説明

経路案内システム及び当該経路案内システムに用いられる経路探索サーバ

【課題】現在位置から登録された所定の経路までの案内経路を提示する。
【解決手段】経路探索サーバと携帯端末装置とがネットワークを介して接続される経路案内システムにおいて、経路案内システム内に、所定の経路(マイルート)を格納する記憶装置を備え、携帯端末装置が現在位置を検出し、経路探索サーバが現在位置からマイルートまでの経路を探索し、当該経路に基づいて案内経路情報を編集して携帯端末装置に送信し、携帯端末装置が案内経路情報を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信型の経路案内システム、及び、当該経路案内システムに用いられる経路探索サーバ及び携帯端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所望の出発地から目的地までの経路を探索して経路案内を行うナビゲーションシステムが広く利用されている。このようなナビゲーションシステムとしては、自動車に搭載する車載用のナビゲーションシステム、徒歩及び交通機関を使用して移動する歩行者のためのナビゲーションシステムなどが知られている。また、現在位置に基づいて、近辺の地図を表示するシステムも知られている。最近では、これらのシステムは、携帯電話機などの携帯端末装置を使用し、所定の情報配信サーバ、経路探索サーバなどから案内経路や地図をダウンロードする通信型のシステムが広く用いられている。
【0003】
近年、このようなナビゲーションシステムを災害時等に利用することが考えられている。例えば、特許文献1には、携帯端末装置がサーバとの間の通信ができない場合にオフラインで地図や経路の案内、帰宅支援などの経路案内をすることができるナビゲーションシステムについて記載されている。特許文献1では、勤務場所から自宅など予め登録した所望の地点から所望の地点までの地図、避難経路、帰宅支援の案内経路などを平常時に経路探索サーバからダウンロードしておき、災害時にオフラインで携帯端末装置に表示することができるようにしている。
【特許文献1】特開2007−147340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のナビゲーションシステムは、出発地から目的地までの最適なルートが提示されるようになっていて、最適なルートで目的地まで辿り着くためには非常に便利である。
【0005】
しかし、場合によっては、目的地まで最適なルートで行くことが重要ではなく、むしろ、利用者がよく知っている道に行きたい場合がある。例えば、災害時等の非常時の場合、知らない道を歩いていると不安に駆られるが、知っている道まで出れば安心できるし、知っている道まで辿り着ければ、あとはナビゲーションシステムに頼ることなく、自宅等の目的地まで帰ることができる。このように、現在位置から自宅等の目的地までのルートを案内するのではなく、現在位置から、本人がよく知っている道(会社から自宅までのルートなど)までを案内した方が、利用者の使い勝手が良い場合がある。
【0006】
また、災害時等の非常時の場合に、携帯電話機をナビゲーション用の端末装置として利用する場合、携帯電話で家族等と連絡を取り合うことができるよう、携帯電話機のバッテリー消耗をできる限り防ぐ必要がある。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、現在位置から各利用者毎に登録された所定のルートまでの案内経路を提示することのできる経路案内システムを提供することを主たる目的とする。また、現在位置から目的地までの案内経路を提示する際に、各利用者毎に登録された所定のルートを経由させることのできる経路案内システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明による経路案内システムは、経路探索サーバと携帯端末装置とがネットワークを介して接続される。経路探索サーバ又は携帯端末装置の少なくともいずれか一方に、所定の経路(マイルート)を格納する記憶装置を備える。携帯端末装置は、現在位置を検出する位置検出手段と、経路探索サーバから受信した案内経路情報を表示する表示手段と、を備える。また、経路探索サーバは、位置検出手段により検出された現在位置から、記憶装置に格納されたマイルートまでの経路を探索する経路探索手段と、経路探索手段により探索された経路に基づいて案内経路情報を編集し、当該案内経路情報を携帯端末装置に送信する配信データ編集手段と、を備える。
【0009】
本発明による経路探索サーバは、好適には、位置検出手段によって検出された現在位置の履歴情報を利用して、利用者の使用頻度の高い経路を、マイルートとして記憶装置に格納する。
【0010】
