説明

経路探索装置、経路探索方法、経路探索プログラムおよび記録媒体

【課題】運転席に直射日光が差し込むことによる危険を回避すること。
【解決手段】経路探索装置100は、車両の走行経路を探索する。推定部101は、所定の地点において、車両が通過する際の進行方向に対して正面から車両の運転席に対して直射日光が照射するか否かを推定する。探索部102は、推定部101による推定結果に基づいて、走行経路を探索する。より詳細には、探索部102は、運転席に対して直射日光が照射する地点が、走行経路上の全区間に対して所定割合以下となるよう走行経路を探索する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の走行経路を探索する経路探索装置、経路探索方法、経路探索プログラムおよび記録媒体に関する。ただし、この発明の利用は、上述した経路探索装置、経路探索方法、経路探索プログラムおよび記録媒体に限られない。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者が安全に運転をおこなえるよう支援する各種の技術が開発されている。このような技術の1つとして、運転席に直射日光が差し込むことを運転者に通知する技術が知られている(たとえば、下記特許文献1参照)。下記特許文献1は、日付および時間ごとにあらかじめ記憶された太陽位置情報と自車の進行方向とから直射日光が運転席に差し込むことを判定する直射日光判定手段と、その旨を通知する手段とを有するナビゲーション装置である。これにより、運転者は、直射日光への対応(たとえば、サングラスの着用など)を事前におこなうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−121159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、直射日光の差し込みを運転者に通知するにとどまり、直射日光の差し込みによる運転者への影響を直接的には回避できないという問題点が一例として挙げられる。たとえば、直射日光の差し込みに対する準備を事前におこなっていない(たとえば、サングラスを用意していないなど)場合、運転者は、直射日光に関する通知を受けても何ら対策を講じることができない。
【0005】
また、日没の時間帯のように低い位置からの日差しは、視界への影響が特に強く、この時間帯に太陽に正対していると、信号機の色や道路標識が見にくくなる。この場合、サングラスやサンバイザーなど直射日光の差し込みに対する準備を事前におこなっている場合でも、運転者にとって危険な状態が生じ得るという問題点が一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかる経路探索装置は、車両の走行経路を探索する経路探索装置であって、所定の地点において、前記車両が通過する際の進行方向に対して正面から前記車両の運転席に対して直射日光が照射するか否かを推定する推定手段と、前記推定手段による推定結果に基づいて、前記走行経路を探索する探索手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項10の発明にかかる経路探索方法は、車両の走行経路を探索する経路探索装置における経路探索方法であって、所定の地点において、前記車両の運転席に対して直射日光が照射するか否かを推定する推定工程と、前記推定工程における推定結果に基づいて、前記走行経路を探索する探索工程と、を含んだことを特徴とする。
【0008】
また、請求項11の発明にかかる経路探索プログラムは、請求項10に記載の経路探索方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0009】
また、請求項12の発明にかかる記録媒体は、請求項11に記載の経路探索プログラムをコンピュータに読み取り可能な状態で記録したことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態にかかる経路探索装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図2】経路探索装置による経路探索処理を示すフローチャートである。
【図3】ナビゲーション装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図4】ナビゲーション装置による経路探索処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】直射日光の差し込み有無の判断方法を説明する説明図である。
【図6】直射日光の差し込み有無の判断方法を説明する説明図である。
