説明

経路案内装置、経路案内システム、経路案内プログラム、及び経路案内方法

【課題】 災害などの緊急事態の発生時に被災者等を適切な避難経路に誘導することを可能とする。
【解決手段】 避難経路上に配置され、互いに通信回線を介して接続される二以上の経路案内装置における、隣接する経路案内装置間の経路ごとに、経路識別情報、経路の両端にそれぞれ配置された経路案内装置の識別情報を含む経路情報を記憶する経路情報記憶部と、隣接する経路案内装置間の経路ごとに、経路識別情報、通信障害発生の有無を含む経路状況を記憶する経路状況記憶部と、隣接する他の経路案内装置と通信可能であるか否かを判定して、当該経路案内装置と隣接する他の経路案内装置間の経路ごとに、通信障害発生の有無を経路状況記憶部に記憶させる通信制御部と、経路状況記憶部に通信障害発生有りと記録されている経路を除外して、当該経路案内装置が配置されている位置から最寄りの避難場所までの避難経路を算出する経路算出部とを備えた経路案内装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害などの緊急事態の発生時に被災者等を適切な避難経路に誘導するための経路案内装置、経路案内システム、経路案内プログラム、及び経路案内方法に関する。
【背景技術】
【0002】
災害などの緊急事態の発生時に、被災者等を適切な避難経路に誘導するための経路案内システムにおいては、通常、経路情報や利用者情報等がセンターの情報処理装置で集中管理されている。
このため、各拠点の情報処理装置とセンターの情報処理装置間の通信に障害が発生した場合、避難誘導の指示を、センターの情報処理装置から各拠点の情報処理装置に対して出すことができなくなってしまうという問題があった。
【0003】
すなわち、このような経路案内システムでは、経路情報や利用者情報等がセンターの情報処理装置で管理され、このセンターの情報処理装置により避難経路が算出されて、各拠点の情報処理装置に送信されるようになっていた。
このため、センターと各拠点における情報処理装置間の通信に障害が発生したり、センターの情報処理装置へのアクセスが集中して負荷が過剰になったりすると、センターの情報処理装置から各拠点の情報処理装置に避難経路を送信できず、避難誘導を行えなくなってしまっていた。
【0004】
被災者を適切な避難経路に誘導する関連技術としては、例えば特許文献1に記載の避難経路情報生成装置を挙げることができる。
この避難経路情報生成装置によれば、ホストコンピュータにより生成した避難経路情報を経路情報発信機に送信し、携帯端末がこの経路情報発信機から避難経路情報を受信する構成となっている。
これにより、災害等の発生時に、通路ごとに避難経路を表示するための表示装置を配置する必要がなく、また避難者ごとに避難経路を算出する必要もなく、避難者に避難経路を指示して避難場所に誘導することが可能とされている。
【0005】
また、特許文献2に記載の避難経路提供システムは、平常時に定期的に、経路探索サーバから携帯端末装置に避難経路を送信して記憶させておくものである。
これにより、災害発生時に、携帯端末装置は、サーバと通信できなくても、オフラインで所望の地点間の避難経路の経路を表示することが可能とされている。
【0006】
また、特許文献3に記載の防災用電子案内システムは、防災センターなどからコンビニエンスストアなどの拠点に設けられた電子案内板へ被災状況等を送信して、表示させるものである。また、近くの拠点間で被災状況等を送受信して、地域住民に知らせることが可能とされている。
【0007】
さらに、特許文献4に記載の避難誘導システムでは、避難案内サーバが、避難誘導情報を作成して、居住区域に設置された複数のアクセスポイントに送信する。アクセスポイントはこれを保存し、通信範囲内に被災者の通信端末が存在したとき、保存した避難誘導情報を被災者の通信端末に送信する。
また、複数のアクセスポイント間の接続状況を確認し、不良であった場合、そのアクセスポイント近辺は災害等の影響で危険な状態となっているおそれがあるため、避難案内サーバは、迂回ルートを示す避難誘導情報を作成して、各アクセスポイントに送信する。
このような構成にすることで、被災地で携帯電話機の使用が集中して、避難場所への誘導が的確に行えなくなる問題を回避できるとともに、最新の災害状況等を反映して、被災者をより安全な避難ルートに誘導することが可能となっている。
【0008】
これらの関連技術では、サーバによって避難経路情報が算出され、得られた避難経路情報が各拠点の情報処理装置に送信される構成となっている。また、各拠点の情報処理装置により避難経路が表示され、あるいは各拠点の情報処理装置から被災者の携帯端末に避難経路情報が送信されて表示されるようになっている。
このため、これらの関連技術を用いれば、災害などによりサーバと拠点間で通信ができなくなった場合でも、各拠点の情報処理装置により避難経路を表示等させることで、被災者を避難誘導することが可能となっている。
【0009】
【特許文献1】特開2007−011830号公報
【特許文献2】特開2007−147340号公報
【特許文献3】特開2007−133473号公報
【特許文献4】特開2008−257332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、サーバと拠点の情報処理装置間で通信ができなくなった後に避難経路上に危険な経路が生じる場合もある。
このような場合、既に作成された避難経路情報にもとづく避難誘導は危険であり、当該避難経路情報はもはや使用すべきではない。
【0011】
ここで、特許文献4に記載の避難誘導システムによれば、拠点の情報処理装置は、このような避難経路情報は削除して、不適切な誘導が行われることを回避している。
このようにすれば、不適切な誘導は行われないが、サーバとの通信ができなくなった拠点においては、避難誘導が行われない。
しかし、このような場合でも、拠点において、被災者に対して適切な避難経路を提供可能とすることがより望ましい。
【0012】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、各拠点の情報処理装置に、独自に避難経路情報を作成する機能を持たせることで、センターと拠点の情報処理装置間に通信障害が生じた場合でも、適切な避難誘導を行うことが可能な分散自律型の経路案内装置、経路案内システム、経路案内プログラム、及び経路案内方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の経路案内装置は、避難経路上に配置され、互いに通信回線を介して接続される二以上の経路案内装置における、隣接する経路案内装置間の経路ごとに、経路識別情報、経路の両端にそれぞれ配置された経路案内装置の識別情報を含む経路情報を記憶する経路情報記憶部と、隣接する経路案内装置間の経路ごとに、経路識別情報、通信障害発生の有無を含む経路状況を記憶する経路状況記憶部と、隣接する他の経路案内装置と通信可能であるか否かを判定して、当該経路案内装置と隣接する他の経路案内装置間の経路ごとに、通信障害発生の有無を経路状況記憶部に記憶させる通信制御部と、経路状況記憶部に通信障害発生有りと記録されている経路を除外して、当該経路案内装置が配置されている位置から最寄りの避難場所までの避難経路を算出する経路算出部とを備えた構成としてある。
