説明

経路探索システム、経路探索方法およびプログラム

【課題】 渋滞等を回避すると共に通行しやすい経路を探索することができる経路探索システムを提供する。
【解決手段】
経路探索システム1は、経路探索装置10と複数の車両20を備える。経路探索装置10は、複数の車両から送信される道路通過情報を受信する受信部11と、受信した道路通過情報を車両毎に記憶する道路通過情報記憶部12と、道路通過情報記憶部12から所定期間における道路通過情報を読み出し、車両別に道路の各リンクを通過した回数を求め、通過した回数が多い方から所定数のリンクを車両別の常用リンクとして求め、複数の車両について求めた車両別の常用リンクに基づいて地元住民の常用リンクを算出する地元常用リンク算出部13と、地元住民の常用リンクのデータを用いて経路を探索する経路探索部15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的地までの経路を探索する経路探索システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、経路探索及び経路案内を行うナビゲーション装置が広く普及している。ナビゲーション装置は、出発地から目的地までの経路を探索してドライバに提示する。経路の一部に渋滞が発生している場合には、渋滞を回避する迂回路を探索するナビゲーション装置も知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載されたような従来のナビゲーション装置で探索される経路は、必ずしも車両が通行しやすい経路であるとは限らなかった。特許文献2は、プローブカーの通行台数を表すカウント値を用いて経路探索を行う経路探索システムを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−20414号公報
【特許文献2】特開2009−25184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献2に記載された経路探索システムは、多くのプローブカーの通る経路を推奨するので、通行しやすい道路を提示することができる。しかし、特許文献2の経路探索システムは、多数の車両が通行する混雑しやすい経路を推奨してしまい、ドライバにとって好ましい経路探索が行えない場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記背景に鑑み、渋滞等を回避すると共に通行しやすい経路を探索することができる経路探索システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の経路探索システムは、複数の車両から送信される道路通過情報を受信する受信部と、受信した道路通過情報を車両毎に記憶する道路通過情報記憶部と、前記道路通過情報記憶部から所定期間における道路通過情報を読み出し、車両別に道路の各リンクを通過した回数を求め、通過した回数が多い方から所定数のリンクを車両別の常用リンクとして求め、複数の車両について求めた車両別の常用リンクに基づいて地元住民の常用リンクを算出する地元常用リンク算出部と、前記地元住民の常用リンクのデータを用いて経路を探索する経路探索部とを備える。
【0008】
このように車両別に求めた通過回数が多い常用リンクは、車両のドライバの自宅や会社の周辺であると考えられ、ドライバが良く知っている周辺道路の中から選ばれた走行しやすい道路であると考えられる。複数の車両について求めた車両別の常用リンクを総合することにより、地元住民が良く使う常用リンクのデータを求めることができる。この常用リンクのデータを用いて経路探索を行うことにより、周辺の道路事情を良く知った地元住民が使うリンクを含む経路を探索することができる。なお、常用リンクとして求めるリンクの数(「所定数」)は、あらかじめ設定しておいてもよいし、通過回数が多い方からリンクを選んでいって、選んだリンクの総通過回数が全リンクの総通過回数の何割かに達するまでというような基準により決定してもよい。
【0009】
本発明の経路探索システムは、複数の車両から送信される道路通過情報および目的地情報を受信する受信部と、受信した道路通過情報を車両毎に記憶する道路通過情報記憶部と、受信した目的地情報を車両毎に記憶する目的地情報記憶部と、前記目的地情報記憶部から目的地情報を読み出し、車両別に目的地となった回数の最も多い位置を求める最頻目的地算出部と、前記道路通過情報記憶部から所定期間における道路通過情報を読み出し、最頻目的地を含む所定範囲内にある道路のリンクのうち、所定の基準より多く通過したリンクを車両別の常用リンクとして求め、複数の車両について求めた車両別の常用リンクに基づいて地元住民の常用リンクを算出する地元常用リンク算出部と、前記地元住民の常用リンクのデータを用いて経路を探索する経路探索部とを備える。
