説明

経路探索システム

【課題】複数地点間の経路情報を短時間で計算する経路探索システムを提供する。
【解決手段】経路探索システムは、複数の地点のうちの2地点の全ての組合せにおける該2地点間の第1経路全ての探索要求を受け付ける受付手段と、前記受付手段によって前記探索要求が受け付けられると、前記探索要求に含まれる探索条件に基づいて前記第1経路を全て探索する探索手段と、前記探索手段によって探索された前記第1経路を全て含む経路情報を送信する提供手段とを備え、前記受付手段が前記探索要求を受け付ける回数と、前記提供手段が前記経路情報を送信する回数とが、いずれも前記複数の地点の地点数よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の地点間の経路情報を提供する経路探索システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーションサービス向けに発展してきた交通情報や経路サービスを物流分野の配送計画に利用する動きがある。少ない記憶データで、短時間に配送地点間の経路を得るための方法が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、小分割したエリアに代表ノードを設定し、代表ノード間の経路を予め計算し記憶する方法が開示されている。2地点が与えられると、各地点に最も近い代表ノードを探し、得られた代表ノード間の経路を予め計算した代表ノード間経路記憶手段から取得する。上記2地点と代表ノードとの間の経路を計算し、その経路と代表ノード間経路とを合成することにより、少ない記憶データで短時間に配送地点間の経路が得られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−64022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、代表ノード間の経路計算が、代表ノード数と代表ノード間距離とに依存するため、代表ノード数と代表ノード間距離とが増加すると経路計算処理時間を要する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による経路探索システムは、複数の地点のうちの2地点の全ての組合せにおける該2地点間の第1経路全ての探索要求を受け付ける受付手段と、受付手段によって探索要求が受け付けられると、探索要求に含まれる探索条件に基づいて第1経路を全て探索する探索手段と、探索手段によって探索された第1経路を全て含む経路情報を送信する提供手段とを備え、受付手段が探索要求を受け付ける回数と、提供手段が経路情報を送信する回数とが、いずれも複数の地点の地点数よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、N地点間の複数経路が短時間で得られる経路探索システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施の形態における経路探索システムの全体構成を示す図である。
【図2】経路探索システムの全体処理フローを示す図である。
【図3】経路探索システムによるマップマッチング処理フローの一例を示す図である。
【図4】経路探索システムによるマップマッチング処理を説明するための補足図である。
【図5】経路情報記憶部によって記憶される確定経路のデータフォーマットの一例を示す図である。
【図6】コストデータおよび経路データの参照方法を説明するための経路例を示す図である。
【図7】経路探索システムによる全体処理フローに対して、交通情報に関わる処理を追加した処理フローの一例を示す図である。
【図8】経路探索部16による経路コストの補正処理フローの一例を示す図である。
【図9】経路コストの補正処理フローを説明するための経路補正例を示す図である。
【図10】第2の実施の形態における経路探索システムが、過去に確定した経路を用いて計算対象ノードを絞込む動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
−−−第1の実施の形態−−−
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態について詳しく説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る経路探索システム1の全体構成を示した図である。図1において、本実施形態に係る経路探索システム1は、ローカルネットワーク3に接続され配送計画システム2に接続されている。また、ブロードバンドネットワーク5を介して、交通情報センタ、天気情報センタ、観光情報センタなどの外部情報センタ5にも接続されている。
【0010】