【図7】走行開始後における経路の再探索処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る経路探索装置、経路探索方法、経路探索プログラムおよび記録媒体の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態)
図1は、実施の形態にかかる経路探索装置の機能的構成を示すブロック図である。実施の形態にかかる経路探索装置100は、推定部101および探索部102によって構成され、車両の走行経路を探索する。
【0013】
推定部101は、所定の地点において、車両が通過する際の進行方向に対して正面から車両の運転席に対して直射日光が照射するか否かを推定する。所定の地点とは、たとえば、目的地点に至るまでに通過する可能性がある地点である。また、進行方向に対して正面とは、運転席から太陽を見た際の方向と車両の進行方向とがなす角度が0度の場合の他、運転席から太陽を見た際の方向と車両の進行方向とがなす角度が所定角度以下の場合を含む。この場合の所定角度とは、たとえば運転席に搭乗する運転者の視野範囲内に対して直射日光が照射する範囲である。
【0014】
推定部101は、たとえば、車両が所定の地点を通過する予想時刻における太陽の位置情報と、車両が所定の地点を通過する際の進行方向情報と、に基づいて、運転席に直射日光が照射するか否かを推定する。具体的には、たとえば、太陽の位置情報と車両の進行方向情報とに基づいて運転席から太陽を見た際の方向を算出し、当該方向と車両の進行方向とがなす角度が所定角度以下であるか否かを推定する。
【0015】
また、推定部101は、さらに車両と太陽との間に位置する地物の情報に基づいて、運転席に直射日光が照射するか否かを推定する。具体的には、推定部101は、たとえば、車両と太陽との間に、運転席に対する太陽光の照射を遮るだけの高さがある地物があるか否かを判断し、地物がある場合は運転席に直射日光が照射しないと推定する。
【0016】
推定部101は、さらに車両が所定の地点を通過する予想時刻における所定の地点の気象情報に基づいて、運転席に直射日光が照射するか否かを推定する。具体的には、推定部101は、たとえば、予測時刻における所定地点の天気が曇りや雨の場合は、運転席に直射日光が照射しないと判断する。
【0017】
探索部102は、推定部101による推定結果に基づいて、車両の走行経路を探索する。探索部102は、たとえば、運転席に対して直射日光が照射する地点が、走行経路上の全区間に対して所定割合以下となるよう走行経路を探索する。探索部102は、たとえば複数の経路をあらかじめ探索しておき、推定部101による推定結果に基づいて各経路を評価して、運転席に対して直射日光が照射する地点が、走行経路上の全区間に対して所定割合以下となるよう走行経路を選択するようにしてもよい。
【0018】
また、探索部102は、たとえば、運転席に対して直射日光が照射する地点が、所定の状況に合致する道路となるように走行経路を探索するようにしてもよい。所定の状況に合致する道路とは、たとえば、高速道路など信号がない有料道路や片側一車線の道路など、通常の道路と比較して、走行する際に運転者が考慮しなければならない要素が少ない道路(運転しやすい道路)である。このような道路は、運転者に対する直射日光の影響が少ないと考えられるためである。
【0019】
探索部102は、走行経路の探索後において、車両が所定の地点を通過する予想時刻が変化した場合、変化後の予想時刻に基づいて走行経路を再探索する。また、探索部102は、走行経路の探索後において、車両が所定の地点を通過する予想時刻における所定の地点の気象情報が変化した場合、変化後の気象情報に基づいて走行経路を再探索する。このように経路を再探索するのは、所定の地点を通過する時刻や気象情報が変化した場合、所定の地点において運転席に対して直射日光が照射するか否かが変化する可能性があるためである。
【0020】
図2は、経路探索装置による経路探索処理を示すフローチャートである。図2のフローチャートにおいて、経路探索装置100は、まず、推定部101によって、太陽の位置情報や車両の進行方向情報などの各種情報を取得する(ステップS201)。つぎに、経路探索装置100は、推定部101によって、ステップS201で取得した情報に基づいて、所定の地点において、車両の運転席に対して直射日光が照射するかを推定する(ステップS202)。
【0021】
そして、経路探索装置100は、探索部102によって、ステップS202の推定結果に基づいて車両の走行経路を探索して(ステップS203)、本フローチャートによる処理を終了する。なお、この後、所定の地点を通過する予測時刻や所定の地点の気象情報が変化した場合、探索部102は、変化後の情報に基づいて経路を再探索する。
【0022】
