説明

経路維持ワイヤーハーネスの製造方法及び経路維持ワイヤーハーネス

【課題】ワイヤーハーネスのサイズ差になるべく影響されずにより簡易に経路維持性能を確保すること。
【解決手段】経路維持ワイヤーハーネスの製造方法は、(a)ワイヤーハーネス1a、1bを不織材料5で覆う工程と、(b)不織材料5をホットプレスして、ワイヤーハーネス1a、1bの外周部を被覆する被覆部と、被覆部の外周部から外周側に張り出してワイヤーハーネス1a、1bの延在方向に沿って延在するリブとを有する経路維持部を形成する工程とを備え、工程(b)では、ワイヤーハーネス1a、1bのサイズが異なる場合でも、同形状の金型80でホットプレスする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤーハーネスを配索経路に維持する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車等に配索されるワイヤーハーネスの配索経路を維持する技術として、不織布をホットプレスしてワイヤーハーネスの外周部を覆った形状に形成され、経路維持部分を有する電線保護部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−160611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
経路維持部の製造方法として、本願出願人により、ワイヤーハーネスの外周部にシート状の不織材料を巻き付けてから、不織材料をホットプレスする技術が提案されている。
【0005】
ところで、自動車に配索されるワイヤーハーネスにおいて、同じ車種で異なるバージョンの車両では、同じ配索経路に配索されるワイヤーハーネスでも構成電線の数又は種類が変わってサイズが異なることもある。
【0006】
サイズが異なる各ワイヤーハーネスに対して、同形状の不織材料を巻き付けて同形状の金型でホットプレスすると、経路維持部の剛性が変わってしまい、所望の経路維持性能を確保できない恐れがある。また、各ワイヤーハーネスのサイズごとに専用金型を準備すると、設備費が増加してしまう。そこで、この問題を解決するため、出願人は、小さいサイズのワイヤーハーネスに対して、大きいサイズのワイヤーハーネスと比較してより長尺な不織材料を用いて巻き付け回数を多くすること等により、ワイヤーハーネスのサイズに関わらず所望の経路維持性能を得る技術も提案している。
【0007】
しかしながら、上記方法では、ワイヤーハーネスのサイズごとに異なる大きさの不織材料を準備する必要があり、その管理が面倒である。
【0008】
また、経路維持部が設けられた経路維持ワイヤーハーネスの車両に対する固定は、経路維持部の外周部にクランプを取り付け、車両のボディ等に形成される固定用孔部に対してクランプを嵌合させて行うことがある。
【0009】
しかしながら、経路維持ワイヤーハーネスに対するクランプの取り付けは、通常、作業者の手作業により行われるため、取り付け誤差が生じ易い。そして、その取り付け誤差は、経路維持ワイヤーハーネスを車両に配索する際に、配索経路に対する経路のばらつき(経路誤差)としてあらわれる。
【0010】
本発明では、第1の目的は、ワイヤーハーネスのサイズ差になるべく影響されずにより簡易に経路維持性能を確保すること、第2の目的は、配索経路に対する経路誤差を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様は、ワイヤーハーネスを経路維持した経路維持ワイヤーハーネスの製造方法であって、(a)前記ワイヤーハーネスを不織材料で覆う工程と、(b)前記不織材料をホットプレスして、前記ワイヤーハーネスの外周部を被覆する被覆部と、前記被覆部の外周部から外周側に張り出して前記ワイヤーハーネスの延在方向に沿って延在するリブとを有する経路維持部を形成する工程とを備え、前記工程(b)では、前記ワイヤーハーネスのサイズが異なる場合でも同形状の金型でホットプレスする。
【0012】
第2の態様は、第1の態様に係る経路維持ワイヤーハーネスの製造方法であって、前記工程(a)では、前記ワイヤーハーネスのサイズが異なる場合でも、同じ厚さの不織材料で前記ワイヤーハーネスを覆う。
【0013】
