説明

経路案内生成装置、方法及びシステム

【課題】 交通状況の変化に応じた適切な経路情報を提供する。
【解決手段】 車両12の走行情報取得部22において、車両の現在位置を示す位置情報を取得する。位置情報は車両情報取得部34に送られ、道路地図を構成する複数のブロックの中から、前記車両の現在位置に対応するブロックを示すブロック情報を取得する。車両情報記憶部36は、一定時間を挟んだ二時点における前記ブロック情報を、起点ブロック及び終点ブロックとして記憶する。候補エリア抽出部40は、起点ブロック及び終点ブロックを起点・終点とするOD表を生成し、閾値を超える起点ブロック及び終点ブロックの組み合わせを、起点エリア及び終点エリアとして抽出する。候補経路抽出部42は、起点エリアから終点エリアに至る走行経路を候補経路として抽出し、候補経路に基づき経路図を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転手に対し、目的地までの経路情報を提供する経路案内生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、簡略化された道路地図と文字情報を組み合わせて、現在の交通状況や目的地までの経路情報を表示する技術が知られている。例えば、非特許文献1(VICS(登録商標))では、VICSセンターにおいて収集された渋滞情報、所要時間情報、規制情報等を車両に送信することで、車両に設けられたディスプレイに、自車位置及び走行方向を基準とした経路図と、渋滞情報及び目的地までの所要時間の情報とを重ねて表示することができる。
【0003】
また、特許文献1では、自車両前方の画像を撮影するとともに、自車位置から次の案内交差点までの距離を算出して、車両前方の画像と案内交差点までの距離情報を重ねて表示するナビゲーション装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−272083号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“VICS表示例−機能と仕組み”、[Online]、掲載年月日不明、[平成23年3月17日検索]、インターネット<URL: http://www.vics.or.jp/structure/example/html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記非特許文献に記載の技術では、表示される経路及び目的地の情報が固定されており、表示対象外の経路及び目的地については、車両の通行量が多い場合であっても表示されることがないため、絶えず変化する交通状況に応じた経路情報を提供することが困難であった。
【0007】
また、交通状況は時間に応じて刻一刻と変動することから、交通状況の変化に応じて、経路情報を提供すべき位置を適宜変更することが好ましいところ、上記非特許文献に記載の技術では、自車両の位置を基準とした経路情報を表示する場所が、光ビーコンないし電波ビーコンが設置されている場所に固定されているため、経路情報を提供すべき位置を変更することができなかった。
【0008】
さらに、上記特許文献に記載のナビゲーション装置では、表示される道路情報が撮像可能範囲に限定されるため、離れた目的地までの経路や所要時間といった情報を表示することはできなかった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、交通状況の変化に応じた適切な経路情報を提供することのできる経路案内生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の経路案内生成装置は、車両の現在位置を示す位置情報を取得するとともに、道路地図を構成する複数のブロックの中から、前記車両の現在位置に対応するブロックを示すブロック情報を取得する車両情報取得部と、一定時間を挟んだ二時点における前記ブロック情報を、起点ブロック及び終点ブロックとして記憶する車両情報記憶部と、前記起点ブロック及び前記終点ブロックを起点及び終点とする車両の数が閾値を越える組み合わせを、起点エリア及び終点エリアとして抽出する候補エリア抽出部と、前記起点エリアから前記終点エリアに至る走行経路を候補経路として抽出し、前記候補経路に基づき前記経路図を生成する候補経路抽出部とを備えた構成を有する。
【0011】
この構成により、車両の走行量が多いエリアを起点・終点とする走行経路を抽出して経路図を生成することができるので、交通状況の変化に応じた適切な経路情報を提供することが可能となる。
