説明

経路探索装置

【課題】階層化された地図データを用いて経路探索を行う場合に、下位層の個々のリンクに付された速度を出しやすい道路であることを示す快速道路情報を、個々の複数のリンクを統合した上位層のリンクに正確に反映させ経路探索をする。
【解決手段】上位層の地図データに下位層の地図データにおける複数のリンクに相当するリンクがあり、その複数のリンクを統合して上位層のリンクと置換する場合に、下位層の各リンクの快速道路情報を取得するとともに、統合するリンク全体に対して、快速道路の占める割合を算出し、その割合に応じて置換したリンクの通過コストを減少させて経路探索を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路地図上の任意の2点間の最適な経路を探索する経路探索装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より経路探索機能を有するナビゲーション装置において、道路地図上の任意の2点間(出発地−目的地間)の推奨経路を探索する際に、道路データを構成する各リンク及び各ノードに通過しやすさを示す通過コストを設定し、この通過コストの合計が最小となる経路をダイクストラ法などの経路探索手法を用いることによって算出している。この通過コストは、リンク及びノードに付与されているリンク長さ、道路幅、道路種類、交差点種類などの情報により決められる。しかし、このように算出された経路であっても、実際に走行してみると他の道路のほうがより速く走行することができる場合がある。例えば、比較的に昔に整備され交差点や交通信号器が多い国道と、比較的最近になって整備され交差点や交通信号器が少ない県道がほぼ平行して存在していた場合は、従来では県道よりも国道のほうをコストを低く設定して国道を含んだ経路を算出するが、実際は、交差点、交通信号器が少ない県道を含んだ経路のほうが速く走行できる。このような問題点を鑑みて、特許文献1に記載のナビゲーションシステムでは、各リンクに対して実際に走行する際に走りやすく走行速度の高い快速道路であるか否かを図4の項目に該当するか否かに基づいて判定し、快速道路であると判定されたリンクに対しては通過コストを低くして経路探索を行っている。これにより、実際の道路環境を反映した推奨経路を算出することができる。
【0003】
また従来より、効率よく経路探索をするために、地図データを構成する道路種類が異なる複数の階層に分けて記憶しておき、経路を探索する範囲により適宜この階層化された地図データの一つまたは複数を用いて経路探索を行うとともに、上位の階層の地図データを用いるときは適宜下位の地図データのリンクを統合している。特許文献1に記載のナビゲーションシステムでは、複数のリンクを一つに統合する場合には、この複数のリンクを一つのリンクとみなして上記の快速道路であるか否かを判定している。これにより、下位の複数のリンクを統合されたような上位の階層の地図データを用いる場合においても快速道路を考慮に入れた経路探索を可能にしている。
【特許文献1】特開2003−279365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、特許文献1の発明では、実際の道路環境を反映した経路を探索するために、道路データを構成する各リンクに対して快速道路であるか否かを所定の条件に基づいて判定し、快速道路であると判定されたリンクに対しては通過コストを低くして経路探索を行っている。また複数のリンクを統合する場合であってもその統合されるリンクに対して快速道路であるか否かを判定することにより、例えば複数の下位のリンクを統合したような上位のリンクに対しても快速道路を考慮した経路探索を可能にしている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明では複数のリンクを統合する場合に、そのリンク全体に対して快速道路であるか否かを判定している。このため、例えば下位の層のある道路に対して一部だけが高架となっているため快速道路と判定され、その他は快速道路でないと判定されている場合でも、これらの複数のリンクを一つに統合したときこの道路全体が快速道路であるもしくは快速道路ではないと判定されてしまう。
【0006】
