説明

経路探索装置、方法およびプログラム

【課題】路線の変更に決済を伴う乗換駅において利用者が必要とする乗換所要時間を反映した経路探索を行うこと。
【解決手段】出発駅と到着駅とを示す情報を取得し、利用者が所有している、交通機関の路線を変更する際の決済手段を示す所有情報を取得し、前記交通機関の路線に関する情報と前記所有情報とに基づいて、前記利用者が前記決済手段を所有している場合には、所有していない場合よりも前記路線の変更に決済を伴う乗換駅における乗換所要時間が短くなるように、前記交通機関によって前記出発駅から前記到着駅に行くための経路を探索する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通機関によって出発駅から到着駅まで行くための経路を探索する経路探索装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電車の乗換を含む経路を探索する技術が知られており、特許文献1には、乗換前後の列車の到着プラットホームから発車プラットホームまでの移動時間を乗換所要時間として定義し、移動時間を含む乗換所要時間を考慮した経路探索を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−34663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術においては、乗換に必要な乗換所要時間をプラットホーム間の移動時間によって定義しているため、プラットホーム間の移動に必要な時間に差異があってもその差異に応じて適切な列車を探索することができる。しかし、列車等の交通機関において、路線を変更する乗換を行うために決済が必要になる場合、移動時間に加えて決済手段となる切符を購入する必要があれば購入のために時間が必要になる。さらに、利用者が決済手段を予め所有していれば購入のための時間は不要である。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、路線の変更に決済を伴う乗換駅において利用者が必要とする乗換所要時間を反映した経路探索を行う技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明においては、利用者が決済手段を所有している場合には、所有していない場合よりも路線の変更に決済を伴う乗換駅における乗換所要時間が短くなるように、交通機関によって出発駅から到着駅に行くための経路を探索する。すなわち、利用者が決済手段を所有している場合には、所有していない場合と比較して、路線の変更に決済を伴う乗換駅において利用者に対して短い乗換所要時間を許容した状態で経路探索が行われる。この結果、利用者が決済手段を所有しているため乗換駅において決済手段を新たに購入する必要がある場合に、過度に長い乗換所要時間を設定することなく経路探索を行うことができる。また、利用者が決済手段を所有していないため乗換駅において決済手段を新たに購入する必要がある場合に、過度に短い乗換所要時間を設定することなく経路探索を行うことができる。すなわち、路線の変更に決済を伴う乗換駅において利用者が必要とする乗換所要時間を反映した経路探索を行うことができる。
【0006】
ここで、駅情報取得手段は、出発駅と到着駅とを示す情報を取得することができればよい。すなわち、経路の起点および終点となる駅を示す情報を取得することができればよく、利用者による出発駅と到着駅との入力を受け付けて当該受け付けた出発駅と到着駅とを示す情報を取得する構成等を採用可能である。むろん、経由駅や経路探索を行う際の条件となる他の情報を出発駅と到着駅とを示す情報とともに取得する構成であっても良い。
【0007】
所有情報取得手段は、利用者が所有している決済手段の所有情報を取得することができればよい。すなわち、経路探索を利用する利用者が各乗換駅において決済手段を購入することなく乗換を行うことができるか否かを示す情報を取得することができればよい。ここでも、利用者によって決済手段を所有しているか否かを示す情報の入力を受け付けて所有情報を取得する構成等を採用可能である。むろん、決済手段が複数種類存在し得る場合には、所有している決済手段を複数の種類から選択する構成とすることが可能である。なお、決済手段は、交通機関の路線を変更する際の決済に利用される手段であれば良く、例えば、改札を通過するための路線連絡切符であっても良いし、課金に関する情報を無線通信によって送受信することによって乗換駅における決済を可能にする無線通信装置(例えば、ICカード)であってもよい。