【0012】
本発明の経路案内生成装置において、前記候補エリア抽出部は、前記複数のブロックの中から候補ブロックを抽出するとともに、前記候補ブロックを前記起点ブロック及び前記終点ブロックとするOD表を生成することで、前記起点エリア及び前記終点エリアを抽出する。この構成により、道路地図を構成する全てのブロックの中から抽出された一部のブロックに対してのみを処理対象とするため、候補経路を生成する処理を削減することができる。
【0013】
本発明の経路案内生成装置において、前記車両情報記憶部は、前記車両の走行経路を示す走行経路情報を記憶しており、前記候補経路抽出部は、前記起点エリアから前記終点エリアに至る走行経路の中から、前記車両情報記憶部に記憶された前記走行経路と一致する車両の数が閾値を超える経路を前記候補経路として定める。この構成により、車両の走行量が多い走行経路を候補経路として定めることができ、交通状況の変動を更に反映した経路情報を提供することが可能となる。
【0014】
本発明の経路案内生成装置において、前記候補経路抽出部は、前記候補経路による経路図における分岐点の位置を、前記経路図を出力表示すべき経路案内位置として定める。この構成により、交通状況の変動を反映した適切な位置において、経路情報を提供することが可能となる。
【0015】
本発明の経路案内生成装置において、前記候補経路抽出部は、複数の起点エリア及び終点エリアに対応する前記候補経路を組み合わせることで、前記経路図を生成する。この構成により、例えばある起点エリアから別の終点エリアに至る走行経路の交通量が多い場合に、そのような走行経路を候補経路として定めることができるから、交通状況の変動を更に反映した経路情報を提供することが可能となる。
【0016】
本発明の経路案内生成装置は、前記起点エリアから前記終点エリアを含む経路における、所定時間経過後の渋滞状況を示す渋滞予測情報を生成し、この渋滞予測情報に基づき前記起点エリアから前記終点エリアまでの所要時間を算出し、経路情報として出力する経路案内生成部を備えた構成を有する。この構成により、将来の渋滞予測に基づく目的地までの所要時間の情報を車両に提供することができ、経路情報提供の効果を更に高めることができる。
【0017】
本発明の経路案内生成方法は、車両の現在位置を示す位置情報を取得するとともに、道路地図を構成する複数のブロックの中から、前記車両の現在位置に対応するブロックを示すブロック情報を取得する車両情報取得ステップと、一定時間を挟んだ二時点における前記ブロック情報を、起点ブロック及び終点ブロックとして記憶する車両情報記憶ステップと、前記起点ブロック及び前記終点ブロックを起点及び終点とする車両の数が閾値を越える組み合わせを、起点エリア及び終点エリアとして抽出する候補エリア抽出ステップと、前記起点エリアから前記終点エリアに至る走行経路を候補経路として抽出し、前記候補経路に基づき前記経路図を生成する候補経路抽出ステップを備えた構成を有する。この構成によっても、上記と同様に、車両の走行量が多いエリアを起点・終点とする走行経路を抽出して経路図を生成することができるので、交通状況の変化に応じた適切な経路情報を提供することが可能となる。
【0018】
本発明の経路案内生成システムは、経路案内を示す経路図を生成する経路案内生成装置と、前記経路図を表示する車両から構成され、前記経路案内生成装置は、前記車両の現在位置を示す位置情報を取得するとともに、道路地図を構成する複数のブロックの中から、前記車両の現在位置に対応するブロックを示すブロック情報を取得する車両情報取得部と、一定時間を挟んだ二時点における前記ブロック情報を、起点ブロック及び終点ブロックとして記憶する車両情報記憶部と、前記起点ブロック及び前記終点ブロックを起点及び終点とする車両の数が閾値を越える組み合わせを、起点エリア及び終点エリアとして抽出する候補エリア抽出部と、前記起点エリアから前記終点エリアに至る走行経路を候補経路として抽出し、前記候補経路に基づき前記経路図を生成する候補経路抽出部とを備え、前記車両は、前記位置情報を取得する位置情報取得部と、前記経路案内生成装置で生成された前記経路図の情報を受信する通信部と、前記経路図を出力表示する表示部とを備えた構成を有する。この構成によっても、上記と同様に、車両の走行量が多いエリアを起点・終点とする走行経路を抽出して経路図を生成することができるので、交通状況の変化に応じた適切な経路情報を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、車両の走行状況に基づいて、経路情報として提供すべき候補経路を抽出するようにしたので、交通状況の変化に応じた適切な経路情報を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る経路案内表示システムの構成を示すブロック図
