経路案内装置及び経路案内方法
【課題】より効率が高い通信により、経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を提供する。
【解決手段】経路案内の対象とされていない細街路P1を通行する先行車両100の通行軌跡に基づいて、細街路P1に関する細街路学習情報を生成する経路学習部2と、経路学習部2が生成した細街路学習情報を後続車両200に配信する短距離無線通信部4とを備えた先行車両100において、短距離無線通信部4は、細街路P1を通行することで到達可能な地点を目的地Dとしている後続車両200を特定して細街路学習情報を配信する。これにより、経路案内の対象とされていない細街路P1の情報が必要な後続車両200だけが細街路学習情報を受信することになり、不要な通信が生じない。そのため、より効率が高い通信により、経路案内の対象とされていない細街路P1に関する細街路学習情報を提供することが可能となる。
【解決手段】経路案内の対象とされていない細街路P1を通行する先行車両100の通行軌跡に基づいて、細街路P1に関する細街路学習情報を生成する経路学習部2と、経路学習部2が生成した細街路学習情報を後続車両200に配信する短距離無線通信部4とを備えた先行車両100において、短距離無線通信部4は、細街路P1を通行することで到達可能な地点を目的地Dとしている後続車両200を特定して細街路学習情報を配信する。これにより、経路案内の対象とされていない細街路P1の情報が必要な後続車両200だけが細街路学習情報を受信することになり、不要な通信が生じない。そのため、より効率が高い通信により、経路案内の対象とされていない細街路P1に関する細街路学習情報を提供することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的地に到達するための道路に関する情報を提供する経路案内装置及び経路案内方法に関する。
【背景技術】
【0002】
目的地に到達するための経路案内を行うナビゲーションシステムが開発されている。しかし、ナビゲーションシステムでは、地図データに含まれない新規道路や細街路に入ったところに存在する施設を目的地として設定した場合、目的地付近の基幹道路で案内が終了したり、細街路上の経路案内が最後まで行われないことがある。目的地に到達するために、日本全国全ての細街路経路を地図メーカーが作成した場合は莫大なコストがかかる。しかし、費用対効果の面では投資に応じた効果を得る事が難しいため、実際に地図メーカーのみで全ての調査コストを負担することは不可能である。そのため、細街路に関する情報は、地図データに含まれず、細街路の経路案内も実現が難しい。
【0003】
そのため、特許文献1では、プローブカーである車両がナビゲーション装置のナビ地図データに含まれない道路を走行する際の走行軌跡情報をプローブデータとして地図配信センターに送信し、一方、各車両のナビゲーション装置から走行軌跡情報を受信した地図配信センターは、受信したデータを収集して新規道路情報を生成するとともに新規道路の車両の走行数に基づいて優先順位を設定し、更に、設定された優先順位に従って新規道路情報の報知を行う地図情報配信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−164824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記技術においては、地図配信センタから配信されるデータには、目的地に到達するために新規道路等を通行しなくとも良い車両にとっては、目的地に到達するために必要ではない情報も含まれている。そのため、これらの不要なデータを受信することにより、不要な通信コストがかかるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような実情に考慮してなされたものであり、その目的は、より効率が高い通信により、経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、経路案内の対象とされていない道路を通行する第1の移動体の通行軌跡に基づいて、経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を生成する経路情報生成手段と、経路情報生成手段が生成した経路情報を通信装置に配信する配信手段とを備え、配信手段は、経路案内の対象とされていない道路を通行することで到達可能な地点を目的地としている第2の移動体に搭載された通信装置を特定して経路情報を配信する経路案内装置である。
【0008】
この構成によれば、経路案内の対象とされていない道路を通行する第1の移動体の通行軌跡に基づいて、経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を生成する経路情報生成手段と、経路情報生成手段が生成した経路情報を通信装置に配信する配信手段とを備えた経路案内装置において、配信手段は、経路案内の対象とされていない道路を通行することで到達可能な地点を目的地としている第2の移動体に搭載された通信装置を特定して経路情報を配信するため、経路案内の対象とされていない道路の情報が必要な第2の移動体の通信装置だけが当該道路の情報を受信することになり、不要な通信が生じない。そのため、より効率が高い通信により、経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を提供することが可能となる。なお、本発明で、「経路案内の対象とされていない道路」とは、移動体の経路案内用の地図データ上に未だ登録されていない道路のことを意味する。
【0009】
また本発明は、経路案内の対象とされていない道路を通行する第1の移動体の通行軌跡に基づいて、経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を生成する経路情報生成手段と、経路情報生成手段が生成した経路情報を通信装置に配信する配信手段とを備え、配信手段は、経路案内の対象とされていない道路を通行することで到達可能な地点を目的地としている第2の移動体に搭載された通信装置を特定して経路情報を配信する情報配信施設を介して経路情報を配信する経路案内装置である。
【0010】
この構成によれば、経路案内の対象とされていない道路を通行する第1の移動体の通行軌跡に基づいて、経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を生成する経路情報生成手段と、経路情報生成手段が生成した経路情報を通信装置に配信する配信手段とを備えた経路案内装置において、配信手段は、経路案内の対象とされていない道路を通行することで到達可能な地点を目的地としている第2の移動体に搭載された通信装置を特定して経路情報を配信する情報配信施設を介して経路情報を配信するため、経路案内の対象とされていない道路の情報が必要な第2の移動体の通信装置だけが当該道路の情報を受信することになり、不要な通信が生じない。また、第2の移動体に搭載された通信装置は情報配信施設を介して経路情報を受信するため、例えば、第2の移動体に搭載された通信装置が、当該道路を通行する第1の移動体から直接に経路情報を受信することができない場合でも、第2の移動体に搭載された通信装置は、情報配信施設から経路情報を受信することができる。
【0011】
これらの場合、配信手段は、第2の移動体に搭載された通信装置との通信を他の通信装置に中継させる場合において、第2の移動体に搭載された通信装置と通信可能な他の通信装置が複数存在する場合は、経路案内の対象とされていない道路の起点に最も近い位置に存在する他の通信装置に通信装置との通信を中継させることが好適である。
【0012】
この構成によれば、配信手段は、第2の移動体に搭載された通信装置との通信を他の通信装置に中継させる場合において、第2の移動体に搭載された通信装置と通信可能な他の通信装置が複数存在する場合は、経路案内の対象とされていない道路の起点に最も近い位置に存在する他の通信装置に通信装置との通信を中継させるため、第2の移動体に搭載された通信装置と通信可能な他の通信装置が複数存在する場合であっても、中継する通信装置が比較的に少ない通信経路が形成されるため、冗長な通信が発生しにくくなる。
【0013】
また、配信手段は、第2の移動体に搭載された通信装置への経路情報の配信を終了する場合は、第2の移動体に搭載された通信装置へ経路情報を配信することが可能であって、第2の移動体に搭載された通信装置と所定距離以上離れた位置に存在する他の通信装置に経路情報を配信させることが好適である。
【0014】
この構成によれば、配信手段は、第2の移動体に搭載された通信装置への経路情報の配信を終了する場合は、第2の移動体に搭載された通信装置へ経路情報を配信することが可能であって、第2の移動体に搭載された通信装置と所定距離以上離れた位置に存在する他の通信装置に経路情報を配信させるため、通信相手である第2の移動体に搭載された通信装置と極めて近い位置に存在する他の通信装置に交代して、極めて近距離を中継するといった非効率的な状態の発生を防止することができる。
【0015】
一方、本発明は、経路案内の対象とされていない道路を通行する第1の移動体の通行軌跡に基づいて、経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を生成する経路情報生成工程と、経路情報生成工程で生成した経路情報を通信装置に配信する配信工程とを含み、配信工程では、経路案内の対象とされていない道路を通行することで到達可能な地点を目的地としている第2の移動体に搭載された通信装置を特定して経路情報を配信する経路案内方法である。
【0016】
