説明

経路設定装置、方法およびプログラム

【課題】一旦経路を間違えてしまうと、目的地に到達することが困難であった。
【解決手段】利用者の現在地を特定可能な地点を示す情報を含む地図情報を取得し、出発地と目的地とを示す情報を取得し、前記地図情報に基づいて、交差点における退出方向または曲がるべき交差点の位置を誤った後に直進して前記地点に到達する第1交差点を、交差点における退出方向または曲がるべき交差点の位置を誤った後に直進して前記地点に到達しない第2交差点よりも優先して経路に含むように前記出発地から前記目的地までの前記経路を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者を目的地まで案内するための経路を設定する経路設定装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、利用者が所有する装置に対して利用者が辿るべき経路を案内する技術が知られている。例えば、特許文献1に開示された技術においては、携帯機器が情報発信装置の通信可能範囲に入った場合に、当該情報発信装置から当該情報発信装置の位置情報を携帯端末に対して送信し、携帯機器において当該位置情報に基づいて利用者の経路が正しいか否かを判定する。そして、利用者の経路が正しいと判定されない場合には、警告を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−5682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術においては、携帯機器が情報発信装置の通信可能範囲に入らなければ経路が正しいか否か判定することができない。従って、情報発信装置の設置数が少ない地域においては、正しい経路であるか否かを判定可能なタイミングが少なく、経路を誤った場合に正しい経路ではないとの警告がなされるまでに多くの時間がかかってしまう。また、警告がなされたとしても、当該警告がなされるまでに多くの時間がかかった場合には、目的地に到達することは困難であった。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、経路を間違えた場合であっても確実に目的地に到達可能にする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明においては、利用者の現在地を特定可能な地点を示す情報を含む地図情報を参照し、交差点における退出方向または曲がるべき交差点の位置を誤った後に直進して利用者の現在地を特定可能な地点に到達する第1交差点を、交差点における退出方向または曲がるべき交差点の位置を誤った後に直進して利用者の現在地を特定可能な地点に到達しない第2交差点よりも優先して経路に含むように出発地から目的地までの経路を設定する。すなわち、交差点における退出方向を誤った場合や、曲がるべき交差点の位置を誤った場合など、経路の誤りが生じた場合に利用者の現在地を特定可能な地点に到達する確率が高くなるように経路を設定する。この構成により、利用者が設定された経路を辿る過程において経路を間違えた場合であっても、利用者は正しい経路に容易に復帰し、確実に目的地に到達可能である。
【0006】
地図情報取得手段は、利用者の現在地を特定可能な地点を示す情報を含む地図情報を取得することができればよい。すなわち、地図情報に基づいて経路および利用者の現在地を特定可能な地点を特定できるように構成されていればよい。利用者の現在地を特定可能な地点は、座標で示されていても良いし、所定の範囲で示されていてもよい。なお、無線通信によって利用者の現在地を特定する構成の他、利用者が看板等の情報を視認することによって現在地を特定可能である場合、当該看板等の情報の視認可能範囲を利用者の現在地を特定可能な地点としても良い。
【0007】
地点情報取得手段は、出発地と目的地を示す情報を取得することができればよい。すなわち、経路の始点と終点とを特定するための情報を取得することができればよい。
【0008】
経路設定手段は、第1交差点が第2交差点よりも優先して経路に含まれるように出発地から目的地までの経路を設定することができればよい。すなわち、経路を設定するまでの過程においてある交差点に対する進入方向および退出方向が特定されると、退出方向の誤りおよび曲がるべき交差点の位置の誤りを特定することができる。例えば、当該交差点に接続する道路のなかで、交差点への進入路と交差点からの退出路とのいずれでもない道路道路に退出する行為を誤りとして特定することができる。また、特定の交差点で直進方向と異なる退出方向に退出する(すなわち交差点で曲がる)場合、当該交差点の位置以外の位置に存在する交差点で本来の退出方向と平行あるいは類似する退出方向に退出する行為を誤りとして特定することができる。
【0009】
そこで、出発地から目的地までの経路を設定するまでの過程において、経路の候補を想定し、当該経路上の交差点への進入方向と交差点からの退出方向とを特定することにより、経路の誤りが発生した後に利用者が直進した場合に、利用者が当該利用者の現在地を特定可能な地点に到達するか否かを判定することができる。すなわち、経路を設定するまでの過程において、候補となっている経路上の交差点への進入方向と交差点からの退出方向とを特定することによって、各交差点を第1交差点あるいは第2交差点のいずれかに分類することができる。そこで、候補となっている経路上にできるだけ多くの第1交差点が含まれるように経路を設定すれば、交差点における退出方向または曲がるべき交差点の位置を誤った場合に、利用者の現在地を特定可能な地点に到達する確率が高くなるように経路を設定することができる。
【0010】
なお、本発明においては、第1交差点を第2交差点よりも優先して経路に含むように当該経路が設定されていればよい。従って、経路探索アルゴリズムにおいて実質的に第1交差点を第2交差点よりも優先して選択するように経路探索を行っても良いし、通常の経路探索によって得られた複数の経路の候補の中からできるだけ第1交差点を多く含む経路を選択する構成であっても良い。
【0011】
さらに、第1交差点が第2交差点よりも優先して経路に含まれるように出発地から目的地までの経路を設定する際には、各種の視点に基づいて第1交差点の優先度を定義することが可能である。例えば、第1交差点における退出方向を誤った後または曲がるべき第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点で曲がった後に直進して利用者の現在地を特定可能な地点に到達した後、正しい経路に戻るまでの距離が短いほど第1交差点が経路に含められる確率を高くして経路を設定する構成を採用可能である。すなわち、利用者が誤った経路を選択した後、利用者の現在地を特定可能な地点に到達すると経路が誤っていることが判明するが、その後、正しい経路に戻るまでの距離が短いほど正しい経路に復帰しやすい。そこで、第1交差点の中でも、当該正しい経路に戻るまでの距離が短いほど優先的に経路に含められるように構成することで、経路を間違えた場合に正しい経路に復帰し、目的地に到達する確率を高めることが可能である。
