説明

経路関連情報提供装置、経路関連情報提供方法、経路関連情報提供プログラムおよび経路案内システム

【課題】省燃費運転のための運転操作に対する依存度が異なる経路を提供可能とする。
【解決手段】区間と、当該区間を車両が走行した場合の燃費とを対応付けて示す燃費情報を、複数の区間のそれぞれについて複数取得し、前記燃費情報が示す燃費の偏差が小さい区間ほど構成区間として採用されやすい第1経路探索手法により探索された第1経路に関する情報を提供し、前記燃費情報が示す燃費の偏差が大きい区間ほど構成区間として採用されやすい第2経路探索手法により探索された第2経路に関する情報を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路関連情報提供装置、経路関連情報提供方法、経路関連情報提供プログラムおよび経路案内システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の燃費が良好となるような経路を探索するカーナビゲーション装置が提案されている(例えば、特許文献1)。このカーナビゲーション装置では、車両の走行パターンや車種を考慮して燃費を推定するため、車両の走行パターンや車種を考慮しない場合よりも高精度に燃費が良好な経路を探索できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−107459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように運転操作に対する燃費の依存度を考慮することなく経路を探索すると、省燃費運転のための運転操作に対する運転者の意識に相応しくない経路が提供されるという問題があった。
ここで、運転操作に対する燃費の依存度は経路によって異なる。例えば、平坦な直線道路における燃費よりも、起伏やカーブの多い道路における燃費の方が運転者の運転操作に大きく依存する。運転操作に対する燃費の依存度が大きい経路を走行する場合には、運転者の運転操作次第で燃費が良くも悪くもなり得る。このような経路は、運転操作に気を遣わなければ良好な燃費が得られないため、運転操作に気を遣うことにより良好な燃費が得られた場合の達成感を味わいたいと考えるような運転者に好適である。
一方、運転操作に対する燃費の依存度が小さい経路を走行する場合には、運転者の運転操作に依存せず安定した燃費が得られる可能性が高い。この場合、運転操作に気を遣わずとも安定した燃費が得られるため、運転操作に気を遣うことなく気軽に運転したいと考えるような運転者に好適である。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたものであり、省燃費運転のための運転操作に対する依存度が異なる経路を提供可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するため、本発明において、燃費情報取得手段は、区間と、当該区間を車両が走行した場合の燃費とを対応付けて示す燃費情報を、複数の区間のそれぞれについて複数取得する。第1経路関連情報提供手段は、燃費情報が示す燃費の偏差が小さい区間ほど構成区間として採用されやすい第1経路探索手法により探索された第1経路に関する情報を提供する。これにより、運転者の運転操作に対する燃費の依存度の小さい第1経路に関する情報を運転者に提供できる。例えば、省燃費運転のための運転操作に気を遣うことなく気軽に運転したいと考えるような運転者は、燃費の依存度の小さい第1経路を選択できる。一方、第2経路関連情報提供手段は、燃費情報が示す燃費の偏差が大きい区間ほど構成区間として採用されやすい第2経路探索手法により探索された第2経路に関する情報を提供する。これにより、運転者の運転操作に対する燃費の依存度の大きい第2経路に関する情報を運転者に提供できる。例えば、運転操作に気を遣うことにより良好な燃費が得られた場合の達成感を味わいたいと考えるような運転者は、運転者の運転操作に対する燃費の依存度の大きい第2経路を選択できる。
【0006】
燃費情報取得手段は、燃費情報を複数の区間のそれぞれについて複数取得すればよく、単一の車両が区間を複数回走行した場合のそれぞれの走行における燃費情報を取得してもよいし、複数の車両が区間を単数回または複数回走行した場合のそれぞれの走行における燃費情報を取得してもよい。また、燃費情報取得手段は、車両から燃費情報を複数取得してもよいし、データベースに蓄積された燃費情報を複数取得してもよい。燃費とは車両の走行にともなって消費される燃料の消費量を示す指標であり、例えば車両が単位距離走行するのに消費される燃料の消費量や、車両がある区間全体を走行するのに消費される燃料の消費量をであってもよい。これらの場合、燃費の値が小さくなるほど燃費が良いことを示し、燃費の値が大きくなるほど燃費が悪いことを示す。さらに、燃費は、単位量だけ燃料を消費した場合に車両が走行可能な距離であってもよい。この場合、燃費の値が大きくなるほど燃費が良いことを示し、燃費の値が小さくなるほど燃費が悪いことを示す。燃費の偏差は種々の統計指標に基づいて把握でき、例えば燃費の分散や標準偏差や半値幅や燃費の最小値から最大値までの値域の広さ等に基づいて把握できる。経路関連情報提供装置は車両に備えられてもよいし、車両以外の交通情報管理センター等に備えられてもよい。後者の場合、燃費情報取得手段は車両から所定の通信回線を介して燃費情報を取得することとなる。また、経路関連情報提供装置が車両に備えられる場合、燃費情報取得手段は他の車両から所定の通信回線を介して燃費情報を取得してもよい。
【0007】
第1経路関連情報提供手段と第2経路関連情報提供手段とが第1経路に関する情報と第2経路に関する情報と双方とも提供してもよい。これにより、運転者は、第1経路に関する情報と第2経路に関する情報とを比較することにより、好適な経路を選択できる。また、予め第1経路と第2経路のいずれかを選択しておき、当該選択された経路に関する情報を第1経路関連情報提供手段または第2経路関連情報提供手段が提供するようにしてもよい。さらに、第1経路関連情報提供手段と第2経路関連情報提供手段とのいずれかが先に第1経路または第2経路に関する情報を提供し、当該情報に運転者が満足しない場合等には、もう一方の第1経路または第2経路に関する情報を提供するようにしてもよい。
【0008】
