説明

経鼻内視鏡用ガイドチューブ

【課題】経鼻内視鏡検査において経鼻内視鏡の挿入を補助する経鼻内視鏡用ガイドチューブを提供すること。
【解決手段】経鼻内視鏡用ガイドチューブ1は、長手方向に略均一の断面形状を有してなる。経鼻内視鏡用ガイドチューブ1の断面形状は、複数のリブ部11と内側に折り畳み可能な薄壁部12とよりなる。薄壁部12は、リブ部11よりも薄肉であって、かつ、周方向に隣り合って位置する2箇所のリブ部11を連結する部分である。薄壁部12を内側に折り畳んだ縮径状態の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1は、経鼻内視鏡3の挿入に応じて内側に折り畳んだ薄壁部12を展開することにより拡径可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻孔から経鼻内視鏡を挿入する際に使用する補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、胃などの上部消化管に内視鏡を挿入して検査する内視鏡検査が知られている。このような内視鏡検査では、例えば、CCD等の撮像デバイスを装備した先端部の向きを遠隔操作可能に構成した内視鏡が用いられる。そして、内視鏡検査を実施するに当たっては、受検者の体内の挿入経路の屈曲形状に対応して適宜、先端部の向きを遠隔操作しながら、ゆっくりと内視鏡を前進させていき検査対象部位まで到達させている。
【0003】
上記のような内視鏡検査としては、例えば、受検者の口から内視鏡を挿入する経口内視鏡検査がある。経口内視鏡検査においては、内視鏡が舌根に接触するおそれがあり、咽頭反射による嘔吐感が誘発されるおそれがある。そして、このような検査中の嘔吐感等は、経口内視鏡検査の受検者にとっての大きな負担となっている。これに対し、撮像デバイスの小型化等、近年の技術革新による内視鏡の細径化により、鼻孔から内視鏡を挿入する経鼻内視鏡検査が実施されるようになってきている(例えば、特許文献1参照。)。経鼻内視鏡検査によれば、内視鏡が舌根に接触するおそれが少ないため、嘔吐感の発生を未然に抑制でき、受検者の負担を効果的に軽減し得る。
【0004】
しかしながら、上記従来の経鼻内視鏡検査では、次のような問題がある。すなわち、鼻孔から上記内視鏡を挿入する際、毛細血管が集中し、かつ、非常に弱い鼻腔粘膜を傷つけてしまうおそれがあるという問題がある。特に、経鼻内視鏡検査を実施する側の技術が未熟である場合には、鼻腔粘膜の損傷による出血や痛み等が発生するおそれが高くなる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−68030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、経鼻内視鏡検査において経鼻内視鏡の挿入を補助する経鼻内視鏡用ガイドチューブを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、経鼻内視鏡の挿入を補助するための管状の経鼻内視鏡用ガイドチューブであって、
長手方向に略均一な断面形状を有してなり、当該断面形状が、内側に凸状を呈する複数のリブ部と、該リブ部よりも薄肉であって、かつ、周方向に隣り合って位置する2箇所の上記リブ部を連結するように構成した薄壁部とよりなることを特徴とする経鼻内視鏡用ガイドチューブにある(請求項1)。
【0008】
上記第1の発明の経鼻内視鏡用ガイドチューブは、受検者の鼻孔から上記経鼻内視鏡を挿入する際、事前に挿入しておくための補助具である。この経鼻内視鏡用ガイドチューブを予め挿入しておけば、当該経鼻内視鏡用ガイドチューブに上記経鼻内視鏡を挿入していくことで比較的容易に挿入作業を実施できるようになる。上記経鼻内視鏡用ガイドチューブを利用して上記経鼻内視鏡の挿入作業を実施すれば、例えば、先端部分にCCDカメラなど撮像デバイス等を配置した上記経鼻内視鏡によって鼻腔粘膜等を傷つけるおそれを未然に抑制することができる。
【0009】
特に、上記第1の発明の経鼻内視鏡用ガイドチューブの断面形状は、複数の上記リブ部と、周方向に隣り合う上記リブ部の間に形成した上記薄壁部とよりなる。つまり、上記経鼻内視鏡用ガイドチューブは、その断面形状において、上記リブ部と上記薄壁部とを周方向に交互に現れるように環状に配置したものである。さらに、上記経鼻内視鏡用ガイドチューブでは、内側に向かって凸状をなすように上記リブ部を形成してある。