経路探索システム1は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、メモリ装置、ハードディスク装置などを含んで構成されたコンピュータのような情報処理装置によって構成される。そして、その経路探索システム1は、機能的には、図1に示すように、通信インタフェース部11、外部情報取得部12、外部情報記憶部13、経路要求受付部14、経路条件設定部15、経路探索部16、経路情報提供部17、経路情報記憶部18、地図データ19などの機能ブロックを含んで構成される。なお、これらの機能ブロックは、経路探索システム1のCPUが半導体メモリやハードディスク装置に記憶されているプログラムを実行することによって実現される。
【0011】
図1において、外部情報取得部12は、外部情報センタ4から交通情報や天候、施設情報等の様々な情報(音声や映像情報を含む)を取得し、外部情報データベース13に蓄積する。経路要求受付部14は、配送計画システム5から送信される経路要求を受信する。
【0012】
受信した経路要求に一般道路優先、高速道路優先などの探索条件が含まれる場合、経路条件設定部15は、出発地から目的地群への経路を探索するための経路条件としてその探索条件を設定する。経路条件設定部15は、経路要求に含まれる複数地点の位置情報を、地図データ19に記憶される道路ノードあるいは道路リンクにマッチングする。経路条件設定部15は、マッチングした地図上の位置情報(ノード番号あるいはリンク番号)を用いて、上記複数地点の中から出発地を選択し、出発地以外の地点を目的地群とし、出発地と目的地群から成る探索地点情報を生成する。経路要求に出発日時や探索対象領域が含まれる場合も同様に経路条件を設定する。
【0013】
経路探索部16は、地図データ19を用い、経路条件設定部15で設定された出発地と目的地群、経路条件に基づいて出発地から各目的地までの経路を計算する。ここで、経路条件設定部15は、経路要求に含まれる複数地点の全ての地点が出発地として選ばれるまで順に出発地を選択し、出発地と目的地群からなる探索地点情報を生成し、経路探索部16に対して出発地から各目的地までの経路探索を要求する。
【0014】
経路情報記憶部18は、経路探索部16で確定したノード間の経路および移動コストを記憶する。経路情報記憶部18に記憶された経路情報は、外部情報取得部12を介して外部情報センタ4から交通情報が取得され、外部情報記憶部13が更新されたときに解放される。また、外部情報センタ4から取得した天気や施設情報等の様々な情報を利用して計算した経路情報を経路情報記憶部18に保持する場合、経路情報の計算に利用した情報を新たに取得し、外部情報記憶部13が更新されたタイミングで経路情報を解放する。経路情報提供部17は、経路探索部16が出力した複数地点間の経路情報を配送計画システム2に送信する。
【0015】
本実施例は、経路探索システム1と配送計画システム2をローカルネットワークで接続する構成をとったが、ネットワークを介さず、同一のコンピュータで実行する構成にしても良い。
【0016】
経路探索システムの全体処理フローを図2に示す。経路探索システム1は、配送計画システム2から経路要求を受信し、経路要求に含まれる複数地点の位置情報、探索条件などを参照し、それら複数地点間の経路を計算する。以下、経路探索システム1が配送計画システム2から経路要求を受信した場合の処理手順について説明する。
【0017】
経路探索システム1において、経路要求受付部14は通信インタフェース部11を介して複数地点の位置情報と探索条件とを含む経路要求を受け付ける(ステップS200)。経路条件設定部15は、複数地点の位置を地図データ19で管理される道路ノードやリンクの位置に対応付けるマップマッチング処理を実行する(ステップS201)。経路条件設定部15は、経路要求に含まれる、例えば高速道優先等の道路種別に関する探索条件、幅員に関する探索条件、車線数に関する探索条件、探索コストを時間優先にするか距離優先にするかについての探索条件等を解釈し、解釈した探索条件に基づいて経路探索の探索条件を設定する(ステップS202)。
【0018】
経路条件設定部15は、ステップS201でマッチングした地図データ19上の位置データを用い、上記複数地点の中から出発地を選択し、出発地以外の複数地点を目的地群とする(ステップS203)。経路探索部16は、出発地と目的地群とが含まれるよう探索エリアを設定し(ステップS204)、その探索エリアから候補ノードを選択し(ステップS205)、候補ノードへの到達経路およびその到達経路のコストを決定する(ステップS206)。経路探索部16は、候補ノードを始点とする各ノードへの確定経路であって、かつ設定された探索条件に対応する確定経路が存在するかどうか経路情報記憶部18を検索する。経路探索部16は、確定経路が存在する場合は(ステップS207でYes)、当該出発地から候補ノードまでの到達経路およびその到達経路のコストと、候補ノードから上記各ノードへの確定経路およびその確定経路のコストとを合成計算し、当該出発地から上記各ノードへの到達経路およびその到達経路のコストを決定する(ステップS208)。
