説明

経鼻プロング装置

【課題】本願発明は、装着される患者の鼻孔の寸法や角度等に応じて、最適な状態で装着することが可能なプロング装置を提供する。
【解決手段】ガスチャンバ16の両側に左右の接続用チャンバ17、18を接続し、しかも左右の接続用チャンバ17、18を連通させる取付け用筒体19によって一方のプロング21を取付け、これに対して他方のプロング22を上記取付け用筒体19に対して軸線方向に摺動自在な調整用筒体20上に取付けるようにする。そして調整用筒体20を摺動動作させることによって左右のプロング21、22間の間隔を調整する。またプロング21、22の先端側の部分にプリーツ状の筋を形成して半径方向の変形を可能にし、鼻孔の寸法に整合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は経鼻プロング装置に係り、とくに持続気道陽圧(CPAP)システムに用いる経鼻プロング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
持続気道陽圧(CPAP continuous positive airway pressure)療法は、呼吸困難あるいは呼吸不全を抱える患者のために、従来から利用されている療法である。また最近では、CPAP療法は、呼気の際の肺胞の虚脱を防止し、吸気の際の肺の膨張を助けることによって、肺が未発達な患者、とくに幼児や早産児あるいは新生児の呼吸を助ける上で有用であるとして広く用いられている。
【0003】
CPAP療法は、自発的に呼吸を行なっている患者の肺に、吸気のサイクルの全体にわたって正の圧力を持続的に供給することを特徴としている。CPAPシステムは、通常は、1つまたは2つのチューブの内部に持続的な気道陽圧を創出しあるいは生成するように構成されたCPAP生成器を、この生成器に接続されて吸気および呼気の気体を受渡すための管路として機能するインターフェイス装置、すなわちプロング装置を備えている。またCPAP生成器は、固定流の人工呼吸器式システムや、可変流のシステムなど、様々な形態をとることが可能である。
【0004】
また、CPAPを、例えば気管内チューブなど、様々な患者インターフェイス装置を使用して患者へ供給することができる。しかしながら、幼児においては、より侵襲のすくない患者インターフェイス装置として使用することが好ましく、とくに患者の鼻孔を介して鼻腔と直接的または間接的なやり取りをする患者インターフェイス装置を使用することが望ましい。そのようなシステムは、一般に、経鼻持続気道陽圧プロング装置(経鼻プロング装置)と呼ばれている。
【0005】
CPAPシステムにおいては、患者経鼻インターフェイスプロング装置は、典型的にはマスクまたは2プロング型で構成される。第1の鼻マスクは、患者の鼻を覆って配置される単一の空洞を画成するものである。マスクが形成する空洞は、CPAP生成器に流通可能に接続され、CPAP生成器と患者の鼻腔との管路を形成する。非侵襲ではあるものの、マスクの空洞と鼻腔との間に流体を漏らさぬ密閉性を持続的に達成および維持することが、ときには困難である。これは、顔の形状造作、従ってマスクを適用する顔の表面積が比較的小さい幼児に顕著である。なお、ある程度の力でマスクを患者の顔の表面に押し付けることによって、マスクの空洞と鼻腔との間の密閉性が高められる。しかし、成人と比較して血圧が大幅に低い新生児の顔にマスクを強い力で押し付けてしまうと、マスクの接触部分における血行が阻害され易く、その結果として、マスクとの接触部分において組織壊死が生じる可能性があった。
【0006】
これに対して2プロング式の構成は、2つのプロングまたはカニューレを備えており、それぞれがCPAP生成器に流通可能に接続され、患者のそれぞれの鼻孔に挿入されるように寸法づけられている。このような構成によると、プロングと鼻孔との間に比較的安定した流体の密閉性を容易に達成することができる。しかるに現時点において利用可能な幼児用CPAP経鼻インターフェイスプロング装置において、いくつかの欠点が指摘されている。これらの欠点は、新生児の鼻孔回りの寸法が個体差によってばらついていることにしばしば起因している。
【0007】
すなわち、とくに幼児や新生児の場合においては、鼻孔が開放する鼻の下端面の角度が個人差によってまちまちで、その角度範囲も広範囲にわたるものであり、この角度は必ずしもプロング装置のプロングの突出方向に対して直角にはならず、これによってプロングが鼻孔の内周面を圧迫する可能性がある。またとくに新生児の場合においては、鼻の発達の程度に応じて、顔面に対するプロングの装着性に問題を生ずる可能性がある。