【図2】経路案内生成装置及び車両の構成を示すブロック図
【図3】道路地図を構成する複数のブロックから、候補ブロックを抽出する例を示す説明図
【図4】車両情報記憶部に記憶されているデータの一例を示す説明図
【図5】道路地図を構成する複数のブロックと候補ブロックとの対応関係を示す説明図
【図6】候補ブロックに対する交通量OD図の一例を示す説明図
【図7】起点ブロックから終点ブロックに至る複数経路の中から候補経路を抽出する例を示す説明図
【図8】抽出された候補経路に基づき経路案内位置を決定する例を示す説明図
【図9】複数の起点ブロック及び終点ブロックに基づき抽出された候補経路を重ね合わせた例を示す説明図
【図10】ある起点ブロックから複数の終点ブロックに至る候補経路を抽出した例を示す説明図
【図11】経路情報を生成する処理の手順を示すフローチャート
【図12】経路情報の表示例を示す説明図
【図13】道路地図から候補ブロックを抽出する別の例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1において、本実施形態に係る経路案内生成装置10は、車両12から現在位置を示す位置情報を取得するとともに、取得した位置情報に基づいて、目的地までの経路図、目的地までの所要時間の情報、経路図を表示すべき経路案内位置を決定する。また、経路案内生成装置は、生成された経路図、目的地までの所要時間、経路案内位置等の情報(以下、「経路情報」と総称する)を車両12に送信することで、経路案内位置を通過した車両12において、経路図及び所要時間の情報が表示される。なお、経路案内生成装置10と車両12は、例えば無線通信回線14によって接続されており、位置情報や経路情報のデータを送受信する。
【0022】
図2は、経路案内生成装置10と車両12の構成を示すブロック図である。図2において、車両12は、例えば道路上の様々な情報を収集するプローブカー及び/又は一般の車両であり、地図DB20、走行情報取得部22、経路情報記憶部24、通信部26、表示部28を備えており、図示しない車両ECUによってその動作が制御されている。
【0023】
地図DB20は、例えば図示しないカーナビゲーション装置に設けられており、地図を構成する各道路区間(リンク)の位置情報、各リンクの端点(ノード)の位置情報、道路上の施設情報などのデータを含む。また、地図DB20は、経路案内生成装置10から送信される経路情報を記憶する。
【0024】
走行情報取得部22は、例えば、車両に備えられたGPSセンサ、速度センサ、方向センサ等の各種センサを含み、車両の現在位置、車速度、走行方向といった情報を取得する。また、走行情報取得部22は、取得された現在位置等の情報と、地図DB20に記憶されたリンクの位置情報を照合することで、車両が現在走行中の道路を特定し、車両の位置情報を更新する。
【0025】
経路情報記憶部24は、車両12の走行経路を一定時間間隔で取得し、一時的に記憶するものである。ここで、車両12の走行経路は、例えば、車両が通過した道路に対応するノードの識別情報(経由ノード情報)であり、この経由ノード情報を走行順に並べて記憶することで、車両12の走行経路を記憶することができる。
【0026】
通信部26は、例えばインターネット回線に接続可能な無線通信モジュールであり、経路案内生成装置10に対して車両の現在位置を示す位置情報及び経由ノード情報を送信し、経路案内生成装置10より経路情報を受信するものである。また、通信部20として、例えば路上に設置された通信装置との間で、公知の路車間通信を行うことができる無線通信モジュールを適用しても良い。
【0027】
表示部28は、例えば図示しないカーナビゲーション装置に備えられたLCDパネルまたは有機ELパネルであり、通常は当該カーナビゲーション装置からの地図画像が表示される。また、表示部28は、車両12が後述する経路案内位置を通過したときに、経路案内生成装置10によって生成された経路図と目的地までの所要時間の情報を重ねて表示する。
【0028】
