説明

経路探索装置及び経路探索装置の経路探索に用いられる地図データ

【課題】経路探索処理の処理時間や処理負担を軽減させるとともに、適切な経路探索を行うことを可能とした経路探索装置及び経路探索装置の経路探索に用いられる地図データを提供する。
【解決手段】地図情報DB31に記憶される地図データ32は、後述のように道路網の情報量の差異に基づいて複数レイヤに階層化された構造し、各レイヤは複数の領域(リージョン)に分割されて記憶される。そして、レイヤ3のオーバーラップ領域を削除してレイヤ3のリージョン同士が重複しないようにし、レイヤ2の境界ノードには、レイヤ3の接続先ノードとの接続関係を特定する上位接続データに加えて、境界ノードが接続される接続先ノードを含むレイヤ3のリージョンを対応づけるノード領域対応データ33についても持たせるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出発地から目的地までの経路を探索する経路探索装置及び経路探索装置の経路探索に用いられる地図データに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の走行案内を行い、運転者が所望の目的地に容易に到着できるようにしたナビゲーション装置が車両に搭載されていることが多い。ここで、ナビゲーション装置とは、GPS受信機などにより車両の現在位置を検出し、その現在位置に対応する地図データをDVD−ROMやHDDなどの記録媒体から取得して液晶モニタに表示することが可能な装置である。そして、車両の現在位置を含む地図データを記録媒体等から読み出し、地図データに基づいて車両の現在位置の周囲における地図画像を描画して表示装置に表示するとともに、車両位置マークを地図画像に重ね合わせて表示し、車両の移動に応じて地図画像をスクロールしたり、地図画像を画面に固定し車両位置マークを移動させることによって、車両が現在どの地点を走行しているのかを一目でわかるようにしている。また、上記ナビゲーション装置では、所望する目的地を設定すると、出発地(例えば自車の現在位置)から設定された目的地までの最適経路を探索する経路探索機能を備えており、更に、探索された経路に従って走行の案内を行う走行案内機能についても備えている。また、近年は携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、パーソナルコンピュータ等においても上記ナビゲーション装置と同様の機能を有するものがある。
【0003】
ここで、上記ナビゲーション装置等が記憶する地図データは、道路網の情報量の差異に基づいて複数レイヤに階層化された構造をしている。更に、各レイヤは複数の領域(リージョン)に分割されて記憶されている。例えば、特開2009−156940号公報では、地図データをレイヤ1〜3の3層に階層化し、更に各階層において地図データを複数のブロックに分割して記憶することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−156940号公報(第4頁〜第11頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記したように地図データを複数のリージョンに分割する場合においては、リージョンの境界付近を走行する経路を適切に探索する為に、一般的にリージョン同士が重複するオーバーラップ領域を設けている。図10には、従来において地図データを構成するリージョン200の一例を示す。図10に示すようにリージョン200は、コア領域201とコア領域201の周囲に形成されたオーバーラップ領域202から構成されていた。その結果、図11に示すようにオーバーラップ領域202は、他のリージョン200のコア領域201や他のリージョン200のオーバーラップ領域202と重複することとなり、地図データのデータサイズが必要以上に大きくなっていた。また、探索対象となるリンクやノードの数が増加するので、経路探索処理に係る時間が長時間化し、処理負担も大きくなっていた。
【0006】
また、地図データを複数のリージョンに分割する場合においては、出発地と目的地の位置関係に基づいて探索対象とするリージョンを予め決定していた。しかしながら、従来のようにオーバーラップ領域を設けることとすると、経路の探索方向(出発地→目的地、又は目的地→出発地)によって異なる経路が探索される場合がある。また、特に2つのCPUにより出発地と目的地の両方から探索を行う場合には、探索時のCPUの状態によって、出発地と目的地が同じでも探索処理を行う度に異なる経路が探索される場合がある。
【0007】
以下に、図11を用いて上記問題点についてより詳細に説明する。図11に示す例では、地点Xを出発地とし、地点Yを目的地に設定し、リージョンAとリージョンBが探索対象に決定された場合の経路の探索例を示す。ここで、図11に示す例では、地点Xと地点Yとを結ぶ経路としては、一般道路を通る“下ルート”と、有料道路を通る“上ルート”がある。そして、出発地である地点X方向から地点Y方向へと探索を行うと、“下ルート”のリージョンAの境界ノード202が接続される先のノード203はリージョンBのコア領域内のノードとなるので、“下ルート”は経路候補の対象となる。また、“上ルート”のリージョンAの境界ノード204が接続される先のノード205についてもリージョンBのコア領域内のノードとなるので、“上ルート”も経路候補の対象となる。従って、出発地である地点X方向から地点Y方向へと探索を行うと、“上ルート”と“下ルート”の両方が経路候補となり、コスト算出結果に基づいていずれかのルートが案内経路となる。
【0008】
一方、目的地である地点Y方向から地点X方向へと探索を行うと、“下ルート”のリージョンBの境界ノード210が接続される先のノード211はリージョンAのコア領域内のノードとなるので、“下ルート”は経路候補の対象となる。しかし、“上ルート”のリージョンBの境界ノード212が接続される先のノード213についてはリージョンAのコア領域内のノードとならない(即ち、探索対象外のリージョンのコア領域内のノードとなる)ので、“上ルート”は経路候補の対象とならない(経路が接続されない)。従って、目的地である地点Y方向から地点X方向へと探索を行うと、“下ルート”のみが経路候補となり、上記した出発地である地点X方向から地点Y方向へと探索した場合と異なる案内経路が設定される場合がある。