また、本発明による経路探索サーバは、携帯端末装置とネットワークを介して接続される経路探索サーバであって、位置検出手段により検出された現在位置から、記憶装置に登録された所定の経路(マイルート)までの経路を探索する経路探索手段と、経路探索手段により探索された経路に基づいて案内経路情報を編集し、当該案内経路情報を携帯端末装置に送信する配信データ編集手段と、を備える。なお、携帯端末装置は、現在位置を検出する位置検出手段と、経路探索サーバから受信した案内経路情報を表示する表示手段と、を備える。
【0011】
ここで、好適には、携帯端末装置は、経路探索サーバからバックグラウンドで案内経路情報を受信して一時記憶手段に格納しておき、利用者からの指示に応じて一時記憶手段に格納された案内経路情報を読み出して表示手段に表示する。かかる発明によれば、災害時に経路探索サーバと通信できない状態になっても、マイルートまでの案内経路を利用者が確認することができる。
【0012】
また好適には、携帯端末装置は、利用者の指示に応じて経路探索サーバから案内経路情報を受信して表示手段に表示する。かかる発明によれば、利用者が所望するときに、マイルートまでの案内経路を取得することができる。
【0013】
さらに好適には、経路探索手段は、現在位置とマイルート上の各ノードとの最適経路をノードごとにそれぞれ求め、当該ノードごとに求めた最適経路に基づいて、現在位置からマイルートまでの最適経路を探索する。
【0014】
かかる発明によれば、利用者毎に記憶装置に登録されたマイルートに基づいて、現在位置からマイルートまでの案内経路情報を携帯端末装置に提示することができるようになる。これにより、利用者は、よく知っている道まで早く辿り着くことができる。特に、災害時のように、目的地まで最適ルートで辿り着くより、よく知っている道まで早く出たい場合に有効である。
【0015】
好適には、携帯端末装置は、経路探索サーバから案内経路情報を受信した後、当該経路探索サーバとの間の通信セッションを切断する。かかる発明によれば、経路探索サーバと携帯端末装置とがネットワークを介して接続される通信型の経路案内システムにおいて、経路探索サーバ及び携帯端末装置にかかる負荷を軽減し、バッテリー等の消耗を防ぐことができるようになる。すなわち、携帯端末装置が案内経路を受信した後は、携帯端末装置と経路探索サーバとの間の通信を行うことがないので、無用なバッテリー消耗を防ぐことが可能であり、特に、災害時に有効である。
【0016】
本発明による経路案内方法は、経路探索サーバと携帯端末装置とがネットワークを介して接続される経路案内システムにおける経路案内方法である。記憶装置にマイルートを格納する登録ステップと、携帯端末装置が、現在位置を検出する位置検出ステップと、経路探索サーバが、位置検出ステップにより検出された現在位置から、記憶装置に格納されたマイルートまでの経路を探索する経路探索ステップと、経路探索サーバが、経路探索ステップにより探索された経路に基づいて案内経路情報を編集し、当該案内経路情報を携帯端末装置に送信する配信データ編集ステップと、携帯端末装置が、経路探索サーバから受信した案内経路情報を表示する表示ステップと、を備える。
【0017】
また、本発明による経路探索方法は、携帯端末装置とネットワークを介して接続される経路探索サーバにおける経路探索方法である。位置検出手段により検出された現在位置を受信する受信ステップと、受信ステップで受信した現在位置から、記憶装置に登録されたマイルートまでの経路を探索する経路探索ステップと、経路探索ステップにより探索された経路に基づいて案内経路情報を編集する編集ステップと、当該案内経路情報を携帯端末装置に送信する送信ステップと、を備える。なお、携帯端末装置は、現在位置を検出する位置検出手段と、経路探索サーバから受信した案内経路情報を表示する表示手段と、を備える。
【0018】
本発明のプログラムは、本発明の経路探索方法の各処理ステップをコンピュータに実行させることを特徴とする。本発明のプログラムは、CD−ROM等の光学ディスク、磁気ディスク、半導体メモリなどの各種の記録媒体を通じて、又は通信ネットワークなどを介してダウンロードすることにより、コンピュータにインストール又はロードすることができる。
【0019】
なお、本明細書等において、「マイルート」とは、経路案内システム上で利用者毎に登録された所定の経路を意味する。経路案内システムにおいて、利用者は、自ら任意の経路(ルート)を指定することによって、指定した経路をマイルートとして登録可能であることが好ましい。また、ナビゲーションの履歴を分析して、利用者がよく知っていると判断される所定の経路を経路案内システムが自動的に抽出可能であれば更に好ましい。さらに、マイルートは必ずしも一本の経路である必要はなく、複数の経路を含み得る。このとき、経路案内システムには、複数のルートをまとめて、各利用者のマイルートとして登録される。ここで、ある利用者のマイルートに複数の経路が含まれるとき、複数の経路は相互に接続されていてもよいし、また、それぞれの経路が相互に接続されることなく独立に位置していてもよい。
