説明

経糸糊付機における糊液濾過装置

【課題】糊液の十分な濾過と濾過後の糊液に影響を及ぼさないようにフィルタの洗浄を行なう。
【解決手段】糊液槽2から流出する糊液Sは流出管9によって糊液受け部10に送られ、筒型フィルタ16内部に供給される。筒型フィルタ16内の糊液Sはフィルタ17によって濾過される。異物は糊液がフィルタ内面17aに残され、糊液Sのみが補助槽8内に滴下する。フィルタ内面17aに付着した異物は図2の上方の洗浄位置へ運ばれる。蒸気噴射部材29、30から噴射される蒸気は糊液がフィルタ外面17bに吹き付けられ、フィルタ内面17aの異物を異物受取りトレイ35に吹き落とす。異物受取りトレイ35に落下した異物は放水ノズル36、36から放出される洗浄水によって他端側へ押し流され、排出管からゴミ受け籠内へ排出される。ゴミ受け籠では洗浄水が異物と分離され、洗浄液槽内に滴下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、経糸糊付機の糊付槽において、経糸シートへの糊付時に糊液に混入した経糸の毛羽、夾雑物あるいは糊剤の塊等の異物を除去する糊液濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された経糸糊付機における糊液濾過装置は次のように構成されている。経糸シートWに付着させる糊液Sを満たした糊液槽1に糊液Sの流出部6が設けられる。糊液槽1の流出部6から流出した糊液Sは補助槽8に流入する。また、糊液槽1及び補助槽8には糊液Sの加熱装置5、10が設けられている。補助槽8には、多数の小孔を有する補強用円筒で裏打ちされた織金網製のフィルタ14によって円筒形に構成された回転胴12が回転中心軸を横にして回転可能に設けられている。また、回転胴12はフィルタ14の下部が補助槽8の糊液Sに浸漬する位置に配置されている。
【0003】
補助槽8に流入した糊液Sはフィルタ14を経て回転胴12内に流入することにより濾過され、糊液Sに混入した経糸の毛羽、夾雑物や糊剤の塊等の異物がフィルタ14の外周面に付着する。回転胴12内に流入した糊液Sは還流路17により糊液槽1に循環される。回転胴12の外周側には、フィルタ14外周面の上部を擦るブラシローラ26が回転駆動される構成で設けられている。また、糊液Sから分離した異物を入れるごみ容器31が設けられている。従って、回転する回転胴12のフィルタ14の外周面に付着した異物は回転駆動されるブラシローラ26によって擦り取られ、ごみ容器31に払い落される。補助槽8の糊液面、ごみ容器31の開口、回転胴12及びブラシローラ26は蓋34によって覆われ、閉鎖構造に構成されている。
【0004】
特許文献2には、経糸糊付機の糊液濾過装置ではないが、各種の汚水を処理し、汚物と浄水とを分離する汚水処理機が開示されている。
前記汚水処理機は、機体1の中央部に架設した中空管3に密目状の網体からなるメッシュドラム2を回転自在に設け、このメッシュドラム2の左右両側部に一体に水車10、10を設けてある。前記中空管3は中間に仕切板4を介在して一方に汚水供給管部5を形成し、他方に汚物排出管部6を形成している。汚水供給管部5には汚水出口部7を開設し、汚物排出管部6には汚物受口部9を開設するとともに入口をメッシュドラム2の円周部に向けたホッパー8を連設している。機体1の底面部に設けた浄水溜め室16の一部にポンプ14を設け、機体1の上側部の一側部寄りに架設した給水管11に水車10、10に向って放水するノズル12、12と前記メッシュドラム2に向って放水するノズル13、13、13を設け、前記ポンプ14と前記給水管11との間に送水管15を連設している。
【0005】
【特許文献1】特公平7−91778号公報
【特許文献2】特開平9−201503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される経糸糊付機には以下の問題がある。
