説明

経路探索装置、経路探索システムおよび経路探索プログラム

【課題】 混雑の度合いに基づいて複数の経路を評価すること。
【解決手段】 携帯情報端末は、現在位置を取得する現在位置取得部(S12)と、現在位置をサーバに送信する現在位置送信部(S13)と、現在位置から目的地までの経路を探索する経路探索部(S14)と、複数種類に分類され、種類が異なれば混雑度に対する負担度の増加割合が異なる複数の特定経路を記憶するEEPROMと、混雑度をサーバから取得する混雑度取得部61と、複数の特定経路のうち探索された経路に含まれる特定経路について、混雑度に対応する負担度を算出する負担度算出部(S21,S23,S25)と、複数の経路が探索される場合、負担度に基づいて複数の経路それぞれに対する優先度を決定する優先度決定部(S26)と、優先度に基づいて複数の経路を表示する経路表示部(S28)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、経路探索装置、経路探索システムおよび経路探索プログラムに関し、特に歩行者が携帯する経路探索装置、その経路探索装置で実行される経路探索システムおよび経路探索プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路の混雑状態を考慮して経路探索する車載用のナビゲーション装置が特開2008−20414号公報に記載されている。特開2008−20414号公報(特許文献1)には、経路データを記憶した地図データ記憶手段と、車両の現在位置から目的地までの経路を探索し、経路上の統計コストを取得し、統計コストに基づき、経路上に車両の通過時に渋滞又は混雑が予測される渋滞区間があるか否かを判断するCPUとを備え、CPUは、探索した経路上に渋滞区間がある場合に、その渋滞区間の道路種別を判断し、同じ道路種別であって、渋滞区間を回避する迂回路を経路データに基づいて探索する車両に搭載されるナビゲーションユニットが記載されている。
【0003】
しかしながら、従来の車載用のナビゲーション装置は、車両が移動するための経路を探索するため、人が移動する経路を探索することができない。人が移動する経路には、エスカレータ、エレベータ等の高さ方向の移動経路が含まれる場合がある。エスカレータ、エレベータ等は混雑の程度によって待ち時間、乗車時間が異なるため、常にエレベータが最速とは限らない。さらに、人が移動する場合には、体力を消耗し、混雑している場合には精神的な苦痛を感じる場合がある。このように、体力的または精神的な負担が考慮されないため、従来の車載用のナビゲーション装置を、人が移動するための経路探索に適用することができないといった問題がある。
【特許文献1】特開2008−20414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は上述した問題点を解決するためになされたもので、この発明の目的の1つは、混雑の度合いに基づいて複数の経路を評価することが可能な経路探索装置を提供することである。
【0005】
この発明の他の目的の1つは、混雑の度合いに基づいて複数の経路を評価することが可能な経路探索システムを提供することである。
【0006】
この発明のさらに他の目的の1つは、混雑の度合いに基づいて複数の経路を評価することが可能な経路探索プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、この発明のある局面によれば、経路探索装置は、現在位置を取得する現在位置取得手段と、取得された現在位置をサーバに送信する送信手段と、出発地から目的地までの経路を探索する探索手段と、複数種類に分類され、種類が異なれば混雑度に対する負担度の増加割合が異なる複数の特定経路を記憶する記憶手段と、混雑度をサーバから取得する混雑度取得手段と、複数の特定経路のうち探索された経路に含まれる特定経路について、取得された混雑度に対応する負担度を算出する負担度算出手段と、探索手段により複数の経路が探索される場合、算出された負担度に基づいて、複数の経路それぞれに対する優先度を決定する優先度決定手段と、決定された優先度に基づいて、探索された複数の経路を表示する表示手段と、を備える。
【0008】
この局面によれば、出発地から目的地までの経路が探索され、探索された経路に含まれる特定経路について、サーバから取得された混雑度に対応する負担度が算出され、複数の経路が探索される場合、負担度に基づいて、複数の経路それぞれに対する優先度が決定され、決定された優先度に基づいて複数の経路が表示される。経路に含まれる特定経路の負担度が混雑度から算出されるので、混雑の度合いに基づいて複数の経路を評価することが可能な経路探索装置を提供することができる。
【0009】
好ましくは、複数の特定経路それぞれは、高さ方向に移動するための経路を含む。
【0010】
この局面に従えば、高さ方向に移動する経路を評価することができる。
【0011】
好ましくは、複数の特定経路は、エレベータ、エスカレータおよび階段を含む。
【0012】
好ましくは、負担度は、混雑度に対して負担度が増加しない第1要素と、混雑度の増加に対して負担度が増加する第2要素とを含む。
【0013】
好ましくは、複数の特定経路のうち少なくとも探索された経路に含まれる特定経路の移動時間および待ち時間をサーバから取得する所要時間取得手段を、さらに備え、優先度付与手段は、負担度に加えて、サーバから取得された移動時間および待ち時間に基づいて、優先度を決定する。
【0014】
この発明の他の局面によれば、経路探索システムは、経路探索装置とサーバとを含む経路探索システムであって、経路探索装置は、現在位置を取得する現在位置取得手段を備え、取得された現在位置に基づいて混雑度を算出する混雑度算出手段と、出発地から目的地までの経路を探索する探索手段と、複数種類に分類され、種類が異なれば混雑度に対する負担度の増加割合が異なる複数の特定経路を記憶する記憶手段と、複数の特定経路のうち探索された経路に含まれる特定経路について、算出された混雑度に対応する負担度を算出する負担度算出手段と、探索手段により複数の経路が探索される場合、算出された負担度に基づいて、複数の経路それぞれに対する優先度を決定する優先度決定手段と、決定された優先度に基づいて、探索された複数の経路を表示する表示手段と、がそれぞれサーバと経路探索装置とのいずれかに備えられる。
【0015】
この局面に従えば、混雑の度合いに基づいて複数の経路を評価することが可能な経路探索システムを提供することができる。
【0016】
この発明のさらに他の局面によれば、経路探索プログラムは、出発地から目的地までの経路を探索するステップと、混雑度を取得するステップと、複数種類に分類され、種類が異なれば混雑度に対する負担度の増加割合が異なる複数の特定経路のうち探索された経路に含まれる特定経路について、取得された混雑度に対応する負担度を算出するステップと、探索するステップにおいて複数の経路が探索される場合、算出された負担度に基づいて、複数の経路それぞれに対する優先度を決定するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0017】
この局面に従えば、混雑の度合いに基づいて複数の経路を評価することが可能な経路探索プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の説明では同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおける経路探索システムの全体概要を示す図である。図1を参照して、経路探索システムは、サーバ100と、経路探索装置として機能する携帯情報端末1,1A〜1Dと、を含む。
