説明

経路維持ワイヤーハーネス、経路維持部材及び経路維持ワイヤーハーネスの製造方法

【課題】より容易にワイヤーハーネスを配索経路に沿った形態に維持すること。
【解決手段】経路維持ワイヤーハーネス10は、ワイヤーハーネス1を配索経路に沿った形態に維持した構成である。この経路維持ワイヤーハーネス10は、ワイヤーハーネス1と、ワイヤーハーネス1の配索経路に沿った長尺形状に形成された本体部32と、ワイヤーハーネス1を本体部32に沿わせて固定する複数の固定部42とを有する経路維持部材30と、周方向一部に軸方向に沿って形成されたスリットを有し、ワイヤーハーネス1及び複数の固定部42を覆う筒状に形成されたコルゲートチューブ20とを備え、本体部32は、コルゲートチューブ20のスリットを挟んだ両端縁部28間に配設される介在部34を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスを配索経路に維持する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1〜4に開示のように、車両等に搭載されるワイヤーハーネスを、コルゲートチューブ等の可撓性を有する筒状の外装部材により覆って保護する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−86022号公報
【特許文献2】特開2000−184551号公報
【特許文献3】特開2002−64917号公報
【特許文献4】特開2006−296166号公報
【特許文献5】特開2003−336789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コルゲートチューブ自身は、曲げ性が良好でワイヤーハーネスの曲げ形態に応じて曲げ可能であるものの、その形態を一定に維持することは困難である。
【0005】
そこで、本願出願人は、ワイヤーハーネスを配索経路に維持する技術として、スリットが形成されたコルゲートチューブをワイヤーハーネスに被せると共に該コルゲートチューブに経路維持部材を取り付けることにより、ワイヤーハーネスの形態を維持する技術を提案している。この経路維持部材としては、例えば、ワイヤーハーネスの配索経路に沿った長尺形状に形成され、延在方向に直交する断面視においてH字形状を成す構成を採用することができる。そして、経路維持部材は、両側の凹部にコルゲートチューブのスリットを挟んだ両端縁部を配設する形態で、延在方向一方からスライドする等してコルゲートチューブに取り付けられる。
【0006】
なお、特許文献5には、スリットの開きを抑制する技術として、割り開き部が形成された割入波付け管本体に、可撓性を有する割り開き部塞ぎ部材が取り付けられた割入り波付け管が開示されている。
【0007】
しかしながら、ワイヤーハーネスが内部に配設されたコルゲートチューブの形状を配索形態に変形させつつ、該コルゲートチューブに対して経路維持部材を取り付けることは困難である。特に、テープ巻きされたワイヤーハーネス及び大径のワイヤーハーネス等は比較的剛性が高いため曲げ難く、このようなワイヤーハーネスが内部に配設されたコルゲートチューブに経路維持部材を取り付けるのはさらに困難である。
【0008】
そこで、本発明は、より容易にワイヤーハーネスを配索経路に沿った形態に維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様は、ワイヤーハーネスを配索経路に沿った形態に維持した経路維持ワイヤーハーネスであって、ワイヤーハーネスと、前記ワイヤーハーネスの配索経路に沿った長尺形状に形成された本体部と、前記ワイヤーハーネスを前記本体部に沿わせて固定する複数の固定部とを有する経路維持部材と、周方向一部に軸方向に沿って形成されたスリットを有し、前記ワイヤーハーネス及び前記複数の固定部を覆う筒状に形成された外装部材と、を備え前記本体部は、前記外装部材の前記スリットを挟んだ両端縁部間に配設される介在部を有している。
【0010】
第2の態様は、第1の態様に係る経路維持ワイヤーハーネスであって、前記複数の固定部は、それぞれ、前記ワイヤーハーネスを巻いて締め付ける線状の締付部を有している。