図2において、経路案内生成装置10は、通信部30、地図DB32、車両情報取得部34、車両情報記憶部36、候補エリア抽出部40、候補経路抽出部42、経路情報生成部44を備える。
【0029】
通信部30は、車両12に設けられた通信部26と同様の無線通信モジュールであり、車両12より位置情報及び経由ノード情報及びを一定時間間隔で受信するとともに、車両12に対して経路情報を送信する。
【0030】
地図DB32は、地図を構成する各道路(リンク)の位置情報、各リンクの端点(ノード)の位置情報を記憶している。また、地図DB32は、図3に示すように、地図50を複数のブロック52に区切るとともに、各ブロックの境界位置を示す情報(あるいは、各ブロックに含まれるノードの識別情報)を記憶している。
【0031】
車両情報取得部34は、通信部30を介して車両12より送信された位置情報を取得するとともに、地図DB32に記憶された各ブロックの境界位置情報を参照して、当該車両12の位置に対応するブロックの識別情報を取得し、起点ブロック情報及び終点ブロック情報として車両情報記憶部36に記憶する。
【0032】
車両情報記憶部36は、経路案内生成装置10と接続された全ての車両の識別情報(車両ID)、起点ブロック情報、終点ブロック情報及び経由ノード情報を、一時的に記憶するものである。ここで、起点ブロック情報とは、ある時点における車両12の位置に対応するブロックの識別情報である。また、終点ブロック情報とは、起点ブロック情報を取得してから一定時間を経過した時点における車両12の位置に対応するブロックの識別情報であり、起点ブロック情報と同様にして取得することができる。
【0033】
図4は、車両情報記憶部36に記憶されたデータの一例を示すものである。例えば、車両IDが「C1」の車両に対しては、起点ブロックがB1、終点ブロックがB4、経由ノードがN1,N2という情報が記憶されており、これは、当該車両が、一定時間の間にブロックB1内の道路から、ノードN1,N2を経由して、ブロックB4内の道路に達したことを示している。また、車両IDが「C2」の車両に対しては、起点ブロック及び終点ブロックがB2となっており、これは、当該車両が同じブロック内にとどまっていたことを示している。車両情報記憶部36は、他の車両C3・・・Cnに対しても、同様のデータを記憶している。
【0034】
候補エリア抽出部40は、道路地図を分割した各ブロックの中で、後述するOD表の対象とすべきブロックを、候補ブロックとして抽出する。この候補ブロックの抽出は、例えば、車両情報記憶部36に記憶された車両の起点ブロック情報を読み出し、読み出されたブロックの数(すなわち、当該ブロック内に存在する車両数)が、予め定められた閾値TH1以上である場合に、候補ブロックとして抽出する。同様にして、車両情報記憶部36に記憶された終点ブロックに対しても、候補ブロックを抽出する。
【0035】
図5は、起点・終点ブロックが共通する車両を、ブロックごとにまとめた例を示すものである。例えば、ブロックID「B1」を起点ブロックとする車両(起点車両)はC1,C4を含み、終点ブロックとする車両(終点車両)はC6,C7を含む。そして、候補エリア抽出部40は、例えばブロックID「B1」のブロックに属する起点車両の数が閾値TH1を超えているとして、当該ブロックを候補ブロックA1として抽出する。同様にして、候補エリア抽出部40は、ブロックID「B3」のブロックを、候補ブロックA2として抽出する。
【0036】
図3において、ドットで塗りつぶされたブロックは、候補エリア抽出部40によって抽出された候補ブロックA1〜A4を示している。このように、道路地図を構成するブロックの中から、車両数の多いものを候補ブロックとして抽出することで、全てのブロックについて候補経路を抽出する処理が不要となり、処理量の削減を図ることができる。なお、候補ブロックとしては、個々のブロックを1つの候補ブロックとしても良いし、あるいは、連続する複数のブロックを1つの候補ブロックとして抽出しても良い。また、道路地図を構成する全てのブロックを、候補ブロックとしても良い。
【0037】
そして、候補エリア抽出部40は、抽出された候補ブロックに対して、車両の走行量が多い起点・終点ブロックの組合せを抽出する。候補エリア抽出部40は、まず、候補ブロックを起点・終点とするOD(Origin-Destination)表を生成する。このOD表は、車両情報記憶部36に記憶された各車両の起点及び終点ブロック情報のうち、候補ブロックを含むものを抽出してカウントすることで、生成することができる。
