説明

経路探索システム

【課題】 目的地に対し交通機関に応じて利便性の高い経路探索、案内を可能とする。
【解決手段】 建物等の形状、位置を格納する地物データにおいては、それぞれの建物等
に対し、その建物等に適した交通機関の到着地点を到着地点として設定しておく。到着地
点は、自動車用、徒歩用、バス用、電車用など複数を設定可能とする。経路探索時には、
出発地、目的地として指定された地物の地物データを参照し、その到着地点を仮想目的地
として、経路探索を行う。自動車用の到着地点についてはネットワークデータを用いた経
路探索を行い、公共交通機関の到着地点に対しては、交通機関データを用いて経路を探索
する。
こうすることで、目的地に対して、利便性の高い到着地点を設定し、経路探索するため
、利便性の高い経路を提示することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通機関を利用した経路を探索する経路探索システムに関する。
【背景技術】
【0002】
指定された出発地から目的地までの経路を探索し、案内するナビゲーションシステムが普及している。公共交通機関の時刻表データを用いて、交通機関を利用した経路を探索するシステムも提案されている。
特許文献1は、出発地と目的地との間の道路経路から一定距離内の乗降地点を検索し、利用者に提示することで、公共交通機関を利用した経路探索を行う技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−106858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術では、利便性の高い乗降場所を検索できるとは限らず、得られる経路も利便性の高いものとは言えなかった。
図1は、従来技術における乗降場所の探索方法を示す説明図である。目的地H0が指定されたときに、その周辺の乗降場所を探索する場合を考える。目的地H0からは距離D1の位置にあるバス停BSと、距離D2の位置にある駅STとがある。従来技術では、目的地H0から最短の距離にあるバス停BSを乗降地点として選択する。
しかし、図の道路状態を見れば明らかな通り、バス停BSから目的地H0までは、川を越えて回り道をする必要があり、目的地H0に行く際に便利なのは、バス停BSではなく駅STである。このように、目的地からの距離を基準に選択する従来技術の方法では、目的地H0にとって、必ずしも利便性の高い乗降場所が選択されるとは限らなかった。
上述の課題は、目的地についてだけでなく、出発地についても同様である。出発地からの距離を基準に乗降場所を選択すれば、必ずしも利便性の高い乗降場所が選択されるとは限らない。
本発明は、かかる課題に鑑み、出発地および目的地に対して利便性の高い乗降場所を案内可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の経路探索システムは、目的地に向かう経路を探索する経路探索システムであって、出発地及び目的地の少なくとも一方として指定される地物に関する地物データであって、属性情報として前記地物に対して複数種類の交通機関が到着するそれぞれの到着地点を示す到着地点情報を保持している地物データを記憶する地図データベース記憶部と、出発地および目的地を入力する入力部と、前記地図データベース記憶部を参照して、(1)前記出発地として指定された地物に対応する複数の到着地点から前記目的地に至る経路、(2)前記出発地から前記目的地として指定された地物に対応する複数の到着地点に至る経路、及び(3)前記出発地として指定された地物に対応する複数の到着地点から前記目的地として指定された地物に対応する複数の到着地点に至る経路の少なくとも一部の経路を探索する経路探索部とを備える経路探索システムである。
【0006】
本発明の経路探索システムによれば、地物データの属性情報に対して到着地点を対応づけて記憶してあるため、出発地または目的地となる地物からの距離だけでなく、地物との位置関係を考慮して適した到着地点を用いて経路探索することができる。
交通機関データは、交通機関の時刻表を記憶するものとしてもよいし、路線表のみを記憶するものとしてもよい。
地物データには、到着地点に地物の形状、位置なども併せて記憶する形式をとることができる。到着地点は、地物の形状とは別個のデータとして記憶する形式としてもよい。
本発明においては、出発地および目的地に対して複数の到着地点を対応づけてもよいし、複数種類の交通機関に対する到着地点を対応づけてもよい。
【0007】
