説明

経糸糊付機における糊液濾過装置

【課題】糊液の十分な濾過と濾過後の糊液に影響を及ぼさないようにフィルタの洗浄を行なう。
【解決手段】糊液槽2から流出する糊液Sは流出管8によって糊液受け部9に送られ、筒型フィルタ11内部に供給される。糊液Sはプリーツ加工されたフィルタ12によって濾過される。異物はフィルタ面に残され、糊液Sのみが補助槽7内に滴下する。フィルタ面に付着した異物は図2の上方位置へ運ばれる。供給部材25の洗浄液はフィルタ面に吹き付けられ、フィルタ面の異物を受けトレイ27に洗い流す。洗浄領域を通過したフィルタ面は空気噴射部材28の高圧空気に晒され、付着している洗浄液が受けトレイ27側へ吹き飛ばされる。受けトレイ27に落下した異物は他端側へ流され、排出管からゴミ受け籠内へ排出される。ゴミ受け籠では洗浄液が異物と分離され、洗浄液槽内に滴下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、経糸糊付機の糊付槽において、経糸シートへの糊付時に糊液に混入した経糸の毛羽、夾雑物あるいは糊剤の塊等の異物を除去する糊液濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された経糸糊付機における糊液濾過装置は次のように構成されている。経糸シートWに付着させる糊液Sを満たした糊液槽1に糊液Sの流出部6が設けられる。糊液槽1の流出部6から流出した糊液Sは補助槽8に流入する。また、糊液槽1及び補助槽8には糊液Sの加熱装置5、10が設けられている。補助槽8には、多数の小孔を有する補強用円筒で裏打ちされた織金網製のフィルタ14によって円筒形に構成された回転胴12が回転中心軸を横にして回転可能に設けられている。また、回転胴12はフィルタ14の下部が補助槽8の糊液Sに浸漬する位置に配置されている。
【0003】
補助槽8に流入した糊液Sは回転胴12のフィルタ14を経て回転胴12内に流入して濾過され、糊液Sに混入した経糸の毛羽、夾雑物や糊剤の塊等の異物がフィルタ14の外周面に付着する。回転胴12内に流入した糊液Sは還流路17により糊液槽1に循環される。回転胴12の外周側には、フィルタ14外周面の上部を擦るブラシローラ26が回転駆動される構成で設けられている。また、糊液Sから分離した異物を入れるごみ容器31が設けられている。従って、回転する回転胴12のフィルタ14の外周面に付着した異物は回転駆動されるブラシローラ26によって擦り取られ、ごみ容器31に払い落される。補助槽8の糊液面、ごみ容器31の開口、回転胴12及びブラシローラ26は蓋34によって覆われ、閉鎖構造に構成されている。
【0004】
特許文献2には、経糸糊付機の糊液濾過装置ではないが、各種の汚水を処理し、汚物と浄水とを分離する汚水処理機が開示されている。
前記汚水処理機は、機体1の中央部に架設した中空管3に密目状の網体からなるメッシュドラム2を回転自在に設け、このメッシュドラム2の左右両側部に一体に水車10、10を設けてある。前記中空管3は中間に仕切板4を介在して一方に汚水供給管部5を形成し、他方に汚物排出管部6を形成している。汚水供給管部5には汚水出口部7を開設し、汚物排出管部6には汚物受口部9を開設するとともに入口をメッシュドラム2の円周部に向けたホッパー8を連設している。機体1の底面部に設けた浄水溜め室16の一部にポンプ14を設け、機体1の上側部の一側部寄りに架設した給水管11に水車10、10に向って放水するノズル12、12と前記メッシュドラム2に向って放水するノズル13、13、13を設け、前記ポンプ14と前記給水管11との間に送水管15を連設している。
【0005】
【特許文献1】特公平7−91778号公報
【特許文献2】特開平9−201503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される経糸糊付機には以下の問題がある。