【0011】
第3の態様は、第2の態様に係る経路維持ワイヤーハーネスであって、前記複数の固定部は、前記介在部に形成された固定用孔部と、前記固定用孔部に挿通される前記締付部とを有している。
【0012】
第4の態様は、第3の態様に係る経路維持ワイヤーハーネスであって、前記介在部は、一端側部分が前記外装部材の内部に配設され、前記固定用孔部は、前記介在部の一端側部分に設けられている。
【0013】
第5の態様は、第1〜第4のいずれか一態様に係る経路維持ワイヤーハーネスであって、前記本体部は、延在方向において少なくとも一箇所に曲線部分を有し、前記複数の固定部は、前記本体部の延在方向において、少なくとも前記曲線部分を挟む位置に設けられている。
【0014】
第6の態様は、第1〜第5のいずれか一態様に係る経路維持ワイヤーハーネスであって、前記本体部は、前記介在部の両側方に張り出して前記外装部材の前記スリットを挟んだ両端縁部に対して外周側から係止可能な押え部をさらに有し、延在方向に直交する断面視においてT字形状に形成されている。
【0015】
第7の態様は、周方向一部に軸方向に沿って形成されたスリットを有する筒状の外装部材に覆われるワイヤーハーネスを、配索経路に沿った形態に維持する経路維持部材であって、前記ワイヤーハーネスを覆う前記外装部材の前記スリットを挟んだ両端縁部間に配設可能な介在部を有し、前記ワイヤーハーネスの配索経路に沿った長尺形状に形成された本体部と、前記ワイヤーハーネスを前記本体部に沿わせて固定可能な複数の固定部とを備える。
【0016】
第8の態様は、周方向一部に軸方向に沿って形成されたスリットを有する筒状の外装部材に覆われるワイヤーハーネスを、配索経路に沿った形態に維持する経路維持ワイヤーハーネスの製造方法であって、(a)前記ワイヤーハーネスを、請求項7に記載の経路維持部材の前記本体部に沿わせる工程と、(b)前記ワイヤーハーネスを、前記複数の固定部により前記本体部に固定する工程と、(c)前記スリットを挟んだ両端縁部が前記介在部を挟む形態で、前記外装部材を前記ワイヤーハーネスの外周部に被せる工程とを備える。
【発明の効果】
【0017】
第1の態様に係る経路維持ワイヤーハーネスによると、複数の固定部により、ワイヤーハーネスを配索経路に沿った長尺形状に形成された本体部に沿わせて固定し、周方向一部に軸方向に沿って形成されたスリットを有する筒状の外装部材により、ワイヤーハーネス及び複数の固定部を覆っている。このため、従来のように外装部材で覆ったワイヤーハーネスを配索経路に沿った形態に変形させつつ外装部材に対して経路維持用の部材を取り付ける作業を回避し、経路維持部材により配索経路に沿った形態に維持した状態で、ワイヤーハーネスに対して外装部材を装着することができ、より容易にワイヤーハーネスを配索経路に沿った形態に維持することができる。
【0018】
第2の態様に係る経路維持ワイヤーハーネスによると、複数の固定部が、それぞれワイヤーハーネスを巻いて締め付ける線状の締付部を有しているため、ワイヤーハーネスを、テープ巻きを省略して結束できると共により確実に本体部に対して固定することができる。
【0019】
第3の態様に係る経路維持ワイヤーハーネスによると、複数の固定部が、介在部に形成された固定用孔部と、固定用孔部に挿通される締付部とを有する構成であるため、簡易な構成により、より容易にワイヤーハーネス1を配索経路に沿った形態に維持することができる。
【0020】
第4の態様に係る経路維持ワイヤーハーネスによると、複数の固定部が、介在部のうち外装部材の内部に配設される一端側部分に設けられているため、容易に締付部を外装部材の内部に配設される位置に取り付けることができる。
【0021】
第5の態様に係る経路維持ワイヤーハーネスによると、複数の固定部が、本体部の延在方向において少なくとも曲線部分を挟む位置に設けられているため、ワイヤーハーネスのうち曲線状の配索経路に配索される部分も、より正確に配索形態に沿った形態に維持できる。
【0022】