第1経路に関する情報や第2経路に関する情報を提供するとは、経路関連情報提供装置に接続された表示装置や音声出力装置にて出力することであってもよいし、経路関連情報提供装置と通信回線を介して接続されたナビゲーション装置等に送信することであってもよい。第1経路に関する情報と第2経路に関する情報とは、第1経路と第2経路の構成区間を特定する経路情報を含んでもよいし、第1経路と第2経路の全体または一部の構成区間を車両が走行した場合の所要時間や走行距離や燃費や燃費の偏差等を示す情報を含んでもよい。第1経路と第2経路の構成区間を特定する経路情報が提供されれば、当該経路情報に基づいて運転者は第1経路と第2経路において車両を走行させることができる。第1経路と第2経路の全体または一部の構成区間を車両が走行した場合の所要時間や走行距離や燃費や燃費の偏差等を示す情報が提供されれば、運転者は第1経路と第2経路とのいずれかを走行予定経路として選択する指針を得ることができる。
【0009】
また、第2経路関連情報提供手段は、燃費の偏差が大きく、かつ、燃費の最良値が良い区間ほど構成区間として採用されやすい第2経路探索手法によって第2経路を探索してもよい。これにより、運転操作に気を遣った場合に良好な燃費が得られる第2経路が提供できる。すなわち、第2経路は運転操作に依存して燃費が大きく変動し得る経路であるが、さらに構成区間の燃費の最良値が良ければ運転操作に気を遣った場合に良好な燃費を得ることができる。従って、運転操作に気を遣うことにより良好な燃費が得られた場合の達成感を味わいたいと考えるような運転者に好適な第2経路を提供できる。なお、燃費の最良値が良いとは、例えば車両が単位距離走行するのに消費される燃料の消費量を燃費として採用した場合、区間を走行した場合の燃料の消費量の最小値が小さいことを意味する。
【0010】
さらに、第1経路関連情報提供手段は、燃費の偏差が所定値よりも大きい区間については、燃費の最悪値が良く、かつ、燃費の偏差が小さい区間であるほど第1経路の構成区間として採用されやすく、燃費の偏差が所定値以下の区間については、燃費の平均値が良く、かつ、燃費の偏差が小さい区間であるほど第1経路の構成区間として採用されやすい第1経路探索手法によって第1経路を探索してもよい。燃費の偏差が所定値よりも大きい区間を車両が走行する場合には、運転操作に依存して燃費が大きく変動し得るが、当該区間についての燃費の最悪値が良いほど燃費が大きく変動しても燃費が悪化する可能性は低い。すなわち、燃費の偏差が所定値よりも大きい区間が第1経路の構成区間として採用される場合でも、燃費が大きく悪化することが防止できる。従って、運転操作に気を遣わずとも気軽に良好な省燃費を実現したいと考えるような運転者に好適な第1経路を探索できる。例えば、所定値は、全区間における燃費の偏差の平均値や、起伏やカーブ等の道路形状が標準的な区間における燃費の偏差等であってもよい。なお、燃費の最悪値が良いとは、例えば車両が単位距離走行するのに消費される燃料の消費量を燃費として採用した場合、区間を走行した場合の燃料の消費量の最大値が小さいことを意味する。
一方、燃費の偏差が所定値以下の区間を車両が走行する場合には、運転操作に依存して燃費が平均値から大きく変動する可能性が低く、実際の燃費が平均値に近い値となることが予測できる。従って、実際の燃費に近い燃費の平均値に基づいて第1経路を探索できる。
【0011】
また、本発明は、上述の経路関連情報提供装置とナビゲーション装置とを含む経路情報案内システムにおいても具現化できる。例えば、ナビゲーション装置が、経路関連情報提供装置から第1経路と第2経路とに関する情報を取得し、これらの情報を提示することにより、第1経路と第2経路のいずれかの選択を受け付けるようにしてもよい。これにより、運転者は、実際に探索された第1経路と第2経路とに関する情報を比較して、運転操作の意識の高さに応じた経路を選択することができる。そして、選択された第1経路または第2経路についての経路案内を行うようにすれば、運転者は運転操作の意識の高さに応じた経路において車両を走行させることができる。むろん、ナビゲーション装置が予め第1経路と第2経路とのいずれに関する情報の提供を受けるかを選択し、選択された経路に関する情報を経路関連情報提供装置の第1経路関連情報提供手段または第2経路関連情報提供手段が提供してもよい。
【0012】
なお、本発明のように、燃費の偏差に基づいて探索された経路に関する情報を提供する手法は、この処理を行う方法やプログラムとしても適用可能である。また、本発明の手法を適用した経路関連情報提供装置、方法、プログラムは、単独の装置として実現される場合もあれば、複数の装置として実現される場合もある。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、経路関連情報提供装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】経路案内システムを示すブロック図である。
【図2】燃費のヒストグラムをフィッティングした正規分布曲線を示すグラフである。
【図3】経路案内処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)経路案内システムの構成:
(1−1)ナビゲーション装置の構成:
(1−2)サーバの構成:
(1−3)経路案内処理:
(2)他の実施形態:
【0015】
(1)経路案内システムの構成:
図1は、車両に備えられたナビゲーション装置100と経路関連情報提供装置としてのサーバ10とを含む経路案内システム1の構成を示すブロック図である。
【0016】
(1−1)ナビゲーション装置の構成:
ナビゲーション装置100は道路を走行する複数の車両に搭載されている。ナビゲーション装置100は、CPUとRAMとROM等を備える制御部200と通信部220と記録媒体300とを備えており、当該記録媒体300やROMに記録されたプログラムを制御部200が実行する。制御部200は、このプログラムの一つとしてナビゲーションプログラム210を実行する。通信部220は、サーバ10と通信するための回路によって構成される。制御部200は、通信部220を介してサーバ10と通信を行う。記録媒体300は、地図情報300aを記録する。地図情報300aには、車両が走行する道路上に設定されたノードを示すノードデータや、ノード同士の連結するリンクに関する情報を含むリンクデータや、目的地となり得る施設を示す施設データ等が含まれている。なお、本実施形態においてリンクは区間に対応する。
【0017】