【0010】
最頻目的地は、ドライバの自宅や会社であると考えられ、最頻目的地の周辺はドライバが道路事情を良く知っている地域であると考えられる。このような最頻目的地を含む所定範囲内にある道路のリンクのうちで所定の基準より多く通過した常用リンクは、ドライバが良く知っている周辺道路の中から選んだ走行しやすい道路である。ここで、「所定の基準」は、あらかじめ回数の閾値を設定しておいてもよいし、リンクを通過した全回数の何パーセント以上の回数という閾値を設定しておいてもよい。複数の車両について求めた車両別の常用リンクを総合することにより、地元住民が良く使う常用リンクのデータを求めることができる。この常用リンクのデータを用いて経路探索を行うことにより、周辺の道路事情を良く知った地元住民が使うリンクを含む経路を探索することができる。なお、「目的地」とは、車両が停止してエンジンを切った場所であり、立寄地、経由地も含む。
【0011】
地元住民の常用リンクのデータを用いて経路探索を行う方法としては、(1)前記経路探索部は、前記地元住民の常用リンクのリンクコストを前記地元住民の常用リンクではないリンクより下げて、経路探索を行う、(2)前記経路探索部は、前記地元住民の常用リンクのデータを用いないで経路探索を行い、求められた経路の一部に前記地元住民の常用リンクからなる経路で置き換え可能な経路がある場合には、前記経路の一部を前記地元住民の常用リンクからなる経路で置き換える、(3)前記経路探索部は、目的地と出発地とをつなぐ直線から所定の距離内にある前記地元常用リンクを経由地として設定して、経路探索を行う、などの方法を採用することができる。
【0012】
本発明の経路探索システムは、渋滞情報を取得する渋滞情報取得部を有し、前記経路探索部は、前記地元住民の常用リンクを用いないで経路探索を行い、求められた経路の一部に渋滞箇所が存在する場合には、前記経路の一部を前記地元住民の常用リンクからなる経路で置き換えてもよい。この構成により、周辺の道路事情を良く知った地元住民が使う抜け道等により渋滞を回避した経路を探索できる。
【0013】
本発明の経路探索方法は、複数の車両から送信される道路通過情報を受信するステップと、受信した道路通過情報を車両毎に道路通過情報記憶部に記憶するステップと、前記道路通過情報記憶部から所定期間における道路通過情報を読み出し、車両別に道路の各リンクを通過した回数を求め、通過した回数が多い方から所定数のリンクを車両別の常用リンクとして求め、複数の車両について求めた車両別の常用リンクに基づいて地元住民の常用リンクを算出するステップと、前記地元住民の常用リンクのデータを用いて経路を探索するステップとを備える。
【0014】
本発明の経路探索方法は、複数の車両から送信される道路通過情報および目的地情報を受信するステップと、受信した道路通過情報を車両毎に道路通過情報記憶部に記憶するステップと、受信した目的地情報を車両毎に目的地情報記憶部に記憶するステップと、前記目的地情報記憶部から目的地情報を読み出し、車両別に目的地となった回数の最も多い位置を求めるステップと、前記道路通過情報記憶部から所定期間における道路通過情報を読み出し、最頻目的地を含む所定範囲内にある道路のリンクのうち、所定の基準より多く通過したリンクを車両別の常用リンクとして求め、複数の車両について求めた車両別の常用リンクに基づいて地元住民の常用リンクを算出するステップと、前記地元住民の常用リンクのデータを用いて経路を探索するステップとを備える。
【0015】
本発明のプログラムは、経路を探索するためのプログラムであって、コンピュータに、複数の車両から送信される道路通過情報を受信するステップと、受信した道路通過情報を車両毎に道路通過情報記憶部に記憶するステップと、前記道路通過情報記憶部から所定期間における道路通過情報を読み出し、車両別に道路の各リンクを通過した回数を求め、通過した回数が多い方から所定数のリンクを車両別の常用リンクとして求め、複数の車両について求めた車両別の常用リンクに基づいて地元住民の常用リンクを算出するステップと、前記地元住民の常用リンクのデータを用いて経路を探索するステップとを実行させる。
【0016】