【0008】
また早産児に適用する場合においては、早産児の週齢によって鼻孔の大きさが大きく異なり、このためにプロングの外径と鼻孔の内径との整合性に問題を生ずることになる。また早産児の場合においては、左右の鼻孔間の寸法が、週齢あるいは月齢によって大きく相違し、このために左右一対のプロングを左右の鼻孔に正しく挿入させることが必ずしも確実に行なえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2009−517185
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願発明の課題は、患者の鼻孔の方向とプロングの方向とがほぼ一致するようにした経鼻プロング装置を提供することである。
【0011】
本願発明の別の課題は、顔面に対するガスチャンバの角度を適正に調整できるようにした経鼻プロング装置を提供することである。
【0012】
本願発明のさらに別の課題は、患者の鼻孔の内径との間で高い整合性を有するプロングを有する経鼻プロング装置を提供することである。
【0013】
本願発明のさらに別の課題は、患者の鼻孔間の距離に応じて、左右一対のプロングの間隔を適正に調整できるようにした経鼻プロング装置を提供することである。
【0014】
本願発明の上記の課題および別の課題は、以下に述べる本願発明の技術的思想、およびその実施の形態によって明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願の主要な発明は、持続気道陽圧(CPAP)システムに用いる経鼻プロング装置において、ガス導入チューブとガス排出チューブとを接続したガスチャンバと、前記ガスチャンバの両側に接続された左右の接続用チャンバと、前記左右の接続用チャンバに両端が回動可能に連通された取付け用筒体と、前記取付け用筒体に取付けられた左右一対のプロングとを有し、前記取付け用筒体の回動によって前記左右一対のプロングの向きを調整可能にしたことを特徴とする経鼻プロング装置に関するものである。
【0016】
ここで、前記接続用チャンバが前記ガスチャンバの両側に回動自在に接続されており、前記ガスチャンバが装着される顔面に対する角度が調整可能になっていることが好適である。
【0017】
本願の別の主要な発明は、持続気道陽圧(CPAP)システムに用いる経鼻プロング装置において、左右一対のプロングを有し、左右の方向に延びる軸線を有する取付け用筒体上に前記一対のプロングが交差するように取付けられるとともに、少なくとも一方のプロングが前記取付け用筒体に対して軸線方向に摺動自在な調整用筒体を介して取付けられ、前記調整用筒体を軸線方向に摺動調整することによって前記一対のプロングの間隔が調整可能であることを特徴とする経鼻プロング装置に関するものである。
【0018】
ここで、前記一対のプロングが前記取付け用筒体および前記調整用筒体に対して着脱自在で、必要に応じて交換可能であってよい。
【0019】
また、前記プロングの少なくとも先端側の部分に軸線方向に延びるプリーツ状の筋を形成して前記鼻孔に挿入される部分を半径方向に伸縮可能にしてよい。また前記プロングを吸水性の材料から構成し、水分によって膨潤すると半径方向に拡径するようにしてよい。
【発明の効果】
【0020】
本願の主要な発明は、持続気道陽圧(CPAP)システムに用いる経鼻プロング装置において、ガス導入チューブとガス排出チューブとを接続したガスチャンバと、ガスチャンバの両側に接続された左右の接続用チャンバと、左右の接続用チャンバに両端が回動可能に連通された取付け用筒体と、取付け用筒体に取付けられた左右一対のプロングとを有し、取付け用筒体の回動によって左右一対のプロングの向きを調整可能にしたものである。
【0021】
従ってこのような経鼻プロング装置によると、左右のプロングが取付けられている取付け用筒体を回動させることによって、左右一対のプロングの向きを取り付け用筒体の軸線を中心として任意の向きとすることが可能になり、このために装着される患者の鼻孔が開放する鼻の下端面の角度に応じて、最適な角度にプロングの向きを調整することが可能になる。
【0022】
また本願の別の発明は、持続気道陽圧(CPAP)システムに用いる経鼻プロング装置において、左右一対のプロングを有し、左右の方向に延びる軸線を有する取付け用筒体上に一対のプロングが交差するように取付けられるとともに、少なくとも一方のプロングが取付け用筒体に対して軸線方向に摺動自在な調整用筒体を介して取付けられ、調整用筒体を軸線方向に摺動調整することによって一対のプロングの間隔が調整可能としたものである。