【0038】
図6は、候補エリア抽出部40によって生成されたOD表の一例を示したものである。OD表において、「O」で示された行が起点ブロック、「D」で示された列が終点ブロックを示す。そして、例えば、起点ブロックを「A2」、終点ブロックを「A1」とする組合せに対応する車両数がG21となっており、これは、一定時間内に、ブロックA2からブロックA1に移動した車両数がG21であることを意味する。また、起点ブロック及び終点ブロックが「A2」である組合せに対応する車両数がG22となっており、これは、ブロックA2から外のブロックに移動していない(例えば停車中の)車両数がG22であることを意味する。
【0039】
そして、候補エリア抽出部40は、生成したOD表に基づき、経路情報を生成すべき起点及び終点ブロックの組合せ(以下、「起点エリア」「終点エリア」とする。)を抽出する。例えば、OD表を構成する各要素の値が閾値TH2以上であるブロックの組合せを、起点・終点エリアとして抽出することができる。このようにして抽出された起点・始点エリアの情報は、候補経路抽出部42に出力される。
【0040】
候補経路抽出部42は、候補エリア抽出部40によって抽出された起点・始点エリアの情報に基づき、経路案内として表示すべき候補経路を抽出する。図7は、候補経路抽出部42において、ある起点エリアOA1から終点エリアDA1に至る候補経路1及び候補経路2を抽出する例を示したものである。候補経路抽出部42は、起点エリアOA1及び終点エリアDA1を、それぞれ起点ブロック及び終点ブロックとする車両の経由ノード情報を、車両情報記憶部36より読み出すことで、起点エリアOA1から経由ノードを通って終点エリアDA1に至る経路を抽出する。そして、候補経路抽出部42は、抽出された経路と同じ経路情報を有する(すなわち、同じ経路を走行した)車両の数を検出し、その数が閾値TH3を超えた経路を、候補経路として抽出する。
【0041】
図7は、抽出された複数の経路の中から、候補経路1,2を抽出する例を示すものである。起点エリアOA1から終点エリアDA1に至る全ての経路(点線及び実線で示した経路)の中から、車両の走行量(流量)が多い経路に対して候補経路1,2(実線で示した経路)が抽出される。
【0042】
そして、候補経路抽出部42は、上記のようにして抽出された候補経路において、分岐点に対応する箇所を、経路案内位置として設定する。図8は、図7において抽出された候補経路に対して経路案内位置60を設定した例を示す。この経路案内位置の情報には、選択されたノードと、次に向かうノードの情報(方向情報)が含まれる。候補経路抽出部42は、抽出された候補経路情報と、経路案内位置の情報を経路案内生成部44に出力する。さらに、候補経路抽出部42は、抽出された起点・終点エリアの全ての組み合わせに対して、候補経路及び経路案内位置の情報を生成する。
【0043】
さらに、候補経路抽出部42は、全ての候補経路を重ね合わせることで、ある起点エリアから終点エリアに至る経路図を生成する。経路候補の重ね合わせは、例えば、ある起点・終点エリアの組合せに対応する候補経路と、別の起点・終点ブロックの組合せに対応する候補経路との間に、一致するノードが含まれる場合に、この一致するノードを基準として、2つの候補経路を重ね合わせる。
【0044】
図9は、ある起点・終点エリアの組合せOA1,DA1に対応する候補経路と、別の起点・終点エリアの組合せOA2,DA2に対応する候補経路とを重ね合わせた例を示すものである。起点エリアOA1から終点エリアDA1に至る経路と、起点エリアOA2から終点エリアDA2に至る経路との間で、ノード62,64を結ぶ経路に重複が生じており、候補経路抽出部42は、この重複経路を基準として、2つの経路を重ね合わせる。
【0045】
そして、重ね合わせの結果、ある起点エリア(例えばOA1)から、別の終点エリア(例えばDA2)に至る交通量(流量)を、ODエリア生成部40で生成されたOD表から読み出す。そして、交通量が所定の閾値TH4以上である場合には、起点エリアOA1及び終点エリアDA1を基準とした経路図に、別の終点エリアDA2に至る候補経路3を付加することで、経路地図を更新する(図10)。また、経路の重ね合わせにより、新たな分岐点(例えばノード62)が生じた場合には、候補経路抽出部42は、この新たな分岐点を、経路案内位置として追加しても良い。
【0046】