車両は、GPS受信部410と車速センサ420とECU(Engine Control Unit)430とUI(User Interface)部440とを備える。GPS受信部410は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の現在位置を算出するための信号を制御部200に出力する。車速センサ420は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を制御部200に出力する。制御部200は、GPS受信部410と車速センサ420等の出力信号に基づいて車両の現在位置と車速とを取得する。ECU430は、エンジンにおける燃料噴射量等を制御するコンピュータである。制御部200は、ECU430から燃料噴射量を示す信号を取得する。UI部440は、運転者にUI画像を表示させる表示部と、運転者からの操作を受け付ける操作部とを有する。
【0018】
ナビゲーションプログラム210は、燃費通知部210aと経路要求部210bと経路関連情報取得部210cと経路案内部210dとを含む。
燃費通知部210aの機能により制御部200は、リンクに対する車両の進入と退出を検知し、進入から退出までの期間における燃料噴射量の累積値をリンクの長さで除算することにより、リンクにおける単位距離を車両が走行した場合の燃料の消費量を示す燃費を算出する。リンクの長さとは、車両がリンクに進入してから退出するまでに走行する距離であり、地図情報300aのリンクデータに規定されている。燃費通知部210aの機能により制御部200は、車両の燃費とリンクとを対応付けた燃費情報をサーバ10に送信する。
【0019】
経路要求部210bの機能により制御部200は、UI部440を介して運転者から経路探索操作を受け付ける。経路探索操作によって、経路種別(第1経路と第2経路との区別)の選択と、目的地の指定とが受け付けられる。経路要求部210bの機能により制御部200は、GPS受信部410の出力信号等に基づいて取得した車両の現在位置である出発地と目的地と経路種別とを示す経路要求情報を生成し、当該経路要求情報を通信部220を介してサーバ10に送信する。なお、第1経路と第2経路とは、それぞれ後述する第1経路探索手法と第2経路探索手法によって探索された経路である。
【0020】
経路関連情報取得部210cは、サーバ10から第1経路と第2経路のいずれかに関する情報を取得する機能を制御部200に実行させるモジュールである。経路関連情報取得部210cの機能により制御部200は、サーバ10から送信された経路情報を受信する。経路情報は、前記経路要求情報に応じてサーバ10が返信する情報であり、経路要求情報に応じてサーバ10が探索した経路に関する情報である。具体的には、経路情報は経路要求情報に示された出発地から目的地までの経路を構成するリンクである構成リンクを特定する情報を含む。経路案内部210dは、第1経路または第2経路についての経路案内を行う機能を制御部200に実行させるモジュールである。すなわち、経路案内部210dの機能により制御部200は、経路情報に基づく経路案内をUI部440にて行わせる。
【0021】
(1−2)サーバの構成:
サーバ10は、例えば各車両に備えられたナビゲーション装置100から送信される各種情報を集中的に管理する管理センターに備えられている。サーバ10は、CPUとRAMとROM等を備える制御部20と通信部22と記録媒体30とを備えており、当該記録媒体30やROMに記録されたプログラムを制御部20が実行する。制御部20は、このプログラムの一つとして経路関連情報提供プログラム21を実行する。通信部22は、ナビゲーション装置100と通信するための回路によって構成される。制御部20は、通信部22を介してナビゲーション装置100と通信を行う。記録媒体30は、燃費DB(Database)30aと地図情報30bとを記録する。地図情報30bには、ナビゲーション装置100の記録媒体300に記録された地図情報300aと同様のデータが含まれる。燃費DB30aには、地図情報30bのリンクデータに示される各リンクを車両が走行した場合の燃費を示す燃費情報が蓄積される。
【0022】
経路関連情報提供プログラム21は、燃費情報取得部21aと第1経路関連情報提供部21bと第2経路関連情報提供部21cとを含む。燃費情報取得部21aは、リンクと、当該リンクを車両が走行した場合の燃費とを対応付けて示す燃費情報を、複数のリンクのそれぞれについて複数取得する機能を制御部20に実行させるためのモジュールである。上述のように燃費通知部210aの機能により、各車両に備えられたナビゲーション装置100は各車両がリンクを走行するごとに当該リンクにおける燃費を示す燃費情報を送信する。燃費情報取得部21aの機能により制御部20は、燃費情報を受信して燃費DB30aに蓄積する。さらに、燃費情報取得部21aの機能により制御部20は、所定の時間周期で燃費DB30aに蓄積された燃費情報を複数取得し、統計処理することにより、各リンクについて燃費の統計値を算出する。ここでは燃費の統計値として、燃費の分布が正規分布をとると仮定した場合の標準偏差σと平均値Caveと最小値としての最良値Cminと最大値としての最悪値Cmaxとを算出し、燃費DB30aに記録する。下記の表1は燃費DB30aの例を示す。
【0023】
【表1】

前記の表1に示すように、燃費DB30aにおいて、リンク(L1,L2・・)と、当該リンクを車両が走行した場合の燃費とを対応付けて示す燃費情報が蓄積されている。これらの燃費情報は、複数のリンクのそれぞれについて複数蓄積されている。また、各燃費情報には、リンクを走行した車両(V1,V2・・)と走行日とが対応付けられている。さらに、燃費DB30aにおいては、リンクごとに、燃費の標準偏差σと平均値Caveと最良値Cminと最悪値Cmaxとが記録されている。なお、本実施形態の燃費は単位距離あたりの燃料の消費量(単位:ml/km)を示すため、燃費の最大値が最悪値Cmaxをなし、燃費の最小値が最良値Cminをなす。例えば、表1のリンク(L1)について、燃費の最大値(46)が最悪値Cmaxなし、燃費の最小値(25)が最良値Cminをなす。
【0024】
第1経路関連情報提供部21bは、燃費の偏差が所定値よりも大きいリンクについては燃費の最悪値が良く、かつ、燃費の偏差が小さいリンクであるほど構成リンクとして採用されやすく、燃費の偏差が所定値以下のリンクについては燃費の平均値が良く、かつ、燃費の偏差が小さいリンクであるほど構成リンクとして採用されやすい第1経路探索手法により探索した第1経路に関する情報を提供する機能を制御部20に実行させるためのモジュールである。第1経路関連情報提供部21bの機能により制御部20は、ナビゲーション装置100から送信された経路要求情報にて、選択された経路種別として第1経路が指定されている場合には、当該経路要求情報に示される出発地と目的地とを取得し、出発地から目的地までの第1経路を第1経路探索手法により探索する。第1経路関連情報提供部21bの機能により制御部20は、第1経路探索手法のための燃費偏差コストと燃費コストとを燃費DB30aに記録された燃費の統計値に基づいて算出する。
