説明

経路案内装置、経路案内方法及びコンピュータプログラム

【課題】エンジンを駆動することなくモータ駆動走行のみによって車両が出発地から目的地まで走行可能な経路を案内する経路案内装置、経路案内方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】車両2の出発地から目的地までの走行予定経路を設定する際に、モータ駆動走行(EV走行)のみによって車両2が出発地から目的地まで走行可能な経路を探索する(S3)。具体的には、リンク走行時の車両2の駆動力が常に所定の閾値以下となると推定されるリンクのみから構成されるとともに、車両2がEV走行のみで目的地まで走行する間にバッテリ7のSOC値が所定値以下とならない経路であり、該当する経路が探索できた場合には、その経路を走行予定経路に設定する経路の候補として案内する(S9)ように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が出発地から目的地までを走行する為の適当な走行経路を案内する経路案内装置、経路案内方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、エンジンを駆動源とするガソリン車以外にもバッテリから供給される電力に基づいて駆動されるモータを駆動源とする電気自動車や、モータとエンジンを併用して駆動源とするハイブリッド車両等が存在する。
【0003】
そして、従来では上記ハイブリッド車両において、走行予定経路に対してモータとエンジンの制御スケジュールを生成することが行われている。
ここで、従来において上記制御スケジュールを生成する技術としては、例えば特開2000−333305号公報に記載されているように、経路全体での燃料消費量を削減することを目的としたものがある。具体的には、出発地から目的地までの経路を探索し、探索された走行予定経路を複数区間に区分し、エンジンを駆動源として走行した場合に運転効率が良い区間を、エンジンを駆動源として走行する区間に設定するとともに、エンジンを駆動源として走行した場合に運転効率が悪くなる区間を、モータを駆動源として走行する区間に設定した制御スケジュールを生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−333305号公報(第4頁〜第6頁、図3〜図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の技術では、既に設定された走行予定経路に対して燃料消費量を削減する為の制御スケジュールを生成することが可能である。ここで、経路全体での燃料消費量が最小となる場合は、モータのみを駆動源として経路全体を走行する場合である。しかしながら、走行予定経路中に急勾配等の大きな駆動力が必要とされる区間が含まれる場合には、その区間において効率の良い走行を行うために、エンジンを駆動させる必要がある。そのような場合において特許文献1に記載の技術では、設定されている走行予定経路以外の経路で、目的地までモータのみを駆動源として走行することができる経路があったとしても、その経路を案内することができなかった。
【0006】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、エンジンと駆動モータを駆動源とするハイブリッド車両において、エンジンを駆動することなくモータ駆動走行のみによって車両が出発地から目的地まで走行可能な経路を案内することを可能とした経路案内装置、経路案内方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る経路案内装置(1)は、駆動源として駆動モータ(5)とエンジン(4)を備える車両(2)の出発地及び目的地を取得する車両情報取得手段(33)と、前記駆動モータを駆動源とする走行を推奨するモータ駆動推奨リンクを特定するモータ駆動推奨リンク特定手段(33)と、前記モータ駆動推奨リンクのみから構成されるとともに前記駆動モータを駆動源とする走行のみによって前記車両が出発地から目的地まで走行可能な経路を特定する経路特定手段(33)と、前記経路特定手段によって特定された経路を案内する経路案内手段(33)と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る経路案内装置(1)は、請求項1に記載の経路案内装置であって、前記駆動モータ(5)に電力を供給するバッテリ(7)の残量を取得するバッテリ残量取得手段(33)を有し、前記経路特定手段(33)は、リンクを前記車両(2)が走行する場合に必要なリンク毎の必要エネルギー量を推定する必要エネルギー量推定手段(33)を有し、前記バッテリ残量取得手段(33)により取得したバッテリ(7)の残量と前記必要エネルギー量推定手段により推定されたリンク毎の必要エネルギー量とに基づいて、前記駆動モータを駆動源とする走行のみによって前記車両が出発地から目的地まで走行可能な経路を特定することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る経路案内装置(1)は、請求項1又は請求項2に記載の経路案内装置であって、前記モータ駆動推奨リンク特定手段(33)は、リンクを走行する場合に必要なリンク毎の前記車両(2)の駆動力を推定する駆動力推定手段(33)を有し、前記駆動力推定手段によって推定された前記車両の駆動力が所定の閾値以下となるリンクをモータ駆動推奨リンクとして特定する。
【0010】
また、請求項4に係る経路案内方法は、駆動源として駆動モータ(5)とエンジン(4)を備える車両(2)の出発地及び目的地を取得する車両情報取得ステップと、前記駆動モータを駆動源とする走行を推奨するモータ駆動推奨リンクを特定するモータ駆動推奨リンク特定ステップと、前記モータ駆動推奨リンクのみから構成されるとともに前記駆動モータを駆動源とする走行のみによって前記車両が出発地から目的地まで走行可能な経路を特定する経路特定ステップと、前記経路特定ステップによって特定された経路を案内する経路案内ステップと、を有することを特徴とする。
【0011】
更に、請求項5に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに搭載され、駆動源として駆動モータ(5)とエンジン(4)を備える車両(2)の出発地及び目的地を取得する車両情報取得機能と、前記駆動モータを駆動源とする走行を推奨するモータ駆動推奨リンクを特定するモータ駆動推奨リンク特定機能と、前記モータ駆動推奨リンクのみから構成されるとともに前記駆動モータを駆動源とする走行のみによって前記車両が出発地から目的地まで走行可能な経路を特定する経路特定機能と、前記経路特定機能によって特定された経路を案内する経路案内機能と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