本発明は、以上の問題点を鑑みてなされたものであり、階層構造を有する地図データを用いて経路探索を行う場合に、下位のリンクに対して判定された快速道路情報をより正確に上位の層に反映して経路探索を行う経路探索装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の経路探索装置は、道路を複数のリンクにより示した道路地図データを記憶する道路地図データ記憶手段と、快速道路に該当するリンクを識別する識別手段と、少なくとも前記識別手段による識別結果を考慮して、前記道路地図データにおける各リンクに付与するコストを決定するコスト決定手段と、前記リンクコストが最小となるように、出発地から目的地までの経路を探索する経路探索手段とを備える経路探索装置において、前記道路地図データは、道路種別に応じて複数の階層に分けられており、下位の階層には、それよりも上位の階層に属するリンクに対応する道路の種別の数よりも多い数の種別の道路に対応するリンクが属し、前記経路探索手段が探索する経路が複数の階層のリンクによって構成され、下位の階層に属する複数のリンクが統合されて、上位の階層に属するリンクに置き換え可能である場合、このリンク統合の際に、下位の階層に属する複数のリンク各々に関する前記識別手段による識別結果に基づいて、統合されるリンクの中で快速道路に該当するリンクの割合を算出する算出手段を備え、前記コスト決定手段は、前記算出手段によって算出された快速道路に該当するリンクの割合に応じて、統合リンクのコストを決定することを特徴とする。
【0008】
このように請求項1の経路探索装置では、複数の階層にわたる地図データを用いて経路探索を行う場合であって、下位の階層に属する複数のリンクを統合して上位の階層のリンクに置き換え可能である場合、この統合リンク全体に対して、快速道路であるか否かを識別するのではなく、快速道路の占める割合を下位の階層の各リンクの快速道路情報に基づいて算出する。そして、この割合に応じて統合リンクの通過コストを決定し、経路探索を行う。従って、複数のリンクを統合する場合であっても、下位の階層の地図データの詳細な快速道路情報を反映した正確な経路探索装置を実現することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の経路探索装置は、前記コスト決定手段は、前記快速道路に該当するリンクの割合が高くなるほど、その統合リンクのコストを低減することを特徴とする。これにより、経路探索過程において快速道路の割合が高い統合リンクが選択されやすくなり、より正確に目的地までの最短経路を探索することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態についてナビゲーション装置として実現した例で説明する。
【0011】
図1は、本実施形態におけるナビゲーション装置100の全体構成を示すブロック図である。同図に示すようにナビゲーション装置100は、位置検出器1、地図データ入力器6、操作スイッチ群7、外部メモリ9、表示装置10、リモコンセンサ11、リモコン12、及びこれらと接続する制御回路8から構成される。以下各構成部品について説明する。
【0012】
制御回路8は、通常のコンピュータとして構成されており、内部には周知のCPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスラインが備えられている。ROMには、制御回路8が実行するためのプログラムが書き込まれており、このプログラムに従ってCPU等が各種演算処理を実行する。なお、このプログラムは、外部メモリ9を介して外部から取得することもできる。本実施形態では特に目的地までの最短経路を探索する処理をする役割を担っている。
【0013】
位置検出器1は、いずれも周知の地磁気センサ2、ジャイロスコープ3、距離センサ4、及び衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPS(Global Positioning System)のためのGPS受信機5を有している。これらは、各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、各センサの精度によっては位置検出器1を上述した一部で構成してもよく、更に、図示しないステアリングの回転センサ、各転動輪の車速センサ等を用いてもよい。なお、本実施形態では所定の目的地までのナビゲーションを行う場合に、後述の算出された推奨経路から外れないように誘導するために、この位置検出器1により車両の現在地を検出している。
【0014】