また本発明において、前記地物データは、更に、前記属性情報として前記到着地点に対応付けられた前記地物の出入口地点に関する情報を保持しており、前記経路探索部は、前記目的地として指定された地物の到着地点から出入口地点までの経路についても探索するようにしてもよい。こうすることにより、目的地の入口地点までの適した経路を提示することができる。到着地点から出入口地点までの経路は、例えば、道路ポリゴンをたどる方法によって行うことができる。また、属性情報として、到着地点から出入口地点までの経路を表す情報(例えば、経過する点の座標値など)を格納しておくようにしてもよい。
【0008】
本発明においては、道路網をノード、リンクで表したネットワークデータを備え、経路探索部は、ネットワークデータを用いた経路探索も行うようにしてもよい。こうすることにより、出発地、目的地と交通機関の到着地点との間など、交通機関を利用しない区間についての経路も探索、案内することが可能となる。
【0009】
本発明において交通機関には、自動車を含めても良い。自家用車やタクシーなどの自動車の場合には、公共交通機関のように予め到着地点が規定されている訳ではないが、地物ごとに自動車で到着するのに適した場所を決めることができる。かかる位置を到着地点として設定しておくのである。
自動車用の到着地点までの経路探索および経路案内をするためには、上述のようにネットワークデータを用いて経路探索可能な構成としておくことが好ましい。ネットワークデータは、全ての道路で完全に整備されているとは限らない。そこで、到着地点は、自動車が通行可能な道路としてネットワークデータが整備された道路上の点であって、目的地に対応する地物からいずれかの道路を通行して到着できる点としておくことが好ましい。こうすることによって、ネットワークデータを用いて、到着地点までの経路探索が可能となるからである。
【0010】
本発明は、その他、コンピュータを用いた経路探索方法として構成してもよいし、かかる経路探索をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして構成してもよい。また、かかるコンピュータプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体として構成してもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの
符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等、コンピュータが読取り可能な種々の媒体を利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来技術における到着地点の探索方法を示す説明図である。
【図2】経路探索システムの構成を示す説明図である。
【図3】地物データの内容例を示す説明図である。
【図4】変形例としての到着地点の設定例を示す説明図である。
【図5】経路探索処理のフローチャートである。
【図6】実施例2における到着地点選択処理のフローチャートである。
【図7】実施例2の一例を説明する図である。
【図8】実施例2の一例における到着地点のデータを示す図である。
【図9】実施例2の一例における到着地点のデータを示す図である。
【図10】実施例2の一例におけるエリアの包含関係を規定したデータを示す図である。
【図11】実施例2の一例におけるエリアの包含関係を規定したデータを示す図である。
【図12】実施例2における被包含地物の到着地点抽出処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
A.システム構成:
図2は、経路探索システムの構成を示す説明図である。経路探索システムは、端末100とサーバ200とをネットワークNEで接続して構成される。端末100およびサーバ200は、それぞれCPU、RAM、ROMを備えたコンピュータである。本実施例では、図示する各機能を実現するコンピュータプログラムをインストールすることによって、
ソフトウェア的にシステムを構成するものとした。
実施例では、端末100とサーバ200とからなる構成としたが、図示する機能を単体で備えスタンドアロンで稼働する構成としてもよいし、更に多くのコンピュータからなる分散システムとして構成してもよい。
【0013】
サーバ200は、地図データベース記憶部210、送受信部201、およびデータベース管理部202を備えている。
送受信部201は、端末100とネットワークNEを介した通信を行う。
データベース管理部202は、端末100から要求された地図情報を、地図データベース記憶部210から読み出す。地図データベース記憶部210には、地物データ211、交通機関データ212、およびネットワークデータ213が格納されている。
