説明

経路案内システムおよび車載ナビゲーション装置

【課題】車両と公共交通機関とを組み合わせた経路を案内する際に、出発時の待ち時間および経路途中での待ち時間を短縮する。
【解決手段】ナビゲーション装置2の制御部5は、経路探索部6により目的地までの経路探索を開始するとともに、経路情報配信装置3に対し現在地と目的地の情報を送信して経路探索させる。経路探索部6による経路探索終了後に経路案内を行い、その途中で経路情報配信装置3から移動経路を受信すると、案内経路を当該受信した経路に置き替える。経路探索部6、17は、利用可能な公共交通機関および乗り換え地点を検索し、現在地から乗り換え地点までの移動経路を探索して乗り換え地点での待ち時間を算出し、その待ち時間が最短となる経路を選択する。経路探索部17は、時刻表情報のみならず公共交通機関の運行情報に基づいてより正確な待ち時間を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センターに設置された経路情報配信装置と車載端末装置とで構成される経路案内システムおよびその車載端末装置として用いられる車載ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
出発地から目的地まで車両と公共交通機関とを利用した経路案内を提供するマルチモーダル経路案内サービスが提案されている(特許文献1ないし3参照)。例えば特許文献1に記載された経路探索装置は、出発地から目的地までの車両による移動経路を探索するとともに、その移動経路に沿った領域内に存在する公共交通機関への乗り継ぎ地点を探索する。これにより、出発地から車両で乗り継ぎ地点まで移動し、乗り継ぎ地点から目的地まで公共交通機関で移動する経路を提供できる。この経路探索では、自動車優先、公共交通機関優先、料金優先、時間優先などの優先基準、出発地と乗り継ぎ地点との距離や所要時間の基準を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4419542号公報
【特許文献2】特許第4420471号公報
【特許文献3】特許第3367514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両や公共交通機関などを組み合わせたマルチモーダル経路案内では、車両移動のみを考慮すれば足りる車両用経路探索とは異なり、移動手段が増えたことによる乗り換えの問題が生じる。従来の経路探索方法により出発地(例えば自宅)から最寄りの駅までの車両移動時間を短縮することができても、到着した駅での列車の待ち時間が長いと、ユーザは失望感と焦燥感を募らせることになる。列車の出発時刻を知らずに駅に到着した場合や予定していた列車が延着、運休した場合は尚更である。
【0005】
列車の遅れを考慮しなければ、車載端末装置に公共交通機関の時刻表情報を備え、案内経路とともに発車時刻をユーザに提供する方法が考えられる。列車の遅れや運休などにも対応するには、自宅出発時に車載端末装置が列車の運行時刻と運行状況をセンターに問い合わせ、その応答を待って案内経路、駅への到着時刻および列車情報をユーザに知らせる方法が考えられる。
【0006】
しかし、この方法ではユーザ自らが駅への到着時刻と列車情報を参照して自宅出発時刻を調整しなければならず、それが面倒であるが故に直ちに出発して駅で待つことになる。また、センターへの問い合わせには、通信時間およびセンターでの処理待ち時間が発生する。車載端末装置がセンターから送られてくる情報を受けて経路を探索し、その経路探索が完了するまでの間、ユーザは移動を開始できず無駄な待ち時間が生じる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、車両と公共交通機関とを組み合わせた経路を案内する際に、出発時の待ち時間および経路途中での待ち時間を短縮できる経路案内システムおよびそれに用いる車載ナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した手段によれば、センターに設置された経路情報配信装置と車載端末装置とにより、車両と公共交通機関とを組み合わせた経路案内を提供する。センターの経路情報配信装置は、道路地図情報、道路を通行するときの障害の発生状況を示す交通情報、公共交通機関の路線図情報、時刻表情報および現在の運行情報を取得可能に構成され、経路探索の現在地と目的地の情報を受信する受信手段と、経路探索手段と、探索した移動経路情報を車載端末装置に送信する送信手段とを備えている。
【0009】
一方、車載端末装置は、道路を通行するときの障害の発生状況を示す交通情報、公共交通機関の路線図情報および時刻表情報を取得可能に構成され、道路地図情報が格納された道路地図情報保持手段と、車両の現在地を検出する位置検出手段と、経路探索手段と、設定された案内経路に従って案内する経路案内手段と、経路情報配信装置に対し経路探索の現在地と目的地の情報を送信する送信手段と、経路情報配信装置から移動経路情報を受信する受信手段と、制御手段とを備えている。
【0010】
車載端末装置の制御手段は、現在地と目的地が与えられると、自らの経路探索手段により現在地から目的地までの経路探索を開始するとともに、経路情報配信装置に対し現在地と目的地の情報を送信する。車載端末装置の経路探索手段は、道路地図情報および路線図情報に基づいて現在地から目的地までの移動で利用可能な公共交通機関およびその乗り換え地点を検索し、道路地図情報および交通情報に基づいて現在地からその乗り換え地点までの車両による移動経路を探索して当該乗り換え地点への到着時刻を算出し、公共交通機関の時刻表情報に基づいて当該乗り換え地点での待ち時間を算出する。そして、その待ち時間が最短となる乗り換え地点と車両移動経路を選択することにより現在地から目的地までの移動経路を探索する。
【0011】
一方、センターの経路情報配信装置が現在地と目的地を受信すると、その経路探索手段は、車載端末装置の経路探索手段とほぼ同様にして移動経路を探索する。ただし、到着時刻を算出した後、公共交通機関の時刻表情報のみならず現在の運行情報に基づいて乗り換え地点での待ち時間をより正確に算出する点を異にする。
【0012】
車載端末装置は、自らの経路探索手段による経路探索が終了する前に経路情報配信装置から移動経路情報を受信した場合には、経路探索を中止して当該受信した移動経路を案内経路に設定して経路案内手段により経路案内を開始する。一方、自らの経路探索手段による移動経路の探索が終了した後に経路情報配信装置から移動経路情報を受信した場合には、案内経路を当該受信した移動経路に置き替えて経路案内手段による経路案内を行う。
【0013】
本手段によれば、目的地が与えられると車載端末装置が経路探索を開始するので、ユーザは、その経路探索が完了すると直ちに経路案内に従って出発することができ、出発時の待ち時間を極力短くできる。また、その場合の案内経路は、乗り換え地点での待ち時間が最短となる移動経路なので、ユーザ自らが出発時刻を調整しなくても経路途中で長く待たされることがなくなる。
