Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
経編布バネ材
説明

経編布バネ材

【課題】地組織にモノフィラメントを用いなくとも伸長回復性(着座時の回復性)を維持し、人の体重を支えられる高い面剛性と高強力を有する経編布バネ材を、安定した編立て性で比較的安価に提供すること。
【解決手段】95wt%以上がマルチフィラメントで構成された経編地からなる布バネ材であって、該経編地の地組織が少なくとも3枚筬以上で構成され、少なくとも1枚の筬は鎖編を形成し、少なくとも2枚の筬は1針以上8針振り以下のトリコット編を形成し、該トリコット編を形成する少なくとも2枚の筬の振り方向は異方向振りであり、地組織のコース数(C)とウエル数(W)の関係が0.8W≦C≦1.5Wであることを特徴とする経編布バネ材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、鉄道車両、航空機、チャイルドシート、ベビーカー、車椅子、家具、事務用等の座席シート用クッション材として好適な布バネ性能を有する経編布バネ材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル系エラストマー繊維やポリトリメチレンテレフタレート繊維等の弾性回復性に優れた繊維で構成された織編物は、これをフレームに張設することにより、弾性繊維の伸長回復率に基づいたクッション性を発現するため、金属ばねやウレタンクッション材に比べて薄型、軽量、高通気性等の特徴を有する座席を構成することができる。このような弾性繊維からなる織編物は布バネと称され、事務用椅子や家具等の多くの座席に使用されつつある。このような織編物として、下記特許文献1には、特定繊度の繊維を用い地組織が鎖編と多針振りのトリコット編で構成され、タテ方向および/またはヨコ方向に挿入糸が挿入された特定編密度の経編地とすることにより、高い引裂き抵抗力を有し、刃物等による傷が広がり難い安全性の高い布バネ材が提案されている。従来の布バネ材は、編物の地組織中にモノフィラメントを挿入することで、伸長回復性および面剛性を向上させている。しかしながら、地組織のタテ方向および/またはヨコ方向にモノフィラメントを挿入する場合、モノフィラメントは、製編性が悪い為、挿入編成時の糸の張力調整が不充分であると生地に欠点が生じやすく品質管理に手間を要す。又、高価なモノフィラメントを挿入編成することにより、高コストな生地になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−97170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、地組織にモノフィラメントを用いなくとも伸長回復性(着座時の回復性)を維持し、人の体重を支えられる高い面剛性と高強力を有する経編布バネ材を、安定した編立て性で比較的安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を達成すべく、特定の地組織の組み合わせ特性について鋭意検討した結果、特定の地組織を有する経編地が上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の発明を提供する。
(1)95wt%以上がマルチフィラメントで構成された経編地からなる布バネ材であって、該経編地の地組織が少なくとも3枚筬以上で構成され、地組織を構成する少なくとも1枚の筬は鎖編を形成し、少なくとも2枚の筬は1針以上8針振り以下のトリコット編を形成し、該トリコット編を形成する少なくとも2枚の筬の振り方向は異方向振りであり、地組織のコース数(C)とウエル数(W)の関係が0.8W≦C≦1.5Wであることを特徴とする経編布バネ材。
(2)地組織中に挿入組織が存在しないことを特徴とする上記(1)に記載の経編布バネ材。
(3)経編地のタテ方向及びヨコ方向のいずれか小さい方の破断強力が500N以上であり、引裂き強力が70N以上であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の経編布バネ材。
