経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物及びその吸入システム
本発明は、インターフェロン−γを安定に保持し、使用時に容器内で微粒子粉末に調製可能な経肺投与用のインターフェロン−γ凍結乾燥組成物を提供する。
本発明の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物は、
(i) 疎水性アミノ酸、疎水性アミノ酸のジペプチド、疎水性アミノ酸のトリペプチド、疎水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の疎水性安定化剤;親水性アミノ酸、親水性アミノ酸のジペプチド、親水性アミノ酸のトリペプチド、親水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の親水性安定化剤;並びにインターフェロン−γを含有する、
(ii) 非粉末のケーキ状形態を有する、
(iii)崩壊指数が0.015以上である、及び
(iv) 少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって、平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子になる
という特性を有する。
本発明の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物は、
(i) 疎水性アミノ酸、疎水性アミノ酸のジペプチド、疎水性アミノ酸のトリペプチド、疎水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の疎水性安定化剤;親水性アミノ酸、親水性アミノ酸のジペプチド、親水性アミノ酸のトリペプチド、親水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の親水性安定化剤;並びにインターフェロン−γを含有する、
(ii) 非粉末のケーキ状形態を有する、
(iii)崩壊指数が0.015以上である、及び
(iv) 少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって、平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子になる
という特性を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターフェロン−γを含有する経肺投与用の凍結乾燥組成物に関する。より詳細には、本発明はインターフェロン−γを安定に保持し、使用時に経肺投与に適した微粒子粉末(以下、経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤ともいう)に調製可能なインターフェロン−γ凍結乾燥組成物に関する。
【0002】
また、本発明は、当該凍結乾燥組成物を用いた経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに関する。より詳細には、本発明は容器に収容して提供される当該凍結乾燥組成物を使用時に微粒子化することによって経肺投与に適した製剤形態に調製し、そのまま吸入投与できる経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに関する。
【0003】
更に、本発明は、当該経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに関連する下記の発明を包含する。これらの発明の具体例としては、インターフェロン−γ凍結乾燥組成物から経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤を製造する方法、上記インターフェロン−γ含有凍結乾燥組成物を用いた吸入による経肺投与方法、並びに経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤を使用時に製造するためのインターフェロン−γ凍結乾燥組成物の使用などを挙げることができる。尚、本明細書において「微粒子」という用語は、粉末粒子を含む意味で用いられる。当該微粒子の形状については、制限されない。
【背景技術】
【0004】
一般的に、経肺投与に際しては、医薬品に含まれる有効成分の平均粒子径を10ミクロン以下、望ましくは5ミクロン以下にすることによって該有効成分を効率良く肺へ到達させることができることが知られている。このため、従来の経肺投与用吸入剤は、医薬品原体を予め経肺投与に適した粒子径にするために、スプレードライ法やジェットミル法などで微粒子を調製し、又は更に加工処理をして、これを吸入デバイスに充填して提供されている(例えば、国際公開第WO95/31479号パンフレット及び国際公開WO91/16038号パンフレット等参照。)。
【0005】
また、従来の経肺投与用乾燥粉末吸入剤の調製には、微粉末をスプレードライ装置またはジェットミル装置から回収して容器に小分け充填するという操作が必要である。このため,かかる操作に伴って、回収や充填ロスによる調製収率の低下及びそれに伴う原価コストの上昇、並びに製剤への夾雑物の混入等という問題が不可避的に生じてしまう。また、一般に粉末を微量で精度良く小分け充填することは困難である。従って、かかる粉末状での微量の小分け充填が必須であるスプレードライ法やジェットミル法によると必然的に高精度な微量粉末充填法の確立が必要とされる。事実、米国特許公報第5,826,633号には,微粉末を粉末充填するシステム、装置及び方法について詳細な内容が記載されている。
【0006】
インターフェロンは、抗ウイルス特性、免疫調節特性或いは細胞増殖抑制特性等の生物学的特性を有する経肺投与可能な薬効成分として知られている。該インターフェロンはタンパク質であるが故に、本来的に、熱やpH等の影響を受けて活性を喪失し易いという傾向がある。特に、各種のインターフェロンの中でもインターフェロン−γは、活性が損なわれやすく、安定性に乏しいという欠点を有している。故に、インターフェロン−γを薬効成分として含有する経肺投与用乾燥粉末吸入剤は、上記従来の経肺投与用乾燥粉末吸入剤の問題点に加えて、調製時に或いは経時的にインターフェロン−γの活性が低下するという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の目的は、上記のような従来の種々の問題を解決することである。詳細には、本発明は、インターフェロン−γを安定に保持し、使用時に容器内で微粒子に調製可能な経肺投与用のインターフェロン−γ凍結乾燥組成物を提供することを目的とするものである。
【0008】
更に、本発明は、容器内に1回投与量の有効成分が予め小分け収容された経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を、該容器内で使用時に経肺投与に適した粒子径に微粒子化し,そのまま吸入による経肺投与に使用できる新規な製剤システム並びに投与システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、(i)疎水性アミノ酸、疎水性アミノ酸のジペプチド、疎水性アミノ酸のトリペプチド、疎水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の疎水性安定化剤;親水性アミノ酸、親水性アミノ酸のジペプチド、親水性アミノ酸のトリペプチド、親水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の親水性安定化剤;並びにインターフェロン−γを含有する、(ii)非粉末のケーキ状形態を有する、(iii)崩壊指数が0.015以上である、及び(iv)少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって、平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合(fine particle fraction)が10%以上の微粒子になる、という特性を備えるインターフェロン−γ凍結乾燥組成物は、容器内に収納されたままで比較的弱い空気衝撃によって微粒子化できること、及び該組成物中のインターフェロン−γは優れた安定性を備えていることを見出した。
【0010】
本発明者らは更に研究を重ねることによって、容器内に一回投与量収容された上記インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を、該組成物に所定の空気衝撃を与えることができるように、容器内に所定の速度と流量で空気を導入する手段と微粒子化された粉末組成物を容器から排出する手段とを備えたデバイスと組み合わせて用いることによって,使用者において使用時(特に吸入時)に且つ簡単に、凍結乾燥された非粉末製剤を経肺投与に適した微粒子状態に調製でき,この微粒子をそのまま吸入服用できることを見出した。
【0011】
本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
(I)本発明には下記に掲げる経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物が包含される。
項1. 下記(i)〜(iv)の特性を有する経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物:
(i)疎水性アミノ酸、疎水性アミノ酸のジペプチド、疎水性アミノ酸のトリペプチド、疎水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の疎水性安定化剤;親水性アミノ酸、親水性アミノ酸のジペプチド、親水性アミノ酸のトリペプチド、親水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の親水性安定化剤;並びにインターフェロン−γを含有する、
(ii)非粉末のケーキ状形態を有する、
(iii)崩壊指数が0.015以上である、及び
(iv)少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって、平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子になる。
項2. 親水性安定化剤が、塩基性アミノ酸、中性ヒドロキシアミノ酸、これらのアミノ酸のジペプチド、これらのアミノ酸のトリペプチド、これらのアミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項3. 親水性安定化剤が、塩基性アミノ酸、塩基性アミノ酸のジペプチド、塩基性アミノ酸のトリペプチド、塩基性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項4. 親水性安定化剤が、中性ヒドロキシアミノ酸、中性ヒドロキシアミノ酸のジペプチド、中性ヒドロキシアミノ酸のトリペプチド、中性ヒドロキシアミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項5. 親水性安定化剤が、アルギニン、リジン、ヒスチジン、スレオニン、これらのアミノ酸のジペプチド、これらのアミノ酸のトリペプチド、これらのアミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項6.疎水性安定化剤が疎水性アミノ酸、疎水性アミノ酸のジペプチド、疎水性アミノ酸のトリペプチド、疎水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項7.疎水性安定化剤が、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項8. 疎水性安定化剤100重量部に対して、親水性安定化剤を1〜500重量部含有する、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項9. 崩壊指数が0.02以上である、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項10. 崩壊指数が0.015〜1.5である、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項11. 少なくとも2m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子になる、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項12. 少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも20ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子になる、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項13. 空気の衝撃を受けることによって、平均粒子径が5ミクロン以下または有効粒子割合が20%以上の微粒子になる、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項14. 下記(i)〜(iv)の特性を有する項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物:
(i) 疎水性アミノ酸、疎水性アミノ酸のジペプチド、疎水性アミノ酸のトリペプチド、疎水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の疎水性安定化剤;親水性アミノ酸、親水性アミノ酸のジペプチド、親水性アミノ酸のトリペプチド、親水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の親水性安定化剤;並びにインターフェロン−γを含有する、
(ii) 非粉末のケーキ状形態を有する、
(iii) 崩壊指数が0.015〜1.5の範囲にある、及び
(iv) 1〜300m/secの範囲にある空気速度及び17ml/sec〜15L/secの範囲の空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって、平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子になる。
【0012】
(II)また、本発明には下記に掲げる経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムが包含される。
項15.(1) 1回投与量のインターフェロン−γを含有する項1乃至14のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を収容した容器と、
(2) 上記容器内の凍結乾燥組成物に上記の空気衝撃を与えることのできる手段、及び微粒子化された粉末状の凍結乾燥組成物を排出する手段を備えたデバイスを組み合わせて用いられる経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システム。
項16. 吸入時に、上記容器と上記デバイスとが組み合わされて用いられる項15に記載の経肺投与用乾燥粉末吸入システム。
項17. デバイスとして
i) 容器に非粉末状態で収容された凍結乾燥組成物を微粒子化し、得られた微粒子を被験者に吸入させるために用いられるデバイスであって、
空気噴射流路を有する針部と、排出流路を有する針部と、前記針部の空気噴射流路に空気を送るための空気圧送手段と前記針部の排出流路に連通する吸入口とを備え、
前記容器を密封する口栓に前記針部を突き刺して空気噴射流路及び排出流路と前記容器内部とを連通し、前記空気圧送手段によって前記空気噴射流路を通じて前記容器内に空気を噴射することにより、噴射空気の衝撃で前記凍結乾燥組成物を微粒子化し、得られた微粒子を前記排出流路を通じて吸入口から排出させるように構成したことを特徴とする経肺投与用の乾燥粉末吸入デバイスまたは、
ii) 容器内に非粉末状態で収容された凍結乾燥組成物を微粒子化し、得られた微粒子を被験者に吸入させるために用いられるデバイスであって、
吸引流路を有する針部と、空気導入流路を有する針部と、前記吸引流路に連通する吸入口とを備え、
前記容器を密封する口栓に前記針部を突き刺した状態で、被験者の吸気圧で前記吸入口から前記容器内の空気を吸入すると共に負圧となった容器内に前記空気導入流路を通じて前記容器内に空気を流入させることにより、流入した空気の衝撃によって前記凍結乾燥組成物を微粒子化して、得られた微粒子を前記吸引流路を通じて吸入口から排出させるように構成したことを特徴とする経肺投与用の乾燥粉末吸入デバイスを用いる項15に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システム。
項18. デバイスとして
空気衝撃を受けることによって微粒子化する非粉末のケーキ状形態の凍結乾燥組成物が収容され且つ口栓で密封された容器を保持するためのホルダー部と、
該容器内の前記凍結乾燥組成物に空気衝撃を与え、該空気衝撃により微粒子化された粉末状の前記凍結乾燥組成物を前記容器内から吸引するための手段と、を備えた乾燥粉末吸入デバイスであって、
前記凍結乾燥組成物を前記容器内から吸引するための吸引流路、及び外気を前記容器内に導入するための空気導入流路を有する針部と、
前記針部の前記吸引流路と連通する吸引口部と、
前記ホルダー部を前記針部の軸線方向にガイドするためのガイド部と、
前記ホルダー部に前記容器が保持された際に、当該容器を前記針部の針先に向けて前進させて容器の口栓を前記針先に突き刺し、また前記針先から後退させて容器の口栓を前記針先から引き離すための機構部、及び該機構部を操作する操作体を有し、該機構部は容器の口栓を前記針部に突き刺すのに要する力よりも小さい力で前記操作体を操作できるように構成されているホルダー作動部と、
前記針部を支持し、且つ、前記吸引口部と前記ガイド部と前記ホルダー作動部を設けるためのハウジングと、
を備え、
前記口栓を前記針部に突き刺して前記針部の吸引流路及び空気導入流路と前記容器内とを連通させると共に空気導入流路の先に前記凍結乾燥組成物を位置させた状態において、被験者の吸気圧で前記吸引口部から前記容器内の空気を吸入して、空気導入流路を通じて前記容器内に空気を流入させることにより、前記容器内の凍結乾燥組成物に空気衝撃を与えることを特徴とする経肺投与用の乾燥粉末吸入デバイスを用いる項17に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システム。
項19. (1)項14に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を収容した容器と、
(2) 上記容器内の凍結乾燥組成物に上記の空気衝撃を与えることのできる手段、及び微粒子化された粉末状の凍結乾燥組成物を排出する手段を備えたデバイスとを組み合わせて用いられる、項15に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システム。
【0013】
(III)更に、本発明には下記に掲げる経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法が包含される。
項20. 1回投与量のインターフェロン−γを含有する項1乃至14のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を収容した容器に、上記容器内の凍結乾燥組成物に少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気衝撃を与えることのできるデバイスを用いて、当該空気衝撃を備えた空気を導入し、
それによって上記凍結乾燥組成物を平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子とする,経肺投与用乾燥粉末製剤の製造方法。
項21. 調製される微粒子の平均粒子径が5ミクロン以下であるか、または有効粒子割合が20%以上である、項20に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
項22. 容量が0.2〜50mlの容器内で凍結乾燥組成物を微粒子化する方法である、項20に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
項23. 容器内の凍結乾燥組成物に少なくとも2m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を与えることのできる手段を有するデバイスを用いて、当該空気衝撃を備えた空気を凍結乾燥組成物を収容した容器に導入することによって行う、項20に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
項24. 容器内の凍結乾燥組成物に1〜300m/secの範囲にある空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を与えることのできる手段を有するデバイスを用いて、当該空気衝撃を備えた空気を凍結乾燥組成物を収容した容器に導入することによって行う、項20に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
項25. 容器内の凍結乾燥組成物に少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも20ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を与えることのできる手段を有するデバイスを用いて、当該空気衝撃を備えた空気を凍結乾燥組成物を収容した容器に導入することによって行う、項20に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
項26. 容器内の凍結乾燥組成物に少なくとも1m/secの空気速度及び17ml/sec〜15L/secの範囲の空気流量を有する空気の衝撃を与えることのできる手段を有するデバイスを用いて、当該空気衝撃を備えた空気を凍結乾燥組成物を収容した容器に導入することによって行う、項20に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
項27. 1回投与量のインターフェロン−γを含有する項14に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を収容した容器に、上記容器内の凍結乾燥組成物に少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気衝撃を与えることのできるデバイスを用いて、当該空気衝撃を備えた空気を導入し、
それによって上記凍結乾燥組成物を平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子とする、項20に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
項28. 項15乃至19のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムを使用することによって経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を微粒子化することを特徴とする、項20に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
【0014】
(IV)更に、本発明には、上記の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を用いることを特徴とする経肺投与方法が包含される。当該経肺投与方法は,吸入投与時に使用者(患者)において,非粉末状態で容器内に収容された凍結乾燥組成物を、使用時に経肺投与可能な微粒子化し、微粒子形態の粉末状製剤を吸入投与することのできる方法である。当該投与方法には下記の態様が包含される。
項29. 1回投与量のインターフェロン−γを含有する項1乃至14のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物に、使用時に少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気衝撃を与えることによって平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上になるように微粒子化し、
該微粒子化された粉末を使用者に吸入により投与させることを含む、経肺投与方法。
項30. 経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物が容器内に収容されており、微粒子化された粉末が、当該容器内の凍結乾燥組成物に上記の空気衝撃を与えることのできる手段と微粒子化された粉末状の凍結乾燥組成物を容器から排出する手段を備えたデバイスを用いて調製されるものである、項29に記載の経肺投与方法。
項31. 項15乃至19のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムを使用して、微粒子化されたインターフェロン−γ乾燥粉末を使用者に吸入により投与させることを含む、項29に記載の経肺投与方法。
項32. 空気速度が1〜250m/secである、項29に記載の経肺投与方法。
項33. 空気流量が20ml/sec〜10L/secである、項29に記載の経肺投与方法。
(V)更に、本発明には下記に掲げるインターフェロン−γ凍結乾燥組成物の使用が包含される。
項34. 項1乃至14のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を、平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子に粉末化して用いる、該凍結乾燥組成物の吸入による経肺投与への使用。
項35. 項1乃至14のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物の、吸入による経肺投与用のインターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造のための使用。
【0015】
(I)経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物
本発明の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物(以下、単に、経肺投与用凍結乾燥組成物ということもある。)は、インターフェロン−γ、疎水性安定化剤及び親水性安定化剤を含有するものである。
【0016】
本発明に使用するIFN−γは、その由来については制限されない。該IFN−γには、例えば、細胞培養技術を用いて製造された天然型IFN−γや組換えDNA技術によって製造されたIFN−γ(IFN−γ1a、IFN−γ1b等、例えば特開平7-173196号公報、特開平9-19295号公報等の記載のIFN−γ)等が含まれる。
【0017】
本発明において、疎水性安定化剤としては、疎水性アミノ酸、疎水性アミノ酸のジペプチド、疎水性アミノ酸のトリペプチド、疎水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩が挙げられる。
【0018】
本発明において、疎水性アミノ酸としては、具体的には、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン等のタンパク質構成アミノ酸を挙げることができる。疎水性アミノ酸のジペプチドとは、上記疎水性アミノ酸を少なくとも1つ有するジペプチドであり、例えばロイシル−バリン、イソロイシル−バリン、イソロイシル−ロイシン、ロイシル−グリシン等を例示することができる。また疎水性アミノ酸のトリペプチドとは、上記疎水性アミノ酸を少なくとも1つ有するトリペプチドであり、例えばイソロイシル−ロイシル−バリン、ロイシル−グリシル−グリシン等を例示できる。疎水性アミノ酸の誘導体としては、具体的にはL−ロイシンアミド塩酸塩、L−イソロイシル−β−ナフチルアミド臭化水素酸塩、L−バリン−β−ナフチルアミド等の疎水性アミノ酸のアミド等を挙げることができる。さらに塩としては、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属やカルシウムやマグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩;燐酸、塩酸及び臭化水素酸等の無機酸やスルホン酸等の有機酸との付加塩等を例示することができる。
【0019】
上記疎水性安定化剤として、好ましくはバリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン及びこれらの塩が挙げられる。
【0020】
これらの疎水性安定化剤は、単独で又は2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0021】
本発明において、親水性安定化剤としては、親水性アミノ酸、親水性アミノ酸のジペプチド、親水性アミノ酸のトリペプチド、親水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩が挙げられる。
【0022】