また、本発明は、経路案内の対象とされていない道路を通行する第1の移動体の通行軌跡に基づいて、経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を生成する経路情報生成工程と、経路情報生成工程で生成した経路情報を通信装置に配信する配信工程とを含み、配信工程では、経路案内の対象とされていない道路を通行することで到達可能な地点を目的地としている第2の移動体に搭載された通信装置を特定して経路情報を配信する情報配信施設を介して経路情報を配信する経路案内方法である。
【0017】
これらの場合、配信工程では、第2の移動体に搭載された通信装置との通信を他の通信装置に中継させる場合において、第2の移動体に搭載された通信装置と通信可能な他の通信装置が複数存在する場合は、前記経路案内の対象とされていない道路の起点に最も近い位置に存在する他の通信装置に通信装置との通信を中継させることが好適である。
【0018】
あるいは、配信工程では、第2の移動体に搭載された通信装置への経路情報の配信を終了する場合は、第2の移動体に搭載された通信装置へ経路情報を配信することが可能であって、第2の移動体に搭載された通信装置と所定距離以上離れた位置に存在する他の通信装置に経路情報を配信させることが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の経路案内装置及び経路案内方法によれば、より効率が高い通信により、経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る細街路の経路案内システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る細街路の経路案内システムの基本的概念を示す平面図である。
【図3】実施形態に係る細街路の経路案内システムの基本的動作を示すフロー図である。
【図4】実施形態に係る細街路の経路案内システムの基本的動作を示す平面図である。
【図5】中継車を検索する動作を示すフロー図である。
【図6】中継車を検索する動作を示す平面図である。
【図7】細街路の起点位置と車両位置との基本的な関係を示す平面図である。
【図8】細街路の起点位置と先行車両位置と中継車両位置との関係を示す平面図である。
【図9】中継車両が離脱する際の動作を示すフロー図である。
【図10】中継車両が離脱する際の動作を示す平面図である。
【図11】中継車両を交代させる際の動作を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0022】
図1に示すように、本発明の経路案内システムは、先行車両(情報配信車両)100と、後続車両(情報受信車両)200と、細街路情報配信センター500とから構成される。先行車両100及び後続車両200は、ナビ機能部1、経路学習部2、画面表示部3、短距離無線通信部4、インターネット通信部5、車載地図データ6及び細街路学習情報7を備えている。
【0023】
ナビ機能部1は、従来型のカーナビゲーションシステムとしての機能を有する。ナビ機能部1は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星からの信号をGPS受信機で受信し、各々の信号の相違から自車両の位置を測位するGPSと、自車両内の地図情報を記憶させた車載地図データ6とから、先行車両100及び後続車両200のための経路案内を行うためのものである。
【0024】
経路学習部2は、経路案内の対象となる幹線道路等から目的地までの細街路を含む経路を学習するためのものである。画面表示部3は、経路案内の案内指示等の情報をドライバーに対して表示するためのものである。特に、後続車両200の画面表示部3は、先行車両100から受信した細街路学習情報に基づく指示を表示するためのものである。
【0025】
短距離無線通信部4は、先行車両100が取得した細街路学習情報を後続車両200に送信する、あるいは先行車両100から送信された細街路学習情報を後続車両200が受信するために用いられる。この短距離無線通信部4は、通信相手を認証し、当該通信相手を特定して一対一の情報の送受信を行なうことが可能である。
【0026】
インターネット通信部5は、細街路学習情報を細街路学習センター500からダウンロードあるいはアップロードするためのものである。当該インターネット通信部5のダウンロードあるいはアップロードは、情報の送信者あるいは受信者の認証を行なった後、情報の送信者及び受信者を特定して一対一の情報の送受信を行なうことが可能である。ただし、インターネット通信部5は、必ずしも必須の構成ではない。
【0027】
車載地図データ6は、先行車両100及び後続車両200といった車両側の検索データ、描画データ及び道路データが含まれている。細街路学習情報7は、経路学習部2で学習した細街路に関する情報が含まれている。
【0028】
細街路配信センター500は、細街路経路DB8、細街路経路情報管理部9及びインターネット通信機能部10を備えている。細街路経路DB8は、先行車両100及び後続車両200といった各車両からアップロードされた細街路学習情報が格納されるデータベースである。
【0029】
細街路経路情報管理部9は、先行車両100及び後続車両200といった各車両からのアップロードに対する応答や、情報提供の要求に応答を行なうためのものである。インターネット通信機能部10は、インターネットとの接続により、先行車両100及び後続車両200といった各車両からの細街路学習情報のアップロードあるいはダウンロードを行なうためのものである。
【0030】
以下、本実施形態の経路案内システムの動作について説明する。図2に示すように、本実施形態の経路案内システムでは、車載地図データ6には含まれておらず、経路案内の対象とは本来ならない細街路を走行中の先行車両100が、当該細街路に関する情報を学習する。次に、先行車両100は、学習した細街路学習情報Iを細街路を通行することで目的地に到達可能な後続車両200を特定して送信することにより、細街路学習情報Iを先行車両100及び後続車両200で共有しようとするものである。
【0031】
以下、図3及び図4を参照して、経路案内システムの細街路学習情報の配信を行なう動作について説明する。図4に示すように、後続車両200が基幹道路ARを走行している状況を仮定する。基幹道路ARは車載地図データ6に含まれるため、ナビ機能部1が経路案内を行うナビ案内経路nである。後続車両200のナビ機能部1は、車載地図データ6に含まれないために経路案内の対象とされていない細街路Pを通行することで到達可能な地点である目的地Dを目的地として設定する(S101)。後続車両200のナビ機能部1は、車載地図データ6を参照しつつ目的地Dまでのルート検索を行なう(S102)。この場合は、車載地図データ6には、目的地Dまでの経路情報は含まれていない。
【0032】
後続車両200のナビ機能部1は、細街路学習情報7を参照しつつ、後続車両200内に目的地Dに到達するための経路情報が存在するか否かを確認する(S103)。このときすでに、目的地Dに到達するための経路情報が後続車両200内の細街路学習情報7に含まれているときは(S103)、ナビ機能部1は、基幹道路ARまでのナビ案内経路nと当該経路とを連結した経路により経路案内をすることを設定する(S104)。ナビ機能部1は、経路案内を開始する(S105)。
【0033】
ナビ機能部1は、経路案内中に後続車両200が、車載地図データ6及び細街路学習情報7に基づく経路案内の終了地点の一定距離以内に到達したか、あるいは細街路侵入地点(細街路起点)X1の一定距離以内に到達したか否かを定期的に確認する(S106)。ナビ機能部1は、後続車両200が経路案内の終了地点又は細街路侵入地点X1の一定距離以内に入った場合(S106)、短距離無線通信部4は、周囲に細街路Pに関する細街路学習情報が配信されているか否かを確認する(S107)。この細街路学習情報が配信されているか否かの確認は、図4に示すような先行車両100から細街路学習情報を配信することが可能である旨の信号が送信されているか否かを確認することにより行なう。もし、周囲に細街路Pに関する細街路情報が配信されていないときは(S107)、図4中に示すような細街路Pを走行する先行車両100が存在しない場合であるので、インターネット通信部5は、インターネット経由で細街路情報配信センター500に接続し、目的地Dと細街路侵入地点X1とを結ぶ経路情報が保存されているか否か検索する(S108)。
【0034】
周囲に細街路Pに関する細街路情報が配信されておらず(S107)、細街路情報配信センター500にも経路情報が保存されていないときは(S108)、経路学習部2は目的地Dまでの細街路Pを学習する(S109)。細街路に関する細街路情報の学習については、以下の流れで実施するものとする。すなわち、経路学習部2は、現在、ナビ機能部1による案内経路が引かれている細街路侵入地点X1に到達したときに細街路情報の学習を開始する。経路学習部2は、学習開始地点から最終の目的地Dまで実際に走行した細街路の走行経路(リンク情報や緯度経度方向を利用した道路線形情報等)を細街路学習情報7に蓄積する。これにより、図4に示すように、細街路侵入地点X1、X2ごとに細街路Pについての学習経路p1、p2が蓄積される。
【0035】
ナビ機能部1は、目的地D付近の一定距離(例えば、数十m)で停車したか否かを定期的に確認する(S110)。後続車両200が目的地Dに到達したときは(S110)、短距離無線通信部4は、周辺に目的地への細街路学習情報を配信中の他車両を検索する。該当車両が存在しない場合や、該当車両が存在した場合であっても、当該車両の目的地、細街路侵入地点X1が後続車両200と一致せず、同一の細街路学習情報を配信していないときは、短距離無線通信部4及びインターネット通信部5は、配信用の細街路学習情報を作成する(S111)。
【0036】
後続車両200がインターネット通信部5を有し、インターネットとの接続が可能である場合は、後続車両が走行した学習経路p1についての細街路学習情報を細街路情報配信センター500にアップロードする(S112)。後に詳述するように、短距離無線通信部4は、その通信範囲rmaxが基幹道路AR(細街路侵入地点X1、X2)まで届くか否か確認し、通信範囲rmaxが基幹道路ARまで届かないときは、情報配信のための中継車である情報配信中継車を検索し、最適な中継車に対して情報配信を行なう(S113)。