地図データ入力器6は、地図データ、背景データ、目印データ等を含む各種データを入力するための装置である。各種データを記憶する記憶媒体としては、CD−ROMやDVD−ROM等の再生専用の記憶媒体の他、メモリカードやハードディスク等の書き込み可能な記憶媒体を用いることもできる。本実施形態の地図データは、図2に示すように三つの階層に分かれた階層構造となっている。最下位層の地図データは、所定の範囲(例えば20km四方)の領域をカバーした複数のブロックからなり、例えば、高速道路、国道、地方主要道、県道、細街路などからなる詳細道路データから構成されている。中間層の地図データは、所定の範囲(例えば100km四方)の領域をカバーした複数のブロックからなり、例えば、高速道路、国道、地方主要道からなる基本道路データから構成されている。また、中間層の一つのブロックがカバーする範囲は、最下位層の複数のブロックを組み合わせたものと同じになる。最上位層の地図データは、一つのブロックからなり、全国の高速道路と主要国道のみからなる幹線道路データから構成されている。この一つのブロックがカバーする範囲は全国であるので、中間層又は最下位層の地図データにおける全てのブロックを組み合わせた範囲と同じになる。そして、本実施形態における経路探索は、目的地が設定された場合、先ず出発地が属している最下位層のブロックの地図データを用いて目的地までの経路探索を試みる。そして、もしこのブロック内に目的地を発見できなかったときは、このブロックの上位の階層である中間層のブロックの地図データを用いて引き続き経路探索が行われる。このとき、目的地がこの中間層のブロックに含まれるときには、目的地周辺に達するまでの経路はこの中間層の地図データを用いて探索をし、目的地周辺の経路は目的地が属している最下位層のブロックの地図データを用いて探索する。また、目的地がこの中間層のブロック内に発見できなかったときには、さらに上位の階層である最上位層のブロックの地図データを用いて引き続き経路探索が行われる。この場合も、目的地周辺に達するまでの経路はこの最上位層の地図データを用いて探索し、目的地周辺に達したときは中間層の地図データを用い、さらに目的地近傍に達したときは最下位層の地図データを用いて探索する。このように、探索範囲によって異なる階層の地図データが用いられる。これにより一つの詳細な地図データのみで探索を行うよりも探索するデータ量を減らすことができるので効率的に探索をすることができる。なお、本実施形態では、地図データは上記のように三層に分割されているが、何層に分割してもよく、また各階層の地図データはどのような種類の道路で構成してもよい。
【0015】
また上記各階層の地図データは、複数のリンク及びノードから構成される。リンクとは、地図上の各道路を交差・分岐・合流する点等の複数のノードによって分割され、それぞれのノード間をリンクとして規定されるものであり、リンクを接続することにより道路が構成される。図3に、リンクデータのフォーマットを示す。同図に示すように、リンクデータは、リンクを特定する固有番号(リンクID)、リンクの長さを示すリンク長、リンクの始端と終端の座標、東名高速道路や名神高速道路等の道路名称、高速道路、有料道路、一般道路等の道路種別、国道1号線、県道56号線、町道32号線等の国や地方自治体が道路ごとに割り当てる道路番号、道路幅、及び後述する走行しやすい道路であるか否かを示す快速道路フラグの有無の各データから構成されている。なお、リンクIDは、例えば、国道1号線等の道路番号が同一であるリンクに対しては、連続した番号を付すことが望ましい。
【0016】
ノードデータ(図示せず)は、地図上の各道路が交差、合流、分岐するノードごとに固有の番号を付したノードID、ノード座標、ノード名称、ノードに接続する全てのリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、交差点種類等の各データから構成されている。また、各階層の各ブロックには上位層又は下位層に接続する複数の接続ノードが設定されており、経路の探索範囲が広範囲の場合には、この接続ノードを介して異なる階層の道路データを用いて探索をすることができる。
【0017】
そして目的地までの経路を探索する際には、これら各リンク及びノードごとに通過しやすさを示す通過コストが算出される。この通過コストは、各リンクの特性(リンク長、道路種、道路幅等)及び各ノードにおける直進、右左折の種別に応じて算出される。そして、出発地から目的地までの任意の経路に対して、各経路を構成する各リンク及び各ノードの通過コストの加算値が最小となる経路がダイクストラ法などの経路探索手法などを用いて探索される。詳細は後述する。
【0018】