以上説明したように、経路探索装置100は、所定の地点において運転席に対して直射日光が差し込むか否かを推定し、推定結果に基づいて経路を探索する。具体的には、たとえば、運転席に対して直射日光が照射する地点が、走行経路上の全区間に対して所定割合以下となるよう走行経路を探索する。これにより、運転席に直射日光が差し込む区間が少ない経路を探索することができ、運転者に対する直射日光の影響を低減し、ユーザがより安全に走行できる経路を探索することができる。
【0023】
また、経路探索装置100は、車両が所定の地点を通過する予想時刻における太陽の位置情報と、車両が所定の地点を通過する際の進行方向情報と、に加えて、車両と太陽との間に位置する地物の情報に基づいて、運転席に直射日光が照射するか否かを判断する。これにより、地物によって直射日光の照射が遮られる地点を経路に含めることができ、経路選択の自由度を高めることができる。
【0024】
また、経路探索装置100は、車両が所定の地点を通過する予想時刻における所定の地点の気象情報に基づいて、運転席に直射日光が照射するか否かを推定するので、雨天や曇りなど日光の照射がない場合には、直射日光の照射の有無にかかわらず経路探索をおこなうことができる。
【0025】
また、経路探索装置100は、運転席に対して直射日光が照射する地点が、所定の状況に合致する道路(運転しやすい道路)となるように走行経路を探索するので、直射日光が照射する地点を通過しなければ目的地点に到達できない場合でも、運転者に対する直射日光の影響を低減することができる。
【0026】
また、経路探索装置100は、走行経路の探索後において、車両が所定の地点を通過する予想時刻が変化した場合や、車両が所定の地点を通過する予想時刻における所定の地点の気象情報が変化した場合には、変化後の予想時刻や気象情報に基づいて走行経路を再探索する。これにより、交通状況や気象状況など、随時変化する要因に対しても対応して経路を探索することができ、ユーザがより安全に走行できる経路を探索することができる。
【実施例】
【0027】
以下に、本発明の実施例について説明する。本実施例では、実施の形態にかかる経路探索装置100を、車両に搭載されたナビゲーション装置300として本発明を適用した場合の一例について説明する。
【0028】
(ナビゲーション装置300のハードウェア構成)
図3は、ナビゲーション装置のハードウェア構成を示すブロック図である。実施例にかかるナビゲーション装置300は、CPU301、ROM302、RAM303、各種データを記録/再生する記録再生部304、各種データを記録する記録部305、音声I/F(インターフェース)306、マイク307、スピーカ308、入力デバイス309、映像I/F310、ディスプレイ311、カメラ312、通信I/F313、GPSユニット314を備えている。各構成部301〜314は、バス320によってそれぞれ接続されている。
【0029】
CPU301は、ナビゲーション装置300の全体の制御を司る。ROM302は、ブートプログラム、経路探索プログラム、経路誘導プログラムなどの各種プログラムソフトを記録している。RAM303は、CPU301のワークエリアとして使用される。すなわち、CPU301は、RAM303をワークエリアとして使用しながら、ROM302に記録された各種プログラムを実行することによって、ナビゲーション装置300の全体の制御を司る。
【0030】
記録再生部304は、CPU301の制御に従って記録部305に対するデータの読み取り/書き込みを制御する。記録部305は、記録再生部304の制御で書き込まれたデータを記録する。記録再生部304としては、たとえば、磁気ディスクドライブや光ディスクドライブ、記録部305としては、たとえば、HD(ハードディスク)、FD(フレキシブルディスク)、フラッシュメモリ、MO、SSD(Solid State Disk)、メモリカードなどを用いることができる。
【0031】
記録部305に記録される情報の一例としては、たとえば地図データ(地図データベース)が挙げられる。地図データは、経路誘導プログラムによる経路誘導処理や施設検索プログラムによる施設検索処理などに用いられる。地図データは、建物、河川、地表面などの地物(フィーチャ)をあらわす背景データと、道路の形状をあらわす道路形状データとを含んでおり、地区ごとに分けられた複数のデータファイルによって構成されている。
【0032】
道路形状データは、さらに交通条件データを有する。交通条件データには、たとえば、各ノードについて、信号や横断歩道などの有無、高速道路の出入り口やジャンクションの有無、各リンクについての長さ(距離)、道幅、進行方向、道路種別(高速道路、有料道路、一般道路など)などの情報が含まれている。
【0033】