【0012】
さらに、第1交差点における退出方向を誤った後または曲がるべき第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点で曲がった後に直進して到達し得る、利用者の現在地を特定可能な地点の数が多いほど第1交差点が経路に含められる確率を高くして経路を設定する構成を採用しても良い。すなわち、利用者が誤った経路を選択した後、利用者の現在地を特定可能な地点に到達すると経路が誤っていることが判明するため、経路を誤った後に到達し得る、利用者の現在地を特定可能な地点が多いほど正しい経路に復帰できる確率が高い。そこで、第1交差点の中でも、第1交差点での正しい経路を誤った後に到達し得る、利用者の現在地を特定可能な地点が多いほど優先的に経路に含められるように構成することで、経路を間違えた場合に正しい経路に復帰し、目的地に到達する確率を高めることが可能である。
【0013】
さらに、第1交差点における退出方向を誤る退出方向錯誤確率と、曲がるべき第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点で曲がる交差点錯誤確率とのいずれかまたは双方が低いほど第1交差点が経路に含められる確率を高くして経路を設定する構成を採用しても良い。すなわち、経路内には第2交差点よりも優先して第1交差点が含められることによって、誤りが発生した場合であっても経路に復帰しやすくなるが、錯誤によって第1交差点に関する経路を誤る確率が低ければ、経路を誤ることなく目的地に到達する確率が高くなる。そこで、第1交差点において利用者が誤って正しい退出方向以外の方向に退出する退出方向錯誤確率と、第1交差点で曲がるべきであるにもかかわらず、利用者が誤って第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点で曲がってしまう交差点錯誤確率とのいずれかまたは双方が低いほど、第1交差点が経路に含められる確率を高くすることにより、利用者が間違えることなく目的地に到達する確率が高い経路を設定することが可能になる。
【0014】
なお、交差点錯誤確率は、種々の手法によって特定可能である。例えば、第1交差点と第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点との距離が長いほど利用者が経路を誤る交差点錯誤確率は低くなると考えられる。また、第1交差点と第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点との間に存在する交差点の数が多いほど利用者が経路を誤る交差点錯誤確率は低くなると考えられる。さらに、第1交差点で曲がるべき方向と第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点で想定される退出方向との角度差が大きいほど利用者が経路を誤る交差点錯誤確率は低くなると考えられる。さらに、第1交差点の形状と第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点の形状との類似度が低いほど利用者が経路を誤る交差点錯誤確率は低くなると考えられる。
【0015】
そこで、第1交差点と第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点との距離が長いほど低くなる確率と、第1交差点と第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点との間に存在する交差点の数が多いほど低くなる確率と、第1交差点で曲がるべき方向と第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点で想定される退出方向との角度差が大きいほど低くなる確率と、第1交差点の形状と第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点の形状との類似度が低いほど低くなる確率と、のいずれかまたは組み合わせによって交差点錯誤確率を構成し、交差点錯誤確率が低いほど第1交差点が経路に含められる確率を高くすることにより、利用者が間違えることなく目的地に到達する確率が高い経路を設定することが可能になる。
【0016】
さらに、本発明のように交差点における退出方向または曲がるべき交差点の位置を誤った後に直進して利用者の現在地を特定可能な地点に到達する交差点を優先して経路に含むように経路探索を行う手法は、方法やプログラムとしても適用可能である。また、以上のような装置、方法、プログラムは、単独の装置として実現される場合もあれば、他の装置と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような装置を備えた携帯端末やナビゲーション装置、方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】経路設定装置を含むシステムの利用態様を示すブロック図である。
【図2】(2A)および(2B)はコストの算出法の例を説明するための説明図である。
【図3】(3A)はコストの算出法の例を説明するための説明図、(3B)は経路の設定を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)経路設定装置を含むシステムの構成:
(2)経路設定装置の構成:
(2−1)コストデータ:
(2−2)経路設定処理:
(3)他の実施形態:
【0019】
(1)経路設定装置を含むシステムの構成:
図1は、経路設定装置を含むシステムの利用態様を示すブロック図である。本実施形態において、携帯端末100は利用者に対して目的地までの経路案内を提供する装置である。経路設定装置10は、利用者の出発地から目的地までの経路を設定する装置であり、携帯端末100が送信する出発地および目的地を示す情報を受信して当該経路を設定する。また、経路設定装置10は、設定した経路を示す経路情報を携帯端末100に対して送信する。携帯端末100は当該経路情報を受信し、当該経路情報に基づいて利用者に対して目的地までの経路案内を提供する。
【0020】
本実施形態において、携帯端末100と経路設定装置10との通信可能範囲は限定された範囲であり、携帯端末100による経路案内は経路設定装置10との通信可能範囲外で実施される。図1においては、破線によって携帯端末100が経路設定装置10と通信を行うことが可能な通信可能範囲を示している。すなわち、本実施形態においては、経路設定装置10との通信可能範囲で携帯端末100が経路情報を取得した後、利用者が携帯端末100とともに通信可能範囲外に移動して出発地に到達した段階で開始される。