【0014】
さらに、車載端末装置は、自ら経路探索を実行するのと並行してセンターの経路情報配信装置にも経路探索を実行させる。経路情報配信装置が探索した移動経路は、最新の情報すなわち公共交通機関の現在の運行情報をも考慮しているためより正確である。従って、ユーザは、車載端末装置で探索された案内経路に従って出発しても、案内途中でより正確な情報に基づく案内経路を提供されるので、公共交通機関に遅れや運行取り止め等が生じても経路途中での待ち時間を極力短くできる。
【0015】
請求項2に記載した手段によれば、経路情報配信装置の経路探索手段および/または車載端末装置の経路探索手段は、乗り換え地点での待ち時間よりも目的地への到着時刻を優先して乗り換え地点と車両移動経路を選択する。また、同じ列車を利用するなど目的地への到着時刻が同じ場合には、乗り換え地点での待ち時間が最短となる乗り換え地点と車両移動経路を選択する。これにより、到着時刻の遅い列車利用、過度の迂回、渋滞道路へ進入など、経路探索手段が乗り換え地点での待ち時間を短縮するのに不適切な経路探索を防止することができる。
【0016】
請求項3に記載した手段によれば、経路情報配信装置の経路探索手段および/または車載端末装置の経路探索手段は、現在地からの移動距離が短いものから順に所定数だけ乗り換え地点を検索し、これら乗り換え地点について算出した待ち時間が何れも許容待ち時間を超える場合、乗り換え地点について算出した待ち時間が許容待ち時間以下となるまで、現在地からの移動距離が次に短い乗り換え地点を順次検索する。これにより、経路探索の処理負担を軽減することができるとともに、乗り換え地点の待ち時間が許容待ち時間以下となる経路を案内することができる。
【0017】
請求項4に記載した手段によれば、経路情報配信装置の経路探索手段および/または車載端末装置の経路探索手段は、乗り換え地点で駐車に要する時間、駐車場所から公共交通機関の乗降場所までの徒歩移動時間および乗車券の購入時間のうち少なくとも一の時間を加えて乗り換え地点での待ち時間を算出する。これにより、乗り換え地点の待ち時間の精度をより高めることができる。
【0018】
請求項5に記載した手段によれば、センターの経路情報配信装置は、各道路を分割して得られるリンクごとに道路地図情報および交通情報に基づいて予測した車両のリンク移動時間が格納された予測リンク移動時間保持手段を備える。経路情報配信装置の経路探索手段は、現在地から公共交通機関への乗り換え地点までの車両による移動経路について、予測リンク移動時間を積算することにより乗り換え地点への到着時刻を算出する。このように各道路の予測リンク移動時間を収集し保持しておくことにより、経路情報配信装置は、探索要求に対してより正確な移動経路をより短い応答時間で提供することができる。
【0019】
請求項6に記載した手段によれば、センターの経路情報配信装置は、車両のリンク移動時間を予測する際にその確度を求め、予測リンク移動時間と確度情報とを関連付けて予測リンク移動時間保持手段に格納する。経路情報配信装置の経路探索手段は、確度の高い予測リンク移動時間を優先的に採用することにより乗り換え地点への到着時刻を算出するので、乗り換え地点への到着時刻ひいては乗り換え地点での待ち時間をより正確に求めることができる。
【0020】
請求項7に記載した手段によれば、車載端末装置の制御手段は、当該車載端末装置の経路探索手段による移動経路の探索が終了した後に経路情報配信装置から移動経路情報を受信した場合、案内経路をその受信した移動経路に置き替えるようにユーザ等から指令を受けたことを条件として、案内経路を受信した移動経路に置き替えて経路案内手段による経路案内を続行する。これにより、ユーザは、既に提供されている案内経路に従ってそのまま進行するか、センターから送られてきた案内経路に切り替えるかを選択可能になる。
【0021】
請求項8−12に記載した手段は、それぞれ請求項1−4、7に記載した経路案内システムの車載端末装置として用いられる車載ナビゲーション装置である。これらの車載ナビゲーション装置によっても、上記対応する経路案内システムと同様の作用を奏し、同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態を示す経路案内システムの機能ブロック図
【図2】ナビゲーション装置の制御部が実行する経路案内処理のフローチャート
【図3】ナビゲーション装置の経路探索部が実行する経路探索処理のフローチャート
【図4】センターの経路情報配信装置が実行する経路探索処理のフローチャート
【図5】予測リンク移動時間と確度の算出処理を示すフローチャート
【図6】探索された移動経路の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、経路案内システムの全体構成を機能ブロックにより示している。この経路案内システム1は、車両(自動車)と公共交通機関(時刻表に従って定期運行している鉄道、バス、航空機、船など)を組み合わせた移動経路を案内するマルチモーダル経路案内システムである。徒歩による移動経路も案内することができる。
【0024】
経路案内システム1は、車両に搭載されたナビゲーション装置2(車載端末装置に相当)、センターに設置された経路情報配信装置3、およびユーザが利用可能な携帯電話装置、携帯型情報端末装置、パソコンなどの情報端末装置4から構成されている。このうち情報端末装置4は、目的地への移動途中で車両から離れるユーザによって携帯され案内経路を表示するものであるが、必要に応じて備えればよい。
【0025】
ナビゲーション装置2は、ナビゲーション動作を制御する制御部5(制御手段)、移動経路を探索する経路探索部6(経路探索手段)、設定された案内経路に従って案内する経路案内部7(経路案内手段)、車両の現在位置を検出する位置検出部8(位置検出手段)、車両の速度を検出する車速検出部9、経路情報配信装置3および情報端末装置4と通信する通信部10(送信手段、受信手段)、交通情報受信部11、地図データベース12(道路地図情報保持手段)、公共交通機関の運行情報データベース13、入力部14、出力部15などを備えている。
【0026】
このうち制御部5、経路探索部6、経路案内部7等は、CPU、RAM、ROM、I/Oインタフェース、これらに付随する周辺回路およびこれらを接続するバスラインなど(何れも図示せず)を備えたマイクロコンピュータを主体に構成されている。ROMには、ナビゲーション動作全体の制御処理、経路探索処理、経路案内処理などを実行するための制御プログラムが記憶されている。RAMにはプログラム実行時の処理データの他に、地図データベース12から取得した道路地図データと時刻表データ、運行情報データベース13から取得した公共交通機関の路線図データ、通信部10により受信した探索経路データなどが一時的に記憶される。