候補経路抽出部42は、このようにして生成された候補経路及び経路案内位置の情報を、経路案内生成部44に出力する。経路案内生成部44は、生成された経路情報の各々について、起点ブロックから終点ブロックまでの到達時間を、抽出された候補経路ごとに算出する。終点ブロックまでの到達時間の算出は、例えば、特開2007−219990号公報に記載の方法により算出された渋滞予測情報に基づき、算出することができる。すなわち、道路リンクごとに車両の存在量を取得し、取得された存在量を含む時間関数存在量(発生フェロモン)と時間関数伝達量(伝達フェロモン)を算出し、これら時間関数存在量及び時間関数伝達量に基づき、所定時間経過後(例えば5分後)の渋滞予測情報を求めることで、終点ブロックまでの到達時間を算出することができる。あるいは、VICSサーバから送信される渋滞情報に基づき、終点ブロックまでの到達時間を算出しても良い。
【0047】
以下、上記構成による経路案内生成装置の動作について、図11のフローチャートを用いて説明する。まず、各車両12の車両情報取得部22において、現在位置の情報を取得し、得られた位置情報を、通信部20を介して経路案内生成装置10へ送信する。また、各車両12が通過したノードの情報を、経路情報として経路情報記憶部24に記憶する。
【0048】
経路案内生成装置10では、通信部30において、各車両12から送信された位置情報を受信する。そして、車両情報取得部34は、地図DB32を参照して車両12が走行中のブロックを検出し、起点ブロック情報として取得する。得られた起点ブロック情報は、車両IDと対応付けて車両情報記憶部34に記憶される(S11)。
【0049】
次に、経路案内生成装置10は、起点ブロック情報を取得してから所定時間が経過したか否かをチェックし(S11)、所定時間が経過した場合は、車両情報取得部34において各車両12の位置情報及び経由ノード情報を取得し、当該車両が走行中のブロックを検出して、終点ブロック情報として取得する。そして、車両情報取得部34は、この終点ブロック情報と経由ノード情報とを、車両IDと対応付けて車両情報記憶部36に記憶する(S12)。これにより、起点及び終点ブロック情報が、車両情報記憶部36に記憶される。
【0050】
そして、候補エリア抽出部40は、車両情報記憶部36に記憶された起点及び終点ブロック情報に基づき、各ブロックに属する車両の数を算出し、その数が閾値以上であるブロックを、経路図生成用の候補ブロックとして抽出する(S13)。そして、候補エリア抽出部40は、抽出された候補ブロックを起点・終点とするOD表を生成する。これにより、あるブロックから別のブロックに移動した(あるいは、同じブロック内を走行している)車両数(流量)を検出することができる。
【0051】
候補エリア抽出部40は、生成されたOD表に基づき、走行する車両数が所定の閾値以上である起点・終点ブロックの組合せを抽出して、経路案内を生成すべき起点・終点エリアとして定める(S14)。この起点・終点エリアの情報は、走行経路抽出部42に出力される。
【0052】
走行経路抽出部42は、車両の走行経路情報を、車両情報記憶部36より読み出すとともに、走行経路が共通する車両数が所定の閾値を超える経路のみを、候補経路として抽出する(S15)。さらに、走行経路抽出部42は、抽出された候補経路の中から、分岐点に相当するノードを経路案内位置として設定する(S16)。これにより、交通量に応じた経路図及び経路案内位置を決定することができる。
【0053】
走行経路抽出部42は、別の起点・終点エリアの組み合わせに対して、同様の候補経路を抽出するとともに、ある起点エリアから別の終点エリアに至る走行量が所定の閾値を超える場合には、当該起点エリアから別の終点エリアに至る経路を、別の候補経路として抽出する。これにより、ある起点エリアを始点とした、複数の目的地に至る走行経路に関する経路図が生成される。
【0054】
そして、経路情報生成部44は、走行経路抽出部42によって抽出された走行経路の各々について、起点から目的地に至る走行時間の情報を算出することで、経路案内情報を生成する(S17)。このようにして生成された候補経路、経路案内位置、経路案内情報は、通信部30より車両12に送信される(S18)。
【0055】
車両12では、経路案内生成装置10から受信した候補経路、経路案内位置、経路案内情報を、地図DB20に記憶する。そして、車両12において、経路案内位置に相当するノードに近づいたことが検出されると、対応する候補経路の経路図及び経路案内情報を、表示部28に表示する。
【0056】