【0008】
交通機関の路線に関する情報は経路を探索するための情報であれば良く、例えば、駅に対応付けて設定されたノードと駅間の路線による接続関係を示すリンクと各リンクに対応付けて設定されたコストと時刻表とを示す情報を含み、これらの情報に基づいてダイクストラ法等のアルゴリズムによって経路探索を行う構成を採用可能である。
【0009】
経路探索手段は、交通機関の路線に関する情報に基づいて経路探索を行うにあたり、所有情報に基づいて、利用者が決済手段を所有している場合に、所有していない場合よりも路線の変更に決済を伴う乗換駅における乗換所要時間が短くなるように経路探索を行うことができればよい。すなわち、経路探索手段は、経路探索の結果として得られる経路における乗換所要時間が所有情報に依存するように探索を行うことができればよい。従って、所有情報を利用しない従来の経路探索アルゴリズムによって経路を探索した後、経路に乗換駅が含まれる場合に所有情報に基づいて乗るべき交通機関の候補を変更して再探索する構成を採用可能である。また、所有情報に依存するコスト情報を予め定義し、所有情報に基づいてコストを特定するとともに当該コストに基づいて経路を探索する構成を採用しても良い。
【0010】
後者としては、例えば、交通機関の路線に関する情報において駅に対応するノードを定義する際に、乗換駅においては乗換前後の路線毎に異なるノードが設定される構成とする。そして、当該異なるノード間にリンクおよびコストが対応付けられているとともに、利用者が決済手段を所有している場合には、所有していない場合よりも当該異なるノード間のコストに小さい値が対応付けられている構成を採用可能である。この構成によれば、コスト情報に基づいて利用者が決済手段を所有している場合および所有していない場合のそれぞれに適切な経路を探索することが可能である。
【0011】
また、ここでは、乗換駅における路線の変更に必要な乗換所要時間が、所有情報に応じて変動するように経路探索を行うことができればよい。例えば、所有情報が示す決済手段の種類に応じて決済手段によって決済が可能な乗換駅および決済が不可能な乗換駅を特定し、決済が可能な乗換駅における乗換所要時間が、決済が不可能な乗換駅の乗換所要時間より短い時間となるように経路を探索する構成を採用可能である。むろん、乗換駅において乗換を行うために移動する場合、決済手段の所有および非所有による乗換所要時間の調整に加え、乗換を行うための移動に要する時間や距離の長短に応じて乗換所要時間を調整する構成であっても良い。
【0012】
さらに、経路探索を行う際の条件として、出発駅における出発希望時刻または到着駅における到着希望時刻を加える構成としても良い。例えば、出発希望時刻が取得された場合には、時系列において早い時刻の事象(駅への到着や交通機関の出発)から特定することによって経路探索を行うことが可能になる。従って、利用者が決済手段を所有している場合に、所有していない場合よりも早い時刻を乗換駅の出発時刻として出発駅から到着駅に行くための経路を探索することで、出発希望時刻に出発駅を出発する場合の経路を探索することが可能になる。さらに、到着希望時刻が取得された場合、時系列において遅い時刻の事象(駅への到着や交通機関の出発)から特定することによって経路探索を行うことが可能になる。従って、利用者が決済手段を所有している場合に、所有していない場合よりも遅い時刻を乗換駅の到着時刻として出発駅から到着駅に行くための経路を探索することで、遅くとも到着希望時刻において到着駅にするための経路を探索することが可能になる。なお、複数個の乗換駅が想定し得る場合、出発希望時刻が取得された場合には出発駅に近い乗換駅の出発時刻を先に特定することによって経路探索を行うことが可能であり、到着希望時刻が取得された場合には到着駅に近い乗換駅への到着時刻を先に特定することによって経路探索を行うことが可能である。
【0013】
さらに、本発明のように利用者が決済手段を所有している場合には所有していない場合よりも路線の変更に決済を伴う乗換駅における乗換所要時間が短くなるように経路探索を行う手法は、方法やプログラムとしても適用可能である。また、以上のような装置、方法、プログラムは、単独の装置として実現される場合もあれば、他の装置と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような装置を備えた携帯端末やナビゲーション装置、方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】経路探索装置を含むシステムのブロック図である。