地物データ211は、道路や建物など地図に描画すべき地物のポリゴンデータである。また、属性データとして、各地物について利便性の高い交通機関の到着地点を対応づけたデータを含んでいる。地物データ211の内容については後述する。
交通機関データ212は、経路探索で利用可能な交通機関について、到着地点に関する情報(緯度・経度)と運行時刻に関する情報を含んでいる。
ネットワークデータ213は、道路網をノード、リンクのつながりで表したデータである。本実施例では、ネットワークデータ213として主ネットワークデータと、準ネットワークデータの2種類が用意されている。主ネットワークデータは、現地調査によって通行規制なども十分に反映した車両の経路探索に支障なく用いることができるデータである。これに対し、準ネットワークデータは、通行規制の整備が十分とは言えないデータであり、車両の経路探索では、使用しない方が好ましいデータである。ネットワークデータ213は、歩行者の経路探索用に整備されたものを自動車用とは別に用意してもよい。
【0014】
端末100には、主制御部101の下で稼働する種々の機能ブロックが構成されている。
送受信部102は、サーバ200とのネットワークNEを介した通信を行う。
コマンド入力部103は、端末100の操作を通じて、ユーザからの指示を入力する。
GPS入力部104は、GPS(Global Positioning System)を用いてユーザの現在位置を入力する。
地図データベース記憶部105は、サーバ200から提供された各データを格納する。サーバ200が備える地図データベースの全体を格納してもよいし、経路探索や地図表示に必要となる部分のみを、その都度、サーバ200から取得し格納してもよい。
経路探索部107は、地図データベースを参照して、経路探索を行う。経路探索部107をサーバ200側の機能として備えても良い。この態様は、端末100の処理能力が比較的低い場合に有用である。
表示制御部106は、地図データベース記憶部105を用いて端末100のディスプレイに地図および探索結果を表示する。
【0015】
B.データ構造:
図3は地物データ211の構成例を示す説明図である。地物データ211は、建物、道路等の地物を描画するためのポリゴンデータであり、名称、形状、代表点、出入り口線、到着地点に関する情報などを属性データとして格納している。図中に、「○○ビル」なる建物を例にとって地物データの内容を示した。名称は、地物の名称またはポリゴンに固有のIDである。形状は、地物のポリゴンの頂点P1、P2…Pnを示す座標の列である。代表点は、地物が存在する位置を表す地点CGの座標である。出入口線は、地物と道路とを関連づけるための情報である。図の例では、玄関から道路に出るための出入口線[WP10,WP11]、裏口からの出入口線[WP20,WP21]が登録されている。WP10等は、それぞれ点の座標値を表す。出入口線は、建物や駐車場など、出入りを伴う地物に設定されるものであり、地物の全てに設定する必要はない。なお表記の簡略化のため、以下、出入口線[WP10,WP11]を出入口線WP10または出入口線WP11というように表すこともある。
【0016】
到着地点は、地物に対して、交通機関ごとに適した到着地点を示すデータである。各到着地点は、[座標,交通機関],[出入口線]の形式で格納されている。例えば、図中の「到着地点(1)[CP1,自動車],[WP11]」という例について説明する。CP1は、リンクL1上の到着地点である。つまり、[CP1,自動車]とは、到着地点CP1が「自動車」という交通機関を利用した場合に最終的に案内される地点であることを示しており、[WP11]は、地物の出入口線WP11側に向かうのに適した到着地点であることを示している。同様に、到着地点(2)は自動車で出入口線WP12側に向かうために適した地点、到着地点(3)、(4)は徒歩用の到着地点、到着地点(5)、(6)はバス用の到着地点であることを示している。
到着地点(7)は、電車、徒歩、バスの乗り継ぎの到着地点であることを表している。つまり、[STA,電車]は電車を利用して駅STAで乗降し、[BS3,徒歩]は駅STAからバス停BS3まで徒歩で行くことを示し、[BS1,バス]はバス停BS3からバスでバス停BS1に向かうことを示している。最後の[WP11]はこの経路では、WP11側の出入口線に到着することを意味している。このように、到着地点は、利用する交通機関を複数列挙した設定とすることも可能である。
図の例では、7つの到着地点を設定する例を示したが、更に多くの到着地点を設定してもよいし、1つだけの到着地点を設定しても構わない。
