粉末であることを特徴とする前記〔A1〕〜〔A3〕のいずれかに記載の製剤;
〔A10〕四級アンモニウム塩及びパラベン類から選ばれる1種類以上の防腐剤を含有する前記〔A1〕〜〔A9〕のいずれかに記載の製剤;
〔A10−2〕四級アンモニウム塩から選ばれる1種類以上の防腐剤を含有する前記〔A1〕〜〔A9〕のいずれかに記載の製剤;
〔A11〕生物学的利用率が20%以上であることを特徴とする前記〔A1〕〜〔A10−2〕のいずれかに記載の製剤;
〔A11−2〕生物学的利用率が60%以上であることを特徴とする前記〔A1〕〜〔A10−2〕のいずれかに記載の製剤;
〔A11−3〕生物学的利用率が80%以上であることを特徴とする前記〔A1〕〜〔A10−2〕のいずれかに記載の製剤;
〔A11−4〕生物学的利用率が90%以上であることを特徴とする前記〔A1〕〜〔A10−2〕のいずれかに記載の製剤;
〔A12〕最高血中濃度到達時間が60分以内であることを特徴とする前記〔A1〕〜〔A11−4〕のいずれかに記載の製剤;
〔A13〕経口投与不能患者用の前記〔A1〕〜〔A12〕のいずれかに記載の製剤;
〔A14〕製剤が抗うつ剤である前記〔A1〕〜〔A13〕のいずれかに記載の製剤;
〔A15〕製剤が鎮痛剤である前記〔A1〕〜〔A13〕のいずれかに記載の製剤;
〔A16〕有効成分としてのミルナシプラン又はその塩の1日あたりの投与量が1mg以上である前記〔A1〕〜〔A15〕のいずれかに記載の製剤;
〔A16−2〕有効成分としてのミルナシプラン又はその塩の1日あたりの投与量が20mg以上である前記〔A1〕〜〔A15〕のいずれかに記載の製剤;
〔A16−3〕有効成分としてのミルナシプラン又はその塩の1日あたりの投与量が50mg以上である前記〔A1〕〜〔A15〕のいずれかに記載の製剤;
〔A17〕選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤を粘稠化剤と組み合わせて経粘膜又は経皮により投与する方法;
〔A17−2〕選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤を粘稠化剤と組み合わせて経粘膜により投与する方法;
〔A17−3〕選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤を粘稠化剤と組み合わせて点鼻により投与する方法;
〔A17−4〕選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤がミルナシプラン又はその塩である前記〔A17〕〜〔A17−3〕のいずれかに記載の方法;
〔A17−5〕ミルナシプラン又はその塩が塩酸ミルナシプランである前記〔A17−4〕に記載の方法;
〔A17−6〕〔A17〕〜〔A17−5〕のいずれかに記載の方法において、前記〔A2〕〜〔A16−3〕のいずれかに記載の特徴を有する方法;
〔A18〕選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤及び粘稠化剤を含有する経粘膜投与用製剤又は経皮投与用製剤の製造のためのミルナシプラン又はその塩の使用;
〔A18−2〕選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤及び粘稠化剤を含有する経粘膜投与用製剤の製造のためのミルナシプラン又はその塩の使用;
〔A18−3〕選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤及び粘稠化剤を含有する経鼻投与用製剤の製造のためのミルナシプラン又はその塩の使用;
〔A19〕抗うつ薬及び粘稠化剤を含有する経鼻投与用製剤;
〔A20〕選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤及び粘稠化剤を含有する経皮投与用製剤;
〔A20−2〕選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤がミルナシプラン又はその塩である前記〔A20〕に記載の製剤;
〔A20−3〕ミルナシプラン又はその塩が塩酸ミルナシプランである前記〔A20−2〕に記載の製剤;
〔A21〕選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤を粘稠化剤と組み合わせて経皮により投与する方法;
〔A21−2〕選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤がミルナシプラン又はその塩である前記〔A21〕に記載の方法;
〔A21−3〕ミルナシプラン又はその塩が塩酸ミルナシプランである前記〔A21−2〕に記載の方法;
〔A22〕選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤及び粘稠化剤を含有する経皮投与用製剤の製造のためのミルナシプラン又はその塩の使用;
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来知られているSNRI含有製剤よりも吸収性が高く、治療効果の発現が早く、さらには投与しやすいSNRI含有経粘膜投与用製剤、中でもSNRI含有経鼻投与用製剤を提供することができる。また、従来知られているミルナシプラン製剤よりも吸収性が高く、治療効果の発現が早く、薬物の鼻腔内における滞留性が改善され、全身循環系への薬物の吸収性が高められた、ミルナシプラン含有経粘膜投与用製剤、中でもミルナシプラン含有経鼻投与用製剤を提供することができる。さらには、選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤を含有する経皮投与用製剤、中でもミルナシプラン含有経皮投与用製剤を提供することができる。本発明により、経口投与が不適な患者へのミルナシプラン又はその塩の投与、及び高用量の投与が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本明細書において、「選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)」としては、セロトニン及びノルアドレナリン双方の再取り込みを選択的に阻害する薬剤が挙げられる。本発明において用いられるSNRIとしては、セロトニン及びノルアドレナリン双方の再取り込みを選択的に阻害する化合物であれば特に限定されないが、具体的にはベンラファキシン、デュロキセチン、又はミルナシプラン等が挙げられ、ミルナシプランがより好ましい例として挙げられる。
【0008】
本発明において、「ベンラファキシン」は(±)-1-[2-(ジメチルアミノ)-1-(4-メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノールの化学名で知られる化合物、又は場合によってはその適宜の塩であり、公知の方法により合成することができる(例えば、米国特許第4,535,186号公報、メルクインデックス第12版 エントリー10079)。
【0009】
本発明において「デュロキセチン」は(S)-N-メチル-γ-(1-ナフタレニルオキシ)-2-チオフェンプロパンアミンの化学名で知られる化合物、又は場合によってはその適宜の塩であり、公知の方法により合成することができる(例えば、米国特許第5,023,269号公報、メルクインデックス第12版 エントリー3518)。
【0010】
本発明において、「ミルナシプラン」とは、F2207、TN-912、ダルシプラン、ミダルシプラン、又はミダリプランの別名でも知られており、その化学名は、シス-(±)-2-(アミノメチル)-N,N-ジエチル-1-フェニル−シクロプロパンカルボキサミドである。ミルナシプラン又はその適宜の塩が利用できるが、ミルナシプランは公知の方法により合成することができる(例えば、米国特許第4,478,836号公報、メルクインデックス第12版 エントリー6281)。
【0011】
本発明において、SNRIはそのフリー体として、又は薬学的に許容される塩として提供されることが好ましい。薬学的に許容される塩としては、薬学的に許容される酸性物質とSNRIにより形成される塩であれば特に限定されないが、後述するミルナシプランの塩の形成において使用される酸性物質との塩が例示され、塩酸塩が好ましい例として挙げられる。
【0012】
ミルナシプランの塩としては、薬学的に許容できる塩が好ましく、薬学的に許容される酸性物質とミルナシプランにより形成される塩であれば限定されないが、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩や、樟脳スルホン酸塩、又はマンデル酸塩等が挙げられる。その中でも塩酸塩、すなわち塩酸ミルナシプランが好ましく、塩酸ミルナシプランはトレドミン又はイクセルと呼ばれることがある。
なお、本明細書において「ミルナシプラン含有製剤」とは、「ミルナシプラン又はその塩を含有する製剤」を意味する。
【0013】
ミルナシプランは、既に市販されている抗うつ薬であり、認容性が高く、抗うつ薬としては安全性が高い薬剤である。本発明の製剤が患者に投与される場合の1日投与量としては、治療を受ける被験者、苦痛の重症度、及び処方医の判断を考慮して適宜決定すればよいが、有効成分である塩酸ミルナシプラン換算にて、上限としては400mg以下が好ましく、200mg以下がより好ましく、150mg以下がさらに好ましい。下限としては、ミルナシプランの抗うつ剤又は鎮痛剤等の医薬としての有効性を認める最低量であれば限定されないが、15mg以上が好ましく、25mg以上がより好ましく、30mg以上がさらに好ましく、50mg以上が特に好ましく、100mg以上が最も好ましい。また、下限として1mg以上が好ましく、5mg以上がより好ましく、10mg以上がさらに好ましく、20mg以上がさらに好ましい別の態様もある。
【0014】
高用量で投与する場合、有効成分である塩酸ミルナシプラン換算にて、下限としては50mg以上が好ましく、75mg以上がより好ましく、100mg以上がさらに好ましく、125mg以上が特に好ましく、また、上限としては上記の塩酸ミルナシプラン換算での1日投与量の上限と同様に定めることができるが、これらに限定されることはない。
【0015】
投与回数としては、前記投与量を1日あたり1回、または複数回に分けて投与することができる。
【0016】
本発明のSNRIを含有する製剤は、経皮投与用製剤又は経粘膜投与用製剤として用いることができるが、経粘膜投与用製剤として用いることがより好ましい。その中でも経鼻投与用製剤として用いることがさらに好ましい。
【0017】
