説明

経路変調により振幅及び位相を回復するためのシステム及び方法

【課題】不要波(スプリアス)の熱的及び機械的な外乱など望ましくない変動による影響を排除するために、経路長を制御及び変調するシステム及び方法を設計する。
【解決手段】分光計システム10は、電磁信号をサンプル・セル26を通過してレシーバ30に伝送するように構成されたトランスミッタ12を備えている。レシーバは、電磁信号とそれとミクシングするための別の電磁信号とを受信するように構成されている。トランスミッタ及びレシーバに向かう信号の伝搬経路は、トランスミッタに向かう電磁信号用の第1の伝搬経路18、及びレシーバに向かう他の電磁信号用の第2の伝搬経路32を備えている。また、それぞれの伝搬経路の長さを変える経路長変調装置40を備える。伝送された電磁信号の振幅及び位相を回復するように構成されたプロセッサ38が、伝送された電磁信号の振幅及び位相の関数として、サンプル媒体の複素屈折率を計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の例示的な実施形態は、全体的に、電磁信号を伝搬するシステム及び方法に関し、より詳細には、経路変調による振幅及び位相を回復するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スペクトル線幅が狭く、コヒーレンス長が長い持続波(CW)チューナブル光源を用いるスペクトロメトリには、高いスペクトル・コントラスト、周波数選択性及び優れた感度に関して周知の利点がある。スキャニング式CWテラヘルツ(THz)分光計は、この技術の最良な例である。そのようなシステムでは、トランスミッタ−レシーバ復調処理における位相安定性は、伝送された電界強度の正確な測定値を得るため及び分光計内のサンプルからの結果として生じる吸収損失を特徴付けるために必要とされる。しかしながら、不要波(スプリアス)の熱的及び機械的な外乱は、受け取った電界強度を変調する経路長内で望ましくない変動を発生する可能性がある。このため、ノイズ比及び安定性について復調信号を改良するために、経路長を制御及び変調するシステム及び方法を設計することが望ましい。
【発明の概要】
【0003】
上記の背景に照らして、本発明の実施形態は、経路変調により振幅及び位相を回復するための改良されたシステム及び方法を提供する。本発明の1つの態様によれば、このシステムは、1つ以上の選択可能な周波数のそれぞれにおいて、電磁信号をサンプル・セル(サンプル媒体とベース媒体とを含んでいる)を通ってレシーバに伝送するように構成されたトランスミッタを備えている。ここで、レシーバは、この電磁信号とミクシング用の別の電磁信号を受け取るように構成されている。この装置は、それぞれの伝搬経路の長さを変えるために、それぞれトランスミッタ又はレシーバへ向かう第1及び第2の信号用の伝搬経路のどちらか、又は第1及び第2の伝搬経路のそれぞれに沿って配置された装置も備えている。
【0004】
このシステムは、伝送された電磁信号の振幅及び位相を回復し、かつ伝送された電磁信号の振幅及び位相の関数として、サンプル媒体の複素屈折率を計算するように構成されたプロセッサも備えている。このプロセッサは、受け取られた電磁信号のサンプル・シーケンスを受け取り、そしてこのサンプル・シーケンスを離散フーリエ変換処理するように構成されうる。さらに、このシステムは、トランスミッタによって伝送された電磁信号を変調するように構成された変調器を備えることができる。ここで、変調器は、レシーバの1/fノイズ領域よりも高い周波数(例えば、ω)で電磁信号を変調するように構成されることができる。
【0005】
この装置は、それぞれの伝搬経路の長さを変えるように構成されて、第1及び第2の伝搬経路の長さの差が、トランスミッタからレシーバまで電磁信号が伝送する間、及びレシーバにおいてこの電磁信号や他の電磁信号を受け取る間に、あらかじめ選択された比率で変更される。この装置は、それぞれが第1及び第2の伝搬経路のそれぞれの1つに沿って配置される一対の装置を備えることができる。あらかじめ選択された比率で第1及び第2の伝搬経路の長さの差が増加できるようにするために、装置の一方は伝搬経路の1つの長さを増加するように構成され、他方の装置は、他の伝搬経路の長さを減少するように構成される。この装置は、例えば、スプール及びアクチュエータを備えることができる。そういった場合には、光ファイバーの伝搬経路はスプールで巻き取られて、またアクチュエータはスプールの直径を変更して、それぞれの伝搬経路の長さを変えるように構成されることができる。
【0006】
サンプル媒体の複素屈折率を計算するように構成されたプロセッサは、複素屈折率の実数部n及び虚数部kも計算するように構成されることができる。複素屈折率の実数部は、伝送された電磁信号の回復位相(recovered phase)φSAMPLEの関数として、またサンプル媒体なしのベース媒体を含むサンプル・セルを通過して伝送された電磁信号の回復位相φREFの関数として計算されることができる。同様に、複素屈折率の虚数部は、伝送された電磁信号の回復振幅(recovered amplitude)Eの関数として、またサンプル媒体なしのベース媒体を含むサンプル・セルを通過して伝送された電磁信号の回復振幅Eの関数として計算されることができる。例えば、複素屈折率の実数部は、下記に基づいて、計算されうる。
【数1】

ここで、λ(例えば、λTHz)は、伝送された電磁信号の波長を示し、Lはサンプル媒体を通過する伝搬経路長を表し、またnは自由空間屈折率(free-space index of refraction)を示す。そして、複素屈折率の虚数部は、下記に基づいて計算されることができる。
【数2】