また、例えば到着地点(7)について、[STA,電車],[BS3,徒歩],[到着地点(5)]というように、他の到着地点のデータを参照するようなデータ構造としてもよい。さらには、各地点から次の地点までに要する時間の情報をデータ構造に含めてもよい。例えば到着地点(7)について、[STA,電車],[BS3,徒歩,3分],[BS1,バス,5分],[WP21]といったデータ構造としてもよい。
【0017】
到着地点を設定する場合、電車、バスなどの公共交通機関については、目的地の地物に利便性の高い駅または停留所などとすればよい。例えば、目的地から距離が近い地点、目的地までの道のりが最短の地点、発着便数が多い到着地点などとすることができる。到着地点は、必ずしも公共交通機関ごとに一つだけに絞る必要はない。
これに対し、徒歩や自動車は、公共交通機関のように決められた到着地点が存在する訳ではない。徒歩の場合は、出入口線をそのまま到着地点とすることができる。例えば、図の例では、到着地点(3)、(4)では、到着地点として出入口線WP11、WP21を用いている。
自動車の場合は、経路探索、経路案内を実現するため、地物の出入口線の道路上の端点から、いずれかの道路を経てたどりつけるネットワーク上の点とすることが好ましい。図の例では、ネットワークデータとしてリンクL1、L2が設定されているから、建物の出入口線WP11からは、点線の経路を経て到達できるリンクL1上の点CP1を到着地点とすることができる。また、出入口線WP21からは、リンクL2上の点CP2を到着地点とすることができる。このように設定することにより、「○○ビル」が目的地として設定されたときには、道路ネットワーク上の到着地点CP1、CP2を仮想目的地として経路探索を行うことが可能となる。
【0018】
図4は、変形例としての到着地点の設定例を示す説明図である。上側のデータベースDB1は、図3に示した地物データに相当する内容を一覧表の形で示したものである。名称、代表点、形状は、それぞれ図3の例と同様の形式で格納されている。ただし、到着地点としては、徒歩到着地点、自動車到着地点の2種類のみが格納されている。出入口線のデータは、徒歩到着地点と共通になるため省略した。
下側に示したデータベースDB2は、公共交通機関の到着地点を格納する。図の例では、バスに対する到着地点としてバス停BS1、BS2…が格納され、電車に対する到着地点として駅ST…が格納されている。また、1分圏内、5分圏内…には、それぞれの到着地点から所定の時間内で到達可能な地物が設定されている。この例では、地物の名称ではなく、その出入口線を格納することによって、各地物の出入口との対応関係も特定可能とした。
図中の矢印で示すように、バス停BS1からは、名称Aの地物の出入口線WPAに到達可能であり、5分かければ名称Bの地物の出入口線WPB2に到達可能であることが分かる。また、バス停BS2からは、5分で名称Bの地物の出入口線WPB1に到達可能であることが分かる。
図3、図4でそれぞれ示したデータは、一方のみを備えるようにしてもよいし、双方を備えるようにしてもよい。
【0019】
C.経路探索処理:
図5は経路探索処理のフローチャートである。端末100の経路探索部107が主として実行する処理であり、ハードウェア的には端末100のCPUが実行する処理である。
【0020】
CPUは処理を開始すると出発地および目的地を入力する(ステップS10)。出発地は、ユーザが指定してもよいし、GPSなどで取得した現在位置を出発地に設定してもよい。目的地は、地物を指定してもよいし、座標値で指定してもよい。
【0021】
CPUは、指定された出発地、目的地に対する到着地点を選択する(ステップS11)。出発地、目的地として地物が指定されている場合は、指定された地物に対応する地物データから到着地点を読み出せばよい。出発地、目的地が座標で指定されている場合には、当該座標がいずれのポリゴンに含まれるかを特定し、特定されたポリゴンの地物データに対応する到着地点を読み出せばよい。なお、指定した地物に到着地点が設定されていない場合は、指定した位置から最近傍のリンクに対する垂直線を設定し、これらが交差する点を仮の到着地点として選択する。
【0022】
次に、CPUは到着地点の交通機関を考慮して経路探索を行う(ステップS12)。自動車の到着地点に対しては、到着地点を仮想出発地、仮想目的地としてネットワークデータを用いた経路探索を行えばよい。徒歩の場合も、同様に、歩行者用に用意されたネットワークデータを用いて経路探索を行えばよい。