【0027】
位置検出部8は、例えばGPS用人工衛星からの信号を受信するGPS受信機、ヨーレートを検出するためのジャイロセンサ、互いに直交する3軸方向の加速度を検出するための加速度センサなどを含んで構成されており、車両の現在位置情報を算出する。車速検出部9は、車速センサから入力した車速パルスに基づいて車速を検出する。
【0028】
地図データベース12と運行情報データベース13は、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク、不揮発性の半導体メモリなどの情報記録媒体から構成されている。地図データベース12には、経路探索、経路案内、地図描画、マップマッチングなどの各処理に必要な道路地図データをはじめ、種々の地図データが記憶されている。地図データには、公共交通機関への乗り換え地点(乗降地点)である駅、停留所、空港、埠頭およびこれらに付設された駐車場の地図、これらの施設の構内図なども含まれている。
【0029】
道路地図データ(道路地図情報)は、道路形状、道路幅、道路名、建造物、地名、地形等のデータの他、道路地図を後述する表示装置の画面上に表示するためのデータ、交通情報(統計データ)なども含んでいる。交通情報(統計データ)は、道路を通行するときの障害の発生状況を示す情報例えば各道路(リンク)の渋滞時間、渋滞の程度、規制の発生状況、事故発生状況、天候状況などを統計的に導き出したものである。
【0030】
運行情報データベース13には、公共交通機関の路線図データ(路線図情報)および駅、停留所等の各乗降地点の時刻表データ(時刻表情報)が記憶されている。ただし、現在の運行状況は記憶されていない。これらの地図データベース12および運行情報データベース13は、ナビゲーション装置2の内部ではなく、インターネット等の外部ネットワークに繋がるWEBサーバに設けてもよい。
【0031】
交通情報受信部11は、道路に沿って敷設された送信機から出力される光ビーコンまたは電波ビーコンあるいはFM多重放送を受信することにより、交通情報センターから配信される現在の道路交通情報を受信する。この道路交通情報は、道路を通行するときの障害(渋滞、混雑、速度規制、車線規制、事故発生、故障車停止、悪天候など)の発生状況(発生位置、渋滞区間、混雑区間、規制区間、発生時間、気象情報、障害解消予測時間など)を示す現在の交通情報である。インターネット等の外部ネットワークを介してWEBサーバから道路交通情報をダウンロードする構成としてもよい。取得した道路交通情報(例えば渋滞中の道路のリンク番号)は、経路探索部6で用いられる。
【0032】
通信部10(送信手段、受信手段)は、インターネット等の外部ネットワーク接続用の通信インタフェースを備えており、センターの経路情報配信装置3に対し経路探索をする現在地と目的地のデータを送信するとともに、経路情報配信装置3から探索結果である移動経路データを受信する。また、情報端末装置4との間で近距離無線通信を行うための通信インタフェースを備えており、移動途中で車両から公共交通機関に乗り換える際に、ナビゲーション装置2から直接或いは経路情報配信装置3を介して情報端末装置4に対し案内経路データを送信するようになっている。
【0033】
経路探索部6は、現在地から目的地までの車両のみによる移動経路、車両と公共交通機関とを乗り継ぐ移動経路および公共交通機関のみによる移動経路の何れをも探索可能である。この場合、乗り換え地点での公共交通機関の待ち時間が短い経路、到着時刻が早い経路、乗り換え回数が少ない経路、移動に要する費用が安い経路、これらの各条件を組み合わせた経路など種々の条件による経路探索が可能である。また、公共交通機関への乗り換え地点で駐車に要する時間、駐車場所から公共交通機関の乗降場所までの徒歩移動時間、公共交通機関の乗車券の購入時間なども加えて経路探索を行うことができるので、徒歩移動時間や乗り換え時間も考慮された正確な経路を探索できる。
【0034】
経路案内部7は、経路探索部6により探索された経路が案内経路として設定されると、その案内経路に従った案内処理を実行する。すなわち、経路案内部7は、表示装置の画面に車両の位置周辺の地図を表示し、その表示に重ね合わせて車両の現在位置と進行方向とを示す現在地マーク(ポインタ)を表示し、さらに進むべき案内経路を表示する。これとともに、後述する音声出力装置により音声案内を出力する。また、公共交通機関への乗り換え地点では、乗降場所の案内、乗降場所までの徒歩移動経路、公共交通機関の発車時刻などの情報も表示および音声出力可能となっている。
【0035】
入力部14は、操作スイッチ群とリモコンセンサを備えている。操作スイッチ群は、表示装置の周辺に配置されたメカニカルスイッチ、表示装置のディスプレイ上に形成されたタッチパネルスイッチなどからなる。リモコンセンサは、リモコンからの操作信号を受信して制御部5に入力する。
【0036】
出力部15は、カラー液晶ディスプレイからなる表示装置とスピーカからなる音声出力装置を備えている。表示装置は、メニュー表示選択画面、地図表示画面、経路案内画面などの各種の画面を表示し、音声出力装置は、経路案内メッセージ、操作アシストメッセージなどを出力する。
【0037】
制御部5は、入力部14を介して入力されたコマンドやデータに基づいて上述した各機能を制御する。また、経路探索部6に経路探索処理を開始させるとき、センターの経路情報配信装置3に対し現在地と目的地のデータ、車速などの車両情報および経路探索要求を送信し、経路情報配信装置3から探索経路を受信すると、その受信したタイミングに応じて経路探索の中止や案内経路の置き替えなどの処理を実行する。
【0038】
センターに設置されたサーバ機能を持つ経路情報配信装置3は、演算処理部16、移動経路を探索する経路探索部17(経路探索手段)、予測リンク移動時間データの確度を算出する確度算出部18、ナビゲーション装置2および情報端末装置4と通信する通信部19(送信手段、受信手段)、交通情報データベース(統計)20、交通情報データベース(現在状況)21、公共交通機関の運行情報データベース22、予測リンク移動時間データベース23(予測リンク移動時間保持手段)などを備えている。
【0039】
交通情報データベース(統計)20は、交通情報センターからオンラインで配信される道路交通情報のうちの統計データを蓄積しており、交通情報データベース(現在状況)21は、交通情報センターから配信される道路交通情報のうちの現在状況のデータを常時蓄積し更新している。道路交通情報は、上述したように道路を通行するときの障害の発生状況を示すデータである。これらの道路交通情報は、ナビゲーション装置2が利用可能な道路交通情報よりも詳細且つ正確な情報である。
【0040】