本発明に用いられる親水性アミノ酸は、親水性の側鎖を有するアミノ酸であれば、タンパク質構成アミノ酸であるか否かの別を問わず、いずれのアミノ酸であってもよい。親水性アミノ酸としては、具体的には、アルギニン、リジン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸;セリン、スレオニン等の中性ヒドロキシアミノ酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸;アスパラギン、グルタミン等のアミド型アミノ酸;グリシン、アラニン、システイン、チロシン等のその他のアミノ酸等が挙げられる。尚、ここでいう塩基性アミノ酸とは、塩基性の側鎖を有するアミノ酸のことであり、また中性ヒドロキシアミノ酸とは側鎖にヒドロキシル基(水酸基)を有するアミノ酸のことである。親水性アミノ酸のジペプチドとは、同一又は異なる2つの親水性アミノ酸を有するジペプチドである。また親水性アミノ酸のトリペプチドとは、同一又は異なる3つの親水性アミノ酸を有するトリペプチドである。親水性アミノ酸の誘導体としては、例えば親水性アミノ酸のアミド等を挙げられる。さらに塩としては、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属やカルシウムやマグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩;燐酸、塩酸及び臭化水素酸等の無機酸やスルホン酸等の有機酸との付加塩等が例示される。具体的には、塩酸アルギニン、リジン一塩酸塩、リジン二塩酸塩、ヒスチジン塩酸塩、ヒスチジン二塩酸塩の親水性アミノ酸の塩等が挙げられる。
【0023】
好ましい親水性安定化剤としては、例えば、塩基性アミノ酸、中性ヒドロキシアミノ酸、これらのアミノ酸のジペプチド、これらのアミノ酸のトリペプチド、これらのアミノ酸の誘導体及びこれらの塩;塩基性アミノ酸、塩基性アミノ酸のジペプチド、塩基性アミノ酸のトリペプチド、塩基性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩;中性ヒドロキシアミノ酸、中性ヒドロキシアミノ酸のジペプチド、中性ヒドロキシアミノ酸のトリペプチド、中性ヒドロキシアミノ酸の誘導体及びこれらの塩;アルギニン、リジン、ヒスチジン、スレオニン、これらのアミノ酸のジペプチド、これらのアミノ酸のトリペプチド、これらのアミノ酸の誘導体及びこれらの塩;アルギニン、リジン、ヒスチジン、スレオニン及びこれらの塩;アルギニン、リジン、ヒスチジン及びこれらの塩;並びにアルギニン及びその塩が挙げられる。
【0024】
これらの親水性安定化剤は、1種単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0025】
経肺投与用凍結乾燥組成物中のIFN−γの含有量は、適用疾患、期待される効果等に応じて適宜設定することができる。IFN−γの含有割合としては、例えば、該組成物中に0.01〜99.8重量%、好ましくは0.1〜95重量%、更に好ましくは0.1〜90重量%となる範囲が挙げられる。
【0026】
経肺投与用凍結乾燥組成物中の疎水性安定化剤の含有量は、IFN−γの含有割合、使用する疎水性安定化剤の種類、該組成物の崩壊指数等に応じて適宜設定することができる。疎水性安定化剤の含有割合として、例えば、該組成物中に0.1〜99.89重量%、好ましくは1〜95重量%、更に好ましくは5〜90重量%程度となる範囲が挙げられる。
【0027】
経肺投与用凍結乾燥組成物中の親水性安定化剤の含有割合は、IFN−γの配合割合、疎水性安定化剤の含有量、使用する親水性安定化剤の種類等に応じて異なり、一律に規定することはできないが、例えば該組成物中に0.1〜99.89重量%、好ましくは1〜90重量%、更に好ましくは2〜80重量%、更により好ましくは5〜70重量%となる範囲が挙げられる。
【0028】
また、経肺投与用凍結乾燥組成物中に含まれる疎水性安定化剤と親水性安定化剤の割合としては、疎水性安定化剤100重量部に対して、親水性安定化剤の配合割合が1〜500重量部、好ましくは2〜400重量部、更に好ましくは5〜300重量部、更により好ましくは8〜250重量部、特に好ましくは10〜200重量部程度が挙げられる。
【0029】
また、経肺投与用凍結乾燥組成物の単回投与量(1回投与量)中に含まれるIFN−γの量としては、例えば1万〜5000万IU(国際単位)、好ましくは10万〜4000万IU、更に好ましくは10万〜3000万IUである。
【0030】
経肺投与用凍結乾燥組成物の単回投与量中に含まれる疎水性安定化剤の量は、0.01〜10mg、好ましくは0.1〜5mg、更に好ましくは0.2〜0.5mgの範囲内である。
【0031】
経肺投与用凍結乾燥組成物の単回投与量中に含まれる親水性安定化剤の量は、0.01〜10mg、好ましくは0.1〜5mg、更に好ましくは0.1〜2.5mgの範囲内である。
【0032】
このように、疎水性安定化剤及び親水性安定化剤を経肺投与用凍結乾燥組成物に配合することによって、該組成物に後述する所望の崩壊指数を充足させると供に、更に該組成物中のIFN−γに優れた安定性を付与することが可能となる。
【0033】
尚、本発明の経肺投与用凍結乾燥組成物には、最終調製物が後述する崩壊指数を充足するものであれば、上記成分に加えて、更にブドウ糖等の単糖類;ショ糖,麦芽糖,乳糖,トレハロース等の二糖類;マンニット等の糖アルコール;シクロデキストリン等のオリゴ糖類;デキストラン40やプルラン等の多糖類;ポリエチレングリコール等の多価アルコール;カプリン酸ナトリウム等の脂肪酸ナトリウム;ヒト血清アルブミン;無機塩;ゼラチン;界面活性剤;緩衝剤等を含むことができる。界面活性剤には、通常医薬品に用いられる界面活性剤であれば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の別を問わず、広く用いることができる。好適には、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Tween型界面活性剤)、ソルビタントリオレート等の非イオン性界面活性剤である。
【0034】
また、本発明の経肺投与用凍結乾燥組成物は、非粉末のケーキ状の形態を有する凍結乾燥組成物である。ここで、非粉末のケーキ状の凍結乾燥組成物とは、溶液を凍結乾燥して得られる乾燥固体であり、通常、凍結乾燥ケーキと呼ばれるものを意味する。但し、凍結乾燥工程あるいはその後のハンドリングでケーキにひびが入ったり、数個の大きな塊になったり、一部が破損して粉状になったものも、本発明の効果を損なわないことを限度として本発明が対象とする非粉末状の凍結乾燥組成物に包含される。
【0035】
更に、本発明の経肺投与用凍結乾燥組成物は、0.015以上の崩壊指数を備えるものである。ここでいう崩壊指数は、凍結乾燥組成物について下記の方法に従って測定することによって得ることができる当該凍結乾燥組成物固有の値である:
<崩壊指数>
胴径φ18mmあるいは胴径φ23mmの容器に、対象とする凍結乾燥組成物を構成する目的の成分を含有する溶液を0.2〜0.5mlの範囲で液充填して、それを凍結乾燥する。次いで得られた非粉末状の凍結乾燥組成物に,n−ヘキサンを容器の壁を通じて静かに1.0ml滴下する。これを3000rpmで約10秒間攪拌させた混合液を光路長1mm,光路幅10mmのUVセルに投入し,速やかに分光光度計を用いて測定波長500nmで濁度を測定する。得られた濁度を凍結乾燥組成物を構成する成分の総量(重量)で割り、得られた値を崩壊指数と定義する。
【0036】
ここで本発明の経肺投与用凍結乾燥組成物が備える崩壊指数の下限値としては、上記の0.015、好ましくは0.02、より好ましくは0.03、さらに好ましくは0.04、更により好ましくは0.05、特に好ましくは0.1又は0.15を挙げることができる。また本発明の経肺投与用凍結乾燥組成物が備える崩壊指数の上限値としては特に制限されないが、1.5、好ましくは1、より好ましくは0.9、さらに好ましくは0.8、更により好ましくは0.7を挙げることができる。好適には本発明の経肺投与用凍結乾燥組成物は、0.015以上であることを限度として、上記から任意に選択される下限値と上限値から構成される範囲内にある崩壊指数を有することが望ましい。例えば、崩壊指数の範囲として具体的には0.015〜1.5、0.02〜1.0、0.03〜0.9、0.04〜0.8、0.05〜0.7、0.1〜0.7、0.15〜1.5、0.15〜1、及び0.15〜0.7が例示される。
【0037】
更に、本発明の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物は、前記範囲の崩壊指数と非粉末状のケーキ状の形態の形態を備えており、上記崩壊指数で表現される該乾燥組成物の固有の性質に基づいて、少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって、平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子になるという特性を備えるものである。
【0038】
ここで、微粒子の平均粒子径とは、経肺用吸入剤に関する当業界において通常採用される平均粒子径を意味するものである。具体的には、平均粒子径は、幾何学的な粒子径ではなく、空気力学的な平均粒子径(mass median aerodynamic diameter, MMAD)を示すものである。当該空気力学的平均粒子径は,慣用方法によって求めることができる。例えば、空気力学的平均粒子径は、人工肺モデルであるエアロブリザーを装着した乾式粒度分布計(Amherst Process Instrument, Inc社製,USA,),ツインインピンジャー(G.W. Hallworth and D.G. Westmoreland:J.Pharm.Pharmacol., 39, 966-972(1987),米国特許公報第6153224号)、マルチステージリギッドインピンジャー,マープルミラーインパクター,アンダーセンカスケードインパクター等で測定される。また,B.Olssonらは,空気力学的平均粒子径が5μm以下の粒子の割合が増加するにつれて,肺へのデリバリーが増加することが報告している(B.Olsson et al:Respiratory Drug Delivery V,273-281(1996))。このような肺にデリバリーできる量を推定する方法として,ツインインピンジャー,マルチステージリギッドインピンジャー,マープルミラーインパクター,アンダーセンカスケードインパクター等で測定される有効粒子割合(Fine Particle Fraction)やFine Particle Dose等がある。
【0039】
好ましい経肺投与用凍結乾燥組成物は、少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって、平均粒子径が10ミクロン以下、好ましくは5ミクロン以下、または有効粒子割合が10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上、特に好ましくは35%以上の微粒子になるものである。
【0040】
尚、経肺投与用凍結乾燥組成物に与える空気衝撃は、前述するように1m/sec以上の空気速度及び17ml/sec以上の空気流量を有する空気によって生じる衝撃であれば特に制限されない。具体的には、上記の空気衝撃としては、1m/sec以上、好ましくは2m/sec以上、より好ましくは5m/sec以上、よりさらに好ましくは10m/sec以上の空気速度によって生じる衝撃が挙げられる。ここで空気速度の上限としては、特に制限されないが、通常300m/sec、好ましくは250m/sec、より好ましくは200m/sec、よりさらに好ましくは150m/secを挙げることができる。なお、空気速度は、上記から任意に選択される下限と上限から構成される範囲内にあれば特に制限されないが、具体的には1〜300m/sec、1〜250m/sec、2〜250m/sec、5〜250m/sec、5〜200m/sec、10〜200m/sec、10〜150m/secの範囲を挙げることができる。
【0041】
また、上記の空気衝撃としては、通常17ml/sec以上、好ましくは20ml/sec以上、より好ましくは25ml/sec以上の空気流量によって生じる衝撃を例示することができる。ここで空気流量の上限は、特に制限されないが、900L/min、好ましくは15L/sec、より好ましくは10L/sec、さらに好ましくは5L/sec、さらにより好ましくは4L/sec、特に好ましくは3L/secである。より具体的には、空気流量は上記から任意に選択される下限と上限から構成される範囲内にあればよく、特に制限されないが、かかる範囲としては例えば17ml/sec〜15L/sec、20ml/sec〜10L/sec、20ml/sec〜5L/sec、20ml/sec〜4L/sec、20ml/sec〜3L/sec、25ml/sec〜3L/secを挙げることができる。
【0042】
本発明の経肺用凍結乾燥組成物は、IFN−γ、疎水性安定化剤及び親水性安定化剤を含む溶液を調製し、IFN−γの単回若しくは数回投与の有効量に相当する量の該溶液を容器に入れ、そのまま凍結乾燥することによって製造される。かかる経肺用凍結乾燥組成物の製造には、用時溶解型の注射剤等の凍結乾燥製剤(凍結乾燥組成物)の製造に一般的に用いられる製造方法を用いることができる。
【0043】
タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、遺伝子、核酸、低分子薬物等の各種活性成分、及び必要に応じてアミノ酸、糖類等の担体を含有する非粉末のケーキ状形態を有する凍結乾燥組成物は、該組成物中に含まれる塩類が少ない程、少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃で平均粒子径がより小さい又は有効粒子割合がより高い微粒子に調製することが可能となる。故に、上記空気衝撃で平均粒子径がより小さく又は有効粒子割合がより高くなるように微粒子化できる経肺投与用凍結乾燥組成物を調製するには、凍結乾燥処理に供せられる溶液中の塩類の濃度を低くすることが好ましい。例えば、使用する活性成分の精製粉末又は溶液中に保存剤又は安定化剤等として塩類が含まれている場合であれば、該生理活性成分の精製粉末又は溶液を予め脱塩処理して使用することによって、或いは凍結乾燥処理に供する溶液自体を脱塩処理することによって、凍結乾燥処理に供せられる溶液中の塩類の濃度を低くすることができる。脱塩処理する方法は、制限されず、例えば限外濾過法、沈殿法、イオン交換法、減圧透析法等を挙げることができる。
【0044】
上記空気衝撃で平均粒子径がより小さく又は有効粒子割合がより高くなるように微粒子化できる経肺投与用凍結乾燥組成物を調製するには、凍結乾燥処理に供せられる溶液中に少量のエタノールを添加したり、凍結乾燥時に、結晶が大きくならないように条件を適宜設定したりする方法がある。
【0045】
本発明の経肺用凍結乾燥組成物の製造において、例えば、容器中にIFN−γの単回投与量が含まれるように、経肺用凍結乾燥組成物を調製することによって、経肺投与する直前に該容器中で該組成物をそのまま経肺投与に適した粒径に微粉化して、微粉化された該組成物を該容器からそのまま吸入(経肺投与)することが可能となる。
【0046】
本発明の経肺投与用凍結乾燥組成物の単回投与量は、対象とする疾患、期待される効果、含有するIFN−γの種類等に応じて適宜設定すればよい。例えば、該組成物の単回投与量としては、0.1〜20mg、好ましくは0.2〜15mg、更に好ましくは0.3〜10mg、更により好ましくは0.4〜8mg、特に好ましくは0.5〜5mgである。
【0047】
斯くして得られた経肺用凍結乾燥組成物は、少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃によって経肺投与に適した微粉末状に調製できる。このように、空気衝撃によって本発明の経肺用凍結乾燥組成物を微粉化し、微紛化された該組成物を吸入(経肺投与)するためのデバイスとしては、例えば、容器内の凍結乾燥組成物に少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を与えることのできる手段、及び微粒子化された粉末状の凍結乾燥組成物を排出する手段を備えた乾燥粉末吸入デバイスを挙げることができる。故に、単回投与量のIFN−γを含有する上記経肺投与用凍結乾燥組成物を収容した容器に、上記デバイスを組み合わせて使用することによって、使用者が非粉末状態で提供される上記経肺投与用凍結乾燥組成物を使用時(吸入時)に、経肺投与に適した剤型である平均粒子径10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子からなる粉末製剤に自ら調製し、かつ投与(服用)することが可能となる
(II)経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システム
本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムは、上記経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を収容した容器と、該容器中の凍結乾燥組成物に上記空気衝撃を付与でき、更に生じた微粒子を排出できる乾燥粉末吸入デバイスとを組み合わせてなるものである。
【0048】
本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに使用される上記乾燥粉末吸入デバイスについて以下に記載する。
【0049】
本発明で用いられる乾燥粉末吸入デバイスは、(1)上記凍結乾燥組成物に、それを微粒子化し得る程度の空気衝撃を与えることのできる手段、及び(2)微粒子化された粉末状の凍結乾燥組成物を使用者に吸入投与することのできる手段を備えることによって、凍結乾燥組成物の微粒子化と使用者への吸入投与の両方を実施可能とするものである。なお、上記(1)の手段は上記凍結乾燥組成物を収容した容器内に、上記空気衝撃を備えた空気を導入する手段ということもできる。また(2)は容器内で微粒子化された粉末製剤を容器から排出する手段ということもできる。本発明においては、かかる手段を備えるものであれば、従来公知のものまた将来開発されるもののいずれのデバイスも使用することができる。
【0050】
(1)の手段は、具体的には、容器に収容された凍結乾燥組成物に上記の空気衝撃を与えることのできる空気を、該容器に導入する手段によって実現することができる。なお当該(1)の手段には、容器内の凍結乾燥組成物に少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気衝撃を与えることのできる手段であることもできる。(2)の手段によって若しくは該手段を介して、経肺投与に適した形態に調製された乾燥粉末製剤を患者などの使用者に吸入投与することができる。なお、(2)の手段には、さらに組成物が微粒子化または分散されるような、例えば部屋や流路が設けられていてもよい。
【0051】
当該乾燥粉末吸入デバイスには、下記(a)に掲げる噴射型の乾燥粉末吸入デバイスと(b)に掲げる自己吸入型の乾燥粉末吸入デバイスが含まれる。
(a−1) 容器に非粉末状態で収容された凍結乾燥組成物を微粒子化し、吸入に用いられるデバイスであって、
空気噴射流路を有する針部と、排出流路を有する針部と、前記針部の空気噴射流路に空気を送るための空気圧送手段、排出流路に連通する吸入口とを備え、
前記容器を密封する口栓に前記針部を突き刺して空気噴射流路及び排出流路と前記容器内部とを連通し、前記空気圧送手段によって前記空気噴射流路から前記容器内に空気を噴射することにより、噴射空気の衝撃で前記凍結乾燥組成物を微粒子化して、得られた微粒子を前記排出流路を通じて吸入口から排出するように構成したことを特徴とする乾燥粉末吸入デバイス。
(a−2) 前記空気圧送手段は手動式であって、吸込弁付き吸込口と吐出弁付き吐出口とを有するベロー体を備え、吸込弁を閉じた状態で該ベロー体を縮めて吐出弁を開放することにより、吐出口に連通した針部の空気噴射流路を通じて前記ベロー体内の空気を容器内に圧送し、前記吐出弁を閉じ吸込弁を開いた状態で弾性復元力によって前記ベロー体を伸張させることにより前記ベロー体内に空気を導入するように構成されたことを特徴とする(a−1)に記載の乾燥粉末吸入デバイス。
(a−3) 一本の針部に前記空気噴射流路及び前記排出流路を形成したことを特徴とする上記(a−1)又は(a−2)に記載の乾燥粉末吸入デバイス。
【0052】
(b)自己吸入型デバイス:Passive powder inhaler
(b−1) 容器内に非粉末状態で収容された凍結乾燥組成物を微粒子化し、吸入に用いられるデバイスであって、
吸引流路を有する針部と、空気導入流路を有する針部と、前記吸引流路に連通する吸入口とを備え、
前記容器を密封する口栓に前記針部を突き刺した状態で、使用者の吸気圧で前記吸入口から前記容器内の空気を吸入すると共に負圧となった容器内に前記空気導入流路を通じて前記容器内に空気を流入させることにより、流入した空気の衝撃によって前記凍結乾燥組成物を微粒子化して、得られた微粒子を前記吸引流路を通じて吸入口から排出するように構成したことを特徴とする乾燥粉末吸入デバイス。
(b−2) 使用者の一回の吸入によって、前記凍結乾燥組成物の大部分が微粒子化して前記吸入口から排出されるように構成したことを特徴とする(b−1)に記載の乾燥粉末吸入デバイス。
(b−3) 一本の針部に前記吸引流路及び前記空気導入流路を形成したことを特徴とする(b−1)又は(b−2)に記載の乾燥粉末吸入デバイス。
【0053】
容器内に空気を導入する手段(前述する(1)の手段)は、常圧で外部から空気を導入する手段であればよく、ジェットミルなどの圧縮空気を特段使用する必要はない。なお、外部から空気を導入する手段は、特に制限されず、例えば前述する噴射型の乾燥粉末吸入デバイスの場合は、人為的に外部エアーを容器内に噴射導入する手段を採用することができ、また自己吸入型の乾燥粉末吸入デバイスの場合は、使用者の吸入服用に伴う容器内の負圧化によって自然に外部エアーを容器内に吸引導入する手段を採用することができる。なお、前者噴射型の乾燥粉末吸入デバイスの場合、人為的に外部エアーを容器内に噴射導入する方法は、手動であっても、任意の機械を使用して自動的に行う方法であってもよい。
【0054】
本発明の乾燥粉末吸入デバイスは、噴射型及び自己吸入型の別を問わず、上記空気導入手段によって容器内に導入(流入)された外部エアー(空気)の衝撃(噴射圧)を利用して、容器内に非粉末状態で収容された凍結乾燥製剤を微粒子化することのできるものである。
【0055】
なお、ここで用いられる容器としては、例えば凍結乾燥に供することのできるものを用いることができ、材質、形状などに特に制限されない。例えば、材質としては、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレンなどのポリオレフィン系を主とするプラスチック,ガラス,アルミ等が例示できる。また形状としては、円筒状、カップ状、三角柱(三角錐)、正方柱(正方錐)、六角柱(六角錐)、八角柱(八角錐)などを多角柱(多角錐)を例示することができる。
【0056】
かかる効果を効率よく得るためには、凍結乾燥組成物を収容する容器の容量としては、0.2〜50ml、好ましくは0.2〜25ml、より好ましくは1〜15mlの範囲である。また、容器の胴径として、φ2〜100mm、好ましくはφ2〜75mm、より好ましくはφ2〜50mmのものを使用することが望ましい。
【0057】
更に、かかる容器内に収容する経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物の量は、単位投与量(1回投与量)または数回、具体的には2〜3回投与量のインターフェロン−γを含む量であることが好ましい。より好ましくは単位投与量(1回投与量)の有効成分を含む量である。
【0058】
更に、容器内に導入する外部エアー(空気)により生じる空気衝撃は少なくともヒトの1回若しくは数回の吸気動作によって容器内に空気が流入する空気流量やそれによって生じる空気速度によって規定される。勿論,容器の耐久性を限度として,これを越える空気流量や空気速度を持って外部エアーを導入することは特に制限されない。ヒトが1回吸入する空気流量は通常5〜300L/分、より詳細には10〜200L/分である。また、噴射型の乾燥粉末吸入デバイスの場合、1回の空気の噴射量が5〜100ml、好ましくは10〜50mlとなるものを使用することができる。好ましくは容器内部に充填された凍結乾燥組成物の表面に少なくとも1m/secの空気速度によって生じる空気衝撃が当たるように調整することができる。より好ましい空気衝撃は少なくとも2m/secの空気速度によって生じる衝撃、さらに好ましくは少なくとも5m/secの空気速度によって生じる衝撃、よりさらに好ましくは少なくとも10m/secの空気速度によって生じる衝撃である。ここで空気衝撃の上限としては、特に制限されないが、例えば300m/secの空気速度によって生じる衝撃を挙げることができる。かかる上限として好ましくは250m/secの空気速度によって生じる衝撃、より好ましくは200m/secの空気速度によって生じる衝撃、よりさらに好ましくは150m/secの空気速度によって生じる衝撃である。
【0059】
空気衝撃は、上記から任意に選択される下限と上限から構成される範囲内にある空気速度を備えた空気によって生じるものであればよく、特に制限されないが、例えば1〜300m/sec、1〜250m/sec、2〜250m/sec、5〜250m/sec、5〜200m/sec、10〜200m/sec、10〜150m/secの範囲にある空気速度によって生じる衝撃を挙げられる。
【0060】
なお、ここで凍結乾燥組成物に付与される空気の速度は、下記のようにして測定することができる。すなわち、後述する実施態様例1で示した噴射型乾燥粉末吸入デバイスでは,ベロー体10に蓄えられている空気を空気噴射流路3から強制的に容器内に充填された凍結乾燥組成物(ケーキ状の凍結乾燥組成物:以下「凍結乾燥ケーキ」ともいう)に導入し,空気衝撃を与えて,結果として生じた微粒子が排出経路4から排出される機構を採用している。この場合、空気噴射流路3を流れる空気流量はベロー体10に蓄えられている空気量をその空気を容器に送り込む時間で割ることにより算出することができる。次いで,この空気流量を空気噴射流路3等の容器に空気を導入する流路の断面積で割ることにより,凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)に衝撃を与える空気速度を算出することができる。
【0061】
【数1】
【0062】
具体的には、例えば,空気噴射流路3の孔径φ1.2mm,排出経路の孔径φ1.8mm,ベロー体10に蓄えられている空気量が約20mlに設計した噴射型の乾燥粉末吸入デバイスの場合、ベロー体10に蓄えられている約20mlの空気量を約0.5秒で空気噴射流路3から強制的に容器内の凍結乾燥組成物に導入した場合、空気流量は約40ml/secとなる。そこでこの値を空気導入流路(空気噴射流路)の断面積(0.06 x 0.06 x3.14=0.0113cm2)で割ると,3540cm/secとなる。つまり,空気速度は約35m/secとなる。
【0063】
また、後述する実施態様例2、3及び4で示す自己吸入型乾燥粉末吸入デバイスでは,空気導入流路17から流入した空気が凍結乾燥ケーキに衝撃を与えた後,結果として生じた微粒子が吸引流路16から排出される機構を採用しているため、空気導入流路17と吸引流路16の孔径が該流路を流れる空気流量を規定することになる。従って、容器に収容された凍結乾燥組成物に付与される空気速度は、空気導入流路17に流れる空気流量を測定し、これを空気導入流路17のノズルの断面積で割ることにより算出することができる。
【0064】
【数2】
【0065】
具体的には,ヨーロッパ薬局方(European Pharmacopoeia, Third Edition Supplement 2001, p113-115)に記載されている装置A(Apparatus A)(ツインインピンジャー(Twin Impinger):Copley社製,UK)のスロート部分に容器を含む吸入デバイスを装着させて、Flow Meter(KOFLOC DPM-3)を用いて空気導入流路17に流れる空気流量を測定する。
【0066】
例えば,空気導入流路17の孔径をφ1.99mm,吸引流路の孔径をφ1.99mmに設計された自己吸入型乾燥粉末吸入デバイスにおいて、Flow Meter(KOFLOC DPM-3)を用いて測定された空気導入流路17に流れる空気流量が17.7L/min即ち、295ml/secであった場合に、空気速度は、この値を空気導入流路の断面積(0.0995 x 0.0995 x 3.14=0.0311cm2)で割ることによって得ることができる(9486cm/sec、つまり95m/sec)。
【0067】
また容器内部に充填された凍結乾燥組成物に付与される空気の流量としては、少なくとも17ml/secを挙げることができる。空気の流量として、好ましくは少なくとも20ml/sec、より好ましくは少なくとも25ml/secである。ここで空気流量の上限としては、特に制限されないが、例えば900L/minを挙げることができる。かかる上限として好ましくは15L/sec、より好ましくは10L/sec、さらに好ましくは5L/sec、さらにより好ましくは4L/sec、特に好ましくは3L/secである。具体的には、空気流量は上記から任意に選択される下限と上限から構成される範囲内にあればよく、特に制限されないが、かかる範囲としては例えば17ml/sec〜15L/sec、20ml/sec〜10L/sec、20ml/sec〜5L/sec、20ml/sec〜4L/sec、20ml/sec〜3L/sec、25ml/sec〜3L/secを挙げることができる。
【0068】