(1)経糸シートWに糊付けする糊液Sは90〜95℃という高温で使用されている。このため、糊液中の糊成分は乾燥、固着し易く、フィルタ14の目詰まりや回転胴12の駆動部の故障が生じやすい。蓋34による密閉構造を採用したとしても経糸糊付機の運転終了後における糊成分の乾燥、固着の進行を防ぐことは難しい。従って、経糸糊付機の運転終了時にはフィルタ14を含め、回転胴12の構成部品や回転胴12の駆動部等の繁雑で大掛かりな清掃を十分に行なわなければならない。
【0007】
(2)糊液槽1から補助槽8内に供給された糊液Sの濾過位置を通過後のフィルタ14には異物が付着しているため、ブラシローラ26による異物掻き落とし作業が行なわれている。しかし、糊液Sが前記したような高温状態にあるため、ブラシが熱により劣化し、さらに糊成分の固着によりブラシに曲がり癖がつき異物の掻き落とし機能が早期に低下する。
【0008】
(3)織金網製のフィルタ14は円筒状に形成しても、そのままでは剛性が弱く、ブラシローラ26の押圧力に耐えられないため、多数の小孔を有する補強用円筒に巻き付けて構成されている。補強用円筒に形成する小孔は、剛性を高めるためにフィルタ14よりも大幅に小さな空間率で形成せざるを得ない。このため、補助槽8に流入する糊液Sの量に対して十分な処理能力を持たせるためには、補強円筒を含めたフィルタ14の表面積を十分に大きくしなければならない。従って、濾過装置全体が大型化し、重量も増大するためフィルタ14の駆動装置は大出力のものを使用しなければならない。
【0009】
特許文献2に開示された汚水処理機は浄水溜め室16に貯溜された濾過後の浄水を用いてメッシュドラム2に放水し、メッシュドラム2の内周面に付着した汚物を分離除去している。従って、特許文献2の汚水処理機を経糸糊付機の糊液濾過装置として利用した場合は、ブラシを必要としないため特許文献1の問題点(2)及び異物を放水により除去するためフィルタの強度をさほど必要としないので特許文献1の問題点(3)のある程度の解消を期待できると考えられる。
【0010】
しかし、経糸糊付機で使用される糊液は前記したような一定の高温に維持しておく必要があり、また糊液濃度も予め設定した状態に維持していかなければならない。従って、特許文献2に開示された汚水処理機の構成を経糸糊付機の糊液濾過装置にそのまま利用したのでは次のような問題が生じる。
【0011】
すなわち、メッシュドラム2の表面に放水された洗浄水はその一部がメッシュドラム2の外面を伝わって大量に浄水溜め室16内に落下する。汚水処理機では同じ水であるため何ら問題は無い。しかし、糊液濾過装置では、浄水溜め室16に相当する補助槽内に貯留されるものは洗浄水でなく、縦糸シートへの糊付のために再利用される糊液であるため、洗浄水と混じることは糊液濃度及び糊液温度の低下に直接影響してしまう。
【0012】
本願発明の目的は、濾過後の糊液に影響を及ぼさないようにフィルタの洗浄を行なうことにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の本願発明は、経糸シートに糊液を付着する糊液槽及び前記糊液槽から流出した糊液を受け入れる補助槽を備え、前記補助槽にて糊液を濾過するように構成した経糸糊付機において、プリーツ加工したフィルタにより筒状に形成された筒型フィルタを横向きにして前記補助槽に配設し、前記筒型フィルタを駆動装置に連結して回転可能に構成し、前記糊液槽から流出した糊液を前記筒型フィルタの内外に流通させて濾過し、濾過後の糊液を前記補助槽に貯溜し、糊液が流出する側のフィルタ面の濾過位置を通過した後の洗浄位置に対向して洗浄液の供給部材を配設し、前記洗浄液の供給部材に対向するように糊液が流入する側のフィルタ面に向けて洗浄液の受けトレイを配設したことを特徴とする。なお、本発明において、「濾過位置」とは濾過のために糊液が筒型フィルタを流通する位置を指し、また、「洗浄位置」とは「濾過位置」よりも筒型フィルタの回転方向から見て下流側であって、筒型フィルタのフィルタ面において濾過のための糊液流通が生じない位置を指す。
【0014】