【図2】経路探索処理を示すフローチャートである。
【図3】(3A)は探索条件の入力例を示す図であり、(3B)(3C)は経路探索結果の案内例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)経路探索装置を含むシステムの構成:
(1−1)携帯端末の構成:
(1−2)経路情報提供装置の構成:
(1−3)経路案内処理:
(2)他の実施形態:
【0016】
(1)経路探索装置を含むシステムの構成:
(1−1)携帯端末の構成:
図1は、経路探索装置を含むシステムの構成を示すブロック図である。本実施形態において、携帯端末100は利用者に探索された経路を案内する装置である。経路探索装置10は、携帯端末100に対して案内対象となる経路を示す経路情報を提供する装置である。携帯端末100はCPU,RAM,ROM等を備える制御部200とユーザI/F部410と通信部220とを備えており、当該ROMや図示しない記録媒体に記録されたプログラムを制御部200で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムの一つとして、利用者に対して目的地までの経路を案内する経路案内プログラム210を実行可能である。
【0017】
ユーザI/F部410は、ユーザが指示を入力し、またはユーザに各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、図示しない表示部やボタン、スピーカー等を備えている。通信部220は、外部の通信機器と無線通信によって情報を送受信する装置である。本実施形態においては、携帯端末100を利用する利用者がユーザI/F部410を操作して経路案内プログラム210を起動することによって制御部200によって経路案内が実現される。すなわち、制御部200は経路案内プログラム210の処理によって、ユーザI/F部410を介して利用者が入力する出発駅、到着駅、日付を含む出発希望時刻を示す情報および利用者が所有する決済手段の種類を示す所有情報を受け付ける。
【0018】
図3Aは、制御部200がこれらの情報の入力を受け付ける際にユーザI/F部410に表示される情報の例を示している。すなわち、本例においては、出発駅、到着駅に対応するボックス内に利用者所望の出発駅、到着駅を示す情報を入力するように構成されている。また、経路探索対象となる日付と出発希望時刻に対応するボックス内に利用者所望の日付と出発希望時刻を示す情報を入力するように構成されている。さらに、決済手段の候補が複数個提示されるとともにチェックボックスに対して選択した決済手段を入力するように構成されている。
【0019】
制御部200は、このようなインタフェースによって出発駅、到着駅、日付を含む出発希望時刻を示す情報および利用者が所有する決済手段の種類を示す所有情報を受け付け、通信部220を介してこれらの情報を経路探索装置10に対して送信する。経路探索装置10はこれらの情報を受信するとともにこれらの情報に基づいて経路を探索し、経路情報を送信する。さらに、制御部200は通信部220を介して経路情報を取得し、ユーザI/F部410を介して当該経路情報が示す経路を案内する。
【0020】
(1−2)経路情報提供装置の構成:
経路探索装置10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20と記録媒体30と通信部22とを備えており、制御部20は当該記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを実行することができる。本実施形態において制御部20は、このプログラムの一つとして経路探索プログラム21を実行可能であり、制御部20は経路探索プログラム21の処理により、携帯端末100が送信する情報を受信し、経路情報を生成して通信部22を介して当該経路情報を送信する。なお、通信部22は外部の通信機器と無線通信によって情報を送受信する装置である。
【0021】