また、本発明で用いる乾燥粉末吸入デバイスは、外部から導入された空気の衝撃圧を高める手段として、実施例で詳述する空気導入流路若しくは空気噴射流路を備えた針部のように、容器底部に収容された凍結乾燥組成物に接近させた状態で流路の吐出口、好ましくは細孔を備えた吐出口から空気を吐出させる手段を備えることができる。なお、かかる流路吐出口の孔径は、容器の大きさなどの関係で好ましい範囲が変動するため、特に制限されないが、直径φ0.3〜10mm、好ましくは0.5〜5mm、より好ましくは0.8〜5mm、さらに好ましくは1〜4mmの範囲であることができる。
【0069】
かかる容器内への空気導入によって容器内に非粉末状態で収容されている凍結乾燥組成物を微粒子化することができる。ここで微粒子化の程度は、経肺投与に適した粒子径となるものであればよく、平均粒子径として10μm以下、好ましくは5μm以下を挙げることができる。また、微粒子化の程度は、有効粒子割合(Fine Particle Fraction)として、10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上、特に好ましくは35%以上となる割合を挙げることができる。
【0070】
本発明の当該システムによれば、本発明の乾燥粉末吸入デバイスを用いて上記容器内に空気を導入して、その内部の凍結乾燥組成物に少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を与えることによって、吸入による経肺投与が可能な粒子径を備えたインターフェロン−γ乾燥粉末製剤を調製することができる。また、当該システムによれば、調製されたインターフェロン−γ乾燥粉末製剤を使用者にそのまま吸入経肺投与することができる。こうした意味で、本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムは、吸入による経肺投与に適したインターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造システムであるとともに、該乾燥粉末製剤を使用者に経肺投与する投与システムであるといえる。
【0071】
(III)インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法
また,本発明は,容器内に収容された1回投与量のインターフェロン−γを含有する前記経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を該容器内で微粒子化することによって、吸入による経肺投与に適した粒子径を備えたインターフェロン−γ乾燥粉末製剤(経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤)を製造する方法に関する。当該方法は,容器に収容された前記経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物に特定の空気衝撃を与えることによって実施することができる。具体的には、本発明のインターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法は、前述する本発明の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物に、少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を与えることによって実施することができ、これにより、当該凍結乾燥組成物を平均粒子径が10ミクロン以下、好ましくは5ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上の微粒子形態を有するインターフェロン−γ乾燥粉末製剤に調製することができる。上記経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物に上記の空気衝撃を与える手段としては特に制限されないが、前述する本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに使用される乾燥粉末吸入デバイスが好適に使用される。
【0072】
当該製造方法は、好ましくは前記経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物が収容された容器に、上記空気衝撃を、該凍結乾燥組成物に与えることのできる空気を導入することによって実施することができる。
【0073】
本発明のインターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法は、インターフェロン−γ乾燥粉末製剤を使用する患者が、自ら、使用時(吸入時)に、容器に収容された経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を経肺投与に適した粒子径の粉末製剤に調製することができることを特徴の一つとするものである。
【0074】
(IV)経肺投与方法
さらに,本発明は,1回投与量のインターフェロン−γを含有する前記経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を使用時(投与時)に経肺投与可能な微粒子化し、該微粒子形態のインターフェロン−γ乾燥粉末製剤を吸入投与することを含む経肺投与方法に関する。当該経肺投与方法は、前述する経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を収容した容器と、前述する経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに使用される乾燥粉末吸入デバイスを含む、本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムを用いることによって行うことができる。
【0075】
(V)経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物の使用
さらに,本発明は、経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物について吸入による経肺投与への使用に関する。
【0076】
さらに、本発明は、経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物について吸入による経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造のための使用に関する。
【発明の効果】
【0077】
本発明の経肺用凍結乾燥組成物は、容器内で、少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃によって、肺への送達に必要な大きさにまで微粒子化される。故に、使用者が使用時(特に吸引時)に簡便な手段で該経肺用凍結乾燥組成物を、容器内で経肺投与に適した微粒子状態に調製することができる。
【0078】
本発明の経肺用凍結乾燥組成物によれば、有効粒子割合(Fine Particle Fraction)は少なくとも10%以上であり、さらに20%以上、25%以上、30%以上、並びに35%以上に高めることが可能である。米国特許公報第6153224号によると、従来のドライパウダー吸入装置の多くは、肺下部に付着する有効成分(粒子)が吸入される有効成分の10%程度に過ぎないことが記載されている。また、特開2001-151673号公報においても、一般的な吸入用粉末製剤の肺への薬物の到達量(肺到達率)は、該製剤から排出される薬物の10%程度であることが記載されている。ゆえに、本発明の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物は、従来の吸入用粉末製剤よりも高い有効粒子割合(Fine Particle Fraction)を達成することができる点で有用な経肺用組成物であるといえる。
【0079】
従来の経肺投与用組成物は微粒子粉末状であり、調製に際して取り扱いが困難であった。一方、本発明の経肺用凍結乾燥組成物は、ケーキ状の形態であり取り扱いが容易であることに加え、1回投与量を容器内で直接調製できるので、容器に小分けする作業が不要である。故に、本発明の経肺用凍結乾燥組成物は、微粒子粉末状の経肺用組成物に比して、高い収率で調製することが可能であり、更に微粒子粉末を容器に小分けする際の夾雑物の混入を回避することもできる。
【0080】
更に、本発明の経肺用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物はIFN−γを安定に保持できるため、調製時の凍結乾燥処理や長期間の保存に供しても、IFN−γの活性を高い割合で維持することができる。
【0081】
本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムによれば、インターフェロン−γの肺への吸入投与を簡便に行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0082】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0083】
なお、以下の実施例において、本発明の非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)の崩壊指数、及び微粉末化された乾燥粉末製剤の肺への送達を評価する指標である有効粒子割合(Fine Particles Fraction(%))は下記の方法に従って算出した。
【0084】
<崩壊指数の算出>
調製した非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)に、n-ヘキサンを容器の壁を通じて静かに1.0ml滴下し、これをAutomatic Lab-Mixer NS-8(Pasolina社製)を用いて3000rpmで約10秒間攪拌する。得られた混合液を光路長1mm,光路幅10mmのUVセル(島津GLCセンター製)に投入し、速やかに分光光度計(UV-240,島津製作所製)を用いて測定波長500nmで該混合液の濁度を測定する。得られた濁度を総処方量(有効成分と担体との総量(重量))で割った値を崩壊指数とする。
【0085】
<有効粒子割合(Fine Particles Fraction)の算出>
調製した非粉末状の凍結乾燥組成物を充填した容器を乾燥粉末吸入デバイスに装着し、該デバイスを用いて所定の空気衝撃を与えて微粉末化された粉末製剤をヨーロッパ薬局方(European Pharmacopoeia, Third Edition Supplement 2001, p113-115)に記載されている装置A(Apparatus A)(ツインインピンジャー(Twin Impinger):Copley社製,UK)に直接排出する。その後、該装置のStage 1とStage2中に入った溶媒をそれぞれ回収して、Bioassay法やHPLC等の凍結乾燥組成物中の有効成分に応じて所望の方法により,Stage 1とStage 2の各溶媒中に含まれる有効成分を定量する〔Lucasらの報告(Pharm. Res., 15(4), 562-569(1998))や飯田らの報告(薬学雑誌119(10)752-762(1999)参照)。なお,肺への送達が期待できるフラクションはStage 2(このフラクションで回収される空気力学的粒子径は6.4μm以下である。)であり、通常,このStage2に達し回収される有効成分の割合を有効粒子割合(肺へ到達が期待できる量,Fine Particles Fraction)と呼び,経肺投与用の吸入剤としての適性を評価する基準とされている。
【0086】
下記の本実施例及び比較例では、Stage1とStage2のそれぞれに含まれる有効成分の重量を定量し、得られたStage2中の有効成分の重量を、噴射された有効成分の重量総量(Stage1とStage2に含まれる有効成分の重量総量:以下「Stage1+Stage2」ともいう。)で割った値を有効粒子割合(Fine Particles Fraction(%))として算出した。また、原則として、ヨーロッパ薬局方ではツインインピンジャー(Copley社製,UK)を用いる場合,空気の吸引流量として60L/min、即ち1L/secで吸引することが規定されているので、下記の本実施例及び比較例もこれに従った。
【0087】
実施態様例1 乾燥粉末吸入デバイス(噴射型1)
本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに使用される噴射型の乾燥粉末吸入デバイスの一実施態様を図1を用いて説明する。
【0088】
乾燥粉末吸入デバイスは、容器1の底部に収容された非粉末性の単位若しくは数回投与量の凍結乾燥組成物2を微粒子化して肺器官に送るための空気噴射型の器具であって、空気噴射流路3及び排出流路4を有する針部5と、吸入口6を有し且つ針部5の基端に取り付けられる吸気部材7と、針部5を囲繞し且つ容器1の保持も兼ねる筒状安全カバー8と、空気圧送手段9とを備えている。
【0089】
空気圧送手段9は、手動式であって筒状のベロー体10を備え、ベロー体10には吸込弁11の付いた吸込口12と吐出弁13の付いた吐出口14とが設けられ、吐出口14は針部5の空気噴射流路3の基端側に形成された接続口15に取り付けられ、空気噴射流路3に連通している。そして、吸込弁11を閉じた状態でベロー体10に圧縮力を加えて収縮させることにより吐出弁13が開放して、ベロー体10内の空気が吐出口14から空気噴射流路3を通じて容器1内に排出される。一方、圧縮力を解除すると、ベロー体10の弾性復元力によってベロー体10が伸張して吐出弁13が閉じた状態で吸込弁11が開いて、ベロー体10内に空気が導入されるようになっている。
【0090】
該乾燥粉末吸入デバイスを使用するときには、図1に示すように、容器1を筒状安全カバー8にはめ込み、容器1の口栓1aに針部5を突き刺して空気噴射流路3及び排出流路4と容器1の内部とを連通させる。この状態で、空気圧送手段9のベロー体10を収縮させて吐出口14から空気を排出すると、該空気は空気噴射流路3を通り針部5の先端から容器内の凍結乾燥組成物2に向けて噴射され、その空気衝撃によって凍結乾燥組成物2は微粒子となって、針部5の排出流路4を通って吸気部材7の吸入口6から排出される。そして、使用者(患者)はこの微粒子を吸気部材の吸気口6から吸気することにより、凍結乾燥組成物2の微粒子が患者の肺器官内に送られる。なお、本発明で用いられる容器の口栓は、その材質を特に制限されることなく、例えばゴム、プラスチックまたはアルミニウムなどの通常薬物や化合物を収容する容器の口栓として使用される材質を任意に選択して使用することができる。
【0091】
この噴射型の吸入デバイスでは、空気噴射量が約20ml、容器の容量が約5ml、空気噴射流路3の孔径(直径)が約1.2mm、及び排出流路4の孔径(直径)が約1.8mmになるように設定されている。
【0092】
但し、これに限定されることなく、空気噴射流路3及び排出流路4の孔径は、容器の大きさ等の関係で好ましい範囲が変動するため、特に制限されないが、直径0.3〜10mm、好ましくは0.3〜7mm、より好ましくは0.5〜5mmの範囲内から適宜選択される。
【0093】
また、空気圧送手段9は、ベロー体10の圧縮速度を調整することによって吸入投与に必要な微粒子の排出量を調節することが可能であり、また、かかる空気噴射によっても凍結乾燥組成物2の大部分を微粒子化するように調整することができる。
【0094】
実施態様例2 乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型1)
本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに使用される自己吸入型の乾燥粉末吸入デバイスの一実施態様(その1)を図2を用いて説明する。図2に示す乾燥粉末吸入デバイスは、吸引流路16及び空気導入流路17を有する針部5と、筒状安全カバー8と、吸引流路16に連通する吸入口18を有する吸気部材19とを備え、吸気部材19は針部5の吸引流路16の基端側に連結されている。
【0095】
乾燥粉末吸入デバイスを使用するときには、図2に示すように、容器1を筒状安全カバー8にはめ込み、容器1の口栓1aに針部5を突き刺して吸引流路16及び空気導入流路17と容器1の内部とを連通させる。この状態で、患者の吸気圧で吸入口18から吸引流路16を介して容器1内の空気を吸引すると共に、これによって負圧となった容器1内に空気導入流路17から外気を流入させる。このとき、凍結乾燥組成物2に作用する空気衝撃によって凍結乾燥組成物2が微粒子化され、調製された微粒子が吸引流路16を通じて吸入口18から患者の肺器官内に送られる。
【0096】
また、当該乾燥粉末吸入デバイスは、患者の1回の吸入によって凍結乾燥組成物2の大部分が微粒子化して吸入口18から排出されるように設定されている。なお、患者の1回の吸入の空気流量は5〜300L/分、好ましくは10〜200L/分、より好ましくは10〜100L/分とされるが、本発明の自己吸入型乾燥粉末吸入デバイスは、使用する患者の呼吸能力に応じて適宜設計変更される。図2に示す吸入デバイスは、かかる患者の呼吸能力に応じて、容器の容量を約10mlに、空気導入流路17及び吸引流路16の孔径を直径約1.5mmに設定したものである。これによって、患者の1回の吸入によって凍結乾燥組成物2がほぼ残らず微粒子化して吸入口18から排出されるように設定される。
【0097】
実施態様例3 乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型2)
本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに使用される自己吸入型の乾燥粉末吸入デバイスの一実施態様(その2)を図3を用いて説明する。図3に示す乾燥粉末吸入デバイスは、図1に示す噴射型の乾燥粉末吸入デバイスの接続口15から空気圧送に使用するベロー体10を取り外したときの形態と同じになっており、また、図1の噴射型の乾燥粉末吸入デバイスの排出流路4が吸引流路16に、空気噴射流路3が空気導入流路17に、吸入口6を有する吸気部材7が吸入口18を有する吸気部材19に、それぞれ相当するようになっている。
【0098】
そして、かかる自己吸入型の乾燥粉末吸入デバイスを使用するときには、図2に示した乾燥粉末吸入デバイスと同じ要領で、患者の吸気圧で吸入口18から吸引流路16を介して容器1内の空気を吸引すると共に、これによって負圧となった容器1内に空気導入流路17から外気を流入させ、該空気流入に伴って生じる空気衝撃によって凍結乾燥組成物2が微粒子化される。そして、得られた該微粒子は吸入口18から患者の肺器官内に送られる。なお、前述するように患者の1回の吸入の空気流量は通常5〜300L/分の範囲にあるが、図3に示す吸入デバイスは、かかる患者の呼吸能力に応じて、容器の容量を約5mlに、空気導入流路17の孔径(直径)を約1.2mmに、吸引流路16の孔径(直径)を約1.8mmにそれぞれ設定したものである。これによって、患者の1回の吸入によって凍結乾燥組成物2の大部分が微粒子化して吸入口18から排出されるように設定される。
【0099】
このようにして自己吸入型の乾燥粉末吸入デバイスを構成すれば、接続口15にベロー体10などの空気圧送手段9を着脱自在に取り付けることによって、該自己吸入型の吸入デバイスを噴射型に変更することもできる。これによって、一つの乾燥粉末吸入デバイスを所望に応じて自己吸入型・噴射型のいずれの態様にも適宜選択し使用することができる。
【0100】
以上の乾燥粉末吸入デバイスは、自己吸入型又は噴射型のいずれのタイプであっても、凍結乾燥組成物が10ミクロン以下、好ましくは5ミクロン以下の平均粒子径の微粒子になってほぼ残らず飛散するように空気衝撃の大きさを選択設定することができるように構成することができる。
【0101】
実施態様例4 乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型3)
本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに使用される自己吸入型の乾燥粉末吸入デバイスの一実施態様(その3)を図4から図10を用いて説明する。なお、図4は当該乾燥粉末吸入デバイスを示す斜視図、図5は当該乾燥粉末吸入デバイスを示す断面図である。また図6の(a)は当該乾燥粉末吸入デバイスの針部5及び吸引口31を示す部分断面図、(b)は針部5の側面図である。さらに図7〜10は、各々当該乾燥粉末吸入デバイスの動作を説明する断面図である。
【0102】
乾燥粉末吸入デバイスは、吸引流路16及び空気導入流路17が形成された針部5と、容器1を保持するためのホルダー部22と、該ホルダー部22を介して容器1を収容するための収容室20と、ホルダー部22を針部5の軸線方向にガイドするために収納室20に設けられるガイド部23と、ホルダー部22をガイド部23に沿って前進及び後退させるホルダー作動部24とを備えており、これらは筒状のハウジング21に収容されている。またこのハウジング21の先部には、針部5の吸引流路16と連通する吸引口31を有するマウスピース32を備えている。
【0103】
図7に示すように、ハウジング21は、詳細にはホルダー部22が後退した位置に出し入れ口25が形成されたハウジング本体26と、出し入れ口25を開閉する蓋27とで形成されている。蓋27はハウジング本体26にヒンジ21Aにて連結され、また、蓋27には容器1の装填を確認するための窓28が設けられている。
【0104】
ハウジング21の壁部には外気を導入するための導入口29が設けられ、導入口29には逆止弁30が装着されている。また、ハウジング21の先部にはマウスピース32が取り付けられている。マウスピース32は、本乾燥粉末吸入デバイスを使用しないときには、吸引口31はキャップ32aで塞がれる。
【0105】
針部5の基端部にはフランジ状の隔壁部33が形成され、空気導入流路17の端部は隔壁部33内を通って隔壁部33の外周方向に開口している。また、隔壁部33の外周縁部からマウスピース32の吸引口31に向けて周壁部34が延び、ハウジング21の先端部に隔壁部33を嵌め込むことにより、ハウジング21内に針部5が取り付けられている。この取り付けによってハウジング21の軸線方向と針部5の軸線方向とを合致させている。
【0106】
ホルダー部22には容器1をホルダー部22の底部から起こして取り出すための取り出し体35が取り付けられ、取り出し体35には容器1を起こすためのレバー36が形成されている。
【0107】
ホルダー作動部24は、ホルダー部22をハウジング21の軸線方向に往復動させるための機構部37と、機構部37を操作する操作レバーとを備えている。機構部37は連結体39を備えている。連結体39の一端はホルダー部22にヒンジ40にて連結され、連結体39の他端は蓋27にヒンジ41にて連結されている。蓋27は前記操作レバーを兼ねている。蓋27の開閉操作によってホルダー部22をガイド部23の沿って前進及び後退させる。
【0108】
蓋27を倒すための力の作用点を図7の矢印Cで示す点とする。すなわち、ヒンジ21Aからヒンジ41までの長さよりもヒンジ21Aから該作用点までの長さを長くする。これにより、「てこの原理」により、容器1の口栓1aを針部5に突き刺すのに要する力よりも小さい力で蓋(操作レバー)27を操作できる。
【0109】
また、図6に示すように、乾燥粉末吸入デバイスには空気を補助的に導入するための第2導入路42が形成されている。粉末化した凍結乾燥組成物をマウスピース32から吸引するときには、外気はこの第2導入路42を通って直接マウスピース32の吸引口31に流入する。これにより、肺活量が低下した患者や子供の患者でも、負担をかけずに乾燥粉末吸入デバイスを使用できるようになっている。なお、第2導入路42を省略しても良い。
【0110】
第2導入路42は、針部5の隔壁部33に導入溝42aを、周壁部34に導入溝42bをそれぞれ設け、針部5の周壁部34にマウスピース32を嵌め込むことにより、マウスピース32と導入溝42a及び42bとで形成されるものである。
【0111】
マウスピース32とハウジング21との間には僅かな隙間43が形成され、第2導入路42の一端44は隙間43を通じて外部に開口し、第2導入路42の他端45はマウスピース32の吸引口31に開口している。
【0112】
また、図6に示すように、吸引口31には通気孔46を有する壁47が設けられている。したがって、吸引力の不足等により凍結乾燥組成物2に与える空気衝撃力が小さくなり、凍結乾燥組成物2の一部に非粉末部分が発生する場合でも、該非粉末部分は壁47の通気孔46を通過する際に粉末化させることができる。
【0113】
また、図6(a)に示すように、針部5の空気導入流路17の先端口17aは吸引流路16の先端口16aよりも凍結乾燥組成物2に近づけている。これにより、空気導入流路17の先端口17aから容器1内に流入する空気の流速低下をできるだけ抑え、凍結乾燥組成物2に効果的な空気衝撃を与えることができるようにしている。また、針部5の吸引流路16の先端口16aは空気導入流路17の先端口17aよりも凍結乾燥組成物2から離れているので、針部5の吸引流路16に吸引される前に、容器1内での凍結乾燥組成物2の微粉末化をできるだけ進ませることができる。
【0114】
乾燥粉末吸入デバイスは次のようにして使用されるものである。まず、図7のように、蓋27を起こしてハウジング21の出し入れ口25を開くことにより、ホルダー部22が引き寄せられてハウジング21の出し入れ口25まで後退する。次に、容器1を口栓1aを前向きにしてホルダー部22に取り付ける。次に、図8のように蓋27を倒してハウジング21の出し入れ口25を閉じることにより、連結体39によってホルダー部22が針部5の方に押し込まれて容器1の口栓1aが針部5の先端に突き刺さり、針部5の吸引流路16及び空気導入流路17と容器1の内部とが連通する。次に、患者の吸気圧でマウスピース32の吸引口31から針部5の吸引流路16を介して容器1内の空気を吸引する。このとき容器1内は負圧になって逆止弁30が開き、外気が針部5の空気導入流路17を通って容器1内に外気が流入する。これにより、容器1内で空気衝撃が発生して凍結乾燥組成物2が微粒子化され、調製された微粒子が吸引流路16を通じて吸引口31から患者の肺器官内に送られる。使用後は、蓋27を起こしてホルダー部22をハウジング21の出し入れ口25まで引き寄せた後、レバー36で取り出し体35を起こして容器1をホルダー部22から取り出す。
【0115】
一方、マウスピース32の吸引口31から容器1内に空気を吹き込んでも、微粒子化した凍結乾燥組成物2の外部への排出は逆止弁30によって阻止される。
【0116】
前述したように患者の1回の吸入の空気流量は通常5〜300L/分の範囲にあるが、図4から図10に示す吸入デバイスは、かかる患者の呼吸能力に応じて、容器1の容量を約5mlに、空気導入流路17の口径(直径)を約2.5mmに、吸引流路16の口径(直径)を約2.5mmにそれぞれ設定したものである。これによって、患者の1回の吸入によって凍結乾燥組成物2の大部分が微粒子化して吸引口31から排出されるように設定される。
【0117】
乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型)の他の実施態様例を、図11から図13に示す。
【0118】
図11に示す乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型4)は、矢印のようにハウジング21の周方向に操作体48が回転自在に設けられている。図示しないホルダー作動部の機構部は、螺旋溝とこれに係合するフォロワーを備え、操作体48の回転運動によりホルダー部22を針部5の軸線方向への直線運動に変換させる。なお、操作体48の回転角度はほぼ180度である。
【0119】
図12及び図13に示す乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型5)は、ハウジング21に環状の操作体49が回転自在に取り付けられている。図示しないホルダー作動部の機構部は、送りねじを備え、操作体49の回転運動によりホルダー部22を針部5の軸線方向への直線運動に変換させる。ホルダー部22はハウジング21の後部から引き出し自在となっている。
【0120】
実施例1−4
限外濾過膜(ウルトラフリー15、Millipore製)を用いて、インターフェロン−γ(IFN-γ)原液(力価:1×107IU/ml)を脱塩した。得られた脱塩IFN-γを10万IUと下表1に示す量の各種担体を注射用蒸留水に溶解して全量を0.5mlに調製し、これを容器(胴径φ18mm)に入れ、棚状凍結乾燥機(LYOVAC GT-4, LEYBOLD社製)を用いて凍結乾燥した(実施例1―4及び比較例1及び2)。
【0121】
得られた非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)について、崩壊指数を算出した。
【0122】
また、該凍結乾燥組成物の有効粒子割合を算出して肺への送達効率を評価するために、乾燥粉末吸入デバイスを用いて容器に充填された凍結乾燥ケーキに空気速度約35m/sec及び空気流量約40ml/secで生じる空気衝撃を与えて、粉砕された微粒子状の凍結乾燥物をツインインピンジャー(Copley社製,UK)に直接排出した。その後,Stage 1とStage2の溶媒をそれぞれ回収して、Bioassay法により、Stage 1とStage 2の各溶媒中のIFN-γを定量した。得られたStage2中のIFN-γ量を噴射されたIFN-γの総量(Stage1+Stage2)で割った値を有効粒子割合(Fine Particle Fraction)として算出した。
【0123】