【0023】
従ってこのような経鼻プロング装置によると、取付け用筒体に対して調整用筒体を軸線方向に摺動することによって左右一対のプロングの間隔が任意に調整されることになる。従って、装着される患者の左右の鼻孔間の寸法に応じて、左右一対のプロングの間隔を調整することによって、左右一対のプロングを左右の鼻孔に正しく挿入させることが可能になる。
【0024】
さらに、ガス導入パイプなどが接続されるガスチャンバを保持する上側接続用チャンバとプロングが取り付けられる取付け用筒体を保持する下側接続用チャンバとを用い、上側接続用チャンバと下側接続用チャンバとを、ガスチャンバや取付け用筒体の回動軸心とは異なる方向に向いている回動軸心を中心として回動可能に接続することにより、ガスチャンバと取付け用筒体とがねじれ方向に相対的に回動することができ、患者に対するプロング装置の追従性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態のプロング装置を装着した新生児の頭部の側面図である。
【図2】プロング装置の外観斜視図である。
【図3】プロング装置の分解斜視図である。
【図4】プロング装置の背面側の外観斜視図である。
【図5】プロング装置の縦断面図である。
【図6】プロングの取付けの動作を示す側面図である。
【図7】プロングの先端側の開口端部の拡大正面図である。
【図8】左右一対のプロング間の間隔調整の動作を示す斜視図である。
【図9】プロングの角度調整の動作を示す側面図である。
【図10】ガスチャンバの角度調整の動作を示す側面図である。
【図11】本発明の別の実施例によるプロング装置の図5と同様の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下本願発明を図示の一実施の形態によって説明する。図1は本実施の形態に係るプロング装置を装着した新生児の頭部を示している。ここで新生児の頭部11には予めニット製の柔軟な帽子12が被せられ、このような帽子12を被った新生児に対して、その鼻の前方側にプロング装置10が装着される。
プロング装置の全体の構成を、図2〜図5によって説明すると、この実施の形態のプロング装置10はその中央部に扁平な直方体状をなす内部が空洞のガスチャンバ16を備えている。ガスチャンバ16の両側には、ガスチャンバ16の側面に沿って左右の接続用チャンバ17、18が取付けられる。そして接続用チャンバ17、18の下端側であって上記ガスチャンバ16の下方に位置する位置に、図3および図4に示すように、取付け用筒体19が左右の接続用チャンバ17、18を連通させるように取付けられる。そして取付け用筒体19上には、さらに調整用筒体20が軸線方向に摺動可能に取付けられるようになっている。そして左側のプロング21は、取付け用筒体19上に直接取付けられる。これに対して右側のプロング22は、取付け用筒体19上の調整用筒体20に取付けられる(図6参照)。
【0027】
図2および図3に示すように、ガスチャンバ16の前面側には、一対の接続筒25、26が形成されるとともに、これらの接続筒25、26にそれぞれガス導入パイプ27とガス排出パイプ28とが接続されるようになっている。さらにガスチャンバ16の前面側には上記接続筒25、26よりもやや直径の小さな接続筒29が連設され、この接続筒29によって圧モニター用パイプ30が接続されるようになっている。
【0028】
上記ガスチャンバ16の左右にそれぞれ取付けられている接続用チャンバ17、18にはストラップフック33、34が設けられ、これらのストラップフック33、34によって左右のストラップ35、36が取付けられるようになっている。なおストラップ35、36は、図1に示すように、新生児の頭部に被せられたニット製の帽子12に先端側の部分が連結されるようになっている。また上記ガス導入パイプ27、ガス排出パイプ28、圧モニター用パイプ30は、患者の顔面の上部に引出されるとともに、押えテープ32によって患者に被せられた帽子12の前面側の部分に押えられるようになっている。
【0029】
次に上記ガスチャンバ16と左右の接続用チャンバ17、18との接続構造について説明する。図5に示すように、上記ガスチャンバ16の両側にはそれぞれ接続筒41が左右に突出するように形成されている。接続筒41の先端部には4本の爪42が連設されている。これに対してガスチャンバ16の左右の部分に連結される接続用チャンバ17、18には、図5に示すように、内側に突出する筒状の被接続部43が形成されており、このような被接続部43に上記ガスチャンバ16の左右の接続筒41が嵌合されるとともに、爪42が接続用チャンバ17、18の被接続部43の先端側に係止される。