図12は、表示部28に表示された経路案内の一例を示す。表示部28には、経路案内生成装置10によって生成された経路図72と、自車両の位置を示すアイコン74と、目的地までの所要時間を示す経路案内情報76とが表示される。また、ある目的地(例えばD1)に至る経路が複数存在する場合には、各経路に対する経路案内情報が表示される。これにより、車両12の運転手は、絶えず変動する交通状況を反映した、適切な経路情報を取得することができる。
【0057】
上記実施形態では、道路地図を予め複数のブロックに区分けしているが、ブロックの区分けを動的に決定しても良い。例えば、図13に示すように、道路地図80を構成する道路82上の車両密度を検出するとともに、ホットスポット分析等の手法により、車両密度が高い領域84を候補ブロックとして抽出しても良い。
【0058】
また、上記実施形態では、抽出された起点・終点エリアを走行する車両の経路情報の全てを抽出し、流量の多いものを候補経路として抽出しているが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、各起点・終点エリアにおける代表ノードの情報をあらかじめ記憶しておき、起点エリアから終点エリアに至る代表ノードの組み合わせの中から、距離が一定値以下の代表ノードの組み合わせ、あるいは距離がもっと短い代表ノードの組合せを、候補経路として抽出しても良い。あるいは、各起点・終点エリアの中心を代表ノードとして定めても良く、これにより、計算量を削減することができる。
【0059】
上記実施形態では、抽出された経路図における全ての分岐点につき、経路案内位置として設定しているが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、交通量が特に多い多い分岐点のみを経路案内位置として定めても良い。あるいは、設定された経路案内位置の中から、交通量の大小に応じて優先度を設け、優先度が高い経路案内位置における経路情報のみを、車両に送信するように設定しても良い。
【0060】
また、上記実施形態では、車両12に備えられたディスプレイに経路案内を表示しているが、本発明はこれに限られることはなく、例えば、道路上に固定された経路案内用のディスプレイに対して、経路図及び目的地までの所要時間を生成し、これらを表示するようにしても良い。
【0061】
上記実施形態では、経路案内生成装置において1種類の経路情報のみ生成しているが、例えば、朝、昼、夜といった時間帯毎に経路情報を生成しても良く、また、曜日毎、天気毎の経路情報を生成することもできる。
【0062】
また、上記実施形態では、目的地までの所要時間の情報のみを表示しているが、本発明はこれに限られることはなく、例えば、各経路における渋滞情報、各経路上の施設情報といった他の情報を組み合わせて表示しても良い。
【0063】
また、上記実施形態では、ある目的地に至る候補経路が複数ある場合に、これら複数の走行経路を同時に表示しているが、本発明はこれに限られることはなく、たとえば、同一の目的地に至る複数の候補経路において、所要時間の差が所定値(例えば10分)を超える場合にのみ、全ての所要時間の情報を出力表示するようにしても良い。これにより、表示部28に表示される情報量を減らすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本発明によれば、変動する交通状況を反映した適切な経路情報を車両に提供することができ、経路案内を生成する装置として有用である。
【符号の説明】
【0065】
10 経路案内生成装置
12 車両
20,32 地図DB
22 走行情報取得部
24 経路情報記憶部
26,30 通信部
28 表示部
34 車両情報取得部
36 車両情報記憶部
40 候補エリア抽出部
42 候補経路抽出部
44 経路案内生成部
OA1,OA2 起点エリア
DA1,DA2 終点エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経路案内を示す経路図を車両に提供するための経路案内生成装置であって、
前記車両の現在位置を示す位置情報を取得するとともに、道路地図を構成する複数のブロックの中から、前記車両の現在位置に対応するブロックを示すブロック情報を取得する車両情報取得部と、
一定時間を挟んだ二時点における前記ブロック情報を、起点ブロック及び終点ブロックとして記憶する車両情報記憶部と、
前記起点ブロック及び前記終点ブロックを起点及び終点とする車両の数が閾値を越える組み合わせを、起点エリア及び終点エリアとして抽出する候補エリア抽出部と、