【0007】
あらかじめ選択された比率は、電磁信号が伝送される周波数の関数として選択された比率を含むことができる。さらに詳細には、このあらかじめ選択された比率は、ドウェル時間にわたってそれぞれの周波数で伝送された電磁信号の1つ以上の波長にまたがるように選択された比率を含むことができる。1つの実施例では、例えば、あらかじめ選択された比率は、下記の周波数で経路長の変調を実現するために選択された比率ωFSを含むことができる。
【数3】

上記では、nは、伝搬経路の伝搬媒体の屈折率を示し、Sはあらかじめ選択された比率を表す。この点で、プロセッサは、第1の着目する周波数ω−ωFSでサンプル・シーケンスをDFT処理し、かつ第2の着目する周波数ω+ωFSでサンプル・シーケンスをDFT処理するように構成される。そして、あらかじめ選択された比率が周波数の関数として選択された比率を含むことができるので、あらかじめ選択された比率は、1つ以上の選択可能な周波数のそれぞれに対して選択された比率を含むことができる。ここで、周波数の1つに対して選択された比率は、別の周波数に対して選択された比率とは異なる可能性がある。
【0008】
本発明の別の態様によれば、経路変調によって振幅及び位相を回復する方法が提供される。このため、本発明の例示的な実施形態では、経路変調によって振幅及び位相を回復するための改良されたシステム及び方法が提供される。前述され、また以下で説明されるように、本発明の例示的な実施形態は、従来技術によって特定された問題を解決すると共に付加的な利点を提供することができる。
【0009】
本発明をこのように一般的な用語で説明してきたが、ここで添付の図面を参照する。これらの図面は、必ずしも縮尺通りには描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の1つの例示的な実施形態による分光計システムの概略ブロック図である。
【図2】本発明の例示的な実施形態に基づいて、周波数スペクトルを通して分光計システムを掃引する方法における種々のステップを示すフローチャートである。
【図3】本発明の例示的な実施形態に基づいて、周波数スペクトルを通して分光計システムを掃引する方法における種々のステップを示すフローチャートである。
【図4】本発明の例示的な実施形態によるフォトミキサー式レシーバの測定されたノイズ密度スペクトルを例示する図である。
【図5】本発明の例示的な実施形態によるレシーバにおいて、周波数ダウン変換を例示するスペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで本発明の好ましい実施形態が示されている添付した図面を参照して、本発明を以下で一層完全に説明する。しかしながら、この発明は多くの異なった形態で具体化することができ、また本願に記載された実施形態に限定されると解釈してはならない。むしろ、この開示内容が詳細で完全であり、そして発明の範囲を当業者に十分に伝えるように、これらの実施形態が提供される。この件について、等式によって関連付けられた多数の数学的又は数値的表現が、本願では参照される。しかしながら、この等式は絶対的又は近似の等式を指す可能性があり、本発明の例示的な実施形態により、技術的な許容差などによってシステム及び方法において生じ得るヴァリエーションを説明可能であることは理解されたい。さらに、多数の変数が様々な実例において添え字を含む数学的な記号によって表されるが、これらの記号や添え字は説明する目的に対してのみ示されるのであり、本発明の範囲を限定すると解釈してはならないことは理解されよう。同じ参照番号は、全体を通じて同じ構成部品を示している。
【0012】
図1及び図2は、本発明の例示的な実施形態から恩恵を受ける分光計のシステム及び方法を例示している(本願で使用されている「例示的な」という用語は、「例示、一例、又は例証として機能する」ことを指している)。しかしながら、例示されまた後で説明されるこの分光計のシステム及び方法は、本発明の例示的な実施形態から恩恵を受けるシステム及び方法の1つのタイプを例示しているだけであり、このため、本発明の範囲を限定すると解釈してはならないことは理解されたい。この件について、分光計のシステム及び方法に関する幾つかの実施形態が例示され、後で実施例のために説明されるが、電磁信号を伝搬する別のタイプのシステム及び方法は容易に本発明を使用できる。さらに、本発明のシステム及び方法は、電磁スペクトルのTHz(又はmmW)領域の信号に関連して主に説明される。しかし、本発明の実施形態のシステム及び方法は、電磁スペクトルのTHz領域の内側及び外側の両方で、種々の他のアプリケーションと共に使用されることができる。
【0013】
図示のように、本発明の1つの例示的な実施形態の分光計システム10は、所定の周波数のコヒーレント放射ビーム(電磁波)を伝送するように構成されたトランスミッタ12を備えている。このトランスミッタは、当業者に周知の多数の異なるトランスミッタのいずれかを用いて構成することができる。1つの例示的な実施形態では、例えば、このトランスミッタはフォトミキサー式トランスミッタ(photomixer transmitter)を備えている。そのような場合、トランスミッタは高速光導電性ダイオード(すなわち、フォトミキサー)を備える。この高速光導電性ダイオードは、ビーム・コンバイナ/スプリッタ16及び光結合された第1の光学経路18(例えば、光ファイバー)を介して2つのレーザ光源14a、14bで励起される。これに関して、レーザ光源は、ω及びωでオフセット周波数を含む電界(すなわち、Eω1及びEω2)を有する信号を放射するように構成される。このことは、フォトミキサー式トランスミッタでは、下記のように表される。
【数4】