また、本実施形態において記録媒体30には予め路線情報30aが記録されている。本実施形態において、路線情報30aには、交通機関の駅に対応付けて設定されたノードを示すノードデータ、駅間の路線による接続関係を示すリンクデータ等が含まれている。また、各リンクデータには各リンクに相当する区間を交通機関で辿るために必要な時間等に基づいて特定されたコストを示すコストデータが対応付けられている。さらに、本実施形態においては、同一の駅であっても路線が異なる場合には異なるノードが設定され、当該異なるノード間にリンクおよびコストが対応付けられている。すなわち、当該異なるノードは同一の駅において路線を変更する場合に乗換前後に利用者が到達すべきプラットホームに相当し、リンクは乗換に際して移動すべきプラットホームの接続関係を示し、コストはプラットホーム間の乗換所要時間に応じた値となっている。
【0022】
なお、本実施形態において、同一駅に設定された異なるノード間のリンクには、当該リンクに相当する乗換を行う際に決済を伴うか否かを示す情報が対応付けられている。さらに、乗換を行う際に決済を伴わない場合、当該同一駅に設定された異なるノード間のコストはプラットホーム間の移動時間に応じた値となっている。また、乗換を行う際に決済を伴う場合、当該同一駅に設定された異なるノード間のコストは、利用者が決済手段を所有していない場合のコスト、すなわち、乗換の際に改札を一旦通過して切符を購入する時間とプラットホーム間の移動時間との和に応じた値である。
【0023】
さらに、路線情報30aにおいては、各路線の交通機関を利用するために利用可能な決済手段を示す決済データが各リンクに対応付けられている。すなわち、路線に対応するリンクに対して特定の決済手段が対応付けられている場合、当該特定の決済手段によって決済を行って当該路線を利用することが可能である。従って、所有情報および決済データを参照すれば、利用者が所有する決済手段の種類に応じて決済手段によって決済が可能な乗換駅および決済が不可能な乗換駅を特定することができる。さらに、路線情報30aには、各駅における交通機関の到着時刻および出発時刻を示す時刻表データが含まれている。なお、駅に設定されるノードは、普通、特急など、当該駅に止まる交通機関の種類毎に設定され、当該交通機関の種類毎にリンクが定義されていても良い。
【0024】
経路探索プログラム21は、駅情報取得部21aと所有情報取得部21bと経路探索部21cとを備えている。駅情報取得部21aは、出発駅と到着駅とを示す情報および出発希望時刻を示す情報を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、制御部20は、駅情報取得部21aの処理により通信部22を制御し、携帯端末100が送信する出発駅と到着駅とを示す情報および出発希望時刻を示す情報を取得する。
【0025】
所有情報取得部21bは、利用者が所有している決済手段を示す所有情報を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールであり、制御部20は、所有情報取得部21bの処理により通信部22を制御し、所有情報を取得する。なお、ここで、所有情報は、利用者が入力した利用者自身が所有する決済手段の種類を示す情報であり、本実施形態における決済手段はICカードである。すなわち、本実施形態においては、ICカードが、課金に関する情報を無線通信によって送受信することによって乗換駅における決済を可能にする無線通信装置を構成しており、乗換後の路線に対応した種類のICカードを決済に利用することが可能である。
【0026】
経路探索部21cは、交通機関の路線に関する情報と所有情報とに基づいて、交通機関によって出発駅から到着駅に行くための経路を探索する機能を制御部20に実現させるモジュールである。本実施形態において、制御部20は、経路探索部21cの処理により、公知のアルゴリズムによって探索した経路を補正することによって、利用者が決済手段を所有している場合には、所有していない場合よりも路線の変更に決済を伴う乗換駅における乗換所要時間が短くなるように経路を設定する。
【0027】
すなわち、本実施形態において、制御部20は、路線情報30aに基づいて出発駅から到着駅までの経路を探索し、探索結果に乗換駅が含まれる場合に、所有情報に基づいて経路を補正する。具体的には、路線情報30aにおいて、同一駅の乗換に必要な乗換所要時間に応じたコストは、利用者が切符を購入する場合の乗換所要時間に基づいて定義されている。従って、路線情報30aに基づいて探索された経路は、利用者が決済手段を所有していないため切符を購入する場合に適合した経路である。
【0028】