本発明の経粘膜投与用製剤における粘膜としては、頬側粘膜、口腔粘膜、歯肉粘膜、鼻粘膜、眼粘膜、耳粘膜、肺粘膜、胃粘膜、腸管粘膜、又は子宮内膜等が挙げられ、口腔粘膜、歯肉粘膜、眼粘膜、鼻粘膜又は肺粘膜が好ましく、眼粘膜又は鼻粘膜がより好ましい例として挙げられるがこれらに限定されることはない。その中でも特に鼻粘膜が好ましく、経鼻投与用製剤として用いることができる。
【0018】
本発明の特に好ましい態様として例示されるミルナシプラン又はその塩を有効成分として含有する製剤は、経粘膜投与製剤として用いることができる。粘膜としては上記の例が挙げられるが、その中でも経鼻投与用製剤として用いることが、本発明における特に好ましい態様の一つである。本発明のミルナシプラン含有製剤は、経鼻投与することにより、経口投与に比べ、有効成分の生物学的利用率が高く、最高血中濃度到達時間も短いことから、経鼻投与用製剤として利用することができる。経鼻投与は鼻腔内投与と呼ばれることもある。
【0019】
本発明において、選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤と組み合わせる粘稠化剤としては、液の粘度を増加させる目的で加える物質が挙げられ、鼻腔内の滞留性が改善されるものであれば特に限定されない。また、粘稠化剤自体は液体又は固体のいずれであってもよい。
【0020】
粘稠化剤の具体例としては、例えばアルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、エチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、カルメロースナトリウム、キサンタンガム、グリセリン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、D−ソルビトール液、濃グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プロピレングリコール、ポビドン、ポリソルベート80、ポリビニルアルコール、マクロゴール400、マクロゴール4000、メチルセルロース、綿実油・ダイズ油混合物、又はポリ−L−アルギニンが挙げられる。また、キトサン又はキチンが挙げられる。アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、エチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、カルメロースナトリウム、キサンタンガム、グリセリン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、ポリビニルアルコール、マクロゴール、メチルセルロース、又はポリ−L−アルギニンが好ましい例として挙げられる。また、カルボキシビニルポリマー、カルメロースナトリウム、グリセリン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、D−ソルビトール液、濃グリセリン、ヒドロキシプロピルセルロース、プロピレングリコール、ポビドン、ポリソルベート80、マクロゴール400、マクロゴール4000、綿実油・ダイズ油混合物、又はポリ−L−アルギニンが好ましい別の態様もある。上記の中でも、キトサン又はキチンがより好ましい例として挙げられ、キトサンがさらに好ましい。またキチンがさらに好ましい別の態様もある。
【0021】
上記キトサンには、グルコサミン若しくはグルコサミンを構成単位としてこれら直鎖状に結合したキトサンオリゴ糖(オリゴグルコサミン)が含まれる。また、上記キチンにはN−アセチルグルコサミン若しくはN−アセチルグルコサミンを構成単位としてこれら直鎖状に結合したキチンオリゴ糖(オリゴN−アセチルグルコサミン)が含まれる。また、キトサンは、グルタミン酸塩等、キトサンの塩として用いることもできる。
【0022】
粘稠化剤としては1種類もしくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
キトサンの分子量としては、鼻腔内の滞留性が改善されるものであれば特に限定されないが、分子量の上限として、30000以下が好ましく、20000以下がより好ましく、10000以下がさらに好ましく、5000以下が特に好ましく、下限としては、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上がさらに好ましい。
【0024】
キチンの分子量としては、鼻腔内の滞留性が改善されるものであれば特に限定されないが、分子量の上限として、30000以下が好ましく、20000以下がより好ましく、10000以下がさらに好ましく、5000以下が特に好ましく、下限としては、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上がさらに好ましい。
【0025】
後述する実施例で示すように、粘稠化剤、中でもキトサンを含有する本発明の塩酸ミルナシプラン含有製剤を経鼻投与した場合、鼻腔内の滞留性が改善され、より高い生物学的利用率が得られるだけでなく、嗅神経領域における薬物の滞留性も改善されCNSへの直接的な移行を促進することができる。
【0026】
本発明の塩酸ミルナシプラン含有製剤において用いられる粘稠化剤の含量(重量)としては、例えば塩酸ミルナシプラン含有製剤が溶液、懸濁液、又は乳液等の液剤である場合、塩酸ミルナシプラン含有製剤の体積に対して上限としては10.0%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、下限としては0.1%以上が好ましく、0.2%以上がより好ましく、0.4%以上がさらに好ましく、0.5%以上が特に好ましい。
本発明の塩酸ミルナシプラン含有製剤の粘度は、例えば塩酸ミルナシプラン含有製剤が溶液、懸濁液、又は乳液等の液剤である場合、鼻腔内の滞留性が改善される粘度であれば特に限定されないが、上限としては50cP以下が好ましく、20cP以下がより好ましく、10cP以下がさらに好ましく、下限としては0.1cP以上が好ましく、0.5cP以上がより好ましく、1.0cP以上がさらに好ましい。
【0027】
本発明の経粘膜投与用製剤は、経粘膜的に吸収させることのできる剤型であれば特に限定されないが、例えば粉末、溶液、懸濁液、乳液、舌下錠、舌下カプセル剤、膣錠、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、パスタ剤、又は貼付剤等が挙げられる。製剤を調製するにあたっては、公知の薬学上許容される種々の添加剤を配合することができる。
【0028】
例えば、肺粘膜に対しては、溶液あるいは粉末などの微粒子の剤型として噴霧器を工夫して噴霧後の粒子径を小さくし、口腔から噴霧吸引することにより肺粘膜に製剤を到達させることが可能になる。口腔粘膜に対しては口腔粘膜貼付剤として、また、眼粘膜に対しては瞼貼付剤又は点眼剤として用いることができる。鼻粘膜に対しては、溶液あるいは粉末などの微粒子の剤型として噴霧器を工夫して噴霧後の粒子径を小さくし、鼻腔内に噴霧すること、又はクリーム剤若しくは軟膏剤の剤型で鼻腔内に塗布することができるがこれらに限定されることはない。このように剤型に応じて、またその投与部位により具体的な投与方法を適宜選択すればよい。その他、経粘膜投与に適する医薬として、例えば、特開昭62-195336号公報、特開平3-209327号公報、特公平5-22685号公報、特開平6-107557号公報、特公平7-53671号公報、特開平8-183741号公報などに記載された医薬が知られているので、これらの刊行物に記載された医薬の形態を適宜採用することも可能である。
【0029】
本発明の経粘膜投与用製剤は、溶液、懸濁液(懸濁剤)、乳液(乳剤)としての利用も好ましい例として挙げられ、溶液として利用するのがより好ましい。また、有効成分にそれぞれ添加剤を添加することにより調製することもできる。
【0030】
本発明の経粘膜投与用製剤の溶液は、有効成分を溶媒に溶解させ、pH調節及び等張化されていることが好ましい。即ち溶液の構成としては、少なくとも有効成分、溶媒、pH調節剤、及び等張化剤からなる構成が好ましいがこれに限定されることはない。
【0031】
懸濁液は、有効成分に懸濁化剤又はその他の適当な添加剤と精製水又は油を加え、適当な方法で懸濁し、全質を均等にすることにより得られる。懸濁液はpH調節及び等張化されていることが好ましい。即ち懸濁液の構成としては、少なくとも有効成分、溶媒、懸濁化剤、pH調節剤、及び等張化剤からなる構成が好ましいがこれに限定されることはない。
【0032】
乳液は、有効成分に乳化剤と精製水を加え、適当な方法で乳化し、全質を均等にすることにより得られる。乳液はpH調節および等張化されていることが好ましい。即ち乳液の構成としては、少なくとも有効成分、溶媒、乳化剤、pH調節剤、及び等張化剤からなる構成が好ましいがこれに限定されることはない。
【0033】
本発明の経粘膜投与用製剤で、溶液、懸濁液(懸濁剤)、及び乳液(乳剤)に用いられる溶媒としては水又はエタノールが挙げられ、水がより好ましい例として挙げられる。また、水及びエタノールの混媒として使用することも好ましい。水は日局収載の常水、注射用水、精製水、又は滅菌精製水が好ましい。
【0034】
また、本発明の経粘膜投与用製剤で、懸濁液(懸濁剤)に用いられる懸濁化剤としては、通常懸濁化剤として用いられるものであれば特に限定されないが、懸濁液(懸濁剤)中に1種類もしくは2種類以上含まれていてもよく、例えば、アラビアゴム、アラビアゴム末、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、カルボキシビニルポリマー、カルメロースナトリウム、カンテン末、グリセリン、結晶セルロース、トラガント、トラガント末、ヒドロキシプロピルセルロース、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、ポピドン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油60、ポリソルベート80、マクロゴール4000、マクロゴール6000、オリーブ油、ゴマ油、ダイズ油、綿実油、ラッカセイ油、流動パラフィンが挙げられ、アラビアゴム、アラビアゴム末、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、カルメロースナトリウム、グリセリン、結晶セルロース、トラガント、トラガント末、ヒドロキシプロピルセルロース、ポピドン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油60、マクロゴール4000、マクロゴール6000、オリーブ油、ゴマ油、ダイズ油、綿実油、ラッカセイ油、流動パラフィンがより好ましく、オリーブ油、ゴマ油、ダイズ油、綿実油、又はラッカセイ油がさらに好ましい例として挙げられる。また、カルボキシビニルポリマー、カルメロースナトリウム、カンテン末、グリセリン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、ポピドン、ポリソルベート80、又はマクロゴール4000がさらに好ましい別の態様もある。