前記構成を有する請求項1に記載の経路案内装置によれば、エンジンと駆動モータを駆動源とするハイブリッド車両において、エンジンを駆動することなく駆動モータを駆動源とする走行のみによって車両が出発地から目的地まで走行可能な経路を案内することができる。従って、目的地まで走行する際の燃料消費量をより削減するとともに、車両から排出される排出ガスの削減や騒音の低減を可能とする。
【0013】
また、請求項2に記載の経路案内装置によれば、バッテリの残量とリンクを車両が走行する場合に必要なリンク毎の必要エネルギー量とに基づいて、駆動モータを駆動源とする走行のみによって車両が出発地から目的地まで走行可能な経路を正確に特定することが可能となる。
【0014】
また、請求項3に記載の経路案内装置によれば、急勾配等の大きな駆動力が必要とされる区間を避けた経路を案内することにより、エンジンを駆動させず駆動モータのみを駆動源として目的地まで走行させることができる。
【0015】
また、請求項4に記載の経路案内方法によれば、エンジンと駆動モータを駆動源とするハイブリッド車両において、エンジンを駆動することなく駆動モータを駆動源とする走行のみによって車両が出発地から目的地まで走行可能な経路を案内することができる。従って、目的地まで走行する際の燃料消費量をより削減するとともに、車両から排出される排出ガスの削減や騒音の低減を可能とする。
【0016】
更に、請求項5に記載のコンピュータプログラムによれば、エンジンと駆動モータを駆動源とするハイブリッド車両において、エンジンを駆動することなく駆動モータを駆動源とする走行のみによって車両が出発地から目的地まで走行可能な経路をコンピュータに案内させることができる。従って、目的地まで走行する際の燃料消費量をより削減するとともに、車両から排出される排出ガスの削減や騒音の低減を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る車両及び車両制御システムの概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る車両制御システムの制御系を模式的に示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係る走行予定経路探索処理プログラムのフローチャートである。
【図4】EV走行経路の探索処理について説明した説明図である。
【図5】EV走行経路の探索処理について説明した説明図である。
【図6】EV走行経路の探索処理について説明した説明図である。
【図7】液晶ディスプレイに表示されるEV走行経路案内画面を示した図である。
【図8】液晶ディスプレイに表示される走行経路案内画面を示した図である。
【図9】本実施形態に係るEV走行割合算出処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【図10】出発地から目的地までの候補経路のリンク毎の車両の駆動力、バッテリのSOC値及び候補経路中において特定されるHV走行区間の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る経路案内装置についてナビゲーション装置に具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係るナビゲーション装置1を車載機として搭載した車両2の車両制御システム3の概略構成について図1及び図2を用いて説明する。図1は本実施形態に係る車両制御システム3の概略構成図、図2は本実施形態に係る車両制御システム3の制御系を模式的に示すブロック図である。尚、車両2はモータとエンジンを併用して駆動源とするハイブリッド車両である。特に、以下に説明する実施形態では外部電源からバッテリを充電することができるプラグインハイブリッド車両を用いることとする。
【0019】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る車両制御システム3は、車両2に対して設置されたナビゲーション装置1と、エンジン4と、駆動モータ5と、発電機6と、バッテリ7と、プラネタリギヤユニット8と、車両制御ECU9と、エンジン制御ECU10と、駆動モータ制御ECU11と、発電機制御ECU12と、充電制御ECU13とから基本的に構成されている。
【0020】
ここで、ナビゲーション装置1は、車両2の室内のセンターコンソール又はパネル面に備え付けられ、車両周辺の地図や目的地までの走行予定経路を表示する液晶ディスプレイ15や、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ16等を備えている。そして、GPS等によって車両2の現在位置を特定するととともに、目的地が設定された場合においては目的地までの経路の探索、並びに設定された走行予定経路に従った案内を液晶ディスプレイ15やスピーカ16を用いて行う。また、ナビゲーション装置1は、後述するように、目的地までの経路の探索を行う際にモータ駆動走行のみによって車両2が出発地から目的地まで走行可能な経路を優先的に走行予定経路として設定する。また、走行予定経路の候補となる各経路(モータ駆動走行のみによって車両2が出発地から目的地まで走行可能な経路は除く)について、全長に対するモータ駆動走行のみによって走行可能な区間の割合を算出する。また、車両2の走行予定経路の経路情報や車両情報に基づいて、走行予定経路を走行する際(モータ駆動走行のみによって車両2が出発地から目的地まで走行可能な経路が走行予定経路に設定された場合は除く)における車両2の駆動源(エンジン4及び駆動モータ5)を制御する制御スケジュールを生成する。尚、ナビゲーション装置1の詳細な構成については後述する。
【0021】
また、エンジン4はガソリン、軽油、エタノール等の燃料によって駆動される内燃機関等のエンジンであり、車両2の第1の駆動源として用いられる。そして、エンジン4の駆動力であるエンジントルクはプラネタリギヤユニット8に伝達され、プラネタリギヤユニット8により分配されたエンジントルクの一部により駆動輪17が回転させられ、車両2が駆動される。
【0022】
また、駆動モータ5はバッテリ7から供給される電力に基づいて回転運動するモータであり、車両2の第2の駆動源として用いられる。駆動モータはバッテリ7から供給された電力により駆動され、駆動モータ5のトルクである駆動モータトルクを発生する。そして、発生した駆動モータトルクにより駆動輪17が回転させられ、車両2が駆動される。
特に、本実施形態に係るプラグインハイブリッド車両では、ナビゲーション装置1において後述の制御スケジュール48が設定されている場合には、基本的に設定されている制御スケジュール48に基づいてエンジン4及び駆動モータ5が制御される。具体的には、制御スケジュール48において指定されたEV走行区間では、駆動モータ5のみを駆動源として走行する所謂EV走行を行う。また、制御スケジュール48において指定されたHV走行区間では、エンジン4と駆動モータ5とを駆動源として併用して走行する所謂HV走行を行う。