【0010】
上記のような経鼻内視鏡用ガイドチューブでは、上記経鼻内視鏡を挿通させる際、当該経鼻内視鏡の外周面が上記リブ部の突出方向の先端面と接触しながら摺動し得る。それ故、上記経鼻内視鏡用ガイドチューブによれば、上記経鼻内視鏡との接触面積を低減でき、これにより摺動摩擦力等に起因する挿通抵抗を抑制し得る。このように挿通抵抗を抑制できれば、経鼻内視鏡を挿入していく作業を容易に実施し得るようになる。そして、挿入作業を容易にできれば、無理な力が受検者側に作用するおそれを抑制でき、さらに、挿入に要する時間を短縮することで受検者の負担を軽減し得るようになる。
【0011】
以上のように、上記第1の発明の経鼻内視鏡用ガイドチューブは、上記経鼻内視鏡を挿通させる際の抵抗を抑制でき、受検者に作用するおそれがある負担を効果的に軽減し得るという優れた特性を備えたものである。
【0012】
第2の発明は、経鼻内視鏡の挿入を補助するための管状の経鼻内視鏡用ガイドチューブであって、
長手方向に略均一の断面形状を有してなり、当該断面形状が、複数のリブ部と、該リブ部よりも薄肉であって、かつ、周方向に隣り合って位置する2箇所の上記リブ部を連結すると共に内側に折り畳み可能に構成した薄壁部とよりなり、
当該薄壁部を内側に折り畳んだ縮径状態の上記断面形状が、上記経鼻内視鏡の挿入に応じて内側に折り畳んだ上記薄壁部を展開することにより拡径し得るように構成してあることを特徴とする経鼻内視鏡用ガイドチューブにある(請求項3)。
【0013】
上記第2の発明の経鼻内視鏡用ガイドチューブは、上記第1の発明と同様、受検者の鼻孔から上記経鼻内視鏡を挿入するに当たって事前に挿入しておき、当該経鼻内視鏡の挿入作業を補助するための補助具である。この経鼻内視鏡用ガイドチューブでは、周方向に隣り合う上記リブ部を連結する上記薄壁部を内側に折り畳み可能である。それ故、上記経鼻内視鏡用ガイドチューブは、この薄壁部を内側に折り畳むことで容易に縮径することができる。
【0014】
そして、縮径状態の上記経鼻内視鏡用ガイドチューブによれば、比較的容易に鼻孔から挿入していくことができる。その後、上記経鼻内視鏡を挿入する際には、上記経鼻内視鏡用ガイドチューブは、内側に折り畳んだ上記薄壁部を展開させることにより容易に拡径でき、上記経鼻内視鏡を挿通可能な状態に移行し得る。
【0015】
上記経鼻内視鏡用ガイドチューブによれば、縮径状態で鼻孔から挿入できるので、上記経鼻内視鏡を直接挿入するのに比べて格段に受検者の負担を軽減し得る。そして、上記経鼻内視鏡用ガイドチューブを利用して上記経鼻内視鏡を挿入していくに当たっては、当該経鼻内視鏡の挿入に応じて上記経鼻内視鏡用ガイドチューブが拡径して膨らむのみである。それ故、例えば、鼻腔粘膜に対する擦れ等を抑制でき、鼻腔粘膜の損傷等を確実性高く未然に回避できる。そして、鼻腔粘膜の損傷等に起因した出血や痛みを抑制することにより、受検者の負担を極めて効果的に軽減し得る。
【0016】
以上のように、上記第2の発明の経鼻内視鏡用ガイドチューブは、縮径状態で鼻孔から容易に挿入可能であり、かつ、内側に折り畳んだ上記薄壁部を展開させることで上記経鼻内視鏡を挿通させ得る程度に拡径し得るという優れた特性を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
上記第1又は上記第2の発明において、上記経鼻内視鏡用ガイドチューブとしては、しなやかに屈曲し得るよう、可撓性高く形成しておくことが好ましい。上記経鼻内視鏡用ガイドチューブをしなやかに屈曲させるためには、上記リブ部及び上記薄壁部の厚さを外径に対して適切に設定したり、人体に無害な材料の中から可撓性等に優れた材質を選択することが好ましい。上記経鼻内視鏡用ガイドチューブの材質としては、例えば、生体適合性プラスチック材料として認められたポリプロピレン、ポリウレタン、ナイロン等を利用することができる。
また、上記経鼻内視鏡としては、光ファイバーを利用した軟性内視鏡や、CCDやCMOS等の撮像素子を利用した電子内視鏡等、様々な態様のものがある。
【0018】