第3の態様は、少なくとも1本の電線を含むワイヤーハーネスと、不織材料がホットプレスして形成され、前記ワイヤーハーネスの外周部を被覆する被覆部と、前記被覆部の周方向において少なくとも1箇所から外周側に張り出して前記ワイヤーハーネスの延在方向に沿って延在するリブとを有する経路維持部とを備え、前記リブには前記被覆部の周方向に貫通する固定用孔部が形成されている。
【0014】
第4の態様は、第3の態様に係る経路維持ワイヤーハーネスであって、前記リブは、延在方向において前記固定用孔部が形成された位置に、延在方向における他の部位より大きく張り出した張出部を有する。
【発明の効果】
【0015】
第1の態様に係る経路維持ワイヤーハーネスの製造方法によると、(a)ワイヤーハーネスを不織材料で覆う工程と、(b)不織材料をホットプレスして、ワイヤーハーネスの外周部を被覆する被覆部と、被覆部の外周部から外周側に張り出してワイヤーハーネスの延在方向に沿って延在するリブとを有する経路維持部を形成する工程とを備え、工程(b)では、ワイヤーハーネスのサイズが異なる場合でも同形状の金型でホットプレスする。このため、被覆部の剛性はワイヤーハーネスのサイズによって異なるものの、リブの剛性はワイヤーハーネスのサイズによる影響を受けにくいため、第1の目的であるワイヤーハーネスのサイズ差になるべく影響されずにより簡易に経路維持性能を確保することを実現できる。
【0016】
第2の態様に係る経路維持ワイヤーハーネスによると、工程(a)では、ワイヤーハーネスのサイズが異なる場合でも、同じ厚さの不織材料で前記ワイヤーハーネスを覆うため、不織材料のサイズを統一することができる。
【0017】
第3の態様に係る経路維持ワイヤーハーネスによると、ワイヤーハーネスの外周部を被覆する被覆部の周方向において少なくとも1箇所から外周側に張り出してワイヤーハーネスの延在方向に沿って延在するリブに、被覆部の周方向に貫通する固定用孔部が形成されている。この固定用孔部を利用して、ネジ、リベット又はピン等の固定部材により固定対象部材に対して容易に固定でき、第2の目的である配索経路に対する経路誤差を抑制することを実現できる。
【0018】
第4の態様に係る経路維持ワイヤーハーネスによると、リブが、延在方向において固定用孔部が形成された位置に延在方向における他の部位より大きく張り出した張出部を有するため、固定用孔部の周縁部の外周側における固定代をより大きく確保することができるため、固定対象に対してより確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】経路維持ワイヤーハーネスの斜視図である。
【図2】経路維持ワイヤーハーネスの製造工程を示す図である。
【図3】経路維持ワイヤーハーネスの製造工程を示す図である。
【図4】固定用孔部を有するリブ示す斜視図である。
【図5】張出部を有するリブを示す斜視図である。
【図6】異なるサイズのワイヤーハーネスを用いた経路維持ワイヤーハーネスの製造工程を示す図である。
【図7】異なるサイズのワイヤーハーネスを用いた経路維持ワイヤーハーネスの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態に係る経路維持ワイヤーハーネスの製造方法及び経路維持ワイヤーハーネスについて説明する。
【0021】
<経路維持ワイヤーハーネスの概略>
まず、経路維持ワイヤーハーネス10の全体構成について説明する(図1参照)。経路維持ワイヤーハーネス10は、経路維持部20によりワイヤーハーネス1を配索経路に沿った形状に維持した構成である。
【0022】
経路維持の対象となるワイヤーハーネス1は、自動車等に配索されるワイヤーハーネスであり、少なくとも1本の電線を有している。ここでは、ワイヤーハーネス1は、複数の電線等が結束されて形成されている。そして、ワイヤーハーネス1は、配索経路に沿って配索される。
【0023】
経路維持の対象となるのは、ワイヤーハーネス1のうち、曲線経路を含む配索経路に配索される部分、他部材が近接して配設されている配索経路に配索される部分等である。この配索経路には、直線経路、曲線経路、屈曲経路又はそれらを含む経路等がある。以下、ワイヤーハーネス1のうちの経路維持の対象となる部分を、単にワイヤーハーネス1と言うことがある。
【0024】