一方、ナビゲーション装置1において制御スケジュール48が設定されていない場合には、基本的にバッテリ7の残量が所定値以下となるまではEV走行を行う。そして、バッテリ7の残量が所定値以下となった後はHV走行を行う。
更に、エンジンブレーキ必要時及び制動停止時において、駆動モータ5は回生ブレーキとして機能し、車両慣性エネルギーを電気エネルギーとして回生する。
【0023】
また、発電機6はプラネタリギヤユニット8により分配されたエンジントルクの一部により駆動され、電力を発生させる発電装置である。そして、発電機6は図示されない発電機用インバータを介してバッテリ7に接続されており、発生した交流電流を直流電流に変換し、バッテリ7に供給する。尚、駆動モータ5と発電機6を一体的に構成しても良い。
【0024】
また、バッテリ7は充電と放電とを繰り返すことができる蓄電手段としての二次電池であり、鉛蓄電池、キャパシタ、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、ナトリウム硫黄電池等が用いられる。更に、バッテリ7は車両2の側壁に設けられた充電コネクタ18と接続されている。そして、自宅や所定の充電設備を備えた充電施設において、充電コネクタ18をコンセント等の電力供給源に接続することにより、バッテリ7の充電を行うことが可能となる。更に、バッテリ7は上記駆動モータで発生した回生電力や発電機6で発電された電力によっても充電される。
【0025】
また、プラネタリギヤユニット8はサンギヤ、ピニオン、リングギヤ、キャリア等によって構成され、エンジン4の駆動力の一部を発電機6へと分配し、残りの駆動力を駆動輪17へと伝達する。
【0026】
また、車両制御ECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)9は、車両2の全体の制御を行う電子制御ユニットである。また、車両制御ECU9には、エンジン4の制御を行う為のエンジン制御ECU10、駆動モータ5の制御を行う為の駆動モータ制御ECU11、発電機6の制御を行う為の発電機制御ECU12、バッテリ7の制御を行う為の充電制御ECU13が接続されるとともに、ナビゲーション装置1が備える後述のナビゲーションECU33に接続されている。
そして、車両制御ECU9は、演算装置及び制御装置としてのCPU21、並びにCPU21が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるRAM22、制御用のプログラム等が記録されたROM23等の内部記憶装置を備えている。
【0027】
また、エンジン制御ECU10、駆動モータ制御ECU11、発電機制御ECU12及び充電制御ECU13は、図示しないCPU、RAM、ROM等からなり、それぞれエンジン4、駆動モータ5、発電機6、バッテリ7の制御を行う。
【0028】
続いて、ナビゲーション装置1の構成について図2を用いて説明する。
図2に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置1は、車両2の現在位置を検出する現在位置検出部31と、各種のデータが記録されたデータ記録部32と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU(車両情報取得手段、モータ駆動推奨リンク特定手段、バッテリ残量取得手段、経路特定手段、経路案内手段、駆動力推定手段、必要エネルギー量推定手段)33と、ユーザからの操作を受け付ける操作部34と、ユーザに対して車両周辺の地図や設定された走行予定経路を表示する液晶ディスプレイ15と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ16と、プログラムを記憶した記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ37、プローブセンタやVICSセンタ等の情報センタとの間で通信を行う通信モジュール38と、から構成されている。
【0029】
以下に、ナビゲーション装置1を構成する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部31は、GPS41、車速センサ42、ステアリングセンサ43、ジャイロセンサ44等からなり、現在の車両の位置、方位、車両の走行速度、現在時刻等を検出することが可能となっている。ここで、特に車速センサ42は、車両2の移動距離や車速を検出する為のセンサであり、車両2の駆動輪の回転に応じてパルスを発生させ、パルス信号をナビゲーションECU33に出力する。そして、ナビゲーションECU33は発生するパルスを計数することにより駆動輪の回転速度や移動距離を算出する。尚、上記5種類のセンサをナビゲーション装置1が全て備える必要はなく、これらの内の1又は複数種類のセンサのみをナビゲーション装置1が備える構成としても良い。
【0030】
また、データ記録部32は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB46、学習DB47、制御スケジュール48、所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。
【0031】
ここで、地図情報DB46は、例えば、道路(リンク)に関するリンクデータ、ノード点に関するノードデータ、地図を表示するための地図表示データ、各交差点に関する交差点データ、経路を探索するための探索データ、施設に関する施設データ、地点を検索するための検索データ等が記憶された記憶手段である。尚、リンクデータには傾斜区間に関する情報(傾斜角度に関する情報(勾配等)を含む)、カーブに関する情報(開始点、終了点、旋回半径に関する情報を含む)も含まれる。
【0032】
また、学習DB47は、車両2の過去の走行履歴に基づいて算出される各種学習データを記憶するDBである。尚、本実施形態では学習DB47に記憶される学習データとして、車両2が過去に走行したリンク毎に“車両2が該リンクを走行する際に必要な駆動力”と“車両2が該リンクを走行する際に必要なエネルギー量”について記憶される。
【0033】
尚、“リンクを走行する際に必要な駆動力”については、以下の方法により算出される。先ず、ナビゲーションECU33はリンクを走行する毎に、リンク走行時の車両2の車速データ、加速度データ、リンクの勾配、各種車両パラメータ(前面投影面積、駆動機構慣性重量、車重、駆動輪の転がり抵抗係数、空気抵抗係数、コーナリング抵抗等)から、該リンクを車両2が走行した際に生じた駆動力を算出する。そして、算出された駆動力の内で最高値を“リンクを走行する際に必要な駆動力”と推定し、記憶する。