【0035】
本発明の経粘膜投与用製剤で、乳液(乳剤)に用いられる乳化剤としては、通常乳化剤として用いられるものであれば特に限定されないが、乳液(乳剤)中に1種類もしくは2種類以上含まれていてもよく、例えば、カルボキシビニルポリマー、カルメロースナトリウム、高度精製卵黄レシチン、グリセリン、水素添加大豆リン脂質、スクワラン、スクワレン、ステアリン酸ポリオキシル45、ステアリン酸、ステアリン酸ポリオキシル55、精製大豆レシチン、精製卵黄レシチン、セキスイオレイン酸ソルビタン、スルビタン脂肪酸エステル、大豆レシチン、ヒドロキシプロピルセルロース、部分水素添加大豆リン脂質、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(1)ポリオキシプロピレン(1)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、ポリソルベート80、マクロゴール400、綿実油・ダイズ油混合物、又はモノステアリン酸ソルビタンが挙げられ、高度精製卵黄レシチン、水素添加大豆リン脂質、スクワラン、スクワレン、ステアリン酸ポリオキシル45、ステアリン酸ポリオキシル55、精製大豆レシチン、精製卵黄レシチン、セキスイオレイン酸ソルビタン、スルビタン脂肪酸エステル、大豆レシチン、部分水素添加大豆リン脂質、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(1)ポリオキシプロピレン(1)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、又はモノステアリン酸ソルビタンが好ましい例として挙げられる。また、カルボキシビニルポリマー、カルメロースナトリウム、グリセリン、ステアリン酸、ヒドロキシプロピルセルロース、プロピレングリコール、ポリソルベート80、マクロゴール400、又は綿実油・ダイズ油混合物が好ましい別の態様もある。
【0036】
本発明の経粘膜投与用製剤において、溶液、懸濁液、又は乳液に例示される液剤におけるpHとしては、上限としては10以下が好ましく、9以下がより好ましく、8以下がさらに好ましく、7以下が特に好ましく、また、下限としては2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましく、5以上が特に好ましい。また、pHの上限としては8.5以下が好ましく、7.5以下が好ましく、6.5以下がより好ましく、下限としては3.8以上が好ましく、4.3以上がより好ましく、4.8以上がさらに好ましく、5.3以上が特に好ましく、5.5以上が最も好ましい別の態様もある。
【0037】
pHは、pH調節剤の添加量により調製することができ、pH調節剤としては、通常pH調節剤として用いられるものであれば特に限定されないが、溶液、懸濁液、乳液中に1種類もしくは2種類以上含まれていてもよく、例えば、アジピン酸、アンモニア水、塩酸、乾燥炭酸ナトリウム、希塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸二水素ナトリウム、グリシン、グルコノ−γ−ラクトン、グルコン酸、結晶リン酸二水素ナトリウム、コハク酸、酢酸、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、ジイソプロパノールアミン、酒石酸、D−酒石酸、L−酒石酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、乳酸、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸一ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂、マレイン酸、無水クエン酸、無水酢酸ナトリウム、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、メグルミン、メタンスルホン酸、モノエタノールアミン、硫酸、硫酸アルミニウムカリウム、DL−リンゴ酸、リン酸、リン酸三ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、又はリン酸二水素ナトリウムが挙げられ、好ましくは、塩酸、乾燥炭酸ナトリウム、希塩酸、クエン酸,クエン酸ナトリウム、クエン酸二水素ナトリウム、グリシン、結晶リン酸二水素ナトリウム、コハク酸、酢酸、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酒石酸、D−酒石酸、L−酒石酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乳酸、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸一ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂、無水クエン酸、無水酢酸ナトリウム、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、メタンスルホン酸、硫酸、硫酸アルミニウムカリウム、DL−リンゴ酸、リン酸、リン酸三ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、又はリン酸二水素ナトリウムが挙げられ、さらに好ましくは、塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸二水素ナトリウム、結晶リン酸二水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂、無水クエン酸、無水リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、又はリン酸二水素ナトリウムが挙げられる。
【0038】
本発明の溶液、懸濁液、又は乳液の浸透圧比は、上限としては1.5以下であることが好ましく、1.4以下であることがより好ましく、1.3以下であることがさらに好ましく、1.2以下であることが特に好ましく、1.1以下であることが最も好ましく、下限としては0.5以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましく、0.7以上であることがさらに好ましく、0.8以上であることが特に好ましく、0.9以上であることが最も好ましい。また、本発明の溶液、懸濁液、又は乳液の浸透圧比は、上限としては5.0以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、3.0以下であることがさらに好ましく、2.5以下であることが特に好ましく、2.0以下であることが最も好ましく、下限としては0.85以上であることが好ましく、0.95以上であることがより好ましく、1.05以上であることがさらに好ましく、1.15以上であることが特に好ましく、1.25以上であることが最も好ましい別の態様もある。さらに、1付近が好ましい別の態様もある。
【0039】
浸透圧の測定は、試料のオスモル濃度を凝固点降下法を用いて測定することができ、具体的には、日本薬局方(第十四改正)の浸透圧測定法により測定される。
【0040】
浸透圧比は、等張化剤の添加量により調製することができ、等張化剤としては、通常等張化剤として用いられるものであれば特に限定されないが、溶液、懸濁液、乳液中に1種類もしくは2種類以上含まれていてもよく、例えば、アミノエチルスルホン酸、亜硫酸水素ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化マグネシウム、果糖、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グリセリン、結晶リン酸二水素ナトリウム、臭化カルシウム、臭化ナトリウム、水酸化ナトリウム、生理食塩液、炭酸水素ナトリウム、D−ソルビトール液、ニコチン酸アミド、乳酸ナトリウム液、濃グリセリン、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、ホウ酸、ホウ砂、マクロゴール4000、無水プロリン酸ナトリウム、リン酸、リン酸水素ナトリウム、リン酸ニ水素ナトリウム、又はリン酸二水素カリウムが挙げられ、アミノエチルスルホン酸、亜硫酸水素ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化マグネシウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グリセリン、結晶リン酸二水素ナトリウム、臭化カルシウム、臭化ナトリウム、水酸化ナトリウム、生理食塩液、炭酸水素ナトリウム、D−ソルビトール液、ニコチン酸アミド、乳酸ナトリウム液、濃グリセリン、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、ホウ酸、ホウ砂、マクロゴール4000、無水プロリン酸ナトリウム、リン酸、リン酸水素ナトリウム、リン酸ニ水素ナトリウム、又はリン酸二水素カリウムが好ましく、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グリセリン、結晶リン酸二水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、生理食塩液、炭酸水素ナトリウム、濃グリセリン、リン酸、リン酸水素ナトリウム、リン酸ニ水素ナトリウム、又はリン酸二水素カリウムがより好ましい例として挙げられる。
【0041】