【0014】
また、本発明の経路案内システムは、避難経路上に配置され、互いに通信回線を介して接続される二以上の経路案内装置における、隣接する経路案内装置間の経路ごとに、経路識別情報、経路の両端にそれぞれ配置された経路案内装置の識別情報を含む経路情報を記憶する経路情報記憶部、経路案内装置間の経路ごとに、経路識別情報、通信障害発生の有無を含む経路状況を記憶する経路状況記憶部、隣接する他の経路案内装置と通信可能であるか否かを判定して、当該経路案内装置と隣接する他の経路案内装置間の経路ごとに、通信障害発生の有無を経路状況記憶部に記憶させる通信制御部、及び、経路状況記憶部に通信障害発生有りと記録されている経路を除外して、最寄りの避難場所までの避難経路を算出する経路算出部を備えた経路案内装置と、経路案内装置に通信回線を介して接続するセンター装置とを有する構成としてある。
【0015】
また、本発明の経路案内プログラムは、コンピュータを、避難経路上に配置され、互いに通信回線を介して接続される二以上の経路案内装置における、隣接する経路案内装置間の経路ごとに、経路識別情報、経路の両端にそれぞれ配置された経路案内装置の識別情報を含む経路情報を記憶する経路情報記憶部、隣接する経路案内装置間の経路ごとに、経路識別情報、通信障害発生の有無を含む経路状況を記憶する経路状況記憶部、隣接する他の経路案内装置と通信可能であるか否かを判定して、当該経路案内装置と隣接する他の経路案内装置間の経路ごとに、通信障害発生の有無を経路状況記憶部に記憶させる通信制御部、及び、経路状況記憶部に通信障害発生有りと記録されている経路を除外して、当該経路案内装置が配置されている位置から最寄りの避難場所までの避難経路を算出する経路算出部として機能させる構成としてある。
【0016】
また、本発明の経路案内方法は、避難経路上に配置された二以上の経路案内装置が、それぞれ独自に、隣接する他の経路案内装置と通信可能であるか否かを判定し、通信可能でない経路案内装置との間の経路を除外して、最寄りの避難場所までの避難経路を算出し、当該避難経路を表示装置に表示し、又は、被災者が使用する無線通信端末に送信する方法としてある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、各拠点における経路案内装置が、隣接している経路案内装置との間に通信障害が発生しているか否かを判定し、通信可能でない経路案内装置との間の経路を除外して、独自に最寄りの避難場所までの避難経路を算出することができる。
このため、経路案内装置がセンター装置と通信できなくなっても、適切な避難誘導を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る経路案内システムの好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
なお、以下の実施形態に示す本発明の経路案内システムは、プログラムに制御されたコンピュータにより動作するようになっている。コンピュータのCPU(Central Processing Unit)は、プログラムにもとづいてコンピュータの各構成要素に指令を送り、経路案内装置等の動作に必要となる所定の処理、例えば、センター装置との通信可否確認処理、隣接する経路案内装置との通信可否判定処理、隣接する経路案内装置からの経路状況受信処理、経路状況DB(データベース)の更新処理、最適経路の算出処理、最適経路の表示処理等を行わせる。このように、本発明の経路案内システムにおける各処理,動作は、プログラムとコンピュータとが協働した具体的手段により実現できるものである。
【0019】
プログラムは予めROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)等の記録媒体に格納され、コンピュータに実装された記録媒体から当該コンピュータにプログラムを読み込ませて実行されるが、例えば通信回線を介してコンピュータに読み込ませることもできる。
また、プログラムを格納する記録媒体は、例えば半導体メモリ,磁気ディスク,光ディスク、その他任意のコンピュータで読取り可能な任意の記録手段により構成できる。
【0020】
[第一実施形態]
まず、本発明の第一実施形態の構成について、図1〜図5を参照して説明する。図1は、本実施形態の経路案内システムの構成を示すブロック図である。図2は、本実施形態の経路案内システムにおけるセンター装置の構成を示すブロック図である。図3は、本実施形態の経路案内システムにおける経路案内装置の構成を示すブロック図である。図4は、本実施形態の経路案内システムにおけるセンター装置の各DBのデータ構造を示すブロック図である。図5は、本実施形態の経路案内システムにおける経路案内装置の各DBのデータ構造を示すブロック図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の経路案内システムは、センター装置10と、避難経路上に配置された複数の経路案内装置20(同図の例では経路案内装置20a,経路案内装置20b,経路案内装置20c,経路案内装置20d,経路案内装置20e)とから構成されている。また、無線通信端末30が、経路案内装置20aと無線通信が可能な圏内に存在しているようすが示されている。
【0022】
また、図1において、経路案内装置20aと経路案内装置20bが配置されている区間を経路1、経路案内装置20aと経路案内装置20cが配置されている区間を経路2、経路案内装置20bと経路案内装置20cが配置されている区間を経路3、経路案内装置20bと経路案内装置20dが配置されている区間を経路4、経路案内装置20cと経路案内装置20dが配置されている区間を経路5、経路案内装置20dとセンター装置10が配置されている区間を経路6、経路案内装置20dと経路案内装置20eが配置されている区間を経路7としている。
【0023】
本実施形態の経路案内通信システムでは、図1の例に示すように、経路をメッシュ形式で構成している。
このため、ある経路に通信障害が発生しても、その迂回経路を得ることができるようになっている。
【0024】
本実施形態では、同図に示すように、経路案内装置20aと経路案内装置20bの間、及び経路案内装置20dとセンター装置10の間に通信障害が発生し、経路1と経路6が通行できなくなっていることを想定している。
【0025】
センター装置10は、図2に示すように、経路案内装置情報DB10−1、利用者情報DB10−2、経路情報DB10−3、避難場所DB10−4、経路状況DB10−5、避難経路DB10−6、通信制御部10−7、DB管理部10−8、及び経路算出部10−9を備えている。
【0026】
経路案内装置情報DB10−1は、本実施形態の経路案内システムにおける経路案内装置20の情報を管理する。
この経路案内装置情報DB10−1のデータ構造は、例えば図4に示すように、経路案内装置20を識別するための情報である経路案内装置ID(Identification)、各経路案内装置20の最寄りの避難場所を識別するための情報である最寄りの避難場所ID、各経路案内装置20に隣接する一又は二以上の経路案内装置20を識別するための情報である隣接する経路案内装置ID1、隣接する経路案内装置ID2,隣接する経路案内装置ID3等を含むものとすることができる。