経路維持部20は、ワイヤーハーネス1を配索経路に沿って延在する形態に維持する部分である。なお、経路維持部20は、ワイヤーハーネス1を外部から保護する機能も有し、保護対象箇所にも設けられることがある。この経路維持部20は、製造方法の説明において後述するように、不織材料を加熱及び加圧して形成される。経路維持部20は、ワイヤーハーネス1の配索経路に沿った長尺形状に形成され、その長尺な方向に沿って延在する被覆部22と、リブ24とを有している。
【0025】
被覆部22は、ワイヤーハーネス1の外周部を被覆する部分であり、筒状を成している。より具体的には、被覆部22は、内周部がワイヤーハーネス1の外周部に沿った形状で接触する形状に形成されている。この被覆部22は、少なくとも、リブ24と併せて、ワイヤーハーネス1を配索経路に沿った形態に維持可能な程度の剛性を有している。すなわち、被覆部22は、上記条件を満たしていれば部分的に硬く形成された構成でもよいが、好ましくは全体的に硬く形成されているとよい。ここでは、被覆部22は、少なくとも外周部が硬く形成されている。また、被覆部22は、断面視において、ワイヤーハーネス1の外周形状に沿った環状(ここでは円環状)に形成されている。
【0026】
リブ24は、被覆部22の周方向において少なくとも一箇所から外周側に張り出してワイヤーハーネス1の延在方向に沿って延在する形状に形成された部分である。より具体的には、リブ24は、被覆部22の内外方向(中心軸に対する放射方向)に沿って外周側に張り出し、延在方向及び被覆部22の内外方向に沿って扁平な形状に形成されている。ここでは、リブ24は、被覆部22の両側部(外周部の周方向において中心軸を挟んで対向する二箇所)から張り出すように設けられている。また、リブ24は、全体的に硬く形成されている。
【0027】
次に、上記経路維持ワイヤーハーネス10の製造方法の概要について説明する。
【0028】
経路維持ワイヤーハーネス10は、ワイヤーハーネス1を不織材料5で覆う工程と、該不織材料5をホットプレスする工程とを経て製造される。すなわち、不織材料5をホットプレスすることにより、ワイヤーハーネス1を覆う形態の経路維持部20が形成される。
【0029】
ここで、ホットプレスとは、加工対象である不織材料5を金型間に挟み込み、加熱した金型により不織材料5を加圧して成型加工することを言う。
【0030】
不織材料5としては、加熱工程を経て部分的又は全体的に溶融し或いは軟らかくなり、その後冷却工程を経て硬くなることが可能なものを用いることができる。このような不織材料5として、基本繊維と接着樹脂(バインダとも呼ばれる)とを含むものを用いることができる。接着樹脂は、基本繊維の融点よりも低い融点を有する樹脂である。そして、不織材料5を、基本繊維の融点より低く且つ接着樹脂の融点よりも高い温度に加熱することにより、接着樹脂が溶融されて基本繊維間にしみ込む。この後、不織材料5の温度が低下すると、接着樹脂が凝固する。これにより、不織材料5を加熱時の成形形状に維持することができる。ここでは、シート状に形成されている不織材料5(不織布とも呼ばれる)を用いている。
【0031】
不織材料5の基本繊維としては、接着樹脂の融点で繊維状態を保ち得ればよく、樹脂繊維の他、ガラス繊維等の各種繊維を用いることができる。また、接着樹脂は、基本繊維の融点より低い融点を有する熱可塑性樹脂繊維を用いることができる。例えば、基本繊維と接着樹脂との組合せとしては、基本繊維をPET(ポリエチレンテレフタレート)の樹脂繊維とし、接着樹脂をPETとPEI(ポリエチレンイソフタレート)との共重合樹脂としたものが挙げられる。
【0032】
ここでは、不織材料5として、一対の長尺シート状の不織材料を採用している。この不織材料5は、ワイヤーハーネス1の外周の半周長より長い、好ましくはリブ24を形成可能な程度に大きい幅寸法に設定されているとよい。
【0033】
そして、ワイヤーハーネス1を一対の不織材料5で挟んだ状態で、一対の不織材料5を金型80によりホットプレスする。金型80は、成形面を対向させて接離可能に設けられた上型82と下型84とを有している。より具体的には、一対の不織材料5及びワイヤーハーネス1を、金型80の上型82と下型84との間に、接離方向に沿って一対の不織材料5間にワイヤーハーネス1を挟む形態で配設する(図2参照)。この際、ワイヤーハーネス1は、延在方向に直交する方向において、一対の不織材料5の中間に位置していることが好ましい。