ここで、E及びEは、それぞれ第1及び第2の光源からのビームの電界振幅を表し、またφ1T及びφ2Tは、第1の光学経路を通るビームの伝搬によって取り入れられた位相定数を示す。また、周波数ω及びωは、角周波数として又は対応する時間周波数(f=ω/2π)として表すことができることに注意されたい。
【0014】
クロス・ギャップ吸収(cross-gap absorption)の本質的な二次的性質は、トランスミッタ12のダイオード内で引き起こされた光電流の中の差(すなわち、伝送)周波数(すなわち、ω−ω)を作り出す。ここで、対応する電界は、下記のように表される。
【数5】

ここで、ηは、フォトミキサー式トランスミッタの変換効率ωTHz=ω−ω及びφ12T=φ2T−φ1Tを表す。トランスミッタ12は、正弦波変調電圧を発生するように構成された電源22を含むトランスミッタ用バイアス変調器20に接続される。この正弦波変調電圧を用いて、トランスミッタのフォトミキサーがバイアスされ、変調器は電界E=Vcos(ωt)を発生する。とはいえ、システムは信号を(周波数ωで)周波数変調する必要はないことは理解されよう。フォトミキサーを、スパイラル、ダイポール又はスロット・アンテナなどのアンテナの駆動点に配置することによって、差周波数電流が差周波数フォトンに変換される。この結果、非常にチューナブルで、連続波(CW)であり、1つの(擬似ガウス)空間モード内に含まれた、また伝送電界(transmitted electric field)ETMを有する、極めてコヒーレントな放射ソースが作られる。この伝送電界は、下記のように、EとEの積として表される。
【数6】

式(4)及び(5)では、φはφ12Tと、フォトミキサー及びアンテナ伝達関数に関連した位相遅延との合計を表す。これはかなり大きく、レシーバで検出されときに大きな信号変動を引き起こすことがある。そのようなトランスミッタに関するさらなる情報については、2002年2月19日に発行された「Quasi-Optical Transceiver Having an Antenna with Time Varying Voltage」という名称の米国特許第6,348,683号を参照されたい。
【0015】
このように、1つの実施形態の方法には、図2のブロック42と48に示されているように、伝送周波数を選択するステップ、その後に、トランスミッタ12からその周波数で放射ビーム(すなわち、ソース・ビーム)を伝送するステップが含まれる。この伝送周波数は、多数の異なる方法の幾つかの中から選択されることができる。しかしながら、測定された吸収シグナチャー(absorption signature)に基づいてサンプルを検出するために、伝送周波数が一般に、吸収シグナチャーが規定される周波数の範囲の中で選択される。次に、フォトミキサー式トランスミッタでは、フォトミキサーは、差周波数又は伝送周波数(すなわち、ω−ω)を選択するために選択される周波数ω及び周波数ωでチューナブル・レーザ光源を用いて励起されることができる。
【0016】
トランスミッタ12からの放射ビームは、コリメートされた放射ビームを作るためにコリメータ・レンズ24を通過する。次に、このビームは、サンプル・セル26を通過し、ビームが通過する反射器26a及び26bによってバウンドされ得る。サンプル・セル26は分析されるサンプル媒体と周囲空気などのベース媒体とを含むことができる。理解されるように、サンプル媒体とベース媒体は、放射ビームが少なくとも部分的に透過できる多数の種々の任意の形態を有することができる。例えば、サンプル媒体とベース媒体は、固体、液体、ガス、プラズマ又はエアゾールを含むことができる。より詳細には、種々の好ましい実施形態では、周囲空気のベース媒体をガスの形態にし、サンプルをガス又はエアゾールの形態にすることができる。
【0017】
放射ビームがサンプル・セル26を通過するため、このサンプル・セルの中のサンプル及びベース媒体は、ビームの少なくとも一部、より詳細には、ビームの電界の少なくとも一部を吸収する。放射ビームの残りの吸収されない部分(すなわち、受け取られた信号)は、次に、サンプル・セルを抜け出る。次に、サンプル信号は集束レンズ28に伝搬し、そこから集束された信号がレシーバ30によって取り出されるか、又は別の方法では受け取られる。この受け取られた信号ERPは、トランスミッタ12からレシーバへの信号の伝搬中に加えられた付加的な位相遅延を含んでおり、下記のように表される。
【数7】

ここで、Lはトランスミッタとレシーバとの間の伝搬距離を示しており、またλTHzは周波数ωTHzにおける信号の波長を表し、n及びkは、それぞれ、経路長L内のサンプルに対する複素屈折率の実数部及び虚数部(減衰係数)を示している。
【0018】
レシーバは、図2のブロック50で示されているような、受け取られた電界ERPを示す測定値を得る。トランスミッタ12と同様に、レシーバはフォトミキサー式レシーバ(ホモダイン・レシーバ)などの電界検出器を備えていても良い。このフォトミキサー式レシーバは、電界を受け取りまたそれに呼応して対応する電圧を発生するように構成されたアンテナを備えることができる。このアンテナは、高速光導電体に向けられ得る。この光導電体はまた、フォトミキサー式トランスミッタ12を励起する同じ2つのレーザ光源14a、14bからのビームで光導電体を励起するために、第2の光学経路32に電気的に接続されている。この関連で、ビーム・コンバイナ/スプリッタ16は、レーザ光源からの信号のそれぞれを、前述された第1の光学経路18と、レシーバ用フォトミキサーを励起するために別の第2の光学経路(例えば、光ファイバー)に分離することができる。次に、これらの信号は、以下に示されるように、フォトミキサーのコンダクタンスを変調することができる。
【数8】