【0020】
また、本明細書頭において、「手段」とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その手段が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの手段が有する機能が2つ以上の物理的手段により実現されても、2つ以上の手段の機能が1つの物理的手段により実現されてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、現在位置から各利用者毎に登録された所定のルートまでの案内経路を提示することのできる経路案内システムを提供することができる。また、経路探索サーバと携帯端末装置とがネットワークを介して接続される通信型の経路案内システムにおいて、経路探索サーバ及び携帯端末装置にかかる負荷を軽減し、バッテリー等の不要な消耗を防ぐことができる。
【0022】
また、目的地の方向に向かってマイルート探索処理を行うことによって、現在位置から目的地までの案内経路を提示する際に、利用者毎に登録された所定のルートを経由させることのできる経路案内システムを提供可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る経路案内システム100の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、本経路案内システム100は、経路探索サーバ10と、携帯端末装置20とを備え、これらがネットワークNを介して相互に接続されることにより構成される。
【0025】
経路探索サーバ10は、経路探索処理を行うためのサーバ・コンピュータであり、一般的なナビゲーション用サーバと同様に、主制御部11、通信手段12、経路探索手段13、配信データ編集手段14、記憶装置15、ガイダンスデータ16、地図データ17、道路ネットワークデータ18、マイルートデータ19を備える。
【0026】
主制御部11は、RAMやROM等を有するプロセッサにより構成され、ROM等に格納された制御プログラムにより各部の動作を制御する。通信手段12は、ネットワークNを介して携帯端末装置20と通信するためのインタフェースである。
【0027】
経路探索手段13は、携帯端末装置20から送信された経路探索条件に従って道路ネットワークデータ18等の探索用ネットワークデータを参照して最適経路を探索する機能を備える。このとき、出発地のノードから目的地のノードに至るリンクを順次探索し、リンクのコスト情報が最小となるリンクをたどって案内経路とすることによって、最適経路を探索することができる。このような経路探索の手法としてはラベル確定法やダイクストラ法などの周知の手法を利用すればよい。なお、本実施形態において「最適な」経路とは、出発地から目的地までのコスト情報が最小であることをいう。また、距離、料金、所要時間、その他のパラメータ、及び各種パラメータを任意に組み合わせたもの等、目的に応じてリンクのコスト情報を設定可能である。
【0028】
配信データ編集手段14は、探索の結果得られた最適経路を、携帯端末装置20に配信するための案内経路データに編集する機能を備える。また、編集した案内経路データを、通信手段12を介して携帯端末装置20に送信する機能を備える。
【0029】
なお、案内経路データを編集するとき、災害時等の場合には、地図データ17を組み込まないで、道路ネットワークデータ18のみを利用して、現在位置からマイルートまでの経路情報と当該経路上に位置する交差点等の属性情報とを少なくとも含む案内経路データを編集し、携帯端末装置20に送信するとよい。これにより、経路探索サーバ10と携帯端末装置20の間で通信される情報量を少なくすることができるので、経路探索サーバ10及び携帯端末装置20の負荷を抑えることができる。
【0030】
記憶装置15は、ガイダンスデータ16と、地図データ17と、道路ネットワークデータ18と、マイルートデータ19とを備える記憶装置である。
【0031】
ガイダンスデータ16は、交差点などの分岐ノードにおける右左折等を案内する音声パターンなどのデータを蓄積したデータベースであり、案内経路に含まれる分岐ノード毎に該当するガイダンスデータは、配信データ編集手段14において編集される際に、案内経路データに組み合わされる。
【0032】
地図データ17は、ベクタ方式やラスタ方式等で構成される地図データである。
【0033】
道路ネットワークデータ18は、道路の交差点、屈曲点、端点などをノードとし、各ノード間を結ぶ経路をリンクとし、ノードデータ(ノードの緯度及び経度)と、リンクデータ(リンク番号)と、全てのリンクのコスト情報(距離や所要時間)に関するリンクコストデータとを含むデータベースとして構成される。
【0034】