第6の態様に係る経路維持ワイヤーハーネスによると、本体部が、介在部と、介在部の両側方に張り出して外装部材のスリットを挟んだ両端縁部に対して外周側から係止可能な押え部を有し、延在方向に直交する断面視においてT字形状に形成されているため、本体部の外装部材内における占有面積を小さくし、ワイヤーハーネスの占有面積を大きくすることができる。
【0023】
第7の態様に係る経路維持部材によると、複数の固定部により、ワイヤーハーネスを、配索経路に沿った長尺形状に形成された本体部に沿わせて固定可能であるため、ワイヤーハーネスに外装部材を装着する前の段階において、ワイヤーハーネスを配索経路に沿った形態に維持することができる。
【0024】
第8の態様に係る経路維持ワイヤーハーネスの製造方法によると、ワイヤーハーネスを経路維持部材の本体部に沿わせ、複数の固定部により本体部に固定した状態で、外装部材をワイヤーハーネスの外周部に被せるため、より容易にワイヤーハーネスを配索経路に沿った形態に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】経路維持ワイヤーハーネスの全体図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】経路維持部材の全体図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】ワイヤーハーネスを経路維持部材の本体部に沿わせる工程を示す図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図である。
【図7】ワイヤーハーネスを固定部により本体部に固定する工程を示す図である。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】ワイヤーハーネスにコルゲートチューブを被せる工程を示す図である。
【図10】図9のX−X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施形態に係る経路維持ワイヤーハーネス10、経路維持部材30及び経路維持ワイヤーハーネスの製造方法について説明する。この経路維持ワイヤーハーネス10は、経路維持部材30を用いてワイヤーハーネス1を配索経路に沿った形態に維持した部材である(図1参照)。
【0027】
経路維持ワイヤーハーネス10は、ワイヤーハーネス1と、外装部材と、経路維持部材30とを備えている(図2参照)。
【0028】
経路維持の対象となるワイヤーハーネス1は、自動車等に配索されるワイヤーハーネスであり、少なくとも1本(ここでは複数)の電線を有している。そして、ワイヤーハーネス1は、配索経路に沿って配索される。
【0029】
ワイヤーハーネス1のうち経路維持の対象となるのは、曲線経路を含む配索経路に配索される部分、他部材が近接して配設されている配索経路に配索される部分等である。この配索経路には、直線経路、曲線経路又は両者を組み合わせた経路等がある。以下、ワイヤーハーネス1のうちの経路維持の対象となる部分を、単にワイヤーハーネス1と言うことがある。
【0030】
外装部材は、ワイヤーハーネス1を内部に挿通配設可能な筒状に形成された部材である。この外装部材は、内部に配設されたワイヤーハーネス1を外部から保護する機能も有する。ここでは、外装部材として、コルゲートチューブ20を採用している(図1参照)。コルゲートチューブ20は、周方向に沿った環状凸部と環状凹部とが軸方向に交互に設けられた形状に形成された部材である。また、コルゲートチューブ20は、周方向一部に軸方向に沿って形成されたスリットを有している。そして、このスリットを通じて、コルゲートチューブ20内にワイヤーハーネス1を配設可能である。
【0031】
もっとも、外装部材は、コルゲートチューブ20に限られるものではなく、他にも、エラストマー等の材料で形成された可撓性を有するチューブで、周方向一部に軸方向に沿って形成されたスリットを有するものを採用してもよい。
【0032】
経路維持部材30は、コルゲートチューブ20に外周部を覆われるワイヤーハーネス1を、配索経路に沿った形態に維持する部分である(図3、図4参照)。経路維持部材30は、本体部32と固定部42とを有している。
【0033】