【0021】
図1においては、二点鎖線によって携帯端末100による経路案内が利用される領域(経路設定装置10との通信可能範囲外)を示している。本実施形態においては、当該経路案内が利用される領域内に、利用者の現在地を特定する情報を送信する位置情報送信装置200が複数台設置されている。当該位置情報送信装置200は、無線通信によって携帯端末100と通信を行うことが可能な装置であり、携帯端末100からの送信要求を受け付けると、位置情報送信装置200は当該位置情報送信装置200が設置された位置を示す位置情報を携帯端末100に対して送信する。
【0022】
携帯端末100が当該位置情報を取得すると、当該位置情報が示す位置を中心とした所定範囲内に携帯端末100が存在するとみなし、利用者の現在地が当該所定範囲内であると判定する。従って、携帯端末100においては、当該位置情報と上述の経路情報とに基づいて、利用者の現在地が経路上であるか否かを判定することが可能である。そこで、携帯端末100においては、位置情報送信装置200と通信を行って、位置情報が取得され、かつ、当該位置情報および経路情報に基づいて利用者の現在地が経路上にないと判定された場合に画像や音声、振動等によって警告することにより、利用者に対して経路案内を提供する。
【0023】
なお、本実施形態において、携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲も限定された範囲であり、複数台設置された位置情報送信装置200の通信可能範囲(図1にて一点鎖線で模式的に示す領域)は重複していない。従って、携帯端末100の利用者が、携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲外で経路を誤ると、その時点で利用者が経路の誤りが発生したことを認識することはできず、誤った経路を進むことになる。そして、携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲に利用者が到達した時点で、利用者は上述の警告によって経路が誤っていることを認識する。従って、本実施形態にかかる経路案内のシステムにおいて、利用者が経路を誤った後、できるだけ早く携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲に到達するように経路が選択され、携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲に到達する確率が高くなるように経路が選択されている場合には、誤った経路を修正可能である確率が高くなる。そこで、本実施形態においては、経路設定装置10において、経路を設定する際に参照する地図情報において、誤りを修正可能である確率が高くなる経路を設定できるように予めコストデータが定義されている。
【0024】
(2)経路設定装置の構成:
経路設定装置10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20と記録媒体30と通信部22とを備えている。通信部22は外部の通信機器と無線通信によって情報を送受信する装置である。また、記録媒体30には予め地図情報30aが記録されている。制御部20は当該記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを実行することができる。本実施形態において制御部20は、このプログラムの一つとして経路設定プログラム21を実行可能であり、制御部20は経路設定プログラム21の処理により、地図情報30aを参照して、誤りを修正可能である確率が高くなる経路を設定する処理を行う。
【0025】
地図情報30aには、道路上の交差点に設定されたノードを示すノードデータ、ノード間の道路の形状を特定するための形状補間データ、ノード同士の連結を示すリンクデータ、目的地となり得る地物を示す地物データ等が含まれている。また、本実施形態において地図情報30aには、携帯端末100が位置情報送信装置と通信を行うことが可能な地点を示す座標データが含まれている。さらに、各リンクデータには各リンクに相当する道路区間を辿るために必要な距離や時間等に基づいて特定されたコストを示すコストデータが対応付けられている。さらに、各ノードデータには各ノードが示す交差点に対する進入方向および退出方向の組毎に、当該進入方向から交差点に進入し当該退出方向へ退出する場合のコストを示すコストデータが対応付けられている。
【0026】
(2−1)コストデータ:
本実施形態においては、誤りを修正可能である確率が高くなる経路を設定できるようにノードデータに対応付けられるコストデータを調整している。すなわち、本実施形態においては、第1交差点における退出方向を誤った後または曲がるべき第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点で曲がった後に利用者が直進して携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲に到達した後、正しい経路に戻るまでの距離が短いほど第1交差点が経路に含められる確率を高くするようにコストデータを定義する。
【0027】
具体的には、本実施形態においては、第1交差点における退出方向を誤る場合に関するコストと曲がるべき第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点で曲がる場合に関するコストとが算出され、両コストに基づいて交差点のコストが定義される。なお、交差点において直進すべき経路についてのコストを算出する際には、上述の曲がるべき第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点で曲がる場合に関するコストは算出されない。
【0028】
本実施形態において、第1交差点における退出方向を誤る場合に関するコストは、交差点の退出方向を誤る退出方向錯誤確率と、誤って進んだ後、さらに、利用者が携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲に到達した後に正しい経路に引き返すために必要な距離とに基づいて算出される。すなわち、本実施形態においては、コストの算出対象となる交差点に対する進入方向と退出方向とを想定し、想定した退出方向を正しい退出方向とした場合に、他の退出方向に退出する確率を退出方向錯誤確率として定義する。本実施形態においては、正しい退出方向に退出する確率を所定の確率とし、正しい退出方向と他の退出方向との角度が小さいほど当該他の退出方向に誤って退出する確率を小さいとみなして退出方向錯誤確率を定義する。
【0029】