(1)経糸シートWに糊付けする糊液Sは90〜95℃という高温で使用されている。このため、糊液中の糊成分は乾燥、固着し易く、フィルタ14の目詰まりや回転胴12の駆動部の故障が生じやすい。蓋34による密閉構造を採用したとしても経糸糊付機の運転終了後における糊成分の乾燥、固着の進行を防ぐことは難しい。従って、経糸糊付機の運転終了時にはフィルタ14を含め、回転胴12の構成部品や回転胴12の駆動部等の繁雑で大掛かりな清掃を十分に行なわなければならない。
【0007】
(2)糊液槽1から補助槽8内に供給された糊液Sの濾過位置を通過後のフィルタ14には異物が付着しているため、ブラシローラ26による異物掻き落とし作業が行なわれている。しかし、糊液Sが前記したような高温状態にあるため、ブラシが熱により劣化し、さらに糊成分の固着によりブラシに曲がり癖がつき異物の掻き落とし機能が早期に低下する。
【0008】
(3)織金網製のフィルタ14は円筒状に形成しても、そのままでは剛性が弱く、ブラシローラ26の押圧力に耐えられないため、多数の小孔を有する補強用円筒に巻き付けて構成されている。補強用円筒に形成する小孔は剛性を高めるために、フィルタ14よりも大幅に小さな空間率で形成せざるを得ない。このため、補助槽8に流入する糊液Sの量に対して十分な処理能力を持たせるためには、補強円筒を含めたフィルタ14の表面積を十分に大きくしなければならない。従って、濾過装置全体が大型化し、重量も増大するためフィルタ14の駆動装置は大出力のものを使用しなければならない。
【0009】
特許文献2に開示された汚水処理機は浄水溜め室16に貯溜された濾過後の浄水を用いてメッシュドラム2に放水し、メッシュドラム2の内周面に付着した汚物を分離除去している。従って、特許文献2の汚水処理機を経糸糊付機の糊液濾過装置として利用した場合は、ブラシを必要としないため特許文献1の問題点(2)及び異物を放水により除去するためフィルタの強度をさほど必要としないので特許文献1の問題点(3)のある程度の解消を期待できると考えられる。
【0010】
しかし、経糸糊付機で使用される糊液は前記したような一定の高温に維持しておく必要があり、また糊液濃度も予め設定した状態に維持していかなければならない。従って、特許文献2に開示された汚水処理機の構成を経糸糊付機の糊液濾過装置にそのまま利用したのでは次のような問題が生じる。
【0011】
メッシュドラム2の表面に放水された洗浄水はその一部がメッシュドラム2の外周面を伝わって大量に浄水溜め室16内に落下する。汚水処理機では同じ水であるため何ら問題は無い。しかし、糊液濾過装置では、浄水溜め室16に相当する補助槽内に貯溜されるものは洗浄水でなく、経糸シートへの糊付のために再利用される糊液であるため、洗浄水と混じることは糊液濃度及び糊液温度の低下に直接影響してしまう。
【0012】
本願発明の目的は、濾過後の糊液に影響を及ぼさないようにフィルタの洗浄を行なうことにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の本願発明は、経糸シートに糊液を付着する糊液槽及び前記糊液槽から流出した糊液を受け入れる補助槽を備え、前記補助槽に筒状のフィルタを備えた筒型フィルタを横向きにして回転可能に配設し、前記糊液槽から流出した糊液を前記筒型フィルタの内外に流通させて濾過するとともに濾過後の糊液を前記補助槽に貯溜するように構成した経糸糊付機において、濾過位置を通過した後の前記フィルタの糊液が流出する側のフィルタ面の濾過位置を通過した後の洗浄位置に対向して蒸気噴射部材を配設し、前記蒸気噴射部材に対向するように糊液が流入する側のフィルタ面に向けて異物受取りトレイを配設したことを特徴とする。なお、本発明において、「濾過位置」とは濾過のために糊液が筒型フィルタを流通する位置を指し、また、「洗浄位置」とは「濾過位置」よりも筒型フィルタの回転方向から見て下流側であって、筒型フィルタのフィルタ面において濾過のための糊液流通が生じない位置を指す。
【0014】
請求項1記載の本願発明によれば、フィルタに付着した異物を分離する手段が蒸気であるため、濾過後の糊液に対する水分の混入が無く、糊液の濃度や温度に影響を及ぼすことが無い。
【0015】