【0027】
利用者情報DB10−2は、本実施形態の経路案内システムの利用者に関する情報を記憶する。
この利用者情報DB10−2のデータ構造は、例えば図4に示すように、利用者を識別するための情報である利用者ID、及び利用者が使用する無線通信端末30を識別するための情報である無線端末IDを含むものとすることができる。
【0028】
経路情報DB10−3は、本実施形態の経路案内システムにおける各経路案内装置20間の経路の情報を管理する。
この経路情報DB10−3のデータ構造は、例えば図4に示すように、経路を識別するための情報である経路ID、経路の両端にそれぞれ配置された経路案内装置20を識別するための情報である経路案内装置ID1、及び経路案内装置ID2、経路の距離を含むものとすることができる。
【0029】
避難場所DB10−4は、本実施形態の経路案内システムにおける避難場所情報を管理する。
この避難場所DB10−4のデータ構造は、例えば図4に示すように、避難場所を識別するための情報である避難場所ID、避難場所IDに対応する避難場所の最寄りの経路案内装置20又はセンター装置10を識別するための情報である最寄り装置IDを含むものとすることができる。
【0030】
なお、避難場所から当該避難場所に最寄りの経路案内装置20又はセンター装置10までの距離が離れている場合等には、この避難場所DB10−4に、避難場所から最寄り装置が配置された位置までの経路の経路IDと距離を保有させることも好ましい。このような場合には、避難経路の算出にあたって、この経路情報を追加することで、最適な避難経路をより正確に算出することが可能となる。
経路案内装置20における避難場所DB20−5、及び経路案内装置20における最適な避難経路の算出についても同様にすることができる。
【0031】
経路状況DB10−5は、本実施形態の経路案内システムにおける経路状況情報(単に経路状況と称する場合がある)を管理する。
この経路状況DB10−5のデータ構造は、例えば図4に示すように、経路ID、経路IDに対応する経路の両端にそれぞれ配置された経路案内装置20間における通信障害発生の有無、経路IDに対応する経路上に存在している利用者を識別するための情報である利用者ID1、利用者ID2、利用者ID3等を含むものとすることができる。
【0032】
避難経路DB10−6は、本実施形態のセンター装置10により算出された避難経路情報(単に避難経路と称する場合がある)を、経路案内装置20ごとに管理する。
この避難経路DB10−6のデータ構造は、例えば図4に示すように、経路案内装置ID、最寄りの避難場所ID、経路案内装置IDに対応する経路案内装置20が配置された位置から最寄りの避難場所に至るまでの経路を示す、経路ID1、経路ID2、経路ID3等を含むものとすることができる。
【0033】
通信制御部10−7は、センター装置10と経路案内装置20との情報の送受信を行う。具体的には、通信制御部10−7により、センター装置10は、経路案内装置20からそれぞれの経路状況を受信し、各経路案内装置20に対して、避難経路を送信することができる。
【0034】
DB管理部10−8は、経路案内装置情報DB10−1、利用者情報DB10−2、経路情報DB10−3、及び避難場所DB10−4などへの情報の登録、変更、削除等を行う。
【0035】
経路算出部10−9は、経路案内装置情報DB10−1、経路情報DB10−3、避難場所DB10−4、及び経路状況DB10−5等に格納されている情報にもとづいて、経路案内装置20ごとにそれぞれの最寄りの避難場所までの避難経路を算出し、得られた避難経路を避難経路DB10−6に格納する。
また、経路算出部10−9は、得られた避難経路を、通信制御部10−7を介して各経路案内装置20に送信する。
【0036】
このとき、経路算出部10−9は、各経路案内装置20に対して、得られた全ての避難経路を送信することができる。
また、各経路案内装置20に対して、自己の経路案内装置IDに対応する避難経路のみを送信することもできる。
【0037】
経路算出部10−9は、経路の算出にあたり、経路状況DB10−5における各経路の通信障害の発生の有無を確認し、通信障害が発生しておらず通行が可能な経路を用いて、経路案内装置20ごとに、最寄りの避難場所に至るまでの最短の経路を算出する。
【0038】
このとき、経路算出部10−9は、経路案内装置20ごとに、最寄りの避難場所までの経路であって、通行可能な全ての経路を算出するとともに、それぞれの距離の合計値を算出し、もっとも距離が短い経路を、対応する経路案内装置20の避難経路として算出することができる。
【0039】
経路案内装置20(20a,20b,20c,20d,20e)は、避難経路になる可能性のある経路の各拠点、例えば道路や歩道、駅構内、ビルのなか等に配置される情報処理装置である。この経路案内装置20としては、VoIP(Voice Over IP)サービスを提供する装置などを使用することができる。
これらは互いにネットワークで接続され、またネットワークを介してセンター装置10に接続されている。これらのネットワークには、無線LAN(Local Area Network)などを用いることができる。また、無線通信端末30は、無線LANなどを介して経路案内装置20に無線通信端末30の位置情報や利用者情報等を送信することができる。
【0040】
経路案内装置20は、経路案内装置情報DB20−1、利用者情報DB20−2、利用者位置情報DB20−3、経路情報DB20−4、避難場所DB20−5、経路状況DB20−6、避難経路DB20−7、通信制御部20−8、DB管理部20−9、利用者位置監視部20−10、経路算出部20−11、経路表示制御部20−12、及び経路表示部20−13を備えている。
【0041】
図5に示すように、経路案内装置20には、センター装置10におけるDBに加え、利用者の移動履歴を管理するための利用者位置情報DB20−3が備えられている。その他のDBについては、センター装置10と経路案内装置20とで、同様のものが備えられている。また、経路案内装置情報DB20−1、経路情報DB20−4、避難場所DB20−5等における情報は、センター装置10から経路案内装置20に予め送信して記憶させておくことができる。
【0042】
経路案内装置情報DB20−1は、当該経路案内装置20に関する各種情報を記憶する。また、経路案内装置情報DB20−1に、当該経路案内装置20から最寄りの避難場所に至るまでの経路における他の経路案内装置20に関する情報等も併せて記憶させてもよい。
この経路案内装置情報DB20−1のデータ構造は、例えば図5に示すように、経路案内装置ID、最寄りの避難場所ID、隣接する経路案内装置ID1、隣接する経路案内装置ID2、隣接する経路案内装置ID3等を含むものとすることができる。
【0043】
隣接する経路案内装置IDは、当該経路案内装置20に隣接する一又は二以上の経路案内装置20の識別情報である。
例えば、図1の経路案内装置20cについて、経路案内装置情報DB20−1には、隣接する経路案内装置IDとして、経路案内装置20a、経路案内装置20b、及び経路案内装置20dの識別情報が記憶される。
【0044】
利用者情報DB20−2は、本実施形態の経路案内システムの利用者の情報を記憶する。