【0019】
経路探索部16は、探索エリア内にコスト更新決定対象となるノードが無くなるまで(ステップS209)候補ノードを更新選択し(ステップS205)、ステップS206からS208までの処理を繰り返す。経路探索部16は、探索エリア内の全てのノードについてコスト更新決定処理を終えると(ステップS209でNo)、当該出発地から各ノードへの確定経路およびその確定経路のコストを経路情報記憶部18に記憶させる(ステップS210)。経路条件設定部15は、上記複数地点の全てを出発地に設定し、経路探索部16によって全地点間の経路情報が得られるまで(ステップS211でYes)、出発地および目的地群を更新設定し(ステップS203)、経路探索部16によるステップS204からS210までの処理が繰り返される。
【0020】
経路探索部16による上記複数地点間の経路探索が終了すると(ステップS211でYes)、ステップS200で経路要求受付部14により受け付けられた経路要求に、ステップS202で経路条件設定部15により設定された探索条件とは異なる探索条件が含まれ、その全ての探索条件で経路計算が終了していなければ(ステップS212でNo)、経路条件設定部15は、探索条件を更新設定し(ステップS202)、ステップS203以降の処理が繰り返される。経路探索部16は、要求された全ての探索条件で上記複数地点間の経路情報が得られたら(ステップS212でYes)、得られた経路のコストは探索地点間(道路ノード間)のコストであるため、元の地点から探索地点(ノード)までのコストを計算し(図8にて説明する)、各経路のコストを補正(ステップS213)する。経路探索部16が経路コストを補正し終えた経路情報を、ステップS200で受け付けた経路要求に対する経路情報として、経路情報提供部17が通信インタフェース部11を介し、経路要求元である配送計画システム2に送信する。
【0021】
ステップS200で経路探索システム1が受信する1回の経路要求に複数地点の位置情報が含まれているので、従来技術のようにそれら複数地点の中から選択される出発地および目的地の組合せの組合せ数と等しいN回の経路要求を受け付けることが無い。同様に、ステップS214で経路探索システム1が送信する1回の経路情報に上記組合せ数と等しい経路数の経路が含まれているので、従来技術のようにその経路数と等しいN回の経路情報を送信することが無い。すなわち、経路要求受付回数も経路情報送信回数もともに1回であるため、図1における経路探索システム1の配送計画システム2とのインタフェース110の処理負荷が低減される。
【0022】
経路要求のデータ量が大きい場合は、経路要求受付回数をN回よりは小さい複数回としても良い。この場合、経路情報のデータ量も大きくなるため、経路情報送信回数も複数回となるが、N回よりも小さいならば上述した処理負荷の低減効果は得られる。また、1回の経路要求に対して、経路情報送信回数を複数回としても良い。
【0023】
次に、図3および図4を参照して、経路探索システム1におけるマップマッチング処理(ステップS201)について、詳細に説明する。
【0024】
ここで、図3は、経路探索システム1によるマップマッチング処理フローの一例を示す図である。図4は、経路探索システム1によるマップマッチング処理を説明するための補足図である。
【0025】
本処理は、経路要求受付部14により受け付けられた経路要求から経路探索を実行する経路条件設定部15により実行される。経路要求に含まれる複数地点の位置情報を参照し(ステップS300)、位置情報を用いて各地点間の距離(例えばユークリッド距離)を算出する(ステップS301)。一般的に位置情報として緯度経度が用いられるが、座標系が明確であれば、座標系で扱うエリアの識別番号(例えば、地図メッシュコード)と正規化座標といった位置情報で指定されても良い。複数地点の地点間の距離が所定値以下、すなわち地点同士が近傍に存在する場合(ステップS303でYes)、近傍に存在する地点同士を抽出して地点群を構成する(ステップS304)。構成した地点群の位置座標から重心座標を算出し(ステップS305)、得られた重心座標を地図データ19で扱う座標系に変換する(ステップS306)。
【0026】