【0037】
通信範囲rmaxが基幹道路ARまで届く場合や、中継車が確定した場合、後続車両200の短距離無線通信部4は、後続車両200自身が学習した細街路学習情報あるいは細街路情報配信センター500からダウンロードした細街路学習情報を配信することが可能である旨の信号を送信し、当該細街路学習情報を配信可能である旨の信号を受信して、細街路学習情報の配信を要求してきた他車両や最適な中継車を特定して配信する(S114)。
【0038】
ナビ機能部1は、後続車両200が目的地Dから離脱するか否かを、ドライバーの搭乗の有無や、エンジン始動の有無や、他地点への目的地設定から推定する(S115)。もし、後続車両200が短距離無線通信部4による通信範囲rmax外に離脱する可能性が高ければ、短距離無線通信部4は以下の処理を行い、離脱する可能性が低ければ、短距離無線通信部4は、細街路学習情報の配信を繰り返す(S114)。後続車両200が短距離無線通信部4による通信範囲rmax外に離脱する可能性が高ければ(S115)、後の詳述するように、後続車200が離脱後も経路情報配信用のアドホックネットワークを保持するために、周囲の他車両に細街路学習情報の配信の交代を依頼する(S116)。
【0039】
一方、周囲に細街路Pに関する細街路学習情報が配信されているときは(S107)、図4中に示すような細街路Pを走行する先行車両100が存在する場合であるので、短距離無線通信部4は先行車両100との車車間通信により、細街路学習情報の配信を依頼し、先行車両100に自車両である後続車両200を特定させつつ細街路学習情報を配信させ、当該送信されてきた細街路学習情報を受信する(S117)。また、周囲に細街路Pに関する細街路情報が配信されてはいないが(S107)、細街路情報配信センター500には経路情報が保存されているときは(S108)、インターネット通信部5は、インターネットを経由し、細街路情報配信センター500に自車両である後続車両200を認識させ、細街路情報配信センター500より自車両である後続車両200を特定させつつ細街路学習情報をダウンロードする(S118)。
【0040】
ナビ機能部1は、配信された細街路学習情報を後続車両200の経路案内のための情報に設定する(S119)。ナビ機能部1は、当該経路案内を中断すること無く実行する(S120)。
【0041】
以下、図5及び図6を参照して、上記後続車両200がS113に示した場合や(この場合は後続車両200が当該目的地Dに対しては先行車両となる)、先行車両100が細街路学習情報を配信する車両として目的地D付近に存在している状況で、中継車を検索する動作について説明する。
【0042】
先行車両100の短距離無線通信部4は、先行車両100から細街路P1と直接に接続する基幹道路ARが、短距離無線通信部4のrmax内に存在するか否か判定する(S201)。ここで、基幹道路ARへの配信情報の到達を目的とする理由は、基幹道路ARまでの経路案内は車載地図データ6により保証されているが、後続車両200が細街路P1に入ったときに中断無く経路案内を継続するためには、基幹道路ARに情報を到達させる必要があるからである。
【0043】
図7に示すような状況において、細街路起点A(x1,y1)と先行車両100の車両位置B(x2,y2)とには、下式(1)が成り立つ。
r={(x1−x2)2+(y1−y2)2}1/2 (1)
【0044】
ただし、r=rmaxであるときは、無線通信路上に存在する建造物等による電波減衰を考慮すると確実に電波が到達できるとは言えないため、一定の電波減衰係数k(≧1)を乗じたkrにて、下式(2)(3)により電波の到達判定を行うことで、短距離無線通信部4は、確実な判定を行うことができる。最終的には、短距離無線通信部4は、下式(3)が成り立つ場合において、電波が到達可能であると判定する。
rmax≧kr(≧1) (2)
rmax≧k・{(x1−x2)2+(y1−y2)2}1/2 (3)
【0045】
短距離無線通信部4は、電波出力が可変であり、通信到達距離を一定係数倍m(≧1)伸ばすことができる通信モジュールである場合は、電波出力を増幅した場合に基幹道路ARまで電波が到達するか否かを判定する(S202)。つまり、上式(2)(3)を下式(2)’(3)’に改変し、下式(2)’(3)’が成り立つ場合は、短距離無線通信部4は電波が到達可能であると判定する。
m・rmax≧kr(≧1) (2)’
rmax≧(k/m)・{(x1−x2)2+(y1−y2)2}1/2 (3)’
【0046】
短距離無線通信部4は、通信範囲rmax内にて停車している他車両に細街路学習情報を中継することができる機能を備えているか確認を行なう(S203)。当該他車両が中継の機能を備えている場合は、短距離無線通信部4は、中継への参加可否の確認も行い、参加不可と設定されている他車両は中継車に利用しない。
【0047】
短距離無線通信部4は、中継車検索時に参加可能車両が複数台存在する場合は、中継車候補リストを作成し、細街路P1の起点である細街路侵入地点X1に最も近く、自車両である先行車両100の通信範囲rmax内に停車している他車両を中継車として選択していく(S204)。中継車リストは、全ての他車両からの応答があった後に、当該他車両を細街路侵入地点X1から近い順にソートしておく。全ての他車両を中継車としない理由は、周辺の電波利用を効率化し、冗長な情報配信車両を排除したいためである。
【0048】
例えば、図6の例では、細街路P2に停車中の他車両300aが中継車となる。また、図8の例では、先行車両100の通信範囲rmax内には他車両300aと他車両300bとが存在するが、中継車の候補が複数存在した場合は、短距離無線通信部4は、細街路の起点である細街路侵入地点X1からの距離をそれぞれの中継車候補の車両に対して計算し、細街路侵入地点X1から最短距離に位置する他車両300aを中継車に選択する(中継車選択条件)。つまり、学習経路p1の細街路学習情報の配信経路は、先行車両100、他車両300a、他車両300c及び他車両300dとなり、他車両300dが基幹道路ARまで細街路学習情報を配信することができる。また、学習経路p2の細街路学習情報の配信経路は、先行車両100及び他車両300bとなり、他車両300bが基幹道路ARまで細街路学習情報を配信することができる。これにより、中間位置に停車している中継車が細街路学習情報を中継して基幹道路ARまで到達させ、後続車両200は遠くの細街路についての細街路学習情報でも受信することが可能となる。
【0049】
図5に戻り、短距離無線通信部4は、中継車リストから細街路学習情報を配信する車両の候補を、細街路の起点である細街路侵入地点X1に近い順に選択する(S205)。短距離無線通信部4は、実際に細街路学習情報を配信可能か否かを、中継車依頼を送信することによって、可否の問合せを行なう。短距離無線通信部4は、中継車候補からの中継車依頼に対する可否応答を判断する(S206)。短距離無線通信部4は、応答が一定時間無かった場合も、中継車となることは不可能であると判断する。
【0050】
中継車が確定した場合、短距離無線通信部4は、細街路学習情報の配信を行なう(S207)。細街路学習情報を配信された後続車両200の側では、図3に示したS113〜S116の処理が基幹道路ARに到達するまで繰り返される。先行車両100の短距離無線通信部4は、自車両が保有している細街路学習情報の全てについて細街路侵入地点ごとに中継車を設定することができたか否かを確認する(S208)。全ての細街路侵入地点の細街路学習情報について中継車を設定した場合は、短距離無線通信部4は処理を終了し、細街路侵入地点の細街路学習情報が残っている場合は、短距離無線通信部4は当該細街路学習情報の中継車を検索する。例えば、図8の例のように、2つの学習経路p1、p2について細街路学習情報を保有している場合は、短距離無線通信部4は、学習経路p1、p2の両方について、細街路侵入地点X1、X2方向に向けて中継車を探していく。
【0051】
以下、図9及び図10を参照しつつ、細街路学習情報を配信した車両あるいは中継車が、目的地Dから離脱する等の場合において、アドホックネットワークを維持しつつ情報を配信又は中継する車両の役割を効率良く交代する処理について説明する。
【0052】
図9及び図10に示すように、先行車両100又は中継車である他車両300a,300bの短距離無線通信部4は自車両周辺に細街路学習情報の配信を交代可能な停止車両が存在するかを、周辺の他車両に対してブロードキャスト通信で問い合わせる(S301)。短距離無線通信部4は、各他車両から応答される交代の可否に関する情報を参照し、交代車両候補リストを作成する(S302)。図10の例では、先行車両100’、他車両300a’,300b’が交代車両の候補となる。
【0053】
例えば、図11に示す例では、自車両である他車両300aに対し中継依頼をした車両である先行車両100を「親車両」、自車両である他車両300aが中継依頼をした車両を「子車両」と定義した場合、交代候補車両は、親車両と子車両との両方に通信が可能であり、なおかつ各車両と近すぎると効果的な配置とならないため、
(A)親車両へ通信可能で且つ親車両との直線距離が一定以上
(B)子車両へ通信可能で且つ子車両への直線距離が一定以上
の上記(A)(B)両方の条件を満たし、且つ細街路侵入地点に近いものの順に短距離無線通信部4はリストをソートする。例えば、図11の例では、他車両300cが上記(A)(B)を満たすか否か判定する。上記(A)(B)を満たさない場合でも、交代可能であれば、短距離無線通信部4はリストには登録する。また、上記(A)(B)の通信可能であるか否かの判定は、上式(3)又は(3)’により行うことができる。
【0054】