さらに、誤って当該他の退出方向を選択した後に直進した場合を想定し、直進した後に利用者が携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲に到達するのであれば、当該通信可能範囲とコストの算出対象となっている交差点との距離を正しい経路に引き返すために必要な距離とみなす。直進した後に利用者が携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲に到達しないのであれば、所定の上限距離を正しい経路に引き返すために必要な距離とみなす。なお、直進した後に利用者が携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲に到達する場合であっても、通信可能範囲とコストの算出対象となっている交差点との距離が所定の上限距離よりも大きければ、所定の上限距離が正しい経路に引き返すために必要な距離とみなす。
【0030】
そして、以上のようにして算出された退出方向錯誤確率と正しい経路に引き返すために必要な距離との積を算出する処理を、誤りによって選択され得る各退出方向に関して実行し、得られた積の和を算出することによって交差点における退出方向を誤る場合に関するコストを定義する。
【0031】
図2Aは、交差点における退出方向を誤る場合に関するコストの算出法の例を説明するための説明図である。同図2Aにおいて、細い直線は道路を示しており、細い一点鎖線で囲まれた領域Rが携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲を示している。また、コストの算出対象となる交差点を交差点Id(0)として示している。当該交差点Id(0)は、利用者の位置が位置Oであり、正しい経路が太い実線の矢印である場合を仮定した場合に通過する交差点である。従って、交差点Id(0)を算出対象として算出したコストは、当該図2Aに示す正しい経路に関する総コストを算出する際に利用される。なお、太い二点鎖線の矢印は経路を誤った場合の進行方向を示している。
【0032】
このような図2Aに示す例においては、紙面下側から交差点Id(0)に進入する方向が進入方向であり、交差点Id(0)から紙面右側に向けて退出する方向が正しい退出方向である。さらに、図2Aにおいては、交差点Id(0)において正しい退出方向に退出する確率をPd(0)として示し、交差点Id(0)から紙面上側の誤った方向に退出する退出方向錯誤確率をPd(1)、交差点Id(0)から紙面左側の誤った方向に退出する退出方向錯誤確率をPd(2)として示している。ここで、Pd(0)+Pd(1)+Pd(2)=1である。
【0033】
なお、交差点における退出方向を誤る確率を示す退出方向錯誤確率は、利用者が交差点における退出方向を誤認しにくいほど低くなるように設定される。具体的には、本実施形態においては、交差点における正しい退出方向と誤った退出方向との角度差が大きいほど退出方向錯誤確率が低くなるように設定される。例えば、交差点Id(0)において誤って紙面上側に退出する退出方向錯誤確率Pd(1)は、交差点Id(0)において誤って紙面左側に退出する退出方向錯誤確率Pd(2)よりも低くなるように設定される。
【0034】
さらに、交差点Id(0)から紙面上側の誤った方向に退出した後に直進した場合、利用者は携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲Rに到達しないため、正しい経路に引き返すために必要な距離が所定の上限距離Ldmaxとして設定される。さらに、交差点Id(0)から紙面左側の誤った方向に退出した後に直進した場合、利用者は携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲Rに到達するため、正しい経路に引き返すために必要な距離Ld(2)が特定される。そして、コストの算出対象となっている交差点Id(0)において退出方向を誤る場合に関するコストはコストCd=Pd(1)×Ldmax+Pd(2)×Ld(2)として算出される。
【0035】
なお、図2Aにおいては、交差点で曲がるべき場合に退出方向を誤る場合の例であったが、交差点で直進すべき場合に退出方向を誤る場合についても図2Bに示すようにして同様の演算にてコストを定義することができる。なお、図2Bにおいても、細い直線にて道路、細い一点鎖線で囲まれた領域Rにて携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲、Id(0)にてコストの算出対象となる交差点を示している。ここでも、太い実線の矢印で正しい経路、太い二点鎖線の矢印で退出方向を誤った場合の進行方向を示している。図2Bにおいても、交差点Id(0)において正しい退出方向に退出する確率をPd(0)、交差点Id(0)から紙面右側の誤った方向に退出する退出方向錯誤確率をPd(1)、交差点Id(0)から紙面左側の誤った方向に退出する退出方向錯誤確率をPd(2)として示している。ここで、Pd(0)+Pd(1)+Pd(2)=1であり、コストの算出対象となっている交差点Id(0)において退出方向を誤る場合に関するコストはコストCd=Pd(1)×Ldmax+Pd(2)×Ld(2)として算出される。但し、直進すべき交差点で退出方向を誤る確率と曲がるべき交差点で退出方向を誤る確率とは異なり得る。すなわち、図2A,2BにおいてPd(1),Pd(2)は異なり得る。
【0036】
以上のように、本実施形態においては、退出方向錯誤確率が低いほど、また、正しい経路に引き返すために必要な距離が短いほど、コストが低くなるように設定されている。以上のようなコストの定義において、交差点の退出方向を誤る確率を示す退出方向錯誤確率は、利用者が経路を誤る確率に相当するため、利用者が経路を誤る確率が低いほど、コスト算出対象の交差点が経路に含められる確率が高くなるようにコストが定義されていることになる。
【0037】
さらに、正しい経路に引き返すために必要な距離が短いほど、利用者が経路を間違えた場合に正しい経路に復帰することが容易になる。従って、利用者が経路を間違えた場合に正しい経路に容易に復帰可能であるほど、コスト算出対象の交差点が経路に含められる確率が高くなるようにコストが定義されていることになる。
【0038】
さらに、交差点における退出方向を誤った後に直進して携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲に到達しない場合には、正しい経路に引き返すために必要な距離が上限値Ldmaxに設定される。一方、交差点における退出方向を誤った後に直進して携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲に到達する場合には正しい経路に引き返すために必要な距離が上限値Ldmax以下となる。従って、交差点における退出方向を誤った後に直進して到達し得る、携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲の数が多いほどコストが低くなる。このため、利用者が経路を間違えた場合に携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲に到達する確率が高いほど、コスト算出対象の交差点が経路に含められる確率が高くなるようにコストが定義されていることになる。