この利用者情報DB20−2のデータ構造は、例えば図5に示すように、利用者を識別するための情報である利用者ID、利用者が使用する無線通信端末30を識別するための情報である無線端末IDを含むものとすることができる。
なお、本実施形態において、利用者IDとして無線端末IDを用い、利用者情報DB20−2、及びセンター装置10における利用者情報DB10−2に利用者IDのみを持たせて、利用者及び無線通信端末30を識別することも可能である。
【0045】
利用者位置情報DB20−3は、利用者IDごとに、対応する利用者が現在存在している経路を識別する情報である現在経路ID、及び当該利用者が移動してきた経路の識別情報を移動経路ID1、移動経路ID2、移動経路ID3等のように順に記憶する。
【0046】
経路情報DB20−4は、経路IDごとに、当該経路の両端に配置されている経路案内装置20の識別情報である経路案内装置ID1及び経路案内装置ID2を記憶する。
この経路情報DB20−4には、少なくとも当該経路案内装置20から、当該経路案内装置20の最寄りの避難場所に対応するセンター装置10又は経路案内装置20までの経路についての経路情報が記憶されている。
【0047】
避難場所DB20−5は、本実施形態の経路案内システムにおける避難場所情報を管理する。
この避難場所DB20−5のデータ構造は、例えば図5に示すように、避難場所を識別するための情報である避難場所ID、避難場所IDに対応する避難場所の最寄りの経路案内装置20又はセンター装置10を識別するための情報である最寄り装置IDを含むものとすることができる。
【0048】
経路状況DB20−6は、経路IDごとに、通信障害の発生の有無と、当該経路に存在している利用者のIDを記憶する。
この経路状況DB20−6には、当該経路案内装置20に隣接する各経路案内装置20までの経路についての経路状況が含まれる。
また、隣接する経路案内装置20から受信した、隣接する経路案内装置20の経路状況も含めることができる。
【0049】
被災者が所持する無線通信端末30が、利用者位置監視部20−10により検出されると、この無線通信端末30の現在位置が経路状況DB20−6に記憶されている経路IDに対応する経路上に存在する場合、無線通信端末30の無線端末IDに対応する利用者IDが、利用者位置監視部20−10により経路状況DB20−6における対応する経路IDのレコードにおいて追加して記憶される。
【0050】
また、無線通信端末30の現在位置が、経路状況DB20−6に記憶されている経路IDに対応する経路上に存在しなくなると、無線通信端末30の無線端末IDに対応する利用者IDは、利用者位置監視部20−10により対応する経路IDのレコードから削除される。
【0051】
避難経路DB20−7は、当該経路案内装置20の識別情報である経路案内装置ID、最寄りの避難場所を識別するための情報である避難場所ID、及び当該経路案内装置20が配置された位置から最寄りの避難場所までの経路に対応する経路IDを、経路ID1,経路ID2,経路ID3のように順に記憶する。
【0052】
通信制御部20−8は、当該経路案内装置20と、センター装置10及び他の経路案内装置20との情報の送受信を行う。
具体的には、通信制御部20−8は、自己の経路状況をセンター装置10に送信し、当該経路案内装置20から最寄りの避難場所までの避難経路を、センター装置10から受信することができる。
【0053】
また、通信制御部20−8は、当該経路案内装置20と隣接する経路案内装置20との間で通信が可能であるか否かを判定するとともに、通信可能な隣接する経路案内装置20から経路状況を受信し、受信した経路状況を経路状況DB20−6に記憶させる。
【0054】
DB管理部20−9は、経路案内装置情報DB20−1、利用者情報DB20−2、経路情報DB20−4、及び避難場所DB20−5などへの情報の追加、変更、削除等を行う。
【0055】
利用者位置監視部20−10は、通信可能圏内に存在する無線通信端末30を検出して、当該無線通信端末30の無線端末IDを取得する。また、この無線端末IDに対応する利用者IDを利用者情報DB20−2から取得する。
この無線通信端末30の検出は、無線通信端末30からのアクセスにもとづき行うことができる。また、無線通信端末30からの発信を所定のタイミングごとに検出することもできる。
【0056】
さらに、利用者位置監視部20−10は、取得した利用者IDにもとづき利用者位置情報DB20−3を検索して対応するレコードが存在するか否かを確認する。
そして、存在していない場合は、検出された無線通信端末30が位置する経路のIDを現在経路IDとして、当該利用者IDについての新たなレコードを追加する。
【0057】
一方、存在している場合は、検出された無線通信端末30が、検索により得られたレコードの現在経路IDに対応する経路上に位置しているか否かを判定する。
そして、無線通信端末30が現在経路IDに対応する経路上に位置している場合は、特に処理を行わない。
【0058】
また、無線通信端末30が現在経路IDに対応する経路上に位置していない場合、この現在経路IDを当該レコードにおける移動経路IDの最後尾に追加するとともに、無線通信端末30の位置に対応する経路IDを現在経路IDとして、利用者位置情報DB20−3を更新する。
【0059】
さらに、利用者位置監視部20−10は、無線通信端末30の現在位置に対応する経路IDにもとづいて、経路状況DB20−6を検索し、対応するレコードを取得する。
次に、取得したレコードに、無線通信端末30の無線端末IDに対応する利用者IDが含まれているか否かを確認する。
そして、含まれていなければ、取得したレコードに、当該利用者IDを含めて、経路状況DB20−6を更新する。
【0060】
経路算出部20−11は、当該経路案内装置20が配置された位置から最寄りの避難場所までの最適な経路を、経路状況DB20−6に記憶されている情報等にもとづき算出する。
この経路状況DB20−6には、当該経路案内装置20とこれに隣接する経路案内装置20間の経路における通信障害発生の有無が記録されている。また、通信制御部20−8により、所定のタイミングで、通信可能な隣接する経路案内装置20から経路状況が受信され、経路状況DB20−6に記録されている。
このため、経路算出部20−11は、隣接する経路案内装置20に、さらに隣接する経路案内装置20までの避難経路が通行不可能になっていないかをも含めて、最適な避難経路を算出することが可能となっている。
【0061】
この最適な経路の算出方法は、例えば、次のように行うことができる。
まず、経路算出部20−11は、経路案内装置情報DB20−1から当該経路案内装置20の最寄りの避難場所IDを取得する。
次に、取得した最寄りの避難場所IDに対応するセンター装置10又は経路案内装置20の装置IDを避難場所DB20−5から取得する。
【0062】
そして、当該経路案内装置20から、上記取得した装置IDに対応するセンター装置10又は経路案内装置20までの避難経路を、経路情報DB20−4及び経路状況DB20−6に記録されている情報にもとづき算出する。
このとき、経路算出部20−11は、経路状況DB20−6において、通信障害の発生が有りと記録されている経路を除外して、避難経路を算出する。