請求項1記載の本願発明によれば、プリーツ加工したフィルタの採用により洗浄液が濾過後の糊液に混入することを防止することができるため、糊液の濃度や温度に影響を及ぼすことが無い。
【0015】
請求項2に記載の本願発明は、前記糊液槽から流出した糊液を前記筒型フィルタの内側に供給し、前記洗浄液の供給部材を前記筒型フィルタの外側上方に配設するとともに前記洗浄液の受けトレイを前記筒型フィルタの内側に配設したことを特徴とするため、糊液濾過装置として最も実用的な構成とすることができる。
【0016】
請求項3に記載の本願発明は、前記洗浄液の供給部材を前記筒型フィルタの頂部よりも前記筒型フィルタの回転方向から見た上流側に配設したことを特徴とするため、筒型フィルタの回転方向が洗浄液の流下方向と逆になり、洗浄液が筒型フィルタを伝わって流下しにくくなる。
【0017】
請求項4に記載の本願発明は、前記洗浄液の供給部材よりも前記筒型フィルタの回転方向から見た下流側に前記フィルタ面に対向する空気噴射部材を配設したことを特徴とするため、洗浄液が補助槽内に伝送され難いフィルタ面の構造に加え、洗浄によりフィルタ面に付着した洗浄水を空気噴射によって積極的に除去することができ、濾過後の糊液への影響をさらに解消することができる。
【0018】
請求項5に記載の本願発明は、前記洗浄液は前記糊液とほぼ同一の温度範囲に保たれた温水を使用することを特徴とするため、筒型フィルタの表面温度や糊液濾過装置内の温度を適切に維持することができるので、濾過後の糊液温度に影響を与えることが無い。
【0019】
請求項6に記載の本願発明は、前記洗浄液の受けトレイは洗浄液中に含まれる異物と洗浄液との分離装置に連結され、前記分離装置において分離された洗浄液を洗浄液槽に貯留し、前記洗浄液槽の洗浄液は前記洗浄液の供給部材に循環され、再利用されることを特徴とするため、洗浄後の洗浄液を再利用することができ、糊液濾過装置の省エネを促進することができる。。
【0020】
請求項7に記載の本願発明は、前記分離装置の洗浄液槽はヒータを備えていることを特徴とするため、洗浄液を適温に維持することができる。
【0021】
請求項8に記載の本願発明は、洗浄液に含まれる糊液濃度が一定値以上になると新しい洗浄液が前記洗浄液槽に補給されることを特徴とするため、筒型フィルタに供給する洗浄液を洗浄能力の高い状態に維持しておくことができる。
【0022】
請求項9に記載の本願発明は、前記洗浄液の供給部材は洗浄液を間欠的に供給することを特徴とするため、洗浄液を供給するための動力及び洗浄液の使用を低減することができ、糊液濾過装置の省エネを促進することができる。
【発明の効果】
【0023】
本願発明は、経糸糊付機の糊液濾過装置において、フィルタの洗浄を糊液に影響を与えることなく適切に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
経糸糊付機の糊付装置1は、概略、澱粉やポリビニルアルコールのような糊剤を溶剤の水に溶解した糊液Sが貯溜される糊液槽2、糊液槽2の後部(図2の左方)側の糊液Sに半没する状態で配置された浸漬ローラ3、糊液槽2の前部(図2の右方)側の糊液Sに半没する状態で配置された下部糊絞りローラ4及び下部糊絞りローラ4の上に載置した上部糊絞りローラ5から構成されている。
【0025】
多数本の紡績糸を並列した経糸シートWは、浸漬ローラ3の下側位置を経て糊液槽2の糊液S中を通過し、続いて下部糊絞りローラ4と上部糊絞りローラ5の間を通過することにより糊液Sが付着される。なお、糊付けされた経糸シートWは矢印方向に移送され、後工程である乾燥シリンダー等を備えた乾燥工程(図示せず)において乾燥される。また、図示していないが、糊液槽2には、糊液S中に水蒸気を噴出する複数本の蒸気管を設け、各蒸気管から噴出する水蒸気によって糊液Sを加熱し、ほぼ90〜95℃の温度範囲に保持するように構成されている。糊液槽2の後側壁には流出部6が設けられ、糊液槽2内の糊液Sを連続又は定期的に流出させて糊液面を一定の高さに保持している。
【0026】