ここで、ηはフォトミキサー式レシーバの変換効率を示し、またφ12R=φ2R−φ1R、φ1R及びφ2Rは、第2の光学経路を通ってビームが伝搬することによって取り入れられた位相定数を示す。
【0019】
レシーバ用アンテナによって発生された電圧はフォトミキサー活性物質に与えられ、また数式(6)と(7)との積である変調されたコンダクタンスを通過する電流を生ずることができる。積の結果の差周波数は、下記のように示される、ダウン変換された信号電流IDownである。
【数9】

ここで、
【数10】

対応するダウン変換された電界(すなわち、信号)Eが、次に、下記のように計算されうる。
【数11】

ここで、RLoadは、レシーバ30の電気的負荷抵抗を示す。このようなレシーバに関するさらに多くの情報については、前述された’638号の特許を参照されたい。
【0020】
ダウン変換された信号電流IDown及び/又は電界(すなわち、信号)Eは、例えばエイリアス除去フィルタ36を含むレシーバ信号コンディショニング回路34に与えられる。次に、この信号コンディショニング回路の出力は、例えばディジタル信号処理動作を実行するプロセッサ38に入力される。この点に関しては、このプロセッサは、本発明の例示的な実施形態に基づいて動作することができる多数の種々のプロセッサ装置のいずれかを用いて構成することができる。例えば、このプロセッサは、コンピュータ(例えば、パーソナル・コンピュータ、ラップトップ・コンピュータ、サーバ・コンピュータ、ワークステーション・コンピュータ)、マイクロプロセッサ、コプロセッサ、コントローラ、専用のディジタル信号プロセッサ及び/又はASIC(特定用途向け集積回路)、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ)などの集積回路を含む様々な他の処理装置を備えることができる。
【0021】
分光計システム10が信号を(周波数ωで)周波数変調する場合、プロセッサ38が実行する信号処理動作には、変調周波数ωでアナログ−ディジタル変換器(A/D)39で信号を直接サンプリングすること、及びサンプル・データをプロセッサの離散フーリエ変換(DFT)処理を行うことなどによって、ダウン変換された信号Eの振幅を回復する動作が含まれる。別の方法では、例えば、分光計システムは、ダウン変換された信号Eをさらに処理するために、ロックイン増幅器(図示せず)などの同期式復調器をさらに備えることができる。この点に関して、そのような同期式復調器は、変調周波数ωで動作する局部発振器を備えて、これによりダウン変換された信号の振幅を回復することができる。
【0022】
分光計としての動作に当たっては、システム10は、図2のブロック54及び56の中で示されているように、周波数ω及び周波数ωでチューナブル・レーザ光源を用いて、多数の周波数を通してスキャンされるトランスミッタ12及びレシーバ30のフォトミキサーを励起することなどによって、周波数範囲の多数の伝送周波数を通してスキャンする。周波数範囲の各伝送周波数に対して、またこれにより異なる伝送周波数を有する各放射ビームに対して、プロセッサ38はダウン変換された信号電流Idownの振幅及び/又は位相を測定することができる。結果として生じた伝送振幅及び/又は位相、及び関連付けられた伝送周波数の収集物により、図2のブロック58の中で示されているように、サンプルが識別されるサンプル・セル26内のサンプルに対して測定された吸収又は分散シグナチャーを明確にすることができる。
【0023】
背景技術のセクションで説明されたように、特定の光透過システム(例えば、分光計システム)では、スプリアスの熱的又は機械的な外乱が、受け取られた電界位相やダウン変換された振幅を変調する望ましくない変動を経路長内で発生する。このため、本発明の例示的な実施形態は、伝達された信号の振幅エラーを発生する可能性がある経路長の不安定性を少なくとも部分的に取り除くために、第1又は第2の光学経路18、32の一方又は両方の経路長を変調する装置及び方法を提供する。与えられた経路長を変調することにより、スキャニング式分光計の各スペクトル点(選択された周波数)を測定する比較的短いドウェル時間の間に、伝達された信号の振幅を回復することができる。この関連で、スプリアス経路変動による位相変調が、伝達された周波数の複数の波長にわたって意図的に経路が広げられることによって緩和される。そして、複数の波長変調により、伝達された信号の完全な振幅がみられ、信号の振幅内のエラーが抑制される。
【0024】
例証的な実施形態によれば、分光計システム10は、第1の光学経路又は第2の光学経路のいずれかに沿って、又は図示のように、第1及び第2の光学経路のそれぞれに沿って配置された経路長変調装置40をさらに備えている。例証的な実施形態では、経路長の変調が光学経路のいずれか又は両方に同じ程度又は異なる程度で行われて、これによりシステム全体の経路長の広がりが実現される。この関連で、両方の光学経路に同時に変調が行われる場合、結果として生じたシステム経路の変調又は拡大は、第1及び第2の光学経路に加えられた変調の差に対応し、そして他方の経路が広げられる(長さが増加される)ため、一方の経路が短縮すること(長さが縮小すること)が要求され得る。
【0025】
経路長変調装置40は、光路長を動的に拡張又は縮小するように構成された多数の装置のいずれかを備えることができる。光学経路が光ファイバーを含む1つの例示的な実施形態では、経路長変調装置は、光ファイバーを巻き取ることができるスプールと、このスプールの直径を広げて、これによりそこに巻かれたファイバーの長さを伸ばすように構成されたスプールに連結されたアクチュエータ(例えば、圧電性アクチュエータ)を備えている。そのような場合、光ファイバーを短縮することは、スプールとこれによりファイバーとに前に与えられた広がりを減らすことによって実現されることができる。
【0026】
次に、本発明の代表的な実施形態によれば、レーザ光源14a、14bがフォトミキサー式トランスミッタ12を励起して、これにより選択された周波数で放射ビームを伝送する前に(図2のブロック48を参照のこと)、経路長のレート倍率(Rate Scale Factor)Sが、図3のブロック46に示されているように、例えばプロセッサ38によって選択される。この経路長のレート倍率は、スキャンされたスペクトルの各周波数サンプル点におけるドウェル時間(すなわち、システムが次の点に移動する前に、各周波数のサンプル点で動作する時間)の間に、システム・ストレッチ(一方又は両方の光学経路のストレッチ、又は他の経路の短縮と一体になった1つの経路のストレッチ)を加える比率を表す。
【0027】
経路長のレート・スケール(rate scale)は、各周波数サンプルにおけるドウェル時間にわたって、光学経路18、32の中で(異なる周波数で)励起信号の1つ以上の波長を広げるような方法で、望ましい経路長の変調を実現するために、多数の種々の方法のいずれかの中で選択されることができる。より詳細には、例えば、経路長のレート・スケールは、下記のような数式に基づいて、励起信号の期間の整数の倍数として選択されうる。
【数12】