交通機関に対する到着地点に対しては、その交通機関に対応する交通機関データを参照して、いずれの到着地点から交通機関を利用すべきかを判定すればよい。交通機関の乗り継ぎも考慮して、経路を探索する方法は周知であるため詳細な説明は省略する。仮想出発地から交通機関の到着地点までの区間、交通機関を乗り継ぐ場合の徒歩の区間、到着地点から仮想目的地までの区間については、歩行者用のネットワークデータを用いて経路探索すればよい。ネットワークデータが全く存在しない場合は、道路ポリゴンをたどる方法で経路探索してもよい。到着地点から最終的な目的地までの経路についても、同様に歩行者用のネットワークデータを用いる方法、または道路ポリゴンをたどる方法などで経路探索すればよい。また、到着地点から目的地までの経路を予めデータとして記憶させておく方法をとってもよい。それぞれの到着地点は、目的地の出入口線と対応づけられているため、到着地点から目的地までの経路探索においては、到着地点に対応する出入口線を仮想目的地として行うことが好ましい。
CPUは、以上の処理を、全到着地点について実行する(ステップS13)。
【0023】
全到着地点について経路探索が完了すると、CPUは結果を出力する(ステップS14)。図の例では、コース1〜3の3通りの経路探索結果を出力する例を示した。利用者の選択に応じて、それぞれの経路について更に詳細な情報を提示することができる。全到着地点に対する経路探索結果を列挙する態様に代えて、所要時間や歩行の距離等に基づき、最適な経路を自動的に選択するようにしてもよい。
【0024】
本発明は、必ずしも上述した実施例の全ての機能を備えている必要はなく、一部のみを実現するようにしてもよい。また、上述した内容に追加の機能を設けてもよい。
本発明は上述の実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。例えば、実施例においてハードウェア的に構成されている部分は、ソフトウェア的に構成することもでき、その逆も可能である。
【実施例2】
【0025】
実施例1は、出発地または目的地について直接設定されている到着地点を抽出して経路探索に利用するというものであった。これに対し、実施例2では、出発地または目的地について間接的に設定されている到着地点も抽出するというものである。なお、実施例2において示す一例では目的地の地物を指定して到着地点を選択する例としているが、出発地の地物についても同様の処理を実行することが可能である。また、実施例2については、前述した実施例1と異なる点についてのみ説明し、同様の構成要素については同一の参照符を用いて重複する説明を省略するものとする。
【0026】
図6は実施例2における到着地点選択処理のフローチャートである。実施例2は、実施例1において図5に示すステップS11の到着地点選択処理の内容のみが異なる。実施例2においては、到着地点選択処理が開始すると、CPUは、ユーザによるコマンド入力部103への入力に基づいて移動手段を指定する(ステップS201)。
【0027】
ステップS201が終了すると、CPUは、指定した地物について指定した移動手段に対応する到着地点があるか否かを判定する(ステップS202)。CPUは、ステップS202において、指定した地物に対応する到着地点があると判定したときには(ステップS202:Yes)、対応する到着地点を抽出し、指定した地物に対する到着地点として選択する(ステップS203)。ステップS203が終了すると、CPUは、到着地点選択処理を終了し、実施例1におけるステップS12へと移行する。CPUは、ステップS202において、指定した地物に対応する到着地点がないと判定したときには(ステップS202:No)、指定した地物が包含している地物(以後、被包含地物という)の到着地点を抽出する(ステップS204)。
【0028】
実施例2の一例を説明する。図7に示す図の地域のうち、住宅9を目的地とし、移動手段を鉄道とした例について説明する。図8および図9には、図7に示す図に含まれる地物の到着地点のデータを示している。具体的には、駅1〜3、住宅1〜9、駐車場1,2、コンビニ1、マンション1、駅1〜3、商業施設1〜3および複合施設1として示す地物のいずれかと、鉄道用の到着地点T1〜3、自動車用の到着地点C1〜13および歩行者用の到着地点W1〜24のいずれかとが対応して設定されている。住宅9には、図8および図9に示す到着地点のデータによれば、自動車用の到着地点C13および歩行者用の到着地点W18が設定されているものの、鉄道用の到着地点は設定されていない。したがって、実施例2の一例では、CPUはステップS204へと移行する。
【0029】