尚、車両2が該リンクを複数回走行している場合には、各回の走行時において記憶された駆動力の最高値の平均値を算出する。そして、算出された平均値を“リンクを走行する際に必要な駆動力”と推定し、記憶する。
また、リンクを車両2が走行した際に生じた駆動力を算出する際には、駆動輪の車軸に生じるトルクT[N・m]及び車軸の回転数Nを用いても良い。具体的には、車両2に駆動輪の車軸に生じるトルクTを検出するセンサを設け、リンクを走行する毎に車両2に駆動輪の車軸に生じるトルクTを検出する。そして、駆動輪の車軸に生じるトルクTに車軸の回転数Nを乗じた値が、リンクを車両2が走行した際に生じた駆動力となり、その内で最高値を“リンクを走行する際に必要な駆動力”と推定し、記憶する。
【0034】
一方、“リンクを走行する際に必要なエネルギー量”については、以下の方法により算出される。先ず、ナビゲーションECU33はリンクを走行する毎に、リンク走行直前のバッテリのSOC値とリンク走行直後のバッテリのSOC値の差分から、該リンクを車両2が走行した際に必要とされたエネルギー量を算出する。そして、算出されたエネルギー量を“リンクを走行する際に必要なエネルギー量”と推定し、記憶する。
尚、車両2が該リンクを複数回走行している場合には、各回の走行時において記憶されたエネルギー量の平均値を“リンクを走行する際に必要なエネルギー量”と推定し、記憶する。
また、リンクを車両2が走行した際に必要とされたエネルギー量を算出する際には、駆動輪の車軸に生じるトルクT[N・m]及び車軸の回転数Nを用いても良い。ここで、車両2の走行に基づいて駆動源(駆動モータ5)で消費される消費エネルギー量は、車両2の走行に必要な駆動力にその駆動力が生じた時間を乗じた値となる。従って、車両2に駆動輪の車軸に生じるトルクTを検出するセンサを設け、リンクを走行する毎に車両2に駆動輪の車軸に生じるトルクTを検出する。そして、駆動輪の車軸に生じるトルクTに車軸の回転数Nを乗じた値を時間で積分することによって、リンクを車両2が走行した際に駆動モータ5で必要とされたエネルギー量を算出する。そして、算出されたエネルギー量を“リンクを走行する際に必要なエネルギー量”と推定し、記憶する。
尚、“車両2が該リンクを走行する際に必要な駆動力”及び“リンクを走行する際に必要なエネルギー量”は、後述するようにナビゲーションECU33がEV走行のみによって車両2が出発地から目的地まで走行可能な経路を特定するのに用いられる。
【0035】
また、制御スケジュール48は、車両2が走行予定経路を走行する前において、EV走行のみによって車両2が出発地から目的地まで走行することができない経路が走行予定経路として設定されている場合に、ナビゲーションECU33により生成され、走行予定経路を車両2が走行する際に、エンジン4及び駆動モータ5をどのように制御するかを決定する制御スケジュールである。
制御スケジュール48では、例えば走行予定経路の区間毎にEV走行を行うEV走行区間と、HV走行を行うHV走行区間とを設定する。そして、車両2が走行予定経路を走行する際に、ナビゲーションECU33は車両2の現在位置と、制御スケジュール48とに基づいて、走行制御を変更(EV走行→HV走行、又は、HV走行→EV走行)するタイミングとなったか否かを判定する。そして、走行制御を変更するタイミングであると判定された場合に、車両制御ECU9に対してEV走行又はHV走行を指示する制御指示を送信する。そして、EV走行を指示する制御指示を受信した車両制御ECU9は、駆動モータ制御ECU11を介して駆動モータ5を制御し、駆動モータ5のみを駆動源とするEV走行を開始する。また、HV走行を指示する制御指示を受信した車両制御ECU9は、エンジン制御ECU10及び駆動モータ制御ECU11を介してエンジン4及び駆動モータ5を制御し、エンジン4と駆動モータ5とを駆動源として併用して走行するHV走行を開始する。また、HV走行時には所定区間(例えば、車両2が高速で定常走行する区間)において発電機6を駆動することによって、バッテリ7の充電も行われる。
【0036】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)33は、目的地が選択された場合に、地図情報DB46に記憶されたリンクデータや学習DB47に記憶された学習データに基づいて現在位置から目的地までの走行予定経路を設定する誘導経路設定処理、走行予定経路の候補となる各経路(EV走行のみによって車両2が出発地から目的地まで走行可能な経路は除く)について、全長に対するEV走行区間の割合を算出するEV区間算出処理、走行予定経路を走行する際(EV走行のみによって車両2が出発地から目的地まで走行可能な経路が走行予定経路に設定された場合は除く)における車両2の駆動源(エンジン4及び駆動モータ5)を制御する制御スケジュール48を生成する制御スケジュール生成処理等のナビゲーション装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットである。そして、演算装置及び制御装置としてのCPU51、並びにCPU51が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM52、制御用のプログラムのほか、走行予定経路探索処理プログラム(図3、図9参照)等が記録されたROM53、ROM53から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ54等の内部記憶装置を備えている。
【0037】
操作部34は、走行開始地点としての出発地及び走行終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)から構成される。そして、ナビゲーションECU33は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、液晶ディスプレイ15の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。
【0038】
また、液晶ディスプレイ15には、道路を含む地図画像、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、出発地から目的地までの走行予定経路、走行予定経路に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。また、出発地から目的地までの走行予定経路の経路探索が行われた場合に、走行予定経路の候補となる各経路について、経路情報(経路全長、目的地までの所要時間、全長に対するEV走行区間の割合(EV走行のみによって車両2が出発地から目的地まで走行可能な経路は除く)等)が表示される。
【0039】
また、スピーカ16は、ナビゲーションECU33からの指示に基づいて走行予定経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。