【0020】
サーバ100は、インターネット3に接続されており、インターネット3上における位置を示す位置情報としてIP(Internet Protocol)アドレスが割り当てられている。なお、インターネット3上における位置情報は、IPアドレスに限らず、MAC(Media Access Control)アドレス等の別のアドレスを用いてもよい。また、携帯情報端末1,1A〜1Dは、LAN(Local Area Network)5を介してインターネット3に接続される。このため、サーバ100および携帯情報端末1、1A〜1Dは、互いに通信が可能である。LAN5は、通信事業者等が提供するネットワークであってもよく、有線または無線を問わない。
【0021】
サーバ100は、一般的なコンピュータである。携帯情報端末1,1A〜1Dは、例えば、携帯型ナビゲーション装置またはナビゲート機能を備えた携帯電話機である。なお、携帯情報端末1,1A〜1Dは、携帯型ナビゲーション装置または携帯電話機に限定されるものではなく、ナビゲート機能を備えていればPDA(Personal Digital Assistants)等であってもよい。なお、図1においては、5台の携帯情報端末1,1A〜1Dを示しているが、携帯情報端末1,1A〜1Dの台数は、1台以上であればよい。また、携帯情報端末1,1A〜1Dは、工場出荷時や市場での販売時に、ナビゲート機能を備えていなくても、その後、ナビゲート機能を実現するためのプログラムがインストールされることにより、ナビゲート機能を備えるものであってもよい。
【0022】
図2は、サーバのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図2を参照して、サーバ100は、それぞれがバスに接続された中央演算装置(CPU)101と、CPU101が実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)107と、CPU101の作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)105と、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)103と、サーバ100をインターネット3に接続するための通信部109と、ユーザとのインターフェースとなる操作部113と、CD−ROM(Compact Disc−Read Only Memory)111Aが装着される外部記憶装置111と、を含む。
【0023】
CPU101は、サーバ100の全体を制御する。また、CPU101は、ROM103に記憶された混雑度管理プログラムをRAM105にロードして、実行する。混雑度管理プログラムは、経路探索プログラムの一部である。また、CPU101は、外部記憶装置111を介してCD−ROM111Aに記憶された混雑度管理プログラムをRAM105にロードし、実行するようにしてもよい。
【0024】
操作部113は、キーボードとマウス等のポインティングデバイスとを含む入力部115と、データを表示する液晶表示装置または有機ELD(ElectroLuminesence Display)等からなる表示部117とを含む。
【0025】
なお、CPU101が実行するためのプログラムを記憶する記録媒体としては、CD−ROM111Aに限られず、フレキシブルディスク、カセットテープ、光ディスク(MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、ICカード、光カード、マスクROM、EPROM(Erasable Programmable ROM)およびEEPROMなどの半導体メモリ等の媒体でもよい。
【0026】
さらに、CPU101がインターネット3に接続されたコンピュータからナビゲーションプログラムをダウンロードしてHDD103に記憶する、または、インターネットに接続されたコンピュータがナビゲーションプログラムをHDD103に書込みするようにしてCPU101で実行するようにしてもよい。ここでいうナビゲーションプログラムは、CPU101により直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む。
【0027】
携帯情報端末1,1A〜1Dのハードウェア構成および機能は同じなので、ここでは特に言及しない限り携帯情報端末1について説明する。図3は、携帯情報端末のハードウェア構成の一例を示す図である。図3を参照して、携帯情報端末1は、携帯情報端末1の全体を制御するための中央演算装置(CPU)11と、GPS受信機13と、地磁気センサ15と、加速度センサ17と、メモリインターフェース(I/F)19と、シリアル通信I/F21と、無線通信部23と、液晶表示装置(LCD)25と、タッチスクリーン27と、CPU11が実行するプログラム等を記憶するROM29と、CPU11の作業領域として用いられるRAM31と、データを不揮発的に記憶するEEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)33と、操作キー35と、を含む。
【0028】
GPS受信機13は、全地球測位システム(GPS)におけるGPS衛星から送信される電波を受信し、受信された電波に含まれるGPS信号をCPU11に出力する。また、GPS受信機13は、GPS信号を含む電波を送信するGPS衛星の数と、GPS衛星毎に受信された電波の状態と、発信機の状態とをCPU11に出力する。電波の状態は、電波強度と、電波の到来角(仰角)とを含む。発信機の状態は、衛星自体の状態を表す情報であり、GPS衛星から得られる航法メッセージに含まれる測距精度(URA)と、衛星健康状態(SVhealth)とを含む。
【0029】
加速度センサ17は、携帯情報端末1が移動する加速度を検出し、検出した加速度をCPU11に出力する。地磁気センサ15は、携帯情報端末1の予め定められた面が向く方向の方位を検出し、検出した方位をCPU11に出力する。なお、加速度センサ17に代えて、速度センサを用いてもよく、地磁気センサ15に代えてジャイロを用いてもよい。
【0030】
無線通信部23は、路側または店舗等に設置されたアクセスポイントと無線で通信する。無線通信部23は、アクセスポイントと通信することにより、携帯情報端末1を、アクセスポイントが接続されたネットワークに接続する。ネットワークは、ここではLANとしているが、WAN(Wide Area Network)またはインターネットであってもよい。
【0031】
LCD25は、TFT(Thin Film Transistor)型であり、CPU11により制御され、CPU11より出力される画像を表示する。なお、LCD25に代えて、有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイを用いてもよい。
【0032】
タッチスクリーン27は、透明な部材からなり、LCD25の表示面上に設けられる。タッチスクリーン27は、ユーザが指等で指示したLCD25の表示面における位置を検出し、CPU11に出力する。タッチスクリーン27は、感圧式と静電式のいずれであってもよい。タッチスクリーン27を静電式とする場合、タッチスクリーン27は、LCD25の裏面に設けることができる。CPU11は、LCD25に各種ボタンを表示することにより、タッチスクリーン27により検出される指示位置と組み合わせて、各種の操作を受け付ける。CPU11がLCD25に表示する操作画面は、携帯情報端末1を操作するための操作画面を含む。操作キー35は、ボタンスイッチであり、主電源のオンとオフとを切換える電源キーを含む。