【0039】
すなわち、以上のような定義に基づいて総コストの小さい経路を選択することにより、交差点における退出方向を誤った後に直進して携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲Rに到達する第1交差点が、交差点における退出方向を誤った後に直進して携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲Rに到達しない第2交差点よりも選ばれやすくなるようにコストが定義されている。
【0040】
一方、本実施形態において、曲がるべき第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点で曲がる場合に関するコストは、曲がるべき交差点の位置を誤る交差点錯誤確率と、誤って進んだ後、さらに、利用者が携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲Rに到達した後に正しい経路に引き返すために必要な距離とに基づいて算出される。
【0041】
図3Aは、曲がるべき第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点で曲がる場合に関するコストの算出法の例を説明するための説明図である。同図3Aにおいて、細い直線は道路を示しており、細い一点鎖線で囲まれた領域Rが携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲を示している。また、コストの算出対象となる交差点を交差点Ii(0)として示している。当該交差点Ii(0)は、利用者の位置が位置Oであり、正しい経路が太い実線の矢印である場合を仮定した場合に通過する交差点である。従って、交差点Ii(0)を算出対象として算出したコストは、当該図3Aに示す経路に関する総コストを算出する際に利用される。なお、太い二点鎖線の矢印は曲がるべき交差点の位置を誤った場合の進行方向を示している。
【0042】
このような図3Aに示す例においては、紙面下側から交差点Ii(0)に進入する方向が進入方向であり、交差点Ii(0)から紙面右側に向けて退出する方向が正しい退出方向である。さらに、図3Aにおいては、交差点Ii(0)において正しい退出方向に退出する確率をPi(0)として示している。
【0043】
さらに、本実施形態においては、交差点Ii(0)以外の交差点で交差点Ii(0)と同様の退出方向に退出する(すなわち、交差点Ii(0)の位置以外の位置に存在する交差点で曲がる)交差点錯誤確率を定義する。本実施形態においては、交差点Ii(0)への進入前に通過する所定数の交差点と、交差点Ii(0)で曲がるべきであるところ直進してしまった場合に到達する所定数の交差点とを交差点錯誤確率の算出対象としている。さらに、交差点Ii(0)での退出方向と、交差点Ii(0)以外の交差点での退出方向との角度が所定角度以内である場合について交差点錯誤確率を算出する。
【0044】
図3Aに示す例においては、コストの算出対象となる交差点Ii(0)に対して到達する前に通過する2個の交差点Ii(−2),Ii(−1)と交差点Ii(0)を直進して到達する2個の交差点Ii(1),Ii(2)とにおいて、紙面右側に退出する場合(図3Aにおいては正しい退出方向と平行な方向に退出する場合)について交差点錯誤確率を算出する。すなわち、交差点Ii(−2)において紙面右側に退出する交差点錯誤確率をPi(−2)、交差点Ii(−1)において紙面右側に退出する交差点錯誤確率をPi(−1)、交差点Ii(1)において紙面右側に退出する交差点錯誤確率をPi(1)、交差点Ii(2)において紙面右側に退出する交差点錯誤確率をPi(2)とする。ここで、Pi(−2)+Pi(−1)+Pi(0)+Pi(1)+Pi(2)=1である。
【0045】
なお、曲がるべき交差点の位置以外の位置に存在する交差点で曲がる確率を示す交差点錯誤確率は、利用者が曲がるべき交差点の位置を誤認しにくいほど低くなるように設定される。具体的には、本実施形態においては、曲がるべき交差点の位置と曲がるべき交差点の位置以外の位置に存在する交差点との距離が長いほど交差点錯誤確率が低くなるように設定されている。例えば、交差点Ii(−2)に関する交差点錯誤確率Pi(−2)は、交差点Ii(−1)に関する交差点錯誤確率Pi(−1)より低くなるように設定されている。
【0046】
また、曲がるべき交差点の位置と曲がるべき交差点の位置以外の位置に存在する交差点との間に存在する交差点の数が多いほど交差点錯誤確率が低くなるように設定される。例えば、交差点Ii(−1)と交差点Ii(0)との間に交差点が存在する場合には、存在しない場合と比較して交差点Ii(−1)に関する交差点錯誤確率Pi(−1)が低くなるように設定される。
【0047】
さらに、曲がるべき交差点の位置における正しい退出方向と曲がるべき交差点の位置以外の位置に存在する交差点について想定される退出方向との角度差が大きいほど交差点錯誤確率が低くなるように設定される。例えば、交差点Ii(0)における正しい退出方向が紙面左側に向けた退出方向であり、交差点Ii(−1)における紙面左側への退出方向が紙面左下を向いている場合には、紙面左側に向けて退出する退出路が存在する(道路の交差角が90度である)場合と比較して交差点Ii(−1)に関する交差点錯誤確率Pi(−1)が低くなるように設定される。
【0048】
さらに、曲がるべき交差点の位置の形状と曲がるべき交差点の位置以外の位置に存在する交差点の形状との類似度が低いほど交差点錯誤確率が低くなるように設定される。例えば、交差点Ii(0)における道路の交差角が90°である場合、道路の交差角が90度ではない交差点Ii(−1)においては、交差角が90である場合と比較して交差点Ii(−1)に関する交差点錯誤確率Pi(−1)が低くなるように設定される。
【0049】
なお、本実施形態においては、上述のように、曲がるべき交差点の位置と曲がるべき交差点の位置以外の位置に存在する交差点との距離と、曲がるべき交差点の位置と曲がるべき交差点の位置以外の位置に存在する交差点との間に存在する交差点の数と、曲がるべき交差点の位置における正しい退出方向と曲がるべき交差点の位置以外の位置に存在する交差点について想定される退出方向との角度差と、曲がるべき交差点の位置の形状と曲がるべき交差点の位置以外の位置に存在する交差点の形状との類似度とを考慮して交差点錯誤確率を定義したが、これらのいずれかまたは任意の組み合わせを考慮して交差点錯誤確率を定義する構成としても良い。
【0050】