【0009】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、オーバーラップ領域を削除することにより地図データのデータサイズを減少させ、経路探索処理の処理時間や処理負担を軽減させるとともに、適切な経路探索を行うことを可能とした経路探索装置及び経路探索装置の経路探索に用いられる地図データを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る経路探索装置(1)は、地図データ(32)を記憶する地図データ記憶媒体(31)と、前記地図データ記憶媒体に記憶された前記地図データに基づいて、出発地から目的地までの経路を探索する経路探索手段(51)と、を有する経路探索装置であって、前記地図データ記憶媒体は、前記地図データを複数の領域に区分するとともに、道路網の情報量に基づいて複数のレイヤに階層化して記憶し、前記地図データの領域毎に、該領域と対応する他のレイヤの領域とを関連付けた領域対応情報を記憶し、前記複数のレイヤの内、特定レイヤの前記地図データを各領域が重複する重複エリアが生じないように記憶するとともに、前記特定レイヤ以外のレイヤの前記地図データを各領域が重複する重複エリアが生じるように記憶し、前記特定レイヤ以外のレイヤの前記地図データに含まれるノードの内、前記重複エリアから退出するリンクに接続されたノードである境界ノード(87、98)と、該境界ノードが接続されるノードである接続先ノード(89、99)を含む前記特定レイヤの領域とを対応付けるノード領域対応情報(33)を記憶することを特徴とする
【0011】
また、請求項2に係る経路探索装置(1)は、請求項1に記載の経路探索装置であって、前記特定レイヤは、前記複数のレイヤの内、最も道路網の情報量の少ない最上位レイヤであることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に係る経路探索装置(1)は、請求項2に記載の経路探索装置であって、前記ノード領域対応情報(33)は、前記複数のレイヤの内、前記最上位レイヤの次に道路網の情報量が少ない次上位レイヤの前記境界ノード(87、98)と、前記接続先ノード(89、99)を含む前記最上位レイヤの領域とを対応付けることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に係る経路探索装置(1)は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の経路探索装置であって、前記経路探索手段(51)は、前記出発地側及び前記目的地側から経路の探索を行い、前記出発地側からの探索と前記目的地側からの探索とが重なった場合において、前記出発地側から累積された探索コストと前記目的地側から累積された探索コストとを加算したコスト加算値を算出するコスト算出手段(52)と、前記コスト算出手段により算出された前記コスト加算値に基づいて、前記出発地から前記目的地までの経路を設定する経路設定手段(53)と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に係る経路探索装置(1)は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の経路探索装置であって、前記出発地及び前記目的地に基づいて、前記地図データの内、探索対象とする領域を設定する探索対象領域設定手段(54)を有し、前記経路探索手段は、前記探索対象領域設定手段によって設定された領域を対象として、前記出発地から前記目的地までの経路を探索することを特徴とする。
【0015】
更に、請求項6に係る地図データ(32)は、経路探索装置(1)の経路探索に用いられる地図データであって、複数の領域に区分されるとともに、道路網の情報量に基づいて複数のレイヤに階層化され、前記領域毎に、該領域と対応する他のレイヤの領域とを関連付けた領域対応情報を含み、前記複数のレイヤの内、特定レイヤは各領域が重複する重複エリアが生じることなく、前記特定レイヤ以外のレイヤは前記地図データの各領域が重複する重複エリアが生じ、前記特定レイヤ以外のレイヤに含まれるノードの内、前記重複エリアから退出するリンクに接続されたノードである境界ノード(87、98)と、該境界ノードが接続されるノードである接続先ノード(89、99)を含む前記特定レイヤの領域とを対応付けるノード領域対応情報(33)を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
前記構成を有する請求項1に係る経路探索装置では、特定レイヤにおいて重複エリアが生じないようにすることにより地図データのデータサイズを減少させ、経路探索処理の処理時間や処理負担を軽減させることが可能となる。また、経路の探索方向や探索時のCPUの状態によって、異なる経路が探索されることを防止できる。また、ノード領域対応情報を記憶させることによって、特定レイヤの重複エリアが生じないようにした場合でも、特定レイヤと特定レイヤ以外のレイヤとの間のノードの接続を適切に行うことが可能となる。
【0017】
また、請求項2に係る経路探索装置では、特定レイヤを最も道路網の情報量の少ない最上位レイヤとするので、最上位レイヤにおいて重複エリアが生じないように記憶した場合でも、最上位レイヤと下位レイヤとの間のノードの接続を適切に行うことが可能となる。従って、出発地と目的地とが離れた位置にある場合であっても、最上位レイヤを含む複数のレイヤを用いて、経路探索を適切に行うことが可能となる。
【0018】
また、請求項3に係る経路探索装置では、最上位レイヤと最上位レイヤに連絡するレイヤである次上位レイヤとの間のノードの接続を適切に行うことが可能となる。