請求項2に記載の本願発明は、前記糊液槽から流出した糊液を前記筒型フィルタの内側に供給し、蒸気噴射部材を前記筒型フィルタの外側上方に配設するとともに前記異物受取りトレイを前記筒型フィルタの内側に配設したことを特徴とするため、糊液濾過装置として最も実用的な構成とすることができる。
【0016】
請求項3に記載の本願発明は、前記蒸気噴射部材は前記補助槽に設けた糊液の加熱用パイプへの蒸気供給手段と連結していることを特徴とするため、筒型フィルタの表面温度や糊液濾過装置内の温度を適切に維持することができるので、濾過後の糊液温度に影響を与えることが無い。
【0017】
請求項4に記載の本願発明は、前記筒型フィルタ及び前記蒸気噴射部材を密閉するカバーを前記補助槽に開閉可能に設けたことを特徴とするため、蒸気噴射部材から噴射される蒸気が外部に漏洩することを防止し、糊液濾過装置内の温度低下を防止することができる。
【0018】
請求項5に記載の本願発明は、前記異物受取りトレイの一端側に異物を洗い流すための洗浄水の放出ノズルが配設され、前記異物受取りトレイの他端側が補助槽の外部に配設された洗浄水と異物とを分離するゴミ受け籠に連結されていることを特徴とするため、簡単な構成で異物受取りトレイに溜まる異物を洗い流し、異物受取りトレイ外に排出することができる。
【0019】
請求項6に記載の本願発明は、前記蒸気噴射部材は蒸気を間欠的に噴射することを特徴とするため、蒸気を供給するための動力及び蒸気の使用量を低減することができ、糊液濾過装置の省エネを促進することができる。
【発明の効果】
【0020】
本願発明は、経糸糊付機の糊液濾過装置において、フィルタの洗浄を糊液に影響を与えることなく適切に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。
経糸糊付機の糊付装置1は、概略、澱粉やポリビニルアルコールのような糊剤を溶剤の水に溶解した糊液Sが貯溜される糊液槽2、糊液槽2の後部(図2の左方)側の糊液Sに半没する状態で配置された浸漬ローラ3、糊液槽2の前部(図2の右方)側の糊液Sに半没する状態で配置された下部糊絞りローラ4及び下部糊絞りローラ4の上に載置した上部糊絞りローラ5から構成されている。
【0022】
多数本の紡績糸を並列した経糸シートWは、浸漬ローラ3の下側位置を経て糊液槽2の糊液S中を通過し、続いて下部糊絞りローラ4と上部糊絞りローラ5の間を通過することにより糊液Sが付着される。なお、糊付けされた経糸シートWは矢印方向に移送され、後工程である乾燥シリンダー等を備えた乾燥工程(図示せず)において乾燥される。また、糊液槽2には、糊液S中に高温の水蒸気を噴出する複数本(図では2本)の加熱用パイプ6を設け、各加熱用パイプ6から噴出する水蒸気によって糊液Sを加熱し、ほぼ90〜95℃の温度範囲に保持するように構成されている。糊液槽2の後側壁には流出部7が設けられ、糊液槽2内の糊液Sを連続又は定期的に流出させて糊液面を一定の高さに保持している。
【0023】
糊液槽2の後方下側位置に設けられた機台(図示せず)上には糊液Sの補助槽8が設けられている。糊液槽2の流出部7に接続された流出管9は補助槽8側に延出し、糊液槽2の流出部7から流出した糊液Sを補助槽8に設けた糊液受け部10に流入させている。補助槽8と糊液槽2の間にはポンプ11を介在した糊液の還流管12が配設されている。従って、糊液Sはポンプ11の作動により還流管12を介して糊液槽2と補助槽8との間を循環している。
【0024】
なお、補助槽8の下部には糊液S中に高温の水蒸気を噴出する複数本(図では3本)の加熱用パイプ13が設けられ、それぞれ蒸気供給源14と連結している。なお、蒸気供給源14は糊液槽2に設置した加熱用パイプ6とも連結している。蒸気供給源14は本実施形態の場合、前記した乾燥工程に使用する蒸気供給源を共用している。各加熱用パイプ13から噴出する水蒸気は補助槽8内の糊液Sを加熱し、糊液槽2と同様に、ほぼ90〜95℃の温度範囲に保持するように構成されている。
【0025】