上記第1の発明において、上記断面形状は、略円形の外形状を呈するものであることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記経鼻内視鏡用ガイドチューブの外周面の曲率を低くすることにより、上記経鼻内視鏡用ガイドチューブの外周面と鼻腔粘膜等、受検者側との接触面積を拡大できる。そして、この接触面積を拡大できれば、上記経鼻内視鏡用ガイドチューブから受検者に作用するおそれがある力を分散して伝達させることができ、受検者が痛みを感じるおそれを抑制し得るようになる。
【0019】
上記第2の発明において、拡径状態において内側に凸状をなすように上記リブ部を形成してあることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記経鼻内視鏡用ガイドチューブに対して上記経鼻内視鏡を挿通させるに当たり、上記第1の発明と同様、挿通抵抗を低減させることができる。
【0020】
また、拡径状態の上記経鼻内視鏡用ガイドチューブは、略円形状の断面外形状を呈していることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記経鼻内視鏡用ガイドチューブの外周面の曲率を低くでき、鼻腔粘膜等、受検者側に作用する力を分散させることができる。
【0021】
さらに、周方向における上記リブ部の配置間隔を150度未満、より好ましくは30度〜60度に設定しておくことも良い。この場合には、2つ以上の複数の上記リブ部により上記経鼻内視鏡の外周面を支持し得るようになる。そして、上記経鼻内視鏡用ガイドチューブの外周面を介して上記経鼻内視鏡から受検者側に作用するおそれがある力を、上記複数のリブ部を形成した周方向範囲に分散させることができる。このように受検者側に作用する力を分散できれば、鼻腔粘膜等に作用するおそれがある単位面積当たりの圧力を効果的に抑制でき、経鼻内視鏡検査の受検者が痛み等を感じるおそれを抑制できる。
【0022】
なお、上記リブ部の配置間隔が30度未満であると、当該リブ部の周方向の配置密度が高くなり上記経鼻内視鏡用ガイドチューブの可撓性が低下するおそれがある。また、上記薄壁部の周方向の長さが短くなるため、当該薄壁部を内側に折り畳むことによる縮径効果が十分でなくなるおそれがある。
一方、上記リブ部の配置間隔が60度を超えると、周方向における上記リブ部の配置間隔が広くなり、それ故、上記経鼻内視鏡の外径によっては、上記リブ部と接触することなく上記薄壁部のみと接触するおそれが生じてくる。そうすると、上記経鼻内視鏡から上記経鼻内視鏡用ガイドチューブに作用する力を分散して受検者側に伝達できるという作用効果が十分でなくなるおそれが生じる。
【0023】
上記第1又は上記第2の発明において、上記経鼻内視鏡用ガイドチューブは、受検者が上下の歯で把持可能に構成した把持片を含む挿入位置保持ブロックを固定してなることが好ましい(請求項6)。
この場合には、受検者に上記把持片を噛ませておくことで、上記経鼻内視鏡用ガイドチューブの挿入位置を確実性高く保持できる。例えば、上記経鼻内視鏡の操作や、上記経鼻内視鏡に内挿した治療器具の操作等に応じた上記経鼻内視鏡用ガイドチューブが鼻孔内の横方向あるいは奥行き方向の変位により、鼻中隔軟骨や鼻腔粘膜等に過大な押圧力が作用するおそれを未然に防止することができる。さらに、例えば、上記経鼻内視鏡用ガイドチューブの挿入位置を保持すれば、上記経鼻内視鏡の挿入に応じて上記経鼻内視鏡用ガイドチューブが挿入方向に従動するおそれを未然に抑制できる。
【実施例】
【0024】
(実施例1)
本例は、経鼻内視鏡3の挿入を補助するための経鼻内視鏡用ガイドチューブ1に関する例である。この内容について、図1〜図8を用いて説明する。
本例の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1は、図1〜図3に示すごとく、経鼻内視鏡3の挿入を補助するための管状のものである。
この経鼻内視鏡用ガイドチューブ1は、長手方向に略均一の断面形状を有してなる。そして、この断面形状が、複数のリブ部11と内側に折り畳み可能に構成した薄壁部12とよりなる。この薄壁部12は、リブ部11よりも薄肉であって、かつ、周方向に隣り合って位置する2箇所のリブ部11を連結するように構成した部分である。