短距離無線通信部4は、交代車両リストから交代車両候補を選択する(S303)。短距離無線通信部4は、実際に細街路学習情報を配信可能か否かを、交代車両候補に送信し、可否の問合せを行なう。短距離無線通信部4は、交代車両候補からの交代車両依頼に対する可否応答を判断する(S304)。短距離無線通信部4は、応答が一定時間無かった場合も、交代車両となることは不可能であると判断する。
【0055】
交代車両が確定した場合、短距離無線通信部4は自車両からの細街路学習情報の配信を停止し、当該交代車両に細街路学習情報の配信を継続させる交代処理を行う(S305)。短距離無線通信部4は、細街路学習情報を配信及び中継する車両同士の距離が通信範囲rmax内の一定範囲内か否かについて以下のような判定を行う。
(A)親車両へ通信可能で且つ親車両との直線距離が一定以上
(B)子車両へ通信可能で且つ子車両への直線距離が一定以上
【0056】
上述したように上記S301においても、短距離無線通信部4は上記判定を行うが、「直線距離が一定距離以上」ではないにも関わらず交代車両に設定されている場合、交代車両と親車両又は子車両があまりに近い可能性がある。そこで、このように交代車両と親車両又は子車両があまりに近い場合に、2つの車両が同時に同じ情報を配信することは効率的ではないため、短距離無線通信部4は処理を統合させ(S306)、交代車両は細街路学習情報の配信を停止し、親車両や子車両が従来通り配信を行なう。
【0057】
短距離無線通信部4は、上記S302において、候補車両が存在しない場合は、自車両が目的地Dや細街路侵入地点X1、X2から一定距離をおいて離脱するまで、走行中も細街路学習情報を配信し続ける(S307)。
【0058】
本実施形態では、経路案内の対象とされていない細街路P1を通行する先行車両100の通行軌跡に基づいて、経路案内の対象とされていない細街路P1に関する細街路学習情報を生成する経路学習部2と、経路学習部2が生成した細街路学習情報を後続車両200に配信する短距離無線通信部4とを備えた先行車両100において、短距離無線通信部4は、経路案内の対象とされていない細街路P1を通行することで到達可能な地点を目的地Dとしている後続車両200を特定して細街路学習情報を配信するため、経路案内の対象とされていない細街路P1の情報が必要な後続車両200だけが細街路学習情報を受信することになり、不要な通信が生じない。そのため、より効率が高い通信により、経路案内の対象とされていない細街路P1に関する細街路学習情報を提供することが可能となる。
【0059】
また、本実施形態では、経路案内の対象とされていない細街路P1を通行する先行車両100の通行軌跡に基づいて、経路案内の対象とされていない細街路P1に関する細街路学習情報を生成する経路学習部2と、経路学習部2が生成した細街路学習情報を後続車両200に配信する短距離無線通信部4とを備えた先行車両100において、短距離無線通信部4は、経路案内の対象とされていない細街路P1を通行することで到達可能な地点を目的地Dとしている後続車両200を特定して細街路学習情報を配信する細街路情報配信センター500介して細街路学習情報を配信するため、経路案内の対象とされていない細街路P1の情報が必要な後続車両200だけが細街路学習情報を受信することになり、不要な通信が生じない。また、後続車両200は細街路情報配信センター500を介して細街路学習情報を受信するため、例えば後続車両200が細街路P1を通行する先行車両100から直接に細が織学習情報を受信することができない場合でも、後続車両200は細街路情報配信センター500から細街路学習情報を受信することができる。
【0060】
また、本実施形態では、短距離無線通信部4は、後続車両200との通信を他車両300a等に中継させる場合において、後続車両200と通信可能な他車両が複数存在する場合は、経路案内の対象とされていない細街路P1の起点である細街路侵入地点X1に最も近い位置に存在する他車両に自車両との通信を中継させるため、後続車両200と通信可能な他車両が複数存在する場合であっても、中継する車両が比較的に少ない通信経路が形成されるため、冗長な通信が発生しにくくなる。
【0061】
さらに、本実施形態では、短距離無線通信部4は、後続車両200への細街路学習情報の配信を終了する場合は、後続車両200へ細街路学習情報を配信することが可能であって、後続車両200と所定距離以上離れた位置に存在する他車両300a等に細街路学習情報を配信させるため、通信相手である後続車両200と極めて近い位置に存在する他車両に交代して、極めて近距離を中継するといった非効率的な状態の発生を防止することができる。
【0062】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態においては、本実施形態の経路案内装置が車両にナビゲーション装置として搭載されている例を用いているが、例えば、携帯電話機など歩行者等が所持する移動体に本実施形態の経路案内装置が設けられている態様とすることができる。また、上記実施形態では取得した細街路情報を経路案内装置に提供するようにしているが、本発明の経路案内装置は、他の装置、例えば、固定パーソナルコンピュータやナビゲーション機能を備えていない携帯電話機等に細街路学習情報を提供する態様とすることも可能である。
【0063】
さらに、本実施形態では、目的地に到達するために本当に細街路学習情報を必要とする受信者を特定して細街路学習情報を配信するため、プライバシー及びセキュリティーの関係から、当該細街路学習情報ごとに当該情報にアクセス可能なアクセス権限を特定しておき、当該アクセス権限を有する受信者のみに、細街路学習情報を配信するといった態様も可能である。あるいは、逆に、細街路を通行することで到達可能な店舗に関する情報については、アクセス権限を緩和して、多くのユーザに当該細街路学習情報へのアクセス権限を広く認めることも可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…ナビ機能部、2…経路学習部、3…画面表示部、4…短距離無線通信部、5…インターネット通信部、6…車載地図データ、7…細街路学習情報、8…細街路経路DB、9…細街路経路情報管理部、10…インターネット通信機能部、100,100a,100a’…先行車両、200…後続車両、300a〜300c,300a’〜300c’…中継車両、500…細街路情報配信センター。
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的地に到達するための道路に関する情報を提供する経路案内装置及び経路案内方法に関する。
【背景技術】
【0002】
目的地に到達するための経路案内を行うナビゲーションシステムが開発されている。しかし、ナビゲーションシステムでは、地図データに含まれない新規道路や細街路に入ったところに存在する施設を目的地として設定した場合、目的地付近の基幹道路で案内が終了したり、細街路上の経路案内が最後まで行われないことがある。目的地に到達するために、日本全国全ての細街路経路を地図メーカーが作成した場合は莫大なコストがかかる。しかし、費用対効果の面では投資に応じた効果を得る事が難しいため、実際に地図メーカーのみで全ての調査コストを負担することは不可能である。そのため、細街路に関する情報は、地図データに含まれず、細街路の経路案内も実現が難しい。
【0003】
そのため、特許文献1では、プローブカーである車両がナビゲーション装置のナビ地図データに含まれない道路を走行する際の走行軌跡情報をプローブデータとして地図配信センターに送信し、一方、各車両のナビゲーション装置から走行軌跡情報を受信した地図配信センターは、受信したデータを収集して新規道路情報を生成するとともに新規道路の車両の走行数に基づいて優先順位を設定し、更に、設定された優先順位に従って新規道路情報の報知を行う地図情報配信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−164824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記技術においては、地図配信センタから配信されるデータには、目的地に到達するために新規道路等を通行しなくとも良い車両にとっては、目的地に到達するために必要ではない情報も含まれている。そのため、これらの不要なデータを受信することにより、不要な通信コストがかかるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような実情に考慮してなされたものであり、その目的は、より効率が高い通信により、経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、経路案内の対象とされていない道路を通行する第1の移動体の通行軌跡に基づいて、経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を生成する経路情報生成手段と、経路情報生成手段が生成した経路情報を通信装置に配信する配信手段とを備え、配信手段は、経路案内の対象とされていない道路を通行することで到達可能な地点を目的地としている第2の移動体に搭載された通信装置を特定して経路情報を配信する経路案内装置である。
【0008】
この構成によれば、経路案内の対象とされていない道路を通行する第1の移動体の通行軌跡に基づいて、経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を生成する経路情報生成手段と、経路情報生成手段が生成した経路情報を通信装置に配信する配信手段とを備えた経路案内装置において、配信手段は、経路案内の対象とされていない道路を通行することで到達可能な地点を目的地としている第2の移動体に搭載された通信装置を特定して経路情報を配信するため、経路案内の対象とされていない道路の情報が必要な第2の移動体の通信装置だけが当該道路の情報を受信することになり、不要な通信が生じない。そのため、より効率が高い通信により、経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を提供することが可能となる。なお、本発明で、「経路案内の対象とされていない道路」とは、移動体の経路案内用の地図データ上に未だ登録されていない道路のことを意味する。