補助槽8には、糊液濾過装置15が配設されている。糊液濾過装置15は補助槽8の糊液面よりも上方において、経糸糊付機の幅方向に横向きにして配置された筒型フィルタ16を有する。筒型フィルタ16は金網、樹脂製網あるいは不織布等によって製作されたフィルタ17をプリーツ加工し、プリーツ加工したフィルタ17を円筒状に形成し、その両端にリング状のフランジ18、18を貼着等により固定するとともにフランジ18、18をそれぞれ側面リング19、19にねじ止めした構成である。左右フランジ18、18の外周側には複数の連結棒20が通され、筒型フィルタ16の変形を防止している。
【0026】
筒型フィルタ16は補助槽8に立設された両側面板21、21の間に配置され、両側面板21、21のそれぞれに前後方向(図2の左右方向)2箇所に取り付けられた支持ローラ22、22によって回転可能に支持されている。また、筒型フィルタ16の周面にはリング状の大ギア23が一体的に取り付けられている。大ギア23に近い側面板21の外側面にはモータ24を取り付けたブラケット25が固定されている。モータ24の駆動軸26は側面板21を貫通して配置され、その先端に固定された小ギア27が大ギア23と歯合する。従って、筒型フィルタ16はモータ24の回転により小ギア27及び大ギア23を介して図2の矢印方向に回転される。
【0027】
糊液槽2から流出し、流出管9によって供給される糊液Sの糊液受け部10はフランジ18及び側面リング19の内側を通り、筒型フィルタ16の内部に開口する。従って、糊液受け部10から筒型フィルタ16の内部に供給された糊液Sは、糊液Sが流入する側となるフィルタ内面17aからフィルタ17を浸透し、糊液Sが流出する側となるフィルタ外面17bから補助槽8内に滴下する。このフィルタ17の浸透時に糊液Sが濾過され、糊液Sに混入した経糸の毛羽、夾雑物や糊剤の塊等の異物はフィルタ内面17a側に残される。なお、経糸シートWの糊付けにより消費され、補助槽8内の糊液Sが一定量減少すると糊液補給管28から新しい糊液Sが糊液受け部10に補給される。
【0028】
糊液受け部10から供給された糊液Sの濾過位置(本実施形態では、図2において図示されるように筒型フィルタ16からの濾過後糊液Sの滴下が生じている位置)を通過した洗浄位置にあるフィルタ17の外周側、即ちフィルタ外面17bと対向して筒型フィルタ16の上方2箇所に蒸気噴射部材29、30が配設されている。蒸気噴射部材29、30は筒型フィルタ16の長手方向に延びるパイプで構成され、各パイプには多数の小孔31、32がフィルタ外面17bに向けて開口され、各小孔31、32から高温の蒸気が常時噴出される。蒸気噴射部材29、30は開閉弁33を介在した蒸気供給管34により加熱用パイプ6及び13の蒸気供給源14に連結されている。なお、蒸気噴射部材29、30への蒸気供給は専用の蒸気供給源を設置して行なうようにしても良い。
【0029】
蒸気噴射部材29、30の各小孔31、32から噴射された蒸気は、フィルタ17を透過してフィルタ内面17aに付着している異物を吹き落とすことができる。小孔31、32は筒型フィルタ16の両側の側面リング19、19と対向する位置にも設けられている。
【0030】
一方、筒型フィルタ16の内部には蒸気噴射部材29、30と対向するように、フィルタ内面17aに向けて開口した異物受取りトレイ35が配設されている。異物受取りトレイ35は図1に示すように、筒型フィルタ16の長さ方向全域をカバーする長さを有する箱型に構成され、一端35aが図1の左側の側面板21に固定されるとともに他端35bが図1の右側の側面板21を貫通し、外方に突出した状態で側面板21に保持されている。また、一端35aの側壁には洗浄水の放水ノズル36、36が2箇所開口している。さらに、異物受取りトレイ35は少なくともその底壁を一端35a側から他端35b側に向けて傾斜させている。従って、フィルタ17の洗浄により異物受取りトレイ35に落下した異物は放水ノズル36、36から放出される洗浄水によって他端35b側に向けて押し流される。なお、異物受取りトレイ35はその底壁を傾斜させるのでなく、異物受取りトレイ35を構成する箱自体を他端35b側が下方に位置するように傾斜させた構成であっても良い。
【0031】