また、当該経路案内装置20から最寄りの避難場所までの経路が複数存在する場合、これら全ての経路のうち、距離が最短のものを最適な避難経路として算出することができる。
【0063】
経路表示制御部20−12は、算出された最適な避難経路を地図情報に表して、これを経路表示部20−13に表示させる。この地図情報は、経路案内装置20やこれに接続された記憶装置に保有されているもの等を使用することができ、少なくとも当該経路案内装置20が配置されている位置から、最寄りの避難場所までの情報が含まれる。
経路表示部20−13は、経路案内装置20に内蔵又は外部接続されたディスプレイやモニタなどの表示装置である。
【0064】
次に、本実施形態の経路案内システムにおける処理手順について、図6を参照して説明する。同図は、本実施形態の経路案内システムにおける経路案内装置20の処理手順を示すフローチャートである。
まず、経路案内装置20は、センター装置10と通信可能であるか否かを確認する(ステップ10)。
【0065】
経路案内装置20がセンター装置10と通信可能である場合(ステップ11のYES)、経路案内装置20は、経路状況DB20−6に登録されている経路状況をセンター装置10に送信する(ステップ12)。
経路状況DB20−6には、当該経路案内装置20が隣接する経路案内装置20と通信可能であるか否かを、通信制御部20−8により所定のタイミングで判定した結果が、通信障害発生の有無として記録されている。
【0066】
また、経路状況DB20−6には、隣接する経路案内装置20までの経路上に存在している被災者の利用者IDが、利用者位置監視部20−10により記録されている。
そして、経路案内装置20は、これらの通信障害発生の有無や利用者IDを含む経路状況を、センター装置10に送信する。
【0067】
また、経路案内装置20は、センター装置10において経路算出部10−9により算出された、当該経路案内装置20が配置された位置から最寄りの避難場所までの最適な避難経路を、センター装置10から受信する(ステップ13)。
そして、経路案内装置20は、受信した最適な避難経路を表示する(ステップ14)。
【0068】
次に、この避難経路におけるいずれの経路上にも被災者がいない場合、すなわち、その経路について、経路状況DB20−6に利用者IDが一つも記録されていない場合は、避難誘導が完了しているものとして、処理を終了する(ステップ20のYES)。
【0069】
なお、当該経路案内装置20から隣接する経路案内装置20までの経路について、経路状況DB20−6に利用者IDが一つも記録されていない場合、当該経路案内装置20が避難経路を提示すべき被災者が近辺に存在していないため、処理を終了してもよい。
【0070】
一方、この避難経路におけるいずれかの経路上に被災者が存在する場合、すなわち、その経路について、経路状況DB20−6に利用者IDが記録されている場合、避難誘導が完了していないものとして、ステップ10からの処理を繰り返し実行する(ステップ20のNO)。
なお、当該経路案内装置20から隣接する経路案内装置20までの経路について、経路状況DB20−6に利用者IDが記録されている場合にのみ、ステップ10からの処理を繰り返し実行してもよい。
【0071】
次に、経路案内装置20がセンター装置10と通信可能でない場合(ステップ11のNO)、経路案内装置20は、通信制御部20−8により、隣接する経路案内装置20に対して通信を試みて、通信可否を判定する(ステップ15)。
そして、その判定結果にもとづいて、経路案内装置20は、通信制御部20−8により、隣接する経路案内装置20までの経路ごとに、通信障害発生の有無を経路状況DB20−6に記録する。
【0072】
また、経路案内装置20は、通信可能圏内における被災者の無線通信端末30を検出してその位置を特定し、無線通信端末30に対応する利用者IDを、無線通信端末30が存在している位置に対応する経路について、経路IDごとに経路状況DB20−6に記録する。
【0073】
このとき、無線通信端末30から位置情報や利用者情報を経路案内装置20に送信し、経路案内装置20による無線通信端末30の検出及びその位置特定を行うことが可能である。
また、無線通信端末30に発信機を備え、経路案内装置20が無線通信端末30の発信機を検出してその位置特定を行うことも可能である。
【0074】
次に、経路案内装置20は、通信制御部20−8により、隣接する経路案内装置20からそれぞれの経路状況を受信する(ステップ16)。そして、受信した経路状況を経路状況DB20−6に更新する(ステップ17)。
また、経路案内装置20は、上述したように、経路算出部20−11により、経路案内装置情報DB20−1、経路情報DB20−4、避難場所DB20−5、及び経路状況DB20−6に記録されている情報にもとづき最寄りの避難場所までの最適な避難経路を算出し(ステップ18)、算出した避難経路を表示する(ステップ19)。そして、上述したステップ20の処理を実行する。
【0075】
なお、ステップ14及びステップ19において、経路案内装置20による避難経路の表示に代えて、又はこれと共に、避難経路を無線通信端末30に送信させることもできる。これにより、被災者が、経路案内装置20の表示装置を視認できない位置にあり、かつ、被災者の無線通信端末30が経路案内装置20と無線通信可能な圏内にいる場合に、被災者に避難経路を伝えることが可能となる。
【0076】
例えば、図1に示すように、経路1と経路6に通信障害が発生している場合、各経路案内装置20は、それぞれ独自に最適な避難経路を算出することができる。
このとき、経路案内装置20aから避難場所までの避難経路としては、「避難経路1:経路2→経路5→経路7」と「避難経路2:経路2→経路3→経路4→経路7」の2つの経路が存在する。
そして、本実施形態では、避難経路1の距離が避難経路2の距離よりも短いため、避難経路1が最適な避難経路として算出される。
【0077】
以上説明したように、本実施形態の経路案内装置、経路案内システム、経路案内プログラム、及び経路案内方法によれば、センター装置と各拠点に配置された経路案内装置との間に通信障害が発生しても、各経路案内装置によりそれぞれの最寄りの避難場所までの最適な避難経路を算出して、被災者に提供することができる。
このとき、経路案内装置は、隣接する装置との間に通信障害が発生していないかを確認し、通行できない可能性が高い避難経路を除外して避難経路を算出することができる。また、隣接する経路案内装置間で経路状況を交換し、その経路状況を含めて避難経路を算出することもできる。このため、より適切な避難誘導を行うことが可能となっている。
【0078】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について、図7及び図8を参照して説明する。図7は、本実施形態の経路案内システムにおけるセンター装置10の各DBのデータ構造を示すブロック図である。図8は、本実施形態の経路案内システムにおける経路案内装置20の各DBのデータ構造を示すブロック図である。
【0079】
本実施形態は、被災者が災害弱者である場合に、経路が当該被災者にとって通行困難でないかを判断し、通行困難である場合はこれを除外して避難経路を算出するものである。これにより、本実施形態は、災害弱者に対する避難誘導をより適切に行うことができる点で第一実施形態と異なる。その他の点については、第一実施形態と同様であり、本実施形態のブロック図は図1〜3と同様のものを用いることができ、本実施形態のフローチャートは図6と同様のものを用いることができる。