本発明のプログラムは、経路を探索するためのプログラムであって、コンピュータに、複数の車両から送信される道路通過情報および目的地情報を受信するステップと、受信した道路通過情報を車両毎に道路通過情報記憶部に記憶するステップと、受信した目的地情報を車両毎に目的地情報記憶部に記憶するステップと、前記目的地情報記憶部から目的地情報を読み出し、車両別に目的地となった回数の最も多い位置を求めるステップと、前記道路通過情報記憶部から所定期間における道路通過情報を読み出し、最頻目的地を含む所定範囲内にある道路のリンクのうち、所定の基準より多く通過したリンクを車両別の常用リンクとして求め、複数の車両について求めた車両別の常用リンクに基づいて地元住民の常用リンクを算出するステップと、前記地元住民の常用リンクのデータを用いて経路を探索するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、周辺の道路事情を良く知った地元住民が使うリンクを含む経路を探索し、走行しやすい道路を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態の経路探索システムの構成を示す図である。
【図2】道路通過情報記憶部に記憶されたデータの例を示す図である。
【図3】車両のリンク通過回数を求めたグラフを示す図である。
【図4】車両別常用リンクとして選択した車両の台数をカウントした結果を示すグラフである。
【図5】経路探索装置のハードウェア構成を示す図である。
【図6】経路探索システムにより地元常用リンクを求める動作を示す図である。
【図7】経路探索システムにより経路探索を行う動作を示す図である。
【図8】経路探索システムによる経路探索結果の例を示す図である。
【図9】第2の実施の形態の経路探索システムの構成を示す図である。
【図10】目的地情報記憶部に記憶されたデータの例を示す図である。
【図11】経路探索システムにより地元常用リンクを求める動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態の経路探索システム1の構成を示す図である。経路探索システム1は、経路探索装置10と、走行によって得られた道路通過情報を経路探索装置10に送信する複数の車両20を有している。道路通過情報を送信する車両20としては、「プローブカー」と呼ばれる車両を用いることができる。プローブカーは、車両の位置情報、車両の速度データ、ワイパーのスイッチやABSなどの各システムの作動状況をセンターに送信する車両である。
【0020】
経路探索装置10は、車両20から送信される道路通過情報を受信する受信部11と、受信した道路通過情報を記憶する道路通過情報記憶部12を備えている。
図2は、道路通過情報記憶部12に記憶されたデータの例を示す図である。道路通過情報記憶部12は、車両20を特定する車両IDに関連付けて、道路のリンクを通過した日時と、通過したリンクのデータを記憶している。例えば、車両ID「C001」の車両20は、2010年5月25日10:00にリンクL001を通過し、2010年5月25日10:04にリンクL002を通過していることが分かる。なお、「リンク」とは、道路地図を構成する構成要素の単位であり、分岐点と分岐点との間の道路区間である。
【0021】
経路探索装置10は、道路通過情報記憶部12に記憶されたデータを用いて、地元住民が常用しているリンク(以下「地元常用リンク」という)を求める地元常用リンク算出部13と、地元常用リンクのデータを記憶する地元常用リンク記憶部14を備えている。なお、「地元常用リンク」とは、近辺に自宅等を有する地元住民が良く使っている道路のリンクであり、地元常用リンク算出部13にて求められるリンクである。
【0022】
ここで、地元常用リンク算出部13の処理について説明する。地元常用リンク算出部13は、まず、車両別に常用しているリンク(以下「車両別常用リンク」という)を求め、次に、複数の車両20のそれぞれについて求めた車両別常用リンクを総合することにより、地元常用リンクを求める。
【0023】
地元常用リンク算出部13は、道路通過情報記憶部12から、計算の対象となる車両20の所定期間における道路通過情報を読み出す。ここで所定期間は、最新データを含む期間であることが好ましく、例えば、現在から1か月前までの期間を指定する。地元常用リンク算出部13は、読み出した道路通過情報に基づいて、各リンクを通過した回数を求める。
【0024】
図3は、ある車両20のリンク通過回数を求めたグラフを示す図である。図3に示す例では、リンクL005を通過した回数が最も多く、リンクL004、リンクL015、リンクL008、リンクL034が続いている。地元常用リンク算出部13は、通過回数の多い方から順にリンクを選んでいく。選んだリンクの総通過回数nが、所定期間内に全リンクを通過した全回数Nの1/5を超えるまでリンクを選んでいく。このようにして選ばれたリンクを車両別常用リンクとして求める。ここでは、車両別常用リンクを選択するために1/5という閾値を用いているが、閾値は1/5に限定されるものではなく、システムの設計者が適切な値を設定することができる。また、通過回数がk回以上のリンクを車両別常用リンクとすることもできる。