変換した重心座標に最も近い道路ノードあるいは道路リンクを地図データ19から探す(ステップS307)。地点群が存在する位置よりも所定以上離れた道路ノードへの対応付けを防止するため、道路ノードの検索範囲を所定範囲内とする。所定範囲内に対応する道路ノードが見つかった場合(ステップS307でYes)、上記地点群を構成する地点を道路ノードに対応付けるものとし、得られた道路ノードを地点群の集約探索地点として設定する(ステップS308)。ステップS307において所定範囲内に対応する道路ノードが見つからなかった場合(ステップS307でNo)、該当ノード無し(ステップS312)とし、本地点群を探索地点に含めない。
【0027】
近傍に地点が存在しなければ(ステップS303でNo)、当該地点を地図データ19の座標系に変換し(ステップS308)、変換した地点座標近傍の所定範囲内に道路ノードが存在すれば(ステップS310でYes)、当該道路ノードをその地点の探索地点に設定する(ステップS311)。全ての地点について道路ノードへの対応づけを行い探索地点を設定したとき(ステップS313でYes)、本マップマッチング処理は終了する。
【0028】
図4において、地点411〜415は互いに近傍に存在する地点を示しており、このような地点同士を地点群420として扱う。図3に示すステップS305およびS306において地点群420の重心座標421を計算し、重心座標421に最も近い道路ノード402を地点群420の探索地点とし、このような探索地点を本発明では集約探索地点とする。地点410は近傍地点が存在しないため、ステップS309からS311によって道路ノード401が地点410に対応付けられ、探索地点として設定される。
【0029】
経路要求に含まれる地点の位置情報は、経路探索で扱う道路データと必ずしも一致するものではなく、道路データ上の探索地点として同じ道路ノード(あるいは道路リンク)に対応付けられる地点が含まれる可能性がある。そこで、複数の同一探索地点を一つにまとめて集約探索地点として扱うことで全体の探索地点数が減少し、探索処理時間を短くすることができる。本実施の形態では、複数の近傍地点の重心座標を計算し探索地点を設定する方法を示したが、各地点を道路ノードに対応付けてから、同じ道路ノードに対応付けられた地点を地点群としても同様の効果が得られる。
【0030】
図5は、経路情報記憶部18によって記憶される確定経路のデータフォーマットの一例を示す図である。確定経路は、各探索条件510に対しコストデータ520と経路データ530とが保持される。コストデータ520は出発ノードNiから目的ノードNjへの移動に要するコストのデータであり、コストには所要時間、距離、料金、燃料消費量、有害物質排出量などがある。経路情報記憶部18は、経路探索部16によりノード間の移動コストが最小となる経路が計算されて得られた経路の最小コストをコストデータ、その経路を経路データとして保持する。探索条件510は、経路種別、経路を利用する日付に応じて分類される日種、出発日時、優先道路などの様々な項目から成り、各項目の設定内容の組み合わせで複数の探索条件が存在する。経路計算に交通情報が利用される場合は、使用した交通情報の識別情報として時刻情報、例えば交通情報提供日時を保存する。
【0031】
本発明は、経路情報を経路情報記憶部18が記憶しておき、同一の探索条件での経路探索に再利用することで経路計算に関わる計算負荷を軽減し処理時間を短縮することを目的としているが、交通情報を利用する場合、交通情報は時々刻々と変動するので、過去の経路情報が必ずしも有効とならない。そこで、経路情報と共に交通情報提供日時を記憶し、交通情報提供日時から所定時間の範囲で経路情報を再利用する。交通情報は統計交通情報を利用しても良い。また、交通情報を識別するための時刻情報として、交通情報更新日時を用いても良く、その場合、上述した交通情報更新日時から所定時間の範囲で過去の経路情報を利用する。
【0032】
交通情報を利用した経路情報は、交通情報を更新した時、新たな交通情報で経路情報が計算された時、経路情報が計算されてから所定時刻を経過した時など、上述した交通情報更新日時から所定時間の範囲に含まれるいずれかのタイミングで経路情報記憶部18から削除されることで経路情報の陳腐化を防止するのが好ましい。経路情報が計算された日時、すなわち経路情報生成日時は、経路探索部16が経路情報記憶部18に記憶されている当該経路情報の付属データを参照することにより得られる。
【0033】
図6は、図5におけるコストデータ520と経路データ530の参照方法を説明するための経路例を示す図である。図6に示すようなノードN1〜N6から成る道路ネットワークが与えられたとする。ノードN2を出発ノードとして、ノードN2から残り全てのノードへの経路が確定すると、コストデータ520のi=2の行に各ノードへの到達コスト、経路データ530には、出発ノードN2から各ノードへの経路が登録される。経路データ530に関して、例えば、ノードN2からノードN6に向かう経路において、i=2、かつj=6の項の値n=4であることから、出発ノードN2の次ノードNnがノードN4であることを意味する。次にノードN4からノードN6に向かう経路において、i=4、かつj=6の項には、ノードN4の次ノードNnがノードN6であることを意味する値n=6が登録されている。ノードN6は終点ノードなので、ノードN2からノードN6に向かう経路はノードN2→N4→N6ということになる。