本体部32は、ワイヤーハーネス1の配索経路に沿った長尺形状に形成された部分である。本体部32は、長尺方向に沿って延在する介在部34と、押え部36とを有している。
【0034】
介在部34は、ワイヤーハーネス1を覆うコルゲートチューブ20のスリットを挟んだ両端縁部28間に配設される部分であり、該両端縁部28間に配設可能な形状に形成されている(図2参照)。より具体的には、介在部34は、延在方向に沿って扁平な板状に形成されている。そして、コルゲートチューブ20は、スリットを挟んだ両端縁部28の間に介在部34が挟まれた状態で、周方向に位置決めされる。
【0035】
また、介在部34には、後述する複数の固定部42の固定用孔部46が形成されている。この固定用孔部46については、固定部42の説明と併せて後述する。
【0036】
押え部36は、コルゲートチューブ20のスリットを挟んだ両端縁部28に対して外周側から係止可能に設けられた部分である。この押え部36は、介在部34から両側方に張り出す形状に形成されている。ここでは、押え部36は、介在部34の一端部から両側方に張り出している。そして、押え部36は、介在部34がスリットを挟んだ両端縁部28間に配設された状態で、該両端縁部28の外周側に重なる位置に配設される。
【0037】
ここでは、本体部32は、延在方向に直交する断面視においてT字形状に形成されている。換言すると、本体部32は、断面視において、押え部36の中間部から介在部34が突出する形状を成している。すなわち、介在部34がコルゲートチューブ20のスリットを挟んだ両端縁部28間に配設され、押え部36が両端縁部28の外周側に配設された状態で、コルゲートチューブ20内に配設される部分は、介在部34のうち押え部36とは反対側の端部だけである。
【0038】
また、本体部32は、延在方向において少なくとも一箇所に曲線部分321を有する形状に形成されている。図3には、延在方向において、二箇所に曲線部分321を有すると共に、その各両側に直線部分322を有する形状の本体部32を示している。
【0039】
固定部42は、ワイヤーハーネス1を本体部32に沿わせて固定するための部分である(図3、図4参照)。すなわち、経路維持部材30は、ワイヤーハーネス1を、固定部42によって配索形態に沿った形状の本体部32に沿わせて固定することにより、配索形態に沿った形状に維持するように構成されている。
【0040】
ここでは、固定部42は、ワイヤーハーネス1を巻いて締め付け可能な線状の締付部44を有している。より具体的には、固定部42は、本体部32とは別体の締付部44と、本体部32に形成された締付部44を挿通可能な固定用孔部46とにより構成されている。
【0041】
締付部44は、ワイヤーハーネス1の外周部に巻き付け可能な長さ寸法に設定されると共に、環状部分の周長を調節してワイヤーハーネス1を締め付け可能に構成された部材である。ここでは、締付部44として、結束バンドを採用している。結束バンドとは、係止部と、複数の被係止部が長手方向に並んで設けられたバンド部とを有する部材であり、バンド部を環状に変形させた状態で、係止部を複数の被係止部に対して選択的に係止させることにより、環状部分の周長を調節、維持可能な部材である。他にも、締付部44としては、ワイヤー等の種々の部材を採用することもできる。
【0042】
固定用孔部46は、本体部32の介在部34に形成されている。この固定用孔部46は、介在部34の厚さ方向(押え部36の張り出し方向)に貫通する孔部である。そして、固定用孔部46は、締付部44を挿通可能な大きさに形成されている。
【0043】
この固定用孔部46は、介在部34のうち、コルゲートチューブ20の内部に配設される一端側部分(押え部36とは反対側の端部寄りの部位)に形成されている。ここで、介在部34のうちの押え部36側部分は、コルゲートチューブ20のスリットを挟んだ両端縁部28間に挟まれる部分である。より具体的には、固定用孔部46は、介在部34のうち、少なくとも押え部36に対してコルゲートチューブ20(環状凸部又は環状凹部)の内外方向の寸法分離間した位置に設けられている。換言すると、介在部34の押え部36側部分には、固定用孔部46に挿通された締付部44と押え部36との間にコルゲートチューブ20のスリットを挟んだ両端縁部28を配設可能なスペースが確保される(図2参照)。