【0009】
また本発明は、経路案内の対象とされていない道路を通行する第1の移動体の通行軌跡に基づいて、経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を生成する経路情報生成手段と、経路情報生成手段が生成した経路情報を通信装置に配信する配信手段とを備え、配信手段は、経路案内の対象とされていない道路を通行することで到達可能な地点を目的地としている第2の移動体に搭載された通信装置を特定して経路情報を配信する情報配信施設を介して経路情報を配信する経路案内装置である。
【0010】
この構成によれば、経路案内の対象とされていない道路を通行する第1の移動体の通行軌跡に基づいて、経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を生成する経路情報生成手段と、経路情報生成手段が生成した経路情報を通信装置に配信する配信手段とを備えた経路案内装置において、配信手段は、経路案内の対象とされていない道路を通行することで到達可能な地点を目的地としている第2の移動体に搭載された通信装置を特定して経路情報を配信する情報配信施設を介して経路情報を配信するため、経路案内の対象とされていない道路の情報が必要な第2の移動体の通信装置だけが当該道路の情報を受信することになり、不要な通信が生じない。また、第2の移動体に搭載された通信装置は情報配信施設を介して経路情報を受信するため、例えば、第2の移動体に搭載された通信装置が、当該道路を通行する第1の移動体から直接に経路情報を受信することができない場合でも、第2の移動体に搭載された通信装置は、情報配信施設から経路情報を受信することができる。
【0011】
これらの場合、配信手段は、第2の移動体に搭載された通信装置との通信を他の通信装置に中継させる場合において、第2の移動体に搭載された通信装置と通信可能な他の通信装置が複数存在する場合は、経路案内の対象とされていない道路の起点に最も近い位置に存在する他の通信装置に通信装置との通信を中継させることが好適である。
【0012】
この構成によれば、配信手段は、第2の移動体に搭載された通信装置との通信を他の通信装置に中継させる場合において、第2の移動体に搭載された通信装置と通信可能な他の通信装置が複数存在する場合は、経路案内の対象とされていない道路の起点に最も近い位置に存在する他の通信装置に通信装置との通信を中継させるため、第2の移動体に搭載された通信装置と通信可能な他の通信装置が複数存在する場合であっても、中継する通信装置が比較的に少ない通信経路が形成されるため、冗長な通信が発生しにくくなる。
【0013】
また、配信手段は、第2の移動体に搭載された通信装置への経路情報の配信を終了する場合は、第2の移動体に搭載された通信装置へ経路情報を配信することが可能であって、第2の移動体に搭載された通信装置と所定距離以上離れた位置に存在する他の通信装置に経路情報を配信させることが好適である。
【0014】
この構成によれば、配信手段は、第2の移動体に搭載された通信装置への経路情報の配信を終了する場合は、第2の移動体に搭載された通信装置へ経路情報を配信することが可能であって、第2の移動体に搭載された通信装置と所定距離以上離れた位置に存在する他の通信装置に経路情報を配信させるため、通信相手である第2の移動体に搭載された通信装置と極めて近い位置に存在する他の通信装置に交代して、極めて近距離を中継するといった非効率的な状態の発生を防止することができる。
【0015】
一方、本発明は、経路案内の対象とされていない道路を通行する第1の移動体の通行軌跡に基づいて、経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を生成する経路情報生成工程と、経路情報生成工程で生成した経路情報を通信装置に配信する配信工程とを含み、配信工程では、経路案内の対象とされていない道路を通行することで到達可能な地点を目的地としている第2の移動体に搭載された通信装置を特定して経路情報を配信する経路案内方法である。
【0016】
また、本発明は、経路案内の対象とされていない道路を通行する第1の移動体の通行軌跡に基づいて、経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を生成する経路情報生成工程と、経路情報生成工程で生成した経路情報を通信装置に配信する配信工程とを含み、配信工程では、経路案内の対象とされていない道路を通行することで到達可能な地点を目的地としている第2の移動体に搭載された通信装置を特定して経路情報を配信する情報配信施設を介して経路情報を配信する経路案内方法である。
【0017】
これらの場合、配信工程では、第2の移動体に搭載された通信装置との通信を他の通信装置に中継させる場合において、第2の移動体に搭載された通信装置と通信可能な他の通信装置が複数存在する場合は、前記経路案内の対象とされていない道路の起点に最も近い位置に存在する他の通信装置に通信装置との通信を中継させることが好適である。
【0018】
あるいは、配信工程では、第2の移動体に搭載された通信装置への経路情報の配信を終了する場合は、第2の移動体に搭載された通信装置へ経路情報を配信することが可能であって、第2の移動体に搭載された通信装置と所定距離以上離れた位置に存在する他の通信装置に経路情報を配信させることが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の経路案内装置及び経路案内方法によれば、より効率が高い通信により、経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る細街路の経路案内システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る細街路の経路案内システムの基本的概念を示す平面図である。
【図3】実施形態に係る細街路の経路案内システムの基本的動作を示すフロー図である。
【図4】実施形態に係る細街路の経路案内システムの基本的動作を示す平面図である。
【図5】中継車を検索する動作を示すフロー図である。
【図6】中継車を検索する動作を示す平面図である。
【図7】細街路の起点位置と車両位置との基本的な関係を示す平面図である。
【図8】細街路の起点位置と先行車両位置と中継車両位置との関係を示す平面図である。
【図9】中継車両が離脱する際の動作を示すフロー図である。
【図10】中継車両が離脱する際の動作を示す平面図である。
【図11】中継車両を交代させる際の動作を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0022】
図1に示すように、本発明の経路案内システムは、先行車両(情報配信車両)100と、後続車両(情報受信車両)200と、細街路情報配信センター500とから構成される。先行車両100及び後続車両200は、ナビ機能部1、経路学習部2、画面表示部3、短距離無線通信部4、インターネット通信部5、車載地図データ6及び細街路学習情報7を備えている。
【0023】
ナビ機能部1は、従来型のカーナビゲーションシステムとしての機能を有する。ナビ機能部1は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星からの信号をGPS受信機で受信し、各々の信号の相違から自車両の位置を測位するGPSと、自車両内の地図情報を記憶させた車載地図データ6とから、先行車両100及び後続車両200のための経路案内を行うためのものである。
【0024】
経路学習部2は、経路案内の対象となる幹線道路等から目的地までの細街路を含む経路を学習するためのものである。画面表示部3は、経路案内の案内指示等の情報をドライバーに対して表示するためのものである。特に、後続車両200の画面表示部3は、先行車両100から受信した細街路学習情報に基づく指示を表示するためのものである。
【0025】
短距離無線通信部4は、先行車両100が取得した細街路学習情報を後続車両200に送信する、あるいは先行車両100から送信された細街路学習情報を後続車両200が受信するために用いられる。この短距離無線通信部4は、通信相手を認証し、当該通信相手を特定して一対一の情報の送受信を行なうことが可能である。
【0026】
インターネット通信部5は、細街路学習情報を細街路学習センター500からダウンロードあるいはアップロードするためのものである。当該インターネット通信部5のダウンロードあるいはアップロードは、情報の送信者あるいは受信者の認証を行なった後、情報の送信者及び受信者を特定して一対一の情報の送受信を行なうことが可能である。ただし、インターネット通信部5は、必ずしも必須の構成ではない。
【0027】
車載地図データ6は、先行車両100及び後続車両200といった車両側の検索データ、描画データ及び道路データが含まれている。細街路学習情報7は、経路学習部2で学習した細街路に関する情報が含まれている。
【0028】
細街路配信センター500は、細街路経路DB8、細街路経路情報管理部9及びインターネット通信機能部10を備えている。細街路経路DB8は、先行車両100及び後続車両200といった各車両からアップロードされた細街路学習情報が格納されるデータベースである。
【0029】
細街路経路情報管理部9は、先行車両100及び後続車両200といった各車両からのアップロードに対する応答や、情報提供の要求に応答を行なうためのものである。インターネット通信機能部10は、インターネットとの接続により、先行車両100及び後続車両200といった各車両からの細街路学習情報のアップロードあるいはダウンロードを行なうためのものである。
【0030】