糊液槽2の後方下側位置に設けられた機台(図示せず)上には糊液Sの補助槽7が設けられている。糊液槽2の流出部6に接続された流出管8は補助槽7側に延出し、糊液槽2の流出部6から流出した糊液Sを補助槽7に設けた糊液受け部9に流入させている。補助槽7と糊液槽2の間にはポンプ40を介在した糊液の還流管41が配設されている。従って、糊液Sはポンプ40の作動により還流管41を介して糊液槽2と補助槽7との間を循環している。
【0027】
なお、補助槽7の下部には糊液S中に水蒸気を噴出する複数本の蒸気管44(図1では4本設置)が設けられ、各蒸気管から噴出する水蒸気によって補助槽7内の糊液Sを加熱し、糊液槽2と同様に、ほぼ90〜95℃の温度範囲に保持するように構成されている。
【0028】
補助槽7には、糊液濾過装置10が配設されている。糊液濾過装置10は補助槽7の糊液面よりも上方において、経糸糊付機の幅方向に横向きにして配置された筒型フィルタ11を有する。筒型フィルタ11は金網、樹脂製網あるいは不織布等によって製作されたフィルタ12をプリーツ加工し、プリーツ加工したフィルタ12を円筒状に形成し、その両端にリング状のフランジ13、13を貼着等により固定するとともにフランジ13、13をそれぞれ側面リング14、14にねじ止めした構成である。左右フランジ13、13の外周側には複数の連結棒15が通され、筒型フィルタ11の変形を防止している。図3のフランジ13に示した符号16は連結棒15を結合する連結孔である。
【0029】
筒型フィルタ11は補助槽7に立設された両側面板17、17の間に配置され、両側面板17、17のそれぞれに前後方向(図2の左右方向)2箇所に取り付けられた支持ローラ18、18によって回転可能に支持されている。また、筒型フィルタ11の周面にはリング状の大ギア19が一体的に取り付けられている。大ギア19に近い側面板17の外側面にはモータ20を取り付けたブラケット21が固定されている。モータ20の駆動軸22は側面板17を貫通して配置され、その先端に固定された小ギア23が大ギア19と歯合する。従って、筒型フィルタ11はモータ20の回転により小ギア23及び大ギア19を介して図2の矢印方向に回転される。
【0030】
糊液槽2から流出し、流出管8によって供給される糊液Sの糊液受け部9はフランジ13及び側面リング14の内側を通り、筒型フィルタ11の内部に開口する。従って、糊液受け部9から筒型フィルタ11の内部に供給された糊液Sは、糊液Sが流入する側となるフィルタ内面12aからフィルタ12を浸透し、糊液Sが流出する側となるフィルタ外面12bから補助槽7内に滴下する。このフィルタ12の浸透時に糊液Sが濾過され、糊液Sに混入した経糸の毛羽、夾雑物や糊剤の塊等の異物はフィルタ内面12a側に残される。なお、経糸シートWの糊付けにより消費され、補助槽7内の糊液Sが一定量減少すると糊液補給管24から新しい糊液Sが糊液受け部9に補給される。
【0031】
糊液受け部9から供給された糊液Sの濾過位置(本実施形態では、図2において図示されるように筒型フィルタ11からの濾過後糊液Sの滴下が生じている位置)を通過した洗浄位置にあるフィルタ12の外周側、即ちフィルタ外面12bと対向して洗浄液の供給部材25が配設されている。供給部材25は筒型フィルタ11の長手方向に延びる3本のパイプで構成され、各パイプには多数の小孔26がフィルタ外面12bに向けて開口され、各小孔26から洗浄液が常時噴出される。洗浄液はフィルタ12を透過してフィルタ内面12aに付着している異物を洗い流すことができる。小孔26は筒型フィルタ11の両側の側面リング14、14と対向する位置にも設けられている。また、供給部材25の配設位置は筒型フィルタ11の上方であるが、筒型フィルタ11の頂部よりも回転方向から見て可能な限り上流側(図2の右方)に配置することが好ましい。このような配置により、筒型フィルタ11の回転方向が洗浄液の流下方向と逆になり、洗浄液が筒型フィルタ11を伝わって流下しにくくなる。
【0032】