運行情報データベース22には、公共交通機関の路線図データ(路線図情報)、各乗降地点の時刻表データ(時刻表情報)および各公共交通機関の運行管理センターからオンラインで配信される現在の運行状況データ(現在の運行情報)が記憶されている。現在の運行状況データを利用可能である点がナビゲーション装置2と異なる。
【0041】
通信部19(送信手段、受信手段)は、インターネット等の外部ネットワーク接続用の通信インタフェースを備えており、ナビゲーション装置2および情報端末装置4から探索要求を受信するとともに、これらの装置に対して探索した移動経路を送信する。
【0042】
経路探索部17は、要求を受けた現在地から目的地までの経路について、車両のみによる移動経路、車両と公共交通機関とを乗り継ぐ移動経路および公共交通機関のみによる移動経路を探索可能である。ナビゲーション装置2と同様に種々の条件による経路探索が可能であるが、ナビゲーション装置2と異なり、運行情報データベース22にある公共交通機関の現在の運行状況データをも利用して経路探索を行っている。
【0043】
予測リンク移動時間データベース23は、各道路のリンクを特定する番号(リンクID)と、各リンクを車両で通行するのに要する予測時間とを関連付けた予測リンク移動時間データを、後述する確度データとともに常時蓄積し更新している。リンクとは、交差点や分岐点などのノードで各道路を分割したときの当該各ノード間を結ぶものであり、各リンクを接続することにより道路が構成される。
【0044】
リンク移動時間は、道路を通行中の車両(プローブカー)に搭載された端末装置から定期的にセンターに通知される車速などの車両情報および位置情報に基づいて、車両がリンクを移動するのに要した時間を算出することで収集される。また、交通情報センターから配信される現在の道路交通情報にも、主要な道路についてのリンク移動時間が含まれている。
【0045】
予測リンク移動時間は、通行する車両ごとのばらつきがあり、予測に用いるデータ数が不足する場合もある。例えば、プローブカーからの通知情報が少ない場合、配信される交通情報におけるデータ更新間隔が長い場合などには、確度(予測された移動時間の確からしさ)が低いと考えられる。そこで、確度算出部18は、算出および収集したリンク移動時間、プローブカーからの通知情報量、道路交通情報の更新間隔、道路交通情報の持つ情報量、道路交通情報のうちの統計データなどに基づいて、リンク単位の時間のばらつきを算出し、予測リンク移動時間データの確度を算出する。
【0046】
演算処理部16は、予測リンク移動時間の算出、交通情報データや運行状況データをはじめとする各種データの処理など上述した各機能を制御する。
情報端末装置4は、演算処理部24、経路案内部25、位置検出部26、通信部27、地図データベース28、入力部29、出力部30などを備えている。位置検出部26は、GPS受信機を備え、現在位置情報を算出する。地図データベース28には、経路案内、地図描画などの各処理に必要な道路地図データが記憶されている。通信部27は、インターネット等の外部ネットワーク接続用の通信インタフェースと、ナビゲーション装置2との間で近距離無線通信を行うための通信インタフェースを備えている。入力部29は、キーボードなどの操作スイッチ群を備えている。出力部30は、カラー液晶ディスプレイからなる表示装置とスピーカからなる音声出力装置を備えている。
【0047】
経路案内部25は、ナビゲーション装置2または経路情報配信装置3から移動経路データを取得し、表示装置の画面に現在位置周辺の地図を表示し、その表示に重ね合わせて現在地マーク(ポインタ)と進むべき案内経路を表示する。また、公共交通機関の乗降場所の案内、公共交通機関の発車時刻などの情報も表示可能となっている。演算処理部24はこれらの各機能を制御する。なお、情報端末装置4から経路情報配信装置3に対し直接目的地データを送信し、経路情報配信装置3から経路探索結果を受信することもできる。
【0048】
次に、本実施形態の動作について図2ないし図6を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、ナビゲーション装置2において探索する経路をローカルルート、センターの経路情報配信装置3において探索する経路をセンタールートと称する場合がある。
【0049】
図2は、ナビゲーション装置2の制御部5が実行する経路案内処理のフローチャートを示している。ユーザは、ナビゲーション装置2の入力部14を操作して目的地と許容待ち時間とを入力することができる。また、情報端末装置4の入力部29を操作して目的地と許容待ち時間とを入力すれば、その情報は近距離無線通信により情報端末装置4からナビゲーション装置2に送られる。ナビゲーション装置2の制御部5は、これら目的地と許容待ち時間とを入力する(ステップS1)。ここで、許容待ち時間とは、車両から公共交通機関への乗り換え時または公共交通機関相互の乗り換え時における待ち時間であって、ユーザが許容できるとして指定する最大待ち時間である。
【0050】
制御部5は、位置検出部8から車両の現在地を取得し、現在地、目的地、車速などの車両情報および許容待ち時間をセンターに設置された経路情報配信装置3に送信する(ステップS2)。これとともに、ナビゲーション装置2の経路探索部6に対し、ユーザにより指定された条件に従った経路探索を指示する(ステップS3)。本実施形態では、現在地から目的地まで車両および/または公共交通機関を利用して移動する経路であって、乗り換え地点での公共交通機関の待ち時間が最短且つ許容待ち時間以下の経路(ローカルルート)を探索する。
【0051】
図3は、ナビゲーション装置2の経路探索部6が実行する経路探索処理のフローチャートを示している。この処理は、図2に示すステップS4以下の処理と並列処理される。経路探索部6は、指示された経路が公共交通機関を利用する経路であるか否かを判断し(ステップS31)、車両のみを利用する経路である(NO)と判断すると、通常の道路探索方法に従って車両(自動車)のみの移動経路を探索する(ステップS43)。
【0052】
一方、公共交通機関を利用する経路である(YES)と判断すると、現在地からの移動距離が短いものから順に所定数だけ公共交通機関への乗り換え地点(駅、停留所、空港、埠頭など)を検索する(ステップS32)。そして、乗り換え地点ごとに、道路地図データ、道路交通情報および公共交通機関の路線図データに基づいて現在地から乗り換え地点までの車両による移動経路を探索し、予想される移動時間および乗り換え地点への到着予想時刻を算出する(ステップS33、S34)。
【0053】
乗り換え地点への到着時刻が早いほど、より早く出発する列車等に乗車することができる場合が多いと考えられるが、同じ列車を利用するのであれば到着時刻が早いほど乗り換え地点での待ち時間が長くなる。従って、本経路探索では、乗り換え地点への到着時刻が早ければよいという経路の他に、移動距離が多少長くなっても運転しやすい道(幅員が広い道、信号が少ない道、右左折の少ない道、右折専用レーンがある道など)を優先的に選ぶように条件設定することも可能である。