図1に示すごとく薄壁部12を内側に折り畳んだ縮径状態の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1は、経鼻内視鏡3の挿入に応じて内側に折り畳んだ薄壁部12を展開することにより図2に示すごとく拡径可能である。
以下に、この内容について詳しく説明する。
【0025】
まず、経鼻内視鏡3の構成について概説しておく。経鼻内視鏡3は、図3に示すごとく、外径D3=5mmの可撓中空管状の挿入部31と、該挿入部31の基端側に連結された操作部34と、操作部34から延設されたコネクタ部35とを備えている。挿入部31は、挿入方向の先端面をなす先端部313と、該先端部313から控えて位置する湾曲部312とを有している。先端部313は、その先端面に、図示しない観察窓及び照明窓を有している。湾曲部312は、操作部34を利用した遠隔操作によって屈曲可能なように構成してある。
【0026】
操作部34は、湾曲部312を屈曲操作するための操作ノブ345と、観察窓に洗浄水を噴射するための送水操作弁346と、処置具を挿入するための挿入口348等とを配置した部分である。コネクタ部35は、図示しない光源装置を接続するコネクタや、ビデオ装置等を接続するコネクタ等を配置した部分である。そして、経鼻内視鏡3は、挿入口348を介して先端部313から突出させた鉗子等の検査器具による検査や、高周波スネア等の治療器具による治療が可能なように構成してある。
【0027】
本例の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1は、図1〜図4に示すごとく、受検者5の鼻孔50から経鼻内視鏡3を挿入するに先だって予め挿入しておき、経鼻内視鏡3の挿入を容易にするための補助具である。経鼻内視鏡用ガイドチューブ1は、生体に対する害の少ない生体適合性プラスチック材料である軟性ポリプロピレンよりなる管状部材である。軟性ポリプロピレンよりなる経鼻内視鏡用ガイドチューブ1は、可撓性に優れ、しなやかに屈曲し得る。
【0028】
経鼻内視鏡用ガイドチューブ1では、挿入する際に鼻腔粘膜51等を傷つけることがないよう、挿入方向の先端の角部に丸め加工を施してある。また、経鼻内視鏡用ガイドチューブ1は、挿入方向の後端側に設けた略矩形状のプレート部15を介して、マウスピース状の挿入位置保持ブロック13を固定してなる。本例の挿入位置保持ブロック13は、生体適合性プラスチック材料であるポリプロピレンよりなるものである。
【0029】
挿入位置保持ブロック13は、受検者5が上下の歯55で把持するための把持片131と、受検者5の口唇に当てがうマウスパッド部132とよりなる。このマウスパッド部132は、検査者側の表面に設けた略矩形状の窪み部135と、この窪み部135に開口して貫通する挿入口130とを有している。一方、経鼻内視鏡用ガイドチューブ1の後端部には、窪み部135に対応する略矩形状のプレート部15を設けてある。そして、本例では、窪み部135にプレート部15を配置した状態で、挿入位置保持ブロック13に経鼻内視鏡用ガイドチューブ1を固定してある。
【0030】
上記のごとく、本例の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1は、後端のプレート部15を窪み部135に配置した状態で挿入位置保持ブロック13を固定したものである。このような固定構造を採用した経鼻内視鏡用ガイドチューブ1は、挿入位置保持ブロック13から挿入方向に抜け落ちるおそれがほとんどない安全性の高いものである。
【0031】
なお、プレート部15を後端に設けた本例の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1によれば、挿入位置保持ブロック13を使用せずに経鼻内視鏡検査を行うことも可能である。鼻孔50よりも大型のプレート部15を鼻孔50の出口に係合できるため、経鼻内視鏡用ガイドチューブ1が鼻孔50内に脱落するおそれを未然に回避できるからである。さらになお、このプレート部15にはメッシュ孔を設けておくことも好ましい。この場合には、このメッシュ孔を介して、受検者5の鼻呼吸を可能とし、検査負担を軽減できる。
【0032】
なお、上記経鼻内視鏡用ガイドチューブ1の材質としては、本例のポリプロピレンのほか、ポリエチレン、ポリウレタン、ナイロン、ポリ塩化ビニル等、様々な材質を採用することができる。