一方、筒型フィルタ11の内部には供給部材25と対向するように、フィルタ内面12aに向けて開口した洗浄液の受けトレイ27が配設されている。受けトレイ27は図1に示すように、筒型フィルタ11の長さ方向全域をカバーする長さを有する箱型に構成され、一端27aが図1の左側の側面板17に固定されるとともに他端27bが図1の右側の側面板17を貫通し、外方に突出した状態で側面板17に保持されている。また、受けトレイ27は少なくともその底壁を一端27a側から他端27b側に向けて傾斜させている。従って、フィルタ12の洗浄により落下した異物とともに受けトレイ27に収容された洗浄液は他端27b側に向けて流される。なお、受けトレイ27はその底壁を傾斜させるのでなく、受けトレイ27を構成する箱自体を他端27b側が下方に位置するように傾斜させた構成であっても良い。
【0033】
筒型フィルタ11の回転方向から見て洗浄液の供給部材25よりも下流側には、図2に示すように空気噴射部材28が配設されている。空気噴射部材28は洗浄液の供給部材25とほぼ平行に配置された1本のパイプで構成され、フィルタ外面12bに向けて多数の噴射孔29が所定の間隔で開口されている。また、パイプの一端は図示しない開閉弁を介して高圧空気の供給源に連結されている。従って、開閉弁の操作により空気噴射部材28の噴射孔29から高圧空気が噴射され、フィルタ12に付着している洗浄液を受けトレイ27に吹き飛ばし、洗浄液が可能な限り補助槽7内に入らないようにしている。
【0034】
補助槽7の外方には洗浄液槽30及び洗浄液槽30の内部に取り付けたゴミ受け籠31が設置されている。ゴミ受け籠31には、受けトレイ27の他端27bに連結した排出管32が開口し、異物を含んだ洗浄液が排出される。ゴミ受け籠31は洗浄液を濾過し、異物Fを除去して濾過された洗浄液のみを洗浄液槽30に貯溜する。洗浄液槽30には、ヒータ33が設置され、濾過された洗浄液を所定の温度になるように加熱、保温している。
【0035】
洗浄液槽30内に一端が挿入された供給管34はその他端がポンプ35を介して洗浄液の供給部材25に連結している。従って、ポンプ35の作動により洗浄液槽30内に貯溜された洗浄液が汲み上げられて供給部材25に送られるという洗浄液の循環が行なわれる。
【0036】
一方、洗浄液の再利用に伴い洗浄液中の糊成分の含有量が増加し、糊濃度が高くなるため、洗浄機能が低下する恐れがある。このため、洗浄液槽30の底部に排出バルブ36を備えたドレイン37が設けられ、洗浄液槽30の上方に給水バルブ38を備えた給水管39が設けられている。給水管39には、図示しない乾燥工程において加熱のために使用された水蒸気が液化した温水が供給されるように構成されている。なお、この温水の温度は糊液Sと同様にほぼ90〜95℃の温度範囲に保持することが好ましい。排出バルブ36は図示しないタイマーの設定によって定期的に一定時間開かれ、ドレイン37から洗浄液を排出する。洗浄液の排出に同期して給水バルブ38が開かれ、給水管39から真水の温水を補給することにより洗浄液の糊濃度を減少させ、常に糊成分の含有量の低い状態を維持するように構成されている。なお、洗浄液は真水のみにする必要は無く、他の洗浄剤を含有させたものであっても良い。また、タイマーの代わりに洗浄液の糊濃度検出器を設置し、洗浄液槽30に貯溜された洗浄液の糊濃度が設定値に達したことを検出することにより排出バルブ36及び給水バルブ38を開くように構成しても良い。
【0037】
以上のように構成された第1の実施形態の作用を以下に説明する。
経糸糊付機が運転されると、経糸シートWは浸漬ローラ3を周回して糊液Sを付着され、下部糊絞りローラ4と上部糊絞りローラ5の間に挟持されて余分な糊液Sを除去された後、矢印方向で示す乾燥工程に移送される。
【0038】
糊液槽2から流出する糊液Sは流出管8によって糊液受け部9に送られ、糊液濾過装置10の運転により図2の矢印方向に回転している筒型フィルタ11内部に供給される。フィルタ12はプリーツ加工されているため、濾過作用を行なう有効面積が大きく糊液Sを効率良く濾過することができる。糊液Sはフィルタ内面12aからフィルタ外面12bへ浸透することにより濾過されるため、異物がフィルタ内面12aに残され、濾過された糊液Sのみが補助槽7内に滴下し、貯留される。