得られた凍結乾燥組成物のIFN-γの安定性を評価するために、凍結乾燥前のIFN-γ活性(100%)に対する凍結乾燥直後のIFN-γの残存活性(以下、凍結乾燥後残存活性という。)、及び凍結乾燥直後のIFN-γ活性(100%)に対する70℃で2週間保存した後のIFN-γの残存活性(以下、高温保存後残存活性という。)をBioassay法により測定した。
【0124】
各凍結乾燥組成物(実施例1−4及び比較例1及び2)の崩壊指数、有効粒子割合(%)、凍結乾燥後残存活性(%)及び高温保存後残存活性(%)を併せて表1に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
実施例1―4及び比較例1の凍結乾燥組成物はいずれも凍結乾燥後は、非粉末状のケーキ状塊(凍結乾燥ケーキ)であった。表1に示すように、実施例1−4及び比較例1の凍結乾燥組成物は、空気速度約35m/sec及び空気流量約40ml/secで生じる空気衝撃により、容器内で容易に微粒子化され、良好な有効粒子割合が得られた。よって、実施例1−4及び比較例1の凍結乾燥組成物は、経肺投与に適した粉末製剤に調製可能であることが明らかとなった。一方、担体としてプルランを配合した比較例2の凍結乾燥組成物は、上記空気衝撃により、崩壊せず、微粒子化することはできなかった。
【0127】
また、実施例1―4の凍結乾燥組成物は、親水性アミノ酸を配合していない比較例1の凍結乾燥組成物に比して、凍結乾燥処理によってIFN-γの活性が高い割合で保持されていることが確認された。更に、親水性アミノ酸を配合していない比較例1の凍結乾燥組成物は、極めて過酷な温度(70℃)条件下ではIFN-γが失活するのに対して、疎水性アミノ酸及び親水性アミノ酸を配合した実施例1―4の凍結乾燥組成物ではかかる温度条件下でもIFN-γの活性が高い割合で保持されていることが分かった。
【0128】
実施例5−11
限外濾過膜(ウルトラフリー15、Millipore製)を用いて、インターフェロン-γ(IFN-γ)原液(力価:1×107IU/ml)を脱塩した。得られた脱塩IFN-γを10万IU又は100万IUと下表2に示す量の各種担体を注射用蒸留水に溶解して全量を0.5mlに調製し、これを容器(胴径φ18mm)に入れ、棚状凍結乾燥機(LYOVAC GT-4, LEYBOLD社製)を用いて凍結乾燥した(実施例5−11)。
【0129】
得られた非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)について、崩壊指数を算出した。
【0130】
次に、得られた実施例5−11の非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)を含有する容器を空気噴射流路3の孔径をφ1.2mm、排出流路4の孔径をφ1.8mmに設計した噴射型の乾燥粉末吸入デバイス(空気量約20mlを供給できるベロー体10を有する。図1)に装着した。に装着した。このデバイスを人工肺モデルであるエアロブリーダーを装着したエアロザイザー(Amherst Process Instrument,Inc社製,USA)に取り付け,空気量約20mLを吸入デバイスから容器に導入することにより、上記凍結乾燥ケーキに空気速度約35m/sec及び空気流量約40ml/secで生じる空気衝撃を与えた。これによって、噴射型の乾燥粉末吸入デバイスの空気噴射流路3から空気が容器1内に導入され、その空気衝撃で、容器内の非粉末状の凍結乾燥組成物が微粒子化されるのが観察された。この微粒子の粒度分布を上記のエアロブリダー(測定条件、Breath Rate:60L/min, Breath Volume:1L,アクセラレーション:19)を装着したエアロサイザーを用いて測定した。そして該粒度分布から各凍結乾燥組成物の空気力学平均粒子径(μm±SD)を算出した。
【0131】
実施例1−4と同様の方法で、有効粒子割合(%)、凍結乾燥後残存活性(%)及び高温保存後残存活性(%)を評価した。
【0132】
得られた実施例5−11の凍結乾燥組成物は、いずれも凍結乾燥後は非粉末状のケーキ状塊(凍結乾燥ケーキ)であった。また、表2に示すように、実施例5−11の凍結乾燥組成物は、いずれも0.15以上の崩壊指数を備えており、空気速度約35m/sec及び空気流量約40ml/secで生じる空気衝撃により、容器内で容易に微粒子化され、空気力学平均粒子径が5ミクロン以下の微粒子となり、経肺投与に適した微粒子状の粉末製剤となった。また、いずれの凍結乾燥組成物においても良好な有効粒子割合が得られた。更に、実施例5−11の凍結乾燥組成物は、凍結乾燥後残存活性及び高温保存後残存活性が高く、該組成物の調製時及び高温保存条件下において、IFN-γの活性が高い割合で保持されることが確認された。
【0133】
【表2】
【0134】
実施例12−14
限外濾過膜(ウルトラフリー15、Millipore製)を用いて、インターフェロン-γ(IFN-γ)原液(力価:1×107IU/ml)を脱塩した。得られた脱塩IFN-γ100万IUと下表3に示す量の各種担体を注射用蒸留水に溶解して全量を0.5mlに調製し、これを容器(胴径φ18mm)に入れ、棚状凍結乾燥機(LYOVAC GT-4, LEYBOLD社製)を用いて凍結乾燥した(実施例12−14)。
【0135】
得られた非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)について、崩壊指数を算出した。
【0136】
実施例5−11と同様の方法で、各凍結乾燥組成物の空気力学平均粒子径(μm±SD)を算出した。更に、実施例1−4と同様の方法で、凍結乾燥後残存活性(%)及び高温保存後残存活性(%)を評価した。
【0137】
得られた実施例12−14の凍結乾燥組成物は、いずれも凍結乾燥後は非粉末状のケーキ状塊(凍結乾燥ケーキ)であった。また、表3に示すように、実施例12−14の凍結乾燥組成物は、いずれも0.25以上の崩壊指数を備えており、空気速度約35m/sec及び空気流量約40ml/secで生じる空気衝撃により、容器内で容易に微粒子化され、空気力学平均粒子径が5ミクロン以下の微粒子となり、経肺投与に適した微粒子状の粉末製剤となった。更に、実施例12−14の凍結乾燥組成物は、凍結乾燥後残存活性及び高温保存後残存活性が高く、該組成物の調製時及び高温保存条件下において、IFN-γの活性が高い割合で保持されることが確認された。
【0138】
【表3】
【0139】
実施例15
限外濾過膜(ウルトラフリー15、Millipore製)を用いて、インターフェロン-γ(IFN-γ)原液(力価:1×107IU/ml)を脱塩した。得られた脱塩IFN-γ100万IUと下表4に示す量の各種担体を注射用蒸留水とエタノールの混合溶液(エタノール濃度1重量%)に溶解して全量を0.5mlに調製し、これを容器(胴径φ18mm)に入れ、棚状凍結乾燥機(LYOVAC GT-4, LEYBOLD社製)を用いて凍結乾燥した(実施例15)。
【0140】
得られた実施例15の非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)について、崩壊指数を算出した。
【0141】
次に、得られた実施例15の非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)を含有する容器を空気噴射流路3の孔径をφ1.2mm、排出流路4の孔径をφ1.8mmに設計した噴射型の乾燥粉末吸入デバイス(空気量約50mlを供給できるベロー体10を有する。図1)に装着した。このデバイスを人工肺モデルであるエアロブリーダーを装着したエアロザイザー(Amherst Process Instrument,Inc社製,USA)に取り付け,空気量約50mLを吸入デバイスから容器に導入することにより、上記凍結乾燥ケーキに空気速度約89m/sec及び空気流量約100ml/secで生じる空気衝撃を与えた。これによって,噴射型の乾燥粉末吸入デバイスの空気噴射流路から空気が容器内に導入され、その空気衝撃で、容器内の非粉末状の凍結乾燥組成物が微粒子化されるのが観察された。この微粒子の粒度分布を上記のエアロブリーダー(測定条件、Breath Rate:60L/min, Breath Volume:1L,アクセラレーション:19)を装着したエアロサイザーを用いて測定した。そして該粒度分布から各凍結乾燥組成物の空気力学平均粒子径(μm±SD)を算出した。
【0142】
実施例1−4と同様の方法で、凍結乾燥後残存活性(%)及び高温保存後残存活性(%)を評価した。
【0143】
得られた実施例15の凍結乾燥組成物は、凍結乾燥後は非粉末状のケーキ状塊(凍結乾燥ケーキ)であった。また、表4に示すように、実施例15の凍結乾燥組成物は、0.05以上の崩壊指数を備えており、空気速度約89m/sec及び空気流量約100ml/secで生じる空気衝撃により、容器内で容易に微粒子化され、空気力学平均粒子径が5ミクロン以下の微粒子となり、経肺投与に適した微粒子状の粉末製剤となった。更に、実施例15の凍結乾燥組成物は、凍結乾燥後残存活性及び高温保存後残存活性が高く、該組成物の調製時及び高温保存条件下において、IFN-γの活性が高い割合で保持されることが確認された。
【0144】
【表4】
【0145】
実施例16
限外濾過膜(ウルトラフリー15、Millipore製)を用いて、インターフェロン-γ(IFN-γ)原液(力価:1×107IU/ml)を脱塩した。得られた脱塩IFN-γ100万IUと下表5に示す量の各種担体を注射用蒸留水に溶解して全量を0.5mlに調製し、これを容器(胴径φ18mm)に入れ、棚状凍結乾燥機(LYOVAC GT-4, LEYBOLD社製)を用いて凍結乾燥した(実施例16)。
【0146】
得られた実施例16の非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)について、崩壊指数を算出した。
【0147】
次に、得られた実施例16の非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)を含有する容器を空気噴射流路の孔径をφ4.0mm、排出流路の孔径をφ4.0mmに設計した自己吸入型の乾燥粉末吸入デバイスに装着した。このデバイスを人工肺モデルであるエアロブリーダー(Amherst Process Instrument,Inc.社、USA;測定条件:Breath rate 1L/min、Breath Volume 0.1L)を装着したエアロザイザー(Amherst Process Instrument,Inc.社、USA)に取り付け、上記凍結乾燥ケーキに空気速度約1m/sec及び空気流量約17ml/secで生じる空気衝撃を与えた。これによって、噴射型の乾燥粉末吸入デバイスの空気噴射流路から空気が容器内に導入され、その空気衝撃で、容器内の非粉末状の凍結乾燥組成物が微粒子化されるのが観察された。この微粒子の粒度分布を上記のエアロブリーダー(測定条件、Breath Rate:60L/min, Breath Volume:1L,アクセラレーション:19)を装着したエアロサイザーを用いて測定した。そして該粒度分布から各凍結乾燥組成物の空気力学平均粒子径(μm±SD)を算出した。
【0148】
実施例1−4と同様の方法で、凍結乾燥後残存活性(%)及び高温保存後残存活性(%)を評価した。
【0149】
得られた実施例16の凍結乾燥組成物は、凍結乾燥後は非粉末状のケーキ状塊(凍結乾燥ケーキ)であった。また、表5に示すように、実施例16の凍結乾燥組成物は、0.2以上の崩壊指数を備えており、空気速度約1m/sec及び空気流量約17ml/secで生じる空気衝撃により、容器内で容易に微粒子化され、空気力学平均粒子径が5ミクロン以下の微粒子となり、経肺投与に適した微粒子状の粉末製剤となった。更に、実施例16の凍結乾燥組成物は、凍結乾燥後残存活性及び高温保存後残存活性が高く、該組成物の調製時及び高温保存条件下において、IFN-γの活性が高い割合で保持されることが確認された。
【0150】
【表5】
【0151】
参考試験例1
凍結乾燥組成物に含まれる塩類が該組成物の空気衝撃による微粒子化に及ぼす影響を調べるために、下記の試験を行った。
【0152】
表6に示す量のインターフェロン-α(IFN-α)、各種アミノ酸及びクエン酸塩(クエン酸及びクエン酸ナトリム)を注射蒸留水に溶解して全量を0.5mlに調製し、これを容器(胴径φ18mm)に入れ、棚状凍結乾燥機(LYOVAC GT-4, LEYBOLD社製)を用いて凍結乾燥した(参考例1−5)。得られた非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)について、実施例1−4と同様の方法で、崩壊指数及び有効粒子割合(%)を評価した。
【0153】
得られた結果を表6に併せて示す。表6から分かるように、凍結乾燥組成物中のクエン酸塩の含有割合が低い程、崩壊指数が大きくなることが明らかとなった。また、凍結乾燥組成物中のクエン酸塩の配合割合が低い程、優れた有効粒子割合が得られることが確認された。
【0154】
【表6】
【0155】
参考試験例2
凍結乾燥組成物に含まれる塩類が該組成物の空気衝撃による微粒子化に及ぼす影響を調べるために、下記の試験を行った。
【0156】
表7に示す量のインターフェロン-γ(IFN-γ)、各種アミノ酸及びリン酸塩(リン酸二水素ナトリウム2水和物及びリン酸水素二ナトリウム12水和物)を注射蒸留水に溶解して全量を0.5mlに調製し、これを容器(胴径φ18mm)に充填し、棚状凍結乾燥機(LYOVAC GT-4, LEYBOLD社製)を用いて凍結乾燥した(参考例6−8)。得られた非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)について、実施例1−4と同様の方法で、崩壊指数及び有効粒子割合(%)を評価した。
【0157】
得られた結果を表7に併せて示す。表7から明らかなように、凍結乾燥組成物中のリン酸塩の含有割合が低い程、崩壊指数が大きく、有効粒子割合が高くなることが確認された。
【0158】
【表7】
【0159】
参考試験例1及び2の結果から、非粉末状の凍結乾燥組成物に含まれる塩類が該組成物の空気衝撃による微粒子化を阻害していることが明らかとなり、非粉末状の凍結乾燥組成物中に塩類の含有割合が低い程、崩壊指数が大きく、有効粒子割合が高くなることが確認された。即ち、空気衝撃によって優れた有効粒子割合の微粒子を調製可能な非粉末状の凍結乾燥組成物を得るには、凍結乾燥に供する溶液中の塩類濃度を低くするとよいことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】図1は、実施態様例1として記載する本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに使用される乾燥粉末吸入デバイス(噴射型1)を示す断面図である。なお、図中、矢印は外部エアーの流れを示す(以下、図2及び3において同じ)。
【0161】
また各符号の意味は下記の通りである:1.容器、1a.口栓、2.凍結乾燥組成物、3.空気噴射流路、4.排出流路、5.針部、6.吸入口、7.吸気部材、8.筒状安全カバー、9.空気圧送手段、10.ベロー体、11.吸込弁、12.吸込口、13.吐出弁、14.吐出口、15.接続口(以下、図2〜11において同じ)。
【図2】図2は、実施態様例2として記載する本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに使用される乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型1)を示す断面図である。また各符号の意味は下記の通りである:16.吸引流路、17.空気導入流路、18.吸入口、19.吸気部材(以下、図3において同じ)。
【図3】図3は、実施態様例3として記載する本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに使用される乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型2)を示す断面図である。
【図4】図4は、実施態様例4として記載する本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに使用される乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型3)を示す斜視図である。また各符号の意味は下記の通りである:21.ハウジング、22.ホルダー部、27.蓋、28.窓、32.マウスピース、32a.マウスピースのキャップ、39.連結体(以下、図5〜13において同じ)。
【図5】図5は、上記乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型3)の断面図である。また各符号の意味は下記の通りである:20.収容室、21A.ヒンジ、23.ガイド部、24.ホルダー作動部、26.ハウジング本体、29.導入口、30.逆止弁、31.吸引口、33.隔壁部、35.取り出し体、36.レバー、37.機構部、39.連結体、40.ヒンジ、41.ヒンジ(以下、図6〜13において同じ)。
【図6】図6の(a)は上記乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型3)の部分断面図、(b)は同乾燥粉末吸入デバイスの針部の側面図である。また各符号の意味は下記の通りである:16a.吸引流路16の先端口、17a.空気導入流路17の先端口、34.周壁部、42.第2導入路、42a.隔壁部33の導入溝、42b.周壁部34の導入溝、43.隙間、44.第2導入路42の一端、45.第2導入路42の他端、46.通気孔、47.壁(以下、図7〜13において同じ)。
【図7−10】図7〜10は、上記乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型3)の動作を説明する断面図である。符号25は出し入れ口を示す。
【図11】図11は、その他の実施形態の乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型4)の斜視図である。符号48は操作体を示す。
【図12−13】図12及び13は、その他の実施形態の乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型5)の斜視図である。符号49は操作体を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターフェロン−γを含有する経肺投与用の凍結乾燥組成物に関する。より詳細には、本発明はインターフェロン−γを安定に保持し、使用時に経肺投与に適した微粒子粉末(以下、経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤ともいう)に調製可能なインターフェロン−γ凍結乾燥組成物に関する。
【0002】
また、本発明は、当該凍結乾燥組成物を用いた経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに関する。より詳細には、本発明は容器に収容して提供される当該凍結乾燥組成物を使用時に微粒子化することによって経肺投与に適した製剤形態に調製し、そのまま吸入投与できる経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに関する。
【0003】
更に、本発明は、当該経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに関連する下記の発明を包含する。これらの発明の具体例としては、インターフェロン−γ凍結乾燥組成物から経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤を製造する方法、上記インターフェロン−γ含有凍結乾燥組成物を用いた吸入による経肺投与方法、並びに経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤を使用時に製造するためのインターフェロン−γ凍結乾燥組成物の使用などを挙げることができる。尚、本明細書において「微粒子」という用語は、粉末粒子を含む意味で用いられる。当該微粒子の形状については、制限されない。
【背景技術】
【0004】
一般的に、経肺投与に際しては、医薬品に含まれる有効成分の平均粒子径を10ミクロン以下、望ましくは5ミクロン以下にすることによって該有効成分を効率良く肺へ到達させることができることが知られている。このため、従来の経肺投与用吸入剤は、医薬品原体を予め経肺投与に適した粒子径にするために、スプレードライ法やジェットミル法などで微粒子を調製し、又は更に加工処理をして、これを吸入デバイスに充填して提供されている(例えば、国際公開第WO95/31479号パンフレット及び国際公開WO91/16038号パンフレット等参照。)。
【0005】
また、従来の経肺投与用乾燥粉末吸入剤の調製には、微粉末をスプレードライ装置またはジェットミル装置から回収して容器に小分け充填するという操作が必要である。このため,かかる操作に伴って、回収や充填ロスによる調製収率の低下及びそれに伴う原価コストの上昇、並びに製剤への夾雑物の混入等という問題が不可避的に生じてしまう。また、一般に粉末を微量で精度良く小分け充填することは困難である。従って、かかる粉末状での微量の小分け充填が必須であるスプレードライ法やジェットミル法によると必然的に高精度な微量粉末充填法の確立が必要とされる。事実、米国特許公報第5,826,633号には,微粉末を粉末充填するシステム、装置及び方法について詳細な内容が記載されている。
【0006】
インターフェロンは、抗ウイルス特性、免疫調節特性或いは細胞増殖抑制特性等の生物学的特性を有する経肺投与可能な薬効成分として知られている。該インターフェロンはタンパク質であるが故に、本来的に、熱やpH等の影響を受けて活性を喪失し易いという傾向がある。特に、各種のインターフェロンの中でもインターフェロン−γは、活性が損なわれやすく、安定性に乏しいという欠点を有している。故に、インターフェロン−γを薬効成分として含有する経肺投与用乾燥粉末吸入剤は、上記従来の経肺投与用乾燥粉末吸入剤の問題点に加えて、調製時に或いは経時的にインターフェロン−γの活性が低下するという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の目的は、上記のような従来の種々の問題を解決することである。詳細には、本発明は、インターフェロン−γを安定に保持し、使用時に容器内で微粒子に調製可能な経肺投与用のインターフェロン−γ凍結乾燥組成物を提供することを目的とするものである。
【0008】
更に、本発明は、容器内に1回投与量の有効成分が予め小分け収容された経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を、該容器内で使用時に経肺投与に適した粒子径に微粒子化し,そのまま吸入による経肺投与に使用できる新規な製剤システム並びに投与システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、(i)疎水性アミノ酸、疎水性アミノ酸のジペプチド、疎水性アミノ酸のトリペプチド、疎水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の疎水性安定化剤;親水性アミノ酸、親水性アミノ酸のジペプチド、親水性アミノ酸のトリペプチド、親水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の親水性安定化剤;並びにインターフェロン−γを含有する、(ii)非粉末のケーキ状形態を有する、(iii)崩壊指数が0.015以上である、及び(iv)少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって、平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合(fine particle fraction)が10%以上の微粒子になる、という特性を備えるインターフェロン−γ凍結乾燥組成物は、容器内に収納されたままで比較的弱い空気衝撃によって微粒子化できること、及び該組成物中のインターフェロン−γは優れた安定性を備えていることを見出した。
【0010】
本発明者らは更に研究を重ねることによって、容器内に一回投与量収容された上記インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を、該組成物に所定の空気衝撃を与えることができるように、容器内に所定の速度と流量で空気を導入する手段と微粒子化された粉末組成物を容器から排出する手段とを備えたデバイスと組み合わせて用いることによって,使用者において使用時(特に吸入時)に且つ簡単に、凍結乾燥された非粉末製剤を経肺投与に適した微粒子状態に調製でき,この微粒子をそのまま吸入服用できることを見出した。
【0011】
本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
(I)本発明には下記に掲げる経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物が包含される。
項1. 下記(i)〜(iv)の特性を有する経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物:
(i)疎水性アミノ酸、疎水性アミノ酸のジペプチド、疎水性アミノ酸のトリペプチド、疎水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の疎水性安定化剤;親水性アミノ酸、親水性アミノ酸のジペプチド、親水性アミノ酸のトリペプチド、親水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の親水性安定化剤;並びにインターフェロン−γを含有する、
(ii)非粉末のケーキ状形態を有する、
(iii)崩壊指数が0.015以上である、及び
(iv)少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって、平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子になる。
項2. 親水性安定化剤が、塩基性アミノ酸、中性ヒドロキシアミノ酸、これらのアミノ酸のジペプチド、これらのアミノ酸のトリペプチド、これらのアミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項3. 親水性安定化剤が、塩基性アミノ酸、塩基性アミノ酸のジペプチド、塩基性アミノ酸のトリペプチド、塩基性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項4. 親水性安定化剤が、中性ヒドロキシアミノ酸、中性ヒドロキシアミノ酸のジペプチド、中性ヒドロキシアミノ酸のトリペプチド、中性ヒドロキシアミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項5. 親水性安定化剤が、アルギニン、リジン、ヒスチジン、スレオニン、これらのアミノ酸のジペプチド、これらのアミノ酸のトリペプチド、これらのアミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項6.疎水性安定化剤が疎水性アミノ酸、疎水性アミノ酸のジペプチド、疎水性アミノ酸のトリペプチド、疎水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項7.疎水性安定化剤が、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項8. 疎水性安定化剤100重量部に対して、親水性安定化剤を1〜500重量部含有する、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項9. 崩壊指数が0.02以上である、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項10. 崩壊指数が0.015〜1.5である、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項11. 少なくとも2m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子になる、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項12. 少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも20ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子になる、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項13. 空気の衝撃を受けることによって、平均粒子径が5ミクロン以下または有効粒子割合が20%以上の微粒子になる、項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
項14. 下記(i)〜(iv)の特性を有する項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物:
(i) 疎水性アミノ酸、疎水性アミノ酸のジペプチド、疎水性アミノ酸のトリペプチド、疎水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の疎水性安定化剤;親水性アミノ酸、親水性アミノ酸のジペプチド、親水性アミノ酸のトリペプチド、親水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の親水性安定化剤;並びにインターフェロン−γを含有する、