【0019】
また、請求項4に係る経路探索装置では、出発地と目的地の両方から探索を行う場合において、出発地と目的地が同一であっても探索時のCPUの状態によって探索を行う度に異なる経路が探索されることを防止できる。
【0020】
更に、請求項5に係る経路探索装置では、出発地と目的地に基づいて特定された領域を対象として、出発地から目的地までの経路を探索するので、経路探索の為の演算量を抑えることができる。結果として、CPUの処理負担が軽減でき、また、経路探索に必要な時間を短縮することができる。
【0021】
更に、請求項6に係る地図データでは、特定レイヤにおいて重複エリアが生じないようにすることによりデータサイズを減少することができ、該地図データを用いた経路探索処理の処理時間や処理負担を軽減させることが可能となる。また、経路の探索方向や探索時のCPUの状態によって、異なる経路が探索されることを防止できる。また、ノード領域対応情報を含むことによって、特定レイヤの重複エリアが生じないようにした場合でも、特定レイヤと特定レイヤ以外のレイヤとの間のノードの接続を適切に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係るナビゲーション装置を示したブロック図である。
【図2】ナビゲーションECUが構成する各種手段を示した図である。
【図3】地図情報DBに記憶される3層に階層化された地図データを示した模式図である。
【図4】レイヤ1〜3の各リージョンの構成を示した図である。
【図5】地図データの構成を示した図である。
【図6】レイヤ1〜3を用いて出発地から目的地までの経路探索を行う場合の経路探索処理を説明した図である。
【図7】レイヤ2とレイヤ3の間のノードの接続関係を比較例と比較して説明した図である。
【図8】レイヤ2とレイヤ3の間のノードの接続関係を比較例と比較して説明した図である。
【図9】本実施形態に係る経路探索処理プログラムのフローチャートである。
【図10】一般的な地図データを構成する各リージョンについて示した図である。
【図11】従来の地図データの探索処理について説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る経路探索装置をナビゲーション装置に具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るナビゲーション装置1の概略構成について図1を用いて説明する。図1は本実施形態に係るナビゲーション装置1を示したブロック図である。
【0024】
図1に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置1は、ナビゲーション装置1が搭載された車両の現在位置を検出する現在位置検出部11と、各種のデータが記録されたデータ記録部12と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU13と、ユーザからの操作を受け付ける操作部14と、ユーザに対して車両周辺の地図や施設の関する施設情報を表示する液晶ディスプレイ15と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ16と、記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ17と、プローブセンタやVICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタ等の情報センタとの間で通信を行う通信モジュール18と、から構成されている。
【0025】
以下に、ナビゲーション装置1を構成する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部11は、GPS21、車速センサ22、ステアリングセンサ23、ジャイロセンサ24等からなり、現在の車両の位置、方位、車両の走行速度、現在時刻等を検出することが可能となっている。ここで、特に車速センサ22は、車両の移動距離や車速を検出する為のセンサであり、車両の駆動輪の回転に応じてパルスを発生させ、パルス信号をナビゲーションECU13に出力する。そして、ナビゲーションECU13は発生するパルスを計数することにより駆動輪の回転速度や移動距離を算出する。尚、上記5種類のセンサをナビゲーション装置1が全て備える必要はなく、これらの内の1又は複数種類のセンサのみをナビゲーション装置1が備える構成としても良い。
【0026】
また、データ記録部12は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB31や所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。尚、データ記録部12をハードディスクの代わりにメモリーカードやCDやDVD等の光ディスクにより構成しても良い。
【0027】
ここで、地図情報DB31は、経路案内及び地図表示に必要な地図データ32が記憶された記憶媒体である。また、地図データ32は、例えば、道路(リンク)に関するリンクデータ、ノード点に関するノードデータ、施設等の地点に関する地点データ、地図を表示するための地図表示データ、各交差点に関する交差点データ、レイヤ間におけるリージョンの親子関係を特定する従属関係データ、経路を探索するための探索データ、地点を検索するための検索データ等から構成されている。また、地図情報DB31に記憶される地図データ32は、後述のように道路網の情報量の差異に基づいて複数レイヤに階層化された構造をしている。更に、各レイヤは複数の領域(リージョン)に分割されて記憶されている。尚、地図データ32の詳細については後述する。