また、上記挿入位置保持ブロック13の材質としては、本例のポリプロピレンのほか、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ABS樹脂等、様々な材質を採用することができる。
【0033】
図4に示すごとく、上記挿入位置保持ブロック13の把持片131を受検者5に噛ませておけば、経鼻内視鏡用ガイドチューブ1の挿入位置を確実性高く保持することが可能である。すなわち、経鼻内視鏡3の挿入に伴う経鼻内視鏡用ガイドチューブ1の挿入方向の従動を未然に防止できる。さらに、経鼻内視鏡3の操作や、経鼻内視鏡3に挿通させた治療器具等の操作に応じて、鼻孔50の横方向あるいは奥行き方向に経鼻内視鏡用ガイドチューブ1が変位するおそれを抑制できる。それ故、受検者5に把持片131を噛ませておけば、経鼻内視鏡用ガイドチューブ1の挿入方向の変位に応じて鼻腔粘膜51等との間に擦れ等が発生するおそれや、経鼻内視鏡用ガイドチューブ1が鼻中隔軟骨501あるいは鼻腔粘膜51等に過大な押圧力を作用するおそれ等を確実性高く抑制し得る。
【0034】
次に、本例の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1の特徴ある断面形状について説明する。拡径状態の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1は、図2に示すごとく、長手方向に略均一であって、かつ、外径D2=7.2mm程度の略円形の外形状を呈する断面形状を有している。この断面形状は、周方向等間隔の8カ所に設けたリブ部11と、周方向に隣り合うリブ部11を連結する薄壁部12とを周方向に交互に配置したごとき形状を呈している。
【0035】
リブ部11は、図2に示すごとく、内側に向けて凸状を呈し、薄壁部12よりも径方向に肉厚の部分である。8カ所のリブ部11の内接円径d1は6.2mmであり、薄壁部12の内接円径d2は6.6mmである。そして、リブ部11の径方向の厚みは約0.5mmであり、薄壁部12の径方向の厚みは約0.3mmである。なお、本例の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1に適合する経鼻内視鏡は、その外径が5〜5.9mm程度のものである。図2では、外径D3=5mmの本例の経鼻内視鏡3の断面を点線の円により図示してある。
【0036】
縮径状態の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1は、図1に示すごとく、周方向に隣り合うリブ部11の間に形成された薄壁部12を内側に折り畳んだ状態にある。リブ部11は、例えば、傘の骨のような部分であり、薄壁部12は、傘の生地のような部分である。薄壁部12を内側に折り畳む本例の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1の構造は、洋傘というよりも傘生地を内側に折り畳む蛇の目傘等の和傘の開閉構造に似通っている。本例の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1は、薄壁部12を内側に折り畳むことにより、外径D1=約3mm程度の縮径状態を実現し得る。なお、図1では、経鼻内視鏡3の外径D3=5mmを点線の円により図示してある。
【0037】
本例の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1は、使用前の状態において図1に示すごとく縮径状態にある。そして、この縮径状態の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1は、例えば、以下のような製造方法により製造することができる。本例の縮径状態の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1の製造方法は、まず、図2の拡径状態の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1と略同一断面形状を呈する中間加工品を作製し、その後、この中間加工品に対して絞り加工を施すというものである。以下、本例の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1の製造方法について概説する。