さらに、曲がる交差点を誤った後に直進した場合に、利用者が携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲Rに到達した後に正しい経路に引き返すために必要な距離が算出される。図3Aに示す例において、交差点Ii(2),Ii(−1)から紙面右側に退出した後に直進した場合、利用者は携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲Rに到達しないため、正しい経路に引き返すために必要な距離が所定の上限距離Limaxとして設定される。一方、交差点Ii(1),Ii(−2)から紙面右側に退出した後に直進した場合、利用者は携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲Rに到達するため、正しい経路に引き返すために必要な距離Li(1),Li(−2)のそれぞれが特定される。
【0051】
なお、図3Aにおいて、Li(1)=Li1(1)+Li2(1)である。そして、コストの算出対象となっている交差点Ii(0)において曲がるべき交差点の位置以外の位置に存在する交差点で曲がる場合に関するコストはコストCi=Pi(2)×Limax+Pi(1)×Li(1)+Pi(−1)×Limax+Pi(−2)×Li(−2)として算出される。なお、図3Aに示すようなコストと図2Aに示すようなコストとの双方を想定し得る交差点については、両コストの和(Cd+Ci)が交差点に関するコストとなる。むろん、コストの単位は任意であり、適宜規格化される。
【0052】
以上のように、本実施形態においては、交差点錯誤確率が低いほど、また、正しい経路に引き返すために必要な距離が短いほど、コストが低くなるように設定されている。以上のようなコストの定義において、曲がるべき交差点の位置を誤る確率を示す交差点錯誤確率は、利用者が経路を誤る確率に相当し、利用者が経路を誤る確率が低いほど、コスト算出対象の交差点が経路に含められる確率が高くなるようにコストが定義されていることになる。さらに、正しい経路に引き返すために必要な距離が短いほど、利用者が交差点を間違えた場合に正しい経路に復帰することが容易になる。従って、利用者が交差点を間違えた場合に正しい経路に容易に復帰可能であるほど、コスト算出対象の交差点が経路に含められる確率が高くなるようにコストが定義されていることになる。
【0053】
さらに、曲がるべき交差点の位置を誤った後に直進して携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲に到達しない場合には、正しい経路に引き返すために必要な距離が上限値Limaxに設定される。一方、曲がるべき交差点の位置を誤った後に直進して携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲に到達する場合には正しい経路に引き返すために必要な距離が上限値Limax以下となる。従って、曲がるべき交差点の位置を誤った後に直進して到達し得る、携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲の数が多いほどコストが低くなる。このため、利用者が経路を間違えた場合に携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲に到達する確率が高いほど、コスト算出対象の交差点が経路に含められる確率が高くなるようにコストが定義されていることになる。
【0054】
すなわち、以上のような定義に基づいて総コストの小さい経路を選択することにより、曲がるべき交差点の位置を誤った後に直進して携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲Rに到達する第1交差点が、曲がるべき交差点の位置を誤った後に直進して携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲Rに到達しない第2交差点よりも選ばれやすくなるようにコストが定義されている。
【0055】
(2−2)経路設定処理:
制御部20は、以上のように定義されたコストを示すコストデータを含む地図情報30aが予め用意された状態で、経路設定プログラム21を実行することによって、間違えた場合であっても容易に正しい経路に復帰し、確実に目的地に到達可能な経路を設定する。このために、経路設定プログラム21は、地図情報取得部21aと地点情報取得部21bと経路設定部21cとを備えている。地図情報取得部21aは、地図情報30aを取得する処理を制御部20に実現させるモジュールであり、制御部20は、地図情報取得部21aの処理により、経路の設定に必要な情報を適宜取得する。取得された情報は、経路設定部21cの処理によって利用される。
【0056】
地点情報取得部21bは、出発地と目的地とを示す情報を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、利用者が携帯端末100にて経路案内を利用する際に、利用者は携帯端末100を操作して出発地と目的地とを設定する。出発地と目的地とが設定されると、携帯端末100は、当該出発地と目的地とを示す情報を経路設定装置10に対して送信する。制御部20は、地点情報取得部21bの処理により、通信部22を介して携帯端末100が送信する出発地と目的地とを示す情報を取得する。取得された出発地と目的地とを示す情報は、経路設定部21cの処理によって利用される。
【0057】
経路設定部21cは、地図情報30aに基づいてノード間のリンクに相当する道路を通過する際のコストおよびノードが示す交差点を通過する際のコストを特定し、これらのコストに基づいてダイクストラ法等の公知の手法により出発地から目的地までの経路を探索する。すなわち、制御部20は、経路の候補を辿ると仮定した場合の交差点への進入方向と交差点からの退出方向とを特定し、当該進入方向および退出方向に対応する交差点のコストを特定する。また、交差点間の道路を特定する。そして、候補となっている経路上の交差点および道路に関する総コストを特定し、当該候補の中で総コストが最小になる経路を出発地から目的地までの経路として設定する。
【0058】
このとき、コストが上述のように定義されていることにより、交差点における退出方向または曲がるべき交差点の位置を誤った後に直進して地点に到達する第1交差点を、交差点における退出方向または曲がるべき交差点の位置を誤った後に直進して地点に到達しない第2交差点よりも優先して経路に含むように出発地から目的地までの経路が設定されることになる。
【0059】