(4)表裏二層の経編地と該二層の経編地を連結する連結糸を有する立体構造経編地であって、表裏のどちらかの層の経編地の地組織が上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の地組織構造であることを特徴とする立体構造経編布バネ材。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の布バネ材が配されてなることを特徴とする座席。
【発明の効果】
【0006】
本発明の経編布バネ材は、布バネ性能を有し、特に車両用座席に用いた場合、地組織にモノフィラメントを用いなくとも伸長回復性(着座時の回復性)を維持し、人の体重を支えられる高い面剛性と高強力を有する経編布バネ材である。また、本発明の経編布バネ材は安定した編立て性を有し、比較的安価である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の経編布バネ材は、略4角形、多角形などの各種形状のフレームに縫製、樹脂成型、ボルト止め等の各種方法で張設することにより、面状のクッション材を形成し、該布バネ用布帛の伸長特性により人が座った際のクッション性を発現させる。クッション材はフレームと布バネ用布帛のみで形成してもよいが、必要に応じて布バネ用布帛の上に立体編物、硬綿、不織布等の繊維状クッション材、ウレタンおよび表皮材等を積層したクッション材としてもよい。
【0008】
本発明の経編布バネ材は、95wt%以上がマルチフィラメントで構成された経編地からなることを特徴とする。モノフィラメントや短繊維が実質的に用いられていないことが好ましく、98wt%以上がマルチフィラメントで構成されることがより好ましく、100%マルチフィラメントで構成されることが最も好ましい。
【0009】
本発明の経編布バネ材は、地組織が少なくとも3枚筬以上からなる組織で構成された経編地からなり、そのうち少なくとも3枚の筬が地組織のニットループ組織を形成する。ここでいうニットループ組織とは、トリコット編のようにニットループを主として形成する編組織をいい、部分的にニットされない箇所があっても良いが、布バネ性能上、全ての組織がニットされていることが好ましい。破断強力と引裂き強力を向上させるためには、少なくとも1つの筬(以下、単に第1筬と記す)が鎖編を構成し、他の少なくとも2つの筬(以下、単に第2筬、第3筬と記す)が1針以上8針振り以下のトリコット編で構成されていることが必要である。なお、本発明ではn針振りトリコット編とは1×n編組織のことを示し、例えば1針振りトリコット編であれば1×1デンビ組織、2針振りトリコット編であれば1×2コード組織のことをそれぞれ示している。
【0010】
破断強力と引裂き強力の抵抗力に加え、さらに編目の変形(組織変形)を抑え、伸長回復性の良好な編地とするために、第1筬は鎖編で構成することが必要である。第2筬、第3筬が9針以上の筬振りのトリコット編にすると製編性が劣り、製造が困難となる。
【0011】
本発明の経編布バネ材は、上記3枚以上の筬から構成される地組織により構成され、第1筬は鎖編にて編成され、第2筬、第3筬は1針以上8針以下のトリコット編で形成され且つ、第2筬と第3筬の筬振り方向は異方向振りにて編成する。第2筬と第3筬のトリコット編成組織は同針振りの組合せであっても、振り幅が異なる異針振り組合せであっても良い。第2筬と第3筬のトリコット編成は、1針以上6針以下の振り幅の組合せが好ましく、より好ましくは1針以上5針以下の振り幅の組合せであり、製編性がより安定する方向となる。
【0012】