また、等張化剤として、亜硫酸水素ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化マグネシウム、果糖、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グリセリン、結晶リン酸二水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、生理食塩液、炭酸水素ナトリウム、D−ソルビトール液、ニコチン酸アミド、濃グリセリン、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、ホウ酸、ホウ砂、マクロゴール4000、リン酸、リン酸水素ナトリウム、リン酸ニ水素ナトリウム、又はリン酸二水素カリウムがより好ましく、亜硫酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、果糖、クエン酸ナトリウム、グリセリン、結晶リン酸二水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、生理食塩液、D−ソルビトール液、ニコチン酸アミド、濃グリセリン、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、ホウ砂、マクロゴール4000、リン酸水素ナトリウム、リン酸ニ水素ナトリウム、又はリン酸二水素カリウムがさらに好ましい別の態様もある。
【0042】
本発明の経粘膜投与用製剤が溶液、懸濁液、又は乳液等の液剤である場合には、有効成分の安定化のため防腐剤を添加することができる。防腐剤としては、通常防腐剤として用いられるものであれば特に限定されないが、溶液、懸濁液、乳液中に1種類もしくは2種類以上含まれていてもよく、例えば、塩化セチルピリニジウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、又は塩化ベンゼトニウム液等の四級アンモニウム塩、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、又はパラオキシ安息香酸メチル等のパラベン類、エタノール、エデト酸ナトリウム、チメロサール、デヒドロ酢酸ナトリウム、フェノール、ホウ砂、又はホウ酸が挙げられ、塩化セチルピリニジウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、又は塩化ベンゼトニウム液等の四級アンモニウム塩、又はパラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、又はパラオキシ安息香酸メチル等のパラベン類が好ましい例として挙げられ、塩化セチルピリニジウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、又は塩化ベンゼトニウム液等の四級アンモニウム塩がより好ましい例として挙げられる。また、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、エタノール、エデト酸ナトリウム、チメロサール、デヒドロ酢酸ナトリウム、フェノール、ホウ砂、又はホウ酸がより好ましい別の態様もある。
【0043】
本発明の経粘膜投与用製剤は、粉末剤、エアゾール剤として用いることができる。エアゾール剤はミルナシプランの前記溶液、懸濁液、乳液等を同一容器又は別の容器に充填した液化ガス又は圧縮ガスの圧力により、用時噴出して用いるように製造したものである。エアゾール剤は、例えば日本薬局方(第十四改正)のエアゾール剤の項の記載に従い製造することができる。
【0044】
本発明の経粘膜投与用製剤は、溶液、懸濁液、又は乳液に例示される液剤として粘膜に噴霧投与することができる。例えば、鼻腔内に噴霧投与する場合、液剤を点鼻容器、スプレー容器、又はこのような液剤を鼻腔内に適用するのに適した同様な容器に入れたものを用いることができる。上記液剤の濃度としては経鼻投与に適した濃度であれば特に限定されないが、塩酸ミルナシプラン換算で上限としては、1000mg/ml以下が例示され、800mg/ml以下が好ましく、600mg/ml以下がより好ましく、400mg/ml以下がさらに好ましく、300mg/ml以下が特に好ましく、250mg/ml以下が最も好ましく、下限としては10mg/ml以上が例示され、15mg/ml以上が好ましく、20mg/ml以上がより好ましく、50mg/ml以上がさらに好ましく、100mg/ml以上が特に好ましく、150mg/ml以上が最も好ましい。
【0045】
噴霧投与1回あたりの投与液量としては、上限としては1000μL以下が例示され、500μL以下が好ましく、250μL以下がより好ましく、200μL以下がさらに好ましく、150μL以下が特に好ましく、125μL以下が最も好ましく、下限としては10μL以上が例示され、30μL以上が好ましく、50μLがより好ましく、60μL以上がさらに好ましく、70μL以上が特に好ましく、75μL以上が最も好ましい。
【0046】
1日あたりの噴霧回数としては、1日あたり1回、又は2回、若しくは複数回に分けて投与することができる。必要に応じて適宜の回数を選択することができる。
【0047】
本発明の製剤を用いて経鼻投与を行う場合には、1回の投与において、片方の鼻から投与することもできるし所望の量を投与するために両方の鼻から投与することもできる。
【0048】
本発明の経粘膜投与用製剤の粉末剤は、通常の方法により得ることができ、有効成分に賦形剤等を添加して調製される。賦形剤としては、通常賦形剤として用いられるものであれば特に限定されないが、1種類もしくは2種類以上含まれていてもよく、例えば、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、コムギデンプン、コメデンプン、ショ糖脂肪酸エステル、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デキストラン40、デキストリン、天然ケイ酸アルミニウム、トウモロコシデンプン、二酸化ケイ素、乳糖、ヒドロキシプロピルセルロース、フェナセチン、部分アルファー化デンプン又はマクロゴール4000が挙げられ、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、コムギデンプン、コメデンプン、ショ糖脂肪酸エステル、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デキストラン40、デキストリン、天然ケイ酸アルミニウム、トウモロコシデンプン、二酸化ケイ素、又は部分アルファー化デンプンが好ましい例として挙げられる。また、カルメロースナトリウム、結晶セルロース、乳糖、ヒドロキシプロピルセルロース、又はマクロゴール4000が好ましい別の態様もある。
【0049】
本発明において、生物学的利用率(F)(以下、吸収率(F)と呼ばれることもある)とは、投与した薬物の量に対して吸収された薬物の量の百分比をいい、本発明では血中に出現するミルナシプラン又はその塩の総量で示される。
【0050】
本発明における経鼻投与製剤の生物学的利用率(F)は、下限としては90%以上が好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、97%以上が特に好ましく、99%以上が最も好ましい。また、下限として40%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましく、70%以上が特に好ましく、80%以上が最も好ましい場合もある。さらに、下限として1%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましく、20%以上が特に好ましく、30%以上が最も好ましい別の態様もある。Fの上限としては100%以下であれば特に限定されないが、99%以下が好ましい。
【0051】
本発明において、最高血中濃度到達時間(Tmax)とは、薬物の投与後、最高血中濃度が認められるとき、投与後その最高血中濃度に達するまでの時間をいい、薬剤の投与部位からの吸収速度の評価に用いられる。
【0052】
本発明における経鼻投与製剤の最高血中濃度到達時間(Tmax)は、60分以内が好ましく、40以内がより好ましく、30分以内がさらに好ましく、25分以内が特に好ましく、20分以内が最も好ましい。また、この範囲は、ヒトへの経口投与の公知データである120分に比べ、非常に短時間となっており、ミルナシプラン又はその塩の経鼻投与としての利用が有効であることがわかる。
【0053】
本発明の経粘膜投与用製剤は、上記使用形態に応じた混合物以外にも、有効成分の効果に影響を与えないものであれば、通常の経鼻投与用製剤に用いられるものを添加することができる。
【0054】
本発明の経粘膜投与用製剤は、従来の経口用ミルナシプランを投与されていた患者に対して用いることができ、特に、経口投与が不能な患者に対して、また、高用量の投与が必要な患者に対して有効である。また、本発明の製剤は、本剤に含まれる主成分の薬効を期待して適宜の病態の予防、治療等に用いることが出来る。具体的には抗うつ剤、鎮痛剤としての経粘膜投与用製剤として用いられるがこれらに限定されることはない。例えば、腹圧性尿失禁や線維筋痛症(FMS)等の治療にも用いることができる。公知の抗うつ剤として使用することがより好ましい。また他の公知の薬効を有する薬剤も好ましく、中でも鎮痛剤としての使用(Obata, H. et al., Anesth Analg 2005;100:1406-10)もより好ましい例として挙げられる。痛みとしては、疼痛が挙げられ、中でも、慢性疼痛、神経因性疼痛、頭痛、偏頭痛、緊張性頭痛、慢性骨盤痛、筋肉痛、関節痛、又は線維筋痛等が好ましく、慢性疼痛、神経因性疼痛、又は線維筋痛がより好ましく、神経因性疼痛又は線維筋痛がさらに好ましい例として挙げられる。
【0055】
その他、本発明の製剤は慢性疲労症候群(CFS)の治療にも用いることができる。また、本発明の製剤は、神経因性膀胱、過活動膀胱(OAB)、又は間質性膀胱炎の治療にも用いることができる。
【0056】
本発明の製剤が良好な鎮痛効果を有していることは、例えばObata, H. et al., Anesth Analg 2005;100:1406-10に記載の方法により調べることができる。
【0057】
また、本発明により、SNRIを粘稠化剤と組み合わせて粘膜から投与する方法が提供され、特に粘稠化剤と組み合わせてSNRIを点鼻により投与する方法が提供される。さらにはミルナシプラン又はその塩を粘稠化剤と組み合わせて点鼻により投与する方法が提供される。ミルナシプラン又はその塩は粘膜からの吸収性が高く、例えば粘稠化剤と組み合わせて点鼻投与することにより効果の発現を早め、さらには効果を高めることができる。
【0058】