【0033】
メモリI/F19には、着脱可能なメモリカード19Aが装着される。CPU11は、メモリカード19Aに記憶された地図データを読み出し、携帯情報端末1が位置する現在位置とそれが移動する方向の方位とを示す印を地図上に記した画像をLCD25に表示する。なお、地図データは、メモリカード19Aのほか、EEPROM33に記憶するようにしてもよい。また、EEPROM33に代えて内蔵ハードディスクドライブ(HDD)記憶するようにしてもよい。また、CPU11は、携帯型ナビゲーション装置が移動するに伴って移動後の位置と方位とを示す印を地図上に記した画像をLCD25に表示させる。
【0034】
なお、ここではCPU11が実行するプログラムをROM29に記憶しておく例を説明するが、プログラムをメモリカード19Aに記憶しておき、メモリカード19Aからプログラムを読み出して、CPU11で実行するようにしてもよい。プログラムを記憶する記録媒体としては、メモリカード19Aに限らず、フレキシブルディスク、カセットテープ、光ディスク(CD−ROM/MO/MD/DVD)、ICカード、光カード、マスクROM、EPROM、EEPROMなどの半導体メモリ等でもよい。
【0035】
また、シリアル通信I/F21または無線通信部23を介して接続されるコンピュータからプログラムを読み出して、CPU11で実行するようにしてもよい。ここでいうプログラムは、CPU11により直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む。
【0036】
本実施の形態における携帯情報端末1は、従来周知のナビゲーション装置と同様に、GPS受信機13がGPS衛星から受信するGPS信号に基づいて、現在位置を検出し、また、加速度センサ17および地磁気センサ15から入力される加速度および方位に基づいて、デッドレコニングを実行する。このため、本実施の形態における携帯情報端末1は、歩行者が携帯するのに適している。
【0037】
図4は、サーバが備えるCPUが有する機能の一例を示す機能ブロック図である。図4を参照して、サーバ100が備えるCPU101は、携帯情報端末1,1A〜1Dそれぞれから現在位置を収集する現在位置収集部121と、収集された現在位置に基づいて混雑度を算出する混雑度算出部123と、携帯情報端末1,1A〜1Dのいずれかからの要求に応じて混雑度を送信する混雑度送信部125と、現在位置の時間的な変化に基づいて所要時間を算出する所要時間算出部127と、携帯情報端末1,1A〜1Dのいずれかからの要求に応じて所要時間を送信する所要時間送信部129と、を備える。
【0038】
現在位置収集部121は、通信部109が携帯情報端末1,1A〜1Dのいずれかから現在位置を受信すると、携帯情報端末1,1A〜1Dのうち現在位置を送信してきたものを識別するための識別情報と、現在位置とを取得する。現在位置収集部121は、現在位置を取得した時刻と、識別情報と、現在位置とを、混雑度算出部123および所要時間算出部127に出力する。本実施の形態においては、携帯情報端末1,1A〜1Dそれぞれは、所定時間間隔で現在位置をサーバ100に送信するようにしている。このため、現在位置収集部121により少なくとも所定時間間隔で携帯情報端末1,1A〜1Dすべての現在位置が収集される。ここでは、現在位置は、3次元の位置を示し、緯度、経度および標高を含む。このため、現在位置は、複数階からなる建物については、階数を特定し、地下街についても同様に地階の階数を示す。
【0039】
混雑度算出部123は、現在位置収集部121から入力される現在位置に基づいて混雑度を算出する。混雑度算出部123は、所定時間間隔で混雑度を算出し、混雑度を混雑度送信部125に出力する。混雑度は、単位面積当たりの人数で表される。具体的には、混雑度算出部123は、現在位置収集部121から入力される現在位置のうち携帯情報端末1,1A〜1Dそれぞれから最後に受信された現在位置に基づいて、予め定められた複数の領域ごとに、その領域における単位面積当たりの台数を算出する。予め定められた複数の領域は、特定経路を含む。特定経路とは、高さ方向に移動するための経路であり、複数種類に予め分類され、EEPROM33に地図とともに予め記憶される。複数種類は、ここでは、エレベータ、エスカレータ、階段としている。
【0040】
混雑度送信部125は、通信部109が携帯情報端末1,1A〜1Dのいずれかから混雑度の送信要求を受信すると、携帯情報端末1,1A〜1Dのうち送信要求を送信してきたものに、混雑度を送信する。ここでは、携帯情報端末1,1A〜1Dのうち送信要求を送信してきたものの現在位置の周辺の領域の混雑度を送信する。周辺の領域は、現在位置が建物内に含まれていれば、その建物のすべての階の領域、特定経路を含む。
【0041】
所要時間算出部127は、現在位置収集部121から入力される現在位置に基づいて所要時間を算出する。所要時間は、特定経路の待ち時間と特定経路を移動する際の移動時間とを含む。具体的には、現在位置収集部121から入力される現在位置のうち特定経路に位置し、識別情報が同じ複数の現在位置に基づいて、その特定経路における待ち時間と、移動時間とを算出する。エレベータおよびエスカレータについては、乗車階と降車階との組ごとに待ち時間と移動時間とを算出する。単一の特定経路について複数の所要時間が算出される場合には、平均値を算出する。所要時間算出部127は、所定時間間隔で所要時間を算出し、所要時間を所要時間送信部129に出力する。特定経路は、高さ方向の経路であるため、複数の階ごとに所要時間を算出する。例えば、特定経路が、5階建ての建物内に存在する場合、1階と2階、2階と3階、3階と4階、4階と5階ごとに、上りと下りの所要時間を算出する。
【0042】
所要時間送信部129は、通信部109が携帯情報端末1,1A〜1Dのいずれかから所要時間の送信要求を受信すると、携帯情報端末1,1A〜1Dのうち送信要求を送信してきたものに、所要時間を送信する。ここでは、携帯情報端末1,1A〜1Dのうち送信要求を送信してきたものの現在位置の周辺のすべての特定経路それぞれの所要時間を送信する。現在位置の周辺の特定経路は、現在位置が建物内に含まれていれば、その建物に含まれるすべての特定経路を含む。
【0043】
図5は、携帯情報端末が備えるCPUが有する機能の一例を示す機能ブロック図である。図5を参照して、携帯情報端末1が備えるCPU11は、現在位置を取得する現在位置取得部51と、取得された現在位置をサーバ100に送信する現在位置送信部53と、目的地を受け付ける目的地受付部55と、出発地から目的地までの経路を探索する経路探索部57と、探索された経路を表示する経路表示部59と、サーバ100から混雑度を取得する混雑度取得部61と、特定経路の待ち時間と移動時間とを取得する所要時間取得部63と、特定経路の混雑度に対応する負担度を算出する負担度算出部65と、探索された複数の経路に対応する優先度を決定する優先度決定部67と、モード設定部69と、を含む。
【0044】