第1筬〜第3筬の位置関係は、第1筬が前筬、第2筬が中間筬、第3筬が後ろ筬であることが好ましく、第1筬の鎖編でタテ方向の伸びを抑え、第2筬、第3筬のトリコット編でヨコ方向の伸び過ぎを抑えることで、伸長回復性が良好になる。又、第2筬と第3筬を異方向振りにすることでニードルループの目ヨレを防止し、より伸長回復性が良好となる。本発明では、上記3枚の筬から構成される地組織であることによって、布バネ材として必要な伸長回復性、面剛性や高強力を達成できるが、更なる機能付与のために、上記3筬以外に、第4筬、第5筬、第6筬・・・といった更に別の筬で様々な組織を編み込むこともできる。たとえば、ランの発生を防止する性能を上げるために、更に別の筬(以下、単に第4筬と記す)でトリコット編又は鎖編組織を編み込むことが好ましい。編込み糸は、熱セット時に熱融着しやすい低融点の糸であるとランの防止にさらに効果的である。第4筬が挿入組織であってもよいが、本発明の布バネ材においては挿入組織を用いずに布バネ性能を確保できるため、製編性の点から挿入組織が実質的に存在しないことが好ましい。
【0013】
経編布バネ材の面剛性を向上させる為、地組織のコース数(C)とウエル数(W)の関係が0.8W≦C≦1.5Wであることが好ましい。コース数(C)が0.8W未満であると伸長回復性(着座時の回復性)が劣り、1.5Wを超えると引裂き強度が低下する。経編布バネ材の面剛性を向上させ、伸長回復性(着座時に回復性)と高い引裂き強力を得る為には、コース数は10個/2.54cm以上で40個/2.54cm以下が好ましく、ウエル数は8個/2.54cm以上で40個/2.54cm以下が好ましい。より好ましくは、コース数が10個/2.54cm以上で30個/2.54cm以下、ウエル数が8個/2.54cm以上で30個/2.54cm以下である。
【0014】
本発明の経編布バネ材は、面剛性を向上させ且つ、着座時の安定感を良好にするため剛軟度(JIS L 1096 A法にて評価した値)が、タテ方向とヨコ方向とも40mm以上で150mm以下が好ましい。より好ましくは、タテ方向とヨコ方向とも50mm以上で120mm以下である。タテ方向とヨコ方向の剛軟度が40mm未満であると着座時の安定感が劣り、柔らか過ぎる座り心地となり、人体が沈み込む様な違和感を感じる。タテ方向とヨコ方向の剛軟度が150mmを超えると着座時の面剛性が強すぎ、硬い座り心地となり、人体は平板に座っている様な違和感を感じる。又、タテ方向とヨコ方向の剛軟度の比(タテ方向/ヨコ方向)は、0.3〜2.3が好ましく、より好ましくは0.4〜1.8、更に好ましくは0.4〜1.3である。剛軟度の比が0.3未満又は、2.3を超えるとタテ方向またはヨコ方向のどちらかの剛軟度が低いか又は高くなり、柔らかすぎる座り心地か、又は平板に座った様な座り心地の違和感を感じる。
【0015】
本発明の経編布バネ材は、張設状態で人の体重を支え、かつ、勢いよく膝をつく行為や、衝突時等の衝撃力が加わった際に十分抵抗できる強度を有することが好ましい。このためには、経編地のタテ方向、ヨコ方向ともに破断強力、引裂き強力が一定値以上であることが好ましい。具体的には、編地のタテ方向およびヨコ方向のいずれか一方における破断強力が500N以上であり、引裂き強力が70N以上であることが好ましい。タテ方向、ヨコ方向の両方が該数値以上であることがより好ましく、言い換えれば両方向のうち小さいほうの破断強力が500N以上、引裂き強力が70N以上であることがより好ましい。破断強力は、さらに好ましくは700N以上であり、特に好ましくは1000N以上である。引裂き強力は、さらに好ましくは100N以上であり、特に好ましくは120N以上である。上限は特に限定されないが、座席に用いたときの柔軟性等の点から、破断強力が6000N以下、引裂強力は1000N以下であることが好ましい。
【0016】
地組織を構成する繊維の繊度は、破断強力と引裂き強力を向上させる点から、150〜1000dtexが好ましく、より好ましくは250〜700dtexである。地組織を構成する繊維の繊度が150dtex未満の場合は、破断強力および引裂き強力が低下する傾向であると共に、編目の変形(組織変形)が大きく、伸び過ぎて回復性が低下することがある。また、地組織が3枚筬以上のニットループ組織で構成されない場合も破断強力と引裂き強力が低下する。逆に、地組織を構成する繊維の繊度が1000dtexを超えると製編性に劣り、製造が困難となる。
【0017】
本発明の経編布バネ材の破断強力を500N以上、引裂き強力を70N以上とするには、好ましくは4cN/dtex以上、より好ましくは5cN/dtex以上、さらに好ましくは6cN/dtex以上の強度を有する繊維を少なくとも地組織の一部に用いて経編地を構成することが好ましい。