【0040】
また、DVDドライブ37は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて地図情報DB46の更新等が行われる。
【0041】
また、通信モジュール38は、交通情報センタ、例えば、VICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタやプローブセンタ等から送信された渋滞情報、規制情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報を受信する為の通信装置であり、例えば携帯電話機やDCMが該当する。
【0042】
続いて、前記構成を有するナビゲーション装置1においてナビゲーションECU33が実行する走行予定経路探索処理プログラムについて図3及び図9に基づき説明する。図3及び図9は本実施形態に係る走行予定経路探索処理プログラムのフローチャートである。ここで、走行予定経路探索処理プログラムは、操作部34においてユーザの所定の操作を受け付けた場合に実行され、車両2の出発地から目的地までの走行予定経路を探索し、走行予定経路の候補となる経路に関する情報を案内するプログラムである。尚、以下の図3及び図9にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置1が備えているRAM52やROM53に記憶されており、CPU51により実行される。
【0043】
先ず、走行予定経路探索処理プログラムではステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU51は車両2に搭載されたバッテリ7のSOC値(バッテリ7のエネルギー残量)を充電制御ECU13から取得する。
【0044】
次に、S2においてCPU51は、車両2の出発地及び目的地の座標を取得する。尚、出発地の座標は、現在位置検出部31により検出された車両2の現在位置の座標とする。但し、操作部34の操作により出発地が指定された場合においては指定された出発地の座標とする。また、目的地の座標は、操作部34の操作により指定された目的地の座標とする。
【0045】
続いて、S3においてCPU51は、地図情報DB46に記憶されたリンクデータや学習DB47に記憶された学習データに基づいて、モータ駆動走行(EV走行)のみによって車両2が出発地から目的地まで走行可能な経路(以下、EV走行経路という)を探索するEV走行経路探索処理を実行する。尚、EV走行経路の探索には後述のダイクストラ法を用いる。
ここで、ハイブリッド車両では、一般的にリンク走行時の車両2の駆動力が所定の閾値を上回ると、エンジン4が駆動される(即ち、EV走行からHV走行へと切り替わる)。また、車両2の走行中にバッテリ7のSOC値が所定値以下(例えば全容量の3%以下)となると、EV走行を継続することが困難となるので、同じくEV走行からHV走行へと切り替わる。
従って、EV走行経路は、リンク走行時の車両2の駆動力が常に所定の閾値以下となると推定されるリンク(以下、モータ駆動推奨リンクという)のみから構成されるとともに、車両2がEV走行のみで目的地まで走行する間にバッテリ7のSOC値が所定値以下(例えば全容量の3%以下)とならない経路である。
【0046】
以下に、図4〜図6を用いて上記S3のEV走行経路探索処理について詳細に説明する。尚、図4〜図6に示す例では、車両2の出発地61と目的地62との間を接続するリンクとしてリンクA〜Lが存在する場合を説明する。
先ず、前記S3のEV走行経路探索処理が実行されると、図4に示すようにCPU51は出発地61に接続するリンク(即ち、リンクAとリンクB)をリンクデータから特定し、出発地61に接続するリンクのリンク走行データを取得する。ここで、取得されるリンク走行データは、“車両2が該リンクを走行する際に必要な駆動力”及び“車両2が該リンクを走行する際に必要なエネルギー量”である。尚、これらのリンク走行データは学習DB47から取得される。そして、取得したリンク走行データに基づいて、車両2が出発地61に接続するリンクを走行する場合に必要な車両の駆動力、及び出発地61に接続するリンクを走行する場合に必要な必要エネルギー量をそれぞれ推定する。
【0047】
尚、リンク走行データは通信モジュール38を介してプローブセンタから取得する構成としても良い。その場合には、プローブセンタはプローブカーからリンク走行時に生じた駆動力や消費されたエネルギー量に関するデータをプローブデータとして収集し、収集したプローブデータに基づいてリンク走行データを生成するように構成する。
また、車両パラメータ(前面投影面積、駆動機構慣性重量、車重、駆動輪の転がり抵抗係数、空気抵抗係数、コーナリング抵抗等)やリンクデータ(平均車速、リンクの長さ、勾配等)に基づいてCPU51が算出しても良い。
【0048】
次に、取得したリンク走行データに基づいて、出発地61に接続するリンク(即ち、リンクAとリンクB)がモータ駆動推奨リンクであるか否か判定し、出発地61に接続するリンクの内からモータ駆動推奨リンクを特定する。具体的に、車両2がリンクを走行する際に必要な駆動力が所定の閾値以下である場合にモータ駆動推奨リンクであると判定する。そして、モータ駆動推奨リンクでないと判定されたリンクについては、EV走行経路を構成する候補となるリンクから除外する(即ち、そのリンクを含むリンク列はEV走行経路として特定しない)。一方、モータ駆動推奨リンクに特定されたリンクについては、EV走行経路を構成する候補となるリンクとして残す。
尚、以下にはリンクA、Bが共にモータ駆動推奨リンクに特定された場合について説明する。
【0049】
続いて、リンクAに接続するリンク(即ち、リンクCとリンクD)のリンク走行データを取得する。同じく、リンクAに接続するリンクの内、モータ駆動推奨リンクでないと判定されたリンクについてはEV走行経路を構成する候補となるリンクから除外する。
また、リンクBに接続するリンク(即ち、リンクEとリンクF)のリンク走行データを取得する。そして、リンクBに接続するリンクの内、モータ駆動推奨リンクでないと判定されたリンクについてはEV走行経路を構成する候補となるリンクから除外する。
【0050】
また、同一地点までのリンク列が複数ある場合(例えば『リンクA・リンクD』からなるリンク列と、『リンクB・リンクE』からなるリンク列)には、リンク列を構成するリンクの“車両2が該リンクを走行する際に必要なエネルギー量”をリンク列毎に合計し、リンク列間で比較する。そして、合計値が最も少ないリンク列のみをEV走行経路を構成する候補となるリンク列として残し、それ以外のリンク列はEV走行経路を構成する候補となるリンク列から除外する。例えば、図5に示すように車両2がリンクAを走行する際に必要なエネルギー量が「3」であり、車両2がリンクBを走行する際に必要なエネルギー量が「3」であり、車両2がリンクDを走行する際に必要なエネルギー量が「1」であり、車両2がリンクEを走行する際に必要なエネルギー量が「3」である場合には、『リンクA・リンクD』からなるリンク列の合計した必要エネルギー量が「4」であり、『リンクB・リンクE』からなるリンク列の合計した必要エネルギー量より小さいので、『リンクB・リンクE』からなるリンク列はEV走行経路を構成する候補となるリンク列から除外する。