【0025】
通過回数の多い車両別常用リンクは、当該車両20の自宅等の付近のリンクであり、ドライバが熟知した道路環境の中で選んだリンクであると考えられる。すなわち、ドライバが地元住民の立場で走行しやすいと認識して常用しているリンクである。図3に示す例では、リンクL005、リンクL004、リンクL015、リンクL008が、この車両20が常用するリンクとして求められた。地元常用リンク算出部13は、同様の方法で、複数の車両20について車両別常用リンクを求める。
【0026】
次に、地元常用リンク算出部13は、それぞれのリンクについて、車両別常用リンクとして選択した車両20が何台あったかをカウントする。
図4は、リンクごとに、車両別常用リンクとして選択した車両20の台数をカウントした結果を示すグラフである。地元常用リンク算出部13は、所定の閾値を超える台数の車両20が車両別常用リンクとして選択したリンクを地元常用リンクとして求める。所定の閾値としては、例えば、10台といったような値を用いることができるがこれに限定されるものではない。このように多数のドライバによって選ばれたリンクは、多くのドライバが地元住民の立場で常用しているリンクである。図4に示す例では、リンクL003、リンクL005が地元常用リンクとして求められている。なお、図4に示す例では、所定の閾値として一律の値を用いているが、所定の閾値はリンクによって異なる値を用いてもよい。例えば、都市部にあるリンクでは閾値を高く設定し、地方にあるリンクでは閾値を低く設定してもよい。車両が多い都市部と少ない地方とでは、得られる道路通過情報の量が異なる。異なる閾値を用いることにより、車両数の違いに対応して適切に地元常用リンクを求めることができる。
【0027】
図1に戻って、経路探索装置10は、経路探索を行う経路探索部15と、探索結果のデータを車両20に送信する送信部17とを備えている。経路探索部15は、車両20から出発地と目的地のデータが送信されてきたときに、道路地図記憶部16に記憶された道路地図データおよび地元常用リンクに記憶された地元常用リンクのデータを用いて、出発地から目的地までの経路を探索する機能を有する。
【0028】
経路探索部15は、道路を構成するリンクを通過するための所要時間、所要料金、道幅等をリンクコストとして、経路コストの計算を行うことにより、経路コストが最も低くなる経路を探索する。本実施の形態の経路探索部15は、地元常用リンクか否かというパラメータをもリンクコストとして用いて、経路探索を行う。すなわち、地元常用リンクには、地元常用リンクではないリンクより低いリンクコストを設定し、経路探索を行う。これにより、経路探索部15は、地元常用リンクを通る経路を探索することが可能となる。
【0029】
図5は、上記に説明した経路探索装置10のハードウェア構成を示す図である。経路探索装置10は、CPU30、RAM31、ROM32、通信インターフェース34、ハードディスク35、キーボード36、ディスプレイ37がデータバス38によって接続されたコンピュータによって構成される。CPU30が、ROM32に書き込まれたプログラム33に従って演算処理を実行することにより、上記した経路探索装置10の機能が実現される。このようなプログラム33は、本発明の範囲に含まれる。
【0030】
次に、経路探索システム1の動作について説明する。経路探索システム1の動作は、主として、地元常用リンクを求める動作と、地元常用リンクに基づいて経路探索を行う動作に大別される。
【0031】
図6は、経路探索システム1により地元常用リンクを求める動作を示す図である。経路探索システム1は、地元常用リンクを求める動作を、定期的に(例えば1か月ごとに)行う。まず、複数の車両20が経路探索装置10に対して道路通過情報を送信する(S10)。経路探索装置10は、複数の車両20から送信される道路通過情報を受信し、受信した道路通過情報を道路通過情報記憶部12に記憶する(S12)。
【0032】
次に、経路探索装置10は、車両別常用リンクを求める処理を行う(S14,S16)。経路探索装置10は、車両別に所定期間(例えば、最新の1か月)における道路通過情報を読み出し、読み出した道路通過情報に基づいて、道路の各リンクを通過した回数をカウントする(S14、図3も参照)。次に、経路探索装置10は、通過回数が上位のリンクから順にリンクを選択し、選択したリンクの総通過回数nが全リンクの総通過回数Nの1/5となるリンクを車両別常用リンクとして求める(S16)。
【0033】
次に、経路探索装置10は、複数の車両20のそれぞれについて求めた車両別常用リンクのデータを総合して地元常用リンクを求める(S18,S20)。経路探索装置10は、各リンクが車両別常用リンクとして選んだ車両数をカウントする(S18、図4も参照)。続いて、経路探索装置10は、車両別常用リンクとして選んだ車両数が所定の閾値を超えるリンクを地元常用リンクとして求める(S20)。