【0028】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)13は、ナビゲーション装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットであり、演算装置及び制御装置としてのCPU41、並びにCPU41が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM42、制御用のプログラムのほか、後述の経路探索処理プログラム(図9参照)等が記録されたROM43、ROM43から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ44等の内部記憶装置を備えている。尚、ナビゲーションECU13は、図2に示す処理アルゴリズムとしての各種手段を構成する。例えば、経路探索手段51は、地図情報DB31に記憶された地図データ32に基づいて、出発地から目的地までの経路を探索する。また、経路探索手段51は、更に、コスト算出手段52と経路設定手段53を備える。コスト算出手段52は、出発地側及び目的地側から経路の探索を行い、出発地側からの探索と目的地側からの探索とが重なった場合において、出発地側から累積された探索コストと目的地側から累積された探索コストとを加算したコスト加算値を算出し、経路設定手段53は、コスト算出手段52により算出されたコスト加算値に基づいて、出発地から目的地までの経路を設定する。また、探索対象領域設定手段54は、出発地及び目的地に基づいて、地図データの内、探索対象とする領域を設定する。
【0029】
操作部14は、走行開始地点としての出発地及び走行終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)から構成される。そして、ナビゲーションECU13は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、操作部14は液晶ディスプレイ15の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。また、マイクと音声認識装置によって構成することもできる。
【0030】
また、液晶ディスプレイ15には、道路を含む地図画像、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、出発地から目的地までの走行予定経路、走行予定経路に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。
【0031】
また、スピーカ16は、ナビゲーションECU13からの指示に基づいて走行予定経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。
【0032】
また、DVDドライブ17は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて音楽や映像の再生、地図情報DB31の更新等が行われる。
【0033】
また、通信モジュール18は、交通情報センタ、例えば、VICSセンタやプローブセンタ等から送信された渋滞情報、規制情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報を受信する為の通信装置であり、例えば携帯電話機やDCMが該当する。
【0034】
次に、地図情報DB31に記憶された地図データ32について説明する。
本実施形態において地図データ32は、図3に示されるように道路網の情報量に応じて3層のレイヤに階層化されている。図3は地図情報DB31に記憶される3層のレイヤに階層化された地図データ32を示した模式図である。この場合、例えば、レベル1の階層(以下、レイヤ1という)は10km四方のリージョンによって複数に区分された地図データであり、レベル2の階層(以下、レイヤ2という)は20km四方のリージョンによって複数に区分された地図データであり、レベル3の階層(以下、レイヤ3という)は40km四方のリージョンによって複数に区分された地図データである。
そして、下位レベルのレイヤは上位レベルのレイヤより道路網の情報量がより多く含まれており、例えばレイヤ3は高速自動車国道、自動車専用道路、都市高速道路、有料道路に関する情報が格納されている。また、レイヤ2はレイヤ3に含まれる道路網に加えて国道や県道等の主要な一般道路に関する情報が格納されている。また、レイヤ1はレイヤ2に含まれる道路網に加えて細街路等のその他全ての一般道に関する詳細な道路網に関する情報が格納されている。
【0035】
更に、下位レベルのレイヤでは詳細なデータを有する代わりにカバーする範囲が狭く、上位レベルのレイヤでは粗いデータしか有していない代わりにカバーする範囲が広くなっている。例えば、最下位レベルのレイヤ1では細街路を含む全ての道路の道路データを有するが市町村範囲しかカバーしておらず、最上位レベルのレイヤ3では高速道路や有料道路等の道路の道路データしか有していないが日本全国をカバーする。
【0036】
尚、各レベルのレイヤにおけるリーションの形状、即ち、各リージョンのカバーする範囲の広さは、適宜決定することができる。また、地図データを構成するレベルの数、即ち、レイヤの階層の数も、必ずしも3層である必要はなく、例えば2層や4層であっても良い。
【0037】
次に、各レイヤの地図データ32を構成する各リージョンについて説明する。
図4に示すように、各レイヤの内、最も上位のレイヤ3を除くレイヤを構成する各リージョン61は、コア領域62とコア領域62の周囲に形成されたオーバーラップ領域63から構成されている。それに対して、最も上位階層のレイヤ3を構成するリージョン64の地図データ32Cについては、オーバーラップ領域が存在せず、コア領域65のみから構成されている。即ち、最も上位階層のレイヤ3の地図データは、各リージョンが重複する重複エリアが生じないように記憶され、他のレイヤ1、2の地図データは、各リージョンが重複する重複エリアが生じるように記憶される。
【0038】
そして、本実施形態に係るナビゲーション装置1では、上記のようにレイヤ3についてオーバーラップ領域を存在しないように構成したことから、従来のように経路の探索方向(出発地→目的地、又は目的地→出発地)によって異なる経路が探索される虞がない。また、特に2つのCPUにより出発地と目的地の両方から探索を行う場合においても、探索時のCPUの状態によって、出発地と目的地が同じでも探索処理を行う度に異なる経路が探索される虞もない(図11参照)。