ここで、aは選択可能な整数の倍数(例えば、3)を表し、λTHzは差周波数の励起信号の波長を表し、またDはドウェル時間(例えば、0.03秒)を表す。差周波数fTHzに置き換えて書き直すと、経路長のレート・スケールは下記のように選択される。
【数13】

ここで、nは、光学経路の伝搬媒体の屈折率を示す(例えば、光ファイバーに対して約1.5)。例えば、a=3、D=0.03s、fTHz=650GHz、そしてn=1.5の場合を検討する。そのような場合、c=3×10m/sであることを考えると、経路長のレート倍率Sは、約30.77mm/sとして選択される。
【0028】
経路長を変調する周波数が比較的低いと分光計システム10内のノイズが増加するため、経路長のレート・スケール係数が選択される前、選択される時、又は選択される後で、トランスミッタ変調周波数ωが、ブロック44で示されているように、搬送波がレシーバの電子部品の1/fノイズ領域よりも高くなるように選択される。この変調周波数の選択により、システムは、経路長を変調する比較的低い周波数においてノイズが増加することを少なくとも部分的避けることができる。トランスミッタ変調周波数は、レシーバの測定されたノイズ密度スペクトルを分析することなどの多数の異なる方法の中で選択される。測定されたノイズ密度スペクトルの1つの実施例は、図4のグラフで示されている。図示のように、レシーバの部品の1/fノイズ領域は、約1kHzである。そして、この代表的なノイズ密度のスペクトルからは、10kHz以上のトランスミッタの変調周波数ωが、過剰な1/fノイズを少なくとも部分的に避けるために必要とされる。
【0029】
経路長のレート倍率S及びトランスミッタの変調周波数ωが選択されると、図3のブロック48に示されているように、選択された伝送周波数で放射ビーム(すなわち、光源のビーム)を伝送するステップを含む前述された類似の方法が進行する。放射ビームが選択された伝送周波数のドウェル時間の間に伝送されるため、プロセッサ38は、光路長変調装置40(又はより詳細には、例えば、装置のアクチュエータ)を制御して、第1の光学経路18及び/又は第2の光学経路32を伸長及び/又は短縮し、システムの経路長全体を達成する。そのような場合、放射された信号Eω1及びEω2は、下記の数式のように表される。
【数14】

次に、トランスミッタ12のダイオードの中で発生した光電流内の差周波数(すなわち、伝送周波数)(すなわち、ω−ω)は、対応する電界を有する。
【数15】

ここで、ωFSは、差周波数における経路長変調周波数を表し、下記のように表される。
【数16】

【0030】
前と同様に、トランスミッタ12は、正弦波変調電圧を発生するように構成された電源22を備えているトランスミッタ・バイアス変調器20に接続される。この正弦波変調電圧を用いて、トランスミッタのフォトミキサーはバイアスされ、変調器は電界E=Vcos(ωt)を発生する。次に、伝送された電界は下記のように、EとE=Vcos(ωt)の積として表される。
【数17】

【0031】
トランスミッタからの放射ビームは、前述されたように、コリメーティング・レンズ24とサンプル・セル26を通過する。放射ビームの一部は、サンプル・セルを出射し、集束レンズ28を通過し、そしてブロック50に示されているように、レシーバ30で捕捉又は別の方法では受け取られる。そして、下記でさらに説明されまたブロック52で示されているように、この受け取られた信号から、サンプルの複素屈折率が計算されることができる。この受け取られた信号ERPは、下記のように表される。
【数18】

【0032】
レシーバ30はこの電界を受け取り、またそれに呼応して、対応する電圧を発生する。このレシーバが発生した電圧は、フォトミキサー活性物質に与えられて、式(18)と(7)の積である変調されたコンダクタンスを通して電流を発生する。この積の結果として生じた差周波数は、下記のように表すことができるダウン変換された信号電流IDownである。
【数19】

次に、対応するダウン変換された電界(すなわち、信号)Eは、下記に基づいて計算され、
【数20】

そして下記のように単純化される。
【数21】

前記の数式において、Lは自由空間屈折率(free-space index of refraction)n(=1)を有する基準媒体又は自由空間媒体内の伝送経路長を表し、Lは屈折率
【数22】