【0054】
続いて、乗り換え地点への到着予想時刻と乗降地点の時刻表データに基づいて、利用する公共交通機関の発車時刻を求め、乗り換え地点での待ち時間を算出する(ステップS35)。算出した乗り換え地点ごとの移動経路に対し、さらに公共交通機関への乗り換え地点で駐車に要する時間、駐車場所から乗降場所(列車のホーム、バスセンターの行先別停留所、搭乗便への搭乗口、乗船口など)までの徒歩移動時間、乗車券の購入時間などの乗り換えに必要な時間(乗り換え時間)のうち少なくとも一の時間を加えて乗り換え地点での待ち時間を補正する(ステップS36)。
【0055】
この補正の結果、ステップS35で利用するものとした公共交通機関への乗り換えが間に合わないと判断すれば、後続の列車、バス等の利用に変更した上で待ち時間を計算し直す。なお、到着予想時刻に上記補正処理を行った後、利用する公共交通機関の発車時刻を求め、待ち時間を算出してもよい。この補正処理を行うことにより、乗り換え地点の待ち時間の精度を高めることができる。
【0056】
続いて、経路探索部6は、算出した経路のうち乗り換え地点での待ち時間が許容待ち時間以下となる経路があるか否かを判断し(ステップS37)、ある場合(YES)には待ち時間が最短の経路を選択する(ステップS38)。一方、ない場合(NO)には代替経路を探索する。すなわち、現在地から目的地までの間の他の利用可能な公共交通機関の乗り換え地点を検索し(ステップS39)、その有無を判断する(ステップS40)。
【0057】
他の乗り換え地点がある場合(YES)には、(既に計算に用いた乗り換え地点を除き)現在地からの移動距離が次に短い乗り換え地点を選択して(ステップS41)ステップS33に移行する。利用可能な公共交通機関の乗り換え地点がある限り、乗り換え地点について算出した待ち時間が許容待ち時間以下となるまで、現在地からの移動距離が短いものから順に乗り換え地点を検索することになる。
【0058】
一方、現在地から目的地までの間に他の利用可能な公共交通機関の乗り換え地点がない場合(NO)には、乗り換え地点での待ち時間がユーザの指定する許容待ち時間以下となる経路を探索できい。この場合には、その旨(例えば「駅での待ち時間が許容待ち時間より長くなるルートしかありません。そのルートで案内を開始します。」)を報知し、ステップS38に移行して乗り換え地点での待ち時間が最短となる移動経路を選択する。
【0059】
上記経路探索では、乗り換え地点での待ち時間が最短の経路を選択するが、却って目的地への到着時刻が遅い経路を選択する可能性がある。例えば、快速列車の後に普通列車が続く列車ダイヤで、出発地から近いA駅で快速列車を待つときの待ち時間が10分、A駅よりもかなり先のB駅まで自動車で移動して(到着時には快速列車は既に発車した後)普通列車を待つときの待ち時間が5分という場合である。また、普通列車の後に快速列車が続く列車ダイヤで、普通列車が先に発車して後続の快速列車が途中で追い抜く場合であって、快速列車の方が待ち時間は長いが目的地に先に到着する場合である。
【0060】
そこで、ステップS38では、乗り換え地点での待ち時間よりも目的地への到着時刻を優先して経路を選択し、目的地への到着予想時刻が同じ場合には乗り換え地点での待ち時間が最短となる経路を選択することが好ましい。従って、代替経路の探索では、最初の探索と同一の公共交通機関を利用する場合には、最初の探索で利用する列車と同じ列車、または乗り換えを考慮して早く目的地に到着できる列車に限って探索を行うとよい。
【0061】
経路探索処理が終了すると、経路案内部7は、選択された移動経路を案内経路に設定して現在地から乗り換え地点までの案内処理を開始する(ステップS44)。
制御部5は、経路探索処理および経路案内処理と並列して図1に示すステップS4以下の処理を実行する。センターからセンタールートの探索結果を受信したか否かを判断し(ステップS4)、受信していない(NO)と判断すると、ナビゲーション装置2においてローカルルートの経路探索が完了しているか否かを判断する(ステップS12)。経路探索が完了していなければ(NO)ステップS4に戻り、完了していれば(YES)ローカルルートでの経路案内を実行する(ステップS13)。
【0062】
続いて乗り換え地点(公共交通機関への乗り換えがなければ目的地、ステップS11、S17も同様)に到着したか否かを判断し(ステップS14)、到着していれば案内処理を終了し、到着していなければステップS4に移行する。なお、ナビゲーション装置2と経路情報配信装置3との間の通信時間および経路情報配信装置3での探索要求に対する処理待ち時間があるため、センタールートよりもローカルルートを先に取得できる場合が多いと考えられる。
【0063】
本経路案内システム1は、車両と公共交通機関を乗り継いで目的地に移動するマルチモーダル経路案内システムであるため、経路途中で車両から離れる必要がある。そこで、ナビゲーション装置2の制御部5は、公共交通機関への乗り換え地点に到着すると、案内経路情報を、近距離無線通信により或いは経路情報配信装置3を介してユーザが携帯する情報端末装置4に送信する。これとともに、ユーザが車両を離れて移動を開始したことを経路情報配信装置3に通知する。これ以後、ユーザは、情報端末装置4に表示される案内経路に従って移動することができる。また、経路情報配信装置3は、センタールートの探索結果などをナビゲーション装置2ではなく情報端末装置4に送信するようになる。
【0064】
ステップS4でセンターから探索結果を受信した(YES)と判断すると、ナビゲーション装置2においてローカルルートの経路探索結果があるか否かを判断する(ステップS5)。経路探索中であれば(NO)その経路探索処理を中止してステップS9に移行する。経路探索が終了していれば(YES)、センターから移動経路を受信した旨を出力部15(表示装置)に表示し(ステップS6)、現在の案内経路をセンタールートに置き替えることの問い合わせを行う(ステップS7)。
【0065】
制御部5は、ユーザからの操作入力に基づいて、案内経路を、ナビゲーション装置2が探索したローカルルートから経路情報配信装置3が探索したセンタールートに置き替えるか否かを判断する(ステップS8)。ここで置き換える(YES)と判断すると、センターから受信した移動経路を案内経路として設定し(ステップS9)、そのセンタールートでの案内を実行する(ステップS10)。続いて乗り換え地点(または目的地)に到着したか否かを判断し(ステップS11)、到着していれば案内処理を終了し、到着していなければステップS10に移行する。
【0066】
一方、ステップS8においてセンターから受信した移動経路に置き替えない(NO)と判断すると、ローカルルートでの案内を継続する(ステップS16)。乗り換え地点(または目的地)に到着したか否かを判断し(ステップS17)、到着していれば案内処理を終了し、到着していなければステップS16に移行する。