補助槽8の上部には糊液濾過装置15を覆うカバー37が配設されている。カバー37は経糸糊付機の後方側(図2の左側)下端部を図示しないヒンジにより補助槽8の上部に取り付けられ、図2の仮想線で示すように開閉可能に設けられている。カバー37が閉鎖されると、両側面板21とともに糊液濾過装置15全体を補助槽8内に密閉することができる。従って、経糸糊付機の運転中、蒸気噴射部材29、30から噴射される蒸気の外部への漏洩が防止され、補助槽8内の温度を必要な範囲に保つことができる。
【0032】
補助槽8の外方には洗浄水槽38及び洗浄水槽38の内部に取り付けたゴミ受け籠39が設置されている。ゴミ受け籠39には、異物受取りトレイ35の他端35bに連結した排出管40が開口し、異物を含んだ洗浄水が排出される。ゴミ受け籠39の濾過作用により異物Fが分離され、濾過された洗浄水のみが洗浄水槽38に貯溜される。
【0033】
洗浄水槽38の下部にはドレイン41が設けられ、ドレイン41はポンプ42及び開閉弁43を介在した洗浄水供給管44によって放水ノズル36、36に連結している。従って、洗浄水槽38に貯溜された洗浄水はポンプ42の作動により汲み上げられ、開閉弁43の開放動作により放水ノズル36、36から放出されるので、洗浄水の再利用を行なうことができる。
【0034】
以上のように構成された第1の実施形態の作用を以下に説明する。
経糸糊付機が運転されると、経糸シートWは浸漬ローラ3を周回して糊液Sを付着され、下部糊絞りローラ4と上部糊絞りローラ5の間に挟持されて余分な糊液Sを除去された後、矢印方向で示す乾燥工程に移送される。
【0035】
糊液槽2から流出する糊液Sは流出管9によって糊液受け部10に送られ、カバー37により閉鎖(図2の実線参照)された糊液濾過装置15の運転により図2の矢印方向に回転している筒型フィルタ16内部に供給される。フィルタ17はプリーツ加工されているため、濾過作用を行なう有効面積が大きく糊液Sを効率良く濾過することができる。糊液Sはフィルタ17のフィルタ内面17aからフィルタ外面17bへ浸透することにより濾過されるため、異物がフィルタ内面17aに残され、濾過された糊液Sのみが補助槽8内に滴下し、貯留される。
【0036】
筒型フィルタ16の回転に伴い、異物はフィルタ内面17aに付着、保持されたまま糊液Sの濾過位置を通過し、図2の上方位置へ運ばれる。筒型フィルタ16の頂点を挟んで対称な位置の2箇所に配設された蒸気噴射部材29、30から噴射されている蒸気は、フィルタ外面17bに吹き付けられるため、フィルタ17を通過してフィルタ内面17aに保持されている異物を異物受取りトレイ35に確実に吹き落とす。
【0037】
異物受取りトレイ35に落下した異物は放水ノズル36、36から放出されている洗浄水によって他端35b側へ押し流され、排出管40からゴミ受け籠39内へ排出される。ゴミ受け籠39では洗浄水が異物Fと分離され、洗浄水のみが洗浄水槽38内に滴下し、貯留される。洗浄水槽38に貯留された洗浄水はポンプ42の作動により開閉弁43を介して洗浄水供給管44から放水ノズル36、36に供給され、再利用される。
【0038】
なお、経糸糊付機の運転が停止された場合は、カバー37を開放して糊液濾過装置15の清掃が必要となるが、運転中、常時フィルタ17の洗浄が行なわれているため、糊液Sの付着状態が少なく、簡易な清掃で十分対応することができる。
【0039】
前記した本願発明の第1の実施形態では、以下の作用効果が得られる。
(1)経糸糊付機の運転中、フィルタ17の洗浄が常時行なわれているため、運転終了時の清掃が簡略化されても糊成分の固着によるフィルタ17の目詰まり等が無い。従来のブラシような機械的な手段を全く必要としないため、洗浄能力の低下が無い。
(2)フィルタ17がプリーツ加工されているため、濾過された異物が確実に保持され、洗浄位置に運ぶことができる。また、フィルタ17の洗浄は蒸気によって行なわれるため、フィルタ外面17bを多量の水が流れ落ちる恐れが無く、補助槽8内の糊液Sの濃度や温度に影響することが無い。