以下、本実施形態の経路案内システムの動作について説明する。図2に示すように、本実施形態の経路案内システムでは、車載地図データ6には含まれておらず、経路案内の対象とは本来ならない細街路を走行中の先行車両100が、当該細街路に関する情報を学習する。次に、先行車両100は、学習した細街路学習情報Iを細街路を通行することで目的地に到達可能な後続車両200を特定して送信することにより、細街路学習情報Iを先行車両100及び後続車両200で共有しようとするものである。
【0031】
以下、図3及び図4を参照して、経路案内システムの細街路学習情報の配信を行なう動作について説明する。図4に示すように、後続車両200が基幹道路ARを走行している状況を仮定する。基幹道路ARは車載地図データ6に含まれるため、ナビ機能部1が経路案内を行うナビ案内経路nである。後続車両200のナビ機能部1は、車載地図データ6に含まれないために経路案内の対象とされていない細街路Pを通行することで到達可能な地点である目的地Dを目的地として設定する(S101)。後続車両200のナビ機能部1は、車載地図データ6を参照しつつ目的地Dまでのルート検索を行なう(S102)。この場合は、車載地図データ6には、目的地Dまでの経路情報は含まれていない。
【0032】
後続車両200のナビ機能部1は、細街路学習情報7を参照しつつ、後続車両200内に目的地Dに到達するための経路情報が存在するか否かを確認する(S103)。このときすでに、目的地Dに到達するための経路情報が後続車両200内の細街路学習情報7に含まれているときは(S103)、ナビ機能部1は、基幹道路ARまでのナビ案内経路nと当該経路とを連結した経路により経路案内をすることを設定する(S104)。ナビ機能部1は、経路案内を開始する(S105)。
【0033】
ナビ機能部1は、経路案内中に後続車両200が、車載地図データ6及び細街路学習情報7に基づく経路案内の終了地点の一定距離以内に到達したか、あるいは細街路侵入地点(細街路起点)X1の一定距離以内に到達したか否かを定期的に確認する(S106)。ナビ機能部1は、後続車両200が経路案内の終了地点又は細街路侵入地点X1の一定距離以内に入った場合(S106)、短距離無線通信部4は、周囲に細街路Pに関する細街路学習情報が配信されているか否かを確認する(S107)。この細街路学習情報が配信されているか否かの確認は、図4に示すような先行車両100から細街路学習情報を配信することが可能である旨の信号が送信されているか否かを確認することにより行なう。もし、周囲に細街路Pに関する細街路情報が配信されていないときは(S107)、図4中に示すような細街路Pを走行する先行車両100が存在しない場合であるので、インターネット通信部5は、インターネット経由で細街路情報配信センター500に接続し、目的地Dと細街路侵入地点X1とを結ぶ経路情報が保存されているか否か検索する(S108)。
【0034】
周囲に細街路Pに関する細街路情報が配信されておらず(S107)、細街路情報配信センター500にも経路情報が保存されていないときは(S108)、経路学習部2は目的地Dまでの細街路Pを学習する(S109)。細街路に関する細街路情報の学習については、以下の流れで実施するものとする。すなわち、経路学習部2は、現在、ナビ機能部1による案内経路が引かれている細街路侵入地点X1に到達したときに細街路情報の学習を開始する。経路学習部2は、学習開始地点から最終の目的地Dまで実際に走行した細街路の走行経路(リンク情報や緯度経度方向を利用した道路線形情報等)を細街路学習情報7に蓄積する。これにより、図4に示すように、細街路侵入地点X1、X2ごとに細街路Pについての学習経路p1、p2が蓄積される。
【0035】
ナビ機能部1は、目的地D付近の一定距離(例えば、数十m)で停車したか否かを定期的に確認する(S110)。後続車両200が目的地Dに到達したときは(S110)、短距離無線通信部4は、周辺に目的地への細街路学習情報を配信中の他車両を検索する。該当車両が存在しない場合や、該当車両が存在した場合であっても、当該車両の目的地、細街路侵入地点X1が後続車両200と一致せず、同一の細街路学習情報を配信していないときは、短距離無線通信部4及びインターネット通信部5は、配信用の細街路学習情報を作成する(S111)。
【0036】
後続車両200がインターネット通信部5を有し、インターネットとの接続が可能である場合は、後続車両が走行した学習経路p1についての細街路学習情報を細街路情報配信センター500にアップロードする(S112)。後に詳述するように、短距離無線通信部4は、その通信範囲rmaxが基幹道路AR(細街路侵入地点X1、X2)まで届くか否か確認し、通信範囲rmaxが基幹道路ARまで届かないときは、情報配信のための中継車である情報配信中継車を検索し、最適な中継車に対して情報配信を行なう(S113)。
【0037】
通信範囲rmaxが基幹道路ARまで届く場合や、中継車が確定した場合、後続車両200の短距離無線通信部4は、後続車両200自身が学習した細街路学習情報あるいは細街路情報配信センター500からダウンロードした細街路学習情報を配信することが可能である旨の信号を送信し、当該細街路学習情報を配信可能である旨の信号を受信して、細街路学習情報の配信を要求してきた他車両や最適な中継車を特定して配信する(S114)。
【0038】
ナビ機能部1は、後続車両200が目的地Dから離脱するか否かを、ドライバーの搭乗の有無や、エンジン始動の有無や、他地点への目的地設定から推定する(S115)。もし、後続車両200が短距離無線通信部4による通信範囲rmax外に離脱する可能性が高ければ、短距離無線通信部4は以下の処理を行い、離脱する可能性が低ければ、短距離無線通信部4は、細街路学習情報の配信を繰り返す(S114)。後続車両200が短距離無線通信部4による通信範囲rmax外に離脱する可能性が高ければ(S115)、後の詳述するように、後続車200が離脱後も経路情報配信用のアドホックネットワークを保持するために、周囲の他車両に細街路学習情報の配信の交代を依頼する(S116)。
【0039】
一方、周囲に細街路Pに関する細街路学習情報が配信されているときは(S107)、図4中に示すような細街路Pを走行する先行車両100が存在する場合であるので、短距離無線通信部4は先行車両100との車車間通信により、細街路学習情報の配信を依頼し、先行車両100に自車両である後続車両200を特定させつつ細街路学習情報を配信させ、当該送信されてきた細街路学習情報を受信する(S117)。また、周囲に細街路Pに関する細街路情報が配信されてはいないが(S107)、細街路情報配信センター500には経路情報が保存されているときは(S108)、インターネット通信部5は、インターネットを経由し、細街路情報配信センター500に自車両である後続車両200を認識させ、細街路情報配信センター500より自車両である後続車両200を特定させつつ細街路学習情報をダウンロードする(S118)。
【0040】
ナビ機能部1は、配信された細街路学習情報を後続車両200の経路案内のための情報に設定する(S119)。ナビ機能部1は、当該経路案内を中断すること無く実行する(S120)。
【0041】
以下、図5及び図6を参照して、上記後続車両200がS113に示した場合や(この場合は後続車両200が当該目的地Dに対しては先行車両となる)、先行車両100が細街路学習情報を配信する車両として目的地D付近に存在している状況で、中継車を検索する動作について説明する。
【0042】
先行車両100の短距離無線通信部4は、先行車両100から細街路P1と直接に接続する基幹道路ARが、短距離無線通信部4のrmax内に存在するか否か判定する(S201)。ここで、基幹道路ARへの配信情報の到達を目的とする理由は、基幹道路ARまでの経路案内は車載地図データ6により保証されているが、後続車両200が細街路P1に入ったときに中断無く経路案内を継続するためには、基幹道路ARに情報を到達させる必要があるからである。
【0043】
図7に示すような状況において、細街路起点A(x1,y1)と先行車両100の車両位置B(x2,y2)とには、下式(1)が成り立つ。
r={(x1−x2)2+(y1−y2)2}1/2 (1)
【0044】
ただし、r=rmaxであるときは、無線通信路上に存在する建造物等による電波減衰を考慮すると確実に電波が到達できるとは言えないため、一定の電波減衰係数k(≧1)を乗じたkrにて、下式(2)(3)により電波の到達判定を行うことで、短距離無線通信部4は、確実な判定を行うことができる。最終的には、短距離無線通信部4は、下式(3)が成り立つ場合において、電波が到達可能であると判定する。
rmax≧kr(≧1) (2)
rmax≧k・{(x1−x2)2+(y1−y2)2}1/2 (3)
【0045】
短距離無線通信部4は、電波出力が可変であり、通信到達距離を一定係数倍m(≧1)伸ばすことができる通信モジュールである場合は、電波出力を増幅した場合に基幹道路ARまで電波が到達するか否かを判定する(S202)。つまり、上式(2)(3)を下式(2)’(3)’に改変し、下式(2)’(3)’が成り立つ場合は、短距離無線通信部4は電波が到達可能であると判定する。
m・rmax≧kr(≧1) (2)’
rmax≧(k/m)・{(x1−x2)2+(y1−y2)2}1/2 (3)’
【0046】
短距離無線通信部4は、通信範囲rmax内にて停車している他車両に細街路学習情報を中継することができる機能を備えているか確認を行なう(S203)。当該他車両が中継の機能を備えている場合は、短距離無線通信部4は、中継への参加可否の確認も行い、参加不可と設定されている他車両は中継車に利用しない。
【0047】
短距離無線通信部4は、中継車検索時に参加可能車両が複数台存在する場合は、中継車候補リストを作成し、細街路P1の起点である細街路侵入地点X1に最も近く、自車両である先行車両100の通信範囲rmax内に停車している他車両を中継車として選択していく(S204)。中継車リストは、全ての他車両からの応答があった後に、当該他車両を細街路侵入地点X1から近い順にソートしておく。全ての他車両を中継車としない理由は、周辺の電波利用を効率化し、冗長な情報配信車両を排除したいためである。