なお、本実施形態では、上記快速道路フラグを有している場合には、そのリンクの通過コストを減少させる。ここで快速道路とは、実際に走行したときに速い速度で走行できる道路のことをいい、例えば図4に示す項目(特許文献1を引用)の一つ又は複数に該当するか否かによって快速道路であるか否かが決められている。従って、各リンクに対し快速道路であるか否かを考慮することにより、例えば、比較的に昔に整備され交差点や交通信号器が多い国道と、比較的最近になって整備され交差点や交通信号器が少ない県道がほぼ平行して存在していた場合は、国道ではなく県道を含んだ経路が選択されるので、より正確に目的地までの短時間で達することができる経路を探索することができる。なお、各リンクが快速道路であるか否かは、経路探索の際に例えば図4に示す項目に該当するか否かを判別することにより決めてもよい。
【0019】
操作スイッチ群7は、例えば、後述する表示装置10と一体になったタッチスイッチもしくはメカニカルなスイッチ等が用いられ、経路探索の際の出発地及び目的地の設定等各種入力に使用される。
【0020】
表示装置10は、例えば液晶ディスプレイによって構成され、表示装置10の画面には位置検出器1から入力された車両の現在位置に対応する自車位置マークと、地図データ入力器6より入力された地図データ、背景データ、目印データ等によって生成される車両周辺の道路地図を表示することができる。また、操作スイッチ群7や後述するリモコン12等の操作により、道路地図を所定の縮尺に変更して表示したり、道路地図をスクロールして表示したりすることも可能である。さらに本実施形態では、操作スイッチ群7やリモコン12等から出発地及び目的地を入力すると、上述の地図データを用いて、出発地から目的地までのコストの合計が最小の経路を自動的に探索して案内経路を計算して表示装置10へ表示する。
【0021】
リモコン12は、例えば各種機能を備えた多機能リモコンであり、リモコンセンサ11を介して、ナビゲーション装置100に各種ナビゲーション動作の開始や終了を指示する。前述の指示に関しては、操作スイッチ群7によって行ってもよい。
【0022】
ここで、本実施形態における経路を探索する処理を図5のフローチャート及び図6の複数の階層の地図データを用いて経路探索を行う概念図を用いて説明する。先ず出発地及び目的地を操作スイッチ群7又はリモコン12等により設定する(ステップS10)。なお、出発地については、位置検出器1により検出される現在地を自動的に出発地に設定してもよい。そしてステップS20では、最下位層の地図データから出発地が属しているブッロク(図6のブッロク1)を読み出す処理を行う。なお、このブロックは上述したように例えば20km四方の詳細道路データから構成されている。その後、出発地を起点にしてダイクストラ法などの経路探索手法を用いて経路探索を開始する(ステップS30)。このとき、出発地から順にリンク及びノードに通過コストを付与していき経路を確立していく。なお、この通過コストは上述したように基本的には各リンクに付されているリンク長、道路種別、道路幅等及び各ノードにおける直進、右左折の種別によって決定されるが、リンクが快速道路に該当する場合にはこの通過コストは減少される。
【0023】
ここで、目的地がこのブロックに含まれているときは、このまま目的地までのコストの合計が最小となる経路を探索する(ステップS40肯定判定→ステップS80肯定判定→ステップS120)。
【0024】
一方、出発地と目的地間の距離が遠距離の場合、すなわち出発地を含む最下位層のブロックに目的地が含まれていない場合(ステップS40否定判定)は、中間層の地図データへ探索を引き継ぐために、中間層のブロックと接続する接続ノードまでのコストの合計が最小の経路を探索する(ステップS50)。この接続ノードを介して上位のブロックにこの接続ノードまでのコストの合計値等の探索に関する情報を受け渡し、上位の階層のブロックに経路探索を引き継ぐことができる。なお、一つのブロックは複数の接続ノードを有しており、最終的にどの接続ノードを介する経路のコストが最小であるかは目的地までの経路を確立しないと決まらないので、各接続ノードを介する経路についてそれぞれ目的地までの経路を探索する。例えば、図6に示すように出発地が含まれているブロック1に中間層のブロック2に接続する接続ノードが2つ有るとすると、この2つの接続ノードを介する経路それぞれについて経路探索を行う。
【0025】