(ii) 非粉末のケーキ状形態を有する、
(iii) 崩壊指数が0.015〜1.5の範囲にある、及び
(iv) 1〜300m/secの範囲にある空気速度及び17ml/sec〜15L/secの範囲の空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって、平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子になる。
【0012】
(II)また、本発明には下記に掲げる経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムが包含される。
項15.(1) 1回投与量のインターフェロン−γを含有する項1乃至14のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を収容した容器と、
(2) 上記容器内の凍結乾燥組成物に上記の空気衝撃を与えることのできる手段、及び微粒子化された粉末状の凍結乾燥組成物を排出する手段を備えたデバイスを組み合わせて用いられる経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システム。
項16. 吸入時に、上記容器と上記デバイスとが組み合わされて用いられる項15に記載の経肺投与用乾燥粉末吸入システム。
項17. デバイスとして
i) 容器に非粉末状態で収容された凍結乾燥組成物を微粒子化し、得られた微粒子を被験者に吸入させるために用いられるデバイスであって、
空気噴射流路を有する針部と、排出流路を有する針部と、前記針部の空気噴射流路に空気を送るための空気圧送手段と前記針部の排出流路に連通する吸入口とを備え、
前記容器を密封する口栓に前記針部を突き刺して空気噴射流路及び排出流路と前記容器内部とを連通し、前記空気圧送手段によって前記空気噴射流路を通じて前記容器内に空気を噴射することにより、噴射空気の衝撃で前記凍結乾燥組成物を微粒子化し、得られた微粒子を前記排出流路を通じて吸入口から排出させるように構成したことを特徴とする経肺投与用の乾燥粉末吸入デバイスまたは、
ii) 容器内に非粉末状態で収容された凍結乾燥組成物を微粒子化し、得られた微粒子を被験者に吸入させるために用いられるデバイスであって、
吸引流路を有する針部と、空気導入流路を有する針部と、前記吸引流路に連通する吸入口とを備え、
前記容器を密封する口栓に前記針部を突き刺した状態で、被験者の吸気圧で前記吸入口から前記容器内の空気を吸入すると共に負圧となった容器内に前記空気導入流路を通じて前記容器内に空気を流入させることにより、流入した空気の衝撃によって前記凍結乾燥組成物を微粒子化して、得られた微粒子を前記吸引流路を通じて吸入口から排出させるように構成したことを特徴とする経肺投与用の乾燥粉末吸入デバイスを用いる項15に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システム。
項18. デバイスとして
空気衝撃を受けることによって微粒子化する非粉末のケーキ状形態の凍結乾燥組成物が収容され且つ口栓で密封された容器を保持するためのホルダー部と、
該容器内の前記凍結乾燥組成物に空気衝撃を与え、該空気衝撃により微粒子化された粉末状の前記凍結乾燥組成物を前記容器内から吸引するための手段と、を備えた乾燥粉末吸入デバイスであって、
前記凍結乾燥組成物を前記容器内から吸引するための吸引流路、及び外気を前記容器内に導入するための空気導入流路を有する針部と、
前記針部の前記吸引流路と連通する吸引口部と、
前記ホルダー部を前記針部の軸線方向にガイドするためのガイド部と、
前記ホルダー部に前記容器が保持された際に、当該容器を前記針部の針先に向けて前進させて容器の口栓を前記針先に突き刺し、また前記針先から後退させて容器の口栓を前記針先から引き離すための機構部、及び該機構部を操作する操作体を有し、該機構部は容器の口栓を前記針部に突き刺すのに要する力よりも小さい力で前記操作体を操作できるように構成されているホルダー作動部と、
前記針部を支持し、且つ、前記吸引口部と前記ガイド部と前記ホルダー作動部を設けるためのハウジングと、
を備え、
前記口栓を前記針部に突き刺して前記針部の吸引流路及び空気導入流路と前記容器内とを連通させると共に空気導入流路の先に前記凍結乾燥組成物を位置させた状態において、被験者の吸気圧で前記吸引口部から前記容器内の空気を吸入して、空気導入流路を通じて前記容器内に空気を流入させることにより、前記容器内の凍結乾燥組成物に空気衝撃を与えることを特徴とする経肺投与用の乾燥粉末吸入デバイスを用いる項17に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システム。
項19. (1)項14に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を収容した容器と、
(2) 上記容器内の凍結乾燥組成物に上記の空気衝撃を与えることのできる手段、及び微粒子化された粉末状の凍結乾燥組成物を排出する手段を備えたデバイスとを組み合わせて用いられる、項15に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システム。
【0013】
(III)更に、本発明には下記に掲げる経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法が包含される。
項20. 1回投与量のインターフェロン−γを含有する項1乃至14のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を収容した容器に、上記容器内の凍結乾燥組成物に少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気衝撃を与えることのできるデバイスを用いて、当該空気衝撃を備えた空気を導入し、
それによって上記凍結乾燥組成物を平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子とする,経肺投与用乾燥粉末製剤の製造方法。
項21. 調製される微粒子の平均粒子径が5ミクロン以下であるか、または有効粒子割合が20%以上である、項20に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
項22. 容量が0.2〜50mlの容器内で凍結乾燥組成物を微粒子化する方法である、項20に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
項23. 容器内の凍結乾燥組成物に少なくとも2m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を与えることのできる手段を有するデバイスを用いて、当該空気衝撃を備えた空気を凍結乾燥組成物を収容した容器に導入することによって行う、項20に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
項24. 容器内の凍結乾燥組成物に1〜300m/secの範囲にある空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を与えることのできる手段を有するデバイスを用いて、当該空気衝撃を備えた空気を凍結乾燥組成物を収容した容器に導入することによって行う、項20に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
項25. 容器内の凍結乾燥組成物に少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも20ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を与えることのできる手段を有するデバイスを用いて、当該空気衝撃を備えた空気を凍結乾燥組成物を収容した容器に導入することによって行う、項20に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
項26. 容器内の凍結乾燥組成物に少なくとも1m/secの空気速度及び17ml/sec〜15L/secの範囲の空気流量を有する空気の衝撃を与えることのできる手段を有するデバイスを用いて、当該空気衝撃を備えた空気を凍結乾燥組成物を収容した容器に導入することによって行う、項20に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
項27. 1回投与量のインターフェロン−γを含有する項14に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を収容した容器に、上記容器内の凍結乾燥組成物に少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気衝撃を与えることのできるデバイスを用いて、当該空気衝撃を備えた空気を導入し、
それによって上記凍結乾燥組成物を平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子とする、項20に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
項28. 項15乃至19のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムを使用することによって経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を微粒子化することを特徴とする、項20に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
【0014】
(IV)更に、本発明には、上記の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を用いることを特徴とする経肺投与方法が包含される。当該経肺投与方法は,吸入投与時に使用者(患者)において,非粉末状態で容器内に収容された凍結乾燥組成物を、使用時に経肺投与可能な微粒子化し、微粒子形態の粉末状製剤を吸入投与することのできる方法である。当該投与方法には下記の態様が包含される。
項29. 1回投与量のインターフェロン−γを含有する項1乃至14のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物に、使用時に少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気衝撃を与えることによって平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上になるように微粒子化し、
該微粒子化された粉末を使用者に吸入により投与させることを含む、経肺投与方法。
項30. 経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物が容器内に収容されており、微粒子化された粉末が、当該容器内の凍結乾燥組成物に上記の空気衝撃を与えることのできる手段と微粒子化された粉末状の凍結乾燥組成物を容器から排出する手段を備えたデバイスを用いて調製されるものである、項29に記載の経肺投与方法。
項31. 項15乃至19のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムを使用して、微粒子化されたインターフェロン−γ乾燥粉末を使用者に吸入により投与させることを含む、項29に記載の経肺投与方法。
項32. 空気速度が1〜250m/secである、項29に記載の経肺投与方法。
項33. 空気流量が20ml/sec〜10L/secである、項29に記載の経肺投与方法。
(V)更に、本発明には下記に掲げるインターフェロン−γ凍結乾燥組成物の使用が包含される。
項34. 項1乃至14のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を、平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子に粉末化して用いる、該凍結乾燥組成物の吸入による経肺投与への使用。
項35. 項1乃至14のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物の、吸入による経肺投与用のインターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造のための使用。
【0015】
(I)経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物
本発明の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物(以下、単に、経肺投与用凍結乾燥組成物ということもある。)は、インターフェロン−γ、疎水性安定化剤及び親水性安定化剤を含有するものである。
【0016】
本発明に使用するIFN−γは、その由来については制限されない。該IFN−γには、例えば、細胞培養技術を用いて製造された天然型IFN−γや組換えDNA技術によって製造されたIFN−γ(IFN−γ1a、IFN−γ1b等、例えば特開平7-173196号公報、特開平9-19295号公報等の記載のIFN−γ)等が含まれる。
【0017】
本発明において、疎水性安定化剤としては、疎水性アミノ酸、疎水性アミノ酸のジペプチド、疎水性アミノ酸のトリペプチド、疎水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩が挙げられる。
【0018】
本発明において、疎水性アミノ酸としては、具体的には、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン等のタンパク質構成アミノ酸を挙げることができる。疎水性アミノ酸のジペプチドとは、上記疎水性アミノ酸を少なくとも1つ有するジペプチドであり、例えばロイシル−バリン、イソロイシル−バリン、イソロイシル−ロイシン、ロイシル−グリシン等を例示することができる。また疎水性アミノ酸のトリペプチドとは、上記疎水性アミノ酸を少なくとも1つ有するトリペプチドであり、例えばイソロイシル−ロイシル−バリン、ロイシル−グリシル−グリシン等を例示できる。疎水性アミノ酸の誘導体としては、具体的にはL−ロイシンアミド塩酸塩、L−イソロイシル−β−ナフチルアミド臭化水素酸塩、L−バリン−β−ナフチルアミド等の疎水性アミノ酸のアミド等を挙げることができる。さらに塩としては、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属やカルシウムやマグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩;燐酸、塩酸及び臭化水素酸等の無機酸やスルホン酸等の有機酸との付加塩等を例示することができる。
【0019】
上記疎水性安定化剤として、好ましくはバリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン及びこれらの塩が挙げられる。
【0020】
これらの疎水性安定化剤は、単独で又は2種以上を任意に組み合わせて用いることができる。
【0021】
本発明において、親水性安定化剤としては、親水性アミノ酸、親水性アミノ酸のジペプチド、親水性アミノ酸のトリペプチド、親水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩が挙げられる。
【0022】
本発明に用いられる親水性アミノ酸は、親水性の側鎖を有するアミノ酸であれば、タンパク質構成アミノ酸であるか否かの別を問わず、いずれのアミノ酸であってもよい。親水性アミノ酸としては、具体的には、アルギニン、リジン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸;セリン、スレオニン等の中性ヒドロキシアミノ酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸;アスパラギン、グルタミン等のアミド型アミノ酸;グリシン、アラニン、システイン、チロシン等のその他のアミノ酸等が挙げられる。尚、ここでいう塩基性アミノ酸とは、塩基性の側鎖を有するアミノ酸のことであり、また中性ヒドロキシアミノ酸とは側鎖にヒドロキシル基(水酸基)を有するアミノ酸のことである。親水性アミノ酸のジペプチドとは、同一又は異なる2つの親水性アミノ酸を有するジペプチドである。また親水性アミノ酸のトリペプチドとは、同一又は異なる3つの親水性アミノ酸を有するトリペプチドである。親水性アミノ酸の誘導体としては、例えば親水性アミノ酸のアミド等を挙げられる。さらに塩としては、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属やカルシウムやマグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩;燐酸、塩酸及び臭化水素酸等の無機酸やスルホン酸等の有機酸との付加塩等が例示される。具体的には、塩酸アルギニン、リジン一塩酸塩、リジン二塩酸塩、ヒスチジン塩酸塩、ヒスチジン二塩酸塩の親水性アミノ酸の塩等が挙げられる。
【0023】
好ましい親水性安定化剤としては、例えば、塩基性アミノ酸、中性ヒドロキシアミノ酸、これらのアミノ酸のジペプチド、これらのアミノ酸のトリペプチド、これらのアミノ酸の誘導体及びこれらの塩;塩基性アミノ酸、塩基性アミノ酸のジペプチド、塩基性アミノ酸のトリペプチド、塩基性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩;中性ヒドロキシアミノ酸、中性ヒドロキシアミノ酸のジペプチド、中性ヒドロキシアミノ酸のトリペプチド、中性ヒドロキシアミノ酸の誘導体及びこれらの塩;アルギニン、リジン、ヒスチジン、スレオニン、これらのアミノ酸のジペプチド、これらのアミノ酸のトリペプチド、これらのアミノ酸の誘導体及びこれらの塩;アルギニン、リジン、ヒスチジン、スレオニン及びこれらの塩;アルギニン、リジン、ヒスチジン及びこれらの塩;並びにアルギニン及びその塩が挙げられる。
【0024】
これらの親水性安定化剤は、1種単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0025】
経肺投与用凍結乾燥組成物中のIFN−γの含有量は、適用疾患、期待される効果等に応じて適宜設定することができる。IFN−γの含有割合としては、例えば、該組成物中に0.01〜99.8重量%、好ましくは0.1〜95重量%、更に好ましくは0.1〜90重量%となる範囲が挙げられる。
【0026】
経肺投与用凍結乾燥組成物中の疎水性安定化剤の含有量は、IFN−γの含有割合、使用する疎水性安定化剤の種類、該組成物の崩壊指数等に応じて適宜設定することができる。疎水性安定化剤の含有割合として、例えば、該組成物中に0.1〜99.89重量%、好ましくは1〜95重量%、更に好ましくは5〜90重量%程度となる範囲が挙げられる。
【0027】
経肺投与用凍結乾燥組成物中の親水性安定化剤の含有割合は、IFN−γの配合割合、疎水性安定化剤の含有量、使用する親水性安定化剤の種類等に応じて異なり、一律に規定することはできないが、例えば該組成物中に0.1〜99.89重量%、好ましくは1〜90重量%、更に好ましくは2〜80重量%、更により好ましくは5〜70重量%となる範囲が挙げられる。
【0028】
また、経肺投与用凍結乾燥組成物中に含まれる疎水性安定化剤と親水性安定化剤の割合としては、疎水性安定化剤100重量部に対して、親水性安定化剤の配合割合が1〜500重量部、好ましくは2〜400重量部、更に好ましくは5〜300重量部、更により好ましくは8〜250重量部、特に好ましくは10〜200重量部程度が挙げられる。
【0029】
また、経肺投与用凍結乾燥組成物の単回投与量(1回投与量)中に含まれるIFN−γの量としては、例えば1万〜5000万IU(国際単位)、好ましくは10万〜4000万IU、更に好ましくは10万〜3000万IUである。
【0030】
経肺投与用凍結乾燥組成物の単回投与量中に含まれる疎水性安定化剤の量は、0.01〜10mg、好ましくは0.1〜5mg、更に好ましくは0.2〜0.5mgの範囲内である。
【0031】
経肺投与用凍結乾燥組成物の単回投与量中に含まれる親水性安定化剤の量は、0.01〜10mg、好ましくは0.1〜5mg、更に好ましくは0.1〜2.5mgの範囲内である。
【0032】
このように、疎水性安定化剤及び親水性安定化剤を経肺投与用凍結乾燥組成物に配合することによって、該組成物に後述する所望の崩壊指数を充足させると供に、更に該組成物中のIFN−γに優れた安定性を付与することが可能となる。
【0033】
尚、本発明の経肺投与用凍結乾燥組成物には、最終調製物が後述する崩壊指数を充足するものであれば、上記成分に加えて、更にブドウ糖等の単糖類;ショ糖,麦芽糖,乳糖,トレハロース等の二糖類;マンニット等の糖アルコール;シクロデキストリン等のオリゴ糖類;デキストラン40やプルラン等の多糖類;ポリエチレングリコール等の多価アルコール;カプリン酸ナトリウム等の脂肪酸ナトリウム;ヒト血清アルブミン;無機塩;ゼラチン;界面活性剤;緩衝剤等を含むことができる。界面活性剤には、通常医薬品に用いられる界面活性剤であれば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の別を問わず、広く用いることができる。好適には、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Tween型界面活性剤)、ソルビタントリオレート等の非イオン性界面活性剤である。
【0034】
また、本発明の経肺投与用凍結乾燥組成物は、非粉末のケーキ状の形態を有する凍結乾燥組成物である。ここで、非粉末のケーキ状の凍結乾燥組成物とは、溶液を凍結乾燥して得られる乾燥固体であり、通常、凍結乾燥ケーキと呼ばれるものを意味する。但し、凍結乾燥工程あるいはその後のハンドリングでケーキにひびが入ったり、数個の大きな塊になったり、一部が破損して粉状になったものも、本発明の効果を損なわないことを限度として本発明が対象とする非粉末状の凍結乾燥組成物に包含される。
【0035】
更に、本発明の経肺投与用凍結乾燥組成物は、0.015以上の崩壊指数を備えるものである。ここでいう崩壊指数は、凍結乾燥組成物について下記の方法に従って測定することによって得ることができる当該凍結乾燥組成物固有の値である:
<崩壊指数>
胴径φ18mmあるいは胴径φ23mmの容器に、対象とする凍結乾燥組成物を構成する目的の成分を含有する溶液を0.2〜0.5mlの範囲で液充填して、それを凍結乾燥する。次いで得られた非粉末状の凍結乾燥組成物に,n−ヘキサンを容器の壁を通じて静かに1.0ml滴下する。これを3000rpmで約10秒間攪拌させた混合液を光路長1mm,光路幅10mmのUVセルに投入し,速やかに分光光度計を用いて測定波長500nmで濁度を測定する。得られた濁度を凍結乾燥組成物を構成する成分の総量(重量)で割り、得られた値を崩壊指数と定義する。
【0036】
ここで本発明の経肺投与用凍結乾燥組成物が備える崩壊指数の下限値としては、上記の0.015、好ましくは0.02、より好ましくは0.03、さらに好ましくは0.04、更により好ましくは0.05、特に好ましくは0.1又は0.15を挙げることができる。また本発明の経肺投与用凍結乾燥組成物が備える崩壊指数の上限値としては特に制限されないが、1.5、好ましくは1、より好ましくは0.9、さらに好ましくは0.8、更により好ましくは0.7を挙げることができる。好適には本発明の経肺投与用凍結乾燥組成物は、0.015以上であることを限度として、上記から任意に選択される下限値と上限値から構成される範囲内にある崩壊指数を有することが望ましい。例えば、崩壊指数の範囲として具体的には0.015〜1.5、0.02〜1.0、0.03〜0.9、0.04〜0.8、0.05〜0.7、0.1〜0.7、0.15〜1.5、0.15〜1、及び0.15〜0.7が例示される。
【0037】
更に、本発明の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物は、前記範囲の崩壊指数と非粉末状のケーキ状の形態の形態を備えており、上記崩壊指数で表現される該乾燥組成物の固有の性質に基づいて、少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって、平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子になるという特性を備えるものである。
【0038】
ここで、微粒子の平均粒子径とは、経肺用吸入剤に関する当業界において通常採用される平均粒子径を意味するものである。具体的には、平均粒子径は、幾何学的な粒子径ではなく、空気力学的な平均粒子径(mass median aerodynamic diameter, MMAD)を示すものである。当該空気力学的平均粒子径は,慣用方法によって求めることができる。例えば、空気力学的平均粒子径は、人工肺モデルであるエアロブリザーを装着した乾式粒度分布計(Amherst Process Instrument, Inc社製,USA,),ツインインピンジャー(G.W. Hallworth and D.G. Westmoreland:J.Pharm.Pharmacol., 39, 966-972(1987),米国特許公報第6153224号)、マルチステージリギッドインピンジャー,マープルミラーインパクター,アンダーセンカスケードインパクター等で測定される。また,B.Olssonらは,空気力学的平均粒子径が5μm以下の粒子の割合が増加するにつれて,肺へのデリバリーが増加することが報告している(B.Olsson et al:Respiratory Drug Delivery V,273-281(1996))。このような肺にデリバリーできる量を推定する方法として,ツインインピンジャー,マルチステージリギッドインピンジャー,マープルミラーインパクター,アンダーセンカスケードインパクター等で測定される有効粒子割合(Fine Particle Fraction)やFine Particle Dose等がある。
【0039】
好ましい経肺投与用凍結乾燥組成物は、少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって、平均粒子径が10ミクロン以下、好ましくは5ミクロン以下、または有効粒子割合が10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上、特に好ましくは35%以上の微粒子になるものである。
【0040】
尚、経肺投与用凍結乾燥組成物に与える空気衝撃は、前述するように1m/sec以上の空気速度及び17ml/sec以上の空気流量を有する空気によって生じる衝撃であれば特に制限されない。具体的には、上記の空気衝撃としては、1m/sec以上、好ましくは2m/sec以上、より好ましくは5m/sec以上、よりさらに好ましくは10m/sec以上の空気速度によって生じる衝撃が挙げられる。ここで空気速度の上限としては、特に制限されないが、通常300m/sec、好ましくは250m/sec、より好ましくは200m/sec、よりさらに好ましくは150m/secを挙げることができる。なお、空気速度は、上記から任意に選択される下限と上限から構成される範囲内にあれば特に制限されないが、具体的には1〜300m/sec、1〜250m/sec、2〜250m/sec、5〜250m/sec、5〜200m/sec、10〜200m/sec、10〜150m/secの範囲を挙げることができる。
【0041】
また、上記の空気衝撃としては、通常17ml/sec以上、好ましくは20ml/sec以上、より好ましくは25ml/sec以上の空気流量によって生じる衝撃を例示することができる。ここで空気流量の上限は、特に制限されないが、900L/min、好ましくは15L/sec、より好ましくは10L/sec、さらに好ましくは5L/sec、さらにより好ましくは4L/sec、特に好ましくは3L/secである。より具体的には、空気流量は上記から任意に選択される下限と上限から構成される範囲内にあればよく、特に制限されないが、かかる範囲としては例えば17ml/sec〜15L/sec、20ml/sec〜10L/sec、20ml/sec〜5L/sec、20ml/sec〜4L/sec、20ml/sec〜3L/sec、25ml/sec〜3L/secを挙げることができる。
【0042】
本発明の経肺用凍結乾燥組成物は、IFN−γ、疎水性安定化剤及び親水性安定化剤を含む溶液を調製し、IFN−γの単回若しくは数回投与の有効量に相当する量の該溶液を容器に入れ、そのまま凍結乾燥することによって製造される。かかる経肺用凍結乾燥組成物の製造には、用時溶解型の注射剤等の凍結乾燥製剤(凍結乾燥組成物)の製造に一般的に用いられる製造方法を用いることができる。
【0043】
タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、遺伝子、核酸、低分子薬物等の各種活性成分、及び必要に応じてアミノ酸、糖類等の担体を含有する非粉末のケーキ状形態を有する凍結乾燥組成物は、該組成物中に含まれる塩類が少ない程、少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃で平均粒子径がより小さい又は有効粒子割合がより高い微粒子に調製することが可能となる。故に、上記空気衝撃で平均粒子径がより小さく又は有効粒子割合がより高くなるように微粒子化できる経肺投与用凍結乾燥組成物を調製するには、凍結乾燥処理に供せられる溶液中の塩類の濃度を低くすることが好ましい。例えば、使用する活性成分の精製粉末又は溶液中に保存剤又は安定化剤等として塩類が含まれている場合であれば、該生理活性成分の精製粉末又は溶液を予め脱塩処理して使用することによって、或いは凍結乾燥処理に供する溶液自体を脱塩処理することによって、凍結乾燥処理に供せられる溶液中の塩類の濃度を低くすることができる。脱塩処理する方法は、制限されず、例えば限外濾過法、沈殿法、イオン交換法、減圧透析法等を挙げることができる。