【0051】
以下、同様にリンクC〜Jに接続するリンクのリンク走行データを取得し、モータ駆動推奨リンクでないと判定されたリンクについてはEV走行経路を構成するリンクの対象から除外するとともに、同一地点までのリンク列が複数ある場合には、“車両2が該リンクを走行する際に必要なエネルギー量”の合計値が最も少ないリンク列以外のリンク列はEV走行経路を構成する候補となるリンク列から除外する。
【0052】
また、リンク列を構成する各リンクの“車両2が該リンクを走行する際に必要なエネルギー量”の合計値が、上限値(前記S1で算出したバッテリのSOC値からバッテリ全容量の3%を引いた値)を上回った場合には、そのリンク列はEV走行経路を構成する候補となるリンク列から除外する。
【0053】
そして、上記処理を繰り返すことによって、出発地から目的地まで到達したリンク列のみをEV走行経路として特定する。
例えば、図6は図4に示す出発地61から目的地62までの各リンク列に対してS3のEV走行経路探索処理を行った場合の探索結果を示した図である。
図6に示す例では、『リンクB・リンクE』からなるリンク列は、同一地点へと到達する『リンクA・リンクD』からなるリンク列と比べて“車両2が該リンクを走行する際に必要なエネルギー量”の合計値が大きいので、EV走行経路を構成する候補となるリンク列から除外される。また、『リンクA・リンクD・リンクH』からなるリンク列は、同一地点へと到達する『リンクA・リンクC・リンクG』からなるリンク列と比べて“車両2が該リンクを走行する際に必要なエネルギー量”の合計値が大きいので、EV走行経路を構成する候補となるリンク列から除外される。また、リンクFを含むリンク列は、車両2がリンクFを走行する際に必要な駆動力が閾値を超えるので、EV走行経路を構成する候補となるリンク列から除外する。更に、『リンクA・リンクC・リンクG・リンクH・リンクI』からなるリンク列は、“車両2が該リンクを走行する際に必要なエネルギー量”の合計値が上限値を上回るので、そのリンク列はEV走行経路を構成する候補となるリンク列から除外する。
従って、図6に示す例では、『リンクA、リンクD、リンクI・リンクL』からなるリンク列と、『リンクA、リンクC、リンクG・リンクK』からなるリンク列が、目的地まで到達するリンク列となり、各リンク列をEV走行経路として特定する。
【0054】
次に、S4においてCPU51は、前記S3のEV走行経路探索処理の結果、出発地から目的地までEV走行のみで走行可能なEV走行経路(即ち、モータ駆動推奨リンクのみから構成されるとともに、車両2がEV走行のみで目的地まで走行する間にバッテリ7のSOC値が所定値以下とならない経路)が存在するか否か判定する。
【0055】
そして、EV走行経路が存在すると判定された場合(S4:YES)には、S5へと移行する。それに対して、EV走行経路が存在しないと判定された場合(S4:NO)には、S7へと移行する。
【0056】
S5においてCPU51は、前記S3で特定されたEV走行経路を走行予定経路の候補として案内する。具体的には、EV走行経路の全長、有料道路の距離、料金、目的地までの所要時間等を液晶ディスプレイ15に表示する。尚、EV走行経路の全長、有料道路の距離、料金、目的地までの所要時間等は、地図情報DB46に記憶されたリンクデータやVICSセンタから取得した渋滞情報に基づいて算出される。また、前記S3において複数のEV走行経路が特定された場合には、基本的に目的地までの所要時間が最も少ないEV走行経路のみを案内する。
【0057】
尚、前記S3において複数のEV走行経路が特定された場合には、特定された全てのEV走行経路を案内するように構成しても良い。また、その際には優先順位に従って優先順位の高い順に所定数(例えば3本)までのEV走行経路を案内することが望ましい。尚、優先順位としては、“料金の安い順”、“必要エネルギー量が少ない順”、“走行距離が短い順”、“目的地までの所要時間が短い順”等がある。また、優先順位として用いる順位をユーザが選択可能に構成しても良い。
【0058】
例えば、図7は前記S3で3本のEV走行経路が特定され、優先順位として“目的地までの所要時間が短い順”が用いられた場合において、前記S5で液晶ディスプレイ15に表示されるEV走行経路案内画面71を示した図である。
図7に示すように、EV走行経路案内画面71には、車両周辺の地図画像上に重ねて出発地から目的地までのEV走行経路72が表示される。
また、EV走行経路の全長、有料道路の距離、料金、目的地までの所要時間に関する情報を表示する情報ウィンドウ73についても表示される。尚、情報ウィンドウ73においては、3本のEV走行経路の内、目的地までの所要時間が短い経路から順に情報を表示する。それによって、出発地から目的地までEV走行のみで走行できるEV走行経路をユーザに対して案内することが可能となる。
そして、ユーザはEV走行経路案内画面71を参照することによって、EV走行経路を走行予定経路として設定するか否かを判断する。
【0059】
続いて、S6においてCPU51は、通常の経路探索を実行するか否か判定する。尚、通常の経路探索とは出発地から目的地までの最適な経路をリンクコストに基づいて探索する従来の経路探索であり、EV走行のみで目的地まで走行可能であるか否かについては考慮しない。また、通常の経路探索を実行するか否かは操作部34において受け付けたユーザの操作に基づいて判定する。即ち、EV走行経路が案内された後に通常の経路探索を実行することをユーザが選択した場合に、通常の経路探索を実行すると判定する。尚、前記S3で特定されたEV走行経路の全長が所定距離以上の場合や、目的地までの所要時間が所定時間以上の場合に、通常の経路探索を実行すると判定する。
【0060】
そして、通常の経路探索を実行すると判定された場合(S6:YES)には、S7へと移行する。一方、通常の経路探索を実行しないと判定された場合(S6:NO)には、当該走行予定経路探索処理プログラムを終了する。その後、ユーザが案内されたEV走行経路の内から走行予定経路に設定する経路を選択した場合には、CPU51は選択された経路を走行予定経路に設定し、走行予定経路に設定されたEV走行経路に基づいて走行の案内を行う。尚、EV走行経路が走行予定経路に設定された場合には、制御スケジュールは生成しない。
【0061】