ミルナシプラン又はその塩を粘稠化剤と組み合わせて点鼻により投与する方法としては、固状製剤の場合、粉末を充填したカプセルを、針を備えた専用のスプレー器具にセットして針を貫通させ、それによりカプセルの上下に微小な孔をあけ、次いで空気をゴム球で送りこんで粉末を鼻腔内に噴出させる方法などが挙げられる。
【0059】
また、剤形が溶液、懸濁液、又は乳液に例示される液剤の場合、該液剤を点鼻容器、スプレー容器、又はこのような液剤を鼻腔内に適用するのに適した同様な容器に入れ、鼻腔内に滴下あるいは噴霧投与する方法などが挙げられる。例えばエアゾール剤として投与することができる。
【0060】
クリーム又は軟膏等の半固状製剤の場合、製剤をチューブに充填し投与時にチューブの口にアプリケーターを付け直接鼻腔内に投与するか、あるいは鼻腔内挿入具を用いそれに製剤を一定量取って鼻腔内に投与する方法などが挙げられる。
【0061】
また、ミルナシプラン又はその塩を投与することができる患者としては、本発明の製剤を用いることのできる上記の疾患を患う患者が挙げられる。具体的にはうつ又は痛みを患う患者が挙げられる。また、腹圧性尿失禁や線維筋痛症(FMS)を患う患者にも投与することができる。うつ患者に投与することがより好ましい。また他の患者であっても好ましく、中でも痛みを患う患者への投与もより好ましい例として挙げられる。痛みとしては、疼痛が挙げられ、中でも、慢性疼痛、神経因性疼痛、頭痛、偏頭痛、緊張性頭痛、慢性骨盤痛、筋肉痛、関節痛、又は線維筋痛等が好ましく、慢性疼痛、神経因性疼痛、又は線維筋痛がより好ましく、神経因性疼痛又は線維筋痛がさらに好ましい例として挙げられる。
【0062】
また、本発明のSNRIを含有する製剤は経皮投与用製剤としても用いることができる。
本発明の経皮投与用製剤は、吸収促進剤を配合することも好ましい。吸収促進剤としては、吸収促進効果を有するものであれば特に限定されないが、例えば、アルコール類、高級アルカン類、高級脂肪酸類、高級脂肪酸エステル類、テルペン類、アルキル硫酸エステル類、アルキルアミンオキシド類、ピロリドン類、包接形成化合物類、胆汁酸塩類、サポニン類、又は多価アルコール類が例示される。アルコール類としては、エタノール、イソプロパノール、デカノール、又はステアリルアルコール等が例示される。また、吸収促進剤としては特開2006-335714号公報に記載のものも用いることができる。
【0063】
本発明の経皮投与用製剤の剤型としては、治療に必要とされる期間薬物を供給できる剤型であれば特に制限されないが、貼付剤、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、又は液剤等が例示される。特に長時間、薬物の有効量を供給可能な剤型として貼付剤が好ましい例として挙げられる。貼付剤としては、パップ剤、テープ剤、パッチ剤、又はプラスター剤等が例示される。貼付剤とする場合、特開2006-335714号公報に記載の公知の基剤及び支持体等を貼付剤として用いることができる。
なお、経粘膜投与用製剤と共通する形態の製剤については上述した経粘膜投与用製剤の調製方法と同様に調製することができる。
【0064】
また、本発明により経粘膜投与用製剤又は経皮投与用製剤の製造のためのミルナシプラン又はその塩の使用方法が提供される。中でも、経鼻投与用製剤製造のためのミルナシプラン又はその塩の使用方法が提供される。
【0065】
以下に、実施例及び試験例等により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0066】
〔製剤例1〕
塩酸ミルナシプラン10g(特許文献1〜3を参考に合成)を適量の精製水に溶解した後、さらに精製水を加えて全体を50mLとして、1mL中に塩酸ミルナシプランを200mg含有する経粘膜投与用製剤を製造する。この経粘膜投与用製剤のpHは4.55であり、浸透圧比は3.81である。
【0067】
〔製剤例2〕
塩酸ミルナシプラン3500mg(特許文献1〜3を参考に合成)を適量の精製水に溶解した後、さらに精製水を加えて全体を50mLとして、1mL中に塩酸ミルナシプランを70mgを含有する経粘膜投与用製剤を製造する。この経粘膜投与用製剤のpHは4.81であり、浸透圧比は1.53である。
【0068】
〔製剤例3〕
塩酸ミルナシプラン3250mg(特許文献1〜3を参考に合成)を適量の精製水に溶解した後、さらに精製水を加えて全体を50mLとして、1mL中に塩酸ミルナシプラン65mgを含有する経粘膜投与用製剤を製造する。この経粘膜投与用製剤のpHは4.81であり、浸透圧比は1.43である。
【0069】
〔製剤例4〕
塩酸ミルナシプラン3000mg(特許文献1〜3を参考に合成)を適量の精製水に溶解した後、さらに精製水を加えて全体を50mLとして、1mL中に塩酸ミルナシプラン60mgを含有する経粘膜投与用製剤を製造する。この経粘膜投与用製剤のpHは4.79であり、浸透圧比は1.33である。
【0070】
〔製剤例5〕
塩酸ミルナシプラン2500mg(特許文献1〜3を参考に合成)を適量の精製水に溶解した後、さらに精製水を加えて全体を50mLとして、1mL中に塩酸ミルナシプラン50mgを含有する経粘膜投与用製剤を製造する。この経粘膜投与用製剤のpHは4.97であり、浸透圧比は1.09である。
【0071】
〔製剤例6〕
塩酸ミルナシプラン(特許文献1〜3を参考に合成)2500mg、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(日本曹達製;HPC−L)50mg、リン酸二水素カリウム(和光純薬製;試薬特級)2.27mg、水酸化ナトリウム(和光純薬製;試薬特級)0.7mg、及びパラヒドロキシ安息香酸メチル(和光純薬製;試薬特級)25mgを精製水に溶解し、全体を50mLとして1mL中に塩酸ミルナシプランを50mg含有する経粘膜投与用製剤を製造する。この経粘膜投与用製剤のpHは6.22であり、浸透圧比は1.13である。
【0072】
〔製剤例7〕
塩酸ミルナシプラン(特許文献1〜3を参考に合成)3500mg、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(日本曹達製;HPC−L)50mg、リン酸二水素カリウム(和光純薬製;試薬特級)22.7mg、水酸化ナトリウム(和光純薬製;試薬特級)7mg、及びパラヒドロキシ安息香酸メチル(和光純薬製;試薬特級)25mgを精製水に溶解し、全体を50mLとして1mL中に塩酸ミルナシプランを70mg含有する経粘膜投与用製剤を製造する。この経粘膜投与用製剤のpHは6.85であり、浸透圧比は1.57である。
【0073】
〔製剤例8〕
塩酸ミルナシプラン(特許文献1〜3を参考に合成)5000mg、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(日本曹達製;HPC−L)50mg、リン酸二水素カリウム(和光純薬製;試薬特級)22.7mg、水酸化ナトリウム(和光純薬製;試薬特級)7mg、及びパラヒドロキシ安息香酸メチル(和光純薬製;試薬特級)25mgを精製水に溶解し、全体を50mLとして1mL中に塩酸ミルナシプランを100mg含有する経粘膜投与用製剤を製造する。この経粘膜投与用製剤のpHは5.91であり、浸透圧比は2.13である。
【0074】
〔実施例1〕
本発明のキトサンを含有する経粘膜投与用製剤は、上記の製剤例1〜8で得られる塩酸ミルナシプランを含有する経粘膜投与用製剤に、所望の含量になるようキトサンを添加することにより得ることができる。
【0075】
〔実施例2〕
塩酸ミルナシプラン1g(特許文献1〜3を参考に合成)を0.5%キトサン水溶液50mLに溶解することにより、1mL中に塩酸ミルナシプランを20mg含有し、キトサン濃度0.5%である経粘膜投与要製剤を得ることができる。
【0076】
〔試験例1〕 セロトニン及びノルアドレナリン再取り込み選択的阻害剤のキトサン併用の影響
<セロトニン及びノルアドレナリンの再取り込み選択的阻害剤>
塩酸ミルナシプラン:合成品を用いた(特許文献1〜3を参考に合成)
<粘稠化剤>
キトサン:Sigma Chemical Co.製
<試薬>
本試験例では試薬として以下のものを用いた。
塩酸ミルナシプラン: 合成品を用いた(特許文献1〜3を参考に合成)
ウレタン:SIGMA社(StLouis,MO,USA)
HPLC用アセトニトリル:関東化学株式会社
HPLC用のクロロホルム、2−プロパノール、n−ヘプタン:和光純薬(株)
水酸化ナトリウム、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、85%リン酸(H3PO4)及びその他の試薬:和光純薬(株)、特級品
ネンブタール(登録商標、ペントバルビタールナトリウム):大日本住友製薬株式会社製(大阪)
<実験動物>
Wistar系雄性ラット(250〜300g,8週齢)は、埼玉実験動物(埼玉)から購入した。ラットを3匹/cageで自由に食餌及び水を摂取できるようにした。1週間の正常飼育の後に実験に用いた。
<塩酸ミルナシプランの定量法>
1)抽出法
血漿100μLにNH4C1(pH9.5)300μLを加え、30秒間攪拌したのち、クロロホルム/2-イソプロパノール/n-ヘプタン(60/14/26)500μLを加え、2分間振とうし、遠心分離(4℃,15000rpm,5min)を行った。
遠心分離により得られたクロロホルム層(下層)を別のマイクロチュープにとり、窒素の流入下、溶媒を除去した。全ての溶媒を除去した後、抽出物にHPLCの移動相のバッファーを100μL加えて溶解し、その後、ガラスチューブに分取し、HPLCに30μL注入し塩酸ミルナシプランの濃度を測定した。
2)HPLC装置
HPLC装置は島津製作所製の以下のものを用いた。
ポンプ:LC-9A
検出器:SPO-6A
システムコントローラー:SCL-6B
オートインジェクター:SIL-6B
カラムオープン:CTO-6A
クロマトパック:C-R6A
3)HPLC条件
移動相:アセトニリル/0.05Mリン酸緩衝液(pH2.8)を30:70に調製し、脱気を行ったもの
溶離:流速1mL/min、40℃
測定波長:200nm
塩酸ミルナシプランのHPLCの測定条件を表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
<動態学的解析>
静脈内における最高血漿中濃度(Cmax)、最高血漿中濃度到達時間(Tmax)、血漿中濃度−時間曲線下面積(AUC)、および吸収率(F)を求めた。血漿中濃度−時間曲線下面積(AUC)は台形公式から算出した。AUCは吸収されて血中に移行した血漿中ミルナシプラン濃度の積算を示す。