【0044】
上記空気衝撃で平均粒子径がより小さく又は有効粒子割合がより高くなるように微粒子化できる経肺投与用凍結乾燥組成物を調製するには、凍結乾燥処理に供せられる溶液中に少量のエタノールを添加したり、凍結乾燥時に、結晶が大きくならないように条件を適宜設定したりする方法がある。
【0045】
本発明の経肺用凍結乾燥組成物の製造において、例えば、容器中にIFN−γの単回投与量が含まれるように、経肺用凍結乾燥組成物を調製することによって、経肺投与する直前に該容器中で該組成物をそのまま経肺投与に適した粒径に微粉化して、微粉化された該組成物を該容器からそのまま吸入(経肺投与)することが可能となる。
【0046】
本発明の経肺投与用凍結乾燥組成物の単回投与量は、対象とする疾患、期待される効果、含有するIFN−γの種類等に応じて適宜設定すればよい。例えば、該組成物の単回投与量としては、0.1〜20mg、好ましくは0.2〜15mg、更に好ましくは0.3〜10mg、更により好ましくは0.4〜8mg、特に好ましくは0.5〜5mgである。
【0047】
斯くして得られた経肺用凍結乾燥組成物は、少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃によって経肺投与に適した微粉末状に調製できる。このように、空気衝撃によって本発明の経肺用凍結乾燥組成物を微粉化し、微紛化された該組成物を吸入(経肺投与)するためのデバイスとしては、例えば、容器内の凍結乾燥組成物に少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を与えることのできる手段、及び微粒子化された粉末状の凍結乾燥組成物を排出する手段を備えた乾燥粉末吸入デバイスを挙げることができる。故に、単回投与量のIFN−γを含有する上記経肺投与用凍結乾燥組成物を収容した容器に、上記デバイスを組み合わせて使用することによって、使用者が非粉末状態で提供される上記経肺投与用凍結乾燥組成物を使用時(吸入時)に、経肺投与に適した剤型である平均粒子径10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子からなる粉末製剤に自ら調製し、かつ投与(服用)することが可能となる
(II)経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システム
本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムは、上記経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を収容した容器と、該容器中の凍結乾燥組成物に上記空気衝撃を付与でき、更に生じた微粒子を排出できる乾燥粉末吸入デバイスとを組み合わせてなるものである。
【0048】
本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに使用される上記乾燥粉末吸入デバイスについて以下に記載する。
【0049】
本発明で用いられる乾燥粉末吸入デバイスは、(1)上記凍結乾燥組成物に、それを微粒子化し得る程度の空気衝撃を与えることのできる手段、及び(2)微粒子化された粉末状の凍結乾燥組成物を使用者に吸入投与することのできる手段を備えることによって、凍結乾燥組成物の微粒子化と使用者への吸入投与の両方を実施可能とするものである。なお、上記(1)の手段は上記凍結乾燥組成物を収容した容器内に、上記空気衝撃を備えた空気を導入する手段ということもできる。また(2)は容器内で微粒子化された粉末製剤を容器から排出する手段ということもできる。本発明においては、かかる手段を備えるものであれば、従来公知のものまた将来開発されるもののいずれのデバイスも使用することができる。
【0050】
(1)の手段は、具体的には、容器に収容された凍結乾燥組成物に上記の空気衝撃を与えることのできる空気を、該容器に導入する手段によって実現することができる。なお当該(1)の手段には、容器内の凍結乾燥組成物に少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気衝撃を与えることのできる手段であることもできる。(2)の手段によって若しくは該手段を介して、経肺投与に適した形態に調製された乾燥粉末製剤を患者などの使用者に吸入投与することができる。なお、(2)の手段には、さらに組成物が微粒子化または分散されるような、例えば部屋や流路が設けられていてもよい。
【0051】
当該乾燥粉末吸入デバイスには、下記(a)に掲げる噴射型の乾燥粉末吸入デバイスと(b)に掲げる自己吸入型の乾燥粉末吸入デバイスが含まれる。
(a−1) 容器に非粉末状態で収容された凍結乾燥組成物を微粒子化し、吸入に用いられるデバイスであって、
空気噴射流路を有する針部と、排出流路を有する針部と、前記針部の空気噴射流路に空気を送るための空気圧送手段、排出流路に連通する吸入口とを備え、
前記容器を密封する口栓に前記針部を突き刺して空気噴射流路及び排出流路と前記容器内部とを連通し、前記空気圧送手段によって前記空気噴射流路から前記容器内に空気を噴射することにより、噴射空気の衝撃で前記凍結乾燥組成物を微粒子化して、得られた微粒子を前記排出流路を通じて吸入口から排出するように構成したことを特徴とする乾燥粉末吸入デバイス。
(a−2) 前記空気圧送手段は手動式であって、吸込弁付き吸込口と吐出弁付き吐出口とを有するベロー体を備え、吸込弁を閉じた状態で該ベロー体を縮めて吐出弁を開放することにより、吐出口に連通した針部の空気噴射流路を通じて前記ベロー体内の空気を容器内に圧送し、前記吐出弁を閉じ吸込弁を開いた状態で弾性復元力によって前記ベロー体を伸張させることにより前記ベロー体内に空気を導入するように構成されたことを特徴とする(a−1)に記載の乾燥粉末吸入デバイス。
(a−3) 一本の針部に前記空気噴射流路及び前記排出流路を形成したことを特徴とする上記(a−1)又は(a−2)に記載の乾燥粉末吸入デバイス。
【0052】
(b)自己吸入型デバイス:Passive powder inhaler
(b−1) 容器内に非粉末状態で収容された凍結乾燥組成物を微粒子化し、吸入に用いられるデバイスであって、
吸引流路を有する針部と、空気導入流路を有する針部と、前記吸引流路に連通する吸入口とを備え、
前記容器を密封する口栓に前記針部を突き刺した状態で、使用者の吸気圧で前記吸入口から前記容器内の空気を吸入すると共に負圧となった容器内に前記空気導入流路を通じて前記容器内に空気を流入させることにより、流入した空気の衝撃によって前記凍結乾燥組成物を微粒子化して、得られた微粒子を前記吸引流路を通じて吸入口から排出するように構成したことを特徴とする乾燥粉末吸入デバイス。
(b−2) 使用者の一回の吸入によって、前記凍結乾燥組成物の大部分が微粒子化して前記吸入口から排出されるように構成したことを特徴とする(b−1)に記載の乾燥粉末吸入デバイス。
(b−3) 一本の針部に前記吸引流路及び前記空気導入流路を形成したことを特徴とする(b−1)又は(b−2)に記載の乾燥粉末吸入デバイス。
【0053】
容器内に空気を導入する手段(前述する(1)の手段)は、常圧で外部から空気を導入する手段であればよく、ジェットミルなどの圧縮空気を特段使用する必要はない。なお、外部から空気を導入する手段は、特に制限されず、例えば前述する噴射型の乾燥粉末吸入デバイスの場合は、人為的に外部エアーを容器内に噴射導入する手段を採用することができ、また自己吸入型の乾燥粉末吸入デバイスの場合は、使用者の吸入服用に伴う容器内の負圧化によって自然に外部エアーを容器内に吸引導入する手段を採用することができる。なお、前者噴射型の乾燥粉末吸入デバイスの場合、人為的に外部エアーを容器内に噴射導入する方法は、手動であっても、任意の機械を使用して自動的に行う方法であってもよい。
【0054】
本発明の乾燥粉末吸入デバイスは、噴射型及び自己吸入型の別を問わず、上記空気導入手段によって容器内に導入(流入)された外部エアー(空気)の衝撃(噴射圧)を利用して、容器内に非粉末状態で収容された凍結乾燥製剤を微粒子化することのできるものである。
【0055】
なお、ここで用いられる容器としては、例えば凍結乾燥に供することのできるものを用いることができ、材質、形状などに特に制限されない。例えば、材質としては、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレンなどのポリオレフィン系を主とするプラスチック,ガラス,アルミ等が例示できる。また形状としては、円筒状、カップ状、三角柱(三角錐)、正方柱(正方錐)、六角柱(六角錐)、八角柱(八角錐)などを多角柱(多角錐)を例示することができる。
【0056】
かかる効果を効率よく得るためには、凍結乾燥組成物を収容する容器の容量としては、0.2〜50ml、好ましくは0.2〜25ml、より好ましくは1〜15mlの範囲である。また、容器の胴径として、φ2〜100mm、好ましくはφ2〜75mm、より好ましくはφ2〜50mmのものを使用することが望ましい。
【0057】
更に、かかる容器内に収容する経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物の量は、単位投与量(1回投与量)または数回、具体的には2〜3回投与量のインターフェロン−γを含む量であることが好ましい。より好ましくは単位投与量(1回投与量)の有効成分を含む量である。
【0058】
更に、容器内に導入する外部エアー(空気)により生じる空気衝撃は少なくともヒトの1回若しくは数回の吸気動作によって容器内に空気が流入する空気流量やそれによって生じる空気速度によって規定される。勿論,容器の耐久性を限度として,これを越える空気流量や空気速度を持って外部エアーを導入することは特に制限されない。ヒトが1回吸入する空気流量は通常5〜300L/分、より詳細には10〜200L/分である。また、噴射型の乾燥粉末吸入デバイスの場合、1回の空気の噴射量が5〜100ml、好ましくは10〜50mlとなるものを使用することができる。好ましくは容器内部に充填された凍結乾燥組成物の表面に少なくとも1m/secの空気速度によって生じる空気衝撃が当たるように調整することができる。より好ましい空気衝撃は少なくとも2m/secの空気速度によって生じる衝撃、さらに好ましくは少なくとも5m/secの空気速度によって生じる衝撃、よりさらに好ましくは少なくとも10m/secの空気速度によって生じる衝撃である。ここで空気衝撃の上限としては、特に制限されないが、例えば300m/secの空気速度によって生じる衝撃を挙げることができる。かかる上限として好ましくは250m/secの空気速度によって生じる衝撃、より好ましくは200m/secの空気速度によって生じる衝撃、よりさらに好ましくは150m/secの空気速度によって生じる衝撃である。
【0059】
空気衝撃は、上記から任意に選択される下限と上限から構成される範囲内にある空気速度を備えた空気によって生じるものであればよく、特に制限されないが、例えば1〜300m/sec、1〜250m/sec、2〜250m/sec、5〜250m/sec、5〜200m/sec、10〜200m/sec、10〜150m/secの範囲にある空気速度によって生じる衝撃を挙げられる。
【0060】
なお、ここで凍結乾燥組成物に付与される空気の速度は、下記のようにして測定することができる。すなわち、後述する実施態様例1で示した噴射型乾燥粉末吸入デバイスでは,ベロー体10に蓄えられている空気を空気噴射流路3から強制的に容器内に充填された凍結乾燥組成物(ケーキ状の凍結乾燥組成物:以下「凍結乾燥ケーキ」ともいう)に導入し,空気衝撃を与えて,結果として生じた微粒子が排出経路4から排出される機構を採用している。この場合、空気噴射流路3を流れる空気流量はベロー体10に蓄えられている空気量をその空気を容器に送り込む時間で割ることにより算出することができる。次いで,この空気流量を空気噴射流路3等の容器に空気を導入する流路の断面積で割ることにより,凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)に衝撃を与える空気速度を算出することができる。
【0061】
【数1】
【0062】
具体的には、例えば,空気噴射流路3の孔径φ1.2mm,排出経路の孔径φ1.8mm,ベロー体10に蓄えられている空気量が約20mlに設計した噴射型の乾燥粉末吸入デバイスの場合、ベロー体10に蓄えられている約20mlの空気量を約0.5秒で空気噴射流路3から強制的に容器内の凍結乾燥組成物に導入した場合、空気流量は約40ml/secとなる。そこでこの値を空気導入流路(空気噴射流路)の断面積(0.06 x 0.06 x3.14=0.0113cm2)で割ると,3540cm/secとなる。つまり,空気速度は約35m/secとなる。
【0063】
また、後述する実施態様例2、3及び4で示す自己吸入型乾燥粉末吸入デバイスでは,空気導入流路17から流入した空気が凍結乾燥ケーキに衝撃を与えた後,結果として生じた微粒子が吸引流路16から排出される機構を採用しているため、空気導入流路17と吸引流路16の孔径が該流路を流れる空気流量を規定することになる。従って、容器に収容された凍結乾燥組成物に付与される空気速度は、空気導入流路17に流れる空気流量を測定し、これを空気導入流路17のノズルの断面積で割ることにより算出することができる。
【0064】
【数2】
【0065】
具体的には,ヨーロッパ薬局方(European Pharmacopoeia, Third Edition Supplement 2001, p113-115)に記載されている装置A(Apparatus A)(ツインインピンジャー(Twin Impinger):Copley社製,UK)のスロート部分に容器を含む吸入デバイスを装着させて、Flow Meter(KOFLOC DPM-3)を用いて空気導入流路17に流れる空気流量を測定する。
【0066】
例えば,空気導入流路17の孔径をφ1.99mm,吸引流路の孔径をφ1.99mmに設計された自己吸入型乾燥粉末吸入デバイスにおいて、Flow Meter(KOFLOC DPM-3)を用いて測定された空気導入流路17に流れる空気流量が17.7L/min即ち、295ml/secであった場合に、空気速度は、この値を空気導入流路の断面積(0.0995 x 0.0995 x 3.14=0.0311cm2)で割ることによって得ることができる(9486cm/sec、つまり95m/sec)。
【0067】
また容器内部に充填された凍結乾燥組成物に付与される空気の流量としては、少なくとも17ml/secを挙げることができる。空気の流量として、好ましくは少なくとも20ml/sec、より好ましくは少なくとも25ml/secである。ここで空気流量の上限としては、特に制限されないが、例えば900L/minを挙げることができる。かかる上限として好ましくは15L/sec、より好ましくは10L/sec、さらに好ましくは5L/sec、さらにより好ましくは4L/sec、特に好ましくは3L/secである。具体的には、空気流量は上記から任意に選択される下限と上限から構成される範囲内にあればよく、特に制限されないが、かかる範囲としては例えば17ml/sec〜15L/sec、20ml/sec〜10L/sec、20ml/sec〜5L/sec、20ml/sec〜4L/sec、20ml/sec〜3L/sec、25ml/sec〜3L/secを挙げることができる。
【0068】
また、本発明で用いる乾燥粉末吸入デバイスは、外部から導入された空気の衝撃圧を高める手段として、実施例で詳述する空気導入流路若しくは空気噴射流路を備えた針部のように、容器底部に収容された凍結乾燥組成物に接近させた状態で流路の吐出口、好ましくは細孔を備えた吐出口から空気を吐出させる手段を備えることができる。なお、かかる流路吐出口の孔径は、容器の大きさなどの関係で好ましい範囲が変動するため、特に制限されないが、直径φ0.3〜10mm、好ましくは0.5〜5mm、より好ましくは0.8〜5mm、さらに好ましくは1〜4mmの範囲であることができる。
【0069】
かかる容器内への空気導入によって容器内に非粉末状態で収容されている凍結乾燥組成物を微粒子化することができる。ここで微粒子化の程度は、経肺投与に適した粒子径となるものであればよく、平均粒子径として10μm以下、好ましくは5μm以下を挙げることができる。また、微粒子化の程度は、有効粒子割合(Fine Particle Fraction)として、10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上、特に好ましくは35%以上となる割合を挙げることができる。
【0070】
本発明の当該システムによれば、本発明の乾燥粉末吸入デバイスを用いて上記容器内に空気を導入して、その内部の凍結乾燥組成物に少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を与えることによって、吸入による経肺投与が可能な粒子径を備えたインターフェロン−γ乾燥粉末製剤を調製することができる。また、当該システムによれば、調製されたインターフェロン−γ乾燥粉末製剤を使用者にそのまま吸入経肺投与することができる。こうした意味で、本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムは、吸入による経肺投与に適したインターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造システムであるとともに、該乾燥粉末製剤を使用者に経肺投与する投与システムであるといえる。
【0071】
(III)インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法
また,本発明は,容器内に収容された1回投与量のインターフェロン−γを含有する前記経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を該容器内で微粒子化することによって、吸入による経肺投与に適した粒子径を備えたインターフェロン−γ乾燥粉末製剤(経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤)を製造する方法に関する。当該方法は,容器に収容された前記経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物に特定の空気衝撃を与えることによって実施することができる。具体的には、本発明のインターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法は、前述する本発明の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物に、少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を与えることによって実施することができ、これにより、当該凍結乾燥組成物を平均粒子径が10ミクロン以下、好ましくは5ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上の微粒子形態を有するインターフェロン−γ乾燥粉末製剤に調製することができる。上記経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物に上記の空気衝撃を与える手段としては特に制限されないが、前述する本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに使用される乾燥粉末吸入デバイスが好適に使用される。
【0072】
当該製造方法は、好ましくは前記経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物が収容された容器に、上記空気衝撃を、該凍結乾燥組成物に与えることのできる空気を導入することによって実施することができる。
【0073】
本発明のインターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法は、インターフェロン−γ乾燥粉末製剤を使用する患者が、自ら、使用時(吸入時)に、容器に収容された経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を経肺投与に適した粒子径の粉末製剤に調製することができることを特徴の一つとするものである。
【0074】
(IV)経肺投与方法
さらに,本発明は,1回投与量のインターフェロン−γを含有する前記経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を使用時(投与時)に経肺投与可能な微粒子化し、該微粒子形態のインターフェロン−γ乾燥粉末製剤を吸入投与することを含む経肺投与方法に関する。当該経肺投与方法は、前述する経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を収容した容器と、前述する経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに使用される乾燥粉末吸入デバイスを含む、本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムを用いることによって行うことができる。
【0075】
(V)経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物の使用
さらに,本発明は、経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物について吸入による経肺投与への使用に関する。
【0076】
さらに、本発明は、経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物について吸入による経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造のための使用に関する。
【発明の効果】
【0077】
本発明の経肺用凍結乾燥組成物は、容器内で、少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃によって、肺への送達に必要な大きさにまで微粒子化される。故に、使用者が使用時(特に吸引時)に簡便な手段で該経肺用凍結乾燥組成物を、容器内で経肺投与に適した微粒子状態に調製することができる。
【0078】
本発明の経肺用凍結乾燥組成物によれば、有効粒子割合(Fine Particle Fraction)は少なくとも10%以上であり、さらに20%以上、25%以上、30%以上、並びに35%以上に高めることが可能である。米国特許公報第6153224号によると、従来のドライパウダー吸入装置の多くは、肺下部に付着する有効成分(粒子)が吸入される有効成分の10%程度に過ぎないことが記載されている。また、特開2001-151673号公報においても、一般的な吸入用粉末製剤の肺への薬物の到達量(肺到達率)は、該製剤から排出される薬物の10%程度であることが記載されている。ゆえに、本発明の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物は、従来の吸入用粉末製剤よりも高い有効粒子割合(Fine Particle Fraction)を達成することができる点で有用な経肺用組成物であるといえる。
【0079】
従来の経肺投与用組成物は微粒子粉末状であり、調製に際して取り扱いが困難であった。一方、本発明の経肺用凍結乾燥組成物は、ケーキ状の形態であり取り扱いが容易であることに加え、1回投与量を容器内で直接調製できるので、容器に小分けする作業が不要である。故に、本発明の経肺用凍結乾燥組成物は、微粒子粉末状の経肺用組成物に比して、高い収率で調製することが可能であり、更に微粒子粉末を容器に小分けする際の夾雑物の混入を回避することもできる。
【0080】
更に、本発明の経肺用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物はIFN−γを安定に保持できるため、調製時の凍結乾燥処理や長期間の保存に供しても、IFN−γの活性を高い割合で維持することができる。
【0081】
本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムによれば、インターフェロン−γの肺への吸入投与を簡便に行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0082】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0083】
なお、以下の実施例において、本発明の非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)の崩壊指数、及び微粉末化された乾燥粉末製剤の肺への送達を評価する指標である有効粒子割合(Fine Particles Fraction(%))は下記の方法に従って算出した。
【0084】
<崩壊指数の算出>
調製した非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)に、n-ヘキサンを容器の壁を通じて静かに1.0ml滴下し、これをAutomatic Lab-Mixer NS-8(Pasolina社製)を用いて3000rpmで約10秒間攪拌する。得られた混合液を光路長1mm,光路幅10mmのUVセル(島津GLCセンター製)に投入し、速やかに分光光度計(UV-240,島津製作所製)を用いて測定波長500nmで該混合液の濁度を測定する。得られた濁度を総処方量(有効成分と担体との総量(重量))で割った値を崩壊指数とする。
【0085】
<有効粒子割合(Fine Particles Fraction)の算出>
調製した非粉末状の凍結乾燥組成物を充填した容器を乾燥粉末吸入デバイスに装着し、該デバイスを用いて所定の空気衝撃を与えて微粉末化された粉末製剤をヨーロッパ薬局方(European Pharmacopoeia, Third Edition Supplement 2001, p113-115)に記載されている装置A(Apparatus A)(ツインインピンジャー(Twin Impinger):Copley社製,UK)に直接排出する。その後、該装置のStage 1とStage2中に入った溶媒をそれぞれ回収して、Bioassay法やHPLC等の凍結乾燥組成物中の有効成分に応じて所望の方法により,Stage 1とStage 2の各溶媒中に含まれる有効成分を定量する〔Lucasらの報告(Pharm. Res., 15(4), 562-569(1998))や飯田らの報告(薬学雑誌119(10)752-762(1999)参照)。なお,肺への送達が期待できるフラクションはStage 2(このフラクションで回収される空気力学的粒子径は6.4μm以下である。)であり、通常,このStage2に達し回収される有効成分の割合を有効粒子割合(肺へ到達が期待できる量,Fine Particles Fraction)と呼び,経肺投与用の吸入剤としての適性を評価する基準とされている。
【0086】
下記の本実施例及び比較例では、Stage1とStage2のそれぞれに含まれる有効成分の重量を定量し、得られたStage2中の有効成分の重量を、噴射された有効成分の重量総量(Stage1とStage2に含まれる有効成分の重量総量:以下「Stage1+Stage2」ともいう。)で割った値を有効粒子割合(Fine Particles Fraction(%))として算出した。また、原則として、ヨーロッパ薬局方ではツインインピンジャー(Copley社製,UK)を用いる場合,空気の吸引流量として60L/min、即ち1L/secで吸引することが規定されているので、下記の本実施例及び比較例もこれに従った。
【0087】
実施態様例1 乾燥粉末吸入デバイス(噴射型1)
本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに使用される噴射型の乾燥粉末吸入デバイスの一実施態様を図1を用いて説明する。
【0088】
乾燥粉末吸入デバイスは、容器1の底部に収容された非粉末性の単位若しくは数回投与量の凍結乾燥組成物2を微粒子化して肺器官に送るための空気噴射型の器具であって、空気噴射流路3及び排出流路4を有する針部5と、吸入口6を有し且つ針部5の基端に取り付けられる吸気部材7と、針部5を囲繞し且つ容器1の保持も兼ねる筒状安全カバー8と、空気圧送手段9とを備えている。
【0089】
空気圧送手段9は、手動式であって筒状のベロー体10を備え、ベロー体10には吸込弁11の付いた吸込口12と吐出弁13の付いた吐出口14とが設けられ、吐出口14は針部5の空気噴射流路3の基端側に形成された接続口15に取り付けられ、空気噴射流路3に連通している。そして、吸込弁11を閉じた状態でベロー体10に圧縮力を加えて収縮させることにより吐出弁13が開放して、ベロー体10内の空気が吐出口14から空気噴射流路3を通じて容器1内に排出される。一方、圧縮力を解除すると、ベロー体10の弾性復元力によってベロー体10が伸張して吐出弁13が閉じた状態で吸込弁11が開いて、ベロー体10内に空気が導入されるようになっている。
【0090】