【0034】
そして、加熱された上型82と下型84とを相対近接移動させることにより、一対の不織材料5がワイヤーハーネス1を覆う形態で加熱及び加圧され、被覆部22とリブ24とを備える経路維持部20が成形される(図3参照)。
【0035】
ここで、上型82及び下型84は、それぞれ対向する部位に、ワイヤーハーネス1の配索経路に沿った形状に延在する被覆部成形面及びリブ成形面を有している。より具体的には、上型82及び下型84は、被覆部成形面の両側に一対のリブ成形面が設けられた形状を成している。一対のリブ成形面は、略同一平面上に設けられた平面であり、経路維持部20のリブ24を成形するための部分である。被覆部成形面は、一対のリブ成形面から凹んだ曲面、ここでは延在方向に直交する断面視において略半円弧状の凹曲面であり、経路維持部20の被覆部22を成形するための部分である。
【0036】
<固定用孔部>
上記経路維持ワイヤーハーネス10では、リブ24は、固定部材95により固定対象部材90に対して経路維持ワイヤーハーネス10を固定するための固定用孔部25を有している(図4参照)。固定用孔部25は、リブ24の厚さ方向に貫通する孔部である。
【0037】
ここで、固定対象部材90は、例えば、自動車のボディを構成する金属パネル等である。また、固定部材95は、固定用孔部25に挿通可能な挿通部96と、固定用孔部25の周縁部に対して係止可能な係止部97とを有し、固定対象部材90に対して固定可能な部材である。図4には、固定対象部材90に孔部(ねじ孔等でもよい)が形成されている例を示している。固定部材95としては、例えば、リベット、ボルト又はピン等を採用することができる。
【0038】
そして、挿通部96を固定用孔部25に挿通した状態で固定部材95を固定対象部材90に対して固定することにより、係止部97が固定対象部材90との間に固定用孔部25の周縁部を挟む形態で該周縁部に係止する。これにより、経路維持ワイヤーハーネス10は、固定対象部材90に対して固定される。例えば、固定部材95としてボルトを用いる場合、固定対象部材90にねじ孔が形成され、又は、固定対象部材90に形成された孔部の裏側に締結用のナットが設けられ、ボルトを雌ネジ部分に螺合させるとよい。
【0039】
この固定用孔部25は、リブ24のうち、経路維持ワイヤーハーネス10を配索経路に配索した状態で、固定対象部材90の固定箇所に対応する部位に形成されている。例えば、固定用孔部25は、図4に示すように、リブ24のうち、固定対象部材90の孔部に重複する(連通する)位置に形成されているとよい。すなわち、固定用孔部25は、固定対象部材90の固定箇所の数に対応して1つ又は複数設けられ、該固定箇所の位置に対応して一対のリブ24のうちのいずれに設けられてもよい。
【0040】
固定用孔部25は、一対の不織材料5をホットプレスした後に孔あけ処理を施して形成されてもよいし、孔あけ用の各凹凸面が形成された金型を用いてホットプレスを行って形成されてもよい。
【0041】
また、図5に示すように、張出部126を有するリブ124が採用されてもよい。張出部126は、リブ124の延在方向における他の部位よりも大きく張り出した形状に形成されている。そして、張出部126は、リブ124の延在方向において、固定用孔部25が形成される位置に設けられる。すなわち、張出部126は、リブ124のうち固定用孔部25の外周側の部位を拡大するように設けられる。好ましくは、張出部126は、固定部材95の挿通部96を固定用孔部25に挿通した状態で、係止部97が係止可能な(挿通方向において重複し得る)範囲を含む形状及び大きさに形成されているとよい。
【0042】
ここでは、固定用孔部25は、部分的に張出部126に形成されている。また、張出部126の端縁部は、延在方向中途部が固定用孔部25の周縁部に沿った形状に形成され、両端部がリブ124のうちの延在方向の他の部位に対して滑らかにつながるように形成されている。
【0043】
もっとも、固定用孔部25は、全体的に張出部126に形成されていてもよいし、全体的に張出部126より被覆部22側に形成されていてもよい。また、張出部126の形状は、固定用孔部25の外周側の部位を拡大するように形成されればよく、上記固定用孔部25の周縁部に沿った形状に限られない。