【0067】
図4は、センターの経路情報配信装置3が実行する経路探索処理のフローチャートを示している。経路情報配信装置3の経路探索部17は、現在地、目的地、車両情報および許容待ち時間ならびに経路探索要求を受信すると(ステップS51)経路探索を開始する。この経路探索は、ナビゲーション装置2における経路探索とほぼ同様にして行われる。ステップS52〜S64は、それぞれ図3に示すステップS31〜S43に相当する。このうちステップS63では、代替経路がない旨の通知データを準備する。ステップS65では探索したセンタールートおよび通知データを探索要求元のナビゲーション装置2に送信する。
【0068】
ステップS54、S55では、道路地図データ、道路交通情報、公共交通機関の路線図データ、各乗降地点の時刻表データのみならず、現在の公共交通機関の運行状況にも基づいて、現在地から目的地までの予想される移動時間および目的地への到着予想時刻を算出する。従って、公共交通機関に遅れや運休が生じた場合でも、乗り換え地点での待ち時間が最短且つ許容待ち時間以下となる正確な移動経路が得られる。また、経路探索部17は、現在地から公共交通機関への乗り換え地点までの車両による移動経路のそれぞれについて、予測リンク移動時間を積算することにより正確な乗り換え地点への到着予想時刻を算出できる。
【0069】
図5は、予測リンク移動時間と確度の算出処理のフローチャートを示している。演算処理部16は、プローブカーから定期的にセンターに送信されてくる車速などの車両情報および位置情報に基づいて、各道路の現在のリンク移動時間を算出する(ステップS71)。さらに、道路交通情報に含まれる現在のリンク移動時間を収集することで、算出だけでは不足するリンク移動時間を補う(ステップS72)。確度算出部18は、リンク移動時間のリンク単位の時間のばらつきを算出し、予測リンク移動時間データの確度を算出する(ステップS73)。演算処理部16は、予測リンク移動時間と確度のデータを関連付けて予測リンク移動時間データベース23に格納する(ステップS74)。
【0070】
公共交通機関への乗り換えミスを防ぎつつ待ち時間を低減するには、予測リンク移動時間に高い精度が必要となる。そこで、経路探索部17は、予測リンク移動時間の確度が高いリンクを優先的に採用することにより、乗り換え地点への到着時刻を算出する。例えば、移動時間は長いが確度が高いリンクを、移動時間は短いが確度が低いリンクよりも優先的に積算する。また、予測リンク移動時間の確度が基準値以上のリンクだけを採用してもよい。さらに、そのようなリンクが存在しない場合には、予測リンク移動時間に対し確度の低さに応じた余裕度を乗算して移動時間を求めてもよい。このように予測リンク移動時間データベース23を有することで、探索要求に対してより正確な移動経路をより短い応答時間で提供することができる。
【0071】
図6は、ナビゲーション装置2の経路探索部6および経路情報配信装置3の経路探索部17で探索された移動経路の一例を示している。現在地(出発地)と目標値との間には鉄道路線MのA駅とB駅があり、何れの駅を利用しても目的地に到達することができる。現在地からB駅まで行く途中の道路区間P2〜P3は渋滞が発生しており、この渋滞区間を通行するのに車両で30分を要するものとする。また、15分間隔の列車の運行に7分の遅れが発生しているものとする。ユーザが入力した許容待ち時間は5分である。
【0072】
ナビゲーション装置2の経路探索部6は、渋滞などの道路交通情報を考慮し、列車が定刻運行されているものとしてローカルルートを探索する。その結果、現在地からP1地点、P2地点を経由してA駅まで車両で移動し(所要時間30分)、A駅で列車を3分待ち、列車に乗車してA駅から目的地(C駅)まで移動する(所要時間20分)経路R1と、現在地からP1地点、P3地点を経由してB駅まで車両で移動し(所要時間43分)、B駅で後続の列車を11分待ち、列車に乗車してB駅から目的地(C駅)まで移動する(所要時間14分)経路R2とを探索する。B駅までの経路を探索する際、渋滞通過の待ち時間が生じる区間P2〜P3は採用しない。経路探索部6は、経路R1、R2のうち目的地への到着時刻の早い経路R1を選択する。
【0073】
これに対し、経路情報配信装置3の経路探索部17は、渋滞などの道路交通情報および列車の現在の運行状況(7分遅れ)を考慮してセンタールートを探索する。その結果、現在地からP1地点、P2地点を経由してA駅まで車両で移動し(所要時間30分)、A駅で列車を10分待ち、列車に乗車してA駅から目的地(C駅)まで移動する(所要時間20分)経路R1と、現在地からP1地点、P3地点を経由してB駅まで車両で移動し(所要時間43分)、B駅で同じ列車を3分待ち、列車に乗車してB駅から目的地(C駅)まで移動する(所要時間14分)経路R2とを探索する。このうち、経路探索部17は、駅での待ち時間が許容待ち時間以下であって且つ待ち時間が短い方のB駅を経由する経路R2を選択する。
【0074】
ナビゲーション装置2が選択した経路R1とセンターが選択した経路R2は、同一列車を利用するため、目的地であるC駅に到着する時刻は同じである。しかし、列車に運行遅れが生じている場合、経路R1ではA駅で10分の待ち時間が生じるのに対し、経路R2ではB駅で3分の待ち時間で済むことになる。ナビゲーション装置2の経路探索部6が経路情報配信装置3に対し経路探索要求を送信後、例えば3分後(図6におけるQ地点に移動した時点)に経路情報配信装置3から探索経路R2を受信すると、制御部5は、ユーザの指示の下で案内経路を経路R1からR2に置き替える(図2のステップS9)。
【0075】
以上説明したように、本実施形態の経路案内システム1によれば、ユーザに対し車両と公共交通機関とを組み合わせた経路案内を提供できる。ナビゲーション装置2の経路探索部6および経路情報配信装置3の経路探索部17は、目的地への到着時刻が早い経路であることを優先条件とした上で、車両から公共交通機関への乗り換え地点での待ち時間が最短となる移動経路を選択する。このため、待ち時間を短縮するために目的地への到着時刻が却って遅くなることはなく、目的地への到着時刻が同じであれば、公共交通機関への乗り換え時の待ち時間が短くなってユーザの焦燥感やいらつきを低減することができる。
【0076】
ナビゲーション装置2は、目的地と許容待ち時間が与えられると直ちに経路探索を開始し、探索終了後直ちに或いはユーザの指示を受けてローカルルートで経路案内を実行する。従って、ユーザは、ナビゲーション装置2での経路探索が終了すると直ちに経路案内に従って出発することができる。ナビゲーション装置2は、自ら経路探索を開始するとともに経路情報配信装置3に経路探索要求を送信し、公共交通機関の最新の運行情報も考慮したより正確な移動経路を受信する。そして、受信時にローカルルートで経路案内中であれば、案内経路をセンタールートに置き替える。