【0039】
筒型フィルタ11の回転に伴い、異物はフィルタ内面12aに付着、保持されたまま糊液Sの濾過位置を通過し、図2の上方位置へ運ばれる。供給部材25から噴出されている洗浄液はフィルタ外面12bに吹き付けられるため、フィルタ12を通過してフィルタ内面12aに保持されている異物を洗い流す。従って、異物は洗浄液とともに受けトレイ27に落下する。供給部材25による洗浄領域を通過したフィルタ12は空気噴射部材28から噴射される高圧空気に晒され、付着している洗浄液が受けトレイ27側へ吹き飛ばされる。このため、フィルタ12に付着した洗浄液が補助槽7内へ滴下する糊液Sに混入する恐れを減少することができる。
【0040】
受けトレイ27に落下した異物は洗浄液とともに他端27b側へ流され、排出管32からゴミ受け籠31内へ排出される。ゴミ受け籠31では洗浄液が異物Fと分離され、洗浄液のみが洗浄液槽30内に滴下し、貯留される。洗浄液槽30に貯留された洗浄液はポンプ35の作動により供給管34から供給部材25に供給され、再利用される。
【0041】
なお、経糸糊付機の運転が停止された場合は、糊液濾過装置10の清掃が必要となるが、運転中、常時フィルタ12の洗浄が行なわれているため、糊液Sの付着状態が比較的少なく、簡易な清掃で十分対応することができる。
【0042】
前記した本願発明の第1の実施形態では、以下の作用効果が得られる。
(1)経糸糊付機の運転中、フィルタ12の洗浄が常時行なわれているため、運転終了時の清掃が簡略化されても糊成分の固着によるフィルタ12の目詰まり等が無く、従来のブラシような機械的な手段を全く必要としない。
(2)フィルタ12がプリーツ加工されているため、濾過された異物が確実に保持され、洗浄位置に運ぶことができる。また、フィルタ12に吹き付けられ、フィルタ外面12bに付着している一部の洗浄液の流下が堰き止められるため、フィルタ12に沿って補助槽7内に流れ落ちて糊液Sに混入する恐れが無い。
(3)フィルタ12はプリーツ加工により剛性が高くなり、従来のフィルタのように強度を増すための手段を負荷する必要が無く、また洗浄液の吹き付けによる洗浄のみであるためフィルタ12に大きな力がかかることが無い。従って、フィルタ12を支持するフレーム部材等を軽量化することができるため、糊液濾過装置10の小型、軽量化が可能となり、駆動装置も小出力のモータでの実施が可能となる。
【0043】
(4)洗浄液は乾燥工程において使用された水蒸気が液化した温水を利用するため、特別な温水生成装置を新たに設置する必要が無く、また洗浄液は可能な限り循環させて再利用するので、極めて経済的である。
(5)経糸糊付機の運転終了後の清掃は、糊液濾過装置10のみを運転することにより筒型フィルタ11の洗浄が自動的に行なわれるので、清掃作業が容易になる。
【0044】
(第2の実施形態)
図4に示す第2の実施形態は、第1の実施形態におけるフィルタ12の形態を変更したもので、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0045】
第2の実施形態は、プリーツ加工したフィルタ42の各折り曲げ部42aを第1の実施形態のような鋭角でなく、円弧状に形成したものである。このため、濾過作用に必要なフィルタ42の有効面積をより大きくし、糊液Sの濾過作用をより効率的に行なうことができる。また、金網のような比較的弾性の低いフィルタの場合に、網目を形成する素線の切断の恐れを解消することができる。
【0046】
(第3の実施形態)
図5に示す第3の実施形態は、第1の実施形態におけるフィルタ12の形態をさらに変更したもので、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0047】