現在位置取得部51は、携帯情報端末1が備えるGPS受信機13が、GPS衛星が送信するGPS信号を受信すると、その受信されたGPS信号に基づいて現在位置を取得する。GPS信号から現在位置を直接算出するようにしてもよいし、携帯情報端末1の通信事業者が備えるサーバにGPS信号を送信し、そのサーバから現在位置を受信するようにしてもよい。また、現在位置取得部51は、無線通信部23が無線LANのアクセスポイントと通信する場合には、無線通信部23がアクセスポイントから受信する位置情報に基づいて、現在位置を算出する。建物内や地下等、GPS受信機13がGPS信号を受信できない場所において有効である。
【0045】
現在位置取得部51は現在位置を取得すると、取得された現在位置を現在位置送信部53および経路探索部57に出力する。ここでは、現在位置は、緯度、経度および標高を含む。現在位置送信部53は、所定時間間隔で現在位置を、無線通信部23を介してサーバ100に送信する。現在位置送信部53は、サーバ100のネットワークアドレスを予め記憶している。なお、現在位置を所定時間間隔で送信するようにしたが、送信するタイミングを限定するものではなく、所定の距離を移動した時点で送信するなどしてもよい。
【0046】
目的地受付部55は、ユーザが操作キーまたはタッチスクリーン27に入力する目的地を受け付ける。例えば、LCD25にEEPROM33に予め記憶された地図を表示し、表示された地図中の少なくとも1つの地点を指定する操作をユーザが入力すれば、その指定された地点を目的地として受け付ける。目的地は、緯度、経度および標高を含む。ここで、EEPROM33に予め記憶される地図は、複数階からなる建物については、複数階ごとの地図を含み、地下街についても同様に地階ごとの地図を含む。なお、地図は、EEPROM33の他、着脱可能なメモリカード19Aに記憶するようにしてもよいし、サーバ100から受信するようにしてもよい。
【0047】
経路探索部57は、現在位置取得部51から入力される現在位置を出発地とし、出発地から目的地受付部55から入力される目的地までの経路を探索する。探索方法は、例えばダイクストラ法を用いることができる。経路探索部57は、時間優先、距離優先など複数の条件で経路を探索することにより、複数の経路を探索するのが好ましい。なお、経路探索部57が経路を探索する場合において、混雑度は関係なく、ノード間の距離および時間等のデータはそのノード間において予め定められたデータが用いられる。経路探索部57は、探索により求められた経路を負担度算出部65、優先度決定部67および経路表示部59に出力する。なお、経路探索部57は、現在位置を出発地として経路を探索するようにしたが、出発地を目的地と同様に、ユーザが操作キーまたはタッチスクリーン27に入力する地点としてもよい。
【0048】
混雑度取得部61は、無線通信部23を介してサーバ100と通信し、サーバ100に混雑度の送信要求を送信する。サーバ100は、携帯情報端末1から混雑度の送信要求を受信すると、携帯情報端末1から先に受信した現在位置周辺の混雑度を、携帯情報端末1に送信する。混雑度は、上述したように、サーバ100において逐次更新される値であり、最新の混雑度を受信する。
【0049】
負担度算出部65は、経路探索部57から入力される経路中に予め定められた特定経路が含まれる場合、混雑度取得部61から入力される混雑度に基づいて特定経路の負担度を算出する。負担度算出部65は、特定経路について算出された負担度を優先度決定部67に出力する。特定経路は、高さ方向に移動するための経路のため、経路探索部57から入力される経路に含まれる特定経路は、建物であれば、移動元の階から移動先の階までの経路を含む。例えば、建物が特定経路の種類がエレベータ、エスカレータおよび階段をそれぞれ有する場合、現在位置が1階で目的地が5階ならば、経路探索部57から入力される経路は、特定経路の種類、ここではエレベータ、エスカレータおよび階段をそれぞれ含む少なくとも3つの経路が探索される。負担度算出部65は、特定経路の種類、ここではエレベータ、エスカレータおよび階段ごとに、1階から5階までの負担度を算出する。
【0050】
特定経路は、種類が異なれば混雑度の増分に対する負担度の増加割合が異なる。負担度は、混雑度の変化によって変化しない第1要素と、混雑度の変化によって変化する第2要素とを含む。第1要素は、人が体力的に影響を受ける要素であり、例えば、特定経路を通過することにより消費されるエネルギーに換算できる。第1要素は、特定経路の距離が増加すれば増加する値である。第2要素は、人が精神的に影響を受ける要素であり、例えば、混雑に伴う不快感である。第2要素は、定性的な値であるが、ここでは、負担度を算出するために、特定経路の種類ごとに、混雑度に対する定量的な値に予め換算している。第2要素は、特定経路を移動する時間が増加すれば増加する値である。
【0051】
図6は、負担度と混雑度との関係の一例を示す図である。ここでは、特定経路の距離を、高さ方向(移動する階数)とし、複数種類間で高さ方向の距離を同じとし、移動時間を混雑度の変化によって変化しないものとして示している。混雑度の値が0のときの負担度が第1要素を示し、混雑度が増加するに伴って増加する成分が第2要素である。
【0052】
図5に戻って、所要時間取得部63は、無線通信部23を介してサーバ100と通信し、サーバ100に所要時間の送信要求を送信する。所要時間取得部63は、サーバ100から受信された特定経路の所要時間を優先度決定部67に出力する。
【0053】
モード設定部69は、ユーザが操作キーまたはタッチスクリーン27に入力するモードを受け付ける。モードは、ここでは、距離優先モード、第1負担度優先モードおよび第2負担度優先モードを含む。モード設定部69は、受け付けられたモードを優先度決定部67に出力する。
【0054】
優先度決定部67は、負担度算出部65から入力される負担度と、所要時間取得部63から入力される所要時間とに基づいて、経路探索部57から入力される複数の経路それぞれについての優先度を決定する。優先度決定部67は、モード設定部69から入力されるモードに対応する優先度を決定する。
【0055】
経路表示部59は、経路探索部57から入力される経路を、優先度決定部から入力される優先度に基づいて、LCD25に表示する。経路探索部57から複数の経路が入力される場合、複数の経路を、優先度別に表示する。優先度が高い順に色を割り当てておき、複数の経路を、それに対して決定された優先度に割り当てられた色で表示する。
【0056】
ここで、優先度の決定について具体的に説明する。図7(A)および図7(B)は、経路探索における現在位置および目的地の一例を示す図である。図7(A)は、現在位置を示す図であり。図7(B)は、目的地を示す図である。図7(A)および図7(B)を参照して、現在位置および目的地は、同じ建物内の異なる階に位置する。図7(A)は1階の地図を示し、現在位置を含む。図7(B)は5階の地図を示し、目的地を含む。さらに、図7(A)および図7(B)に示されるように、現在位置から目的地までの間の特定経路として、エレベータ201、エスカレータ203および階段205を含む。ここでは、現在位置から目的地までエレベータ201、エスカレータ203および階段205をそれぞれ含む3つの経路が探索される。
【0057】
図8は、非混雑時の経路の一例を示す第1の図である。経路は、ノードと、2つのノードを結ぶリンクとで示される。現在位置のノードをSとし、目的地のノードをGとしている。また、エレベータ201の1階出入り口のノードをA、5階出入り口のノードをBで示し、エスカレータ203の1階乗り場のノードをC、5階降り場のノードをDで示し、階段205の1階踊り場のノードをE,5階踊り場のノードをFとしている。3つの経路は、ノードS、A、B、Gを通る第1経路と、ノードS、C、D、Gを通る第2経路と、ノードS、E、F、Gを通る第3経路と、を含む。ノードAとノードBを結ぶリンクは、特定経路であるエレベータ201を示し、ノードCとノードDを結ぶリンクは、特定経路であるエスカレータ203を示し、ノードEとノードFを結ぶリンクは、特定経路である階段205を示す。