(n及びkは、それぞれ複素屈折率
【数23】

の実数部及び虚数部を示す)を有しサンプル媒体のサンプルの厚さ、すなわちサンプル媒体を通過する伝送経路長を示し、またE及びφは、下記のように表すことができる。
【数24】

ここで、Eは吸収がない場合(すなわち、k=0)の信号の振幅を表す。この結果は、図5のスペクトル図で例示されているように、レシーバのフォトミキサーの混合生産物(mixing product)である。
【0033】
また前述されたように、ダウン変換された信号電流IDown及び/又は電界(すなわち、信号)Eは、レシーバ信号コンディショニング回路34に与えられ、次にプロセッサ38に入力されて、ダウン変換された信号Eの振幅を回復できる。式(20)及び(21)では、一定位相項(constant phase term)φが、温度と機械的な外乱の関数として経路長のドリフトと共に変化する。本発明の例示的な実施形態による経路長の変調を実行することによって、受け取られた信号の振幅は、信号の位相に影響する任意の経路のドリフトよりも遙かに高い周波数で抽出されることができる。また、受け取られた信号の振幅及び位相から、サンプルの複素屈折率が計算される。
【0034】
より詳細には、本発明の1つの例示的な実施形態によれば、ダウン変換された信号Eの振幅は、変調周波数ωでアナログ−ディジタル変換器(A/D)39で信号Eを直接サンプリングすること、及びサンプル・データをプロセッサの離散フーリエ変換(DFT)処理を行うことによって回復されることができる。これに関連して、A/Dからの信号出力のサンプル値のシーケンスは、下記のように表される。
【数25】

ここで、bはサンプル・シーケンスb=0,1,2,3,...B−1の指数を示し、Bはサンプル数を示し、またτはωFS+ωでエイリアシングが確実に生じないように選択されたサンプリング時間間隔(秒)を表す。
【0035】
一連のサンプル値Eが、プロセッサ38によって受け取られ得る。このプロセッサ38は次に、サンプル値のDFT処理を行うことができる。オイラーの公式を複合シーケンス(complex sequence)x(n×τ)のDFT X(f)に適用すると、DFTは下記のように表される。
【数26】

ここで、fは、(Hz単位で)DFTが評価される正弦波の周波数を表す。着目する周波数をω−ωFSと仮定し、周波数2πf=ω−ωFSを設定し、さらに2/Nの正規化を適用すると、サンプル値EのDFTは下記のように表される。
【数27】

一連の関数を着目する周波数ω+ωFSに等しく適用して(2πf=ω+ωFSを設定)、下記の式を生じることができる。
【数28】

【0036】
プロセッサ38は、DFTの式(24)及び(25)の関数として、着目する周波数成分(ω−ωFS)及び(ω+ωFS)に対してのみ、振幅及び位相を計算することができる。これらの結果は、式(20)及び(21)によって示されるように、振幅が等しく、位相が逆の記号の複素数値になる。次に、報告され伝送された振幅は、上記の2つの振幅の平均として計算され得る。位相情報は、伝搬経路内の媒体の複素屈折率を導き出すために使用することができる。特に、信号帯域幅を処理することは、結果として幅が全サンプル時間、すなわちB×τである長方形のウィンドウの変形によって制限される。高速フーリエ変換処理では一般的なウィンドウ処理機能を、処理する通過帯域のサイドローブ(sidelobe)や幅を管理するために適用することができる。
【0037】
屈折率の実数部(すなわち、n又はn)につながる位相情報は、下記のように、式(24)及び(25)から得ることができる。
【数29】

下方側波帯(ω−ωFS)成分を用いて同様の計算を行うと、結果として符合が逆、すなわち負の、同じ位相値が得られる。伝送経路
【数30】

内のサンプルの複素屈折率は、まず最初にサンプル媒体なしのベース媒体(例えば、周囲空気)を含むサンプル・セル26を通過する伝送信号に対して、振幅(E)及び位相(φREF)の基準測定値を得る、又は別の方法では、回復する(例えば、プロセッサ38の中に、又は別の方法では、プロセッサ38に関連付けて取り入れられたメモリから)ことによって、式(20)で表された測定された振幅及び位相から得ることができる。次に、セルに挿入されたサンプル媒体を用いて、振幅(E)及び位相(φSAMPLE)のサンプル測定値が、サンプル及びベース媒体を含むサンプル・セルを通過する伝送信号から得ることができる。基準位相及びサンプル位相は、下記のように表すことができる。
【数31】

基準及びサンプルの振幅は式(24)及び(25)として示されることができ、また下記の式を得るように、着目する周波数成分(ω−ωFS)及び(ω+ωFS)にわたって平均化されうる。
【数32】

【0038】
前の測定値及びそれらの表示から、サンプルの屈折率の実数部は、下記のように得ることができる。
【数33】

(φREF−φSAMPLE)>2πの場合に結果として発生する2π位相アンビギュイティ(2π phase ambiguity)を避けて、これによりL×(n−n)<λTHzという制約が実行され得ることが望ましいことに注意されたい。これは指数がほぼ1のガス・サンプルに対しては問題にならないかもしれないが、固体や液体については薄いサンプルを用いて実行することができる。
【0039】
サンプルの屈折率の虚数部k(すなわち、減衰係数)は、下記のように計算されることができる。式(20)、並びに式(29)及び(30)から、基準及びサンプルの振幅E及びE間に下記の関係を得ることができる。
【数34】