【0044】
また、固定用孔部46(固定部42)は、経路維持部材30の延在方向において間隔をあけて複数設けられている。より具体的には、複数の固定用孔部46(固定部42)は、本体部32の延在方向において、少なくとも曲線部分321を挟む位置に設けられている(図3参照)。経路維持部材30の延在方向全体においてワイヤーハーネス1を経路維持する観点から言うと、好ましくは、固定用孔部46(固定部42)は、経路維持部材30の延在方向における両端部寄りの各部位にも設けられているとよい。
【0045】
もっとも、複数の固定部42が曲線部分321を挟む位置に設けられる構成に限られず、複数の固定部は曲線部分321の中間部に設けられていてもよい。また、経路維持部材30が曲線部分321を有する形状である場合に限られず、経路維持部材は全体として直線状に形成されていてもよい。
【0046】
そして、経路維持ワイヤーハーネス10は、ワイヤーハーネス1に対して直接経路維持部材30が取り付けられ、経路維持部材30により配索経路に沿った形態に維持されたワイヤーハーネス1がコルゲートチューブ20により覆われて構成されている。上記経路維持ワイヤーハーネス10は、以下のようにして製造される。
【0047】
まず、ワイヤーハーネス1を、経路維持部材30の本体部32に沿わせる(工程(a)、図5及び図6参照)。より具体的には、介在部34がワイヤーハーネス1の外周部に突き立てられる形態(すなわち、ワイヤーハーネス1の周方向に沿って固定用孔部46が貫通する形態)で、ワイヤーハーネス1を変形させる。
【0048】
次に、本体部32に沿わせたワイヤーハーネス1を、複数の固定部42により本体部32に固定する(工程(b)、図7及び図8参照)。より具体的には、締付部44を、介在部34の固定用孔部46に挿通させた状態で、ワイヤーハーネス1に巻き付ける。そして、この状態で、締付部44を締め付ける。好ましくは、複数の固定部42のうち、本体部32の延在方向において曲線部分321に近い位置に設けられている固定部42から、ワイヤーハーネス1の固定作業を行っていくとよい。これにより、ワイヤーハーネス1は、本体部32に沿わせて固定される。
【0049】
ここで、ワイヤーハーネス1は、複数の構成電線がテープ巻き等により結束されているか否かは問わない。すなわち、ワイヤーハーネス1は、締付部44により締め付けられることにより、本体部32に対して固定されると共に結束状態に維持される。ワイヤーハーネス1の構成電線が結束されていない場合は、介在部34の一部(押え部36とは反対側の端部)が電線間に入ることもある。
【0050】
次に、スリットを挟んだ両端縁部28が介在部34を挟む形態で、コルゲートチューブ20をワイヤーハーネス1の外周部に被せる(工程(c)、図9及び図10参照)。より具体的には、コルゲートチューブ20は、ワイヤーハーネス1及びこれに巻き付けられた締付部44を覆う形態で、経路維持部材30に固定されたワイヤーハーネス1に取り付けられる。ここで、コルゲートチューブ20のスリットを挟んだ両端縁部28は、それぞれ、押え部36と、固定用孔部46に挿通された締付部44との間に配設される。すなわち、前記両端縁部28は、外周側において押え部36により移動規制されると共に、内周側において締付部44又はワイヤーハーネス1により移動規制される。これにより、コルゲートチューブ20も、ワイヤーハーネス1の配索経路に沿った形態に維持される。
【0051】
図9では、コルゲートチューブ20の軸方向一方からワイヤーハーネス1を通して該コルゲートチューブ20内に配設していく例を示している。すなわち、コルゲートチューブ20のスリットに経路維持部材30の介在部34を挿入しつつ、ワイヤーハーネス1及び締付部44をコルゲートチューブ20内に挿入していく。もっとも、図10に示すように、ワイヤーハーネス1を、スリットを通じて側方からコルゲートチューブ20内に配設してもよい。
【0052】