【0025】
第1経路関連情報提供部21bの機能により制御部20は、第1経路探索手法のための燃費偏差コストと燃費コストとを、下記の表2の上欄の数式に準じてリンクごとに算出する。
【表2】

すなわち、第1経路探索手法における燃費偏差コストは、各リンクについての標準偏差σに正の係数aを乗算した値を、正のバイアス定数bに加算した値とされる。燃費偏差コストは、標準偏差σについての線形単調増加関数であり、常に正の値をとる。
図2A,2Bは、燃費のヒストグラムをフィッティングした正規分布曲線を示すグラフである。図2A,2Bの縦軸は燃費が得られた回数(度数)を示し、横軸は燃費を示す。図2Aに示すように燃費の標準偏差σが所定値TH以下であるリンクについては、当該リンクを車両が走行した場合の燃費の平均値Caveに正の係数kを乗算した値を第1経路探索手法における燃費コストとする。一方、図2Bに示すように燃費の標準偏差σが所定値THよりも大きいリンクについては、当該リンクを車両が走行した場合の燃費の最悪値Cmaxに前記係数kを乗算した値を燃費コストとする。燃費は常に正であるため、燃費コストも常に正の値をとる。なお、単位距離あたりの燃料の消費量を示す燃費の平均値Caveや最悪値Cmaxにリンクの長さを乗算した値を燃費コストとして算出することにより、リンク全体を走行した場合に消費される燃料の消費量に即した燃費コストをリンクごとに算出してもよい。
【0026】
第1経路関連情報提供部21bの機能により制御部20は、出発地から目的地までを接続するリンクの組み合わせである第1経路を、ダイクストラ法やA*アルゴリズム、それらの改良型アルゴリズムなどを利用して探索する。このとき第1経路関連情報提供部21bの機能により制御部20は、燃費偏差コストと燃費コストと、他のコスト(旅行時間やリンクの長さに応じたコスト等)との合計であるリンクコストをリンクごとに算出し、さらに各リンクについてのリンクコストの合計であるトータルコストを最小化させるリンクの組み合わせを第1経路として探索する。第1経路関連情報提供部21bの機能により制御部20は、探索した第1経路を構成するリンクである構成リンクを特定する経路情報を、第1経路に関する情報として生成する。
【0027】
ここで、第1経路探索手法における燃費偏差コストは、燃費の標準偏差σに関する単調増加関数で与えられるため、燃費の標準偏差σが小さいリンクほど燃費偏差コストによるトータルコストの増加を抑制できる。すなわち、第1経路関連情報提供部21bの機能により制御部20は、各リンクについて燃費の標準偏差σが小さいほど増加が抑制される燃費偏差コストを算出し、当該リンクごとの燃費偏差コストを合計したトータルコストを最小化する第1経路を探索する。これにより、燃費の標準偏差σが小さいリンクほど第1経路の構成リンクとして採用されやすくなる。さらに、燃費の標準偏差σが所定値TH以下であるリンクについての燃費コストは燃費の平均値Caveに比例するため、燃費の標準偏差σが所定値TH以下であるリンクについては燃費の平均値Caveが良いリンクほど第1経路の構成リンクとして採用されやすくなる。一方、燃費の標準偏差σが所定値THよりも大きいリンクについての燃費コストは燃費の最悪値Cmaxに比例するため、燃費の標準偏差σが所定値THよりも大きいリンクについては燃費の最悪値Cmaxが良いリンクほど第1経路の構成リンクとして採用されやすくなる。
【0028】
さらに、第1経路関連情報提供部21bの機能により制御部20は、第1経路の構成リンクを特定する経路情報をナビゲーション装置100に送信する。すなわち、第1経路関連情報提供部21bの機能により制御部20が経路要求情報を送信したナビゲーション装置100に第1経路の構成リンクを特定する経路情報を送信することにより、当該ナビゲーション装置100の経路案内部210dにより第1経路の経路案内が行われる。
【0029】
第2経路関連情報提供部21cは、燃費の最良値が良く、かつ、燃費の偏差が大きいリンクほど構成リンクとして採用されやすい第2経路探索手法により探索した第2経路に関する情報を提供する機能を制御部20に実行させるためのモジュールである。第2経路関連情報提供部21cの機能により制御部20は、ナビゲーション装置100から送信された経路要求情報にて、選択された経路種別として第2経路が指定されている場合には、当該経路要求情報に示される出発地と目的地とを取得し、出発地から目的地までの第2経路を探索する。第2経路関連情報提供部21cの機能により制御部20は、第2経路探索手法のための燃費偏差コストと燃費コストとを燃費DB30aに記録された燃費の統計値に基づいて算出する。
【0030】
第2経路関連情報提供部21cの機能により制御部20は、第2経路探索手法のための燃費偏差コストと燃費コストとを、前記の表2の下欄の数式に準じてリンクごとに算出する。すなわち、第2経路探索手法における燃費偏差コストは、各リンクにおける燃費の標準偏差σに係数aを乗算した値を、バイアス定数bから減算した値とされる。燃費偏差コストは、標準偏差σについての線形単調減少関数であり、常に正の値をとるように係数aとバイアス定数bの値が設定されている。第2経路探索手法における燃費コストは、燃費の標準偏差σの大きさに拘わらず、リンクを車両が走行した場合の燃費の最良値Cminに係数kを乗算した値とされる。本実施形態の燃費は単位距離あたりの燃料の消費量を示すため、燃費の最小値が最良値Cminをなす。なお、単位距離あたりの燃料の消費量を示す燃費の最良値Cminにリンクの長さを乗算した値を燃費コストとして算出することにより、リンク全体を走行した場合に消費される燃料の消費量に即した燃費コストをリンクごとに算出してもよい。第2経路探索手法における燃費コストも常に正の値をとる。第2経路関連情報提供部21cの機能により制御部20は、出発地から目的地までを接続するリンクの組み合わせである第2経路であって、第1経路関連情報提供部21bによる第1経路探索手法で用いたダイクストラ法やA*アルゴリズム、それらの改良型アルゴリズムなどを利用して第2経路を探索する。すなわち、第1経路探索手法と第2経路探索手法とでは表2に対比されるように燃費偏差コストと燃費コストとが異なる。第2経路関連情報提供部21cの機能により制御部20は、探索した第2経路を構成するリンクである構成リンクを特定する経路情報を、第2経路に関する情報として生成する。
【0031】