前記起点エリアから前記終点エリアに至る走行経路を候補経路として抽出し、前記候補経路に基づき前記経路図を生成する候補経路抽出部とを備えたことを特徴とする経路案内生成装置。
【請求項2】
前記候補エリア抽出部は、前記複数のブロックの中から候補ブロックを抽出するとともに、前記候補ブロックを前記起点ブロック及び前記終点ブロックとするOD表を生成することで、前記起点エリア及び前記終点エリアを抽出することを特徴とする、請求項1記載の経路案内生成装置。
【請求項3】
前記車両情報記憶部は、前記車両の走行経路を示す走行経路情報を記憶しており、
前記候補経路抽出部は、前記起点エリアから前記終点エリアに至る走行経路の中から、前記車両情報記憶部に記憶された前記走行経路と一致する車両の数が閾値を超える経路を前記候補経路として定めることを特徴とする請求項1記載の経路案内生成装置。
【請求項4】
前記候補経路抽出部は、前記候補経路による経路図における分岐点の位置を、前記経路図を出力表示すべき経路案内位置として定めることを特徴とする、請求項1記載の経路案内生成装置。
【請求項5】
前記候補経路抽出部は、複数の起点エリア及び終点エリアに対応する前記候補経路を組み合わせることで、前記経路図を生成することを特徴とする請求項1記載の経路案内生成装置。
【請求項6】
前記起点エリアから前記終点エリアを含む経路における、所定時間経過後の渋滞状況を示す渋滞予測情報を生成し、この渋滞予測情報に基づき前記起点エリアから前記終点エリアまでの所要時間を算出し、経路情報として出力する経路案内生成部を備えたことを特徴とする請求項1記載の経路案内生成装置。
【請求項7】
経路案内を示す経路図を車両に提供するための経路案内生成方法であって、
前記車両の現在位置を示す位置情報を取得するとともに、道路地図を構成する複数のブロックの中から、前記車両の現在位置に対応するブロックを示すブロック情報を取得する車両情報取得ステップと、
一定時間を挟んだ二時点における前記ブロック情報を、起点ブロック及び終点ブロックとして記憶する車両情報記憶ステップと、
前記起点ブロック及び前記終点ブロックを起点及び終点とする車両の数が閾値を越える組み合わせを、起点エリア及び終点エリアとして抽出する候補エリア抽出ステップと、
前記起点エリアから前記終点エリアに至る走行経路を候補経路として抽出し、前記候補経路に基づき前記経路図を生成する候補経路抽出ステップを備えたことを特徴とする経路案内生成方法。
【請求項8】
経路案内を示す経路図を生成する経路案内生成装置と、前記経路図を表示する車両から構成されるシステムであって、
前記経路案内生成装置は、
前記車両の現在位置を示す位置情報を取得するとともに、道路地図を構成する複数のブロックの中から、前記車両の現在位置に対応するブロックを示すブロック情報を取得する車両情報取得部と、
一定時間を挟んだ二時点における前記ブロック情報を、起点ブロック及び終点ブロックとして記憶する車両情報記憶部と、
前記起点ブロック及び前記終点ブロックを起点及び終点とする車両の数が閾値を越える組み合わせを、起点エリア及び終点エリアとして抽出する候補エリア抽出部と、
前記起点エリアから前記終点エリアに至る走行経路を候補経路として抽出し、前記候補経路に基づき前記経路図を生成する候補経路抽出部とを備え、
前記車両は、
前記位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記経路案内生成装置で生成された前記経路図の情報を受信する通信部と、
前記経路図を出力表示する表示部と
を備えたことを特徴とする経路案内生成システム。
【請求項9】
前記候補経路抽出部は、前記候補経路による経路図における分岐点の位置を、前記経路図を出力表示すべき経路案内位置として定め、
前記表示部は、前記車両が前記経路案内位置に達したときに、前記経路図を出力表示することを特徴とする請求項8記載の経路案内生成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−208603(P2012−208603A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72320(P2011−72320)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(502324066)株式会社デンソーアイティーラボラトリ (332)
【Fターム(参考)】