【0018】
本発明の経編布バネ材を張設して座席フレームに緊張状態または弛ませた状態で張ることにより、経編地が座席の座部や背部を形成する際の着座時の人体へのフィット感及び安定な座り心地を得る為には、編目の変形(組織変形)が少ない編組織とする必要があり、このために地組織が3枚筬以上のニットループ組織で構成する必要がある。
【0019】
経編布バネ材の地組織に用いられる繊維とは、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエステル系エラストマー繊維、ポリアミド系繊維、ポリプロピレン系繊維等の合成繊維、その他、任意の繊維が挙げられる。繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定型なものでもよい。繊維の形態は、未加工糸、紡績糸、撚糸、仮撚加工糸、流体噴射加工糸等いずれのものを採用してもよい。但し、地組織に用いる糸については、出来るだけ編目を締めて編目の変形を抑える点から、原糸(未加工糸)を用いることが好ましい。
【0020】
本発明の経編布バネ材は布バネ性能に優れるので、本発明の経編布バネ材が配された座席は着座時の人体へのフィット感及び安定な座り心地を得ることができる。具体的には、本発明の経編布バネ材をフレームに張設して座部および/または背部を形成する部分として好適に用いることができる。経編布バネ材をフレームに張設する状態は限定されるものでなく、経編布バネ材の周囲または少なくとも2辺を背部または座部のフレームに緊張状態または弛ませた状態で張ることにより、経編布バネ材が座部や背部を形成すればよい。フレームへの経編地の固定方法は任意の方法を用いることができる。例えば、特開2002−219985号公報に記載のように、編地末端部に断面略U字状で溝部を有するプレート部材を固着し、該プレート部材の溝部を適宜のフレーム材に係合する方法、布バネ用布帛の端末部を溶着、縫製、樹脂加工等により処理した後、端部を押さえ部材等で押さえてボルト止め等でフレームに固定する方法、端部を折り返して縫製した空洞の中に金属棒を通し、金属棒をフレームに固定する方法等、任意の方法を用いることができる。なお、本発明の布バネ用布帛をコイルスプリング、トーションバー等の金属ばねを介しフレームに固定する方法等を用いることにより、よりストローク感のあるクッション性が付与できる。
【0021】
本発明の経編布バネ材はラッセル編機を用いて編成することが好ましく、編機のゲージは9ゲージから28ゲージまでが好ましく用いられる。
経編地の目付は、目的に応じて任意に設定できるが、好ましくは200〜1200g/m2、より好ましくは250〜800g/m2である。
【0022】
本発明の経編布バネ材は立体構造経編地であってもよい。具体的には、本発明の上記地組織構成を表裏面の少なくとも一方の面の経編地に適用し、これを連結糸で連結した立体構造経編地とすることができる。ダブルラッセル編成による立体編物とすることが、厚み方向のクッション性の向上及び振動吸収性の向上の観点から好ましい。
【0023】
経編布バネ材の仕上加工方法としては、生機を精練、染色、ヒートセット等の工程を通して仕上げることができるが、精練や染色工程を省いて生機をヒートセットのみで仕上げることもできる。また仕上セット時には本発明の目的を損なわなければ、通常の繊維加工に用いられている樹脂加工、吸水加工、制電加工、抗菌加工、難燃加工などの仕上加工を適用できる。仕上セットで用いる熱処理機としては、ピンテンター、クリップテンター、ショートループドライヤー、シュリンクサーファアードライヤー、ドラムドライヤー、連続およびバッチ式タンブラー等がしようできる。仕上加工後の布バネ用布帛は、融着、縫製、樹脂加工等の手段で端部を処理したり、熱成型等により所望の形状に加工して、張設タイプの座席等に用いることができる。
【実施例】
【0024】
以下、本説明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例中の各特性の評価方法および測定は下記の方法で行った。