(3)フィルタ17はプリーツ加工により剛性が高くなり、従来のフィルタのように強度を増すための手段を負荷する必要が無く、また蒸気の吹き付けによる洗浄のみであるためフィルタ17に大きな力がかかることが無い。従って、フィルタ17を支持するフレーム部材等を軽量化することができるため、糊液濾過装置15の小型、軽量化が可能となり、駆動装置も小出力のモータでの実施が可能となる。
【0040】
(4)蒸気噴射部材29、30への蒸気供給は糊液Sを加熱するための蒸気供給源14を共用しているため、特別な高温の蒸気生成装置を新たに設置する必要が無い。
(5)放水ノズル36へ供給する洗浄水はゴミ受け籠39で濾過され、洗浄水槽38に貯留される洗浄水を循環させて再利用するので、極めて経済的である。
(6)糊液濾過装置15の運転中はカバー37によって閉鎖されているので、蒸気噴射部材29、30から噴射される蒸気が外部へ漏洩することが無く、補助槽8内の温度を所定範囲内に維持しやすい。
(7)経糸糊付機の運転終了後の清掃は、糊液濾過装置15のみを運転することにより筒型フィルタ16の洗浄が自動的に行なわれるので、清掃作業が容易になる。
【0041】
(第2の実施形態)
図3に示す第2の実施形態は、第1の実施形態におけるフィルタ17を変更したもので、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0042】
第2の実施形態に示すフィルタ45は、プリーツ加工を施さないタイプの金網あるいは樹脂製網を円筒状に形成し、第1の実施形態と同様に、円筒状のフィルタ45の両端をフランジ18、18に貼着し、フランジ18、18をそれぞれ側面リング19、19にねじ止めして筒型フィルタ46を構成したものである。第2の実施形態における糊液Sの濾過作用及び蒸気噴射部材29、30によるフィルタ45の洗浄機能は第1の実施形態と同様である。また、フィルタ45に加わる力は蒸気噴射部材29、30から噴射される蒸気によるもののみである。従って、従来のようにフィルタ45を補強するための特別な円筒を必要としないので、濾過作用に必要なフィルタ45の有効面積が大きく、糊液Sの濾過作用を効率的に行なうことができる。
【0043】
本願発明は、前記した各実施形態の構成に限定されるものではなく本願発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、次のように実施することができる。
【0044】
(1)フィルタ17、45は下部が補助槽8の糊液S面よりも上方に距離をおいて配置し、浸漬しないようにしているが、フィルタ17、45内の濾過すべき糊液Sが側面リング19の内径位置を超えてあふれ出ない範囲であれば、フィルタ17、45の下面が補助槽8の糊液Sに浸漬した状態で配置しても構わない。
(2)蒸気噴射部材29、30は蒸気供給管34に介在した開閉弁33を定期的に開閉させて蒸気を間欠的に噴射させるように構成しても良い。これにより、蒸気を供給するための動力及び蒸気の使用量を低減することができ、糊液濾過装置15の省エネを促進することができる。
(3)第1及び第2の実施形態において、蒸気噴射部材30を無くして1箇所の蒸気噴射部材29のみで洗浄するように構成しても良い。また、蒸気噴射部材を3箇所以上に配設するように構成しても良い。
(4)支持ローラ22は、両側面板21、21の間に通された1本の軸上に設けた構成としても良い。
【0045】
(5)ドレイン41は所定の場所へ排水するように構成し、放水ノズル36へは専用の洗浄水供給装置を設けて常に新しい洗浄水を供給するように構成しても良い。