【0039】
以下に、図4を用いて上記従来の問題点の解消についてより詳細に説明する。図4に示す例では、図11と同様に地点Xを出発地とし、地点Yを目的地に設定し、リージョンAとリージョンBが探索対象に決定された場合の経路の探索例を示す。ここで、図4に示す例では、地点Xと地点Yとを結ぶ経路としては、一般道路を通る“下ルート”と、有料道路を通る“上ルート”がある。そして、出発地である地点X方向から地点Y方向へと探索を行うと、“下ルート”のリージョンAの境界ノード110が接続される先のノード111はリージョンBのコア領域内のノードとなるので、“下ルート”は経路候補の対象となる。しかし、“上ルート”のリージョンAの境界ノード110が接続される先のノード112についてはリージョンBのコア領域内のノードとならない(即ち、探索対象外のリージョンのコア領域内のノードとなる)ので、“上ルート”は経路候補の対象とならない(経路が接続されない)。従って、出発地である地点X方向から地点Y方向へと探索を行うと、“下ルート”のみが経路候補となる。
【0040】
一方、目的地である地点Y方向から地点X方向へと探索を行うと、“下ルート”のリージョンBの境界ノード111が接続される先のノード110はリージョンAのコア領域内のノードとなるので、“下ルート”は経路候補の対象となる。しかし、“上ルート”のリージョンBの境界ノード113が接続される先のノード114についてはリージョンAのコア領域内のノードとならない(即ち、探索対象外のリージョンのコア領域内のノードとなる)ので、“上ルート”は経路候補の対象とならない(経路が接続されない)。従って、目的地である地点Y方向から地点X方向へと探索を行う場合でも、“下ルート”のみが経路候補となり、上記した出発地である地点X方向から地点Y方向へと探索を行う場合と同じ案内経路が設定されることとなる。
【0041】
次に、地図データ32を構成するデータの詳細について説明する。
図5に示すように、地図データ32は、各レイヤの地図データ32A〜32Cから構成される。そして、各レイヤの地図データ32A〜32Cは、上述したように地図表示データ、リンクデータ、ノードデータ、探索データ、従属関係データ、施設データ、交差点データ、検索データ等によってそれぞれ構成されている。図5は本実施形態に係る地図データ32の構成を示した図である。
【0042】
ここで、地図表示データとしては、各レイヤの地図データ32A〜32Cに応じた地図表示を行う為の地図描画情報が記憶される。
【0043】
また、リンクデータとしては、それぞれのレイヤの地図データ32A〜32Cにおいて道路を構成する各リンクに関してリンクの属する道路の幅員、勾(こう)配、カント、バンク、路面の状態、道路の車線数、車線数の減少する箇所、幅員の狭くなる箇所、踏切り等を表すデータが、コーナに関して、曲率半径、交差点、T字路、コーナの入口及び出口等を表すデータが、道路属性に関して、降坂路、登坂路等を表すデータが、道路種別に関して、国道、県道、細街路等の一般道のほか、高速自動車国道、自動車専用道路、都市高速道路、一般有料道路、有料橋等の有料道路を表すデータがそれぞれ記録される。更に、有料道路に関して、有料道路の入口及び出口の取付道(ランプウェイ)、料金所(インターチェンジ)等に関するデータが記録される。
【0044】
また、ノードデータとしては、それぞれのレイヤの地図データ32A〜32Cにおいて道路の分岐点(交差点、T字路等も含む)、各道路に曲率半径等に応じて所定の距離ごとに設定されたノード点の座標(位置)、ノードが交差点に対応するノードであるか等を表すノード属性、ノードに接続するリンクのリンク番号のリストである接続リンク番号リスト、ノードにリンクを介して隣接する他のノードのノード番号のリストである隣接ノード番号リスト、各ノード点の高さ(高度)等に関するデータ等が記録される。
また、ノードデータとしては、階層の異なるレイヤ同士のノード(例えば、レイヤ1のノードとレイヤ2のノード、レイヤ2のノードとレイヤ3のノード)の接続関係を特定する上位接続データについても記憶される。
更に、本実施形態ではノードデータとして、特に“レイヤ2のノードの内の境界ノード”と、“該境界ノードが接続されるノードである接続先ノードを含むレイヤ3のリージョン”とを対応付けるノード領域対応データ33についても記憶される。尚、ノード領域対応データ33の詳細については後述する。
【0045】
また、探索データとしては、それぞれのレイヤの地図データ32A〜32Cにおいて設定された目的地までの経路を探索及び表示する際に使用されるデータについて記録されており、ノードを通過する際のコスト(以下、ノードコストという)や道路を構成するリンクのコスト(以下、リンクコストという)からなる探索コストを算出する為に使用するコストデータ、リンクを通過するのに必要な旅行時間、経路探索により選択された経路を液晶ディスプレイ15の地図上に表示するための経路表示データ等から構成されている。
ここで、ノードコストは、交差点に対応するノードに対して基本的に設定されており、例えば、信号の有無や交差点を通過する際の自車の走行経路(即ち直進、右折及び左折の種類)によってその値が決定される。
また、リンクコストは、リンクを構成する道路属性や道路種別、道路幅、車線数、リンク長さに加え、VICS情報として取得する渋滞度等の交通情報に関するデータを用いて算出される。
【0046】
また、施設データとしては、各地域のホテル、病院、ガソリンスタンド、駐車場、観光施設、インターチェンジ、レストラン、サービスエリア等の建物に関するデータが建物を特定する施設IDとともに記録される。
【0047】
また、従属関係データとしては、各レイヤを構成する各リージョンについて、レイヤ間のリージョンの親子関係を特定するデータが記憶される。具体的には、レイヤ3のリージョンと、該リージョン内に含まれるレイヤ2のリージョンとを対応づけたデータと、レイヤ2のリージョンと、該リージョン内に含まれるレイヤ1のリージョンとを対応づけたデータとが記憶される。