第3の実施形態は、プリーツ加工したフィルタ43の各折り曲げ部43aを半円状に形成したものである。このため、フィルタ43の有効面積を第2の実施形態よりもさらに大きくすることができる。また、プリーツの開口部43bは奥部よりも狭く形成されるため、異物を保持し易くなり、洗浄領域への異物運搬を確実に行なうことができる。なお、フィルタの網目を形成する素線の切断の恐れを解消できる点は第2の実施形態と同様である。
【0048】
本願発明は、前記した各実施形態の構成に限定されるものではなく本願発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、次のように実施することができる。
【0049】
(1)フィルタ12は下部が補助槽7の糊液S面よりも上方に距離をおいて配置し、浸漬しないようにしているが、フィルタ12内の濾過すべき糊液Sが側面リング14の内径位置を超えてあふれ出ない範囲であれば、フィルタ12の下面が補助槽7の糊液Sに浸漬した状態で配置しても構わない。
(2)洗浄液の供給部材25は供給管34にバルブを介在し、バルブを定期的に開閉させて洗浄液を間欠的に噴出させるように構成しても良い。
(3)第1の実施形態では、洗浄液の供給部材25をフィルタ12の回転方向から見て上流側に配置した構成で説明したが、洗浄液の供給部材25は糊液Sの濾過位置以外であればどの位置でも配置することが可能である。
(4)空気噴射部材28は必ずしも配設する必要が無い。フィルタ12がプリーツ加工のために、フィルタ12に付着した洗浄液の一部は即座に補助槽7側に伝わり落ちる恐れが無く、相当程度の洗浄液が受けトレイ27に落下してしまう。極くわずかな洗浄液が補助槽7内に達しても、糊液Sは加熱状態にあるため洗浄液の水分が蒸発し、問題の生じる恐れが無い。
(5)支持ローラ18は、両側面板17、17の間に通された1本の軸上に設けた構成としても良い。
【0050】
(6)給水管39に供給する洗浄液は乾燥工程で使用された水蒸気が液化した温水を使用するのでなく、温水器等を特別に設けて供給するようにしても良い。
(7)ドレイン37の排出バルブ36を無くすか常開状態にして洗浄液槽30内の洗浄液を常時排出し、給水管39からは常時洗浄液を洗浄液槽30内に供給するように構成することができる
(8)供給管34及びポンプ35を無くし、給水管39を供給部材25に直接連結して洗浄液を供給するように構成しても良い。この場合、ドレイン37の排出バルブ36は定期的に開放するか、常開の状態にしておけばよい。
(9)第1の実施形態における洗浄液の供給部材25はフィルタ12の内部に配設するとともに受けトレイ27はフィルタ12の外部に配設し、また糊液槽2に連結した流出管8は補助槽7内に直接開口し、フィルタ12の下部を補助槽7の糊液Sに浸漬させた構成で実施することができる。この実施形態では、糊液Sがフィルタ12の外部から内部に浸透することになるので、フィルタ外面が糊液Sの流入側となり、フィルタ内面が糊液Sの流出側となる。従って、糊液Sから分離された異物はフィルタ外面に堆積し、その後フィルタ外面は供給部材25によりフィルタ12の内部から噴出されている洗浄液により洗浄され、異物はフィルタ12外部の受けトレイ27に洗い落とされる。なお、この実施形態の場合、供給部材25と受けトレイ27はフィルタ12の上方よりも横方向に配設することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】経糸糊付機の一部を断面で示した正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】フィルタの断面図である。
【図4】第2の実施形態を示すフィルタの断面図である。
【図5】第3の実施形態を示すフィルタの断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 糊付装置
2 糊液槽
8 流出管
9 糊液受け部
10 糊液濾過装置
11 筒型フィルタ
12、42、43 フィルタ
12a糊液が流入する側のフィルタ面としてのフィルタ内面