以上の工程により、経路維持ワイヤーハーネス10が製造される(図1、図2参照)。経路維持ワイヤーハーネス10のワイヤーハーネス1は、経路維持部材30により配索経路に沿った形態に維持されると共に、コルゲートチューブ20により外部から保護される。また、ワイヤーハーネス1のうち、固定部42により固定されていない部分は、経路維持部材30により配索経路に沿った形態に維持されたコルゲートチューブ20により補助的に経路維持され得る。
【0053】
上記実施形態に係る経路維持ワイヤーハーネス10、経路維持部材30及び経路維持ワイヤーハーネスの製造方法によると、複数の固定部42により、ワイヤーハーネス1を配索経路に沿った長尺形状に形成された本体部32に沿わせて固定し、スリットを有するコルゲートチューブ20により、ワイヤーハーネス1及び複数の固定部42を覆っている。このため、ワイヤーハーネスを配索経路に沿った形態に維持した状態で、ワイヤーハーネス1に対してコルゲートチューブ20を装着することができる。つまり、従来のようにコルゲートチューブ20で覆ったワイヤーハーネス1を配索経路に沿った形態に変形させつつコルゲートチューブ20に対して経路維持用の部材を取り付ける作業を回避することができる。これにより、より容易にワイヤーハーネス1を配索経路に沿った形態に維持することができる。
【0054】
また、経路維持部材30がワイヤーハーネス1に対して直接固定されるため、経路維持部材30のワイヤーハーネス1に対する取り付け位置の精度が向上する。
【0055】
また、複数の固定部42が、それぞれワイヤーハーネス1を巻いて締め付ける線状の締付部44を有している構成によると、ワイヤーハーネス1を、テープ巻きを省略して結束できると共により確実に本体部32に対して固定することができる。
【0056】
また、複数の固定部42が、介在部34に形成された固定用孔部46と、固定用孔部46に挿通される締付部44とを有する構成によると、簡易な構成を用いて、より容易にワイヤーハーネス1を配索経路に沿った形態に維持することができる。
【0057】
また、複数の固定部42が、介在部34のうちコルゲートチューブ20の内部に配設される一端側部分に設けられているため、容易に締付部44をコルゲートチューブ20の内部に配設される位置に取り付けることができる。
【0058】
また、複数の固定部42が、本体部32の延在方向において少なくとも曲線部分321を挟む位置に設けられている構成によると、ワイヤーハーネス1のうち曲線状の配索経路に配索される部分も、より正確に配索形態に沿った形態に維持できる。
【0059】
また、本体部32が、介在部34と、介在部34の両側方に張り出してコルゲートチューブ20のスリットを挟んだ両端縁部28に対して外周側から係止可能な押え部36を有し、延在方向に直交する断面視においてT字形状に形成されている構成によると、本体部32のコルゲートチューブ20内における占有面積を小さくし、ワイヤーハーネス1の占有面積を大きくすることができる。
【0060】
また、介在部34によりコルゲートチューブ20の周方向の姿勢が決定されると共に、押え部36及び固定部42の締付部44によりコルゲートチューブ20のスリットの開きが抑制され且つ内部のワイヤーハーネス1の露出が防止される。
【0061】
これまで、経路維持部材30の本体部32が延在方向に直交する断面視においてT字形状に形成されている例で説明したが、本体部は断面視H字形状等の他の形状に形成されていてもよい。
【0062】
また、固定部42について、本体部32とは別体の締付部44と、介在部34に形成された固定用孔部46とにより構成される例で説明したが、これに限られるものではない。例えば、固定部は、本体部と固定部としての締付部とが一体成型されていてもよい。すなわち、この固定部は、介在部の側部から締付部が延出する構成である。また、固定部は、締付部44の代わりにC字形状の嵌合部を有する構成であってもよい。すなわち、嵌合部は、ワイヤーハーネスの外周部に嵌合可能に形成され、嵌合状態でワイヤーハーネスを本体部32に対して固定する。この嵌合部も、本体部に対して別体に形成されてもよいし、一体に形成されてもよい。
【0063】