【0077】
この制御により、ナビゲーション装置2では実現しにくい最新の運行情報を用いた高精度の経路探索と、センターでは実現しにくい短時間での経路探索とを、相互に補完し合う経路案内システムを構築できる。すなわち、出発時の即時性を確保しつつ、乗り換えミスがなく乗り換え時の待ち時間が一層少ない高精度の経路案内を提供することができる。本システムによれば、ユーザは、自ら公共交通機関の時刻表や運行状況を調べ、乗り換え地点での待ち時間ひいては出発時刻を調整する手間がなくなる。
【0078】
ナビゲーション装置2の経路探索および経路情報配信装置3の経路探索は、現在地からの移動距離が短いものから順に所定数だけ公共交通機関への乗り換え地点を検索し、これら乗り換え地点での待ち時間が何れも許容待ち時間を超える場合には、次に近いものから順次乗り換え地点を検索する。このような検索方法によれば、経路探索部6、17の処理負担を軽減することができる。また、乗り換え地点の待ち時間が許容待ち時間以下となる経路を案内することができる。
【0079】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形、拡張を行うことができる。
最短の待ち時間とは、上述した駐車に要する時間、駐車場所から乗降場所までの徒歩移動時間、乗車券の購入時間などに例示されるように、乗り換え時間が確保できることを前提としている。従って、乗り換え地点への到着予想時刻と交通機関の出発時刻とが同時刻となるような経路は選択されない。
【0080】
ナビゲーション装置2は、経路情報配信装置3に対し経路探索要求を送信した後も、経路情報配信装置3から探索経路を受信するまでの間、車両の位置情報を所定間隔で送信し続けるとよい。これにより、経路情報配信装置3は、車両の最新の位置に基づいて経路探索を行うことができるので、現在案内しているローカルルートとは全く異なる経路(例えば一旦戻らなければならない経路)を回避することができる。
【0081】
乗り換え地点での待ち時間よりも目的地への到着時刻を優先して乗り換え地点と車両移動経路を選択したが、乗り換え地点での待ち時間の短縮を最優先して経路を選択してもよい。また、目的地への到着時刻以外の条件を優先して乗り換え地点と車両移動経路を選択してもよい。
【0082】
公共交通機関を利用する場合、最初に現在地からの移動距離が短いものから順に所定数だけ公共交通機関への乗り換え地点を検索して移動経路を探索したが、最初に利用可能な全ての乗り換え地点を検索して移動経路を探索してもよい。また、最初に検索した前記所定数の乗り換え地点について算出した待ち時間が何れも許容待ち時間を超える場合、更なる乗り換え地点の検索を行わず、算出済みの中から待ち時間が最短の経路を選択してもよい。
【0083】
経路情報配信装置3は、予測リンク移動時間データベース23を備えず、探索要求を受信するごとに、道路地図データ、道路交通情報および公共交通機関の路線図データに基づいて乗り換え地点までの車両による移動経路を探索し、予想される移動時間および乗り換え地点への到着予想時刻を算出してもよい。また、経路情報配信装置3は、交通情報センターなどの他の事業体に設置された予測リンク移動時間データベースを利用してもよい。
【0084】
ナビゲーション装置2の制御部5は、図2に示すステップS7、S8、S16、S17の処理を実行せず、ステップS5でYES(ローカルルートの経路探索結果あり)と判断したときには、常にセンターから受信した移動経路を案内経路として設定するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0085】
図面中、1は経路案内システム、2はナビゲーション装置(車載端末装置、車載ナビゲーション装置)、3は経路情報配信装置、5は制御部(制御手段)、6は経路探索部(経路探索手段)、7は経路案内部(経路案内手段)、8は位置検出部(位置検出手段)、10は通信部(送信手段、受信手段)、12は地図データベース(道路地図情報保持手段)、19は通信部(受信手段、送信手段)、17は経路探索部(経路探索手段)、23は予測リンク移動時間データベース(予測リンク移動時間保持手段)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センターに設置された経路情報配信装置と車載端末装置とで構成される経路案内システムであって、
前記経路情報配信装置は、
道路地図情報、道路を通行するときの障害の発生状況を示す交通情報、公共交通機関の路線図情報、時刻表情報および現在の運行情報を取得可能に構成され、
経路探索の現在地と目的地の情報を受信する受信手段と、
前記道路地図情報および路線図情報に基づいて現在地から目的地までの移動で利用可能な公共交通機関およびその乗り換え地点を検索し、前記道路地図情報および交通情報に基づいて現在地からその乗り換え地点までの車両による移動経路を探索して当該乗り換え地点への到着時刻を算出し、前記公共交通機関の時刻表情報および現在の運行情報に基づいて当該乗り換え地点での待ち時間を算出し、その待ち時間が最短となる乗り換え地点と車両移動経路を選択することにより現在地から目的地までの移動経路を探索する経路探索手段と、
この探索した移動経路情報を前記車載端末装置に送信する送信手段とを備え、
前記車載端末装置は、
道路を通行するときの障害の発生状況を示す交通情報、公共交通機関の路線図情報および時刻表情報を取得可能に構成され、
道路地図情報が格納された道路地図情報保持手段と、
車両の現在地を検出する位置検出手段と、
前記道路地図情報および路線図情報に基づいて現在地から目的地までの移動で利用可能な公共交通機関およびその乗り換え地点を検索し、前記道路地図情報および交通情報に基づいて現在地からその乗り換え地点までの車両による移動経路を探索して当該乗り換え地点への到着時刻を算出し、前記公共交通機関の時刻表情報に基づいて当該乗り換え地点での待ち時間を算出し、その待ち時間が最短となる乗り換え地点と車両移動経路を選択することにより現在地から目的地までの移動経路を探索する経路探索手段と、
設定された案内経路に従って案内する経路案内手段と、
前記経路情報配信装置に対し経路探索の現在地と目的地の情報を送信する送信手段と、
前記経路情報配信装置から移動経路情報を受信する受信手段と、
当該車載端末装置の経路探索手段により現在地から目的地までの経路探索を開始するとともに前記経路情報配信装置に対し現在地と目的地の情報を送信し、当該車載端末装置の経路探索手段による経路探索が終了する前に前記経路情報配信装置から移動経路情報を受信した場合には、経路探索を中止して当該受信した移動経路を案内経路に設定して前記経路案内手段により経路案内を開始し、一方、当該車載端末装置の経路探索手段による移動経路の探索が終了した後に前記経路情報配信装置から移動経路情報を受信した場合には、案内経路を当該受信した移動経路に置き替えて前記経路案内手段による経路案内を行う制御手段とを備えたことを特徴とする経路案内システム。