機能データは、地図上の施設の形状をあらわす3次元データ、当該施設の説明をあらわす文字データ、その他地図データ以外の各種のデータである。地図データや機能データは、地区ごとあるいは機能ごとにブロック分けされた状態で記録されている。具体的には、たとえば、地図データは、各々が、表示画面に表示された地図において所定の地区をあらわすように、地区ごとにブロック分けすることができる状態で記録されている。
【0034】
音声I/F306は、音声入力用のマイク307および音声出力用のスピーカ308に接続される。音声I/F306は、再生が指示された音声データをD/A変換して、スピーカ308から音声として出力させる。なお、スピーカ308は、ナビゲーション装置300から着脱可能であってもよいし、ナビゲーション装置300の本体から離れた場所にあってもよい。マイク307は、たとえば、車両のサンバイザー付近に設置され、ユーザの発話などを集音し、音声I/F306に出力する。マイク307に集音された音声は、音声I/F306内でA/D変換される。
【0035】
入力デバイス309は、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備えたリモコン、キーボード、およびタッチパネルなどによって構成される。入力デバイス309は、リモコン、キーボード、タッチパネルのうちいずれか1つの形態によって実現されてもよいが、複数の形態によって実現することも可能である。
【0036】
映像I/F310は、ディスプレイ311およびカメラ312に接続される。映像I/F310は、具体的には、たとえば、ディスプレイ311を制御するグラフィックコントローラと、即時表示可能な画像情報を一時的に記録するVRAM(Video RAM)などのバッファメモリと、グラフィックコントローラから出力される画像データに基づいてディスプレイ311を制御する制御ICなどによって構成される。
【0037】
ディスプレイ311には、地図データやアイコン、カーソル、メニュー、ウィンドウ、あるいは文字や画像などの各種データが表示される。また、ディスプレイ311の表面にはセンサが設けられており、物体の接近および接触を検知することによって入力デバイス309(タッチパネル)として利用することも可能である。
【0038】
カメラ312は、ナビゲーション装置300が搭載された車両の内部あるいは外部の映像を撮影する。カメラ312で撮影する映像は静止画あるいは動画のどちらでもよい。カメラ312によって撮影された映像は、映像I/F310を介して記録部305などに記録される。
【0039】
通信I/F313は、無線を介してネットワークに接続され、ネットワークを介したデータの送受信を可能とする。通信I/F313を用いることにより、ナビゲーション装置300は、ネットワークを介して渋滞情報や気象情報など、リアルタイムに変化する情報を取得することが可能となる。通信網には、LAN、WAN、公衆回線網や携帯電話網などがある。
【0040】
GPSユニット314は、GPS衛星からの電波を受信し、ナビゲーション装置300が搭載された車両の現在地点を示す情報を出力する。また、GPSユニット314は、速度センサ、加速度センサ、角速度センサなどの各種センサを備える。GPSユニット314の出力情報は、CPU301によるナビゲーション装置300の現在地点の算出に際して利用される。現在地点を示す情報は、たとえば緯度・経度、高度などの、地図データ上の1点を特定する情報である。
【0041】
図1に示した経路探索装置100の各構成部は、図3におけるROM302、RAM303、記録部305などに記録されたプログラムやデータを用いて、CPU301が所定のプログラムを実行し、各部を制御することによってその機能を実現する。
【0042】
(ナビゲーション装置300による経路探索処理)
つぎに、ナビゲーション装置300による経路探索処理について説明する。ナビゲーション装置300は、ユーザから指定された目的地点までの経路を探索し、当該経路に沿って誘導情報を出力することにより、運転中のユーザを支援する。ここで、ナビゲーション装置300は、様々な要素を考慮して経路探索をおこなう。経路探索時に考慮される要素としては、たとえば、目的地点に到達するまでの所要時間や走行する道路の通行料金、渋滞を回避するか否か、走行する道路の幅員などが挙げられる。経路探索時にこれらの要素をどのような優先順位で考慮するかは、たとえばユーザによる設定などによって決定する。
【0043】
ナビゲーション装置300は、経路を探索する際、上述した要素ごとに各経路のコストを算出する。そして、算出したコストに基づいて、ユーザに推奨経路を提示する。たとえば、ユーザが選択した条件に合致する経路に対して、付与するコスト値を高くする場合、ナビゲーション装置300は、最もコストが高い経路を推奨経路としてユーザに提示する。ユーザが選択した条件に合致する経路に対して付与するコスト値を低くする場合、ナビゲーション装置300は、最もコストが低い経路を推奨経路としてユーザに提示する。