また、この式から、減衰係数は下記のように計算されうる。
【数35】

【0040】
前述されたように、システム10は、図3のブロック54及び56に示されているように、周波数の範囲の中で多数の伝送周波数をスキャンすることができる。経路長のレート・スケール係数Sが伝送周波数の関数として選択され得るため(式11を参照のこと)、この経路長のレート・スケール係数Sは各伝送周波数に対して再選択され、また1つの伝送周波数から次の周波数まで異なっている可能性がある。周波数範囲の各伝送周波数に対して、またこれにより異なる伝送周波数を有する各放射ビームに対して、プロセッサ38は、ダウン変換された信号電流IDownの振幅及び/又は位相を測定することができる。結果として生じた伝送振幅及び/又は位相、及び関連付けられた伝送周波数のコレクションは、図3のブロック58に示されているように、サンプルが識別されるサンプル・セル26内のサンプルに対して測定された吸収又は分散シグナチャーを明確にすることができる。
【0041】
本発明の多くの変形例及び他の実施形態は、前述された説明及び関連した図面の中で提示された教示の利点を有する本発明が属する技術分野に精通した者には思い浮かぶであろう。従って、本発明は開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、また変形例及び他の実施形態は添付された特許請求の範囲の中に含まれるものとすることは理解されたい。本願の中で特定の用語が使用されるが、それらの用語は一般的でありまた説明のためのみに使用されるものであり、本発明の範囲を限定する目的で使用されたものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスミッタ及びレシーバと、
第1及び第2の伝搬経路のどちらか、又は前記第1及び第2の伝搬経路のそれぞれに沿って配置された装置と、
伝送された電磁信号の振幅及び位相を回復し、前記伝送された電磁信号の振幅及び位相の関数として、サンプル媒体の複素屈折率を計算するように構成されたプロセッサと、
を備え、
前記トランスミッタが、電磁信号を1つ以上の選択可能な周波数のそれぞれにおいて、サンプル・セルを通って前記レシーバに伝送するように構成され、前記サンプル・セルはサンプル媒体とベース媒体とを含み、前記レシーバは前記電磁信号とそれとミクシングするための他の電磁信号とを受け入れるように構成され、システムが前記トランスミッタへ向かう前記電磁信号の第1の伝搬経路と、前記レシーバへ向かう他の電磁信号の第2の伝搬経路とを含み、
前記装置がそれぞれの伝搬経路の長さを変えるように構成されて、前記第1及び第2の伝搬経路の長さの差が、前記トランスミッタから前記レシーバへ前記電磁信号を伝送する間にあらかじめ選択された比率で変更され、前記電磁信号と他の電磁信号が前記レシーバで受信される、システム。
【請求項2】
前記伝送された電磁信号の振幅及び位相を回復するように構成された前記プロセッサが、受け取られた電磁信号のサンプル・シーケンスを受け取り、前記サンプル・シーケンスを離散フーリエ変換処理するようにさらに構成される、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記サンプル媒体の複素屈折率を計算するように構成された前記プロセッサが、複素屈折率の実数部と虚数部とを計算するようにさらに構成され、前記複素屈折率の実数部が前記伝送された電磁信号の前記回復された位相の関数として、またサンプル媒体なしのベース媒体を含む前記サンプル・セルを通って伝送された電磁信号の回復された位相の関数として計算される、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
複素屈折率の実数部を計算するように構成された前記プロセッサが、下記に基づいて複素屈折率の実数部nを計算するようにさらに構成され、
【数1】

ここで、φSAMPLEが前記伝送された電磁信号の前記回復された位相を表し、φREFがサンプル媒体なしのベース媒体を含む前記サンプル・セルを通って伝送された電磁信号の回復された位相を示し、λがそれぞれの周波数における前記電磁信号の前記波長を表し、Lが前記サンプル媒体を通る伝搬経路長を示し、nが自由空間屈折率を示す、ことを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記サンプル媒体の複素屈折率を計算するように構成された前記プロセッサが、複素屈折率の実数部と虚数部とを計算するようにさらに構成され、前記複素屈折率の虚数部が前記伝送された電磁信号の前記回復された振幅の関数として、また前記サンプル媒体なしの前記ベース媒体を含む前記サンプル・セルを通って伝送された電磁信号の回復された振幅の関数として計算される、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記複素屈折率の前記虚数部を計算するように構成された前記プロセッサが、下記に基づいて複素屈折率の虚数部kを計算するようにさらに構成され、
【数2】

ここで、Eが前記伝送された電磁信号の前記回復された振幅を表し、Eが前記サンプル媒体なしの前記ベース媒体を含む前記サンプル・セルを通って伝送された電磁信号の前記回復された振幅を示し、λがそれぞれの周波数における前記電磁信号の前記波長を表し、Lが前記サンプル媒体を通る伝搬経路長を示す、ことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記装置は、それぞれが前記第1及び第2の伝搬経路のそれぞれに沿って配置された一対の装置を備え、前記装置の一方が前記伝搬経路の一方の長さを増加するように構成され、前記装置の他方が前記伝搬経路の他方の長さを減少するように構成されて、前記第1及び第2の伝搬経路の長さの差が前記あらかじめ選択された比率で増加される、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記トランスミッタによって伝送された前記電磁信号を変調するように構成された変調器をさらに備え、前記変調器が、前記レシーバの1/fノイズ領域よりも高い周波数で前記電磁信号を変調するように構成される、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記あらかじめ選択された比率は、下記の周波数で経路長の変調を実現するために選択された比率ωFSを含み、
【数3】