実施例2においては、複数の地物を包含するエリアを規定しており、地図データベース記憶部105に記憶される地物データは、到着地点が共通する複数の地物データを包含するエリアデータを備えている。そして、指定した地物が複数の地物を包含するエリアでもある場合は、指定した地物が包含する被包含地物を抽出することができる。図10および図11には、図7に示す図に含まれる地物同士、エリア同士または地物およびエリアについての包含−被包含の関係を示している。関係種別は、被包含地物が移動手段関係にあるものであるか否かを示す。移動手段関係にあるということは、被包含地物の到着地点が、包含する地物またはエリアに含まれる地物の共通する到着地点になることを示す。例えば、複合施設2については、被包含地物である駐車場1が、複合施設2によって包含される他の地物である商業施設1、テナント1−1またはテナント1−2と共通する到着地点となる。また、関係種別が移動手段関係となっていない場合は、被包含地物の到着地点は、共通する到着地点とはならない。例えば、住宅2には自動車用の到着地点C3が設定されているが、この到着地点C3は同じく駅圏2が包含する住宅3と共通する到着地点とすべきではないので、移動手段関係の設定はしていない。
【0030】
ステップS204の被包含地物の到着地点抽出処理における具体的な内容は図12のフローチャートに示すとおりである。まず、CPUは、移動手段関係にあって到着地点の検索が未処理の被包含地物があるか否かを判定する(ステップS301)。CPUは、ステップS301において、未処理の被包含地物がないと判定したときは(ステップS301:No)、被包含地物の到着地点抽出処理を終了する。CPUは、ステップS301において未処理の被包含地物があると判定したときは(ステップS301:Yes)、被包含地物を抽出してこれを着目地物として設定する(ステップS302)。CPUは、ステップS302が終了すると、着目地物において設定されている到着地点を検索する(ステップS303)。CPUは、ステップS303が終了すると、着目地物に到着地点があるか否かを判定する(ステップS304)。CPUは、ステップS304において、着目地物に到着地点がないと判定したときは(ステップS304:No)、ステップS301に戻る。CPUは、ステップS304において、着目地物に到着地点があると判定したときは(ステップS304:Yes)、到着地点を対応する着目地物と関連させて抽出する(ステップS305)。CPUは、ステップS305が終了すると、ステップS301に戻る。実施例2において、指定した地物に被包含地物が複数ある場合は、被包含地物のそれぞれについて移動手段に対応する到着地点を抽出していく。
【0031】
CPUは、ステップS204の被包含地物の到着地点抽出処理が終了すると、指定した地物またはエリア内に移動手段に対応する到着地点が含まれているか否かを判定する(ステップS205)。CPUは、ステップS205において、指定した地物またはエリア内に移動手段に対応する到着地点が含まれていると判定したときには(ステップS205:Yes)、対応する到着地点を指定した地物に対する到着地点として選択する処理(ステップS203)に移行する。CPUは、ステップS205において、指定した地物またはエリア内に移動手段に対応する到着地点が含まれていないと判定したときには(ステップS205:No)、指定した地物等を包含する地物またはエリアがあるか否かを判定する(ステップS206)。
【0032】
CPUは、ステップS206において、指定した地物等を包含する地物またはエリアがあると判定したときには(ステップS206:Yes)、その包含する地物またはエリアを指定し(ステップS207)、このとき指定した地物またはエリアについてステップS202以降の処理を実行する。CPUは、ステップS206において、指定した地物等を包含する地物またはエリアがないと判定したときには(ステップS206:No)、最近傍のリンクに対する垂直線を設定し、これらが交差する点を仮の到着地点として選択し(ステップS208)、到着地点選択処理を終了して実施例1におけるステップS12へと移行する。このように、ステップS202以降の処理を繰り返し、途中で移動手段に対応する到着地点が抽出されたときには、到着地点を選択した(ステップS203)後に到着地点選択処理を終了し、移動手段に対応する到着地点が抽出されなかったときには、仮の到着地点を選択した(ステップS208)後に到着地点選択処理を終了する。
【0033】