【0025】
(1)座席の性能評価
座部が幅520mm、奥行き470mm、高さ320mmの口型金属パイプ材からなる座席フレーム(背もたれなし)を作製する。幅500mm(緯方向)×長さ570mm(経方向)の編地の長さ方向の両端2辺の全幅にポリブチレンテレフタレート樹脂製の略U字型プレートを縫製で取り付ける。編地に取り付けた一方の略U字型プレートを、座席フレーム前縁下に取り付けた金属製略U字型のプレートとかみ合わせ、編地の幅全体に10kgの荷重をかけて張力を付与した状態で、座席フレームの前後に編地を張り、座席フレームの後ろ縁下の金属製略U字型プレートと布バネ用布帛の樹脂製略U字状プレートとをかみ合わせて布バネ用布帛を張設する。10kgの荷重により金属製略U字プレートと樹脂製略U字プレートの位置がずれる場合は、金属製樹脂略U字型プレートのボルト止めした位置をずらせて調節する。
【0026】
編地が調設された座席の上に、体重65kgの男性が、編地の長さ方向に膝の向きを合わせて10分間座った後、退席する。
着座時の座り心地の評価として、布バネ用布帛の柔軟性とフィット性を、以下の4段階で官能評価する。
◎:適度な柔軟性でフィット性に優れる。
○:柔軟性がやや高めか或いはやや硬めでフィット性に優れる。
△:柔軟性がかなり高いか、或いはかなり硬めでフィット性に劣る。
×:柔軟性すぎて、或いは硬すぎてフィット性に劣る。
【0027】
また着座時の違和感(尻の割れ目に編地が盛り上がって異物上に座ったような感覚)を以下の4段階で官能評価する。
◎:違和感が全くない。
○:違和感が殆どない。
△:違和感がややある。
×:違和感が激しい。
【0028】
また着座時の安定感を、以下の4段階で官能評価する。
◎:適度な面剛性で安定感に優れる。
○:面剛性がやや高めで安定感がある。
△:面剛性がやや低く安定感が劣る。
×:面剛性が低く安定感に劣る。
【0029】
さらに、退席後の布バネ用布帛の回復状態を目視評価し、以下の4段階で官能評価する。
◎:完全に元通りに回復している。
○:ほぼ元通りに回復している。
△:ややくぼみ(変形)が残る。
×:大きくくぼみが残る。
【0030】
(2)剛軟度
経編布バネ材の剛軟度を測定する方法として、JIS L 1096 剛軟度試験方法A法(45゜カンチレバー)にて評価した。
【0031】
(3)破断強力の測定
島津社製オートグラフ引張試験機を使用し、長さ200mm、幅40mmの試験片を用い、引張速度50mm/min、把持間距離100mmにて測定し、その時得られた最高の破断強力を測定値とする。
【0032】
(4)引裂き強力の測定
島津社製オートグラフ引張試験機を使用した。長さ250mm、幅50mmの試験片の幅方向の真中つまり25mmのところより垂直に長さ方向に100mm切れ込みを入れ、幅25mmで切れ込んだ長さ100mmの部分をつかみ幅50mmで上下につかみ、引張速度200mm/minにて、引裂き強力を測定した。その時得られた最高の引裂き強力を測定値とする。
【0033】
[実施例1]
3枚筬を装備した14ゲージのシングルラッセル編機を用い、地組織を形成する筬(L1、L2、L3)から560dtex/96フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の原糸をオールインの糸配列で供給した。
以下に示す編組織で、機上コース13.98C/2.54cmの密度で生機を編成した。得られた生機を有り幅で180℃×3分で乾熱ヒートセットし、経編布バネ材を得た。得られた経編布バネ材の諸物性を表1に示す。
(編組織)
L1:10/01//(オールイン)
L2:10/12//(オールイン)
L3:56/10//(オールイン)
【0034】
L1が本発明の第1筬による鎖編、L2が第2筬で1針振りのトリコット編(1×1デンビ編成)、L3が第3筬で5針振りトリコット編(1×5サテン編成)、第2筬と第3筬が異方向振りを行っている。
得られた経編地は、強い破断強力と高い引裂き強力を有し、適度な柔軟性でフィット感に優れ、臀部の違和感が全く無く、安定感に優れた座り心地が得られるものであった。また、退席後完全に元通りに回復する回復性を示した。