【0030】
次に上記左右の接続用チャンバ17、18とプロング21、22を支持する取付け用筒体19との接続について説明すると、図3および図5に示すように、取付け用筒体19の両端部にはそれぞれ接続端部46が設けられ、このような接続端部46が、左右の接続用チャンバ17、18の上記被接続部43よりも下方側に位置する被接続部47に嵌合されるようになっている。ここで接続用チャンバ17、18の被接続部47は、内側へ突出する筒状部から構成されており、取付け用筒体19の接続端部を受入れることになる。ここで接続用チャンバ17、18の上記被接続部47の上部には、ほぼ矩形の突片48が突出して形成される。
【0031】
取付け用筒体19の左端側の外周面上には当接片49が連設され、このような当接片49は接続用チャンバ17の上記被接続部47の周囲に形成されている規制部50と当接し、これによって接続用チャンバ17と取付け用筒体19との間の回動範囲を規制している。また取付け用筒体19の左側のプロング21を取付ける位置には、図6に示すように、ガス噴出口53が形成され、このガス噴出口53を通してプロング21にガスが供給されるようにしている。
【0032】
次に左側のプロング21の取付けを図6によって説明すると、取付け用筒体19の右側のプロング21の取付け位置の外周面上に係止用突部55、56がそれぞれ形成されている。このような係止用突部55、56に対応して、プロング21には一対の取付け片57、58が連設されている。これらの取付け片57、58の先端側の係止孔59、60がそれぞれ上記係止用突部55、56に係止されるようになっている。
【0033】
次に右側のプロング22の取付けについて説明する。右側のプロング22は、取付け用筒体19上の調整用筒体20の外周面に取付けられるようになっている。ここで調整用筒体20には、上記右側のプロング22の取付け位置にガス噴出口63が形成されている。このガス噴出口63と対応して、取付け用筒体19には長孔64が形成され、ガス噴出口63と連通されるようになっている。なお、取付け用筒体19と調製用筒体20との間の隙間が小さくかつ長孔64から調製用筒体20の端部までの長さが、ある程度の長さを有している(図5参照)ので、取付け用筒体19と調製用筒体20との間の隙間からの空気漏れは、極めて僅かでしかない。また調整用筒体20の外周面上には一対の係止用突部65、66がそれぞれ形成されており、これらの係止用突部65、66が右側のプロング22の取付け片57、58の係止孔59、60にそれぞれ係合するようになっており、これによって調整用筒体20上に右側のプロング22が取付けられるようになっている。また上記調整用筒体20の外周面上には軸線方向に延びる切込み67が形成され(図3参照)、このような切込み67を受入れる突部68が取付け用筒体19の外周面上に形成されており、これによって調整用筒体20の取付用筒体19に対する回転方向の規制を行なっている。
【0034】
図6A〜図6Cは、左右一対のプロング21、22を取付け用筒体19および調整用筒体20に取付ける動作を示している。これらのプロング21、22を図6Aに示すように、その基端側の部分がガス噴出口53、63を覆うようにプロング21、22を取付け用筒体19および調整用筒体20に対接させる(図6B参照)。そしてこの状態で、プロング21の取付け片57を引っ張って係止孔59を係止用突部55に係止する。また取付け片58の係止孔60を係止用突部56に係止する。またプロング22については、取付け片57の係止孔59を調整用筒体20側の係止用突部65に、取付け片58の係止孔60を調整用筒体20の係止用突部66に係止する。これによって左右のプロング21、22がそれぞれ取付け用筒体19、20に取付けられることになる(図6C参照)。
【0035】
次に以上のような構成に係るプロング装置の使用方法について説明する。このプロング装置は、図2、図4、および図5に示すように、ガスチャンバ16の両側に左右の接続用チャンバ17、18が取付けられ、しかも左右の接続用チャンバ17、18の下端側の部分を連結するように取付け用筒体19が取付けられる。そして左側のプロング21は取付け用筒体19に直接取付けられる。これに対して右側のプロング22は調整用筒体20を介して取付け用筒体19に取付けられる。また接続筒25、26、29にはガス導入パイプ27、ガス排出パイプ28、および圧モニター用パイプ30がそれぞれ接続される。