マイルートデータ19は、各利用者のマイルートを蓄積したデータベースであり、各利用者を一意に特定する利用者識別子と、当該利用者のマイルートとが対応付けて記録されている。
【0035】
携帯端末装置20は、携帯電話機、PDA、携帯型ナビゲーション装置、ノートパソコン、その他の携帯可能な端末装置であり、主制御部21、通信手段22、GPS処理部23、経路案内要求手段24、ルート登録手段25、一時記憶手段26、入力手段27、表示手段28を備える。
【0036】
主制御部21は、RAMやROM等を有するプロセッサにより構成され、ROM等に格納された制御プログラムにより各部の動作を制御する。通信手段22は、ネットワークNを介して経路探索サーバ10と通信するためのインタフェースである。
【0037】
GPS処理部23は、現在位置を検出する位置検出手段として機能を備え、GPS受信機によりGPS衛星信号を受信し、携帯端末装置20の現在位置(緯度及び経度)を測位する。また、ジャイロセンサ、地磁気センサなどを備えることにより自律航法によって携帯端末装置20の現在位置を測位することができ、GPS受信機がGPS衛星信号から測位できない場合に、これに代わって現在位置を測位することができる。
【0038】
経路案内要求手段24は、利用者により入力された経路探索条件を、経路探索サーバ10に送信するデータに編集し、通信手段22を介して経路探索サーバ10に送信する機能を備える。本発明では、例えば、現在位置からマイルートまでの経路を探索するためのマイルート探索処理を要求したり、また、現在位置から所定の目的地までを、できる限りマイルートを通るように経路探索するよう要求したりすることができる。例えば、利用者は、災害発生時等に、携帯端末装置20のメニュー画面等を介して、経路探索サーバ10に対して、マイルート探索処理を行う旨を要求する。なお、マイルート探索要求を行うための専用キーを携帯端末装置20に設けてもよい。また、平常時に、所定時間毎に、又は、不定期に、マイルート探索処理を携帯端末装置20がバックグラウンドで行ってもよい。この場合、携帯端末装置20は、経路探索サーバ10から受信した案内経路を一時記憶手段26に記憶しておき、災害発生時等に経路探索サーバ10と通信することなく、一時記憶手段26に記憶した案内経路を読み出し、携帯端末装置20に表示させてもよい。
【0039】
ルート登録手段25は、任意の経路をマイルートとして経路探索サーバ10の記憶装置15に登録する機能を有する。このとき、利用者によって指定された任意の経路を登録するようにしてもよいし、GPSの測位結果の履歴情報を利用して、利用者がよく知っていると判断される経路を抽出して登録するようにしてもよい。マイルート情報としては、マイルート上に存在する各ノードの情報を登録することが好ましいが、その他の手法を採用してもよい。典型的には、マイルートとして、会社から自宅までの経路など、利用者がよく知っている経路が登録されることを想定している。利用者が予めマイルートを登録することにより、現在位置からマイルートへの最適経路の探索が可能になる。本実施例では、災害発生時に、現在位置からマイルートまでの最適経路がオフラインで表示される。
【0040】
利用者の指定によりマイルートを登録する場合、利用者は、表示手段28に経路探索サーバ10から読み出した地図を表示させて、入力手段27で地図上の所定の経路を指定することによりマイルートを登録してもよいし、ある地点から別の地点まで(例えば、会社所在地から自宅まで)の最適経路を経路探索サーバ10が探索し、利用者に提示された経路をマイルートとして登録してもよい。なお、本実施例では、登録したマイルートの情報、すなわち、マイルート上のノードの情報は、経路探索サーバ10の記憶装置15に利用者識別情報と対応付けて記録・管理するものとしているが、携帯端末装置20の備える記憶装置(不図示)にて記録・管理してもよい。
【0041】
また、GPSの測位結果の履歴情報を利用してマイルートを自動登録する場合には、GPS処理部23によって取得された測位結果の履歴情報から、過去に通ったことのある経路が分かるので、これを基に、ノード間のルート毎の慣用度を算出し、慣用度の高いルートを集めてマイルートとして抽出する。このとき、使用回数が多いルートは慣用度が高く、使用回数が少ないルートは慣用度が低くなるように調整される。また、使用日時が新しいルートは慣用度が高く、使用日時の古いルートは慣用度が低くなるように調整される。
【0042】
一時記憶手段26には、経路探索サーバ10から配信された案内経路、地図、ガイダンスデータなどの配信データが記憶される。これらの配信データは、必要に応じて一時記憶手段26から読み出され、表示手段28に表示される。
【0043】
入力手段27は、ユーザによる操作及び入力のためのものであり、数字キーやアルファベットキー、その他の機能キー、選択キー、スクロールキーなどを含む。また、タッチパネルであってもよい。出力手段である表示手段28に表示されるメニュー画面から所望のメニューを選択し、また、キー等を操作して種々の入力操作を行うものである。