【0080】
本実施形態のセンター装置10における利用者情報DB10−2のデータ構造は、第一実施形態における構成に加えて、図7に示すように「災害弱者フラグ」、「災害弱者種別」を含んでいる。「災害弱者フラグ」は、利用者IDごとに、利用者が災害弱者であるか否かを識別する情報である。「災害弱者種別」は、利用者IDごとに、被災者がどのような種類の災害弱者であるかを識別する情報である。
【0081】
また、本実施形態のセンター装置10における経路情報DB10−3のデータ構造は、第一実施形態における構成に加えて、図7に示すように「災害弱者種別」、「通行難易度」を含んでいる。「災害弱者種別」は、経路IDごとに、経路の通行が困難な災害弱者の種類を示している。「通行難易度」は、経路IDごとに、「災害弱者種別」に対応する被災者が通行する困難性を示す情報である。
【0082】
同様に、本実施形態の経路案内装置20における利用者情報DB20−2のデータ構造は、第一実施形態における構成に加えて、図8に示すように「災害弱者フラグ」、「災害弱者種別」を含んでおり、経路情報DB20−4のデータ構造は、「災害弱者種別」、「通行難易度」を含んでいる。
【0083】
本実施形態においても、第一実施形態と同様に、経路案内装置20の経路算出部20−11は、最寄りの避難場所までの避難経路を算出し、経路表示制御部20−12により経路表示部20−13に表示する。
次に、経路案内装置20は、無線通信端末30を検出して無線端末IDを取得すると、この無線端末IDに対応する利用者IDを利用者情報DB20−2から取得する。
そして、この利用者IDにもとづき利用者情報DB20−2を検索して、対応する災害弱者フラグを取得し、無線通信端末30の利用者が災害弱者であるか否かを判定する。
【0084】
次に、利用者が災害弱者である場合、利用者情報DB20−2から対応する災害弱者種別を取得する。
そして、上記算出された避難経路に、取得した災害弱者種別に対応する経路が存在していないかを、避難経路における経路に対応する経路IDと災害弱者種別にもとづき経路情報DB20−4を検索して確認する。
【0085】
避難経路上に災害弱者種別に対応する経路が存在している場合、この経路を除外して、上記と同様の方法により、当該利用者に対する最適な避難経路を算出する。
なお、いずれの避難経路上にも、災害弱者種別に対応する経路が存在している場合、あるいは所定の距離以下の全ての経路上に、災害弱者種別に対応する経路が存在している場合、これらの経路の経路IDに対応する通行難易度を比較して、通行難易度がより低い経路を含むものを、最適な避難経路とすることができる。
そして、このようにして算出された当該災害弱者に最適な避難経路を経路表示部20−13に表示し、又は無線通信端末30に送信して表示させることができる。
【0086】
例えば、図1において、経路案内装置20aの無線通信可能範囲内に存在する、無線通信端末30の利用者が、移動に車いすを必要とする災害弱者であるとする。
この場合、当該利用者について、利用者情報DB20−2に「災害弱者フラグ」として「災害弱者である」、「災害弱者種別」として「車いす」を示す情報を予め記憶させておく。
【0087】
なお、これらの情報を予め記憶させておく方法は特に限定されるものではないが、例えば予めセンター装置10における利用者情報DB10−2に登録しておき、所定のタイミングでセンター装置10から各経路案内装置20に送信して、利用者情報DB20−2に記憶させることができる。経路情報DB20−4など他のDBについても、同様にしてセンター装置10から所定のタイミングで各経路案内装置20に送信して記憶させることができる。
また、無線通信端末30から通信可能圏内にある経路案内装置20に対して、当該無線通信端末30の無線端末IDと「災害弱者種別」を送信し、利用者情報DB20−2に記憶させることもできる。
【0088】
次に、具体例を挙げて、本実施形態における最適な避難経路の算出について説明する。
例えば、経路5に車いす使用者が通行できない階段がある場合、経路5について、経路情報DB20−4の「災害弱者種別」に「車いす使用者」を示す情報が予め記憶される。他の経路1〜4,6,7については、「災害弱者種別」に情報が記憶されていないとする。
【0089】
このとき、経路案内装置20aにより、避難場所への最適な経路として、最短距離となる「経路2→経路5→経路7」が算出されたとする。
次に、経路案内装置20aが無線通信端末30を検出すると、この無線通信端末30の無線端末IDにもとづき利用者情報DB10−2から対応する利用者の「災害弱者フラグ」と「災害弱者種別」を取得する。この無線通信端末30に対応する「災害弱者フラグ」には「災害弱者である」、「災害弱者種別」には「車いす使用者」がそれぞれ記憶されている。
【0090】
次に、経路案内装置20aは、算出した避難経路における各経路について、経路IDにもとづき経路情報DB20−4を検索し、「災害弱者種別」に「車いす使用者」が含まれていないかを確認する。
本例の場合、経路5についてのみ、「災害弱者種別」に「車いす使用者」を示す情報が記憶されているため、経路案内装置20aは、当該経路5を除外して、再度最適な避難経路を算出する。
その結果、「経路2→経路3→経路4→経路7」の経路が算出される。
【0091】
なお、本実施形態では、図6のステップ12において、経路案内装置20は経路状況とともに、無線通信端末30の無線端末IDと「災害弱者種別」を含む利用者情報をセンター装置10に送信し、利用者情報DB10−2に記憶させることもできる。また、ステップ13においてセンター装置10から経路案内装置20へ避難経路を送信するとともに、利用者情報DB10−2に記憶されている利用者情報を各経路案内装置20に送信して、利用者情報DB20−2に記憶させることもできる。
【0092】
このように、本実施形態の経路案内装置、経路案内システム、経路案内プログラム、及び経路案内方法によれば、被災者が災害弱者である場合、その災害弱者種別に応じた適切な避難経路を提供することが可能となる。
【0093】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について、図9〜図11を参照して説明する。図9は、本実施形態の経路案内システムにおけるセンター装置10の各DBのデータ構造を示すブロック図である。図10は、本実施形態の経路案内システムにおける経路案内装置20の各DBのデータ構造を示すブロック図である。また、図11は、経路6にのみ通信障害が発生している場合の経路案内システムの構成を示すブロック図である。
【0094】
本実施形態は、最適な避難経路の算出にあたり被災者の移動の流れを考慮し、避難経路が集中せず、分散するように避難誘導を制御可能な点で第一実施形態と異なる。その他の点については、第一実施形態と同様であり、本実施形態のブロック図は図1〜3と同様のものを用いることができる。また、本実施形態のフローチャートは図6と同様のものを用いることができる。
【0095】