ここで、第2経路関連情報提供部21cの機能により制御部20は、標準偏差σについて単調減少する燃費偏差コストと、燃費の最良値Cminに比例する燃費コストと、他のコストとの合計であるリンクコストをリンクごとに算出し、さらに各リンクについてのリンクコストの合計であるトータルコストを最小化させるリンクの組み合わせを第2経路として探索する。すなわち、第2経路関連情報提供部21cの機能により制御部20は、各リンクについて燃費の標準偏差σが大きいほど増加が抑制される燃費偏差コストを算出し、当該リンクごとの燃費偏差コストを合計したトータルコストを最小化する第2経路を探索する。これにより、燃費の標準偏差σが大きいリンクほど第2経路の構成リンクとして採用されやすくなる。さらに、燃費コストは燃費の最良値Cminに比例するため、燃費の最良値Cminが良いリンクほど第2経路の構成リンクとして採用されやすくなる。
【0032】
第2経路関連情報提供部21cの機能により制御部20は、第2経路の構成リンクを特定する経路情報をナビゲーション装置100に送信する。すなわち、第2経路関連情報提供部21cの機能により制御部20が経路要求情報を送信したナビゲーション装置100に第2経路の構成リンクを特定する経路情報を送信することにより、当該ナビゲーション装置100の経路案内部210dにより第2経路の経路案内が行われる。
【0033】
以上説明したように本実施形態においては、制御部20は第1経路関連情報提供部21bと第2経路関連情報提供部21cとを実行可能であり、第1経路関連情報提供部21bの機能により制御部20は燃費の標準偏差σが小さいリンクほど構成リンクとして採用されやすい第1経路探索手法により探索された第1経路に関する情報を提供する。これにより、運転者の省燃費運転のための運転操作に対する燃費の依存度の小さい第1経路に関する情報を運転者に提供でき、運転操作に対する意識の低い運転者に好適な情報を提供できる。一方、第2経路関連情報提供部21cの機能により制御部20は、燃費の偏差が大きいリンクほど構成リンクとして採用されやすい第2経路探索手法により探索された第2経路に関する情報を提供する。これにより、運転者の運転操作に対する燃費の依存度の大きい第2経路に関する情報を運転者に提供でき、運転操作に対する意識の高い運転者に好適な情報を提供できる。以上のように、第1経路と第2経路とに関する情報を提供することにより、運転者の運転操作に対する意識に相応しい経路に関する情報を提供できる。
【0034】
また、第2経路関連情報提供部21cの機能により制御部20は、燃費の標準偏差σが大きく、かつ、燃費の最良値Cminが良いリンクほど構成リンクとして採用されやすい第2経路探索手法によって第2経路を探索する。これにより、運転操作に気を遣った場合に良好な燃費が得られる第2経路を提供できる。すなわち、第2経路は運転操作に依存して燃費が大きく変動し得る経路であるが、さらに構成リンクの燃費の最良値が良ければ運転操作に気を遣った場合に良好な燃費を得ることができる。従って、運転操作に気を遣うことにより良好な燃費が得られた場合の達成感を味わいたいと考えるような運転者に好適な第2経路を提供できる。
【0035】
一方、第1経路関連情報提供部21bの機能により制御部20は、燃費の標準偏差σが所定値THよりも大きいリンクについては燃費の最悪値Cmaxが良く、かつ、燃費の標準偏差σが小さいリンクであるほど第1経路の構成リンクとして採用されやすく、燃費の標準偏差σが所定値TH以下のリンクについては燃費の平均値Caveが良く、かつ、燃費の標準偏差σが小さいリンクであるほど第1経路の構成リンクとして採用されやすい第1経路探索手法によって第1経路を探索する。燃費の標準偏差σが所定値THよりも大きいリンクを車両が走行する場合には、運転操作に依存して燃費が大きく変動し得るが、当該リンクについての燃費の最悪値Cmaxが良いほど燃費が大きく変動しても燃費が大きく悪化する可能性は低い。すなわち、燃費の標準偏差σが所定値THよりも大きいリンクが第1経路の構成リンクとして採用される場合でも、燃費が大きく悪化することが防止できる。従って、運転操作に気を遣わずとも気軽に良好な燃費を実現したいと考えるような運転者に好適な第1経路を探索できる。
一方、燃費の標準偏差σが所定値TH以下のリンクを車両が走行する場合には、運転操作に依存して燃費が平均値Caveから大きく変動する可能性が低く、実際の燃費が平均値Caveに近い値となることが予測できる。従って、実際の燃費に近い燃費の平均値Caveに基づいて第1経路を探索できる。
【0036】
(1−3)経路案内処理:
図3Aはナビゲーション装置100が実行する経路要求処理のフローチャートである。ステップS100において、経路要求部210bの機能により制御部200は、UI部440を介して運転者から経路探索操作を受け付ける。ここでは、経路探索操作により経路種別の選択と、目的地の指定とを受け付ける。例えば、UI部440により、"気軽に良好な燃費が実現できる経路をご希望の場合には第1経路を選択して下さい"、"運転操作次第で良好な燃費が実現できる経路をご希望の場合には第2経路を選択して下さい"等のメッセージを出力する。ステップS110において、経路要求部210bの機能により制御部200は、経路種別として第1経路が選択されたか否かを判定する。第1経路が選択されたと判定した場合には、経路要求部210bの機能により制御部200は、ステップS120において選択された経路種別として第1経路を指定した経路要求情報をサーバ10に送信する。一方、第2経路が選択されたと判定した場合には、経路要求部210bの機能により制御部200は、ステップS130において選択された経路種別として第2経路を指定した経路要求情報をサーバ10に送信する。以上により経路要求処理が終了する。
【0037】
図3Bは経路要求情報に応じてサーバ10が実行する経路関連情報提供処理のフローチャートである。なお、経路関連情報提供処理を実行する時点で、多数の車両から送信された燃費情報を燃費情報取得部21aの機能により制御部20が複数取得しており、複数の燃費情報が燃費DB30aに蓄積されている。ステップS200において、経路関連情報提供プログラム21の機能により制御部20は、ナビゲーション装置100から経路要求情報を受信する。ステップS210において、経路関連情報提供プログラム21の機能により制御部20は、経路要求情報において、選択された経路種別として第1経路が指定されているか否かを判定する。
【0038】