【0034】
図7は、経路探索システム1による経路探索の動作を示す図である。経路探索システム1は、車両20からのリクエストに応じて経路探索を行う。まず、車両20が、経路探索装置10に対して、出発地、目的地のデータを送信し、経路探索の実行を要求する(S30)。経路探索装置10は、車両20から送信された出発地、目的地のデータを受信すると(S32)、道路地図記憶部16から地図データを読み出すと共に、地元常用リンク記憶部14から地元常用リンクのデータを読み出す(S34)。経路探索装置10は、地図データに含まれているリンクコストのデータに加え、地元常用リンクか否かに基づくコストを用いて、経路探索を行う(S36)。経路探索装置10は、探索された経路データを車両20に送信し(S38)、車両20は送信された経路データを受信する(S40)。
【0035】
図8は、出発地Oから目的地Dまでの経路を地元常用リンクのデータを用いないで求めた経路1と、地元常用リンクのデータを用いて求めた経路2、経路3を示す図である。図8に示すように、地元常用リンクのデータを用いないで経路探索を行うと、大通りを通る経路が求められる。これに対し、地元常用リンクのデータを用いて経路探索を行うと、一般には良く知られていない細い道路を通る経路2や、さらに地元住民にしかほとんど知られていないような道路を含む経路3が探索される。
【0036】
本実施の形態の経路探索システム1によれば、経路2,経路3のように、広く知られてはいないが、地元住民に常用されている走りやすい道路を提示することができる。
【0037】
本実施の形態では、車両別に、通過回数の多いリンクを車両別常用リンクとしている。通過回数の多いリンクは、ドライバの自宅や会社の近辺(地元)にあるリンクであると考えられる。従って、車両別常用リンクは、ドライバが道路事情を良く知っている地域において、選択されたリンクであり、ドライバが地元住民の立場で、走りやすいと認識しているリンクである。この車両別常用リンクのデータから地元常用リンクを求めることにより、地元常用リンクを適切に求めることができる。
【0038】
本実施の形態では、定期的に地元常用リンクを求めるので、地元住民が利用する最新の常用リンクを経路探索に反映できる。本実施の形態の経路探索システム1により、地元住民の常用リンクを含む経路を提示することにより、徐々にその経路は一般に浸透するようになる。そうすると、最初は地元住民しか知らないような抜け道であっても、車両20の通過台数が増え、渋滞することになる可能性がある。本実施の形態では、定期的に地元常用リンクを更新するので、このような状況の変化に対応して地元住民が新たに常用するようになったリンクを含む経路を求めることができる。これを繰り返していくうちに、交通量が適度に分散され、渋滞の緩和が図られることになる。
【0039】
なお、上記した実施の形態では、地元常用リンクであるか否かをリンクコストとして用いて経路探索を行う例について説明したが、地元常用リンクのデータを用いて経路探索を行う方法は、リンクコストとして用いる以外の方法も考えられる。例えば、通常の経路探索と同様の方法で経路探索を行い、探索された経路の一部に、地元常用リンクからなる経路で置き換え可能な経路がある場合には、その経路の一部を地元常用リンクからなる経路に置き換えることとしてもよい。また、経路探索装置10は、VICSにより渋滞情報を取得し、探索された経路の一部に渋滞する箇所があると判断した場合に、地元常用リンクのデータを用いて、渋滞箇所を回避する経路を求めてもよい。
【0040】
また、別の経路探索の方法としては、例えば、目的地と出発地とをつなぐ直線から所定の距離内(例えば5km以内)にある地元常用リンクを経由地として設定して経路探索を行ってもよい。この方法によれば、目的地と出発地との間にある地元常用リンクを含む経路を求めることができる。これにより、地元の人が常用する道路を経由することにより、地元の雰囲気を体感できるという効果も得られる。
【0041】
(第2の実施の形態)
図9は、第2の実施の形態の経路探索システム2の構成を示す図である。経路探索システム2の基本的な構成は、第1の実施の形態と同じであるが、経路探索装置10aによる地元常用リンクの求め方が異なる。以下では、第1の実施の形態との相違点を中心に、第2の実施の形態の経路探索装置10aについて説明する。
【0042】
経路探索装置10aは、車両20から目的地情報を受信し、受信した目的地情報を車両別に記憶する目的地情報記憶部18を有している。