本実施形態のセンター装置10における経路情報DB10−3のデータ構造には、第一実施形態における構成に加えて、図9に示すように「許容人数」が含まれている。
「許容人数」は、経路IDに対応する経路を通行することの可能な人数を示す情報であり、経路案内装置間の経路ごとに、経路上に被災者が同時に存在することが可能な最大人数を示している。
【0096】
また、本実施形態のセンター装置10における経路状況DB10−5のデータ構造には、第一実施形態における構成に加えて、図9に示すように「存在人数」が含まれている。
「存在人数」は、経路IDに対応する経路を現在通行している人数を示す情報であり、経路案内装置間の経路ごとに、経路上に現在存在している被災者の人数を示している。
【0097】
同様に、本実施形態の経路案内装置20における経路情報DB20−4のデータ構造には、第一実施形態における構成に加えて、図10に示すように「許容人数」が含まれており、経路状況DB20−6のデータ構造には、「存在人数」が含まれている。
【0098】
本実施形態では、経路案内装置20が、当該経路案内装置が配置された位置から最寄りの避難場所までのいずれかの経路上に存在している被災者数が、許容人数に対して所定の閾値以上である場合、当該経路を除外して、前記避難経路を算出することができる。
【0099】
具体的には、本実施形態の経路案内装置20における経路算出部20−11は、当該経路案内装置20が配置された位置から最寄りの避難場所までの避難経路を、例えば以下のように算出できる。
図11において、経路案内装置20aにおける経路算出部20−11は、最寄りの避難場所までの避難経路として、「避難経路1:経路1→経路4→経路7」、「避難経路2:経路2→経路5→経路7」、「避難経路3:経路1→経路3→経路5→経路7」、「避難経路4:経路2→経路3→経路4→経路7」を算出する。
このとき、第一実施形態の経路案内システムの場合、経路算出部20−11によって各避難経路の距離が算出され、各距離が避難経路1,2,3,4の順に短いとすると、最も距離の短い避難経路1が、最適な避難経路として算出される。
【0100】
しかし、本実施形態の経路算出部20−11は、隣接する経路案内装置20までの経路1及び経路2の経路IDにもとづき経路情報DB20−4を検索し、それぞれに対応する許容人数を取得するとともに、同様に経路状況DB20−6を検索して、それぞれに対応する存在人数を取得することができる。
そして、例えば、経路1の許容人数に対する存在人数の割合が所定の閾値以上であり、避難経路2における経路2についての許容人数に対する存在人数の割合が所定の閾値未満である場合に、経路1を除外して最適な避難経路を算出し、最も距離の短い避難経路2を最適な避難経路として算出することが可能となっている。
【0101】
同様に、経路1と経路5の許容人数に対する存在人数の割合が所定の閾値以上であり、経路2と経路3と経路4の許容人数に対する存在人数の割合が所定の閾値未満の場合は、最適な避難経路として避難経路4を算出することができる。
なお、被災者の避難経路が集中しているか否かの判定基準は、特に限定されるものではなく、種々変更することが可能である。
【0102】
このように、本実施形態の経路案内装置、経路案内システム、経路案内プログラム、及び経路案内方法によれば、被災者の移動の流れを考慮して、避難経路が集中せず、分散するように避難誘導を制御することが可能となる。
【0103】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、第二実施形態と第三実施形態を組み合わせて、被災者の移動の流れを分散するとともに、災害弱者に適切な避難誘導を可能とするなど適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、商業施設における防災システムを兼ね備えた施設案内システムなどにおいて、好適に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の第一実施形態の経路案内システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第一実施形態の経路案内システムにおけるセンター装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第一実施形態の経路案内システムにおける経路案内装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第一実施形態の経路案内システムにおけるセンター装置の各DBのデータ構造を示すブロック図である。
【図5】本発明の第一実施形態の経路案内システムにおける経路案内装置の各DBのデータ構造を示すブロック図である。
【図6】本発明の第一実施形態の経路案内システムにおける経路案内装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第二実施形態の経路案内システムにおけるセンター装置の各DBのデータ構造を示すブロック図である。
【図8】本発明の第二実施形態の経路案内システムにおける経路案内装置の各DBのデータ構造を示すブロック図である。
【図9】本発明の第三実施形態の経路案内システムにおけるセンター装置の各DBのデータ構造を示すブロック図である。
【図10】本発明の第三実施形態の経路案内システムにおける経路案内装置の各DBのデータ構造を示すブロック図である。
【図11】本発明の第三実施形態の経路6にのみ通信障害が発生している場合の経路案内システムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0106】
10 センター装置
10−1 経路案内装置情報DB
10−2 利用者情報DB
10−3 経路情報DB
10−4 避難場所DB
10−5 経路状況DB
10−6 避難経路DB
10−7 通信制御部
10−8 DB管理部
10−9 経路算出部
20(20a,20b,20c,20d,20e) 経路案内装置
20−1 経路案内装置情報DB
20−2 利用者情報DB
20−3 利用者位置情報DB
20−4 経路情報DB
20−5 避難場所DB
20−6 経路状況DB
20−7 避難経路DB
20−8 通信制御部
20−9 DB管理部
20−10 利用者位置監視部
20−11 経路算出部
20−12 経路表示制御部
20−13 経路表示部
30 無線通信端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
避難経路上に配置され、互いに通信回線を介して接続される二以上の経路案内装置における、隣接する経路案内装置間の経路ごとに、経路識別情報、経路の両端にそれぞれ配置された前記経路案内装置の識別情報を含む経路情報を記憶する経路情報記憶部と、
前記隣接する経路案内装置間の経路ごとに、経路識別情報、通信障害発生の有無を含む経路状況を記憶する経路状況記憶部と、
隣接する他の経路案内装置と通信可能であるか否かを判定して、当該経路案内装置と前記隣接する他の経路案内装置間の経路ごとに、通信障害発生の有無を前記経路状況記憶部に記憶させる通信制御部と、
前記経路状況記憶部に通信障害発生有りと記録されている経路を除外して、当該経路案内装置が配置されている位置から最寄りの避難場所までの避難経路を算出する経路算出部と、を備えた