【0044】
ここで、実施例にかかるナビゲーション装置300は、上述した要素と並んで、運転席に対する直射日光の差し込みを考慮して経路探索をおこなう。経路を走行中に運転席に直射日光が差し込むと、運転者の視界に影響を与え、運転の安全性が低下する可能性がある。ナビゲーション装置300は、運転者に対する日光の影響を回避するため、運転席に直射日光が差し込む頻度が低い経路を探索する。これにより、直射日光の影響を低減し、ユーザが安全に目的地点に到達する支援をおこなうことができる。
【0045】
図4は、ナビゲーション装置による経路探索処理の手順を示すフローチャートである。図4のフローチャートにおいて、ナビゲーション装置300は、まず、ユーザから目的地点が設定されるまで待機する(ステップS401:Noのループ)。目的地点が設定されると(ステップS401:Yes)、ナビゲーション装置300は、現在地点(または指定された出発地点)から目的地点までの経路を探索する(ステップS402)。このとき、一般的には複数の経路が探索される。
【0046】
つぎに、ナビゲーション装置300は、探索した経路を走行する時間帯が、直射日光の照射する時間帯であるか否かを判断する(ステップS403)。具体的には、たとえば、経路を走行する日の日出時刻情報および日没時刻情報を取得して、経路を走行する時間帯の一部または全部が日出時刻から日没時刻の間の時間帯(日照時間帯)に入るか否かを判断する。なお、日出時刻情報および日没時刻情報は、記録部305に記録しておいてもよいし、通信I/F313を介して取得してもよい。また、ステップS403の処理は、ステップS404以降におこなってもよい。探索した経路を走行する時間帯が、直射日光の照射する時間帯ではない場合は(ステップS403:No)、ステップS414に移行する。
【0047】
一方、直射日光が照射する時間帯である場合は(ステップS403:Yes)、ステップS402で探索した経路のうち、評価する経路を選択する(ステップS404)。そして、ナビゲーション装置300は、経路上の一地点(以下、「選択地点」という)における気象情報を取得する(ステップS405)。経路上の一地点の決め方は任意であるが、たとえば、経路の出発地点から近い順に所定距離間隔で選択する。気象情報は、たとえば通信I/F313を介して取得する。
【0048】
つぎに、ナビゲーション装置300は、選択地点の通過予定時刻における天気が晴れか否かを判断する(ステップS406)。なお、「晴れ」とは、雲が全くない状態のみを指すものではなく、たとえば、気象庁による定義によれば、全天に対する雲量が8割以下の状態を指す。選択地点の天気が晴れではない場合(ステップS406:No)、ステップS411に移行する。
【0049】
一方、選択地点の天気が晴れの場合(ステップS406:Yes)、ナビゲーション装置300は、選択地点の通過予定時刻における太陽高度および選択地点に対する太陽方位を算出する(ステップS407)。太陽高度とは、地表面上の観測者と太陽とを結ぶ線分と地表面とのなす角度である。また、太陽方位とは、観測者から見た太陽の方位である。ナビゲーション装置300は、太陽の位置情報と選択地点の緯度経度情報とに基づいて、太陽高度および太陽方位を算出する。太陽の位置情報は、あらかじめ記録部305に記録しておいてもよいし、通信I/F313を介して取得してもよい。
【0050】
つぎに、ナビゲーション装置300は、選択地点周辺の遮蔽物情報を取得する(ステップS408)。遮蔽物情報とは、選択地点周辺にある直射日光を遮る可能性のある地物(たとえば、建物や樹木、山など)の位置情報や高度情報、形状情報などである。ナビゲーション装置300は、たとえば記録部305に記録された地図データから地物の位置情報を取得する。また、ナビゲーション装置300は、地図データ内に含まれる3D表示図から、地物の高度情報や形状情報を取得する。
【0051】
つづいて、ナビゲーション装置300は、ステップS407で算出した太陽高度・太陽方位およびステップS408で取得した遮蔽物情報を用いて、選択地点を通過する際、運転席に直射日光が差し込むか否かを判断する(ステップS409)。ここで、ステップS409の処理を図5および図6を用いて詳細に説明する。
【0052】
図5および図6は、直射日光の差し込み有無の判断方法を説明する説明図である。図5において、車両Cは目的地点に至る経路Rを走行している。ナビゲーション装置300は、たとえば経路R上の地点P1〜P7をそれぞれ選択地点として、図4に示す処理をおこなう。なお、上述のように、選択地点の決め方は任意であるが、たとえば、図5に示すように、車両Cの進行方向が、太陽と正対する直線区間(地点P6およびP7が位置する区間)と、太陽と正対しない直線区間(地点P2〜P5が位置する区間)とでは、選択地点を置く距離を変更してもよい。具体的には、太陽と正対する直線区間においては、太陽と正対しない直線区間と比較して、選択地点を置く距離を長くする。これは、太陽と正対する直線区間においては、運転席に対する直射日光の差し込みの有無が変化する可能性が低いためである。