【0036】
このようにして組立てられたプロング装置が、図1に示すように例えば新生児の顔の鼻の前面の部分に取付けられる。このときに左右のプロング21、22が患者の鼻孔内に挿入される。また上方に引出されたガス導入パイプ27、ガス排出パイプ28、圧モニター用パイプ30は、新生児の頭部11を覆うニット製の帽子12の上面に押えテープ32によって押えられる。このような状態で、左右の接続用チャンバ17、18のストラップフック33、34に基端側が係止されたストラップ35、36がニット製の帽子12の部分に連結される。
【0037】
そしてガス導入パイプ27を通して酸素濃度が高いガスがガスチャンバ16の隔壁24の右側の空間に導入され、このようなガスが、右側のガス接続用チャンバ18から取付け用筒体19を通って、ガス噴出口53から左側のプロング21に供給される。また右側のプロング22へは、取付け用筒体19の長孔64と調整用筒体20のガス噴出口63を通して供給される。また患者の呼気は、新生児の鼻孔から左右のプロング21、22を通過し、左側のプロング21側の呼気については、ガス噴出口53から取付け用筒体19に導かれる。また右側のプロング22を通過する呼気については、ガス噴出口63および長孔64を通して取付け用筒体19に導かれ、さらにこの後左側の接続用チャンバ17からガスチャンバ16の隔壁24の左側の空間に至る。そしてこの後に、このガスチャンバ16に接続筒26を介して接続されているガス排出パイプ28によって排出される。圧モニター用パイプ30は、ガスチャンバ16のガス排出パイプ28が接続される隔壁24の左側の空間に対して常に所定の圧力を印加するようにしており、これによって患者に対して常に気道陽圧を与える。従ってこのような圧モニター用パイプ30による加圧によって、持続気道陽圧(CPAP)システムが成立する。
【0038】
次にこのような構成に係るプロング装置10の左右のプロング21、22の先端側の部分であって、患者の鼻孔に挿入される部分の半径方向の寸法の調整動作について説明する。図7に示すように、このプロング装置10のプロング21、22は柔軟なシリコンゴム等の材料から構成されるとともに、その先端側の部分には図7に示すように、軸線方向に延びるプリーツ状の筋が形成されており、このような筋23によって半径方向の寸法を調整可能にしている。例えば外径が3.3mmであって内径が2.7mmのプロング21、22において、その外周側の部分には山と谷の差が0.3mmのプリーツ状の筋23を形成している。このような筋23によって、上記の寸法が、最大で外径が5.8mm、内径が5.7mmまで拡径されることが確認されている。なおここでプロング21、22の肉厚は、0.05mmである。
【0039】
なおプロング21、22の鼻孔に挿入される先端側の部分の拡径の構造は、必ずしも図7のプリーツ状の筋23によって行なう必要はなく、それ以外の構成としてもよい。例えばプロング21、22を吸湿性ポリマから作製し、吸気用のガスが加湿されたものであれば、その吸気用のガスの水分によって膨張してその直径が拡大するようにし、これによって鼻孔との間の隙間を少なくするようにしてよい。もし、吸気用のガスの湿度がそれほど高くない場合でも、プロング21、22が呼気に含まれる水分によって膨潤するので、その直径が拡大させることができる。なお吸水性ポリマとしては、例えば架橋ポリビニールアルコールを用いることができる。あるいはまた澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体を用いるようにしてもよい。あるいはまたこれらのポリマと、ポリ乳酸とを混合したものとし、その混合割合を調整することによって、吸湿量を適正な値に維持することができる。
【0040】
次に左右のプロング21、22の間隔調整の動作を、図8によって説明する。図8Aに示すように、左側のプロング21は取付け用筒体19のガス噴出口53が形成される位置に直接取付けられる。これに対して右側のプロング22は、上記取付け用筒体19上に軸線方向に摺動可能な調整用筒体20の上面に取付けられるようになっている。すなわち取付け用筒体19上の長孔64が調整用筒体20のガス噴出口63と連通するようになっており、このような調整用筒体20上の上記ガス噴出口63の部分に右側のプロング22が取付けられる。ここで調整用筒体20の切込み67に取付け用筒体19の突部68が受入れられ、これによって取付け用筒体19に対して調整用筒体20が回転することが防止される。しかもガス噴出口63は軸線方向に延びる長孔64と連通されるようになっているために、調整用筒体20を軸線方向に移動調整しても、ガスの供給が遮断されることがない。