【0058】
図中X1は、平面を移動する際の平面移動時間に比例する値を示す。平面移動時間は、距離と予め定められた非混雑時の平均歩行速度とから算出される。なお、X1は、道幅など他の要因により平面移動時間を変動する値にしてもよい。X2は、高さ方向に移動する際の垂直移動時間に比例する値を示す。垂直移動時間は、距離(階数)と予め定められた非混雑時における特定経路についての平均速度とから算出される。非混雑時における特定経路についての平均速度は、サーバ100において、携帯情報端末1,1A〜1Dそれぞれから受信される現在位置に基づいて算出したものを受信するようにしてもよい。Z1は、負担度の第1要素を示す。Wは待機時間のコストと示す。図8に示すコストX1、X2、Z1、Wは、非混雑時のコストを示す。
【0059】
図9は、非混雑時のコストテーブルの一例を示す第1の図である。図9を参照して、非混雑時のコストテーブルは、第1経路〜第3経路別に、図8に示したコストZ1を除いた残りのコストX1、X2、Wの合計(以下「距離優先コスト」という)と、すべてのコストX1、X2、Z1、Wの合計(以下「第1負担度優先コスト」という)とを示す。例えば、第1経路について説明すると、ノードSとノードAとを結ぶリンクのコストは、コストX1が「1」である。ノードAにおいて待ち時間のコストWが「3」である。ノードAとノードBとを結ぶリンク、換言すればエレベータ201のコストは、コストX2が「3」であり、負担度の第1要素のコストZ1が「0」である。さらに、ノードBとノードGとを結ぶリンクのコストX1は「1」である。その結果、第1経路において距離優先コストおよび負担度優先コストはともに「8」となる。第2経路においては、距離優先コストは「14」、負担度優先コストは「16」である。第3経路においては、距離優先コストは「11」、負担度優先コストは「27」である。
【0060】
優先度は、距離優先モードに設定されている場合、3つの経路のうちから距離優先コストが小さいものから順に高い値に決定され、第1負担度優先モードまたは第2負担度優先モードに設定されている場合、3つの経路のうちから第1負担度優先コストが小さいものから順に高い値に決定される。図9に示すコストテーブルにおいては、距離優先モードに設定されているときは、距離優先コストの小さいものから順に、すなわち、第1経路、第3経路、第2経路の順に優先度が設定され、第1経路が最も優先度が高い。第1負担度優先モードまたは第2負担度優先モードに設定されているときは、第1負担度優先コストの小さいものから順に、すなわち、第1経路、第2経路、第3経路の順に優先度が設定され、第1経路が最も優先度が高い。
【0061】
図10は、混雑時の経路の一例を示す第1の図である。図8に示した経路と同じ経路を示し、コストY1、Y2、Z2、Vが追加された点で図8に示したコストが異なる。コストY1は、平面を移動する際の混雑時における平面移動時間に比例する値からコストX1を減算した値である。換言すれば、混雑することによって増加するコストである。Y2は、高さ方向に移動する際の混雑時における垂直移動時間に比例する値からコストX2を減算した値である。換言すれば、混雑することによって増加するコストである。混雑時における特定経路についての平均速度は、サーバ100において、携帯情報端末1,1A〜1Dそれぞれから受信される現在位置に基づいて算出したものを受信するようにしてもよい。コストZ2は、負担度の第2要素を示す。Vは混雑時における待機時間のコストからコストWを減算した値である。換言すれば、混雑することによって増加するコストである。図10に示すコストY1、Y2、Z2、Vは、混雑時のコストを示す。
【0062】
図11は、混雑時のコストテーブルの一例を示す第1の図である。図11を参照して、混雑時のコストテーブルは、第1経路〜第3経路別に、図10に示したコストZ1およびZ2を除いた残りのコストX1、X2、W、Y1,Y2、Vの合計(以下「距離優先コスト」という)と、コストZ2を除いた残りのコストX1、X2、W、Y1,Y2、V、Z1の合計(以下「第1負担度優先コスト」という)と、すべてのコストX1、X2、W、Y1,Y2、V、Z1、Z2の合計(以下「第3負担度優先コスト」という)と、を示す。第1経路においては、混雑時における距離優先コストは「17」、第1負担度優先コストは「17」、第2負担度優先コストは「25」である。第2経路においては、混雑時における距離優先コストは「14」、第1負担度優先コストは「16」、第2負担度優先コストは「18」である。第3経路においては、混雑時における距離優先コストは「11」、第1負担度優先コストは「27」、第2負担度優先コストは「27」である。図11に示すコストテーブルにおいては、距離優先モードに設定されているときは、距離優先コストの小さいものから順に、すなわち、第3経路、第2経路、第1経路の順に優先度が設定され、第3経路が最も優先度が高い。第1負担度優先モードに設定されているときは、第1負担度優先コストの小さいものから順に、すなわち、第2経路、第1経路、第3経路の順に優先度が設定され、第2経路が最も優先度が高い。第2負担度優先モードに設定されているときは、第2負担度優先コストの小さいものから順に、すなわち、第2経路、第1経路、第3経路の順に優先度が設定され、第2経路が最も優先度が高い。
【0063】
次に、目的地が2階の場合について説明する。図12は、非混雑時の経路の一例を示す第2の図である。図8と異なる点は、目的地のノードGが2階となった点、およびコストX2、Z1が変更された点である。図13は、非混雑時のコストテーブルの一例を示す第2の図である。図13を参照して、非混雑時のコストテーブルは、第1経路において距離優先コストおよび第1負担度優先コストはともに「6」となる。第2経路においては距離優先コストおよび第1負担度優先コストともに「7」である。第3経路においては、距離優先コストは「6」、第1負担度優先コストは「8」である。
【0064】
図13に示すコストテーブルにおいては、距離優先モードに設定されているときは、距離優先コストの小さいものから順に、すなわち、第1経路と第3経路とに同じ優先度が設定され、第2経路には第1経路および第3経路より低い優先度が設定される。第1負担度優先モードまたは第2負担度優先モードに設定されているときは、第1負担度優先コストの小さいものから順に、すなわち、第1経路、第2経路、第3経路の順に優先度が設定され、第1経路が最も優先度が高い。
【0065】
図14は、混雑時の経路の一例を示す第2の図である。図10に示した経路と異なる点は、目的地のノードGが2階となった点、およびコストX2、Z1、Y2、Z2が変更された点である。
【0066】