【0044】
表示手段28には、メニュー画面や探索された案内経路などが表示される。利用者が経路探索サーバ10に経路探索を依頼する場合、入力手段27を操作し、サービスメニュー画面や所定の入力画面を表示手段28に表示して、出発地や目的地などの経路探索条件を入力する。出発地として現在位置を選択すると、GPS処理部23が測位した現在位置が出発地として使用される。また、災害発生時等に、利用者の指示に応じて、バックグラウンドで取得しておいたマイルートまでの案内経路を表示手段28に表示する。
【0045】
ネットワークNは、経路探索サーバ10と携帯端末装置20との間で情報を送受信するための通信回線である。例えば、インターネット、LAN、専用線、パケット通信網、電話回線、企業内ネットワーク、その他の通信回線、それらの組み合わせ等のいずれであってもよく、有線であるか無線であるかを問わない。
【0046】
次に、上記のように構成される経路案内システム100の動作の概要について説明する。
【0047】
携帯端末装置20は、平常時には、GPS処理部23による現在位置の測位結果をバックグラウンドで経路探索サーバ10に送信し、現在位置から目的地までの経路探索結果を当該経路探索サーバ10から受信する。そして、目的地までの案内経路を携帯端末装置20の表示手段28に表示するという通常の経路探索処理を行う。
【0048】
また、本実施形態においては、携帯端末装置20の現在位置からマイルートまでの経路を経路探索サーバ10で探索する処理(以下「マイルート探索処理」という。)を行う。バックグラウンド又は利用者の指示に応じてマイルート探索処理を実行し、マイルートまでの案内経路を携帯端末装置20に表示可能にさせる。
【0049】
図2は、経路案内システム100によるマイルート探索処理の一例を示すフローチャートである。なお、利用者のマイルートは事前に登録されているものとする。
【0050】
まず、携帯端末装置20は、所定の規則又は利用者からの指示等に応じて、マイルート探索処理の実行指示を経路探索サーバ10に送信するとともに、利用者の識別子と、現在位置に関する情報を、経路探索サーバ10に送信する(S31)。利用者識別子は、経路探索サービスを利用するための会員IDや携帯端末装置20に固有のID等を利用すればよい。また、現在位置に関する情報は、GPS処理部23による測位の結果を利用する。
【0051】
マイルート探索処理を開始する契機としては、所定の規則に基づいて携帯端末装置20が自動的にマイルート探索処理を開始するようにしてもよいし、利用者から指示があった場合にマイルート探索処理を開始するようにしてもよい。
【0052】
自動的にマイルート探索処理を開始する場合には、例えば、一定時間毎にマイルート探索処理を実行したり、交差点を通過したときにマイルート探索処理を実行する等、所定の規則に従って、マイルート探索処理をバックグラウンドで実行することが好ましい。この場合、災害発生時等に、経路探索サーバ10と携帯端末装置20とが通信できない場合であっても、直近でマイルート探索処理を実行した結果を読み出して表示することにより、利用者は、現在位置近傍からマイルートへの経路を確認することができる。
【0053】
また、利用者からの指示に基づいてマイルート探索処理を開始する場合には、例えば、携帯端末装置20のメニュー画面等を介して、利用者からマイルート探索処理を行う旨の指示が入力される。この場合には、利用者が所望するときに、現在位置からマイルートへの経路を確認できる。
【0054】
経路探索サーバ10は、マイルート探索処理の実行指示を受信すると、携帯端末装置20から受信した利用者識別子をキーにして、記憶装置15のマイルートデータ19から、事前に登録された当該利用者のマイルートを読み出す(S32)。
【0055】
なお、携帯端末装置20側でマイルートを記録・管理している場合には、ステップS31で、マイルートの情報も経路探索サーバ10に送信し、ステップS32を省略すればよい。
【0056】
次に、ステップS32で読み出したマイルート上の複数のノードのうち任意の一つを選択し、当該ノードと、携帯端末装置20から受信した現在位置との最適経路を探索する(S33)。この経路探索処理は、ダイクストラ法などの公知の経路探索アルゴリズムを利用して、現在位置からノードまでのパスの中からコスト情報が最小のものを探索すればよい。
【0057】
その後、マイルート上の全てのノードに対して、現在位置との最適経路を探索したか否かを確認する(S34)。そして、まだ、最適経路探索し終えていないノード(以下「未探索ノード」という。)が残っている場合には(S34:NO)、ステップS33に戻り、未探索ノードと現在位置との最適経路を探索する。
【0058】