【0041】
従って右側のプロング22を取付けた調整用筒体20を取付け用筒体19上で軸線方向に移動し、例えば図8Bに示すように調整用筒体20を左方に移動させると、プロング21、22間の距離が小さくなって左右のプロング21、22の間隔が狭くなる。これに対して調整用筒体20を図8Cに示すように軸線方向反対方向に移動させ、調整用筒体20を右方に移動させると、左右のプロング21、22間の距離が大きくなる。従って、装着される新生児の鼻孔の間隔に応じて、左右のプロングの間隔を適切な値に調整できるようになる。
【0042】
なお本実施の形態においては、左側のプロング21が取付け用筒体19の外周面上に直接取付けられるようになっており、これに対して右側のプロング22は調整用筒体20を介して取付け用筒体19に取付けられるようになっている。このような構成に代えて、左右のプロング21、22を何れも調整用筒体20上に取付けるようにしてもよい。すなわち左右のプロング21、22がともに取付け用筒体19に対して移動調整するようにしてもよい。
【0043】
次に左右のプロング21、22の角度調整の動作について説明する。図9はこのような動作を示すものであって、この動作は、取付け用筒体19を左右の接続用チャンバ17、18の被接続部47に対して回転させることによって、左右のプロング21、22を同時に角度調整するようにしている。なお取付け用筒体19および調整用筒体20の外周面上には、当接片49が設けられており、この当接片49は左右の接続用チャンバ17、18にそれぞれ設けられている規制部50によって回転角度の規制が行なわれるようになっており、従ってこのような規制部50間で、取付け用筒体19が回転できるようになっている。
【0044】
図9Aは、中間の角度位置にプロング21、22が位置保持された状態を示している。これに対して図9Bは、プロング21、22が上方に傾斜した状態を示している。また図9Cは、プロング21、22が、下方に向いた状態を示している。すなわち、新生児の鼻の前面の角度に応じて、左右のプロング21、22の角度を最適な角度に調整することが可能になる。
【0045】
さらにこのプロング装置は、プロング21、22の角度を一定の角度に保持しながら、しかもこれに対してガスチャンバ16の角度を最適な角度とし、これによってガス導入パイプ27、ガス排出パイプ28、および圧モニター用パイプ30によって、新生児の顔面に対する侵襲を防止している。この動作は図10に示される。ガスチャンバ16の両側の接続筒41を左右の接続用チャンバ17、18の被接続部43に対して回転させることによって、ガスチャンバ16が左右の接続用チャンバ17、18に対して角度調整できるようになる。従って装着される新生児の顔面に応じて、ガスチャンバの角度を最適な角度とし、これによって顔面に対する負担を軽減できる。
【0046】
また、第2の実施例として、図11に示すように、プロング装置のガスチャンバ16を上側接続用チャンバ117a、118aに保持させ、プロング21、22を支持する取付け用筒体19を下側接続用チャンバ117b、118bに保持させ、上側接続用チャンバ117a、118a側に設けられた接続筒120を下側接続用チャンバ117b、118bに設けられた被接続部122に回動可能に保持させるようにすることもできる。なお、符号121は、接続筒120の先端に設けられた爪であって、この接続筒120が被接続部122から外れるのを防止している。
【0047】
この第2の実施例によるプロング装置によれば、ガスチャンバ16が取付け用筒体19に対して左右方向(換言すれば、ガスチャンバ16と取付け用筒体19とが平行に整列せずにねじれた方向)にも回動することができ、プロング装置を装着した患者の頭部が左右に振れたときでもガスチャンバ16に接続されているガス導入パイプ27(図1参照)、ガス排出パイプ28(図1参照)、圧モニター用パイプ30(図1参照)が過度に引っ張られるようなことがなく、比較的元気に動く患者であっても、患者に対するプロング装置の追従性が良好で、患者の鼻孔周辺に対するプロング装置の負荷が少なく、プロング装置の脱落も防止することができる。
【0048】