また、S7においてCPU51は、リンクコストに基づいて出発地から目的地までの最適な経路を探索する通常の経路探索処理を行う。具体的にはダイクストラ法を用いて行う。尚、S7の経路探索処理は従来の経路探索処理と同様の処理であるので説明は省略する。
【0062】
更に、S8においてCPU51は、後述のEV割合算出処理(図8)を実行する。尚、EV割合算出処理では、CPU51は前記S7で走行予定経路の候補として特定された経路について、全長に対するEV走行区間の割合を算出する。
【0063】
次に、S9においてCPU51は、前記S7で特定された経路を走行予定経路の候補として案内する。具体的には、経路の全長、有料道路の距離、料金、目的地までの所要時間、EV走行区間の割合等を液晶ディスプレイ15に表示する。尚、経路の全長、有料道路の距離、料金、目的地までの所要時間等は、地図情報DB46に記憶されたリンクデータやVICSセンタから取得した渋滞情報に基づいて算出される。また、EV走行区間の割合については前記S8で算出される。また、前記S3においてEV走行経路が特定されている場合には、EV走行経路についても併せて再度案内するように構成しても良い。
【0064】
例えば、図8は前記S7でそれぞれ異なる探索条件で5本の経路が走行予定経路の候補として特定された場合に、前記S9で液晶ディスプレイ15に表示される走行経路案内画面81を示した図である。尚、図8に示す例では探索条件として『推奨(目的地までの所要時間が短くなることを優先)』、『有料優先(有料道路を走行することを優先する)』、『一般優先(一般道路を走行することを優先する)』、『距離優先(走行距離が短くなることを優先する)』、『別ルート(上記以外の経路)』の5条件を用いた場合を示す。そして、CPU51はS7においてそれぞれの条件に対応する経路を探索する。
図8に示すように、走行経路案内画面81には、車両周辺の地図画像上に重ねて出発地から目的地までの5本の経路82が表示される。
また、経路の全長、有料道路の距離、料金、目的地までの所要時間、EV走行割合に関する情報を表示する情報ウィンドウ83についても表示される。それによって、出発地から目的地までの経路とその経路中のEV走行割合をユーザに対して案内することが可能となる。尚、前記S3においてEV走行経路が特定されていない場合には、EV走行経路が存在しない旨を案内するよう構成する。
そして、ユーザは走行経路案内画面81を参照することによって、いずれの経路を走行予定経路として設定するかを判断する。
その後、ユーザが案内された経路の内から走行予定経路に設定する経路を選択した場合には、CPU51は選択された経路を走行予定経路に設定し、走行予定経路に設定された経路に基づいて走行の案内を行う。尚、EV走行経路が走行予定経路に設定された場合には、制御スケジュールは生成しない。
【0065】
次に、上記S8のEV走行割合算出処理のサブ処理について図9に基づき説明する。図9はEV走行割合算出処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【0066】
先ず、S21においてCPU51は、前記S7で特定された走行予定経路の候補となる経路(以下、候補経路という)について、経路情報を取得する。具体的にS21で取得される経路情報としては、候補経路を構成するリンクのリンクデータ(リンク番号、リンク長等)がある。
【0067】
次に、S22においてCPU51は、前記S7で特定された候補経路について、該候補経路を走行する際に必要となる駆動力を区間(リンク)毎に推定する。具体的には、CPU51は候補経路を構成する各リンクを前記S1で取得したリンクデータから特定し、各リンクの“車両2が該リンクを走行する際に必要な駆動力”を学習DB47から取得する。そして、取得したデータに基づいて、車両2が候補経路を走行する場合に必要な車両の駆動力をリンク毎に推定する。尚、“車両2が該リンクを走行する際に必要な駆動力”は通信モジュール38を介してプローブセンタから取得する構成としても良い。
【0068】
次に、S23においてCPU51は、前記S22で推定されたリンク毎の駆動力に基づいて、駆動力が所定の閾値を上回るリンクを抽出し、HV走行が行われるHV走行区間として特定する。
【0069】
例えば、図10は出発地91から目的地92までの候補経路93のリンク毎の車両2の駆動力P、バッテリ7のSOC値及び候補経路93中において特定されるHV走行区間の一例を示した図である。
図10に示す例では、候補経路93の内、区間B、区間D、区間Fにおける駆動力Pが所定の閾値P0以上となる。従って、区間B、区間D、区間FをHV走行が行われるHV走行区間として特定する。
尚、CPU51は前記S23で特定されたHV走行区間を特定する情報(HV走行区間を構成するリンクのリンク番号など)をRAM52等に記憶する。
【0070】
続いて、S24においてCPU51は、前記S7で特定された候補経路について、該候補経路を車両2が走行する際に必要なエネルギー量を区間毎(リンク毎)に推定する。具体的には、CPU51は候補経路を構成する各リンクを前記S1で取得したリンクデータから特定し、各リンクの“車両2が該リンクを走行する際に必要なエネルギー量”を学習DB47から取得する。そして、取得したデータに基づいて、車両2が候補経路を走行する場合に必要なエネルギー量をリンク毎に推定する。尚、前記S23においてHV走行区間に特定された区間についてはHV走行を行うと仮定して必要エネルギー量を推定する。尚、必要エネルギー量を推定する際には候補経路の走行中にバッテリ7に蓄えられると推定される回生エネルギーのエネルギー量についても考慮する。尚、“車両2が該リンクを走行する際に必要なエネルギー量”は通信モジュール38を介してプローブセンタから取得する構成としても良い。
【0071】
その後、S25においてCPU51は、前記S24で推定された候補経路を車両2が走行する際に必要なエネルギー量に基づいて、候補経路の走行中に目的地に到達する前に車両2のバッテリ7のSOCが所定値以下(例えば全容量の3%以下)となるか否かを判定する。そして、候補経路の走行中に目的地に到達する前に車両2のバッテリ7のSOCが所定値以下になると判定された場合(S25:YES)には、S26へと移行する。一方、候補経路の走行中に目的地に到達するまでに車両2のバッテリ7のSOCが所定値以下にならないと判定された場合(S25:NO)には、S27へと移行する。
【0072】
S26においてCPU51は、バッテリ7のSOC値が所定値以下となった後の区間を抽出し、HV走行が行われるHV走行区間として特定する。但し、バッテリ7のSOC値が所定値以下となった後の区間であっても、回生区間や回生によるエネルギーを使用したEV走行区間についてはHV走行区間として特定しない。
【0073】
例えば、図10に示す例では、候補経路93の内、区間Gの走行終了時点でバッテリ7のSOC値が所定値以下となる。従って、区間G以降の区間HをHV走行が行われるHV走行区間として特定する。