実施例2の一例では、指定した地物である住宅9には、被包含地物が存在せず、かつ、移動手段に対応する到着地点が含まれていないので、CPUは、ステップS202からステップS206へ移行し、住宅9を包含するエリアである駅圏3が存在しているのでステップS206からステップS207へ移行して駅圏3を指定し、ステップS202に戻る。この場合、駅圏3は出発地または目的地として指定される地物ではないエリアであり、直接的には到着地点が設定されているものではないので、CPUはステップS204に移行する。ここで、駅圏3は、図11に示す包含関係を規定したデータを参照すると、移動手段関係にある被包含地物として駅3が着目地物として抽出され、駅3には鉄道用の到着地点T3が設定されているので、CPUは、ステップS205からステップS203に移行し、駅3の到着地点T3が選択された後、到着地点選択処理が終了することになる。住宅9は、駅2が距離的に近く存在しているが、川1の向こう岸にあることによって道のりとしては遠くなるので、実際には駅3を経由するほうが望ましい。このように、地物ではないエリアの領域の場合、実際の状況に適合するように規定することができる。また、複合施設2については、図7に示すように、駅圏1および駅圏2の両方の被包含地物となっており、このように規定することも可能である。
【0034】
このように、実施例2においては、エリアデータ内の複数の地物データの到着地点は同エリアデータを代表する代表地物データの到着地点としている。すなわち、到着地点が共通する地物データについてはエリアデータにまとめて対応させるとともに、エリアデータに共通する到着地点を対応させているので、代表地物データの到着地点のデータについて修正するときの作業等が容易になる。
【0035】
また、実施例2の一例においては、到着地点T3が選択されて実施例1におけるステップS12の経路探索が実行された段階では、この到着地点T3が設定されている駅3から住宅9までの経路探索が終了していないので(ステップS13:No)、図5に示すフローチャートに従い、駅3から住宅9までの到着地点選択処理(ステップS11)へと移行する。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、目的地までの利便性の高い経路を探索、案内するために利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
100…端末
101…主制御部
102…送受信部
103…コマンド入力部
104…GPS入力部
105…地図データベース記憶部
106…表示制御部
107…経路探索部
200…サーバ
201…送受信部
202…データベース管理部
210…地図データベース記憶部
211…地物データ
212…交通機関データ
213…ネットワークデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的地に向かう経路を探索する経路探索システムであって、
出発地及び目的地の少なくとも一方として指定される地物に関する地物データであって、属性情報として前記地物に対して複数種類の交通機関が到着するそれぞれの到着地点を示す到着地点情報を保持している地物データを記憶する地図データベース記憶部と、
出発地および目的地を入力する入力部と、
前記地図データベース記憶部を参照して、前記出発地として指定された地物に対応する複数の到着地点から前記目的地に至る経路、出発地から前記目的地として指定された地物に対応する複数の到着地点に至る経路、及び前記出発地として指定された地物に対応する複数の到着地点から前記目的地として指定された地物に対応する複数の到着地点に至る経路の少なくとも一部の経路を探索する経路探索部と
を備える経路探索システム。
【請求項2】
請求項1記載の経路探索システムであって、
前記地物データは、更に、前記属性情報として前記到着地点に対応付けられた前記地物の出入口地点に関する情報を保持しており、
前記経路探索部は、前記目的地として指定された地物の到着地点から出入口地点までの経路についても探索する経路探索システム。
【請求項3】
請求項1記載の経路探索システムであって、
前記地図データベース記憶部に記憶される地物データは、到着地点が共通する複数の地物データを包含するエリアデータを備えており、当該エリアデータ内の複数の地物データの到着地点は同エリアデータを代表する代表地物データの到着地点とする経路探索システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−215544(P2012−215544A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207040(P2011−207040)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(597151563)株式会社ゼンリン (155)
【Fターム(参考)】