【0048】
そして、ナビゲーション装置1は、出発地と目的地付近の地域では、出発地から目的地までの距離が短距離(例えば、3km程度)の経路探索の場合には、現在地周辺の最下層の地図データであるレイヤ1の地図データのみを使用して経路を探索する。
また、現在地から目的地までの距離が中距離(例えば、50km程度)の経路探索の場合には、現在地及び目的地周辺については最下層の地図データであるレイヤ1の地図データのリージョンを使用し、使用されたレイヤ1の地図データのリージョンに隣接するエリアは中間層の地図データであるレイヤ2の地図データのリージョンを使用して経路を探索する。
更に、現在地から目的地までの距離が長距離(例えば、300km程度)の経路探索の場合には、現在地及び目的地周辺の最下層の地図データであるレイヤ1の地図データのリージョンを使用し、使用されたレイヤ1の地図データのリージョンに隣接するエリアは中間層の地図データであるレイヤ2の地図データのリージョンを使用し、使用されたレイヤ2の地図データのリージョンに隣接するエリアは最上層の地図データであるレイヤ3の地図データのリージョンを使用して経路を探索する。また、特にレイヤ3については出発地と目的地の位置座標に基づいて、予め探索対象とするリージョンが設定される。
以上により、経路を探索の為の演算量を抑えることができ、経路探索に必要な時間を短縮することができる。
【0049】
また、上記中距離や長距離等の複数のレイヤを跨ぐ探索を行う場合には、図6に示すように、下位階層を構成するリージョン内での探索において、そのリージョンの境界ノード71まで達すると、その境界ノード71が含まれる上位階層のリージョンのノード(接続先ノード)72に上げて探索が続けられる。従って、図6に示す例では出発地73と目的地74を含むレイヤ1のリージョンと、レイヤ1の境界ノード71と接続されるレイヤ2の接続先ノード72を含むリージョンと、探索対象に設定されるレイヤ3のリージョン内で経路の探索が行われる。尚、境界ノード71は、レイヤ1とレイヤ2については、オーバーラップ領域63から退出するリンクの外側に接続されたノードとなる。一方、レイヤ3については、コア領域65から退出するリンクの内側に接続されたノードとなる。
【0050】
そして、本実施形態では、上述したようにレイヤ3の地図データはオーバーラップ領域が存在せず、コア領域65のみから構成される。従って、レイヤ2の境界ノード71からレイヤ3の接続先ノード72への連絡には、レイヤ2の境界ノード71にノード領域対応データ33を持たせる必要がある。
以下に、その理由について説明する。
図7及び図8は、レイヤ3の地図データにオーバーラップ領域を含めた比較例と、レイヤ3の地図データからオーバーラップ領域を削除した実施例についてそれぞれ示した図である。
【0051】
図7の比較例では、レイヤ2のリージョン81の親関係にあるレイヤ3のリージョン82(リージョン81を含むレイヤ3のリージョン)に、リージョン81の境界ノード83と同じノードを含む。従って、レイヤ2の境界ノード83からレイヤ3の接続先ノード84への連絡を行う際に、接続先ノード84を含むレイヤ3のリージョンが親関係にあるリージョン82となる。ここで、前記したようにレイヤ間のリージョンの親子関係を特定する従属関係データは地図データ32に含まれているので、レイヤ2の境界ノード83に“境界ノード83が接続される接続先ノード84を含むレイヤ3のリージョン”を対応づけるノード領域対応データ33を持たせる必要は無い。
【0052】
一方、図7の実施例では、レイヤ2のリージョン85の親関係にあるレイヤ3のリージョン86(リージョン85を含むレイヤ3のリージョン)には、リージョン85の境界ノード87と同じノードを含まず、隣接する他のリージョン88にリージョン85の境界ノード87と同じノードを含む。従って、レイヤ2の境界ノード87からレイヤ3の接続先ノード89への連絡を行う際に、接続先ノード89を含むレイヤ3のリージョンは親関係にないリージョン88となる。従って、レイヤ2の境界ノード87には、接続先ノード89との接続関係を特定する上位接続データに加えて“境界ノード87が接続される接続先ノード89を含むレイヤ3のリージョン88”を対応づけるノード領域対応データ33を持たせる必要がある。
また、前記したようにレイヤ3のオーバーラップ領域を削除した実施例では、レイヤ3の境界ノードはコア領域から退出するリンクの内側に接続されたノードとなるので、経路探索中にレイヤ2の境界ノードからレイヤ3の接続先ノードへと連絡する際に、探索経路が探索方向(例えば、目的地から出発地方向)と逆方向側に戻り、経路が重複する可能性がある。ノード領域対応データ33を境界ノード87に持たせることによって、このような経路の重複についても防止することが可能となる。
【0053】
一方、図8の比較例では、レイヤ2のリージョン91の親関係にあるレイヤ3のリージョン92(リージョン91を含むレイヤ3のリージョン)に、リージョン91の境界ノード93の接続先となる接続先ノード94は含まないが、接続先ノード94と接続されるノード95は必ず含む。従って、レイヤ2の境界ノード93からレイヤ3の接続先ノード94への連絡を行う際に、接続先ノード94に接続されるノード95を含むレイヤ3のリージョンが親関係にあるリージョン92となる。ここで、前記したようにレイヤ間のリージョンの親子関係を特定する従属関係データは地図データ32に含まれ、且つノード95と接続先ノード94の接続関係もノードデータとして記憶されているので、レイヤ2の境界ノード93に“境界ノード93が接続される接続先ノード94を含むレイヤ3のリージョン”を対応づけるノード領域対応データ33を持たせる必要は無い。
【0054】