【0035】
[実施例2]
3枚筬を装備した18ゲージのシングルラッセル編機を用い、地組織を形成する筬(L1、L2、L3)から280dtex/48フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の原糸をオールインの糸配列で供給した。
以下に示す編組織で、機上コース20.57C/2.54cmの密度で生機を編成した。得られた生機を有り幅で180℃×3分で乾熱ヒートセットし、経編布バネ材を得た。得られた経編布バネ材の諸物性を表1に示す。
(編組織)
L1:10/01//(オールイン)
L2:10/23//(オールイン)
L3:56/10//(オールイン)
【0036】
L1が本発明の第1筬による鎖編、L2が第2筬で2針振りトリコット編(1×2コード編成)、L3が第3筬で5針振りトリコット編(1×5サテン編成)、第2筬と第3筬が異方向振りを行っている。
得られた経編布バネ材は、強い破断強力と高い引裂き強力を有し、適度な柔軟性でフィット感に優れ、臀部の違和感が全く無く、安定感に優れた座り心地が得られるものであった。また、退席後完全に元通りに回復する回復性を示した。
【0037】
[実施例3]
ダブルラッセル編機を用いて、表面及び連結糸に167dtex48フィラメントの仮撚加工糸を用い、裏面は実施例1と同等の編成方法にて立体編地を得た。立体編地の諸物性を表1に示す。
得られた立体編地は、強い破断強力と切れ糸がランし難い高い引裂き強力を有し、適度な柔軟性でフィット感に優れ、臀部の違和感が全く無く、安定感に優れた座り心地が得られるものであった。また、退席後完全に元通りに回復する回復性を示した。
【0038】
[実施例4]
実施例2において、地組織を編成するL3の編組織を下記に変更した以外は、実施例2と同様にした経編布バネ材を得た。得られた経編布バネ材は、強い破断強力と高い引裂き強力を有し、適度な柔軟性でフィット感に優れ、臀部の違和感が全く無く、安定感に優れた座り心地が得られるものであった。また、退席後完全に元通りに回復する回復性を示した。しかし、編み立て性が劣り、糸切れが若干発生した生地となった。
(編組織)
L3:10/9 10//(オールイン)
1×9サテン組織(9針振りのトリコット編)
【0039】
[実施例5]
3枚筬を装備した22ゲージのシングルラッセル編機を用い、地組織を形成する筬(L1、L2、L3)から130dtex/32フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の原糸をオールインの糸配列で供給した。実施例1と同様の編組織にて、機上コース28.35C/2.54cmの密度で生機を編成した。得られた生機を有り幅で180℃×3分で乾熱ヒートセットし、経編布バネ材を得た。得られた経編布バネ材の諸物性を表1に示す。
得られた経編布バネ材は、柔軟性が高めでフィット感が有り、着座時の違和感は無かったが、破断強力及び引裂き強力が弱い経編布バネ材であった。
【0040】
[実施例6]
ダブルラッセル編機を用いて、表面に334dtex96フィラメントの仮撚加工糸を用い、連結糸に330dtexのポリエチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントをオールインの糸配列で供給した。裏面は実施例1と同等の編成方法にて立体編地を得た。立体編地の諸物性を表1に示す。
得られた立体編地は、強い破断強力と切れ糸がランし難い高い引裂き強力を有してはいるが、座り心地が硬くフィット感に劣り、面剛性が高すぎて臀部の違和感を感じた。また、退席後完全に元通りに回復する回復性を示した。
【0041】
【表1】

【0042】
[比較例1]
実施例2において、機上コースを13.98C/2.54cmの密度にした以外は、実施例2と同様にして経編布バネ材を得た。得られた経編布バネ材の諸物性を表2に示す。仕上生地の密度は、コース(C)が14個/2.54cmでウエル(W)が19個/2.54cmでコースとウェルの比(C/W)は0.74となった。得られた経編布バネ材は、着座後の回復性が劣ったものであった。