そこで、制御部20は、探索された経路に乗換駅が含まれ、当該乗換駅における乗換に必要な決済手段を利用者が所有している場合には、当該乗換駅における乗換所要時間を短くした場合により早い交通機関に乗ることができるか否かを判定する。そして、より早い交通機関に乗ることができる場合には、当該より早い交通機関に乗る場合の経路を再探索する。この処理を全ての乗換駅について行うことにより、制御部20は経路を確定する。経路が確定すると、制御部20は、通信部22を介して当該経路を示す経路情報を送信する。制御部200は、上述のように、通信部220を介して経路情報を取得し、ユーザI/F部410を介して当該経路情報が示す経路を案内する。
【0029】
以上の構成において、制御部20は、所有情報に基づいて、利用者が乗換駅での決済に必要な決済手段を所有している場合と、所有していない場合とのそれぞれについて適切な乗換所要時間となるように経路を探索することができる。従って、路線の変更に決済を伴う乗換駅において利用者が必要とする乗換所要時間を反映した経路探索を行うことができる。
【0030】
(1−3)経路案内処理:
次に、経路案内処理の手順を詳細に説明する。図2は制御部20が経路探索部21cの処理によって実行する経路探索処理を示すフローチャートである。制御部20は、携帯端末100が送信する出発駅、到着駅、日付を含む出発希望時刻を示す情報および利用者が所有する決済手段の種類を示す所有情報を受信すると、図2に示す経路探索処理を実行する。当該経路探索処理において、制御部20は、携帯端末100が送信した情報が示す探索条件を取得し(ステップS100)、当該探索条件に基づいて経路探索処理を実行する(ステップS105)。
【0031】
すなわち、制御部20は、路線情報30aに基づいて、図3Aにおいて入力された出発駅から到着駅までの経路であって、所有情報が示す決済手段を所有する(または所有しない)利用者が図3Aにおいて入力された日付において出発希望時刻に駅Aを出発する経路を探索する。当該経路探索は、ダイクストラ法などの公知のアルゴリズムによって実現可能である。
【0032】
ステップS105にて経路探索が行われると、制御部20は、探索された経路上の各駅を出発駅に近い駅から順に逐次判定対象としてステップS110以降の処理を実行する。すなわち、出発駅に近い駅から順に逐次判定対象とし、所有情報に基づいて必要に応じて補正を行うことにより、時系列において早い時刻の事象(駅への到着や交通機関の出発)から特定する処理を実行して経路探索を行うことになる。具体的には、ステップS110において、制御部20は、路線情報30aに基づいて、判定対象の駅において乗換の決済が必要であるか否かを判定する(ステップS110)。すなわち、制御部20は、判定対象となっている駅が路線の変更を行う乗換駅であるか否かを判定する。そして、判定対象となっている駅が乗換駅である場合、路線情報30aを参照し、当該乗換駅における乗換前後のプラットホームに相当するノードと当該ノード間のリンクを特定する。さらに、当該ノード間のリンクに、当該リンクに相当する乗換を行う際に決済を伴うことを示す情報が対応付けられているか否かを判定する。そして、決済を伴うことを示す情報が対応付けられている場合に、乗換の決済が必要であると判定する。
【0033】
ステップS110にて、判定対象となっている駅において乗換の決済が必要であると判定された場合、制御部20は、路線情報30aに基づいて、利用者の所有ICカードで乗換可能であるか否かを判定する(ステップS115)。すなわち、制御部20は、路線情報30aを参照して判定対象となっている駅における乗換後の路線に対応するリンクに対応付けられた決済データを特定し、当該決済データが示す決済手段と、所有情報が示す決済手段とを比較する。そして、所有情報が示す決済手段が、決済データが示す決済手段に含まれる場合には、利用者の所有ICカードで乗換可能であると判定する。
【0034】
ステップS115にて、利用者の所有ICカードで乗換可能であると判定された場合、制御部20は、利用者が乗り継ぐことが可能な、より早い交通機関があるか否かを判定する(ステップS120)。すなわち、制御部20は、ステップS105にて探索された経路に基づいて、判定対象となっている駅に乗換前の交通機関が到着する時刻を特定する。さらに、乗換前の交通機関が到着する時刻に利用者の所有ICカードで決済を行って乗換を行う場合の乗換所要時間を加えた時刻と、乗換前の交通機関が到着する時刻に切符を購入する必要がある場合の乗換所要時間を加えた時刻とを特定する。そして、前者の時刻と後者の時刻との間の期間に、判定対象となっている駅を出発する乗換後の路線の交通機関が存在する場合、より早い交通機関に乗り継ぐことが可能とみなす。なお、ここで、利用者の所有ICカードで乗換を行う場合の乗換所要時間はプラットホーム間の移動時間に応じた値であり、乗換駅で切符を購入する必要がある場合の乗換所要時間よりも短い値である。