【0038】
まず、上記の中間加工品を作製するに当たっては、図5に示すごとく、略同一円周上の8カ所に原材料供給孔611を穿設した上流側の端面610と、拡径状態の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1(図1参照。)の断面形状と略一致した形状の間隙部612を設けた下流側の端面615とを有する成形型61を利用している。この成形型61では、拡径状態の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1のリブ部11の配設位置にそれぞれ対応するように設けた各原材料供給孔611が反対側の間隙部612に連通している。この成形型61を利用すれば、溶融状態の原材料を原材料供給孔611に供給することで、図2のごとき断面形状の中間加工品を形成することができる。
【0039】
次に、上記の中間加工品の絞り加工を実施する。絞り加工では、図6に示すごとく、略円筒状の絞り加工型62を通過させることで、図1に示すごとく縮径状態の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1を得る。絞り加工型62の貫通中空孔620は、一方の端部側から他方に向けて徐々に縮径する孔である。中間加工品を供給する側の端部における貫通中空孔620の内周形状621は、中間加工品の断面外形状に略一致している。そして、他端における貫通中空孔620の内周形状622は、図1に示すごとく縮径状態の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1の外接円形状に略一致している。
【0040】
そして、この絞り加工型62の中間に位置するA−A断面の内周形状625は、経鼻内視鏡用ガイドチューブ1の薄壁部12の周方向位置に対応して凸状のガイド部623を有している。この凸状のガイド部623によれば、経鼻内視鏡用ガイドチューブ1を縮径させるに当たって、薄壁部12を内側に折り畳むきっかけを与えることが可能である。この絞り加工型62を用いて上記中間加工品に絞り加工を施せば、上記中間加工品を元にして、図1に示すごとく縮径状態の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1を最終製品として得ることができる。
【0041】
なお、本例に代えて、上記中間加工品を最終製品とすることもできる。この場合には、上記絞り加工型62のような治具部材を別途、提供するのが良い。この場合には、経鼻内視鏡検査の実施者は、拡径状態の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1(図2参照。)を上記治具部材に通過させることで使用に適した縮径状態(図1参照。)を設定することができる。
【0042】
次に、上記の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1を利用した経鼻内視鏡3の検査方法について、具体的に説明する。経鼻内視鏡検査を実施するに当たっては、図4に示すごとく、受検者5の鼻孔50から上記縮径状態の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1(図1参照。)を挿入し、後端の挿入位置保持ブロック13が鼻孔50近くに到達するまで前進させていく。そして、挿入位置保持ブロック13の把持片131を受検者5に噛ませることで、経鼻内視鏡用ガイドチューブ1の挿入位置を精度高く保持する。なお、本例では、鼻腔入口から食道入口までの屈曲経路を含む範囲に経鼻内視鏡用ガイドチューブ1を配置した。
【0043】
ここで、外径D1=3mm程度であって非常に細く、かつ、可撓性に優れ、柔軟な経鼻内視鏡用ガイドチューブ1(図1参照。)によれば、挿入経路の屈曲形状に適合しながら比較的容易に挿入していくことができる。
【0044】
その後、挿入方向位置固定ブロック13の挿入口130を介して経鼻内視鏡3を挿入していく。このとき、経鼻内視鏡用ガイドチューブ1は、経鼻内視鏡3の前進に応じて順次、内側に折り畳んだ薄壁部12を展開させて拡径することで、経鼻内視鏡3の挿入を許容し得る。そして、このように経鼻内視鏡3を経鼻内視鏡用ガイドチューブ1に挿入していくことで、鼻腔入口から食道入口までの屈曲経路を安全に経由して検査対象部位に先端部313を到達させる。