【請求項2】
前記経路探索手段は、乗り換え地点での待ち時間よりも目的地への到着時刻を優先して乗り換え地点と車両移動経路を選択し、目的地への到着時刻が同じ場合には乗り換え地点での待ち時間が最短となる乗り換え地点と車両移動経路を選択することを特徴とする請求項1記載の経路案内システム。
【請求項3】
前記経路探索手段は、現在地からの移動距離が短いものから順に所定数だけ乗り換え地点を検索し、これら乗り換え地点について算出した待ち時間が何れも許容待ち時間を超える場合、乗り換え地点について算出した待ち時間が前記許容待ち時間以下となるまで、現在地からの移動距離が次に短い乗り換え地点を順次検索することを特徴とする請求項1または2記載の経路案内システム。
【請求項4】
前記経路探索手段は、乗り換え地点で駐車に要する時間、駐車場所から公共交通機関の乗降場所までの徒歩移動時間および乗車券の購入時間のうち少なくとも一の時間を加えて乗り換え地点での待ち時間を算出することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の経路案内システム。
【請求項5】
前記経路情報配信装置は、各道路を分割して得られるリンクごとに前記道路地図情報および交通情報に基づいて予測した車両のリンク移動時間が格納された予測リンク移動時間保持手段を備え、
前記経路情報配信装置の経路探索手段は、現在地から公共交通機関への乗り換え地点までの車両による移動経路について、前記予測リンク移動時間を積算することにより前記乗り換え地点への到着時刻を算出することを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の経路案内システム。
【請求項6】
前記経路情報配信装置は、前記車両のリンク移動時間を予測する際にその確度を求め、前記予測リンク移動時間と前記確度情報とを関連付けて前記予測リンク移動時間保持手段に格納し、
前記経路情報配信装置の経路探索手段は、前記確度の高い予測リンク移動時間を持つリンクを優先的に採用することにより前記乗り換え地点への到着時刻を算出することを特徴とする請求項5記載の経路案内システム。
【請求項7】
前記車載端末装置の制御手段は、当該車載端末装置の経路探索手段による移動経路の探索が終了した後に前記経路情報配信装置から移動経路情報を受信した場合、案内経路をその受信した移動経路に置き替えるように指令を受けたことを条件として、案内経路を前記受信した移動経路に置き替えて前記経路案内手段による経路案内を行うことを特徴とする請求項1ないし6の何れかに記載の経路案内システム。
【請求項8】
現在地から目的地までの車両および/または公共交通機関を利用した移動経路を探索して提供する経路情報配信装置と通信可能な車載ナビゲーション装置において、
道路を通行するときの障害の発生状況を示す交通情報、公共交通機関の路線図情報および時刻表情報を取得可能に構成され、
道路地図情報が格納された道路地図情報保持手段と、
車両の現在地を検出する位置検出手段と、
前記道路地図情報および路線図情報に基づいて現在地から目的地までの移動で利用可能な公共交通機関およびその乗り換え地点を検索し、前記道路地図情報および交通情報に基づいて現在地からその乗り換え地点までの車両による移動経路を探索して当該乗り換え地点への到着時刻を算出し、前記公共交通機関の時刻表情報に基づいて当該乗り換え地点での待ち時間を算出し、その待ち時間が最短となる乗り換え地点と車両移動経路を選択することにより現在地から目的地までの移動経路を探索する経路探索手段と、
設定された案内経路に従って案内する経路案内手段と、
前記経路情報配信装置に対し経路探索の現在地と目的地の情報を送信する送信手段と、
前記経路情報配信装置から移動経路情報を受信する受信手段と、
前記経路探索手段により現在地から目的地までの経路探索を開始するとともに前記経路情報配信装置に対し現在地と目的地の情報を送信し、前記経路情報配信装置において道路地図情報、交通情報、公共交通機関の路線図情報、時刻表情報および現在の運行情報に基づいて公共交通機関への乗り換え地点での待ち時間が最短となる移動経路の探索を要求し、前記経路探索手段による経路探索が終了する前に前記経路情報配信装置から移動経路情報を受信した場合には、経路探索を中止して当該受信した移動経路を案内経路に設定して前記経路案内手段により経路案内を開始し、一方、前記経路探索手段による移動経路の探索が終了した後に前記経路情報配信装置から移動経路情報を受信した場合には、案内経路を当該受信した移動経路に置き替えて前記経路案内手段による経路案内を行う制御手段とを備えたことを特徴とする車載ナビゲーション装置。
【請求項9】
前記経路探索手段は、乗り換え地点での待ち時間よりも目的地への到着時刻を優先して乗り換え地点と車両移動経路を選択し、目的地への到着時刻が同じ場合には乗り換え地点での待ち時間が最短となる乗り換え地点と車両移動経路を選択することを特徴とする請求項8記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項10】
前記経路探索手段は、現在地からの移動距離が短いものから順に所定数だけ乗り換え地点を検索し、これら乗り換え地点について算出した待ち時間が何れも許容待ち時間を超える場合、乗り換え地点について算出した待ち時間が前記許容待ち時間以下となるまで、現在地からの移動距離が次に短い乗り換え地点を順次検索することを特徴とする請求項8または9記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項11】
前記経路探索手段は、乗り換え地点で駐車に要する時間、駐車場所から公共交通機関の乗降場所までの徒歩移動時間および乗車券の購入時間のうち少なくとも一の時間を加えて乗り換え地点での待ち時間を算出することを特徴とする請求項8ないし10の何れかに記載の車載ナビゲーション装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記経路探索手段による移動経路の探索が終了した後に前記経路情報配信装置から移動経路情報を受信した場合、案内経路をその受信した移動経路に置き替えるように指令を受けたことを条件として、案内経路を前記受信した移動経路に置き替えて前記経路案内手段による経路案内を行うことを特徴とする請求項8ないし11の何れかに記載の車載ナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−189438(P2012−189438A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52953(P2011−52953)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】