【0035】
ステップS120にて、より早い交通機関があると判定された場合、制御部20は、判定対象となっている駅における出発時刻をより早い時刻に設定し(ステップS125)、ステップS105において当該判定対象となっている駅以降の経路を再探索する。すなわち、制御部20は、判定対象となっている駅における乗換後の交通機関の出発時刻として再探索前に設定されていた時刻を補正し、より早い交通機関に乗ることが可能な出発時刻を新たな出発時刻として再探索を行う。
【0036】
一方、ステップS110にて、判定対象となっている駅において乗換の決済が必要であると判定されない場合、または、ステップS115にて、利用者の所有ICカードで乗換可能であると判定されない場合、または、ステップS120にて、より早い交通機関があると判定されない場合、制御部20は、出発駅から到着駅までの間の全駅を判定対象としてステップS110〜S120の処理を行ったか否かを判定する(ステップS130)。ステップS130にて、全駅を判定対象としてステップS110〜S120の処理を行ったと判定されない場合、次の駅(次に到着駅に近い駅)を判定対象に設定し(ステップS135)、ステップS110以降の処理を繰り返す。
【0037】
以上のようにして、ステップS110〜S135(場合によってはステップS105〜S125)を繰り返すことにより、利用者が乗換駅において決済に利用可能な決済手段としてのICカードを所有している場合、所有していない場合よりも乗換所要時間が短くなるように、出発駅から到着駅に行くまでの経路を探索することが可能である。
【0038】
一方、ステップS130にて、全駅を判定対象としてステップS110〜S120の処理を行ったと判定された場合、制御部20は、その時点で特定されている経路を出発駅から到着駅までの経路として確定する。そして、制御部20は、通信部22を介して、当該確定された経路を示す経路情報を送信する(ステップS140)。この結果、携帯端末100においては、経路情報に基づく案内を行うことで、利用者が必要とする乗換所要時間を反映した経路を案内することができる。
【0039】
図3B,3Cは、携帯端末100における案内の例を示す図である。同図3Bは、図3Aに示す入力内容を探索条件として経路を探索した場合の経路案内例を示しており、利用者がICカードAを所有している状態を想定している。一方、図3Cに示す例において、決済手段以外の探索条件は図3Aに示す例と同一であるが、当該図3Cに示す例においては利用者がICカードを所有していない状態を想定している。さらに、図3B,3Cにおいては、出発駅を最上段の矩形、到着駅を最下段の矩形内に示し、出発駅と到着駅との間に存在する矩形内に乗換駅を示している。そして、各駅を示す矩形の下側に各駅における交通機関の出発時刻を示し、各駅を示す矩形の上側に各駅における交通機関の到着時刻を示している。さらに、出発駅を示す矩形内には出発希望時刻を示し、到着駅を示す矩形内には到着時刻を示している。
【0040】
これらの例においては、駅Aから駅Cまで行く際に駅Bが乗換駅となる。また、駅Bにおいて駅Aから駅Bまでの路線と駅Bから駅Cまでの路線に乗り換える際には決済が必要であるとともに、ICカードAを決済に利用可能である。この例において、図3Aに示す入力内容を探索条件とした場合、図2に示すステップS105において、まず、路線情報30aに基づく経路探索が行われる。この経路探索結果は、乗換駅において切符を購入する必要がある場合の経路となる。
【0041】
利用者がICカードを所有していない場合、図2に示す経路探索処理において乗換駅である駅Bを判定対象としている段階でステップS110を経てステップS115が実行される。しかし、利用者がICカードを所有していないステップS115において所有ICカードで乗換可能であると判定されず、やはりステップS130が実行される。従って、ステップS120,S125を経てステップS105にて再探索が行われることはなく、最初にステップS105にて探索された経路が経路情報となり、携帯端末100においては、図3Cに示すような経路を案内する。すなわち、図3Cに示す経路案内においては、駅Bに交通機関が到着する到着時刻が11:10であり、乗換後の交通機関が出発する時刻が11:15であることを示しており、駅Bにおいて切符の購入が必要であることが示されている。
【0042】