図15は、混雑時のコストテーブルの一例を示す第2の図である。図15を参照して、第1経路においては、混雑時における距離優先コストは「14」、第1負担度優先コストは「14」、第2負担度優先コストは「18」である。第2経路においては、混雑時における距離優先コストは「7」、第1負担度優先コストは「7」、第2負担度優先コストは「9」である。第3経路においては、混雑時における距離優先コストは「6」、第1負担度優先コストは「8」、第2負担度優先コストは「8」である。図15に示すコストテーブルにおいては、距離優先モードに設定されているときは、距離優先コストの小さいものから順に、すなわち、第3経路、第2経路、第1経路の順に優先度が設定され、第3経路が最も優先度が高い。第1負担度優先モードに設定されているときは、第1負担度優先コストの小さいものから順に、すなわち、第2経路、第3経路、第1経路の順に優先度が設定され、第2経路が最も優先度が高い。第2負担度優先モードに設定されているときは、第2負担度優先コストの小さいものから順に、すなわち、第3経路、第2経路、第1経路の順に優先度が設定され、第3経路が最も優先度が高い。
【0067】
図16は、混雑度管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。混雑度管理処理は、サーバ100が備えるCPU101が、混雑度管理プログラムを実行することによりCPU101により実行される処理である。混雑度管理プログラムは、経路探索プログラムの一部である。図16を参照して、CPU101は、通信部109が携帯情報端末1,1A〜1Dのいずれかから現在位置を受信したか否かを判断する(ステップS51)。現在位置を受信したならば処理をステップS52に進めるが、そうでなければ処理をステップS55に進める。
【0068】
ステップS52においては、携帯情報端末1,1A〜1Dのうち現在位置を送信してきたものを識別するための識別情報を取得する。そして、受信された現在位置と、現在位置を取得した時刻と、識別情報と、を、RAM105に記憶する(ステップS53)。ステップS54においては、RAM105に記憶された現在位置に基づいて、領域ごとの混雑度を算出する。なお。ここでは、現在位置を受信するごとに混雑度を算出するようにしたが、所定時間間隔で混雑度を算出するようにしてもよい。混雑度は、単位面積当たりの人数で表される。具体的には、RAM105に記憶された現在位置のうち携帯情報端末1,1A〜1Dそれぞれから最後に受信された現在位置に基づいて、予め定められた複数の領域ごとに、その領域における単位面積当たりの台数を算出する。予め定められた複数の領域は、特定経路を含む。
【0069】
ステップS55においては、通信部109が携帯情報端末1,1A〜1Dのいずれかから混雑度の送信要求を受信したか否かを判断する。混雑度の送信要求を受信したならば処理をステップS56に進めるが、そうでなければステップS56をスキップして処理をステップS57に進める。ステップS56においては、携帯情報端末1,1A〜1Dのうち送信要求を送信してきたものに、ステップS54において算出された混雑度を送信する。
【0070】
ステップS57においては、変数iに「1」を設定する。変数iは、正の整数であり、携帯情報端末1、1A〜1Dのうちから処理対象となる端末を特定するための値である。ステップS58においては、変数iを用いて、携帯情報端末1、1A〜1Dのうちから処理対象となる端末を処理対象端末(i)に設定する。次に、RAM105に記憶された現在位置のうち処理対象端末(i)の現在位置に基づいて、処理対象端末(i)のユーザがエレベータを使用したか否かを判断する(ステップS59)。エレベータを使用したと判断するならば処理をステップS60に進め、そうでなければ処理をステップS61に進める。ステップS60においては、RAM105に記憶された現在位置のうち処理対象端末(i)の時刻の異なる複数の現在位置に基づいて、エレベータの移動階ごとの待機時間および乗車時間を算出し、それぞれ配列Tlw(i)およびTlr(i)に設定する。
【0071】
次のステップS61においては、RAM105に記憶された現在位置のうち処理対象端末(i)の現在位置に基づいて、処理対象端末(i)のユーザがエスカレータを使用したか否かを判断する。エスカレータを使用したと判断するならば処理をステップS62に進め、そうでなければ処理をステップS63に進める。ステップS62においては、RAM105に記憶された現在位置のうち処理対象端末(i)の現在位置に基づいて、エスカレータの移動階ごとの待機時間および乗車時間を算出し、それぞれ配列Tsw(i)およびTsr(i)に設定する。
【0072】
ステップS63においては、現在位置を送信してきた端末、ここでは、携帯情報端末1、1A〜1Dのうちに未だ処理対象とされていない端末が存在するか否かを判断する。そのような端末が存在するならば処理をステップS64に進め、そうでなければ処理をステップS65に進める。ステップS64においては、変数iをそれに「1」を加算した値に設定し、処理をステップS58に戻す。
【0073】
ステップS65においては、ステップS60において算出された待機時間Tlw(i)および移動時間Tlr(i)を用いて、移動階ごとにエレベータの平均待機時間Tlwsおよび平均乗車時間Tlesを算出し、処理をステップS66に進める。
【0074】
ステップS66においては、ステップS62において算出された待機時間Tsw(i)および移動時間Tsr(i)を用いて、移動階ごとにエスカレータの平均待機時間Tswsおよび平均乗車時間Tsesを算出し、処理をステップS67に進める。
【0075】
ステップS67においては、通信部109が携帯情報端末1,1A〜1Dのいずれかから所要時間の送信要求を受信したか否かを判断する。所要時間の送信要求を受信したならば処理をステップS68に進めるが、そうでなければステップS68をスキップして処理をステップS51に戻す。ステップS68においては、携帯情報端末1,1A〜1Dのうち送信要求を送信してきたものに所要時間を送信する。所要時間は、ステップS65において算出されたエレベータの平均待機時間Tlwsおよび平均乗車時間Tlesと、ステップS66において算出されたエスカレータの平均待機時間Tswsおよび平均乗車時間Tsesを含む。
【0076】
図17は、現在位置送信処理の流れの一例を示すフローチャートである。現在位置送信処理は、携帯情報端末1、1A〜1Dそれぞれが備えるCPU11が経路探索プログラムを実行することにより、CPU11により実行される処理である。図17を参照して、CPU11は、現在位置を取得する(ステップS01)。GPS受信機13によって受信されたGPS信号に基づいて現在位置を算出する。また、無線通信部23によってアクセスポイントから受信される位置情報に基づいて現在位置を算出する。そして、ステップS01において取得された現在位置をサーバ100に無線通信部23を介して送信する(ステップS02)。ステップS03においては、現在位置を送信してから所定時間経したか否かを判断する。所定時間経過するまで待機状態となり、所定時間経過すると処理をステップS01に戻す。このため、所定時間間隔で現在位置がサーバ100に送信される。
【0077】
図18は、経路探索処理の流れの一例を示すフローチャートである。経路探索処理は、携帯情報端末1、1A〜1Dそれぞれが備えるCPU11が経路探索プログラムを実行することにより、CPU11により実行される処理である。図18を参照して、CPU11は、目的地を受け付けたか否かを判断する(ステップS11)。目的地を受け付けるまで待機状態となり(ステップS11でNO)、目的地を受け付けたならば処理をステップS12に進める。LCD25にEEPROM33に予め記憶された地図を表示し、表示された地図中の少なくとも1つの地点を指定する操作を、ユーザが操作キーまたはタッチスクリーン27入力すれば、その指定された地点を目的地として受け付ける。
【0078】