ステップS60では、出発地が属している中間層のブロック(図6のブロック2)を読み出す処理を行う。その後経路探索を接続ノードから再開する(ステップS70)。このとき、この接続ノードには、上述したように下位層の経路探索の情報が引き継がれる。また、中間層の各リンクは、最下位層の複数のリンクを統合したものと共通になっていることがあるので、このような場合には探索時間の効率化の観点から一つのリンクに統合される。例えば、図7に示すように、最下位層のリンクL1、L2、L3及びこれらを接続するノードN1、N2、N3、N4からなる道路が中間層の地図データを構成する道路種類に該当する場合には、中間層の地図データにはリンクL1〜L3に相当するリンクL10が記憶されていることがある。つまり、統合することにより中間層のリンクL10と置換可能となる。同様な考えで中間層の複数のリンクが統合され最上位層のリンクに置換される。これにより、中間層、最上位層を用いるような広範囲な経路探索を行う場合であっても、使用するリンク数を減らすことができるので探索時間を抑えることができる。さらに、本実施形態では、複数のリンクを統合した場合にはこの統合されたリンクの快速道路を占める割合を統合される前の個々のリンクの快速道路情報に基づいて算出し、この割合に応じて各リンクの通過コストが減少されて経路探索が行われる。この割合の算出方法は後述する。
【0026】
ここで、ステップS50〜S70の処理は、読み出したブロック内に目的地が含まれるようになるまで繰り返される。本実施形態では、地図データが三層構造となっているので、読み出した中間層のブロック内に目的地が含まれている場合、または最上位層のブロックを読み出した場合にステップS40にて肯定判定されステップS80へ進む。
【0027】
ステップS80では、現時点探索しているブロックが最下位層のブロックであるか否かを判定する。例えば、図6に示すように最上位層のブロック(ブロック3)を探索している場合は、このステップS80にて否定判定されステップS90へ処理が進む。ステップS90では、目的地を含む下位層のブロックへの接続ノードまでのコストが最小となる経路を探索する。この場合も上述したように下位層のブロックに接続する接続ノードは複数有るので、各接続ノードごとに経路を探索していく。そして、ステップS100において、目的地が属している下位層のブロックを読み出し、その下位層のブロックの接続ノードから経路探索を再開する(ステップS110)。ステップS90〜S110の処理は、目的地が属している最下位の層のブロックを読み出すまで繰り返される。この最下位層のブロックを読み出したときは、ステップS80にて肯定判定され、その後目的地までの経路が探索される(ステップS120)。このようにして目的地までの経路を複数探索し、その中から最も合計のコストが少ない経路を最適経路として選択する。例えば、図6に示すように、出発地から目的地までの経路が2つ探索されたときは、これら2つの経路の合計コストを比較し、少ないほうを最適経路であると判定する。
【0028】
以下、本発明の特徴である、複数のリンクを統合した場合にその統合したリンクの快速道路の占める割合の算出方法について図7及び図8を用いて説明する。上述したように、本実施形態では、異なる階層の地図データを使用して経路探索を行う際、すなわち中間層又は最上位層の地図データを使用して経路探索を行う際に、下位層の地図データを構成する所定の複数のリンクを一つのリンクに統合し、上位層のリンクと置き換える。
【0029】
図7に示す最下位層に属している各リンク(L1〜L5)に対してこれらのリンク長及び快速道路フラグの有無が図8に示すように設定されているとする。これら各リンクが中間層で図7のようにL10(L1とL2とL3を統合)及びL20(L4とL5を統合)の2つのリンクに置き換えたとする。なお、どのリンクを統合し置き換えるかは、例えば下位層では他のリンクが分岐等されているためノードが付与されている場合あって上位層ではこの他のリンクが含まれなくなったときには、この他のリンクを接続していたノードを省略して一つのリンクに統合し上位層のリンクと置き換える。このとき、L10のリンク長は、L1、L2、L3の各リンクのリンク長を合計したものであるので、図8に示すように550となる。この中で、快速道路は、図8よりL1及びL3が快速道路であるのでこれらのリンク長を合計して450を占めている。従って、L10の快速道路の占める割合は、450÷550=0.82となり、この割合がL10に付される。また、L20に対しては、図8よりL4、L5のいずれも快速道路ではないので、快速道路フラグは付されない。さらに、図7に示すようにL10とL20が最上位層で、一つのリンクL100に統合し置き換えられたとすると、上記と同様にL100の全体長から快速道路の占める割合を算出すると、図8に示すように0.60となる。したがって、最上位層に属するリンクに対しても最下位層に属する各リンクの快速道路情報が反映されることとなる。そして、このようにして算出された快速道路の割合に応じて、各リンクの通過コストを減少させて経路探索を行う。