図3Bは、設定される経路の例を示す図である。同図3Bにおいて、細い直線は道路を示している。また、太い実線の矢印と太い破線の矢印は、出発地Oから目的地Gまでの経路の候補を示している。太い実線の矢印で示す経路の候補は、出発地Oが存在する交差点I0から交差点I1,I2,I3,を通過して目的地Gが存在する交差点I4に到達する経路である。一方、太い破線の矢印で示す経路の候補は、出発地Oが存在する交差点I0から交差点I5,I6,I7,を通過して目的地Gが存在する交差点I4に到達する経路である。図3Bにおいては、両経路における交差点間の距離は同一であり、通過する交差点の数も同一である。また、利用者の視点で両経路を見た場合において、経路は左右対称の形状である。さらに、交差点I1〜I7は十字路であり、太い実線の矢印で示す経路と同じ進入方向から交差点I1に進入する場合における右折および左折に関する退出方向錯誤確率のそれぞれと、太い破線の矢印で示す経路と同じ進入方向から交差点I5に進入する場合における右折および左折に関する退出方向錯誤確率のそれぞれが一致する場合を想定する。
【0060】
さらに、太い実線の矢印で示す経路と同じ進入方向から交差点I3に進入する場合における右折および左折に関する退出方向錯誤確率のそれぞれと、太い破線の矢印で示す経路と同じ進入方向から交差点I7に進入する場合における右折および左折に関する退出方向錯誤確率のそれぞれが一致する場合を想定する。さらに、太い実線の矢印で示す経路と同じ進入方向から交差点I2に進入する場合における直進および左折に関する退出方向錯誤確率のそれぞれと、太い破線の矢印で示す経路と同じ進入方向から交差点I6に進入する場合における直進および右折に関する退出方向錯誤確率のそれぞれが一致する場合を想定する。
【0061】
この場合において、図3Bに示す範囲において領域R1のみが携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲である場合(従って、通信可能範囲としての領域R2は存在していない状態)を想定する。この場合、太い実線の矢印で示す経路を進む利用者が交差点I2にて太い二点鎖線の矢印で示すように誤って直進すると、当該利用者は携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲R1に到達する。一方、太い破線の矢印で示す経路を進む利用者が交差点I6にて太い一点鎖線の矢印で示すように誤って直進すると、当該利用者は携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲に到達しない。従って、太い実線の矢印で示す経路の総コストは太い破線の矢印で示す経路の総コストよりも小さくなり、太い実線の矢印で示す経路は太い破線の矢印で示す経路よりも優先順位の高い候補となる。
【0062】
この例において交差点I2は、退出方向を誤った後に直進して携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲に到達する交差点であるため第1交差点である。一方、交差点I6は退出方向を誤った後に直進して携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲に到達しない交差点であるため第2交差点である。従って、上述のように定義されたコストに基づいて経路を設定することにより、第1交差点を、第2交差点よりも優先して経路に含むように出発地から目的地までの経路を設定することができる。
【0063】
次に、図3Bに示す範囲において領域R2のみが携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲である場合(従って、通信可能範囲としての領域R1は存在していない状態)を想定する。この場合、太い実線の矢印で示す経路を進む利用者が曲がるべき交差点の位置I2を誤り、太い二点鎖線の矢印で示すように交差点I1で誤って曲がった後に直進すると、当該利用者は携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲R2に到達する。一方、太い破線の矢印で示す経路を進む利用者が曲がるべき交差点の位置I6を誤り、太い一点鎖線の矢印で示すように交差点I5で誤って曲がった後に直進すると、当該利用者は携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲に到達しない。従って、太い実線の矢印で示す経路の総コストは太い破線の矢印で示す経路の総コストよりも小さくなり、太い実線の矢印で示す経路は太い破線の矢印で示す経路よりも優先順位の高い候補となる。
【0064】
この例において交差点I2は、曲がるべき交差点の位置であり、当該曲がるべき交差点の位置を誤った後に直進して携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲に到達する交差点であるため第1交差点である。一方、交差点I6は、曲がるべき交差点の位置であり、当該曲がるべき交差点の位置を誤った後に直進して携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲に到達しない交差点であるため第2交差点である。従って、上述のように定義されたコストに基づいて経路を設定することにより、第1交差点を、第2交差点よりも優先して経路に含むように出発地から目的地までの経路を設定することができる。
【0065】
以上のように、経路設定部21cの処理によって制御部20が経路を設定すると、制御部20は、当該経路設定部21cの処理により、当該経路を示す経路情報を生成し、通信部22を介して当該経路情報を携帯端末100に対して送信する。ここで、経路情報は、携帯端末100の現在地と経路上の位置とを比較可能に構成された情報である。従って、携帯端末100においては、位置情報送信装置200と通信可能になった段階で当該経路情報に基づいて、携帯端末100の現在位置が経路上であるか否かを判定することができ、経路上でない場合には利用者に対して警告を出力することによって経路案内を実行することができる。また、経路情報が示す経路は、第1交差点を、第2交差点よりも優先して経路に含むように設定されているため、利用者が経路を間違えた場合であっても正しい経路に容易に復帰可能である。
【0066】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、交差点における退出方向または曲がるべき交差点の位置を誤った後に直進して利用者の現在地を特定可能な地点に到達する交差点を優先して経路に含むように経路探索を行う限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、経路案内中に利用者が利用者の位置を特定するための構成は、位置情報送信装置200と携帯端末100との通信に限定されず、利用者自身が看板等の情報を視認することによって現在地を特定する構成としても良い。この場合、地図情報30aには、当該看板等の情報の視認可能範囲を示す情報が含まれる。
【0067】