経路要求情報において、選択された経路種別として第1経路が指定されていると判定された場合、ステップS220において、第1経路関連情報提供部21bの機能により制御部20は、前記の表2の上欄の数式に準じて燃費DB30aに記録された燃費の統計値に基づいて各リンクについての燃費偏差コストと燃費コストとを算出する。すなわち、第1経路関連情報提供部21bの機能により制御部20は、各リンクにおける燃費の標準偏差σに係数aを乗算した値をバイアス定数bに加算した値を燃費偏差コストとして算出する。さらに、第1経路関連情報提供部21bの機能により制御部20は、燃費の標準偏差σが所定値TH以下であるリンクについては燃費の平均値Caveに係数kを乗算した値を燃費コストとして算出し、燃費の標準偏差σが所定値THよりも大きいリンクについては燃費の最悪値Cmaxに係数kを乗算した値を燃費コストとして算出する。さらに、第1経路関連情報提供部21bの機能により制御部20は、旅行時間やリンクの長さに応じた他のコストを地図情報30bから取得する。本実施形態において所定値THは、起伏やカーブ等の道路形状が標準的な区間における燃費の標準偏差σに相当する。従って、標準よりも起伏やカーブ等の多い区間については燃費の最悪値Cmaxに基づく燃費コストが算出され、標準よりも起伏やカーブ等の少ない区間については燃費の平均値Caveに基づく燃費コストが算出される。
【0039】
ステップS230において、第1経路関連情報提供部21bの機能により制御部20は、燃費の標準偏差σについて単調増加する燃費偏差コストと、燃費の平均値Caveまたは最悪値Cmaxに比例する燃費コストと、他のコストとの合計であるリンクコストをリンクごとに算出する。そして、第1経路関連情報提供部21bの機能により制御部20は、リンクコストの合計であるトータルコストを最小化させるリンクの組み合わせであって、経路要求情報が示す出発地から目的地までを接続するリンクの組み合わせを第1経路として探索する。第1経路は、燃費の標準偏差σに対して単調増加する燃費偏差コストを含む各リンクについてのリンクコストを合計したトータルコストを最小化させる経路であるため、燃費の標準偏差σが小さいリンクほど第1経路の構成リンクとして採用されやすくなる。ステップS240において、第1経路関連情報提供部21bの機能により制御部20は、探索した第1経路の構成リンクを特定する経路情報を生成する。
【0040】
ステップS250において、第1経路関連情報提供部21bの機能により制御部20は、経路要求を行ったナビゲーション装置100に第1経路の構成リンクを特定する経路情報を送信する。これにより、経路要求情報にて指定された第1経路の構成リンクを特定する経路情報がナビゲーション装置100にて取得され、当該経路情報に基づいて第1経路の経路案内がナビゲーション装置100にて行われる。従って、気軽に良好な燃費を実現したい運転者は、燃費の標準偏差σが小さいリンクほど構成リンクとして採用されやすい第1経路にて車両を走行させることができ、運転操作に気を遣わずとも良好な燃費を実現できる。
【0041】
一方、ステップS210において経路要求情報の経路種別として第1経路が指定されていると判定された場合、ステップS260において第2経路関連情報提供部21cの機能により制御部20は、前記の表2の下欄の数式に準じて燃費DB30aに記録された燃費の統計値に基づいて各リンクについての燃費偏差コストと燃費コストとを算出する。すなわち、第2経路探索手法における燃費偏差コストは、各リンクにおける燃費の標準偏差σに係数aを乗算した値を、バイアス定数bから減算した値とされる。第2経路探索手法における燃費コストは、燃費の最良値Cminに係数kを乗算した値とされる。
【0042】
ステップS270において、第2経路関連情報提供部21cの機能により制御部20は、燃費の標準偏差σについて単調減少する燃費偏差コストと、燃費の最良値Cminに比例する燃費コストと、他のコストとの合計であるリンクコストをリンクごとに算出する。そして、第2経路関連情報提供部21cの機能により制御部20は、リンクコストの合計であるトータルコストを最小化させるリンクの組み合わせであって、経路要求情報が示す出発地から目的地までを接続するリンクの組み合わせを第2経路として探索する。第2経路は、燃費の標準偏差σに対して単調減少する燃費偏差コストを含む各リンクについてのリンクコストを合計したトータルコストを最小化させる経路であるため、燃費の標準偏差σが大きいリンクほど第2経路の構成リンクとして採用されやすくなる。ステップS280において、第2経路関連情報提供部21cの機能により制御部20は、探索した第2経路の構成リンクを特定する経路情報を生成する。
【0043】
ステップS290において、第2経路関連情報提供部21cの機能により制御部20は、経路要求を行ったナビゲーション装置100に第2経路の構成リンクを特定する経路情報を送信する。これにより、経路要求情報にて選択された経路種別として指定された第2経路の構成リンクを特定する経路情報がナビゲーション装置100にて取得され、当該経路情報に基づいて第2経路の経路案内がナビゲーション装置100にて行われる。従って、運転操作に自信のある運転者は、燃費の標準偏差σが大きいリンクほど構成リンクとして採用されやすい第2経路にて車両を走行させることができ、運転操作に応じた燃費向上の達成感を得ることができる。
【0044】
(2)他の実施形態:
第1経路関連情報提供部21bと第2経路関連情報提供部21cの機能により制御部20は、第1経路と第2経路に関する情報を双方とも提供してもよい。例えば、前記実施形態の経路探索操作によって経路種別の選択を予め受け付けないようにし、出発地から目的地までの第1経路と第2経路とをそれぞれ第1経路関連情報提供部21bと第2経路関連情報提供部21cの機能により制御部20が探索し、第1経路の経路情報と第2経路と経路情報とを双方とも提供してもよい。さらに、制御部20は、第1経路の経路情報と第2経路と経路情報の双方をナビゲーション装置100に送信してもよい。
【0045】
この場合、第1経路と第2経路の全体または構成リンクを車両が走行する場合の推定燃費や走行距離や所要時間等を示す付加情報を第1経路の経路情報と第2経路の経路情報とに添付してもよい。例えば、第1経路全体についての推定燃費は、第1経路の構成リンクの長さと燃費の平均値Caveとの積の合計としてもよいし、第1経路の構成リンクの長さと燃費の最悪値Cmaxとの積の合計としてもよい。前者の推定燃費に基づいて運転者は平均的な運転操作をした場合に得られる燃費を把握できるし、後者の推定燃費に基づいて運転者は最悪でも得られる燃費を把握できる。また、構成リンクの燃費の標準偏差σが所定値THより大きいか否かによって構成リンクの長さに乗算する最悪値Cmaxと平均値Caveとを切り替えて算出した推定燃費を第1経路全体についての推定燃費としてもよい。一方、第2経路全体についての推定燃費は、第2経路の構成リンクの長さと燃費の平均値Caveとの積の合計としてもよいし、第2経路の構成リンクの長さと燃費の最良値Cminとの積の合計としてもよい。後者の推定燃費に基づいて運転者は第2経路において目指すべき燃費を把握できる。