【0034】
図2のステップS211における繰返し処理により、今度はノードN4を出発ノードに設定し、ノードN4から各ノードへの到達経路とコストを計算する(ステップS203)。この場合、ステップS208において経路情報記憶部18の記憶するコストデータと経路データに、ノードN4からノードN5およびN6への経路とコストが存在するので、これらの経路及びコストは改めて計算することなく、ノードN4からの経路が確定していない目的ノードN1、N2、およびN3を対象に経路計算を実行する。更に出発ノードをノードN3とした場合、目的ノードN6への経路の検索過程で候補ノードN4が選択されると、ノードN4からノードN6への経路は既に存在するので、出発ノードN3から候補ノードN4までの経路およびコストと、候補ノードN4から目的ノードN6への確定経路およびコストとを合成することにより、出発ノードN3から目的ノードN6への経路が構成される。例えば、出発ノードN3から候補ノードN4までの経路がノードN3→N1→N4で構成され、その経路のコストが15とする。候補ノードN4から目的ノードN6への確定経路ノードN4→N6で構成され、その経路のコストが図5に示す例では25なので、合成して得られる経路全体はノードN3→N1→N4→N6で構成され、その経路全体のコストは15+25=40になる。なお、候補ノードとは、出発ノードから目的ノードへの経路の検索過程で経由ノードとして選択されるノードをいう。
【0035】
図7は、図2で説明した経路探索システム1の全体処理フローに対して、交通情報に関わる処理を追加した処理フローの一例を示す図である。経路要求受付部14は、ステップS200で受け付けられる経路要求に含まれる探索条件に交通情報の利用要求が含まれているか否かを判定する(ステップS701)。経路要求受付部14は、探索条件に交通情報の利用要求が含まれている場合(ステップS701でYes)、その探索条件に含まれる出発日時に基づいて外部情報取得部12に取得させる交通情報の日時を設定し、外部情報取得部12は通信インタフェース部11を介して外部情報センタ4に接続する(ステップS702)。外部情報センタ4が保持する交通情報の更新日時が、外部情報記憶部13に記憶されている交通情報更新日時よりも新しいとき(ステップS703でYes)、外部情報取得部12は外部情報センタ4から最新の交通情報を受信し、外部情報記憶部13に記憶させる(ステップS704)。このとき、経路探索部16は、経路情報記憶部18によって記憶されている経路情報から、更新日時が古い交通情報を用いて計算された経路情報を検索し削除する(ステップS705)。なお、ステップS705の処理を行わずに、経路情報記憶部18に古い交通情報を記憶させたままとしてもよい。
【0036】
外部情報センタ4から取得される交通情報は、出発日時の他に現況や将来を含む複数の時刻情報が指定されると、その指定した時刻情報に対応する複数の交通情報となる。経路探索部16は、交通情報が提供される交通情報エリアを経路探索システム1が通過する時刻をその交通情報エリアと出発地との直線距離に基づいて見積もるなどして出発地から各地点への通過予想時刻を大まかに見積もり、その通過予想時刻に基づいて交通情報が取得され、各地点間の経路計算が実行される。
【0037】
本実施の形態の経路探索システム1が経路探索に用いる交通情報を外部情報センタ4から取得する構成としたが、過去の交通情報あるいは過去の交通情報に基づいて日種毎に計算された統計交通情報を、地図データ19などを記憶する記憶装置に予め記憶させる構成としても良い。この場合、上述した経路要求が日種に応じた経路探索の探索条件を含んでいても良い。
【0038】
また、経路探索システム1が外部から取得する情報は交通情報に限らず、経路探索システム1は、施設情報、通行料金、観光情報など様々な外部情報を取得し、経路計算に用いることもある。外部情報センタ4から得られる外部情報が交通情報と同様に変化する情報であり、変化する外部情報を用いて計算した経路情報は、その外部情報が更新された時点でその利用価値を失うため、経路情報記憶部18から削除される必要がある。
【0039】