【0044】
この張出部126は、延在方向における所定の部位が幅広に形成された不織材料5を用いて、該不織材料5のホットプレスを行うことにより形成することができる。また、張出部126は、一対の不織材料5とは別の張出部126形成用の不織材料を、一対の不織材料5の側方に張り出す形状で設け、一対の不織材料5と共にホットプレスすることにより形成されてもよい。
【0045】
また、これまで、ワイヤーハーネス1を挟んだ形態で一対の不織材料5をホットプレスする例で説明してきたが、一枚の不織材料を折り畳んでワイヤーハーネス1を挟み、該不織材料をホットプレスしてもよい。
【0046】
また、経路維持部20が一対のリブ24を有する例で説明してきたが、リブ24は被覆部22の周方向における一箇所だけに設けられていてもよい。
【0047】
上記のような固定用孔部25が形成された経路維持部20を有する経路維持ワイヤーハーネス10によると、固定対象部材90に対する固定を、クランプを用いずに、予めリブ24に形成された固定用孔部25の位置で固定部材95を用いて行うことができる。このように、作業者が手作業でクランプを取り付ける際の取付誤差の影響を受けずに、ワイヤーハーネス1の延在方向における固定位置を決定できるため、ワイヤーハーネス1をより精度良く配索経路に配設及び維持し、配索経路に対する経路誤差を抑制することができる。
【0048】
また、張出部126を有するリブ124を採用した構成によると、固定用孔部25の周縁部の外周側の部位に固定部材95の係止部が係止する固定代をより大きく確保することができるため、固定対象部材90に対してより確実に固定することができる。また、より被覆部22から離れた位置(外周側の位置)に固定用孔部25を設けることができるため、被覆部22と配索経路の周辺部材との干渉を抑制できると共に、配索経路へ組み付ける作業の作業性を向上させることができる。
【0049】
<異サイズのワイヤーハーネスを対象とした経路維持ワイヤーハーネスの製造方法>
次に、異なるサイズのワイヤーハーネスを対象とした経路維持ワイヤーハーネスの製造方法について説明する(図6、図7参照)。この製造方法は、同車種の異なるバージョンの車両等において、同じ配索経路に配索される異なるサイズのワイヤーハーネスそれぞれについて、サイズ差になるべく影響されずにより簡易に経路維持性能を確保するためのものである。
【0050】
説明の便宜上、経路維持の対象となる異なる2つのサイズ(線径)のワイヤーハーネスを、第1ワイヤーハーネス1a、第2ワイヤーハーネス1bと称する。第1ワイヤーハーネス1aは、第2ワイヤーハーネス1bより大きい(ここでは線径が16mm大きい)サイズのワイヤーハーネスであるものとする。
【0051】
まず、第1ワイヤーハーネス1aを経路維持の対象とした経路維持ワイヤーハーネス10aの製造工程を説明する。
【0052】
第1ワイヤーハーネス1aを一対の不織材料5で挟むと共に、一対の不織材料5を金型80によりホットプレスすることにより経路維持部20aを形成する。ここでは、一対の不織材料5として、厚さ20mmのシート状の不織材料を用いている。また、ここで用いる金型80は、例えば、上型82と下型84とを近接させた状態で、各リブ成形面間の寸法が4mm、被覆部成形面が存在する仮想円柱の外周面の半径が第1ワイヤーハーネス1aの半径より2mm大きい寸法に設定されているとよい。
【0053】
これにより、被覆部22aの厚さ寸法aが2mm、リブ24の厚さ寸法cが4mmの経路維持部20aを有する経路維持ワイヤーハーネス10aが製造される。
【0054】
より具体的には、経路維持部20aの被覆部22aは、第1ワイヤーハーネス1aの外周部を被覆し、第1ワイヤーハーネス1aの配索経路に沿って延在する長尺形状に形成されている。また、被覆部22bは、延在方向に直交する断面視において、第1ワイヤーハーネス1aの外周形状に沿った円環状に形成されている。また、リブ24は、被覆部22aの外周部から外周側に張り出し、被覆部22aの延在方向に沿って延在する形状に形成されている。そして、経路維持部20aは、被覆部22aとリブ24とを併せて、少なくとも第1ワイヤーハーネス1aを自身で配索経路に沿った形状に維持可能な程度の剛性を有するように形成されている。ここでは、被覆部22a及びリブ24は、全体的に硬く形成されている。