ステップS12においては、現在位置を取得する。GPS受信機13によって受信されたGPS信号に基づいて現在位置を算出する。また、無線通信部23によってアクセスポイントから受信される位置情報に基づいて現在位置を算出する。
【0079】
そして、ステップS12において取得された現在位置をサーバ100に無線通信部23を介して送信する(ステップS13)。次のステップS14においては、ステップS12において取得された現在位置を出発地とし、出発地からステップS11において受け付けられた目的地までの経路を探索する。複数の特定経路が出発地から目的地までの間に存在する場合には、複数の特定経路それぞれを含む複数の経路を探索する。なお、現在位置を出発地としたが、目的地と同様にユーザにより指定された地点を出発地としてもよい。
【0080】
ステップS15においては、ステップS14において探索された経路が高さ方向に移動する特定経路を含んでいるか否かを判断する。高さ方向に移動する特定経路を含んでいるならば処理をステップS16に進め、そうでなければステップS16をスキップして処理をステップS17に進める。ステップS16においては、サーバ100から混雑度を取得する。具体的には、無線通信部23を介してサーバ100に混雑度の送信要求を送信する。サーバ100は、携帯情報端末1から混雑度の送信要求を受信すると、現在位置周辺の混雑度を返信するので、サーバ100から送信される混雑度を無線通信部23を介して受信する。
【0081】
ステップS17においては、ステップS14において探索された経路が複数か否かを判断する。経路が複数ならば処理をステップS18に進め、そうでなければ処理をステップS29に進める。ステップS29においては、ステップS14において探索された経路を、LCD25に表示し、処理を終了する。
【0082】
ステップS18においては、サーバ100から所要時間を取得する。具体的には、無線通信部23を介してサーバ100に所用時間の送信要求を送信する。サーバ100は、携帯情報端末1から所用時間の送信要求を受信すると、現在位置周辺のすべての特定経路の所要時間を返信するので、サーバ100から送信される所要時間を無線通信部23を介して受信する。所要時間は、待ち時間と移動時間とを含む。
【0083】
次のステップS19においては、設定されているモードによって処理を分岐させる。距離優先モードに設定されている場合には、処理をステップS27に進め、第1負担度優先モードまたは第2負担度優先モードに設定されている場合には処理をステップS20に進める。
【0084】
ステップS20においては、ステップS14において探索された経路にエレベータが含まれているか否かを判断する。エレベータが含まれているならば処理をステップS21に進め、そうでなければステップS21をスキップして処理をステップS22に進める。ステップS21においては、エレベータの負担度を算出する。具体的には、ステップS16において取得された混雑度のうちエレベータの混雑度に対応する負担度の第1要素のコストZ1と、負担度の第2要素のコストZ2とを算出する。
【0085】
ステップS22においては、ステップS14において探索された経路にエスカレータが含まれているか否かを判断する。エスカレータが含まれているならば処理をステップS23に進め、そうでなければステップS23をスキップして処理をステップS24に進める。ステップS23においては、エスカレータの負担度を算出する。具体的には、ステップS16において取得された混雑度のうちエスカレータの混雑度に対応する負担度の第1要素のコストZ1と、負担度の第2要素のコストZ2とを算出する。
【0086】
ステップS24においては、ステップS14において探索された経路に階段が含まれているか否かを判断する。階段が含まれているならば処理をステップS25に進め、そうでなければステップS25をスキップして処理をステップS26に進める。ステップS25においては、階段の負担度を算出する。具体的には、ステップS16において取得された混雑度のうち階段の混雑度に対応する負担度の第1要素のコストZ1と、負担度の第2要素のコストZ2とを算出する。
【0087】
ステップS26においては、ステップS18において取得された所要時間と、ステップS21、ステップS23およびステップS25において算出された負担度とに基づいて優先度を決定し、処理をステップS28に進める。一方、ステップS27においては、ステップS18において取得された所要時間に基づいて優先度を決定し、処理をステップS28に進める。
【0088】
ステップS28においては、ステップS14において探索された経路を、ステップS26またはステップS27において決定された優先度とともにLCD25に表示する。ここでは、優先度の違いにより経路を色で区別して表示する。例えば、最も優先度の高い経路を赤色、2番目に優先度の高い経路を青色、3番目に優先度の高い経路を黄色で表示する。
【0089】
図19は、経路表示画面の一例を示す図である。図19に示す経路表示画面は、現在位置を含む階の地図を表示する画面301と、目的地を含む階の地図を表示する画面303との2画面で構成される。ここでは、エレベータ201を含む第1経路211の優先順位が最も高く、赤色で表示され、次にエスカレータ203を含む第2経路213の優先順位が高く、青色で表示され、階段205を含む第3経路215の優先順位が最も低く、黄色で表示される。
【0090】
本実施の形態における携帯情報端末1は、特定経路ごとにサーバから取得された混雑度に対応する負担度を算出し、複数の経路が探索される場合、負担度に基づいて、複数の経路それぞれに対する優先度を決定し、決定された優先度に基づいて複数の経路を表示する。経路に含まれる特定経路の負担度が混雑度から算出されるので、混雑の度合いに基づいて複数の経路を評価することができる。特に、エレベータの負担度は、混雑度に対する負担度の増加割合が、エスカレータおよび階段に比較して大きいので、混んでいるときは、エスカレータの優先度が高くなる。
【0091】
また、負担度は、混雑度の変化によって変化しない第1要素と、混雑度の変化によって変化する第2要素とを含むので、高さ方向の移動量が少ない場合には第2要素を優先させ、高さ方向の移動量が多い場合には第1要素を優先して評価することができる。
【0092】
また、上述した実施の形態においては、経路探索システムについて説明したが、図16〜図18に示した処理をサーバ100および携帯情報端末1に実行させる経路探索方法または経路探索方法をコンピュータに実行させるための経路探索プログラムとして発明を捉えることができるのは言うまでもない。
【0093】
<変形例>
上述した実施の形態においては、経路探索装置として機能する携帯情報端末1,1A〜1Dそれぞれで経路を探索するようにしたが、変形例における経路探索システムにおいては、サーバ100において経路を探索する。この場合、携帯情報端末1,1A〜1Dそれぞれは、サーバ100に現在位置を送信し、サーバ100において探索された経路を含む地図を、サーバ100からダウンロードして表示する。サーバ100においては、図4に示した機能に加えて、図5に示した携帯情報端末1が備えるCPU11が有する機能のうち、経路探索部57、負担度算出部65、所要時間取得部63、優先度決定部67の機能を有することになる。サーバ100は、携帯情報端末1A〜1Dそれぞれから受信される現在位置に基づいて、混雑度を算出する。そして、例えば携帯情報端末1が出発地と目的地とを含む経路探索指示を受信すると、経路を探索し、負担度を算出し、複数の経路が探索される場合、負担度に基づいて、探索された複数の経路それぞれに対する優先度を決定し、優先度に基づいて複数の経路を表示する地図を、携帯情報端末1に送信する。