一方、図8の実施例では、レイヤ2のリージョン96の親関係にあるレイヤ3のリージョン97(リージョン96を含むレイヤ3のリージョン)には、リージョン96の境界ノード98の接続先となる接続先ノード99は含まず、接続先ノード99と接続されるノード100も含まない場合がある。従って、レイヤ2の境界ノード98からレイヤ3の接続先ノード99への連絡を行う際に、接続先ノード99やノード100を含むレイヤ3のリージョンは親関係にないリージョン101となる。従って、レイヤ2の境界ノード98には、接続先ノード99との接続関係を特定する上位接続データに加えて“境界ノード98が接続される接続先ノード99を含むレイヤ3のリージョン101”を対応づけるノード領域対応データ33を持たせる必要がある。
また、前記したようにレイヤ3のオーバーラップ領域を削除した実施例では、レイヤ3の境界ノードはコア領域から退出するリンクの内側に接続されたノードとなるので、経路探索中にレイヤ2の境界ノードからレイヤ3の接続先ノードへと連絡する際に、探索経路が探索方向(例えば、目的地から出発地方向)と逆方向側に戻り、経路が重複する可能性がある。ノード領域対応データ33を境界ノード98に持たせることによって、このような経路の重複についても防止することが可能となる。
【0055】
そして、ナビゲーションECU13が経路を探索する際には、地図データにおける探索データ中の道路データを調査して、探索に使用されるメッシュに含まれる道路(リンク及びノード)についての探索コスト(ノードコスト及びリンクコスト)を計算して、経路を探索する。一般的には、目的地側から経路の探索が行われ、目的地側から出発地まで累積された探索コストを加算した値、即ち、コスト加算値が算出される。そして、探索条件(有料道優先、一般道優先、距離優先等)を変更し、各条件で最もコスト加算値が小さくなった経路をそれぞれ案内する。そして、ユーザによって選択された経路を誘導経路として設定する。また、2つのCPUにより出発地と目的地の両方から探索を行う探索方法を用いた場合には、出発地側及び目的地側から経路の探索が行われ、出発地側からの探索と目的地側からの探索とが重なった場合において、出発地側から累積された探索コストと目的地側から累積された探索コストとを加算した値、即ち、コスト加算値が算出される。
【0056】
続いて、前記構成を有するナビゲーション装置1においてCPU41が実行する経路探索処理プログラムについて図9に基づき説明する。図9は本実施形態に係る経路探索処理プログラムのフローチャートである。ここで、経路探索処理プログラムはナビゲーション装置1において経路探索を行う為の所定の操作(例えば、目的地の設定操作)を受け付けた際に実行され、出発地から目的地までの経路を探索するプログラムである。尚、以下の図9にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置1が備えているRAM42やROM43に記憶されており、CPU41により実行される。
【0057】
先ず、経路探索処理プログラムではステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU41は、受け付けたユーザの操作に基づいて出発地及び目的地を設定する。尚、出発地については車両の現在位置としても良い。
【0058】
次に、S2においてCPU41は、前記S1で設定された出発地と目的地に基づいて、探索対象とするレイヤ3のリージョンが設定される。具体的には、予め出発地及び目的地の位置座標と、検索対象とするリージョンとの対応関係を示すテーブルをRAM42等に記憶させておき、前記S1で設定された出発地及び目的地の位置座標とテーブルとに基づいて、検索対象とするリージョンを特定することにより行う。
【0059】
続いて、S3においてCPU41は、前記S1で設定された出発地から目的地までの経路の探索処理を行う。尚、レイヤ3については前記S2で設定されたリージョンのみを対象として経路探索が行われる。そして、複数の探索条件(有料道優先、一般道優先、距離優先等)でそれぞれコスト加算値の算出を行い、各条件で最もコスト加算値が小さくなった経路をそれぞれ案内する。例えば、液晶ディスプレイ15上に探索条件とともに経路の全体図を表示する。尚、一の探索条件だけを用い、最もコスト加算値が小さくなった一の経路のみを案内する構成としても良い。また、経路探索処理の詳細については既に説明したので省略する。
【0060】
その後、S4でCPU41は、前記S3で案内された経路の内、ユーザの操作等に基づいて選択された経路を案内経路に設定する。
【0061】
そして、S5においてCPU41は、設定された案内経路に従って液晶ディスプレイ15やスピーカ16を用いて走行の案内を行う。
【0062】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るナビゲーション装置1では、地図情報DB31に記憶される地図データ32は、後述のように道路網の情報量の差異に基づいて複数レイヤに階層化された構造し、各レイヤは複数の領域(リージョン)に分割されて記憶される。そして、レイヤ3のオーバーラップ領域を削除してレイヤ3のリージョン同士が重複しないようにし、レイヤ2の境界ノードには、レイヤ3の接続先ノードとの接続関係を特定する上位接続データに加えて、境界ノードが接続される接続先ノードを含むレイヤ3のリージョンを対応づけるノード領域対応データ33についても持たせるように構成するので、地図データのデータサイズを減少させ、経路探索処理の処理時間や処理負担を軽減させることが可能となる。また、経路の探索方向や探索時のCPUの状態によって、異なる経路が探索されることを防止できる。また、ノード領域対応データ33を記憶させることによって、レイヤ3のオーバーラップ領域を削除した場合でも、レイヤ3とレイヤ2との間のノードの接続を適切に行うことが可能となる。
また、オーバーラップ領域を削除するレイヤは、最も道路網の情報量の少ない最上位のレイヤ3とする。従って、レイヤ3においてオーバーラップ領域を削除した場合でも、レイヤ3とレイヤ3に連絡するレイヤ2との間のノードの接続を適切に行うことが可能となる。従って、出発地と目的地とが離れた位置にある場合であっても、レイヤ3を含む複数のレイヤを用いて、経路探索を適切に行うことが可能となる。