【0045】
上記のごとく経鼻内視鏡用ガイドチューブ1を介して経鼻内視鏡3を挿入すれば、経鼻内視鏡3を直接、挿入するのに比べて格段に受検者5の負担を軽減し得る。すなわち、経鼻内視鏡用ガイドチューブ1を利用すれば、経鼻内視鏡3の固い先端部313が鼻腔粘膜51等に直接、接触するおそれを確実性高く抑制できる。それ故、経鼻内視鏡3で鼻腔粘膜51等を傷つけるおそれを抑制できる。
【0046】
また、本例の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1によれば、経鼻内視鏡3を挿通させるに当たって、その外周面を複数のリブ部11の先端面を介して支持することで経鼻内視鏡3との接触面積を低減し得る。そのため、経鼻内視鏡3を挿入する際の挿通抵抗を抑制し、これにより、挿入作業を一層、容易にできる。そして、挿入作業が容易となれば、経鼻内視鏡検査の実施者が無理な力をかけることなく、効率よく短時間に挿入作業を終了できるようになる。それ故、受検者5の負担を一層、抑制できる。
【0047】
さらに、経鼻内視鏡用ガイドチューブ1に挿通させた経鼻内視鏡3は、その外周面が、経鼻内視鏡用ガイドチューブ1の内周側に突出する2カ所以上のリブ部11により支持され得る。それ故、経鼻内視鏡用ガイドチューブ1の外周面を介して経鼻内視鏡3から受検者5側に作用する力が、上記2カ所以上のリブ部11を形成した周方向範囲に分散するようになる。これにより、受検者5が痛みを感じるおそれを抑制することが可能である。
【0048】
さらにまた、経鼻内視鏡用ガイドチューブ1を利用して経鼻内視鏡3を挿入すれば、挿入後の検査や治療等を実施する際にも、受検者5の負担を有効に軽減し得る。すなわち、経鼻内視鏡3の先端部313の向きを遠隔操作して検査対象部位を撮影したり、検査対象部位で見つかった腫瘍等を治療する際にも、経鼻内視鏡3の外周面から作用する力を経鼻内視鏡用ガイドチューブ1を介して受検者5側に分散して伝えることができる。それ故、経鼻内視鏡用ガイドチューブ1によれば、検査中や治療中に痛みが発生するおそれを抑制できる。
【0049】
以上のように、本例の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1を利用して経鼻内視鏡検査を実施すれば、極めて安全性高く検査や治療を実施することができ、受検者5の負担を極めて効果的に軽減し得る。
【0050】
また、本例の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1を利用すれば、鼻腔粘膜51等を傷つけたりするおそれを少なくできる。そのため、出血を抑える血管収縮剤や、痛みを緩和する局所麻酔剤等、従来の経鼻内視鏡検査において注射等により投与していた薬剤の必要性を低減できる。そして、これらの薬剤の必要性を低減できれば、より簡易的な投与方法を採用できるようになったり、あるいは投与自体を不要にできる可能性がある。薬剤の簡易的な投与方法としては、例えば、経鼻内視鏡用ガイドチューブ1の外周面に薬剤を塗布しておき、鼻腔粘膜51との接触に応じて薬剤を投与する等の方法がある。
【0051】
なお、本例では、縮径状態の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1を利用したが、拡径状態の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1を鼻孔から挿入していくことも可能である。上記のごとく本例の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1は、柔軟であって可撓性に優れているのに加えて、薄壁部12を内側に折り込むことで容易に縮径し得るものである。それ故、拡径状態の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1によれば、挿入経路の屈曲形状や断面形状に柔軟に対応しながら、受検者5の負担少なく挿入していくことが可能である。
【0052】