図10は、目的地情報記憶部18に記憶されたデータの例を示す図である。目的地情報記憶部18は、車両20を特定する車両IDに関連付けて、目的地に到着した日時と、その目的地の位置のデータを記憶している。目的地情報は、車両20のエンジンが切られたときに、当該日時とその位置を取得することにより収集されたデータである。従って、目的地情報記憶部18には、最終的な目的地の他に、経由地や立寄地等も目的地のデータとして記憶されている。
【0043】
経路探索装置10aは、目的地情報記憶部18に記憶されたデータを読み出し、車両別に、最も多く目的地となった最頻目的地を求める最頻目的地算出部19を有している。図10に示す例では、車両ID「C001」の車両は、2010年5月25日11:00に(x1,y1)にある目的地に到着し、2010年5月25日18:14に(x2,y2)にある目的地に到着したことが分かる。なお、最頻目的地は、ドライバの自宅または会社であることが多いと考えられるが、仮に、ドライバの自宅または会社でないとしても、最も多く訪れている目的地の近辺については、ドライバは道路事情を良く理解していると考えられる。
【0044】
地元常用リンク算出部13aは、最頻目的地のデータを用いて車両別常用リンクを求める。具体的には、地元常用リンク算出部13aは、車両別に、最頻目的地を含む所定の範囲内にあるリンクについて、リンクを通過した回数を求める。「所定の範囲内」は、例えば、最頻目的地を中心とする半径5km以内であるがこれに限定されるものではない。地元常用リンク算出部13aは、リンクの通過回数が所定の基準以上である場合には、そのリンクを車両別常用リンクとして求める。本実施の形態では、通過回数が10回以上のリンクを車両別常用リンクとして求めるがこれに限定されるものではない。地元常用リンク算出部13aが、車両別常用リンクのデータから地元用常用リンクを求める方法は、第1の実施の形態と同じである。
【0045】
図11は、第2の実施の形態の経路探索システム2により地元常用リンクを求める動作を示す図である。経路探索システム2は、地元常用リンクを求める動作を、定期的に(例えば1か月ごとに)行う。まず、複数の車両20が経路探索装置10aに対して道路通過情報を送信する(S10)。経路探索装置10aは、複数の車両20から送信される道路通過情報を受信し、受信した道路通過情報を道路通過情報記憶部12に記憶する(S12)。
【0046】
次に、経路探索装置10aは、車両別常用リンクを求める処理を行う(S13,S15,S17)。経路探索装置10aは、車両別に所定期間における目的地情報を読み出し、読み出した目的地情報に基づいて最頻目的地を求める(S13)。続いて、経路探索装置10aは、車両別に、最頻目的地を含む所定の範囲内(例えば、最頻目的地を中心とする半径5km以内)にあるリンクについて、車両20が通過した回数をカウントする(S15)。続いて、経路探索装置10aは、通過回数が10回以上のリンクを車両別常用リンクとして求める(S17)。
【0047】
次に、経路探索装置10aは、複数の車両20のそれぞれについて求めた車両別常用リンクのデータを総合して地元常用リンクを求める(S18,S20)。車両別常用リンクのデータを用いて、地元常用リンクを求める動作は、第1の実施の形態と同じである。すなわち、地元常用リンク算出部13aは、それぞれのリンクについて、車両別常用リンクとして選択した車両20が何台あったかをカウントし、車両20の台数が所定の閾値を超えるリンクを地元常用リンクとして求める。この際に用いる閾値は、第1の実施の形態で説明したとおり、リンクによって異なる値とすることができる。本実施の形態では、車両別に最頻目的地が求められているので、最頻目的地を用いて閾値を設定することが可能である。すなわち、各リンクについて、当該リンクを含む所定範囲内にある最頻目的地の数をカウントし、その最頻目的地数に応じた閾値を設定する。これにより、各リンクの周囲にいる道路通過情報の収集に協力している地元住民の数に応じた閾値を設定することが可能となる。
【0048】
また、地元常用リンクのデータを用いて、経路探索を行う動作も第1の実施の形態と同じである。以上、第2の実施の形態の経路探索システム2の構成および動作について説明した。
【0049】
第2の実施の形態の経路探索システム2は、最頻目的地を含む所定範囲内にあるリンクのうちで常用しているリンクを求めるので、ドライバが道路事情を熟知している範囲内において常用しているリンク、すなわち、走行しやすいリンクを適切に求めることができる。この車両別常用リンクのデータから地元常用リンクを求めることにより、地元常用リンクを適切に求めることができる。
【0050】
以上、本発明の経路探索システムについて、実施の形態を挙げて詳細に説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではない。