【0053】
また、車両Cの運転席からの視野範囲をVで示す。図5において、地点P1における車両Cの視野範囲Vは、地点P1を頂点として南東方向に角度θ1に広がる範囲である。一方、太陽Sは車両Cに対して南東に位置している(太陽方位は南東)。このため、車両Cの運転席には直射日光が差し込む可能性があるが、太陽高度によって直射日光の差し込みの有無は変化する。たとえば、太陽高度が90度に近い(太陽高度が高い)場合、太陽Sは運転者から見て車両Cの天井側に位置する。このため、直射日光は運転席に差し込まない。一方、日出時刻や日没時刻に近い時間帯では、太陽高度が低いため、太陽Sは車両Cのフロントガラスの範囲内に位置する可能性があり、直射日光が運転席に差し込む可能性がある。
【0054】
また、経路Rの周辺には、建物Bや山MTが位置している。図6に示すように、太陽Sと車両Cとの間に建物B(B1,B2)などの遮蔽物がある場合、太陽Sからの直射日光は遮蔽物に遮られ、車両Cの運転席には直射日光は差し込まない。遮蔽物(たとえば、建物B1)によって直射日光が遮られるか否かは、たとえば太陽Sの太陽方位情報および太陽高度情報(図6の角度θ2)、建物Bの位置情報および高さ(h1)情報、車両Cの位置情報などによって判断することができる。
【0055】
ナビゲーション装置300は、以上のような方法で図4のステップS407およびS408で取得した情報や、記録部305に記録された情報などを用いて、運転席に直射日光が差し込むか否かを判断する。
【0056】
図4の説明に戻り、運転席に直射日光が差し込まない場合(ステップS409:No)、ナビゲーション装置300は、ステップS411に移行する。一方、運転席に直射日光が差し込む場合は(ステップS409:Yes)、選択地点における運転者への直射日光の影響を評価する(ステップS410)。
【0057】
一般に、運転者にとって直射日光による視界不良が影響する地点とは、信号機や標識が多い一般道であると考えられる。このことから、たとえば以下のような地点は、運転者に対する直射日光の影響が低いと評価する。
・信号機のない有料道路(道路上の標識情報や交通情報はナビゲーション装置300で取得できるため、影響度が低いと考えられる)
・片側一車線の道路(車線変更を考慮しなくてよいため、走行時における危険が比較的少ない)
【0058】
反対に、以下のような地点は、運転者に対する直射日光の影響が大きいと評価する。
・センターラインの無い通行の困難な道路
・交通量の多い道路
・多車線道路
・方向指示のある信号機が多い交差点を含む道路
・大型店舗や人気スポットなど、車の出入りが激しい施設が多い道路
なお、評価の結果は、たとえばコスト値の大小として以降の処理に反映させる。
【0059】
ナビゲーション装置300は、経路上の選択地点をすべて評価するまで(ステップS411:No)、ステップS405に戻り、以降の処理をくり返す。経路上の選択地点をすべて評価すると(ステップS411:Yes)、各選択地点の評価を総合して、経路全体を評価する(ステップS412)。ここまでの処理によって、1つの経路の評価がされる。ナビゲーション装置300は、ステップS402で探索したすべての経路を評価するまで(ステップS413:No)、ステップS404に戻り、以降の処理をくり返す。
【0060】
すべての経路を評価すると(ステップS413:Yes)、ナビゲーション装置300は、ステップS402で探索した各経路の距離や通行料金、交通状況など、直射日光以外の他の要因を評価する(ステップS414)。ステップS414の処理は、一般的なナビゲーション装置の経路に対するコスト算出処理である。なお、直射日光に関する評価のみをおこなう場合は、ステップS414の処理はおこなわなくてよい。
【0061】
そして、ナビゲーション装置300は、直射日光および他の要因に関する評価順に経路を提示して(ステップS415)、本フローチャートによる処理を終了する。この後、提示した経路のいずれかをユーザが選択すると、ナビゲーション装置300は、選択された経路に沿って経路誘導をおこなう。なお、ステップS415で提示する経路を、運転席に対して直射日光が照射する地点が、走行経路上の全区間に対して所定割合以下となる経路のみとしてもよい。
【0062】
また、ナビゲーション装置300は、走行開始後における気象状況や交通状況の変化に対応して、随時リルートをおこなうようにしてもよい。たとえば、走行開始後において経路上の気象状況に変化が生じた場合には、経路上の所定の地点において直射日光が差し込むか否かが変化する可能性がある。また、経路上の交通状況に変化が生じた場合には、経路上の所定の地点に到達する時刻が予測と大きくずれる場合がある。走行開始後に随時リルートをおこなうことによって、気象状況や交通状況の変化に対応した経路を探索することができる。