さらに、経路の誤りとして考慮する範囲は適宜設定可能である。例えば、交差点の退出方向の誤りとして、交差点における全ての退出方向を考慮する構成の他、正しい退出方向との角度差が所定の範囲内となっている退出方向についてのみ考慮してコストを定義する構成であっても良い。また、曲がるべき交差点の位置以外の位置に存在する交差点として考慮すべき交差点の数も適宜調整可能であるし、曲がるべき交差点の位置と異なる退出方向に曲がる確率を考慮しても良い。
【0068】
さらに、上述のような経路探索以外にも種々の構成によって経路を設定することが可能である。例えば、通常の経路探索によって総コストが小さい複数の経路の候補を抽出し、得られた複数の経路の候補の中からできるだけ第1交差点を多く含む経路を選択する構成であっても良い。すなわち、経路の候補上に存在する交差点を順次特定すると、当該交差点への進入方向と交差点からの退出方向とを特定することができる。そして、これらの進入方向および退出方向が正しいとした場合、交差点に関する経路の誤りが発生した後に利用者が直進する方向を特定することができる。この結果、各交差点を第1交差点あるいは第2交差点のいずれかに分類することができる。そして、経路の候補の中から第1交差点の数が最も多い経路を選択すれば、第1交差点が優先して経路に含まれるように経路を設定することができる。
【0069】
さらに、経路を辿るための移動方法は徒歩に限定されず、電車等による移動が含まれる経路について本発明を適用しても良い。
【0070】
さらに、コストには上述の要素以外にも種々の要素を含めることが可能である。例えば、経路上に携帯端末100と位置情報送信装置200との通信可能範囲が存在する場合に、当該通信可能範囲が存在しない場合よりもコストを小さくする構成であっても良い。
【符号の説明】
【0071】
10…経路設定装置、20…制御部、21…経路設定プログラム、21a…地図情報取得部、21b…地点情報取得部、21c…経路設定部、22…通信部、30…記録媒体、30a…地図情報、100…携帯端末、200…位置情報送信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の現在地を特定可能な地点を示す情報を含む地図情報を取得する地図情報取得手段と、
出発地と目的地とを示す情報を取得する地点情報取得手段と、
前記地図情報に基づいて、
交差点における退出方向または曲がるべき交差点の位置を誤った後に直進して前記地点に到達する第1交差点を、交差点における退出方向または曲がるべき交差点の位置を誤った後に直進して前記地点に到達しない第2交差点よりも優先して含むように前記出発地から前記目的地までの経路を設定する経路設定手段と、
を備える経路設定装置。
【請求項2】
前記経路設定手段は、前記第1交差点における退出方向を誤った後または曲がるべき前記第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点で曲がった後に直進して前記地点に到達した後、正しい経路に戻るまでの距離が短いほど前記第1交差点が前記経路に含められる確率を高くして前記経路を設定する、
請求項1に記載の経路設定装置。
【請求項3】
前記経路設定手段は、前記第1交差点における退出方向を誤った後または曲がるべき前記第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点で曲がった後に直進して到達し得る前記地点の数が多いほど前記第1交差点が前記経路に含められる確率を高くして前記経路を設定する、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の経路設定装置。
【請求項4】
前記地点は、無線通信によって前記利用者の現在地を特定する情報を送信する装置と通信可能な地点である、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の経路設定装置。
【請求項5】
前記経路設定手段は、前記第1交差点における退出方向を誤る退出方向錯誤確率と、曲がるべき前記第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点で曲がる交差点錯誤確率とのいずれかまたは双方が低いほど前記第1交差点が前記経路に含められる確率を高くして前記経路を設定する、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の経路設定装置。
【請求項6】
前記経路設定手段は、
前記第1交差点と前記第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点との距離が長いほど低くなる確率と、
前記第1交差点と前記第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点との間に存在する交差点の数が多いほど低くなる確率と、
前記第1交差点で曲がるべき方向と前記第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点で想定される退出方向との角度差が大きいほど低くなる確率と、
前記第1交差点の形状と前記第1交差点の位置以外の位置に存在する交差点の形状との類似度が低いほど低くなる確率と、
のいずれかまたは組み合わせによって構成された前記交差点錯誤確率に基づいて前記経路を設定する、
請求項5に記載の経路設定装置。
【請求項7】
利用者の現在地を特定可能な地点を示す情報を含む地図情報を取得する地図情報取得工程と、
出発地と目的地とを示す情報を取得する地点情報取得工程と、
前記地図情報に基づいて、
交差点における退出方向または曲がるべき交差点の位置を誤った後に直進して前記地点に到達する第1交差点を、交差点における退出方向または曲がるべき交差点の位置を誤った後に直進して前記地点に到達しない第2交差点よりも優先して含むように前記出発地から前記目的地までの前記経路を設定する経路設定工程と、
を含む経路設定方法。
【請求項8】
利用者の現在地を特定可能な地点を示す情報を含む地図情報を取得する地図情報取得機能と、
出発地と目的地とを示す情報を取得する地点情報取得機能と、
前記地図情報に基づいて、
交差点における退出方向または曲がるべき交差点の位置を誤った後に直進して前記地点に到達する第1交差点を、交差点における退出方向または曲がるべき交差点の位置を誤った後に直進して前記地点に到達しない第2交差点よりも優先して含むように前記出発地から前記目的地までの前記経路を設定する経路設定機能と、
をコンピュータに実現させる経路設定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−174834(P2011−174834A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39592(P2010−39592)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】