得られたデータを、非線形最小2乗法プログラム(アルゴリズム;Damping Gauss−Newton法)により解析した。AUC、MRT、MATをモーメント解析により算出した。また、下記(1)式より相対的な鼻腔内滞留性を評価した。
【0079】
【数1】

【0080】
<強制水泳試験>
Porsoltらの方法に従い(Nature. 266: 730-732 (1977))、アクリル製の透明な水槽(直径18cm, 高さ40cm)に水を高さ18cmまで満たし、水温を25±1℃とした。試験は、コンディショニングセッション(15分間)とテストセッション(5分間)の2セッションで強制水泳を負荷した。コンディショニングセッション終了後、及びテストセッション開始1時間前にジエチルエーテルにて麻酔をし、生理食塩液をコントロール群とし、塩酸ミルナシプラン生理食塩液を経口及び経鼻投与した。実験プロトコールを図5に示した。
【0081】
<閉鎖系経鼻投与実験>
Wistar系雄性ラットにウレタン生理食塩液を腹腔内投与し(投与量1.0g/kg、25w/v%)、麻酔した。ラットを固定台に背位固定した後、Hiraiらの方法(J. Pharm. Sci. 69: 1411-1413 (1980))に準じて気道及び食道への手術を施し、左右頸静脈を露出した。先端にシリコーンチューブを取り付けたマイクロシリンジで、調製した塩酸ミルナシプラン含有生理食塩液を左鼻腔内に投与した(投与量20mg/kg、濃度100mg/mL)。ヘパリンで前処理した注射筒を用いて、経時的に右頸静脈より採血した。血液サンプルを、経鼻投与前0分、投与後5、10、20、30、60、90、120、180、240、300、360分に0.2mLずつ採取した。血液サンプルは直ちに4℃、15,000rpm(17,860g)で5分間遠心分離し、血漿サンプル0.1mLを得た。
【0082】
<経口投与実験>
1.頸静脈カテーテル挿入留置術
Wistar系雄性ラットにネンブタール(登録商標、投与量50mg/kg、濃度50mg/mL)を腹腔内投与し麻酔した。ラットを固定台に背位固定した後、右頸静脈を露出し、カテーテルを挿入した。カテーテルの先端を右心房に留置した後、医療用針付縫合糸(17mm,角1/2黒ナイロン5−0,Matsuda Sutures)を用いて開いた右頸静脈部位を縫合した。十分な回復期を与えた後、実験に使用した。
2.経口投与
頸静脈カテーテル挿入留置術を施したラットに対し、ジエチルエーテル麻酔下経口用ゾンデを用い、調製した塩酸ミルナシプラン生理食塩液(投与量20mg/kg、濃度20mg/mL)を投与した。ヘパリンで前処理した注射筒を用いて、経時的にカテーテルを介して採血した。血液サンプルを、経鼻投与前0分、投与後5、10、20、30、60、90、120、180、240、300、360分に0.2mLずつ採取した。血液サンプルは直ちに4℃、15,000rpm(17,860g)で5分間遠心分離し、血漿サンプル0.1mLを得た。なお、ジエチルエーテル麻酔覚醒後、ゲージ内に入れた。
【0083】
<開放系経鼻投与実験>
上記経口投与実験の1.の頸静脈カテーテル挿入留置術を施したラットに対し、ジエチルエーテル麻酔下、先端にシリコーンチューブを取り付けたマイクロシリンジで、調製した塩酸ミルナシプラン生理食塩液(投与量20mg/kg、濃度100mg/mL)を左鼻腔内に投与した。ヘパリンで前処理した注射筒を用いて、経時的にカテーテルを介して採血した。血液サンプルを、経鼻投与前0分、投与後5、10、20、30、60、90、120、180、240、300、360分に0.2mLずつ採取した。血液サンプルは直ちに4℃、15,000rpm(17,860g)で5分間遠心分離し、血漿サンプル0.1mLを得た。なお、ジエチルエーテル麻酔覚醒後、ゲージ内にいれた。
【0084】
<実験結果>
1.塩酸ミルナシプランの経鼻吸収性に対するキトサン併用の影響
塩酸ミルナシプランの経鼻投与においてキトサンを併用することで吸収性及び鼻腔内滞留性の改善がなされるか、血漿中濃度-時間曲線を比較することで評価した。
0.5%キトサンを添加した塩酸ミルナシプラン溶液を閉鎖系で経鼻投与し、キトサン併用による経鼻吸収性の改善を評価した。図1にキトサンを併用投与したときの塩酸ミルナシプランの血漿中濃度−時間曲線を、表2に得られた薬物動態学的パラメータを示す。塩酸ミルナシプランとキトサンを併用投与することでCmaxは7090.7ng/mL、Fは90.0%と吸収性にはほとんど差が見られないが、Tmaxは10分、MATが11.4分と、キトサンを添加していない場合であるコントロール(Control)より素早い吸収が得られた。
【0085】
【表2】

【0086】
これは、キトサンにより鼻粘膜上皮細胞のtight junctionを一過的に開口することで、transcellularルートに加え、paracellularルートからの薬物透過が促進されたためであると考えられる。
図2に0.5%キトサンを添加した塩酸ミルナシプラン溶液を投与したときの閉鎖系及び開放系経鼻投与における塩酸ミルナシプランの血漿中濃度−時間曲線を、表3に薬物動態学的パラメータを示す。
開放系経鼻投与において、キトサンを併用したときCmaxは5778.9 ng/mL、生物学的利用率(F)は75.3%とコントロールに対して高い値となった。また、(1)式より算出した相対的な鼻腔内滞留率(F/F)はコントロールでは72.8%であったのに対し、キトサン併用により83.8%に改善された。これは、キトサンを併用することで薬液の粘膜付着性が高まり、mucociliary clearanceによる鼻腔内からの薬物の除去が遅くなり、鼻腔内に、より長い時間薬物が残存した結果であると考えられる。このことから、全身循環系を介したCNSへの移行量も増加し、さらに鼻腔内に長く薬物が滞留する結果、直接的なCNSへの移行量も増加すると考えられた。
なお、図2及び表3において、Closedは閉鎖系を、Opened systemは開放系を示す。
【0087】
【表3】

【0088】
<塩酸ミルナシプランのキトサン併用による薬理効果への影響>
キトサンを併用することで塩酸ミルナシプランの鼻腔内滞留性が改善され、経鼻吸収性が高まることがわかった。そこで、薬理効果について強制水泳試験を用い、抗うつ効果の指標の一つであるラットの無動時間の短縮について調べ、経口投与と比較した。
図3に強制水泳試験による無動時間における塩酸ミルナシプランの経口投与(図中、p.o.と表示)とキトサンを併用したときの経鼻投与(図中、i.n.と表示)の影響について示す。キトサンを併用したときも塩酸ミルナシプラン生理食塩液の経鼻投与と同様に用量依存的かつ有意な無動時間の短縮が認められた。さらに、塩酸ミルナシプラン生理食塩液の経鼻投与では同用量の経口投与と比べて認められた優位差に比し、キトサンを併用することでこれらにおいて有意な差が得られた。さらに、60mg/kgの経口投与と10mg/kgの経鼻投与においてほぼ同等の抗うつ効果を示していることから、経口投与より低投与量で強い抗うつ効果が得られることがわかった。
これは、キトサンを併用することで薬物の鼻腔内滞留性が改善され全身循環への吸収性が高まったことや、嗅神経領域における滞留性が改善されCNSへの直接的な移行が改善された可能性が考えられる。
そこで、キトサンを併用することによる強い抗うつ効果が全身循環への吸収性が改善されることによるものなのか、CNSへの直接的な移行が改善されたためのものか評価した。
塩酸ミルナシプランの薬理効果はCNSへの移行量が多くなる事で強く現れると考えられる。全身循環系からのCNSへの移行量は全身循環系へ吸収された薬物量が関係している。そこで、抗うつ効果を下記(2)式より無動時間の短縮率(Antidepressive effect)として求め、AUCと抗うつ効果の関係を調べた(図4)。
【0089】
【数2】

【0090】
今回用いた投与量の範囲内では、経口投与(図中、▲で示す)においてAUCの増大に伴い抗うつ効果は強くなったのに対し、経鼻投与(図中、◇で示す)では経口投与と同程度のAUCにおいて、より強い抗うつ効果を示していることがわかった。塩酸ミルナシプランの抗うつ効果は脳内に入ることでその作用を発現する。経口投与においてCNSへの移行は全身循環を介した輸送だけであると考えられることから抗うつ効果はCNS中の塩酸ミルナシプラン濃度と相関すると考えられる。
さらに、経鼻投与において0.5%のキトサンを併用することで(図中、○で示す)、より低いAUCにおいて、より強い抗うつ効果を示した。これは、嗅神経領域における滞留性が改善されたことにより、多くの薬物量がCNSへ直接的に移行したことによると考えられる。
以上の結果より、キトサンを併用することで鼻腔内の滞留性が改善され、より高い生物学的利用率が得られるだけでなく、嗅神経領域における薬物の滞留性も改善されCNSへの直接的な移行を促進し、CNSへの選択性を高めることができる可能性が示唆された。加えて、同程度のAUCを示した経口や経鼻に比べキトサンの併用で強い抗うつ効果を示すことが明らかとなった。
以上、キトサンを基剤として併用することで鼻腔内における滞留性を改善することができ、全身循環系への薬物の吸収性が高まるだけでなく、嗅神経領域からの薬物の直接的なCNSへの移行が促進されたと考えることができる。塩酸ミルナシプランの薬理効果の増大は、キトサンによる嗅上皮細胞のタイトジャンクション(tight junction)の一過的な開口作用も関係しているかもしれない。以上、キトサンを用いた製剤は塩酸ミルナシプランの高い吸収性と低投与量で強い抗うつ効果を示すことから経鼻粘膜送達系(transnasal delivery system)として有用であると考えられる。
【0091】
〔参考例1〕 セロトニン及びノルアドレナリン再取り込み選択的阻害剤を鼻腔内投与した場合の血中動態観察試験
<セロトニン及びノルアドレナリンの再取り込み選択的阻害剤>
塩酸ミルナシプラン
<試薬>
本試験例では試薬として以下のものを用いた。
塩酸ミルナシプラン: 合成品を用いた(特許文献1〜3を参考に合成)。
ウレタン:SIGMA社(StLouis,MO,USA)
HPLC用アセトニトリル:関東化学株式会社
HPLC用のクロロホルム、2−プロパノール、n−ヘプタン:和光純薬(株)
水酸化ナトリウム、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、85%リン酸(H3PO4)及びその他の試薬:和光純薬(株)、特級品
<実験動物>
Wistar系雄性ラット(200〜250g)は、埼玉実験動物(埼玉)から購入したものを用いた。
【0092】
<参考実験例1>塩酸ミルナシプランのin vivo 鼻腔内投与試験