以上のように、経路維持ワイヤーハーネス10、経路維持部材20及び経路維持ワイヤーハーネスの製造方法は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0064】
1 ワイヤーハーネス
10 経路維持ワイヤーハーネス
20 コルゲートチューブ
28 端縁部
30 経路維持部材
32 本体部
321 曲線部分
34 介在部
36 押え部
42 固定部
44 締付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスを配索経路に沿った形態に維持した経路維持ワイヤーハーネスであって、
ワイヤーハーネスと、
前記ワイヤーハーネスの配索経路に沿った長尺形状に形成された本体部と、前記ワイヤーハーネスを前記本体部に沿わせて固定する複数の固定部とを有する経路維持部材と、
周方向一部に軸方向に沿って形成されたスリットを有し、前記ワイヤーハーネス及び前記複数の固定部を覆う筒状に形成された外装部材と、
を備え、
前記本体部は、前記外装部材の前記スリットを挟んだ両端縁部間に配設される介在部を有している、経路維持ワイヤーハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載の経路維持ワイヤーハーネスであって、
前記複数の固定部は、それぞれ、前記ワイヤーハーネスを巻いて締め付ける線状の締付部を有している、経路維持ワイヤーハーネス。
【請求項3】
請求項2に記載の経路維持ワイヤーハーネスであって、
前記複数の固定部は、前記介在部に形成された固定用孔部と、前記固定用孔部に挿通される前記締付部とを有している、経路維持ワイヤーハーネス。
【請求項4】
請求項3に記載の経路維持ワイヤーハーネスであって、
前記介在部は、一端側部分が前記外装部材の内部に配設され、
前記固定用孔部は、前記介在部の一端側部分に設けられている、経路維持ワイヤーハーネス。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の経路維持ワイヤーハーネスであって、
前記本体部は、延在方向において少なくとも一箇所に曲線部分を有し、
前記複数の固定部は、前記本体部の延在方向において、少なくとも前記曲線部分を挟む位置に設けられている、経路維持ワイヤーハーネス。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の経路維持ワイヤーハーネスであって、
前記本体部は、前記介在部の両側方に張り出して前記外装部材の前記スリットを挟んだ両端縁部に対して外周側から係止可能な押え部をさらに有し、延在方向に直交する断面視においてT字形状に形成されている、経路維持ワイヤーハーネス。
【請求項7】
周方向一部に軸方向に沿って形成されたスリットを有する筒状の外装部材に覆われるワイヤーハーネスを、配索経路に沿った形態に維持する経路維持部材であって、
前記ワイヤーハーネスを覆う前記外装部材の前記スリットを挟んだ両端縁部間に配設可能な介在部を有し、前記ワイヤーハーネスの配索経路に沿った長尺形状に形成された本体部と、
前記ワイヤーハーネスを前記本体部に沿わせて固定可能な複数の固定部と、
を備える、経路維持部材。
【請求項8】
周方向一部に軸方向に沿って形成されたスリットを有する筒状の外装部材に覆われるワイヤーハーネスを、配索経路に沿った形態に維持する経路維持ワイヤーハーネスの製造方法であって、
(a)前記ワイヤーハーネスを、請求項7に記載の経路維持部材の前記本体部に沿わせる工程と、
(b)前記ワイヤーハーネスを、前記複数の固定部により前記本体部に固定する工程と、
(c)前記スリットを挟んだ両端縁部が前記介在部を挟む形態で、前記外装部材を前記ワイヤーハーネスの外周部に被せる工程と、
を備える、経路維持ワイヤーハーネスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−115861(P2013−115861A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257499(P2011−257499)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】