【0063】
図7は、走行開始後における経路の再探索処理の手順を示すフローチャートである。図7のフローチャートにおいて、ナビゲーション装置300は、ユーザによって選択された経路に沿って経路誘導をおこなっている(ステップS701)。また、ナビゲーション装置300は、たとえば通信I/F313を介して気象情報や渋滞情報などを取得する(ステップS702)。
【0064】
つぎに、ナビゲーション装置300は、走行中の経路評価時と比較して、経路上の気象情報や渋滞情報に変化が生じたか否かを判断する(ステップS703)。変化が生じていない場合は(ステップS703:No)、ステップS713に移行する。一方、変化が生じた場合は(ステップS703:Yes)、変化後の気象状況や渋滞情報に基づいて、現在地点以降の経路について再評価する(ステップS704)。なお、このとき再評価するのは、直射日光についてのみであってもよいし、直射日光と同時にその他の要因(目的地点に到達するまでの所要時間など)について評価してもよい。
【0065】
そして、ナビゲーション装置300は、ステップS704の評価結果と、最初の評価時の評価結果とを比較して、評価に所定割合以上の変化が生じたか否かを判断する(ステップS705)。評価に所定割合以上の変化が生じていない場合は(ステップS705:No)、ステップS713に移行する。
【0066】
一方、評価に所定割合以上の変化が生じた場合(ステップS705:Yes)、ナビゲーション装置300は、現在地点から目的地点に至る他の経路を探索する(ステップS706)。このとき探索する経路は、複数であっても単数であってもよい。つぎに、ナビゲーション装置300は、ステップS706で探索した他の経路を評価する(ステップS707)。
【0067】
つづいて、ナビゲーション装置300は、他の経路の評価結果と、現在走行中の経路の評価結果とを比較して、他の経路の方が走行中の経路よりも評価が高いか否かを判断する(ステップS708)。他の経路の方が走行中の経路よりも評価が高くない場合は(ステップS708:No)、ステップS713に移行する。
【0068】
一方、他の経路の方が走行中の経路よりも評価が高い場合(ステップS708:Yes)、ナビゲーション装置300は、ユーザに他の経路を提示して(ステップS709)、走行する経路を他の経路に変更するか否かを判断させる(ステップS710)。ユーザが他の経路に変更すると判断した場合(ステップS710:Yes)、ナビゲーション装置300は、変更後の経路に沿って経路誘導をおこなう(ステップS711)。一方、ユーザが他の経路には変更しないと判断した場合(ステップS710:No)、ナビゲーション装置300は、元の経路(走行中の経路)に沿って経路誘導をおこなう(ステップS712)。
【0069】
車両が目的地点に到達するまでは(ステップS713:No)、ナビゲーション装置300は、ステップS701に戻り、以降の処理をくり返す。そして、車両が目的地点に到達すると(ステップS713:Yes)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0070】
以上説明したように、ナビゲーション装置300は、経路上の各地点において運転席に対して直射日光が差し込むか否かを推定し、推定結果に基づいて経路を探索する。具体的には、たとえば、運転席に対して直射日光が照射する地点が、走行経路上の全区間に対して所定割合以下となるよう走行経路を探索する。これにより、運転席に直射日光が差し込む区間が少ない経路を探索することができ、運転者に対する直射日光の影響を低減し、ユーザがより安全に走行できる経路を探索することができる。
【0071】
また、ナビゲーション装置300は、車両が経路上の各地点を通過する予想時刻における太陽の位置情報と、車両が経路上の各地点を通過する際の進行方向情報と、に加えて、車両と太陽との間に位置する地物の情報に基づいて、運転席に直射日光が照射するか否かを判断する。これにより、地物によって直射日光の照射が遮られる地点を経路に含めることができ、経路選択の自由度を高めることができる。
【0072】
また、ナビゲーション装置300は、車両が経路上の各地点を通過する予想時刻における経路上の各地点の気象情報に基づいて、運転席に直射日光が照射するか否かを推定するので、雨天や曇りなど日光の照射がない場合には、直射日光の照射の有無にかかわらず経路探索をおこなうことができる。
【0073】