こうして、マイルート上の各ノードと現在位置との最適経路探索を繰り返し、マイルート上の全てのノードに対して、現在位置との最適経路を探索し終えると(S34:YES)、マイルート上の全ノードのそれぞれに対して求めた最適経路の中から、コスト情報が最も小さいものを抽出することによって、現在位置からマイルートまでの案内経路を決定する(S35)。
【0059】
すなわち、マイルートMがn個のノード(N1,N2,・・・Nn)により構成され、マイルートM上のノードNxまでの最適経路が、現在位置からマイルートMまでの最適経路、すなわち案内経路である場合、現在位置PからノードNiまでの最適経路におけるコスト情報をC(P,Ni)とすると、次の式が成り立つ。
C(P,Nx)≦C(P,Ni) (i=1,2,・・・,n)
【0060】
なお、後述するとおり、コスト情報が最小のものだけでなく、所定の条件で複数の経路を抽出してもよく、この場合には、現在位置からマイルートまでの案内経路を複数提示することが可能である。
【0061】
経路探索サーバ10は、ステップS35で決定した案内経路に基づいて、案内経路データを編集し、携帯端末装置20に送信する(S36)。携帯端末装置20は、案内経路データを受信すると、一時記憶手段26に格納した後、経路探索サーバ10との間の通信セッションを切断する。
【0062】
その後、携帯端末装置20は、一時記憶手段26に格納された案内経路データを読み出して、マイルートまでの案内経路を表示手段28に表示する(S37)。このとき、バックグラウンドでマイルート探索処理を実行した場合には、災害発生時等に、利用者が携帯端末装置20のメニュー画面等を介して操作することにより、一時記憶手段26から案内経路データを読み出して、案内経路を表示手段28に表示させることが好ましい。また、利用者の指示に従ってマイルート探索処理を実行した場合には、携帯端末装置20が経路探索サーバ10から案内経路を受信後すぐに、案内経路を表示手段28に表示させることが好ましい。
【0063】
図7及び図8は、表示手段28に表示されるナビゲーション画面の一例を示す図である。なお、ここでは、2つのマイルートM1とM2が事前に登録されている場合を示す。図7は、マイルートM1,M2と、現在位置Pと、ルート探索結果Rとを、地図データ上に重畳して表示させる場合の一例である。また、図8は、マイルートM1,M2と、現在位置Pと、ルート探索結果Rとを、地図データ上に重畳することなく表示させる場合の一例である。図7及び図8に示すように、マイルート探索結果の表示画面には少なくとも、マイルートM(ここでは、M1とM2)と、現在位置Pと、ルート探索結果Rとが含まれる。また、マイルートM1,M2と、現在位置Pと、ルート検索結果Rは、表示画面上でそれぞれ識別できるように区別して表示される。
【0064】
なお、マイルートが複数登録されているとき、利用者は複数のマイルートの中から任意のマイルートを選択して、マイルート探索処理を行うことができる。例えば、図7に示す例において、利用者はマイルートM1又はマイルートM2のうち、いずれか一つを選択して、選択されたマイルートM1又はM2までの経路探索を行うことができる。
【0065】
こうして、携帯端末装置20の利用者は、現在位置から事前に登録しておいたマイルートまで到達するための最適な案内経路を、オフラインで閲覧できる。災害時であってもGPSは利用できるので、携帯端末装置20のGPS処理部23で測位することによって、オフラインでマイルートまでのナビゲーションを行うことができる。
【0066】
図3〜6は、マイルート探索処理結果の一例を示す概略図である。利用者は事前に、会社Xから自宅Yまでの経路をマイルートMとして登録しているものとする。ここでは、マイルートMが、n個のノード(N1,N2,・・・Nn)により構成され、会社Xに位置するノードがN1、自宅Yに位置するノードがNnであるものとする。
【0067】
図3は、現在位置P1からマイルートM上のいずれかの場所に案内する場合の一例を示す図である。図3に示す例では、マイルートM上のノードNaまでの経路Raが案内経路として提示される場合を示している。このとき、次の式が成り立つ。
C(P1,Na)≦C(P1,Ni) (i=1,2,・・・,n)
【0068】
図4は、現在位置P2からマイルートMに案内しないで、目的地である自宅Yまで直接案内する場合の一例を示す図である。このとき、自宅Yに位置するノードNnまでの経路Rnが案内経路として提示されるのであるから、次の式が成り立つ。
C(P2,Nn)<C(P2,Ni) (i=1,2,・・・,n−1)
【0069】
図5は、現在位置P3が遠方である場合の一例を示す図である。このような例として、例えば、丸の内から虎ノ門までがマイルートとして登録されていて、利用者が箱根にいる場合を想定すれば明らかなように、現在位置からマイルートまでの案内経路と、目的地である虎ノ門までの経路とは、実質的に相違しない。したがって、現在位置が遠方である場合には、利用者の設定により、現在位置P3からマイルートまでの案内経路、目的地までの案内経路、或いはこれらの両者を提示する。