Wistar系雄性ラット(n=3)にウレタン生理食塩液を腹腔内投与し(投与量1g/kg、25w/v%)、麻酔した。ラットを固定台に背位固定した後、静脈内投与試験と同様の生理的条件にするため気道及び食道への手術を施し、左右頸静脈を露出した。先端にシリコンチューブを取り付けたマイクロシリンジで、調製した塩酸ミルナシプラン含有生理食塩液を左鼻腔内に投与した(投与量10mg/kg、濃度50mg/mL(実施例5))。ヘパリンで前処理した注射筒を用いて、経時的に右頸静脈より採血した。1回の採血量は0.2mLとし、血液サンプルは採取後直ちに4℃、15000rpmで5分間遠心分離し、血漿を得た。
【0093】
<参考実験例2> 塩酸ミルナシプランのin vivo 静脈内投与試験
Wistar系雄性ラット(n=3)にウレタン生理食塩液を腹腔内投与し(投与量1g/kg、25w/v%)、麻酔した。ラットを固定台に背位固定した後、気道及び食道への手術を施し、左右頸静脈を露出した。調製した塩酸ミルナシプラン含有生理食塩液を右頸静脈より投与し(投与量20mg/kg、濃度20mg/mL)、ヘパリンで前処理した注射筒を用いて、経時的に左頸静脈より採血した。1回の採血量は0.2mLとし、血液サンプルは採取後直ちに4℃、15000rpmで5分間遠心分離し、血漿を得た。
【0094】
<塩酸ミルナシプランの定量法>
1)抽出法
血漿100μLにNH4C1(pH9.5)300μLを加え、30秒間攪拌したのち、クロロホルム/2-イソプロパノール/n-ヘプタン(60/14/26)500μLを加え、2分間振とうし、遠心分離(4℃,15000rpm,5min)を行った。
遠心分離により得られたクロロホルム層(下層)を別のマイクロチュープにとり、窒素の流入下、溶媒を除去した。全ての溶媒を除去した後、抽出物にHPLCの移動相のバッファーを100μL加えて溶解し、その後、ガラスチューブに分取し、HPLCに30μL注入し塩酸ミルナシプランの濃度を測定した。
2)HPLC装置
HPLC装置は島津製作所製の以下のものを用いた。
ポンプ:LC-9A
検出器:SPO-6A
システムコントローラー:SCL-6B
オートインジェクター:SIL-6B
カラムオープン:CTO-6A
クロマトパック:C-R6A
3)HPLC条件
移動相:アセトニリル/0.05Mリン酸緩衝液(pH3.8)を30:70に調製し、脱気を行ったもの
溶離:流速1mL/min、30℃
測定波長:200nm
【0095】
<データ解析>
得られたデータを、非線形最小2乗法プログラム(アルゴリズム;DampingGauss-Newton法)により解析した。血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC)は台形公式から算出した。AUCは吸収されて血中に移行した血漿中ミルナシプラン濃度の積算を示す。また、静脈内投与試験から得た速度論パラメータを入力関数に、経鼻投与後の血漿中濃度を出力関数にしてデコンボリューション法により塩酸ミルナシプランの累積吸収プロファイルを求めた。
【0096】
<結果>
鼻腔内投与試験(参考実験例1)における塩酸ミルナシプランの血漿中濃度の対数−時間曲線を図6に、静脈内投与試験(参考実験例2)における塩酸ミルナシプランの血漿中濃度の対数−時間曲線を図7に、ミルナシプランの薬物動態学的パラメーターを表4に示す。
また、静脈内投与試験から得た速度論パラメータと鼻腔内投与試験における塩酸ミルナシプランの血漿中濃度-時間曲線とからデコンボリューション法により塩酸ミルナシプランの吸収プロファイルを求め、図8に示す。
さらに、静脈内投与(i.v.)と鼻腔内投与(i.n.)における最高血漿濃度(Cmax)、最高血漿濃度到達時間(Tmax)、AUC、及び生物学的利用率(F)を表5に示す。
図6及び表5より、塩酸ミルナシプランは、鼻腔内投与後すばやく最高血漿濃度に到達し、Cmaxは5265.98ng/mLであり、Tmaxは20minであった。また、Fはほぼ100%であり、塩酸ミルナシプランが鼻腔内投与により良好に吸収されたことがわかる。この結果は、塩酸ミルナシプランの経鼻投与は、経口投与による公知のデータであるTmax=120分程度に比較して、吸収速度が著しく大きく、また、Tmaxは大幅に短縮されたことを示している。
また、図8からも同様に、塩酸ミルナシプランの吸収は非常に速く約60minでほぼ吸収が終了したことがわかる。
なお、表5における「AUC0−7」及び「F0−7」は0〜7時間、つまり0〜420分における「AUC」及び「F」をそれぞれ示しており、「AUC」及び「F」は、無限大時間までの「AUC」及び「F」をそれぞれ示す。このように、Fについて時間の規定を設けた場合には、Fはその時間までのAUCに基づき算出される値を意味する。本発明においては、Fに時間規定のない場合には、主に無限大時間までのAUCに基づき算出された値を示すことがある。
【0097】
【表4】

【0098】
【表5】

【0099】
〔参考例2〕 セロトニン及びノルアドレナリンの再取り込み選択的阻害剤のin vivo 粘膜吸収性試験
<セロトニン及びノルアドレナリンの再取り込み選択的阻害剤>
塩酸ミルナシプラン
<試薬>
参考例1で用いたものと同様の試薬を用いた。
<実験動物>
Wistar系雄性ラット(8週齢、250〜300g)は、埼玉実験動物(埼玉)から購入したものを用いた。
【0100】
<参考実験例3> 塩酸ミルナシプランのin vivo 鼻腔内投与実験
Wistar系雄性ラット(n=4)にウレタン生理食塩液(投与量1g/kg、25w/v%)を腹腔内投与し、麻酔した。ラットを固定台に背位固定した後、採血のために左右頸静脈を露出した。気道及び食道への手術を施し、先端にシリコンチューブを取り付けたマイクロシリンジで、調製した塩酸ミルナシプラン含有生理食塩液(投与量20mg/kg、濃度200mg/mL(製剤例1))を左鼻腔内に投与した。ヘパリンで前処理した注射筒を用いて血液サンプルを、鼻腔内への投与時を0分とし、以降経時的に200μLずつ採血した。血液サンプルは採取後直ちに4℃、15000rpm(17860G)で5分間遠心分離し、血漿サンプル100μLを得た。
【0101】
<参考実験例4> 塩酸ミルナシプランのin vivo 静脈内投与実験
Wistar系雄性ラット(n=4)にウレタン生理食塩液(投与量1g/kg、25w/v%)を腹腔内投与し、麻酔した。ラットを固定台に背位固定した後、採血のために左右頸静脈を露出した。鼻腔内投与実験と同様の生理的条件にするため気道及び食道への手術を施し、調製した塩酸ミルナシプラン含有生理食塩液(投与量20mg/kg、濃度20mg/mL)を右頸静脈より投与し、ヘパリンで前処理した注射筒を用いて、左頸静脈より経時的に200μLずつ採血した。血液サンプルは採取後直ちに4℃、15000rpm(17860G)で5分間遠心分離し、血漿サンプル100μLを得た。
【0102】
<参考実験例5> 塩酸ミルナシプランのin vivo 十二指腸内投与実験
Wistar系雄性ラット(n=4)にウレタン生理食塩液(投与量1g/kg、25w/v%)を腹腔内投与し、麻酔した。ラットを固定台に背位固定した後、採血のために左右頸静脈を露出した。腹腔内を切開して十二指腸を取り出し、十二指腸の下流を結紮した後、上流より調製した塩酸ミルナシプラン含有生理食塩液(投与量20mg/kg、濃度20mg/mL)を十二指腸に直接投与した。ヘパリンで前処理した注射筒を用いて血液サンプルを、十二指腸への投与時を0分とし、以降経時的に200μLずつ採血した。血液サンプルは採取後直ちに4℃、15000rpm(17860G)で5分間遠心分離し、血漿サンプル100μLを得た。
【0103】
<塩酸ミルナシプランの定量法>
1)抽出法
参考例1と同様の方法を用いた。
2)HPLC装置
参考例1と同様の装置を用いた。
3)HPLC条件
移動相:アセトニリル/0.05Mリン酸緩衝液(pH2.8)を30:70に調製し、脱気を行ったもの
溶離:流速1mL/min、40℃
測定波長:200nm
【0104】
<データ解析>
得られたデータを、モーメント解析より血漿中濃度−時間曲線下面積(AUC)、平均滞留時間(MRT)、平均吸収時間(MAT)を算出した。また、静脈内投与試験によって得られた速度論的パラメータを入力関数に、十二指腸、または鼻腔内投与後の血漿中濃度を出力関数にしてデコンボリューション法によって塩酸ミルナシプランの累積吸収プロファイルを算出した。
【0105】
<結果>
各投与経路から投与後の塩酸ミルナシプランの血漿中濃度の対数−時間曲線を図9に、デコンボリューション法により求めた吸収プロファイルを図10に示す。図9において、●は静脈内投与の結果を、×は十二指腸内投与の結果を、△は鼻腔内投与の結果を示す。また、図9において、破線は十二指腸内投与の結果を示し、実線は鼻腔内投与の結果を示す。さらに静脈内投与(i.v.)、十二指腸内投与(i.d.)、及び鼻腔内投与(i.n.)における最高血漿濃度(Cmax)、最高血漿濃度到達時間(Tmax)、血漿中濃度時間曲線下面積(AUC)、および生物学的利用率(F)を表6に示す。
図9及び表6に示したように、十二指腸内投与のCmaxは3074.8ng/mL、Tmaxは60分であったのに対し、鼻腔内投与ではCmaxは5124.8ng/mL、Tmaxは20分であり、鼻腔内投与により塩酸ミルナシプランは素早くCmaxに到達した。また、Fも十二指腸内投与では70.8%であるのに対して、鼻腔内投与では84.9%であり、より良好に吸収された。さらに、図10に示したように、鼻腔内投与後の塩酸ミルナシプランの吸収は非常に速く、約30分でほぼ吸収が終了した。また、MATが十二指腸内投与では32.9分であるのに対して、鼻腔内投与では16.9分と短時間で吸収していることからも、鼻粘膜からの塩酸ミルナシプランの吸収速度は著しく大きいことがわかる。
【0106】
【表6】

【0107】
〔参考例3〕セロトニン及びノルアドレナリンの再取り込み選択的阻害剤の鼻腔内投与後の中枢神経系への移行確認試験
<セロトニン及びノルアドレナリンの再取り込み選択的阻害剤>
塩酸ミルナシプラン
<試薬及び実験動物>
参考例2で用いたものと同様の試薬及び実験動物を用いた。
【0108】
<参考実験例6>塩酸ミルナシプランの中枢神経系への移行性評価実験