【0048】
例えば、図6の例では、細街路P2に停車中の他車両300aが中継車となる。また、図8の例では、先行車両100の通信範囲rmax内には他車両300aと他車両300bとが存在するが、中継車の候補が複数存在した場合は、短距離無線通信部4は、細街路の起点である細街路侵入地点X1からの距離をそれぞれの中継車候補の車両に対して計算し、細街路侵入地点X1から最短距離に位置する他車両300aを中継車に選択する(中継車選択条件)。つまり、学習経路p1の細街路学習情報の配信経路は、先行車両100、他車両300a、他車両300c及び他車両300dとなり、他車両300dが基幹道路ARまで細街路学習情報を配信することができる。また、学習経路p2の細街路学習情報の配信経路は、先行車両100及び他車両300bとなり、他車両300bが基幹道路ARまで細街路学習情報を配信することができる。これにより、中間位置に停車している中継車が細街路学習情報を中継して基幹道路ARまで到達させ、後続車両200は遠くの細街路についての細街路学習情報でも受信することが可能となる。
【0049】
図5に戻り、短距離無線通信部4は、中継車リストから細街路学習情報を配信する車両の候補を、細街路の起点である細街路侵入地点X1に近い順に選択する(S205)。短距離無線通信部4は、実際に細街路学習情報を配信可能か否かを、中継車依頼を送信することによって、可否の問合せを行なう。短距離無線通信部4は、中継車候補からの中継車依頼に対する可否応答を判断する(S206)。短距離無線通信部4は、応答が一定時間無かった場合も、中継車となることは不可能であると判断する。
【0050】
中継車が確定した場合、短距離無線通信部4は、細街路学習情報の配信を行なう(S207)。細街路学習情報を配信された後続車両200の側では、図3に示したS113〜S116の処理が基幹道路ARに到達するまで繰り返される。先行車両100の短距離無線通信部4は、自車両が保有している細街路学習情報の全てについて細街路侵入地点ごとに中継車を設定することができたか否かを確認する(S208)。全ての細街路侵入地点の細街路学習情報について中継車を設定した場合は、短距離無線通信部4は処理を終了し、細街路侵入地点の細街路学習情報が残っている場合は、短距離無線通信部4は当該細街路学習情報の中継車を検索する。例えば、図8の例のように、2つの学習経路p1、p2について細街路学習情報を保有している場合は、短距離無線通信部4は、学習経路p1、p2の両方について、細街路侵入地点X1、X2方向に向けて中継車を探していく。
【0051】
以下、図9及び図10を参照しつつ、細街路学習情報を配信した車両あるいは中継車が、目的地Dから離脱する等の場合において、アドホックネットワークを維持しつつ情報を配信又は中継する車両の役割を効率良く交代する処理について説明する。
【0052】
図9及び図10に示すように、先行車両100又は中継車である他車両300a,300bの短距離無線通信部4は自車両周辺に細街路学習情報の配信を交代可能な停止車両が存在するかを、周辺の他車両に対してブロードキャスト通信で問い合わせる(S301)。短距離無線通信部4は、各他車両から応答される交代の可否に関する情報を参照し、交代車両候補リストを作成する(S302)。図10の例では、先行車両100’、他車両300a’,300b’が交代車両の候補となる。
【0053】
例えば、図11に示す例では、自車両である他車両300aに対し中継依頼をした車両である先行車両100を「親車両」、自車両である他車両300aが中継依頼をした車両を「子車両」と定義した場合、交代候補車両は、親車両と子車両との両方に通信が可能であり、なおかつ各車両と近すぎると効果的な配置とならないため、
(A)親車両へ通信可能で且つ親車両との直線距離が一定以上
(B)子車両へ通信可能で且つ子車両への直線距離が一定以上
の上記(A)(B)両方の条件を満たし、且つ細街路侵入地点に近いものの順に短距離無線通信部4はリストをソートする。例えば、図11の例では、他車両300cが上記(A)(B)を満たすか否か判定する。上記(A)(B)を満たさない場合でも、交代可能であれば、短距離無線通信部4はリストには登録する。また、上記(A)(B)の通信可能であるか否かの判定は、上式(3)又は(3)’により行うことができる。
【0054】
短距離無線通信部4は、交代車両リストから交代車両候補を選択する(S303)。短距離無線通信部4は、実際に細街路学習情報を配信可能か否かを、交代車両候補に送信し、可否の問合せを行なう。短距離無線通信部4は、交代車両候補からの交代車両依頼に対する可否応答を判断する(S304)。短距離無線通信部4は、応答が一定時間無かった場合も、交代車両となることは不可能であると判断する。
【0055】
交代車両が確定した場合、短距離無線通信部4は自車両からの細街路学習情報の配信を停止し、当該交代車両に細街路学習情報の配信を継続させる交代処理を行う(S305)。短距離無線通信部4は、細街路学習情報を配信及び中継する車両同士の距離が通信範囲rmax内の一定範囲内か否かについて以下のような判定を行う。
(A)親車両へ通信可能で且つ親車両との直線距離が一定以上
(B)子車両へ通信可能で且つ子車両への直線距離が一定以上
【0056】
上述したように上記S301においても、短距離無線通信部4は上記判定を行うが、「直線距離が一定距離以上」ではないにも関わらず交代車両に設定されている場合、交代車両と親車両又は子車両があまりに近い可能性がある。そこで、このように交代車両と親車両又は子車両があまりに近い場合に、2つの車両が同時に同じ情報を配信することは効率的ではないため、短距離無線通信部4は処理を統合させ(S306)、交代車両は細街路学習情報の配信を停止し、親車両や子車両が従来通り配信を行なう。
【0057】
短距離無線通信部4は、上記S302において、候補車両が存在しない場合は、自車両が目的地Dや細街路侵入地点X1、X2から一定距離をおいて離脱するまで、走行中も細街路学習情報を配信し続ける(S307)。
【0058】
本実施形態では、経路案内の対象とされていない細街路P1を通行する先行車両100の通行軌跡に基づいて、経路案内の対象とされていない細街路P1に関する細街路学習情報を生成する経路学習部2と、経路学習部2が生成した細街路学習情報を後続車両200に配信する短距離無線通信部4とを備えた先行車両100において、短距離無線通信部4は、経路案内の対象とされていない細街路P1を通行することで到達可能な地点を目的地Dとしている後続車両200を特定して細街路学習情報を配信するため、経路案内の対象とされていない細街路P1の情報が必要な後続車両200だけが細街路学習情報を受信することになり、不要な通信が生じない。そのため、より効率が高い通信により、経路案内の対象とされていない細街路P1に関する細街路学習情報を提供することが可能となる。
【0059】
また、本実施形態では、経路案内の対象とされていない細街路P1を通行する先行車両100の通行軌跡に基づいて、経路案内の対象とされていない細街路P1に関する細街路学習情報を生成する経路学習部2と、経路学習部2が生成した細街路学習情報を後続車両200に配信する短距離無線通信部4とを備えた先行車両100において、短距離無線通信部4は、経路案内の対象とされていない細街路P1を通行することで到達可能な地点を目的地Dとしている後続車両200を特定して細街路学習情報を配信する細街路情報配信センター500介して細街路学習情報を配信するため、経路案内の対象とされていない細街路P1の情報が必要な後続車両200だけが細街路学習情報を受信することになり、不要な通信が生じない。また、後続車両200は細街路情報配信センター500を介して細街路学習情報を受信するため、例えば後続車両200が細街路P1を通行する先行車両100から直接に細が織学習情報を受信することができない場合でも、後続車両200は細街路情報配信センター500から細街路学習情報を受信することができる。
【0060】
また、本実施形態では、短距離無線通信部4は、後続車両200との通信を他車両300a等に中継させる場合において、後続車両200と通信可能な他車両が複数存在する場合は、経路案内の対象とされていない細街路P1の起点である細街路侵入地点X1に最も近い位置に存在する他車両に自車両との通信を中継させるため、後続車両200と通信可能な他車両が複数存在する場合であっても、中継する車両が比較的に少ない通信経路が形成されるため、冗長な通信が発生しにくくなる。
【0061】
さらに、本実施形態では、短距離無線通信部4は、後続車両200への細街路学習情報の配信を終了する場合は、後続車両200へ細街路学習情報を配信することが可能であって、後続車両200と所定距離以上離れた位置に存在する他車両300a等に細街路学習情報を配信させるため、通信相手である後続車両200と極めて近い位置に存在する他車両に交代して、極めて近距離を中継するといった非効率的な状態の発生を防止することができる。
【0062】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態においては、本実施形態の経路案内装置が車両にナビゲーション装置として搭載されている例を用いているが、例えば、携帯電話機など歩行者等が所持する移動体に本実施形態の経路案内装置が設けられている態様とすることができる。また、上記実施形態では取得した細街路情報を経路案内装置に提供するようにしているが、本発明の経路案内装置は、他の装置、例えば、固定パーソナルコンピュータやナビゲーション機能を備えていない携帯電話機等に細街路学習情報を提供する態様とすることも可能である。
【0063】