ここで、λはそれぞれの周波数における前記電磁信号の波長を表し、nは、伝搬経路の伝搬媒体の屈折率を示し、Sは前記あらかじめ選択された比率を表す、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記トランスミッタによって伝送された前記電磁信号を変調するように構成された変調器をさらに備え、前記変調器は周波数ωで前記電磁信号を変調するように構成され、
前記伝送された電磁信号の振幅及び位相を回復するように構成された前記プロセッサが、受け取られた電磁信号のサンプル・シーケンスを受け取り、前記サンプル・シーケンスを第1の着目する周波数ω−ωFSで離散フーリエ変換(DFT)処理し、前記サンプル・シーケンスを第2の着目する周波数ω+ωFSでDFT処理するようにさらに構成される、
ことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
第1及び第2の伝搬経路の長さの差を変更する比率を選択するステップであって、前記第1の伝搬経路はトランスミッタに向かう電磁信号用であり、前記トランスミッタは前記電磁信号をサンプル・セルを通過してレシーバに伝送するように構成され、前記レシーバは前記電磁信号とそれとミクシングするための他の電磁信号とを受信するように構成され、前記第2の伝搬経路は前記レシーバに向かう前記他の電磁信号用である、ステップと、
前記電磁信号を前記トランスミッタからサンプル・セルを通って前記レシーバに1つ以上の選択可能な周波数のそれぞれで伝送するステップ、及び前記電磁信号と前記他の電磁信号とを前記レシーバで受信するステップであって、前記サンプル・セルは、サンプル媒体とベース媒体とを含む、ステップと、
前記電磁信号が前記トランスミッタから前記レシーバに伝送されるとき、及び前記電磁信号及び前記他の電磁信号が前記レシーバで受信されるときに、前記第1又は第2の伝搬経路のどちらか又は両方の長さを変更するステップであって、前記伝搬経路のどちらか又は両方を、前記第1及び第2の伝搬経路の長さの差を選択された比率で変更するように変更するステップと、
前記伝送された電磁信号の振幅及び位相を回復するステップと、前記サンプル媒体の複素屈折率を、前記伝送された電磁信号の前記振幅及び位相の関数として計算するステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記伝送された電磁信号の振幅及び位相を回復するステップが、受信された電磁信号のサンプル・シーケンスを受け取り、前記サンプル・シーケンスを離散フーリエ変換処理するステップを含む、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記サンプル媒体の複素屈折率を計算するステップが、複素屈折率の実数部と虚数部とを計算するステップを含み、前記複素屈折率の実数部が伝送された電磁信号の回復された位相の関数として、またサンプル媒体なしのベース媒体を含む前記サンプル・セルを通って伝送された電磁信号の回復された位相の関数として計算される、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記複素屈折率の実数部を計算するステップが、下記に基づいて複素屈折率の実数部nを計算するステップを含み、
【数4】

ここで、φSAMPLEが前記伝送された電磁信号の回復された位相を表し、φREFがサンプル媒体なしのベース媒体を含む前記サンプル・セルを通って伝送された電磁信号の回復された位相を示し、λがそれぞれの周波数における電磁信号の波長を表し、Lがサンプル媒体を通る伝搬経路長を示し、nが自由空間屈折率を示す、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記サンプル媒体の複素屈折率を計算するステップが、前記複素屈折率の実数部と虚数部とを計算するステップを含み、前記複素屈折率の虚数部が、伝送された電磁信号の回復された振幅の関数として、またサンプル媒体なしのベース媒体を含む前記サンプル・セルを通って伝送された電磁信号の回復された振幅の関数として計算される、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
複素屈折率の虚数部を計算するステップが、下記に基づいて複素屈折率の虚数部kを計算するステップを含み、
【数5】

ここで、Eが前記伝送された電磁信号の前記回復された振幅を表し、Eが前記サンプル媒体なしの前記ベース媒体を含む前記サンプル・セルを通って伝送された電磁信号の前記回復された振幅を示し、λがそれぞれの周波数における前記電磁信号の波長を表し、Lがサンプル媒体を通る伝搬経路長を示す、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記長さを変更するステップが、前記一方の伝搬経路の長さを増加するステップと、前記他方の伝搬経路の長さを減少するステップとを含み、前記第1及び第2の伝搬経路の長さの差が前記選択された比率で増加される、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記トランスミッタによって伝送された前記電磁信号を変調するステップをさらに含み、前記電磁信号が、前記レシーバの1/fノイズ領域よりも高い周波数で変調される、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記比率を選択するステップが、下記の周波数で経路長の変調を実現するために比率ωFSを選択するステップを含み、
【数6】

ここで、λはそれぞれの周波数における前記電磁信号の波長を表し、nは、伝搬経路の伝搬媒体の前記屈折率を示し、Sは前記あらかじめ選択された比率を表す、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記トランスミッタによって伝送された前記電磁信号を変調するステップをさらに含み、前記電磁信号が周波数ωで変調され、
前記伝送された電磁信号の振幅及び位相を回復するステップが、受信された電磁信号のサンプル・シーケンスを受け取るステップと、前記サンプル・シーケンスを第1の着目する周波数ω−ωFSで離散フーリエ変換(DFT)処理するステップと、前記サンプル・シーケンスを第2の着目する周波数ω+ωFSでDFT処理するステップと、を含む
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−174929(P2011−174929A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−39897(P2011−39897)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(501348092)グッドリッチ コーポレイション (17)
【Fターム(参考)】