経路探索部16は、地図データ19の道路上にマッチングした探索地点からその探索地点に対応する複数の地点の各々までの距離を考慮し、経路コストを補正する。図8は、経路探索部16による経路コストの補正処理フローの一例を示す図であり、図2のステップS213に対応する。図9は、図8における経路コストの補正処理フローを説明するための経路補正例を示す図である。
【0040】
経路探索部16の経路計算で得られた経路コスト(所要時間や距離など)は、地図の道路ノードにマッチングされた探索地点間の経路コストである。その探索地点に対応する地点、あるいは探索地点が集約探索地点の場合にはその集約探索地点に対応する地点群に属する地点の各々と探索地点との間の移動コストは、その経路コストに含まれない。その移動コストは、例えば図9における地点1010と探索地点1000との間の移動コスト、あるいは地点1020〜1040の各々と探索地点1000との間の移動コストである。探索地点とその探索地点に対応する地点との距離が極めて近い場合は問題ないが、探索地点として設定されている道路ノードと離れた位置に対応する地点が存在する場合や、交通渋滞などによって探索地点とこれに対応する地点との間のリンク移動コストが距離に関係なく大きいことも考えられる。そのため、経路探索部16は、本処理によってそれら両地点間の移動コストを推定し経路コストを補正する。本補正処理は、図2のステップS213に示すように、経路探索部16によって、ステップS212における複数地点間の経路計算が終了した後、ステップS214の直前に実行する。
【0041】
経路探索部16は、複数の地点から未処理の地点を選択し(ステップS801)、選択した地点に対応する位置情報を参照する(ステップS802)。経路探索部16は、当該地点から当該地点の近傍リンクに垂線を下ろし、垂線距離の最も短いリンクを近傍リンクとして選択し、垂線と交差する近傍リンク上の地点を最近傍点とする(ステップS803)。図9の例では、選択した地点が地点1010の場合、所定範囲内に垂線1013を下ろす近傍リンクが存在し、最近傍点1011が設定される。しかし、選択した地点が地点1030の場合のように所定範囲内に垂線を下ろす近傍リンクが存在せず、最近傍点が設定できない場合(ステップS804でNo)、経路探索部16は、上記の選択した地点と当該地点の探索地点とを結ぶ直線距離を計算し(ステップS807)、得られた距離と所定の速度とに基づき旅行時間を計算する(ステップS808)。地点1030が選択された場合、ステップS807で計算されるこの直線距離は直線1014の距離となる。ステップS808における所定の速度は、周囲リンクの速度情報、すなわち規制速度や交通情報から得た速度など、またはその周囲リンクのリンクコストから計算によって得られる速度としてもよい。あるいは、例えばプローブカーなどの車両の過去の走行データから得られる速度としてもよい。ステップS211およびS212で検索された全ての経路のうち、ステップS801で選択された地点に対応する探索地点を出発地または目的地とする経路に対して、この選択された地点と探索地点との間の距離と旅行時間とを追加して(ステップS812)、ステップS811へ進む。
【0042】
一方、最近傍点を設定できた場合(ステップS804でYes)は、経路探索部16は最近傍点とステップS801で選択された地点との間の距離を計算する(ステップS805)。経路探索部16は、ステップS805で得られた距離と最近傍点が設定されたリンクの速度情報、すなわち規制速度や交通情報から得た速度などとから移動時間を計算する(ステップS806)。経路探索部16は、ステップS805で得られた距離とステップS806で得られた旅行時間と、図2のステップS208で決定された経路とコストとをステップS809およびS810の処理を用いて補正する。ステップS809では、選択した地点に対応する探索地点を端点とする経路を、最近傍点を端点とする経路に補正する。図9の例では、地点1010を選択対象としたとき、この地点1010に対応する探索地点1000を端点とする補正対象の経路1012が、この経路上の最近傍点1011を端点とした経路に補正される。補正対象の経路上に最近傍点が存在しない場合、その経路に対して端点と最近傍点との間の経路を追加することで補正が行われる。この補正は選択した地点を出発地または目的地とする全ての経路について実行される。次に、ステップS810において、ステップS809で補正した経路に、最近傍点からステップS801で選択された地点までの経路情報を追加し、最終的な経路情報を計算する処理を実行する。経路探索部16は、全ての地点についての補正処理を終えるまで処理を繰り返す(ステップS811)。
【0043】