尚、CPU51は前記S26で特定されたHV走行区間を特定する情報(HV走行区間を構成するリンクのリンク番号など)をRAM52等に記憶する。
【0074】
次に、S27においてCPU51は、前記S7で特定された候補経路について、全長に対するEV走行区間の割合を算出する。具体的には、候補経路の全長=Lm、前記S23及びS26で特定されたHV走行区間の合計距離=Xmとすると、EV走行区間の割合Yは以下の式(1)で算出される。
Y=(L−X)/L・・・・(1)
例えば、図10に示す例では、候補経路93のEV走行区間の割合は60%と算出される。尚、S27で算出されたEV走行区間の割合は、その後にS9において案内される。
【0075】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るナビゲーション装置1、ナビゲーション装置1による経路案内方法及びナビゲーション装置1で実行されるコンピュータプログラムでは、車両2の出発地から目的地までの走行予定経路を設定する際に、モータ駆動走行(EV走行)のみによって車両2が出発地から目的地まで走行可能な経路を探索する(S3)。具体的には、リンク走行時の車両2の駆動力が常に所定の閾値以下となると推定されるリンクのみから構成されるとともに、車両2がEV走行のみで目的地まで走行する間にバッテリ7のSOC値が所定値以下とならない経路であり、該当する経路が探索できた場合には、その経路を走行予定経路に設定する経路の候補として案内する(S9)ので、エンジン4と駆動モータ5を駆動源とするハイブリッド車両2において、エンジン4を駆動することなくモータ駆動走行のみによって車両2が出発地から目的地まで走行可能な経路を案内することができる。従って、目的地まで走行する際の燃料消費量をより削減するとともに、車両2から排出される排出ガスの削減や騒音の低減を可能とする。
また、走行時の車両2の駆動力が所定の閾値以下となると推定されるリンクのみによって構成される経路を案内するので、急勾配等の大きな駆動力が必要とされる区間を避けた経路を案内することができる。従って、エンジン4を駆動させず駆動モータ5のみを駆動源として目的地まで走行させることができる。
また、現在のバッテリ7の残量を消費するモータ駆動走行のみによって車両2が出発地から目的地まで走行可能な経路案内するので、バッテリ残量が途中で不足することなく目的地まで到達できる経路を案内することができる。従って、バッテリ不足により走行中にエンジン4が駆動されることなく車両の燃料消費量を削減することが可能となる。
【0076】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では通常の経路探索により探索された各経路について、経路全体に対するEV走行区間の割合を案内することとしているが、エンジン4が始動する回数やエンジンが駆動する時間についても案内するように構成しても良い。
【0077】
また、EV走行経路の探索処理(S3)を実行する前に、車両2がリンクを走行する際に必要な駆動力が閾値を上回るリンクについては、予め探索対象となるリンクから除くように構成しても良い。その場合には、残りのリンクのみを用いてダイクストラ法によるEV走行経路の探索を行う。また、地図情報DB46に記憶されたリンクデータが、車両2が該リンクを走行する際に必要な駆動力が常に閾値以下となるリンクであるか否かを示すフラグを有する構成としても良い。
【符号の説明】
【0078】
1 ナビゲーション装置
2 車両
3 車両制御システム
4 エンジン
5 駆動モータ
7 バッテリ
33 ナビゲーションECU
51 CPU
52 RAM
53 ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源として駆動モータとエンジンを備える車両の出発地及び目的地を取得する車両情報取得手段と、
前記駆動モータを駆動源とする走行を推奨するモータ駆動推奨リンクを特定するモータ駆動推奨リンク特定手段と、
前記モータ駆動推奨リンクのみから構成されるとともに前記駆動モータを駆動源とする走行のみによって前記車両が出発地から目的地まで走行可能な経路を特定する経路特定手段と、
前記経路特定手段によって特定された経路を案内する経路案内手段と、を有することを特徴とする経路案内装置。
【請求項2】
前記駆動モータに電力を供給するバッテリの残量を取得するバッテリ残量取得手段を有し、
前記経路特定手段は、
リンクを前記車両が走行する場合に必要なリンク毎の必要エネルギー量を推定する必要エネルギー量推定手段を有し、
前記バッテリ残量取得手段により取得したバッテリの残量と前記必要エネルギー量推定手段により推定されたリンク毎の必要エネルギー量とに基づいて、前記駆動モータを駆動源とする走行のみによって前記車両が出発地から目的地まで走行可能な経路を特定することを特徴とする請求項1に記載の経路案内装置。
【請求項3】
前記モータ駆動推奨リンク特定手段は、
リンクを走行する場合に必要なリンク毎の前記車両の駆動力を推定する駆動力推定手段を有し、
前記駆動力推定手段によって推定された前記車両の駆動力が所定の閾値以下となるリンクをモータ駆動推奨リンクとして特定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の経路案内装置。
【請求項4】
駆動源として駆動モータとエンジンを備える車両の出発地及び目的地を取得する車両情報取得ステップと、
前記駆動モータを駆動源とする走行を推奨するモータ駆動推奨リンクを特定するモータ駆動推奨リンク特定ステップと、
前記モータ駆動推奨リンクのみから構成されるとともに前記駆動モータを駆動源とする走行のみによって前記車両が出発地から目的地まで走行可能な経路を特定する経路特定ステップと、
前記経路特定ステップによって特定された経路を案内する経路案内ステップと、を有することを特徴とする経路案内方法。
【請求項5】
コンピュータに搭載され、
駆動源として駆動モータとエンジンを備える車両の出発地及び目的地を取得する車両情報取得機能と、
前記駆動モータを駆動源とする走行を推奨するモータ駆動推奨リンクを特定するモータ駆動推奨リンク特定機能と、
前記モータ駆動推奨リンクのみから構成されるとともに前記駆動モータを駆動源とする走行のみによって前記車両が出発地から目的地まで走行可能な経路を特定する経路特定機能と、
前記経路特定機能によって特定された経路を案内する経路案内機能と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−169419(P2010−169419A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9832(P2009−9832)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】