【0094】
変形例における経路探索システムは、上述した経路探索システムと同様の効果を奏することができる。
【0095】
なお、経路探索部57、負担度算出部65、所要時間取得部63、優先度決定部67それぞれは、携帯情報端末1,1A〜1D、およびサーバ100のいずれに備えるようにしてもよい。さらに、携帯情報端末1,1A〜1D、およびサーバ100いずれか一方が、それらの機能のすべてを備えてもよい。したがって、図18に示した処理のステップS14〜ステップS27の処理は、携帯情報端末1,1A〜1Dが備えるCPU11(コンピュータ)、およびサーバ100が備えるCPU101(コンピュータ)のいずれか一方で、実行することができる。
【0096】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0097】
<付記>
(1) 前記負担度は、混雑度に対して負担度が増加しない第1要素と、混雑度の増加に対して負担度が増加する第2要素とを含む、請求項1または2に記載の経路探索装置。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施の形態の1つにおける経路探索システムの全体概要を示す図である。
【図2】サーバのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図3】携帯情報端末のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図4】サーバが備えるCPUが有する機能の一例を示す機能ブロック図である。
【図5】携帯情報端末が備えるCPUが有する機能の一例を示す機能ブロック図である。
【図6】負担度と混雑度との関係の一例を示す図である。
【図7】経路探索における現在位置および目的地の一例を示す図である。
【図8】非混雑時の経路の一例を示す第1の図である。
【図9】非混雑時のコストテーブルの一例を示す第1の図である。
【図10】混雑時の経路の一例を示す第1の図である。
【図11】混雑時のコストテーブルの一例を示す第1の図である。
【図12】非混雑時の経路の一例を示す第2の図である。
【図13】非混雑時のコストテーブルの一例を示す第2の図である。
【図14】混雑時の経路の一例を示す第2の図である。
【図15】混雑時のコストテーブルの一例を示す第2の図である。
【図16】混雑度管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図17】現在位置送信処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図18】経路探索処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図19】経路表示画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0099】
1,1A〜1D 携帯情報端末、3 インターネット、5 LAN、11 CPU、13 GPS受信機、15 地磁気センサ、17 加速度センサ、19 メモリI/F、19A メモリカード、21 シリアル通信I/F、23 無線通信部、25 LCD、27 タッチスクリーン、29 ROM、31 ROM、33 EEPROM、35 操作キー、51 現在位置取得部、53 現在位置送信部、55 目的地受付部、57 経路探索部、59 経路表示部、61 混雑度取得部、63 所要時間取得部、65 負担度算出部、67 優先度決定部、69 モード設定部、100 サーバ、101 CPU、103 HDD、105 RAM、107 ROM、109 通信部、111 外部記憶装置、113 操作部、115 入力部、117 表示部、121 現在位置収集部、123 混雑度算出部、125 混雑度送信部、127 所要時間算出部、129 所要時間送信部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在位置を取得する現在位置取得手段と、
前記取得された現在位置をサーバに送信する送信手段と、
出発地から目的地までの経路を探索する探索手段と、
複数種類に分類され、種類が異なれば混雑度に対する負担度の増加割合が異なる複数の特定経路を記憶する記憶手段と、
前記混雑度を前記サーバから取得する混雑度取得手段と、
前記複数の特定経路のうち前記探索された経路に含まれる特定経路について、前記取得された混雑度に対応する負担度を算出する負担度算出手段と、
前記探索手段により複数の経路が探索される場合、前記算出された負担度に基づいて、前記複数の経路それぞれに対する優先度を決定する優先度決定手段と、
前記決定された優先度に基づいて、前記探索された複数の経路を表示する表示手段と、を備えた経路探索装置。
【請求項2】
前記複数の特定経路それぞれは、高さ方向に移動するための経路を含む、請求項1に記載の経路探索装置。
【請求項3】
前記複数の特定経路は、エレベータ、エスカレータおよび階段を含む、請求項2に記載の経路探索装置。
【請求項4】
前記複数の特定経路のうち少なくとも前記探索された経路に含まれる特定経路の移動時間および待ち時間を前記サーバから取得する所要時間取得手段を、さらに備え、
前記優先度付与手段は、前記負担度に加えて、前記サーバから取得された前記移動時間および前記待ち時間に基づいて、前記優先度を決定する、請求項1〜3のいずれかに記載の経路探索装置。
【請求項5】
経路探索装置とサーバとを含む経路探索システムであって、
前記経路探索装置は、現在位置を取得する現在位置取得手段を備え、
前記取得された現在位置に基づいて混雑度を算出する混雑度算出手段と、
出発地から目的地までの経路を探索する探索手段と、
複数種類に分類され、種類が異なれば混雑度に対する負担度の増加割合が異なる複数の特定経路を記憶する記憶手段と、
前記複数の特定経路のうち前記探索された経路に含まれる特定経路について、前記算出された混雑度に対応する負担度を算出する負担度算出手段と、
前記探索手段により複数の経路が探索される場合、前記算出された負担度に基づいて、前記複数の経路それぞれに対する優先度を決定する優先度決定手段と、
前記決定された優先度に基づいて、前記探索された複数の経路を表示する表示手段と、がそれぞれ前記サーバと前記経路探索装置とのいずれかに備えられる経路探索システム。
【請求項6】
出発地から目的地までの経路を探索するステップと、
混雑度を取得するステップと、
複数種類に分類され、種類が異なれば混雑度に対する負担度の増加割合が異なる複数の特定経路のうち前記探索された経路に含まれる特定経路について、前記取得された混雑度に対応する負担度を算出するステップと、
前記探索するステップにおいて複数の経路が探索される場合、前記算出された負担度に基づいて、前記複数の経路それぞれに対する優先度を決定するステップと、をコンピュータに実行させる経路探索プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−7696(P2011−7696A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152787(P2009−152787)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】