このように、選択された地点の最近傍点と探索地点との間の経路の旅行時間や距離を、その探索地点を出発地または目的地ノードとして得られた確定経路の旅行時間や距離から差し引いて(あるいは加算して)、最近傍点を端点とする経路の経路情報を計算する。本実施の形態では、最近傍点が見つからなかったとき、ステップS807、S808、およびS812において、地点から対応する探索地点まで(あるいはその逆)の経路情報をその確定経路の確定経路情報に含めて、最終的な地点間経路を生成する。しかし、全ての地点において、最近傍点を用いずに、地点と対応する探索地点との間の経路情報を用いて補正しても良い。このとき、より詳細な地図データを用いて、この地点と対応する探索地点との間の近距離探索で経路情報を取得する。しかし、地点とこれに対応する探索地点とを直線で結んで旅行時間や距離を計算してもよい。
【0044】
−−−第2の実施の形態−−−
図10は、第2の実施の形態における経路探索システム1が、確定経路を用いて探索対象ノードを絞込む動作手順を示すフローチャートである。
【0045】
基本手順は図2に示す手順と同様であるため、同一の符号を付した共通する処理ステップについての説明を省略し、図2に示す処理と異なる処理を説明する。経路探索部16が選択した候補ノードを始点とする各ノードへの確定経路が存在する場合(ステップS207でYes)は、経路探索部16は、出発ノードからその候補ノードまでの到達コストと、その候補ノードから上記各ノードへの確定経路のコストとに基づき、各ノードにおける上限コストを設定する(ステップS901)。各ノードの上限コストは、例えば候補ノードの到達コストと上記確定経路のコストとの和として決定される。確定経路のコストは図5に示すコストデータ520として管理されるが、本実施の形態において、経路データ530は管理されない。
【0046】
経路探索部16は、各ノードの到達コストがそのノードに設定された上限コストよりも小さいノードを、コスト更新決定対象ノード(候補ノード)とする(ステップS902)。このように確定経路を用いて経路計算の対象ノードを絞り込むことで、経路計算に関わる計算量が削減されるので、計算時間の短縮が可能となる。第1の実施の形態においては、確定経路データとして記憶された確定経路がそのまま、出発地からその確定経路に対応する候補ノードを経由して各ノードへ至る経路に含まれる。しかし、本実施の形態においては、確定経路を用いて絞り込まれた上限コスト範囲内のノードを経由する経路が経路計算によって得られる。図2のステップS210において、その経路計算が行われるとともに、その経路計算で得られた経路が、出発地から目的地群の各ノードへ至る経路として経路情報記憶部に記憶される。
【0047】
以上、第1および第2の実施の形態による経路探索システム1は、N地点間の全ての組合せの経路を組合せ毎に要求するよりも少ないリクエスト回数でN地点間の全ての経路要求を受け付け、N地点間の全ての組合せの経路を組合せ毎に応答するよりも少ないレスポンス回数でN地点間の全ての経路情報を配送計画システム2へ提供する。したがって、経路探索システム1の、経路探索システム1を利用する配送計画システム2などのアプリケーションとの間のインタフェース110に要する処理負荷が軽減できるようになる。
【0048】
更に、N地点間の経路探索過程で、経路が確定したノード間の経路を記憶し、記憶した確定経路を新たな探索地点間の経路計算に利用することで、経路計算における計算量が削減され、より短い時間でN地点間の経路が計算される。
【符号の説明】
【0049】
1 経路探索システム
2 配送計画システム
3 ローカルネットワーク
4 外部情報センタ
5 ブロードバンドネットワーク
11 通信インタフェース部
12 外部情報取得部
13 外部情報記憶部
14 端末要求受付部
15 経路条件設定部
16 経路探索部
17 経路情報提供部
18 経路情報記憶部
19 地図データ
401、402 道路ノード
410〜415 地点
420 地点群
421 重心座標
510 探索条件
520 コストデータ
530 経路データ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の地点のうちの2地点の全ての組合せにおける該2地点間の第1経路全ての探索要求を受け付ける受付手段と、
前記受付手段によって前記探索要求が受け付けられると、前記探索要求に含まれる探索条件に基づいて前記第1経路を全て探索する探索手段と、
前記探索手段によって探索された前記第1経路を全て含む経路情報を送信する提供手段とを備え、
前記受付手段が前記探索要求を受け付ける回数と、前記提供手段が前記経路情報を送信する回数とが、いずれも前記複数の地点の地点数よりも小さいことを特徴とする経路探索システム。
【請求項2】
請求項1に記載の経路探索システムにおいて、