さらに、経鼻内視鏡用ガイドチューブ1の断面形状としては、図7に示すごとく、周方向の形成幅が10度程度の幅広のリブ部11を90度毎に配置したものであっても良い。なお、このように周方向の形成幅を幅広に形成する場合には、上記リブ部11の配置間隔を60度〜120度に設定することも良い。
【0053】
さらになお、本例では、図2に示すごとく拡径状態の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1と略同一断面形状を呈する中間加工品を成形している。これに代えて、図1に示すごとく縮径状態の経鼻内視鏡用ガイドチューブ1と略同一断面形状を呈する最終製品を、成形型を用いて直接、成形することも可能である。
また、本例では、薄壁部12を内側に折り畳むことで縮径状態を形成しているが、これに代えて、図8に示すごとく、薄壁部12を外側に折り返すことで縮径状態を実現することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1における、縮径状態の経鼻内視鏡用ガイドチューブの断面構造を示す断面図。
【図2】実施例1における、拡径状態の経鼻内視鏡用ガイドチューブの断面構造を示す断面図。
【図3】実施例1における、経鼻内視鏡を示す側面図。
【図4】実施例1における、鼻腔構造を示す人体断面図。
【図5】実施例1における、中間加工品を成形するための成形型を示す説明図。
【図6】実施例1における、最終製品を得るための絞り加工型を示す説明図。
【図7】実施例1における、その他の経鼻内視鏡用ガイドチューブの断面構造を示す断面図。
【図8】実施例1における、その他の縮径状態の経鼻内視鏡用ガイドチューブの断面構造を示す断面図。
【符号の説明】
【0055】
1 経鼻内視鏡用ガイドチューブ
11 リブ部
12 薄壁部
13 挿入位置保持ブロック
131 把持片
132 マウスパッド部
3 経鼻内視鏡
31 挿入部
313 先端部
5 受検者
50 鼻孔
51 鼻腔粘膜
61 成形型
62 絞り加工型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経鼻内視鏡の挿入を補助するための管状の経鼻内視鏡用ガイドチューブであって、
長手方向に略均一な断面形状を有してなり、当該断面形状が、内側に凸状を呈する複数のリブ部と、該リブ部よりも薄肉であって、かつ、周方向に隣り合って位置する2箇所の上記リブ部を連結するように構成した薄壁部とよりなることを特徴とする経鼻内視鏡用ガイドチューブ。
【請求項2】
請求項1において、上記断面形状は、略円形の外形状を呈するものであることを特徴とする経鼻内視鏡用ガイドチューブ。
【請求項3】
経鼻内視鏡の挿入を補助するための管状の経鼻内視鏡用ガイドチューブであって、
長手方向に略均一の断面形状を有してなり、当該断面形状が、複数のリブ部と、該リブ部よりも薄肉であって、かつ、周方向に隣り合って位置する2箇所の上記リブ部を連結すると共に内側に折り畳み可能に構成した薄壁部とよりなり、
当該薄壁部を内側に折り畳んだ縮径状態の上記断面形状が、上記経鼻内視鏡の挿入に応じて内側に折り畳んだ上記薄壁部を展開することにより拡径し得るように構成してあることを特徴とする経鼻内視鏡用ガイドチューブ。
【請求項4】
請求項3において、拡径状態において内側に凸状をなすように上記リブ部を形成してあることを特徴とする経鼻内視鏡用ガイドチューブ。
【請求項5】
請求項4において、拡径状態において、略円形状の断面外形状を呈するように構成したことを特徴とする経鼻内視鏡用ガイドチューブ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、受検者が上下の歯で把持可能に構成した把持片を含む挿入位置保持ブロックを固定してなることを特徴とする経鼻内視鏡用ガイドチューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−125840(P2008−125840A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314655(P2006−314655)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000132194)株式会社スズケン (12)
【Fターム(参考)】