さらに、本実施形態では、目的地に到達するために本当に細街路学習情報を必要とする受信者を特定して細街路学習情報を配信するため、プライバシー及びセキュリティーの関係から、当該細街路学習情報ごとに当該情報にアクセス可能なアクセス権限を特定しておき、当該アクセス権限を有する受信者のみに、細街路学習情報を配信するといった態様も可能である。あるいは、逆に、細街路を通行することで到達可能な店舗に関する情報については、アクセス権限を緩和して、多くのユーザに当該細街路学習情報へのアクセス権限を広く認めることも可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…ナビ機能部、2…経路学習部、3…画面表示部、4…短距離無線通信部、5…インターネット通信部、6…車載地図データ、7…細街路学習情報、8…細街路経路DB、9…細街路経路情報管理部、10…インターネット通信機能部、100,100a,100a’…先行車両、200…後続車両、300a〜300c,300a’〜300c’…中継車両、500…細街路情報配信センター。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経路案内の対象とされていない道路を通行する第1の移動体の通行軌跡に基づいて、前記経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を生成する経路情報生成手段と、
前記経路情報生成手段が生成した前記経路情報を通信装置に配信する配信手段と、
を備え、
前記配信手段は、前記経路案内の対象とされていない道路を通行することで到達可能な地点を目的地としている第2の移動体に搭載された前記通信装置を特定して前記経路情報を配信する、経路案内装置。
【請求項2】
経路案内の対象とされていない道路を通行する第1の移動体の通行軌跡に基づいて、前記経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を生成する経路情報生成手段と、
前記経路情報生成手段が生成した前記経路情報を通信装置に配信する配信手段と、
を備え、
前記配信手段は、前記経路案内の対象とされていない道路を通行することで到達可能な地点を目的地としている第2の移動体に搭載された前記通信装置を特定して前記経路情報を配信する情報配信施設を介して前記経路情報を配信する、経路案内装置。
【請求項3】
前記配信手段は、前記第2の移動体に搭載された前記通信装置との通信を他の通信装置に中継させる場合において、前記第2の移動体に搭載された前記通信装置と通信可能な前記他の通信装置が複数存在する場合は、前記経路案内の対象とされていない道路の起点に最も近い位置に存在する前記他の通信装置に前記通信装置との通信を中継させる、請求項1又は2に記載の経路案内装置。
【請求項4】
前記配信手段は、前記第2の移動体に搭載された前記通信装置への前記経路情報の配信を終了する場合は、前記第2の移動体に搭載された前記通信装置へ前記経路情報を配信することが可能であって、前記第2の移動体に搭載された前記通信装置と所定距離以上離れた位置に存在する他の通信装置に前記経路情報を配信させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の経路案内装置。
【請求項5】
経路案内の対象とされていない道路を通行する第1の移動体の通行軌跡に基づいて、前記経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を生成する経路情報生成工程と、
前記経路情報生成工程で生成した前記経路情報を通信装置に配信する配信工程と、
を含み、
前記配信工程では、前記経路案内の対象とされていない道路を通行することで到達可能な地点を目的地としている第2の移動体に搭載された前記通信装置を特定して前記経路情報を配信する、経路案内方法。
【請求項6】
経路案内の対象とされていない道路を通行する第1の移動体の通行軌跡に基づいて、前記経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を生成する経路情報生成工程と、
前記経路情報生成工程で生成した前記経路情報を通信装置に配信する配信工程と、
を含み、
前記配信工程では、前記経路案内の対象とされていない道路を通行することで到達可能な地点を目的地としている第2の移動体に搭載された前記通信装置を特定して前記経路情報を配信する情報配信施設を介して前記経路情報を配信する、経路案内方法。
【請求項7】
前記配信工程では、前記第2の移動体に搭載された前記通信装置との通信を他の通信装置に中継させる場合において、前記第2の移動体に搭載された前記通信装置と通信可能な前記他の通信装置が複数存在する場合は、前記経路案内の対象とされていない道路の起点に最も近い位置に存在する前記他の通信装置に前記通信装置との通信を中継させる、請求項1又は2に記載の経路案内方法。
【請求項8】
前記配信工程では、前記第2の移動体に搭載された前記通信装置への前記経路情報の配信を終了する場合は、前記第2の移動体に搭載された前記通信装置へ前記経路情報を配信することが可能であって、前記第2の移動体に搭載された前記通信装置と所定距離以上離れた位置に存在する他の通信装置に前記経路情報を配信させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の経路案内方法。
【請求項1】
経路案内の対象とされていない道路を通行する第1の移動体の通行軌跡に基づいて、前記経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を生成する経路情報生成手段と、
前記経路情報生成手段が生成した前記経路情報を通信装置に配信する配信手段と、
を備え、
前記配信手段は、前記経路案内の対象とされていない道路を通行することで到達可能な地点を目的地としている第2の移動体に搭載された前記通信装置を特定して前記経路情報を配信する、経路案内装置。
【請求項2】
経路案内の対象とされていない道路を通行する第1の移動体の通行軌跡に基づいて、前記経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を生成する経路情報生成手段と、
前記経路情報生成手段が生成した前記経路情報を通信装置に配信する配信手段と、
を備え、
前記配信手段は、前記経路案内の対象とされていない道路を通行することで到達可能な地点を目的地としている第2の移動体に搭載された前記通信装置を特定して前記経路情報を配信する情報配信施設を介して前記経路情報を配信する、経路案内装置。
【請求項3】
前記配信手段は、前記第2の移動体に搭載された前記通信装置との通信を他の通信装置に中継させる場合において、前記第2の移動体に搭載された前記通信装置と通信可能な前記他の通信装置が複数存在する場合は、前記経路案内の対象とされていない道路の起点に最も近い位置に存在する前記他の通信装置に前記通信装置との通信を中継させる、請求項1又は2に記載の経路案内装置。
【請求項4】
前記配信手段は、前記第2の移動体に搭載された前記通信装置への前記経路情報の配信を終了する場合は、前記第2の移動体に搭載された前記通信装置へ前記経路情報を配信することが可能であって、前記第2の移動体に搭載された前記通信装置と所定距離以上離れた位置に存在する他の通信装置に前記経路情報を配信させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の経路案内装置。
【請求項5】
経路案内の対象とされていない道路を通行する第1の移動体の通行軌跡に基づいて、前記経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を生成する経路情報生成工程と、
前記経路情報生成工程で生成した前記経路情報を通信装置に配信する配信工程と、
を含み、
前記配信工程では、前記経路案内の対象とされていない道路を通行することで到達可能な地点を目的地としている第2の移動体に搭載された前記通信装置を特定して前記経路情報を配信する、経路案内方法。
【請求項6】
経路案内の対象とされていない道路を通行する第1の移動体の通行軌跡に基づいて、前記経路案内の対象とされていない道路に関する経路情報を生成する経路情報生成工程と、
前記経路情報生成工程で生成した前記経路情報を通信装置に配信する配信工程と、
を含み、
前記配信工程では、前記経路案内の対象とされていない道路を通行することで到達可能な地点を目的地としている第2の移動体に搭載された前記通信装置を特定して前記経路情報を配信する情報配信施設を介して前記経路情報を配信する、経路案内方法。
【請求項7】
前記配信工程では、前記第2の移動体に搭載された前記通信装置との通信を他の通信装置に中継させる場合において、前記第2の移動体に搭載された前記通信装置と通信可能な前記他の通信装置が複数存在する場合は、前記経路案内の対象とされていない道路の起点に最も近い位置に存在する前記他の通信装置に前記通信装置との通信を中継させる、請求項1又は2に記載の経路案内方法。
【請求項8】
前記配信工程では、前記第2の移動体に搭載された前記通信装置への前記経路情報の配信を終了する場合は、前記第2の移動体に搭載された前記通信装置へ前記経路情報を配信することが可能であって、前記第2の移動体に搭載された前記通信装置と所定距離以上離れた位置に存在する他の通信装置に前記経路情報を配信させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の経路案内方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−243445(P2010−243445A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95107(P2009−95107)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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