【0070】
図6は、現在位置P4からマイルートMまでの案内経路を複数提示する場合の一例を示す図である。図6に示す例では、現在位置P4からマイルートMまでの最適経路はノードNbを経由するものである。このとき、次の式が成り立つ。
C(P4,Nb)≦C(P4,Ni) (i=1,2,・・・,n)
【0071】
しかし、ノードNbは目的地である自宅Yからの距離が遠い(コスト情報が大きい)ため、現在位置P4から目的地までのコスト情報の総和は、必ずしも最適でない。一方、ノードNcを経由する場合、現在位置P4からマイルートMまでの経路は必ずしも最適ではないが、目的地までのコスト情報全体を考えると最適経路といえる場合である。このとき、次の式が成り立つ。
C(P4,Nc)+C(Nc,Nn)≦C(P4,Ni)+C(Ni,Nn) (i=1,2,・・・,n)
【0072】
このようなとき、経路探索サーバ10は、現在位置P4からノードNbまでの経路Rbと、ノードNcまでの経路Rcの2つを提示してもよい。
【0073】
図9は、現在位置からマイルートを経由して目的地まで到達する案内経路を提示する場合の一例を示す図である。目的地までの経路を探索する場合、マイルートから外れた時点で、目的地Gの方向に向かってマイルート探索処理を行うことによって、マイルートに引き込む経路を利用者に提示する。
【0074】
例えば、図9に示す例では、まず現在位置Pから目的地Gの方向に向かってマイルート探索処理を行うことによって、マイルートM3に引き込む経路R1が利用者に提示される。その後、利用者がマイルートM3を通り抜けて地点P1に到達したとき、地点P1から目的地Gの方向に向かってマイルート探索処理を行うことによって、マイルートM4に引き込む経路R2が利用者に提示される。
【0075】
なお、図6において説明したように、マイルートへの最適経路と、目的地への最適経路が一致しない場合には、複数の案内経路を利用者に提示して、利用者に選択させてもよい。図9に示す例では、地点P1からマイルートM4への最適経路R2と、目的地Gへの最適経路R3の両者を利用者に提示してもよい。
【0076】
以上、詳述したとおり、本発明によれば、携帯端末装置20の利用者は、現在位置から事前に登録しておいたマイルートまで到達するための最適経路を閲覧できる。また、携帯端末装置20は、一度経路探索サーバ10から案内経路データを受信すれば、経路探索サーバ10と通信することなく、オフラインでマイルートまでの案内経路を利用者に提示するので、バッテリーの消耗を防ぐことができる。
【0077】
特に、災害時には、携帯端末装置20の限られた資源を有効に活用する必要があるが、本発明では、経路探索サーバ10と携帯端末装置20間の通信負荷等を抑えることにより、経路探索サーバ10及び携帯端末装置20の資源を有効に利用できる。
【0078】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。このため、上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。例えば、上述の各処理ステップは処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更して又は並列に実行することができる。
【0079】
本実施形態では、マイルートを登録するためのルート登録手段25を携帯端末装置20が備えるものとしたが、経路探索サーバ10がルート登録手段25に相当する機能を備え、携帯端末装置20に当該機能を提供するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】経路案内システム100の概略構成を示すブロック図である。
【図2】経路案内システム100によるマイルート探索処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】現在位置P1からマイルートM上のいずれかの場所に案内する場合の一例を示す図である。
【図4】現在位置P2からマイルートMに案内しないで、目的地である自宅Yまで直接案内する場合の一例を示す図である。
【図5】現在位置P3が遠方である場合の一例を示す図である。
【図6】現在位置P4からマイルートMまでの案内経路を複数提示する場合の一例を示す図である。
【図7】表示手段28に表示されるナビゲーション画面の一例を示す図である。
【図8】表示手段28に表示されるナビゲーション画面の他の一例を示す図である。
【図9】現在位置からマイルートを経由して目的地まで到達する案内経路を提示する場合の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
10 経路探索サーバ
11 主制御部