【0043】
[比較例2]
実施例2において、機上コースを28.02C/2.54cmにした以外は、実施例2と同様にして経編布バネ材を得た。得られた経編布バネ材の諸物性を表2に示す。仕上生地の密度は、コース(C)が29個/2.54cmでウエル(W)が18個/2.54cmで、コースとウェルの比(C/W)は1.61となった。得られた経編布バネ材は、破断、引裂き強力が劣ったものであった。
【0044】
[比較例3]
実施例2において、地組織を編成するL3の編組織を下記に変更した以外は実施例2と同様にして経編布バネ材を得た。第2筬と第3筬の振り方向を同方向振りとした。
得られた経編地の諸物性を表2に示す。得られた経編布バネ材は着座後の回復性の悪いものであった。
(編組織)
L3:10/56//(オールイン)
【0045】
[比較例4]
3枚筬を装備した14ゲージのシングルラッセル編機を用い、地組織を形成する筬(L1、L2)から560dtex/96フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の原糸をオールインの糸配列で供給した。タテ挿入糸をL3筬から660dtexのポリエチレンテレフタレート繊維のモノフィラメントをオールインの糸配列で供給した。
以下に示す編組織で、機上コース13.98C/2.54cmの密度で生機を編成した。得られた生機を有り幅で180℃×3分で乾熱ヒートセットし、経編地を得た。得られた経編地の諸物性を表2に示す。
(編組織)
L1:10/01//(オールイン)
L2:10/56//(オールイン)
L3:22/00//(オールイン)
得られた経編地は、強い破断強力と切れ糸がランし難い高い引裂き強力を有し、適度な柔軟性でフィット感に優れ、臀部の違和感が全く無く、安定感に優れた座り心地が得られるものであった。また、退席後完全に元通りに回復する回復性を示した。しかしながら、編成時にモノフィラメントの糸切れが多く、歩止りの悪いものであった。
【0046】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、地組織にモノフィラメントを用いなくとも伸長回復性(着座時の回復性)を維持し、人の体重を支えられる高い面剛性と高強力を有する経編布バネ材を安定した編立て性で比較的安価に提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
95wt%以上がマルチフィラメントで構成された経編地からなる布バネ材であって、該経編地の地組織が少なくとも3枚筬以上で構成され、地組織を構成する少なくとも1枚の筬は鎖編を形成し、少なくとも2枚の筬は1針以上8針振り以下のトリコット編を形成し、該トリコット編を形成する少なくとも2枚の筬の振り方向は異方向振りであり、地組織のコース数(C)とウエル数(W)の関係が0.8W≦C≦1.5Wであることを特徴とする経編布バネ材。
【請求項2】
地組織中に挿入組織が存在しないことを特徴とする請求項1記載の経編布バネ材。
【請求項3】
経編地のタテ方向及びヨコ方向のいずれか小さい方の破断強力が500N以上であり、引裂き強力が70N以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の経編布バネ材。
【請求項4】
表裏二層の経編地と該二層の経編地を連結する連結糸を有する立体構造経編地であって、表裏のどちらかの層の経編地の地組織が請求項1〜3のいずれか一項に記載の地組織構造であることを特徴とする立体構造経編布バネ材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の経編布バネ材が配されてなることを特徴とする座席。

【公開番号】特開2013−7143(P2013−7143A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142111(P2011−142111)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】