前記探索手段によって前記第1経路の各経路が探索されるとき、該各経路が経由する第1候補ノードから該各経路が経由する第2候補ノードまでの区間、または前記第1候補ノードから該各経路の目的地までの区間の第2経路に関する経路関連情報を、前記探索条件に対応付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段によって前記経路関連情報が記録された後に前記探索手段によって前記第1経路の各経路が探索され、かつ該各経路が前記第2経路を含むとき、前記前記記憶手段を参照して前記経路関連情報を検索する検索手段とをさらに備え、
前記探索手段は、前記探索条件と前記経路関連情報とに基づいて前記第1経路を全て探索することを特徴とする経路探索システム。
【請求項3】
請求項2に記載の経路探索システムにおいて、
外部サーバから出発日時および交通情報を取得する取得手段をさらに備え、
前記探索条件は、前記出発日時に対応する前記交通情報に基づいて前記第1経路が探索されることを含むことを特徴とする経路探索システム。
【請求項4】
請求項3に記載の経路探索システムにおいて、
前記取得手段は、前記出発日時に対応する前記交通情報とともに、前記複数の地点の各地点の通過予想時刻に対応する前記交通情報を取得し、
前記探索条件は、前記出発日時に対応する前記交通情報とともに、前記各地点の通過予想時刻に対応する前記交通情報に基づいて前記第1経路が探索されることを含むことを特徴とする経路探索システム。
【請求項5】
請求項4に記載の経路探索システムにおいて、
前記取得手段が前記出発日時に対応する前記交通情報を取得したとき、前記記憶手段に記憶される前記経路関連情報を削除する削除手段をさらに備え、
前記記憶手段は、新たに前記第2経路を前記探索条件に対応づけて記憶することを特徴とする経路探索システム。
【請求項6】
請求項4に記載の経路探索システムにおいて、
前記交通情報は統計交通情報を含むことを特徴とする経路探索システム。
【請求項7】
請求項6に記載の経路探索システムにおいて、
前記統計交通情報は日種に応じて構成され、
前記探索条件は、前記日種に応じた前記統計交通情報に基づいて前記第1経路が探索されることを含むことを特徴とする経路探索システム。
【請求項8】
請求項2乃至7のいずれか1項に記載の経路探索システムにおいて、
前記探索条件は、道路種別条件、幅員条件、および車線数条件を含む複数の条件を含み、
前記検索手段は前記複数の条件の各条件に対応する前記第2経路を検索し、
前記探索手段は該各条件に基づいて前記第1経路を探索することを特徴とする経路探索システム。
【請求項9】
請求項2乃至8のいずれか1項に記載の経路探索システムにおいて、
前記経路関連情報は前記第2経路のコスト情報を含み、
前記探索手段は、前記探索条件と前記経路関連情報とに基づいて、前記第1経路を全て探索するとともに前記第1経路の各々のコストを決定することを特徴とする経路探索システム。
【請求項10】
請求項9に記載の経路探索システムにおいて、
前記経路関連情報は前記第2経路と該第2経路のコスト情報とを含み、
前記探索手段は、前記探索条件と前記経路関連情報とに基づいて前記各経路の出発地から前記第1候補ノードまでの区間の第3経路および該第3経路のコストを決定し、前記第2経路および該第2経路の前記コスト情報と、前記第3経路および該第3経路の前記コストとに基づいて、前記第1経路を全て探索するとともに前記第1経路の各々のコストを決定することを特徴とする経路探索システム。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の経路探索システムにおいて、
前記複数の地点を複数の道路ノードに夫々対応付ける対応付け手段をさらに備え、
前記第1経路は、前記複数の道路ノードのうちの2つのノードの全ての組合せにおける該2つのノード間の第4経路と、該2つのノードと該2つのノードに夫々対応付けられた2地点との間の第5経路および第6経路とを含み、
前記探索手段は、前記探索条件に基づいて前記第4経路を全て探索するとともに、前記第4経路に対応する前記第5経路のコストおよび前記第6経路のコストを探索することによって、前記第1経路を全て探索するとともに前記第1経路の各々のコストを決定することを特徴とする経路探索システム。
【請求項12】
請求項11に記載の経路探索システムにおいて、
前記対応付け手段は、前記複数の地点のうち、互いに近接する一部の地点を1つの道路ノードに対応付けることを特徴とする経路探索システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−168103(P2012−168103A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30872(P2011−30872)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】