中枢神経系への移行性の指標として脳脊髄液(CSF)中の薬物濃度の測定を行った。静脈内投与、十二指腸内投与、及び鼻腔内投与について、参考例2のin vivo粘膜吸収性実験と同様の手術、投与を行った(n=3)後、頸静脈より経時的に採血を行い、一定時間経過後にCSFを採取した。あらかじめ切断した注射針をシリコンチューブに接着し、もう一端にシリンジを接続した器具を作成し、薬物投与から一定時間経過後に注射針の先端をラットの後頭頂より腹側性に5〜6mm穿刺し、シリンジを引きシリコンチューブ内にCSFを約200μL採取した。穿刺後、CSF中への血液の混入を確認するために赤血球の含有量を光学顕微鏡で検査し、赤血球含有量が500cell/μL以下であるのを確認した。血液サンプルは採取後直ちに4℃、15000rpm(17860G)で5分間遠心分離し、CSFサンプル100μLを得た。
【0109】
<塩酸ミルナシプランの定量法>
参考例2と同様の抽出法、HPLC装置、及びHPLC条件で測定した。
【0110】
<データ解析>
得られたデータを、モーメント解析より脳脊髄液中濃度−時間曲線下面積(AUCCSF)を算出した。AUCCSFは吸収されて脳内に移行したCFS中ミルナシプラン濃度の積算を示す。脳内移行性の評価方法としては、全身循環からCSF中への薬物の移行は血液脳関門の透過によって制御されているため、血中薬物濃度が大きな影響を与える。そこで、血液脳関門の透過による影響を考慮するために、CSF採取時の血漿のタンパク非結合型薬物の濃度に対するCSF中濃度の比を用いて比較した。また、脳内移行率(Kpu)をCSF中濃度時間曲線下面積と血漿中濃度時間曲線下面積および血漿タンパク非結合率から算出した(下記式(3))。多重比較のTukey−Kramer法を用い有意差検定を行った。なお、AUCPlasmaは吸収されて血中に移行した血漿中ミルナシプラン濃度の積算を示す。
【0111】
【数3】

【0112】
<結果>
各投与経路から投与後の塩酸ミルナシプランのCSF中濃度の対数−時間曲線を図11に、血漿中濃度とCSF中濃度の比を図12に、最高CSF中濃度(Cmax)、最高CSF中濃度到達時間(Tmax)、CSF中濃度時間曲線下面積(AUCCSF)、血中濃度時間曲線下面積(AUCPlasma)、及び脳内移行率(Kpu)を表7に示す。図11において、●は静脈内投与の結果を、×は十二指腸内投与の結果を、△は鼻腔内投与の結果を示す。また、図12において、斜線は静脈内投与の結果を、白抜きは十二指腸内投与の結果を、黒塗りは鼻腔内投与の結果を示す。表7に示すように、Cmaxは静脈内投与では2216.2ng/mL、十二指腸内投与では1005.5ng/mLであったのに対し、鼻腔内投与においては4019.1ng/mLであり、静脈内投与に対して2倍、十二指腸内投与に対しては4倍の値であった。Tmaxも十二指腸内投与の60分と比べ鼻腔内投与においては20分と短時間で脳内に移行した。さらに、血中濃度とCSF中濃度の比は、鼻腔内投与以外の他の投与経路ではほぼ一定であるのに対して、鼻腔内投与では投与後30分まで有意に上昇した。
【0113】
【表7】

【0114】
〔参考例4〕 セロトニン及びノルアドレナリンの再取り込み選択的阻害剤の経鼻投与後の薬理学的評価試験
<セロトニン及びノルアドレナリンの再取り込み選択的阻害剤>
塩酸ミルナシプラン
<試薬>
本試験例では試薬として以下のものを用いた。
塩酸ミルナシプラン:合成品を用いた(特許文献1〜3を参考に合成)。
ジエチルエーテル:和光純薬(株)
<実験動物>
参考例2で用いたものと同様の実験動物を用いた。
<水泳用の水槽>
アクリル製の直径18cm、高さ40cmの円筒形の筒を用いた。
【0115】
<参考実験例7> 強制水泳実験
Wistar系雄性ラットを購入後6日間予備飼育し、本試験前日に15分間の馴らし試験を、本試験を5分間行った。水泳用の水槽に25℃に保温した水を水深18cmまで満たした。この水槽内でラットを水泳させ、その時の行動変化を水槽の真上に設置したWebカメラで捉え、無動時間の測定を行った。
馴らし試験終了後及び本試験開始60分前にジエチルエーテルを用いて麻酔を行い各投与経路からセロトニン及びノルアドレナリンの再取り込み選択的阻害剤含有生理食塩水(塩酸ミルナシプラン含有生理食塩水)を投与した(経口投与において10mg/kg、30mg/kg、60mg/kg、経鼻投与において10mg/kg、30mg/kg)。経口投与では胃用ゾンデを、経鼻投与ではマイクロシリンジにシリコンチューブを接続したものを用いて投与した。また、対照薬として生理食塩水を投与した。
【0116】
<統計解析>
多重比較のTukey−Kramer法を用い有意差検定を行った。
【0117】
<結果>
塩酸ミルナシプランを以下に示すa〜gの投与経路及び投与量で投与したときの強制水泳試験における無動時間を図13に示す。図13においては、a〜gはかっこ内の表示がされている。
a:生理食塩水経口投与(Control (p.o.))
b:塩酸ミルナシプラン10mg/kg経口投与(10 mg/kg (p.o.))
c:塩酸ミルナシプラン30mg/kg経口投与(30 mg/kg (p.o.))
d:塩酸ミルナシプラン60mg/kg経口投与(60 mg/kg (p.o.))
e:生理食塩水経鼻投与(Control (i.n.))
f:塩酸ミルナシプラン10mg/kg経鼻投与(10 mg/kg (i.n.))
g:塩酸ミルナシプラン30mg/kg経鼻投与(30 mg/kg (i.n.))
投与経路によらず塩酸ミルナシプランを投与することで、明らかな用量依存的な有意な無動時間短縮作用が認められた。また、対照薬として用いた生理食塩水投与群(a及びe)において経口投与と経鼻投与との間で無動時間に差が見られないことから、投与経路の違いによる影響はないものと考えられる。経口投与30mg/kg(c)と経鼻投与10mg/kg(f)の効果が同程度、また、経口投与60mg/kg(d)と経鼻投与30mg/kg(e)の効果が同程度であったことから、経鼻投与群において経口投与群と比べより強い無動時間短縮作用が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明によりSNRIの経粘膜投与、特に経鼻投与において、粘稠化剤を併用することにより鼻腔内における滞留性を改善することができ、全身循環系への薬物の吸収性を高めることが可能となり、経口投与が不適な患者への投与、また、理想的な高用量の投与が可能となる。また、ミルナシプラン製剤の経粘膜投与、特に経鼻投与が可能となり、経口投与が不適な患者への投与、また、理想的な高用量の投与が可能となり、さらに従来のミルナシプラン製剤の経口投与よりも効果の高い治療が可能となる。さらに、SNRI含有経皮投与用製剤、特にミルナシプラン含有経皮投与用製剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】閉鎖系経鼻投与におけるキトサンを併用投与したときの塩酸ミルナシプランの血漿中濃度-時間曲線を示す図である。
【図2】閉鎖系及び開放系経鼻投与におけるキトサンを併用投与したときの塩酸ミルナシプランの血漿中濃度−時間曲線を示す図である。
【図3】塩酸ミルナシプランの経口投与とキトサン併用経鼻投与における無動時間を示す図である。
【図4】塩酸ミルナシプランの経口投与、経鼻投与及びキトサン併用経鼻投与における抗うつ効果とAUCの関係を示す図である。
【図5】強制水泳試験の実験プロトコールを示す図である。
【図6】鼻腔内投与試験における塩酸ミルナシプランの血漿中濃度の対数−時間曲線を示す図である。
【図7】静脈内投与試験における塩酸ミルナシプランの血漿中濃度の対数−時間曲線を示す図である。
【図8】経鼻投与における塩酸ミルナシプランの吸収プロファイルを示す図である。
【図9】静脈内投与、十二指腸内投与、及び鼻腔内投与試験における塩酸ミルナシプランの血漿中濃度の対数−時間曲線を示す図である。
【図10】十二指腸内投与及び経鼻投与における塩酸ミルナシプランの吸収プロファイルを示す図である。
【図11】静脈内投与、十二指腸内投与、及び鼻腔内投与試験における塩酸ミルナシプランの脳脊髄液中濃度の対数−時間曲線を示す図である。
【図12】塩酸ミルナシプランの血漿中濃度に対する脳脊髄液中濃度の比を示す図である。
【図13】塩酸ミルナシプランの経口投与及び経鼻投与における無動時間を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤及び粘稠化剤を含有する経粘膜投与用製剤。
【請求項2】
経粘膜投与用製剤が経鼻投与用製剤である請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤がミルナシプラン又はその塩である請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項4】
粘稠化剤がキトサン又はキチンである請求項1〜3のいずれかに記載の製剤。
【請求項5】
製剤が溶液である請求項1〜4のいずれかに記載の製剤。
【請求項6】
製剤が懸濁液である請求項1〜4のいずれかに記載の製剤。
【請求項7】
製剤が乳液である請求項1〜4のいずれかに記載の製剤。
【請求項8】
溶液、懸濁液、又は乳液の浸透圧比が0.5〜5.0である請求項5〜7のいずれかに記載の製剤。
【請求項9】
製剤がエアゾール剤である請求項1〜8のいずれかに記載の製剤。
【請求項10】
製剤が粉末である請求項1〜4のいずれかに記載の製剤。
【請求項11】
四級アンモニウム塩及びパラベン類から選ばれる1種類以上の防腐剤を含有する請求項1〜10のいずれかに記載の製剤。
【請求項12】
製剤が抗うつ剤である請求項1〜11のいずれかに記載の製剤。
【請求項13】
製剤が鎮痛剤である請求項1〜11のいずれかに記載の製剤。
【請求項14】
選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤及び粘稠化剤を含有する経皮投与用製剤。
【請求項15】
選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤及び粘稠化剤を含有する経粘膜投与用製剤又は経皮投与用製剤の製造のためのミルナシプラン又はその塩の使用。
【請求項16】
選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤を粘稠化剤と組み合わせて経粘膜又は経皮により投与する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−273867(P2008−273867A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118479(P2007−118479)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(303046299)旭化成ファーマ株式会社 (105)
【Fターム(参考)】