【0046】
ナビゲーション装置100における経路関連情報取得部210cの機能により制御部20は、第1経路と第2経路の構成リンクを特定する経路情報、および、当該経路情報に添付された付加情報を受信する。そして、受付手段としてのナビゲーション装置100は、第1経路と第2経路とについての推定燃費や走行距離や所要時間を付加情報に基づいてUI部440に提示し、第1経路と第2経路のいずれかの指定を受け付ける。これにより、運転者は、第1経路と第2経路とについての推定燃費や走行距離や所要時間を比較できる。例えば、第2経路の構成リンクの燃費の長さと燃費の最良値Cminとの積を合計した推定燃費が、第1経路の構成リンクの長さとの燃費の平均値Caveとの積を合計した推定燃費よりも良好な燃費を示せば、運転に自信のある運転者はより良好な燃費を得るために第2経路を選択することができる。反対に、第2経路の構成リンクの長さと燃費の最良値Cminとの積を合計した推定燃費よりも、第1経路の構成リンクの長さと燃費の平均値Caveとの積を合計した推定燃費が良好な燃費を示せば、運転者は第2経路を指定するメリットがないと認識できる。最後に、経路案内部210dの機能により制御部200は、指定された経路についての経路情報に基づいて第1経路または第2経路の案内をUI部440にて行わせる。
【0047】
前記実施形態では第1経路と第2経路との選択を運転者に委ねたが、ナビゲーション装置100またはサーバ10が探索された第1経路と第2経路に基づいて、第1経路と第2経路のいずれかを案内する経路として選択してもよい。例えば、第2経路の構成リンクの長さと燃費の最良値Cminとの積を合計した推定燃費よりも、第1経路の構成リンクの長さと燃費の平均値Caveとの積を合計した推定燃費が良好な燃費を示せば、第2経路を案内するメリットがないと判定し、第1経路を案内するようにしてもよい。
さらに、第1経路関連情報提供部21bと第2経路関連情報提供部21cのいずれかの機能により制御部20が先に第1経路または第2経路についての推定燃費等を算出し、当該推定燃費等に運転者が満足しない場合等には、もう一方の第1経路または第2経路を探索してもよい。
【0048】
第1経路と第2経路とを車両が走行する場合の推定燃費等を示す付加情報を、第1経路と第2経路との構成リンクを特定する経路情報に添付してナビゲーション装置100へ送信してもよいし、第1経路と第2経路とを車両が走行する場合の推定燃費等を示す付加情報と経路情報とを別に送信してもよい。すなわち、まず第1経路と第2経路とを車両が走行する場合の推定燃費等を示す情報をナビゲーション装置100へ送信しておき、当該情報に基づいて指定された第1経路または第2経路の構成リンクを特定する経路情報を追ってナビゲーション装置100へ送信してもよい。これにより、第1経路と第2経路の双方の構成リンクを特定する経路情報をナビゲーション装置100へ送信しなくても済み、通信量が抑制できる。
【0049】
前記実施形態では、サーバ10が複数の車両から取得した燃費情報を蓄積したが、車両に備えられたナビゲーション装置100にて燃費情報を蓄積してもよい。この場合、ナビゲーション装置100が備えられた車両についての燃費情報のみを蓄積してもよいし、他の車両との通信により取得した燃費情報も蓄積してもよい。ナビゲーション装置100にて燃費情報を蓄積し、さらにナビゲーション装置100にて第1経路関連情報提供部21bと第2経路関連情報提供部21cとの機能を実行すれば、ナビゲーション装置100において第1経路と第2経路とを探索でき、サーバ10との通信が省略できる。
【0050】
燃費の偏差は種々の統計指標に基づいて把握でき、例えば燃費の分散や半値幅や燃費の最小値から最大値までの値域の広さ等に基づいて把握してもよい。
さらに、第2経路探索手法における燃費コストの算出に用いた燃費の最良値Cminは、運転者の運転操作に対する意識が極めて高い場合に得られる可能性がある燃費であると捉えられる。運転者の運転操作に対する意識が極めて高い場合に得られる可能性がある燃費として平均値Caveに3σを減算した値を用いて第2経路探索手法における燃費コストとして算出してもよい。同様に、例えば運転者の運転操作に対する意識が極めて低い場合に得られる可能性がある燃費として、燃費の最悪値Cmaxの代わりに燃費の平均値Caveに3σを加算した値を用いて第1経路探索手法における燃費コストとして取得してもよい。また、第1経路探索手法における燃費コストとして算出される平均値Caveは相加平均であっても相乗平均であってもよいし、平均値Caveの代わりに中央値や最頻値に基づく燃費コストを算出してもよい。
【0051】
さらに、前記実施形態では燃費偏差コストと燃費コストの双方を考慮して経路探索を行ったが、少なくとも燃費偏差コストを考慮して経路探索を行えば、燃費の標準偏差σの小さいリンクほど構成リンクとして採用されやすい第1経路と、燃費の標準偏差σの大きいリンクほど構成リンクとして採用されやすい第2経路とを探索できる。すなわち、第1経路関連情報提供部21bの機能により制御部20は、燃費の標準偏差σについて単調増加する燃費偏差コストを少なくとも加算したリンクコストをリンクごとに算出する。そして、第1経路関連情報提供部21bの機能により制御部20は、リンクコストの合計であるトータルコストを最小化させるリンクの組み合わせであって、経路要求情報が示す出発地から目的地までを接続するリンクの組み合わせを第1経路として探索する。これにより、燃費の標準偏差σが小さいリンクほど第1経路の構成リンクとして採用されやすくすることができ、運転者の運転操作に対する燃費の依存度の小さい第1経路に関する情報が提供できる。一方、第2経路関連情報提供部21cの機能により制御部20は、燃費の標準偏差σについて単調減少する燃費偏差コストを少なくとも加算したリンクコストをリンクごとに算出する。そして、第2経路関連情報提供部21cの機能により制御部20は、リンクコストの合計であるトータルコストを最小化させるリンクの組み合わせであって、経路要求情報が示す出発地から目的地までを接続するリンクの組み合わせを第2経路として探索する。これにより、燃費の標準偏差σが大きいリンクほど第2経路の構成リンクとして採用されやすくすることができ、運転者の運転操作に対する燃費の依存度の大きい第2経路に関する情報が提供できる。
【0052】