該乾燥粉末吸入デバイスを使用するときには、図1に示すように、容器1を筒状安全カバー8にはめ込み、容器1の口栓1aに針部5を突き刺して空気噴射流路3及び排出流路4と容器1の内部とを連通させる。この状態で、空気圧送手段9のベロー体10を収縮させて吐出口14から空気を排出すると、該空気は空気噴射流路3を通り針部5の先端から容器内の凍結乾燥組成物2に向けて噴射され、その空気衝撃によって凍結乾燥組成物2は微粒子となって、針部5の排出流路4を通って吸気部材7の吸入口6から排出される。そして、使用者(患者)はこの微粒子を吸気部材の吸気口6から吸気することにより、凍結乾燥組成物2の微粒子が患者の肺器官内に送られる。なお、本発明で用いられる容器の口栓は、その材質を特に制限されることなく、例えばゴム、プラスチックまたはアルミニウムなどの通常薬物や化合物を収容する容器の口栓として使用される材質を任意に選択して使用することができる。
【0091】
この噴射型の吸入デバイスでは、空気噴射量が約20ml、容器の容量が約5ml、空気噴射流路3の孔径(直径)が約1.2mm、及び排出流路4の孔径(直径)が約1.8mmになるように設定されている。
【0092】
但し、これに限定されることなく、空気噴射流路3及び排出流路4の孔径は、容器の大きさ等の関係で好ましい範囲が変動するため、特に制限されないが、直径0.3〜10mm、好ましくは0.3〜7mm、より好ましくは0.5〜5mmの範囲内から適宜選択される。
【0093】
また、空気圧送手段9は、ベロー体10の圧縮速度を調整することによって吸入投与に必要な微粒子の排出量を調節することが可能であり、また、かかる空気噴射によっても凍結乾燥組成物2の大部分を微粒子化するように調整することができる。
【0094】
実施態様例2 乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型1)
本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに使用される自己吸入型の乾燥粉末吸入デバイスの一実施態様(その1)を図2を用いて説明する。図2に示す乾燥粉末吸入デバイスは、吸引流路16及び空気導入流路17を有する針部5と、筒状安全カバー8と、吸引流路16に連通する吸入口18を有する吸気部材19とを備え、吸気部材19は針部5の吸引流路16の基端側に連結されている。
【0095】
乾燥粉末吸入デバイスを使用するときには、図2に示すように、容器1を筒状安全カバー8にはめ込み、容器1の口栓1aに針部5を突き刺して吸引流路16及び空気導入流路17と容器1の内部とを連通させる。この状態で、患者の吸気圧で吸入口18から吸引流路16を介して容器1内の空気を吸引すると共に、これによって負圧となった容器1内に空気導入流路17から外気を流入させる。このとき、凍結乾燥組成物2に作用する空気衝撃によって凍結乾燥組成物2が微粒子化され、調製された微粒子が吸引流路16を通じて吸入口18から患者の肺器官内に送られる。
【0096】
また、当該乾燥粉末吸入デバイスは、患者の1回の吸入によって凍結乾燥組成物2の大部分が微粒子化して吸入口18から排出されるように設定されている。なお、患者の1回の吸入の空気流量は5〜300L/分、好ましくは10〜200L/分、より好ましくは10〜100L/分とされるが、本発明の自己吸入型乾燥粉末吸入デバイスは、使用する患者の呼吸能力に応じて適宜設計変更される。図2に示す吸入デバイスは、かかる患者の呼吸能力に応じて、容器の容量を約10mlに、空気導入流路17及び吸引流路16の孔径を直径約1.5mmに設定したものである。これによって、患者の1回の吸入によって凍結乾燥組成物2がほぼ残らず微粒子化して吸入口18から排出されるように設定される。
【0097】
実施態様例3 乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型2)
本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに使用される自己吸入型の乾燥粉末吸入デバイスの一実施態様(その2)を図3を用いて説明する。図3に示す乾燥粉末吸入デバイスは、図1に示す噴射型の乾燥粉末吸入デバイスの接続口15から空気圧送に使用するベロー体10を取り外したときの形態と同じになっており、また、図1の噴射型の乾燥粉末吸入デバイスの排出流路4が吸引流路16に、空気噴射流路3が空気導入流路17に、吸入口6を有する吸気部材7が吸入口18を有する吸気部材19に、それぞれ相当するようになっている。
【0098】
そして、かかる自己吸入型の乾燥粉末吸入デバイスを使用するときには、図2に示した乾燥粉末吸入デバイスと同じ要領で、患者の吸気圧で吸入口18から吸引流路16を介して容器1内の空気を吸引すると共に、これによって負圧となった容器1内に空気導入流路17から外気を流入させ、該空気流入に伴って生じる空気衝撃によって凍結乾燥組成物2が微粒子化される。そして、得られた該微粒子は吸入口18から患者の肺器官内に送られる。なお、前述するように患者の1回の吸入の空気流量は通常5〜300L/分の範囲にあるが、図3に示す吸入デバイスは、かかる患者の呼吸能力に応じて、容器の容量を約5mlに、空気導入流路17の孔径(直径)を約1.2mmに、吸引流路16の孔径(直径)を約1.8mmにそれぞれ設定したものである。これによって、患者の1回の吸入によって凍結乾燥組成物2の大部分が微粒子化して吸入口18から排出されるように設定される。
【0099】
このようにして自己吸入型の乾燥粉末吸入デバイスを構成すれば、接続口15にベロー体10などの空気圧送手段9を着脱自在に取り付けることによって、該自己吸入型の吸入デバイスを噴射型に変更することもできる。これによって、一つの乾燥粉末吸入デバイスを所望に応じて自己吸入型・噴射型のいずれの態様にも適宜選択し使用することができる。
【0100】
以上の乾燥粉末吸入デバイスは、自己吸入型又は噴射型のいずれのタイプであっても、凍結乾燥組成物が10ミクロン以下、好ましくは5ミクロン以下の平均粒子径の微粒子になってほぼ残らず飛散するように空気衝撃の大きさを選択設定することができるように構成することができる。
【0101】
実施態様例4 乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型3)
本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに使用される自己吸入型の乾燥粉末吸入デバイスの一実施態様(その3)を図4から図10を用いて説明する。なお、図4は当該乾燥粉末吸入デバイスを示す斜視図、図5は当該乾燥粉末吸入デバイスを示す断面図である。また図6の(a)は当該乾燥粉末吸入デバイスの針部5及び吸引口31を示す部分断面図、(b)は針部5の側面図である。さらに図7〜10は、各々当該乾燥粉末吸入デバイスの動作を説明する断面図である。
【0102】
乾燥粉末吸入デバイスは、吸引流路16及び空気導入流路17が形成された針部5と、容器1を保持するためのホルダー部22と、該ホルダー部22を介して容器1を収容するための収容室20と、ホルダー部22を針部5の軸線方向にガイドするために収納室20に設けられるガイド部23と、ホルダー部22をガイド部23に沿って前進及び後退させるホルダー作動部24とを備えており、これらは筒状のハウジング21に収容されている。またこのハウジング21の先部には、針部5の吸引流路16と連通する吸引口31を有するマウスピース32を備えている。
【0103】
図7に示すように、ハウジング21は、詳細にはホルダー部22が後退した位置に出し入れ口25が形成されたハウジング本体26と、出し入れ口25を開閉する蓋27とで形成されている。蓋27はハウジング本体26にヒンジ21Aにて連結され、また、蓋27には容器1の装填を確認するための窓28が設けられている。
【0104】
ハウジング21の壁部には外気を導入するための導入口29が設けられ、導入口29には逆止弁30が装着されている。また、ハウジング21の先部にはマウスピース32が取り付けられている。マウスピース32は、本乾燥粉末吸入デバイスを使用しないときには、吸引口31はキャップ32aで塞がれる。
【0105】
針部5の基端部にはフランジ状の隔壁部33が形成され、空気導入流路17の端部は隔壁部33内を通って隔壁部33の外周方向に開口している。また、隔壁部33の外周縁部からマウスピース32の吸引口31に向けて周壁部34が延び、ハウジング21の先端部に隔壁部33を嵌め込むことにより、ハウジング21内に針部5が取り付けられている。この取り付けによってハウジング21の軸線方向と針部5の軸線方向とを合致させている。
【0106】
ホルダー部22には容器1をホルダー部22の底部から起こして取り出すための取り出し体35が取り付けられ、取り出し体35には容器1を起こすためのレバー36が形成されている。
【0107】
ホルダー作動部24は、ホルダー部22をハウジング21の軸線方向に往復動させるための機構部37と、機構部37を操作する操作レバーとを備えている。機構部37は連結体39を備えている。連結体39の一端はホルダー部22にヒンジ40にて連結され、連結体39の他端は蓋27にヒンジ41にて連結されている。蓋27は前記操作レバーを兼ねている。蓋27の開閉操作によってホルダー部22をガイド部23の沿って前進及び後退させる。
【0108】
蓋27を倒すための力の作用点を図7の矢印Cで示す点とする。すなわち、ヒンジ21Aからヒンジ41までの長さよりもヒンジ21Aから該作用点までの長さを長くする。これにより、「てこの原理」により、容器1の口栓1aを針部5に突き刺すのに要する力よりも小さい力で蓋(操作レバー)27を操作できる。
【0109】
また、図6に示すように、乾燥粉末吸入デバイスには空気を補助的に導入するための第2導入路42が形成されている。粉末化した凍結乾燥組成物をマウスピース32から吸引するときには、外気はこの第2導入路42を通って直接マウスピース32の吸引口31に流入する。これにより、肺活量が低下した患者や子供の患者でも、負担をかけずに乾燥粉末吸入デバイスを使用できるようになっている。なお、第2導入路42を省略しても良い。
【0110】
第2導入路42は、針部5の隔壁部33に導入溝42aを、周壁部34に導入溝42bをそれぞれ設け、針部5の周壁部34にマウスピース32を嵌め込むことにより、マウスピース32と導入溝42a及び42bとで形成されるものである。
【0111】
マウスピース32とハウジング21との間には僅かな隙間43が形成され、第2導入路42の一端44は隙間43を通じて外部に開口し、第2導入路42の他端45はマウスピース32の吸引口31に開口している。
【0112】
また、図6に示すように、吸引口31には通気孔46を有する壁47が設けられている。したがって、吸引力の不足等により凍結乾燥組成物2に与える空気衝撃力が小さくなり、凍結乾燥組成物2の一部に非粉末部分が発生する場合でも、該非粉末部分は壁47の通気孔46を通過する際に粉末化させることができる。
【0113】
また、図6(a)に示すように、針部5の空気導入流路17の先端口17aは吸引流路16の先端口16aよりも凍結乾燥組成物2に近づけている。これにより、空気導入流路17の先端口17aから容器1内に流入する空気の流速低下をできるだけ抑え、凍結乾燥組成物2に効果的な空気衝撃を与えることができるようにしている。また、針部5の吸引流路16の先端口16aは空気導入流路17の先端口17aよりも凍結乾燥組成物2から離れているので、針部5の吸引流路16に吸引される前に、容器1内での凍結乾燥組成物2の微粉末化をできるだけ進ませることができる。
【0114】
乾燥粉末吸入デバイスは次のようにして使用されるものである。まず、図7のように、蓋27を起こしてハウジング21の出し入れ口25を開くことにより、ホルダー部22が引き寄せられてハウジング21の出し入れ口25まで後退する。次に、容器1を口栓1aを前向きにしてホルダー部22に取り付ける。次に、図8のように蓋27を倒してハウジング21の出し入れ口25を閉じることにより、連結体39によってホルダー部22が針部5の方に押し込まれて容器1の口栓1aが針部5の先端に突き刺さり、針部5の吸引流路16及び空気導入流路17と容器1の内部とが連通する。次に、患者の吸気圧でマウスピース32の吸引口31から針部5の吸引流路16を介して容器1内の空気を吸引する。このとき容器1内は負圧になって逆止弁30が開き、外気が針部5の空気導入流路17を通って容器1内に外気が流入する。これにより、容器1内で空気衝撃が発生して凍結乾燥組成物2が微粒子化され、調製された微粒子が吸引流路16を通じて吸引口31から患者の肺器官内に送られる。使用後は、蓋27を起こしてホルダー部22をハウジング21の出し入れ口25まで引き寄せた後、レバー36で取り出し体35を起こして容器1をホルダー部22から取り出す。
【0115】
一方、マウスピース32の吸引口31から容器1内に空気を吹き込んでも、微粒子化した凍結乾燥組成物2の外部への排出は逆止弁30によって阻止される。
【0116】
前述したように患者の1回の吸入の空気流量は通常5〜300L/分の範囲にあるが、図4から図10に示す吸入デバイスは、かかる患者の呼吸能力に応じて、容器1の容量を約5mlに、空気導入流路17の口径(直径)を約2.5mmに、吸引流路16の口径(直径)を約2.5mmにそれぞれ設定したものである。これによって、患者の1回の吸入によって凍結乾燥組成物2の大部分が微粒子化して吸引口31から排出されるように設定される。
【0117】
乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型)の他の実施態様例を、図11から図13に示す。
【0118】
図11に示す乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型4)は、矢印のようにハウジング21の周方向に操作体48が回転自在に設けられている。図示しないホルダー作動部の機構部は、螺旋溝とこれに係合するフォロワーを備え、操作体48の回転運動によりホルダー部22を針部5の軸線方向への直線運動に変換させる。なお、操作体48の回転角度はほぼ180度である。
【0119】
図12及び図13に示す乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型5)は、ハウジング21に環状の操作体49が回転自在に取り付けられている。図示しないホルダー作動部の機構部は、送りねじを備え、操作体49の回転運動によりホルダー部22を針部5の軸線方向への直線運動に変換させる。ホルダー部22はハウジング21の後部から引き出し自在となっている。
【0120】
実施例1−4
限外濾過膜(ウルトラフリー15、Millipore製)を用いて、インターフェロン−γ(IFN-γ)原液(力価:1×107IU/ml)を脱塩した。得られた脱塩IFN-γを10万IUと下表1に示す量の各種担体を注射用蒸留水に溶解して全量を0.5mlに調製し、これを容器(胴径φ18mm)に入れ、棚状凍結乾燥機(LYOVAC GT-4, LEYBOLD社製)を用いて凍結乾燥した(実施例1―4及び比較例1及び2)。
【0121】
得られた非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)について、崩壊指数を算出した。
【0122】
また、該凍結乾燥組成物の有効粒子割合を算出して肺への送達効率を評価するために、乾燥粉末吸入デバイスを用いて容器に充填された凍結乾燥ケーキに空気速度約35m/sec及び空気流量約40ml/secで生じる空気衝撃を与えて、粉砕された微粒子状の凍結乾燥物をツインインピンジャー(Copley社製,UK)に直接排出した。その後,Stage 1とStage2の溶媒をそれぞれ回収して、Bioassay法により、Stage 1とStage 2の各溶媒中のIFN-γを定量した。得られたStage2中のIFN-γ量を噴射されたIFN-γの総量(Stage1+Stage2)で割った値を有効粒子割合(Fine Particle Fraction)として算出した。
【0123】
得られた凍結乾燥組成物のIFN-γの安定性を評価するために、凍結乾燥前のIFN-γ活性(100%)に対する凍結乾燥直後のIFN-γの残存活性(以下、凍結乾燥後残存活性という。)、及び凍結乾燥直後のIFN-γ活性(100%)に対する70℃で2週間保存した後のIFN-γの残存活性(以下、高温保存後残存活性という。)をBioassay法により測定した。
【0124】
各凍結乾燥組成物(実施例1−4及び比較例1及び2)の崩壊指数、有効粒子割合(%)、凍結乾燥後残存活性(%)及び高温保存後残存活性(%)を併せて表1に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
実施例1―4及び比較例1の凍結乾燥組成物はいずれも凍結乾燥後は、非粉末状のケーキ状塊(凍結乾燥ケーキ)であった。表1に示すように、実施例1−4及び比較例1の凍結乾燥組成物は、空気速度約35m/sec及び空気流量約40ml/secで生じる空気衝撃により、容器内で容易に微粒子化され、良好な有効粒子割合が得られた。よって、実施例1−4及び比較例1の凍結乾燥組成物は、経肺投与に適した粉末製剤に調製可能であることが明らかとなった。一方、担体としてプルランを配合した比較例2の凍結乾燥組成物は、上記空気衝撃により、崩壊せず、微粒子化することはできなかった。
【0127】
また、実施例1―4の凍結乾燥組成物は、親水性アミノ酸を配合していない比較例1の凍結乾燥組成物に比して、凍結乾燥処理によってIFN-γの活性が高い割合で保持されていることが確認された。更に、親水性アミノ酸を配合していない比較例1の凍結乾燥組成物は、極めて過酷な温度(70℃)条件下ではIFN-γが失活するのに対して、疎水性アミノ酸及び親水性アミノ酸を配合した実施例1―4の凍結乾燥組成物ではかかる温度条件下でもIFN-γの活性が高い割合で保持されていることが分かった。
【0128】
実施例5−11
限外濾過膜(ウルトラフリー15、Millipore製)を用いて、インターフェロン-γ(IFN-γ)原液(力価:1×107IU/ml)を脱塩した。得られた脱塩IFN-γを10万IU又は100万IUと下表2に示す量の各種担体を注射用蒸留水に溶解して全量を0.5mlに調製し、これを容器(胴径φ18mm)に入れ、棚状凍結乾燥機(LYOVAC GT-4, LEYBOLD社製)を用いて凍結乾燥した(実施例5−11)。
【0129】
得られた非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)について、崩壊指数を算出した。
【0130】
次に、得られた実施例5−11の非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)を含有する容器を空気噴射流路3の孔径をφ1.2mm、排出流路4の孔径をφ1.8mmに設計した噴射型の乾燥粉末吸入デバイス(空気量約20mlを供給できるベロー体10を有する。図1)に装着した。に装着した。このデバイスを人工肺モデルであるエアロブリーダーを装着したエアロザイザー(Amherst Process Instrument,Inc社製,USA)に取り付け,空気量約20mLを吸入デバイスから容器に導入することにより、上記凍結乾燥ケーキに空気速度約35m/sec及び空気流量約40ml/secで生じる空気衝撃を与えた。これによって、噴射型の乾燥粉末吸入デバイスの空気噴射流路3から空気が容器1内に導入され、その空気衝撃で、容器内の非粉末状の凍結乾燥組成物が微粒子化されるのが観察された。この微粒子の粒度分布を上記のエアロブリダー(測定条件、Breath Rate:60L/min, Breath Volume:1L,アクセラレーション:19)を装着したエアロサイザーを用いて測定した。そして該粒度分布から各凍結乾燥組成物の空気力学平均粒子径(μm±SD)を算出した。
【0131】
実施例1−4と同様の方法で、有効粒子割合(%)、凍結乾燥後残存活性(%)及び高温保存後残存活性(%)を評価した。
【0132】
得られた実施例5−11の凍結乾燥組成物は、いずれも凍結乾燥後は非粉末状のケーキ状塊(凍結乾燥ケーキ)であった。また、表2に示すように、実施例5−11の凍結乾燥組成物は、いずれも0.15以上の崩壊指数を備えており、空気速度約35m/sec及び空気流量約40ml/secで生じる空気衝撃により、容器内で容易に微粒子化され、空気力学平均粒子径が5ミクロン以下の微粒子となり、経肺投与に適した微粒子状の粉末製剤となった。また、いずれの凍結乾燥組成物においても良好な有効粒子割合が得られた。更に、実施例5−11の凍結乾燥組成物は、凍結乾燥後残存活性及び高温保存後残存活性が高く、該組成物の調製時及び高温保存条件下において、IFN-γの活性が高い割合で保持されることが確認された。
【0133】
【表2】
【0134】
実施例12−14
限外濾過膜(ウルトラフリー15、Millipore製)を用いて、インターフェロン-γ(IFN-γ)原液(力価:1×107IU/ml)を脱塩した。得られた脱塩IFN-γ100万IUと下表3に示す量の各種担体を注射用蒸留水に溶解して全量を0.5mlに調製し、これを容器(胴径φ18mm)に入れ、棚状凍結乾燥機(LYOVAC GT-4, LEYBOLD社製)を用いて凍結乾燥した(実施例12−14)。
【0135】
得られた非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)について、崩壊指数を算出した。
【0136】
実施例5−11と同様の方法で、各凍結乾燥組成物の空気力学平均粒子径(μm±SD)を算出した。更に、実施例1−4と同様の方法で、凍結乾燥後残存活性(%)及び高温保存後残存活性(%)を評価した。
【0137】
得られた実施例12−14の凍結乾燥組成物は、いずれも凍結乾燥後は非粉末状のケーキ状塊(凍結乾燥ケーキ)であった。また、表3に示すように、実施例12−14の凍結乾燥組成物は、いずれも0.25以上の崩壊指数を備えており、空気速度約35m/sec及び空気流量約40ml/secで生じる空気衝撃により、容器内で容易に微粒子化され、空気力学平均粒子径が5ミクロン以下の微粒子となり、経肺投与に適した微粒子状の粉末製剤となった。更に、実施例12−14の凍結乾燥組成物は、凍結乾燥後残存活性及び高温保存後残存活性が高く、該組成物の調製時及び高温保存条件下において、IFN-γの活性が高い割合で保持されることが確認された。
【0138】
【表3】
【0139】
実施例15
限外濾過膜(ウルトラフリー15、Millipore製)を用いて、インターフェロン-γ(IFN-γ)原液(力価:1×107IU/ml)を脱塩した。得られた脱塩IFN-γ100万IUと下表4に示す量の各種担体を注射用蒸留水とエタノールの混合溶液(エタノール濃度1重量%)に溶解して全量を0.5mlに調製し、これを容器(胴径φ18mm)に入れ、棚状凍結乾燥機(LYOVAC GT-4, LEYBOLD社製)を用いて凍結乾燥した(実施例15)。
【0140】
得られた実施例15の非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)について、崩壊指数を算出した。
【0141】
次に、得られた実施例15の非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)を含有する容器を空気噴射流路3の孔径をφ1.2mm、排出流路4の孔径をφ1.8mmに設計した噴射型の乾燥粉末吸入デバイス(空気量約50mlを供給できるベロー体10を有する。図1)に装着した。このデバイスを人工肺モデルであるエアロブリーダーを装着したエアロザイザー(Amherst Process Instrument,Inc社製,USA)に取り付け,空気量約50mLを吸入デバイスから容器に導入することにより、上記凍結乾燥ケーキに空気速度約89m/sec及び空気流量約100ml/secで生じる空気衝撃を与えた。これによって,噴射型の乾燥粉末吸入デバイスの空気噴射流路から空気が容器内に導入され、その空気衝撃で、容器内の非粉末状の凍結乾燥組成物が微粒子化されるのが観察された。この微粒子の粒度分布を上記のエアロブリーダー(測定条件、Breath Rate:60L/min, Breath Volume:1L,アクセラレーション:19)を装着したエアロサイザーを用いて測定した。そして該粒度分布から各凍結乾燥組成物の空気力学平均粒子径(μm±SD)を算出した。
【0142】
実施例1−4と同様の方法で、凍結乾燥後残存活性(%)及び高温保存後残存活性(%)を評価した。
【0143】
得られた実施例15の凍結乾燥組成物は、凍結乾燥後は非粉末状のケーキ状塊(凍結乾燥ケーキ)であった。また、表4に示すように、実施例15の凍結乾燥組成物は、0.05以上の崩壊指数を備えており、空気速度約89m/sec及び空気流量約100ml/secで生じる空気衝撃により、容器内で容易に微粒子化され、空気力学平均粒子径が5ミクロン以下の微粒子となり、経肺投与に適した微粒子状の粉末製剤となった。更に、実施例15の凍結乾燥組成物は、凍結乾燥後残存活性及び高温保存後残存活性が高く、該組成物の調製時及び高温保存条件下において、IFN-γの活性が高い割合で保持されることが確認された。
【0144】
【表4】
【0145】
実施例16
限外濾過膜(ウルトラフリー15、Millipore製)を用いて、インターフェロン-γ(IFN-γ)原液(力価:1×107IU/ml)を脱塩した。得られた脱塩IFN-γ100万IUと下表5に示す量の各種担体を注射用蒸留水に溶解して全量を0.5mlに調製し、これを容器(胴径φ18mm)に入れ、棚状凍結乾燥機(LYOVAC GT-4, LEYBOLD社製)を用いて凍結乾燥した(実施例16)。
【0146】
得られた実施例16の非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)について、崩壊指数を算出した。
【0147】
次に、得られた実施例16の非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)を含有する容器を空気噴射流路の孔径をφ4.0mm、排出流路の孔径をφ4.0mmに設計した自己吸入型の乾燥粉末吸入デバイスに装着した。このデバイスを人工肺モデルであるエアロブリーダー(Amherst Process Instrument,Inc.社、USA;測定条件:Breath rate 1L/min、Breath Volume 0.1L)を装着したエアロザイザー(Amherst Process Instrument,Inc.社、USA)に取り付け、上記凍結乾燥ケーキに空気速度約1m/sec及び空気流量約17ml/secで生じる空気衝撃を与えた。これによって、噴射型の乾燥粉末吸入デバイスの空気噴射流路から空気が容器内に導入され、その空気衝撃で、容器内の非粉末状の凍結乾燥組成物が微粒子化されるのが観察された。この微粒子の粒度分布を上記のエアロブリーダー(測定条件、Breath Rate:60L/min, Breath Volume:1L,アクセラレーション:19)を装着したエアロサイザーを用いて測定した。そして該粒度分布から各凍結乾燥組成物の空気力学平均粒子径(μm±SD)を算出した。
【0148】
実施例1−4と同様の方法で、凍結乾燥後残存活性(%)及び高温保存後残存活性(%)を評価した。
【0149】
得られた実施例16の凍結乾燥組成物は、凍結乾燥後は非粉末状のケーキ状塊(凍結乾燥ケーキ)であった。また、表5に示すように、実施例16の凍結乾燥組成物は、0.2以上の崩壊指数を備えており、空気速度約1m/sec及び空気流量約17ml/secで生じる空気衝撃により、容器内で容易に微粒子化され、空気力学平均粒子径が5ミクロン以下の微粒子となり、経肺投与に適した微粒子状の粉末製剤となった。更に、実施例16の凍結乾燥組成物は、凍結乾燥後残存活性及び高温保存後残存活性が高く、該組成物の調製時及び高温保存条件下において、IFN-γの活性が高い割合で保持されることが確認された。
【0150】
【表5】
【0151】
参考試験例1
凍結乾燥組成物に含まれる塩類が該組成物の空気衝撃による微粒子化に及ぼす影響を調べるために、下記の試験を行った。
【0152】
表6に示す量のインターフェロン-α(IFN-α)、各種アミノ酸及びクエン酸塩(クエン酸及びクエン酸ナトリム)を注射蒸留水に溶解して全量を0.5mlに調製し、これを容器(胴径φ18mm)に入れ、棚状凍結乾燥機(LYOVAC GT-4, LEYBOLD社製)を用いて凍結乾燥した(参考例1−5)。得られた非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)について、実施例1−4と同様の方法で、崩壊指数及び有効粒子割合(%)を評価した。
【0153】
得られた結果を表6に併せて示す。表6から分かるように、凍結乾燥組成物中のクエン酸塩の含有割合が低い程、崩壊指数が大きくなることが明らかとなった。また、凍結乾燥組成物中のクエン酸塩の配合割合が低い程、優れた有効粒子割合が得られることが確認された。
【0154】
【表6】
【0155】
参考試験例2
凍結乾燥組成物に含まれる塩類が該組成物の空気衝撃による微粒子化に及ぼす影響を調べるために、下記の試験を行った。
【0156】
表7に示す量のインターフェロン-γ(IFN-γ)、各種アミノ酸及びリン酸塩(リン酸二水素ナトリウム2水和物及びリン酸水素二ナトリウム12水和物)を注射蒸留水に溶解して全量を0.5mlに調製し、これを容器(胴径φ18mm)に充填し、棚状凍結乾燥機(LYOVAC GT-4, LEYBOLD社製)を用いて凍結乾燥した(参考例6−8)。得られた非粉末状の凍結乾燥組成物(凍結乾燥ケーキ)について、実施例1−4と同様の方法で、崩壊指数及び有効粒子割合(%)を評価した。
【0157】
得られた結果を表7に併せて示す。表7から明らかなように、凍結乾燥組成物中のリン酸塩の含有割合が低い程、崩壊指数が大きく、有効粒子割合が高くなることが確認された。
【0158】
【表7】
【0159】