12b糊液が流出する側のフィルタ面としてのフィルタ外面
14 側面リング
15 連結棒
17 側面板
18 支持ローラ
19 大ギア
20 モータ
22 駆動軸
23 小ギア
25 供給部材
24 糊液補給管
27 受けトレイ
28 空気噴射部材
30 洗浄液槽
31 ゴミ受け籠
32 排出管
33 ヒータ
34 供給管
37 ドレイン
39 給水管
41 還流管
F 異物
S 糊液
W 経糸シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸シートに糊液を付着する糊液槽及び前記糊液槽から流出した糊液を受け入れる補助槽を備え、前記補助槽にて糊液を濾過するように構成した経糸糊付機において、
プリーツ加工したフィルタにより筒状に形成された筒型フィルタを横向きにして前記補助槽に配設し、前記筒型フィルタを駆動装置に連結して回転可能に構成し、前記糊液槽から流出した糊液を前記筒型フィルタの内外に流通させて濾過し、濾過後の糊液を前記補助槽に貯溜し、糊液が流出する側のフィルタ面の濾過位置を通過した後の洗浄位置に対向して洗浄液の供給部材を配設し、前記洗浄液の供給部材に対向するように糊液が流入する側のフィルタ面に向けて洗浄液の受けトレイを配設したことを特徴とする経糸糊付機における糊液濾過装置。
【請求項2】
前記糊液槽から流出した糊液を前記筒型フィルタの内側に供給し、前記洗浄液の供給部材を前記筒型フィルタの外側上方に配設するとともに前記洗浄液の受けトレイを前記筒型フィルタの内側に配設したことを特徴とする請求項1に記載の経糸糊付機における糊液濾過装置。
【請求項3】
前記洗浄液の供給部材を前記筒型フィルタの頂部よりも前記筒型フィルタの回転方向から見た上流側に配設したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の経糸糊付機における糊液濾過装置。
【請求項4】
前記洗浄液の供給部材よりも前記筒型フィルタの回転方向から見た下流側に前記フィルタ面に対向する空気噴射部材を配設したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の経糸糊付機における糊液濾過装置。
【請求項5】
前記洗浄液は前記糊液とほぼ同一の温度範囲に保たれた温水を使用することを特徴する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の経糸糊付機における糊液濾過装置。
【請求項6】
前記洗浄液の受けトレイは洗浄液中に含まれる異物と洗浄液との分離装置に連結され、前記分離装置において分離された洗浄液を洗浄液槽に貯留し、前記洗浄液槽の洗浄液は前記洗浄液の供給部材に循環され、再利用されることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の経糸糊付機における糊液濾過装置。
【請求項7】
前記分離装置の洗浄液槽はヒータを備えていることを特徴とする請求項6に記載の経糸糊付機における糊液濾過装置。
【請求項8】
洗浄液に含まれる糊液濃度が一定値以上になると新しい洗浄液が前記洗浄液槽に補給されることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の経糸糊付機における糊液濾過装置。
【請求項9】
前記洗浄液の供給部材は洗浄液を間欠的に供給することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の経糸糊付機における糊液濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−197363(P2009−197363A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40771(P2008−40771)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】