【0055】
次に、第2ワイヤーハーネス1bを経路維持の対象とした経路維持ワイヤーハーネス10bの製造工程を説明する。
【0056】
第2ワイヤーハーネス1bを一対の不織材料5で挟むと共に、一対の不織材料5を金型80によりホットプレスすることにより経路維持部20bを形成する。本経路維持ワイヤーハーネスの製造方法においては、ワイヤーハーネスのサイズが異なる場合でも、同形状の金型80でホットプレスする。すなわち、上型82と下型84とを近接させた状態で、各リブ成形面間の寸法が4mm、被覆部成形面が存在する円柱側面の半径が第2ワイヤーハーネス1bの半径より10mm大きい寸法に設定された金型80を用いる。
【0057】
ここでは、第1ワイヤーハーネス1aを対象とした場合と同じ厚さの一対の不織材料5で、第2ワイヤーハーネス1bを挟んだ状態で、同形状の金型80により一対の不織材料5をホットプレスする。ここで、同じ厚さの一対の不織材料5とは、厚さが厳密に一致する場合に限られず、設計において予め設定された製造上の誤差の範囲内で異なっていてもよい。
【0058】
これにより、被覆部22bの厚さ寸法bが10mm、リブ24の厚さ寸法cが4mmの経路維持部20bを有する経路維持ワイヤーハーネス10bが製造される。
【0059】
より具体的には、経路維持部20bの被覆部22bは、第2ワイヤーハーネス1bの外周部を被覆し、第1ワイヤーハーネス1aの配索経路と同様の第2ワイヤーハーネス1bの配索経路に沿って延在する長尺形状に形成されている。この被覆部22bは、経路維持部20aの被覆部22aより肉厚で且つ外部形状が同形状に形成されている。すなわち、第1ワイヤーハーネス1aより線径が(ここでは16mm)小さい第2ワイヤーハーネス1bに対して、同形状の一対の不織材料5及び金型80を用いているため、第2ワイヤーハーネス1bと金型80の被覆部成形面との間により大きい間隔があけられ、その間で一対の不織材料5がホットプレスされる。このため、被覆部22bは、全体として、被覆部22aより軟らかく形成されている。また、被覆部22bは、断面視において、第2ワイヤーハーネス1bの外周形状に沿った円環状に形成されている。
【0060】
また、経路維持部20bのリブ24は、被覆部22bの外周部から外周側に張り出し、被覆部22bの延在方向に沿って延在する形状に形成されている。このリブ24は、経路維持部20aのリブ24と同形状に形成されている。より具体的には、経路維持ワイヤーハーネス10aを製造する場合と同形状の一対の不織材料5及び金型80を用いているため、リブ24は、経路維持部20aのリブ24と略同じ硬さに形成されている。
【0061】
そして、経路維持部20bは、被覆部22bとリブ24とを併せて、少なくとも第2ワイヤーハーネス1bを自身で配索経路に沿った形状に維持可能な程度の剛性を有するように形成されている。すなわち、被覆部22bは被覆部22aより軟らかく剛性が低くなってしまうものの、リブ24は経路維持部20aのリブ24と略同じ硬さに形成されるため、経路維持部20b全体として、第2ワイヤーハーネス1bを自身で配索経路に沿った形状に維持可能な剛性を確保することができる。
【0062】
なお、不織材料5の厚さ及び金型80の形状と、これらを用いたホットプレスを適用するワイヤーハーネスのサイズの範囲は、以下のようにして決定されるとよい。すなわち、ワイヤーハーネスの線径が大きい側には、形成される被覆部が外部からワイヤーハーネスを保護可能、且つ、ホットプレスによりワイヤーハーネスが潰れない程度に厚くなるように決定されるとよい。また、ワイヤーハーネスの線径が小さい側には、経路維持部が被覆部とリブとを併せた剛性によりワイヤーハーネスを配索経路に沿った形態に維持可能な程度に硬くなるように決定されるとよい。
【0063】
上記実施形態に係る経路維持ワイヤーハーネスの製造方法によると、異なるサイズの第1ワイヤーハーネス1aと第2ワイヤーハーネス1bとであっても、同形状の金型80でホットプレスして経路維持部20a、20bを形成する。このため、被覆部22a、22bの剛性はワイヤーハーネス1a、1bのサイズによって異なるものの、リブ24の剛性はワイヤーハーネス1a、1bのサイズによる影響を受けにくいため、ワイヤーハーネス1a、1bのサイズ差になるべく影響されずに剛性を確保して経路維持性能を確保することができる。また、不織材料5の大きさの管理を省略して、より容易にワイヤーハーネス1a、1bの経路維持を行うことができる。