12 通信手段
13 経路探索手段
14 配信データ編集手段
15 記憶装置
16 ガイダンスデータ
17 地図データ
18 道路ネットワークデータ
19 マイルートデータ
20 携帯端末装置
21 主制御部
22 通信手段
23 GPS処理部(位置検出手段)
24 経路案内要求手段
25 ルート登録手段
26 一時記憶手段
27 入力手段
28 表示手段
100 経路案内システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経路探索サーバと携帯端末装置とがネットワークを介して接続される経路案内システムであって、
前記経路探索サーバ又は前記携帯端末装置の少なくともいずれか一方に、所定の経路(以下「マイルート」という。)を格納する記憶装置を備え、
前記携帯端末装置は、
現在位置を検出する位置検出手段と、
前記経路探索サーバから受信した案内経路情報を表示する表示手段と、
を備え、
前記経路探索サーバは、
前記位置検出手段により検出された現在位置から、前記記憶装置に格納されたマイルートまでの経路を探索する経路探索手段と、
前記経路探索手段により探索された経路に基づいて案内経路情報を編集し、当該案内経路情報を前記携帯端末装置に送信する配信データ編集手段と、
を備える経路案内システム。
【請求項2】
前記位置検出手段によって検出された現在位置の履歴情報を利用して、利用者の使用頻度の高い経路を、マイルートとして前記記憶装置に格納することを特徴とする請求項1記載の経路案内システム。
【請求項3】
前記携帯端末装置は、前記経路探索サーバからバックグラウンドで案内経路情報を受信して一時記憶手段に格納しておき、利用者からの指示に応じて前記一時記憶手段に格納された案内経路情報を読み出して前記表示手段に表示することを特徴とする請求項1又は2記載の経路案内システム。
【請求項4】
前記携帯端末装置は、利用者の指示に応じて前記経路探索サーバから案内経路情報を受信して前記表示手段に表示することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の経路案内システム。
【請求項5】
現在位置を検出する位置検出手段と、
前記経路探索サーバから受信した案内経路情報を表示する表示手段と、
を備える携帯端末装置とネットワークを介して接続される経路探索サーバであって、
前記経路探索サーバは、
前記位置検出手段により検出された現在位置から、記憶装置に登録された所定の経路(以下「マイルート」という。)までの経路を探索する経路探索手段と、
前記経路探索手段により探索された経路に基づいて案内経路情報を編集し、当該案内経路情報を前記携帯端末装置に送信する配信データ編集手段と、
を備える経路探索サーバ。
【請求項6】
経路探索サーバと携帯端末装置とがネットワークを介して接続される経路案内システムにおける経路案内方法であって、
記憶装置に所定の経路(以下「マイルート」という。)を格納する登録ステップと、
前記携帯端末装置が、現在位置を検出する位置検出ステップと、
前記経路探索サーバが、前記位置検出ステップにより検出された現在位置から、前記記憶装置に格納されたマイルートまでの経路を探索する経路探索ステップと、
前記経路探索サーバが、前記経路探索ステップにより探索された経路に基づいて案内経路情報を編集し、当該案内経路情報を前記携帯端末装置に送信する配信データ編集ステップと、
前記携帯端末装置が、前記経路探索サーバから受信した案内経路情報を表示する表示ステップと、
を備える経路案内方法。
【請求項7】
現在位置を検出する位置検出手段と、
前記経路探索サーバから受信した案内経路情報を表示する表示手段と、
を備える携帯端末装置とネットワークを介して接続される経路探索サーバにおける経路探索方法であって、
前記位置検出手段により検出された現在位置を受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信した現在位置から、記憶装置に登録された所定の経路(以下「マイルート」という。)までの経路を探索する経路探索ステップと、
前記経路探索ステップにより探索された経路に基づいて案内経路情報を編集する編集ステップと、
当該案内経路情報を前記携帯端末装置に送信する送信ステップと、
を備える経路探索方法。
【請求項8】
請求項7に記載の経路探索方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−288168(P2009−288168A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143141(P2008−143141)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(500578216)株式会社ゼンリンデータコム (231)
【Fターム(参考)】