【0051】
上記した実施の形態では、経路探索装置10,10aが車両別常用リンクの算出や、経路探索を行う例について説明したが、経路探索装置10,10aが有する機能をネットワーク上に分散して配置することが可能である。例えば、それぞれの車両20が、自車で取得した道路通過情報に基づいて車両別常用リンクを求め、道路通過情報のデータに代えて、車両別常用リンクのデータを経路探索装置10,10aに送信することとしてもよい。また、経路探索装置10,10aは、地元常用リンクのデータを各車両20に配信し、各車両20が、地元常用リンクのデータを用いて経路探索を行ってもよい。このように、経路探索装置10,10aの機能を車両20に持たせることにより、経路探索装置10,10aの処理負担を軽減することができる。
【0052】
上記した実施の形態において、道路通過情報をフィルタリングして用いてもよい。例えば、曜日別や時間帯別に道路通過情報をフィルタリングし、フィルタリングされた道路通過情報を用いて、曜日別、時間帯別の地元常用リンクを求めてもよい。例えば、月曜日〜金曜日は大通りを使うが、土曜日、日曜日は行楽客で渋滞するから抜け道を使うといった地元住民の行動パターンも踏まえて、曜日別、時間帯別に常用されるリンクを求めることができる。現時点の曜日や時間帯にあった地元常用リンクを用いて経路探索を行うことにより、適切な経路を求めることができる。フィルタリングの種類としては、曜日や時間帯だけではなく、例えば、目的地や出発地、運転頻度等を用いることもできる。また、地元常用リンクを求める際の処理負担の軽減のため、細街路のリンクを除外してもよい。
【0053】
上記した実施の形態において求めた地元常用リンクは、地元住民が常用するリンクであるので、そのリンクが地元住民以外のドライバ(以下「非地元ドライバ」という)が良く使うリンクと一致する場合がある。この場合には、地元住民が、非地元ドライバの通るリンクが走りやすいと理解していると考えられる。ただし、地元住民だけが常用しているリンクを求めることも可能である。具体的には、第2の実施の形態において求めた最頻目的地を用いる。地元常用リンクを求めた場合とは逆に、地元常用リンクを求めた所定の範囲の外側にあるリンクについて常用リンクを求め、この常用リンクを用いて非地元ドライバの常用リンクを求める。そして、地元常用リンクから、非地元ドライバの常用リンクを除くことにより、地元住民だけが常用しているリンクを求めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、周辺の道路事情を良く知った地元住民が使うリンクを含む経路を探索し、走行しやすい道路を提示することができるという効果を有し、ナビゲーション装置の経路探索に有用である。
【符号の説明】
【0055】
1,2 経路探索システム
10,10a 経路探索装置
11 受信部
12 道路通過情報記憶部
13,13a 地元常用リンク算出部
14 地元常用リンク記憶部
15 経路探索部
16 道路地図記憶部
17 送信部
18 目的地情報記憶部
19 最頻目的地算出部
20 車両
30 CPU
31 RAM
32 ROM
33 プログラム
34 通信インターフェース
35 ハードディスク
36 キーボード
37 ディスプレイ
38 データバス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両から送信される道路通過情報を受信する受信部と、
受信した道路通過情報を車両毎に記憶する道路通過情報記憶部と、
前記道路通過情報記憶部から所定期間における道路通過情報を読み出し、車両別に道路の各リンクを通過した回数を求め、通過した回数が多い方から所定数のリンクを車両別の常用リンクとして求め、複数の車両について求めた車両別の常用リンクに基づいて地元住民の常用リンクを算出する地元常用リンク算出部と、
前記地元住民の常用リンクのデータを用いて経路を探索する経路探索部と、
を備える経路探索システム。
【請求項2】
複数の車両から送信される道路通過情報および目的地情報を受信する受信部と、
受信した道路通過情報を車両毎に記憶する道路通過情報記憶部と、
受信した目的地情報を車両毎に記憶する目的地情報記憶部と、
前記目的地情報記憶部から目的地情報を読み出し、車両別に目的地となった回数の最も多い位置を求める最頻目的地算出部と、
前記道路通過情報記憶部から所定期間における道路通過情報を読み出し、最頻目的地を含む所定範囲内にある道路のリンクのうち、所定の基準より多く通過したリンクを車両別の常用リンクとして求め、複数の車両について求めた車両別の常用リンクに基づいて地元住民の常用リンクを算出する地元常用リンク算出部と、