【0064】
また、同じ厚さの不織材料5を用いてホットプレスを行っているため、不織材料5のサイズを1種類に統一することができる。
【0065】
上述したように、例えば厚さ20mmの不織材料5を用いると、経路維持の対象となるワイヤーハーネスの線径差16mmの範囲で、同形状の金型80を用いて経路維持性能を確保しつつ経路維持ワイヤーハーネスを製造することができる。より具体的には、リブが不織材料5を10分の1の厚さに圧縮して形成されていると、被覆部が不織材料5を2分の1〜10分の1の厚さに圧縮して形成されているとよい。
【0066】
これまで、ワイヤーハーネス(ワイヤーハーネス1a、1b)のサイズが異なる場合でも、同じ厚さの不織材料5を用いる例で説明してきたが、着目すべきはホットプレス後のリブ24の剛性であり、異なる厚さの不織材料を用いてもよい。すなわち、経路維持部が自身でワイヤーハーネスを配索経路に沿った形態に維持可能な剛性を有する範囲内であれば、多少不織材料の厚さが異なっても問題はない。
【0067】
また、一対の不織材料5同士も異なる厚さのものが用いられてもよい。すなわち、一対の不織材料5を重ねた状態でホットプレスされて形成されるリブ24の剛性が重要であり、双方の不織材料を重ねた状態の厚さが、同厚の一対の不織材料5を重ねた状態の厚さとほぼ同じであればよい。
【0068】
以上のように、経路維持ワイヤーハーネス10及び経路維持ワイヤーハーネスの製造方法は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0069】
1 ワイヤーハーネス
1a 第1ワイヤーハーネス
1b 第2ワイヤーハーネス
5 不織材料
10、10a、10b 経路維持ワイヤーハーネス
20、20a、20b 経路維持部
22、22a、22b 被覆部
24、124 リブ
25 固定用孔部
80 金型
126 張出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスを経路維持した経路維持ワイヤーハーネスの製造方法であって、
(a)前記ワイヤーハーネスを不織材料で覆う工程と、
(b)前記不織材料をホットプレスして、前記ワイヤーハーネスの外周部を被覆する被覆部と、前記被覆部の外周部から外周側に張り出して前記ワイヤーハーネスの延在方向に沿って延在するリブとを有する経路維持部を形成する工程と、
を備え、
前記工程(b)では、前記ワイヤーハーネスのサイズが異なる場合でも、同形状の金型でホットプレスする、経路維持ワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の経路維持ワイヤーハーネスの製造方法であって、
前記工程(a)では、前記ワイヤーハーネスのサイズが異なる場合でも、同じ厚さの不織材料で前記ワイヤーハーネスを覆う、経路維持ワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項3】
少なくとも1本の電線を含むワイヤーハーネスと、
不織材料がホットプレスして形成され、前記ワイヤーハーネスの外周部を被覆する被覆部と、前記被覆部の周方向において少なくとも1箇所から外周側に張り出して前記ワイヤーハーネスの延在方向に沿って延在するリブと、を有する経路維持部と、
を備え、
前記リブには、前記被覆部の周方向に貫通する固定用孔部が形成されている、経路維持ワイヤーハーネス。
【請求項4】
請求項3に記載の経路維持ワイヤーハーネスであって、
前記リブは、延在方向において前記固定用孔部が形成された位置に、延在方向における他の部位より大きく張り出した張出部を有する、経路維持ワイヤーハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−116028(P2013−116028A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263375(P2011−263375)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】