【0030】
なお、異なる階層の地図データを用いて経路探索がなされる場合、上述のように下位層でなされたコストの合計値は接続ノードを介して上位層に引き継がれ、上位層においてはこの接続ノードから経路探索が再開される。しかしながら、この下位層でなされた経路を構成する各リンクを一つのリンクに統合して上位層のリンクとして、上位層においてあらためて出発地から経路探索を再開してもよい。この統合されたリンクも、同様に各リンクの快速道路情報に基づいて、快速道路の割合が付されることになる。
【0031】
以上のように、本実施形態におけるナビゲーション装置では、上位層の地図データを用いて経路探索を行う場合であっても、下位層の地図データの個々のリンクの快速道路情報を反映することができるので、従来に比べてより正確な最適経路を探索することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態に係わる、ナビゲーション装置100の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係わる、地図データの階層構造を示す図である。
【図3】本実施形態に係わる、リンクデータのフォーマットを示す図である。
【図4】本実施形態に係わる、快速道路を判定する項目を示す図である(特許文献1を引用)。
【図5】本実施形態に係わる、経路探索を行う処理を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態に係わる、階層化された地図データを用いて経路が探索されたことを示す図である。
【図7】本実施形態に係わる、再下位層の複数のリンクを上位層で一つのリンクに統合されることを示す図である。
【図8】複数のリンクを統合された場合に、その統合されたリンクのリンク長と快速道路の占める割合の示す図である。
【符号の説明】
【0033】
100 ナビゲーション装置
1 位置検出器
2 地磁気センサ
3 ジャイロスコープ
4 距離センサ
5 GPS受信機
6 地図データ入力器
7 操作スイッチ群
8 制御回路
9 外部メモリ
10 表示装置
11 リモコンセンサ
12 リモコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を複数のリンクにより示した道路地図データを記憶する道路地図データ記憶手段と、
快速道路に該当するリンクを識別する識別手段と、
少なくとも前記識別手段による識別結果を考慮して、前記道路地図データにおける各リンクに付与するコストを決定するコスト決定手段と、
前記リンクコストが最小となるように、出発地から目的地までの経路を探索する経路探索手段とを備える経路探索装置において、
前記道路地図データは、道路種別に応じて複数の階層に分けられており、下位の階層には、それよりも上位の階層に属するリンクに対応する道路の種別の数よりも多い数の種別の道路に対応するリンクが属し、
前記経路探索手段が探索する経路が複数の階層のリンクによって構成され、下位の階層に属する複数のリンクが統合されて、上位の階層に属するリンクに置き換え可能である場合、このリンク統合の際に、下位の階層に属する複数のリンク各々に関する前記識別手段による識別結果に基づいて、統合されるリンクの中で快速道路に該当するリンクの割合を算出する算出手段を備え、
前記コスト決定手段は、前記算出手段によって算出された快速道路に該当するリンクの割合に応じて、統合リンクのコストを決定することを特徴とする経路探索装置。
【請求項2】
前記コスト決定手段は、前記快速道路に該当するリンクの割合が高くなるほど、その統合リンクのコストを低減することを特徴とする請求項1に記載の経路探索装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−29812(P2006−29812A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204954(P2004−204954)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】