一方、利用者がICカードを所有している場合、図2に示す経路探索処理において乗換駅である駅Bを判定対象としている段階でステップS110を経てステップS115が実行され、駅Bにおいては所有ICカードAで乗換可能であると判定される。このため、ステップS120以降が実行される。さらに、この場合、駅Bにおいてより早い交通機関があればステップS125にてより早い時刻が出発時刻に設定された状態でステップS105における経路の再探索が行われる。従って、経路は補正され、駅Bにおいては最初の探索で得られた交通機関よりも早い交通機関を利用した経路となり、携帯端末100においては、図3Bに示すような経路を案内する。すなわち、図3Bに示す経路案内においては、駅Bに交通機関が到着する到着時刻は図3Cと同様に11:10であるが、乗換後の交通機関が出発する時刻が11:13であることが示されている。また、駅BにおいてICカードAが利用可能であることが示されている。このように、本実施形態におれば、利用者が所有する決済手段に応じて適切な乗換所要時間を設定して経路を探索するとともに案内することができる。
【0043】
(2)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、利用者が決済手段を所有している場合には所有していない場合よりも路線の変更に決済を伴う乗換駅における乗換所要時間が短くなるように経路探索を行う限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、出発駅と到着駅とを示す情報は、少なくとも経路の起点および終点となる駅を示す情報を含んでいれば良く、経由駅や経路探索を行う際の条件となる他の情報を出発駅および到着駅を示す情報とともに取得する構成であっても良い。
【0044】
所有情報取得手段は、利用者が所有している決済手段の所有情報を取得することができればよく、経路探索を利用する利用者が各乗換駅において決済手段を新たに入手することなく乗換を行うことができるか否かを示す情報を取得することができればよい。決済手段は、交通機関の路線を変更する際の決済に利用される手段であれば良く、例えば、改札を通過するための路線連絡切符であっても良い。また、携帯端末100が決済手段を備えている構成であっても良く、この場合は、利用者が入力することなく携帯端末100が決済手段の種類を自動で特定してもよい。
【0045】
さらに、決済手段の所有および非所有によって乗換所要時間の長さを調整したが、決済手段の所有および非所有に伴って乗換を行うための移動に要する時間や距離が変動する場合には、当該時間や距離の長短に応じて乗換所要時間を調整してもよい。
【0046】
さらに、到着駅における到着希望時刻を、経路探索を行う際の条件として設定する構成としても良い。なお、到着希望時刻が経路探索の条件とされた場合、時系列において遅い時刻の事象(駅への到着や交通機関の出発)から特定することによって経路探索を行うことが可能になる。従って、利用者が決済手段を所有している場合に、所有していない場合よりも遅い時刻を乗換駅の到着時刻として出発駅から到着駅に行くための経路を探索することで、遅くとも到着希望時刻において到着駅にするための経路を探索することが可能になる。なお、上述の図3B,3Cに示す例においては乗換駅が1個であったが、むろん、複数個の乗換駅が想定し得る場合に本発明を適用することも可能である。すなわち、複数個の乗換駅が想定し得る場合、出発希望時刻が取得された場合には出発駅に近い乗換駅の出発時刻を先に特定することによって経路探索を行うことが可能であり、到着希望時刻が取得された場合には到着駅に近い乗換駅への到着時刻を先に特定することによって経路探索を行うことが可能である。
【0047】
さらに、経路探索手段は、経路探索の結果として得られる経路における乗換所要時間が所有情報に依存するように探索を行うことができればよい。従って、所有情報に依存するコスト情報を予め定義し、所有情報に基づいてコストを特定するとともに当該コストに基づいて経路を探索する構成を採用しても良い。この場合、路線情報30aにおいて乗換駅での乗換前後の路線毎に異なるノードを設定するとともに、当該異なるノード間にリンクおよびコストを対応付ける際に、当該コストが所有情報に依存するように定義する。すなわち、利用者が決済手段を所有している場合には、所有していない場合よりも当該異なるノード間のコストに小さい値が対応付けられている。この構成によれば、所有情報に基づいてコスト情報を選択し、選択されたコスト情報に基づいてダイクストラ法等のアルゴリズムによって経路探索を行うことで、利用者が決済手段を所有している場合および所有していない場合のそれぞれに適切な経路を探索することが可能である。