また、特に2つのCPUにより出発地と目的地の両方から探索を行う場合には、出発地と目的地が同一であっても探索時のCPUの状態によって探索を行う度に異なる経路が探索されることを防止できる。
出発地と目的地に基づいて特定された領域を対象として、出発地から目的地までの経路を探索するので、経路探索の為の演算量を抑えることができる。結果として、CPUの処理負担が軽減でき、また、経路探索に必要な時間を短縮することができる。
【0063】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では、オーバーラップ領域を削除するレイヤを最も道路網の情報量の少ない最上位のレイヤ3としているが、レイヤ3以外のレイヤについてオーバーラップ領域を削除しても良い。また、オーバーラップ領域を削除する対象とするレイヤは、複数層でも良い。
【0064】
また、レイヤの階層の数も、必ずしも3層である必要はなく、例えば2層や4層であっても良い。更に、地域毎にレイヤの階層の数が異なるようにしても良い。更に、各レイヤのリーションの形状(コア領域やオーバーラップ領域の形状)は適宜変更することが可能である、
【0065】
また、境界ノードは、レイヤ1とレイヤ2については、オーバーラップ領域から退出するリンクの外側に接続されたノードとし、レイヤ3については、コア領域から退出するリンクの内側に接続されたノードとしているが、他のノードを境界ノードとしても良い。例えば、レイヤ1とレイヤ2については、オーバーラップ領域から退出するリンクの外側に接続されたノードに、更に一また複数のリンクを介して接続されたノードを境界ノードとしても良い。
【0066】
また、本実施形態では本願発明をナビゲーション装置1に適用した例について説明したが、経路探索機能を有する装置であれば、携帯電話機等の携帯端末やパーソナルコンピュータ等に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 ナビゲーション装置
13 ナビゲーションECU
31 地図情報DB
32 地図データ
33 ノード領域対応データ
41 CPU
42 RAM
43 ROM
71、83、87、93、98 境界ノード
72、84、89、94、99 接続先ノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データを記憶する地図データ記憶媒体と、
前記地図データ記憶媒体に記憶された前記地図データに基づいて、出発地から目的地までの経路を探索する経路探索手段と、を有する経路探索装置であって、
前記地図データ記憶媒体は、
前記地図データを複数の領域に区分するとともに、道路網の情報量に基づいて複数のレイヤに階層化して記憶し、
前記地図データの領域毎に、該領域と対応する他のレイヤの領域とを関連付けた領域対応情報を記憶し、
前記複数のレイヤの内、特定レイヤの前記地図データを各領域が重複する重複エリアが生じないように記憶するとともに、前記特定レイヤ以外のレイヤの前記地図データを各領域が重複する重複エリアが生じるように記憶し、
前記特定レイヤ以外のレイヤの前記地図データに含まれるノードの内、前記重複エリアから退出するリンクに接続されたノードである境界ノードと、該境界ノードが接続されるノードである接続先ノードを含む前記特定レイヤの領域とを対応付けるノード領域対応情報を記憶することを特徴とする経路探索装置。
【請求項2】
前記特定レイヤは、前記複数のレイヤの内、最も道路網の情報量の少ない最上位レイヤであることを特徴とする請求項1に記載の経路探索装置。
【請求項3】
前記ノード領域対応情報は、前記複数のレイヤの内、前記最上位レイヤの次に道路網の情報量が少ない次上位レイヤの前記境界ノードと、前記接続先ノードを含む前記最上位レイヤの領域とを対応付けることを特徴とする請求項2に記載の経路探索装置。
【請求項4】
前記経路探索手段は、
前記出発地側及び前記目的地側から経路の探索を行い、前記出発地側からの探索と前記目的地側からの探索とが重なった場合において、前記出発地側から累積された探索コストと前記目的地側から累積された探索コストとを加算したコスト加算値を算出するコスト算出手段と、
前記コスト算出手段により算出された前記コスト加算値に基づいて、前記出発地から前記目的地までの経路を設定する経路設定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の経路探索装置。
【請求項5】
前記出発地及び前記目的地に基づいて、前記地図データの内、探索対象とする領域を設定する探索対象領域設定手段を有し、
前記経路探索手段は、前記探索対象領域設定手段によって設定された領域を対象として、前記出発地から前記目的地までの経路を探索することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の経路探索装置。
【請求項6】
経路探索装置の経路探索に用いられる地図データであって、
複数の領域に区分されるとともに、道路網の情報量に基づいて複数のレイヤに階層化され、
前記領域毎に、該領域と対応する他のレイヤの領域とを関連付けた領域対応情報を含み、
前記複数のレイヤの内、特定レイヤは各領域が重複する重複エリアを生じることなく、前記特定レイヤ以外のレイヤは前記地図データの各領域が重複する重複エリアを生じ、
前記特定レイヤ以外のレイヤに含まれるノードの内、前記重複エリアから退出するリンクに接続されたノードである境界ノードと、該境界ノードが接続されるノードである接続先ノードを含む前記特定レイヤの領域とを対応付けるノード領域対応情報を含むことを特徴とする地図データ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−117868(P2012−117868A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266335(P2010−266335)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】