前記地元住民の常用リンクのデータを用いて経路を探索する経路探索部と、
を備える経路探索システム。
【請求項3】
前記経路探索部は、前記地元住民の常用リンクのリンクコストを前記地元住民の常用リンクではないリンクより下げて、経路探索を行う請求項1または2に記載の経路探索システム。
【請求項4】
前記経路探索部は、前記地元住民の常用リンクのデータを用いないで経路探索を行い、求められた経路の一部に前記地元住民の常用リンクからなる経路で置き換え可能な経路がある場合には、前記経路の一部を前記地元住民の常用リンクからなる経路で置き換える請求項1または2に記載の経路探索システム。
【請求項5】
前記経路探索部は、目的地と出発地とをつなぐ直線から所定の距離内にある前記地元常用リンクを経由地として設定して、経路探索を行う請求項1または2に記載の経路探索システム。
【請求項6】
渋滞情報を取得する渋滞情報取得部を有し、
前記経路探索部は、前記地元住民の常用リンクを用いないで経路探索を行い、求められた経路の一部に渋滞箇所が存在する場合には、前記経路の一部を前記地元住民の常用リンクからなる経路で置き換える請求項1または2に記載の経路探索システム。
【請求項7】
複数の車両から送信される道路通過情報を受信するステップと、
受信した道路通過情報を車両毎に道路通過情報記憶部に記憶するステップと、
前記道路通過情報記憶部から所定期間における道路通過情報を読み出し、車両別に道路の各リンクを通過した回数を求め、通過した回数が多い方から所定数のリンクを車両別の常用リンクとして求め、複数の車両について求めた車両別の常用リンクに基づいて地元住民の常用リンクを算出するステップと、
前記地元住民の常用リンクのデータを用いて経路を探索するステップと、
を備える経路探索方法。
【請求項8】
複数の車両から送信される道路通過情報および目的地情報を受信するステップと、
受信した道路通過情報を車両毎に道路通過情報記憶部に記憶するステップと、
受信した目的地情報を車両毎に目的地情報記憶部に記憶するステップと、
前記目的地情報記憶部から目的地情報を読み出し、車両別に目的地となった回数の最も多い位置を求めるステップと、
前記道路通過情報記憶部から所定期間における道路通過情報を読み出し、最頻目的地を含む所定範囲内にある道路のリンクのうち、所定の基準より多く通過したリンクを車両別の常用リンクとして求め、複数の車両について求めた車両別の常用リンクに基づいて地元住民の常用リンクを算出するステップと、
前記地元住民の常用リンクのデータを用いて経路を探索するステップと、
を備える経路探索方法。
【請求項9】
経路を探索するためのプログラムであって、コンピュータに、
複数の車両から送信される道路通過情報を受信するステップと、
受信した道路通過情報を車両毎に道路通過情報記憶部に記憶するステップと、
前記道路通過情報記憶部から所定期間における道路通過情報を読み出し、車両別に道路の各リンクを通過した回数を求め、通過した回数が多い方から所定数のリンクを車両別の常用リンクとして求め、複数の車両について求めた車両別の常用リンクに基づいて地元住民の常用リンクを算出するステップと、
前記地元住民の常用リンクのデータを用いて経路を探索するステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項10】
経路を探索するためのプログラムであって、コンピュータに、
複数の車両から送信される道路通過情報および目的地情報を受信するステップと、
受信した道路通過情報を車両毎に道路通過情報記憶部に記憶するステップと、
受信した目的地情報を車両毎に目的地情報記憶部に記憶するステップと、
前記目的地情報記憶部から目的地情報を読み出し、車両別に目的地となった回数の最も多い位置を求めるステップと、
前記道路通過情報記憶部から所定期間における道路通過情報を読み出し、最頻目的地を含む所定範囲内にある道路のリンクのうち、所定の基準より多く通過したリンクを車両別の常用リンクとして求め、複数の車両について求めた車両別の常用リンクに基づいて地元住民の常用リンクを算出するステップと、
前記地元住民の常用リンクのデータを用いて経路を探索するステップと、
を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−248812(P2011−248812A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123996(P2010−123996)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(502324066)株式会社デンソーアイティーラボラトリ (332)
【Fターム(参考)】