【0048】
さらに、本発明の適用対象は、携帯端末100からの経路情報の送信要求に応じて経路探索を行う経路探索装置に限定されない。例えば経路案内を行う端末が汎用的なコンピュータであり、インターネット等の有線ネットワークによって汎用的なコンピュータと経路探索装置とが接続される環境に本発明を適用しても良い。むろん、汎用的なコンピュータを経路探索装置として機能させ、スタンドアロン環境で本発明を実現しても良い。
【符号の説明】
【0049】
10…経路探索装置、20…制御部、21…経路探索プログラム、21a…駅情報取得部、21b…所有情報取得部、21c…経路探索部、22…通信部、30…記録媒体、30a…路線情報、100…携帯端末、200…制御部、210…経路案内プログラム、220…通信部、410…ユーザI/F部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発駅と到着駅とを示す情報を取得する駅情報取得手段と、
利用者が所有している、交通機関の路線を変更する際の決済手段を示す所有情報を取得する所有情報取得手段と、
前記交通機関の路線に関する情報と前記所有情報とに基づいて、前記利用者が前記決済手段を所有している場合には、所有していない場合よりも前記路線の変更に決済を伴う乗換駅における乗換所要時間が短くなるように、前記交通機関によって前記出発駅から前記到着駅に行くための経路を探索する経路探索手段と、
を備える経路探索装置。
【請求項2】
前記交通機関の路線に関する情報には、駅に対応付けて設定されたノードと駅間の前記路線による接続関係を示すリンクと各リンクに対応付けて設定されたコストとを示す情報を含み、前記乗換駅においては乗換前後の路線毎に異なるノードが設定されて当該異なるノード間にリンクおよびコストが対応付けられているとともに、前記利用者が前記決済手段を所有している場合には、所有していない場合よりも前記異なるノード間のコストに小さい値が対応付けられている、
請求項1に記載の経路探索装置。
【請求項3】
前記駅情報取得手段は、前記出発駅における出発希望時刻または前記到着駅における到着希望時刻を取得し、
前記出発希望時刻が取得された場合、
前記経路探索手段は、前記利用者が前記決済手段を所有している場合には、所有していない場合よりも早い時刻を前記乗換駅の出発時刻として前記出発駅から前記到着駅に行くための経路を探索し、
前記到着希望時刻が取得された場合、
前記経路探索手段は、前記利用者が前記決済手段を所有している場合には、所有していない場合よりも遅い時刻を前記乗換駅の到着時刻として前記出発駅から前記到着駅に行くための経路を探索する、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の経路探索装置。
【請求項4】
出発駅と到着駅とを示す情報を取得する駅情報取得工程と、
利用者が所有している、交通機関の路線を変更する際の決済手段を示す所有情報を取得する所有情報取得工程と、
前記交通機関の路線に関する情報と前記所有情報とに基づいて、前記利用者が前記決済手段を所有している場合には、所有していない場合よりも前記路線の変更に決済を伴う乗換駅における乗換所要時間が短くなるように、前記交通機関によって前記出発駅から前記到着駅に行くための経路を探索する経路探索工程と、
を含む経路探索方法。
【請求項5】
出発駅と到着駅とを示す情報を取得する駅情報取得機能と、
利用者が所有している、交通機関の路線を変更する際の決済手段を示す所有情報を取得する所有情報取得機能と、
前記交通機関の路線に関する情報と前記所有情報とに基づいて、前記利用者が前記決済手段を所有している場合には、所有していない場合よりも前記路線の変更に決済を伴う乗換駅における乗換所要時間が短くなるように、前記交通機関によって前記出発駅から前記到着駅に行くための経路を探索する経路探索機能と、
をコンピュータに実現させる経路探索プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−178326(P2011−178326A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46112(P2010−46112)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】