(6)第1の実施形態における蒸気噴射部材29、30をフィルタ17の内部に配設するとともに異物受取りトレイ35をフィルタ17の外部に配設し、また糊液槽2に連結した流出管9を補助槽8内に直接開口し、フィルタ17の下部を補助槽8の糊液Sに浸漬させた構成で実施することができる。この実施形態では、糊液がフィルタの外部から内部に浸透することになるので、外側のフィルタ面が流入する側のフィルタ面となり、内側のフィルタ面が流出する側のフィルタ面となる。従って、糊液から分離された異物は外側のフィルタ面に堆積し、その後外側のフィルタ面は蒸気噴射部材によりフィルタの内部から噴射されている蒸気により洗浄され、異物はフィルタ外部の異物受取りトレイに吹き落とされる。なお、この実施形態の場合、蒸気噴射部材と異物受取りトレイはフィルタの上方よりも横方向に配設することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】経糸糊付機の一部を断面で示した正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】第2の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 糊付装置
2 糊液槽
6、13 加熱用パイプ
8 補助槽
9 流出管
10 糊液受け部
14 蒸気供給源
15 糊液濾過装置
16、46 筒型フィルタ
17、45 フィルタ
17a流入する側のフィルタ面としてのフィルタ内面
17b流出する側のフィルタ面としてのフィルタ外面
18 フランジ
19 側面リング
20 連結棒
21 側面板
22 支持ローラ
23 大ギア
24 モータ
26 駆動軸
27 小ギア
28 糊液補給管
29、30 蒸気噴射部材
33 開閉弁
34 蒸気供給管
35 異物受取りトレイ
36 放水ノズル
37 カバー
38 洗浄水槽
39 ゴミ受け籠
40 排出管
41 ドレイン
44 洗浄水供給管
F 異物
S 糊液
W 経糸シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸シートに糊液を付着する糊液槽及び前記糊液槽から流出した糊液を受け入れる補助槽を備え、前記補助槽に筒状のフィルタを備えた筒型フィルタを横向きにして回転可能に配設し、前記糊液槽から流出した糊液を前記筒型フィルタの内外に流通させて濾過するとともに濾過後の糊液を前記補助槽に貯溜するように構成した経糸糊付機において、
前記フィルタの糊液が流出する側のフィルタ面の濾過位置を通過した後の洗浄位置に対向して蒸気噴射部材を配設し、前記蒸気噴射部材に対向するように糊液が流入する側のフィルタ面に向けて異物受取りトレイを配設したことを特徴とする経糸糊付機における糊液濾過装置。
【請求項2】
前記糊液槽から流出した糊液を前記筒型フィルタの内側に供給し、蒸気噴射部材を前記筒型フィルタの外側上方に配設するとともに前記異物受取りトレイを前記筒型フィルタの内側に配設したことを特徴とする請求項1に記載の経糸糊付機における糊液濾過装置。
【請求項3】
前記蒸気噴射部材は前記補助槽に設けた糊液の加熱用パイプへの蒸気供給手段と連結していることを特徴する請求項1又は請求項2に記載の経糸糊付機における糊液濾過装置。
【請求項4】
前記筒型フィルタ及び前記蒸気噴射部材を密閉するカバーを前記補助槽に開閉可能に設けたことを特徴する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の経糸糊付機における糊液濾過装置。
【請求項5】
前記異物受取りトレイの一端側に異物を洗い流すための洗浄水の放出ノズルが配設され、前記異物受取りトレイの他端側が補助槽の外部に配設された洗浄水と異物とを分離するゴミ受け籠に連結されていることを特徴する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の経糸糊付機における糊液濾過装置。
【請求項6】
前記蒸気噴射部材は蒸気を間欠的に噴射することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の経糸糊付機における糊液濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−203581(P2009−203581A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47397(P2008−47397)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】