以上本願発明を図示の実施の形態によって説明したが、本願発明は上記実施の形態によって限定されることなく、本願発明の技術的思想の範囲内において各種の変更が可能である。例えば上記実施の形態における各部材の寸法等は、装着される患者の頭部あるいは顔面の寸法、患者の月齢、年齢等に応じて各種の寸法とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本願発明は、持続気道陽圧(CPAP)システムに用いる経鼻プロング装置として利用可能であって、とくに新生児の呼吸困難あるいは呼吸不全に対する治療に好適に利用することが可能であり、このような医療装置として利用することができる。また、本願発明は、各部の寸法を成人用に対応させることにより、睡眠時無呼吸症候群の処置のための医療機器としても利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 プロング装置
11 新生児の頭部
12 ニット製の帽子
16 ガスチャンバ
17 接続用チャンバ(左)
18 接続用チャンバ(右)
19 取付け用筒体
20 調整用筒体
21 プロング(左)
22 プロング(右)
23 筋
24 隔壁
25、26 接続筒
27 ガス導入パイプ
28 ガス排出パイプ
29 接続筒
30 圧モニター用パイプ
32 押えテープ
33 ストラップフック(左)
34 ストラップフック(右)
35 ストラップ(左)
36 ストラップ(右)
41 接続筒
42 爪
43 被接続部
46 接続端部
47 被接続部
48 突片
49 当接片
50 規制部
53 ガス噴出口
55、56 係止用突部
57、58 取付け片
59、60 係止孔
63 ガス噴出口
64 長孔
65、66 係止用突部
67 切込み
68 突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
持続気道陽圧(CPAP)システムに用いる経鼻プロング装置において、
ガス導入チューブとガス排出チューブとを接続したガスチャンバと、前記ガスチャンバの両側に接続された左右の接続用チャンバと、前記左右の接続用チャンバに両端が回動可能に連通された取付け用筒体と、前記取付け用筒体に取付けられた左右一対のプロングとを有し、
前記取付け用筒体の回動によって前記左右一対のプロングの向きを調整可能にしたことを特徴とする経鼻プロング装置。
【請求項2】
前記接続用チャンバが前記ガスチャンバの両側に回動自在に接続されており、前記ガスチャンバが装着される顔面に対する角度が調整可能になっていることを特徴とする請求項1に記載の経鼻プロング装置。
【請求項3】
持続気道陽圧(CPAP)システムに用いる経鼻プロング装置において、
左右一対のプロングを有し、左右の方向に延びる軸線を有する取付け用筒体上に前記一対のプロングが交差するように取付けられるとともに、少なくとも一方のプロングが前記取付け用筒体に対して軸線方向に摺動自在な調整用筒体を介して取付けられ、前記調整用筒体を軸線方向に摺動調整することによって前記一対のプロングの間隔が調整可能であることを特徴とする経鼻プロング装置。
【請求項4】
前記接続用チャンバが前記取付け用筒体を保持するための下側接続用チャンバと前記ガスチャンバを保持するための上側接続用チャンバとから構成され、
前記下側接続用チャンバと前記上側接続用チャンバとが互いに回動可能に接続され、
これら2つの接続用チャンバを互いに回動可能に接続する回動部分の回動軸心が、前記取付け用筒体の回動軸心を含む平面と前記ガスチャンバの回動軸心を含む平面とのいずれにも交差するように配置されていることを特徴とする請求項1または3に記載の経鼻プロング装置。
【請求項5】
前記一対のプロングが前記取付け用筒体および前記調整用筒体に対して着脱自在で、必要に応じて交換可能であることを特徴とする請求項1または3に記載の経鼻プロング装置。
【請求項6】
前記プロングの少なくとも先端側の部分に軸線方向に延びるプリーツ状の筋を形成して前記鼻孔に挿入される部分を半径方向に伸縮可能にしたことを特徴とする請求項1または3に記載の経鼻プロング装置。
【請求項7】
前記プロングを吸水性の材料から構成し、水分によって膨潤すると半径方向に拡径することを特徴とする請求項1または3に記載の経鼻プロング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−189050(P2011−189050A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59171(P2010−59171)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(390022541)アトムメディカル株式会社 (38)