また、ナビゲーション装置300は、運転席に対して直射日光が照射する地点が、所定の状況に合致する道路(運転しやすい道路)となるように走行経路を探索するので、直射日光が照射する地点を通過しなければ目的地点に到達できない場合でも、運転者に対する直射日光の影響を低減することができる。
【0074】
また、ナビゲーション装置300は、走行経路の探索後において、車両が経路上の各地点を通過する予想時刻が変化した場合や、車両が各地点を通過する予想時刻における気象情報が変化した場合には、変化後の予想時刻や気象情報に基づいて走行経路を再探索する。これにより、交通状況や気象状況など、随時変化する要因に対しても対応して経路を探索することができ、ユーザがより安全に走行できる経路を探索することができる。
【0075】
なお、本実施の形態で説明した経路探索方法は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。またこのプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
100 経路探索装置
101 推定部
102 探索部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行経路を探索する経路探索装置であって、
所定の地点において、前記車両が通過する際の進行方向に対して正面から前記車両の運転席に対して直射日光が照射するか否かを推定する推定手段と、
前記推定手段による推定結果に基づいて、前記走行経路を探索する探索手段と、
を備えたことを特徴とする経路探索装置。
【請求項2】
前記推定手段は、前記車両が前記所定の地点を通過する予想時刻における太陽の位置情報と、前記車両が前記所定の地点を通過する際の進行方向情報と、に基づいて、前記運転席に前記直射日光が照射するか否かを推定することを特徴とする請求項1に記載の経路探索装置。
【請求項3】
前記推定手段は、さらに前記車両と前記太陽との間に位置する地物の情報に基づいて、前記運転席に前記直射日光が照射するか否かを推定することを特徴とする請求項2に記載の経路探索装置。
【請求項4】
前記推定手段は、さらに前記車両が前記所定の地点を通過する予想時刻における前記所定の地点の気象情報に基づいて、前記運転席に前記直射日光が照射するか否かを推定することを特徴とする請求項2または3に記載の経路探索装置。
【請求項5】
前記推定手段は、前記運転席に搭乗する運転者の視野範囲内に対して前記直射日光が照射するか否かを推定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の経路探索装置。
【請求項6】
前記探索手段は、前記運転席に対して前記直射日光が照射する地点が、前記走行経路上の全区間に対して所定割合以下となるよう前記走行経路を探索することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の経路探索装置。
【請求項7】
前記探索手段は、前記運転席に対して前記直射日光が照射する地点が、所定の状況に合致する道路となるように前記走行経路を探索することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の経路探索装置。
【請求項8】
前記探索手段は、前記走行経路の探索後において、前記車両が前記所定の地点を通過する予想時刻が変化した場合、変化後の前記予想時刻に基づいて前記走行経路を再探索することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の経路探索装置。
【請求項9】
前記探索手段は、前記走行経路の探索後において、前記車両が前記所定の地点を通過する予想時刻における前記所定の地点の前記気象情報が変化した場合、変化後の前記気象情報に基づいて前記走行経路を再探索することを特徴とする請求項4〜8のいずれか一つに記載の経路探索装置。
【請求項10】
車両の走行経路を探索する経路探索装置における経路探索方法であって、
所定の地点において、前記車両の運転席に対して直射日光が照射するか否かを推定する推定工程と、
前記推定工程における推定結果に基づいて、前記走行経路を探索する探索工程と、
を含んだことを特徴とする経路探索方法。
【請求項11】
請求項10に記載の経路探索方法をコンピュータに実行させることを特徴とする経路探索プログラム。
【請求項12】
請求項11に記載の経路探索プログラムを記録したコンピュータに読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−158281(P2011−158281A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18378(P2010−18378)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】