ことを特徴とする経路案内装置。
【請求項2】
前記通信制御部が、前記隣接する他の経路案内装置により作成された経路状況を当該他の経路案内装置から受信して、この経路状況にもとづき前記経路状況記憶部を更新し、
前記経路算出部が、更新された前記経路状況記憶部を用いて、前記避難経路を算出する
ことを特徴とする請求項1記載の経路案内装置。
【請求項3】
前記経路情報に、前記隣接する経路案内装置間の経路ごとに、経路の距離が含まれ、
前記経路算出部が、当該経路案内装置が配置されている位置から最寄りの避難場所までの経路のうち、距離が最短のものを最適な避難経路として算出する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の経路案内装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の経路案内装置が、
利用者の識別情報ごとに、経路の通行が困難な事情の種類を示す災害弱者種別を含む利用者情報を記憶する利用者情報記憶部を備えるとともに、
前記経路情報に、前記隣接する経路案内装置間の経路ごとに、前記災害弱者種別が含まれ、
前記通信制御部が、被災者により使用される無線通信端末から災害弱者種別を受信すると、
前記経路算出部が、前記災害弱者種別にもとづき前記経路情報記憶部から対応する経路情報を取得し、当該経路情報に含まれる経路を除外して前記避難経路を算出する
ことを特徴とする経路案内装置。
【請求項5】
前記経路情報に、前記隣接する経路案内装置間の経路ごとに、経路上に被災者が同時に存在することが可能な最大人数を示す許容人数が含まれ、
前記経路状況に、前記隣接する経路案内装置間の経路ごとに、経路上に現在存在している被災者の人数を示す存在人数が含まれ、
当該経路案内装置が配置されている位置から最寄りの避難場所までのいずれかの経路上に存在している被災者の存在人数が、当該経路の許容人数に対して所定の閾値以上である場合、前記経路算出部が、当該経路を除外して前記避難経路を算出する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の経路案内装置。
【請求項6】
前記通信制御部が、隣接する他の経路案内装置と通信可能であるか否かを判定して、当該経路案内装置と前記隣接する他の経路案内装置との間の経路ごとの通信障害発生の有無を含む経路状況を作成し、この経路状況をセンター装置に送信し、前記センター装置において前記経路状況にもとづき通信障害が発生した経路を除外して算出された避難経路を受信する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の経路案内装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の経路案内装置が、
前記避難経路を表示装置に表示させる経路表示制御部を備え、
当該経路案内装置が配置されている位置から最寄りの避難場所までのいずれかの経路上に被災者が存在している場合、前記経路算出部による前記避難経路の算出と、前記経路表示制御部による前記避難経路の表示又は前記通信制御部による被災者が使用する無線通信端末への前記避難経路の送信と、を繰り返し行う
ことを特徴とする経路案内装置。
【請求項8】
前記経路算出部が、前記通信制御部による前記センター装置との通信ができなくなると、前記避難経路を算出する
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の経路案内装置。
【請求項9】
避難経路上に配置され、互いに通信回線を介して接続される二以上の経路案内装置における、隣接する経路案内装置間の経路ごとに、経路識別情報、経路の両端にそれぞれ配置された前記経路案内装置の識別情報を含む経路情報を記憶する経路情報記憶部、
前記経路案内装置間の経路ごとに、経路識別情報、通信障害発生の有無を含む経路状況を記憶する経路状況記憶部、
隣接する他の経路案内装置と通信可能であるか否かを判定して、当該経路案内装置と前記隣接する他の経路案内装置間の経路ごとに、前記通信障害発生の有無を前記経路状況記憶部に記憶させる通信制御部、及び、
前記経路状況記憶部に通信障害発生有りと記録されている経路を除外して、最寄りの避難場所までの避難経路を算出する経路算出部を備えた経路案内装置と、
前記経路案内装置に通信回線を介して接続するセンター装置と、を有する
ことを特徴とする経路案内システム。
【請求項10】
前記通信制御部が、前記隣接する他の経路案内装置により作成された経路状況を当該他の経路案内装置から受信して、この経路状況にもとづき前記経路状況記憶部を更新し、
前記経路算出部が、更新された前記経路状況記憶部を用いて、前記避難経路を算出する
ことを特徴とする請求項9記載の経路案内システム。
【請求項11】
コンピュータを、
避難経路上に配置され、互いに通信回線を介して接続される二以上の経路案内装置における、隣接する経路案内装置間の経路ごとに、経路識別情報、経路の両端にそれぞれ配置された前記経路案内装置の識別情報を含む経路情報を記憶する経路情報記憶部、
前記隣接する経路案内装置間の経路ごとに、経路識別情報、通信障害発生の有無を含む経路状況を記憶する経路状況記憶部、
隣接する他の経路案内装置と通信可能であるか否かを判定して、当該経路案内装置と前記隣接する他の経路案内装置間の経路ごとに、通信障害発生の有無を前記経路状況記憶部に記憶させる通信制御部、及び、
前記経路状況記憶部に通信障害発生有りと記録されている経路を除外して、当該経路案内装置が配置されている位置から最寄りの避難場所までの避難経路を算出する経路算出部
として機能させるための経路案内プログラム。
【請求項12】
前記通信制御部に、前記隣接する他の経路案内装置により作成された経路状況を当該他の経路案内装置から受信させて、この経路状況にもとづき前記経路状況記憶部を更新させ、
前記経路算出部に、更新された前記経路状況記憶部を用いて、前記避難経路を算出させる
ことを実行させるための請求項11記載の経路案内プログラム。
【請求項13】
避難経路上に配置された二以上の経路案内装置が、それぞれ独自に、隣接する他の経路案内装置と通信可能であるか否かを判定し、通信可能でない経路案内装置との間の経路を除外して、最寄りの避難場所までの避難経路を算出し、当該避難経路を表示装置に表示し、又は、被災者が使用する無線通信端末に送信する
ことを特徴とする経路案内方法。
【請求項14】
前記経路案内装置が、それぞれ独自に、隣接する他の経路案内装置と通信可能であるか否かを判定して、隣接する他の経路案内装置との間の経路ごとの通信障害発生の有無を含む経路状況を作成し、隣接する他の経路案内装置から当該他の経路案内装置により作成された経路状況を受信し、通信可能でない経路を除外して、前記避難経路を算出する
ことを特徴とする請求項13記載の経路案内方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−129060(P2010−129060A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306722(P2008−306722)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】