参考試験例1及び2の結果から、非粉末状の凍結乾燥組成物に含まれる塩類が該組成物の空気衝撃による微粒子化を阻害していることが明らかとなり、非粉末状の凍結乾燥組成物中に塩類の含有割合が低い程、崩壊指数が大きく、有効粒子割合が高くなることが確認された。即ち、空気衝撃によって優れた有効粒子割合の微粒子を調製可能な非粉末状の凍結乾燥組成物を得るには、凍結乾燥に供する溶液中の塩類濃度を低くするとよいことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】図1は、実施態様例1として記載する本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに使用される乾燥粉末吸入デバイス(噴射型1)を示す断面図である。なお、図中、矢印は外部エアーの流れを示す(以下、図2及び3において同じ)。
【0161】
また各符号の意味は下記の通りである:1.容器、1a.口栓、2.凍結乾燥組成物、3.空気噴射流路、4.排出流路、5.針部、6.吸入口、7.吸気部材、8.筒状安全カバー、9.空気圧送手段、10.ベロー体、11.吸込弁、12.吸込口、13.吐出弁、14.吐出口、15.接続口(以下、図2〜11において同じ)。
【図2】図2は、実施態様例2として記載する本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに使用される乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型1)を示す断面図である。また各符号の意味は下記の通りである:16.吸引流路、17.空気導入流路、18.吸入口、19.吸気部材(以下、図3において同じ)。
【図3】図3は、実施態様例3として記載する本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに使用される乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型2)を示す断面図である。
【図4】図4は、実施態様例4として記載する本発明の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムに使用される乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型3)を示す斜視図である。また各符号の意味は下記の通りである:21.ハウジング、22.ホルダー部、27.蓋、28.窓、32.マウスピース、32a.マウスピースのキャップ、39.連結体(以下、図5〜13において同じ)。
【図5】図5は、上記乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型3)の断面図である。また各符号の意味は下記の通りである:20.収容室、21A.ヒンジ、23.ガイド部、24.ホルダー作動部、26.ハウジング本体、29.導入口、30.逆止弁、31.吸引口、33.隔壁部、35.取り出し体、36.レバー、37.機構部、39.連結体、40.ヒンジ、41.ヒンジ(以下、図6〜13において同じ)。
【図6】図6の(a)は上記乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型3)の部分断面図、(b)は同乾燥粉末吸入デバイスの針部の側面図である。また各符号の意味は下記の通りである:16a.吸引流路16の先端口、17a.空気導入流路17の先端口、34.周壁部、42.第2導入路、42a.隔壁部33の導入溝、42b.周壁部34の導入溝、43.隙間、44.第2導入路42の一端、45.第2導入路42の他端、46.通気孔、47.壁(以下、図7〜13において同じ)。
【図7−10】図7〜10は、上記乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型3)の動作を説明する断面図である。符号25は出し入れ口を示す。
【図11】図11は、その他の実施形態の乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型4)の斜視図である。符号48は操作体を示す。
【図12−13】図12及び13は、その他の実施形態の乾燥粉末吸入デバイス(自己吸入型5)の斜視図である。符号49は操作体を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(i)〜(iv)の特性を有する経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物:
(i) 疎水性アミノ酸、疎水性アミノ酸のジペプチド、疎水性アミノ酸のトリペプチド、疎水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の疎水性安定化剤;親水性アミノ酸、親水性アミノ酸のジペプチド、親水性アミノ酸のトリペプチド、親水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の親水性安定化剤;並びにインターフェロン−γを含有する、
(ii) 非粉末のケーキ状形態を有する、
(iii)崩壊指数が0.015以上である、及び
(iv) 少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって、平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子になる。
【請求項2】
親水性安定化剤が、塩基性アミノ酸、中性ヒドロキシアミノ酸、これらのアミノ酸のジペプチド、これらのアミノ酸のトリペプチド、これらのアミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項3】
親水性安定化剤が、塩基性アミノ酸、塩基性アミノ酸のジペプチド、塩基性アミノ酸のトリペプチド、塩基性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項4】
親水性安定化剤が、中性ヒドロキシアミノ酸、中性ヒドロキシアミノ酸のジペプチド、中性ヒドロキシアミノ酸のトリペプチド、中性ヒドロキシアミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項5】
親水性安定化剤が、アルギニン、リジン、ヒスチジン、スレオニン、これらのアミノ酸のジペプチド、これらのアミノ酸のトリペプチド、これらのアミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項6】
疎水性安定化剤が疎水性アミノ酸、疎水性アミノ酸のジペプチド、疎水性アミノ酸のトリペプチド、疎水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項7】
疎水性安定化剤が、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項8】
疎水性安定化剤100重量部に対して、親水性安定化剤を1〜500重量部の割合で含有する、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項9】
崩壊指数が0.02以上である、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項10】
崩壊指数が0.015〜1.5である、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項11】
少なくとも2m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子になる、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項12】
少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも20ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子になる、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項13】
空気の衝撃を受けることによって、平均粒子径が5ミクロン以下または有効粒子割合が20%以上の微粒子になる、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項14】
下記(i)〜(iv)の特性を有する請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物:
(i) 疎水性アミノ酸、疎水性アミノ酸のジペプチド、疎水性アミノ酸のトリペプチド、疎水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の疎水性安定化剤;親水性アミノ酸、親水性アミノ酸のジペプチド、親水性アミノ酸のトリペプチド、親水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の親水性安定化剤;並びにインターフェロン−γを含有する、
(ii) 非粉末のケーキ状形態を有する、
(iii) 崩壊指数が0.015〜1.5の範囲にある、及び
(iv) 1〜300m/secの範囲にある空気速度及び17ml/sec〜15L/secの範囲の空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって、平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子になる。
【請求項15】
(1)請求項1乃至14のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を収容した容器と、
(2) 上記容器内の凍結乾燥組成物に少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気衝撃を与えることのできる手段、及び微粒子化された粉末状の凍結乾燥組成物を排出する手段を備えたデバイスとを組み合わせて用いられる経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システム。
【請求項16】
吸入時に上記容器と上記デバイスとが組み合わされて用いられる、請求項15に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システム。
【請求項17】
デバイスとして、
i) 容器に非粉末状態で収容された凍結乾燥組成物を微粒子化し、得られた微粒子を使用者に吸入させるために用いられるデバイスであって、
空気噴射流路を有する針部と、排出流路を有する針部と、前記針部の空気噴射流路に空気を送るための空気圧送手段と前記針部の排出流路に連通する吸入口とを備え、
前記容器を密封する口栓に前記針部を突き刺して空気噴射流路及び排出流路と前記容器内部とを連通し、前記空気圧送手段によって前記空気噴射流路を通じて前記容器内に空気を噴射することにより、噴射空気の衝撃で前記凍結乾燥組成物を微粒子化し、得られた微粒子を前記排出流路を通じて吸入口から排出させるように構成したことを特徴とする経肺投与用の乾燥粉末吸入デバイス、または
ii) 容器内に非粉末状態で収容された凍結乾燥組成物を微粒子化し、得られた微粒子を被験者に吸入させるために用いられるデバイスであって、
吸引流路を有する針部と、空気導入流路を有する針部と、前記吸引流路に連通する吸入口とを備え、
前記容器を密封する口栓に前記針部を突き刺した状態で、被験者の吸気圧で前記吸入口から前記容器内の空気を吸入すると共に負圧となった容器内に前記空気導入流路を通じて前記容器内に空気を流入させることにより、流入した空気の衝撃によって前記凍結乾燥組成物を微粒子化して、得られた微粒子を前記吸引流路を通じて吸入口から排出させるように構成したことを特徴とする経肺投与用の乾燥粉末吸入デバイス
を用いる請求項15に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システム。
【請求項18】
(1)請求項14に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を収容した容器と、
(2) 上記容器内の凍結乾燥組成物に上記の空気衝撃を与えることのできる手段、及び微粒子化された粉末状の凍結乾燥組成物を排出する手段を備えたデバイスとを組み合わせて用いられる、請求項15に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システム。
【請求項19】
1回投与量のインターフェロン−γを含有する請求項1乃至14のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を収容した容器に、上記容器内の凍結乾燥組成物に少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有するの空気衝撃を与えることのできるデバイスを用いて、当該空気衝撃を備えた空気を導入し、
それによって上記凍結乾燥組成物を平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子とする,経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
【請求項20】
調製される微粒子の平均粒子径が5ミクロン以下であるか、または有効粒子割合が20%以上である、請求項19に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
【請求項21】
容器内の凍結乾燥組成物に少なくとも2m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を与えることのできる手段を有するデバイスを用いて、当該空気衝撃を備えた空気を凍結乾燥組成物を収容した容器に導入することによって行う、請求項19に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
【請求項22】
1回投与量のインターフェロン−γを含有する請求項14に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を収容した容器に、上記容器内の凍結乾燥組成物に上記の空気衝撃を与えることのできるデバイスを用いて、当該空気衝撃を備えた空気を導入し、
それによって上記凍結乾燥組成物を平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子とする、請求項19に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
【請求項23】
1回投与量のインターフェロン−γを含有する請求項1乃至14のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物に、使用時に少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気衝撃を与えることによって平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上になるように微粒子化し、
該微粒子化された粉末を使用者に吸入により投与させることを含む、経肺投与方法。
【請求項24】
経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物が容器内に収容されており、微粒子化された粉末が、当該容器内の凍結乾燥組成物に上記の空気衝撃を与えることのできる手段と微粒子化された粉末状の凍結乾燥組成物を容器から排出する手段を備えたデバイスを用いて調製されるものである、請求項23に記載の経肺投与方法。
【請求項25】
請求項15乃至18のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムを使用して、微粒子化されたインターフェロン−γ乾燥粉末を使用者に吸入により投与させることを含む、請求項23に記載の経肺投与方法。
【請求項26】
請求項1乃至14のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を、平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子に粉末化して用いる、該凍結乾燥組成物の吸入による経肺投与への使用。
【請求項27】
請求項1乃至14のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物の、吸入による経肺投与用のインターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造のための使用。
【請求項1】
下記(i)〜(iv)の特性を有する経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物:
(i) 疎水性アミノ酸、疎水性アミノ酸のジペプチド、疎水性アミノ酸のトリペプチド、疎水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の疎水性安定化剤;親水性アミノ酸、親水性アミノ酸のジペプチド、親水性アミノ酸のトリペプチド、親水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の親水性安定化剤;並びにインターフェロン−γを含有する、
(ii) 非粉末のケーキ状形態を有する、
(iii)崩壊指数が0.015以上である、及び
(iv) 少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって、平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子になる。
【請求項2】
親水性安定化剤が、塩基性アミノ酸、中性ヒドロキシアミノ酸、これらのアミノ酸のジペプチド、これらのアミノ酸のトリペプチド、これらのアミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項3】
親水性安定化剤が、塩基性アミノ酸、塩基性アミノ酸のジペプチド、塩基性アミノ酸のトリペプチド、塩基性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項4】
親水性安定化剤が、中性ヒドロキシアミノ酸、中性ヒドロキシアミノ酸のジペプチド、中性ヒドロキシアミノ酸のトリペプチド、中性ヒドロキシアミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項5】
親水性安定化剤が、アルギニン、リジン、ヒスチジン、スレオニン、これらのアミノ酸のジペプチド、これらのアミノ酸のトリペプチド、これらのアミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項6】
疎水性安定化剤が疎水性アミノ酸、疎水性アミノ酸のジペプチド、疎水性アミノ酸のトリペプチド、疎水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項7】
疎水性安定化剤が、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項8】
疎水性安定化剤100重量部に対して、親水性安定化剤を1〜500重量部の割合で含有する、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項9】
崩壊指数が0.02以上である、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項10】
崩壊指数が0.015〜1.5である、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項11】
少なくとも2m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子になる、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項12】
少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも20ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子になる、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項13】
空気の衝撃を受けることによって、平均粒子径が5ミクロン以下または有効粒子割合が20%以上の微粒子になる、請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物。
【請求項14】
下記(i)〜(iv)の特性を有する請求項1に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物:
(i) 疎水性アミノ酸、疎水性アミノ酸のジペプチド、疎水性アミノ酸のトリペプチド、疎水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の疎水性安定化剤;親水性アミノ酸、親水性アミノ酸のジペプチド、親水性アミノ酸のトリペプチド、親水性アミノ酸の誘導体及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の親水性安定化剤;並びにインターフェロン−γを含有する、
(ii) 非粉末のケーキ状形態を有する、
(iii) 崩壊指数が0.015〜1.5の範囲にある、及び
(iv) 1〜300m/secの範囲にある空気速度及び17ml/sec〜15L/secの範囲の空気流量を有する空気の衝撃を受けることによって、平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子になる。
【請求項15】
(1)請求項1乃至14のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を収容した容器と、
(2) 上記容器内の凍結乾燥組成物に少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気衝撃を与えることのできる手段、及び微粒子化された粉末状の凍結乾燥組成物を排出する手段を備えたデバイスとを組み合わせて用いられる経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システム。
【請求項16】
吸入時に上記容器と上記デバイスとが組み合わされて用いられる、請求項15に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システム。
【請求項17】
デバイスとして、
i) 容器に非粉末状態で収容された凍結乾燥組成物を微粒子化し、得られた微粒子を使用者に吸入させるために用いられるデバイスであって、
空気噴射流路を有する針部と、排出流路を有する針部と、前記針部の空気噴射流路に空気を送るための空気圧送手段と前記針部の排出流路に連通する吸入口とを備え、
前記容器を密封する口栓に前記針部を突き刺して空気噴射流路及び排出流路と前記容器内部とを連通し、前記空気圧送手段によって前記空気噴射流路を通じて前記容器内に空気を噴射することにより、噴射空気の衝撃で前記凍結乾燥組成物を微粒子化し、得られた微粒子を前記排出流路を通じて吸入口から排出させるように構成したことを特徴とする経肺投与用の乾燥粉末吸入デバイス、または
ii) 容器内に非粉末状態で収容された凍結乾燥組成物を微粒子化し、得られた微粒子を被験者に吸入させるために用いられるデバイスであって、
吸引流路を有する針部と、空気導入流路を有する針部と、前記吸引流路に連通する吸入口とを備え、
前記容器を密封する口栓に前記針部を突き刺した状態で、被験者の吸気圧で前記吸入口から前記容器内の空気を吸入すると共に負圧となった容器内に前記空気導入流路を通じて前記容器内に空気を流入させることにより、流入した空気の衝撃によって前記凍結乾燥組成物を微粒子化して、得られた微粒子を前記吸引流路を通じて吸入口から排出させるように構成したことを特徴とする経肺投与用の乾燥粉末吸入デバイス
を用いる請求項15に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システム。
【請求項18】
(1)請求項14に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を収容した容器と、
(2) 上記容器内の凍結乾燥組成物に上記の空気衝撃を与えることのできる手段、及び微粒子化された粉末状の凍結乾燥組成物を排出する手段を備えたデバイスとを組み合わせて用いられる、請求項15に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システム。
【請求項19】
1回投与量のインターフェロン−γを含有する請求項1乃至14のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を収容した容器に、上記容器内の凍結乾燥組成物に少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有するの空気衝撃を与えることのできるデバイスを用いて、当該空気衝撃を備えた空気を導入し、
それによって上記凍結乾燥組成物を平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子とする,経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
【請求項20】
調製される微粒子の平均粒子径が5ミクロン以下であるか、または有効粒子割合が20%以上である、請求項19に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
【請求項21】
容器内の凍結乾燥組成物に少なくとも2m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気の衝撃を与えることのできる手段を有するデバイスを用いて、当該空気衝撃を備えた空気を凍結乾燥組成物を収容した容器に導入することによって行う、請求項19に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
【請求項22】
1回投与量のインターフェロン−γを含有する請求項14に記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を収容した容器に、上記容器内の凍結乾燥組成物に上記の空気衝撃を与えることのできるデバイスを用いて、当該空気衝撃を備えた空気を導入し、
それによって上記凍結乾燥組成物を平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子とする、請求項19に記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造方法。
【請求項23】
1回投与量のインターフェロン−γを含有する請求項1乃至14のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物に、使用時に少なくとも1m/secの空気速度及び少なくとも17ml/secの空気流量を有する空気衝撃を与えることによって平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上になるように微粒子化し、
該微粒子化された粉末を使用者に吸入により投与させることを含む、経肺投与方法。
【請求項24】
経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物が容器内に収容されており、微粒子化された粉末が、当該容器内の凍結乾燥組成物に上記の空気衝撃を与えることのできる手段と微粒子化された粉末状の凍結乾燥組成物を容器から排出する手段を備えたデバイスを用いて調製されるものである、請求項23に記載の経肺投与方法。
【請求項25】
請求項15乃至18のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ乾燥粉末吸入システムを使用して、微粒子化されたインターフェロン−γ乾燥粉末を使用者に吸入により投与させることを含む、請求項23に記載の経肺投与方法。
【請求項26】
請求項1乃至14のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物を、平均粒子径が10ミクロン以下または有効粒子割合が10%以上の微粒子に粉末化して用いる、該凍結乾燥組成物の吸入による経肺投与への使用。
【請求項27】
請求項1乃至14のいずれかに記載の経肺投与用インターフェロン−γ凍結乾燥組成物の、吸入による経肺投与用のインターフェロン−γ乾燥粉末製剤の製造のための使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2006−509825(P2006−509825A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−560629(P2004−560629)
【出願日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015957
【国際公開番号】WO2004/054605
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015957
【国際公開番号】WO2004/054605
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】
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