さらに、前記実施形態のように第1経路探索手法によって探索された第1経路全体の燃費の偏差が所定値以下である場合に限り、当該第1経路に関する情報を提供してもよい。例えば、第1経路探索手法によって探索された第1経路全体の燃費の偏差が所定値以下でない場合には、リンクコストにおける燃費偏差コストの寄与度を増加させて第1経路を探索する処理を繰り返すことにより、経路全体の燃費の偏差が所定値以下となる第1経路を得るようにしてもよい。同様に、第2経路探索手法によって探索された第2経路全体の燃費の偏差が所定値より大きい場合に限り、当該第2経路に関する情報を提供してもよい。例えば、第2経路全体の燃費の偏差が所定値より大きくない場合には、リンクコストにおける燃費偏差コストの寄与度を増加させて、第2経路を探索する処理を繰り返すことにより、経路全体の燃費の偏差が所定値より大きくなる第2経路を得るようにしてもよい。経路全体の燃費の偏差は、例えば各構成リンクの燃費の標準偏差σの合計値や平均値等に基づいて把握される。また、各構成リンクの燃費の標準偏差σの合計値や平均値等を算出する際に、各構成リンクの長さに応じて燃費の標準偏差σを重み付けてもよい。これにより、経路全体の燃費の偏差に、各構成リンクの長さに対応する寄与度を反映させることができる。
【0053】
なお、前記実施形態においては燃費偏差コストと燃費コストの算出に使用される燃費の統計値が燃費DB30aに予め記録されたが、経路関連情報提供処理においてこれらの統計値を算出してもよい。すなわち、経路関連情報提供処理において、第1経路関連情報提供部21bと第2経路関連情報提供部21cの機能により制御部20は、前記の表2を参照して燃費偏差コストと燃費コストの算出に必要な統計値を特定する。そして、第1経路関連情報提供部21bと第2経路関連情報提供部21cの機能により制御部20は、燃費DB30aに記録された燃費情報を取得して必要な統計値を算出し、当該統計値に基づいて前記の表2の各欄の数式に準じた計算を行うことにより、燃費偏差コストと燃費コストとを算出してもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…サーバ、20…制御部、21…経路関連情報提供プログラム、21a…燃費情報取得部、21b…第1経路関連情報提供部、21c…第2経路関連情報提供部、22…通信部、30…記録媒体、30a…地図情報、30b…地図情報、100…ナビゲーション装置、200…制御部、210…ナビゲーションプログラム、210a…燃費通知部、210b…経路要求部、210c…経路関連情報取得部、210d…経路案内部、220…通信部、300…記録媒体、300a…地図情報、410…受信部、420…車速センサ、430…ECU、440…UI部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
区間と、当該区間を車両が走行した場合の燃費とを対応付けて示す燃費情報を、複数の区間のそれぞれについて複数取得する燃費情報取得手段と、
前記燃費情報が示す燃費の偏差が小さい区間ほど構成区間として採用されやすい第1経路探索手法により探索された第1経路に関する情報を提供する第1経路関連情報提供手段と、
前記燃費情報が示す燃費の偏差が大きい区間ほど構成区間として採用されやすい第2経路探索手法により探索された第2経路に関する情報を提供する第2経路関連情報提供手段と、
を備える経路関連情報提供装置。
【請求項2】
前記第2経路関連情報提供手段は、前記燃費情報が示す燃費の最良値が良く、かつ、前記燃費情報が示す燃費の偏差が大きい区間ほど前記第2経路の構成区間として採用されやすい前記第2経路探索手法により探索した前記第2経路に関する情報を提供する、
請求項1に記載の経路関連情報提供装置。
【請求項3】
前記第1経路関連情報提供手段は、前記燃費情報が示す燃費の偏差が所定値よりも大きい区間については、前記燃費情報が示す燃費の最悪値が良く、かつ、前記燃費情報が示す燃費の偏差が小さい区間であるほど前記第1経路の構成区間として採用されやすく、前記燃費情報が示す燃費の偏差が前記所定値以下の区間については、前記燃費情報が示す燃費の平均値が良く、かつ、前記燃費情報が示す燃費の偏差が小さい区間であるほど前記第1経路の構成区間として採用されやすい前記第1経路探索手法により探索した前記第1経路に関する情報を提供する、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の経路関連情報提供装置。
【請求項4】
区間と、当該区間を車両が走行した場合の燃費とを対応付けて示す燃費情報を、複数の区間のそれぞれについて複数取得する燃費情報取得工程と、
前記燃費情報が示す燃費の偏差が小さい区間ほど構成区間として採用されやすい第1経路探索手法により探索された第1経路に関する情報と、前記燃費情報が示す燃費の偏差が大きい区間ほど構成区間として採用されやすい第2経路探索手法により探索された第2経路に関する情報との少なくとも一方を提供する経路関連情報提供工程と、
を含む経路関連情報提供方法。
【請求項5】
区間と、当該区間を車両が走行した場合の燃費とを対応付けて示す燃費情報を、複数の区間のそれぞれについて複数取得する燃費情報取得機能と、
前記燃費情報が示す燃費の偏差が小さい区間ほど構成区間として採用されやすい第1経路探索手法により探索された第1経路に関する情報を提供する第1経路関連情報提供機能と、
前記燃費情報が示す燃費の偏差が大きい区間ほど構成区間として採用されやすい第2経路探索手法により探索された第2経路に関する情報を提供する第2経路関連情報提供機能と、
をコンピュータに実行させる経路関連情報提供プログラム。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の経路関連情報提供装置と、前記経路関連情報提供装置と通信可能なナビゲーション装置とを含む経路案内システムであって、
前記ナビゲーション装置は、
前記経路関連情報提供装置から前記第1経路と前記第2経路とに関する情報を取得する経路情報取得手段と、
前記第1経路と前記第2経路とに関する情報を提示して、前記第1経路と前記第2経路のいずれかの選択を受け付ける受付手段と、
選択された前記第1経路または前記第2経路についての経路案内を行う経路案内手段と、を備える、
経路案内システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−83155(P2012−83155A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228400(P2010−228400)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】